(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167313
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】腫瘍治療薬及びその応用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20241126BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241126BHJP
C12N 5/00 20060101ALI20241126BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241126BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241126BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20241126BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241126BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241126BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241126BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/00
A61K39/395 N
A61K48/00
A61K35/12
A61P35/00
A61P1/00
A61K47/68
A61K39/395 L
C07K16/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146208
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2023129054の分割
【原出願日】2020-04-15
(31)【優先権主張番号】201910315634.9
(32)【優先日】2019-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】520488148
【氏名又は名称】康諾亜生物医薬科技(成都)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Keymed Biosciences Co., Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲剛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 博
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲瑩▼
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分、および該抗体又はその抗原結合部分を含む医薬組成物を提供する。
【解決手段】ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分であって、一態様において、特定の配列の重鎖CDR1;特定の配列の重鎖CDR2;特定の配列の重鎖CDR3;特定の配列の軽鎖CDR1;特定の配列の軽鎖CDR2;および、特定の配列の軽鎖CDR3を含む、抗体又はその抗原結合部分、および、該抗体又はその抗原結合部分を含む医薬組成物を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミノ酸配列の配列番号2-4、12-14、22-24、32-34、42-44、52-54、62-64、72-74、82-84、92-94、102-104、112-114、122-124、132-134、142-144、152-154、157-159、162-164、167-169、172-174、177-179、182-184、187-189、192-194、197-199、202-204、207-209、212-214、217-219、222-224、227-229、232-234又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖CDR、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号7-9、17-19、27-29、37-39、47-49、57-59、67-69、77-79、87-89、97-99、107-109、117-119、127-129、137-139、147-149、237-239、242-244、247-249、252-254、257-259、262-264、267-269又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖CDRを含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
アミノ酸配列の配列番号2、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、157、162、167、172、177、182、187、192、197、202、207、212、217、222、227、232又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖CDR1、アミノ酸配列の配列番号3、13、23、33、43、53、63、73、83、93、103、113、123、133、143、153、158、163、168、173、178、183、188、193、198、203、208、213、218、223、228、233又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖CDR2、アミノ酸配列の配列番号4、14、24、34、44、54、64、74、84、94、104、114、124、134、144、154、159、164、169、174、179、184、189、194、199、204、209、214、219、224、229、234又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖CDR3、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、237、242、247、252、257、262、267又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖CDR1、アミノ酸配列の配列番号8、18、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、238、243、248、253、258、263、268又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖CDR2、アミノ酸配列の配列番号9、19、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、239、244、249、254、259、264、269又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖CDR3を含む、請求項1に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
アミノ酸配列の配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、156、161、166、171、176、181、186、191、196、201、206、211、216、221、226、231又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、236、241、246、251、256、261、266又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、請求項1又は2に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
(1)それぞれ配列番号152-154を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号237-239を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(2)それぞれ配列番号152-154を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号242-244を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(3)それぞれ配列番号152-154を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号247-249を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(4)それぞれ配列番号157-159を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号237-239を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(5)それぞれ配列番号157-159を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号242-244を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(6)それぞれ配列番号157-159を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号247-249を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(7)それぞれ配列番号162-164を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号237-239を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(8)それぞれ配列番号162-164を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号242-244を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(9)それぞれ配列番号162-164を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号247-249を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(10)それぞれ配列番号167-169を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号237-239を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(11)それぞれ配列番号167-169を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号242-244を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