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特開2024-167282再発性小細胞肺癌の処置方法において使用するための抗PD-1抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167282
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】再発性小細胞肺癌の処置方法において使用するための抗PD-1抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20241126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241126BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P43/00 121
A61P11/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024141986
(22)【出願日】2024-08-23
(62)【分割の表示】P 2022007372の分割
【原出願日】2017-06-02
(31)【優先権主張番号】62/345,463
(32)【優先日】2016-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(74)【代理人】
【識別番号】100221545
【弁理士】
【氏名又は名称】白江 雄介
(72)【発明者】
【氏名】マリーナ・チャイカ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】小細胞肺癌に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法を提供する。
【解決手段】対象にプログラム死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分または(a)PD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分;および(b)細胞毒性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に特異的に結合し、CTLA-4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分の組み合わせを投与することを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書および図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、対象に抗プログラム死-1(PD-1)抗体または抗PD-1抗体と抗細胞毒性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)抗体の組み合わせを投与することを含む、対象における小細胞肺癌に由来する腫瘍を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒト癌は多数の遺伝的および後成的改変を抱え、免疫系により認識され得る可能性のあるネオ抗原を産生する(Sjoblom et al., (2006) Science 314:268-74)。TおよびBリンパ球からなる適応免疫系は、多様な腫瘍抗原に応答する広い能力および精巧な特異性を備え、強力な抗癌能を有する。さらに、免疫系は、相当な柔軟性および記憶成分を示す。適応免疫系の全てのこれらの特質の利用の成功は、免疫療法を全癌処置モダリティの中で特別のものとする。
【0003】
PD-1は、活性化TおよびB細胞により発現される重要な免疫チェックポイント受容体であり、免疫抑制に介在する。PD-1は、CD28、CTLA-4、ICOS、PD-1およびBTLAを含む受容体のCD28ファミリーのメンバーである。PD-1に対する2つの細胞表面糖タンパク質リガンド、プログラム死リガンド-1(PD-L1)およびプログラム死リガンド-2(PD-L2)が同定されており、これらは抗原提示細胞ならびに多くのヒト癌で発現され、PD-1への結合により、T細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御することが示されている。
【0004】
ニボルマブ(以前は5C4、BMS-936558、MDX-1106またはONO-4538と命名)は、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を選択的に阻害し、それにより、抗腫瘍T細胞機能の下方制御を遮断する、完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国特許8,008,449;Wang et al., 2014 Cancer Immunol Res. 2(9):846-56)。
【0005】
イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))は、CTLA-4のそのB7リガンドへの結合を遮断し、それによりT細胞活性化を刺激し、進行型黒色腫を有する患者における全生存期間(OS)を改善する完全ヒト、IgG1モノクローナル抗体である(Hodi et al. (2010) N Engl J Med 363:711-23)。フェーズ1治験におけるニボルマブとイピリムマブの同時治療は、進行型黒色腫を有する患者の相当な割合で迅速かつ深い腫瘍退縮を生じ、何れか抗体単独より有意に有効であった(Wolchok et al. (2013) N Engl J Med 369(2):122-33;WO2013/173223)。しかしながら、今日まで、この免疫制御後退の組み合わせが、小細胞肺癌(SCLC)の処置に同様に有効であるか否か分かっていなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
SCLCは全肺癌の約14%を湿る(Byers and Rudin, Cancer 121:664-72 (2015))。大部分の患者は、広範な転移および限られた生存率で特徴付けられる、進展型疾患を呈する。35%~86%の患者が第一選択化学療法剤に応答するが、疾患は急速に進行し、第二選択処置での成果は不良である(Hanna et al., J. Clin. Oncol. 24:2038-43 (2006); Puglisi et al., Br. J. Cancer 102:629-38 (2010); Zatloukal et al., Ann. Oncol. 21:1810-16 (2010))。従って、SCLCの処置のための有効な治療、特に、最初の処置後再発した患者のための第二選択治療に対する要請がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、対象に(a)プログラム死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD-1抗体”)の組み合わせを投与することを含む、小細胞肺癌(SCLC)に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法に関する。
【0008】
本発明の他の態様は、対象に(a)抗PD-1抗体および(b)細胞毒性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に特異的に結合し、CTLA-4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗CTLA-4抗体”)の組み合わせを投与することを含む、SCLCに由来する腫瘍を有する対象を処置する方法に関する。
【0009】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体がキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である。他の実施態様において、抗PD-1抗体がヒトIgG1またはIgG4アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む。ある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。ある実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。
【0010】
ある実施態様において、抗CTLA-4抗体がキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は、ヒトIgG1アイソタイプである重鎖定常領域を含む。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。他の実施態様において、抗CTLA-4抗体はトレメリムマブである。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4への結合についてイピリムマブと交差競合する。
【0011】
ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約1mg/kgまたは約3mg/kg体重の用量で、約2週に1回投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約1mg/kgまたは約3mg/kg体重の用量で、約3週に1回投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、約1mg/kgまたは約3mg/kg体重の用量で投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約3mg/kg体重の用量で約3週に1回投与され、そして抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、約3週に1回、約1mg/kg体重の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約1mg/kg体重の用量で約3週に1回投与され、そして抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、約3週に1回、約3mg/kg体重の用量で投与される。
【0012】
ある実施態様において、本発明の方法により処置される対象は、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の無進行生存を示す。ある実施態様において、対象は、最初の投与後少なくとも約8か月の無進行生存を示す。
【0013】
ある実施態様において、対象は、≧1%PD-L1発現を有する肺腫瘍を有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-1抗体および抗CTLA-4組み合わせは、臨床的有用性が観察される限りまたは疾患進行または管理不可能な毒性が生じるまで投与される。ある実施態様において、抗PD-1および/または抗CTLA-4抗体が静脈内投与用に製剤化される。ある実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体が逐次的に対象に投与される。ある実施態様において、抗PD-1および抗CTLA-4抗体が互いに30分以内に投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体が抗CTLA-4抗体の前に投与される。他の実施態様において、抗CTLA-4抗体が抗PD-1抗体の前に投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体が別々の組成物で同時に投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体は、単一組成物として同時に投与される。
【0014】
ある実施態様において、抗PD-1抗体が治療量以下の用量で投与される。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体が治療量以下の用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体が各々治療量以下の用量で投与される。
【0015】
本発明は、さらにSCLCに由来する腫瘍を有する対象を処置するためのキットに関し、キットは(a)約4mg~約500mgの範囲の量の抗PD-1抗体;および(b)本発明の方法においてPD-1抗体を使用するための指示を含む。
【0016】
本発明は、さらには、SCLCに由来する腫瘍を有する対象を処置するためのキットに関し、キットは(a)約4mg~約500mgの範囲の量の抗PD-1抗体、(b)約4mg~約500mgの量のCTLA-4抗体および(c)本発明の方法においてPD-1抗体およびCTLA-4抗体を使用するための指示を含む。
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、次の詳細な記載および実施例から明らかであり、これは、限定的と解釈してはならない。本明細書をとおして引用した科学論文、新聞報告、GenBankエントリー、特許および特許出願を含む全ての引用した引用文献の全ての内容を、明示的に引用により本明細書に包含させる。
【0018】
実施態様
E1. 対象に、プログラム死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD-1抗体”)を投与することを含む、小細胞肺癌(SCLC)に由来する腫瘍を有する対象を処置する方法。
【0019】
E2. 対象に細胞毒性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に特異的に結合し、CTLA-4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗CTLA-4抗体”)を投与することをさらに含む、実施態様E1の方法。
【0020】
E3. SCLCが小細胞癌を含む、実施態様E1またはE2の方法。
【0021】
E4. SCLCが複合型小細胞癌を含む、実施態様E1またはE2の方法。
【0022】
E5. SCLCが再発性SCLCである、実施態様E1~E4の何れかの方法。
【0023】
E6. 対象が、腫瘍を処置するための少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つのラインの先行治療を受けている、実施態様E1~E5の何れかの方法。
【0024】
E7. 先行ラインの治療が化学療法剤を含む、実施態様E6の方法。
【0025】
E8. 化学療法剤が白金ベースの治療を含む、実施態様E7の方法。
【0026】
E9. 白金ベースの治療がシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、トリプラチン テトラニトレート、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチンおよびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される白金ベースの抗新生物を含む、実施態様E8の方法。
【0027】
E10. 白金ベースの治療がシスプラチンを含む、実施態様E7またはE8の方法。
【0028】
E11. 抗PD-1抗体がヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する、実施態様E1~E10の何れかの方法。
【0029】
E12. 抗PD-1抗体がニボルマブと同じエピトープに結合する、実施態様E1~E11の何れかの方法。
【0030】
E13. 抗PD-1抗体がキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である、実施態様E1~E12の何れかの方法。
【0031】
E14. 抗PD-1抗体がヒトIgG1またはIgG4アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む、実施態様E1~E13の何れかの方法。
【0032】
E15. 抗PD-1抗体がニボルマブである、実施態様E1~E14の何れかの方法。
【0033】
E16. 抗PD-1抗体がペンブロリズマブである、実施態様E1~E14の何れかの方法。
【0034】
E17. 抗CTLA-4抗体がキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である、実施態様E2~E16の何れかの方法。
【0035】
E18. 抗CTLA-4抗体は、ヒトIgG1アイソタイプである重鎖定常領域を含む、実施態様E2~E17の何れかの方法。
【0036】
E19. 抗CTLA-4抗体がイピリムマブである、実施態様E2~E18の何れかの方法。
【0037】
E20. 抗CTLA-4抗体がトレメリムマブである、実施態様E2~E18の何れかの方法。
【0038】
E21. 抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4への結合についてイピリムマブと交差競合する、実施態様E2~E20の何れかの方法。
【0039】
E22. 抗PD-1抗体が少なくとも約0.1mg/kg~少なくとも約10.0mg/kg体重の範囲の用量で、約1週、2週、3週または4週に1回投与される、実施態様E1~E21の何れかの方法。
【0040】
E23. 抗PD-1抗体が約1mg/kgまたは約3mg/kg体重の用量で投与される、実施態様E1~E22の何れかの方法。
【0041】
E24. 抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が均一用量で投与される、実施態様E1~E21の何れかの方法。
【0042】
E25. 抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が少なくとも約200mg、少なくとも約220mg、少なくとも約240mg、少なくとも約260mg、少なくとも約280mg、少なくとも約300mg、少なくとも約320mg、少なくとも約340mg、少なくとも約360mg、少なくとも約380mg、少なくとも約400mg、少なくとも約420mg、少なくとも約440mg、少なくとも約460mg、少なくとも約480mg、少なくとも約500mgまたは少なくとも約550mgの均一用量で投与される、実施態様E1~E21およびE24の何れかの方法。
【0043】
E26. 抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が約1週、2週、3週または4週に1回均一用量で投与される、実施態様E1~E21、E24およびE25の何れかの方法。
【0044】
E27. 抗PD-1抗体が約2週に1回投与される、実施態様E1~E26の何れかの方法。
【0045】
E28. 抗PD-1抗体が約3週に1回投与される、実施態様E1~E26の何れかの方法。
【0046】
E29. 抗PD-1抗体が臨床的有用性が観察される限りまたは管理不可能な毒性もしくは疾患進行が生じるまで投与される、実施態様E1~E28の何れかの方法。
【0047】
E30. 抗CTLA-4抗体が少なくとも約0.1mg/kg~少なくとも約10.0mg/kg体重の範囲の用量で、約1週、2週、3週または4週に1回投与される、実施態様E2~E29の何れかの方法。
【0048】
E31. 抗CTLA-4が約1mg/kgまたは約3mg/kg体重の用量で投与される、実施態様E2~E30の何れかの方法。
【0049】
E32. 抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が均一用量で投与される、実施態様E2~E31の何れかの方法。
【0050】
E33. 抗CTLA-4抗体が約2週に1回投与される、実施態様E2~E32の何れかの方法。
【0051】
E34. 抗CTLA-4抗体は、約3週に1回投与される、実施態様E2~E32の何れかの方法。
【0052】
E35. 抗PD-1抗体は、約3mg/kg体重の用量で約3週に1回投与され、そして抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分が約3週に1回、約1mg/kg体重の用量で投与される、実施態様E2~E34の何れかの方法。
【0053】
E36. 抗PD-1抗体は、約1mg/kg体重の用量で約3週に1回投与され、そして抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分が約3週に1回、約3mg/kg体重の用量で投与される、実施態様E2~E34の何れかの方法。
【0054】
E37. 対象が投与開始後少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年無進行生存を示す、実施態様E1~E36の何れかの方法。
【0055】
E38. 対象が≧1%PD-L1発現を有する腫瘍を有する、実施態様E1~E37の何れかの方法。
【0056】
E39. 対象が≧5%PD-L1発現を有する腫瘍を有する、実施態様E1~E38の何れかの方法。
【0057】
E40. 組み合わせが臨床的有用性が観察される限りまたは疾患進行または管理不可能な毒性が生じるまで投与される、実施態様E2~E39の何れかの方法。
【0058】
E41. 抗PD-1抗体が静脈内投与用に製剤化される、実施態様E1~E40の何れかの方法。
【0059】
E42. 抗CTLA-4抗体が静脈内投与用に製剤化される、実施態様E2~E41の何れかの方法。
【0060】
E43. 抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体が逐次的に対象に投与される、実施態様E2~E42の何れかの方法。
【0061】
E44. 抗PD-1および抗CTLA-4抗体が互いに30分以内に投与される、実施態様E2~43の何れかの方法。
【0062】
E45. 抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が抗CTLA-4抗体の前に投与されるまたはその抗原結合部分、実施態様E2~E44の何れかの方法。
【0063】
E46. 抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分が抗PD-1抗体の前に投与されるまたはその抗原結合部分、実施態様E2~E44の何れかの方法。
【0064】
E47. 抗PD-1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分が別々の組成物で同時に投与される、実施態様E2~E42の何れかの方法。
【0065】
E48. 抗PD-1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分が単一組成物として同時に投与される、実施態様E2~E42の何れかの方法。
【0066】
E49. 抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が治療量以下の用量で投与される、実施態様E1~E48の何れかの方法。
【0067】
E50. 抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分が治療量以下の用量で投与される、実施態様E2~E49の何れかの方法。
【0068】
E51. 抗PD-1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分が各々治療量以下の用量で投与される、実施態様E2~E50の何れかの方法。
【0069】
