(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167283
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】音響部材
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20241126BHJP
C08K 7/02 20060101ALI20241126BHJP
C08L 1/00 20060101ALI20241126BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20241126BHJP
H04R 1/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K7/02
C08L1/00
C08L23/00
H04R1/02 101A
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024142014
(22)【出願日】2024-08-23
(62)【分割の表示】P 2020104651の分割
【原出願日】2020-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】浜辺 理史
(72)【発明者】
【氏名】今西 正義
(72)【発明者】
【氏名】名木野 俊文
(72)【発明者】
【氏名】西野 彰馬
(57)【要約】 (修正有)
【課題】音特性を向上させた複合樹脂成形体を実現する。
【解決手段】音響部材向け複合樹脂成形体は、主剤樹脂と、主剤樹脂中に分散された繊維状フィラーと、を含有する音響部材向け複合樹脂成形体であって、繊維状フィラーの濃度が複合樹脂成形体中に50重量%以上存在し、複合樹脂成形体中において、繊維状フィラーの周りの主剤樹脂の結晶化度が、それ以外の箇所の主剤樹脂の結晶化度よりも高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤樹脂と、前記主剤樹脂中に分散された繊維状フィラーと、を含有する音響部材向け複合樹脂成形体であって、
前記繊維状フィラーの濃度が前記複合樹脂成形体中に50重量%以上存在し、
前記複合樹脂成形体中において、前記繊維状フィラーの周りの前記主剤樹脂の結晶化度が、それ以外の箇所の前記主剤樹脂の結晶化度よりも高い、音響部材向け複合樹脂成形体。
【請求項2】
前記複合樹脂成形体中において、前記繊維状フィラーの先端の周りの前記主剤樹脂の結晶化度が、前記繊維状フィラーの中央の周りの前記主剤樹脂の結晶化度よりも高い、請求項1に記載の音響部材向け複合樹脂成形体。
【請求項3】
前記複合樹脂成形体の表面に、穴、もしくは亀裂を有しており、その幅が、繊維状フィラーの径の1/10以下である、請求項1又は2に記載の音響部材向け複合樹脂成形体。
【請求項4】
前記複合樹脂成形体中における前記繊維状フィラーが、予め疎水化されていないことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の音響部材向け複合樹脂成形体。
【請求項5】
前記複合樹脂成形体中における前記繊維状フィラーが、端部のみ解繊されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の音響部材向け複合樹脂成形体。
【請求項6】
前記繊維状フィラーがセルロース等の天然繊維からなる繊維である、請求項1から5のいずれか1項に記載の音響部材向け複合樹脂成形体。
【請求項7】
前記主剤樹脂がオレフィン樹脂である、請求項1から6のいずれか1項に記載の音響部材向け複合樹脂成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音特性に優れた成形体を実現できる音響部材向け複合樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)等のいわゆる「汎用プラスチック」は、非常に安価であるだけでなく、成形が容易で、金属、またはセラミックスに比べて重さが数分の一と軽量である。そのため、汎用プラスチックは、袋、各種包装、各種容器、シート類等の多様な生活用品の材料として、また、自動車部品、電気部品等の工業部品、及び日用品、雑貨用品等の材料として、よく利用されている。
【0003】
しかしながら、汎用プラスチックは、機械的強度が不十分であること等の欠点を有している。そのため、汎用プラスチックは、自動車等の機械製品、及び電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品に用いられる材料に対して要求される十分な特性を有しておらず、その適用範囲が制限されているのが現状である。