(12)それぞれ配列番号167-169を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号247-249を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(13)それぞれ配列番号172-174を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(14)それぞれ配列番号172-174を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(15)それぞれ配列番号177-179を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(16)それぞれ配列番号177-179を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(17)それぞれ配列番号182-184を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(18)それぞれ配列番号182-184を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(19)それぞれ配列番号187-189を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(20)それぞれ配列番号187-189を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(21)それぞれ配列番号192-194を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(22)それぞれ配列番号192-194を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(23)それぞれ配列番号197-199を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(24)それぞれ配列番号197-199を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(25)それぞれ配列番号202-204を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(26)それぞれ配列番号202-204を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(27)それぞれ配列番号207-209を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(28)それぞれ配列番号207-209を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(29)それぞれ配列番号212-214を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(30)それぞれ配列番号212-214を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(31)それぞれ配列番号217-219を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(32)それぞれ配列番号217-219を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(33)それぞれ配列番号222-224を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(34)それぞれ配列番号222-224を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(35)それぞれ配列番号227-229を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(36)それぞれ配列番号227-229を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(37)それぞれ配列番号232-234を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(38)それぞれ配列番号232-234を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列という重鎖及び軽鎖のCDR組み合わせを含む、前記請求項のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項5】
前記抗体又はその抗原結合部分はヒト化される、前記請求項のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合部分。
【請求項6】
前記請求項のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子、又はそれに対して少なくとも60%より高く、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%より高い配列同一性を有する核酸分子。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸を含む、担体。
【請求項8】
請求項7に記載の担体を含む、細胞又はキット。
【請求項9】
前記請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合部分、又は請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の担体、又は請求項8に記載の細胞又はキットを含む、医薬組成物。
【請求項10】
前記請求項1~5のいずれか1項に記載の抗体又はその抗原結合部分、又は請求項6に記載の核酸、請求項7に記載の担体、又は請求項8に記載の細胞又はキット、又は請求項9に記載の医薬組成物の、哺乳動物の癌を治療するための薬物又はキットの調製における用途であって、任意選択で、前記癌は胃癌であり、任意選択で、前記抗体は、ADCC又はCDC作用によって癌細胞を死滅させ、任意選択で、前記抗体は、その他の細胞毒性薬物と結合する、用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クローディンを認識する抗体、その製造方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
クローディン18(Claudin18)は、高度な組織特異的分布を有するクローディンファミリーメンバーであり、正常組織において、主に胃又は肺部の上皮及び内皮細胞に分布している。細胞間の密着結合の形成に関与し、溶液及び分子の細胞間隙への浸透を制限し、内皮細胞の外膜及び基底膜の完全性を維持するために重要な役割を果たしており、シグナル伝達に関与する可能性がある。
【0003】
クローディン18は、複数回膜貫通タンパク質であり、分子内に4つの膜貫通領域を有し、そのうち2つの断片が細胞外に細胞外領域(loop1及びloop2)を形成し、2つの膜貫通断片が細胞内に細胞内領域を形成する。RNAの選択的スプライシングのために、クローディン18.1(Uniprot U56856)及びクローディン18.2(Uniprot U56856-2)という2種類の異なる膜タンパク質サブタイプが組織に存在しており、この2種類の膜タンパク質サブタイプの相違点は、N末端にある膜貫通領域(アミノ酸残基1~27)と第1の細胞外領域(loop1、アミノ酸残基28~80)であり、loop1領域の配列類似性は約85%であるため、クローディン18.2を特異的に標的とする抗体を生成する可能性がある。クローディン18の膜タンパク質サブタイプは、正常組織において分布が異なり、クローディン18.1は正常な肺組織に選択的に発現するが、クローディン18.2は高分化型胃粘膜細胞の表面のみに高度に特異的に発現し、胃組織の粘膜下に近い幹細胞領域では検出されない。研究によると、腫瘍組織において、クローディン18.2は、70%の原発性胃癌及びその転移に発現するだけでなく、異所性活性化が存在し、膵臓癌(50%)、食道癌(30%)、非小細胞肺癌(25%)、乳癌及び耳鼻咽喉腫瘍などの多くの他の癌に発現することが明らかになっている。消化管腫瘍において広く発現するため、クローディン18は、新たな腫瘍マーカー及び潜在的な治療標的となる可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
広範囲の詳細な研究及びマススクリーニングを通して、本発明者らは、予想外に、極めて優れた親和性及び特異性を有する抗クローディン18.2抗体、及び該抗体に基づいて得られるヒト化抗体を得た。本発明の抗体は、クローディン18.2に高度に特異的に結合することが可能であり、親和性が高く、細胞殺傷作用を媒介することにより、胃癌、膵臓癌などのいくつかの悪性腫瘍の診断及び治療に使用することができる。これに基づいて、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様において、本開示は、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0006】
一態様において、本開示は、上記態様に係る抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子を提供する。
【0007】
一態様において、本開示は、上記態様に係る核酸を含む担体を提供する。
【0008】
一態様において、本開示は、上記態様に係る担体を含む細胞を提供する。
【0009】
上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合部分において、前記抗体又はその抗原結合部分はヒト化される。
【0010】
一態様において、本開示は、上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合部分又はそのコード核酸及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物又はキットを提供する。
【0011】
一態様に係る癌を治療する方法は、治療有効量の上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合断片又は核酸分子又は担体又は細胞又は医薬組成物を前記哺乳動物に投与するステップを含む。
【0012】
一態様に係る用途は、上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合断片又は核酸分子又は担体又は細胞又は医薬組成物の、哺乳動物の癌を治療するための薬物又はキットの調製における用途である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】RT-PCRは、HEK293安定形質転換細胞株がそれぞれクローディン18.1及びクローディン18.2を発現することを示す。HEK293-クローディン18.2安定形質転換細胞株及び対照KATO III細胞は、いずれもクローディン18.2の特異的な780bpの特徴的なバンドを増幅することができ、HEK293-クローディン18.1は、504bpの共通断片のみを増幅することができる。
【