E52. SCLCに由来する腫瘍を有する対象を処置するためのキットであて、キットは
(a)約4mg~約500mgの範囲の量の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分;および
(b)実施態様E1~E51の何れかの方法においてPD-1抗体を使用するための指示
を含む。
【0070】
E53. SCLCに由来する腫瘍を有する対象を処置するためのキットであって、
(a)約4mg~約500mgの範囲の量の抗PD-1抗体またはその抗原結合部分;
(b)約4mg~約500mgの量のCTLA-4抗体またはその抗原結合部分;および
(c)実施態様E2~E51の何れかの方法に従いPD-1抗体およびCTLA-4抗体を使用するための指示
を含む、キット。
【図面の簡単な説明】
【0071】
図1図1は、抗PD-1抗体または抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組み合わせを使用するSCLCに由来する腫瘍の処置のための治験設計の概略を示す。
【0072】
図2図2Aおよび2Bは、ニボルマブ1mg/kg体重とイピリムマブ3mg/kg体重の組み合わせでの処置前(図2A)および後(図2B)の対象の肺で見られたSCLCに由来する腫瘍の画像を示す。腫瘍組織は、図2Aおよび図2Bの両方で丸で囲む。
【0073】
図3-1】図3A~3Cは、ニボルマブ3mg/kg(図3A)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg(図3B)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg(図3C)を受けた個々の患者における腫瘍負荷の変化のグラフ表示を提供する。ベースライン時に標的病巣を有し、少なくとも1つの処置中腫瘍評価をした患者のみ含んだ(ニボルマブ3mg/kg、n=80;ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg、n=46;ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg、n=47)。水平灰色線は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST; version 1.1)客観的応答に一致する30%減少を示す。完全奏功(CR)または部分奏効(PR)を示した対象は、PRまたはCRの時点で逆三角で印を付す。+印は新規病巣の最初の出現を示し、白丸は対象が処置を中止した時点を示す。100%を超える測定値は100%に切り捨て、データ点を白四角で示す。
図3-2】同上。
【0074】
図4A図4Aおよび4Bは、ニボルマブ3mg/kg(丸)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg(菱形)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg(三角)で処置した対象の全生存期間(図4A)および無進行生存(図4B)のカプラン・マイヤー曲線を提供する。リスクにある対象数および打ち切られた患者数は、各処置についてy軸の下に示される(図4Aおよび4B)。
図4B】同上。
【0075】
図5-1】図5A~5Cは、腫瘍PD-L1発現状態による腫瘍負荷の変化のグラフ表示を提供する。1%未満のPD-L1発現の腫瘍のベースラインからのパーセント変化を灰色で示し、≧1%PD-L1発現の腫瘍のものを黒色で示す。PD-L1発現が評価せずまたは欠測であった腫瘍についてのベースラインにおける変化は、薄灰色で示す。棒の上の黒丸は、確認された応答者を示す。白四角は、%変化が100%に切り捨てられたことを示す。
図5-2】同上。
【0076】
図6A図6A~6Dは、1つの先の治療(図6Aおよび図6C)および2以上の先の治療(図6Bおよび図6D)の対象についての全生存期間(図6Aおよび6B)および無進行生存(図6Cおよび6D)のカプラン・マイヤー曲線を示す。対象をニボルマブ3mg/kg(丸)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg(菱形)またはニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg(三角)で処置した。リスクにある対象数および打ち切られた患者数は、各処置のy軸の下に示される(図6A~6D)。
図6B】同上。
図6C】同上。
図6D】同上。
【0077】
図7A図7A~7Cは、ニボルマブ3mg/kg(図7A)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg(図7B)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg(図7C)を受けた個々の患者における白金感受性による腫瘍負荷変化のグラフ表示を提供する(白金感受性腫瘍は灰色線で示し、白金抵抗性腫瘍は黒色線で示す)。ベースライン時に標的病巣があり、≧1の処置中腫瘍評価をした患者のみ含んだ(ニボルマブ-3、n=31;ニボルマブ-1/イピリムマブ-3、n=21;ニボルマブ-3/イピリムマブ-1、n=17)。パネルは、第二選択ニボルマブ-3(図7A)、ニボルマブ-1/イピリムマブ-3(図7B)およびニボルマブ-3/イピリムマブ-1(図7C)を受けた患者における経時的な腫瘍負荷(最長の長さ寸法として評価)を示す。水平基準線は、RECIST(version 1.1)客観的応答に一致する30%減少を示す。完全奏功(CR)または部分奏効(PR)を示した対象は、PRまたはCRの時点で逆三角で印を付す。+印は新規病巣の最初の出現を示し、白丸は対象が処置を中止した時点を示す。100%を超える測定値は100%に切り捨て、データ点を白四角で示す。
図7B】同上。
図7C】同上。
【0078】
図8図8は、無作為化コホートおよび非無作為化コホートを含む、抗PD-1抗体または抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組み合わせを使用するSCLCに由来する腫瘍の処置のための治験設計の概略を示す。
【0079】
図9図9は、ニボルマブ3mg/kg(丸)またはニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg(菱形)で処置した対象の全生存期間のカプラン・マイヤー曲線を示す。リスクにある対象数は、各処置についてy軸の下に示される。
【0080】
図10図10は、無作為化コホートおよび非無作為化コホートにおける、ニボルマブ1mg/kgまたはニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgで処置した患者で観察された全奏効率(ORR)のグラフ表示を提供する。Nivo=ニボルマブ;ipi=イピリムマブ。
【0081】
図11図11は、無作為化コホートおよび非無作為化コホートにおいて、ニボルマブ3mg/kgまたはニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgで処置した患者で観察された無進行生存(PFS)率のグラフ表示を提供する。Nivo=ニボルマブ;ipi=イピリムマブ。
【0082】
図12図12は、無作為化コホートおよび非無作為化コホート。Nivo=ニボルマブにおけるニボルマブ3mg/kgまたはニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgで処置した患者で観察された全生存(OS)率のグラフ表示を示す;ipi=イピリムマブ。
【発明を実施するための形態】
【0083】
発明の詳細な記載
本発明は、患者に抗PD-1抗体または抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組み合わせを投与することを含む、患者におけるSCLCに由来する腫瘍を処置する方法に関する。
【0084】
用語
本発明がより容易に理解され得るために、いくつかの用語をまず定義する。本明細書で使用する限り、本明細書において他に明示的に示されていない限り、次の用語の各々は下記意味を有する。さらなる定義は本明細書を通して示される。
【0085】
“投与”は、当業者に知られる種々の方法および送達系の何れかを使用して、対象に治療剤を含む組成物を物理的に導入することをいう。抗PD-1抗体の投与経路は、例えば注射または点滴による、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、脊髄または他の非経腸投与経路を含む。ここで使用する用語“非経腸投与”は、通常、注射による経腸および局所投与以外の投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、リンパ内、病巣内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、嚢下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および点滴、ならびにインビボエレクトロポレーションを含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、組み合わせは、非経腸ではない経路で、ある実施態様において、経口で投与される。他の非経腸ではない経路は、局所、上皮または粘膜投与経路、例えば、鼻腔内、膣、直腸、舌下または局所を含む。投与はまた、例えば、一回、複数回および/または長期にわたり1回以上実施し得る。
【0086】
ここで使用する“有害事象”(AE)は、医学的処置の使用と関連する、何らかの好ましくない、一般に意図しないまたは望ましくない徴候(以上検査所見を含む)、症状または疾患である。例えば、有害事象は、処置に応答した免疫系活性化または免疫系細胞(例えば、T細胞)増大に関係し得る。医学的処置は1以上の関連AEを有し得て、各AEの重症度レベルは同一または異なり得る。“有害事象を変える”ことができる方法の記載は、異なる処置レジメの使用に関連する1以上のAEの発生率および/または重症度を低減する処置レジメを意味する。
【0087】
“抗体”(Ab)は、抗原に特異的に結合し、ジスルフィド結合により相互接続された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む、糖タンパク質免疫グロブリンまたはその抗原結合部分を含むべきであるが、これに限定されない。各H鎖は、重鎖可変領域(ここではVと略す)および重鎖定常領域を含む。重鎖定常領域は、少なくとも3定常ドメイン、CH1、CH2およびCH3を含む。各軽鎖は、軽鎖可変領域(ここではVと略す)および軽鎖定常領域を含む。軽鎖定常領域は1定常ドメイン、Cを含む。VおよびV領域は、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存的な領域が点在する、超可変性の領域にさらに細分され得る。各VおよびVは3CDRおよび4FRを含み、アミノ末端からカルボキシ末端に次の順番で配置される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4。重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体経路の第一成分(C1q)を含む、宿主組織または因子への免疫グロブリンの結合を介在し得る。
【0088】
免疫グロブリンは、IgA、分泌型IgA、IgGおよびIgMを含むが、これらに限定されない一般的に知られるアイソタイプの何れかに由来し得る。IgGサブクラスは当業者に周知であり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含むが、これらに限定されない。“アイソタイプ”は、重鎖定常領域遺伝子によりコードされる抗体クラスまたはサブクラス(例えば、IgMまたはIgG1)をいう。用語“抗体”は、例として、天然に存在するおよび天然に存在しない両方の抗体;モノクローナルおよびポリクローナル抗体;キメラおよびヒト化抗体;ヒトまたは非ヒト抗体;完全合成抗体;および一本鎖抗体を含む。非ヒト抗体は、ヒトでの免疫原性を低減するために組み換え方法によりヒト化し得る。明示しない限りかつ文脈から他のことが示されない限り、用語“抗体”は前記免疫グロブリンの何れかの抗原結合フラグメントまたは抗原結合部分も含み、一価および二価フラグメントまたは部分および一本鎖抗体を含む。
【0089】
“単離抗体”は、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体をいう(例えば、PD-1に特異的に結合する単離抗体は、PD-1以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的にない)。PD-1に特異的に結合する単離抗体は、しかしながら、異なる種からのPD-1分子などの他の抗原と交差反応性を有し得る。さらに、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含み得ない。
【0090】
用語“モノクローナル抗体”(mAb)は、天然に存在しない単一分子組成の抗体分子、すなわち、一次配列が本質的に同一であり、特定のエピトープに対して単一結合特異性および親和性を示す抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体は単離抗体の例である。MAbsは、ハイブリドーマ、組み換え、トランスジェニックまたは当業者に知られる他の技法により産生され得る。
【0091】
“ヒト抗体”(HuMAb)は、FRおよびCDRの両方がヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する可変領域を有する抗体をいう。さらに、抗体が定常領域を含むならば、定常領域もヒト生殖系列免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖系列免疫グロブリン配列によりコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、変異は、インビトロで無作為または部位特異的変異誘発によりまたはインビボで体細胞変異により導入される)。しかしながら、ここで使用する用語“ヒト抗体”は、マウスなどの他の哺乳動物種由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことは意図しない。用語“ヒト抗体”および“完全ヒト抗体”は、同義的に使用する。
【0092】
“ヒト化抗体”は、非ヒト抗体のCDR外のアミノ酸の一部、大部分または全てがヒト免疫グロブリンに由来する対応するアミノ酸に置き換えられている抗体をいう。抗体のヒト化形態のある実施態様において、CDR外のアミノ酸の一部、大部分または全てはヒト免疫グロブリンで置き換えられており、一方1以上のCDR内のアミノ酸の一部、大部分または全ては変わらない。アミノ酸の小さな付加、欠失、挿入、置換または修飾は、抗体が特定の抗原に結合する能力を無効にしない限り、許容される。“ヒト化抗体”は、元の抗体に類似する抗原特異性を維持する。ある実施態様において、ヒト化抗体のCDRは、非ヒト哺乳動物抗体のCDRを含む。他の実施態様において、ヒト化抗体のCDRは、操作された合成抗体からのCDRを含む。
【0093】
“キメラ抗体”は、可変領域がマウス抗体由来であり、定常領域がヒト抗体由来であるような、可変領域がある種由来であり、定常領域が他の種由来である抗体をいう。
【0094】
“抗抗原抗体”は、抗原に特異的に結合する抗体をいう。例えば、抗PD-1抗体はPD-1に特異的に結合し、抗CTLA-4抗体はCTLA-4に特異的に結合する。
【0095】
抗体の“抗原結合部分”(“抗原結合フラグメント”とも称する)は、抗体全体により結合される抗原に特異的に結合する能力を保持した、抗体の1以上のフラグメントをいう。
【0096】
“癌”は、体内の異常細胞の制御されない増殖により特徴付けられる、種々の疾患の広い群をいう。“癌”または“癌組織”は腫瘍を含み得る。無制御の細胞分裂および増殖は、近隣組織を侵襲し、リンパ系または血流を介して遠位部位に転移もできる悪性腫瘍の形成をもたらす。転移後、遠位腫瘍を元の転移前腫瘍に“由来する”ということができる。例えば、SCLC“に由来する腫瘍”は、転移SCLCの結果である腫瘍をいう。遠位腫瘍が転移腫瘍に由来するため、腫瘍に“由来する”は転移前腫瘍も含み得て、例えば、SCLCに由来する腫瘍はSCLCを含み得る。
【0097】
“細胞毒性Tリンパ球抗原-4”(CTLA-4)は、CD28ファミリーに属する免疫阻害性受容体をいう。CTLA-4は、インビボで排他的にT細胞に発現され、2リガンド、CD80およびCD86(別名それぞれB7-1およびB7-2)に結合する。ここで使用する用語“CTLA-4”は、ヒトCTLA-4(hCTLA-4)、hCTLA-4のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログおよびhCTLA-4と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hCTLA-4配列は、GenBank Accession No. AAB59385下に見ることができる。
【0098】
用語“免疫療法”は、免疫応答の誘発、増強、抑制または他の修飾を含む方法による、疾患を有する、再発するリスクにあるまたは再発を有する対象の処置をいう。対象の“処置”または“治療”は対象に、疾患と関連する症状、合併症、状態または生化学的兆候の発症、進行、発生、重症度または再発の回復、軽減、寛解、阻止、遅延または防止を目的として実施するあらゆるタイプの介入または手順または活性剤の投与をいう。
【0099】
ここで使用する“PD-L1陽性”は、“少なくとも約1%のPD-L1発現”と相互交換可能に使用され得る。ある実施態様において、PD-L1発現は、当分野で知られるあらゆる方法により使用できる。他の実施態様において、PD-L1発現は自動化IHCにより測定される。PD-L1陽性腫瘍は、自動化IHCにより測定して、PD-L1を発現する腫瘍細胞を少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または約100%有し得る。ある実施態様において、“PD-L1陽性”は、細胞表面にPD-L1を発現する少なくとも100細胞があることを意味する。他の実施態様において、“PD-L2陽性”は、細胞表面にPD-L2を発現する少なくとも100細胞があることを意味する。
【0100】
“プログラム死-1”(PD-1)は、CD28ファミリーに属する免疫阻害性受容体をいう。PD-1は、インビボで主に活性化T細胞に存在し、2リガンド、PD-L1およびPD-L2に結合する。ここで使用する用語“PD-1”は、ヒトPD-1(hPD-1)、hPD-1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログおよびhPD-1と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hPD-1配列は、GenBank Accession No. U64863に見ることができる。
【0101】
“プログラム死リガンド-1”(PD-L1)は、PD-1への結合によりT細胞活性化およびサイトカイン分泌を下方制御する、PD-1に対する2つの細胞表面糖タンパク質リガンドの一方である(他方はPD-L2)。ここで使用する用語“PD-L1”は、ヒトPD-L1(hPD-L1)、hPD-L1のバリアント、アイソフォームおよび種ホモログおよびhPD-L1と少なくとも1つの共通エピトープを有するアナログを含む。完全hPD-L1配列は、GenBank Accession No. Q9NZQ7下に見ることができる。
【0102】
“対象”はあらゆるヒトまたは非ヒト動物を含む。用語“非ヒト動物”は、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌおよびマウス、ラットおよびモルモットなどの齧歯類などの脊椎動物を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、対象はヒトである。用語、“対象”および“患者”は、ここでは相互交換可能に使用される。
【0103】
薬物または治療剤の“治療有効量”または“治療有効投与量”は、単独でまたは他の治療剤と組み合わせで使用したとき、疾患症状の重症度の低減、無疾患症状期の頻度および期間の増大または疾患罹患による機能障害または能力障害の予防により証明される、疾患発症に対して対象を保護するまたは疾患退縮を促進する、薬物の任意の量である。治療剤が疾患退縮を促進する能力は、治験中ヒト対象において、ヒトにおける有効性を予測する動物モデル系においてまたはインビトロアッセイにおける薬剤の活性のアッセイによるなど、当業者に知られる多様な方法を使用して評価できる。
【0104】
ここで使用する“治療量以下の用量”は、治療化合物(例えば、抗体)の、過増殖性疾患(例えば、癌)の処置に単独で使用したときの該治療化合物の通常のまたは典型的用量より低い用量を意味する。
【0105】
例として、“抗癌剤”は、対象における癌退縮を促進するまたはさらなる腫瘍増殖を阻止する。ある実施態様において、治療有効量の薬物は、癌退縮を、癌を排除する点まで促進する。“癌退縮を促進”は、単独でまたは抗新生物剤と組み合わせて、有効量の薬物の投与が、腫瘍増殖またはサイズの減少、腫瘍壊死、少なくとも1つの疾患症状の重症度低減、無疾患症状期の頻度および期間の増大または疾患罹患による機能障害または能力障害の予防をもたらすことを意味する。さらに、処置に関連する用語“有効”および“有効性”は、薬理学的有効性および生理学的安全性の両方を含む。薬理学的有効性は、薬物が患者における癌退縮を促進する能力をいう。生理学的安全性は、薬物投与に由来する、細胞、臓器および/または生物レベルでの毒性または他の有害生理学的作用(有害作用)のレベルをいう。
【0106】
腫瘍処置の例として、治療有効量の抗癌剤は、未処置対象に対して、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%または少なくとも約100%細胞増殖または腫瘍増殖を阻害できる。本発明の他の実施態様において、腫瘍退縮は、少なくとも約20日、少なくとも約30日、少なくとも約40日、少なくとも約50日または少なくとも約60日の期間観察され、かつ継続し得る。治療有効性のこれらの最終的評価があっても、免疫治療剤の評価は、“免疫関連応答パターン”も参酌しなければならない。
【0107】
“免疫関連応答パターン”は、癌特異的免疫応答誘発または自然免疫過程の修飾により、抗腫瘍効果を生ずる免疫療法剤で処置された癌患者でしばしば観察される臨床的応答パターンをいう。この応答パターンは、従来の化学療法剤の評価では、疾患進行として分類され、薬物無効と同義であって、当初の腫瘍負荷増加または新規病変出現後の有益な治療効果により特徴付けられる。従って、免疫療法剤の適切な評価は、標的疾患に対するこれら薬剤の効果の長期モニタリングを必要とし得る。
【0108】
治療有効量の薬物は、癌を発症するリスクにある(例えば、前悪性状態を有する対象)または癌の再発を有する対象に単独でまたは抗新生物剤と組み合わせて投与したとき、癌の発症または再発を阻止する薬物のあらゆる量、すなわち“予防有効量”を含む。ある実施態様において、予防有効量は癌の発症または再発を完全に阻止する。癌の発症または再発の“阻止”は、癌発症もしくは再発の可能性の低減または癌の発症もしくは再発の完全な阻止を意味する。
【0109】
ここで使用する用語“体重に基づく用量”は、患者に投与される用量が患者の体重に基づき計算されることを意味する。例えば、体重60kgの患者が3mg/kgの抗PD-1抗体を必要とするとき、投与のための抗PD-1抗体の適切な量(すなわち、180mg)を計算し、使用できる。
