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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167301
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】学習モデル生成装置およびシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 65/02 20060101AFI20241126BHJP
   B01D 65/10 20060101ALI20241126BHJP
   B01D 61/08 20060101ALI20241126BHJP
   B01D 61/18 20060101ALI20241126BHJP
   C02F 3/12 20230101ALI20241126BHJP
   B01D 65/08 20060101ALI20241126BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20241126BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20241126BHJP
【FI】
B01D65/02 520
B01D65/10
B01D61/08
B01D61/18
C02F3/12 S
B01D65/08
G06N20/00 130
C02F1/44 C
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024145214
(22)【出願日】2024-08-27
(62)【分割の表示】P 2020095365の分割
【原出願日】2020-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】小林 拓之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸和
(57)【要約】
【課題】将来の分離膜の状態を推測して安定した膜ろ過運転を行う。
【解決手段】学習モデル生成装置(1)は、膜ろ過運転中に計測される、膜ろ過圧および散気量を含む運転データから導出される入力データを取得する入力データ取得部(21)と、取得された入力データを入力とした機械学習により、分離膜の状態を推測するための学習モデル(31)を生成する学習部(13)と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に浸漬して配置された分離膜と、前記分離膜の膜面散気を行う散気装置とを備え、前記散気装置により前記膜面散気を行いながら前記分離膜を透過した処理水を得る膜分離装置にて行われる膜ろ過運転中に計測される、膜ろ過圧および散気量を含む運転データから導出される入力データを取得する入力データ取得部と、
前記入力データと、当該入力データに対する前記分離膜の状態を示すラベルとが対応付けられた教師データを生成する教師データ生成部であって、前記教師データ生成部は、前記運転データが取得された時刻における特定条件の充足度と、前記運転データが取得された時刻よりも所定時間前に取得された運転データから導出される前記入力データと、に基づいて、前記所定時間後の前記分離膜の状態を示すラベルを対応付けるものであり、
前記特定条件は、膜間差圧の単位時間当たりの変動量である変動速度が第1所定値未満である第1条件と、膜間差圧が第2所定値未満である第2条件と、前記変動速度が前記第1所定値以上第3所定値未満である第3条件と、前記変動速度が前記第3所定値以上である第4条件と、前記膜間差圧が前記第2所定値以上である第5条件とを含み、
前記教師データ生成部は、前記第1条件および前記第2条件の両方を充足する前記入力データには、正常ラベルを対応付け、前記第3条件および前記第2条件の両方を充足する前記入力データには、中間ラベルを対応付け、前記第4条件または前記第5条件を充足する前記入力データには、異常ラベルを対応付ける、教師データ生成部と、
前記取得された入力データを入力とした機械学習により、将来の前記分離膜の状態を推測するための学習モデルであって、前記教師データ生成部が生成した教師データを用いた教師あり学習により将来の前記分離膜の状態が正常となる確率または異常となる確率を出力する学習モデルを生成する学習部と、を備える学習モデル生成装置。
【請求項2】
前記膜ろ過圧から導出される前記入力データは、前記膜ろ過圧を膜ろ過流量で除算した膜ろ過抵抗値およびその変動値を含み、請求項1に記載の学習モデル生成装置。
【請求項3】
前記膜ろ過運転は、間欠運転であり、
前記膜ろ過圧から導出される前記入力データは、運転期間と当該運転期間に続く休止期間とから成る単位期間における、膜ろ過圧の最大値、膜ろ過圧の最小値、膜ろ過圧の標準偏差値、膜ろ過圧の平均値、および、膜間差圧、並びに、前記単位期間以前の所定期間における、膜間差圧の変動速度、膜間差圧の変動量、および、膜間差圧の変動率、の少なくともいずれかを含み、
前記散気量から導出される前記入力データは、前記単位期間における前記散気量の平均値、および、前記所定期間における前記散気量の積算値、の少なくともいずれかを含む、請求項1に記載の学習モデル生成装置。
【請求項4】
前記運転データは、さらに、前記膜ろ過運転中に計測された膜ろ過流量を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の学習モデル生成装置。
【請求項5】
前記膜ろ過運転は、間欠運転であり、
前記膜ろ過流量から導出される前記入力データは、運転期間と当該運転期間に続く休止期間とから成る単位期間における膜ろ過流量の平均値、および、前記単位期間以前の所定期間における前記膜ろ過流量の積算値、の少なくともいずれかを含む、請求項4に記載の学習モデル生成装置。
【請求項6】
前記学習部は、前記学習モデルを用いて前記分離膜の状態を推測したときに前記学習モデルに入力されたデータを取得し、該取得したデータを入力とした機械学習により前記学習モデルを更新する、請求項1から5のいずれか1項に記載の学習モデル生成装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の学習モデル生成装置と、
前記学習モデル生成装置によって生成された学習モデルを記憶する記憶装置と、
前記学習モデルを用いて、前記取得された入力データから、前記分離膜の状態を推測する推測装置と、
前記推測装置が推測した前記状態に応じて前記散気装置を制御する散気量制御装置と、を備える、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理水中に浸漬して配置された分離膜の膜面散気を行いながら、分離膜を透過した処理水を得る膜ろ過処理において適用される学習モデル生成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、散気量を制御する制御時刻において、或る過去の時点からの膜間差圧の変化量、変化率または上昇速度に基づき、事前に設定した閾値や有機物濃度から選定した目標上昇速度と比較し、散気量を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6342101号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
膜分離装置による膜ろ過処理においては、膜表面のファウリングの進行などに伴い、膜間差圧が急上昇する現象(TMP jump)が発生することがある。しかしながら、特許文献1に開示された技術では、制御時刻において上述のファウリングの進行が起こっている場合、換言すれば、分離膜に異常がある場合、将来、膜間差圧が急上昇する現象が発生し、膜分離装置の運転に支障をきたすおそれがある。
【0005】
本発明の一態様は、将来の分離膜の状態を推測して安定した膜ろ過運転を行うための学習モデル生成装置などを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る学習モデル生成装置は、被処理水中に浸漬して配置された分離膜と、前記分離膜の膜面散気を行う散気装置とを備え、前記散気装置により前記膜面散気を行いながら前記分離膜を透過した処理水を得る膜分離装置にて行われる膜ろ過運転中に計測される、膜ろ過圧および散気量を含む運転データから導出される入力データを取得する入力データ取得部と、
前記入力データと、当該入力データに対する前記分離膜の状態を示すラベルとが対応付けられた教師データを生成する教師データ生成部であって、前記教師データ生成部は、前記運転データが取得された時刻における特定条件の充足度と、前記運転データが取得された時刻よりも所定時間前に取得された運転データから導出される前記入力データと、に基づいて、前記所定時間後の前記分離膜の状態を示すラベルを対応付けるものであり、
前記特定条件は、膜間差圧の単位時間当たりの変動量である変動速度が第1所定値未満である第1条件と、膜間差圧が第2所定値未満である第2条件と、前記変動速度が前記第1所定値以上第3所定値未満である第3条件と、前記変動速度が前記第3所定値以上である第4条件と、前記膜間差圧が前記第2所定値以上である第5条件とを含み、
前記教師データ生成部は、前記第1条件および前記第2条件の両方を充足する前記入力データには、正常ラベルを対応付け、前記第3条件および前記第2条件の両方を充足する前記入力データには、中間ラベルを対応付け、前記第4条件または前記第5条件を充足する前記入力データには、異常ラベルを対応付ける、教師データ生成部と、
前記取得された入力データを入力とした機械学習により、将来の前記分離膜の状態を推測するための学習モデルであって、前記教師データ生成部が生成した教師データを用いた教師あり学習により将来の前記分離膜の状態が正常となる確率または異常となる確率を出力する学習モデルを生成する学習部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、将来の分離膜の状態を推測して安定した膜ろ過運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態1に係る分離膜の状態推測システムの概要を示す図である。
図2】膜ろ過運転における膜ろ過圧の経時変化を示す図である。
図3】学習モデル生成装置および推測装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図4】入力データの一具体例を示す図である。
