(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167303
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】フッ素原子含有シラン化合物
(51)【国際特許分類】
C07F 7/18 20060101AFI20241126BHJP
C09K 3/18 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
C07F7/18 W
C07F7/18 N CSP
C09K3/18 103
C09K3/18 104
C07F7/18 E
C07F7/18 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024145456
(22)【出願日】2024-08-27
(62)【分割の表示】P 2023190950の分割
【原出願日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2022179021
(32)【優先日】2022-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100188802
【弁理士】
【氏名又は名称】澤内 千絵
(72)【発明者】
【氏名】高野 真也
(72)【発明者】
【氏名】半田 晋也
(72)【発明者】
【氏名】松井 元志
(72)【発明者】
【氏名】原 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】久保田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】野村 孝史
(72)【発明者】
【氏名】山口 史彦
(57)【要約】
【課題】新たな化合物であるフッ素原子を含有するシラン化合物を提供する。
【解決手段】式(1)で表されるフッ素原子含有シラン化合物。各符号は明細書中の記載と同意義である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1):
【化1】
[式中:
Rf
1は、それぞれ独立して、A
1
γ11A
2
γ12C-を有する1価の有機基、及びCF≡を含む環状の構造を含む1価の有機基から選ばれる基を少なくとも1つ有し;
A
1は、フッ素原子であり;
A
2は、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり;
γ11は、それぞれ独立して、1又は2であり;
γ12は、それぞれ独立して、1又は2であり;
γ11及びγ12の合計は3であり;
X
Aは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、又は2~10価の有機基であり;
R
Siは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
α1は、1~9の整数であり;及び
α2は、1~9の整数である。]
で表されるフッ素原子含有シラン化合物。
【請求項2】
Rf1は、
A1
γ11A2
γ12C-XB-
[式中:
A1は、フッ素原子であり;
A2は、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり;
γ11は、それぞれ独立して、1又は2であり;
γ12は、それぞれ独立して、1又は2であり;
γ11及びγ12の合計は3であり;
XBは、
単結合、
2価のポリシロキサン基を含む基、又は
-(CRA1
e1H2-e1)a1-(CFH)b1-(CH2)c1-(O)d1-
(式中
RA1は、A1
γ11A2
γ12C-を有する1価の有機基であり;
e1は、1又は2であり;
a1は、0~200の整数であり;
b1は、0~200の整数であり;
c1は、0~200の整数であり;
d1は、0~200の整数であり;及び
符号a1、b1、c1及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。)
で表される基である。]
で表される基である、請求項1に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
【請求項3】
XBは、-(CRA1
e1H2-e1)a1-(CFH)b1-(CH2)c1-(O)d1-
[式中:
RA1は、A1
γ11A2
γ12C-を有する1価の有機基であり;
A1、A2、γ11、γ12、e1、a1、b1、c1、及びd1は、請求項2と同意義であり;
符号a1、b1、c1及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である、請求項2に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
【請求項4】
XBは、-(CFH)b1-(CH2)c1-(O)d1-
[式中:
b1、及びc1は、請求項2と同意義であり;
d1は、0~10の整数であり;及び
符号b1、c1、及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である、請求項2に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
【請求項5】
XBは、-(CH2)c1-
[式中、c1は、0~30の整数である。]
で表される基である、請求項2に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
【請求項6】
XBは、-O-(CH2)c1-
[式中、c1は、0~30の整数である。]
で表される基である、請求項2に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
【請求項7】
XBは、-(CH2)g1-SiRs
2O(-SiRs
2O-)n11SiRs
2-(CH2)g1-
[式中:
Rsは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は炭化水素基であり、
n11は、1~1500の整数であり、
g1は、それぞれ独立して、0~30の整数である。]
で表される基である、請求項2に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
【請求項8】
A1
γ11A2
γ12C-は、HCF2-である、請求項1又は2に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
【請求項9】
X
Aは、単結合、-(X
52)
l5-、又は式(X
A1):
【化2】
[式中:
X
52は、それぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR
53-、-NR
53CO-、-O-CONR
53-、-NR
53CO-O-、-NR
53CONR
53-、-NR
53-、及び-(CH
2)
n5-からなる群から選択される基であり;
R
53は、それぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり;
n5は、それぞれ独立して、1~30の整数であり;
l5は、1~10の整数であり;
X
aは、それぞれ独立して、単結合又は2価の連結基である。]
で表される基である、請求項1に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
【請求項10】
R
Siは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5):
【化3】
[式中:
R
11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
12は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
n1は、(SiR
11
n1R
12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
X
11は、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり;
R
13は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
tは、それぞれ独立して、2以上の整数であり;
R
14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X
11-SiR
11
n1R
12
3-n1であり;
R
15は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり;
R
a1は、それぞれ独立して、-Z
1-SiR
21
p1R
22
q1R
23
r1であり;
Z
1は、それぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
21は、それぞれ独立して、-Z
1’-SiR
21’
p1’R
22’
q1’R
23’
r1’であり;
R
22は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
p1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
1’は、それぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
21’は、それぞれ独立して、-Z
1”-SiR
22”
q1”R
23”
r1”であり;
R
22’は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23’は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
p1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
1”は、それぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
22”は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23”は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
q1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
b1は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
c1は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
k1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
l1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
d1は、それぞれ独立して、-Z
2-CR
31
p2R
32
q2R
33
r2であり;
Z
2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
31は、それぞれ独立して、-Z
2’-CR
32’
q2’R
33’
r2’であり;
R
32は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
33は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
p2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
2’は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
32’は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
33’は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
q2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
3は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
34は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
35は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
n2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
e1は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
f1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
k2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。
R
g1及びR
h1は、それぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1、-Z
4-SiR
a1
k1R
b1
l1R
c1
m1、又は-Z
4-CR
d1
k2R
e1
l2R
f1
m2であり;
Z
4は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
k3は、1又は2であり;
l3は、0又は1であり;
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)、又は(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。]
で表される基である、請求項1に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
【請求項11】
請求項1に記載のフッ素原子含有シラン化合物を含む、表面処理剤。
【請求項12】
さらに、請求項1に記載のフッ素原子含有シラン化合物の縮合体を含む、請求項11に記載の表面処理剤。
【請求項13】
さらに、R90-OH(ここで、R90は1価の有機基である。)で表されるアルコールを含む、請求項11に記載の表面処理剤。
【請求項14】
真空蒸着用である、請求項11又は12に記載の表面処理剤。
【請求項15】
湿潤被覆用である、請求項11又は12に記載の表面処理剤。
【請求項16】
請求項11又は12に記載の表面処理剤を含有するペレット。
【請求項17】
基材と、該基材上に請求項1に記載のフッ素原子含有シラン化合物から形成された層とを含む物品。
【請求項18】
前記基材と前記層との間に、酸化ケイ素を含む中間層を含む、請求項17に記載の物品。
【請求項19】
前記中間層は、アルカリ金属原子を含む、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
前記アルカリ金属原子の少なくとも一部がナトリウムである、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
光学部材である、請求項17に記載の物品。
【請求項22】
ディスプレイである、請求項21に記載の物品。
【請求項23】
下記式(2a)~(2g):
【化4】
で表される化合物。
[式中:
Rf
1’-は、それぞれ独立して、A
11
γ11A
12
γ12C-、又は、CF≡を含む環状の構造であり;
A
11は、フッ素原子であり;
A
12は、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり;
γ11は、それぞれ独立して、0又は1であり;
γ12は、それぞれ独立して、1又は2であり;
γ11及びγ12の合計は3であり;
-R
91は、水酸基、-F、-Cl、又は-O-C
1-3アルキル基であり;
X
B2は、(CH
2)
c21、(CH
2)
c22-O-(CH
2)
c23、又は2価のポリシロキサン基を含む基であり;
c21、c22、及びc23は、それぞれ独立して、0~200の整数であり;
但し、c22及びc23の合計は、0~200の整数であり;
Rf
1’-X
B2-は、Rf
1-であり;
Rf
1-は、それぞれ独立して、A
1
γ11A
2
γ12C-を有する1価の有機基、及びCF≡を含む環状の構造を含む1価の有機基から選ばれる基を少なくとも1つ有し;
X
B3は、(CH
2)
c11、(CH
2)
c12-O-(CH
2)
c13又は2価のポリシロキサン基を含む基であり;
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数であり;
但し、c12及びc13の合計は、0~200の整数であり;
X
A3は、それぞれ独立して、単結合、又は、C(=O)NR
53-(CH
2)
c14であり;
R
53は、水素原子、又は1価の有機基であり;
c14は、0~30の整数であり;
X
B4は、それぞれ独立して、(CH
2)
c11、(CH
2)
c12-O-(CH
2)
c13又は2価のポリシロキサン基を含む基であり;
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数であり;
但し、c12及びc13の合計は、0~200の整数であり;
Rf
1’-X
B4-は、Rf
1-に該当し;
Rf
1-は、それぞれ独立して、A
1
γ11A
2
γ12C-を有する1価の有機基、及びCF≡を含む環状の構造を含む1価の有機基から選ばれる基を少なくとも1つ有し;
X
A4は、それぞれ独立して、単結合、又は、C(=O)NR
53-(CH
2)
c15であり;
c15は、0~30の整数であり;
X
A5は、それぞれ独立して、単結合、又は、2価の有機基であり;
R
95は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
δ3は、1~3の整数であり;
X
A6は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、又は、2価の有機基であり;
R
96は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
δ4は、1~3の整数であり;
-R
97は、それぞれ独立して、-R
92-CH=CH
2又は-R
94-Q
A1(R
92-CH=CH
2)
δ31R
93
δ32で表され;
R
92は、単結合、酸素原子、又は2価の有機基であり;
R
94は、単結合、酸素原子、又は2価の有機基であり;
Q
A1は、それぞれ独立して、N、Si、又はCであり;
R
93は、水素原子、水酸基、又は1価の有機基であり;
δ31及びδ32は、それぞれ独立して1以上の整数であり;
δ31とδ32との合計は、Q
A1の価数-1であり;
X
B5は、(CH
2)
c11、(CH
2)
c12-O-(CH
2)
c13又は2価のポリシロキサン基を含む基で表され;
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数であり;
但し、c12及びc13の合計は、0~200の整数であり;
X
A7は、単結合、又はC(=O)であり;
-R
98は、-R
92-CH=CH
2又は-R
94-Q
A1(R
92-CH=CH
2)
δ31R
93
δ32で表され;
-R
A31は、-Rf
1で表され;
Rf
1-は、それぞれ独立して、A
1
γ11A
2
γ12C-を有する1価の有機基、及びCF≡を含む環状の構造を含む1価の有機基から選ばれる基を少なくとも1つ有し;
-R
A32は、-X
A31-CH=CH
2又は-X
A33-Q
A2(X
A32-CH=CH
2)
δ41R
36
δ42で表され;
-R
A33は、-Rf
1、-X
A31-CH=CH
2又は-X
A33-Q
A2(X
A32-CH=CH
2)
δ41R
36
δ42で表され;
X
A31、X
A32及びX
A33は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
Q
A2は、それぞれ独立して、N、Si又はCであり;
R
36は、水素原子、水酸基、又は1価の有機基であり;
δ41及びδ42は、それぞれ独立して、1以上の整数であり;
δ41とδ42との合計は、Q
A2の価数-1である。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ素原子含有シラン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ある種のシラン化合物は、基材の表面処理に用いると、優れた撥水撥油性を提供し得ることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、新たな化合物であるフッ素原子を含有するシラン化合物(フッ素原子含有シラン化合物)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、以下の[1]~[23]を提供するものである。
[1] 下記式(1):
【化1】
[式中:
Rf
1は、それぞれ独立して、A
1
γ11A
2
γ12C-を有する1価の有機基、及びCF≡を含む環状の構造を含む1価の有機基から選ばれる基を少なくとも1つ有し;
A
1は、フッ素原子であり;
A
2は、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり;
γ11は、それぞれ独立して、1又は2であり;
γ12は、それぞれ独立して、1又は2であり;
γ11及びγ12の合計は3であり;
X
Aは、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、又は2~10価の有機基であり;
R
Siは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基であり;
α1は、1~9の整数であり;及び
α2は、1~9の整数である。]
で表されるフッ素原子含有シラン化合物。
[2] Rf
1は、
A
1
γ11A
2
γ12C-X
B-
[式中:
A
1は、フッ素原子であり;
A
2は、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり;
γ11は、それぞれ独立して、1又は2であり;
γ12は、それぞれ独立して、1又は2であり;
γ11及びγ12の合計は3であり;
X
Bは、
単結合、
2価のポリシロキサン基を含む基、又は
-(CR
A1
e1H
2-e1)
a1-(CFH)
b1-(CH
2)
c1-(O)
d1-
(式中
R
A1は、A
1
γ11A
2
γ12C-を有する1価の有機基であり;
e1は、1又は2であり;
a1は、0~200の整数であり;
b1は、0~200の整数であり;
c1は、0~200の整数であり;
d1は、0~200の整数であり;及び
符号a1、b1、c1及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。)
で表される基である。]
で表される基である、[1]に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
[3] X
Bは、-(CR
A1
e1H
2-e1)
a1-(CFH)
b1-(CH
2)
c1-(O)
d1-
[式中:
R
A1は、A
1
γ11A
2
γ12C-を有する1価の有機基であり;
A
1、A
2、γ11、γ12、e1、a1、b1、c1、及びd1は、[2]と同意義であり;
符号a1、b1、c1及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である、[2]に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
[4] X
Bは、-(CFH)
b1-(CH
2)
c1-(O)
d1-
[式中:
b1、及びc1は、[2]と同意義であり;
d1は、0~10の整数であり;及び
符号b1、c1、及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。]
で表される基である、[2]に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
[5] X
Bは、-(CH
2)
c1-
[式中、c1は、0~30の整数である。]
で表される基である、[2]に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
[6] X
Bは、-O-(CH
2)
c1-
[式中、c1は、0~30の整数である。]
で表される基である、[2]に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
[7] X
Bは、-(CH
2)
g1-SiR
s
2O(-SiR
s
2O-)
n11SiR
s
2-(CH
2)
g1-
[式中:
R
sは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は炭化水素基であり、
n11は、1~1500の整数であり、
g1は、それぞれ独立して、0~30の整数である。]
で表される基である、[2]に記載のフッ素原子含有シラン化合物。
[8] A
1
γ11A
2
γ12C-は、HCF
2-である、[1]~[7]のいずれか1つに記載のフッ素原子含有シラン化合物。
[9] X
Aは、単結合、-(X
52)
l5-、又は式(X
A1):
【化2】
[式中:
X
52は、それぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR
53-、-NR
53CO-、-O-CONR
53-、-NR
53CO-O-、-NR
53CONR
5-、-NR
54-、及び-(CH
2)
n5-からなる群から選択される基であり;
R
54は、それぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり;
n5は、それぞれ独立して、1~30の整数であり;
l5は、1~10の整数であり;
X
aは、それぞれ独立して、単結合又は2価の連結基である。]
で表される基である、[1]~[8]のいずれか1つに記載のフッ素原子含有シラン化合物。
[10] R
Siは、下記式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5):
【化3】
[式中:
R
11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
12は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
n1は、(SiR
11
n1R
12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数であり;
X
11は、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基であり;
R
13は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基であり;
tは、それぞれ独立して、2以上の整数であり;
R
14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X
11-SiR
11
n1R
12
3-n1であり;
R
15は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基又は炭素数1~6のアルキレンオキシ基であり;