【0110】
本発明の方法に関する用語“固定用量”の使用は、単一組成物中の2種以上の異なる抗体(例えば、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体)が、互いに組成物に特定の(固定)比で存在することを意味する。ある実施態様において、固定用量は、抗体の重量(例えば、mg)に基づく。ある実施態様において、固定用量は抗体の濃度(例えば、mg/ml)に基づく。ある実施態様において、比は、少なくとも約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、約1:10、約1:15、約1:20、約1:30、約1:40、約1:50、約1:60、約1:70、約1:80、約1:90、約1:100、約1:120、約1:140、約1:160、約1:180、約1:200、約200:1、約180:1、約160:1、約140:1、約120:1、約100:1、約90:1、約80:1、約70:1、約60:1、約50:1、約40:1、約30:1、約20:1、約15:1、約10:1、約9:1、約8:1、約7:1、約6:1、約5:1、約4:1、約3:1または約2:1mg第一抗体(例えば、抗PD-1抗体)対mg第二抗体(例えば、抗CTLA-4抗体)である。例えば、3:1比の抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体は、バイアルに約240mgの抗PD-1抗体および80mgの抗CTLA-4抗体または約3mg/mlの抗PD-1抗体および1mg/mlの抗CTLA-4抗体が含まれ得ることを意味し得る。
【0111】
本発明の方法および投与量に関する用語“均一用量”の使用は、患者の体重または体表面積(BSA)と無関係に患者に投与される用量を意味する。従って、均一用量はmg/kg用量としてではなく、薬剤の絶対量として提供される(例えば、抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体)。例えば、60kgのヒトと100kgのヒトは同じ用量の抗体を受ける(例えば、240mgの抗PD-1抗体)。
【0112】
選択肢(例えば、“または”)の使用は、該選択肢の一方、両方またはこれらの任意の組み合わせを意味すると解釈すべきである。ここで使用する単数表現は、任意の言及されるまたは列挙される成分の“1以上”をいうと解釈されるべきである。
【0113】
用語“約”または“本質的に含む”は、当業者により決定される、特定の値または組成の許容される誤差範囲内の値または組成をいい、これは、一部どのように値または組成が測定または決定されたか、すなわち、測定系の限界に依存する。例えば、“約”または“本質的に含む”は、当分野の実務による1または1を超える標準偏差内を意味する。あるいは、“約”または“本質的に含む”は10%または20%までの範囲を意味し得る(すなわち、±10%または±20%)。例えば、約3mgは、2.7mg~3.3mgの間の任意の数(10%について)または2.4mg~3.6mgの間の任意の数(20%について)を含み得る。さらに、特に生物学的系または過程に関し、本用語は値の1桁までまたは5倍までを意味し得る。特定の値または組成が本明細書および特許請求の範囲に提供されるとき、特に断らない限り、“約”または“本質的に含む”の意味は、その特定の値または組成について許容される誤差範囲内であると仮定すべきである。
【0114】
ここで使用する用語“約1週に1回”、“約2週に1回”または任意の他の類似の投与間隔は、大凡の数を意味する。“約1週に1回”は、7日±1日毎、すなわち、6日毎~8日毎を含み得る。“約2週に1回”は、14日±3日毎、すなわち、11日毎~17日毎を含み得る。同様の近似が、例えば、約3週に1回、約4週に1回、約5週に1回、約6週に1回および約12週に1回に適用される。ある実施態様において、約6週に1回または約12週に1回の投与間隔は、最初の投与を、第一週目の任意の曜日にしてよく、次いでの次の投与を、それぞれ第6週目または第12週目の任意の曜日に投与してよいことを意味する。他の実施態様において、約6週に1回または約12週に1回の投与間隔は、最初の用量を第一週目の特定の曜日(例えば、月曜日)に投与し、次いで、次の用量をそれぞれ第6週目または第12週目の特定の曜日(すなわち、月曜日)に投与することを意味する。
【0115】
特に断らない限り、ここに記載するあらゆる濃度範囲、パーセンテージ範囲、比率範囲または整数範囲は、記載範囲内のあらゆる整数の値および適切であるならばその分数(例えば、整数の1/10および1/100)を含むと解釈すべきである。
【0116】
本発明の種々の態様を、次のサブセクションでさらに詳述する。
【0117】
本発明の方法
本発明は、SCLCに由来する腫瘍を有する対象を処置する方法を提供し、この方法は、対象にプログラム死-1(PD-1)受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD-1抗体”)を投与することを含む。本発明は、さらにSCLCに由来する腫瘍を有する対象を処置する方法を提供し、この方法は、対象に(a)PD-1受容体に特異的に結合し、PD-1活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗PD-1抗体”);および(b)細胞毒性Tリンパ球抗原-4(CTLA-4)に特異的に結合し、CTLA-4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分(“抗CTLA-4抗体”)の組み合わせを投与することを含む。ある実施態様において、対象はヒト患者である。
【0118】
ある実施態様において、対象は化学療法剤未処置患者である(例えば、あらゆる化学療法剤を先に受けていない患者)。他の実施態様において、対象は他の癌治療(例えば、化学療法剤)を受けているが、そのような他の癌治療に抵抗性または難治性である。ある特定の実施態様において、SCLCが再発性SCLCである。ある実施態様において、対象が、腫瘍を処置するための少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つまたは少なくとも5つの先行ライン治療を受けている。ある実施態様において、対象は、腫瘍を処置するために1つの先行ラインの治療を受けていた。他の実施態様において、対象は、腫瘍を処置するために2つの先行ラインの治療を受けていた。他の実施態様において、対象は、腫瘍を処置するために3つの先行ラインの治療を受けていた。他の実施態様において、対象は、腫瘍を処置するために4つの先行ラインの治療を受けていた。他の実施態様において、対象は、腫瘍を処置するために5つの先行ラインの治療を受けていた。他の実施態様において、対象は、腫瘍を処置するために5つを超える先行ラインの治療を受けていた。
【0119】
ある実施態様において、先行ラインの治療は化学療法剤を含む。ある実施態様において、化学療法剤は白金ベースの治療を含む。ある実施態様において、白金ベースの治療はシスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、トリプラチン テトラニトレート、フェナントリプラチン、ピコプラチン、サトラプラチンおよびこれらの任意の組み合わせからなる群から選択される白金ベースの抗新生物を含む。ある特定の実施態様において、白金ベースの治療はシスプラチン(例えば、エトポシドと組み合わせたシスプラチン)を含む。ある実施態様において、対象は先の放射線療法を受けている。他の実施態様において、先の治療は抗体治療を含む。
【0120】
ある特定の実施態様において、対象は、変異形態のEGFRまたはKRAS遺伝子を発現する癌細胞を有する。ある実施態様において、対象はPD-L1陽性である癌細胞を有する。ある実施態様において、対象はPD-L1陰性である癌細胞を有する。ある実施態様において、対象は喫煙したことがない。ある実施態様において、対象は以前喫煙していた。ある実施態様において、対象は現在喫煙している。ある実施態様において、SCLCは小細胞癌を含む。ある実施態様において、SCLCは複合型小細胞癌を含む。
【0121】
ある実施態様において、本方法は、有効量の抗PD-1抗体を投与することまたは有効量の抗PD-L1抗体および有効量の抗CTLA-4抗体を投与することを含む。有効量の抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体は、均一用量でも体重に基づく用量でもよい。
【0122】
ある実施態様において、本発明は、癌を処置するために、抗PD-1アンタゴニストと抗CD30抗体を組み合わせで投与することを含む、癌または癌を有する対象を処置する方法を含む。ここで使用する“抗PD-1アンタゴニスト”は、PD-1/PD-L1のシグナル経路が遮断されるように、PD-1(受容体)とPD-L1(リガンド)の相互作用を阻害するあらゆる分子を含む。他の実施態様において、抗PD-1アンタゴニストはPD-1-Fc融合タンパク質である。ある実施態様において、抗PD-1アンタゴニストは、PD-1とPD-L1の相互作用を阻害または阻止する、抗PD-1融合タンパク質、アンチセンス分子、小分子、リボザイムまたはナノボディを含む。
【0123】
ある実施態様において、本発明の治療(例えば、抗PD-1抗体の投与または抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の投与)は、対象の生存期間を効果的に延長させる。ある実施態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体組み合わせ治療は、対象の無進行生存を延長させる。ある実施態様において、本発明の抗PD-1抗体または抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体組み合わせ治療は、標準治療治療剤と比較して、対象の無進行生存を延長させる。ある実施態様において、本発明の抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体組み合わせ治療は、抗PD-1抗体単独(すなわち、抗PD-1抗体単剤療法)と比較して、対象の無進行生存を延長させる。ある実施態様において、本発明の抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体組み合わせ治療は、他の抗PD-1抗体組み合わせと比較して、対象の無進行生存を延長させる。
【0124】
ある実施態様において、抗PD-1抗体の投与または抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の投与後、SCLCに由来する腫瘍を有する対象は、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約12か月、少なくとも約13か月、少なくとも約14か月少なくとも約15か月、少なくとも約16か月、少なくとも約17か月、少なくとも約18か月、少なくとも約19か月、少なくとも約20か月、少なくとも約21か月、少なくとも約22か月、少なくとも約23か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の全生存期間を示し得る。
【0125】
他の実施態様において、本発明の治療(例えば、抗PD-1抗体治療または抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体治療)の投与後、対象の生存期間または全生存期間は、標準治療治療剤(例えば、白金ベースの化学療法剤)のみまたは該治療の異なる投与スケジュールで処置されている他の対象と比較して、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約6か月または少なくとも約1年延長される。例えば、ここに開示する抗PD-1抗体で処置された対象の生存期間または全生存期間は、標準治療治療剤(例えば、白金ベースの化学療法剤)のみまたは抗PD-1抗体治療の異なる投与スケジュールで処置されている他の対象と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%または少なくとも約75%延長される。
【0126】
他の実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体を含む組み合わせ治療の投与後、対象の生存期間または全生存期間は、標準治療治療剤(例えば、白金ベースの化学療法剤)のみ、抗PD-1抗体単独または組み合わせ治療の異なる投与スケジュールで処置された他の対象と比較して、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約6か月または少なくとも約1年延長される。例えば、ここに開示する抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体組み合わせ治療で処置された対象の生存期間または全生存期間は、標準治療治療剤(例えば、白金ベースの化学療法剤)のみ、抗PD-1抗体単独または組み合わせ治療の異なる投与スケジュールで処置された他の対象と比較して、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%または少なくとも約75%延長される。
【0127】
ある実施態様において、本発明の治療は、対象の無進行生存の期間を効果的に延長する。ある実施態様において、対象は、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年の無進行生存を示す。
【0128】
ある実施態様において、抗PD-1および抗CTLA-4抗体は静脈内投与用に製剤化される。ある実施態様において、抗PD-1および抗CTLA-4抗体は逐次的に投与される。ある実施態様において、抗PD-1および抗CTLA-4抗体は互いに30分以内に投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体は抗CTLA-4抗体の前に投与される。他の実施態様において、抗CTLA-4抗体は抗PD-1抗体の前に投与される。他の実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体は別々の組成物で同時に投与される。さらなる実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体は同時投与用の単一組成物として混合されている。
【0129】
ある実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体は、固定用量で投与される。
【0130】
ある実施態様において、対象における腫瘍のPD-L1状態は、ここに記載する何らかの組成物の投与または何らかの方法の使用前に測定される。ある実施態様において、腫瘍のPD-L1発現レベルは少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約4%、少なくとも約5%、少なくとも約6%、少なくとも約7%、少なくとも約8%、少なくとも約9%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約20%または少なくとも約20%より多い。他の実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は、少なくとも約1%である。他の実施態様において、対象のPD-L1状態は、少なくとも約5%である。ある実施態様において、腫瘍のPD-L1状態は、少なくとも約10%である。
【0131】
ある実施態様において、≧1%PD-L1発現を有する腫瘍を有する対象の中央無進行生存は、<1%PD-L1発現を有する腫瘍を有する対象の中央無進行生存より少なくとも約1週、少なくとも約2週、少なくとも約3週、少なくとも約4週、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月または少なくとも約1年長い。ある実施態様において、≧1%PD-L1発現を得揺する使用を有する対象の無進行生存は少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、少なくとも約6か月、少なくとも約7か月、少なくとも約8か月、少なくとも約9か月、少なくとも約10か月、少なくとも約11か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約2年、少なくとも約3年、少なくとも約4年または少なくとも約5年である。
【0132】
PD-L1発現を評価するために、ある実施態様において、試験組織サンプルを治療を必要とする患者から得ることができる。他の実施態様において、PD-L1発現の評価を、試験組織サンプルを得ることなく達成し得る。ある実施態様において、適当な患者の選択は、(i)所望により癌を有する患者の組織から得た試験組織サンプルを用意し、該試験組織サンプルは腫瘍細胞および/または腫瘍浸潤性炎症性細胞を含み;そして(ii)試験組織サンプルにおける細胞表面にPD-L1を発現する細胞の割合を、試験組織サンプルにおける細胞表面にPD-L1を発現する細胞の割合が、予め決定した閾値レベルより高いことに基づき、評価することを含む。
【0133】
測定を含む方法の何れにおいても、しかしながら、患者から得た試験組織サンプルの供給を含む段階が、任意段階であることは理解されるべきである。ある実施態様において、試験組織サンプルにおける細胞表面にPD-L1を発現する細胞の数または比率を同定または決定するためのの“測定”または“評価”段階は、例えば、逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)アッセイまたはIHCアッセイの実施により、PD-L1発現をアッセイする変革方法により実施されることは理解されるべきである。ある他の実施態様において、変革方法段階は含まれず、PD-L1発現は、例えば、研究所からの試験結果報告のレビューにより、評価される。ある実施態様において、PD-L1発現の評価までのおよびそれを含む方法の段階は、医師または他の医療従事者に抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体治療の適当な候補の選択に使用するために提供され得る、中間結果を提供する。ある実施態様において、中間報告を提供する段階は、医師または医師の指示の下に働く誰かにより実施される。他の実施態様において、これらの段階は、独立した研究所でまたは検査技師などの独立した人により実施される。
【0134】
本方法の何れかのある実施態様において、PD-L1を発現する細胞の割合は、PD-L1 RNAの存在を決定するアッセイの実施により評価される。さらなる実施態様において、PD-L1 RNAの存在は、RT-PCR、インサイチュハイブリダイゼーションまたはRNase保護により決定される。他の実施態様において、PD-L1を発現する細胞の比率は、PD-L1ポリペプチドの存在を決定するアッセイの実施により評価される。さらなる実施態様において、PD-L1ポリペプチドの存在は、免疫組織化学(IHC)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、インビボ造影またはフローサイトメトリーにより決定される。ある実施態様において、PD-L1発現は、IHCによりアッセイされる。これらの全方法の他の実施態様において、PD-L1の細胞表面発現は、例えば、IHCまたはインビボ造影を使用してアッセイされる。
【0135】
造影技法は、癌研究および処置における重要なツールを提供している。陽電子放出断層撮影(PET)、単光子放射型コンピュータ断層撮影法(SPECT)、蛍光イメージング(FRI)、蛍光介在トモグラフィー(FMT)、生物発光造影(BLI)、共焦点レーザー走査型顕微鏡(LSCM)および多光子顕微鏡(MPM)を含む分子造影系の最近の発展は、癌研究におけるこれら技法のさらに広い使用の到来を告げる可能性がある。これら分子造影系の一部は、医師が体のどこに腫瘍があるかを見るだけでなく、腫瘍行動および/または治療剤の応答に影響する特定の分子、細胞および生物学的過程の発現および活性も可視化することを可能とする(Condeelis and Weissleder, "In vivo imaging in cancer," Cold Spring Harb. Perspect. Biol. 2(12):a003848 (2010))。PETの感受性および解像度と結びついた抗体特異性は、組織サンプルにおける抗原の発現のモニタリングおよびアッセイに特に魅力的な、免疫PET造影となる(McCabe and Wu, "Positive progress in immunoPET-not just a coincidence," Cancer Biother. Radiopharm. 25(3):253-61 (2010); Olafsen et al., "ImmunoPET imaging of B-cell lymphoma using 124I-anti-CD20 scFv dimers (diabodies)," Protein Eng. Des. Sel. 23(4):243-9 (2010))。本方法の何れかのある実施態様において、PD-L1発現は免疫PET造影によりアッセイされる。本方法の何れかのある実施態様において、試験組織サンプルにおけるPD-L1を発現する細胞の割合を、試験組織サンプルにおける細胞表面のPD-L1ポリペプチドの存在を決定するためのアッセイの実施により評価する。ある実施態様において、試験組織サンプルはFFPE組織サンプルである。他の実施態様において、PD-L1ポリペプチドの存在を、IHCアッセイにより決定する。さらなる実施態様において、IHCアッセイは、自動化工程により実施される。ある実施態様において、IHCアッセイは、PD-L1ポリペプチドに結合する抗PD-L1モノクローナル抗体を使用して、実施される。
【0136】
本方法のある実施態様において、自動化IHC方法を、FFPE組織検体における細胞表面のPD-L1の発現のアッセイに使用する。本発明pは、試験組織サンプルにおけるヒトPD-L1抗原の存在を検出するまたはヒトPD-L1抗原のレベルもしくは抗原を発現するサンプルにおける細胞の割合を定量する方法を提供し、この方法は、試験サンプルおよび陰性対照サンプルと、ヒトPD-L1に特異的に結合するモノクローナル抗体を、抗体またはその一部とヒトPD-L1の複合体の形成を可能とする条件下で接触させることを含む。ある実施態様において、試験および対照組織サンプルはFFPEサンプルである。次いで、複合体形成を検出し、ここで、試験サンプルと陰性対照サンプルの間の複合体形成の差異が、サンプルにおけるヒトPD-L1抗原の存在の指標である。種々の方法を、PD-L1発現の定量に使用する。
【0137】
特定の実施態様において、自動化IHC方法は、(a)自動染色装置にマウントした組織切片を脱パラフィン処理および再水和し、(b)デクローキングチャンバーおよびpH6緩衝液を使用して、110℃で10分加熱して、抗原を回収し、(c)自動染色装置に試薬を設定し、そして(d)自動染色装置を、組織検体内在性ペルオキシダーゼ中和;スライド上の非特異的タンパク質結合部位遮断;スライドと一次抗体のインキュベート;一次後遮断剤とのインキュベート;NovoLinkポリマーとのインキュベート;色素原基質添加および展開;およびヘマトキシリンでの対比染色の段階を含むように、起動させることを含む。
【0138】