【0004】
一方、ポリカーボネート、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド等のいわゆる「エンジニアプラスチック」は、機械的特性に優れており、自動車等の機械製品、及び電気・電子・情報製品をはじめとする各種工業製品に用いられている。しかし、エンジニアプラスチックは、高価であり、モノマーリサイクルが難しく、環境負荷が大きいといった課題を有している。
【0005】
そこで、汎用プラスチックの材料特性(機械的強度等)を大幅に改善することが要望されている。汎用プラスチックを強化する目的で、繊維状フィラーである天然繊維やガラス繊維、炭素繊維などを汎用プラスチックの樹脂中に分散させることにより、その汎用プラスチックの機械的強度を向上させる技術が知られている。これらの繊維状フィラーを添加することで、機械的特性だけでなく、材料固有の内部損失が高まることで、音特性も向上することが知られている。これらの中でもセルロースなどの有機フィラーは、安価であり、かつ廃棄時の環境性にも優れていることから、注目視されている。
【0006】
スピーカー、ヘッドフォン、各種プレーヤーなどの音響機器においては、その外装部材や内装部材に使われる成型部品には、音特性の向上を目的として、機械的強度に加えて、粘性向上による内部損失の向上が求められている。複合樹脂への音特性向上のために、各社検討を進められている。例えば、セルロース繊維と熱可塑性樹脂からなる複合樹脂で、セルロース繊維を重量で約35%含有し、セルロース繊維の長さが0.5~1.0mmであり、繊維径が50~60μmである複合樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。この複合樹脂をスピーカーユニット取付部材成形用組成物として使用することで優れた音特性を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の複合樹脂では、多くの繊維を添加すると成形性が悪化するため、複合樹脂中の半分以上が樹脂であり、剛性、内部損失が十分に高くなく、音特性が十分でないという課題があった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するものであって、音特性を向上させた音響部材向け複合樹脂成形体を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る音響部材向け複合樹脂成形体は、主剤樹脂と、前記主剤樹脂中に分散された繊維状フィラーと、を含有する音響部材向け複合樹脂成形体であって、
前記繊維状フィラーの濃度が前記複合樹脂成形体中に50重量%以上存在し、
前記複合樹脂成形体中において、前記繊維状フィラーの周りの前記主剤樹脂の結晶化度が、それ以外の箇所の前記主剤樹脂の結晶化度よりも高い。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る音響部材向け複合樹脂成形体により、音響部材向け繊維強化材料において、高弾性率化と高内部損失化の両立が可能となり、これにより、製品の音特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態1に係る複合樹脂成形体の内部構成を示す透過模式図である。
【
図2A】実施の形態1に係る複合樹脂成形体の構成部材である繊維状フィラーの模式図である。
【
図2B】
図2Aの繊維状フィラーの端部を含む部分拡大図である。
【
図3】(a)は、実施の形態1に係る複合樹脂成形体の表面AFM像の位相像2D表示であり、(b)は、3D像と位相像との重ね合わせ表示である。
【
図4】実施の形態1に係る複合樹脂成形体の製造プロセスの模式図である。
【
図5】各実施例1~4および各比較例1~4における測定結果を示す表1である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の態様に係る音響部材向け複合樹脂成形体は、主剤樹脂と、前記主剤樹脂中に分散された繊維状フィラーと、を含有する音響部材向け複合樹脂成形体であって、
前記繊維状フィラーの濃度が前記複合樹脂成形体中に50重量%以上存在し、
前記複合樹脂成形体中において、前記繊維状フィラーの周りの前記主剤樹脂の結晶化度が、それ以外の箇所の前記主剤樹脂の結晶化度よりも高い。
【0014】
第2の態様に係る音響部材向け複合樹脂成形体は、上記第1の態様において、前記複合樹脂成形体中において、前記繊維状フィラーの先端の周りの前記主剤樹脂の結晶化度が、前記繊維状フィラーの中央の周りの前記主剤樹脂の結晶化度よりも高くてもよい。