図5】分離膜の状態を判定するための所定の条件について説明する図である。
図6】教師データの一具体例を示す図である。
図7】学習モデル生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】学習モデル更新処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9】推測処理および散気量制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図10】教師データの一具体例を示す図である。
図11】本発明の実施形態2に係る学習モデル生成装置および推測装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図12】学習モデル生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図13】推測処理および散気量制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図14】本発明の参考形態に係る処理概要を示す模式図である。
図15】参考形態に係る回帰モデル生成装置および推測装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図16】推測処理および散気量制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔実施形態1〕
<分離膜の状態推測システムの概要>
図1は、本実施形態に係る分離膜の状態推測システム100の概要を示す図である。状態推測システム100は、機械学習により生成される学習モデルを用いて膜ろ過運転に用いられる分離膜93の状態を推測したうえで、推測結果に応じて分離膜93へ供給する散気量を制御するシステムである。分離膜93の「状態」とは、どの程度汚染されている状態にあるかを意味する。正常な状態とは、汚染度が低く、膜間差圧が急上昇する現象が当面は発生し難い状態である。
【0010】
状態推測システム100は、学習モデル生成装置1、推測装置2、記憶装置3、運転データ取得装置4、入力データ算出装置5、散気量制御装置8、および膜分離装置90を含み、また、記憶装置7を含んでもよい。
【0011】
なお、学習モデル生成装置1、推測装置2、記憶装置3、運転データ取得装置4、入力データ算出装置5、および記憶装置7の実装方法および所在は限定されるものではないが、好ましい典型例としては、運転データ取得装置4および散気量制御装置8はPLC(Programmable Logic Controller)として実装され、推測装置2、入力データ算出装置5、および記憶装置7はエッジコンピューティングであり、学習モデル生成装置1および記憶装置3はクラウドコンピューティングである。
【0012】
(膜分離装置90)
膜分離装置90は、被処理水中に対し分離膜を用いたろ過を行い、分離膜を透過した処理水を得る膜ろ過運転を行う装置である。当該処理水は、ろ過により不純物質が除去された被処理水と表現することもできる。
【0013】
膜分離装置90は、膜分離槽91、分離膜93、散気管94、散気装置95、ろ過水配管96およびろ過ポンプ97を含む。膜分離槽91は、被処理水92を貯留する。分離膜93は、被処理水92中に浸漬して配置され、被処理水92をろ過する。ろ過水配管96は、分離膜93を介して膜分離槽91に接続され、被処理水92が分離膜93によりろ過された処理水を流通する。ろ過ポンプ97は、ろ過水配管96を介して分離膜93に接続され、処理水を流出させる。散気装置95は、分離膜93に付着した不純物質を剥離するための空気を供給する。換言すれば、散気装置95は分離膜93の膜面散気を行う。散気管94は、分離膜93の真下に配置され、散気装置95から供給された空気により、分離膜93の下方から上方に向かって流れる気泡を供給する。
【0014】
膜分離槽91は、膜分離槽91へ流入する被処理水92を受け入れて貯留できればよく、コンクリート、ステンレスまたは樹脂などの水漏れしない材質で形成されていればよい。また、膜分離槽91の構造は、水漏れしない構造であればよい。
【0015】
分離膜93は、中空糸膜や平膜などの固体と液体とを分離可能な膜であればよい。分離膜93としては、例えば、逆浸透(RO:Reverse Osmosis)膜、ナノろ過(NF:Nano Filtration)膜、限外ろ過(UF:Ultra Filtration)膜、精密ろ過(MF:Micro Filtration)膜などが挙げられるが、これに限定されない。
【0016】
散気管94は気泡を供給できる能力があればよく、その材質としては、ガラス、ステンレス、焼結金属または樹脂などを使用することができる。散気装置95は、ブロワなどの空気を圧送できる装置であればよい。
【0017】
(運転データ取得装置4)
運転データ取得装置4は、各種センサ等を用いて、膜ろ過運転中に計測される運転データを取得する。本実施形態に係る運転データは、少なくとも、膜ろ過圧および散気量を含み、さらに好ましくは、膜ろ過流量を含む。膜ろ過圧は、例えば、分離膜93とろ過ポンプ97との間のろ過水配管96に配置された圧力計から取得される。散気量は、散気装置95が供給する空気量であり散気装置95から直接取得される。膜ろ過流量は、例えば、ろ過水配管96に配置された流量計から取得される。運転データ取得装置4は、取得した運転データを入力データ算出装置5へ送信する。
【0018】
(入力データ算出装置5)
入力データ算出装置5は、受信した運転データから、学習モデル生成装置1および推測装置2へ入力するための入力データを導出する。入力データは、運転データの特徴量を表すデータであり、運転データそのものである場合と、運転データに演算を施して得られる場合とがある。そして、学習モデルを生成するフェーズでは、入力データ算出装置5は、算出した入力データを学習モデル生成装置1へ直接送信するか、または、入力データを格納するための記憶装置7へ送信する。一方、分離膜93の状態を推測するフェーズでは、入力データ算出装置5は、算出した入力データを推測装置2へ送信する。なお、入力データの詳細については後述する。
【0019】
(学習モデル生成装置1)
学習モデル生成装置1は、受信した入力データを入力とした機械学習により、分離膜93の状態を推測するための学習モデルを生成し、記憶装置3に記憶する。学習モデル生成の詳細については後述する。
【0020】
(記憶装置3)
記憶装置3は、学習モデル生成装置1が生成した学習モデルを記憶する。なお、記憶装置3は、学習モデル以外のプログラムやデータを記憶してもよい。
【0021】
(推測装置2)
推測装置2は、記憶装置3に記憶された学習モデルにアクセスし、当該学習モデルを用いて、入力データ算出装置5から受信した入力データから、分離膜93の状態を推測する。分離膜93の状態推測の詳細については後述する。
【0022】
(散気量制御装置8)
散気量制御装置8は、推測装置2による推測結果に応じて散気装置95の散気量のレベル(以下、単に「散気量レベル」と表記する)を決定し、決定した散気量レベルで散気するように散気装置95を制御する。一例として、散気量制御装置8は、推測装置2による推測結果が「正常」である場合は散気量レベルを現在値より下げ、一方、推測装置2による推測結果が「異常」である場合は散気量レベルを現在値より上げる。
【0023】
散気量レベルの上げ幅および下げ幅は、固定値であってもよいし、可変値であってもよい。後者の場合、散気量制御装置8は、一例として、直近の散気量レベルの上げ下げ状況に応じて今回の可変値を決定してもよい。
【0024】
例えば、推測結果として「正常」を取得した場合、直近に散気量レベルを上げた回数に応じて下げ幅を小さくしたり、直近に散気量レベルを下げた回数に応じて下げ幅を大きくする。逆に、例えば、推測結果として「異常」を取得した場合、直近に散気量レベルを上げた回数に応じて上げ幅を大きくしたり、直近に散気量レベルを下げた回数に応じて下げ幅を小さくする。なお、以降、散気量制御装置8は、この例が適用されたものとして説明する。
【0025】
<膜ろ過運転のサイクル>
図2は、膜分離装置90が実行する膜ろ過運転中に計測される膜ろ過圧の経時変化を示す図である。図2を用いて、膜ろ過運転のサイクル(以下では、「単位期間」と表記することがある)について説明する。膜ろ過運転のサイクルは、膜ろ過運転を実行する運転期間(例えば約5分)と、当該運転期間に続く、膜ろ過運転を実行しない休止期間(例えば約1分)とから成る。膜ろ過運転は、このサイクルが繰り返されて成る間欠運転である。
【0026】
状態推測システム100では、一例として、運転期間が終了して休止期間に入る毎に、運転データ取得装置4が当該運転期間中に取得した運転データを用いて、入力データ算出装置5が入力データを導出することが好ましい。そして、これに続けて、推測装置2が分離膜93の状態を推測し、その推測結果に応じて散気装置95を制御する。これにより、状態推測システム100では、膜ろ過運転の1サイクル毎に、分離膜93の状態を推測したうえで、散気装置95の散気量を適切に制御することができる。
【0027】
<学習モデル生成装置1の要部構成>
図3は、学習モデル生成装置1および推測装置2の要部構成の一例を示すブロック図である。
【0028】
学習モデル生成装置1は制御部10を備えている。制御部10は、学習モデル生成装置1の各部を統括して制御するものであり、一例として、プロセッサおよびメモリにより実現される。この例において、プロセッサは、ストレージ(不図示)にアクセスし、ストレージに格納されているプログラム(不図示)をメモリにロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行する。これにより、制御部10の各部が構成される。
【0029】
当該各部として、制御部10は、入力データ取得部11、教師データ生成部12および学習部13を含んでいる。
【0030】
(入力データ取得部11)
入力データ取得部11は、入力データ算出装置5から直接に入力データを取得するか、または、入力データ算出装置5が算出した入力データを格納している記憶装置7から入力データを取得する。そして、入力データ取得部11は、取得した入力データを教師データ生成部12へ出力する。
【0031】
(入力データの具体例)
図4は、運転データから導出される入力データの一具体例を示す図である。入力データ算出装置5は、運転データである膜ろ過圧から、一例として、膜ろ過圧の最大値、膜ろ過圧の最小値、膜ろ過圧の標準偏差値、膜ろ過圧の平均値、膜間差圧、膜間差圧の変動速度、膜間差圧の変動量、および膜間差圧の変動率を算出する。