腫瘍組織サンプルでPD-L1発現を評価するために、病理学者は、顕微鏡各視野における膜PD-L1腫瘍細胞数を試験し、思考的に陽性である細胞のパーセンテージを概算し、次いで最終パーセンテージを得るために標準化する。種々の染色高度を、0/陰性、1+/弱、2+/中および3+/強と規定する。一般に、パーセンテージ値はまず0および3+バケットに割り当てられ、次いで、中間の1+および2+強度が考慮される。高度に不均一な組織について、検体をゾーンに分け、各ゾーンを別々に点数化し、次いで、パーセンテージ値の1つのセットに合わせる。種々の染色強度の陰性および陽性細胞のパーセンテージを各領域から決定し、中央値を各ゾーンに与える。最終パーセンテージ値を、陰性、1+、2+および3+の各染色強度カテゴリーについて、組織に付与する。全染色強度の合成は100%である必要がある。ある実施態様において、PD-L1陽性とするのに必要な細胞数の閾値は少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175または少なくとも約200細胞である。ある実施態様において、PD-L1陽性とするのに必要な細胞数の閾値は少なくとも約100細胞である。
【0139】
染色を、マクロファージおよびリンパ球などの腫瘍浸潤性炎症性細胞でも評価する。ほとんどの場合、マクロファージは、染色が大部分のマクロファージで観察されるため、内部陽性対照として働く。3+強度で染色される必要はないが、マクロファージが染色されないのは、何らかの技術的不成功を除外するために考慮すべきである。マクロファージおよびリンパ球は、原形質膜染色について評価され、各細胞カテゴリーについて陽性または陰性であるとしてのみ全サンプルについて記録される。染色はまた外側/内側腫瘍免疫細胞指定によっても特徴付けされる。“内側”は、免疫細胞が腫瘍組織内および/または腫瘍細胞間で物理的に介入されることなく腫瘍領域境界上にあることを意味する。“外側”は、腫瘍と物理的結合がなく、免疫細胞は接続組織または何らかの関連隣接組織に付随する末梢に見られることを意味する。
【0140】
これらの点数化方法のある実施態様において、サンプルは、独立して操作する2名の病理学者により点数化され、点数がその後固定される。ある他の実施態様において、陽性および陰性細胞の同定を、適切なソフトウェアを使用して点数化する。
【0141】
ヒストスコアは、IHCデータのより定量的手段として使用される。ヒストスコアは、次のとおり計算される。
ヒストスコア=[(%腫瘍×1(低強度))+(%腫瘍×2(中強度))+(%腫瘍×3(高強度)]
【0142】
ヒストスコア決定のために、病理学者は検体内の各強度カテゴリーの染色細胞のパーセンテージを概算する。大部分のバイオマーカーの発現が不均一であるため、ヒストスコアは発現全体の真の表現である。最終ヒストスコア範囲は0(無発現)~300(最大発現)である。
【0143】
試験組織サンプルIHCにおけるPD-L1発現を定量する別の手段は、腫瘍浸潤性炎症性細胞によるPD-L1発現パーセントで乗算した炎症の密度として規定されるスコアである、適合炎症スコア(AIS)の決定である(Taube et al., "Colocalization of inflammatory response with B7-h1 expression in human melanocytic lesions supports an adaptive resistance mechanism of immune escape," Sci. Transl. Med. 4(127):127ra37 (2012))。
【0144】
本方法は、あらゆるステージのSCLCに由来する腫瘍を処置し得る。SCLCについて、潜在的(隠れ;TX、N0およびM0)ステージ、ステージ0(上皮内癌;Tis、N0およびM0)、ステージIA(T1a/T1b、N0およびM0)、ステージIB(T2a、N0、M0)、ステージIIA(T1a/T1b、N1およびM0;T2a、N1およびM0;またはT2b、N0およびM0)、ステージIIB(T2b、N1およびM0;またはT3、N0、M0)、ステージIIIA(T1~T3、N2およびM0;T3、N1およびM0;またはT4、N0~N1およびM0)、ステージIIIB(何れかのT、N3、M0;またはT4、N2およびM0)およびステージIV(何れかのT、何れかのNおよびM1a;または何れかのT、何れかのNおよびM1b)の少なくとも9ステージが使用される(例えば、http://www.cancer.org/cancer/lungcancer-smallcell/detailedguide/small-cell-lung-cancer-staging参照、最終アクセス2016年6月2日)。潜在的ステージにおいて、癌は造影または気管支鏡検査により見ることはできない。ステージ0において、癌細胞は、気道の裏層に見られる。
【0145】
ある実施態様において、本方法は、ステージI SCLCを処置する。ステージI SCLCはステージIAおよびIBに分けられる。ステージIAにおいて、腫瘍直径3cmより大きくなく、肺を囲む膜に到達しておらず、気管支の主枝に影響せず、リンパ節または遠隔部位に拡散していない。ステージIBにおいて、次の1以上が当てはまる:1)腫瘍は3cmより大きいが、5cmより大きくない;2)癌は主気管支に広がっているが、気管分岐部の2cm以内ではない;3)腫瘍は内臓胸膜(肺を囲む膜)内に増殖し、5cmより大きくない;または4)腫瘍は気道を一部閉塞させる(および5cmより大きくない)。
【0146】
他の実施態様において、本発明の方法は、ステージII SCLCを処置する。ステージII SCLCは、ステージIIAおよびIIBに分けられる。ステージIIAにおいて、癌は、肺および/または気管支が肺に入る領域周囲内のリンパ節(肺門リンパ節)に広がっている。癌がリンパ節に広がっていたら、癌は、胸部の腫瘍と同じ側のリンパ節にしか拡散し得ない。癌がリンパ節に広がっていないならば、癌が気管支が肺に入る領域に拡散しており、次の1以上が当てはまるならば、癌はステージIIAである:1)腫瘍は3cmより大きいが、5cmより大きくない;2)腫瘍は主気管支に増殖しているが、気管分岐部の2cm以内ではない(および5cmより大きくない);3)腫瘍は内臓胸膜(肺を囲む膜)内に増殖し、5cmより大きくない;または4)腫瘍は気道を一部閉塞させる(および5cmより大きくない)。腫瘍は、癌がリンパ節に広がっておらず、かつ次の1以上が当てはまるならば、ステージIIAと見なされる:1)腫瘍は5cmより大きいが、7cmより大きくない;2)癌は主気管支に広がっており、気管分岐部の場所より少なくとも2cm離れている;3)腫瘍は内臓胸膜(肺を囲む膜)まで広がっている;または4)腫瘍は気道を一部閉塞させる(および直径5~7cmである)。ステージIIBにおいて、癌はリンパ節に広がっているか、またはいない。癌がリンパ節に広がっていたら、癌は、胸部の腫瘍と同じ側のリンパ節にしか拡散し得ず、癌を有するリンパ節は肺内または気管支近辺であり、次の1以上が当てはまる:1)腫瘍は5cmより大きいが、7cmより大きくない;2)腫瘍は主気管支に広がっており、気管分岐部の場所より少なくとも2cm離れている;3)腫瘍は内臓胸膜(肺を囲む膜)に広がっており、直径5~7cmである;または4)癌は気道を一部閉塞させる(および直径5~7cmである)。腫瘍はまた癌がリンパ節に広がっておらず、かつ次の1以上が当てはまるならば、ステージIIBと見なされる:1)腫瘍は7cmより大きい;2)癌は、胸壁、胸部と腹部を分ける呼吸筋(横隔膜)、肺間の空間を囲む膜(縦隔胸膜)または心臓を囲む嚢の膜(壁側心膜)に増殖している;3)癌は主気管支に侵襲し、気管分岐部に2cm(約3/4インチ)より近いが、気管分岐部自体は巻き込まない;4)癌は、肺全体の虚脱を引き起こすまたは肺全体における肺炎を引き起こすのに十分気道に増殖している;または5)2以上の別々の腫瘍小結節が肺の同じ葉に存在する。
【0147】
他の実施態様において、あらゆる本発明の方法は、ステージIIIAおよび/またはステージIIIBを含むステージIII SCLCを処置する。ステージIIIAは3セクションに分けられる。これら3セクションは、1)腫瘍のサイズ;2)どこに腫瘍が見られるかおよび3)どの(もしあれば)リンパ節が癌を有するかに基づく。ステージIIIA SCLCの第一タイプにおいて、主腫瘍はあらゆるサイズであってよく、肺の間の空間(縦隔)、心臓、心臓近くの大血管(例えば大動脈)、ウィンドパイプ(気管)、喉と胃を繋ぐ管(食道)、背骨または気管分岐部に増殖しておらず、同じ肺の異なる葉にも広がっていない。さらに、癌は気管分岐部(気管支が右および左気管支に分けられる点)周囲または肺の間の空間(縦隔)のリンパ節に広がっており、これらリンパ節は主肺腫瘍と同じ側にあるが、癌は遠位部位に広がっていない。ステージIIIA SCLCの第二タイプにおいて、癌は胸部の腫瘍と同じ側のリンパ節に広がっており、癌を有するリンパ節は肺内または気管支近くにある。さらに:1)腫瘍は直径7cmより大きい;2)癌は、胸壁、胸部と腹部を分ける呼吸筋(横隔膜)、肺間の空間を囲む膜(縦隔胸膜)または心臓を囲む嚢の膜(壁側心膜)に増殖している;3)癌は主気管支に侵襲し、気管分岐部に2cmより近いが、気管分岐部自体を巻き込まない;4)2以上の別々の腫瘍小結節が肺の同じ葉に存在する;および5)癌は、肺全体の虚脱を引き起こすまたは肺全体における肺炎を引き起こすのに十分気道に増殖している。ステージIIIA SCLCの第三タイプにおいて、癌は肺内および/または気管支が肺に入る領域周囲のリンパ節(肺門リンパ節)に広がっていてもいなくてもよく、次の1以上が当てはまる:1)任意のサイズの腫瘍が肺の間の空間(縦隔)、心臓、心臓近くの大血管(例えば大動脈)、ウィンドパイプ(気管)、喉と胃を繋ぐ管(食道)、背骨または気管分岐部に増殖している;および/または2)2以上の別の腫瘍小結節が同じ肺の異なる葉に存在する。
【0148】
ステージIIIBは、1)腫瘍のサイズ、2)どこに腫瘍が見られるかおよび3)どのリンパ節が癌を有するかにより2セクションに分けられる。ステージIIIB SCLCの第一のタイプにおいて、癌はどんなサイズでもよい;近くの構造に増殖してもしなくてもよく、または肺炎または肺虚脱を引き起こしても引き起こさなくてもよい;そして何れかの側の鎖骨に近いリンパ節に広がっているおよび/または門部または一次腫瘍と逆の側の縦隔リンパ節に広がっている。しかし、癌は遠位部位に広がっていない。ステージIIIB SCLCの第二のタイプにおいて、癌気管分岐部(気管支が右および左気管支に分けられる点)周囲または肺の間の空間(縦隔)のリンパ節にまで広がってもいる。罹患リンパ節は主肺腫瘍と同じ側にある。遠位部位に広がっていない。さらに、次の1以上が当てはまる:1)任意のサイズの腫瘍が肺の間の空間(縦隔)、心臓、心臓近くの大血管(例えば大動脈)、ウィンドパイプ(気管)、喉と胃を繋ぐ管(食道)、背骨または気管分岐部に増殖している;および/または2)2以上の別の腫瘍小結節が同じ肺の異なる葉に存在する。
【0149】
ある実施態様において、本発明の方法は、ステージIV SCLCを処置する。ステージIV SCLCは2タイプに分けられる。ステージIV SCLCの第一のタイプにおいて、腫瘍はどんなサイズでもよく、次の1以上が当てはまる:1)両肺に1以上の腫瘍がある;2)癌が肺または心臓周囲の体液に見られる。ステージIV SCLCの第二タイプにおいて、癌はあらゆるサイズであってよく、近くの構造に増殖していてもいなくても、近くのリンパ節に達していてもいなくてもよく、遠位リンパ節または肝臓、骨または脳などの臓器に広がっている。
【0150】
抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体
本発明の方法に使用するのに適する抗PD-1抗体は、PD-1に高特異性および親和性で結合し、PD-L1の結合を遮断し、PD-1シグナル伝達経路の免疫抑制作用を阻止する、抗体である。ここに記載する治療方法の何れにおいても、抗PD-1または抗PD-L1“抗体”は、それぞれ、PD-1またはPD-L1受容体に結合し、リガンド結合阻止および免疫系上方制御において抗体全体に類する機能的性質を示す、抗原結合部分を含む。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-L1抗体またはその抗原結合フラグメントは、ヒトPD-L1への結合についてBMS-936559、MPDL3280A、MEDI4736またはMSB0010718Cと結合を競合する。
【0151】
他の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分は、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である。ヒト対象処置のためのある実施態様において、抗体はヒト化抗体である。ヒト対象処置のための他の実施態様において、抗体はヒト抗体である。IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの抗体が使用され得る。
【0152】
ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分がヒトIgG1またはIgG4アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む。ある他の実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分のIgG4重鎖定常領域の配列は、ヒンジ領域におけるセリン残基をIgG1アイソタイプ抗体における対応する位置で通常見られるプロリン残基に置き換える、S228P変異を含む。ニボルマブに存在するこの変異は、野生型IgG4抗体に付随するFc受容体活性化について低親和性を維持しながら、内因性IgG4抗体とのFabアーム交換を阻止する(Wang et al. In vitro characterization of the anti-PD-1 antibody nivolumab, BMS-936558, and in vivo toxicology in non-human primates, Cancer Imm Res, 2(9):846-56 (2014))。さらに他の実施態様において、抗体は、ヒトカッパまたはラムダ定常領域である軽鎖定常領域を含む。他の実施態様において、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体またはその抗原結合部分はモノクローナル抗体またはその抗原結合部分である。
【0153】
高親和性でPD-1に特異的に結合するヒト抗体は米国特許8,008,449に開示されている。その他抗PD-1モノクローナル抗体は、例えば、米国特許6,808,710、7,488,802、8,168,757および8,354,509およびPCT公開WO2012/145493に記載されている。米国特許8,008,449に開示された抗PD-1ヒト抗体の各々は、次の特性の1以上を示すことが示されている:(a)Biacoreバイオセンサーシステムを使用する表面プラズモン共鳴により決定して、ヒトPD-1に1×10-7M以下のKで結合する、(b)ヒトCD28、CTLA-4またはICOSに実質的に結合しない;(c)混合リンパ球反応(MLR)アッセイにおいてT細胞増殖を増加させる;(d)MLRアッセイにおいてインターフェロン-γ産生を増加させる;(e)MLRアッセイにおいてIL-2分泌を増加させる;(f)ヒトPD-1およびカニクイザルPD-1に結合する;(g)PD-L1および/またはPD-L2のPD-1への結合を阻害する;(h)抗原特異的記憶応答を刺激する;(i)抗体応答を刺激する;および(j)インビボで腫瘍細胞増殖を阻害する。本発明において使用可能な抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合し、前記特性の少なくとも1つ、ある実施態様において、少なくとも5つを示す、モノクローナル抗体を含む。ある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。ある実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。
【0154】
ある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。ニボルマブ(“オプジーボ(登録商標)”としても知られる;以前は5C4、BMS-936558、MDX-1106またはONO-4538と命名)は、PD-1リガンド(PD-L1およびPD-L2)との相互作用を選択的に阻害し、それにより、抗腫瘍T細胞機能の下方制御を遮断する、完全ヒトIgG4(S228P)PD-1免疫チェックポイント阻害剤抗体である(米国特許8,008,449;Wang et al. In vitro characterization of the anti-PD-1 antibody nivolumab, BMS-936558, and in vivo toxicology in non-human primates, Cancer Imm Res, 2(9):846-56 (2014))。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはそのフラグメントは、ニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはそのフラグメントは、ニボルマブと同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ニボルマブと同じCDRを有する。
【0155】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、ペンブロリズマブと交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはそのフラグメントは、ペンブロリズマブと同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ペンブロリズマブと同じCDRを有する。他の実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。ペンブロリズマブ(“キイトルーダ(登録商標)”、ランブロリズマブおよびMK-3475としても知られる)は、ヒト細胞表面受容体PD-1(プログラム死-1またはプログラム細胞死-1)に対するヒト化モノクローナルIgG4抗体である。ペンブロリズマブは、例えば、米国特許8,354,509および8,900,587に記載されているhttp://www.cancer.gov/drugdictionary?cdrid=69578もまた参照のこと(最終アクセス:2014年12月14日)。ペンブロリズマブは、再発性または難治性黒色腫の処置について,FDAにより承認されている。
【0156】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、MEDI0680と交差競合する。さらに他の実施態様において、抗PD-1抗体またはそのフラグメントは、MEDI0680と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、MEDI0680と同じCDRを有する。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、モノクローナル抗体であるMEDI0680(以前はAMP-514)である。MEDI0680は、例えば、米国特許8,609,089B2またはhttp://www.cancer.gov/drugdictionary?cdrid=756047(最終アクセス:2014年12月14日)に記載されている。
【0157】
ある実施態様において、第一抗体は抗PD-1アンタゴニストである。抗PD-1アンタゴニストの一例はB7-DC Fc融合タンパク質であるAMP-224である。AMP-224は、米国公開2013/0017199またはhttp://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-drug?cdrid=700595(最終アクセス:2015年7月8日)に記載されている。
【0158】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、BGB-A317と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはそのフラグメントは、BGB-A317と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、BGB-A317と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒト化モノクローナル抗体であるBGB-A317である。BGB-A317は米国公開2015/0079109に記載される。
【0159】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、INCSHR1210(SHR-1210)と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、INCSHR1210(SHR-1210)と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、INCSHR1210(SHR-1210)と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトモノクローナル抗体であるINCSHR1210(SHR-1210)である。INCSHR1210(SHR-1210)は、WO2015/085847に記載される。
【0160】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、REGN-2810と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、REGN-2810と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、REGN-2810と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトモノクローナル抗体であるREGN-2810である。REGN-2810はWO2015/112800に記載される。
【0161】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、PDR001と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、PDR001と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、PDR001と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒト化モノクローナル抗体であるPDR001である。PDR001は、WO2015/112900に記載される。
【0162】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、TSR-042(ANB011)と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、TSR-042(ANB011)と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、TSR-042(ANB011)と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒト化モノクローナル抗体であるTSR-042(ANB011)である。TSR-042(ANB011)は、WO2014/179664に記載される。
【0163】