【0015】
第3の態様に係る音響部材向け複合樹脂成形体は、上記第1又は第2の態様において、前記複合樹脂成形体の表面に、穴、もしくは亀裂を有しており、その幅が、繊維状フィラーの径の1/10以下であってもよい。
【0016】
第4の態様に係る音響部材向け複合樹脂成形体は、上記第1から第3のいずれかの態様において、前記複合樹脂成形体中における前記繊維状フィラーが、予め疎水化されていなくてもよい。
【0017】
第5の態様に係る音響部材向け複合樹脂成形体は、上記第1から第4のいずれかの態様において、前記複合樹脂成形体中における前記繊維状フィラーが、端部のみ解繊されていてもよい。
【0018】
第6の態様に係る音響部材向け複合樹脂成形体は、上記第1から第5のいずれかの態様において、前記繊維状フィラーがセルロース等の天然繊維からなる繊維であってもよい。
【0019】
第7の態様に係る音響部材向け複合樹脂成形体は、上記第1から第6のいずれかの態様において、前記主剤樹脂がオレフィン樹脂であってもよい。
【0020】
以下、実施の形態に係る複合樹脂成形体について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明においては、同じ構成部分には同じ符号を付して、適宜説明を省略している。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る複合樹脂成形体10の内部構成を示す透過模式図である。
図2Aは、実施の形態1に係る複合樹脂成形体の構成部材である繊維状フィラー2の模式図である。
図2Bは、
図2Aの繊維状フィラーの端部5を含む部分拡大図である。
実施の形態1に係る複合樹脂成形体10は、主剤樹脂1と、繊維状フィラー2と、添加剤3とを含有する溶融混練物からなる。複合樹脂成形体は、
図1の透過模式図に示すように、主剤樹脂1中に繊維状フィラー2、および添加剤3が分散されている。繊維状フィラー2の濃度は、複合樹脂成形体10中で50重量%以上である。また、複合樹脂成形体10中において、繊維状フィラー2の周りの主剤樹脂1の結晶化度が、それ以外の箇所の主剤樹脂1の結晶化度よりも高い。
これによって、高弾性率化と高内部損失化の両立が可能となり、これを用いた製品の音特性を向上させることができる。
【0022】
<主剤樹脂>
本実施の形態において、主剤樹脂1は、良好な成形性を確保するために、熱可塑性樹脂であることが好ましい。熱可塑性樹脂としては、オレフィン系樹脂(環状オレフィン系樹脂を含む)、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、有機酸ビニルエステル系樹脂またはその誘導体、ビニルエーテル系樹脂、ハロゲン含有樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、熱可塑性ポリウレタン樹脂、ポリスルホン系樹脂(ポリエーテルスルホン、ポリスルホンなど)、ポリフェニレンエーテル系樹脂(2,6-キシレノールの重合体など)、セルロース誘導体(セルロースエステル類、セルロースカーバメート類、セルロースエーテル類など)、シリコーン樹脂(ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)、ゴムまたはエラストマー(ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのジエン系ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴムなど)、バイオマスプラスチック(バイオポリエチレン、バイオポリエチレンテレフタレート、でんぷん、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシアルカン酸、その他生由来樹脂、生分解性樹脂など)などが挙げられる。上記の樹脂は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。なお、主剤樹脂1は良好な成形性を有していれば、熱可塑性樹脂でなくてもよく、上記の材料に限定されるものではない。
【0023】