図2】FACS実験で高発現のHEK293-クローディン18.2安定形質転換細胞株をスクリーニングした結果を示す。図中、黒色点は、陰性対照であり、灰色点は、高発現のHEK293-クローディン18.2安定形質転換細胞株である。
【
図3】FACS実験で高発現のNIH3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞株をスクリーニングした結果を示す。図中、黒色の線は、陰性対照であり、灰色の陰影は、3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞株である。NO.32-Hは、高発現の3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞株であり、NO.18-Mは、中発現の3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞株であり、NO.6-Lは、低発現の3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞株である。
【
図4】モノクローナル抗体によるクローディン18.2の特異的認識を示す。フローサイトメトリー(FACS)によると、得られたキメラクローディン18.2 IgG1抗体は、クローディン18.2をトランスフェクトしたHEK293-クローディン18.2細胞のみを認識し(
図4B)、HEK293(
図4A)及びHEK293-クローディン18.1(
図4C)といずれも結合しないことを示す。
【
図5】クローディン18.2抗体と細胞を37℃で異なる時間インキュベートした後、細胞内取り込み作用に伴う細胞表面の抗体数の変化を示す。
【
図6】クローディン18.2ヒト化抗体によるKATO III細胞のADCC細胞殺傷活性を示す。
【
図7】クローディン18.2ヒト化抗体による腫瘍細胞のCDC細胞殺傷活性を示す。
【
図8】クローディン18.2抗体の細胞内取り込みを示す。レーザー共焦点によると、ヒト化クローディン18.2抗体(赤色)が細胞膜に結合し、その一部が細胞内に取り込まれた後にリソソーム(緑色)と重なり、矢印で示される黄色のスポット領域を形成する(青色が細胞核である)ことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
I.定義
本発明において、特に断りのない限り、本明細書で使用される科学用語及び技術用語は、当業者が一般的に理解する意味を有する。また、本明細書において使用されるタンパク質及び核酸化学、分子生物学、細胞及び組織培養、微生物学、免疫学の関連用語及び実験室の操作ステップは、いずれも対応する分野で広く使用されている用語及び一般的なステップである。また、本発明をよりよく理解するために、以下、関連する用語の定義及び解釈を提供する。
【0015】
一態様において、本明細書は、クローディン18.2に特異的に結合する抗体(例えば、モノクローナル抗体)及びその抗原結合断片を提供する。具体的な態様において、本明細書は、ヒトクローディン18.2に特異的に結合する抗クローディン18.2モノクローナル抗体を提供し、上記抗クローディン18.2抗体は、親抗体の変異体を含む。具体的な態様において、本明細書は、クローディン18.2(例えば、ヒトクローディン18.2)に特異的に結合する抗体を提供する。特定の態様において、本明細書は、1つ以上のアミノ酸残基の修飾を含み、上記修飾のない親抗体と比べて、抗原との親和性を維持する抗クローディン18.2抗体(例えば、重鎖可変領域のフレームワーク領域における5~13個のアミノ酸置換)を提供する。
【0016】
本明細書において使用されるとき、用語「約」又は「およそ」は、特に断りのない限り、所定の値又は範囲のプラス又はマイナス10%以内を意味する。整数にする場合、これらの用語は、所定の値又は範囲のプラス又はマイナス10%以内において、最も近い整数に切り上げる又は切り下げることを意味する。
【0017】
抗体鎖のポリペプチド配列に関して、語句「実質的に同一」は、参照ポリペプチド配列に対して、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%以上の配列同一性を示す抗体鎖として解釈され得る。核酸配列に関して、該用語は、参照核酸配列に対して、少なくとも60%より高く、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%より高い配列同一性を示すヌクレオチド配列として解釈され得る。
【0018】
配列「相同性」又は「同一性」は、本分野で一致して認められている意味であり、開示された技術を用いて、2つの核酸又はポリペプチド分子又は領域間の配列同一性のパーセンテージを算出することができる。配列相同性は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドの全長に沿って、又は該分子の領域に沿って測定することができる。2つのポリヌクレオチド又はポリペプチド間の相同性を測定するための方法は多数あるが、用語「相同性」は、当業者に周知である(Carrillo, H. & Lipman, D.,SIAM J Applied Math 48:1073(1988))。
【0019】
「置換」変異体は、天然配列中の少なくとも1つのアミノ酸残基が除去され、同じ位置に異なるアミノ酸が挿入された変異体である。上記置換は、単一とすることができ、ここでは分子における1つのアミノ酸のみが置換されており、或いは、上記置換は、複数とすることができ、ここでは同じ分子における2つ以上のアミノ酸が置換されている。複数の置換は、連続した部位に存在することができる。同様に、1つのアミノ酸は、複数の残基で置換されてよく、その場合、このような変異体は、置換と挿入の両方を含む。「挿入」変異体は、1つ以上のアミノ酸が天然配列中の特定の位置におけるあるアミノ酸に直接隣接して挿入された変異体である。あるアミノ酸に直接隣接するとは、該アミノ酸のα-カルボキシル官能基又はα-アミノ官能基に連結することを意味する。「欠失」変異体は、天然アミノ酸配列中の1つ以上のアミノ酸が除去された変異体である。通常、欠失変異体では、分子の特定の領域中の1つ又は2つのアミノ酸が欠失している。
【0020】
抗体の可変ドメインの文脈における用語「可変」は、抗体間で配列が大きく異なり、その特定の標的に対する特定の抗体の特異的認識及び結合において使用される、関連する分子のいくつかの部分を指す。しかしながら、可変性は、抗体の可変ドメインにわたって均等に分布していない。可変性は、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方における、相補性決定領域(CDRs、すなわち、CDR1、CDR2及びCDR3)又は超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク(FR)領域又はフレームワーク配列と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、3つのCDRsによって連結し、β-シート配置を主に取る4つのFR領域を含み、CDRsは、β-シート構造に連結するループを形成し、ある場合にはβ-シート構造の一部を形成する。各鎖におけるCDRは、FR領域によって接近して連結することが多く、他の鎖由来のCDRと共に、抗体の標的結合部位(エピトープ又は決定基)の形成に寄与する。本明細書において使用されるとき、免疫グロブリンアミノ酸残基の番号付けは、特に断りのない限り、Kabatらの免疫グロブリンアミノ酸残基の番号付けシステムに従って行われる。1つのCDRは、同族エピトープに特異的に結合する能力を有することができる。
【0021】
本明細書において使用されるとき、抗体の「抗体断片」又は「抗原結合断片」は、全長未満であるが、抗原に結合する抗体の可変領域の一部(例えば、1つ以上のCDR及び/又は1つ以上の抗体結合部位)を少なくとも含有し、したがって、結合特異性及び全長抗体の特異的結合能の少なくとも一部を保持する全長抗体の任意の部分を指す。したがって、抗原結合断片は、抗体断片が由来する抗体と同一の抗原に結合する抗原結合部分を含有する抗体断片を指す。抗体断片は、全長抗体の酵素的処理によって産生された抗体誘導体と、合成的に、例えば、組換えによって産生された誘導体とを含む。抗体は、抗体断片を含む。抗体断片の例は、Fab、Fab’、F(ab’)2、一本鎖Fv(scFv)、Fv、dsFv、ダイアボディ、Fd、及びFd’断片、並びに修飾断片を含めたその他の断片を含むが、これらに限定されない。上記断片は、例えば、ジスルフィド結合によって、及び/又はペプチドリンカーによって互いに連結している複数の鎖を含むことができる。抗体断片は、一般的に、少なくとも又は約50個のアミノ酸、通常、少なくとも又は約200個のアミノ酸を含有する。抗原結合断片は、抗体フレームワーク中に挿入された場合に(対応する領域を置換することなどによって)、抗原に免疫特異的に結合する(すなわち、少なくとも又は少なくとも約107~108M-1のKaを示す)抗体をもたらす任意の抗体断片を含む。「機能的断片」又は「抗クローディン18.2抗体の類似体」は、リガンドに結合するか又はシグナル伝達を開始する上記受容体の能力を抑止するか又は実質的に低下させることができる断片又は類似体である。本明細書において使用されるとき、機能的断片は、一般的に「抗体断片」と同義であり、そして抗体に関しては、リガンドに結合するか又はシグナル伝達を開始する上記受容体の能力を抑止するか又は実質的に低下させることができる、Fv、Fab、F(ab’)2などの断片を指すことができる。「Fv」断片は、非共有結合において、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体(VH-VL二量体)からなる。該立体配置では、各可変ドメインの3つのCDRsが相互作用して、インタクト抗体中のようにVH-VL二量体の表面上で標的結合部位を決定する。全体として、上記6つのCDRsは、インタクト抗体に標的結合特異性を与える。しかしながら、単一の可変ドメイン(又は標的に特異的な3つのCDRsのみを含むFvの半分)でさえ、標的を認識し、結合する能力を有することができる。
【0022】
本明細書において使用されるとき、「モノクローナル抗体」は、同一抗体の集団を指し、これは、モノクローナル抗体の集団中の個々の抗体分子各々が、他の抗体分子に対して同一であることを意味する。このような特性は、複数の異なる配列を有する抗体を含有する抗体のポリクローナル集団の特性とは対照的である。モノクローナル抗体は、いくつかの周知の方法によって調製できる(Smith et al.(2004)J. Clin.Pathol. 57, 912-917;及びNelson et al., J Clin Pathol (2000), 53, 111-117)。例えば、モノクローナル抗体は、例えば、骨髄腫細胞と融合して、ハイブリドーマ細胞株を産生することによるB細胞の不死化によって、又はEBVなどのウイルスによるB細胞の感染によって調製できる。組換え技術は、インビトロで、抗体をコードするヌクレオチドの人工配列を保有するプラスミドを用いて、宿主細胞を形質転換することによって、宿主細胞のクローン集団から抗体を調製することもできる。
【0023】
本明細書において使用されるとき、用語「ハイブリドーマ」又は「ハイブリドーマ細胞」は、抗体を産生するリンパ球と抗体を産生しない癌細胞を融合することにより産生される細胞又は細胞株(通常、骨髄腫又はリンパ腫細胞)を指す。当業者に知られているように、ハイブリドーマは、特定のモノクローナル抗体を産生し、持続的に供給することができる。ハイブリドーマを産生するための方法は、本分野において周知である。用語「ハイブリドーマ」又は「ハイブリドーマ細胞」に言及する場合、それは、ハイブリドーマのサブクローン及び子孫細胞をさらに含む。