R
a1は、それぞれ独立して、-Z
1-SiR
21
p1R
22
q1R
23
r1であり;
Z
1は、それぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
21は、それぞれ独立して、-Z
1’-SiR
21’
p1’R
22’
q1’R
23’
r1’であり;
R
22は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
p1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
1’は、それぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
21’は、それぞれ独立して、-Z
1”-SiR
22”
q1”R
23”
r1”であり;
R
22’は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23’は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
p1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
q1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
1”は、それぞれ独立して、2価の有機基であり;
R
22”は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
23”は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
q1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
r1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
b1は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
c1は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
k1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
l1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
m1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
d1は、それぞれ独立して、-Z
2-CR
31
p2R
32
q2R
33
r2であり;
Z
2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
31は、それぞれ独立して、-Z
2’-CR
32’
q2’R
33’
r2’であり;
R
32は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
33は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
p2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
q2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
2’は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
32’は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
33’は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
q2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
r2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
Z
3は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
R
34は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり;
R
35は、それぞれ独立して、1価の有機基であり;
n2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
R
e1は、それぞれ独立して、-Z
3-SiR
34
n2R
35
3-n2であり;
R
f1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
k2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
l2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり;
m2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。
R
g1及びR
h1は、それぞれ独立して、-Z
4-SiR
11
n1R
12
3-n1、-Z
4-SiR
a1
k1R
b1
l1R
c1
m1、又は-Z
4-CR
d1
k2R
e1
l2R
f1
m2であり;
Z
4は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
k3は、1又は2であり;
l3は、0又は1であり;
ただし、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)、又は(S5)中、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。]
で表される基である、[1]~[9]のいずれか1つに記載のフッ素原子含有シラン化合物。
[11] [1]~[10]のいずれか1つに記載のフッ素原子含有シラン化合物を含む、表面処理剤。
[12] さらに、[1]に記載のフッ素原子含有シラン化合物の縮合体を含む、[11]に記載の表面処理剤。
[13] さらに、R
90-OH(ここで、R
90は1価の有機基である。)で表されるアルコールを含む、[11]又は[12]に記載の表面処理剤。
[14] 真空蒸着用である、[11]~[13]のいずれか1つに記載の表面処理剤。
[15] 湿潤被覆用である、[11]~[13]のいずれか1つに記載の表面処理剤。
[16] [11]~[15]のいずれか1つに記載の表面処理剤を含有するペレット。
[17] 基材と、該基材上に[1]~[10]のいずれか1つに記載のフッ素原子含有シラン化合物から形成された層とを含む物品。
[18] 前記基材と前記層との間に、酸化ケイ素を含む中間層を含む、[17]に記載の物品。
[19] 前記中間層は、アルカリ金属原子を含む、[18]に記載の物品。
[20] 前記アルカリ金属原子の少なくとも一部がナトリウムである、[19]に記載の物品。
[21] 光学部材である、[17]~[20]のいずれか1つに記載の物品。
[22] ディスプレイである、[21]に記載の物品。
[23] 下記式(2a)~(2g):
【化4】
で表される化合物。
[式中:
Rf
1’-は、それぞれ独立して、A
11
γ11A
12
γ12C-、又は、CF≡を含む環状の構造であり;
A
11は、フッ素原子であり;
A
12は、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、又は臭素原子であり;
γ11は、それぞれ独立して、0又は1であり;
γ12は、それぞれ独立して、1又は2であり;
γ11及びγ12の合計は3であり;
-R
91は、水酸基、-F、-Cl、又は-O-C
1-3アルキル基であり;
X
B2は、(CH
2)
c21、(CH
2)
c22-O-(CH
2)
c23、又は2価のポリシロキサン基を含む基であり;
c21、c22、及びc23は、それぞれ独立して、0~200の整数であり;
但し、c22及びc23の合計は、0~200の整数であり;
Rf
1’-X
B2-は、Rf
1-であり;
Rf
1-は、それぞれ独立して、A
1
γ11A
2
γ12C-を有する1価の有機基、及びCF≡を含む環状の構造を含む1価の有機基から選ばれる基を少なくとも1つ有し;
X
B3は、(CH
2)
c11、(CH
2)
c12-O-(CH
2)
c13又は2価のポリシロキサン基を含む基であり;
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数であり;
但し、c12及びc13の合計は、0~200の整数であり;
X
A3は、それぞれ独立して、単結合、又は、C(=O)NR
53-(CH
2)
c14であり;
R
53は、水素原子、又は1価の有機基であり;
c14は、0~30の整数であり;
X
B4は、それぞれ独立して、(CH
2)
c11、(CH
2)
c12-O-(CH
2)
c13又は2価のポリシロキサン基を含む基であり;
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数であり;
但し、c12及びc13の合計は、0~200の整数であり;
Rf
1’-X
B4-は、Rf
1に該当し;
Rf
1-は、それぞれ独立して、A
1
γ11A
2
γ12C-を有する1価の有機基、及びCF≡を含む環状の構造を含む1価の有機基から選ばれる基を少なくとも1つ有し;
X
A4は、それぞれ独立して、単結合、又は、C(=O)NR
53-(CH
2)
c15であり;
c15は、0~30の整数であり;
X
A5は、それぞれ独立して、単結合、又は、2価の有機基であり;
R
95は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
δ3は、1~3の整数であり;
X
A6は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、又は、2価の有機基であり;
R
96は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり;
δ4は、1~3の整数であり;
-R
97は、それぞれ独立して、-R
92-CH=CH
2又は-R
94-Q
A1(R
92-CH=CH
2)
δ31R
93
δ32で表され;
R
92は、単結合、酸素原子、又は2価の有機基であり;
R
94は、単結合、酸素原子、又は2価の有機基であり;
Q
A1は、それぞれ独立して、N、Si、又はCであり;
R
93は、水素原子、水酸基、又は1価の有機基であり;
δ31及びδ32は、それぞれ独立して1以上の整数であり;
δ31とδ32との合計は、Q
A1の価数-1であり;
X
B5は、(CH
2)
c11、(CH
2)
c12-O-(CH
2)
c13又は2価のポリシロキサン基を含む基で表され;
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数であり;
但し、c12及びc13の合計は、0~200の整数であり;
X
A7は、単結合、又はC(=O)であり;
-R
98は、-R
92-CH=CH
2又は-R
94-Q
A1(R
92-CH=CH
2)
δ31R
93
δ32で表され;
-R
A31は、-Rf
1で表され;
Rf
1-は、それぞれ独立して、A
1
γ11A
2
γ12C-を有する1価の有機基、及びCF≡を含む環状の構造を含む1価の有機基から選ばれる基を少なくとも1つ有し;
-R
A32は、-X
A31-CH=CH
2又は-X
A33-Q
A2(X
A32-CH=CH
2)
δ41R
36
δ42で表され;
-R
A33は、-Rf
1、-X
A31-CH=CH
2又は-X
A33-Q
A2(X
A32-CH=CH
2)
δ41R
36
δ42で表され;
X
A31、X
A32及びX
A33は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基であり;
Q
A2は、それぞれ独立して、N、Si又はCであり;
R
36は、水素原子、水酸基、又は1価の有機基であり;
δ41及びδ42は、それぞれ独立して、1以上の整数であり;
δ41とδ42との合計は、Q
A2の価数-1である。]
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、新たなフッ素原子含有シラン化合物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書において用いられる場合、「1価の有機基」とは、炭素を含有する1価の基を意味する。1価の有機基としては、特に限定されないが、炭化水素基、又は、その誘導体であり得る。炭化水素基の誘導体とは、炭化水素基の末端、又は、分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有している基を意味する。
本明細書において用いられる場合、「2価の有機基」としては、特に限定されるものではないが、炭化水素基からさらに1個の水素原子を脱離させた2価の基が挙げられる。
【0008】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」とは、炭素及び水素を含む基であって、分子から1個の水素原子を脱離させた基を意味する。かかる炭化水素基としては、特に限定されるものではないが、炭素原子数1~20の炭化水素基、例えば、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基等が挙げられる。上記「脂肪族炭化水素基」は、直鎖状、分枝鎖状、又は、環状のいずれであってもよく、飽和、又は、不飽和のいずれであってもよい。また、炭化水素基は、1つ又はそれ以上の環構造を含んでいてもよい。かかる炭化水素基は、1つ又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。尚、かかる炭化水素基は、その末端、又は、分子鎖中に、1つ又はそれ以上のN、O、S、Si、アミド、スルホニル、シロキサン、カルボニル、カルボニルオキシ等を有していてもよい。
【0009】
本明細書において用いられる場合、「炭化水素基」の置換基としては、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子;1個又はそれ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、C2-6アルキニル基、C3-10シクロアルキル基、C3-10不飽和シクロアルキル基、5~10員のヘテロシクリル基、5~10員の不飽和ヘテロシクリル基、C6-10アリール基及び5~10員のヘテロアリール基から選択される1個又はそれ以上の基が挙げられる。
【0010】
本明細書において用いられる場合、「加水分解性基」とは、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、化合物の主骨格から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、-ORh、-OCORh、-O-N=CRh
2、-NRh
2、-NHRh、又は-NCO(これら式中、Rhは、置換又は非置換の炭素数1~4のアルキル基を示す)などが挙げられ、好ましくは-ORh(即ち、アルコキシ基)である。Rhの例には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基などの非置換アルキル基;クロロメチル基などの置換アルキル基が含まれる。それらの中でも、アルキル基、特に非置換アルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。一の態様において、Rhは、メチル基であり、別の態様において、Rhは、エチル基である。
【0011】
[フッ素原子含有シラン化合物]
本開示のフッ素原子含有シラン化合物は、下記式(1)で表される。
【化5】
【0012】
Rf1は、それぞれ独立して、A1
γ11A2
γ12C-を有する1価の有機基、及びCF≡基を含む環状の構造を含む1価の有機基から選ばれる基を少なくとも1つ有する。
【0013】
A1は、フッ素原子である。
【0014】
A2は、それぞれ独立して、水素原子、塩素原子、又は臭素原子である。
【0015】
一の態様において、A2は水素原子である。一の態様において、A2は塩素原子である。別の態様において、A2は臭素原子である。
【0016】
上記A2は、好ましくは水素原子である。
【0017】
一の態様において、A1
γ11A2
γ12C-は、HF2C-である。
【0018】
γ11は、それぞれ独立して、1又は2であり;γ12は、それぞれ独立して、1又は2である。但し、γ11及びγ12の合計は3である。
【0019】
一の態様において、γ11は1である。一の態様において、γ11は2である。
【0020】
一の態様において、γ12は1である。一の態様において、γ12は2である。
【0021】
上記「CF≡を含む環状の構造」は、炭素原子に、フッ素原子及び3つの連結部を有し、連結部が環状の構造の一部を構成する構造である。
【0022】
一の態様において、Rf
1は、CF≡を含む環状の構造を含む1価の有機基であり、例えば、以下の構造を含む1価の有機基である。*は結合箇所を示す。
【化6】
【0023】
一の態様において、Rf1は、A1
γ11A2
γ12C-XB-で表される基である。
A1、A2、γ11及びγ12は、上記と同意義である。
XBは、単結合、2価のポリシロキサン基を含む基、又は-(CRA1
e1H2-e1)a1-(CFH)b1-(CH2)c1-(O)d1-で表される基である。なお、XBにおいて、左側がA1
γ11A2
γ12C-に、右側が-XA-に、それぞれ結合する。
【0024】
Rf
1の具体例としては、例えば、以下の基が挙げられる。下記の式中、*はX
Aとの結合位置を示す。
【化7】
【化8】
【0025】
XBにおいて、
RA1は、A1
γ11A2
γ12C-を有する1価の有機基であり;
e1は、1又は2である。
a1は、0~200の整数であり;
b1は、0~200の整数であり;
c1は、0~200の整数であり;
d1は、0~200の整数であり;及び
符号a1、b1、c1及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。好ましくは、XBは、2つ以上の酸素原子が連続して結合する構造を含まない。
【0026】
一の態様において、XBは、-(CRA1
e1H2-e1)a1-(CFH)b1-(CH2)c1-(O)d1-で表される基である。
RA1、e1、a1、b1、c1、及びd1は、上記と同意義である。符号a1、b1、c1及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。
【0027】
一の態様において、RA1は、HCF2-、又はHCF2O-である。
【0028】
一の態様において、e1は1であり、別の態様においては、e1は2である。
【0029】
一の態様において、a1は0又は1である。
【0030】
一の態様において、b1は0~6の整数である。
【0031】
一の態様において、c1は0~30の整数である。
【0032】
一の態様において、d1は0~10の整数であり、別の態様において、d1は0~3の整数である。
【0033】
一の態様において、e1は1又は2、a1は0又は1、b1は0~200の整数、c1は0~200の整数及びd1は0~10の整数である。符号a1、b1、c1及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。
【0034】
一の態様において、e1は1又は2、a1は0又は1、b1は0~6の整数、c1は0~30の整数及びd1は0~3の整数である。符号a1、b1、c1及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。
【0035】
一の態様において、XBは、-(CFH)b1-(CH2)c1-(O)d1-で表される基である。
b1、c1及びd1は、上記と同意義である。符号b1、c1及びd1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は任意である。
好ましくは、b1、及びc1は、上記と同意義であり、d1は、0~10の整数であり;より好ましくは、b1は0~6の整数、c1は0~30の整数、d1は0~3の整数である。
【0036】
一の態様において、XBは、-(CRA1
e1H2-e1)a1-(CH2)c1-で表される基である。RA1、e1、a1、及びc1は、上記と同意義である。
【0037】
一の態様において、XBは、-(CH2)c1-で表される基である。c1は上記と同意義である。好ましくは、c1は、0~30の整数である。一の態様において、c1は1~9の整数である。一の態様において、c1は10~25の整数である。
【0038】
一の態様において、XBは、-(CRA1
e1H2-e1)a1-O-(CH2)c1-で表される基である。
RA1、e1、a1、及びc1は、上記と同意義である。
【0039】
一の態様において、XBは、-O-(CH2)c1-で表される基である。
c1は、上記と同意義である。好ましくは、c1は、0~30の整数である。
【0040】
一の態様において、XBは、-(CRA1
e1H2-e1)a1-(CH2)c1-O-で表される基である。
RA1、e1、a1、及びc1は、上記と同意義である。
【0041】
一の態様において、XBは、-(CH2)c1-O-で表される基である。
c1は、上記と同意義である。一の態様において、c1は、0~30の整数であり、一の態様において、c1は0~10の整数である。
【0042】
一の態様において、XBは、-(CH2)c10-O-(CH2)c10-で表される基である。c10はそれぞれ独立して、0~200の整数である。但し、上記XBにおける合計炭素原子数は0~200の整数である。例えば、c10は、それぞれ独立して、0~30の整数である。
【0043】
一の態様において、XBは、2価のポリシロキサン基を含む基であり、酸素を介して2つのケイ素が結合した構造(-Si-O-Si-)を含む。XBは、好ましくは-Rk31-(CH2)g1-SiRs
2O(-SiRs
2O-)n11SiRs
2-Rk32-、より好ましくは-(CH2)g1-SiRs
2O(-SiRs
2O-)n11SiRs
2-(CH2)g1-で表される基である。
Rk31は、単結合又はC1-200アルキレン基であり、例えば、単結合である。
Rk32は、単結合又はC1-200アルキレン基であり、例えばC1-10アルキレン基である。
但し、Rk31に含まれる炭素数及びRk32に含まれる炭素数との合計は0~200である。
g1は、それぞれ独立して、0~30の整数である。g1は、例えば1~30の整数、具体的、1~10の整数、より具体的には1~3の整数である。一の態様において、g1は0である。
Rsは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は炭化水素基であり;
n11は、1~1500の整数である。
上記炭化水素基としては、例えば、C1-3のアルキル基を挙げることができる。
具体的には、-SiRs
2O(-SiRs
2O-)n11SiRs
2-として、ポリジメチルシロキサン基、ポリジエチルシロキサン基等を挙げることができる。
【0044】
一の態様において、XBは、-(CH2)c11-(O(CH2)c12)c13-で表される基である。
c11は0~200の整数、c12は0~200の整数、及びc13は0~200の整数である。但し、上記XBに含まれる炭素数は、0~200の整数である。例えば、c12及びc13は、それぞれ1以上の整数である。
例えば、c11は1~4の整数、c12は1~10の整数、c13は1~150の整数である。
一の態様において、上記XBに含まれる炭素数は、1~150の整数である。
一の態様において、c11は0~20の整数であり、c12は1~6の整数であり、c13は0~150の整数であり、好ましくは、c13は1~50の整数であり、上記XBに含まれる炭素数は、1~150の整数である。
一の態様において、c11は1~30の整数であり、c12は1~3の整数であり、c13は2~150の整数、例えば2~50の整数である。
【0045】
一の態様において、A1
γ11A2
γ12C-は、HCF2-である。
【0046】
一の態様において、フッ素原子含有シラン化合物は、-CF3基及び-CF2-基を含まない。
【0047】
一の態様において、フッ素原子含有シラン化合物は、Rf1のみに、フッ素原子を含む。
【0048】
α1は、1~9の整数であり、α2は、1~9の整数である。これらα1及びα2は、XAの価数に応じて変化し得る。α1及びα2の和は、XAの価数と同じである。例えば、XAが10価の有機基である場合、α1及びα2の和は10であり、例えばα1が9かつα2が1、α1が5かつα2が5、又はα1が1かつα2が9となり得る。また、XAが2価の有機基である場合、α1及びα2は1である。
【0049】
XAは、単結合、酸素原子、又は2~10価の有機基である。なお、XAは、左側がRf1に、右側がRSiに、それぞれ結合する。
【0050】
上記XAは、Rf1部と基材との結合能を提供する部(RSi部)とを連結するリンカーと解される。従って、当該XAは、式(1)で表される化合物が安定に存在し得るものであれば、単結合であってもよく、酸素原子であってもよく、いずれの有機基であってもよい。
【0051】
上記XAは、それぞれ独立して、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基(好ましくは、C1-3パーフルオロアルキル基)から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。一の態様において、XAは、非置換である。
【0052】
上記XAにおける2~10価の有機基は、好ましくは2~8価の有機基である。一の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは2~4価の有機基であり、より好ましくは2価の有機基である。別の態様において、かかる2~10価の有機基は、好ましくは3~8価の有機基、より好ましくは3~6価の有機基である。
【0053】
一の態様において、XAは単結合である。
【0054】
一の態様において、XAは酸素原子である。
【0055】
一の態様において、XAは2~10価の有機基である。
【0056】
一の態様において、XAは、単結合又は2価の有機基であり、α1及びα2は1である。
【0057】
一の態様において、上記XAは、2価の有機基であり、α1及びα2は1である。
【0058】
一の態様において、XAは3~6価の有機基であり、α1は1であり、α2は2~5である。
【0059】
一の態様において、XAは、3価の有機基であり、α1は1であり、α2は2である。
【0060】
一の態様において、XAは、3価の有機基であり、α1は2であり、α2は1である。
【0061】
一の態様において、上記X
Aは、単結合、-(X
52)
l5-、又は式(X
A1):
【化9】
で表される。
【0062】
上記X52は、それぞれ独立して、-O-、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR53-、-NR53CO-、-O-CONR53-、-NR53CO-O-、-NR53CONR53-、-NR53-、及び-(CH2)n5-から選択される基である。
