(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167238
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】フロー療法機器内の酸素供給を制御するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 16/00 20060101AFI20241126BHJP
A61M 16/12 20060101ALI20241126BHJP
A61M 16/20 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61M16/00 380
A61M16/12
A61M16/20 F
A61M16/20 D
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024135031
(22)【出願日】2024-08-13
(62)【分割の表示】P 2022515714の分割
【原出願日】2020-09-10
(31)【優先権主張番号】62/898,464
(32)【優先日】2019-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513259285
【氏名又は名称】フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100130719
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 卓
(72)【発明者】
【氏名】アントン、キム、ガリー
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー、マルコム、クロン
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル、ウィリアム、バージェス
(72)【発明者】
【氏名】ブリン、アラン、エドワーズ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本開示はフロー療法機器のための制御システムを提供する。
【解決手段】制御システムは患者へのFdO2(fraction of delivered oxygen)の供給を制御することができる。制御システムは治療セッション中にFdO2を標的レベルに保つことができる。制御システムは、患者への酸素の流れを制御するために酸素吸気弁を自動で制御することができる。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に気体流を与える呼吸器であって、
周囲空気吸気口と、
補助気体源から補助気体を受けるための補助吸気口と、
前記補助気体吸気口によって受けられる前記補助気体の流量を制御するように構成される弁と、
周囲空気及び補助気体の混成流の気体組成を測定するように構成される気体組成センサと、
前記患者への気体の供給を制御するように構成されるコントローラであって、
弁電流を制御することによって前記弁の作動を調節し、
標的補助気体流量を決定し、
弁モデルを使用して前記標的補助気体流量に基づいて前記弁電流を設定し、
前記気体組成センサから得た測定値に部分的に基づいて弁モデルを経時的に更新する ように構成される、コントローラと
を含む、呼吸器。
【請求項2】
前記補助気体が濃縮酸素を含む、請求項1に記載の呼吸器。
【請求項3】
前記弁モデルが前記測定気体組成の予測変化に部分的に基づいて経時的に更新される、請求項1又は2に記載の呼吸器。
【請求項4】
前記測定気体組成の前記予測変化が現在の弁の位置及び現在の流量に少なくとも部分的に基づく、請求項3に記載の呼吸器。
【請求項5】
前記気体組成の測定値が測定FdO2(fraction of delivered oxygen)である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項6】
前記弁モデルが標的気体組成に部分的に基づいて経時的に更新される、請求項1乃至5の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項7】
前記標的気体組成が標的FdO2である、請求項6に記載の呼吸器。
【請求項8】
前記弁モデルが前記気体組成の予測変化に部分的に基づいて経時的に更新される、請求項1乃至7の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項9】
前記気体組成の前記予測変化が測定気体組成の最近の傾向に少なくとも部分的に基づく、請求項8に記載の呼吸器。
【請求項10】
前記弁モデルが前記弁を開くために必要な最小電流の推定を含む、請求項1乃至9の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項11】
前記弁を開くために必要な前記最小電流の前記推定が経時的に更新される、請求項10に記載の呼吸器。
【請求項12】
総流量を測定するように構成される流量センサを更に含む、請求項1乃至11の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項13】
前記コントローラが前記総流量に少なくとも部分的に基づいて前記標的補助気体流量を決定する、請求項12に記載の呼吸器。
【請求項14】
前記コントローラが標的FdO2に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定する、請求項1乃至13の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項15】
前記コントローラが前記周囲空気の酸素分画に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定する、請求項1乃至14の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項16】
前記コントローラが前記補助気体源の前記酸素分画に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定する、請求項1乃至15の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項17】
前記コントローラが予期される呼吸数の範囲に応じて前記弁モデルを様々なレートで更新する、請求項1乃至16の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項18】
前記コントローラが予期される流量振動幅に応じて前記弁モデルを様々なレートで更新する、請求項1乃至17の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項19】
前記コントローラが前記流量に応じて前記弁モデルを様々なレートで更新する、請求項1乃至18の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項20】
前記コントローラが帰還ループを使用して前記弁モデルを更新する、請求項1乃至19の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項21】
前記帰還ループの係数が流量に部分的に基づいて調節される、請求項20に記載の呼吸器。
【請求項22】
前記弁モデルが前記弁を通る前記補助気体の前記流量の推定を含む、請求項1乃至21の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項23】
前記弁を通る前記補助気体の前記流量の前記推定が一次モデル、移流拡散方程式、ナビエストークス方程式、又は機械学習アルゴリズムの少なくとも1つを使用して決定される、請求項22に記載の呼吸器。
【請求項24】
患者に気体流を与える呼吸器であって、
周囲空気吸気口と、
補助気体源から補助気体を受けるための補助吸気口と、
開くために最小量の電流を必要とする弁と、
周囲空気及び補助気体の混成流の気体組成を測定するように構成される気体組成センサと、
前記患者への気体の供給を制御するように構成される主コントローラであって、
弁電流を制御することによって弁開口部の作動を調節し、
補助気体の標的流量がゼロから増加されるときコアースコントローラを起動する
ように構成される、主コントローラと、
前記弁電流を制御することによって前記弁開口部の作動を制御することであって、前記主コントローラ又は前記コアースコントローラが前記弁電流を制御することができる、制御すること、
前記弁に供給される電流を反復的に増加すること、
前記弁を通る流れを検出した後で前記弁の前記作動の制御を前記主コントローラに切り替えること
を行うように構成される、コアースコントローラと
を含む、呼吸器。
【請求項25】
前記弁電流を反復的に増加する前に前記コントローラが前記弁電流を初期値に設定する、請求項24に記載の呼吸器。
【請求項26】
前記初期値が前記弁の前記弁開口部を開くために必要な前記最小可能電流に対応する、請求項25に記載の呼吸器。
【請求項27】
前記コアースコントローラの各反復時に前記コントローラが前記弁電流の階段状変更を実行する、請求項24乃至26の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項28】
階段状変更の大きさが各反復時に増加する、請求項27に記載の呼吸器。
【請求項29】
前記階段状変更の大きさが標的FdO2に少なくとも部分的に基づく、請求項27又は28に記載の呼吸器。
【請求項30】
前記階段状変更の大きさが総流量に少なくとも部分的に基づく、請求項27乃至29の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項31】
気体組成センサを含む、請求項24乃至30の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項32】
前記弁を通る流れが前記気体組成センサを使用して検出される、請求項31に記載の呼吸器。
【請求項33】
前記弁を通る流れは、補助気体の濃度が周囲レベルを上回るとき生じていると決定される、請求項31又は32に記載の呼吸器。
【請求項34】
前記弁を通る流れは、補助気体の前記濃度が周囲レベルを潜在的なセンサ誤差よりも多い量上回るとき生じていると決定される、請求項31乃至33の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項35】
前記補助気体が濃縮酸素を含む、請求項24乃至34の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項36】
周囲空気の流れを受けるための周囲空気吸気口と、
補助気体源から補助気体を受けるための補助吸気口と、
弁と、
患者への気体の供給を制御するように構成されるコントローラであって、
前記周囲空気の流れに追加される補助気体の流量を制御するために弁の位置を調節すること、
第1のレベルを計算することであって、前記第1のレベルは気体の現在の総流量に関して標的気体組成を実現するのに必要な補助気体の流量を表す、第1のレベルを計算すること、
第2のレベルを計算することであって、前記第2のレベルは補助気体の流量を表し前記第1のレベルよりも低い、第2のレベルを計算すること、
第3のレベルを計算することであって、前記第3のレベルは補助気体の流量を表し前記第1のレベルよりも高い、第3のレベルを計算すること、
前記患者の呼吸周期を解析することであって、前記呼吸周期は連続した呼吸期間を含み、各呼吸期間は吸気期間及び呼気期間を含む、解析すること、
前記患者の呼吸期間のそれぞれの第1の部分の間に前記第1のレベルの補助気体を供給するために前記弁を制御すること、
前記患者の呼吸期間のそれぞれの第2の部分の間に前記第2のレベルの補助気体を供給するために前記弁を制御すること、及び
前記患者の呼吸期間のそれぞれの第3の部分の間に前記第3のレベルの補助気体を供給するために前記弁を制御すること
を行うように構成される、コントローラと
を含む、呼吸器。
【請求項37】
前記補助気体が酸素を含む、請求項36に記載の呼吸器。
【請求項38】
前記標的気体組成が標的FdO2(fraction of delivered oxygen)である、請求項36又は37に記載の呼吸器。
【請求項39】
前記補助気体がエアロゾル化薬剤を含む、請求項36乃至38の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項40】
前記標的気体組成が標的エアロゾル化薬剤濃度である、請求項36乃至39の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項41】
フロー発生器を更に含む、請求項36乃至40の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項42】
前記フロー発生器がブローワを含む、請求項41に記載の呼吸器。
【請求項43】
前記コントローラが標的流量を供給するよう前記フロー発生器を制御するように更に構成される、請求項41又は42に記載の呼吸器。
【請求項44】
前記コントローラが患者の吸気需要を満たす又は超える流量を供給するよう前記フロー発生器を制御するように更に構成される、請求項41乃至43の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項45】
前記機器が高流量経鼻酸素療法を提供する、請求項36乃至44の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項46】
前記呼吸期間の前記第1の部分が前記呼吸期間の前記吸気期間の少なくとも一部を含む、請求項36乃至45の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項47】
前記呼吸期間の前記第2の部分が前記呼吸期間の前記呼気期間の始まりの少なくとも一部を含む、請求項36乃至46の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項48】
前記呼吸期間の前記第3の部分が前記呼吸期間の前記呼気期間の終わりの少なくとも一部を含む、請求項36乃至47の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項49】
前記コントローラが前記第1のレベル、前記第2のレベル、及び/又は前記第3のレベルを切り替えるとき、前記弁と患者インタフェースとの間の呼吸回路内の気体の移動時間を考慮するように更に構成される、請求項36乃至48の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項50】
前記コントローラが前記弁と前記患者インタフェースとの間の前記移動時間を推定するように更に構成される、請求項49に記載の呼吸器。
【請求項51】
前記コントローラが前記弁と前記患者インタフェースとの間の前記移動時間を前記気体の現在の総流量に基づいて推定するように更に構成される、請求項49又は50に記載の呼吸器。
【請求項52】
前記第2のレベルが前記第1のレベルの設定された分数である、請求項36乃至51の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項53】
前記第2のレベルが前記周囲空気の流れに補助気体の流れが供給されていないことに対応する、請求項36乃至52の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項54】
前記第3のレベルが前記第1のレベルの設定された倍数である、請求項36乃至53の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項55】
前記第3のレベルが補助気体の最大流量に対応する、請求項36乃至54の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項56】
前記コントローラが、前記第1のレベルの定められた倍数である第1の値及び補助気体の最大流量である第2の値を計算し、前記第1の値又は前記第2の値の低い方に前記第3のレベルを設定するように更に構成される、請求項36乃至55の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項57】
前記補助気体の最大流量が前記総流量に基づいて決定される、請求項56に記載の呼吸器。
【請求項58】
前記コントローラが、前記呼吸期間の全体を通して供給される全補助気体の移動平均を計算するように更に構成され、前記全補助気体の移動平均と前記第1のレベルの補助気体を継続的に供給するよう前記弁が制御される場合に使用されることになる補助気体の推定量とを比較することによって保存メトリクを生成する、請求項36乃至57の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項59】
前記呼吸器が前記呼吸器のディスプレイのグラフィカルユーザインタフェース上で前記保存メトリクを表示するように構成される、請求項58に記載の呼吸器。
【請求項60】
前記保存メトリクが保存閾値を満たさない場合、前記コントローラが前記第1のレベルの補助気体を供給するために前記弁を継続的に制御することに切り替えるように構成される、請求項58又は59に記載の呼吸器。
【請求項61】
前記コントローラは前記第1のレベル、前記第2のレベル、又は前記第3のレベルの少なくとも1つが設定される時間の長さを調節するように更に構成される、請求項36乃至60の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項62】
前記コントローラが前記流量に少なくとも部分的に基づいて前記時間の長さを調節するように更に構成される、請求項61に記載の呼吸器。
【請求項63】
前記コントローラが前記患者の呼吸数に少なくとも部分的に基づいて前記時間の長さを調節するように更に構成される、請求項61又は62に記載の呼吸器。
【請求項64】
前記コントローラが、前記第1のレベルと前記第2のレベルとの差に少なくとも部分的に基づいて前記第3のレベルの補助気体が供給される前記時間の長さを調節するように更に構成される、請求項61乃至63の何れか一項に記載の呼吸器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フロー療法機器内の酸素供給を制御するための方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸器は、ユーザ又は患者に気体流を供給するために病院、医療施設、居住看護、又は自宅環境等の様々な環境で使用されている。呼吸器又はフロー療法機器は、気体流と共に補助酸素を供給することを可能にするための酸素吸気口及び/又は加熱し加湿した気体を供給するための加湿器を含み得る。フロー療法機器は、流量、温度、酸素濃度等の気体濃度、湿度、圧力等を含む気体流の特性の調節及び制御を可能にし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書で開示する第1の実施形態の特定の特徴、側面、及び利点によれば、周囲空気吸気口と、補助気体源から補助気体を受けるための補助吸気口と、補助気体吸気口によって受けられる補助気体の流量を制御するように構成される弁と、患者に供給される気体の総流量を測定するように構成される流量センサと、患者への気体の供給を制御するように構成されるコントローラであって、総流量に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定し、標的補助気体流量に基づいて弁電流を設定するように構成される、コントローラとを含む、患者に気体流を与える呼吸器。