【0024】
本明細書において使用されるとき、全長抗体は、2つの全長重鎖(例えば、VH-CH1-CH2-CH3又はVH-CH1-CH2-CH3-CH4)と、2つの全長軽鎖(VL-CL)と、ヒンジ領域とを有する抗体、例えば、抗体を分泌するB細胞によって天然に産生される抗体と合成的に産生される同一ドメインを有する抗体である。
【0025】
用語「キメラ抗体」は、可変領域配列が1つの種に由来し定常領域配列が別の種に由来する抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体に由来し定常領域配列がヒト抗体に由来する抗体を指す。
【0026】
「ヒト化」抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含有する、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、又はその断片(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、又は抗体の他の抗原結合サブ配列)である、非ヒト(例えばマウス)抗体の形態を指す。好ましくは、ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギなどの非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基によって置換されている、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0027】
また、ヒト化において、VH及び/又はVLのCDR1、CDR2及び/又はCDR3内のアミノ酸残基を突然変異させることにより、抗体の1つ以上の結合特性(例えば親和性)を改善することも可能である。突然変異は、例えば、PCRによって媒介される突然変異を行うことにより導入することができ、抗体の結合又は他の機能特性への影響は、本明細書に記載のインビトロ又はインビボ試験により評価することができる。一般的には、保存的突然変異が導入される。このような突然変異は、アミノ酸置換、添加又は欠失であってよい。また、CDR内の突然変異は、通常、1つ又は2つを超えない。したがって、本発明に係るヒト化抗体は、CDR内に1又は2個のアミノ酸変異を含有する抗体をさらにカバーする。
【0028】
本明細書において使用されるとき、用語「エピトープ」は、抗体のパラトープが結合する、抗原上の任意の抗原決定基を指す。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群を含有し、通常、特定の三次元構造的特徴及び特定の荷電特徴を有する。
【0029】
本明細書において使用されるとき、抗体又はその抗原結合断片に関して、用語「特異的に結合する」又は用語「免疫特異的に結合する」は、本明細書において交換可能に使用され、抗体又は抗原結合断片の、抗体と抗原の抗体結合部位との間の非共有結合相互作用によって、同族抗原と1つ以上の非共有結合を形成する能力を指す。上記抗原は、単離された抗原であってもよく、腫瘍細胞中に存在してもよい。通常、抗原に免疫特異的に結合する(又は特異的に結合する)抗体は、約1×107M-1若しくは1×108M-1若しくはそれ以上の親和性定数Ka(又は1×10-7M若しくは1×10-8M若しくはそれ以下の解離定数(Kd))で上記抗原に結合する。親和性定数は、抗体反応の標準的動力学的方法、例えば、免疫測定、表面プラズモン共鳴(SPR)(Rich and Myszka (2000) Curr. Opin. Biotechnol 11:54;Englebienne (1998)Analyst.123:1599)、等温滴定熱量測定法(ITC)又は本分野で周知のその他の動力学的相互作用測定によって測定することができる(さらに、抗体の結合親和性を算出するための例示的SPR及びITC法の説明については、米国特許第7,229,619号を参照)。結合速度のリアルタイム検出及びモニタリングのための装置及び方法は周知であり、市販されている。
【0030】
本明細書において使用されるとき、抗体に関する用語「競合」は、第1の抗体又はその抗原結合断片が、第2の抗体又はその抗原結合断片の結合と十分に類似した方式でエピトープに結合し、それによって、第1の抗体とその同族エピトープの結合の結果が、第2の抗体の非存在下よりも、第2の抗体の存在下で、検出可能に低下することを意味する。或いは、第2の抗体とそのエピトープの結合も第1の抗体の存在下で検出可能に低下する場合もありうるが、そうである必要はない。すなわち、第1の抗体によって第2の抗体とそのエピトープとの結合を抑制することができ、第2の抗体によって第1の抗体とその各自のエピトープとの結合を抑制する必要はない。しかしながら、それぞれの抗体が、同レベルか、より高いレベルか、より低いレベルかにかかわらず、他の抗体とその同族エピトープ又はリガンドとの結合を検出可能に抑制する場合、上記抗体は、その各自のエピトープの結合について互いに「交差競合する」と言われる。競合及び交差競合抗体はどちらも本発明に含まれる。このような競合又は交差競合がどのようなメカニズムで発生するかにかかわらず(例えば、立体障害、立体配位変化、又は共通エピトープ若しくはその断片との結合)、当業者であれば、本発明の教示に基づいて、このような競合及び/又は交差競合抗体が本発明に含まれ、本発明に開示された方法に適用可能であることを認識することができる。
【0031】
本明細書において使用されるとき、用語「ポリヌクレオチド」及び「核酸分子」は、少なくとも2つの連結しているヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体を含有するオリゴマー又はポリマーであり、通常、リン酸ジエステル結合を介して連結するデオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸を含む(RNA)。本明細書において使用されるとき、用語「核酸分子」は、DNA分子及びRNA分子を含むことを意図する。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であってもよく、かつcDNAであってもよい。
【0032】
本明細書において使用されるとき、単離された核酸分子は、核酸分子の天然供給源中に存在するその他の核酸分子から分離される核酸分子である。cDNA分子などの「単離された」核酸分子は、組換え技術によって調製される場合に、その他の細胞性物質若しくは培地を実質的に含まないもの、又は化学的に合成される場合に、化学前駆体若しくはその他の化学物質を実質的に含まないものであってよい。本明細書に係る例示的な単離された核酸分子は、提供される抗体又は抗原結合断片をコードする単離された核酸分子を含む。
【0033】
本明細書において使用されるとき、核酸配列、領域、エレメント又はドメインに関して、用語「作動可能に連結する」は、核酸領域が互いに機能的に関連していることを示す。例えば、プロモーターは、ポリペプチドをコードする核酸に作動可能に連結することができ、それによって、上記プロモーターは、上記核酸の転写を調節又は媒介する。
【0034】
本明細書に記載の配列表における上記配列の「保存的配列修飾」、すなわち、ヌクレオチド配列によりコードされるか又はアミノ酸配列を含む抗体と抗原との結合を排除しないヌクレオチド及びアミノ酸配列修飾も提供される。これらの保存的配列修飾は、保存的ヌクレオチド、アミノ酸置換、及び、ヌクレオチド及びアミノ酸の付加及び欠失を含む。例えば、本分野で周知の標準技術(例えば、部位特異的変異及びPCR媒介性変異誘発)により修飾を本明細書に記載の配列表に導入することができる。保存的配列修飾は、保存的アミノ酸置換を含み、アミノ酸残基は、類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換される。類似の側鎖を有するアミノ酸残基ファミリーは、本分野において定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン及びヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非帯電極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖を有するアミノ酸(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含む。したがって、抗クローディン18.2抗体における予測される非必須アミノ酸残基は、好ましくは、同じ側鎖ファミリーからの別のアミノ酸残基で置換される。抗原結合を排除しないヌクレオチド及びアミノ酸の保存的置換を同定する方法は、本分野において周知である(例えば、Blommellら,Biochem. 32:1180-1187(1993);Kobayashiら,Protein Eng.12(10):879-884(1999);及びBurksら,Proc. Natl.Acad. Sci. USA 94:412-417(1997)を参照)。
【0035】
他の選択肢として、別の実施形態において、例えば飽和変異誘発により、抗クローディン18.2抗体をコードする配列の全部又は一部に沿ってランダムに変異を導入することができ、得られた修飾された抗クローディン18.2抗体を、改善された結合活性についてスクリーニングすることができる。
【0036】
本明細書において使用されるとき、「発現」は、ポリヌクレオチドの転写及び翻訳によってポリペプチドを産生するプロセスを指す。ポリペプチドの発現レベルは、例えば、宿主細胞から産生されたポリペプチドの量を測定する方法を含む、本分野で周知の任意の方法を使用して評価することができる。このような方法は、ELISAによる細胞溶解物中のポリペプチドの定量、ゲル電気泳動法後のクーマシーブルー染色、Lowryタンパク質アッセイ及びBradfordタンパク質アッセイを含むことができるが、これらに限定されない。
【0037】
本明細書において使用されるとき、「宿主細胞」は、担体を受け取り、維持し、複製し、増幅するための細胞である。宿主細胞は、さらに、担体によってコードされるポリペプチドを発現するために使用することができる。宿主細胞が分裂するとき、担体に含有される核酸が複製されて、核酸を増幅する。宿主細胞は、真核細胞であってもよく、原核細胞であってもよい。好適な宿主細胞は、CHO細胞、様々なCOS細胞、HeLa細胞、HEK細胞、例えば、HEK293細胞を含むが、これらに限定されない。
【0038】
本明細書において使用されるとき、「担体」は、複製可能な核酸であり、担体を適切な宿主細胞に形質転換するとき、該担体から1つ以上の異種のタンパク質を発現させることができる。担体についての言及は、一般的に制限消化及び連結によって、ポリペプチド又はその断片をコードする核酸を導入できる担体を含む。担体についての言及は、ポリペプチドをコードする核酸を含有する担体をさらに含む。担体は、核酸の増幅のために、又は核酸によってコードされるポリペプチドの発現/提示のために、ポリペプチドをコードする核酸を宿主細胞に導入するために使用される。担体は、一般的にエピソームのままであるが、遺伝子又はその部分をゲノム染色体に組み込むことを引き起こすように設計されてもよい。また、酵母人工染色体及び哺乳動物人工染色体などの人工染色体である担体も考慮される。このような媒体の選択及び用途は、当業者に周知である。
【0039】