上記R53は、それぞれ独立して、水素原子、又は1価の有機基であり、好ましくは水素原子、フェニル基、C1-6アルキル基(好ましくはメチル基)又は炭素数1~10のオキシアルキレン含有基である。
上記n5は、それぞれ独立して、1~200の整数である。n5は、例えば、1~30の整数、具体的には1~20の整数、さらに具体的には1~15の整数、1~10の整数、1~6の整数、例えば1~3の整数である。一の態様において、n5は10~200の整数であり、例えば、10~30の整数である。一の態様において、n5は1~9の整数である。
上記l5は、1~10の整数、好ましくは1~5の整数、より好ましくは1~3の整数である。
【0063】
上記炭素数1~10のオキシアルキレン含有基は、-O-C1-10アルキレン-を含む基であり、例えば、-R55-(-O-C1-10アルキレン)n-R56(式中、R55は、単結合又は2価の有機基、好ましくはC1-6アルキレン基であり、nは任意の整数、好ましくは2~10の整数であり、R56は、水素原子又は1価の有機基、好ましくはC1-6アルキル基である。)である。上記アルキレン基は、直鎖であっても分岐鎖であってもよい。
【0064】
上記Xaは、イソシアヌル環に直接結合する単結合又は2価の連結基である。Xaとしては、単結合、アルキレン基、又は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む二価の基が好ましく、単結合、炭素数1~10のアルキレン基、又は、エーテル結合、エステル結合、アミド結合及びスルフィド結合からなる群より選択される少なくとも1種の結合を含む炭素数1~10の2価の炭化水素基がより好ましい。上記Xaは、左側がイソシアヌル環に結合する。
1~2のXaを有する基はRf1基と結合し、1~2のXaを有する基はRSi基と結合する。但し、Xaを有する基の合計は3である。一の態様において、Xaを有する基の1つはRf1基と結合し、Xaを有する基の2つはRSi基と結合する。一の態様において、Xaを有する基の2つはRf1基と結合し、Xaを有する基の1つはRSi基と結合する。
【0065】
上記Xaとしては、下記式:
-(CX121X122)x1-(Xa11)y1-(CX123X124)z1-
[式中、
X121~X124は、それぞれ独立して、H、OH、又は、-OSi(OR121)3(式中、3つのR121は、それぞれ独立して、炭素数1~4のアルキル基である。)であり、
Xa11は、-C(=O)NH-、-NHC(=O)-、-O-、-C(=O)O-、-OC(=O)-、-OC(=O)O-、-NHC(=O)NH-、-NR122-、-C(=O)-NR122-、-NR122-C(=O)-、又はSであり(各結合の左側がCX121X122に結合する。)、
R122はC1-6の炭化水素鎖、好ましくはC1-6アルキル基であり、
x1は0~10の整数であり、y1は0又は1であり、z1は1~10の整数である。]
で表される基が更に好ましい。別の態様において、R122は水素原子である。
【0066】
上記Xa11としては、-O-、-C(=O)O-又は-C(=O)NH-が好ましい。
【0067】
上記Xaとしては、下記式で表される基が好ましい。
-(CH2)m12-O-(CH2)m13-
(式中、m12は1~10の整数であり、m13は1~10の整数である。)
-(CH2)m15-O-CH2CH(OH)-(CH2)m16-
(式中、m15は1~10の整数であり、m16は1~10の整数である。)
-(CH2)m18-
(式中、m18は1~10の整数である。)
又は
-(CH2)m20-O-CH2CH(OSi(OCH3)3)-(CH2)m21-
(式中、m20は1~10の整数であり、m21は1~10の整数である。)
【0068】
上記Xaとして、特に限定されないが、-CH2-、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-、-C4H8-O-CH2-、-CO-O-CH2-CH(OH)-CH2-、-S-、-NR53-、-(CH2)m22-C(=O)-O-(CH2)m23-、-(CH2)m22-O-C(=O)-(CH2)m23-、-(CH2)m22-C(=O)-NR53-(CH2)m23-、-(CH2)m22-NR53-C(=O)-(CH2)m23-CH2OCH2CH(OSi(OCH3)3)CH2-
(式中R53は、上記と同意義であり、好ましくは、水素原子、又はC1-6炭化水素鎖(例えば、C1-6のアルキル基、具体的にはメチル基)であり、m22は1~10の整数であり、m23は1~10の整数である。)
等が挙げられる。
【0069】
上記X
Aが、単結合、酸素原子又は2価の有機基である場合、式(1)は下記式(1’)で表される。
【化10】
【0070】
上記XAが、好ましくは、単結合、又は2価の有機基である。
【0071】
一の態様において、上記XAは、それぞれ独立して、-(X52)l5-R52-で表される。上記R52は、単結合、-(CH2)t5-又はo-、m-もしくはp-フェニレン基であり、好ましくは-(CH2)t5-である。上記t5は、1~20の整数、好ましくは2~6の整数、より好ましくは2~3の整数である。ここに、R52(典型的にはR52の水素原子)は、フッ素原子、C1-3アルキル基及びC1-3フルオロアルキル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよい。好ましい態様において、R52は、これらの基により置換されていない。
【0072】
例えば、上記XAとして、それぞれ独立して、
単結合、
-CONR53-(CH2)n5-、
-(CH2)n5-CONR53-(CH2)n5-、
-(CH2)n5-CONR53-、
-(CH2)n5-、
-OC(=O)-(CH2)n5-、
-(CH2)n5-OC(=O)-(CH2)n5-、
-C(=O)O-(CH2)n5-、
-(CH2)n5-C(=O)O-(CH2)n5-、
-C(=O)-(CH2)n5-、
-(CH2)n5-C(=O)-(CH2)n5-
を挙げることができる。R53、n5は、それぞれ上記と同意義である。
【0073】
一の態様において、上記XAとして、それぞれ独立して、
単結合、
-CONR53-(CH2)n5-、
-OC(=O)-(CH2)n5-、
-C(=O)-(CH2)n5-、
を挙げることができる。
【0074】
一の態様において、上記X52は、それぞれ独立して、-S-、o-、m-もしくはp-フェニレン基、-CO-、-C(O)O-、-OC(O)-、-CONR53-、-O-CONR53-、-NR53CO-、-O-CONR53-、-NR53CO-O-、及び-NR53-から選択される基である。
【0075】
一の態様において、上記X52は、-(CH2)n5-CONR53-である。
【0076】
一の態様において、上記X
Aは、下記式で表される基が挙げられる。
【化11】
【0077】
RSiは、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子を含む1価の基である。
【0078】
R
Siは、好ましくは、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。
【化12】
【0079】
R11は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0080】
R11は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0081】
R12は、それぞれ独立して、1価の有機基である。但し、R12は、加水分解性基を含まない。
【0082】
R12において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0083】
n1は、(SiR11
n1R12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。但し、式(S1)において、n1が1~3である(SiR11
n1R12
3-n1)単位が少なくとも2つ存在する。換言すれば、式(S1)において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0084】
n1は、(SiR11
n1R12
3-n1)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0085】
上記式中、X11は、それぞれ独立して、単結合又は2価の有機基である。かかる2価の有機基は、好ましくは-R28-Ox-R29-(式中、R28及びR29は、それぞれ独立して、単結合又はC1-20アルキレン基であり、xは0又は1である。)である。かかるC1-20アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。かかるC1-20アルキレン基は、好ましくはC1-10アルキレン基、より好ましくはC1-6アルキレン基、さらに好ましくはC1-3アルキレン基である。
【0086】
一の態様において、X11は、それぞれ独立して、-C1-6アルキレン-O-C1-6アルキレン-又は-O-C1-6アルキレン-である。
【0087】
好ましい態様において、X11は、それぞれ独立して、単結合又は直鎖のC1-6アルキレン基であり、好ましくは単結合又は直鎖のC1-3アルキレン基、より好ましくは単結合又は直鎖のC1-2アルキレン基であり、さらに好ましくは直鎖のC1-2アルキレン基である。
【0088】
R13は、それぞれ独立して、水素原子又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基である。
【0089】
好ましい態様において、R13は、それぞれ独立して、水素原子又は直鎖のC1-6アルキル基であり、好ましくは水素原子又は直鎖のC1-3アルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基である。
【0090】
R15は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、C1-6アルキレン基又はC1-6アルキレンオキシ基である。
【0091】
一の態様において、R15は、それぞれ独立して、酸素原子、C1-6アルキレン基又はC1-6アルキレンオキシ基である。
【0092】
好ましい態様において、R15は、単結合である。
【0093】
tは、それぞれ独立して、2以上の整数である。
【0094】
好ましい態様において、tは、それぞれ独立して、2~10の整数、好ましくは2~6の整数である。
【0095】
R14は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は-X11-SiR11
n1R12
3-n1である。かかるハロゲン原子は、好ましくはヨウ素原子、塩素原子又はフッ素原子であり、より好ましくはフッ素原子である。好ましい態様において、R14は、水素原子である。
【0096】
一の態様において、式(S1)は、下記式(S1-a)である。
【化13】
[式中、
R
11、R
12、R
13、X
11、及びn1は、上記式(S1)の記載と同意義であり;
t1及びt2は、それぞれ独立して、1以上の整数、好ましくは1~10の整数、より好ましくは2~10の整数、例えば1~5の整数又は2~5の整数であり;
t1及びt2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。]
【0097】
好ましい態様において、式(S1)は、下記式(S1-b)である。
【化14】
[式中、R
11、R
12、R
13、X
11、n1及びtは、上記式(S1)の記載と同意義である]
【0098】
好ましい態様において、式(S2)において、-SiR11
n1R12
3-n1のSi原子はシロキサン結合を形成しない。
【0099】
一の態様において、式(S2)において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0100】
Ra1は、それぞれ独立して、-Z1-SiR21
p1R22
q1R23
r1である。
【0101】
上記Z1は、それぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1として記載する構造は、右側が(SiR21
p1R22
q1R23
r1)に結合する。
【0102】
好ましい態様において、Z1は、2価の有機基である。
【0103】
好ましい態様において、Z1は、Z1が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0104】
上記Z1は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1-O-(CH2)z2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0105】
好ましい態様において、Z1は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4-である。
【0106】
別の好ましい態様において、上記Z1は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1は、-CH2CH2-であり得る。
【0107】
R21は、それぞれ独立して、-Z1’-SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’である。
【0108】
上記Z1’は、それぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1’として記載する構造は、右側が(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)に結合する。
【0109】
好ましい態様において、Z1’は、2価の有機基である。
【0110】
好ましい態様において、Z1’は、Z1’が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1’-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0111】
上記Z1’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1’-O-(CH2)z2’-(式中、z1’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z3’-フェニレン-(CH2)z4’-(式中、z3’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0112】
好ましい態様において、Z1’は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3’-フェニレン-(CH2)z4’-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4’-である。
【0113】
別の好ましい態様において、上記Z1’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1’は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1’は、-CH2CH2-であり得る。
【0114】
R21’は、それぞれ独立して、-Z1”-SiR22”
q1”R23”
r1”である。
【0115】
Z1”は、それぞれ独立して、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z1”として記載する構造は、右側が(SiR22”
q1”R23”
r1”)に結合する。
【0116】
好ましい態様において、Z1”は、2価の有機基である。
【0117】
好ましい態様において、Z1”は、Z1”が結合しているSi原子とシロキサン結合を形成するものを含まない。好ましくは、式(S3)において、(Si-Z1”-Si)は、シロキサン結合を含まない。
【0118】
Z1”は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1”-O-(CH2)z2”-(式中、z1”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z3”-フェニレン-(CH2)z4”-(式中、z3”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0119】
好ましい態様において、Z1”は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z3”-フェニレン-(CH2)z4”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z4”-である。Z1”がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0120】
別の好ましい態様において、上記Z1”は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z1”は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z1”は、-CH2CH2-であり得る。
【0121】
R22”は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0122】
R22”は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0123】
R23”は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0124】
R23”において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0125】
q1”は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、r1”は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q1”とr1”の合計は、(SiR22”
q1”R23”
r1”)単位において、3である。
【0126】
q1”は、(SiR22”
q1”R23”
r1”)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0127】
R22’は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0128】
R22’は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0129】
R23’は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0130】
R23’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0131】
上記p1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q1’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、r1’は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p’、q1’及びr1’の合計は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位において、3である。
【0132】
一の態様において、p1’は、0である。
【0133】
一の態様において、p1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1’は、3である。
【0134】
一の態様において、q1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0135】
一の態様において、p1’は0であり、q1’は、(SiR21’
p1’R22’
q1’R23’
r1’)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0136】
R22は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0137】
R22は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0138】
R23は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0139】
R23において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0140】
p1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、r1は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p1、q1とr1の合計は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位において、3である。
【0141】
一の態様において、p1は、0である。
【0142】
一の態様において、p1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p1は、3である。
【0143】
一の態様において、q1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0144】
一の態様において、p1は0であり、q1は、(SiR21
p1R22
q1R23
r1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0145】
Rb1は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0146】
Rb1は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0147】
Rc1は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0148】
Rc1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0149】
k1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、l1は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、m1は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k1、l1とm1の合計は、(SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1)単位において、3である。
【0150】
一の態様において、k1は、(SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。好ましい態様において、k1は、3である。
【0151】
式(S3)において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0152】
好ましい態様において、式(S3)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0153】
好ましい態様において、式(S3)で表される基は、-Z1-SiR22
q1R23
r1(式中、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1は、0~2の整数である。)、-Z1’-SiR22’
q1’R23’
r1’(式中、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1’は、0~2の整数である。)、又は-Z1”-SiR22”
q1”R23”
r1”(式中、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3であり、r1”は、0~2の整数である。)のいずれか1つを有する。Z1、Z1’、Z1”、R22、R23、R22’、R23’、R22”、及びR23”は、上記と同意義である。
【0154】
好ましい態様において、式(S3)において、R21’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21’において、q1”は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0155】
好ましい態様において、式(S3)において、R21が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR21において、p1’は、0であり、q1’は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0156】
好ましい態様において、式(S3)において、Ra1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、p1は、0であり、q1は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0157】
好ましい態様において、式(S3)において、k1は2又は3、好ましくは3であり、p1は0であり、q1は2又は3、好ましくは3である。
【0158】
Rd1は、それぞれ独立して、-Z2-CR31
p2R32
q2R33
r2である。
【0159】
Z2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2として記載する構造は、右側が(CR31
p2R32
q2R33
r2)に結合する。
【0160】
好ましい態様において、Z2は、2価の有機基である。
【0161】
好ましい態様において、Z2は、シロキサン結合を含まない。
【0162】
Z2は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5-O-(CH2)z6-(式中、z5は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7-フェニレン-(CH2)z8-(式中、z7は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0163】
好ましい態様において、Z2は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7-フェニレン-(CH2)z8-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8-である。Z2がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0164】
別の好ましい態様において、上記Z2は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z2は、-CH2CH2-であり得る。
【0165】
R31は、それぞれ独立して、-Z2’-CR32’
q2’R33’
r2’である。
【0166】
Z2’は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z2’として記載する構造は、右側が(CR32’
q2’R33’
r2’)に結合する。
【0167】