【0004】
第1の実施形態の一部の構成では、補助気体が濃縮酸素を含む。
【0005】
第1の実施形態の一部の構成では、コントローラが標的FdO2(fraction of delivered oxygen)に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定するように構成される。
【0006】
第1の実施形態の一部の構成では、コントローラが周囲空気の酸素分画に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定するように構成される。
【0007】
第1の実施形態の一部の構成では、コントローラが補助気体源の酸素分画に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定するように構成される。
【0008】
第1の実施形態の一部の構成では、コントローラが弁モデルを使用して標的補助気体流に基づいて弁電流を設定するように構成される。
【0009】
第1の実施形態の一部の構成では、弁モデルが経時的に更新される。
【0010】
第1の実施形態の一部の構成では、弁モデルが測定FdO2に部分的に基づいて更新される。
【0011】
第1の実施形態の一部の構成では、弁モデルが総流量に部分的に基づいて更新される。
【0012】
第1の実施形態の一部の構成では、弁モデルが標的FdO2に部分的に基づいて更新される。
【0013】
第1の実施形態の一部の構成では、弁モデルが弁を開くために必要な最小電流の推定を含む。
【0014】
第1の実施形態の一部の構成では、弁を開くために必要な最小電流の推定が経時的に更新される。
【0015】
第1の実施形態の一部の構成では、弁モデルが弁を通る補助気体の流量の推定を含む。
【0016】
第1の実施形態の一部の構成では、弁を通る補助気体の流量の推定が一次モデル、移流拡散方程式、ナビエストークス方程式、又は機械学習アルゴリズムの少なくとも1つを使用して決定される。
【0017】
本明細書で開示する第2の実施形態の特定の特徴、側面、及び利点によれば、周囲空気吸気口と、補助気体源から補助気体を受けるための補助吸気口と、補助気体吸気口によって受けられる補助気体の流量を制御するように構成される弁と、周囲空気及び補助気体の混成流の気体組成を測定するように構成される気体組成センサと、患者への気体の供給を制御するように構成されるコントローラであって、弁電流を制御することによって弁の作動を調節し、標的補助気体流量を決定し、弁モデルを使用して標的補助気体流量に基づいて弁電流を設定し、気体組成センサから得た測定値に部分的に基づいて弁モデルを経時的に更新するように構成される、コントローラとを含む、患者に気体流を与える呼吸器。
【0018】
第2の実施形態の一部の構成では、補助気体が濃縮酸素を含む。
【0019】
第2の実施形態の一部の構成では、弁モデルが測定気体組成の予測変化に部分的に基づいて経時的に更新される。
【0020】
第2の実施形態の一部の構成では、測定気体組成の予測変化が現在の弁の位置及び現在の流量に少なくとも部分的に基づく。
【0021】
第2の実施形態の一部の構成では、気体組成の測定値が測定FdO2(fraction of delivered oxygen)である。
【0022】
第2の実施形態の一部の構成では、弁モデルが標的気体組成に部分的に基づいて経時的に更新される。
【0023】
第2の実施形態の一部の構成では、標的気体組成が標的FdO2である。
【0024】
第2の実施形態の一部の構成では、弁モデルが気体組成の予測変化に部分的に基づいて経時的に更新される。
【0025】
第2の実施形態の一部の構成では、気体組成の予測変化が測定気体組成の最近の傾向に少なくとも部分的に基づく。
【0026】
第2の実施形態の一部の構成では、弁モデルが弁を開くために必要な最小電流の推定を含む。
【0027】
第2の実施形態の一部の構成では、弁を開くために必要な最小電流の推定が経時的に更新される。
【0028】
第2の実施形態の一部の構成では、総流量を測定するように構成される流量センサを呼吸器が更に含む。
【0029】
第2の実施形態の一部の構成では、コントローラが総流量に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定する。
【0030】
第2の実施形態の一部の構成では、コントローラが標的FdO2に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定する。
【0031】
第2の実施形態の一部の構成では、コントローラが周囲空気の酸素分画に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定する。
【0032】
第2の実施形態の一部の構成では、コントローラが補助気体源の酸素分画に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定する。
【0033】
第2の実施形態の一部の構成では、コントローラが予期される呼吸数の範囲に応じて弁モデルを様々なレートで更新する。
【0034】
第2の実施形態の一部の構成では、コントローラが予期される流量振動幅に応じて弁モデルを様々なレートで更新する。
【0035】
第2の実施形態の一部の構成では、コントローラが流量に応じて弁モデルを様々なレートで更新する。
【0036】
第2の実施形態の一部の構成では、コントローラが帰還ループを使用して弁モデルを更新する。
【0037】
第2の実施形態の一部の構成では、帰還ループの係数が流量に部分的に基づいて調節される。
【0038】
第2の実施形態の一部の構成では、弁モデルが弁を通る補助気体の流量の推定を含む。
【0039】
第2の実施形態の一部の構成では、弁を通る補助気体の流量の推定が一次モデル、移流拡散方程式、ナビエストークス方程式、又は機械学習アルゴリズムの少なくとも1つを使用して決定される。
【0040】
本明細書で開示する第3の実施形態の特定の特徴、側面、及び利点によれば、周囲空気吸気口と、補助気体源から補助気体を受けるための補助吸気口と、開くために最小量の電流を必要とする弁と、周囲空気及び補助気体の混成流の気体組成を測定するように構成される気体組成センサと、患者への気体の供給を制御するように構成される主コントローラであって、弁電流を制御することによって弁開口部の作動を調節し、補助気体の標的流量がゼロから増加されるときコアースコントローラを起動するように構成される、主コントローラと、弁電流を制御することによって弁開口部の作動を制御することであって、主コントローラ又はコアースコントローラが弁電流を制御することができる、制御すること、弁に供給される電流を反復的に増加すること、及び弁を通る流れを検出した後で弁の作動の制御を主コントローラに切り替えることを行うように構成されるコアースコントローラとを含む、患者に気体流を与える呼吸器。
【0041】
第3の実施形態の一部の構成では、弁電流を反復的に増加する前にコントローラが弁電流を初期値に設定する。
【0042】
第3の実施形態の一部の構成では、初期値が弁の弁開口部を開くために必要な最小可能電流に対応する。
【0043】
第3の実施形態の一部の構成では、コアースコントローラの各反復時にコントローラが弁電流の階段状変更を実行する。
【0044】
第3の実施形態の一部の構成では、階段状変更の大きさが各反復時に増加する。
【0045】
第3の実施形態の一部の構成では、階段状変更の大きさが標的FdO2に少なくとも部分的に基づく。
【0046】
第3の実施形態の一部の構成では、階段状変更の大きさが総流量に少なくとも部分的に基づく。
【0047】
第3の実施形態の一部の構成では、呼吸器が気体組成センサを含む。
【0048】
第3の実施形態の一部の構成では、弁を通る流れが気体組成センサを使用して検出される。
【0049】
第3の実施形態の一部の構成では、弁を通る流れは、補助気体の濃度が周囲レベルを上回るとき生じていると決定される。
【0050】
第3の実施形態の一部の構成では、弁を通る流れは、補助気体の濃度が周囲レベルを潜在的なセンサ誤差よりも多い量上回るとき生じていると決定される。
【0051】
第3の実施形態の一部の構成では、補助気体が濃縮酸素を含む。
【0052】
本明細書で開示する第4の実施形態の特定の特徴、側面、及び利点によれば、ディスプレイと、周囲空気吸気口と、補助気体源から補助気体を受けるための補助吸気口と、弁と、周囲空気及び補助気体の混成流の気体組成を測定するように構成される気体組成センサと、患者への気体の供給を制御し、標的気体組成の入力を受け、気体組成を制御するために弁の作動を調節し、標的モードにある間は標的気体組成を表示し、測定モードにある間は測定気体組成を表示し、標的気体組成と測定気体組成との差をモニタし、差が第1の閾値を上回る場合は標的モードから測定モードに変更し、差が第2の閾値を下回る場合は測定モードから標的モードに変更するように構成されるコントローラとを含む、患者に気体流を与える呼吸器。
【0053】
第4の実施形態の一部の構成では、補助気体が濃縮酸素を含む。
【0054】
第4の実施形態の一部の構成では、気体組成の測定値が測定FdO2(fraction of delivered oxygen)である。
【0055】
第4の実施形態の一部の構成では、気体組成センサが音響変換器を含む。
【0056】
第4の実施形態の一部の構成では、第1の閾値が標的気体組成に部分的に基づいて決定される。
【0057】
第4の実施形態の一部の構成では、第2の閾値が標的気体組成に部分的に基づいて決定される。
【0058】
第4の実施形態の一部の構成では、第1の閾値が第2の閾値に等しい。
【0059】
第4の実施形態の一部の構成では、第1の閾値が第2の閾値を上回る。
【0060】
本明細書で開示する第5の実施形態の特定の特徴、側面、及び利点によれば、周囲空気の流れを受けるための周囲空気吸気口と、補助気体源から補助気体を受けるための補助吸気口と、弁と、患者への気体の供給を制御するように構成されるコントローラであって、周囲空気の流れに追加される補助気体の流量を制御するために弁の位置を調節すること、第1のレベルを計算することであって、第1のレベルは気体の現在の総流量に関して標的気体組成を実現するのに必要な補助気体の流量を表す、第1のレベルを計算すること、第2のレベルを計算することであって、第2のレベルは補助気体の流量を表し第1のレベルよりも低い、第2のレベルを計算すること、第3のレベルを計算することであって、第3のレベルは補助気体の流量を表し第1のレベルよりも高い、第3のレベルを計算すること、患者の呼吸周期を解析することであって、呼吸周期は連続した呼吸期間を含み、各呼吸期間は吸気期間及び呼気期間を含む、解析すること、患者の呼吸期間のそれぞれの第1の部分の間に第1のレベルの補助気体を供給するために弁を制御すること、患者の呼吸期間のそれぞれの第2の部分の間に第2のレベルの補助気体を供給するために弁を制御すること、及び患者の呼吸期間のそれぞれの第3の部分の間に第3のレベルの補助気体を供給するために弁を制御することを行うように構成される、コントローラとを含む呼吸器。
【0061】
第5の実施形態の一部の構成では、補助気体が酸素を含む。
【0062】
第5の実施形態の一部の構成では、標的気体組成が標的FdO2(fraction of delivered oxygen)である。
【0063】
第5の実施形態の一部の構成では、補助気体がエアロゾル化薬剤を含む。
【0064】
第5の実施形態の一部の構成では、標的気体組成が標的エアロゾル化薬剤濃度である。
【0065】
第5の実施形態の一部の構成では、呼吸器がフロー発生器を含む。
【0066】
第5の実施形態の一部の構成では、フロー発生器がブローワを含む。
【0067】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラが標的流量を供給するようフロー発生器を制御するように更に構成される。
【0068】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラが患者の吸気需要を満たす又は超える流量を供給するようフロー発生器を制御するように更に構成される。
【0069】
第5の実施形態の一部の構成では、機器が高流量経鼻酸素療法を提供する。
【0070】
第5の実施形態の一部の構成では、呼吸期間の第1の部分が呼吸期間の吸気期間の少なくとも一部を含む。
【0071】
第5の実施形態の一部の構成では、呼吸期間の第2の部分が呼吸期間の呼気期間の始まりの少なくとも一部を含む。
【0072】
第5の実施形態の一部の構成では、呼吸期間の第3の部分が呼吸期間の呼気期間の終わりの少なくとも一部を含む。
【0073】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラが第1のレベル、第2のレベル、及び/又は第3のレベルを切り替えるとき、弁と患者インタフェースとの間の呼吸回路内の気体の移動時間を考慮するように更に構成される。
【0074】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラが弁と患者インタフェースとの間の移動時間を推定するように更に構成される。
【0075】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラが弁と患者インタフェースとの間の移動時間を気体の現在の総流量に基づいて推定するように更に構成される。
【0076】
第5の実施形態の一部の構成では、第2のレベルが第1のレベルの設定された分数である。
【0077】
第5の実施形態の一部の構成では、第2のレベルが周囲空気の流れに補助気体の流れが供給されていないことに対応する。
【0078】
第5の実施形態の一部の構成では、第3のレベルが第1のレベルの設定された倍数である。
【0079】
第5の実施形態の一部の構成では、第3のレベルが補助気体の最大流量に対応する。
【0080】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラが、第1のレベルの定められた倍数である第1の値及び補助気体の最大流量である第2の値を計算し、第1の値又は第2の値の低い方に第3のレベルを設定するように更に構成される。
【0081】
第5の実施形態の一部の構成では、補助気体の最大流量が総流量に基づいて決定される。
【0082】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラが、呼吸期間の全体を通して供給される全補助気体の移動平均を計算するように更に構成され、全補助気体の移動平均と第1のレベルの補助気体を継続的に供給するよう弁が制御される場合に使用されることになる補助気体の推定量とを比較することによって保存メトリクを生成する。
【0083】
第5の実施形態の一部の構成では、呼吸器が呼吸器のディスプレイのグラフィカルユーザインタフェース上で保存メトリクを表示するように構成される。
【0084】
第5の実施形態の一部の構成では、保存メトリクが保存閾値を満たさない場合、コントローラが第1のレベルの補助気体を供給するために弁を継続的に制御することに切り替えるように構成される。
【0085】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラは第1のレベル、第2のレベル、又は第3のレベルの少なくとも1つが設定される時間の長さを調節するように更に構成される。
【0086】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラが流量に少なくとも部分的に基づいて時間の長さを調節するように更に構成される。
【0087】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラが患者の呼吸数に少なくとも部分的に基づいて時間の長さを調節するように更に構成される。
【0088】
第5の実施形態の一部の構成では、コントローラが、第1のレベルと第2のレベルとの差に少なくとも部分的に基づいて第3のレベルの補助気体が供給される時間の長さを調節するように更に構成される。
【0089】
本明細書で開示する第6の実施形態の特定の特徴、側面、及び利点によれば、周囲空気の流れを受けるための周囲空気吸気口と、補助気体源から補助気体を受けるための補助吸気口と、弁と、患者への気体の供給を制御するように構成されるコントローラとを含む呼吸器であって、コントローラは、周囲空気の流れに追加される補助気体の流量を制御するために弁の位置を調節すること、第1のレベルを計算することであって、第1のレベルは気体の現在の総流量に関して標的気体組成を実現するのに必要な補助気体の流量を表す、第1のレベルを計算すること、第2のレベルを計算することであって、第2のレベルは補助気体の流量を表し第1のレベルよりも低い、第2のレベルを計算すること、患者の呼吸周期を解析することであって、呼吸周期は連続した呼吸期間を含み、各呼吸期間は吸気期間及び呼気期間を含む、解析すること、1つ若しくは複数の動作パラメータ及び/又は患者パラメータに基づいて第1の動作モード又は第2の動作モードの適切性を決定すること、及び決定に基づいて第1の動作モード又は第2の動作モードを自動で選択することを行うように構成され、第1の動作モードでは患者の呼吸期間の全体を通して第1のレベルの補助気体流を供給するよう弁が継続的に制御され、第2の動作モードでは、患者の呼吸期間の第1の部分の間は第1のレベルの補助気体流を供給し、患者の呼吸期間の第2の部分の間は第2のレベルの補助気体流を供給するように弁が制御される。
【0090】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが患者の呼吸期間を決定するように更に構成される。
【0091】
第6の実施形態の一部の構成では、患者の呼吸期間を決定することが患者の呼吸数及び呼吸相を決定することを含む。
【0092】
第6の実施形態の一部の構成では、患者の呼吸期間を決定することが呼吸信頼度メトリクを含み、呼吸信頼度メトリクは患者の呼吸数及び/又は呼吸相の決定が正しい信頼度を表す。
【0093】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが呼吸信頼度メトリクに少なくとも部分的に基づいて動作モードを選択するように更に構成される。
【0094】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが呼吸信頼度メトリクを閾値と比較し、呼吸信頼度メトリクが閾値を下回る場合は第1の動作モードを自動で選択するように更に構成される。
【0095】
第6の実施形態の一部の構成では、第1の動作モード又は第2の動作モードの適切性の決定が患者の呼吸数を閾値と比較することを含む。
【0096】
第6の実施形態の一部の構成では、第1の動作モード又は第2の動作モードの適切性の決定が患者の呼吸数を閾値と比較し、患者の呼吸数が閾値を上回る場合は第1のモードを自動で選択することを含む。
【0097】
第6の実施形態の一部の構成では、第1の動作モード又は第2の動作モードの適切性の決定が流量を閾値と比較することを含む。
【0098】
第6の実施形態の一部の構成では、第1の動作モード又は第2の動作モードの適切性の決定が流量を閾値と比較し、流量が閾値を下回る場合は第1のモードを自動で選択することを含む。
【0099】
第6の実施形態の一部の構成では、第1の動作モード又は第2の動作モードの適切性の決定が流量に対する患者の呼吸数の比率を計算し、その比率を閾値と比較することを含む。
【0100】
第6の実施形態の一部の構成では、第1の動作モード又は第2の動作モードの適切性の決定が流量に対する患者の呼吸数の比率を計算し、その比率を閾値と比較し、比率が閾値を満たす場合は第1の動作モードを自動で選択することを含む。