これらの熱可塑性樹脂のうち、主剤樹脂1は、比較的低融点であるオレフィン系樹脂であることが好ましい。オレフィン系樹脂としては、オレフィン系単量体の単独重合体の他、オレフィン系単量体の共重合体や、オレフィン系単量体と他の共重合性単量体との共重合体が含まれる。オレフィン系単量体としては、例えば、鎖状オレフィン類(エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-オクテンなどのα-C2-20オレフィンなど)、環状オレフィン類などが挙げられる。これらのオレフィン系単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。上記オレフィン系単量体のうち、エチレン、プロピレンなどの鎖状オレフィン類が好ましい。他の共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどの脂肪酸ビニルエステル;(メタ)アクリル酸、アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル系単量体;マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその無水物;カルボン酸のビニルエステル(例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなど);ノルボルネン、シクロペンタジエンなどの環状オレフィン;およびブタジエン、イソプレンなどのジエン類などが挙げられる。これらの共重合性単量体は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用されてもよい。オレフィン系樹脂の具体例としては、ポリエチレン(低密度、中密度、高密度または線状低密度ポリエチレンなど)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1などの三元共重合体などの鎖状オレフィン類(特にα-C2-4オレフィン)の共重合体などが挙げられる。
【0024】
<分散剤>
次に、分散剤について説明する。本実施の形態における複合樹脂成形体は、繊維状フィラー2と主剤樹脂1との接着性、あるいは主剤樹脂1中の繊維状フィラー2の分散性を向上させるなどの目的で、分散剤を含有させてもよい。分散性が向上することで、繊維と樹脂の界面が均一に分散し、界面での振動吸収性が増加し、音特性が向上する。分散剤としては、各種のチタネート系カップリング剤、シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステルなどが挙げられる。上記シランカップリング剤は、不飽和炭化水素系やエポキシ系のものが好ましい。分散剤の表面は、熱硬化性もしくは熱可塑性のポリマー成分で処理され変性処理されても問題ない。本実施の形態における複合樹脂成形体における分散剤の含有量は、0.01質量%以上、20質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上、10質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上、5質量%以下であることがさらに好ましい。分散剤の含有量が、0.01質量%未満であると、分散不良が発生し、一方、分散剤の含有量が20質量%を超えると、複合樹脂成形体の強度が低下する。分散剤は、主剤樹脂1と繊維状フィラー2との組み合わせにより適切に選択されるが、分散剤が必要ない場合は特に添加しなくてもよい。
【0025】
<繊維状フィラー>
次に、繊維状フィラー2について説明する。本実施の形態における複合樹脂成形体に含まれる繊維状フィラー2(以下、単に「繊維」と称することがある。)は、複合樹脂組成物を用いて成形した複合樹脂成形体において、機械的特性の向上や、線膨張係数の低下による寸法安定性の向上などを主要な1つ目の目的として用いられる。この目的のため、繊維状フィラー2は主剤樹脂1よりも弾性率が高いことが好ましく、具体的にはカーボンファイバー(炭素繊維)、カーボンナノチューブ、パルプ、セルロース、セルロースナノファイバー、リグノセルロース、リグノセルロースナノファイバー、塩基性硫酸マグネシウム繊維(マグネシウムオキシサルフェート繊維)、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、炭化ケイ素繊維、ワラストナイト、ゾノトライト、各種金属繊維、綿、絹、羊毛あるいは麻等の天然繊維、ジュート繊維、レーヨンあるいはキュプラなどの再生繊維、アセテート、プロミックスなどの半合成繊維、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アラミド、ポリオレフィンなどの合成繊維、さらにはそれらの表面及び末端に化学修飾した変性繊維などが挙げられる。またさらにこれらの中で、入手性、弾性率の高さ、線膨張係数の低さの観点から、カーボン類、セルロース類が特に好ましい。
【0026】