好ましい態様において、Z2’は、シロキサン結合を含まない。
【0168】
Z2’は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5’-O-(CH2)z6’-(式中、z5’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7’-フェニレン-(CH2)z8’-(式中、z7’は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8’は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0169】
好ましい態様において、Z2’は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7’-フェニレン-(CH2)z8’-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8’-である。Z2’がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0170】
別の好ましい態様において、上記Z2’は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z2’は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z2’は、-CH2CH2-であり得る。
【0171】
R32’は、それぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。
【0172】
Z3は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z3として記載する構造は、右側が(SiR34
n2R35
3-n2)に結合する。
【0173】
一の態様において、Z3は酸素原子である。
【0174】
一の態様において、Z3は2価の有機基である。
【0175】
好ましい態様において、Z3は、シロキサン結合を含まない。
【0176】
Z3は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0177】
好ましい態様において、Z3は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8”-である。Z3がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0178】
別の好ましい態様において、上記Z3は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z3は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z3は、-CH2CH2-であり得る。
【0179】
R34は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基である。
【0180】
R34は、好ましくは、それぞれ独立して、加水分解性基である。
【0181】
R35は、それぞれ独立して、1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0182】
R35において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0183】
上記式中、n2は、(SiR34
n2R35
3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、0~3の整数である。ただし、式(S4)の末端部分においては、n2が1~3である(SiR34
n2R35
3-n2)単位が少なくとも2つ存在する。換言すれば、式(S4)の末端部分において、水酸基又は加水分解性基が結合したSi原子が少なくとも2つ存在する。
【0184】
n2は、(SiR34
n2R35
3-n2)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0185】
上記R33’は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0186】
上記R33’において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2(式中、sは、1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0187】
一の態様において、R33’は、水酸基である。
【0188】
別の態様において、R33’は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0189】
上記q2’は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、上記r2’は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、q2’とr2’の合計は、(CR32’
q2’R33’
r2’)単位において、3である。
【0190】
q2’は、(CR32’
q2’R33’
r2’)単位毎にそれぞれ独立して、好ましくは1~3の整数であり、より好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0191】
R32は、それぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。かかる-Z3-SiR34
n2R35
3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0192】
R33は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0193】
R33において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2-H(式中、sは、それぞれ独立して1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0194】
一の態様において、R33は、水酸基である。
【0195】
別の態様において、R33は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0196】
p2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、q2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、r2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、p2、q2及びr2の合計は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位において、3である。
【0197】
一の態様において、p2は、0である。
【0198】
一の態様において、p2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数、2~3の整数、又は3であってもよい。好ましい態様において、p2は、3である。
【0199】
一の態様において、q2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、より好ましくは3である。
【0200】
一の態様において、p2は0であり、q2は、(CR31
p2R32
q2R33
r2)単位毎にそれぞれ独立して、1~3の整数であり、好ましくは2~3の整数、さらに好ましくは3である。
【0201】
上記Re1は、それぞれ独立して、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2である。かかる-Z3-SiR34
n2R35
3-n2は、上記R32’における記載と同意義である。
【0202】
上記Rf1は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。かかる1価の有機基は、上記加水分解性基を除く1価の有機基である。
【0203】
上記Rf1において、1価の有機基は、好ましくはC1-20アルキル基又は-(CsH2s)t1-(O-CsH2s)t2-H(式中、sは、それぞれ独立して1~6の整数、好ましくは2~4の整数であり、t1は1又は0、好ましくは0であり、t2は、1~20の整数、好ましくは2~10の整数、より好ましくは2~6の整数である。)であり、より好ましくはC1-20アルキル基、さらに好ましくはC1-6アルキル基、特に好ましくはメチル基である。
【0204】
一の態様において、Rf1は、水酸基である。
【0205】
別の態様において、Rf1は、1価の有機基、好ましくはC1-20アルキル基であり、より好ましくはC1-6アルキル基である。
【0206】
上記k2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、l2は、それぞれ独立して、0~3の整数であり、m2は、それぞれ独立して、0~3の整数である。尚、k2、l2及びm2の合計は、(CRd1
k2Re1
l2Rf1
m2)単位において、3である。
【0207】
一の態様において、n2が1~3、好ましくは2又は3、より好ましくは3である(SiR34
n2R35
3-n2)単位は、式(S4)の各末端部分において、2個以上、例えば2~27個、好ましくは2~9個、より好ましくは2~6個、さらに好ましくは2~3個、特に好ましくは3個存在する。
【0208】
好ましい態様において、式(S4)において、R32’が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32’において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0209】
好ましい態様において、式(S4)において、R32が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのR32において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0210】
好ましい態様において、式(S4)において、Re1が存在する場合、少なくとも1つの、好ましくは全てのRa1において、n2は、1~3の整数であり、好ましくは2又は3、より好ましくは3である。
【0211】
好ましい態様において、式(S4)において、k2は0であり、l2は2又は3、好ましくは3であり、n2は、2又は3、好ましくは3である。
【0212】
上記Rg1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1、-Z4-SiRa1
k1Rb1
l1Rc1
m1、-Z4-CRd1
k2Re1
l2Rf1
m2である。ここに、R11、R12、Ra1、Rb2、Rc1、Rd1、Re1、Rf1、n1、k1、l1、m1、k2、l2、及びm2は、上記と同意義である。
【0213】
好ましい態様において、Rg1及びRh1は、それぞれ独立して、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1である。
【0214】
上記Z4は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。尚、以下Z4として記載する構造は、右側が(SiR11
n1R12
3-n1)に結合する。
【0215】
一の態様において、Z4は酸素原子である。
【0216】
一の態様において、Z4は2価の有機基である。
【0217】
好ましい態様において、Z4は、シロキサン結合を含まない。
【0218】
上記Z4は、好ましくは、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)である。かかるC1-6アルキレン基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖である。これらの基は、例えば、フッ素原子、C1-6アルキル基、C2-6アルケニル基、及びC2-6アルキニル基から選択される1個又はそれ以上の置換基により置換されていてもよいが、好ましくは非置換である。
【0219】
好ましい態様において、Z4は、C1-6アルキレン基又は-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-、好ましくは-フェニレン-(CH2)z8”-である。Z4がかかる基である場合、光耐性、特に紫外線耐性がより高くなり得る。
【0220】
別の好ましい態様において、上記Z4は、C1-3アルキレン基である。一の態様において、Z4は、-CH2CH2CH2-であり得る。別の態様において、Z4は、-CH2CH2-であり得る。
【0221】
好ましい態様において、式(S1)、(S2)、(S3)、(S4)及び(S5)は、シロキサン結合を含まない。
【0222】
一の態様において、RSiは、式(S3)、(S4)又は(S5)で表される基である。
【0223】
一の態様において、RSiは、式(S3)、又は(S4)で表される基である。
【0224】
一の態様において、RSiは、式(S4)、又は(S5)で表される基である。
【0225】
一の態様において、RSiは、式(S1)で表される基である。好ましい態様において、式(S1)は、式(S1-b)で表される基である。好ましい態様において、式中、R13は、水素原子であり、X11は、単結合、又は-R28-Ox-R29-(式中、R28及びR29は、それぞれ独立して、単結合又はC1-20アルキレン基であり、xは0又は1である。)であり、n1は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0226】
一の態様において、RSiは、式(S2)で表される基である。好ましい態様において、式(S2)は、-SiR11
2R12、又は-SiR11
3である。
【0227】
一の態様において、RSiは、式(S3)で表される基である。好ましい態様において、式(S3)は、-SiRa1
2Rc1、又は-SiRa1
3であり、Ra1は、-Z1-SiR22
q1R23
r1であり、Z1は、C1-6アルキレン基、-(CH2)z1-O-(CH2)z2-(式中、z1は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z2は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、又は、-(CH2)z3-フェニレン-(CH2)z4-(式中、z3は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z4は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、好ましくはC1-6アルキレン基であり、q1は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0228】
一の態様において、RSiは、式(S4)で表される基である。好ましい態様において、式(S4)は、-CRe1
2Rf1、又は-CRe1
3であり、Re1は、-Z3-SiR34
n2R35
3-n2であり、Z3は、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、好ましくはC1-6アルキレン基であり、n2は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0229】
一の態様において、RSiは、式(S5)で表される基である。好ましい態様において、Rg1及びRh1は、-Z4-SiR11
n1R12
3-n1であり、Z4は、C1-6アルキレン基、-(CH2)z5”-O-(CH2)z6”-(式中、z5”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z6”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)又は、-(CH2)z7”-フェニレン-(CH2)z8”-(式中、z7”は、0~6の整数、例えば1~6の整数であり、z8”は、0~6の整数、例えば1~6の整数である)、好ましくはC1-6アルキレン基であり、n1は1~3、好ましくは2~3、さらに好ましくは3である。
【0230】
上記式(1)で表されるフッ素原子含有シラン化合物は、特に限定されるものではないが、1×102~1×105の数平均分子量を有し得る。上記式(1)で表されるフッ素原子含有シラン化合物は、好ましくは100~30,000、より好ましくは100~10,000の数平均分子量を有することが、摩擦耐久性の観点から好ましい。なお、かかる「数平均分子量」は、1H-NMRにより測定される値とする。
【0231】
式(1)で表されるフッ素原子含有シラン化合物としては、例えば、以下の構造のものを挙げることができる。
【化15】
【0232】
A1、A2、γ11、γ12は上記と同意義である。好ましくは、A1
γ11A2
γ12C-はHF2C-である。
R53は、水素原子又は1価の有機基である。例えば、水素原子、メチル基などが挙げられる。
RSiは上記と同意義である。
【0233】
式(T1)において、A1
γ11A2
γ12C-Rk11-はRf1に、-C(=O)NR53-Rk12-はXAに、それぞれ該当する。
Rk11は、単結合又はC1-9アルキレン基であり、例えば、単結合である。
Rk12は、単結合又はC1-30アルキレン基であり、例えば、C1-10アルキレン基である。
【0234】
式(T2)において、A1
γ11A2
γ12C-Rk21-はRf1-に、-C(=O)NR53-Rk22-は-XA-に、それぞれ該当する。
Rk21は、単結合又はC10-200アルキレン基であり、例えば、C10-30アルキレン基である。
Rk22は、単結合又はC1-200アルキレン基であり、例えばC1-10アルキレン基である。
【0235】
式(T3)において、A1
γ11A2
γ12C-[(CH2)g1-SiRs
2O-(SiRs
2O)n11-SiRs
2-(CH2)g1]-はRf1-に、-C(=O)NR53-Rk33-は-XA-に、それぞれ該当する。
g1は、それぞれ独立して、0~30の整数である。
Rk33は、単結合又はC1-200アルキレン基であり、例えばC1-10アルキレン基である。
但し、炭素数とg1の合計は0~200である。
Rs、n11は上記と同意義である。
【0236】
式(T4)において、A1
γ11A2
γ12C-(Rk41)k41-(ORk42)k42-はRf1に、-C(=O)NR53-Rk43-はXAに、それぞれ該当する。
Rk41及びRk42は、単結合又はアルキレン基である。
k41は0又は1である。
k42は0~150の整数である。
但し、-(Rk41)k41-(ORk42)k42-に含まれる炭素原子数は、1~150の整数である。
Rk43は、単結合又はC1-20アルキレン基であり、例えば、C1-10アルキレン基である。
Rk41は単結合又はC1-20アルキレン基であり、例えばメチレン基、エチレン基であり、k41は1であり、Rk42はC1-6アルキレン基であり、例えばエチレン基であり、k42は1~50の整数である。
【0237】
式(T5)において、A1
γ11A2
γ12C-Rk51-はRf1に、-OC(=O)NR53-Rk52-はXAに、それぞれ該当する。
Rk51は、単結合又はC1-200アルキレン基であり、例えば、単結合又はC1-10アルキレン基である。
Rk52は、単結合又はC1-200アルキレン基であり、例えば、C10-30アルキレン基である。
【0238】
式(T6)において、A1
γ11A2
γ12C-Rk61-はRf1に該当する。
Rk61は、C1-200アルキレン基であり、例えば、C1-30アルキレン基である。
【0239】
式(T7)において、A1
γ11A2
γ12C-Rk71-O-Rk72-はRf1に該当する。
Rk71及びRk72は、それぞれ独立して、単結合又はC1-200アルキレン基である。但し、Rk71とRk72との合計炭素原子数は0~200の整数である。例えば、Rk71及びRk72は、それぞれ独立して、単結合又はC1-30アルキレン基である。
【0240】
式(1)で表されるフッ素原子含有シラン化合物の具体例としては、例えば、以下の構造のものを挙げることができる。
【化16】
【0241】
式(1)で表されるフッ素原子含有シラン化合物の別の具体例としては、例えば、以下の構造のものを挙げることができる。下記式中、nは1以上が好ましく、4以上がより好ましく、8以上が特に好ましい。また、nは50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下が特に好ましい。さらに、nは1以上50以下が好ましく、4以上40以下がより好ましく、8以上30以下が特に好ましい。
【化17】
【0242】
式(1)で表されるフッ素原子含有シラン化合物のさらに別の具体例としては、例えば、以下の構造のものを挙げることができる。下記式中、nは1以上が好ましく、4以上がより好ましく、8以上が特に好ましい。また、nは50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下が特に好ましい。さらに、nは1以上50以下が好ましく、4以上40以下がより好ましく、8以上30以下が特に好ましい。
【化18】
【0243】
式(1)で表されるフッ素原子含有シラン化合物のさらに別の具体例としては、例えば、以下の構造のものを挙げることができる。下記式中、nは0以上が好ましく、3以上がより好ましく、8以上が特に好ましい。また、nは50以下が好ましく、40以下がより好ましく、30以下が特に好ましい。さらに、nは0以上50以下が好ましく、3以上40以下がより好ましく、8以上30以下が特に好ましい。
【化19】
【0244】
[製造方法]
以下、本開示のフッ素原子含有シラン化合物の製造方法を説明する。なお、本開示のフッ素原子含有シラン化合物の製造方法は、以下の方法に限定されない。また、A1
γ11A2
γ12C-としてHF2C-又はH2FC-を用いている場合があるが、特にこの構造に限定されない。
【0245】
A1
γ11A2
γ12C-を含む基、例えば、HF2C-(ジフルオロメチル基)又はH2FC-(フルオロメチル基)を含む基の製造方法としては、HF2C-、又はH2FC-を有する化合物から誘導する方法と、官能基をフッ素化して導入する方法とがある。
【0246】
(製造方法1)
本製造方法は、以下の工程を含む。
工程(I):化合物(11):A
1
γ11A
2
γ12C-R
j11-NH
2を原料として用い、イソシアネート化合物(12):O=C=N-R
j12-R
Siと混合し、フッ素原子含有シラン化合物(13)を製造する。
【化20】
【0247】
Rj11は、単結合又はアルキレン基であり、例えば、C1-30アルキレン基、具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、へキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基、ノナデシレン基、エイコサデシレン基である。
化合物(11)としては、具体的にはジフルオロメチルアミン、ジフルオロエチルアミン、ジフルオロプロピルアミン、モノフルオロメチルアミン、モノフルオロエチルアミン、モノフルオロプロピルアミンなどを挙げることができる。
Rj12は、単結合又はアルキレン基であり、例えば、アルキレン基、具体的にはC1-30アルキレン基である。
イソシアネート化合物(12)としては、具体的にはイソシアン酸3-(トリメトキシシリル)プロピルなどを挙げることができる。
RSiは、上記と同意義である。例えば、RSiは式(S2)で表される。
【0248】
上記反応は、溶媒中で行い得る。上記溶媒は、化合物(11)~化合物(13)を溶解できるものであることが好ましい。上記溶媒は、1種のみで用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0249】
上記溶媒は、例えば、非フッ素系溶媒、又は、フッ素系溶媒である。
【0250】
非フッ素系溶媒としては、例えば、S原子含有溶媒、アミド系溶媒、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、含ハロゲン系溶媒、炭化水素系溶媒を挙げることができる。
【0251】
S原子含有溶媒としては、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ジメチルスルフィド、二硫化炭素等を挙げることができる。
アミド系溶媒としては、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等を挙げることができる。
エステル系溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等を挙げることができる。
ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等を挙げることができる。
エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコール、モノグリム、ジグライム等を挙げることができる。
含ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム等を挙げることができる。
炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン等を挙げることができる。
【0252】
フッ素系溶媒は、1以上のフッ素原子を含む溶媒である。フッ素系溶媒としては、例えば、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン等の、炭化水素の水素原子の少なくとも1つがフッ素原子により置換された化合物;ハイドロフルオロエーテル等を挙げることができる。ここで、炭化水素とは、炭素原子と水素原子のみを含む化合物を示す。
【0253】
ハイドロフルオロカーボンとしては、例えば、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、具体的には1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン(m-XHF)、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6-トリデカフルオロオクタン、C6F13CH2CH3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H)等を挙げることができる。
【0254】
ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、例えば、HCFC-225(例えば、AGC株式会社製のアサヒクリンAK-225)、HFO-1233zd(Z)(例えば、セントラル硝子株式会社製のセレフィン1233Z)等を挙げることができる。
【0255】
パーフルオロカーボンとしては、例えば、パーフルオロヘキサン、パーフルオロメチルシクロヘキサン、パーフルオロ-1,3-ジメチルシクロヘキサン、パーフルオロベンゼン等を挙げることができる。
【0256】