【0101】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが第1のモード及び第2のモードで使用される補助気体の平均量を推定し、2つの値を比較することによって保存メトリクを生成し、保存メトリクの値に少なくとも部分的に基づいて動作モードを選択するように更に構成される。
【0102】
第6の実施形態の一部の構成では、呼吸期間の第1の部分が呼吸期間の吸気期間の少なくとも一部を含む。
【0103】
第5の実施形態の一部の構成では、呼吸期間の第2の部分が呼吸期間の呼気期間の始まりの少なくとも一部を含む。
【0104】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが第3のレベルを計算するように更に構成され、第3のレベルは補助気体の流量を表し第1のレベルよりも高い。
【0105】
第6の実施形態の一部の構成では、第2の動作モードにおいて、コントローラが患者の呼吸期間の第3の部分の間に第3のレベルの補助気体を供給するために弁を制御するように更に構成される。
【0106】
第6の実施形態の一部の構成では、呼吸期間の第3の部分が呼吸期間の呼気期間の終わりの少なくとも一部を含む。
【0107】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが第1のレベル、第2のレベル、及び/又は第3のレベルを切り替えるとき、弁と患者インタフェースとの間の呼吸回路内の気体の移動時間を考慮するように更に構成される。
【0108】
第6の実施形態の一部の構成では、第3のレベルが第1のレベルの設定された倍数である。
【0109】
第6の実施形態の一部の構成では、第3のレベルが補助気体の最大流量に対応する。
【0110】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが、第1のレベルの定められた倍数である第1の値及び補助気体の最大流量である第2の値を計算し、第1の値又は第2の値の低い方に第3のレベルを設定するように更に構成される。
【0111】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラは第1のレベル、第2のレベル、又は第3のレベルの少なくとも1つが設定される時間の長さを調節するように更に構成される。
【0112】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが流量に少なくとも部分的に基づいて時間の長さを調節するように更に構成される。
【0113】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが患者の呼吸数に少なくとも部分的に基づいて時間の長さを調節するように更に構成される。
【0114】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが、第1のレベルと第2のレベルとの差に少なくとも部分的に基づいて第3のレベルの補助気体が供給される時間の長さを調節するように更に構成される。
【0115】
第6の実施形態の一部の構成では、補助気体が酸素を含む。
【0116】
第6の実施形態の一部の構成では、標的気体組成が標的FdO2(fraction of delivered oxygen)である。
【0117】
第6の実施形態の一部の構成では、コントローラが決定済みの時間間隔において第1の動作モード又は第2の動作モードの適切性を決定するように更に構成される。
【0118】
第6の実施形態の一部の構成では、決定される時間間隔が1つ若しくは複数の動作パラメータ及び/又は患者パラメータに基づく。
【0119】
1つ又は複数の実施形態又は構成の特徴は、1つ又は複数の他の実施形態又は構成の特徴と組み合わせることができる。加えて、患者の呼吸補助のプロセス中に複数の実施形態を一緒に使用することができる。
【0120】
本明細書で使用するとき、「含む(comprising)」という用語は「~で少なくとも部分的に構成される」ことを意味する。「含む」という用語を含む本明細書の各記述を解釈するとき、その用語によって先行される以外の特徴も存在し得る。「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」等の関連語も同様に解釈すべきである。
【0121】
本明細書で開示する一連の数字(例えば1から10)への言及は、その範囲内の全ての有理数(例えば1、1.1、2、3、3.9、4、5、6、6.5、7、8、9、及び10)及びその範囲内の有理数の任意の範囲(例えば2から8、1.5から5.5、及び3.1から4.7)への言及も含み、従って本明細書で明確に開示する全ての範囲の全ての部分範囲が本明細書によって明確に開示されることを意図する。これらは具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙される最低値と最高値との間の数値の全ての可能な組み合わせが本願で同様に明確に記載されていると見なされるべきである。
【0122】
代替的実施形態又は構成は、本明細書で図示し、記載し、言及する部品、要素、又は特徴の2つ以上の任意の又は全ての組み合わせを含み得ることを理解すべきである。
【0123】
本発明は、本願の明細書の中で個別に又はまとめて言及し又は示す部品、要素、及び特徴、並びに何れか2つ以上の前述の部品、要素、又は特徴の任意の又は全ての組み合わせで構成されると広く言うこともできる。
【0124】
本発明が関係する当業者にとって、本発明の構成の多くの変更並びに大いに異なる実施形態及び応用が、添付の特許請求の範囲に定める発明の範囲から逸脱することなく自明であろう。本明細書の開示及び記載は純粋に例示であり、如何なる意味においても限定的であることは意図しない。本発明が関係する分野において既知の等価物を有する特定の完全体が本明細書で言及される場合、かかる既知の等価物は個別に記載されているかのように本明細書に援用されると見なす。
【図面の簡単な説明】
【0125】
図面の簡単な説明
【
図1B】フロー療法機器内で使用され得る流量センサを含む検知回路基板を示す。
【
図1C】フロー交差ビームを使用するセンサシステムのための超音波変換器の構成の概略図を示す。
【
図1D】フロー交差ビームを使用するセンサシステムのための超音波変換器の構成の概略図を示す。
【
図1E】フロー沿いビームを使用するセンサシステムのための超音波変換器の構成の概略図を示す。
【
図1F】フロー沿いビームを使用するセンサシステムのための超音波変換器の構成の概略図を示す。
【
図3】モータ及び/又はセンサモジュールサブアセンブリ用の凹部をハウジング内に示す、フロー療法機器の主ハウジングの第1の下面の斜視図である。
【
図4】モータ及び/又はセンサモジュールサブアセンブリ用の凹部を示す、フロー療法機器の主ハウジングの第2の下面の斜視図である。
【
図5】主ハウジングの下のモータ及び/又はセンササブアセンブリ、並びにフロー療法機器の固定エルボ管の斜視図である。
【
図6】サブアセンブリを通る気体流路を矢印によって概略的に示す、モータ及び/又はセンササブアセンブリのコンポーネントの分解斜視図である。
【
図7】センサの位置を示す、モータ及び/又はセンササブアセンブリのカバー及び検知PCBの下面図である。
【
図8】モータ及び/又はセンササブアセンブリを受け入れるための凹部を設ける主ハウジングの一部の構成を示す、機器の後端付近で断面図が作られたフロー療法機器の後方斜視図である。
【
図11】弁モジュール及びフィルタモジュールを示す左前部分切り欠き図である。
【
図12】フィルタモジュール及び弁モジュールのための概略的な気体流路図であり、実線矢印は酸素(又は別の気体)の流れを表し、破線矢印は周囲空気の流れを表す。
【
図13】フィルタモジュール及び弁モジュールを通る気体流路を示す断面図である。
【
図14】第1の構成の弁モジュールの後側の俯瞰斜視図である。
【
図15】第1の構成の弁モジュールを通る気体流路を示す後側の俯瞰斜視図であり、実線矢印は酸素(又は別の気体)の流れを表し、破線矢印は周囲空気の流れを表す。
【
図16】第1の構成の弁モジュールを通る断面図である。
【
図17】第1の構成の弁モジュールの弁及び弁マニホールドの結合及びそれらを通る気体流路を示す断面図である。
【
図18】弁パラメータ間の関係を示すグラフの一例である。
【
図19】弁を調節するプロセスの流れ図の一例を示す。
【
図20】弁モデルを更新するプロセスの流れ図の一例を示す。
【
図21】呼吸中の測定フローのチャートの一例を示す。
【
図22】呼吸回路内の酸素含有量解析の結果の一例を示すチャートの例を示す。
【
図23】酸素保存モードの制御スキームの一例を示す。
【
図24】治療セッション中に酸素保存モードを実行するための流れ図の一例を示す。
【
図25】治療セッション中に酸素保存モードを使用するかどうかを決定するためのプロセスの流れ図の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0126】
様々な健康状態及び疾患に悩む患者は酸素療法の恩恵を受けることができる。例えば、術前及び術後の酸素供給を受ける慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺炎、喘息、気管支肺異形成症、心臓病、嚢胞性繊維症、睡眠無呼吸、肺疾患、呼吸系への外傷、急性呼吸促迫、及び他の状態又は疾患に悩む患者は酸素療法の恩恵を受けることができる。このような問題を治療する一般的なやり方は、患者の血中酸素飽和度(SpO2)が低くなり過ぎる(例えば約90%未満)のを防ぐために補助酸素を患者に供給することによるものである。しかし、患者に酸素を供給し過ぎることは患者の血液を酸素過多にする可能性があり、危険だとも考えられている。概して患者のSpO2は約80%~約99%の範囲内に、好ましくは約92%~約96%の範囲内に保たれるが、これらの範囲は患者の状態によって異なり得る。呼吸数、肺の一回換気量、心拍数、活動レベル、身長、体重、年齢、性別等の様々な要因及び他の要因により、各患者の標的範囲内のSpO2反応を一貫して実現可能な補助酸素の1つの規定レベルはない。個々の患者は、標的SpO2を実現するための正しい酸素分画(FdO2)を得ていることを確実にするために、患者に供給されるFdO2を定期的にモニタされ調節される必要がある。正しく一貫したSpO2を実現することは、様々な健康状態又は疾患を有する患者を治療する際の重要な要素である。加えて、これらの健康問題に悩む患者は酸素飽和度を自動制御するシステムの利点を見出す可能性がある。本開示は、素早く正確な酸素飽和度の制御を必要とする多岐にわたる患者に適用することができる。
【0127】
患者に供給される酸素分画(FdO2)は手動で制御することができる。患者に供給されている流量又は酸素分画を変更するために、臨床医が酸素供給弁を手動で調節することができる。臨床医はパルスオキシメータ等の患者モニタを使用して患者のSpO2レベルを決定することができる。臨床医は患者のSpO2レベルが決定済みのレベルに到達するまで、患者に供給されている酸素量を手動で調節し続けることができる。
【0128】
現行の方法の1つの問題は、標的FdO2を手動で維持するのが困難であり得ることである。加えて、患者の呼吸中等、臨床医は変動している流量に対処するために弁を絶えず調節することはできない。
【0129】
本開示は、呼吸中等に総流量が変動していても標的FdO2を一貫して実現することができるように、弁の自動制御を可能にするFdO2制御システムを提供する。このシステムは、ユーザが標的FdO2をより容易に設定すること、並びにユーザからの更なる入力を必要とすることなしに流量の変化にも関わらず標的FdO2を維持することも可能にし得る。このFdO2制御システムは、閉ループSpO2制御アルゴリズムをより効果的に実行するためにも使用され得る。
【0130】
本開示はフロー療法機器のための制御システムを提供する。制御システムは、治療セッション中のほぼあらゆる時点において瞬間FdO2が標的レベルに維持されることを確実にするように構成され得る。開ループ制御システムは、酸素制御弁等の補助気体吸気弁を通る標的流量を決定するために測定総流量及び一定の気体特性を使用する。標的弁流量は、患者の標的FdO2を実現するのに必要な流量に基づく。フロー療法機器は、弁電流を設定するために標的弁流量及び一定の想定される弁特性を使用することができる。弁電流は弁の作動を制御することができ、弁の作動はひいては補助弁を通る気体の流量を制御する。フロー療法機器は、想定される弁特性を調節するために標的弁流量及び実際の弁流量の推定を使用することができる。
【0131】
一部の構成では、フロー療法機器が複数のコントローラを使用することができる。酸素制御弁を開くための所要の最小電流を素早く見つけ出すためにコアースコントローラを使用することができ、所要の最小電流が決定されたら弁の制御を主コントローラに移すことができる。主コントローラは、呼吸全体にわたる平均FdO2に基づいて実効FdO2の測定値を求めることができる。
【0132】
コントローラは、実効FdO2の測定値を継続的に求めることができる。フロー療法機器は、2つの値の差に基づいて標的FdO2及び実効FdO2の表示を交互に行うことができる。コントローラは実効FdO2が標的FdO2に十分近いかどうかを決定することができる。装置が実効FdO2を表示しているとき、差が第1の閾値を下回る場合は標的FdO2の表示に切り替える。装置が標的FdO2を表示しているとき、差が第2の閾値を上回る場合は実効FdO2の表示に切り替える。
【0133】
フロー療法機器
図1Aにフロー療法機器10を示す。機器10は、モータ/インペラ構成の形でフロー発生器11(例えばブローワ)、任意選択的な加湿器12、コントローラ13、及び(例えばディスプレイ及びボタン、タッチスクリーン等の入力装置を含む)ユーザインタフェース14を含む主ハウジング100を含み得る。コントローラ13は機器の動作を制御するように構成することができ又はプログラムされ得る。例えばコントローラは、これだけに限定されないが患者に供給するための気体の流れ(気体流)を作り出すためのフロー発生器11を動作させること、生成した気体流を加湿し及び/又は加熱するために(もしある場合は)加湿器12を動作させること、フロー発生器のブローワ内への酸素の流れを制御すること、機器10の再構成及び/又はユーザ定義動作のためにユーザインタフェース14からユーザ入力を受けること、及びユーザに(例えばディスプレイ上で)情報を出力することを含め、機器のコンポーネントを制御することができる。ユーザは患者、医療専門家、又はこの機器を使用することに関心がある他者とすることができる。周囲空気の流れ、酸素をほぼ100%含む流れ、周囲空気と酸素との何らかの組み合わせを含む流れ等、本明細書で使用するとき「気体流」は呼吸補助装置又は呼吸装置内で使用され得る任意の気体の流れを指し得る。
【0134】
患者呼吸導管16の一方の端が、フロー療法機器10のハウジング100内の気体流出口21に結合される。患者呼吸導管16のもう一方の端が、マニホールド19及び鼻プロング18を有する非密閉式鼻カニューレ等の患者インタフェース17に結合される。加えて又は或いは、患者呼吸導管16は顔マスク、鼻マスク、鼻ピローマスク、気管内挿入管、気管切開インタフェース等に結合され得る。フロー療法機器10によって生成される気体流は、加湿し、カニューレ17経由で患者導管16によって患者に供給することができる。患者導管16は、患者へと通過する気体流を加熱するための電熱線16aを有することができる。電熱線16aはコントローラ13の制御下にあり得る。患者導管16及び/又は患者インタフェース17はフロー療法機器10の一部と見なすことができ、或いはフロー療法機器10への周辺装置と見なすことができる。フロー療法機器10、呼吸導管16、及び患者インタフェース17は共にフロー療法システムを形成し得る。
【0135】
コントローラ13は、所望の流量の気体流を発生させるためにフロー発生器11を制御することができる。コントローラ13は、補助酸素の供給を可能にするために補助酸素吸気口を制御することもでき、(もしある場合は)加湿器12が気体流を適切なレベルまで加湿し及び/又は加熱すること等ができる。気体流は患者導管16及びカニューレ17を通って患者に導かれる。患者にとって所望の治療レベル及び/又は快適レベルを得るよう気体を所望の温度まで加熱するために、コントローラ13は加湿器12内の加熱要素及び/又は患者導管16内の加熱要素16aを制御することもできる。コントローラ13は、気体流の適切な標的温度を用いてプログラムすることができ、又は気体流の適切な標的温度を決定することができる。一部の実施形態では、補助酸素及び/又は治療薬の投与を含む気体混合物組成が補助酸素吸気口を経由して与えられ得る。気体混合物組成は酸素、ヘリオックス、窒素、酸化窒素、二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、メタン、六弗化硫黄、及びその組み合わせを含むことができ、及び/又は補助気体はエアロゾル化薬剤を含み得る。
【0136】
酸素吸気ポート28は、そこを通って加圧気体がフロー発生器又はブローワに入ることができる弁を含み得る。弁は、フロー発生器のブローワ内への酸素の流れを制御することができる。弁は、比例弁又はバイナリ弁を含む任意の種類の弁であり得る。酸素源は酸素タンク又は病院の酸素供給源とすることができる。医療グレードの酸素は、典型的には純度が95%から100%である。それよりも低純度の酸素源も使用することができる。弁モジュール及びフィルタの例は、参照によりその全体を本明細書に援用する、2016年10月18日に出願され「Valve Modules and Filter」と題された米国仮特許出願第62/409,543号明細書、及び2017年4月23日に出願され「Valve Modules and Filter」と題された米国仮特許出願第62/488,841号明細書の中で開示されている。弁モジュール及びフィルタについては
図17~
図25に関して以下でより詳細に論じる。
【0137】
フロー療法機器10は、患者に供給されている気体の酸素含有量、従って患者が吸入する気体の酸素含有量を測定し制御することができる。高流量療法の間、供給される高流量の気体が患者のピーク吸気需要を満たし又はそれを上回る。つまり吸気中に装置によって患者に供給される気体体積が、吸気中に患者によって吸入される気体体積を満たし又はそれを上回る。従って高流量療法は、患者が息を吸うとき周囲空気が同伴するのを防ぐこと並びに患者の気道から呼気をフラッシュすることを助ける。供給される気体の流量が患者のピーク吸気需要を満たす又は上回る限り、周囲空気の同伴が防がれ、装置によって供給される気体は患者が吸入する気体とほぼ同じである。そのため、装置内で測定される酸素濃度であるFdO2(fraction of delivered oxygen)は、ユーザが呼吸している酸素濃度であるFiO2(fraction of inspired oxygen)とほぼ同じになり、そのためこれらの用語は等価と見なすことができる。
【0138】
流量センサ、温度センサ、湿度センサ、及び/又は圧力センサ等の動作センサ3a、3b、3cがフロー療法機器10内の様々な位置に配置され得る。患者導管16及び/又はカニューレ17上の様々な位置に追加のセンサ(例えばセンサ20、25)を配置することができる(例えば吸気管の先端に又は先端付近に温度センサ29があり得る)。適切な治療を与えるやり方でフロー療法機器10を動作させる際にコントローラを支援するために、センサからの出力がコントローラ13によって受信され得る。一部の構成では、適切な治療を与えることは患者のピーク吸気需要を満たすことを含む。機器10は、コントローラ13がセンサから信号8を受信すること、及び/又はこれだけに限定されないがフロー発生器11、加湿器12、及び電熱線16a、又はフロー療法機器10に関連するアクセサリ若しくは周辺装置を含むフロー療法機器10の様々なコンポーネントを制御することを可能にするための送信機及び/又は受信機15を有し得る。加えて又は或いは、送信機及び/又は受信機15は遠隔サーバにデータを送ることができ、又は機器10の遠隔制御を可能にすることができる。