【0032】
膜ろ過圧の最大値(以下、「最大膜ろ過圧」と表記する)は、膜ろ過運転の或るサイクル(以下、「注目サイクル」と表記する)における膜ろ過圧の最大値である。膜ろ過圧の最小値(以下、「最小膜ろ過圧」と表記する)は、注目サイクルにおける膜ろ過圧の最小値である。膜ろ過圧の標準偏差値は、注目サイクルにおける膜ろ過圧の標準偏差値である。膜ろ過圧の平均値(以下、「平均膜ろ過圧」と表記する)は、注目サイクルにおける膜ろ過圧の平均値である。
【0033】
膜間差圧(TMP:Trans Membrane Pressure)は、分離膜93における、被処理水92側にかかる圧力と、処理水側にかかる圧力との差分である。膜間差圧の変動速度(以下、単に「変動速度」と表記する)は、注目サイクルにおける所定時点からの所定期間(以下、「P」と表記する)における膜間差圧の傾き(ΔTMP/ΔT)として算出される。なお、Pは数時間から数日の間で適宜選択される。一例として、変動速度は、Pにおける膜間差圧の経時変化における回帰モデル(直線回帰)の傾きとして算出されてもよい。このとき、変動速度は、負の値をとらないものとしてもよい。膜間差圧の変動量(以下、単に「変動量」と表記する)は、Pにおける変動量を指す。一例として、変動量は、所定時点におけるTMPの値と、Pが経過した時点におけるTMPの値との差分として算出される。膜間差圧の変動率(以下、単に「変動率」と表記する)は、Pにおける変動率を指す。一例として、変動率は、変動速度を膜間差圧で除算することにより算出される(ΔTMP/(TMP×ΔT))。
【0034】
また、入力データ算出装置5は、運転データである散気量から、一例として、散気量の平均値および散気量の積算値を算出する。散気量の平均値(以下、「平均散気量」と表記する)は、注目サイクルにおける散気量の平均値である。散気量の積算値(以下、積算散気量と表記する)は、Pにおける散気量の積算値であり、一例として、Pにおける平均散気量の積分値として算出される。
【0035】
また、入力データ算出装置5は、運転データである膜ろ過流量から、一例として、膜ろ過流量の平均値および膜ろ過流量の積算値を算出する。膜ろ過流量の平均値(以下、「平均膜ろ過流量」と表記する)は、注目サイクルにおける膜ろ過流量の平均値である。膜ろ過流量の積算値(以下、「積算膜ろ過流量」と表記する)は、Pにおける膜ろ過流量の積算値であり、一例として、Pにおける平均膜ろ過流量の積分値として算出される。
【0036】
なお、図示していないが、入力データには、入力データの導出元である運転データが取得された時刻を示す時刻情報が対応付けられているものとする。
【0037】
(教師データ生成部12)
教師データ生成部12は、入力データと、当該入力データに対する分離膜93の状態を示すラベルとが対応付けられた教師データを生成する。そして、教師データ生成部12は、生成した教師データを学習部13へ出力する。
【0038】
ラベルは、例えば、将来の分離膜93の状態が正常となる入力データに対応付ける「正常ラベル」、および、将来の分離膜93の状態が異常となる入力データに対応付ける「異常ラベル」を含む。ラベルの種類は2種類に限られるものではなく、3種類以上であってもよい。
【0039】
入力データとラベルとの対応付けは、熟練作業者等の判断による手作業で行ってもよいし、自動で行ってもよい。手作業で行う場合、教師データ生成部12は、対応付けを行うための入出力インタフェースを提供すればよい。以下では、自動で対応付ける方法の一例について説明する。
【0040】
教師データ生成部12は、まず、注目する入力データの導出元である運転データが取得された時刻(以下、「現時刻」と表記する)における運転状況を特定する。特定条件の一例として、例えば、次の2つの条件が好ましい。(第1条件)変動速度が第1所定値未満であること。(第2条件)膜間差圧が第2所定値未満であること。これらの条件は、分離膜93の状態が正常であることの典型条件である。これらの条件を充足すれば、分離膜93の状態は正常とみなすことができる。なお、第1所定値および第2所定値はそれぞれ、例えば、0.08kPa/h、および、10kPaであるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
次に、教師データ生成部12は、現時刻から第1所定時間前の時刻を示す時刻情報が対応付けられている入力データ(以下、「第1入力データ」と表記する)を特定するとともに、現時刻から第2所定時間前の時刻を示す時刻情報が対応付けられている入力データ(以下、「第2入力データ」と表記する)を特定する。第1所定時間および第2所定時間はそれぞれ、例えば、3時間および24時間であるが、これらに限定されるものではない。
【0042】
そして、教師データ生成部12は、現時刻における第1条件の充足性を、第1入力データに対応付ける。つまり、第1入力データには、例えば、「3時間後の変動速度が第1所定値未満であるか否か」が対応付けられる。
【0043】
また、教師データ生成部12は、現時刻における第2条件の充足性を、第2入力データに対応付ける。つまり、第2入力データには、例えば、「24時間後の膜間差圧が第2所定値未満であるか否か」が対応付けられる。
【0044】
そして、教師データ生成部12は、注目する入力データを入れ替えて以上の処理を実行することを、処理対象となる全ての入力データについて繰り返す。その結果、入力データの各々に対して、将来の運転状況として、(1)第1所定時間後の第1条件の充足性、および、(2)第2所定時間後の第2条件の充足性、が特定される。
【0045】
そして、教師データ生成部12は、上記(1)(2)の両方を充足する入力データについては、将来的に分離膜93の状態を正常にするものと判断し、「正常ラベル」を対応付ける。一方、教師データ生成部12は、上記(1)(2)の一方でも充足しない入力データについては、将来的に分離膜93の状態を正常にしないものと判断し、「異常ラベル」を対応付ける。以上により、教師データ生成部12は、入力データとラベルとの対応付けを自動で行う。
【0046】
なお、特定条件は上記第1条件および上記第2条件に限られるものではない。また、特定条件の数は2つに限られるものではなく、1つでもよいし、3つ以上でもよい。特定条件が多いほど、複数の尺度に基づく正確なラベル付けが可能となるため、推測装置2の推測精度が向上することが期待される。
【0047】
図5は、上述した特定条件について説明する図である。グラフ81は、各入力データに対応付けられた第2条件の充足性、すなわち、24時間後の膜間差圧が10kPa未満であるか否かを可視化したものである。グラフ82は、各入力データに対応付けられた第1条件の充足性、すなわち、3時間後の変動速度が0.08kPa/h未満であるか否かを可視化したものである。なお、図5に示す各グラフでは、条件を満たす場合を「正常」(図5の灰色点)、条件を満たさない場合を「異常」(図5の黒色点)と表記している。
【0048】
第1条件および第2条件と異なる特定条件の一例として「膜間差圧の経時変化において、傾きが急激に増大していない」との条件を用いてもよい。グラフ83は、当該条件に基づき、各入力データの膜間差圧において傾きが急激に増大しているか否かを可視化したものである。
【0049】
図6は、教師データの一具体例を示す図である。教師データ生成部12は、第1条件および第2条件の両方を充足する入力データに正常ラベルを対応付ける。つまり、3時間後の変動速度が0.08kPa/h未満、かつ、24時間後の膜間差圧が10kPa未満の入力データに正常ラベルを対応付ける。一方、少なくとも一方の条件を充足しない入力データに異常ラベルを対応付ける。図6では、各レコードの右端にラベルが対応付けられている。
【0050】
(学習部13)
図3に戻り、学習部13について説明する。学習部13は、教師データ生成部12が生成した教師データを入力とした機械学習により、分離膜93の状態を推測するための学習モデル31を生成する。学習部13は、生成した学習モデル31を記憶装置3に格納する。学習部13は、教師データ生成部12から取得した複数の教師データを用い、ニューラルネットワーク(NN:Neural Network)などの既知のアルゴリズムにより学習モデル31を生成する。これにより、入力データを入力すると、将来の分離膜93の状態が正常となる確率(または、異常となる確率)を出力する学習モデル31が生成される。
【0051】
<推測装置2の要部構成>
推測装置2は制御部20を備えている。制御部20は、推測装置2の各部を統括して制御するものであり、一例として、プロセッサおよびメモリにより実現される。この例において、プロセッサは、ストレージ(不図示)にアクセスし、ストレージに格納されているプログラム(不図示)をメモリにロードし、当該プログラムに含まれる一連の命令を実行する。これにより、制御部20の各部が構成される。
【0052】
当該各部として、制御部20は、入力データ取得部21、およびアクセス部22を含む。
【0053】
(入力データ取得部21)
入力データ取得部21は、入力データ算出装置5から入力データを取得し、アクセス部22へ出力する。当該入力データは、直近の膜ろ過運転において計測された運転データから導出されたものであることが好ましい。
【0054】
(アクセス部22)
アクセス部22は、記憶装置3に記憶された学習モデル31にアクセスする。アクセス部22は、推測部23を含む。
【0055】
推測部23は、アクセス部22がアクセスした学習モデル31を用いて、入力データ取得部21から取得された入力データから、分離膜93の状態を推測する。具体的には、推測部23は、入力データを学習モデル31へ入力した結果として学習モデル31から出力される、分離膜93の状態が正常となる確率(または、異常となる確率)を取得する。当該確率は、現在の運転条件で膜ろ過運転を継続した場合における、将来の分離膜93の状態が正常となる確率である。
【0056】
そして、推測部23は、学習モデル31から得られた確率値に基づき、将来の分離膜93の状態が、正常となるか、異常となるかを推測する。具体的には、推測部23は、確率値が閾値以上である場合、将来の分離膜93の状態が正常となると推測する。一方、推測部23は、確率値が閾値未満である場合、将来の分離膜93の状態が異常となると推測する。閾値は例えば50(%)であるが、この例に限定されない。なお、推測すべき分離膜93の状態は、「正常」「異常」の2状態に限られるものではなく、3状態以上であってもよい。3状態であれば、例えば、「正常」「正常と異常との中間」「異常」である。