本明細書において使用されるとき、担体は、「ウイルス担体」又は「ウイルスの担体」をさらに含む。ウイルスの担体は、外因性遺伝子を(媒体又はシャトル(shuttle)として)細胞に移行するように、外因性遺伝子に作動可能に連結した、操作されたウイルスである。
【0040】
本明細書において使用されるとき、「発現担体」は、DNAを発現することができる担体を含み、上記DNAは、例えば、プロモーター領域の、DNA断片の発現に影響を与える調節配列に作動可能に連結する。このような追加の断片は、プロモーター及びターミネーター配列を含むことがあり、任意選択で、1つ以上の複製起点、1つ以上の選択可能マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル等を含むことができる。発現担体は、一般的に、プラスミド又はウイルスDNAに由来するか、又は両方のエレメントを含有することができる。したがって、発現担体は、組換えDNA又はRNA構築物、例えば、プラスミド、ファージ、組換えウイルス、又は適切な宿主細胞への導入に際してクローニングされたDNAの発現をもたらす他の担体を指す。適切な発現担体は、当業者に周知であり、真核細胞及び/又は原核細胞において複製可能な発現担体、及びエピソームのままである発現担体又は宿主細胞ゲノムに組み込まれる発現担体を含む。
【0041】
本明細書において使用されるとき、疾患を有する又は疾患状態にある個体を「治療する」とは、上記個体の症状が、部分的又は全体的に寛解するか、又は治療後そのまま変化しないことを意味する。したがって、治療は、予防、治療及び/又は治癒を含む。予防は、潜在的な疾患の防止及び/又は症状の悪化若しくは疾患の進行の防止を指す。治療は、提供される任意の抗体若しくはその抗原結合断片、及び本明細書において提供される組成物の任意の薬学的用途をさらに含む。
【0042】
本明細書において使用されるとき、「治療効果」は、個体の治療によって得られる効果を意味し、疾患若しくは疾患状態の症状の変化、通常は改良若しくは改善、又は疾患若しくは疾患状態の治癒である。
【0043】
本明細書において使用されるとき、「治療有効量」又は「治療有効用量」は、対象への投与後に治療効果を達成するのに少なくとも十分な、薬剤、化合物、物質又は化合物を含有する組成物の量を指す。したがって、それは、疾患又は病症の症状を防止、治癒、改善、抑制又は部分的に抑制するために必要な量である。
【0044】
本明細書において使用されるとき、「予防有効量」又は「予防有効用量」は、対象への投与時に、例えば疾患又は症状の発生又は再発の防止又は遅延、疾患又は症状の発生又は再発の可能性の低減など、意図される予防効果を有する薬剤、化合物、物質又は化合物を含有する組成物の量を指す。完全な予防有効用量は、1用量の投与で達成する必要はなく、一連の用量が投与されたときのみ達成されてもよい。したがって、予防有効量は、1回又は複数回の投与において投与し得る。
【0045】
本明細書において使用されるとき、用語「患者」は、哺乳動物、例えばヒトを指す。
【0046】
II.発明を実施するための形態
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号2-4、12-14、22-24、32-34、42-44、52-54、62-64、72-74、82-84、92-94、102-104、112-114、122-124、132-134、142-144、152-154、157-159、162-164、167-169、172-174、177-179、182-184、187-189、192-194、197-199、202-204、207-209、212-214、217-219、222-224、227-229、232-234又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖CDR、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号7-9、17-19、27-29、37-39、47-49、57-59、67-69、77-79、87-89、97-99、107-109、117-119、127-129、137-139、147-149、237-239、242-244、247-249、252-254、257-259、262-264、267-269又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖CDRを含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0047】
前の態様に係る抗体又はその抗原結合部分は、アミノ酸配列の配列番号2、12、22、32、42、52、62、72、82、92、102、112、122、132、142、152、157、162、167、172、177、182、187、192、197、202、207、212、217、222、227、232又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖CDR1、アミノ酸配列の配列番号3、13、23、33、43、53、63、73、83、93、103、113、123、133、143、153、158、163、168、173、178、183、188、193、198、203、208、213、218、223、228、233又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖CDR2、アミノ酸配列の配列番号4、14、24、34、44、54、64、74、84、94、104、114、124、134、144、154、159、164、169、174、179、184、189、194、199、204、209、214、219、224、229、234又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖CDR3、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号7、17、27、37、47、57、67、77、87、97、107、117、127、137、147、237、242、247、252、257、262、267又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖CDR1、アミノ酸配列の配列番号8、18、28、38、48、58、68、78、88、98、108、118、128、138、148、238、243、248、253、258、263、268又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖CDR2、アミノ酸配列の配列番号9、19、29、39、49、59、69、79、89、99、109、119、129、139、149、239、244、249、254、259、264、269又はそれらの任意の変形体から選択された軽鎖CDR3を含む。
【0048】
上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合部分は、アミノ酸配列の配列番号1、11、21、31、41、51、61、71、81、91、101、111、121、131、141、151、156、161、166、171、176、181、186、191、196、201、206、211、216、221、226、231又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号6、16、26、36、46、56、66、76、86、96、106、116、126、136、146、236、241、246、251、256、261、266又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む。
【0049】
上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子は、配列番号5、15、25、35、45、55、65、75、85、95、105、115、125、135、145、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235又はそれらの任意の変異体から選択された抗体重鎖核酸配列、及び/又は、配列番号10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、240、245、250、255、260、265、270又はそれらの任意の変異体から選択された抗体軽鎖核酸配列を含む。
【0050】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号151、156、161、166、171、176、181、186、191、196、201、206、211、216、221、226、231又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号236、241、246、251、256、261、266又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0051】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号151又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号236又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0052】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号151又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号241又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0053】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号151又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0054】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号156又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号236又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0055】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号156又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号241又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0056】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号156又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0057】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号161又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号236又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0