【0139】
酸素及び周囲空気が混合を終えた後、1つ又は複数の気体組成センサ(超音波センサシステムとも呼ぶ超音波変換器システム等)を配置することによって酸素を測定することができる。測定は装置内で、供給導管内で、患者インタフェース内で、又は他の任意の適切な位置において行われ得る。
【0140】
フロー療法機器10は、患者の血中酸素飽和度(SpO2)、心拍数、呼吸数、かん流指数等の患者の1つ又は複数の生理的パラメータを測定し、一定の信号品質を与えるためのパルスオキシメータ又は患者モニタシステム等の患者センサ26を含むことができる。
センサ26は、有線接続によって又はセンサ26上の無線送信機による通信によってコントローラ13と通信することができる。センサ26は、患者の指につなぐように設計される使い捨ての接着センサであり得る。センサ26は使い捨てではないセンサでもよい。フロー療法機器と共に使用することができる、様々な年齢層に向けて及び患者の様々な位置に接続されるように設計されるセンサが利用可能である。パルスオキシメータはユーザに、典型的にはユーザの指に取り付けられるが、耳たぶ等の他の場所も選択肢としてある。
パルスオキシメータは装置内のプロセッサに接続され、患者の血中酸素飽和度を示す信号を絶えず提供する。患者センサ26は、フロー療法機器10の動作中に付加し又は交換することができるホットスワップ可能な装置とすることができる。例えば患者センサ26は、USBインタフェースを使用して又は無線通信プロトコル(例えば近距離無線通信、WiFi、又はBluetooth(登録商標)等)を使用してフロー療法機器10に接続することができる。動作中に患者センサ26が切断されると、フロー療法機器10は定められた期間にわたって自らの前の動作状態で動作し続けることができる。定められた期間の後、フロー療法機器10はアラームをトリガし、自動モードから手動モードに移行し、及び/又は制御モード(例えば自動モード又は手動モード)を完全に終了することができる。患者センサ26は、物理インタフェース又は無線インタフェースによってフロー療法機器10と通信する臨床モニタシステム又は他の患者モニタシステムであり得る。
【0141】
フロー療法機器10は高流量療法機器を含み得る。本明細書で論じる高流量療法は、流量が患者の吸気流を満たす又は上回ることを概して意図した状態で、意図的に密閉されていない患者インタフェース経由で加湿された呼吸気体の標的流量を供給する呼吸補助システムを概して指す、当業者によって理解されるその一般的な通常の意味が与えられることを意図する。典型的な患者インタフェースは、これだけに限定されないが鼻又は気管患者インタフェースを含む。成人の典型的な流量は、これだけに限定されないが約15リットル/分(LPM)から約70リットル/分以上に及ぶことが多い。小児患者(新生児、幼児、及び子供等)の典型的な流量は、これだけに限定されないが患者の体重1キログラム当たり約1リットル/分から患者の体重1キログラム当たり約3リットル/分以上に及ぶことが多い。高流量療法は、任意選択的に補助酸素及び/又は治療薬の投与を含む気体混合物組成も含み得る。高流量療法は、幾つかある一般的な名称の中で特に高流量経鼻酸素療法(NHF)、加湿高流量鼻カニューレ(HHFNC)、高流量経鼻酸素療法(HFNO)、高流量療法(HFT)、又は高流量気管療法(THF:tracheal high flow)と呼ばれることが多い。「高流量」を実現するために使用される流量は以下に挙げる流量の何れかとすることができる。例えば一部の構成では、成人患者にとって「高流量療法」は、約10リットル/分(10LPM)~約100LPM又は約15LPM~約95LPM又は約20LPM~約90LPM又は25LPM~75LPM又は約25LPM~約85LPM又は約30LPM~約80LPM又は約35LPM~約75LPM又は約40LPM~約70LPM又は約45LPM~約65LPM又は約50LPM~約60LPM等、約10LPM以上の流量で患者に気体を供給することを指し得る。一部の構成では、新生児、幼児、又は子供の患者にとって「高流量療法」は、約1LPM~約25LPM又は約2LPM~約25LPM又は約2LPM~約5LPM又は約5LPM~約25LPM又は約5LPM~約10LPM又は約10LPM~約25LPM又は約10LPM~約20LPM又は約10LPM~15LPM又は約20LPM~25LPM等、1LPMを超える流量で患者に気体を供給することを指し得る。成人患者、新生児、幼児、又は子供の患者との高流量療法機器は、約1LPM~約100LPMの流量又は上記で概説した部分範囲の何れかの中の流量で患者に気体を供給することができる。フロー療法機器10は、1LPM~約100LPMの任意の流量で100%までの任意の酸素濃度(例えばFdO2)を供給することができる。一部の構成では、流量の何れも約20%~30%、21%~30%、21%~40%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、及び90%~100%の酸素濃度(FdO2)と組み合わせることができる。一部の組み合わせでは、流量が約20%~30%、21%~30%、21%~40%、30%~40%、40%~50%、50%~60%、60%~70%、70%~80%、80%~90%、及び90%~100%の酸素濃度(FdO2)と組み合わせて約25LPM~75LPMの間にあり得る。一部の構成では、手動モードで動作しているとき、ユーザが患者に酸素を供給し過ぎるのを防ぐ安全閾値をフロー療法機器10が含み得る。
【0142】
高流量療法は、ユーザの鼻孔に及び/又は経口で若しくは気管切開インタフェースを介して施すことができる。高流量療法は、対象ユーザのピーク吸気流要件における又はそれを上回る流量でユーザに気体を供給することができる。高流量療法は上咽腔内のフラッシュ効果を発生させることができ、それにより入ってくる高気体流によって上気道の死腔がフラッシュされる。このことは窒素又は二酸化炭素の再呼吸を最小化しながら、全ての呼吸について得ることができる新鮮気体のリザーバ(reservoir)を作り出すことができる。吸気需要を満たし、気道をフラッシュすることは患者のFdO2を制御しようとするとき更に重要である。高流量療法は、例えば鼻カニューレ等の非密閉式の患者インタフェースを用いて供給することができる。鼻カニューレは、対象ユーザのピーク吸気流要件を上回る流量でユーザの鼻孔に呼吸気体を供給するように構成され得る。
【0143】
本明細書で使用するとき「非密閉式患者インタフェース」という用語は、患者の気道と患者の気道を完全に閉塞しない(フロー発生器11等からの)気体流源との間の気体流路を与えるインタフェースを指すことができる。非密閉式の気体流路は、患者の気道の約95%未満の閉塞を含み得る。非密閉式の気体流路は、患者の気道の約90%未満の閉塞を含み得る。非密閉式の気体流路は、患者の気道の約40%~約80%の閉塞を含み得る。
気道は患者の鼻孔又は口の1つ又は複数を含み得る。鼻カニューレでは気道が鼻孔を通る。
【0144】
フロー発生器又はブローワ11は、ブローワ内に周囲大気を同伴させるための周囲空気吸気ポート27を含み得る。フロー療法機器10は、そこを通って加圧気体がフロー発生器又はブローワ11に入ることができる弁につながる酸素吸気ポート28も含み得る。弁は、フロー発生器のブローワ11内への酸素の流れを制御することができる。弁は、比例弁又はバイナリ弁を含む任意の種類の弁であり得る。
【0145】
ブローワは、約1,000RPMを上回り約30,000RPMを下回る、約2,000RPMを上回り約21,000RPMを下回る、約4,000RPMを上回り約19,000RPMを下回る、又は上記の値の何れかの間のモータ速度で動作することができる。ブローワの動作は、吸気ポートを通ってブローワに入る気体を混合することができる。
混合にはエネルギが必要なので、ミキサとしてブローワを使用することは、バッフルを含む静的ミキサ等の別個のミキサを有するシステム内でさもなければ生じる圧力降下を減らすことができる。静的ミキサを有することは弁と気体圧縮センサとの間の気体流路の体積を増やすこともでき、そのことは弁電流の変更時点と酸素濃度の対応する変化が測定される時点との間の遅延を更に増やし得る。
【0146】
特定の装置によって供給されるユーザ入力及び治療に基づき、コントローラはブローワの標的出力パラメータを決定することができる。コントローラは標的出力パラメータの測定値を受信し、決定した流量と測定流量との差に基づいてブローワの速度を調節することができる。
【0147】
標的出力パラメータは流量であり得る。標的流量は一定値(例えばネーザルハイフロー)であり得る。標的流量は変動する値であり得る。一部の構成では、コントローラがブローワのモータ速度を標的流量に基づいて制御し、加えて患者の呼吸周期に基づいてモータの速度を加速又は減速することができる。標的流量は必ずしも変化しないが、流量が患者の呼吸と同期するようにコントローラは瞬間流量に振動を加えるためにモータの速度を増減させる。かかるシステムは、2017年5月17日に出願され「Flow Path Sensing for Flow Therapy Apparatus」と題された国際出願第PCT/NZ2017/050063号明細書の中で記載されている。
【0148】
標的出力パラメータは、代わりに圧力でもよい。標的圧力は一定値(例えばCPAP)であり得る。或いは標的流量は、ことによると呼吸と共に時間の点で変動する値(例えばバイレベルNIV)であり得る。これらのシナリオの両方で、総流量が一定になる可能性は低い。
【0149】
図1Bを更に参照し、フロー療法機器10内に実装することができる検知回路基板2200が示されている。検知回路基板2200は、気体流の中に少なくとも部分的に入り込むようにセンサチャンバ内に配置することができる。気体流は導管を通ってブローワ11を出て、センサチャンバ内の流路に入ることができる。流れの中の気体特性を測定するために、検知回路基板2200上のセンサの少なくとも一部が気体流の中に配置され得る。
センサチャンバ内の流路を通過した後、気体は上記の加湿器12へと出て行くことができる。
【0150】
検知回路基板2200は、プリント検知回路基板(PCB)とすることができる。或いは基板2200上の回路は、回路基板上にプリントするのではなく電子コンポーネントを接続する電線を用いて構築することができる。検知回路基板2200の少なくとも一部を気体流の外側に搭載することができる。気体流は上記のフロー発生器11によって生成され得る。検知回路基板2200は超音波変換器2204を含み得る。検知回路基板2200は、サーミスタ2205の1つ又は複数を含み得る。サーミスタ2205は気体流の温度を測定するように構成され得る。検知回路基板2200は、サーミスタ流量センサ2206を含み得る。検知回路基板2200は、別個の温度センサと共に使用される湿度限定センサ並びに湿度及び温度複合センサを含む湿度センサ、気圧を測定するためのセンサ、差圧を測定するためのセンサ、及び/又はゲージ圧を測定するためのセンサ等の他の種類のセンサを含み得る。サーミスタ流量センサ2206は、白金線等の熱線風速計及び/又は負温度係数(NTC)サーミスタ若しくは正温度係数(PTC)サーミスタ等のサーミスタを含み得る。熱せられる感温体の他の非限定的な例は、ガラス又はエポキシ封止又は非封止サーミスタを含む。サーミスタ流量センサ2206は、定電力を供給されることによって気体の流量を測定するように、又は一定のセンサ温度若しくはセンサと気体流との一定の温度差に保たれるように構成され得る。
【0151】
検知回路基板2200は、第1の部分2201及び第2の部分2202を含むことができる。第1の部分2201は気体の流路内にあるように配置することができるのに対し、第2の部分2202は気体の流路の外側にあるように配置することができる。
図1Bでは気体流の方向を矢印2203によって示す。気体流の方向は直線とすることができ、又は
図1Bに示すように曲線であり得る。
【0152】
複合ブローワ及びミキサの下流のサーミスタ2205及び/又はサーミスタ流量センサ2206の1つ又は複数の配置は、ブローワから気体流に供給される熱を考慮することができる。更に、温度ベースの流量センサを流路内に入れることは測定精度を上げることができ、その理由は流れの中に入れられるセンサが気体流と温度等の同じ条件にさらされる可能性が高まり、従って気体特性のより優れた表現を与え得るからである。
【0153】
検知回路基板2200は、気体流の中の1つ又は複数の気体の気体組成又は濃度等の気体流の気体特性を測定するために、検知回路基板の超音波変換器、トランシーバ、又はセンサを含み得る。理解されるように、任意の適切な変換器、トランシーバ、又はセンサが検知回路基板2200に搭載され得る。この構成では、検知回路基板が気体濃度を求めるための超音波又は音響波を使用する超音波変換器システム(超音波センサシステムとも呼ぶ)を含む。
図1C~
図1Fに関して様々なセンサ構成を以下に記載する。
【0154】
超音波変換器システムは、気体流の中の2つ以上の気体の相対気体濃度を求めることができる。超音波変換器システムは、本質的に窒素(N2)と酸素(O2)との2成分混合気体である補助酸素が添加された周囲空気で構成される大量の気体流の中の酸素分画を測定するように構成され得る。超音波変換器システムは、窒素(N2)及び二酸化炭素(CO2)を含む、気体流の中で周囲空気と混合した他の添加気体の気体濃度を測定するように構成され得ることも理解されよう。超音波変換器は、気体流内の気体の気体濃度を比較的高い周波数で求めることができる。例えば超音波変換器は、約1Hz~200Hz、約1Hz~100Hz、約1Hz~50Hz、及び約1Hz~25Hz等、センサの最大サンプルレートで又は最大サンプルレートよりも低い周波数で測定FdO2値を出力することができる。
【0155】
一部の構成では、検知回路基板2200が検知回路基板の両側に設けられる1対の超音波変換器を含む。超音波ビーム又はパルスの送受信によって気体流の特性を検知するために、超音波変換器の様々な代替的構成が使用され得る。
【0156】
検知回路基板2200の両側にある超音波変換器2204間の距離は測定の分解能に影響し得る。超音波変換器2204のそれぞれの間の距離が増えると比例的誤差又はフラクショナル誤差(fractional error)を減らすことができ、その理由は一般に実測長さは一定量の誤差を有し、長さが増えると測定中に生じる誤差の比率が短い長さよりも小さいからである。従って測定の全体的な不確実性が低下する。距離を増やすことは、超音波変換器2204間の音響信号により長い期間を認めるので測定の分解能及び精度も高めることができる。しかし、距離を増やすことは信号が弱くなることを招き得る。
【0157】
超音波変換器2204は、超音波変換器2204間の間隔が少なくとも部分的に流路と重なるように配置することができる。一部の構成では、超音波変換器が検知回路基板の対向端上に配置される。流路の全面が音響経路にさらされるので、音波が流路内の気体の全てを伝播する。波の平均化が流路の一区分ではなく全流路にわたって生じ得る。より長い距離にわたって平均化することは誤差を減らし、空気-酸素混合の依存性を減らす。超音波変換器は流路に対して任意の角度から気体特性を測定するように構成され得る。
【0158】
流路又はモジュールの外側ではなく流路又はモジュール内にセンサを配置することは、変換器2204がどちらも互いに対してより小さい温度範囲内で動作すること又はどちらもほぼ1つの温度(つまり気体流の温度)で動作することを可能にする。変換器は温度に敏感なので、変換器2204をほぼ均一の温度にすることは精度を高める。更に、流路に沿ってセンサを配置することは気体の速度の影響を考慮した測定及び計算を可能にし、そのため気体の速度の影響をセンサ測定値から除去することができる。
【0159】
超音波変換器システムは、超音波2成分気体検知システムとして構成される。超音波を用いた2成分気体解析は気体試料を通る音響パルスの速度を検知することに基づき、この事例では気体試料はセンサハウジングの検知流路を流れる気体流のバルク流又は一次流である。音速は気体の平均分子量及び温度の関数である。このシステムは、超音波変換器間のビーム路の間を流れる気体の温度を示すセンサ信号を受信することができる。検知した音速及び検知した温度の知識により、気体流の中の気体組成を求め又は計算することができる。具体的には、超音波を用いた2成分気体解析の分野で知られているように、経験的関係、標準アルゴリズム、又は参照表の形で記憶されるデータを参照することにより、検知流路にわたる音速の測定値を使用して2つの知られている気体の比率を推論することができる。或いは温度センサを使用しない場合、超音波変換器のビーム路内の気体流の温度の推定を2成分気体解析の計算に使用できることが理解されよう。かかる代替的実施形態では、ビーム路内の気体流の温度の推定を使用できるようにするために、気体流の温度を狭い温度帯の範囲内に調整し又は制御することができる。
【0160】
一部の構成ではフロー療法機器が湿度センサを備えることもでき、湿度センサは流路内に位置し、センサアセンブリを流れる気体流の湿度を示す湿度信号を生成するように構成される。かかる実施形態では、検知音速、及び検知温度、及び/又は検知湿度によって気体組成を求めることができる。湿度センサは相対湿度センサ又は絶対湿度センサとすることができる。一部の実施形態では、気体組成は温度センサを必要とせずに検知音速及び検知湿度に基づいて求めることができる。
【0161】
超音波変換器システムは、気体組成内の任意の知られている2種類の気体の個々の比率を測定するために使用することができる。超音波変換器システムは、窒素/酸素の混合物にほぼ等しい補助酸素と混合された空気の混合物の中の相対的な気体濃度を求めることができる。かかる2成分気体混合物では、音速をモニタし温度を考慮することによって気体の平均分子量を求めることができ、従って2つの気体の相対濃度を求めることができる。
この比率から、気体流の酸素分画又は窒素分画を抽出することができる。
【0162】
図1C~
図1Fを参照し、超音波ビーム又はパルスの送受信によって気体流を通る音速を検知するための気体組成検知システムについて超音波変換器の様々な構成を説明する。
同様の参照番号は同様のコンポーネントを表す。
【0163】
図1Cを参照し、変換器の構成2300は、互いに対向し検知流路2306の両側に配置される1対の変換器2302、2304がある構成を与え、気体流路の方向が2308で全体的に示されている。この構成では、変換器2302、2304のそれぞれが専用の送信機又は受信機として駆動され、そのため超音波パルス2310が送信機の変換器から受信機の変換器へと気体流路を横断して一方向に伝送される。図示のように変換器の対は空気流路方向2308に対して位置合わせされ(即ち互いに上流又は下流にずれておらず)、気体流路の方向とほぼ垂直なフロー交差パルスを伝送するように構成される。
【0164】
図1Dを参照し、代替的な変換器の構成2320が示されており、ここでは1対の変換器2322、2324が検知路の両側に互いに対向して設けられているが、各変換器が送信機及び受信機の両方として動作し得る(即ち変換器が超音波送信機/受信機又はトランシーバである)。この構成では、変換器の対2322、2324間で双方向の超音波パルス2326が送信され得る。例えばパルスは変換器の間で交互に行ったり来たり又は他の任意の順序若しくはパターンで送信され得る。この場合もやはり、変換器の対は気体流路の方向に対して位置合わせされ、気体流路の方向とほぼ垂直なフロー交差パルスを伝送するように構成される。
【0165】