繊維状フィラー2を添加する2つ目の目的は、音特性の向上である。すなわち粘性の向上である。この目的のため、繊維状フィラーはある程度の柔軟性があることが好ましく、パルプ、セルロース、セルロースナノファイバー、リグノセルロース、リグノセルロースナノファイバー、綿、絹、羊毛あるいは麻等の天然繊維、ジュート繊維、レーヨンあるいはキュプラなどの再生繊維が好ましい。上記以外の柔軟性をもった繊維でも、今回の目的に使用することが可能である。なお、繊維状フィラー2は機械的特性を向上でき、柔軟性をもっていれば、上記の材料に限定されるものではない。
【0027】
次に、繊維状フィラー2と主剤樹脂1との界面付近の形態について説明する。音特性の向上、すなわち内部損失の向上のためには、振動を熱エネルギーに変換することが必要であり、複合樹脂では繊維状フィラーと樹脂との界面での振動による摩擦熱となることで内部損失が向上する。この目的のため、上述の通り、繊維状フィラーは柔軟性を持っていることで、振動エネルギーへ変換されやすく、内部損失が向上する。さらに、繊維状フィラー2の周りの樹脂の結晶状態を制御することで、さらに内部損失を向上させることができる。
図2Bの繊維状フィラーの端部5を含む部分拡大図に示すように、繊維状フィラーの端部5のみ解繊されていることで、上記を満たす構造を得ることができる。このような構造により、繊維状フィラー先端付近の結晶化度が中央付近に比べて高くすることができる。混錬時のせん断力を高めるほど解繊し、解繊するほど結晶化度は高くなる。結晶化度の違いにより、樹脂の強度差が生まれ、界面が生成される。界面ができることで、界面で振動吸収し、内部損失を向上させることができる。先端解繊部位としては、繊維状フィラー2全体の繊維長Lの5%以上、50%以下であることが好ましい。解繊部位が全体の繊維長Lの5%未満であると、比表面積が小さいため結晶化度の増加がみられず、50%以上であると、結晶化度の違いによる界面が増加せず、いずれも音特性が悪化する。また繊維中央付近も、樹脂と密着している箇所と、密着していない箇所が存在することで密着していない箇所に比べて、密着している箇所の方が、結晶化度が高くなり、界面を増やすことで内部損失を向上させることができる。このような構造は繊維状フィラーを予め、疎水化処理などせずに、混練することで実現できる。また先端が解繊した繊維を用いることで、中央は解繊しておらず、それほど表面積が上がらないため、樹脂が増粘せず、高濃度化しても流動性が保たれ、成形性を良くできる。
【0028】
次に、複合樹脂成形体中での繊維状フィラーの存在状態について説明する。成形条件により、繊維状フィラーを成形体表面近辺へ偏析させることが可能である。繊維状フィラーとして天然系の材料を用いた場合、繊維に微小な空隙が空いている。そのため、繊維状フィラーを成形体近辺へ偏析させることで、成形体表面に微小な空隙を存在させることができる。また上述の通り、繊維状フィラーを予め疎水化処理しないことで、主剤樹脂と繊維状フィラーとがなじまず、成形時の熱収縮差により、主剤樹脂と繊維状フィラーとの間に微小な隙間を存在させることができる。その隙間も成形上により、成形体表面へ偏析させることが可能である。このように、成形体表面に、微小な穴、もしくは亀裂を有していることで、孔あき板壁のような、ヘルムホルツ共鳴の原理により、吸音特性が高まり、音特性を良くすることができる。
【0029】
図3(a)は、実施の形態1に係る複合樹脂成形体の表面原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)像の位相像2D表示である。
図3(b)は、3D像と位相像との重ね合わせ表示である。
図3(a)に示した通り、複合樹脂成形体の表面近傍に微小な穴、亀裂6を有している。複合樹脂成形体の表面近傍の微小な穴、亀裂6の幅を制御することでさらに音特性を向上させることができる。穴、亀裂6の短い側の幅が、繊維状フィラーの径の1/10以下であることが望ましい。穴、亀裂6の短い側の幅の上限についてはシミュレーションにより、判明しており、フィラー径の1/10より大きいと穴の内部で共鳴が起きにくく、音特性が十分に向上しない。そのため、繊維状フィラーの径の1/10以下であることが望ましい。このような亀裂6は、元々の繊維状態、樹脂と繊維の熱収縮差、成形条件により制御することができる。
【0030】
複合樹脂成形体の製造に用いる複合樹脂組成物のペレットをスピーカーの外装体等の1次外観部材へ適用する場合、繊維状フィラーを含む複合樹脂組成物について着色性が求められる。複合樹脂組成物として着色性を有するには、複合樹脂組成物の白色度が保たれる必要があり、添加する繊維状フィラーの白色度を保つ必要がある。繊維状フィラーの色差測定によるL値が高い方が好ましく、成形体の着色度が良くなる繊維状フィラーのLab表色系におけるL値(明度)については、実験的に算出しており、L値が85以上であることが好ましい。