【0057】
そして、推測部23は、この推測結果を散気量制御装置8へ出力する。なお、推測部23は、学習モデル31から得られた確率値そのものを推測結果として散気量制御装置8へ出力してもよい。
【0058】
なお、制御部20(入力データ取得部21または推測部23)は、推測に用いた入力データを用いて学習モデル生成装置1に学習モデル31を更新させる(つまり、再学習させる)ために、当該入力データを記憶装置7に格納してもよい。
【0059】
<学習モデル生成処理の流れ>
図7は、学習モデル生成装置1が実行する学習モデル生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図7に示す学習モデル生成処理は、新たに学習モデル31を生成する処理であり、学習モデル31を更新する処理ではない。この例では、上述した、(第1条件)変動速度が第1所定値未満であること、(第2条件)膜間差圧が第2所定値未満であること、の両方を充足するとき、分離膜93の状態が正常であるものとする。また、入力データとラベルとの対応付けを自動で行うものとする。
【0060】
まず、入力データ取得部11は、入力データ算出装置5または記憶装置7から、複数の入力データを取得する(ステップS1、以下、「ステップ」の記載を省略)。入力データ取得部11は、取得した複数の入力データを教師データ生成部12へ出力する。
【0061】
教師データ生成部12は、各入力データについて、上述した方法により、将来の運転状況を特定する(S2)。具体的には、教師データ生成部12は、入力データの各々について、(1)第1所定時間後の第1条件の充足性、および、(2)第2所定時間後の第2条件の充足性を特定する。
【0062】
次に、教師データ生成部12は、入力データの各々に、将来の分離膜93の状態を示すラベルを対応付けて、教師データを生成する(S3)。具体的には、上記(1)(2)の両方を充足する入力データについては「正常ラベル」を対応付け、一方、上記(1)(2)の一方でも充足しない入力データについては「異常ラベル」を対応付ける。そして、教師データ生成部12は、生成した教師データを学習部13へ出力する。
【0063】
次に、学習部13は、教師データ生成部12が生成した教師データから、分離膜93の状態が正常となる確率(または、異常となる確率)を出力する学習モデル31を生成する(S4)。最後に、学習部13は、生成した学習モデル31を記憶装置3に格納する(S5)。以上で、学習モデル生成処理は終了する。
【0064】
<学習モデル更新処理の流れ>
図8は、学習モデル生成装置1が実行する学習モデル更新処理の流れの一例を示すフローチャートである。図8に示す学習モデル更新処理は、図7に示す学習モデル生成処理により学習モデル31が生成された後、膜ろ過運転の実行により新たに取得した入力データに基づき、学習モデル31を更新する処理である。なお、この例においても、上述した、(第1条件)変動速度が第1所定値未満であること、(第2条件)膜間差圧が第2所定値未満であること、の両方を充足するとき、分離膜93の状態が正常であるものとする。また、入力データとラベルとの対応付けを自動で行うものとする。
【0065】
入力データ取得部11は、入力データ算出装置5または記憶装置7から、推測装置2が推測に用いた入力データを取得するまで待機している(S11)。入力データを取得すると(S11でYES)、入力データ取得部11は、当該入力データを教師データ生成部12へ出力する。
【0066】
教師データ生成部12は、取得した入力データの導出元である運転データが取得された時刻における運転状況を特定する(S12)。すなわち、教師データ生成部12は、当該時刻における第1条件および第2条件の充足性を特定する。
【0067】
続いて、教師データ生成部12は、当該時刻から第1所定時間前の時刻を示す時刻情報が対応付けられた入力データに第1条件の充足性を対応付け、また、当該時刻から第2所定時間前の時刻を示す時刻情報が対応付けられた入力データに第2条件の充足性を対応付ける。なお、これらの入力データは過去に取得されたものであり、記憶装置7に格納されている。
【0068】
教師データ生成部12は、(1)第1所定時間後の第1条件の充足性、および、(2)第2所定時間後の第2条件の充足性の両方が対応付けられた入力データについて、上記(1)(2)の充足性に応じてラベル付けを行い、教師データとして生成する(S13)。そして、教師データ生成部12は、生成した教師データを学習部13へ出力する。
【0069】
学習部13は、教師データ生成部12が今回生成した教師データに基づき再学習を行い、学習モデル31を更新する(S14)。そして、学習モデル更新処理はS11へ戻る。
【0070】
このように学習モデルを更新することにより、推測装置2による推測処理を、最新の運転状態に即したものとすることができる。
【0071】
<推測処理および散気量制御処理の流れ>
図9は、推測装置2が実行する推測処理および散気量制御装置8が実行する散気量制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0072】
入力データ取得部21は、入力データ算出装置5から入力データを取得するまで待機している(S21)。入力データを取得すると(S21でYES)、入力データ取得部21は、当該入力データをアクセス部22へ出力する。
【0073】
アクセス部22は、入力データを取得すると、記憶装置3に記憶されている学習モデル31へアクセスする(S22)。アクセス部22に含まれる推測部23は、入力データを学習モデル31へ入力し(S23)、学習モデル31から、例えば、分離膜93の状態が正常となる確率を取得する(S24)。
【0074】
そして、推測部23は、一例として、取得した確率値が閾値以上であるか否かを判定する(S25)。閾値以上であると判定した場合(S25でYES)、推測部23は、分離膜93の状態が正常となると推測する(S26)。一方、取得した確率の値が閾値未満であると判定した場合(S25でNO)、推測部23は、分離膜93の状態が異常となると推測する(S27)。推測部23は、推測結果を散気量制御装置8へ出力する。
【0075】
散気量制御装置8は、取得した推測結果と、直近の散気量レベルとに基づき、次の散気量レベルを決定する(S28)。そして、散気量制御装置8は、決定した散気量レベルで散気するように散気装置95を制御する(S29)。そして、処理はS21へ戻る。
【0076】
<効果>
以上のように、本実施形態に係る学習モデル生成装置1は、膜ろ過運転中に計測される運転データから導出される入力データを取得する入力データ取得部11を備える。また、学習モデル生成装置1は、当該入力データを入力とした機械学習により、将来の分離膜93の状態を推測するための学習モデル31を生成する学習部13を備える。
【0077】
また、本実施形態に係る推測装置2は、膜ろ過運転中に計測された運転データから導出される入力データを取得する入力データ取得部21を備える。また、推測装置2は、学習モデル31にアクセスするアクセス部22を備える。また、推測装置2は、学習モデル31を用いて、入力データから、将来の分離膜93の状態を推測する推測部23を備える。
【0078】
これにより、学習モデル生成装置1は、分離膜93の状態を推測する学習モデル31を生成し、また、推測装置2は、学習モデル31を用いた分離膜93の状態を推測することができる。分離膜93の状態が推測できれば、それに基づき散気量を制御することができるため、分離膜93が正常な状態(例えば、膜間差圧の急上昇が起こる可能性を低減した状態)を維持しながら安定した膜ろ過運転を行うことができる。
【0079】
また、学習モデル生成装置1は、入力データと、将来の分離膜93の状態を示すラベルとが対応付けられた教師データを生成する教師データ生成部12を備える。学習部13は、教師データを用いた教師あり学習により学習モデル31を生成する。これにより、教師あり学習による学習モデル31が生成されるので、精度の高い推測が可能となる。
【0080】
また、ラベルは、正常ラベルおよび異常ラベルを含む。これにより、分離膜93の状態の推測において、分離膜93が正常となるかまたは異常となるかを精度高く推測することができる。そのため、推測結果に基づいて、分離膜93が正常となるように散気量を適切に制御することができる。
【0081】
また、学習部13は、推測装置2が使用した入力データを入力とした機械学習により学習モデルを更新する。これにより、分離膜93の状態の推測に用いた入力データにより、学習モデルを更新するので、推測を行うたびに学習モデル31の推測精度を向上させることができる。
【0082】
また、入力データ取得部21は、運転期間と休止期間とから成る膜ろ過運転のサイクル毎に入力データを取得する。また、推測部23は、サイクル毎に、将来の分離膜93の状態を推測する。これにより、膜ろ過運転のサイクル毎に、将来の分離膜93の状態が推測されるので、分離膜93の状態の急な変化を迅速に確認することができる。
【0083】
また、散気量制御装置8は、推測装置2が推測した分離膜93の状態に応じて散気量レベルを決定し、決定した散気量レベルで散気するように散気装置95を制御する。これにより、推測した分離膜93の状態に応じて、自動的に散気量レベルを決定するので、膜ろ過運転を行う作業者が散気量レベルを調整する必要が無い。結果として、作業者の作業負担を低減させることができる。
【0084】
散気量制御装置8は、さらに、自装置が直近に決定した散気量レベルにも応じて、今回の散気量レベルを決定する。これにより、直近の散気量レベルを考慮しない構成と比べて、より適切な散気量レベルを決定することができる。
【0085】
膜ろ過圧から導出される入力データは、あるサイクルにおける、最大膜ろ過圧、最小膜ろ過圧、膜ろ過圧の標準偏差値、平均膜ろ過圧、および膜間差圧、並びに、当該サイクル以前のPにおける変動速度、変動量および変動率の少なくともいずれかを含む。また、散気量から導出される入力データは、当該サイクルにおける平均散気量および積算散気量の少なくともいずれかを含む。また、運転データはさらに膜ろ過流量を含み、膜ろ過流量から導出される入力データは、当該サイクルにおける平均膜ろ過流量および積算膜ろ過流量の少なくともいずれかを含む。これらにより、学習モデル31を用いた推測精度を向上させることができる。
【0086】
<実施形態1の変形例>