他の実施態様において、抗PD-1抗体(またはその抗原結合部分)は、STI-1110と交差競合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、STI-1110と同じエピトープに結合する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、STI-1110と同じCDRを有する。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、ヒトモノクローナル抗体であるSTI-1110である。STI-1110はWO2014/194302に記載される。
【0164】
本発明の方法において使用可能な抗PD-1抗体は、ヒトPD-1に特異的に結合し、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する単離抗体も含む(例えば、米国特許8,008,449および8,779,105;WO2013/173223参照)。抗原への結合について抗体が交差競合する能力は、これらの抗体が抗原の同じエピトープ領域に結合し、その特定のエピトープ領域への他方の交差競合抗体の結合を立体的に妨害することを示す。これらの交差競合抗体は、PD-1の同じエピトープ領域への結合により、ニボルマブと極めて類似する機能的性質を有すると予測される。交差競合抗体は、Biacore解析、ELISAアッセイまたはフローサイトメトリーなどの標準PD-1結合アッセイにおいて、ニボルマブと交差競合する能力に基づき、容易に同定され得る(例えば、WO2013/173223参照)。
【0165】
ある実施態様において、ニボルマブとヒトPD-1の結合について交差競合するかまたはヒトPD-1の同じエピトープ領域に結合する抗体は、モノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体は、キメラ抗体またはヒト化またはヒト抗体である。このようなキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により製造および単離し得る。
【0166】
本発明の方法において使用可能な抗PD-1抗体はまた上記抗体の抗原結合部分も含む。抗体の抗原結合機能が、完全長抗体のフラグメントにより発揮され得ることは、十分に証明されている抗体の“抗原結合部分”なる用語に包含される結合フラグメントの例は、(i)V、V、CおよびCH1ドメインからなる一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域のジスルフィド架橋により連結された2Fabフラグメントを含む二価フラグメントであるF(ab’)フラグメント;(iii)VおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単アームのVおよびVドメインからなるFvフラグメントまたはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0167】
本発明の組成物における使用に適する抗PD-1抗体は、高特異性および親和性でPD-1に結合し、PD-L1およびまたはPD-L2の結合を遮断し、PD-1シグナル伝達経路の免疫抑制効果を阻止する抗体である。ここに記載する組成物または方法の何れにおいても、抗PD-1“抗体”は、PD-1受容体に結合し、リガンド結合阻止および免疫系上方制御について抗体全体に類する機能的性質を示す、抗原結合部分またはフラグメントを含む。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、ヒトPD-1への結合についてニボルマブと交差競合する。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である。ある実施態様において、抗体はヒト化抗体である。他の実施態様において、抗体はヒト抗体である。IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプの抗体が使用され得る。
【0168】
ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分がヒトIgG1またはIgG4アイソタイプのものである重鎖定常領域を含む。ある他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分のIgG4重鎖定常領域の配列は、ヒンジ領域におけるセリン残基をIgG1アイソタイプ抗体における対応する位置で通常見られるプロリン残基に置き換える、S228P変異を含む。ニボルマブに存在するこの変異は、野生型IgG4抗体に付随するFc受容体活性化について低親和性を維持しながら、内因性IgG4抗体とのFabアーム交換を阻止する(Wang et al. (2014))。さらに他の実施態様において、抗体は、ヒトカッパまたはラムダ定常領域である軽鎖定常領域を含む。他の実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分はモノクローナル抗体またはその抗原結合部分である。抗PD-1抗体の投与を含む、ここに記載する治療方法の何れかのある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。他の実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、米国特許8,008,449に記載されるヒト抗体17D8、2D3、4H1、4A11、7D3および5F4から選択されるさらに他の実施態様において、抗PD-1抗体はMEDI0680(以前はAMP-514)、AMP-224またはBGB-A31である。
【0169】
抗PD-1抗体の投与を含む、ここに記載する治療方法の何れかのある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。他の実施態様において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。他の実施態様において、抗PD-1抗体は、米国特許8,008,449に記載されるヒト抗体17D8、2D3、4H1、4A11、7D3および5F4から選択されるさらに他の実施態様において、抗PD-1抗体はMEDI0680(以前はAMP-514)またはAMP-224である。
【0170】
ある実施態様において、本方法において使用される抗PD-1抗体を他のPD-1または抗PD-L1アンタゴニストと置き換え得る。例えば、抗PD-L1抗体がPD-1とPD-L1の相互作用を阻止し、それによりPD-1のシグナル伝達経路に類似の効果を発揮するため、抗PD-L1抗体をここに開示する方法における抗PD-1抗体の使用に置き換え得る。それ故に、ある実施態様において、本発明は、対象に治療有効量の抗PD-L1抗体を投与することを含む、SCLCに由来する腫瘍(例えば、再発性SCLC)を有する対象を処置する方法に関する。ある実施態様において、抗PD-L1抗体はBMS-936559(以前は12A4またはMDX-1105)である(例えば、米国特許7,943,743;WO2013/173223参照)。他の実施態様において、抗PD-L1抗体はMPDL3280A(別名RG7446およびアテゾリズマブ)(例えば、Herbst et al. (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000. Abstract;米国特許8,217,149参照)、MEDI4736(別名デュルバルマブ;Khleif (2013) In: Proceedings from the European Cancer Congress 2013; September 27-October 1, 2013; Amsterdam, The Netherlands. Abstract 802、米国特許8,779,108または2014年5月6日出願のUS2014/0356353参照)またはMSB0010718C(別名アベルマブ;US2014/0341917参照)。他の実施態様において、抗PD-L1抗体はCX-072(別名CytomX;WO2016/149201参照)である。
【0171】
抗PD-1または抗PD-L1抗体との組み合わせ治療
ある実施態様において、抗PD-1抗体または抗PD-L1抗体は、1以上の他の抗癌剤と組み合わせで投与される。ある実施態様において、1以上の抗癌剤は、対象に抗PD-1または抗PD-L1抗体の投与前にまたは抗PD-1または抗PD-L1抗体との組み合わせの前に投与されている。ある実施態様において、1以上の抗癌剤は、癌の処置に有効ではなかった。ある実施態様において、他の抗癌剤は、ここに記載するまたは当分野で知られるあらゆる抗癌剤である。ある実施態様において、他の抗癌剤は抗CTLA-4抗体である。ある実施態様において、他の抗癌剤は、化学療法剤または白金ベースダブレット化学療法剤(PT-DC)である。ある実施態様において、他の抗癌剤はEGFR-標的化チロシンキナーゼ阻害剤(TKI)である。ある実施態様において、他の抗癌剤は抗VEGF抗体である。他の実施態様において、抗癌剤は、白金剤(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、有糸分裂阻害剤(例えば、パクリタキセル、アルブミン結合パクリタキセル、ドセタキセル、タキソテール、docecad)、フッ素化ビンカアルカロイド(例えば、ビンフルニン、javlor)、ビノレルビン、ビンブラスチン、エトポシドまたはペメトレキセドゲムシタビンである。ある実施態様において、他の抗癌剤は5-フルオロウラシル(5-FU)である。ある実施態様において、他の抗癌剤は、当分野で知られる任意の他の抗癌剤である。ある実施態様において、2以上のさらなる抗癌剤が抗PD-1または抗PD-L1抗体と組み合わせて投与される。ある実施態様において、PD-1またはPD-L1抗体は外科的切除および/または放射線照射治療と組み合わせられる。
【0172】
抗CTLA-4抗体
本発明の抗CTLA-4抗体は、CTLA-4とヒトB7受容体の相互作用を妨害するように、ヒトCTLA-4に結合する。CTLA-4とヒトB7の相互作用がCTLA-4受容体担持T細胞の不活性化をもたらすシグナルを伝達するため、該相互作用の妨害は、このようなT細胞の活性化を効果的に誘発、増強または延長し、それにより、免疫応答を誘発、増強または延長する。
【0173】
高親和性でCTLA-4に特異的に結合するヒト抗体は米国特許6,984,720および7,605,238に開示されている。他の抗CTLA-4モノクローナル抗体は、例えば、米国特許5,977,318、6,051,227、6,682,736および7,034,121に記載されている。米国特許6,984,720および7,605,238に開示される抗CTLA-4ヒト抗体は、次の1以上の特性を示すことが示されている。(a)Biacore解析により決定して、少なくとも約10-1または約10-1または約1010-1~1011-1またはそれ以上の平衡結合定数(K)により反映される結合親和性でヒトCTLA-4に特異的に結合する、(b)少なくとも約10、約10または約10-1-1の動力学的結合定数(k);(c)少なくとも約10、約10または約10-1-1の動力学的解離定数(k);および(d)CTLA-4のB7-1(CD80)およびB7-2(CD86)への結合を阻害する。本発明において有用な抗CTLA-4抗体は、ヒトCTLA-4に特異的に結合し、前記特性の少なくとも1つ、少なくとも2つ、またはある実施態様において、少なくとも3つを示す、モノクローナル抗体を含む。臨床的抗CTLA-4抗体の例は、米国特許6,984,720に開示のヒトモノクローナル抗体10D1(現在イピリムマブとして知られ、ヤーボイ(登録商標)として市販)である。イピリムマブは、ここに記載する方法において使用するための抗CTLA-4抗体である。本方法において有用な他の抗CTLA-4抗体はトレメリムマブである。
【0174】
臨床的抗CTLA-4抗体の例は、米国特許6,984,720に開示のヒトモノクローナル抗体10D1(現在イピリムマブとして知られ、ヤーボイ(登録商標)として市販)である。イピリムマブは、ここに記載する方法において使用するための抗CTLA-4抗体である。イピリムマブは、CTLA-4のそのB7リガンドへの結合を遮断し、それによりT細胞活性化を刺激し、進行型黒色腫を有する患者における全生存期間(OS)を改善する完全ヒト、IgG1モノクローナル抗体である。
【0175】
本方法のために有用な他の抗CTLA-4抗体はトレメリムマブ(別名CP-675,206)である。トレメリムマブはヒトIgG2モノクローナル抗CTLA-4抗体である。トレメリムマブはWO/2012/122444、米国公開2012/263677またはWO公開2007/113648A2に記載される。
【0176】
本発明の方法において有用な抗CTLA-4抗体はまた、ヒトPD-1に特異的に結合し、ヒトCTLA-4への結合についてイピリムマブまたはトレメリムマブと交差競合するかまたはヒトCTLA-4のイピリムマブまたはトレメリムマブと同じエピトープ領域に結合する、単離抗体も含む。ある実施態様において、イピリムマブまたはトレメリムマブとヒトCTLA-4の結合について交差競合するまたはイピリムマブまたはトレメリムマブとPD-1の同じエピトープ領域に結合する抗体は、ヒトIgG1アイソタイプの重鎖を含む抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体はキメラ抗体、ヒト化抗体またはヒト抗体である。有用な抗CTLA-4抗体は、Fab、F(ab’’)、FdまたはFvフラグメントなどの上記抗体の抗原結合部分も含む。
【0177】
イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))は、CTLA-4のそのB7リガンドへの結合を遮断し、それによりT細胞活性化を刺激し、進行型黒色腫を有する患者における全生存期間(OS)を改善する完全ヒト、IgG1モノクローナル抗体である(Hodi et al. (2010) N Engl J Med 363:711-23)。フェーズ1治験におけるニボルマブとイピリムマブの同時治療は、進行型黒色腫を有する患者の相当な割合で迅速かつ深い腫瘍退縮を生じ、何れか抗体単独より有意に有効であった(Wolchok et al. (2013) N Engl J Med 369(2):122-33;WO2013/173223)。しかしながら、免疫制御抗体のこの組み合わせが、他の腫瘍タイプに同様に有効であるか否かは、今日まで知られていなかった。
【0178】
SCLC処置のための抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組み合わせ
本発明は、SCLCに由来する腫瘍を処置するための組み合わせ治療方法を提供し、ここで、抗PD-1抗体を、CTLA-4に特異的に結合し、CTLA-4活性を阻害する抗体またはその抗原結合部分である他の抗癌剤と組み合わせる。抗PD-1抗体、ニボルマブと抗CTLA-4抗体、イピリムマブの組み合わせは、特に特定の投与スケジュールで、SCLC患者における早期、持続性抗腫瘍活性を生じることがここで証明されている(実施例1参照)。従って、ある実施態様において、抗PD-1抗体と組み合わせて使用する抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体はトレメリムマブである。他の実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトCTLA-4への結合についてイピリムマブと交差競合する抗体またはその一部である。ある他の実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体またはその一部である。さらに他の実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分は、ヒトIgG1またはIgG4アイソタイプである重鎖定常領域を含む。ある実施態様において、抗CTLA-4抗体は、ヒトIgG1アイソタイプである重鎖定常領域を含む。
【0179】
免疫チェックポイントの阻害による免疫療法で臨床効果の持続性が先に示されているため(例えば、WO2013/173223参照)、組み合わせ処置は、別の実施態様において、有限投与回数、例えば、約1~10投与を含み得るかまたは長い間隔、例えば、約3~6か月に1回または約1~2年に1回またはそれより長い間隔での投与を含み得る。
【0180】
本方法のある実施態様において、抗PD-1抗体はニボルマブである。他の実施態様において、それはペンブロリズマブである。さらに他の実施態様において、抗CTLA-4抗体はイピリムマブである。さらなる実施態様において、抗CTLA-4抗体はトレメリムマブである。一般に、抗PD-1および抗CTLA-4抗体は静脈内投与用に製剤化される。ある実施態様において、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体が組み合わせて投与されるとき、それらは互いに30分以内に投与される。何れの抗体が先に投与されてもよく、すなわち、ある実施態様において、抗PD-1抗体が抗CTLA-4抗体の前に投与され、一方、他の実施態様において、抗CTLA-4抗体が抗PD-1抗体の前に投与される。一般に、各抗体は60分の時間にわたる静脈内点滴により投与される。ある実施態様において、抗PD-1および抗CTLA-4抗体は、同時投与のための薬学的に許容される製剤中の単一組成物として混合されてまたは薬学的に許容される製剤において各抗体が別々の組成物で同時にの何れかで、同時に投与される。
【0181】
ある実施態様において、抗PD-1抗体は1mg/kgの用量で3週に1回投与され、抗CTLA-4抗体は3mg/kgの用量で3週に1回投与される。他の実施態様において、1mg/kg用量の抗PD-1抗体および3mg/kg用量の抗CTLA-4抗体が各1回、各2回、各3回、各4回、各5回、各6回、各7回、各8回、各9回または各10回投与される。さらなる実施態様において、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組み合わせ治療は、例えば、3mg/kgの用量で2週に1回の抗PD-1抗体の単剤療法に続く。
【0182】
ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分が治療量以下の用量で投与される。ある他の実施態様において、抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分が治療量以下の用量で投与される。さらなる実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分および抗CTLA-4抗体またはその抗原結合部分の両方が各々治療量以下の用量で投与される。
【0183】
SCLCのための標準的治療処置
種々のタイプの癌に対する標準的治療処置は、当業者に周知である。例えば、米国の21の主要癌センターの同盟である全米総合癌センターネットワーク(NCCN)は、多様な癌の標準的治療処置に関する詳細な最新情報を提供するNCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology(NCCN GUIDELINES(登録商標))を発行している(NCCN GUIDELINES(登録商標)(2014)、http://www.nccn.org/professionals/physician_gls/f_guidelines.aspで利用可能、最終アクセス2016年6月2日)。
【0184】
手術、放射線照射治療(RT)および化学療法剤は、SCLC患者に一般に使用される3モダリティである。最も一般医使用される初期化学療法剤レジメンは、EPとして知られるエトポシド(TOPOSAR(登録商標)またはベプシド(登録商標))+シスプラチン(PLATINOL(登録商標))である。進展型小細胞肺癌を有する人々に対して、EPレジメンを使用する化学療法剤単独は標準処置である。しかしながら、使用され得る他のレジメンはカルボプラチン(パラプラチン(登録商標))+イリノテカン(カンプトサール(登録商標))である。
【0185】
SCLCは初期化学療法剤および/または放射線療法を含む初期処置に高度に感受性であるが、大部分の患者は、SCLC再発により最終的に死亡する。それ故に、第一選択治療後の有効処置がないため、再発性SCLCを有する患者の間に、特定の満たされない要求がある。
【0186】
医薬組成物および投与量
本発明の治療剤は、抗体および薬学的に許容される担体を含む組成物、例えば、医薬組成物を構成し得る。ここで使用する“薬学的に許容される担体”は、生理学的に適合性である、任意かつ全ての溶媒、分散媒体、コーティング、抗細菌および抗真菌剤、等張および吸収遅延剤などを含む。ある実施態様において、抗体含有組成物のための担体は、静脈内、筋肉内、皮下、非経腸、脊髄または上皮投与(例えば、注射または点滴による)に適する。本発明の医薬組成物は、1以上の薬学的に許容される塩、抗酸化剤、水性および非水性担体および/または防腐剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントを含み得る。
【0187】
投与量レジメンは、最適な所望の応答、例えば、最大治療応答および/または最小有害作用を提供するように調節される。抗PD-1抗体投与のために、単剤療法としてまたは他の抗癌剤との組み合わせ(例えば、抗CTLA-4抗体との組み合わせ)で、投与量は、約0.01~約20mg/kg、約0.1~約10mg/kg、約0.1~約5mg/kg、約1~約5mg/kg、約2~約5mg/kg、約7.5~約12.5mg/kgまたは約0.1~約30mg/患者体重kgの範囲であり得る。例えば、投与量は、約0.1、約0.3、約1、約2、約3、約5または約10mg/kg体重または約0.35mg/kg、約15mg/kg、約25mg/kg、約35mg/kgまたは約5mg/kg体重であり得る。投与スケジュールは、一般に、抗体の典型的薬物動態性質に基づき、持続する受容体占有(RO)をもたらす暴露を達成するために設計される処置レジメの例は、約週に1回、約2週に1回、約3週に1回、約4週に1回、約1か月に1回、約3~6か月に1回またはそれより長い間隔での投与を伴う。ある実施態様において、などの抗PD-1抗体は、対象に約2週に1回投与される。他の実施態様において、抗体は、約3週に1回投与される。投与量およびスケジュールを、処置の経過中に変えてよい。例えば、抗PD-1単剤療法の投与スケジュールは、抗体の(i)約2週毎を約6週サイクル;(ii)約3週毎を約6回、次いで、約3か月毎;(iii)約3週毎;(iv)約3mg/kg~約10mg/kgを1回、続いて約1mg/kgを約2~3週毎の投与を含み得る。IgG4抗体が一般に2~3週の半減期を有することを考慮して、本発明の抗PD-1抗体の投与量レジメンは静脈内投与による少なくとも約0.3mg/kg~少なくとも約10mg/kg体重、少なくとも約1mg/kg~少なくとも約5mg/kg体重または少なくとも約1mg/kg~少なくとも約3mg/kg体重を含み、抗体は、約6週までまたは約12週サイクルで完全奏功または疾患進行が確認されるまで、約14~21日毎に投与される。ある実施態様において、抗PD-1単剤療法は、疾患進行または許容されない毒性まで、3mg/kgを2週毎で投与される。ある実施態様において、ここに開示する抗体処置または任意の組み合わせ処置を、少なくとも約1か月、少なくとも約3か月、少なくとも約6か月、少なくとも約9か月、少なくとも約1年、少なくとも約18か月、少なくとも約24か月、少なくとも約3年、少なくとも約5年または少なくとも約10年続ける。
【0188】