【0031】
次に、繊維状フィラー2の特性について説明する。主剤樹脂1、および繊維状フィラー2の種類については、上記の通りである。しかし、主剤樹脂1に対して、繊維状フィラー2が柔らかすぎる、すなわち弾性率が小さいと、複合樹脂組成物及び成形後の複合樹脂成形体は、全体として弾性率が小さくなり、結果として強度が低下する。一方で主剤樹脂1に対して、繊維状フィラー2が硬すぎる、すなわち弾性率が大きいと、音の振動減衰時に十分に減衰されず、音特性が悪化する。そのため、主剤樹脂1と繊維状フィラー2の弾性率の関係は、繊維状フィラー2の弾性率の方が高く、その差は極力小さい方が好ましい。最適な関係についてはシミュレーション結果から算出され、主剤樹脂1と繊維状フィラー2の弾性率差は20GPa以内であることが好ましい。
【0032】
また、繊維状フィラーは、複合樹脂成形体中に50重量%以上存在する。これによって優れた音特性と高弾性率とを実現できる。
【0033】
<複合樹脂成形体の製造方法>
次に、複合樹脂成形体の製造方法について記載する。
図4は、本実施の形態1に係る複合樹脂成形体の製造プロセスを例示するフロー図である。
(1)溶融混練処理装置内に、主剤樹脂、繊維状フィラーおよび、添加剤が投入され、装置内で溶融混練される。これにより、主剤樹脂が溶融し、溶融された主剤樹脂に、繊維状フィラーと添加剤が分散される。また同時に装置の剪断作用により、繊維状フィラーの凝集塊の解繊が促進され、繊維状フィラーを主剤樹脂中に細かく分散させることができる。このときの繊維状フィラーの端部も解繊される。
【0034】
従来、繊維状フィラーは、湿式分散などの前処理により、事前に繊維を解繊したものが使用されていた。しかし、湿式分散で用いられる溶媒中で事前に繊維状フィラーを解繊すると、溶融した主剤樹脂中で解繊されるよりも解繊されやすいため、端部のみ解繊することが難しく、繊維状フィラー全体が解繊された状態となってしまう。また、前処理を合わせることで工程が増え、生産性が悪くなるといった課題があった。
【0035】
これに対して、本実施の形態における複合樹脂成形体の製造プロセスでは、繊維状フィラーの解繊を目的とした湿式分散による前処理を行わずに、主剤樹脂や分散剤などと一緒に溶融混練処理(全乾式工法)を行う。この工法では、繊維状フィラーの湿式分散処理を行わないことにより、繊維状フィラーを上記のように端部のみ部分的に解繊することができ、また工程数も少なく、生産性を向上させることができる。
【0036】
全乾式工法で本実施の形態の繊維状フィラーを作製するには混練時に高せん断応力をかけられることが好ましく、具体的な混練手法としては、単軸混練機、二軸混練機、ロール混練機、バンバリーミキサー、およびそれらの組み合わせなどが挙げられる。高せん断をかけやすく、また量産性も高いという観点から、連続式二軸混練機、連続式ロール混練機が特に好ましい。高せん断応力をかけることができる方法であれば、上記以外の混練手法でも構わない。
【0037】
(2)溶融混練装置から押し出された複合樹脂組成物は、ペレタイザー等の切断工程を経て、ペレット形状に作製される。ペレット化の方式として、樹脂溶融後すぐに行う方式としては、空中ホットカット方式、水中ホットカット方式、ストランドカット方式などがあり、あるいは、一度成形体やシートを成形したあとで、粉砕、切断することによる粉砕方式などもある。
【0038】
(3)このペレットを射出成形することにより、複合樹脂成形体としての射出成形品を作製することができる。ペレット中の繊維状フィラーは、上記のように、混合していることで、弾性率、耐衝撃性、外観性に優れた射出成形品を得ることができる。
【0039】
以下、発明者らが行った実験における各実施例および各比較例について説明する。
【0040】
(実施例1)
実施例1では、以下の製造方法によってパルプ分散ポリプロピレン複合樹脂成形体を製造した。
【0041】
(1)繊維状フィラーの出発原料として針葉樹パルプ(三菱製紙株式会社製 商品名:NBKP Celgar)を使用した。この針葉樹パルプを粉砕機で粉砕し、繊維状フィラーを得た。端部解繊については粉砕プロセスで調整した。
(2)主剤樹脂としてのポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製 商品名:J108M)と、上記繊維状フィラーとの混合体と、添加剤として無水マレイン酸(三洋化成工業株式会社製 商品名:ユーメックス)とを、主剤樹脂と繊維状フィラーと添加剤との重量比で42.9:55.0:2.1となるよう秤量し、ドライブレンドした。