図1Eを参照し、代替的な変換器の構成2360が示されており、ここでは検知路2306の両側から互いに対向する1対の変換器2362、2364があり、気体流路の方向又は軸が2308で全体的に示されている。この構成2360では、変換器2362、2364のそれぞれが専用の送信機又は受信機として駆動され、そのため検知流路2306内の気体流路軸2308とほぼ位置合わせされ又は平行な送信機と受信機との間のビーム路内でフロー沿い超音波パルス2366が一方向に伝送される。図示の実施形態では送信機が受信機の上流にあるが、反対の構成も使用できることが理解されよう。この構成により、検知流路内の気体流の流量を示す流量信号を与えるための流量センサが検知流路内に設けられる。検知流路内の音速は先に記載したのと同様のやり方で導出し又は求めることができ、計算される音速信号内の気体流量を除去し又は補償するために流量信号が信号処理内で利用されることが理解されよう。
【0166】
図1Fを参照し、代替的な変換器の構成2370が示されており、ここでは
図1Eのように検知路の両側から互いに対向する1対の変換器2372、2374が設けられているが、各変換器が送信機及び受信機の両方として動作することができ、即ち超音波送信機/受信機又はトランシーバである。この構成では、変換器の対2372、2374間で双方向のフロー沿い超音波パルス2376が送信され得る。例えばパルスは変換器の間で交互に行ったり来たり又は他の任意の順序若しくはパターンで送信され得る。この場合もやはり、変換器の対は気体流路軸2308に対して位置合わせされ、検知流路2306内の気体流路軸2308とほぼ位置合わせされ又は平行なビーム路内でフロー沿いパルスを伝送するように構成される。この構成により、送受信される音響パルスを処理することで音速信号の流量成分を直接導出し又は求めることができるので、別個の流量センサを必ずしも設ける必要はない。
【0167】
一部の構成では、2017年9月13日に出願され「Thermistor Flow Sensor Having Multiple Temperature Points」と題された国際出願第PCT/NZ2017/050119号明細書に記載されているように、フロー療法機器はflow beadを使用して気体の総流量を測定することができる。flow beadは流量のより正確な測定を行う利点を有し得るが、流れの突如の変化(高周波振動等)への反応が遅い場合がある。超音波変換器は流れの突如の変化を測定できるが、全体的な測定の精度が低い場合がある。一部の構成では、コントローラがflow bead及び超音波変換器からの入力を組み合わせることで総流量の最終測定値を生成し、それにより正確且つ流れの突如の変化を検出可能な流量の測定を可能にし得る。
【0168】
フロー療法機器の一部の例が、参照によりその全体を本明細書に援用する、2016年12月2日に出願され「Flow Path Sensing for Flow Therapy Apparatus」と題された国際出願第PCT/NZ2016/050193号明細書、及び2016年6月24日に出願され「Breathing Assistance Apparatus」と題された国際出願第PCT/IB2016/053761号明細書の中で開示されている。本開示の態様と共に使用可能なフロー療法機器の構成例を以下でより詳細に論じる。
【0169】
閉ループ制御
再び
図1Aを参照し、コントローラ13は、フロー療法機器の動作を制御するための閉ループ制御システムを用いてプログラムすることができ又はかかる閉ループ制御システムを実行するように構成され得る。閉ループ制御システムは、患者のSpO2が標的レベルに到達し、そのレベル又はそのレベル付近を一貫して保つことを確実にするように構成され得る。
【0170】
コントローラ13は、閉ループ制御システムを実行するためにコントローラ13によって使用され得る入力をユーザから受信することができる。標的SpO2値は、単一の値又は一連の値とすることができる。値は予め設定され、臨床医によって選択され、又は患者の種類に基づいて決定されてもよく、患者の種類は現在の苦痛、及び/又は年齢、体重、身長、性別等の患者に関する情報、及び他の患者特性を指し得る。同様に、標的SpO2は上記の任意のやり方でそれぞれ選択される2つの値であり得る。2つの値は患者のSpO2の許容値の範囲を表す。コントローラは前述の範囲内の値を標的とすることができる。標的値は範囲の中央値又は範囲内の他の任意の値とすることができ、ユーザによって予め設定され又は選択され得る。或いはこの範囲はSpO2の標的値に基づいて自動で設定することができる。患者のSpO2値がこの範囲外に出たとき、コントローラは1つ又は複数の設定された応答を有するように構成され得る。応答は、アラームを出すこと、FdO2の手動制御に変更すること、FdO2を特定の値に変更すること、及び/又は他の応答を含み得る。コントローラは1つ又は複数の範囲を有することができ、それぞれの範囲外に出るとき1つ又は複数の異なる応答が生じる。
【0171】
概してSpO2は、約80%~約100%、又は約80%~約90%、又は約88%~約92%、又は約90%~約99%、又は約92%~約96%の間で制御される。SpO2は、上述の範囲の何れか2つからの任意の2つの適切な値の間で制御され得る。標的SpO2は、約80%~約100%、又は約80%~約90%、又は約88%~約92%、又は約90%~約99%、又は約92%~約96%、又は約94%若しくは94%、又は約90%若しくは90%、又は約85%若しくは85%とすることができる。SpO2の標的は、上述の範囲の何れか2つからの任意の2つの適切な値の間の任意の値とすることができる。SpO2の標的は、定められた範囲にわたるSpO2の中央に対応し得る。
【0172】
FdO2は範囲内に制御されるように構成することができる。先に論じたように、流量が患者のピーク吸気需要を満たす又は上回る限り、機器内で測定される酸素濃度(FdO2)は患者が呼吸している酸素濃度(FiO2)とほぼ同じになり、そのためこれらの用語は等価と見なすことができる。範囲の限界のそれぞれは予め設定され、ユーザによって選択され、又は患者の種類に基づいて決定されてもよく、患者の種類は現在の苦痛、及び/又は年齢、体重、身長、性別等の患者に関する情報、及び/又は他の患者特性を指し得る。或いはFdO2の単一の値を選択することができ、範囲はその値に少なくとも部分的に基づいて決定され得る。例えば範囲は、選択されたFdO2よりも設定された量上又は下であり得る。選択されるFdO2はコントローラの開始点として使用することができる。コントローラがFdO2を範囲外に出そうとする場合、システムは1つ又は複数の応答を有し得る。それらの応答は、アラームを出すこと、FdO2が範囲外に出るのを防ぐこと、FdO2の手動制御に切り替えること、及び/又は特定のFdO2に切り替えることを含み得る。装置は1つ又は複数の範囲を有することができ、それぞれの範囲の限界に到達するとき1つ又は複数の異なる応答が生じる。
【0173】
図2を参照し、閉ループ制御システム1000の概略図が示されている。この閉ループ制御システムは2つの制御ループを利用することができる。第1の制御ループはSpO2コントローラによって実装され得る。SpO2コントローラは、標的SpO2及び/又は測定SpO2に部分的に基づいて標的FdO2を決定することができる。上記で論じたように、標的SpO2値は単一の値又は一連の許容値であり得る。値は予め設定され、臨床医によって選択され、又はクライアントの特性に基づいて自動で決定され得る。概して、標的SpO2値は治療セッションの前に又は初めに受信され又は決定されるが、標的SpO2値は治療セッション中の任意の時点において受信され得る。治療セッション中、SpO2コントローラは気体組成センサからの測定FdO2読取値、並びに患者センサからの測定SpO2読取値及び信号品質読取値も入力として受信し得る。一部の構成ではSpO2コントローラが標的FdO2を入力として受信することができ、その場合、SpO2コントローラの出力を入力としてSpO2コントローラに直接与え直すことができる。入力に少なくとも部分的に基づき、SpO2コントローラは標的FdO2を第2の制御ループに出力することができる。
【0174】
治療セッション中、SpO2及びFdO2コントローラは治療セッションが終了するまで又は自動モードから手動モードへの変更をイベントがトリガするまでフロー療法機器の動作を自動制御し続けることができる。
【0175】
FdO2制御システム
再び
図1Aを参照し、コントローラ13は、フロー療法機器の動作を制御するためのFdO2制御システムを用いてプログラムすることができ又はかかるFdO2制御システムを実行するように構成され得る。
【0176】
FdO2制御システムは、治療セッション中のあらゆる時点において瞬間FdO2が標的レベルに維持されることを確実にするように構成され得る。コントローラはFdO2を測定し、それを標的FdO2と比較し、酸素吸気弁をしかるべく調節することができる。
しかしFdO2センサが弁から有意の距離離れて位置する場合、弁が変更されるときとFdO2の対応する変化が測定されるときとの間に遅延がある。コントローラは遅延後に弁を調節し得る。しかし流量が変動している場合、コントローラは標的FdO2を継続的及びほぼ瞬間的にではなく平均的に実現可能であり得る。FdO2センサを弁に近づけることなくFdO2を継続的及びほぼ瞬間的に標的レベルに維持するために、FdO2コントローラは弁の制御に総流量の測定値を織り込むことができる。
【0177】
弁流量を調節するためのプロセス
図18及び
図19を更に参照し、酸素吸気弁の流量を調節するためのプロセスが示されている。主コントローラは、標的FdO2を実現するのに必要な弁流量をまず決定することができる。これは標的酸素濃度、酸素源の酸素濃度、周囲空気の酸素濃度、及び現在の流量に基づき得る。
【0178】
標的酸素濃度(F
target)は、ユーザによって又は本明細書に記載の閉ループSpO2制御アルゴリズムによって設定され得る。周囲空気の酸素濃度(F
air)は定数と考えることができる。概して、酸素源の酸素濃度(F
source)は定数パラメータである。一部の事例では、酸素濃度はユーザによって調節可能であり得る。現在の流量(Q)は1つ又は複数の流量センサによって測定することができる。
【数1】
【0179】
或る構成では、標的FdO2及び流量が変化するにつれて標的弁流量
【数2】
のための上記の方程式を絶えず更新することができる。
【0180】
標的弁流量が決定されると、コントローラは標的弁流量を実現するために弁を作動させるための所要の弁電流を決定することができ、所要の弁電流は弁モデルによって決定され得る。
【0181】
弁モデルは2つ以上のパラメータを使用して弁電流を決定することができる。第1のパラメータは弁利得(Igain)であり、弁利得は電流の変化と流量の変化との間の関係の線形要素を定める。一部の構成では、弁利得の値は予め設定された定数であり得る。或いは弁利得は酸素源の圧力に基づいて決定され得る。酸素源の圧力は、酸素供給源上の圧力調整器によって設定されている可能性がある流量制御弁の上流の圧力を指し得る。酸素源の圧力は酸素弁の上流の圧力センサによって測定され得る。
【0182】
第2のパラメータは弁を開くために必要な電流オフセットとすることができ(I
offset)、このパラメータ未満では弁を通る流れはない。電流オフセットは、最小値(I
offsetMin)及び最大値(I
offsetMax)を有する範囲内で変化し得る。電流オフセット値はコアースコントローラによって最初に推定され、主コントローラを使用して経時的に調節され得る。一部の実施形態では、単一のコントローラが値を推定し調節することができる。
【数3】
【0183】
次いでコントローラは弁電流(Ivalve)を決定した値に設定することができる。
標的弁流量を決定し、次いで弁電流を更新するこのプロセスは継続的に実行することができる。例えばこのプロセスは20Hzのレートで実行することができる。
【0184】
コアースコントローラ
弁が最初に起動される(例えば標的FdO2が21%から上げられる)と、コアースコントローラはまず、弁を開くために必要な電流オフセットを決定することができる。先に説明したように、弁と気体組成センサとの間の距離により、弁の位置が調節されるときとFdO2の対応する変化が測定されるときとの間に遅延がある。そのため、電流オフセットを決定するとき電流をあまりにも急いで上げることには、コントローラに標的FdO2を超過させ得るリスクがある。他方で、電流を上げるのが遅すぎると、装置が患者に標的FdO2レベルを供給し始めることができるようになるまでに更なる遅延があることを引き起こし得る。
【0185】
最初に、推定電流オフセットを最小期待値
【数4】
に設定することができる(例えば
図18を参照されたい)。次いで、弁モデルを使用して、標的弁流量に基づいて弁の電流を設定することができる。電流オフセットの推定は主コントローラによって継続的に更新され得る。しかし上記で説明したように、主コントローラは弁が閉じているとき電流オフセットを見つけるのが遅すぎて、補助酸素が供給されない期間が延びることを招き得る。
【0186】
コアースコントローラは、弁を通る気体流が検出されるまで電流オフセットの推定を反復的に高めることができる。各反復時の増加の大きさは少なくとも2つのやり方で計算することができる。一部の構成では、計算される2つの大きさの大きい方を実装することができる。
【0187】
電流オフセットは、指数関数的に増加する量(Δlexp)だけ電流オフセットを増加することで各時間ステップにおいて調節することができる。或いは電流オフセットは、最小量(Δlmin)だけ電流オフセットを増加することで各時間ステップにおいて調節することができる。この最小量は決定済みの標的弁流量に比例し得る。標的弁流量が高いことは、標的FdO2を超過するリスクなしに電流オフセット推定のより大きい変更を加えることができることを意味し得る。
【0188】
コアースコントローラの各反復時に、コアースコントローラは上記の2つの値の大きい方の分だけ電流オフセット推定を増加することができる。一部の構成では、コントローラはΔl
minの分だけ弁を増加することから開始し、次いでΔl
exp>Δl
minになるとΔl
expを使用することに切り替えることができる。
【数5】
【0189】
但し、Δtはコントローラの時間ステップであり、ΔIincreaseはΔIexpにおける増加分率である。
【0190】
コアースコントローラは、標的FdO2が最初に変更されるとき又は標的FdO2が周囲値から増加値に変更されるとき(例えばFiO2target=21%→FiO2target>21%)は常に起動され得る。コアースコントローラは、ユーザが閉ループSpO2制御に入るときも起動され得る。毎回の起動後に電流オフセットが最小電流オフセットにリセットされないように、治療セッション中に決定される電流オフセット値(Ioffset)の推定はコアースコントローラによって記憶することができる。
【0191】
弁からの気体流が検出されると、フロー療法機器はコアースコントローラの使用から主コントローラの使用へと切り替えることができる。弁からの気体流は、気体組成センサを使用してFdO2を測定することによって明らかにすることができる。測定FdO2が周囲レベルを閾値の分だけ上回ると弁が開いていると決定することができる。閾値はセンサの誤差に基づき得る(例えば測定FdO2値において最大3%の誤差を有する気体組成センサでは、FdO2が24%を上回る場合に弁が開いていると決定される)。
【0192】
弁モデルの更新
FdO2を標的レベルに保つために、
図19に関して説明するプロセスは弁モデルの精度に依拠する。この精度を改善するために、主コントローラはモデルの精度を継続的に評価し、電流オフセット(I
offset)をしかるべく調節することができる。弁モデルを更新するためのプロセスは
図20に関して説明する。このプロセスは弁電流(I
valve)を設定するためのプロセスよりも遅いレートで行うことができる。例えば一部の構成では、電流オフセットは3Hzのレートで調節することができる。弁モデルは、例えば予期される呼吸数の範囲、予期される流量振動幅等の様々な設定若しくはパラメータ及び/又は他の設定若しくはパラメータに応じて様々なレートで更新することができる。
【0193】
指数関数フィルタリング
電流オフセットを調節するために、コントローラは平均標的弁流量を実際の平均弁流量の推定と比較することができる(これらの値の両方の平均は1回の呼吸にわたる平均である)。これらの平均を得るために、時定数τ
filtを有する指数関数フィルタを使用して幾つかのパラメータを時間と共にフィルタすることができる。τ
filtは、患者の1回の呼吸内の測定流量における変動がフィルタで除去されるように選ぶことができる。主コントローラの各反復時に以下のパラメータのフィルタ値を更新することができる:
【数6】
【0194】
本明細書の全体を通して、患者の呼吸にわたる平均値を表すパラメータを示すためにマクロンを使用する。
【0195】
平均標的弁流量
上記のフィルタ値の更新後、主コントローラは平均標的弁流量及び実際の平均弁流量の推定を計算することができる。
【数7】
【0196】
平均標的弁流量を求めるための上記の方程式は瞬間弁流量を求めるための方程式と同様であり、唯一の差は特定の値が同じパラメータのフィルタ済みバージョンによって置換されていることである。
【0197】
平均弁流量
モデルを使用して平均弁流量を推定することができる。平均弁流量モデルは弁を通る流れを推定することができる。モデルは酸素が周囲空気と混合し、センサに到達するのにかかる時間を考慮に入れることができる。一部の構成では、このモデルは一次モデル、移流拡散方程式、又はナビエストークス方程式等の物理的に導出される微分方程式であり得る。このモデルはニューラルネットワーク等の機械学習アルゴリズムを使用して数値的に得ることができる。或る構成では、以下の方程式によって平均弁流量
【数8】
を計算することができる。
【数9】
【0198】
但しFmeasuredは気体組成センサによって測定される酸素分画であり、Fcontrolは測定酸素分画が向かっている並びに現在の弁の位置及び現在の流量から生じる酸素分画であり、Vは弁出口と気体組成センサとの間の実効体積である。弁の位置が調節されるときと気体組成センサがFmeasuredの対応する変化を検出するときとの間の遅延により、第1の方程式ではFmeasuredの代わりにFcontrolが使用される。弁流量(Qvalve)を推定するとき、弁電流の変化とFmeasuredの対応する変化との間の遅延に対処するためにFmeasuredの代わりにFcontrolが使用され得る。これは第2の方程式の中の微分項を使用することによって計算することができる。そのためFcontrolはFmeasuredが何になるのかの予測として機能することができる。第2の方程式で認めることができるように、気体組成センサが弁出口と大いに近い場合、Vはゼロに近くなり、FcontrolはFmeasuredとほぼ同じになる。
【0199】
次いで
【数10】
と
【数11】
との差をコントローラに入力することができ、コントローラはI
offsetの推定に対する変更を出力することができる。
【数12】
と
【数13】
とが非常に似ている場合、それはI
offsetの推定がほぼ正しく、そのため小さな変更しか加えられないことを示す。逆に
【数14】
と
【数15】
とが大いに異なる場合、それはI
offsetが正しい値から離れており、そのためより大きい変更が加えられることを示す。
【0200】
コントローラによって使用される係数は、指数関数フィルタに使用される時定数と反比例し得る。
【0201】
様々な治療の考慮
FdO2コントローラは、特定の装置によってどの治療が供給されるのかに応じてフロー療法機器の制御を変更することができる。或る構成では、時定数は治療に基づいて指数関数フィルタリングのために設定することができ、それはひいては本明細書に記載のコントローラの係数を設定し得る。