上述したとおり、ラベルは、正常ラベルおよび異常ラベルの2種類に限られず、「正常と異常との中間状態」を示すラベル(以下、「中間ラベル」と表記する)を含んでいてもよい。「中間状態」とは、「正常」と言い切れる状態ではなく、かつ、「異常」と言い切れる状態でもない状態のことを意味する。
【0087】
図10は、教師データの一具体例を示す図である。図10に示す各データは図6に示す各データと同一である。図10に示す例では、教師データ生成部12は、3時間後の変動速度が0.04kPa/h未満、かつ、24時間後の膜間差圧が10kPa未満の入力データに正常ラベルを対応付ける。また、教師データ生成部12は、3時間後の変動速度が0.04kPa/h以上で0.08kPa未満、かつ、24時間後の膜間差圧が10kPa未満の入力データに中間ラベルを対応付ける。また、教師データ生成部12は、3時間後の変動速度が0.08kPa/h以上、かつ、24時間後の膜間差圧が10kPa未満の入力データに異常ラベルを対応付ける。また、教師データ生成部12は、3時間後の変動速度がどのような値であったとしても、24時間後の膜間差圧が10kPa以上の入力データには異常ラベルを対応付ける。
【0088】
また、推測部23は、分離膜93の状態として、「正常」、「異常」、「中間」のいずれかを推測する構成であってもよい。例えば、推測部23は、確率値が第1閾値以上である場合、分離膜93の状態が正常となると推測する。また、推測部23は、確率値が第1閾値未満かつ第2閾値以上である場合、分離膜93の状態は中間であると推測する。また、推測部23は、確率値が第2閾値未満である場合、分離膜93の状態は異常となると推測する。第1閾値は例えば70%、第2閾値は例えば40%であるが、これに限定されない。また、散気量制御装置8は、推測結果が「中間」である場合、現在の散気量レベルを維持してもよい。
【0089】
また、推測部23は、学習モデル31が出力した、分離膜93が正常となる確率値そのものを、散気量制御装置8へ出力する構成であってもよい。散気量制御装置8は、当該確率値に応じて、散気量レベルを上げるかまたは下げるか、および、散気量レベルの上げ幅または下げ幅を決定してもよい。例えば、散気量制御装置8は、確率が50%以上である場合、散気量レベルを下げ、確率値が大きくなるほど散気量レベルの下げ幅を大きくする構成であってもよい。一方、確率が50%未満である場合、散気量レベルを上げ、確率値が小さくなるほど散気量レベルの上げ幅を大きくする構成であってもよい。
【0090】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0091】
図11は、本実施形態に係る学習モデル生成装置1Aおよび推測装置2Aの要部構成の一例を示すブロック図である。
【0092】
実施形態1では、学習モデル生成装置1は、いわゆる教師あり学習を行い、学習モデル31を生成した。一方、本実施形態に係る学習モデル生成装置1Aは、教師なし学習を行い、学習モデル31Aを生成する。
【0093】
<学習モデル生成装置1Aの要部構成>
以降、学習モデル生成装置1が備える部材と同名の部材については、相違点のみを説明する。学習モデル生成装置1Aは制御部10Aを備えている。制御部10Aは、入力データ取得部11および学習部13Aを含む。
【0094】
学習部13Aは、入力データ取得部11から取得した入力データを用いた教師なし学習により、学習モデル31Aを生成する。具体的には、学習部13Aは、入力データの分布を分けるための境界を定めることにより、学習結果として、分離膜93の状態が正常となる入力データが分類されるクラスタ(以下、「正常クラスタ」と表記する)と、分離膜93の状態が異常となる入力データが分類されるクラスタ(以下、「異常クラスタ」と表記する)とを作成する。そして、作成したクラスタを学習モデル31Aとして、記憶装置3Aに格納する。
【0095】
教師なし学習では、ラベル付けされていない入力データを大量に学習させることにより、入力データがどのような分布をしているか学習することができる。クラスタ分析のアルゴリズムとしては、例えば、K-means等などの既知のアルゴリズムを用いればよい。
【0096】
<推測装置2Aの要部構成>
以降、推測装置2が備える部材と同名の部材については、相違点のみを説明する。推測装置2Aは制御部20Aを備えている。制御部20Aは、入力データ取得部21、およびアクセス部22Aを含む。アクセス部22Aは、記憶装置3Aに記憶された学習モデル31Aにアクセスする。アクセス部22Aは推測部23Aを含む。
【0097】
推測部23Aは、アクセス部22Aがアクセスした学習モデル31Aに、入力データ取得部21が取得した入力データを入力する。そして、推測部23Aは、学習モデル31Aから出力される出力値として、当該入力データが正常クラスタに属することを示す「正常」、または、当該入力データが異常クラスタに属することを示す「異常」のいずれかを取得する。推測部23Aは、取得した出力値を散気量制御装置8へ出力する。
【0098】
散気量制御装置8は、取得した出力値が「正常」である場合、散気量レベルを下げる。一方、散気量制御装置8は、取得した出力値が「異常」である場合、散気量レベルを上げる。
【0099】
<学習モデル生成処理の流れ>
図12は、学習モデル生成装置1Aが実行する、学習モデル生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、図12に示す学習モデル生成処理は、新たに学習モデル31Aを生成する処理である。
【0100】
入力データ取得部11は、入力データ算出装置5または記憶装置7から、複数の入力データを取得する(S31)。入力データ取得部11は、取得した複数入力データを学習部13Aへ出力する。
【0101】
学習部13Aは、取得した入力データの分布に境界を定めることにより、正常クラスタおよび異常クラスタを作成する(S32)。そして、学習部13Aは、これらのクラスタを含む学習モデル31Aを生成し(S33)、記憶装置3Aへ格納する(S34)。なお、学習部13は、取得した教師データも記憶装置3Aへ格納する。以上で学習モデル生成処理は終了する。
【0102】
なお、図示してはいないが、学習モデル生成装置1Aが実行する学習モデル更新処理について以下に説明する。
【0103】
入力データ取得部11は、入力データ算出装置5から入力データを取得すると、学習部13Aへ出力する。学習部13Aは、取得した入力データと、記憶装置3Aに記憶されている入力データとから成る分布を分けるための境界を改めて定めることにより、正常クラスタおよび異常クラスタを更新する。そして、学習部13Aは、当該更新されたクラスタを含む学習モデル31Aを生成し、記憶装置3Aに記憶されている学習モデル31Aを、当該生成した学習モデル31Aで上書きする。
【0104】
<推測処理および散気量制御処理の流れ>
図13は、推測装置2Aが実行する推測処理および散気量制御装置8が実行する散気量制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0105】
入力データ取得部21は、入力データ算出装置5から入力データを取得するまで待機している(S41)。入力データを取得すると(S41でYES)、入力データ取得部21は、当該入力データをアクセス部22Aへ出力する。
【0106】
アクセス部22Aは、入力データを取得すると、記憶装置3Aに記憶されている学習モデル31Aへアクセスする(S42)。推測部23Aは、アクセス部22Aがアクセスした学習モデル31Aに、入力データ取得部21が取得した入力データを入力し(S43)、学習モデル31Aから出力された出力値である「正常」または「異常」を取得する(S44)。推測部23Aは、取得した出力値を散気量制御装置8へ出力する。
【0107】
散気量制御装置8は、取得した出力値と、直近の散気量レベルとに基づき、次の散気量レベルを決定する(S45)。そして、散気量制御装置8は、決定した散気量レベルで散気するように散気装置95を制御する(S46)。そして、処理はS41へ戻る。
【0108】
<効果>
本実施形態に係る学習モデル生成装置1Aによれば、学習部13Aは、教師なし学習により、学習結果として、正常クラスタおよび異常クラスタを含む学習モデル31Aを生成する。これにより、十分な教師データを用意することができない状況においても、簡易に学習モデルを生成することができる。そのため、学習モデル生成装置1Aによる学習および推測装置2Aによる推測は、学習モデル生成装置1による学習および推測装置2による推測の代替として、または、その前段として実行することができる。
【0109】
<外れ値検出の例>
学習モデル31Aは、学習結果として正常クラスタのみを作成し、いわゆる外れ値検出を行うものであってもよい。この例の場合、学習モデル31Aは、入力された入力データと、正常クラスタ内の代表点(例えば重心)との距離を特定する。そして、学習モデル31Aは、当該距離が所定値以上である場合は入力データが外れ値であることを出力し、所定値未満である場合は入力データが正常値である(外れ値でない)ことを出力する。そして、外れ値が出力されたとき、推測部23Aは分離膜93の状態が異常になると推測し、正常値が出力されたとき、推測部23Aは分離膜93の状態が正常になると推測すればよい。なお、外れ値検出のアルゴリズムとしては、局所外れ値因子法(LOF)、1クラスサポートベクターマシン(OC-SVM)等を用いればよい。
【0110】
〔参考形態〕
本発明の参考形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1、2にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0111】
本参考形態は、膜ろ過運転にかかる運転コストを最適化することを目的として、回帰分析による長期的な推測をパラメータを変えながら繰り返すシミュレーションを行うものである。運転コストとは、散気装置95による散気にかかるエネルギーのコスト(以下、「エネルギーコスト」と表記する)と、汚染された分離膜93の薬洗にかかるコスト(以下、「薬洗コスト」と表記する)とを含む。薬洗コストとは、薬洗に用いる薬品の仕入れ費と、薬洗を行う作業員の人件費とを含む。
【0112】