(3)その後、二軸混練機(株式会社クリモト鉄工所製 KRCニーダ)にて溶融混練分散した。二軸混練機のスクリュー構成を変えることでせん断力を変えることができ、実施例1では中せん断タイプの仕様とした。樹脂溶融物をホットカットし、パルプ分散ポリプロピレンペレットを作製した。
【0042】
(4)作製したパルプ分散ポリプロピレンペレットを用いて射出成形機(日本製鋼所製 180AD)により複合樹脂成形体の試験片を作製した。試験片の作製条件は、樹脂温度190℃、金型温度60℃、射出速度60mm/s、保圧80Paとした。試験片の形状は、下記に述べる評価項目によって変更し、弾性率測定用に1号サイズのダンベルを作製し、親水性測定用に60mm角、厚さ1.6mmの平板を作製した。得られたパルプ分散ポリプロピレン複合樹脂成形体試験片を以下の方法により評価を行った。
【0043】
(繊維の端部解繊性)
得られたパルプ分散ポリプロピレンペレットをキシレン溶媒に浸漬して、ポリプロピレンを溶解させ、残ったパルプ繊維についてSEMにより繊維の形状を観察した。繊維の端部は解繊した状態であった。
【0044】
(複合樹脂成形体の弾性率)
得られた1号ダンベル形状の試験片を用いて、引張試験を実施した。ここで、弾性率の評価方法として、その数値が3.0GPa未満のものを×とし、3.0GPa以上4.0GPa未満のものを△とし、4.0GPa以上のものを〇とした。同試験片の弾性率は4.3GPaで、その評価は〇であった。
【0045】
(複合樹脂成形体の音特性評価)
得られた試験片を用いて、粘弾性試験評価から、音特性を評価した。具体的には音の吸収特性に紐づくtanδを粘弾性測定結果から算出し、音の振動吸収性を評価した。また実際に、簡易的なスピーカー筐体を作成し、中で音を発生させ、人による官能評価を実施した。官能評価では、tanδが大きいものほど、音が混じらない良い音に聞こえ、tanδが小さいものほど、前の音が残り、雑音が混じった良くない音に聞こえることを確認した。音の振動吸収性では、現行の樹脂スピーカーのtanδより0.05以上小さいものを×、現行の樹脂スピーカーのtanδの±0.05以内のものを△、現行の樹脂スピーカーのtanδより0.05以上大きいものを〇、さらに現行の樹脂スピーカーのtanδより0.1以上大きいものを◎と評価した。同試験片の音特性の評価結果は◎であった。
【0046】
(実施例2)
実施例2では繊維状フィラー濃度を70重量%に変更し、主剤樹脂を27.9重量%に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0047】
(実施例3)
実施例3では混錬時の回転数を落とし、繊維状フィラーが端部解繊しない低せん断力とした以外は、実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0048】
(実施例4)
実施例4では、繊維状フィラーであるパルプの事前粉砕条件を変え、成形体となったときのパルプによる亀裂が大きくなるようにした以外は、実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0049】
(比較例1)
比較例1では繊維状フィラー濃度を30重量%に変更し、主剤樹脂を67.9重量%に変更し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0050】
(比較例2)
比較例2では出発原料のパルプを予めシランカップリング剤で疎水化処理し、それ以外の材料条件、およびプロセス条件は実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0051】
(比較例3)
比較例3では成形条件を変え、極端に徐冷となるようにして、繊維状フィラー付近の樹脂結晶化度とそれ以外の結晶化度がほぼ同じとなるように、また繊維状フィラーの先端と中央付近の周りの樹脂の結晶化度もほぼ同じとなるようにした。それ以外は、実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0052】
(比較例4)
比較例4では、繊維状フィラーとしてガラス短繊維を使用した以外は、実施例1と同様にパルプ分散ポリプロピレンペレット、ならびに成形体を作製した。評価についても実施例1と同様の評価を実施した。
【0053】
各実施例1~4および各比較例1~4における測定結果を
図5の表1に示す。
【0054】