他の癌剤と組み合わせて(例えば、抗CTLA-4抗体と組み合わせて)使用するとき、抗PD-1抗体の投与量は、単剤療法用量と比較して低減され得る。典型的3mg/kgより低いが、0.001mg/kgを下回らないニボルマブの投与量は、治療量以下の投与量である。ここでの方法において使用される抗PD-1抗体の治療量以下の用量は、0.001mg/kgを超え、3mg/kgより低い。ある実施態様において、治療量以下の用量は、約0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、約0.1mg/kg~約1mg/kgまたは約0.001mg/kg~約0.1mg/kg体重である。ある実施態様において、治療量以下の用量は、少なくとも約0.001mg/kg、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kgまたは少なくとも約1.0mg/kg体重である。ニボルマブ0.3mg/kg~10mg/kg投与を受けた15対象からの受容体占有データは、PD-1占有率がこの投与範囲で用量無関係であると考えられることを示す。全投与量にわたり、平均占有率は85%(範囲、70%~97%)であり、平均プラトー占有率は72%(範囲、59%~81%)であった。ある実施態様において、0.3mg/kg投与は、最大生物活性に至るのに十分な暴露を可能とし得る。ニボルマブ0.3mg/kg~10mg/kg投与を受けた15対象からの受容体占有データは、PD-1占有率がこの投与範囲で用量無関係であると考えられることを示す。全投与量にわたり、平均占有率は85%(範囲、70%~97%)であり、平均プラトー占有率は72%(範囲、59%~81%)であった(Brahmer et al. (2010) J Clin Oncol 28:3167-75)。それ故に、0.3mg/kg投与は、最大生物活性に至るのに十分な暴露を可能とし得る。
【0189】
2週毎、10mg/kgまで投与される高ニボルマブ単剤療法が最大耐用量(MTD)に達することなく達成されるが、相当な毒性が、チェックポイント阻害剤と抗血管形成治療の他の治験で報告されており(例えば、Johnson et al. (2013) Cancer Immunol Res 1:373-77; Rini et al. (2011) Cancer 117:758-67参照)、10mg/kgより低いニボルマブ用量の選択を支持する。
【0190】
ある実施態様において、抗PD-1抗体(または抗PD-L1抗体)の用量は、医薬組成物で固定用量である。他の実施態様において、本発明の方法は、均一用量(患者の体重と関係なく患者に与えられる用量)を用いて使用され得る。例えば、ニボルマブの均一用量は約240mgであり得る。例えば、ペンブロリズマブの均一用量は約200mgであり得る。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約240mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約360mgの用量で投与される。ある実施態様において、抗PD-1抗体またはその抗原結合部分は、約480mgの用量で投与される。ある実施態様において、360mgの抗PD-1抗体または抗原結合フラグメントを、対象に3週に1回投与する。他の実施態様において、480mgの抗PD-1抗体または抗原結合フラグメントを、対象に4週に1回投与する。
【0191】
イピリムマブ(ヤーボイ(登録商標))は、黒色腫の処置について、4回、3mg/kgを静脈内に3週に1回投与で承認されている。それ故に、ある実施態様において、約3mg/kgは、抗PD-1抗体との組み合わせで使用されるイピリムマブの最高投与量であるが、ある実施態様において、イピリムマブなどの抗CTLA-4抗体は、ニボルマブと組み合わせたとき、約0.3~約10mg/kg、約0.5~約10mg/kg、約0.5~約5mg/kgまたは約1~約5mg/kg体重の範囲内で、約2週毎または3週毎に投与し得る。他の実施態様において、イピリムマブは、ニボルマブと異なる投与量スケジュールで投与される。ある実施態様において、イピリムマブは、約毎週、約2週毎、約3週毎、約4週毎、約5週毎、約6週毎、約7週毎、約8週毎、約9週毎、約10週毎、約11週毎、約12週毎または約15週毎に投与される。典型的3週毎3mg/kgより低いが、0.001mg/kgを下回らないイピリムマブの投与量は、治療量以下の投与量である。ここでの方法において使用する抗CTLA-4抗体の治療量以下の用量は、0.001mg/kgを超え、3mg/kgより低い。ある実施態様において、治療量以下の用量は、約0.001mg/kg~約1mg/kg、約0.01mg/kg~約1mg/kg、約0.1mg/kg~約1mg/kgまたは約0.001mg/kg~約0.1mg/kg体重である。ある実施態様において、治療量以下の用量は、少なくとも約0.001mg/kg、少なくとも約0.005mg/kg、少なくとも約0.01mg/kg、少なくとも約0.05mg/kg、少なくとも約0.1mg/kg、少なくとも約0.5mg/kgまたは少なくとも約1.0mg/kg体重である。3mg/kgのニボルマブおよび3mg/kgのイピリムマブ組み合わせ投与が黒色腫集団においてMTDを超えることが示されているが、一方1mg/kgでのニボルマブ+3mg/kgでのイピリムマブまたは3mg/kgでのニボルマブ+1mg/kgでのイピリムマブの組み合わせは、黒色腫患者において許容可能であることが判明した(Wolchok et al., N Engl J Med 369(2):122-33(2013))。従って、ニボルマブは2週毎に10mg/kgまでの静脈内投与に忍容性であるが、ある実施態様において、抗PD-1抗体の用量は、イピリムマブと組み合わせるとき、約3mg/kgを超えない。ある実施態様において、リスク-ベネフィットおよびPK-PD評価に基づき、使用される投与量は、約1mg/kgのニボルマブ+約3mg/kgのイピリムマブ、約3mg/kgのニボルマブ+約1mg/kgのイピリムマブまたは約3mg/kgのニボルマブ+約3mg/kgのイピリムマブの組み合わせを含み、各々約2~4週に1回、ある実施態様において、約2週に1回または約3週に1回の投与頻度で投与される。ある他の実施態様において、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kgまたは約5mg/kg、約2週に1回、約3週に1回または約4週に1回の投与量で投与されるイピリムマブと組み合わせて、ニボルマブは約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kgまたは約5mg/kgの投与量で投与される。
【0192】
ある実施態様において、抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体の組み合わせを、誘導期の対象に、1回、2回、3回または4回、約2週または3週に1回静脈内投与する。ある実施態様において、ニボルマブとイピリムマブの組み合わせを、誘導期に、約2週毎または約3週毎に約4回、静脈内投与する。誘導期の後に維持期があり、その間、抗PD-1抗体のみを処置が効果を示す限りまたは管理不可能な毒性もしくは疾患進行が生じるまで、約0.1mg/kg、約0.3mg/kg、約1mg/kg、約2mg/kg、約3mg/kg、約5mg/kgまたは約10mg/kgの投与量を約2週または3週毎に対象に投与する。ある実施態様において、ニボルマブを、維持期中、約2週毎に約3mg/kg体重の用量で投与する。
【0193】
ここに開示する抗体は、“処置サイクル”または“サイクル”(これら用語は、ここで交換可能に使用される)に従い投与され得る。ここで使用する用語“サイクル”は、一定間隔で、間に休薬期間を伴い繰り返される処置のコースをいう。例えば、1週間処置、続いて3週間休薬が1処置サイクルである。ある実施態様において、抗PD-1抗体および/または抗CTLA-4抗体は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9または10サイクル投与される。特定の実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体の投与は4回(4サイクル)繰り返された。
【0194】
ある実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体は単一組成物として製剤化され、ここで、抗PD-1抗体の用量およびCTLA-4抗体の用量は、1:50、1:40、1:30、1:20、1:10、1:5、1:3、1:1、3:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1または50:1の比で組み合わせられる。他の実施態様において、CTLA-4抗体の用量は固定用量である。ある実施態様において、CTLA-4抗体の用量は、体重に係わらず患者に与えられる均一用量である。具体的実施態様において、抗CTLA-4抗体の均一用量は約80mgである。
【0195】
ニボルマブと他の抗癌剤の組み合わせについて、これらの薬剤は、それらの承認された投与量で投与される。処置は、臨床的有用性が観察される限りまたは許容されない毒性または疾患進行が生じるまで継続する。それにも係わらず、ある実施態様において、投与されるこれらの抗癌剤の投与量は、承認投与量より顕著に低く、すなわち、薬剤の治療量以下の投与量が抗PD-1抗体と組み合わせて投与される。抗PD-1抗体は、治験において単剤療法として最高有効性を生じることが示されている投与量で投与でき、例えば、約3mg/kgのニボルマブが約3週に1回投与される(Topalian et al., N Engl J Med 366:2443-54 (2012a); Topalian et al., Curr Opin Immunol 24:207-12 (2012b))または顕著に低い用量、すなわち治療量以下の用量で。ある実施態様において、抗PD-1抗体は、約3mg/kgで、約3週に1回投与される。
【0196】
投与量および頻度は、対象における抗体の半減期により変わる。一般に、ヒト抗体が最長半減期を示し、ヒト化抗体、キメラ抗体および非ヒト抗体が続く。投与量および投与頻度は、処置が予防的か治療的かにより変わり得る。予防適用において、比較的低用量が、一般に、比較的少ない頻度で、長期間にわたり投与される。一部患者は、処置を生涯受け続ける。治療適用において、比較的短い間隔での比較的高用量が、疾患進行が低減または停止するまで、および患者が疾患症状の部分的または完全な改善を示すまで、必要とされることがある。その後、患者に予防レジメで投与し得る。
【0197】
本発明の医薬組成物における1以上の活性成分の実際の投与量レベルは、患者に過度の毒性とならずに、特定の患者、組成物および投与方式について所望の治療効果を達成するのに有効である活性成分の量を得るために、変わり得る。選択投与量は、用いる本発明の特定の組成物の活性、投与経路、投与時間、用いる特定の化合物の排泄速度、処置の期間、用いる特定の組成物と組み合わせて使用される他の薬物、化合物および/または物質、処置する患者の年齢、性別、体重、状態、一般的健康状態および先の既往および医薬分野で周知の同様の因子を含む多様な薬物動態因子による。本発明の組成物を、当分野で周知の多様な方法の1以上を使用する、1以上の投与経路により投与し得る。当業者には周知のとおり、投与経路および/または方式は、所望の結果により変わる。
【0198】
ある実施態様において、抗PD-1抗体および抗CTLA-4抗体の組み合わせで処置される対象は、抗PD-1抗体単剤療法でさらに処置され得る。
【0199】
抗PD-1および抗PD-L1が同じシグナル伝達経路を標的とし、治験において腎細胞癌を含む多様な癌において同等レベルの類似性を示しているため(Brahmer et al. (2012) N Engl J Med 366:2455-65; Topalian et al. (2012a) N Engl J Med 366:2443-54;WO2013/173223参照)、抗PD-L1抗体を、ここに記載する治療方法の何れにおいても、抗PD-1抗体の代替であり得る。ある実施態様において、抗PD-L1抗体はBMS-936559(以前は12A4またはMDX-1105)である(例えば、米国特許7,943,743;WO2013/173223参照)。他の実施態様において、抗PD-L1抗体はMPDL3280A(別名RG7446およびアテゾリズマブ)(例えば、Herbst et al. (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000. Abstract;米国特許8,217,149参照)またはMEDI4736(Khleif (2013) In: Proceedings from the European Cancer Congress 2013; September 27-October 1, 2013; Amsterdam, The Netherlands. Abstract 802)である。ある実施態様において、上記PD-L1抗体とヒトPD-L1への結合について交差競合するか、またはヒトPD-L1の同じエピトープに結合する抗体はモノクローナル抗体である。ヒト対象への投与のために、これらの交差競合抗体はキメラ抗体でも、ヒト化またはヒト抗体でもあり得る。このようなキメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体は、当分野で周知の方法により製造および単離し得る。
【0200】
キット
また本発明の範囲内であるのは、治療使用のための抗PD-1抗体および他の抗癌剤を含むキットである。キットは、一般に、キットの中身の意図される使用および使用指示を示すラベルを含む。用語ラベルは、キット上にまたはキットと共にまたは他の方法でキットに付随するあらゆる書面または記録媒体を含む。従って、本発明は、SCLCに由来する腫瘍を有する対象を処置するためのキットを提供し、キットは(a)約4mg~約500mgの量のPD-1抗体またはその抗原結合部分;および(b)ここに開示する任意の方法においてPD-1抗体またはその抗原結合部分を使用するための指示を含む。本発明はさらにSCLCに由来する腫瘍を有する対象を処置するためのキットを提供し、キットは(a)約4mg~約500mgの量のPD-1抗体またはその抗原結合部分、(b)約4mg~約500mgの量のCTLA-4抗体またはその抗原結合部分および(c)ここに開示する任意の方法においてPD-1抗体またはその抗原結合部分およびCTLA-4抗体またはその抗原結合部分を使用するための指示を含む。ある実施態様において、キットは、PD-1抗体またはその抗原結合部分およびCTLA-4抗体またはその抗原結合部分を別々の組成物として含む。ある実施態様において、キットは、PD-1抗体またはその抗原結合部分およびCTLA-4抗体またはその抗原結合部分を単一組成物として含む。ある実施態様において、抗PD-1および抗CTLA-4抗体は、単位投与量形態で共包装され得る。ヒト患者処置のためのある実施態様において、キットは、ここに開示する抗ヒトPD-1抗体、例えば、ニボルマブまたはペンブロリズマブを含む。他の実施態様において、キットは、ここに記載する抗ヒトCTLA-4抗体、例えば、イピリムマブまたはトレメリムマブを含む。
【0201】
本発明を、さらに次の実施例により説明し、これは、さらに限定するものと解釈してはならない。本明細書を通して引用した全ての引用文献の内容は、その内容を明示的に本明細書に包含させる
【実施例0202】
実施例1
全肺癌の約14%を占める小細胞肺癌(SCLC)は、喫煙と強く相関し、既知発癌ドライバーがなく高変異率を有する。進展型疾患を呈する大部分の患者は、広範な転移および悪い生存率により特徴付けられる。35%~86%の患者は第一選択化学療法剤に応答するが、疾患は急速に進行し、第二選択処置での成果は悪い。
【0203】
SCLCの標準第一選択化学療法剤は白金-エトポシドダブレットであり、米国(US)および欧州連合(EU)でトポテカンが第二選択治療および日本でアムルビシンが第二選択治療である。トポテカンの応答率は、白金感受性および白金抵抗性/難治性患者でそれぞれ23%および9%であるが、持続性ではない。
【0204】
完全ヒトIgG4プログラム死1(PD-1)免疫チェックポイント阻害剤抗体であるニボルマブは、第一選択白金ベースのダブレット化学療法剤後進行した非SCLC(NSCLC)を有する患者での2つのフェーズ3治験においてドセタキセルと比較して全生存期間を有意に改善し、好都合な安全性プロファイルを示し、転移NSCLCを有する患者の処置に対して米国で、および局所進行性または転移扁平上皮NSCLCを有する患者の処置に対してEUでの承認に至っている。完全ヒトIgG1細胞毒性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)免疫チェックポイント阻害剤であるイピリムマブは、進行型黒色腫を有する患者における2つのフェーズ3治験で全生存期間を有意に改善し、米国およびEUでこの適応症について承認に至っている。
【0205】
前臨床データは、PD-1とCTLA-4受容体遮断の組み合わせが抗腫瘍活性を改善し、ニボルマブとイピリムマブの組み合わせは、数腫瘍タイプで、深くかつ持続性応答を示している。ニボルマブとイピリムマブの組み合わせは、米国で進行型黒色腫の処置について承認されている。黒色腫における組み合わせ処置の有効性に基づき、単剤療法としてまたはイピリムマブとの組み合わせでのニボルマブの活性および安全性を試験するためのフェーズ1/2治験としての臨床試験が、いくつかの進行型または転移腫瘍タイプで設計されている。進んだラインの処置における標準治療が存在しない、進行型または転移固形腫瘍を有する患者におけるニボルマブ単剤療法およびニボルマブとイピリムマブの組み合わせの評価は、これら腫瘍タイプにおけるさらなる臨床開発のための基礎として、抗腫瘍活性の証拠となる可能性がある。ここで、我々は、SCLCコホートについての活性、安全性およびバイオマーカー解析を報告する。
【0206】
方法
治験設計および治験参入者
これは、国際的フェーズ1/2、2段階、オープンラベル多アーム治験であった。SCLCを有する患者を、6カ国の23カ所で登録した(フィンランド、ドイツ、イタリア、スペイン、英国および米国)。適格患者は組織学的または細胞学的に確認された限局型または進展型SCLCを有し、少なくとも1つの白金ベースの化学療法剤レジメン後疾患進行した。白金感受性または白金抵抗性疾患を有する患者(それぞれ、化学療法剤後または途中、≧90日または<90日で再発)は、プログラム死-リガンド1(PD-L1)発現に係わらず適格であった。患者は、≧18歳、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)活動指標0または1(0~5スケール:0、症状なし;1、軽度;数字が大きいほうど、腫瘍関連身体障害が大きい)および十分な臓器機能を有した。患者は、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors(RECIST), version 1.1により測定可能な疾患およびバイオマーカー解析用ベースライン腫瘍生検または保存記録腫瘍物質を有することが必要であった。腫瘍物質は、生検が処置開始前3か月までに実施され、その間に他の全身性癌治療が投与されていなかったならば、スクリーニング期前に実施された生検として許容された。適格性評価のために必要であったベースライン臨床検査は、白血球数、好中球、血小板、ヘモグロビン、血清クレアチニン、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、総ビリルビン、アルブミン、リパーゼおよびアミラーゼを含んだ。重要な除外基準は活動性脳または軟髄膜転移、自己免疫性疾患の病歴(白斑症、I型糖尿病、ホルモン補充療法のみを必要とする自己免疫性甲状腺炎のための残留甲状腺機能低下症または外部トリガーの非存在下では再発すると予測されない状態以外)、治験薬投与前2週の免疫抑制用量の全身性コルチコステロイドの必要性(>10mg/日プレドニゾン相当量)およびT細胞機能またはチェックポイント経路を調節する抗体での先の処置を含んだ。患者は、B型肝炎ウイルスまたはヒト免疫不全ウイルス試験で陽性である場合および前抗癌治療からの未解決毒性を有する場合、これらも除外した。
【0207】
患者選択は、推定生存期間に基づかなかった。再発性SCLCを有する患者の生存期間中央値は、約3.5~12か月と報告されていた。
【0208】
治験プロトコールは各参加施設の機関審査委員会または倫理委員会により承認された。治験は、調和国際会議により規定される、ヘルシンキ宣言および臨床試験実施基準に従い、実施した。何らかの治験特異的手順を実施する前に、全患者から同意書を得た。
【0209】
方法
組み合わせコホートにおける投与の考察は次のとおりであった:1mg/kgニボルマブ+3mg/kgイピリムマブレジメンが進行型黒色腫処置について承認された用量である;3mg/kgニボルマブ+1mg/kgイピリムマブレジメンを、ニボルマブ暴露応答データ(1mg/kg対3mg/kg)に基づき、ニボルマブ用量を最大にするために選択した;そして、ニボルマブ+イピリムマブがSCLCを有する患者において許容できることを確実にするために、初期用量漸増安全性評価段階を実施した(1mg/kgニボルマブ+1mg/kgイピリムマブから開始)。1mg/kgニボルマブ+3mg/kgイピリムマブおよび3mg/kgニボルマブ+1mg/kgイピリムマブレジメンの安全性は、他の腫瘍タイプにおける試験で先に評価されている。
【0210】
SCLCを有する患者は、次の処置コホートの何れか1つに割り当てられた:2週毎に静脈内投与される3mg/kg体重での単剤療法としてのニボルマブ(ニボルマブ-3)または用量レベル1(ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kg[ニボルマブ-1/イピリムマブ-1])、用量レベル2(ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg[ニボルマブ-1/イピリムマブ-3])または用量レベル2b(ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg[ニボルマブ-3/イピリムマブ-1])で3週毎に4サイクル静脈内投与されるニボルマブ+イピリムマブの組み合わせ処置、続いて3mg/kgのニボルマブ2週毎。図1参照。計画組み合わせレジメンがSCLCを有する患者で許容できることを確実にするために、組み合わせアームの初期用量漸増安全性評価を実施した。最初の用量コホートはレベル1であった。これが許容できると判断されたならば、レベル2を開始した。用量レベル2が許容できないと判断されたならば、用量レベル2bを調査した。用量漸増安全性評価相においてさらなる調査のための最高用量レベルが確認されたら、組み合わせアームは患者登録を続けた。実薬処置中の患者は、用量レベルの忍容性が事前に決められた忍容性評価基準に基づいて決定される前に、治験処置の開始後少なくとも6週フォローアップする必要があった。しかしながら、6週を超える忍容性も考察に入れた。組み合わせ処置について、ニボルマブ+イピリムマブを評価する先の治験に従い、ニボルマブをまず投与し(60分点滴)、続いてイピリムマブ(90分点滴)を投与した。患者は、疾患進行または許容されない毒性の発生まで、オープンラベル処置を受けた(図1)。RECIST, version 1.1定義進行を超える処置は、治験医評価に基づき、患者が忍容性であり、処置から利益を受けるならば、許容された。自動音声応答装置を使用して、患者は、逐次的方法で4コホートの1つに登録されるか、1つを超えるコホートが登録を受け付けていたら、割り当てた。ニボルマブ-3で進行した患者は、組み合わせコホートとクロスオーバーし得た。