ハイドロフルオロエーテルとしては、例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)等のアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基及びアルキル基は、直鎖、又は、分枝状であってよい);CF3CH2OCF2CHF2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000)等を挙げることができる。
【0257】
フッ素系溶媒は、上記列挙のなかではm-XHF、HFE7100、HFE7200、HFE7300、AC-6000、パーフルオロヘキサン、及び、パーフロベンゼンが好ましい。
【0258】
溶媒は、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、エチレングリコール、ジクロロメタン、クロロホルム、ベンゼン、トルエン、及び1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、及び1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0259】
上記反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は、0~100℃、0~50℃、0~30℃であってもよい。
【0260】
(製造方法2)
本製造方法では、カルボニル基(-C(=O)-)含有化合物に、オレフィン(-CH=CH2)含有アミン化合物を反応させることにより、オレフィン含有アミド化合物を製造し、このオレフィン含有アミド化合物から、本開示のフッ素原子含有シラン化合物を合成できる。例えば、末端にオレフィン含有アミド化合物に下記式:
HSiRj27
m3Rj28
3-m3
[式中、
Rj27は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
Rj28は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
m3は、1~3である。]
で表される化合物と反応させることにより、フッ素原子含有シラン化合物を得ることができる。上記1価の有機基は、加水分解性基を含まない。
【0261】
オレフィン含有アミン化合物は、H2N-と-CH=CH2とを有する化合物であり、例えば、H2N(CH2)x31Q((CH2)x32CH=CH2)x33Rx3
x34(式中:x31及びx32は、それぞれ、0~6の整数、x33は1以上の整数、x34は0以上の整数、x33及びx34の合計はQの価数-1、Qは、N、Si又はC、Rx3は水素原子、水酸基、又は1価の有機基)である。
オレフィン含有アミン化合物としては、例えば、アリルアミン、ジアリルアミン、2-アリルペント-4-エン-1-アミン(H2NCH2CH(CH2CH=CH2)2)、2,2-ジアリルペント-4-エン-1-アミン(H2N-CH2C(CH2CH=CH2)3)などが挙げられる。
【0262】
カルボニル基含有化合物は、A
1
γ11A
2
γ12C-と、C(=O)基とを含む化合物である。カルボニル基含有化合物としては、後述する合成方法1、3~6で得られた化合物、又は、式(21):
【化21】
で表される化合物を挙げることができる。
【0263】
式(21)において、Rj13は、単結合又はアルキレン基であり、例えば単結合であり;Rj14は、水酸基、フッ素原子、塩素原子、又は-O-低級アルキル基(即ち、アルコキシド基)であり、例えば、水素原子、メトキシド基、エトキシド基、具体的には水素原子又はメトキシド基である。
式(21)の化合物としては、具体的にはジフルオロ酢酸、ジフルオロ酢酸メチル、ジフルオロ酢酸エチル、モノフルオロ酢酸、モノフルオロ酢酸メチル、モノフルオロ酢酸エチルなどを挙げることができる。
【0264】
カルボニル基含有化合物が酸クロライド(C(=O)Cl)を有する場合には、トリアルキルアミンと反応させることにより、オレフィン含有アミド化合物を得ることができる。トリアルキルアミンとしては、例えばトリエチルアミンなどを挙げることができる。
【0265】
カルボニル基含有化合物がカルボン酸を有する場合には、縮合剤と反応させることにより、オレフィン含有アミド化合物を得ることができる。
縮合剤としては、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド(EDC)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC・HCl)、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドテトラフルオロボラート(TATU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドテトラフルオロボラート(TBTU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロホスファート(COMU)、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(HOTU)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBOP)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスファート(BOP)、ブロモトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスファート(PyBroP)、ジフェニルホスホリルアジド(DPPA)、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール(HOAt)を用いることが好ましく、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールを用いることが好ましい。更に、触媒として4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)などを添加してもよい。
【0266】
カルボニル基含有化合物がエステルを有する場合には、塩基存在下で反応させることにより、オレフィン含有アミド化合物を得ることができる。
塩基としては、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)、1,2,4-トリアゾール,1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、ナトリウムメトキシド、ナトリウムtert-ブトキシドを用いることが好ましく、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンを用いることがより好ましい。
【0267】
上記反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は、0~150℃、0~100℃、0~50℃であってもよい。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができる。好ましくは、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランである。また、反応は無溶媒で実施してもよい。
【0268】
(製造方法3)
本製造方法では、オレフィン基含有化合物を原料として用い、フッ素原子含有シラン化合物を製造する。
オレフィン基含有化合物は、A1
γ11A2
γ12C-とオレフィン基(-CH=CH2)とを有する化合物である。オレフィン基含有化合物としては、後述する合成方法2~6で得られる化合物を挙げることができる。
【0269】
例えば、オレフィン基に、HSiM
3(Mは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又はC
1-6アルコキシ基)を反応させ、更に得られた化合物に、
式:Hal-J-CH=CH
2(式中、Jは、Mg、Cu、Pd又はZnを表し、Halはハロゲン原子を表す。)
で表される化合物、及び、所望により
式:R
c1
h’L(式中、R
c1は上記と同意義であり、Lは、R
c1と結合可能な基を表し、h’は1~3の整数である。)
で表される化合物と反応させて、以下の化合物:
【化22】
(-R
j21-CH
2CH
2-は、X
Bに該当する。例えば、-R
j21-CH
2CH
2-は、アルキレン基、例えば、C
1-30アルキレン基、具体的にはC
10-25アルキレン基である。m1は上記と同意義であり、m1とk’の合計は3である)を得ること;及び
上記化合物を、HSiM
3(式中、Mは、それぞれ独立して、ハロゲン原子又はC
1-6アルコキシ基である)、及び、所望により
式:R
23
i’L’(式中、R
23は上記と同意義であり、L’は、R
23と結合可能な基を表し、i’は1~3の整数である。)
で表される化合物、及び、所望により
式:R
24
j’L”(式中、R
24は上記と同意義であり、L”は、R
24と結合可能な基を表し、j’は1~3の整数である。)
で表される化合物と反応させること、
を含む方法により、式:
A
1
γ11A
2
γ12C-R
j22-R
Si
(R
j22は、2価の有機基であり、-R
j21-CH
2CH
2-に該当する。R
Siは上記と同意義である。)
を製造することができる。なお、上記記載は他のオレフィン基含有化合物にも適用できる。
【0270】
(製造方法4)
本製造方法では、カルボニル基含有化合物にアミン含有シラン化合物を反応させることにより、フッ素原子含有シラン化合物を製造する。
【0271】
カルボニル基含有化合物は、A
1
γ11A
2
γ12C-とC(=O)とを含む化合物である。カルボニル基含有化合物としては、後述する合成方法1、3~6で得られた化合物、又は、式(21):
【化23】
で表される化合物を挙げることができる。例えば、A
1
γ11A
2
γ12C-はHF
2C-である。R
j13及びR
j14は上記と同意義である。
【0272】
アミン含有シラン化合物は、H2N-基とRSi基とを有する化合物である。アミン含有シラン化合物としては、例えば、H2N-Rj23-RSiを挙げることができ、具体的にはアミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。上記Rj23は、アルキレン基、例えば、C1-4アルキレン基、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基であり;上記RSiは、上記と同意義であり、例えば、RSiは式(S2)で表される。
【0273】
フッ素原子含有シラン化合物は、例えば、A1
γ11A2
γ12C-Rj24-C(=O)NHRj23-RSiである。上記A1
γ11A2
γ12C-Rj24-は、Rf1-に該当する。Rj24は、アルキレン基、例えば、C1-4アルキレン基、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基である。
【0274】
反応温度は0℃~150℃が好ましく、20℃~100℃がより好ましい。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができ、好ましくはトルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノールを用いることができる。
【0275】
(製造方法5)
本製造方法では、オレフィン基含有化合物を反応させることにより、フッ素原子含有シラン化合物を製造する。
具体的には、オレフィン基含有化合物に下記式:
HSiRj25
m3Rj26
3-m3
[式中、
Rj25は、それぞれ独立して、水酸基又は加水分解性基であり、
Rj26は、それぞれ独立して、1価の有機基であり、
m3は、1~3である。]
で表される化合物を反応させることにより、フッ素原子含有シラン化合物を得ることができる。なお、上記記載は他のオレフィン基含有化合物にも適用できる。
【0276】
オレフィン基含有化合物は、A1
γ11A2
γ12C-とオレフィン基とを有する化合物である。オレフィン基含有化合物としては、後述する合成方法2~6で得られた化合物を挙げることができる。
【0277】
反応温度は-20℃~150℃が好ましく、0℃~100℃がより好ましい。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができ、好ましくはトルエン、ジクロロメタン、クロロホルム、メタノール、エタノール、ジエチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテルを用いることができる。
【0278】
(合成方法1)
本方法では、A1
γ11A2
γ12C-を含む基と水酸基とを有する化合物(31):A1
γ11A2
γ12C-Rj33-OHを原料として用い、カルボニル基含有化合物を合成する。
A1
γ11A2
γ12C-を含む基は、例えば、HF2C-を含む。
Rj33は、アルキレン基、例えば、C1-30アルキレン基である。
化合物(31)としては、具体的には、ジフルオロエタノール、ジフルオロプロパノール、ジフルオロブタノール、モノフルオロエタノール、モノフルオロプロパノール、モノフルオロブタノールなどを挙げることができる。
【0279】
化合物(31)の水酸基を、常法により-OTf(Tfはトリフルオロメチルスルホニル基)へと変換することで、化合物(32):A1
γ11A2
γ12C-Rj33-OTfが得られる。
【0280】
本方法は、以下の工程(I’)を含む。
(I’):上記化合物(32)と反応基を有する化合物(33)とを混合し、カルボニル基含有化合物(34)を得る。
【化24】
【0281】
ここで、反応基としては、水酸基、カルボキシル基、Cl、F、カルボキシル基をエステル化したエステル基を挙げることができる。
反応基を有する化合物(33)としては、具体的には、9-ヒドロキシ-4,7-ジオキサノナン酸tert-ブチル、12-ヒドロキシ-4,7,10-トリオキサドデカン酸 tert-ブチル、1-ヒドロキシ-3,6,9,12-テトラオキサペンタデカン-15-酸 tert-ブチル等の水酸基を末端に有する化合物;10-ヒドロキシデカン酸、11-ヒドロキシウンデカン酸、12-ヒドロキシドデカン酸、13-ヒドロキシトリデカン酸、14-ヒドロキシテトラデカン酸、15-ヒドロキシペンタデカン酸、16-ヒドロキシヘキサデカン酸、17-ヒドロキシヘプタデカン酸、18-ヒドロキシオクタデカン酸、19-ヒドロキシノナデカン酸、20-ヒドロキシエイコサン酸、21-ヒドロキシヘンエイコサン酸、22-ヒドロキシドコサン酸、23-ヒドロキシトリコサン酸、24-ヒドロキシテトラコサン酸、25-ヒドロキシペンタコサン酸、30-ヒドロキシトリアコンタン酸等のカルボキシル基を末端に有する化合物、及びそのメチルエステル、酸クロライドなどを挙げることができる。
【0282】
Rj31は、2価の有機基であり、例えば、ポリエーテル基を有する基又はアルキレン基、具体的には、-(Rj35O)n-Rj36-基又はC1-30アルキレン基である。
上記Rj35はC1-3アルキレン基、例えばエチレン基、上記Rj36はC1-3アルキレン基、例えばエチレン基である。
上記nは、2~150の整数、例えば、2~50の整数である。
Rj32は、低級アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基であり、具体的にはメチル基、tert-ブチル基である。
【0283】
上記反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は、-80~200℃、例えば-50~100℃、具体的には-20~50℃で行い得る。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができる。
【0284】
(合成方法2)
本方法では、A1
γ11A2
γ12C-を含む基と水酸基とを有する化合物(31):A1
γ11A2
γ12C-Rj33-OHを原料として用い、オレフィン含有化合物を合成する。各符号は上記と同意義である。
【0285】
化合物(31)の水酸基を、常法により-OTf(Tfはトリフルオロメチルスルホニル基)へと変換し、化合物(32):A1
γ11A2
γ12C-Rj33-OTfを製造する。
【0286】
本方法は、以下の工程(I’)を含む。
(I’):上記化合物(32)と反応基を有する化合物(35):HO-R
j31-CH=CH
2とを混合し、オレフィン含有化合物(36)を得る。
【化25】
【0287】
Rj33及びRj31は上記と同意義である。
反応温度、及び溶媒は、製造方法2と同意義である。
【0288】
(合成方法3)
本方法では、A1
γ11A2
γ12C-を含む基とトリアルキルシリル基とが結合した化合物(41):A1
γ11A2
γ12C-SiRj40
3を原料として用いる。A1
γ11A2
γ12C-を含む基は、例えば、HF2C-を含む。
Rj40は、それぞれ独立して、低級アルキル基であり、例えば、C1-3アルキル基である。
化合物(41)としては、例えば、ジフルオロメチルトリメチルシラン等を挙げることができる。
【0289】
化合物(41)と脱離基を有する化合物(42):X-Rj41-Zとを、金属触媒存在下において反応させ、A1
γ11A2
γ12C-Rj41-Zを得る。
Rj41は、アルキレン基、例えば、C1-30アルキレン基、具体的にはC10-25アルキレン基である。
Zは、反応基である。例えば、Zは、-C(=O)ORj42(Rj42は例えば水素原子、メチル基)、又は-CH=CH2である。即ち、上記反応により、末端にカルボニル基含有化合物(43)又はオレフィンを含有する化合物(43’)を合成する。
Xは、Cl、Br、I、OTs(ここで、Tsはp-トルエンスルホニル基である)、OMs(ここで、Msはメシル基である)であり、好ましくはBr、Iである。
【0290】
上記金属触媒は、Pd、Cu、Ni、Pt、及びAgから選ばれる少なくとも1つ、好ましくはPd及びCuから選ばれる少なくとも1つである。該金属触媒は、金属の単体であってもよいし、金属塩であってもよいし、配位子を有する錯体であってもよい。
【0291】
一の態様において、金属触媒として、金属の単体を用いる。
【0292】
一の態様において、金属触媒として、金属塩を用いる。好ましくは塩化銅(I)、塩化銅(II)、臭化銅(I)、臭化銅(II)、ヨウ化銅(I)、ヨウ化銅(II)、塩化銀(I)、臭化銀(I)、ヨウ化銀(I)であり、より好ましくは塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)である。
【0293】
一の態様において、金属触媒として、配位子を有する錯体を用いる。該配位子は、ホスフィン原子含有配位子、オレフィン基含有配位子、窒素原子含有配位子であることが好ましい。
上記配位子としては、例えば、トリフェニルホスフィン(即ち、PPh3)、トリt-ブチルホスフィン(即ち、P(t-Bu)3)、トリn-ブチルホスフィン(即ち、P(n-Bu)3)、トリ(オルトトリル)ホスフィン(即ち、P(o-Tol)3)、(C6F5)3P(即ち、Tpfpp)、(C6F5)2PCH2CH2P(C5F5)2)(即ち、Dfppe)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(即ち、dppe)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(即ち、dppp)、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(即ち、dppf)、(S)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(即ち、(S)-BINAP)、1,5-シクロオクタジエン(即ち、COD)、ビピリジン(即ち、bpy)、フェナントロリン(即ち、phen)又はその塩を挙げることができる。
【0294】
上記金属触媒としては、例えば、Pd単体、Pd(dba)2、Pd(dba)3、Cu単体、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)等を挙げるこができ、好ましくは、上記金属触媒は、Pd(dba)2、Pd(dba)3、又はヨウ化銅(I)である。ここで、「dba」は、ジベンジリデンアセトンを意味する。
【0295】
金属触媒は、脱離基を有する化合物(42)に対して、1モルに対して、例えば、0.01モル以上、0.1モル以上、0.2モル以上、0.5モル以上、1モル以上、2モル以上、3モル以上含まれ得る。金属触媒は、上記化合物(42)1モルに対して、例えば、10モル以下、8モル以下含まれ得る。金属触媒は、例えば、上記化合物(42)1モルに対して、例えば、0.01~10モル、0.05~10モル、1~10モル、2~10モル、又は3~8モル含まれてもよい。
【0296】
一の態様において、金属触媒がヨウ化銅(I)である場合、該金属触媒は、化合物(42)に対して、0.1~10モル、又は0.5~2モル含まれてもよい。
【0297】
一の態様において、金属触媒がPd(dba)2である場合、該金属触媒は、化合物(42)に対して、0.01~1モル、又は0.05~0.5モル含まれてもよい。
【0298】
上記金属触媒は、反応時に、金属触媒の前駆物質に配位子を導入させたものであってもよい。金属触媒の前駆物質としては、例えば、Pd、Pt、Cu、Ag、Zn、及びMgよりなる群より選ばれる少なくとも1つを有するものを挙げることができる。配位子としてはトリフェニルホスフィン、トリt-ブチルホスフィン、トリn-ブチルホスフィン、トリ(オルトトリル)ホスフィン、(C6F5)3P、(C6F5)2PCH2CH2P(C5F5)2)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、(S)-2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、1,5-シクロオクタジエン、ビピリジン、フェナントロリン等を挙げることができる。
【0299】
上記反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は、0~200℃、0~150℃、20~100℃であってもよい。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができる。好ましくは、ジメチルスルホキシド、スルホラン、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドを用いることができる。
【0300】
(合成方法4)
本方法では、A1
γ11A2
γ12C-を含む基とトリアルキルシリル基とが結合した化合物(51)を原料として用いる。A1
γ11A2
γ12C-は、例えば、BrF2C-である。上記化合物としては、例えばブロモフルオロメチルトリメチルシラン(BrF2C-TMS)が挙げられる。
【0301】
化合物(51)と、ヘテロ原子を有する求核剤(52):
Nu-H(ここで、Nuは求核剤であり、例えば、Rj50O-、Rj50S-、Rj50
2N-である。Rj50は、それぞれ独立して、C1-3アルキル基である。)
とを塩基存在下で反応させることにより、末端にカルボニル基を有する化合物(カルボニル基含有化合物)又は末端にオレフィンを含有する化合物(オレフィン基含有化合物)へと誘導することができる。
塩基としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン等の有機アミン類などを挙げることができる。塩基は水に溶解させた水溶液として使用しても良い。塩基としては水酸化ナトリウム、水酸化カリウムを用いることが好ましい。
【0302】
上記反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は、-20~100℃、-10~80℃、-10~50℃であってもよい。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができる。溶媒は、好ましくは、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドである。
【0303】
(合成方法5)
本方法では、ホルミル基を有する化合物のフッ素化を行うことでHF2C-を形成し、式:
HCF2-Rj60-Aj61
[式中:
上記Rj60は、2価の有機基であり、例えばC1-20アルキレン基であり;
上記Aj61は、-COOH、-COORj62、-COCl、-CH=CH2であり;
上記Rj62は、低級アルキル基、例えば、C1-3アルキル基である。]
を合成する。
上記反応により、カルボニル基含有化合物又はオレフィン基含有化合物を合成できる。
ホルミル基を有する化合物としては、H(C=O)-Rj60-Aj61を挙げることができる。
【0304】
上記フッ素化剤としては、三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄(DAST)、ビス(2-メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド(Deoxofluor(登録商標))、モルホリノサルファートリフルオリド(MOST)、2,2-ジフルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリジン(DFI)、2-クロロ-N,N-ジエチル-1,1,2-トリフルオロエタンアミン(Yarovenko試薬)、N,N-ジエチル-α,α-ジフルオロ-3-メチルベンゼンメタンアミン(DFMBA)、(ジエチルアミノ)ジフルオロスルホニウム テトラフルオロボレート(XtalFluor-E(登録商標))、スルホニウムジフルオロ-4-モルホリニル-テトラフルオロボレート(XtalFluor-M(登録商標))などが挙げられる。
【0305】
一の態様において、フッ素化剤としてDASTを用いることが好ましい。DASTを用いることにより、選択的にホルミル基のジフルオロメチル化反応を進行させることができる。
【0306】
一の態様において、フッ素化剤としてDeoxofluor、又はMOSTを用いることが好ましい。Deoxofluor、又はMOSTを用いることで、加熱条件でのジフルオロメチル化反応を実施することができる。
【0307】
上記反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は、-20~200℃、-10~150℃、0~10℃であってもよい。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができる。溶媒は、好ましくは、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランである。また、反応は無溶媒で実施してもよい。
【0308】
(合成方法6)
本方法では、フッ素化剤を用いて水酸基のフッ素化を行うことにより、H2FC-基又は-CFH-基を合成する。例えば、HO-Rj60-Aj61を反応させることにより、H2CF-Rj60-Aj61を、R’-CH(OH)-Rj60-Aj61を反応させることにより、R’-CFH-Rj60-Aj61を合成する。
上記Rj60は、2価の有機基であり、例えばC1-20アルキレン基である。
上記Aj61は、-COOH、-COORj62、-COCl、-CH=CH2である。
上記Rj62は、低級アルキル基、例えば、C1-3アルキル基である。
上記反応により、カルボニル基含有化合物又はオレフィン基含有化合物を合成できる。
【0309】