図5の表1から明らかなように、繊維状フィラー濃度を70重量%に変更した実施例2では、高濃度化に伴い、弾性率は増えたが、樹脂の結晶のでき方や、成形体表面の亀裂は、実施例1と同等であり、音特性も良いことを確認した。繊維状フィラーが端部解繊され、事前に疎水化処理されず、繊維状フィラー付近の結晶化度が繊維状フィラー付近以外の場所の結晶化度より大きく、繊維状フィラー付近の結晶化度においても、先端付近の結晶化度が繊維状フィラーの中央付近の結晶化度より大きく、成形体表面付近の亀裂幅がフィラー径の1/10以下であれば、高弾性率であり、音特性の良い、複合樹脂が得られることを確認した。
【0055】
繊維状フィラーが端部解繊しない条件とした実施例3では、繊維状フィラー付近の結晶化度において、先端付近の結晶化度が繊維状フィラーの中央付近の結晶化度とほぼ同等となり、弾性率の差がある界面が減少したため、音特性は実施例1ほど良くならない結果となった。
【0056】
成形体となったときのパルプによる亀裂が大きくなるようにした実施例4では、音の吸収性が悪化し、音特性は実施例1ほど良くならない結果となった。
【0057】
繊維状フィラー濃度を30重量%にした比較例1では、弾性率が低くなり、音特性も悪い結果となった。
【0058】
出発原料のパルプを予め疎水化処理した比較例2では、繊維状フィラー付近の結晶化度が繊維状フィラー付近以外の場所の結晶化度とほぼ同等となり、繊維状フィラー付近の結晶化度においても、先端付近の結晶化度が繊維状フィラーの中央付近の結晶化度とほぼ同等となった。また、樹脂と繊維状フィラーとのなじみが良く、成形体表面の亀裂もない状態となった。これらのため、音特性が悪くなる結果となった。
【0059】
繊維状フィラー付近の樹脂結晶化度とそれ以外の結晶化度がほぼ同じとなるように、また繊維状フィラーの先端と中央付近の周りの樹脂の結晶化度もほぼ同じとなるようにした比較例3では、音特性がやや悪くなる結果となった。
【0060】
繊維状フィラーとしてガラス短繊維を使用した比較例4では、弾性率はかなり高くなったが音の吸収性が悪く、音特性は実施例1ほど良くならない結果となった。
【0061】
以上の評価から、繊維状フィラーが50重量%以上で、繊維状フィラーが端部解繊され、事前に疎水化処理されず、繊維状フィラー付近の結晶化度が繊維状フィラー付近以外の場所の結晶化度より大きく、繊維状フィラー付近の結晶化度においても、先端付近の結晶化度が繊維状フィラーの中央付近の結晶化度より大きく、成形体表面付近の亀裂幅がフィラー径の1/10以下であれば、高弾性率であり、音特性の良い、複合樹脂成形体が得られることを確認した。
【0062】
なお、本開示においては、前述した様々な実施の形態及び/又は実施例のうちの任意の実施の形態及び/又は実施例を適宜組み合わせることを含むものであり、それぞれの実施の形態及び/又は実施例が有する効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明に係る音響部材向け複合樹脂成形体は、従来の汎用樹脂よりも機械的強度、および音特性に優れた成形体を提供することができる。本発明に係る音響部材向け複合樹脂成形体により、主剤樹脂の音特性を向上させることができるので、スピーカーのような音響部材、また音を発する電子機器、家電等の筐体部材、エンジニアリングプラスチックの代替物、または金属材料の代替物として利用され得る。さらには建材、自動車部材への利用が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 主剤樹脂
2 繊維状フィラー
3 添加剤
4 解繊部位
5 端部
6 亀裂
【手続補正書】
【提出日】2024-09-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤樹脂と、前記主剤樹脂中に分散された繊維状フィラーと、を含有する音響部材であって、
前記繊維状フィラーは、前記音響部材中に50重量%以上存在し、
前記繊維状フィラーは、端部のみ解繊されており、
前記音響部材中において、前記繊維状フィラーの周りの前記主剤樹脂の結晶化度が、それ以外の箇所の前記主剤樹脂の結晶化度よりも高く、
前記繊維状フィラーの先端の周りの前記主剤樹脂の結晶化度が、前記繊維状フィラーの中央の周りの前記主剤樹脂の結晶化度よりも高い、
音響部材。
【請求項2】
前記音響部材の表面に、穴、もしくは亀裂を有しており、その幅が、前記繊維状フィラーの径の1/10以下である、請求項1に記載の音響部材。
【請求項3】
前記音響部材中における前記繊維状フィラーは、予め疎水化されていない、請求項1又は2に記載の音響部材。
【請求項4】
前記繊維状フィラーは、セルロースの天然繊維からなる繊維である、請求項1から3のいずれか1項に記載の音響部材。
【請求項5】
前記主剤樹脂は、熱可塑性樹脂である、請求項1から4のいずれか1項に記載の音響部材。
【請求項6】
前記主剤樹脂は、オレフィン樹脂である、請求項1から5のいずれか1項に記載の音響部材。