【0202】
各治療に使用される時定数は、前述の治療に関する流れの典型的な変動に基づいて設定することができる。古いデータをより速く消滅させることができるように、より一貫した流量を伴う治療は小さい時定数を有し得る。このことはひいてはコントローラの大きい係数をもたらすことができ、そのためIoffsetの値はより大きい増分で調節される。
総流量がより一貫している場合、電流オフセットをより素早く調節することができる。
【0203】
逆に、古いデータをより遅く消滅させるように、より一貫していない流量を伴う治療は小さい時定数を有し得る。このことはひいてはPIコントローラの小さい係数をもたらすことができ、そのためIoffsetの値はより小さい増分で調節される。総流量がより一貫していない場合、電流オフセットをより遅く調節することができる。
【0204】
加えて、フィルタの時定数(ひいては係数)は特定の治療に関して設定される流量に基づいて調節され得る。概して、流量が大きいことは結果として生じる流量がより一貫するのでフィルタの時定数が小さくなることをもたらし、弁と気体組成センサとの間の遅延が小さくなる。
【0205】
標的酸素アラーム
標的FdO2を実現するために弁を制御することに加え、主コントローラは標的FdO2を実現できるかどうかを継続的に評価することもできる。主コントローラはFdO2アルゴリズムのための精度閾値を設定することができる。精度閾値は標的FdO2の値と共に増加し得る。
【0206】
酸素が高過ぎると決定される場合はアラームを生成することができる。一部の構成では、以下の2つの基準が少なくとも定められた期間にわたって(例えば8秒以上)継続的に満たされる場合にアラームが生成され、2つの基準とはつまり:(i)測定FdO2が精度閾値よりも大きい量だけ標的FdO2を上回ること、及び(ii)推定電流オフセットがその最小期待値にあることである。期間は定められた任意の期間とすることができる。
【0207】
次いで測定FdO2が定められた期間にわたって(例えば2秒よりも長く)閾値を下回る場合、酸素が高過ぎるという決定及び対応するアラームがクリアされる。
【0208】
以下の2つの基準が定められた期間にわたって(例えば5秒以上)継続的に満たされる場合は酸素が低過ぎると決定されアラームが生成され、2つの基準とはつまり:(i)測定FdO2が精度閾値よりも大きい量だけ標的FdO2を下回ること、及び(ii)推定電流オフセットがその最大期待値にあることである。
【0209】
次いで測定FdO2が定められた期間にわたって(例えば2秒よりも長く)閾値を上回る場合、酸素が低過ぎるという決定及び対応するアラームがクリアされる。各閾値が対応するアラームをオン又はオフにする期間は定められた任意の期間とすることができ、他の閾値と異なっても同じでもよい。
【0210】
表示用の酸素フィルタリング
コントローラは実効FdO2の測定値を継続的に求めることができる。実効FdO2は、患者に供給される総酸素量の測定値をフィルタし、その値を患者に供給される全ての気体のフィルタ済みの測定値で除算することによって計算することができる。
【数16】
【0211】
次いでコントローラは、標的FdO2及び実効FdO2の表示を交互に行うことができる。実効FdO2が標的FdO2に十分近い場合、この標的値が定められた閾値の範囲内で満たされているので単純に標的FdO2を表示するのが好ましい。或いは、実効FdO2が標的FdO2と著しく異なる場合は実効FdO2が代わりに表示される。その場合、標的FdO2が定められた閾値の範囲内になく、患者に供給されているFdO2の正確な表現だと見なされない可能性がある。
【0212】
装置が低圧モードで動作している(例えば装置が低圧ポートを介して酸素を供給されるようにセットアップされる)場合、標的FdO2は21%だと見なすことができる。
【0213】
コントローラは、2つの値の差を取ってそれを閾値と比較することにより、実効FdO2が標的FdO2に十分近いかどうかを決定することができる。装置は、実効FdO2を表示している場合、差が第1の閾値を下回る場合に標的FdO2の表示に切り替える。装置は、標的FdO2を表示している場合、差が第2の閾値を上回る場合に実効FdO2の表示に切り替える。第2の閾値は第1の閾値を上回り得る。例えば第1の閾値を0.5%とすることができ、第2の閾値を2.5%とすることができる。第1の閾値は第2の閾値と同じでもよい。例えば第1の閾値及び第2の閾値を2.5%とすることができる。
【0214】
加えて又は或いは、第1の及び/又は第2の閾値は、高/低酸素アラームに使用される精度閾値に基づいて少なくとも部分的に決定することができる。精度閾値を使用することは、フロー療法機器が標的FdO2も表示しながら高/低酸素アラームを生成しないことを確実にするのを助け得る。
【0215】
酸素保存プロセス
再び
図1Aを参照し、コントローラ13はフロー療法機器10の動作を制御するための酸素保存プロセスを用いてプログラムすることができ又はかかる酸素保存プロセスを実行するように構成され得る。酸素保存プロセスは、本明細書で開示する閉ループ制御システム及び開ループ制御システムと共に機能することができる。酸素保存プロセスは、患者のSpO2が標的レベルに到達し、そのレベル又はそのレベル付近を一貫して保つことを確実にしながら酸素を保存するように構成され得る。
【0216】
本明細書に記載の酸素保存プロセスは、吸入中に患者が得る実効FdO2を減らすことなしに総酸素使用量を減らす。酸素保存プロセスは、呼気期間の少なくとも一部の間のFdO2が標的FdO2を下回るように酸素流量制御弁を調節することができる。
【0217】
患者に供給されるFdO2が吸気期間のためにFdO2標的レベルに素早く戻されるように、酸素保存プロセスは呼気の終了時及び/又は吸気の開始時に酸素流量制御弁を調節してFdO2の標的を上回る増加した酸素富化気体量を供給することができる。FdO2が再びFdO2標的レベルに戻されるように、酸素保存プロセスは酸素流量制御弁を下方に調節することができる。
【0218】
酸素保存プロセスの利点は、患者に与えられる治療に著しく影響を及ぼすことなしにフロー療法機器によって使用される補助気体(例えば酸素)の量を減らすことである。酸素保存プロセスは、吸気期間中に標的FdO2を実現することによって所望の治療を引き続き提供しながら、呼気期間中に酸素を保存できるようにする点で有益であり得る。酸素保存プロセスは周囲環境に消散される酸素量を減らし、使用酸素量が減ることはユーザにとってのコストを減らすのでやはり有益である。酸素保存プロセスは、ユーザが酸素キャニスタ等の酸素源を補充し又は交換しなければならない頻度も減らし得る。
【0219】
呼吸期間の決定
本明細書で使用するとき、「呼吸期間」は吸気期間及び呼気期間で構成される患者の1回の完全な呼吸周期を指すことができる。吸気期間は吸気の全周期を対象として含み、呼気期間は呼気の全周期を対象として含む。
【0220】
本明細書で使用するとき「呼吸相」は吸気期間又は呼気期間内の離散時間位置を指すことができる。
【0221】
治療の有効性を減らすことなく酸素を保存するために、酸素保存プロセスは各吸気期間の開始までに患者インタフェースにおけるFdO2を標的FdO2レベルに戻しながら、呼気中に供給される酸素を減らすことができる。それを行うために、コントローラ13は患者の呼吸周期のモデルを生成することができる。コントローラ13は、フロー療法機器10のコンポーネントを制御し及び/又はかかるコンポーネントから信号を受信することができる。コントローラ13は、患者の呼吸周期を解析し、患者の呼吸モデルを決定するように構成され得る。例えばコントローラは患者の呼吸期間を表す波形を生成することができる。コントローラ13は、患者インタフェースを出て行く気体の瞬間酸素分画を推定することもできる。
【0222】
図21は、高流量システムにおける呼吸中の測定フローの波形2100を示す。高流量システムでは、気体の流量を相対的に一定のレベルに保つことができる。しかしブローワの制御アルゴリズムの速度により、依然として僅かな流れの変動、とりわけ吸気中の流量の増加及び呼気中の流量の減少があり得る。
【0223】
コントローラ13は流量の変動を解析することによって呼吸期間及び/又は呼吸相を求めることができる。呼吸期間及び/又は呼吸相は測定の組み合わせを使用して求めることができる。例えば流量及びモータ速度の組み合わせを解析することにより、回路の抵抗の推定を計算することができる。抵抗は患者の呼吸と共に周期的に変動する。患者の呼吸数を解析し求めるためのシステム及び方法の実施形態の例が、参照によりその全体を本明細書に援用する国際公開PCT/IB2018/059195号明細書及び国際公開PCT/NZ2017/050063号明細書の中で更に記載されている。
【0224】
患者の呼吸期間は、周波数解析(FFT等)又は時間領域解析(ゼロ交差等)によって求めることができる。FdO2の制御はトリガリングのシステムに基づいて行うことができ、コントローラ13は吸気と呼気との間の(及びその逆の)移行の1つ又は複数の指示を識別し、その指示を使用してFdO2の調節を開始することができる。
【0225】
一部の実施形態では、コントローラ13は患者の呼吸周期が一貫していると決定されるまで待ち、その後患者の呼吸期間に対応する制御周期に基づいて酸素保存モードを実行し始めることができる。次いでコントローラは、患者の呼吸期間が変化した場合は制御周期を調節し又は一時停止することができる。
【0226】
酸素の保存は患者の呼吸周期の特徴付けの正確さに依存するので、コントローラは患者の呼吸周期の特徴付けが一定の信頼度閾値を満たす場合に酸素保存モードの動作を実行するように構成され得る。信頼度閾値は、患者が十分に高い1回換気量で一貫して呼吸している場合に満たされる可能性が高まる。患者の呼吸周期を確信的に特徴付けることができない状況では、コントローラ13は酸素保存モードの代わりに既定の治療モードを実行することができ、本明細書で更に説明するように既定の治療モードではコントローラは患者の呼吸周期のほぼあらゆる時点において標的FdO2を満たすように構成される。
【0227】
移流拡散計算
酸素保存プロセスが経時的に相対的に一貫したFdO2で気体流を供給している場合、FdO2は呼吸回路の長さにわたって一貫していると見なすこともできる。しかしFdO2が経時的に変動している場合、特定の瞬間におけるFdO2は呼吸回路内の様々な位置において異なり得る。具体的には、装置内の気体組成センサによるFdO2の測定は患者インタフェースにおけるFdO2と一致しない場合がある。患者に正しいFdO2が供給されていることを確実にするために、装置において測定されるFdO2に基づいて患者インタフェースにおけるFdO2の推定を経時的に計算することができる。
【0228】
装置において測定されるFdO2と患者インタフェースにおけるFdO2との差を招く2つの主な要因がある。第1の要因は、患者インタフェースにおけるFdO2値のピーク及びトラフをもたらす2つの位置間の気体の移動によって引き起こされる遅延であり、かかるピーク及びトラフは装置におけるFdO2測定の対応するピーク及びトラフによって時間領域内でオフセットされ得る。第2の要因は、気体が回路を移動するとき一定量の混合が生じ、呼吸回路内の一層下流の位置において酸素濃度の波形の振幅の減少が引き起こされることである。
【0229】
これらの要因はどちらも移流拡散方程式を使用して対処することができる。移流拡散方程式は、前述の遅延に対処するための移流項及び前述の混合に対処するための拡散項を含む。方程式(1)は移流拡散方程式の実施形態の一例である:
【数17】
【0230】
クランク-ニコルソン時間ステッピングと共に風上差分法を使用することによって等、移流拡散方程式は数値的に解くことができる。或いは移流拡散方程式は移流方程式のための低精度の数値スキームを用いて解くことができ、拡散項は無視され、代わりにこのスキームから生じる「数値拡散」から得られる。この第2の方法の精度は低い可能性があるが、計算能力を節約することができる。
【0231】
図22は、呼吸回路内の酸素含有量を求めるための上記の方法を用いた解析の結果の一例を示すチャート2210の例を示す。Airvo2212は、呼吸回路内の気体組成センサにおける測定酸素パーセンテージを与える。ホース端2214は、患者インタフェースにおける測定酸素パーセンテージを与える。移流拡散2216及びチープ拡散2218は、患者インタフェースにおける酸素パーセンテージの計算された推定を与える。チャート2220は同じ期間にわたる測定流量を示す。
【0232】
弁制御
コントローラ13は、患者の呼吸周期の呼気期間及び吸気期間の開始を推定するために、及び各期間中に所望のFdO2が供給されるようにそれらの期間の開始前に弁を調節するために使用可能な弁制御アルゴリズムを使用することができる。とりわけコントローラ13は吸気期間から呼気期間への移行を推定し、吸気が完了したら患者インタフェースにおけるFdO2が下がり始めるように弁を調節することができる。同様に、コントローラ13は呼気期間から吸気期間への移行を推定し、吸気が開始するときまでに患者インタフェースにおけるFdO2が標的レベルに戻るように弁を調節することができる。
【0233】
最優先事項は患者に標的FdO2を供給することであり、可能な限り多くの酸素を保存することは二番目の優先事項である。そのため、患者インタフェースにおけるFdO2が吸気期間の開始時に標的レベルにあり、吸気が完了するまで下がり始めないことを伴ってFdO2のランプアップ及びランプダウンが呼気期間中に起こり得る。
【0234】
弁を調節することと装置におけるFdO2の変化を測定することとの間には遅延があり、患者インタフェースにおいて変化が生じるまでには更なる遅延がある。コントローラは呼気の開始を予測し、弁をしかるべく調節することによって遅延を補償することができる。一実施形態では、呼気の開始は或る呼気期間の開始を観察し、患者の呼吸数の推定を使用することによって次の呼気期間の開始時間を予測することによって推定される。
【0235】
現在の流量に基づき、コントローラは弁と患者インタフェースとの間の気体の移動時間を計算することができる。コントローラはその移動時間を使用して、或る呼吸周期の経過後にFdO2を減らすときを決定することができる。例えば一例では、患者が20回の呼吸/分の呼吸数を有する場合、1回の呼吸周期は3秒となる。移動時間が0.5秒である場合、コントローラは次の吸気期間の終了時にFdO2を下げ始めるために呼気期間の開始から2.5秒後に弁を止めることができる。
【0236】
FdO2を上げることはそれよりも僅かに複雑な課題をもたらし、その理由は吸気期間の開始までに患者インタフェースにおけるFdO2が標的レベルにあり又は標的レベルに近いことをコントローラが確実にしなければならないからである。それを行うためにコントローラは、患者インタフェースにおけるFdO2が呼気の開始後に標的レベルに戻る期限を決定する。この期限は、呼気の開始後1~1.5呼吸周期から移動時間を差し引いたものに設定することができる。1.5呼吸周期から移動時間を差し引いたものに近く期限を設定することは節約される酸素量を増やすが、患者インタフェースにおけるFdO2が吸気の開始に間に合うように標的レベルにない可能性がある確率も高める。期限は最初は控えめな値(例えば1呼吸周期から移動時間を差し引いたもの付近)に設定し、標的FdO2が吸気の開始までに患者インタフェースに供給されているとコントローラが決定する場合はその上限に近づけることができる。使用中、期限は約1.4呼吸周期から移動時間を差し引いたものであり得る。
【0237】
標的FdO2閾値が満たされていることを確実にするために、コントローラは標的FdO2を期限までに患者インタフェースに供給するように弁を調節することができる。システム内の酸素の拡散により、弁制御信号において階段状変更を実行してもFdO2が或る期間にわたってランプアップする。そのためコントローラは、患者インタフェースにおけるFdO2がFdO2標的閾値までランプアップするのにかかる計算済みの時間に基づき決定した時間において弁を調節することによって拡散を補償することができる。期限の前の期間をブースト期間と呼ぶことができる。
【0238】
FdO2がより素早くランプアップされる場合、各呼気期間のより長い部分にわたって酸素を切れるようになるので保存される酸素量が多くなり得る。ブースト期間中に弁のより高い標的酸素流量を設定することにより、FdO2はより素早くランプアップされ得る。この増加した標的酸素流量は、標的総流量において標的FdO2を実現するために使用される酸素流量を上回り得る。
【0239】
図23を参照し、酸素保存モードの制御スキームの一例を示す。図示の実施形態では、コントローラは酸素保存モード中の動作に関して3つの標的レベルを計算することができる。第1のレベル2330は患者の標的FdO2である。患者の標的FdO2は、開ループ制御及び/又は閉ループ制御等の本明細書に記載のプロセスを使用して患者のために決定することができ、又はユーザによって決定される。第2のレベル2340は第1のレベルよりも低い。第2のレベル2340は低レベル又は低期間と呼ぶことができる。好ましくは、酸素を保存するために弁が完全に閉じられる。第3のレベル2350は第1のレベルよりも高い。第3のレベルはブーストレベル又はブースト期間と呼ぶことができる。
【0240】
ブーストレベルは、標的FdO2 2330の倍数としての標的酸素流量の増加であり得る。標的酸素流量は、酸素保存モードが実行されていないとき標的FdO2を実現するために使用される酸素流量であり得る。図示の例では、標的酸素流量がブースト期間中に倍増されている。例えば標的FdO2レベル2330が40%である場合、ブーストレベル2350のFdO2は59%になる。標的酸素流量の増加はシステムの最大酸素流量までの任意の値とすることができ、その理由は酸素流量を最大酸素流量よりも高く増加することがFdO2を増加しないからである。例えば標的FdO2レベル2330が80%である場合、ブーストレベル2350のFdO2は100%(又はO2源のO2濃度が100%未満の場合は100%未満)であり得る。
【0241】
最大量の酸素を常に供給するのではなくブースト期間中に酸素を増加するために増倍係数を使用することは標的を超過するリスクを減らすのに役立つことができ、予測していたよりも吸気が早く開始する場合に流量の更なる調節を可能にし得る。
【0242】
ブースト期間2350は期限まで及ぶことができ、その後FdO2は標的レベル2330に戻ることができる。ブースト期間2350の開始は、計算されたブースト期間の長さに基づいて決定され得る。計算されたブースト期間の長さは一連の要因に依存し得る。一部の実施形態では期間の長さが以下に比例する:
酸素が切られる時間の長さ(低期間2340)、
第1のレベル2330における酸素流量と第2のレベル2340における酸素流量との差、及び
吸気口と患者インタフェースとの間の呼吸回路の体積。
【0243】
ブースト期間2350の長さは、第1のレベル2330における酸素流量と第3のレベル2350における酸素流量との差、及び標的総流量に反比例し得る。
【0244】
ブースト期間2350の長さは、発生している可能性がある拡散の更なる推定量に基づいて僅かに調節され得る。この推定は総流量に基づき得る。
【0245】
図23に示すチャート2320では、コントローラの標的は制御アルゴリズムによって設定されるFdO2の標的であり、低期間2340では酸素弁が完全に閉じられ、ブースト期間2350におけるFdO2は第1のレベル2330のFdO2の2倍である。Airvo生測定は気体組成センサからの信号であり、管端は移流拡散方程式を使用して計算される推定FdO2である。呼吸FiO2は実効FdO2であり、実効FdO2は吸気期間中に供給される総酸素量を取り、それを同じ期間にわたって供給される総気体体積で除算することによって計算される。チャート2310は同じ期間にわたる測定流量を示す。