【0211】
ニボルマブまたはイピリムマブで用量減少または修飾は許容されなかった。投与延期(プロトコール定義理由のために必要であった)および処置中止の基準は、別に詳述される。
【0212】
放射線造影による腫瘍評価を、ベースライン、最初の24週は6週毎およびその後疾患進行(RECIST, version 1.1定義進行に従う治験医評価)または処置中止まで12週毎に実施した。生存を患者が処置中は継続的におよび処置中止後3か月毎にモニターした。安全性を治験中評価し(表1)、有害事象をNational Cancer Institute’s Common Terminology Criteria for Adverse Events, version 4.0により段階分けした。
【表1】


*肝機能試験、血中尿素窒素または血清尿素レベル、クレアチニン、アルブミン、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、塩素、乳酸デヒドロゲナーゼ、グルコース、アミラーゼ、リパーゼおよび甲状腺刺激ホルモンに関する完全血液画分試験。WOCBP=妊娠可能な女性。X=実施すべき評価。
【0213】
腫瘍PD-L1タンパク質発現を、ウサギ抗ヒトPD-L1抗体(クローン28-8、Epitomics Inc, Burlingame, CA, USA)を使用する検証済、自動化免疫組織化学的アッセイ(Dako North America, Carpinteria, CA, USA)を使用して、前処置(保存または新鮮試料)腫瘍生検検体において遡及的に評価した。≧100評価可能腫瘍細胞を含んだ切片において、腫瘍細胞膜の染色(任意の強度で)が事前に決められた≧1%または≧5%の発現レベルの腫瘍細胞が観察されたとき、腫瘍PD-L1発現を陽性として分類した。初期治験プロトコールにおいて、検体の解析は患者無作為化前に必要なかった;プロトコールを後に修正し、これは治験補正により要求された(治験の全コホートについて)。
【0214】
結果
この治験のプライマリーエンドポイントは、確認客観的応答の患者の比率であった(割り当てられた患者数で除した完全奏功または部分奏効の最良全奏効の患者数[治験医評価RECIST, version 1.1基準による]として定義)。客観的奏効率は、本治験目標がニボルマブ単剤療法またはイピリムマブとの組み合わせの抗腫瘍活性の評価であったため、プライマリーエンドポイントであった。
【0215】
セカンダリーエンドポイントは、全生存期間、無進行生存、応答の期間および処置中止に至る処置関連有害事象の率を含んだ。全生存期間は、処置割り当ての日から、何らかの原因による死亡の日までの時間として定義された。無進行生存は、処置割り当ての日から治験医(RECIST, version 1.1による)により決定して最初に腫瘍進行が報告された日または何らかの原因による死亡までのどちらか早く生じた日までの期間として定義された。応答の期間は、部分または完全奏功の最良全奏効から疾患進行(RECIST, version 1.1を使用)が報告されるかまたは何らかの原因による死亡の日までの期間として定義された。腫瘍細胞によるPD-L1発現と抗腫瘍活性の相関は、事前に決められた探査エンドポイントであった。
【0216】
全活性解析を、クロスオーバー条件によってではなく、元の処置割り当てに基づき、実施した。
【0217】
統計解析
組み合わせアーム(方法に記載のとおり)の安全性評価フェーズに並行して、患者の登録は、Simonの2段階デザインに従った(Simon R., Control Clin. Trials 10:1-10 (1989)参照)。この設計を使用して、ニボルマブおよび/またはニボルマブとイピリムマブの組み合わせが腫瘍タイプの各々で臨床的に興味深い客観的奏効率を生じるか否かを試験した;これはまた真の応答率が臨床値のものではないときの、処置を受ける予測患者数も制限する。2段階治験を、各コホートで独立して実施した。
【0218】
各コホートについて、Simonのデザインは、第一段階で18処置患者を必要とし、該コホート内の18処置患者中1名以上の応答者がいない場合、段階1でのコホートを終了させる。そうでなければ、2以上の応答者がコホートにおける最大18患者で同定され、さらなる患者が、そのコホートにおいて計40処置患者まで割り当てられる。第二段階の終了時、何らかの単一コホートにおいて、40処置患者中8以上の応答者がいるならば、その処置は臨床的に有意と判断される。
【0219】
客観的奏効率閾値を満たした処置アームのみが段階1から段階2に進んだ。ある処置アームにおける段階2での登録は、他の処置アームがなお段階1にあったとしても、継続される。
【0220】
段階2について、初期40患者の登録完了後、各処置アームにおいて、最大100患者までさらなる患者をニボルマブ単剤療法アームおよび組み合わせアームに割り当てた(段階1で割り当てられた者を含む)。ニボルマブ単剤療法またはニボルマブ-1/イピリムマブ-3が段階2に進んだら、段階2での用量レベル2b(ニボルマブ-3/イピリムマブ-1)の評価を開始した。
【0221】
全解析は、データベース閉鎖前少なくとも90日に登録した処置患者を含んだ。全体の活性解析を、クロスオーバー条件によってではなく、元の処置割り当てに基づき、実施した。
【0222】
客観的奏効率を、クロッパー・ピアソン法を使用する二項式応答率および対応する両側95%正確信頼区間(CI)により要約した。無進行生存および全生存期間は、カプラン・マイヤー法を使用して記述的に要約した;中央値を、Brookmeyer Crowley法を使用して計算した両側95%CIで計算した。6名を超える患者の処置コホートのみ、カプラン・マイヤープロットに表す。12週未満のフォローアップの患者は、カプラン・マイヤープロットから除外した。無進行生存および全生存率は、グリーンウッド式を使用して計算した両側95%CIを用いて推定した。応答の期間をカプラン・マイヤー積極限法を使用して要約した。PD-L1バイオマーカー解析について、最良全奏効をベースラインPD-L1発現および客観的奏効率により各コホートについて集約し、正確95%CIをクロッパー・ピアソン法を使用して計算した。全統計解析をSASソフトウェア(version 9.02)を使用して実施した。
【0223】
結果
我々は、216名のSCLCを有する患者を登録し、処置した:98患者はニボルマブ3mg/kgコホート、3患者はニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホート、61患者はニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートおよび54患者はニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホート(図1)。ニボルマブ3mg/kg群における3患者、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群における2患者およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群における4患者は第一選択白金治療を受けておらず、適格性基準を満たさなかったが、処置を受けた。ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおける3患者で、最初の6週以内に処置関連有害事象により処置中止した患者はおらず、他の2つの組み合わせコホートであるニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgおよびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgへの登録を可能とした。データベース閉鎖時、全患者は少なくとも12週のフォローアップを有し、治験にある患者のフォローアップ中央値(死亡したまたは処置を中止した者を含む)は、ニボルマブ3mg/kgコホートで198.5日(IQR163.0~464.0)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートで302日(IQRは計算不可能)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて361.0日(273.0~470.0)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて260.5日(248.0~288.0)であった(表2)。全生存期間データについてのフォローアップ中央値は別紙に示す(表2)。ベースライン特性は表3に示される;大まかに患者の半分が2以上の先のレジメンで処置を受けており、約三分の一が白金抵抗性疾患を有した。
【表2】


データは、特に断らない限りn、n(%)または中央値(IQR)として示した。全患者は、データベース閉鎖前少なくとも90日に登録された。AE=有害事象。IQR=四分位範囲。NA=該当なし。*2015年11月6日データベースロック時に治験を継続していた患者。**2016年3月24日データベースロック時に治験を継続していた患者(n=98、ニボルマブ-3;n=61、ニボルマブ-1/イピリムマブ-3;n=55、ニボルマブ-3/イピリムマブ-1)。†疾患進行した1患者および処置中止を要請した1患者は、ニボルマブ-3コホートにおいて処置中止に関係した処置関連有害事象を有した。‡なお処置中の患者およびフォローアップ期間が継続している非処置患者を含む。
【表3】


データは、特に断らない限り、n(%)または中央値(IQR)として表した。*ニボルマブ3mg/kg群における3患者、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群における2患者およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群における4患者は第一選択白金治療を受けておらず、適格性基準に合わなかったが、処置し、解析に含んだ。†化学療法剤後<90日に再発した患者に含めた。‡PD-L1評価可能患者のパーセンテージ;端数丸めにより100%を超え得る。
【0224】
患者は、中央値で、ニボルマブ3mg/kgコホートでニボルマブ(IQR2.0~6.0)を3~5注入、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいてニボルマブ(IQRは計算不可能)を9.0注入およびイピリムマブ(IQRは計算不可能)を4.0注入、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいてニボルマブ(2.0~14.0)およびイピリムマブ(2.0~4.0)の各々を3.0注入およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいてニボルマブ(2.0~6.0)およびイピリムマブ(2.0~4.0)の各々を2.0注入受けた。解析時、77(79%)患者はニボルマブ3mg/kgを中止しており、42(69%)患者はニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgを中止しており、43(80%)患者はニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgを中止しており;最も一般的理由は疾患進行であった(図1;表4)。2患者はニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kgを中止した(1名は疾患進行および1名は治験薬と関連しない有害事象のため)。
【表4】


データは、特に断らない限りn、n(%)または中央値(IQR)として示した。全患者は、データベース閉鎖前少なくとも90日に登録された。AE=有害事象。IQR=四分位範囲 NA=該当なし。*2015年11月6日データベース閉鎖時に治験を継続していた患者。**2016年3月24日データベースロック時に治験を継続していた患者(n=98、ニボルマブ-3;n=61、ニボルマブ-1/イピリムマブ-3;n=55、ニボルマブ-3/イピリムマブ-1)。†疾患進行した1患者および処置中止を要請した1患者は、ニボルマブ-3コホートにおいて処置中止に関係した処置関連有害事象を有した。‡なお処置中の患者およびフォローアップ期間が継続している非処置患者を含む。
【0225】
盲検式中央再調査により、ニボルマブ3mg/kgで98患者中10(10%[95%CI5~18])、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgで61患者中14(23%[13~36])およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgで54患者中10(19%[9~31])は確認客観的応答を達成した(表5;図3A~3C)。ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kgを受けた3患者中1(33%)は客観的応答(完全奏功;データは示していない)を達成した。特定の群における18患者中2以上が、その群が段階2についての登録を継続する前に確認部分または完全奏功を有しなければならないという事前に定義された閾値を満たした。ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて、7患者は疾患評価前に死亡し、4患者は早期に中止し(1名は毒性、3名は臨床的進行)、1患者はプロトコール完了前に同意撤回した;ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて、5患者は疾患評価前に死亡し、1患者は臨床的進行のため早期に中止し、1患者は第一評価が実施されなかったために評価せず、1患者は、走査およびフォローアップ来院について同意を撤回した;そしてニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて、2患者は疾患評価前に死亡し、3患者は早期に中止し(2名は臨床的進行および1名は毒性のため)、CT走査は1患者で実施されなかった。応答期間の中央値は、ニボルマブ3mg/kgで到達せず(95%CI4.4~到達せず)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgで7.7か月(4.0~到達せず)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgで4.4か月(3.7~到達せず)であった。16患者は6か月より長い応答期間を示した:ニボルマブ3mg/kg群における6患者、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群における1患者、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群における8患者およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群における1患者(中央9.6か月[IQR7.1~14.3])。応答までの時間中央値は表5に示される。データベース閉鎖時、ニボルマブ3mg/kg群の10応答中8(80%)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群における3応答中1、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群における14応答中7(50%)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群における10応答中7(70%)は継続中であった。ニボルマブ3mg/kgコホートにおける30患者、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおける15患者およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおける6患者は、増悪後処置を続けた。
【表5】


特に断らない限り、データはn(%)である。全患者は、データベース閉鎖前少なくとも90日に登録された。
【0226】
2016年3月24日のデータベース閉鎖時に、ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて98患者中60患者(61%)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgにおいて61患者中36患者(59%)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgにおいて55患者中35患者(64%)が死亡していた。全生存期間中央値はニボルマブ3mg/kgコホートにおいて4.4か月(95%CI3.0~9.3)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて7.7か月(3.6~18.0)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて6.0か月(3.6~11.0)であった。1年全生存はニボルマブ3mg/kgコホートにおいて33%(95%CI22~45)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて43%(30~56)およびニボルマブ3mg/g+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて35%(22~48)であった(図4A)。
【0227】
ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて76(78%)患者、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて44(72%)患者およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて42(78%)患者が疾患進行または死亡していた;無進行生存期間の中央値はそれぞれ1.4か月(95%CI1.4~1.9)、2.6か月(1.4~4.1)および1.4か月(1.3~2.2)であった。1年無進行生存は、ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて11%(95%CI5~19)およびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートについて19%(9~32)であった(図4B)。ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートは、データベース閉鎖時無進行生存について1年のマイルストーンを満たさなかった。ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおける3患者中2(67%)は死亡しており、1(33%)は進行事象を有していた。9患者は、進行後ニボルマブ3mg/kgコホートから組み合わせコホートに移っていた(1名はニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg、8名はニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgに);これら患者の8名はさらに疾患進行し、ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおける1患者は同意を撤回し、それ故に応答は判定できなかった。
【0228】
PD-L1発現は216患者サンプル中148(69%)で評価可能であり、その中で39(27%)は新鮮生検サンプルであり、109(74%)は保存検体であった。25(17%)は1%以上のPD-L1発現を有し、7(5%)は5%以上のPD-L1発現を有した(表3)。ニボルマブ3mg/kg、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgおよびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートの前計画探索的解析において、腫瘍応答は、PD-L1発現と無関係に患者で起こった(それぞれ図5A~5C)。
【0229】
グレード3または4処置関連有害事象は、ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて98患者中13(13%)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて61患者中18(30%)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて54患者中10(19%)で生じた(表6);ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートでグレード3または4処置関連有害事象を有した患者はいなかった(データは示していない)。最も一般的に報告されたグレード3または4処置関連有害事象はリパーゼ上昇(無し対5[8%]対無し)および下痢(無し対3[5%]対1[2%])であった。ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて4(4%)患者、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて2(67%)患者、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて18(30%)患者およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて8(15%)患者は、処置関連有害事象のために投与延期していた。悪性新生物以外、最も頻繁な重篤有害事象は、ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて5(5%)患者、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて2(3%)患者およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて4(7%)が経験した呼吸困難およびニボルマブ3mg/kgコホートにおいて2(2%)患者、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて4(7%)患者およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて4(7%)患者が経験した下痢であった。17患者が処置関連有害事象のため処置を中止した:ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて6(6%)患者(各1患者が辺縁系脳炎、高血糖、口内炎、アラニンアミノトランスフェラーゼ上昇、グルタミルトランスフェラーゼ上昇および間質性肺炎)、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて7(11%)患者(各1患者が大腸炎、重症筋無力症、間質性肺炎および心筋症およびブドウ膜炎;1患者が甲状腺機能低下症、高血糖およびアラニンアミノトランスフェラーゼ上昇;1患者が下痢および腎不全)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおいて4(7%)患者であった(各1患者が大腸炎、間質性肺炎および末梢ニューロパチー;1患者が呼吸困難および間質性肺炎;表6)。ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgを受けた2患者がそれぞれ重症筋無力症の処置関連事象および腎不全悪化により死亡し、ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgを受けた1患者が処置関連間質性肺炎により死亡した。疾患進行および治験薬毒性以外の理由で、次の死亡が報告された:ニボルマブ3mg/kg群において、3患者(3%)が不明理由のため、1患者(1%)が敗血症および多臓器不全のためならびに1患者(1%)が治験薬と関連しない呼吸器不全のため;ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群において、3患者(5%)が不明理由のため、1患者(2%)が治験薬と関連しない硬膜下血腫のため、1患者(2%)が鎮静のため、1患者(2%)が血液量減少性敗血症性ショックおよびカンジダ血症からの敗血症性ショックのためならびに1患者(2%)が腹部敗血症および二次性血管内播種性凝血のため;そしてニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群において、3患者(6%)が不明理由のためおよび1患者(2%)が治験薬と関連しない有害事象のため。