上記フッ素化剤としては、四フッ化硫黄(SF4)、三フッ化N,N-ジエチルアミノ硫黄(DAST)、ビス(2-メトキシエチル)アミノサルファートリフルオリド(Deoxofluor(登録商標)、モルホリノサルファートリフルオリド(MOST)、2,2-ジフルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリジン(DFI)、2-クロロ-N,N-ジエチル-1,1,2-トリフルオロエタンアミン(FAR、Yarovenko試薬)、(ジエチルアミノ)ジフルオロスルホニウム テトラフルオロボレート(XtalFluor-E(登録商標))、スルホニウム ジフルオロ-4-モルホリニル-テトラフルオロボレート(XtalFluor-M(登録商標))、ヘキサフルオロプロペン ジエチルアミン、トリエチルアミン トリハイドロフロライド、トリエチルアミン ペンタハイドロフルオライド、ピリジニウム ペンタフルオロアイオダイド-ハイドロゲンフルオライド錯体、N,N’-ジフルオロ-2,2’-ビピリジニウム ビス(テトラフルオロボレート)、4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェニルサルファー トリフルオライド(FLUOLEAD(TM))、2-クロロ-1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-1H-イミダゾール クロライド(PhenoFluor(TM))などが挙げられる。
【0310】
一の態様において、フッ素化剤として、トリエチルアミン トリハイドロフロライド、トリエチルアミン ペンタハイドロフルオライド、ピリジニウム ペンタフルオロアイオダイド-ハイドロゲンフルオライド錯体を用いることが好ましい。錯体を用いることでフッ化水素を容易に扱うことができる。
【0311】
一の態様において、フッ素化剤として、DASTを用いることが好ましい。DASTを用いることにより、比較的低温で反応を進行させることができる。
【0312】
一の態様において、フッ素化剤として、4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェニルサルファー トリフルオライド(FLUOLEAD(TM))を用いることが好ましい。4-tert-ブチル-2,6-ジメチルフェニルサルファー トリフルオライド(FLUOLEAD(TM))を用いることにより、空気中での取り扱いが容易になる。
【0313】
上記反応温度は、特に限定されない。例えば、反応温度は、-20~200℃、-10~150℃、0~10℃であってもよい。
溶媒は、製造方法1と同様のものを用いることができる。好ましくは、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランである。また、反応は無溶媒で実施してもよい。
【0314】
なお、末端にフルオロメチル基、又は、ジフルオロメチル基を有する化合物は、含フッ素オレフィン化合物からも製造し得る。
含フッ素オレフィン化合物としては、例えばフルオロエチレン、1,1-ジフルオロエチレン、1,2-ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、2,3,4,4-テトラフルオロ-1-プロペンなどが挙げられる。上記のような含フッ素オレフィン化合物を重合する、ラジカル反応を行う、又は、含フッ素オレフィン化合物にアルコール等を付加することによりフルオロメチル基、又は、ジフルオロメチル基を有する化合物を得ることができる。
【0315】
[中間体]
フッ素原子含有シラン化合物の製造において生じる中間体について説明する。
【0316】
【0317】
Rf1’は、それぞれ独立して、A11
γ11A12
γ12C-、又は、CF≡を含む環状の構造である。各符号は、上記と同意義である。
XB2は、単結合、酸素原子、又は2価の有機基であり、好ましくは、(CH2)c21(CH2)c22-O-(CH2)c23、又は2価のポリシロキサン基を含む基である。
c21、c22、及びc23は、それぞれ独立して、0~200の整数である。但し、c22及びc23の合計は、0~200の整数である。
Rf1’-XB2-は、Rf1に該当する。
【0318】
R91は、水酸基、-F、-Cl、又は-O-C1-3アルキル基(具体的にはメトキシ基、エトキシ基)である。一の態様において、R91は、水酸基である。一の態様において、R91は、-Fである。一の態様において、R91は-Clである。一の態様において、R91は、-O-低級アルキル基である。
-C(=O)-は、XAに含まれる。
【0319】
式(2a)において、例えば、XB2は単結合、R91は水素原子である。別の例において、XB2は2価の有機基、R91は水素原子である
【0320】
【0321】
Rf1’は、上記と同意義である。
XB3は、(CH2)c12-O-(CH2)c13又は2価のポリシロキサン基を含む基である。
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数であり;但し、c12及びc13の合計は、0~200の整数である。
Rf1’-XB3-は、Rf1に該当する。
【0322】
XA3は、それぞれ独立して、単結合、又は、C(=O)NR53-(CH2)c14である。
R53は、水素原子、又は1価の有機基である。一の態様において、R53は、水素原子である。XA3は、XAに含まれる。
c14は、0~30の整数である。
【0323】
一の態様において、-XA3-CH2CH2-はXAである。
【0324】
【0325】
式(2c)は、式(S2)又は(S3)で表される基を含む化合物の前駆体である。
【0326】
Rf1’は、上記と同意義である。
XB4は、(CH2)c11、(CH2)c12-O-(CH2)c13又は2価のポリシロキサン基を含む基である。
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数である。但し、c12及びc13の合計は、0~200の整数である。
Rf1’-XB4-は、Rf1に該当する。
【0327】
XA4は、それぞれ独立して、単結合、又は、C(=O)NR53-(CH2)c15である。R53は上記と同意義である。c15は、0~30の整数である。XA4は、XAに該当する。
【0328】
XA5は、それぞれ独立して、単結合、又は、2価の有機基である。-XA5-CH2CH2-は、-Z1-に該当する。
R95は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基である。一の態様において、R95は、それぞれ独立して、水酸基又は1価の有機基である。但し、1価の有機基は、-XA5-CH=CH2を含まない。R95は、Rb1又はRc1に該当する。
δ3は、1~3の整数であり、k1に相当する。
【0329】
【0330】
式(2d)は、式(S4)で表される基を含む化合物の前駆体である。
【0331】
Rf1’は、上記と同意義である。
XB4は、(CH2)c11、(CH2)c12-O-(CH2)c13又は2価のポリシロキサン基を含む基である。
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数である。
Rf1’-XB4-は、Rf1に該当する。
【0332】
XA4は、上記と同意義である。XA4は、XAに該当する。
【0333】
XA6は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子、又は、2価の有機基である。-XA6-CH2CH2-はZ3に該当する。-XA5-CH2CH2-に基づいて、Re1が形成される。
R96は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は1価の有機基であり、但し、1価の有機基は、-XA6-CH=CH2を含まない。R96は、Rf1に該当する。
δ4は、1~3の整数であり、l2に該当する。
【0334】
【0335】
Rf1’は、上記と同意義である。
XB4は、(CH2)c11、(CH2)c12-O-(CH2)c13又は2価のポリシロキサン基を含む基である。
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数である。
Rf1’-XB4-は、Rf1に該当する。
【0336】
XA4は、上記と同意義である。XA4は、XAに該当する。
【0337】
R97は、それぞれ独立して、-R92-CH=CH2又は-R94-QA1(R92-CH=CH2)δ31R93
δ32で表される。
R92は、単結合、酸素原子、又は2価の有機基である。R92-CH=CH2に由来する-R92-CH2CH2-は、例えば、式(S3)のZ1、又は式(S4)のZ2又はZ3に該当する。
R94は、単結合、酸素原子、又は2価の有機基であり;
QA1は、それぞれ独立して、N、Si、又はCであり;
R93は、水素原子、水酸基、又は1価の有機基であり;
δ31及びδ32は、それぞれ独立して1以上の整数であり;
δ31とδ32との合計は、QA1の価数-1である。
【0338】
【0339】
Rf1’は上記と同意義である。
XB5は、(CH2)c11、(CH2)c12-O-(CH2)c13又は2価のポリシロキサン基を含む基で表される。
c11、c12、及びc13は、それぞれ独立して、0~200の整数である。
Rf1’-XB5-は、Rf1に該当する。
【0340】
XA7は、単結合、又はC(=O)である。
【0341】
R98は、-R92-CH=CH2又は-R94-QA1(R92-CH=CH2)δ31R93
δ32で表される。
R92は、単結合、酸素原子、又は2価の有機基である。
R94は、単結合、酸素原子、又は2価の有機基である。
QA1は、それぞれ独立して、N、Si、又はCである。
R93は、水素原子、水酸基、又は1価の有機基である。
δ31及びδ32は、それぞれ独立して1以上の整数である。
δ31とδ32との合計は、QA1の価数-1である。
【0342】
一の態様において、XA7-NR53はXAに該当する。R53は上記と同意義である。
【0343】
一の態様において、R98は、-R92-CH=CH2で表される。この場合、XA7-NR53-R98はXAに該当する。
【0344】
一の態様において、R98は、-R94-QA1(R92-CH=CH2)δ31R93
δ32で表される。この場合、XA7-NR53-R94はXAに該当する。
【0345】
【0346】
RA31は-Rf1で表され、Rf1は上記と同意義である。
【0347】
RA32は、-XA31-CH=CH2又は-XA33-QA2(XA32-CH=CH2)δ41R36
δ42で表され;
RA33は、-Rf1、-XA31-CH=CH2又は-XA33-QA2(XA32-CH=CH2)δ41R36
δ42で表される。
【0348】
XA31、XA32及びXA33は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は2価の有機基である。
【0349】
QA2は、それぞれ独立して、N、Si又はCである。
【0350】
イソシアヌル環に、XA31-CH2CH2及びXA33の少なくとも1つが結合した基は、式(1)のXAに該当する。XA32-CH2CH2は、QA2がSiの場合には式(S3)のZ1に、QA2がCの場合には式(S4)のZ3に、QA2がNの場合には式(S5)のZ4に、該当する。
【0351】
R36は、水素原子、水酸基、又は1価の有機基である。
【0352】
δ41及びδ42は、それぞれ独立して、1以上の整数である。δ41とδ42との合計は、QA2の価数-1である。
【0353】
[表面処理剤]
以下、本開示の表面処理剤について説明する。
【0354】
本開示の表面処理剤は、式(1)で表される少なくとも1種のフッ素原子含有シラン化合物を含む。
【0355】
本開示の表面処理剤は、さらに、フッ素原子含有シラン化合物の縮合体を含んでいてもよい。
【0356】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、フッ素原子含有シラン化合物、及び該フッ素原子含有シラン化合物の少なくとも一部が縮合した縮合体からなる化合物の少なくとも1つを含有する。
【0357】
本開示の表面処理剤は、溶媒、シリコーンオイルとして理解され得る(非反応性の)シリコーン化合物(以下、「シリコーンオイル」と言う)、アミン化合物、アルコール類、触媒、界面活性剤、重合禁止剤、増感剤等を含み得る。
【0358】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、R90-OHで表される化合物を含む。
R90は1価の有機基であり、好ましくはC1-20アルキル基又はC3-20アルキレン基であり、これらの基は1以上の置換基により置換されていてもよい。置換基としては、例えば、水酸基、-OR901(ここで、R901はC1-10アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、例えばメチル基)を挙げることができる。
【0359】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、R81OR82、R83
n8C6H6-n8、R84R85R86Si-(O-SiR87R88)m8-R89、及び(OSiR87R88)m9
[式中
R81~R89は、それぞれ独立して、炭素数1~10個の一価の有機基であり、
m8は、1~6の整数であり、
m9は、3~8の整数であり、
n8は、0~6の整数である。]
で表される化合物から選択される溶媒を含み得る。
【0360】
上記炭素数1~10個の一価の有機基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよく、さらに環状構造を含んでいてもよい。
【0361】
一の態様において、上記炭素数1~10個の一価の有機基は、酸素原子、窒素原子、又はハロゲン原子を含んでいてもよい。
【0362】
別の態様において、上記炭素数1~10個の一価の有機基は、ハロゲン原子を含まない。
【0363】
好ましい態様において、上記炭素数1~10個の一価の有機基は、ハロゲンにより置換されていてもよい炭化水素基、好ましくはハロゲンにより置換されていない炭化水素基である。
【0364】
一の態様において、上記炭化水素基は、直鎖である。
【0365】
別の態様において、上記炭化水素基は、分枝鎖である。
【0366】
別の態様において、上記炭化水素基は、環状構造を含む。
【0367】
一の態様において、上記溶媒は、R81OR82である。
【0368】
R81及びR82は、それぞれ独立して、好ましくは炭素数1~8の炭化水素基、より好ましくはC1-6のアルキル基、又はC5-8のシクロアルキル基であり得る。
【0369】
一の態様において、上記溶媒は、R83
n8C6H6-n8である。
【0370】
C6H6-n8は、n8価のベンゼン環である。即ち、R83
n8C6H6-n8は、n8個のR83により置換されたベンゼンである。
【0371】
R83は、それぞれ独立して、ハロゲン、又はハロゲンにより置換されていてもよいC1-6のアルキル基であり得る。
【0372】
n8は、好ましくは1~3の整数である。
【0373】
一の態様において、上記溶媒は、R84R85R86Si-(O-SiR87R88)m8-R89である。
【0374】
一の態様において、上記溶媒は、(OSiR87R88)m9である。(OSiR87R88)m9は、複数のOSiR87R88単位が環状に結合することにより形成される環状シロキサンである。
【0375】
R84~R89は、それぞれ独立して、水素原子、又はC1-6のアルキル基、好ましくはC1-6のアルキル基、より好ましくはC1-3のアルキル基、さらに好ましくはメチル基である。
【0376】
m8は、好ましくは1~6の整数、より好ましくは1~5の整数であり、さらに好ましくは1~2であ。
【0377】
m9は、好ましくは3~6の整数、より好ましくは3~5の整数である。
【0378】
一の態様において、上記溶媒は、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、又はデカメチルシクロペンタシロキサンである。
【0379】
一の態様において、上記溶媒としては、例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類;ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシロキサン類;1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン、1,2-ジクロロ-1,1,2,2-テトラフルオロエタン、ジメチルスルホキシド、1,1-ジクロロ-1,2,2,3,3-ペンタフルオロプロパン(HCFC225)、ゼオローラH、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、HFE7100、HFE7200、HFE7300、CF3CH2OH、CF3CF2CH2OH、(CF3)2CHOH等のフッ素含有溶媒等が挙げられる。あるいはこれらの2種以上の混合溶媒等が挙げられる。
【0380】
シリコーンオイルとしては、特に限定されるものではないが、例えば、以下の一般式(3):
R1a-(SiR3a
2-O)f1-SiR3a
2-R1a ・・・(3)
[式中:
R1aは、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であり、
R3aは、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であり、
f1は、2~3000である。]
で表される化合物が挙げられる。
【0381】
上記R3aは、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基である。かかる炭化水素基は、置換されていてもよい。
【0382】
R3aは、それぞれ独立して、好ましくは非置換炭化水素基、又はハロゲン原子により置換されている炭化水素基である。かかるハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。
【0383】
R3aは、それぞれ独立して、好ましくはハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基又はアリール基、より好ましくはC1-6アルキル基又はアリール基である。
【0384】
上記C1-6アルキル基は、直鎖であっても、分枝鎖であってもよいが、好ましくは直鎖
である。C1-6アルキル基は、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0385】
上記アリール基は、好ましくはフェニル基である。
【0386】
一の態様において、R3aは、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0387】
別の態様において、R3aは、フェニル基である。
【0388】
別の態様において、R3aは、メチル基又はフェニル基、好ましくはメチル基である。
【0389】
上記R1aは、それぞれ独立して、水素原子又は炭化水素基であり、上記R3aと同意義である。
【0390】
R1aは、それぞれ独立して、好ましくはハロゲン原子により置換されていてもよいC1-6アルキル基又はアリール基、より好ましくはC1-6アルキル基又はアリール基である。
【0391】
一の態様において、R1aは、それぞれ独立して、C1-6アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、より好ましくはメチル基である。
【0392】
別の態様において、R1aは、フェニル基である。
【0393】
別の態様において、R1aは、メチル基又はフェニル基、好ましくはメチル基である。
【0394】
上記f1は、2~1500である。f1は、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、例えば30以上、又は50以上であり得る。f1は、好ましくは1000以下、より好ましくは500以下、さらに好ましくは200以下、さらにより好ましくは150以下、例えば100以下、又は80以下であり得る。
【0395】
f1は、好ましくは5~1000、より好ましくは10~500、さらに好ましくは15~200、さらにより好ましくは15~150であり得る。
【0396】
別のシリコーンオイルとしては、下記(3b):
R
1a-R
S12-R
3a ・・・(3b)
で表される化合物が挙げられる。
[式中:
R
1aは、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
R
3aは、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
R
S12は、-R
S1-SiR
2
2-であり、
R
S1は、それぞれ独立して、下記式:
【化32】
(式中:
R
3は、それぞれ独立して、C
1-12アルキレン基、-R
6-O-R
6-、-R
8-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
6-R
9-R
7-R
8-、又は-R
9-R
6-R
9-R
7-R
9-R
6-R
9-であり、
R
4は、それぞれ独立して、C
1-12アルキレン基、-R
6-O-R
6-、-R
8-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
7-R
8-、-R
8-R
7-R
9-R
6-R
9-R
7-R
8-、又は-R
9-R
6-R
9-R
7-R
9-R
6-R
9-であり、
R
6は、それぞれ独立して、C
1-6アルキレン基であり、
R
7は、それぞれ独立して、置換されていてもよい、フェニレン基、又はナフチレン基であり、
R
8は、それぞれ独立して、単結合、又はC
1-6アルキレン基であり、
R
9は、それぞれ独立して、単結合、又は酸素原子であり、
R
5は、それぞれ独立して、炭化水素基であり、
x2は、0~200の整数であり、
y2は、0~200の整数であり、
z2は、0~200の整数であり、
y2+z2は、1以上であり、
x2、y2、又はz2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の存在順序は式中において任意である。)
で表される基であり、
R
2は、それぞれ独立して、炭化水素基である。
【0397】
上記シリコーンオイルは、500~100000、好ましくは1000~10000の平均分子量を有していてよい。シリコーンオイルの分子量は、GPCを用いて測定し得る。
【0398】
上記シリコーンオイルとしては、例えば-(SiR3a
2-O)f1-のf1が30以下の直鎖状又は環状のシリコーンオイルを用い得ることができる。直鎖状のシリコーンオイルは、いわゆるストレートシリコーンオイル及び変性シリコーンオイルであってよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルを、アルキル、アラルキル、ポリエーテル、高級脂肪酸エステル、フルオロアルキル、アミノ、エポキシ、カルボキシル、アルコールなどにより変性したものが挙げられる。環状のシリコーンオイルは、例えば環状ジメチルシロキサンオイルなどが挙げられる。
【0399】
上記シリコーンオイルは、本開示の表面処理剤に対して、例えば0~50質量%、好ましくは0.001~30質量%、より好ましくは0.1~5質量%含まれ得る。
【0400】
一の態様において、本開示の組成物中、かかるシリコーンオイルは、上記本開示の化合物の合計100質量部(2種以上の場合にはこれらの合計、以下も同様)に対して、例えば0~300質量部、好ましくは0~100質量部、より好ましくは0~50質量部、更に好ましくは0~10質量部で含まれ得る。
【0401】
シリコーンオイルは、表面処理層の表面滑り性を向上させるのに寄与する。
【0402】
上記アルコール類としては、例えば1個又はそれ以上のフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1~6のアルコール、例えば、メタノール、エタノール、iso-プロパノール、tert-ブタノール、CF3CH2OH、CF3CF2CH2OH、(CF3)2CHOHが挙げられる。これらのアルコール類を表面処理剤に添加することにより、表面処理剤の安定性は向上される。
【0403】
上記触媒としては、酸(例えば酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸等)、塩基(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、ジエチルアミン等)、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn、Zr、Al、B、Si、Ta、Nb、Mo、W、Cr、Hf、V等)、分子構造内に非共有電子対を有する含硫黄化合物、又は含窒素化合物(例えばスルホキシド化合物、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、リン酸アミド化合物、アミド化合物、尿素化合物)等が挙げられる。
【0404】
上記脂肪族アミン化合物としては、例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン等を挙げることができる。上記芳香族アミン化合物としては、例えば、アニリン、ピリジン等を挙げることができる。
【0405】
好ましい態様において、上記遷移金属は、M-R(式中、Mは、遷移金属原子であり、Rは加水分解性基である。)で表される遷移金属化合物として含まれる。遷移金属化合物を、遷移金属と加水分解性基とが結合した化合物とすることにより、より効率的に遷移金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性及び耐薬品性をさらに向上させることができる。
【0406】
上記加水分解性基とは、上記フッ素原子含有シラン化合物に関する加水分解性基と同様に、加水分解反応を受け得る基を意味し、すなわち、加水分解反応により、遷移金属原子から脱離し得る基を意味する。加水分解性基の例としては、-ORm、-OCORm、-O-N=CRm
2、-NRm
2、-NHRm、-NCO、ハロゲン(これら式中、Rmは、置換又は非置換のC1-4アルキル基を示す)などが挙げられる。
【0407】
好ましい態様において、上記加水分解性基とは、-ORmであり、好ましくはメトキシ又はエトキシである。加水分解性基としてアルコキシ基を用いることにより、より効率的に遷移金属原子を表面処理層に含ませることができ、表面処理層の摩擦耐久性及び耐薬品性をさらに向上させることができる。
【0408】
一の態様において、上記加水分解性基は、上記したフッ素原子含有シラン化合物に含まれる加水分解性基と同じであってもよい。フッ素原子含有シラン化合物と遷移金属化合物における加水分解性基を同じ基とすることにより、かかる加水分解性基が相互に交換された場合であっても、その影響を小さくすることができる。
【0409】
別の態様において、上記加水分解性基は、上記したフッ素原子含有シラン化合物に含まれる加水分解性基と異なっていてもよい。フッ素原子含有シラン化合物と遷移金属化合物における加水分解性基を異なるものとすることにより、加水分解の反応性を制御することができる。
【0410】
一の態様において、上記加水分解性基と、上記フッ素原子含有シラン化合物に含まれる加水分解性基は、表面処理剤中において、相互に入れ替わっていてもよい。
【0411】
好ましい態様において、上記遷移金属化合物は、Ta(ORm)5であり、好ましくはTa(OCH2CH3)5であり得る。
【0412】