【0246】
図23の例は、20BPMの呼吸数及び40LPMの標的流量を有する患者に関するものである。実効FdO2はおおよそ標的レベルにあり、使用される酸素は約15%削減されている。
【0247】
代替的実施形態では、ブースト期間の標的酸素流量を標的総流量と同じ値に設定し、それによりブースト期間中に最大FdO2をもたらすことができる。この形態は患者インタフェースにおけるFdO2のあり得る最も急なランプを可能にするが、標的FdO2を超過するリスクも高める。
【0248】
酸素保存の適用性の決定
コントローラ13は、酸素保存モードの動作を実行するのに条件が適しているかどうかの決定を行うことができる。コントローラは、酸素保存モードを実行するかどうかを1つ又は複数の要因に基づいて決定することができる。加えてコントローラは、酸素保存モードに入るかどうか又は酸素保存モードを終えるかどうかを決定するために様々な要因のそれぞれを動作中に継続的にモニタすることができる。
【0249】
酸素保存モードは患者の呼吸周期の正確な解析に依拠するので、1つの要因は患者の呼吸周期のモデリングが十分正確かどうかである。コントローラは、患者の呼吸周期のモデリングに関する定められた信頼度閾値を解析が満たす場合にのみ酸素保存モードを実行することができる。コントローラは患者の呼吸周期のモデルに関連する信頼度メトリクを計算し、計算した信頼度メトリクを信頼度閾値と比較することができる。
【0250】
別の要因は保存される酸素の量である。酸素保存モードは低期間中に酸素を保存するが、ブースト期間中は増加した酸素量も使用する。コントローラはこれらの2つの値を比較し、低期間中に予測される酸素の節約量がブースト期間中の酸素使用の増加を上回る場合にのみ酸素保存モードを実行することができる。或いはコントローラは、使用される酸素の総削減量が定められた閾値を満たす場合にのみ酸素保存モードを実行することができる。
【0251】
別の要因は標的流量及び呼吸数の解析に基づき得る。移流拡散方程式の移流項において認められるように、装置と患者インタフェースとの間の移動時間は低い流量が使用される場合に増加する。そのため、FdO2を制御することは高流量の方が簡単になる。加えて、患者の呼吸数が増加すると各呼吸周期の長さが短くなり、それを受けてコントローラは様々な制御期間をより頻繁に移行しなければならず、吸気及び呼気の移行の予測がより正確でなければならない。
【0252】
酸素保存は、とりわけ高呼吸数と組み合わさった低流量において2つの主な理由から一層困難になる。まず移動時間が呼吸周期の長さに関して非常に長くなり始め、そのため吸気及び呼気の移行に更に先立って弁の変更を行う必要があり、そのことは誤差の更なる可能性を生じさせる。第2に、FdO2の頻繁な移行は弁によって実現可能だが、気体の流量が低いことは患者インタフェースに到達する前に混合が増加することを可能にし、そのため結果として生じるFdO2の振動が小さくなる。コントローラが吸気期間中に標的FdO2を維持する場合、保存可能な酸素量は非常に少なくなる。
【0253】
コントローラは、標的流量と患者の呼吸数との間の関係に部分的に基づいて酸素保存モードを実行するかどうかを更に決定することができる。例えば酸素保存モードの実行は、流量と呼吸数との比率が閾値を上回ることに依存し得る。
【0254】
酸素保存モードの実行
図24は、治療セッション中に酸素保存モードを実行するための流れ図の一実施形態を示す。プロセス2400は、フロー療法機器の動作を制御するように構成されるコントローラ又は制御システムによって実装され得る。例えばプロセス2400は、フロー療法機器10のコントローラ13によって全て又は部分的に実装され得る。
【0255】
ブロック2410で、コントローラが患者の呼吸周期を解析することができる。コントローラ13は解析に基づいて患者の呼吸モデルを決定するように構成され得る。例えばコントローラは、患者の呼吸期間を表す波形を生成することができる。呼吸期間及び/又は呼吸相は、測定値の組み合わせを使用して求めることができる。患者の呼吸周期は、周波数解析(FFT等)又は時間領域解析(ゼロ交差等)によって求めることができる。
【0256】
ブロック2420で、コントローラが治療セッションの標的FdO2レベルを決定する。これを第1のレベルと呼ぶことができる。患者の標的FdO2レベルは、開ループ制御及び/又は閉ループ制御等の本明細書に記載の様々なプロセスを使用して患者のために決定することができ、又はユーザによって決定される。標的FdO2レベルは、気体の総流量に基づいて標的気体組成を実現するのに必要な補助気体(例えば酸素)の流量を表し得る。
【0257】
ブロック2430で、コントローラが低FdO2レベルを決定する。低FdO2レベルは第2のレベルであり、標的FdO2レベルよりも低い。低FdO2レベルは周囲酸素レベルであり得る。低FdO2レベルは補助気体(例えば酸素)の流れを完全に絶つことによって実現することができる。例えばコントローラ13は弁を完全に閉じるように構成され得る。
【0258】
ブロック2440で、コントローラがブーストFdO2レベルを決定する。ブーストFdO2レベルは第3のレベルであり、標的FdO2レベルよりも高い。ブーストレベルは、標的FdO2の倍数としての標的酸素流量の増加であり得る。例えばブーストレベルは標的FdO2レベルの2倍であり得る。標的酸素流量の増加は、システムの最大酸素流量までの任意の値であり得る。常に最大量の酸素を供給するのではなくブースト期間中に酸素を増加するために倍数因子を使用することは標的を超過するリスクを減らすのに役立つことができ、予測していたよりも吸気が早く開始する場合に流量の更なる調節を可能にし得る。
【0259】
ブロック2450で、コントローラが呼吸期間中の各レベルのタイミングを決定する。
コントローラは、標的FdO2期間、低FdO2期間、及びブーストFdO2期間の持続時間及びタイミングを決定することができる。各期間は呼吸期間の一部に及ぶことができる。
【0260】
ブロック2460で、コントローラは、患者の呼吸周期の決定済みのレベル及びタイミング特性並びに各レベルの決定済みの特性に基づいて弁の動作を制御する。コントローラ13は、各期間中に所望のFdO2が供給されるように決定済みの期間に基づいて動作中に弁を調節することができる。とりわけコントローラ13は吸気期間から呼気期間への移行を推定し、吸気が完了したらFdO2が標的FdO2レベルから低FdO2レベルまで下がるように弁を調節することができる。コントローラ13は低FdO2レベルからブーストFdO2レベルへの移行を明らかにすることができ、FdO2が低FdO2レベルからブーストFdO2レベルに移るように弁を調節することができる。コントローラ13は呼気期間から吸気期間への移行を推定することができ、吸気が始まるときまでにFdO2がブーストFdO2レベルからFdO2標的レベルに戻るように弁を調節することができる。
【0261】
加えて、コントローラは患者の呼吸周期を継続的に解析することに基づいて様々なレベル及びタイミング特性を継続的にモニタし調節することができる。コントローラは、酸素保存モードの継続的実行に条件が適しているかどうかの判断を下すことができる。動作モードを移行するかどうかを決定するための要因の一実施形態を
図25に記載するプロセスに関して更に説明する。
【0262】
酸素保存モードを選択するためのプロセス
図25は、治療セッション中に酸素保存モードを使用するかどうかを決定するプロセスの流れ図の一実施形態を示す。プロセス2500は、呼吸器の動作を制御するように構成されるコントローラ又は制御システムによって実装され得る。例えばプロセス2500は、呼吸器10のコントローラ13によって全て又は部分的に実装され得る。
【0263】
ブロック2510で、コントローラが患者の呼吸周期を解析することができる。酸素保存プロセスは、患者の呼吸周期の特徴付けが一定の信頼度閾値を満たす場合に酸素保存プロセスを実行するように構成され得る。酸素保存モードは患者の呼吸周期の正確な解析に依拠する。コントローラは、解析が患者の呼吸周期をモデリングするための定められた信頼度閾値を満たす場合にのみ酸素保存モードを実行することができる。コントローラは患者の呼吸周期のモデルに関連する信頼度メトリクを計算することができる。
【0264】
ブロック2520で、コントローラは信頼度メトリクを信頼度閾値と比較することにより、酸素保存モードを実装するための信頼度閾値が満たされているかどうかを決定することができる。患者の呼吸周期を確信的に特徴付けることができず、信頼度閾値が満たされない場合、酸素保存プロセスは標準治療モードで動作することができ、このプロセスはブロック2550に進むことができる。閾値が満たされている場合、このプロセスはブロック2530に進む。
【0265】
ブロック2530で、コントローラは酸素保存モードにおける動作の動作特性を決定することができる。動作特性は酸素保存特性を含み得る。酸素保存特性は、酸素保存モードで動作することによってどの程度の酸素が保存されるのかを決定するために使用することができる。酸素保存モードは低期間中に酸素を保存し、ブースト期間中には増やした酸素量も使用する。システムは、予測される酸素保存量を評価するためにこれらの2つの値を求め比較することができる。動作特性は標的流量及び患者の呼吸数を含み得る。酸素保存は、とりわけ多い呼吸数と組み合わさった低流量において一層困難であり得る。コントローラは流量と呼吸数との比率を決定することができる。
【0266】
ブロック2540で、コントローラは酸素保存モードを実装するための動作閾値が満たされているかどうかを決定することができる。コントローラは、酸素の総削減量が酸素保存閾値を満たすかどうかを決定するために酸素保存特性を酸素保存閾値と比較することができる。加えて又は或いは、流量及び呼吸数の分配量(ration)を別個の閾値と比較することができる。定められた閾値の何れかが満たされていない場合、このプロセスはブロック2550に進む。閾値が満たされている場合、このプロセスはブロック2560に進む。
【0267】
ブロック2550で、コントローラがシステムを標準モード(本明細書でより詳細に説明する)で動作させ、標準モードではコントローラは患者の呼吸周期のほぼあらゆる時点において標的FdO2を満たすように構成される。コントローラが標準モードで動作し続けるか又は酸素保存モードに移行するかを決定するために、コントローラはブロック2510で患者の呼吸周期の特性を解析し続けることができる。
【0268】
ブロック2560で、コントローラがシステムを酸素保存モードで動作させ、酸素保存モードではコントローラが
図24の中でより詳細に説明する3つの異なるレベルを使用して弁を動作させる。コントローラが酸素保存モードで動作し続けるか又は標準モードに移行するかを決定するために、コントローラはブロック2510で患者の呼吸周期の特性を解析し続けることができる。
【0269】
酸素保存モードを使用し続けるか又は酸素保存モードに移行するかを決定するための解析は定められた間隔で行うことができる。例えば定められた間隔は、呼吸期間ごとに、1つおきの呼吸期間ごとに、又は定められた回数の呼吸期間後に実行され得る。解析は毎秒、5秒おき、又は決定済みの任意の時間増分等の任意の適切な時間増分に基づいて実行され得る。決定される間隔は現在のモードの動作特性及び/又は患者特性に基づき得る。
【0270】
モータ及び/又はセンサモジュールの構成
図3~
図5にフロー療法機器10の構成を示す。フロー療法機器は主ハウジング100を含む。主ハウジング100は、主ハウジング上部シャーシ102及び主ハウジング下部シャーシ202を有する。
【0271】
図3及び
図4に示すように、下部シャーシ202は
図3から
図5に示し、以下でより詳細に説明する脱着可能又は脱着不能なモータ及び/又はセンサモジュール400を受け入れるためのモータ凹部250を有する。
図3から
図5に示し、以下でより詳細に説明する脱着可能又は脱着不能なモータ/センサモジュール400を受け入れるための凹部の開口部251が底壁230の後端に隣接して底壁230内に設けられる。
【0272】
図5から
図8は、モータ及び/又はセンサモジュール400をより詳細に示す。上記で論じたように、下部シャーシ202はモータ及び/又はセンサモジュール400を受け入れるための凹部250を含む。
【0273】
図5から
図8に示す形態では、モータ及び/又はセンサモジュール又はサブアセンブリ400が、(その上にモータ402が配置される)サブアセンブリ400の基部403、基部403の上に配置される排気気体流路及び検知層420、及びカバー層440という3つの主要コンポーネントの積み重ね構成を含む。基部403、検知層420、及びカバー層440は一緒に組み合わさってサブアセンブリハウジングを形成し、サブアセンブリ400を凹部250内に受け入れることができるようにサブアセンブリハウジングは凹部250の形状と相補的な形状を有する。基部403は、サブアセンブリ400を凹部250内に配置したとき凹部の開口部251を閉じるように構成される。サブアセンブリ400は例えば締結具、クリップ、若しくは簡易脱着構成等の任意の適切なやり方で又は固定式に若しくは脱着不能なやり方で凹部内の適所に保つことができる。
【0274】
検知層は1つ又は複数のセンサを有する気体流路を含み、気体流路はハウジングの排気ポートに気体を供給するように構成される。
【0275】
モータ402は、インペラを含むインペラチャンバを画定するボディ408を有する。
モータ402は任意の適切な気体ブローワモータとすることができ、例えば公開されている国際公開第2013/009193号パンフレットに記載されている種類のモータ及びインペラアセンブリであり得る。この明細書の内容は参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0276】
気体排気口406は、モータの上に積み重ねられる出口気体流路及び検知層420の気体吸気口と流体連結している。この層420はボディ422を含み、ボディ422は基部403にボディ422を固定するために基部403の複数の取付用口(不図示)内に挿入可能な複数の取付足425を含む。或る構成では、ボディ422は気体排気口406を気体流路及び検知層420の気体吸気口と結合する気体流路を画定する。
【0277】
ボディ422は、検知及び気体流路の下部426を画定する。カバー層440は、検知及び気体流路の上部446を画定するボディ442を有し、上部及び下部426、446の形状は互いにほぼ対応している。
【0278】
図6及び
図7に示すように、気体流路は線形の細長い気体流部分428、448を含む。吸気口は、気体流路の線形細長部分428、448の入口端に位置する又は隣接する気体流路の接線入口部分430、450と流体連結している。気体流路の線形細長部分の両側に凹部433、453、及び434、454を設けることができる。
【0279】
気体流排気ポート452はカバー層440のボディ442を通して垂直に伸び、気体流路の線形細長部分428、448の反対側の出口端に又は出口端に隣接して位置する。気体排気ポート452はモータ凹部250の上部と流体連結しており、モータ凹部250の上部は気体流路と流体連結している。この場合もやはり、凹部250の壁252及び天井262の構成により、モータ/センサモジュール400からの気体漏れがある場合、その漏れは大量の電子機器及び制御機器を含む主ハウジング100の部分に入るのではなく大気に逃される。気体排気ポート452及び凹部の天井262からの気体流のための適切な間隔を保つために、凹部250は
図4に示すように天井262から下向きに突出する突起等のスペーサを含み得る。
【0280】
モータ及び/又は検知モジュール400を通る及びその外の気体流路の少なくとも一部が蛇行し又は曲がりくねった構成を有することが
図6から見て取れる。例えば細長部分428、448を通る気体流の移動方向は、気体排気ポート452からエルボ管324を通る気体流路の入口への気体流の移動方向と概して逆である。
【0281】
図7及び
図8に示すように、カバー層440は検知プリント回路基板(PCB)456を含む。カバー層440は、気体流路の細長部分428、448内に置かれるサーミスタ等の1つ又は複数の温度センサも含み得る。一方のセンサが気体の温度を測定し、他方が冗長温度センサとして働くことができる。或いはサーミスタの1つを(例えば定温サーミスタとして使用することにより)参照フローセンサとして使用することができ、気体流路の部分428、448を通る気体流量を決定するために測定温度を使用することができる。1つ又は複数の温度センサは、気体流に面する検知PCB456の或る部分上に位置することができる。検知PCB456は、これだけに限定されないが圧力センサ、湿度センサ、及び露点センサを含む他のセンサも更に含み得る。
【0282】
センサから受信される情報を処理し、センサから受信した情報に基づいて機器10を動作させるために、電子基板272の1つ又は両方がセンサと電気通信し又は結合される。
【0283】
代替的構成では、モータ/インペラユニットを機器10から離して設けることができる。その構成では、凹部250内に受け入れられるモジュールは固定エルボ管324に、それにより液体チャンバ300に気体を供給するための気体流路及び様々なセンサだけを含み得る。代替的構成では、凹部250内に受け入れられるモジュールはセンサを含まずモータ及び気体流路だけを含み得る。
【0284】
別の代替的構成では、モータ及び/又はセンサモジュール400が凹部250から脱着可能でなくてもよく、代わりに凹部250の中に永続的に装着され得る。この構成でも電気/電子コンポーネントから気体を隔離する利点が依然として与えられる。
【0285】
流路はコンパクトであり、低減されたカーブ/急カーブを有し、そのことは流れの分離を減らし流れの抵抗を減らす。
【0286】
壁の構成により、モータ及び流路の構成は別の隔離層を与える。
【0287】
モジュール式のモータ及び/又はセンサモジュールを有することは、洗浄及び/又は整備するのに必要な場合にモジュールの様々な部分を分解することを可能にする。
【0288】
有利にはモータ及び/又はセンサモジュール内に漏出路はない。モータ及び/又はセンサモジュールは潜在的な漏出点であり得るが、その領域内の漏出は酸素が大気に又は液体チャンバ内に換気されることをもたらす。
【0289】
弁モジュール
図9から
図17は、弁モジュール4001の第1の構成を示す。弁モジュール4001は、機器10の気体流路に入る酸素及び/又は他の気体の流れを制御し、空気流の中に同伴される酸素の比率を機器10が調整することを可能にする。例えば誤作動、日常保守、又は将来のアップグレード/改善の場合に製造、組み立て、整備、又は交換し易いように弁モジュールはモジュールユニットとして形成される。
【0290】
弁モジュール4001は、主ハウジングの下部シャーシ202内の弁モジュール差込口306内に上方向に垂直に挿入される。代替的構成では、前方向、下方向、後ろ方向、又は横方向等、弁モジュールがハウジング内に様々な方向で挿入可能であり得る。弁モジュール4001は機器の主ハウジングと脱着可能に係合することができ、そのため弁モジュール4001はほぼハウジング内に受け入れられ、ハウジングの外からアクセス可能である。一部の構成では、弁モジュール4001を主ハウジング内に固定し脱着不能とすることができる。弁モジュールをハウジングと脱着可能に係合したときハウジングの外壁とほぼ同一平面になるように弁モジュール4001の一部が構成される。
【0291】