058】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号161又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号241又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0059】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号161又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0060】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号166又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号236又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0061】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号166又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号241又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0062】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号166又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0063】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号171又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号251又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0064】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号171又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0065】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号176又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号251又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0066】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号176又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0067】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号181又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号251又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0068】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号181又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0069】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号186又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号251又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0070】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号186又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0071】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号191又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号251又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0072】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号191又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0073】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号196又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号251又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0074】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号196又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0075】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号201又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号251又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0076】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号201又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号256又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0077】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号206又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号261又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0078】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号206又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号266又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0079】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号211又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号261又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0080】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号211又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号266又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0081】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号216又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号261又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0082】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号216又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号266又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0083】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号221又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号261又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0084】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号221又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号266又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0085】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号226又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号261又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0086】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号226又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号266又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0087】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号231又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号261又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0088】
一態様において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号231又はその任意の変異体から選択された重鎖可変領域、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号266又はその任意の変異体から選択された軽鎖可変領域を含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分に関する。
【0089】
1つの具体的な実施形態において、本開示は、アミノ酸配列の配列番号152-154、157-159、162-164、167-169、172-174、177-179、182-184、187-189、192-194、197-199、202-204、207-209、212-214、217-219、222-224、227-229、232-234又はそれらの任意の変異体から選択された重鎖CDR、及び/又は、アミノ酸配列の配列番号237-239、242-244、247-249、252-254、257-259、262-264、267-269又はそれらの任意の変異体から選択された軽鎖CDRを含む、ヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0090】
一態様に係るヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分は、(1)それぞれ配列番号152-154を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号237-239を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(2)それぞれ配列番号152-154を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号242-244を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(3)それぞれ配列番号152-154を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号247-249を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(4)それぞれ配列番号157-159を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号237-239を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(5)それぞれ配列番号157-159を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号242-244を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(6)それぞれ配列番号157-159を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号247-249を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(7)それぞれ配列番号162-164を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号237-239を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(8)それぞれ配列番号162-164を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号242-244を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(9)それぞれ配列番号162-164を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号247-249を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(10)それぞれ配列番号167-169を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号237-239を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(11)それぞれ配列番号167-169を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号242-244を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(12)それぞれ配列番号167-169を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号247-249を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(13)それぞれ配列番号172-174を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(14)それぞれ配列番号172-174を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(15)それぞれ配列番号177-179を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(16)それぞれ配列番号177-179を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(17)それぞれ配列番号182-184を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(18)それぞれ配列番号182-184を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(19)それぞれ配列番号187-189を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(20)それぞれ配列番号187-189を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(21)それぞれ配列番号192-194を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(22)それぞれ配列番号192-194を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(23)それぞれ配列番号197-199を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(24)それぞれ配列番号197-199を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(25)それぞれ配列番号202-204を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号252-254を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(26)それぞれ配列番号202-204を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号257-259を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(27)それぞれ配列番号207-209を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(28)それぞれ配列番号207-209を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(29)それぞれ配列番号212-214を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(30)それぞれ配列番号212-214を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(31)それぞれ配列番号217-219を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(32)それぞれ配列番号217-219を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(33)それぞれ配列番号222-224を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(34)それぞれ配列番号222-224を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(35)それぞれ配列番号227-229を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(36)それぞれ配列番号227-229を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(37)それぞれ配列番号232-234を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号262-264を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、(38)それぞれ配列番号232-234を含む重鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列、及び/又はそれぞれ配列番号267-269を含む軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3配列という重鎖及び軽鎖のCDR組み合わせを含む。
【0091】
一態様に係るヒトクローディン18.2に結合する抗体又はその抗原結合部分は、上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合部分に対して、少なくとも60%より高く、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%より高い配列同一性を有する。
【0092】
一態様に係る核酸分子は、上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子、又はそれに対して少なくとも60%より高く、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%より高い配列同一性を有する。
【0093】
一態様に係る担体は、上記いずれかの態様に係る核酸を含む。
【0094】
一態様に係る細胞は、上記いずれかの態様に係る担体を含む。
【0095】
一態様に係る医薬組成物は、上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合部分又はそのコード核酸及び薬学的に許容される担体を含む。
【0096】
一態様に係る癌を治療する方法は、治療有効量の上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合断片又は核酸分子又は担体又は細胞又は医薬組成物を上記哺乳動物に投与するステップを含む。
【0097】
一態様に係る用途は、上記いずれかの態様に係る抗体又はその抗原結合断片又は核酸分子又は担体又は細胞又は医薬組成物の、哺乳動物の癌を治療するための薬物の調製における用途である。
【0098】
上記いずれかの態様において、任意選択で、上記癌は胃癌であり、任意選択で、上記抗体は、ADCC又はCDC効果によって癌細胞を死滅させ、任意選択で、上記抗体は、その他の薬物、例えば、標識化接合体又は細胞毒性接合体と結合する。
【0099】