【表6-1】


【表6-2】


データはn(%)として表した。この表は、何れかの処置コホートおける患者の≧10%のグレード1~2処置関連事象および全グレード3~4事象を報告する。安全性解析は、データベース閉鎖の前少なくとも90日に登録された全患者を含んだ;ニボルマブ3mg/kgから組み合わせ処置に移った後の有害事象を有する患者は除外する。一部患者は1を超える有害事象を有した。ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群における2患者は、それぞれ重症筋無力症および腎不全悪化により死亡した;両事象は処置関連と考えられた。ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおける1患者は、処置関連と考えられる、間質性肺炎により死亡した。
【0230】
2患者はグレード2辺縁系脳炎を有した:ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて1患者(治験医により処置に関連しないとして報告)およびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて1患者(治験医により処置関連として報告);両事象は免疫抑制性処置により解消した。ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて1患者は、静脈内免疫グロブリンおよびコルチコステロイド処置で解消しなかったグレード4辺縁系脳炎(治験医により処置関連として報告)を有した。処置関連間質性肺炎は8患者で生じ、8患者中6患者が処置により解消した。成果は1患者で不明であり、1患者は死亡した。
【0231】
ニボルマブ3mg/kgからニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgに移った1患者は、アラニンアミノトランスフェラーゼレベルの処置関連グレード3上昇を有した。ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおける5(8%)患者は、グレード3または4の膵炎の臨床的徴候がない無症候性リパーゼ上昇を有した(表6)。
【0232】
客観的応答は、1つの先行ラインの治療を受けた患者および2以上の先の治療を受けた患者で観察された(表7)。全生存期間中央値および無進行生存は、先の処置1対2以上の患者で有意差がなく、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgを受けた1つの先の治療を受けた患者の長い無進行生存は例外である可能性があった(図6A~6D)。
【表7】


データは、特に断らない限りnまたはn(%)として表した。全患者は、データベースロックの前少なくとも90日に登録された。
【0233】
第一選択処置として白金剤で処置された患者の事後解析において、客観的応答は、白金感受性および白金抵抗性疾患の両方の患者で達成された(図7A~7C;表8)。白金感受性疾患を有する患者において、ニボルマブ3mg/kgコホートにおいて55中2(4%)およびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートにおいて25中2(8%)が続く白金ベースの癌治療を受けた。ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgアームの白金感受性疾患を有する患者で続く白金ベースの癌治療を受けた者はいなかった。
【表8】


特に断らない限り、データはn(%)として示した。全患者は、データベースロックの前少なくとも90日に登録された。白金ベースの治療に対する応答が知られる患者について、白金感受性は、次のとおり29患者で不明であった:ニボルマブ-3、n=10;ニボルマブ-1/イピリムマブ-3、n=11;ニボルマブ-3/イピリムマブ-1、n=8。*白金ベースの化学療法剤≧90日後の患者再発。†白金ベースの化学療法剤に応答しなかったまたは<90日後に再発した患者。
【0234】
2017年3月30日のデータベース閉鎖時点で、盲検式中央再調査により、ニボルマブ3mg/kg群の11%の患者およびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群の23%の患者が処置に対する客観的応答を示した。表9参照。応答までの時間中央値はニボルマブ3mg/kg群で1.4か月(1.1~4.1か月、範囲)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群で2か月(1~4.1か月、範囲)であった。応答の中央期間はニボルマブ3mg/kg群で17.9か月(2.8~34.6、範囲)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群で14.2か月(1.5~26.5、範囲)であった。ニボルマブ3mg/kg群における45%の応答者およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群における36%の応答者は、2年後も応答し続けていた。
【表9】


応答者のパーセンテージ(ニボルマブ、n=11;ニボルマブ+イピリムマブ、n=14)
【0235】
腫瘍PD-L1発現を、処置に対する客観的応答を有した患者で評価した。表10参照。非無作為化コホート内で、PD-L1発現は43患者で評価しなかった(27%)。定量化可能PD-L1発現を有する患者(159患者)の中で、82%は、1%未満のPD-L1を発現する腫瘍を有し、18%は少なくとも1%PD-L1のPD-L1を発現する腫瘍を有した。図9参照。少なくとも1%PD-L1のPD-L1を発現する腫瘍の患者について、ニボルマブ3mg/kg群で9%ORRおよびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で10%ORRがあった。1%未満のPD-L1を発現する腫瘍の患者ついて、ニボルマブ3mg/kg群で14%ORRおよびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で32%ORRがあった。
【表10】

【0236】
全生存期間(OS)は、イピリムマブと組み合わせたニボルマブでの処置で改善した。図9参照。全生存期間中央値はニボルマブ3mg/kg群で4.1か月(95%CI3.0~6.8)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群で7.8か月(3.6~14.2)であった。1年全生存は、ニボルマブ3mg/kg群で27%およびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で40%であった。2年全生存は、ニボルマブ3mg/kg群で14%およびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で26%であった。最小フォローアップは、ニボルマブ3mg/kg群の患者について19.6か月(中央値=23.3か月)およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群の患者について20.2か月(中央値=28.6か月)で生じた。フォローアップは、最初の投与からデータベース閉鎖までの期間として計算した。いくつかの例で、フォローアップは、例えば、2017年3月30日データベース閉鎖前に死亡した患者について、より頻繁であった。
【0237】
考察
我々の所見は、ニボルマブ単剤療法およびニボルマブ+イピリムマブが、限局型または進展型SCLCを有し、少なくとも1つの先のレジメン後疾患進行した患者で臨床的に意味のある活性および許容される安全性プロファイルを提供することを示す。白金ベースの化学療法剤での先の処置後進行した患者の予後は悪い。進行型SCLCを得揺する患者は、しばしば第一選択治療に応答する;しかしながら、再発は避けられず、進行時および白金抵抗性疾患を有する患者の有効選択肢は限られる。進展型SCLCを有する患者の2年生存率は5%未満であった。
【0238】
我々の治験は、白金感受性または白金抵抗性疾患および先行ラインの治療の範囲について不均一な患者集団を登録し、他の第二選択治験との比較が困難となった。応答および疾患安定は全処置コホートで見られた。腫瘍退縮は、慣用のおよび免疫関連パターンの応答の両方に続いた(新規病巣存在下での腫瘍負荷の減少延長)。サブグループの患者数は少なかったが、予備的解析は、白金感受性と白金抵抗性サブグループの間の類似応答および1つの先のレジメンと2以上の先のレジメンの患者の類似活性を示した。処置群を超えて、応答は持続性であった。
【0239】
1フェーズ2治験は、1つまたは2つの先の化学療法剤レジメン後疾患進行した患者の類似集団におけるテモゾロミドを評価した。客観的応答を達成した患者の割合は、我々の治験と同等であったが - 白金感受性疾患を有する患者48中11患者(23%)および白金難治性疾患を有する患者16中2患者(13%) - テモゾロミドに対する応答期間の中央値は低かった:全処置患者で3.5か月(範囲1.4~14.7)。DLL3標的抗体-薬物コンジュゲートであるRova-Tは、SCLCを有し、1つまたは2つの先行ラインの治療後進行した患者のフェーズ1治験において抗腫瘍活性および管理可能な毒性を示した。客観的応答は、最大耐量でDLL3バイオマーカー処置陽性の16患者中7患者(44%)で達成された。
【0240】
我々の治験の限界は、治験コホートが無作為化されていなかったこと、および治験がコホート間の公式比較ができなかったことを含む。ベースライン特性は一般にコホートにわたり類似し、組み合わせ処置コホートは類似応答を示したが、応答はニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgレジメンで深いと考えられた。この投与レジメンはまた先に未処置の黒色腫に効果的であることも示されている。
【0241】
白金感受性または治療のラインと無関係の患者における単剤療法またはイピリムマブと組み合わせたニボルマブの活性は、SCLCにおける免疫チェックポイント阻害剤とトポテカンまたはアムルビシンを区別する重要な態様である。トポテカンに対する応答は化学感受性により、腫瘍抵抗性変異により駆動される。対照的に、ゲノム的に不安定な性質のSCLC2は、腫瘍抗原駆動免疫応答の誘導または回復により免疫チェックポイント遮断に感受性となるはずである。リンパ球がSCLC腫瘍でほとんど観察されていないため、1つの仮説は、処置効果を最大化するためにPD-1阻害に加えて、CTLA-4阻害でリンパ系区画を標的化する大きな必要性があるということである。
【0242】
PD-L1発現NSCLCを有する患者でPD-1遮断の活性増加を示すいくつかの研究がある。しかしながら、本治験からのものを含むデータは、NSCLCと比較して、SCLCにおいて、PD-L1発現の有症率があることが示唆される。PD-1免疫チェックポイント阻害剤であるペンブロリズマブの治験は、PD-L1陽性進展型SCLCを有する患者において、16中4患者(25%)で初期応答および持続性応答を報告した。我々の治験において、客観的応答は、PD-L1発現の発現にかかわらず患者で見られ、1%未満のPD-L1腫瘍発現を有する患者における深い腫瘍応答を含んだ。PD-L1発現がSCLCにおける有効性の予測となるか否かは、さらに大集団における解析を待たなければならない。
【0243】
この治験における半分を超える患者が2以上の化学療法剤レジメンを受けていたが、1年全生存(ニボルマブ3mg/kgについて33%およびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgについて43%)は第二選択トポテカンまたはアムルビシンの歴史的治験で報告されたのと同等であるかそれより良好であった。複数固形腫瘍にまたはる免疫チェックポイント阻害剤での他の治験に一致して、かつトポテカンの治験と異なり、我々の治験からの所見は、ニボルマブ3mg/kgおよびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートについて全生存期間曲線の平坦化を示し、患者のサブセットにおける生存利点を示唆した。しかしながら、この治験が少数であったため、これがいつ生じるかの決定は困難である。腫瘍免疫療法薬物の先の無作為化治験からの所見に一致して、無進行生存より全生存期間にニボルマブまたはイピリムマブ処置の効果が大きいように見える。
【0244】
有害事象は、確立された安全性ガイドラインを使用して、管理可能であった。ニボルマブ3mg/kgおよびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgコホートにおける最も毒性の効果は軽度から中度であり、ニボルマブ3mg/kg群で6(6%)患者およびニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kg群で4(7%)患者のみが毒性により中止した。多くの処置関連グレード3または4有害事象がニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgコホートで生じ、7(11%)患者が毒性により中止した。このレジメンは、黒色腫を有する患者のフェーズ3治験において効果的かつ安全に使用され、このスケジュールがSCLCを有する患者において実行可能であることを示唆する。全コホートにおいて、トポテカンまたはアムルビシンの治験と比較して、少ない処置関連毒性効果が報告された。
【0245】
3患者が辺縁系脳炎を有し、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kgを受けた1患者が処置関連重症筋無力症で死亡した。自己免疫性脳炎および重症筋無力症は、ニボルマブおよびイピリムマブの両方で、稀ではあるが、報告されている。これらの事象の頻度は、他の悪性疾患と比較してSCLCを有する患者で高いように見え、おそらく、この疾患と関連する傍腫瘍性神経症候群のためである。処置関連間質性肺炎は全処置コホートにまたはる8患者で報告され、ニボルマブ3mg/kg+イピリムマブ1mg/kgを受けた1患者で死亡に至った。免疫関連有害事象または先の無症候性自己免疫性疾患過程の暴露と、有効管理のための安全性ガイドラインの迅速な実行が重要である。
【0246】
これらの良好なフェーズ1/2データに基づき、第一選択化学療法剤(CheckMate 451, NCT02538666)後の維持治療(進行していない患者)として、均一用量としてニボルマブ(2週毎240mg静脈内)または42日サイクル2回ニボルマブ+イピリムマブ(1mg/kgニボルマブおよび3mg/kgイピリムマブを3週毎に静脈内、続いてニボルマブ[2週毎240mg静脈内])対プラセボを含むフェーズ3治験およびSCLCにおけるニボルマブ(2週毎240mg静脈内)対第二選択治療としての単剤化学療法剤(CheckMate 331, NCT02481830)を開始し、現在進行中である。
【0247】
実施例2
実施例1に詳述したフェーズ1/2治験は、疾患が白金ベースの治療後進行したSCLCを有する患者における単剤療法としてまたはイピリムマブとの組み合わせでのニボルマブをさらに評価するための無作為化コホートを含むように拡大されている。ここで、我々は、SCLC無作為化コホートの中間的記録解析を報告する。
【0248】
結果
1または2の先の白金含有処置レジメンを受けたSCLCを有する患者を、無作為化コホートにおける次の処置群の1つに割り当てた:単剤療法としてのニボルマブ(3mg/kg体重を2週毎に静脈内投与される)またはニボルマブ+イピリムマブの組み合わせ処置(ニボルマブ1mg/kgおよびイピリムマブ3mg/kgを4サイクルについて3週毎、続いて3mg/kgのニボルマブ2週毎に静脈内投与)。計242患者が、ニボルマブ単剤療法処置群(n=147)またはニボルマブおよびイピリムマブ組み合わせ治療処置群(n=95)に3:2で無作為化された。図8参照。この治験のプライマリーエンドポイントは、確認客観的応答の患者の比率であった(割り当てられた患者数で除した完全奏功または部分奏効の最良全奏効の患者数[治験医評価RECIST, version 1.1基準による]として定義)。客観的奏効率は、本治験目標がニボルマブ単剤療法またはイピリムマブとの組み合わせの抗腫瘍活性の評価であったため、プライマリーエンドポイントであった。ニボルマブ3mg/kg群のフォローアップ中央値は10.8か月であり、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群は11.2か月であった。
【0249】
無作為化コホートにおける患者のベースライン特性は表11に示される;このコホートにおける全患者は、1または2の先の白金含有レジメンで処置されている。
【表11】


【0250】
完全応答(CR)は、無作為化コホートにおける2患者で達成された(ニボルマブ3mg/kg群における1患者およびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群における1患者)。無作為化コホートにおいて、12%(95%CI)の客観的奏効率(ORR)がニボルマブ3mg/kg群で達成され、21%(95%CI)のORRが無作為化コホートにおけるニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で達成された;一方、非無作為化コホートにおいて、11%のORR(95%CI)がニボルマブ3mg/kg群で達成され、23%のORR(95%CI)がニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で達成された。図10;表9参照。CIは次のとおりである:ニボルマブ(無作為化):7、18;ニボルマブ+イピリムマブ(無作為化):13、31;ニボルマブ(非無作為化):6、19;ニボルマブ+イピリムマブ(非無作為化):13、36。
【0251】
無作為化コホートにおける応答までの時間中央値は非無作為化コホートと同等であり、すなわち、ニボルマブ3mg/kg群で1.5か月およびニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で1.4か月であった。
【0252】
無作為化コホートにおいて、18%(95%CI)の無進行生存(PFS)率がニボルマブ3mg/kg群で達成され、30%(95%CI)のPFS率が無作為化コホートにおいてニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で達成された;一方、非無作為化コホートにおいて、27%(95%CI)のPFS率がニボルマブ3mg/kg群で達成され、36%(95%CI)のPFS率がニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で達成された。図11参照。
【0253】
無作為化コホートにおいて全生存(OS)率はニボルマブ3mg/kg群で65%(95%CI)であり、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で64%(95%CI)であった;一方、非無作為化コホートにおいて、OSはニボルマブ3mg/kg群において59%(95%CI)であり、ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群において72%(95%CI)であった。図12参照。最小フォローアップ期間は12週であった。
【0254】
ニボルマブ単剤療法およびニボルマブ+イピリムマブ組み合わせ治療の活性および安全性もプールされたコホート、すなわち、無作為化コホートおよび非無作為化コホート両方からのニボルマブ3mg/kg群(245患者を“プールされた”ニボルマブ3mg/kg群で合わせた)および無作為化コホートおよび非無作為化コホート両方からのニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群(156患者を“プールされた”ニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で合わせた)でも評価した。
【0255】
ORRはプールされたニボルマブ3mg/kg群で11%(95%CI:8、6)であり、プールされたニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で22%(95%CI:16、29)であった。表12参照。
【表12】


【0256】
処置関連有害事象(TRAE)をプールされたニボルマブ3mg/kg群およびプールされたニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群で評価した。TRAEはプールされたニボルマブ3mg/kg群の55%の患者およびプールされたニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群の73%の患者で生じたが、グレード3~4 TRAEはプールされたニボルマブ3mg/kg群の12%の患者およびプールされたニボルマブ1mg/kg+イピリムマブ3mg/kg群の37%の患者でしか見られなかった。これらの中で、78%(プールされたニボルマブ+イピリムマブ群における31/40)および45%(プールされたニボルマブ群における5/11)は解消した。消失までの期間中央値は、プールされたニボルマブ+イピリムマブ群で1.8週(消化器事象)~16.3週(肝臓事象)およびプールされたニボルマブ群で3.4週(肺事象)~到達せず(腎臓および肝臓事象)の範囲であった。
【表13】

【0257】
計5処置関連死亡があり、4つは重症筋無力症、間質性肺炎、発作/脳炎および自己免疫性肝炎(各n=1)によりプールされたニボルマブ+イピリムマブ群でおよび1つは間質性肺炎によりプールされたニボルマブ群で生じた。腎不全によるニボルマブ+イピリムマブ群における先の報告死亡は、その後処置と無関係であることが決定された。
【0258】
考察
2年を超える長いフォローアップで、ニボルマブ単剤療法またはニボルマブおよびイピリムマブ組み合わせ治療で観察された生存および処置に対する腫瘍応答は持続性のままであった。無作為化コホートにおける有効性は非無作為化コホートにおけるのと一致した。処置に対する応答は白金感受性、治療のラインおよび/またはPD-L1状態と無関係であった。
図1
図2
図3-1】
図3-2】
図4A
図4B
図5-1】
図5-2】
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11
図12