〔処理1〕図14を参照しながら、まず、本参考形態の回帰分析による長期的な推測について概説する。本参考形態の回帰分析は、入力データ算出装置5または記憶装置7から得られる入力データを説明変数とし、入力データに対応付けられた時刻から所定のn時間後(nは正の整数)の分離膜93の膜間差圧に関するデータ(以下、「膜間差圧関連データ」と表記する)を目的変数とするものである。膜間差圧関連データとは、一例として、実施形態1にて説明した、膜間差圧そのもの、膜間差圧の変動速度、膜間差圧の変動量、および膜間差圧の変動率、の少なくともいずれかである。この回帰分析により、散気量の現在値を維持したときのn時間後の膜間差圧を推測する処理を行う。そして、推測されたn時間後の膜間差圧関連データを用いて入力データのうちの膜間差圧関連データを更新したデータ(以下、「更新データ」と表記する。)を生成し、更新データについて再び回帰分析を行う。この処理をN回繰り返す(Nは2以上の整数)。つまり、「回帰分析によりn時間後の膜間差圧関連データを推測するとともに、入力データに含まれる膜間差圧関連データをn時間後の膜間差圧関連データに変更することにより入力データを更新する」という処理を、N回実行する。
【0113】
具体的には、繰り返しの1回目として、入力データを説明変数とした回帰分析により、入力データに対応付けられた時刻からn時間後の膜間差圧関連データを推測したうえで、当該膜間差圧関連データを用いて入力データのうちの膜間差圧関連データを更新した更新データU(1,1)を生成する。
【0114】
繰り返しのX回目として(Xは2以上N未満の整数)、更新データU(1,X-1)を説明変数とした回帰分析により、入力データに対応付けられた時刻からX×n時間後の膜間差圧関連データを推測したうえで、当該膜間差圧関連データを用いて更新データU(1,X-1)のうちの膜間差圧関連データを更新した更新データU(1,X)を生成する。
【0115】
繰り返しのN回目として、更新データU(1,N-1)を説明変数とした回帰分析により、入力データに対応付けられた時刻からN×n時間後の膜間差圧関連データを推測する。当該膜間差圧関連データを用いて更新データU(1,N-1)のうちの膜間差圧関連データを更新した更新データU(1,N)を生成してもよい。
【0116】
以上により、入力データに対応付けられた時刻からn時間後、2n時間後、・・・N×n時間後の、合計N個の膜間差圧を推測する。以上により、散気量の現在値を維持したときのN×n時間後までの膜間差圧の経時変化を推測する。
【0117】
〔処理2〕次に、本参考形態では、入力データのうち散気量に関するデータ(データの一部、以下、「散気量関連データ」と表記する)を変更したデータ(以下、「シミュレーションデータ」と表記する)を用いて、上記処理1を行う。散気量関連データとは、一例として、実施形態1、2にて説明した、散気量の平均値および散気量の積算値の少なくともいずれかである。この処理を、散気量関連データを変えながらM回行う(Mは2以上の整数)。つまり、互いに異なるM個のデータ(入力データ、および、M-1個のシミュレーションデータ)に対して、上記処理1を行う。つまり、処理2では、上記処理1を、入力データに含まれるデータの一部を異ならせてM回実行することにより、膜間差圧のN×n時間後までの経時変化についてM個の推測結果を得る。
【0118】
M回中の1回目の処理は、入力データに対する上記処理1であり、具体的には上述したとおりである。
【0119】
M回中のY回目の処理として(Yは2以上M以下の整数)、入力データのうち散気量関連データを変更したシミュレーションデータSに対して上記処理1を行う。具体的には、上記処理1における繰り返しの1回目として、シミュレーションデータSを説明変数とした回帰分析により、シミュレーションデータSに対応付けられた時刻からn時間後の膜間差圧関連データを推測したうえで、当該膜間差圧関連データを用いてシミュレーションデータSのうちの膜間差圧関連データを更新した更新データU(Y,1)を生成する。上記処理1における繰り返しのX回目として、更新データU(Y,X-1)を説明変数とした回帰分析により、シミュレーションデータSに対応付けられた時刻からX×n時間後の膜間差圧関連データを推測したうえで、当該膜間差圧関連データを用いて更新データU(Y,X-1)のうちの膜間差圧関連データを更新した更新データU(Y,X)を生成する。上記処理1における繰り返しのN回目として、更新データU(Y,N-1)を説明変数とした回帰分析により、シミュレーションデータSに対応付けられた時刻からN×n時間後の膜間差圧関連データを推測する。
【0120】
以上の処理1および処理2を行うことにより、M個の散気量の各々について、散気量の現在値を維持したときのN×n時間後までの膜間差圧の経時変化を推測することができる。このM個の推測結果から、適切な運転コストとするための、薬洗のタイミングおよび散気量を決定する。
【0121】
本参考形態は、ファウリングが進行した膜ろ過運転後期において膜間差圧の上昇を抑え続けるだけでは必ずしもトータルの運転コストを抑制できていない状況が発生することに鑑み、散気量の制御による分離膜93の長期延命化を回避し、トータルの運転コストの最適化を図るものである。
【0122】
図15は、本参考形態に係る回帰モデル生成装置6および推測装置2Bの要部構成の一例を示すブロック図である。
【0123】
<回帰モデル生成装置6の要部構成>
回帰モデル生成装置6は制御部60を備えている。制御部60は、入力データ取得部61、対応付け部62および回帰モデル生成部63を含む。
【0124】
入力データ取得部61は、入力データ算出装置5または記憶装置7から入力データを取得し、取得した入力データを対応付け部62へ出力する。
【0125】
対応付け部62は、入力データの各々に、当該入力データに対応付けられた時刻からn時間後の膜間差圧関連データを対応付ける。nの値は例えば12または24であるが、この例に限定されない。
【0126】
対応付け部62は、n時間後の膜間差圧関連データが対応付けられた入力データを、回帰モデル生成部63へ出力する。なお、n時間後の膜間差圧関連データがまだ存在しないことにより、膜間差圧関連データが対応付けられなかった入力データは、膜間差圧関連データが取得可能となるまで対応付け部62に保持されればよい。
【0127】
回帰モデル生成部63は、入力データを説明変数とし、n時間後の膜間差圧関連データを目的変数とする回帰モデル32を生成し、記憶装置3Bへ格納する。
【0128】
<推測装置2Bの要部構成>
以降、推測装置2が備える部材と同名の部材については、相違点のみを説明する。推測装置2Bは制御部20Bを含む。制御部20Bは、入力データ取得部21、アクセス部22B、およびコスト算出部24を含む。
【0129】
アクセス部22Bは、記憶装置3Bに記憶された回帰モデル32にアクセスする。アクセス部22Bは、推測部23Bを含む。推測部23Bは、まず、上述した処理1を行う。具体的には、推測部23Bは、アクセス部22Bがアクセスした回帰モデル32に、入力データ取得部21が取得した入力データを入力することにより、回帰モデル32からn時間後の膜間差圧関連データを取得する。続いて、推測部23Bは、取得されたn時間後の膜間差圧関連データを用いて入力データを更新した更新データを回帰モデル32に入力することにより、回帰モデル32から2n時間後の膜間差圧関連データを取得する。この処理をN回繰り返し、N×n時間後までの膜間差圧関連データを取得する。
【0130】
そして、推測部23Bは、上述した処理2を行う。具体的には、推測部23Bは、入力データとシミュレーションデータについて、上述した処理1による回帰モデルを用いた推測を行い、各々について、N×n時間後までの膜間差圧関連データを取得する。これにより、推測部23Bは、N×n時間後までの膜間差圧の経時変化について、M個の推測結果を得ることができる。
【0131】
そして、推測部23Bは、(A)入力データ、(B)入力データに基づき推測されたN×n時間後までの膜間差圧の経時変化、(C)シミュレーションデータS~S、(D)シミュレーションデータS~Sの各々に基づき推測されたN×n時間後までの膜間差圧の経時変化、をコスト算出部24に出力する。なお、上記(C)(D)は、それぞれM-1個存在する。
【0132】
コスト算出部24は、推測部23Bが推測した経時変化に基づき、膜ろ過運転にかかる予想コストを算出する。具体的には、推測部23Bから取得した入力データおよびシミュレーションデータの散気量関連データから、エネルギーコストを算出する。また、コスト算出部24は、推測部23Bから取得した膜間差圧の経時変化から、薬洗時期を特定する。薬洗時期は、例えば、膜間差圧の急上昇(TMP jump)が発生した時点としてもよい。そして、コスト算出部24は、特定した薬洗時期の数に基づき、薬洗コストを算出する。
【0133】
また、コスト算出部24は、算出したエネルギーコストおよび薬洗コストの組み合わせに基づき、適切な組み合わせを特定する。コスト算出部24は、例えば、あらかじめ定められたエネルギーコストの条件と、薬洗コストの条件とを参照し、これら条件に最も近い組み合わせを特定する。コスト算出部24は、特定した組み合わせに対応する散気量関連データを、散気量制御装置8へ出力する。
【0134】
本参考形態の散気量制御装置8は、コスト算出部24から取得した散気量関連データに基づき散気量レベルを決定し、決定した散気量レベルで散気するように散気装置95を制御する。
【0135】
<推測処理および散気量制御処理の流れ>
図16は、推測装置2Bが実行する推測処理および散気量制御装置8が実行する散気量制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0136】
入力データ取得部21は、入力データ算出装置5から入力データを取得するまで待機している(S51)。入力データを取得すると(S51でYES)、入力データ取得部21は、当該入力データをアクセス部22Bへ出力する。
【0137】
アクセス部22Bは、入力データを取得すると、記憶装置3Bに記憶されている回帰モデル32へアクセスする。続いて、推測部23Bは、回帰分析処理を実行する(S52)。具体的には、推測部23Bは、アクセス部22Bがアクセスした回帰モデル32に、入力データ取得部21が取得した入力データを入力することにより、回帰モデル32からn時間後の膜間差圧関連データを取得する。
【0138】