弁モジュールはモジュール式でありハウジングの外からアクセス可能なので、弁モジュールは機器10を著しく分解することなく及び機器のハウジングの密閉を損なうことなく交換することができる。弁モジュール4001はほぼハウジング内に受け入れられるので、弁モジュールはハウジングと係合するとハウジングと一体化し、ハウジングのサイズ又は容積を増やすことはない。加えて、以下に記載する弁4003及び弁マニホールド4011等の弁モジュールのコンポーネントは、使用中の機器の弁キャリア4051及び主ハウジング内に位置するので使用中に保護される。機器10が不注意でぶつけられ又は落とされる場合、この構成は弁モジュール及び弁モジュールのコンポーネントが損傷する可能性を大幅に減らす。
【0292】
弁モジュールは、弁マニホールド4011を通る気体流を制御するように構成される流量制御弁4003を含む。この弁は機器の一部の中への気体流を制御するように構成される。例えばこの弁はフィルタモジュール1001への気体流を制御するように構成され得る。或いは弁4003は、機器の別の部分への気体流を制御するように構成され得る。弁モジュール4001及びフィルタモジュール1001は、ブローワ402並びにモータ及び/又はセンサモジュール400の上流に配置される。一部の実施形態では、弁モジュール4001及びフィルタモジュール1001がブローワ402の下流に配置される。
【0293】
弁4003は、円筒ボディ4005及びボディ内の弁メンバを含む。
【0294】
流量制御弁は、例えば電磁弁とすることができ、モータ駆動とすることができ、又はピエゾ動作され得る。
【0295】
電磁弁では、弁メンバが開位置と閉位置との間で作動される。電磁弁は比例弁であり得る。弁を通る(即ち弁の開口の大きさによる)気体流の程度は弁に与えられる電流に比例する。
【0296】
或いは電磁弁は変調入力信号によって制御することができ、それにより弁は開位置と閉位置との間で調整される。
【0297】
弁4003は針弁、プランジャ弁、仕切弁、玉弁、蝶形弁、球形弁等とすることができる。弁は圧力補償型のものであり得る。
【0298】
一部の構成では、弁が正常時締切弁であり、つまり電源が切れているとき弁は閉じている。正常時締切弁を使用することは、機器の電源が切れているとき接続された気体供給線が酸素又は他の気体を継続的に放出することを妨げる。一部の代替的構成では弁が正常時開放弁である。
【0299】
一部の構成では、弁4003が電気的に作動される比例電磁弁である。例えば弁は、Staiger GmbH & Co.KG of Erligheim,Germanyから入手可能なμProp弁とすることができ、New JerseyのEmerson/Asco Valvesから入手可能なAsco202シリーズPreciflow弁とすることができ、又は他の任意の適切な種類の弁とすることができる。
【0300】
弁は同軸インレット-アウトレット弁構成を有し得る。
【0301】
弁モジュール4001は弁マニホールド4011を含み、弁マニホールド4011は、弁マニホールド気体吸気口4017と1つ又は複数の弁マニホールド気体排気口4019との間の気体流路4015を画定するボディ4013を有する。弁マニホールドの気体吸気口4017は弁マニホールドの末端に又は末端に向けて軸方向に位置する。一部の構成では弁マニホールド4011が、弁マニホールド上で放射状に位置する単一の気体排気口4019を有する。一部の構成では弁マニホールド4011が、弁マニホールドの周りに放射状に位置する複数の弁マニホールド気体排気口4019を含む。弁マニホールド排気口4019は、弁マニホールド気体吸気口4017からフィルタモジュール1001の気体吸気口に気体を供給するように構成される。排気口4019の放射状の構成はフィルタモジュールに酸素(又は他の気体)を導き、酸素の損失を最小化すること及び同伴の効率を高めることを助ける。弁4003は、弁マニホールド気体吸気口4017から弁マニホールド気体排気口4019への気体の流れを制御するように構成される。弁が「閉じている」場合、気体吸気口4017から気体排気口4019への気体流は妨げられる。弁が「開いている」場合、気体吸気口4017から気体排気口4019への気体流が可能にされる。
【0302】
弁と弁マニホールドとが流体連結するように、気体吸気口の反対側の弁マニホールド4011の終端4018が弁4003を受け入れ、弁4003と密閉して係合する。終端4018は、弁に取り付けるためのフランジ4023を含む。フランジ4023は、マニホールドを弁4003に締結するための締結具4023Fを受け入れるための開口部4023Aを有する。弁を弁マニホールドと密閉して係合するために、弁4003と弁マニホールド4011との間のインタフェースの周囲にOリングを設けることができる。
【0303】
弁マニホールド4011は、弁からの酸素を放射状に位置する気体排気口4019から導く/消散させる。一部の実施形態では、単一の気体排気口4019が弁マニホールド内に設けられる。排気口を酸素が通過するとき騒音が発生する。この機器は患者の近くで医療及び/又は自宅環境内で使用されることがあるので発生する騒音を最小化することが望ましい。
【0304】
加えて又は或いは、騒音を減らすために弁マニホールド排気口4019の周りに、弁マニホールド排気口4019に近接して、又は弁マニホールド排気口4019と流体連結してフード、ダクト、又はチャネルを形成することができる。加えて及び/又は或いは、騒音を減らすために発泡体等を弁マニホールドの周りに、弁マニホールド排気口に近接して配置することができる。
【0305】
弁の中に塵又は粒子が入り込むのを防ぐために、弁マニホールド気体吸気口4017の吸気口内に小さいフィルタを設けることができる。
【0306】
気体吸気口4015に対応する弁マニホールドの終端は、コネクタ4031を受け入れるように及びコネクタ4031に接続するように構成される。図示の形態では、コネクタ4031がスイベルコネクタである。或いはコネクタ4031は、例えば並進運動又は旋回運動等、コネクタの気体吸気口4033が様々な方法で動けるように構成され得る。
【0307】
弁モジュール4001は機器の流路の始まりに位置する。弁4003が開いたままになるように妨害される(即ち塵、粒子等により)場合、過剰な加圧酸素又は他の気体が弁キャリア4051内の周囲空気入口開口部(例えば
図26のスイベルコネクタの下に示す開口部)から外に「放出」される。このことは如何なる過剰な圧力も患者に到達することを防ぐ。そのため、このシステムは圧力逃がし弁を使用することなしに本質的に従圧式と考えることができる。
【0308】
機器の気体流路内に周囲空気を引き込むことを可能にするために、弁キャリア4051内に開口部4051Oが設けられる。周囲空気流路は弁の近くを又は弁に隣接して通過する。図示の形態では、開口部4051Oはスイベルコネクタの気体吸気口の周りに位置する。加えて又は或いは、開口部は弁キャリア内の他の場所に位置し得る。機器のブローワモータ402が動作すると、かかる動作はフィルタモジュール及び弁モジュールを通る吸い込みをもたらして周囲空気を機器内に吸引する。周囲空気流路は弁モジュールを通過し、流量制御弁からの気体流と周囲空気が同伴することを可能にする。周囲空気流路は周囲空気を供給するように適合される気体排気口を有し、それにより周囲空気が気体流を供給するための機器の1つ又は複数の温度センサを通過する。
【0309】
機器は弁マニホールドの気体吸気口及び周囲空気から気体を同時に引き込むことができ、又は気体吸気口からの気体を加圧することはその気体がフィルタを通過することを強制し得る。気体は弁モジュールを出てフィルタ内の気体吸気口に入る。この機器は、気体吸気口からの気体及び周囲空気が機器の気体排気口に供給される前に機器内で動的に同伴/混合されるように構成され得る。
【0310】
弁モジュールは、スイベルコネクタの周囲及び/又は他の場所に位置する周囲空気用の大孔4051O、乱流及び一様流を最小化するための流路内の(即ち例えば弁マニホールド内の)ラジアス/ラウンド/スロープエッジの1つ又は複数を有することにより弁モジュールにわたる圧力降下を最小化するように構成され得る。
【0311】
本明細書に記載の弁モジュール4001は、弁モジュールからフィルタへの気体流路を与えるためにフィルタ1001と直接結合するように構成される。弁モジュールとフィルタモジュールとの間にホース接続は必要ない。この形態はコンポーネントのサイズを最小化し、モジュール式の弁モジュール及びフィルタモジュールを接続及び取り外すのを容易にする。
【0312】
本明細書に記載のフィルタモジュール及び弁モジュールは可変気体流路を機器に与えることができる。例えば弁モジュールは、弁モジュール及びフィルタモジュールによって機器の気体流路に入る酸素の流れを制御することができる。或いは弁モジュールは、第1の副コンパートメント気体吸気口(例えば
図13の吸気口1011)によるフィルタモジュールへの代替的な酸素源の直接接続によってバイパスすることができる。この形態は、ユーザが酸素供給を手動で(即ち壁に取り付けた供給ロタメータ等によって)調節したい可能性がある状況において実用的であり得る。
【0313】
本明細書に記載のフィルタモジュール及び弁モジュールは、気体流を供給するための機器内で別々に使用され得ることが理解されよう。或いは、フィルタ及び弁モジュールは機能を改善するためにフィルタ及び弁アセンブリとして一緒に使用してもよい。
【0314】
図示の構成では、機器10が、(機器による自動の酸素調整のための)弁モジュール経由、又は(手動で調節可能な(即ち壁に取り付けた供給ロタメータ等による)酸素供給の取り付けを可能にする)フィルタの上に設けられる代替的な気体吸気口経由、の少なくとも1つによって酸素を得る。
【0315】
記載した様々な構成は例示的な構成に過ぎない。構成の何れかの1つ又は複数の任意の特徴を、他の構成の何れかの1つ又は複数の任意の特徴と組み合わせて使用することができる。
【0316】
例えば弁モジュール内で使用されるスイベルコネクタは追加の機能を有することができる。一部の構成では、スイベルコネクタの気体吸気口が2つの軸を中心に回転することができるように、スイベルコネクタは1超の軸を中心に旋回するように構成することができ、例えば互いに交差するスイベル軸を有する隣接する2つのスイベル接続部分を有することができる。一部の構成では、スイベルコネクタの気体吸気口がほぼ任意の方向に回転することを可能にするために、スイベルコネクタがボール及びソケット構成又は同様の構成を含み得る。一部の構成では、スイベルコネクタの気体吸気口が1つ又は複数の軸を中心に旋回できるだけでなく例えば直線的に移動することができるように、スイベルコネクタは旋回運動及び並進運動の両方を行うように構成され得る。この構成は、例えば機器の片側から機器の反対側等、気体吸気口を機器の或る部分から別の部分に並進させるのに実用的であり得る。一部の構成では、回転するのではなく並進するように気体吸気口を構成することができる。
【0317】
別の例として、モータ及び/又はセンササブアセンブリの凹部は主ハウジングの下部にあると記載したが、代わりにハウジングの後ろ、横、前、又は上にあってもよい。そのような改変形態では、空気及び/又は酸素吸気口も必要に応じて異なるように配置することができる。
【0318】
別の例として、液体チャンバがハウジングの前からチャンバベイに挿入されチャンバベイから除去されるように液体チャンバ及びチャンバベイを構成するのではなく、構成は液体チャンバがハウジングの横、後ろ、又は上からチャンバベイに挿入されチャンバベイから除去されるものであり得る。
【0319】
別の例として、フィルタモジュールはハウジング内に上から弁モジュールはハウジング内に下から挿入されるものとして記載したが、これらのコンポーネントの一方又は両方をハウジングの上部、下部、側部、前部、又は後部等の任意の適切な部分に挿入することができる。
【0320】
患者又はユーザに加熱及び加湿気体を供給可能なフロー療法機器に関してフィルタモジュール及び弁モジュールを説明した。機器は慢性閉塞性肺疾患(COPD)を治療するのに適している場合がある。機器は高流量で患者インタフェースに気体(高流量療法)を、とりわけ高流量経鼻酸素療法を供給するように構成され得る。
【0321】
或いは、フィルタモジュール及び/又は弁モジュールは様々な目的のために機器内で使用され得る。機器は高流量療法機器とすることができ、又は低流量療法機器とすることができる。特徴は、陽圧で(加湿等の)気体を供給することができる持続的気道陽圧法(CPAP)を提供するための機器内にも与えることができる。
【0322】
フィルタモジュール及び/又は弁モジュールは加湿器を必要としない機器と共に代わりに使用することができ、従って液体チャンバ300又はチャンバベイ108の特徴を必要としない。例えばモータ及び気体流路を電気及び電子コンポーネントから隔離する構成は、他の種類の気体供給機器において幅広い用途を有することが理解されよう。
【0323】
「フロー療法機器」という言語はそのような全ての改変形態を範囲に含むことを意図する。
【0324】
本明細書での如何なる従来技術への言及も、世界中のどの国の努力傾注分野においても従来技術がありふれた一般知識の一部を形成するという承認としても如何なる形の示唆としても解釈されず、そのように解釈すべきでない。
【0325】
「上」、「下」、「前方」、「後方」、「水平」、「垂直」等の方向を表す用語が本明細書で使用される場合、それらの用語は機器が典型的な使用中の位置にあるときを指し、相対的な方向又は向きを図示する及び/又は説明するために使用される。
【0326】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の全体を通して、別段の定めがない限り「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」等の言葉は、排他的又は網羅的な意味とは対照的に包含的な意味、つまり「~を含むがそれだけに限定されない」という意味で解釈すべきである。
【0327】
本明細書で使用するとき「おおよそ」、「約」、及び「ほぼ」という用語は、所望の機能を依然として実行し又は所望の結果を実現する述べられた量に近い量を表す。例えば一部の実施形態では、文脈が許し得る限り「おおよそ」、「約」、及び「ほぼ」という用語は述べられた量の10%以下の範囲内、5%以下の範囲内、及び1%以下の範囲内の量を指す場合がある。
【0328】
本明細書での如何なる従来技術への言及も、世界中のどの国の努力傾注分野においても従来技術がありふれた一般知識の一部を形成するという承認としても如何なる形の示唆としても解釈されず、そのように解釈すべきでない。
【0329】
開示した機器及びシステムは、本願の明細書の中で個別に又はまとめて言及したか又は示した部品、要素、及び特徴、前述の部品、要素、又は特徴の2つ以上の任意の又は全ての組み合わせで構成される、と広く言うこともできる。
【0330】
上記の説明において既知の等価物を有する完全体又はコンポーネントに言及している場合、それらの完全体は個別に記載されているかのように本明細書に援用される。
【0331】
実施形態にもよるが、本明細書に記載したアルゴリズム、方法、又はプロセスの何れかの特定の行為、イベント、又は機能は異なる順序で実行することができ、全体的に追加し、合併し、又は省くことができる(例えばアルゴリズムを実践するのに記載した全ての行為又はイベントが必要なわけではない)。更に特定の実施形態では、例えばマルチスレッド処理、割り込み処理、又は複数のプロセッサ若しくはプロセッサコアによって、又は他の並列アーキテクチャ上で行為又はイベントを逐次的ではなく同時に実行することができる。
【0332】
本明細書に記載した本明細書の好ましい実施形態への様々な変更及び修正が当業者に明らかになることに留意すべきである。かかる変更及び修正は、開示した機器及びシステムの趣旨及び範囲から逸脱することなく、及びその付随的な利点を減らすことなく加えることができる。例えば様々なコンポーネントを所望の通りに再配置することができる。従って、開示した機器及びシステムの範囲にそのような変更及び修正が含まれることを意図する。更に、開示した機器及びシステムを実践するために特徴、態様、及び利点の全てが必ずしも必要なわけではない。従って開示した機器及びシステムの範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ規定されることを意図する。
【手続補正書】
【提出日】2024-09-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に気体流を与える呼吸器であって、
周囲空気吸気口と、
補助気体源から補助気体を受けるための補助吸気口と、
前記補助気体吸気口によって受けられる前記補助気体の流量を制御するように構成される弁と、
周囲空気及び補助気体の混成流の気体組成を測定するように構成される気体組成センサと、
前記患者への気体の供給を制御するように構成されるコントローラであって、
弁電流を制御することによって前記弁の作動を調節し、
標的補助気体流量を決定し、
弁モデルを使用して前記標的補助気体流量に基づいて前記弁電流を設定し、
前記気体組成センサから得た測定値に部分的に基づいて弁モデルを経時的に更新するように構成される、コントローラと
を含む、呼吸器。
【請求項2】
前記補助気体が濃縮酸素を含み;及び/又はガス組成の測定は、供給された酸素(FdO2)の測定された割合である、請求項1に記載の呼吸器。
【請求項3】
前記弁モデルが前記測定気体組成の予測変化に部分的に基づいて経時的に更新される、請求項1又は2に記載の呼吸器。
【請求項4】
前記測定気体組成の前記予測変化が現在の弁の位置及び前記補助気体の現在の流量に少なくとも部分的に基づく、請求項3に記載の呼吸器。
【請求項5】
前記弁モデルが標的気体組成に部分的に基づいて経時的に更新される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項6】
前記標的気体組成が標的FdO2である、請求項5に記載の呼吸器。
【請求項7】
前記測定気体組成の前記予測変化が測定気体組成の最近の傾向に少なくとも部分的に基づく、請求項3又は4に記載の呼吸器。
【請求項8】
前記弁モデルが前記弁を開くために必要な最小電流の推定を含み、
前記弁を開くために必要な前記最小電流の前記推定が経時的に更新される、請求項1乃至7の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項9】
総流量を測定するように構成される流量センサを更に含む、請求項1乃至8の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項10】
前記コントローラが前記総流量に少なくとも部分的に基づいて前記標的補助気体流量を決定する、請求項9に記載の呼吸器。
【請求項11】
前記コントローラが標的FdO2に少なくとも部分的に基づいて標的補助気体流量を決定する;及び/又は前記コントローラが前記周囲空気の酸素の分画に少なくとも部分的に基づいて前記標的補助気体流量を決定する;及び/又は前記コントローラが前記補助気体源の前記酸素の分画に少なくとも部分的に基づいて前記標的補助気体流量を決定する、請求項1乃至10の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項12】
前記コントローラが予期される呼吸数の範囲に応じて前記弁モデルを様々なレートで更新する、請求項1乃至11の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項13】
前記コントローラが予期される流量振動幅に応じて前記弁モデルを様々なレートで更新する、請求項1乃至12の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項14】
前記コントローラが前記流量に応じて前記弁モデルを様々なレートで更新する、請求項1乃至13の何れか一項に記載の呼吸器。
【請求項15】
前記弁モデルが前記弁を通る前記補助気体の前記流量の推定を含む、請求項1乃至14の何れか一項に記載の呼吸器。
【外国語明細書】