上記触媒は、表面処理剤全体に対して、例えば、0.0002質量%以上含まれ得る。上記触媒は、表面処理剤全体に対して、0.02質量%以上含まれることが好ましく、0.04質量%以上含まれることがより好ましい。上記触媒は、表面処理剤全体に対して、例えば、10質量%以下含まれてもよく、特に1質量%以下含まれる。本開示の表面処理剤は、上記触媒が、上記のような濃度含むことによって、より耐久性の良好な表面処理層の形成に寄与し得る。
【0413】
上記触媒の含有量は、本開示のフッ素原子含有シラン化合物に対して0~10質量%が好ましく、0~5質量%がより好ましく、0~1質量%が特に好ましい。
【0414】
触媒は、本開示のフッ素原子含有シラン化合物の加水分解及び脱水縮合を促進し、本開示の表面処理剤により形成される層の形成を促進する。
【0415】
他の成分としては、上記以外に、例えば、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン等も挙げられる。
【0416】
本開示の表面処理剤は、上記した成分に加え、不純物として、例えばPt、Rh、Ru、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、トリフェニルホスフィン、NaCl、KCl、シランの縮合物などを微量含み得る。
【0417】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、乾燥被覆法、好ましくは真空蒸着用である。
【0418】
一の態様において、本開示の表面処理剤は、湿潤被覆法、好ましくは浸漬コーティング用である。
【0419】
本開示の表面処理剤は、多孔質物質、例えば多孔質のセラミック材料、金属繊維、例えばスチールウールを綿状に固めたものに含浸させて、ペレットとすることができる。当該ペレットは、例えば、真空蒸着に用いることができる。
【0420】
[物品]
【0421】
以下、本開示の物品について説明する。
【0422】
本開示の物品は、基材と、該基材表面に本開示の表面処理剤より形成された層(表面処理層)とを含む。
【0423】
本開示において使用可能な基材は、例えば、ガラス、樹脂(天然又は合成樹脂、例えば一般的なプラスチック材料であってよい)、金属、セラミックス、半導体(シリコン、ゲルマニウム等)、繊維(織物、不織布等)、毛皮、皮革、木材、陶磁器、石材等、建築部材等、衛生用品、任意の適切な材料で構成され得る。
【0424】
例えば、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面を構成する材料は、光学部材用材料、例えばガラス又は透明プラスチックなどであってよい。また、製造すべき物品が光学部材である場合、基材の表面(最外層)に何らかの層(又は膜)、例えばハードコート層や反射防止層などが形成されていてもよい。反射防止層には、単層反射防止層及び多層反射防止層のいずれを使用してもよい。反射防止層に使用可能な無機物の例としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti2O3、Ti2O5、Al2O3、Ta2O5、Ta3O5,Nb2O5、HfO2、Si3N4、CeO2、MgO、Y2O3、SnO2、MgF2、WO3などが挙げられる。これらの無機物は、単独で、又はこれらの2種以上を組み合わせて(例えば混合物として)使用してもよい。多層反射防止層とする場合、その最外層にはSiO2及び/又はSiOを用いることが好ましい。製造すべき物品が、タッチパネル用の光学ガラス部品である場合、透明電極、例えば酸化インジウムスズ(ITO)や酸化インジウム亜鉛などを用いた薄膜を、基材(ガラス)の表面の一部に有していてもよい。また、基材は、その具体的仕様等に応じて、絶縁層、粘着層、保護層、装飾枠層(I-CON)、霧化膜層、ハードコーティング膜層、偏光フィルム、相位差フィルム、及び液晶表示モジュールなどを有していてもよい。
【0425】
上記基材の形状は、特に限定されず、例えば、板状、フィルム、その他の形態であってよい。また、表面処理層を形成すべき基材の表面領域は、基材表面の少なくとも一部であればよく、製造すべき物品の用途及び具体的仕様等に応じて適宜決定され得る。
【0426】
一の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、水酸基を元々有する材料から成るものであってよい。かかる材料としては、ガラスが挙げられ、また、表面に自然酸化膜又は熱酸化膜が形成される金属(特に卑金属)、セラミックス、半導体等が挙げられる。あるいは、樹脂等のように、水酸基を有していても十分でない場合や、水酸基を元々有していない場合には、基材に何らかの前処理を施すことにより、基材の表面に水酸基を導入したり、増加させたりすることができる。かかる前処理の例としては、プラズマ処理(例えばコロナ放電)や、イオンビーム照射が挙げられる。プラズマ処理は、基材表面に水酸基を導入又は増加させ得ると共に、基材表面を清浄化する(異物等を除去する)ためにも好適に利用され得る。また、かかる前処理の別の例としては、炭素-炭素不飽和結合基を有する界面吸着剤をLB法(ラングミュア-ブロジェット法)や化学吸着法等によって、基材表面に予め単分子膜の形態で形成し、その後、酸素や窒素等を含む雰囲気下にて不飽和結合を開裂する方法が挙げられる。
【0427】
別の態様において、かかる基材としては、少なくともその表面部分が、別の反応性基、例えばSi-H基を1つ以上有するシリコーン化合物や、アルコキシシランを含む材料から成るものであってもよい。
【0428】
好ましい態様において、上記基材はガラスである。かかるガラスとしては、サファイアガラス、ソーダライムガラス、アルカリアルミノケイ酸塩ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、クリスタルガラス、石英ガラスが好ましく、化学強化したソーダライムガラス、化学強化したアルカリアルミノケイ酸塩ガラス、及び化学結合したホウ珪酸ガラスが特に好ましい。
【0429】
一の態様において、本開示の物品は、ガラスと表面処理層との間に、酸化ケイ素を含む中間層を含んでいてもよい。かかる中間層を設けることにより、ガラスと表面処理層との密着性が向上し、耐久性が向上する。
【0430】
好ましい態様において、上記中間層は、酸化ケイ素に加え、アルカリ金属を含んでいてもよい。
【0431】
上記アルカリ金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。上記アルカリ金属は、好ましくはナトリウムである。
【0432】
中間層の厚さは、特に限定されないが、1~200nmが好ましく、1~20nmが特に好ましい。中間層の厚さを上記範囲の下限値以上とすることにより、中間層による接着性の向上効果がより大きくなる。
【0433】
中間層におけるアルカリ金属原子濃度は各種表面分析装置、たとえばTOF-SIMS、XPS(X線光電子分光)、XRF(蛍光X線分析)などで測定できる。
【0434】
中間層全体の全原子に占めるアルカリ金属原子の割合は、イオンスパッタリングによるXPS深さ方向分析で得ることができ、XPSによる測定とXPS装置に内蔵されたイオン銃を用いたイオンスパッタリングによる表面のエッチングとを交互に繰り返すことによって行われる。
【0435】
中間層において、表面処理層と接する面からの深さが1nm以下の領域におけるアルカリ金属の濃度の平均値は、イオンスパッタリングによるTOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析法)深さ方向分析により、アルカリ金属原子の濃度の深さ方向プロファイルを得た後、該プロファイルにおけるアルカリ金属原子濃度の平均値を算出することによって求められる。イオンスパッタリングによるTOF-SIMS深さ方向分析は、TOF-SIMSによる測定とTOF-SIMS装置に内蔵されたイオン銃を用いたイオンスパッタリングによる表面のエッチングとを交互に繰り返すことによって行われる。
【0436】
本開示の物品は、上記基材の表面に、上記の本開示の表面処理剤の層を形成し、この層を必要に応じて後処理し、これにより、本開示の表面処理剤から層を形成することにより製造することができる。
【0437】
本開示の表面処理剤の層形成は、上記表面処理剤を基材の表面に対して、該表面を被覆するように適用することによって実施できる。被覆方法は、特に限定されない。例えば、湿潤被覆法及び乾燥被覆法を使用できる。
【0438】
湿潤被覆法の例としては、浸漬コーティング、スピンコーティング、フローコーティング、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、ワイプコーティング、スキージーコート法、ダイコート、インクジェット、キャスト法、ラングミュア・ブロジェット法及び類似の方法が挙げられる。
【0439】
乾燥被覆法の例としては、蒸着(通常、真空蒸着)、スパッタリング、CVD及び類似の方法が挙げられる。蒸着法(通常、真空蒸着法)の具体例としては、抵抗加熱、電子ビーム、マイクロ波等を用いた高周波加熱、イオンビーム及び類似の方法が挙げられる。CVD方法の具体例としては、プラズマ-CVD、光学CVD、熱CVD及び類似の方法が挙げられる。
【0440】
更に、常圧プラズマ法による被覆も可能である。
【0441】
湿潤被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、溶媒で希釈されてから基材表面に適用され得る。本開示の組成物の安定性及び溶媒の揮発性の観点から、次の溶媒が好ましく使用される:ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ソルベントナフサ等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸-n-ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸セロソルブ、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、酢酸カルビトール、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル-2-ヒドロキシブチレート、エチルアセトアセテート、酢酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2-ヘキサノン、シクロヘキサノン、メチルアミノケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチルセルソルブ、メチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノアルキルエーテル等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、iso-プロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、3-ペンタノール、オクチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、tert-アミルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の環状エーテル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド類;メチルセロソルブ、セロソルブ、イソプロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート;ポリフルオロ芳香族炭化水素(例えば、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン);ポリフルオロ脂肪族炭化水素(例えば、C6F13CH2CH3(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AC-6000)、1,1,2,2,3,3,4-ヘプタフルオロシクロペンタン(例えば、日本ゼオン株式会社製のゼオローラ(登録商標)H);ヒドロフルオロエーテル(HFE)(例えば、パーフルオロプロピルメチルエーテル(C3F7OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7000)、パーフルオロブチルメチルエーテル(C4F9OCH3)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7100)、パーフルオロブチルエチルエーテル(C4F9OC2H5)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7200)、パーフルオロヘキシルメチルエーテル(C2F5CF(OCH3)C3F7)(例えば、住友スリーエム株式会社製のNovec(商標)7300)などのアルキルパーフルオロアルキルエーテル(パーフルオロアルキル基及びアルキル基は直鎖又は分枝状であってよい)、あるいはCF3CH2OCF2CHF2(例えば、旭硝子株式会社製のアサヒクリン(登録商標)AE-3000))、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテルアルコール類;ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサエチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン等のシロキサン類など。これらの溶媒は、単独で、又は、2種以上の混合物として用いることができる。
【0442】
一の態様において、湿潤被覆法を使用する場合の溶媒としては、例えば、R90-OHで表される化合物を用いることができる。
R90は1価の有機基であり、好ましくはC1-20アルキル基又はC3-20アルキレン基であり、これらの基は1以上の置換基により置換されていてもよい。置換基としては、例えば、水酸基、-OR901(ここで、R901はC1-10アルキル基、好ましくはC1-3アルキル基、例えばメチル基)を挙げることができる。
【0443】
乾燥被覆法を使用する場合、本開示の表面処理剤は、そのまま乾燥被覆法に付してもよく、又は、上記した溶媒で希釈してから乾燥被覆法に付してもよい。
【0444】
表面処理剤の層形成は、層中で本開示の表面処理剤が、加水分解及び脱水縮合のための触媒と共に存在するように実施することが好ましい。簡便には、湿潤被覆法による場合、本開示の表面処理剤を溶媒で希釈した後、基材表面に適用する直前に、本開示の表面処理剤の希釈液に触媒を添加してよい。乾燥被覆法による場合には、触媒添加した本開示の表面処理剤をそのまま蒸着(通常、真空蒸着)処理するか、あるいは鉄や銅などの金属多孔体に、触媒添加した本開示の表面処理剤を含浸させたペレット状物質を用いて蒸着(通常、真空蒸着)処理をしてもよい。
【0445】
触媒には、任意の適切な酸又は塩基、遷移金属(例えばTi、Ni、Sn、Zr、Al、B等)、分子構造内に非共有電子対を有する含硫黄化合物、又は含窒素化合物(例えばスルホキシド化合物、脂肪族アミン化合物、芳香族アミン化合物、リン酸アミド化合物、アミド化合物、尿素化合物)等を使用できる。酸触媒としては、例えば、酢酸、ギ酸、トリフルオロ酢酸、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、スルホン酸、メタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸などを使用できる。また、塩基触媒としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、ジエチルアミン等の有機アミン類などを使用できる。遷移金属、脂肪族アミン化合物、及び芳香族アミン化合物は、上記と同様のものが挙げられる。
【0446】
本開示の物品に含まれる表面処理層は、高い摩擦耐久性の双方を有する。また、上記表面処理層は、高い摩擦耐久性に加えて、使用する表面処理剤の組成にもよるが、撥水性、撥油性、防汚性(例えば指紋等の汚れの付着を防止する)、防水性(電子部品等への水の浸入を防止する)、表面滑り性(又は潤滑性、例えば指紋等の汚れの拭き取り性や、指に対する優れた触感)、耐薬品性などを有し得、機能性薄膜として好適に利用され得る。
【0447】
従って、本開示はさらに、上記表面処理層を最外層に有する光学材料にも関する。
【0448】
光学材料としては、後記に例示するようなディスプレイ等に関する光学材料のほか、多種多様な光学材料が好ましく挙げられる:例えば、陰極線管(CRT;例えば、パソコンモニター)、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、無機薄膜ELドットマトリクスディスプレイ、背面投写型ディスプレイ、蛍光表示管(VFD)、電界放出ディスプレイ(FED;Field Emission Display)などのディスプレイ又はそれらのディスプレイの保護板、又はそれらの表面に反射防止膜処理を施したもの。
【0449】
本開示の物品は、特に限定されるものではないが、光学部材であり得る。光学部材の例には、次のものが挙げられる:眼鏡などのレンズ;PDP、LCDなどのディスプレイの前面保護板、反射防止板、偏光板、アンチグレア板;携帯電話、携帯情報端末などの機器のタッチパネルシート;ブルーレイ(Blu-ray(登録商標))ディスク、DVDディスク、CD-R、MOなどの光ディスクのディスク面;光ファイバー;時計の表示面など。
【0450】
また、本開示の物品は、医療機器又は医療材料であってもよい。また、本開示によって得られる層を有する物品は、自動車内外装部材であってもよい。外装材の例には、次のものが挙げられる:ウィンドウ、ライトカバー、社外カメラカバー。内装材の例には、次のものが挙げられる:インパネカバー、ナビゲーションシステムタッチパネル、加飾内装材。
【0451】
上記層の厚さは、特に限定されない。光学部材の場合、上記層の厚さは、1~50nm、1~30nm、好ましくは1~15nmの範囲であることが、光学性能、摩擦耐久性(耐摩耗性)及び防汚性の点から好ましい。
【0452】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【実施例0453】
以下、実施例を通じてより具体的に説明するが、本開示はこれら実施例に限定されるものではない。
【0454】
(合成例1)
9-ホルミルノナン酸メチル(400mg、2mmol)及びジクロロメタン(20mL)を混合し氷浴で冷却したのちに、(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)(570uL、3.9mmol)をゆっくりと滴下した。氷浴中で2時間撹拌したのちに、水をゆっくりと滴下し、なりゆきで室温まで上げた。その後、水、飽和食塩水で洗浄し硫酸マグネシウムで乾燥したのちに減圧濃縮することで、化合物(1)を無色液体として得た。
化合物(1)
【化33】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 5.79 (tt, J= 56.7, 4.4 Hz, 1H), 3.67 (s, 3H), 2.31 (t, J= 7.6 Hz, 2H), 1.80-1.74 (m, 2H), 1.65-1.59 (m, 2H), 1.48-1.40 (2H), 1.35-1.28 (m, 8H) ppm.
19F NMR (CDCl
3, 375 MHz) δ -115.6 (td, J= 56.7, 18.0 Hz, 2F) ppm.
【0455】
(合成例2)
合成例1で得られた化合物(1)(400mg、1.8mmol)、アリルアミン(1.6mL)及び1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンジクロロメタン(320mg)を混合し50℃で2時間撹拌したのちに室温に放冷した。その後クロロホルムで希釈し、塩酸、飽和食塩水で洗浄し硫酸マグネシウムで乾燥したのちに減圧濃縮することで、化合物(2)0.35gを無色固体として得た。
その後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:トルエン→クロロホルム→酢酸エチル)で精製した。
化合物(2)
【化34】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 5.88-5.78 (m, 1H), 5.78 (tt, J= 57.0, 4.8 Hz, 1H), 5.52 (brs, 1H), 5.20-5.15 (m, 1H), 5.15-5.11 (m, 1H), 3.88 (t, J= 5.2 Hz, 2H), 2.19 (t, J= 8.0 Hz, 2H), 1.87-1.60(m, 4H), 1.45-1.39 (m, 2H), 1.38-1.25 (m, 8H) ppm.
19F NMR (CDCl3, 375 MHz) δ -115.6 (td, J= 57.0, 15.0 Hz, 2F) ppm.
【0456】
(合成例3)
合成例2で得られた化合物(2)0.39g、トルエン8.4mL、ピリジン0.0840g、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液0.5mLを、それぞれ加えた後、トリメトキシシランを0.64mL仕込み、室温で終夜撹拌した。その後、精製を行うことにより、下記の化合物(3)0.70gを得た。
化合物(3)
【化35】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.018-0.149 (m), 0.621-0.662 (m), 1.245-1.299 (m), 1.391-1.464 (m), 1.575-1.670 (m), 1.730-1.869(m), 2.119-2.158(t), 3.230-3.262 (m), 3.528-3.613 (m), 5.625-5.933 (tt)
【0457】
(合成例4)
合成例1で得られた化合物(1)(0.5g)、ジアリルアミン(0.6g)及び1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンジクロロメタン(0.3g)を混合し80℃で終夜撹拌したのちに室温に放冷した。その後トルエンで希釈し、塩酸で洗浄したのちに減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、下記の化合物(4)530mgを黄色液体として得た。
化合物(4)
【化36】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ5.79 (tt, J= 59.6, 4.4 Hz, 1H), 5.81-5.71 (m, 2H), 5.22-5.09 (m, 4H), 3.99 (d, J= 6.0 Hz, 2H), 3.87 (d, J= 4.8 Hz, 2H), 2.30 (t, J= 8.0 Hz, 2H), 1.88-1.74 (m, 2H), 1.68-1.59 (m, 2H), 1.48-1.39 (2H), 1.38-1.28 (m, 8H) ppm.
19F NMR (CDCl
3, 375 MHz) δ -115.6 (td, J= 59.6, 18.0 Hz, 2F) ppm.
【0458】
(合成例5)
合成例4で得られた化合物(4)0.52g、トルエン9.0mL、ピリジン0.0603g、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液0.5mLを、それぞれ加えた後、トリメトキシシランを1.4mL仕込み、室温で終夜撹拌した。その後、精製を行うことにより、末端にトリメトキシシリル基を有する下記の化合物(5)0.71gを得た。
化合物(5)
【化37】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.011-0.203 (m), 0.493-0.635 (m), 1.208-1.851 (m), 2.251-2.396 (m), 3.145-3.301 (m), 3.471-3.660(m), 5.618-5.926(tt)
【0459】
(合成例6)
合成例1で得られた化合物(1)0.5g、2,2-ビス(1-プロぺニル)-4-ペンテンアミン(1.1g)及び1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンジクロロメタン(0.3g)を混合し50℃で終夜撹拌したのちに室温に放冷した。その後トルエンで希釈し、塩酸で洗浄したのちに減圧濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することで、下記の化合物(6)680mgを黄色液体として得た。
化合物(6)
【化38】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ5.94-5.63 (m, 4H), 5.52 (t, J= 6.4 Hz, 1H), 5.21-5.07 (m, 6H), 3.20 (d, J= 6.4 Hz, 2H), 2.33 (t, J= 7.6 Hz, 2H), 2.03 (d, J= 7.6 Hz, 6H), 1.88-1.73 (m, 2H), 1.66-1.54 (m, 2H), 1.48-1.38 (2H), 1.38-1.28 (m, 8H) ppm.
19F NMR (CDCl
3, 375 MHz) δ -115.6 (td, J= 56.3, 17.6 Hz, 2F) ppm.
【0460】
(合成例7)
合成例6で得られた化合物(6)0.69g、トルエン9.7mL、ピリジン0.0703g、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液0.5mLを、それぞれ加えた後、トリメトキシシランを2.4mL仕込み、室温で終夜撹拌した。その後、精製を行うことにより、末端にトリメトキシシリル基を有する下記の化合物(7)1.30gを得た。
化合物(7)
【化39】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.025-0.154 (m), 0.537-0.654 (m), 1.168-1.459 (m), 2.269-2.361 (m), 3.551-3.656 (m), 3.471-3.660(m), 5.636-5.944(tt)
【0461】
(合成例8)
10-ウンデセナール(4g、24mmol)及びジクロロメタン(200mL)を混合し氷浴で冷却したのちに、(ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(DAST)(7mL、48mmol)をゆっくりと滴下した。氷浴中で2時間撹拌したのちに、水をゆっくりと滴下し、なりゆきで室温まで上げた。その後、水、飽和食塩水で洗浄し硫酸マグネシウムで乾燥したのちに減圧濃縮することで、下記の化合物(8)4.3gを無色油状物質として得た。
化合物(8)
【化40】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ 5.86-5.79 (m, 1H), 5.79 (tt, J= 57.0, 4.4 Hz, 1H), 5.03-4.96 (m, 1H), 4.95-4.91 (m, 1H), 2.07-2.01 (m, 2H), 1.88-1.74 (m, 2H), 1.48-1.30 (12H) ppm.
19F NMR (CDCl
3, 375 MHz) δ -115.3 (td, J= 57,18 Hz, 2F) ppm.