続いて、推測部23Bは、回帰分析処理の実行回数である回帰分析回数がN回に到達したか否かを判定する(S53)。N回に到達していない場合(S53でNO)、推測部23Bは、データ更新処理を実行する(S54)。具体的には、推測部23Bは、取得したn時間後の膜間差圧関連データを用いて、入力データのうちの膜間差圧関連データを更新した更新データを生成する。そして、推測部23Bは、更新データを用いてS52の処理を再度実行する。なお、これ以降のS52の処理の実行対象は、直近のS54の処理で生成した更新データである。つまり、推測部23Bは、生成した更新データを回帰モデル32へ入力する。推測部23Bは、S53の処理において回帰分析回数がN回に到達したと判定するまで、S54の処理と、これに続くS52の処理との実行を繰り返す。回帰分析回数がN回に到達すると、推測部23Bは、入力データについて、散気量の現在値を維持したときのN×n時間後までの膜間差圧関連データを取得することとなる。
【0139】
回帰分析回数がN回に到達した場合(S53でYES)、推測部23Bは、シミュレーションデータの生成回数がM-1回に到達したか否かを判定する(S55)。なお、S55に初めて達したときは当該生成回数は0回であるため、推測部23Bは、当該生成回数がM-1回に到達していないと判定する。
【0140】
シミュレーションデータの生成回数がM-1回に到達していない場合(S55でNO)、推測部23Bは、シミュレーションデータ生成処理を実行する(S56)。具体的には、推測部23Bは、入力データのうちの散気量関連データを変更し、シミュレーションデータを生成する。そして、推測部23Bは、生成したシミュレーションデータに対してS52からS54までの処理を実行する。これにより、推測部23Bは、生成したシミュレーションデータについて、散気量の現在値を維持したときのN×n時間後までの膜間差圧関連データを取得する。また、推測部23Bは、S55の処理においてシミュレーションデータの生成回数がM-1回に到達したと判定するまで、S56の処理と、これに続くS52からS54までの処理との実行を繰り返す。当該生成回数がM-1回に到達すると、推測部23Bは、N×n時間後までの膜間差圧関連データを、M個取得することとなる。
【0141】
シミュレーションデータの生成回数がM-1回に到達した場合(S55でYES)、推測部23Bは、N×n時間後までの膜間差圧関連データの各々から、膜間差圧の経時変化を生成する。そして、推測部23Bは、(A)入力データ、(B)入力データに基づき推測されたN×n時間後までの膜間差圧の経時変化、(C)シミュレーションデータS~S、(D)シミュレーションデータS~Sの各々に基づき推測されたN×n時間後までの膜間差圧の経時変化、をコスト算出部24に出力する。
【0142】
続いて、コスト算出部24は、予想コスト特定処理を実行する(S57)。具体的には、コスト算出部24は、推測部23Bから取得した入力データおよびシミュレーションデータの散気量関連データから、エネルギーコストを算出する。また、コスト算出部24は、推測部23Bから取得した膜間差圧の経時変化から、薬洗時期を特定する。そして、コスト算出部24は、特定した薬洗時期の数に基づき、薬洗コストを算出する。また、コスト算出部24は、算出したエネルギーコストおよび薬洗コストの組み合わせに基づき、適切な組み合わせを特定する。コスト算出部24は、例えば、あらかじめ定められたエネルギーコストの条件と、薬洗コストの条件とを参照し、これら条件に最も近い組み合わせを特定する。
【0143】
続いて、コスト算出部24は、散気量関連データ出力処理を実行する(S58)。具体的には、コスト算出部24は、予想コスト特定処理にて特定された最適な組み合わせに対応する入力データまたはシミュレーションデータを特定する。そして、コスト算出部24は、特定した入力データまたはシミュレーションデータの散気量関連データを、散気量制御装置8へ出力する。
【0144】
続いて、散気量制御装置8は、散気量制御処理を実行する(S59)。具体的には、散気量制御装置8は、コスト算出部24から取得した散気量関連データに基づき散気量レベルを決定し、決定した散気量レベルで散気するように散気装置95を制御する。
【0145】
<効果>
膜間差圧の急上昇が起こる可能性を低減した状態を維持しながら膜ろ過運転を行うことは、コスト削減や省エネルギーにつながらない場合がある。この問題に対し、本参考形態に係る推測装置2Bによれば、散気にかかるエネルギーコストと、薬洗コストとが適切なものとなるときの散気装置95の動作条件を特定することができる。例えば、適切なタイミングで薬洗を行うことで、散気にかかるエネルギーコストを抑えることができ、結果として運転コストを抑えることが可能になる。つまり、推測装置2Bによれば、膜ろ過運転にかかるトータルコストを最適化することができる。
【0146】
<変形例>
上述では、入力データを変更してシミュレーションデータS~Sを生成するにあたり、変更対象となるデータが散気量関連データであるものとして説明したが、これに限定されるものではなく、入力データのうち制御可能なものであればよい。例えば、膜ろ過運転における膜ろ過流量が制御可能である場合、平均膜ろ過流量および積算膜ろ過流量を変更してもよい。
【0147】
コスト算出部24は、運転コストの選択を、膜ろ過運転の作業者による操作に基づき行ってもよい。換言すれば、適切な運転コストの指標を、作業者が指定できるようになっていてもよい。
【0148】
図16に示すフローチャートにおいて、繰り返し処理のネスト構造は、この例に限定されない。つまり、図16では、回帰分析処理を内側のループで実行し、シミュレーションデータ生成処理を外側のループで実行しているが、これに代えて、シミュレーションデータ生成処理を内側のループで実行し、回帰分析処理を外側のループで実行してもよい。
【0149】
〔実施形態および参考形態に共通の変形例〕
入力データは、膜ろ過圧から算出される、最大膜ろ過圧、最小膜ろ過圧、膜ろ過圧の標準偏差値、平均膜ろ過圧、膜間差圧、膜間差圧の変動速度、膜間差圧の変動量、および膜間差圧の変動率のうち、少なくともいずれかを含んでいればよい。また、入力データは、散気量から算出される平均散気量および積算散気量のうち、少なくともいずれかを含んでいればよい。
【0150】
入力データは、図4に示すデータ以外のデータを含んでいてもよい。例えば、入力データは、被処理水92のデータを含んでいてもよい。当該データとしては、平均水温、粘度、有機物濃度(排水有機物濃度、全有機炭素濃度、UV260など)、pH、汚泥濃度(MLSS)、浮遊懸濁物(SS)、溶存酸素濃度(DO)、酸化還元電位(ORP)、アンモニウムイオンの濃度、および硝酸イオンの濃度、などが挙げられるが、これらに限定されない。また、入力データは、膜ろ過圧を膜ろ過流量で除算した膜ろ過抵抗値およびその変動値を含んでいてもよい。
【0151】
推測装置2、2A、2Bは、散気量制御装置8の機能を兼ね備えていてもよい。この場合、散気量制御装置8は不要である。
【0152】
状態推測システム100は、推測装置2、2A、2Bの推測結果を運転管理者へ通知する機能を有していてもよい。これにより、膜ろ過運転の安定運転を支援することができる。
【0153】
学習モデル31、31Aおよび回帰モデル32は、推測装置2、2A、2Bの記憶部(不図示)に格納されていてもよい。
【0154】
学習モデル生成装置1、1Aおよび回帰モデル生成装置6は、学習モデルまたは回帰モデルの更新処理において、入力データを推測装置2、2A、2Bから取得してもよい。
【0155】
学習モデル生成装置1および推測装置2、学習モデル生成装置1Aおよび推測装置2A、並びに、回帰モデル生成装置6および推測装置2Bは、それぞれ、別体または別システムとして構成され通信可能に接続されてもよいし、一体または1つのシステムとして構成されてもよい。
【0156】
〔ソフトウェアによる実現例〕
学習モデル生成装置1、1A、推測装置2、2A、2Bおよび回帰モデル生成装置6の制御ブロック(制御部10、10A、20、20A、20B、60)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0157】
後者の場合、学習モデル生成装置1、1A、推測装置2、2A、2Bおよび回帰モデル生成装置6は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0158】
<備考>
[課題を解決するための手段]
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る学習モデル生成装置は、被処理水中に浸漬して配置された分離膜と、前記分離膜の膜面散気を行う散気装置とを備え、前記散気装置により前記膜面散気を行いながら前記分離膜を透過した処理水を得る膜分離装置にて行われる膜ろ過運転中に計測される、膜ろ過圧および散気量を含む運転データから導出される入力データを取得する入力データ取得部と、前記取得された入力データを入力とした機械学習により、前記分離膜の状態を推測するための学習モデルを生成する学習部と、を備える。
【0159】
前記の構成によれば、膜ろ過圧および散気量を含む運転データに基づき分離膜の状態を推測する学習モデルを生成することができる。分離膜の状態が推測できれば、それに基づき散気量を制御することができるため、分離膜が正常な状態(例えば、膜間差圧の急上昇が起こる可能性を低減した状態)を維持しながら安定した膜ろ過運転を行うことができる。
【0160】
また、本発明の一態様に係る学習モデル生成装置では、前記膜ろ過運転は、間欠運転であり、前記膜ろ過圧から導出される前記入力データは、運転期間と当該運転期間に続く休止期間とから成る単位期間における、膜ろ過圧の最大値、膜ろ過圧の最小値、膜ろ過圧の標準偏差値、膜ろ過圧の平均値、および、膜間差圧、並びに、前記単位期間以前の所定期間における、膜間差圧の変動速度、膜間差圧の変動量、および、膜間差圧の変動率、の少なくともいずれかを含み、前記散気量から導出される前記入力データは、前記単位期間における前記散気量の平均値、および、前記所定期間における前記散気量の積算値、の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0161】
前記の構成によれば、膜ろ過圧および散気量から導出される種々の特徴量を有する入力データの少なくともいずれかを用いて学習モデルを生成するので、当該学習モデルの推測精度を向上させることができる。
【0162】
また、本発明の一態様に係る学習モデル生成装置では、前記運転データは、さらに、前記膜ろ過運転中に計測された膜ろ過流量を含んでもよい。
【0163】
前記の構成によれば、学習モデルは、さらに、膜ろ過流量から導出される入力データを用いて生成されるので、当該学習モデルの推測精度を向上させることができる。
【0164】
また、本発明の一態様に係る学習モデル生成装置では、前記膜ろ過運転は、間欠運転であり、前記膜ろ過流量から導出される前記入力データは、運転期間と当該運転期間に続く休止期間とから成る単位期間における膜ろ過流量の平均値、および、前記単位期間以前の所定期間における前記膜ろ過流量の積算値、の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0165】
前記の構成によれば、学習モデルは、さらに、膜ろ過流量から導出される、単位期間における膜ろ過流量の平均値と、所定期間における膜ろ過流量の積算値とのいずれかを用いて生成されるので、当該学習モデルの推測精度を向上させることができる。
【0166】
また、本発明の一態様に係る学習モデル生成装置では、前記入力データと、当該入力データに対する前記分離膜の状態を示すラベルとが対応付けられた教師データを生成する教師データ生成部をさらに備え、前記学習部は、前記生成された教師データを用いた教師あり学習により前記学習モデルを生成してもよい。
【0167】
前記の構成によれば、教師あり学習により学習モデルが生成されるので、精度の高い推測が可能となる。
【0168】
また、本発明の一態様に係る学習モデル生成装置では、前記ラベルは、前記分離膜の状態が正常となる場合の前記入力データに対応付けられる正常ラベル、および、前記分離膜の状態が異常となる場合の前記入力データに対応付けられる異常ラベルを含んでもよい。
【0169】
前記の構成によれば、分離膜の状態の推測において、分離膜が正常となるかまたは異常となるかを精度高く推測することができる。そのため、推測結果に基づいて、分離膜が正常となるように散気量を適切に(必要最小限に近い量に)制御することができる。
【0170】
また、本発明の一態様に係る学習モデル生成装置では、前記ラベルは、前記分離膜の状態が正常と異常との中間状態となる場合の前記入力データに対応付けられる中間ラベルをさらに含んでもよい。
【0171】
前記の構成によれば、分離膜が正常となるか異常となるかに加え、正常と異常との中間状態となるとの推測が可能となるので、分離膜の状態をさらに精度高く推測することができる。
【0172】
また、本発明の一態様に係る学習モデル生成装置では、前記学習部は、教師なし学習により、学習結果としてクラスタを含む前記学習モデルを生成してもよい。
【0173】
前記の構成によれば、十分な教師データを用意することができない状況においても、簡易に学習モデルを生成することができる。
【0174】
また、本発明の一態様に係る学習モデル生成装置では、前記学習部は、前記学習モデルを用いて前記分離膜の状態を推測したときに前記学習モデルに入力されたデータを取得し、該取得したデータを入力とした機械学習により前記学習モデルを更新してもよい。
【0175】
前記の構成によれば、推測工程で入力した入力データを用いた機械学習により学習モデルを更新するので、推測を行うたびに学習モデルの推測精度を向上させることができる。
【0176】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る推測装置は、被処理水中に浸漬して配置された分離膜と、前記分離膜の膜面散気を行う散気装置とを備え、前記散気装置により前記膜面散気を行いながら前記分離膜を透過した処理水を得る膜分離装置にて行われる膜ろ過運転中に計測される、膜ろ過圧および散気量を含む運転データに基づき機械学習により生成された、前記分離膜の状態を推測するための学習モデルにアクセスするアクセス部と、前記膜ろ過運転中に計測された前記運転データから導出される入力データを取得する入力データ取得部と、前記アクセスした学習モデルを用いて、前記取得された入力データから、前記分離膜の状態を推測する推測部と、を備える。
【0177】
前記の構成によれば、膜ろ過圧および散気量を含む運転データに基づき分離膜の状態を推測することができる。分離膜の状態が推測できれば、それに基づき散気量を制御することができるため、分離膜が正常な状態(例えば、膜間差圧の急上昇が起こる可能性を低減した状態)を維持しながら安定した膜ろ過運転を行うことができる。
【0178】
また、本発明の一態様に係る推測装置は、前記膜ろ過運転は、間欠運転であり、前記入力データ取得部は、運転期間と当該運転期間に続く休止期間とから成る単位期間毎に前記運転データから導出された前記入力データを取得し、前記推測部は、前記単位期間毎に、前記取得された入力データから前記状態を推測してもよい。
【0179】
前記の構成によれば、膜ろ過運転中の単位期間毎に分離膜の状態が推測されるので、分離膜の状態の急な変化を迅速に確認することができる。
【0180】
また、本発明の一態様に係る推測装置は、前記膜ろ過運転は、間欠運転であり、前記膜ろ過圧から導出される前記入力データは、運転期間と当該運転期間に続く休止期間とから成る単位期間における、膜ろ過圧の最大値、膜ろ過圧の最小値、膜ろ過圧の標準偏差値、膜ろ過圧の平均値、および、膜間差圧、並びに、前記単位期間以前の所定期間における、膜間差圧の変動速度、膜間差圧の変動量、および、膜間差圧の変動率、の少なくともいずれかを含み、前記散気量から導出される前記入力データは、前記単位期間における前記散気量の平均値、および、前記所定期間における前記散気量の積算値、の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0181】
前記の構成によれば、膜ろ過圧および散気量から導出される種々の特徴量を有する入力データの少なくともいずれかを用いて生成された学習モデルを用いて推測を行うので、推測精度を向上させることができる。
【0182】
また、本発明の一態様に係る推測装置は、前記運転データは、さらに、前記膜ろ過運転中に計測された膜ろ過流量を含んでもよい。
【0183】
前記の構成によれば、さらに膜ろ過流量から導出される入力データを用いて生成された学習モデルを用いて推測を行うので、推測精度を向上させることができる。
【0184】
また、本発明の一態様に係る推測装置は、前記膜ろ過運転は、間欠運転であり、前記膜ろ過流量から導出される前記入力データは、運転期間と当該運転期間に続く休止期間とから成る単位期間における膜ろ過流量の平均値、および、前記単位期間以前の所定期間における前記膜ろ過流量の積算値、の少なくともいずれかを含んでもよい。
【0185】
前記の構成によれば、さらに、膜ろ過流量から導出される、単位期間における膜ろ過流量の平均値と、所定期間における膜ろ過流量の積算値とのいずれかを用いて生成され他学習モデルを用いて推測を行うので、推測精度を向上させることができる。
【0186】
また、本発明の一態様に係る推測装置は、前記学習モデルは、前記分離膜の状態を示すラベルを含む教師データを用いた教師あり学習により生成されてもよい。
【0187】
前記の構成によれば、教師あり学習により生成された学習モデルを用いるので、精度の高い推測が可能となる。
【0188】
また、本発明の一態様に係る推測装置は、前記ラベルは、前記分離膜の状態が正常となることを示すラベル、および、前記分離膜の状態が異常となることを示すラベルを含んでもよい。
【0189】
前記の構成によれば、分離膜の状態の推測において、分離膜が正常となるかまたは異常となるかを精度高く推測することができる。そのため、推測結果に基づいて、分離膜が正常となるように散気量を適切に(必要最小限に近い量に)制御することができる。
【0190】
また、本発明の一態様に係る推測装置は、前記ラベルは、前記分離膜の状態が正常と異常との中間状態となることを示すラベルをさらに含んでもよい。
【0191】
前記の構成によれば、分離膜が正常となるか異常となるかに加え、正常と異常との中間状態となるとの推測が可能となるので、分離膜の状態をさらに精度高く推測することができる。
【0192】
また、本発明の一態様に係る推測装置は、前記学習モデルは、教師なし学習により生成される、学習結果としてクラスタを含む学習モデルであってもよい。
【0193】
前記の構成によれば、十分な教師データを用意することができない状況においても、簡易に分離膜の状態の推測を行うことができる。
【0194】
また、本発明の一態様に係る推測装置は、前記学習モデルの出力値は、外れ値か否かであり、前記推測部は、前記出力値が外れ値であるとき、前記分離膜の状態は異常になると推測し、前記出力値が外れ値でないとき、前記分離膜の状態は正常になると推測してもよい。
【0195】
前記の構成によれば、外れ値検出が可能な学習モデルを用いて簡易に分離膜の状態を推測することができる。
【0196】
また、本発明の一態様に係る散気量制御装置は、前記推測装置が前記推測した前記状態に応じて前記散気量のレベルを決定し、該決定したレベルで散気するように前記散気装置を制御してもよい。
【0197】
前記の構成によれば、推測した分離膜の状態に応じて、自動的に散気量のレベルを決定するので、膜ろ過運転を行う作業者が散気量のレベルを調整する必要が無い。結果として、作業者の作業負担を低減させることができる。
【0198】
また、本発明の一態様に係る散気量制御装置は、前記推測装置が推測した前記状態と、自装置が直近に決定したレベルとに応じて、前記散気量の今回のレベルを決定してもよい。
【0199】
前記の構成によれば、直近の散気量レベルをも考慮して、散気量のレベルを決定するので、直近の散気量レベルを考慮しない構成と比べて、より適切な散気量のレベルを決定することができる。
【0200】
本発明の各態様に係る学習モデル生成装置、推測装置および散気量制御装置は、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記学習モデル生成装置、推測装置および散気量制御装置が備える各部(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記学習モデル生成装置、推測装置および散気量制御装置をコンピュータにて実現させる学習モデル生成装置、推測装置および散気量制御装置の制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【0201】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0202】
1、1A 学習モデル生成装置
2、2A 推測装置
8 散気量制御装置
11 入力データ取得部
12 教師データ生成部
13、13A 学習部
21 入力データ取得部
22、22A アクセス部
23、23A 推測部
31、31A 学習モデル
90 膜分離装置
92 被処理水
93 分離膜
95 散気装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図16