【0462】
(合成例9)
合成例8で得られた化合物(8)0.95g、トルエン25mL、ピリジン0.2mL、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液1.5mLを、それぞれ加えた後、トリメトキシシランを2.0mL仕込み、室温で終夜撹拌した。その後、精製を行うことにより、末端にトリメトキシシリル基を有する下記の化合物(9)2.07gを得た。
化合物(9)
【化41】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.014-0.131 (m), 0.615-0.656 (m), 1.212-1.465 (m), 1.730-1.869 (m), 3.534-3.634 (m), 5.624-5.933(tt)
【0463】
(合成例10)
フラスコに18-ブロモ-1-オクタデセン(5g)、Pd
2(dba)
3(0.69g)、dppf(0.86g)、ヨウ化銅(I)(2.87g)、フッ化セシウム(9.09g)、ジフルオロメチルトリメチルシラン(7.49g)、ジメチルホルムアミド(50mL)を加え、60℃で6時間撹拌した。反応液にトルエンとシリカゲルを加え、ろ過した後、ろ液を塩化アンモニウム水溶液、及び水で順に洗浄した。この液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)で精製して、化合物(10)1.88gを無色液体として得た。
化合物(10)
【化42】
1H-NMR (400 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: 1.26-1.46 (m, 28H), 1.72-1.88 (m, 2H), 2.01-2.09 (m, 2H), 4.91-5.01 (m, 2H), 5.63-5.94 (m, 2H)
19F-NMR (376 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: -115.6 (dt, 2F, J = 56.8, 17.7 Hz)
【0464】
(合成例11)
フラスコに合成例10で得られた化合物(10)(0.88g)、カールシュテット触媒(0.19g、白金2%含有のキシレン溶液)、トリメトキシシラン(1.07g)、ピリジン(0.03g)、トルエン(5mL)を加え、室温で4時間撹拌した後、減圧濃縮し、化合物(11)1.20gを黄色液体として得た。
化合物(11)
【化43】
1H-NMR (400 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: 0.62-0.66 (m, 2H), 1.25-1.47 (m, 34H), 1.74-1.88 (m, 2H), 3.54-3.62 (m, 11H), 5.79 (tt, 1H, J = 56.9, 4.6 Hz)
19F-NMR (376 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: -115.6 (dt, 2F, J = 56.8, 17.7 Hz)
【0465】
(合成例12)
フラスコに合成例10で得られた化合物(10)(0.93g)、トリクロロシラン(2.50g)、トリアセトキシメチルシラン(0.03g)、カールシュテット触媒(0.60g、白金2%含有のキシレン溶液)、トルエン(20mL)を加え、60℃で2時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、テトラヒドロフラン(10mL)を加え、5℃以下に冷却しながら、アリルマグネシウムクロリド(23mL、0.8mol/Lのテトラヒドロフラン溶液)を滴下し、室温に昇温して12時間撹拌した。反応液にトルエンと塩酸水溶液を加え撹拌し、静置後、水層を除いた。残った有機層を水で洗浄し、減圧濃縮した後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:ヘキサン)で精製して、化合物(12)1.25gを無色液体として得た。
化合物(12)
【化44】
1H-NMR (400 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: 0.52-0.59 (m, 2H), 0.83-0.95 (m, 2H), 1.26-1.29 (m, 30H), 1.57-1.61 (m, 6H), 1.71-1.92 (m, 2H), 4.84-4.90 (m, 6H), 5.63-5.94 (m, 4H)
19F-NMR (376 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: -115.6 (dt, 2F, J = 56.8, 17.7 Hz)
【0466】
(合成例13)
フラスコに合成例12で得られた化合物(12)(1.25g)、カールシュテット触媒(0.05g、白金20%含有)、トリメトキシシラン(3.02g)、ピリジン(0.09g)、トルエン(15mL)を加え、室温で4時間撹拌した後、減圧濃縮し、化合物(13)1.52gを黄色液体として得た。
化合物(13)
【化45】
1H-NMR (400 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: 0.39-0.50 (m, 2H), 0.54-0.62 (m, 6H), 0.65-0.72 (m, 6H), 1.25-1.46 (m, 38H), 1.74-1.88 (m, 2H), 3.51-3.63 (m, 27H), 5.78 (tt, 1H, J = 56.9, 4.6 Hz)
19F-NMR (376 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: -115.6 (dt, 2F, J = 56.8, 17.7 Hz)
【0467】
(合成例14)
フラスコに22-トリコセン酸(0.5g)、塩化チオニル(1.5mL)、ジメチルホルムアミド(1滴)を加え、60℃で4時間撹拌した。反応液を減圧濃縮した後、クロロホルム(1mL)、2,2-ジフルオロエタノール(1mL)を加え、5℃以下に冷却しながら、ピリジン(0.17g)を滴下し、室温に昇温して12時間撹拌した。反応液にクロロホルムと塩酸水溶液を加え撹拌し、静置後、水相を除いた。残った有機相を水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水した後、減圧濃縮し、化合物(14)0.50gを微黄色固体として得た。
化合物(14)
【化46】
1H-NMR (400 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: 1.25-1.37 (m, 36H), 2.01-2.22 (m, 2H), 2.33-2.39 (m, 2H), 4.27 (td, 2H, J = 13.7, 4.1 Hz), 4.91-5.02 (m, 2H), 5.76-6.08 (m, 2H)
19F-NMR (376 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: -125.5 (dt, 2F, J = 53.8, 15.0 Hz)
【0468】
(合成例15)
フラスコに合成例14で得られた化合物(14)(0.88g)、カールシュテット触媒(0.19g、白金2%含有のキシレン溶液)、トリメトキシシラン(1.07g)、ピリジン(0.03g)、トルエン(5mL)を加え、室温で4時間撹拌した後、減圧濃縮し、化合物(15)1.20gを黄色液体として得た。
化合物(15)
【化47】
1H-NMR (400 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: 0.62-0.66 (m, 2H), 1.25-1.47 (m, 34H), 1.74-1.88 (m, 2H), 3.54-3.62 (m, 11H), 5.79 (tt, 1H, J = 56.9, 4.6 Hz)
19F-NMR (376 MHz, クロロホルム-D) δ[ppm]: -115.6 (dt, 2F, J = 56.8, 17.7 Hz)
【0469】
(合成例16)
ステアロイルクロライド(5g)、アリルアミン(2.5mL)、及びジクロロメタン(15mL)を混合し、室温で終夜撹拌した。ジクロロメタンで希釈し、塩酸及び水で洗浄した後、減圧濃縮することで、化合物(16):C17H35-CONH-CH2CH=CH2(5.0g)を得た。
化合物(16)
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.85-0.88 (m, 3H), 1.23-27 (m, 28H), 1.60-1.70 (m, 2H), 2.15-2.22 (m, 2H), 3.85-3.89 (m,2H), 5.01-5.15 (m, 2H), 5.78-5.86 (m, 1H).
【0470】
上記C17H35-CONH-CH2CH=CH2(5g)、トルエン(70mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、3.5mL)、アニリン(0.5g)、及びトリメトキシシラン(5.9mL)を混合し、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することで、化合物B:C17H35-CONH-CH2CH2CH2Si(OCH3)3(6.3g)を得た。
化合物B
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.53-0.65 (m, 2H) 0.85-0.91 (m, 3H), 1.24-27 (m, 28H), 1.60-1.648 (m, 4H), 2.12-2.24 (m, 2H), 3.21-3.26 (m, 2H) 3.56-3.60 (m, 9H)
【0471】
(合成例17)
R-COOH(7.2g)、アリルアミン(0.4g)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(1.36g)、4-ジメチルアミノピリジン(60mg)、及びジクロロメタン(30mL)を混合し、室温で終夜撹拌した。ジクロロメタンで希釈し、塩酸及び水で洗浄した後、減圧濃縮することで、化合物(17):R-CONHCH2CH=CH2(7.0g)を得た。なお、R-は、(CH3)3Si-(OSi(CH3)2)n-(CH2)10-である。繰り返し単位数nの平均値は、19である。
化合物(17)
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.01-0.30 (m), 0.49-0.53 (m, 2H), 1.20-1.40 (m, 14H), 1.55-1.68 (m, 2H), 2.13-2.35 (m, 2H) 3.86-3.89 (m, 2H), 5.05-5.23 (m, 2H), 5.68-5.84 (m, 1H).
【0472】
上記R-CONHCH2CH=CH2(5g)、トルエン(20mL)、カールシュテッド触媒のキシレン溶液(2%、0.7mL)、アニリン(0.12g)、及びトリメトキシシラン(1.20mL)を混合し、室温で終夜撹拌した後、減圧濃縮することで、化合物C:R-CONH-CH2CH2CH2Si(OCH3)3(4.7g)を得た。なお、Rは、(CH3)3Si-(OSi(CH3)2)n-(CH2)10-である。繰り返し単位数nの平均値は、19である。
化合物C
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ[ppm]: -0.01-0.30 (m), 0.509-0.55 (m, 2H), 1.23-1.44 (m, 14H), 1.49-1.60 (m, 4H), 2.13-2.35 (m, 2H), 3.17-3.25 (m, 2H), 3.55-59 (m, 9H).
【0473】
(合成例18)
The Journal of Organic Chemistry 2019、84、8019―8026に基づき合成した16-ホルミルヘキサデカン酸メチル(5.7g、20mmol)を、ジクロロメタン(120mL)に溶かし、反応容器を氷浴で0℃に冷却したのちにその溶液にDAST(三フッ化ジエチルアミノ硫黄)(3.8mL、90%、26mmol)をゆっくりと加えた。0℃で1時間撹拌したのちに水を加えることで反応を停止した。内容物を分液漏斗に移し、クロロホルムで希釈、抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。その後シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し無色の油状物質(2.9g、48%)として化合物(18)を得た。
化合物(18)
【化48】
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ[ppm]: 5.78(tt、J=4.8、49.1Hz、1H)、3.67(s、3H)、2.23(t、J=7.0Hz、2H)、1.88-1.72(m、2H)、1.70-1.54(m、2H)、1.49-1.37(m、2H)、1.38-1.22(brs、20H).
19F NMR(375MHz、CDCl
3) δ[ppm]: -115.6(td、J=18.0、49.1Hz、2F).
【0474】
(合成例19)
合成例18で得た化合物(18)(900mg、2.9mmol)と、アリルアミン(allylNH
2)(500mg、8.8mmol)と、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(TBD)(400mg、2.9mmol)とを混合し、反応容器を50℃で14時間加熱撹拌した。放冷後に減圧化で揮発成分を除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより無色固体(950mg、100%)として化合物(19)を得た。
化合物(19)
【化49】
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ[ppm]: 5.95-5.61(m, 2H)、5.44(s, 1H)、5.23-5.08 (m, 2H)、3.90-3.85 (m, 2H)、2.19(t、J=7.8Hz、2H)、1.88-1.72(m、2H)、1.70-1.60(m、2H)、1.49-1.39(m、2H)、1.38-1.22(brs、20H).
19F NMR(375MHz、CDCl
3) δ[ppm]: -115.6(td、J = 37.3、 19.9Hz、2F).
【0475】
(合成例20)
合成例19で得られた化合物(19)であるCF
2H(CH
2)
14CONHCH
2CH=CH
2を0.703g、トルエンを10.6mL、ピリジントを0.0843g、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液を0.5mL、それぞれ加えた後、トリメトキシシランを0.81mL仕込み、室温で終夜撹拌した。その後、精製を行うことにより、末端にトリメトキシシリル基を有する下記の化合物(20)であるCF
2H(CH
2)
14CONHCH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3を1.13g得た。
化合物(20)
【化50】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.232-0.407 (m), 0.689-0.731 (m), 1.249-1.726 (m), 2.086-2.474 (m), 3.555-3.675 (m),5.448-5.754(tt)
【0476】
(合成例21)
合成例18で得た化合物(18)(900mg、2.9mmol)と、ジアリルアミン(allyl
2NH、630mg、6.5mmol)と、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(400mg、2.9mmol)とを混合し、反応容器を50℃で14時間加熱撹拌した。放冷後に減圧化で揮発成分を除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより橙色液体(460mg、43%)として化合物(21)を得た。
化合物(21)
【化51】
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ[ppm]: 5.95-5.63(m、3H)、5.27-5.07(m、4H)、3.99(d、J=5.9Hz、2H)、3.87(d、J=5.0Hz、2H)、2.30(t、J=7.8Hz、2H)、1.89-1.74 (m、2H)、1.66-1.53(m、2H)、1.48-1.40(m、2H)、1.27、(d、J=11.4Hz、20H)。
19F NMR(375MHz、CDCl
3) δ[ppm]: -115.62(td、J = 38.0, 18.9 Hz、2F).
【0477】
(合成例22)
合成例21で得た化合物(21)であるCF
2H(CH
2)
14CON(CH
2CH=CH
2)
2を0.46g、トルエンを6.2mL、ピリジンを0.0489g、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液を0.28mL、それぞれ加えた後、トリメトキシシランを1.4mL仕込み、室温で終夜撹拌した。その後、精製を行うことにより、末端にトリメトキシシリル基を有する下記の化合物(22)であるCF
2H(CH
2)
14CON(CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3)
2を0.96g得た。
化合物(22)
【化52】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.217-0.282 (m), 0.599-0.784 (m), 1.268-1.379 (m), 1.677-1.800 (m),2.078-2.669 (m), 3.379-3.418 (m), 3.536-3.616(m), 5.468-5.766(tt)
【0478】
(合成例23)
合成例18で得た化合物(18)(750mg、2.4mmol)と、2,2-ジアリル-4-ペンテン-1-アミン(800mg、4.8mmol)と、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(400mg、2.9mmol)とを混合し、反応容器を50℃で14時間加熱撹拌した。放冷後に減圧化で揮発成分を除き、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製することにより橙色液体(460mg、43%)として化合物(23)を得た。
化合物(23)
【化53】
1H NMR(400MHz、CDCl
3) δ[ppm]: 5.95-5.62(m、4H)、5.51(s、1H)、5.15-5.05(m、6H)、3.20(d、J=6.4Hz、2H)、2.16(d、J=7.5Hz、2H)、2.03(d、J=7.3Hz、6H)、1.90-1.71(m、2H)、1.66-1.57(m、2H)、1.48-1.40(m、2H)、1.30-1.18(m、20H)
19F NMR(375MHz、CDCl
3) δ[ppm]: -115.6(td, J = 37.3, 18.9 Hz, 2F).
【0479】
(合成例24)
合成例23で得た化合物(23)であるCF
2H(CH
2)
14CONHCH
2C(CH
2CH=CH
2)
3を0.66g、トルエンを7.5mL、ピリジンを0.0558g、1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンのPt錯体を2%含むキシレン溶液を0.4mL、それぞれ加えた後、トリメトキシシランを1.2mL仕込み、室温で終夜撹拌した。その後、精製を行うことにより、末端にトリメトキシシリル基を有する下記の化合物(24)であるCF
2H(CH
2)
14CONHCH
2C(CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3)
3を0.97g得た。
化合物(24)
【化54】
1H NMR (CDCl
3, 400 MHz) δ[ppm]: 0.225-0.382 (m), 0.739-0.800 (m), 1.271-1.791 (m), 2.132-2.502 (m), 3.286-3.337 (m), 3.545-3.701 (m), 5.493-5.801 (tt)
【0480】
(比較例)
下記化合物(A)~(C)を用いた。
・化合物(A):信越化学工業製KBM-3183E
・化合物(B):化合物B
・化合物(C):化合物C
【0481】
<成形体1(Na入り中間層形成材料)の形成>
水酸化ナトリウム(富士フィルム和光純薬株式会社製)2.2gを、蒸留水24gに溶解して、8.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液を得た。この8.4質量%の水酸化ナトリウム水溶液の24gとMSゲル(M.S.GEL D-100-60A(AGCエスアイテック社製))20gとを混合して、水酸化ナトリウム水溶液をMSゲル中に吸収させた。水酸化ナトリウム水溶液を吸収したMSゲルを25℃で8時間乾燥した後、錠剤成形機(4MPaで1分)で成形し、1,000℃で1時間焼成して成形体1(ペレット)を得た。
【0482】
<表面処理層の形成>
下記表1に示すように溶媒と化合物とを組み合わせて、表面処理剤を合成した。化合物濃度は20wt%とした。以下の表において、EtOHはエタノールを、HMDSOはヘキサメチルジシロキサンを示す。
【0483】
【0484】
化学強化ガラス(コーニング社製、ゴリラガラス、厚さ0.7mm)上に、表面処理剤を真空蒸着した。具体的には、真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに表面処理剤0.1gを充填し、真空蒸着装置内を圧力3.0×10-3Pa以下に排気した。その後、7nmの厚さの二酸化ケイ素膜を形成し、続いて抵抗加熱方式によりボートを加熱することで表面処理層を形成した。その後、オーブンで150℃、30分の加熱処理を行うことにより、表面処理層を得た。
【0485】
下記表2で示すように溶媒と化合物とを組み合わせて、表面処理剤を合成した。化合物濃度は20wt%とした。
【0486】
【0487】
化学強化ガラス(コーニング社製、ゴリラガラス、厚さ0.7mm)上に、表面処理剤を真空蒸着した。具体的には、真空蒸着装置内のモリブデン製ボートに表面処理剤0.1gを充填し、真空蒸着装置内を圧力3.0×10-3Pa以下に排気した。その後、成形体1を用いて電子線蒸着方式により蒸着させて、7nmの厚さのNaを含む二酸化ケイ素膜を形成し、続いて抵抗加熱方式によりボートを加熱することで表面処理層を形成した。その後、オーブンで150℃、30分の加熱処理を行うことにより、表面処理層を得た。
【0488】
<評価>
[指紋拭き取り性評価]
上記で形成した表面処理層について、下記の手順で指紋付着性及び指紋拭き取り性を評価した。
指紋付着性及び指紋拭き取り性の指標にはヘーズ(%)を用いた。ヘーズが低いほど指紋が視認しにくいことを示す。なお、ヘーズ測定には、日本電色工業株式会社製 ヘーズメーター NDH7000SPを使用した。測定領域(Φ20mm)内に、人工指紋スタンプ領域がすべて入るように基材を設置し、3回測定した平均値を用いた。
(初期評価)
表面処理層の形成後、表面上の余剰分をエタノールで拭き上げたのちにヘーズを測定した。これをTiとした。
(指紋付着性評価)
初期評価後の表面処理層に、人工指紋液をスタンプし、スタンプ部のヘーズを測定した。これをT0とし、T0-Tiを指紋付着性とした。
【0489】
なお、人工指紋液の組成、及びスタンプ条件を下記に示す。
(人工指紋液の調製方法)
人工指紋液の調製は、特開2006-120317号公報を参考にし、以下のように行った。
関東ローム(JIS試験用粉体1(11種)日本粉体工業技術協会)1.6gとメトキシプロパノール(東京化成製)32gを混合した。さらにトリオレイン(東京化成製)4gを加え撹拌した。
(人工指紋シートの作成方法)
ガラス板(コーニング社製、ゴリラガラス、厚さ0.7mm)を10分間UV洗浄した。上記で調整した人工指紋液を1.1mLガラス板上にスピンコート(5000rpm 10秒間)した。その後、ガラスを乾燥炉で60℃、3分間加熱した。
(スタンプ条件)
スタンプ:シリコーンゴム(押印面Φ16mm)
スタンプを上記で作成した人工指紋シートに5kgwの荷重で10秒間押し付け、人工指紋を転写させた。ふき取り性を評価するサンプルに人工指紋を転写させたスタンプを5kgwの荷重で10秒間押し付け、人工指紋液を付着させた。
【0490】
(指紋拭き取り性試験方法)
形成された表面処理層に対して、ラビングテスター(井元製作所社製)を用いて、下記条件で10回拭き取り操作を行った。その後、スタンプ部のヘーズを測定した。これをT10とし、T10-Tiを指紋拭き取り性とした。
・拭き取り操作:
摩擦子:ベンコット M-3II(製品名、旭化成社製)
移動距離(片道):60mm
移動速度:8,400mm/分
荷重:1000g/3cm2
【0491】
指紋付着性、及び、指紋拭き取り性評価の判断基準は以下のとおりである。
(指紋付着性評価)
T0-Tiの値が、下記であるもの。
5未満:〇(優良)
5以上10未満:△(良好)
10以上:×(可)
(指紋拭き取り性評価)
T10-Tiの値が、下記であるもの。
1未満:〇(優良)
1以上2.5未満:△(良好)
2.5以上:×(可)
【0492】
[耐摩耗性評価]
(耐摩耗性試験方法)
表面処理層の形成後、表面上の余剰分を拭き上げたのちに、形成された表面処理層に対して、下記の摩擦子を接触させ、その上に5Nの荷重を付与し、荷重を加えた状態で摩擦子を40mm/秒の速度で往復させた。摩擦回数100回時点での水の静的接触角(°)を測定した。
接触角の測定は、25℃環境下において、全自動接触角計DropMaster700(協和界面科学社製)を用いた。具体的には、測定対象の表面処理層を有する基材を水平に静置し、その表面にマイクロシリンジから水を2μL滴下し、滴下1秒後の静止画をビデオマイクロスコープで撮影することにより静的接触角を測定した。静的接触角は、基材の表面処理層の異なる5点において測定し、その平均値を算出した値を用いた。
・測定基準
80°以上:◎(優良)
65°以上80°未満:〇(良好)
50°以上65°未満:△(可)
50°未満:×(不良)
・摩擦子
下記に示すシリコーンゴム加工品の表面を、下記に示す組成の人工汗に浸漬したコットンで覆ったものを摩擦子として用いた。
・シリコーンゴム加工品:
タイガースポリマー製、シリコーンゴム栓SR-51を、直径1cm、厚さ1cmの円柱状に加工したもの。
・人工汗の組成:
無水リン酸水素二ナトリウム:2g
塩化ナトリウム:20g
85%乳酸:2g
ヒスチジン塩酸塩:5g
蒸留水:1Kg
【0493】
下記表3及び表4に、指紋付着性及び指紋拭き取り性評価と耐摩耗性評価の結果を示す。
【0494】
【0495】