一態様において、本開示は、抗体、その断片、相同体、その誘導体等、例えば、標識化接合体又は細胞毒性接合体、並びに抗体、特定の細胞型を死滅させる接合体などの使用についての使用説明書を含むキットをさらに含む。該説明書は、インビトロ、インビボ又はエキソビボでの抗体、接合体などを使用するための指示を含むことができる。抗体は、液体形態であってもよく、一般的に凍結乾燥された固体であってもよい。該キットは、適切な他の試薬、例えば、緩衝液、再構成溶液及び所定の用途に必要な他の成分を含むことができる。その用途のための、例えば、治療上の用途又は診断アッセイの実施のための説明書と共に、所定量の包装された試薬の組み合わせが検討される。抗体が標識され、例えば酵素で標識される場合、該キットは、基質と酵素に必要な補因子(例えば、検出可能な発色団又は発蛍光団を提供する基質前駆体)とを含むことができる。また、他の添加剤、例えば、安定剤、緩衝液(例えば、ブロッキング用緩衝液又は溶解用緩衝液)などを含むこともできる。様々な試薬の相対量を変更して、試薬溶液の濃縮物を提供してもよく、それによって使用者に柔軟性、空間の節約、試薬の節約等がもたらされる。これらの試薬は、一般的に凍結乾燥された乾燥粉末として提供され、溶解時に適切な濃度を有する試薬溶液を提供する賦形剤を含む。
【0100】
一態様に係る用途は、上記いずれかの態様に係る抗体又はその機能的断片又は核酸分子又は担体又は細胞又は医薬組成物又はキットの、細胞表面のクローディン18.2の細胞内取り込みを媒介する試薬の調製における用途である。
【0101】
本発明は、二重特異的抗クローディン18.2抗体を含む多価抗体をさらに含み、この抗体は、該抗体に連結し、診断又は治療の機能を有するエフェクター分子、原子又は他の物質を有する。例えば、抗体は、該抗体に連結し、癌をインビボで診断又は治療するために使用される放射性診断標識、又は放射性細胞毒性原子若しくは金属、又は細胞毒性物質(例えば、リシン鎖)を有することができる。
【0102】
また、本発明に係る抗体は、免疫測定法、精製方法、及び免疫グロブリン又はその断片を使用する他の方法において使用されてもよい。このような用途は、本分野において周知である。
【0103】
したがって、本発明は、本発明に係る抗クローディン18.2抗体又はその断片を含む組成物をさらに提供し、上記抗体は、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせやすく、これは本分野において一般的な手法である。
【0104】
本発明において使用される用語「医薬組成物」は、様々な調製物の製剤を指す。治療有効量の多価抗体を含む製剤は、滅菌液体溶液、液体懸濁液又は凍結乾燥形態であり、任意選択で安定剤又は賦形剤を含有する。
【0105】
本発明において使用される用語「癌」は、哺乳動物、特にヒトの生理的状態を指すか又は説明しており、その典型的な特徴は、細胞が無秩序に増殖することである。癌の例は、癌腫(carcinoma)、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病を含むが、これらに限定されない。
【0106】
本発明に係る抗体は、単独で投与される組成物として使用されてもよく、他の活性剤と併用されてもよい。
【0107】
なお、上記実施形態に係る治療薬は、適切な薬学的に許容される担体、賦形剤、及び製剤中に組み込まれて移行、送達、耐性などを改善する他の試薬とともに投与されることを理解されたい。多数の適切な製剤は、すべての医薬品化学者にとって周知の薬局方、特にBlaug、Seymourによる第87章に見出すことができる。これらの製剤は、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー剤、ワックス、オイル、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)含有担体(例えば、LipofectinTM)、DNA接合体、無水吸収性ペースト、水中油型及び油中水型エマルション、エマルションカーボワックス(異なる分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及びカーボワックスを含む半固体混合物を含む。製剤中の有効成分が製剤によって不活性化されず、製剤が投与経路において生理学的に適合性及び忍容性を示すものである限り、上記いずれかの混合物は、いずれも本発明に係る治療及び治療方法に適用可能である。
【0108】
1つの実施形態において、上記抗体を治療薬として使用することができる。このような試薬は、一般的に、被験体の、異常なクローディン18.2の発現、活性及び/又はシグナル伝達に関連する疾患又は病態を治療、緩和及び/又は予防するために使用される。治療レジメンは、標準的な方法を用いて、例えば異常なクローディン18.2の発現、活性及び/又はシグナル伝達に関連する疾患又は障害、例えば癌又は他の腫瘍性障害に罹患した(又はそれらを発症するリスクを有するか又はそれらが進行している)ヒト患者などの被験体を特定することによって、実施することができる。抗体製剤、好ましくはその標的抗原に対して高い特異性及び高い親和性を有する抗体製剤は、被験体に投与されると、標的との結合による作用を一般的に示す。抗体の投与によって、標的(例えばクローディン18.2)の発現、活性及び/又はシグナル伝達機能を除去又は抑制又は阻止することができる。抗体の投与によって、標的(例えばクローディン18.2)とそれが天然に結合する内因性リガンドとの結合を除去又は抑制又は阻止することができる。例えば、抗体は標的に結合して、クローディン18.2の発現、活性及び/又はシグナル伝達を調節、遮断、抑制、減少、阻害、中和するか、又は他の形で妨げる。いくつかの実施形態において、異常なクローディン18.2の発現に関連する疾患又は障害を治療するために、重鎖及び軽鎖のCDRを有する抗体を被験体に投与することができる。1つの実施形態において、異常なクローディン18.2の発現に関連する疾患又は障害は、癌であってもよい。
【0109】
非限定的な例として、異常なクローディン18.2の発現、活性及び/又はシグナル伝達に関連した疾患又は障害は、血液癌及び/又は固形腫瘍を含む。血液癌は、例えば、白血病、リンパ腫及び骨髄腫を含む。非限定的な例として、いくつかの形態の白血病は、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、骨髄増殖性疾患/腫瘍(MPDS)、及び骨髄異形成症候群を含む。非限定的な例として、いくつかの形態のリンパ腫は、ホジキンリンパ腫、低悪性度及び侵襲性非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、及び濾胞性リンパ腫(小細胞型及び大細胞型)を含む。非限定的な例として、いくつかの形態の骨髄腫は、多発性骨髄腫(MM)、巨細胞骨髄腫、重鎖骨髄腫、及び軽鎖又はBence-Jones骨髄腫を含む。固形腫瘍は、例えば、乳房腫瘍、卵巣腫瘍、肺腫瘍、膵臓腫瘍、前立腺腫瘍、黒色腫、結腸直腸腫瘍、肺腫瘍、頭頸部腫瘍、膀胱腫瘍、食道腫瘍、肝臓腫瘍、及び腎臓腫瘍を含む。
【0110】
癌及び他の腫瘍性障害に関連する症状は、例えば、炎症、熱、全身倦怠感、熱、疼痛、しばしば局所炎症、食欲減退、体重減少、浮腫、頭痛、疲労、発疹、貧血、筋力低下、筋疲労、及び腹痛、下痢又は便秘などの腹部症状を含む。
【0111】
別の実施形態において、クローディン18.2を標的とする抗体は、クローディン18.2の局在化及び/又は定量に関連した、本分野で周知の方法により使用することができる(例えば、適切な生理学的試料中のクローディン18.2及び/又はクローディン18.2のレベルを測定するための使用、診断方法における使用、タンパク質のイメージングにおける使用など)。1つの特定の実施形態において、クローディン18.2又はその誘導体、断片、類似体若しくは相同体に対して特異的であり、抗体由来の抗原結合ドメインを含む抗体は、薬理学的に活性な化合物(以下、「治療薬」と呼ばれる)として使用される。
【0112】
別の実施形態において、免疫アフィニティー、クロマトグラフィー又は免疫沈降法などの標準的な方法によって、クローディン18.2に対して特異的な抗体を使用してクローディン18.2ポリペプチドを単離することができる。クローディン18.2タンパク質を標的とする抗体(又はその断片)を使用して、生物学的試料中のタンパク質を検出することができる。いくつかの実施形態において、例えば所定の治療レジメンの効果を判定するという目的で、臨床試験手順の一環として生物学的試料中のクローディン18.2を検出することができる。抗体を検出可能な物質と結合する(すなわち物理的に連結する)ことによって、検出を促進することができる。検出可能な物質の例は、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質及び放射性物質を含む。適切な酵素の例は、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ又はアセチルコリンエステラーゼを含み、適切な補欠分子族複合体の例は、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンを含み、適切な蛍光物質の例は、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル又はフィコエリトリンを含み、発光物質の1つの例は、ルミノールを含み、生物発光物質の例は、ルシフェラーゼ、フルオレセイン及びイクオリンを含み、適切な放射性物質の例は、125I、131I、35S又は3Hを含む。
【0113】
別の実施形態において、本開示に係る抗体は、試料中のクローディン18.2又はそのタンパク質断片の両方を検出するための試薬として使用することができる。いくつかの実施形態において、抗体は、検出可能な標識を含む。抗体は、ポリクローナル抗体であるか、又はより好ましくはモノクローナル抗体である。完全な抗体又はその断片(例えば、Fab、scFv、又はF(ab’)2)が使用される。抗体に関して用語「標識」は、検出可能な物質を該抗体と結合する(すなわち物理的に連結する)ことによる該抗体の直接的標識と、直接標識された別の試薬との反応による該抗体の間接的標識とを含むことを意図している。間接的標識の例は、蛍光標識された第2の抗体を用いて第1の抗体を検出することと、蛍光標識されたストレプトアビジンによって検出されるようにビオチンで抗体を末端標識することとを含む。用語「生物学的試料」は、被験体から単離された組織、細胞及び生物学的液体、並びに被験体の体内に存在する組織、細胞及び液体を含むことを意図している。したがって、使用される用語「生物学的試料」は、血液、及び血清、血漿又はリンパ液を含む血液の画分又は成分を含む。換言すれば、上記実施形態の検出方法を用いて、生物学的試料中の分析物mRNA、タンパク質又はゲノムDNAをインビトロ及びインビボで検出することができる。例えば、分析物mRNAをインビトロで検出する技術は、Norhternハイブリダイゼーション及びインサイチュハイブリダイゼーションを含む。分析物タンパク質をインビトロで検出する技術は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、Westernブロット、免疫沈降法及び免疫蛍光法を含む。分析物ゲノムDNAをインビトロで検出する技術は、Southernハイブリダイゼーションを含む。また、分析物タンパク質をインビボで検出する技術は、標識した抗分析物タンパク質抗体を被験体の体内に導入することを含む。例えば、放射性マーカーで抗体を標識し、次に標準的なイメージング法によって被験体の体内における該放射性マーカーの存在又は位置を検出することができる。
【0114】
本明細書に記載の抗体及びその誘導体、断片、類似体及び相同体を、投与に適した医薬組成物中に添加することができる。このような組成物の調製に関連する原理及び考慮事項、並びに成分の選択のガイダンスは、本分野において周知である。
【0115】
このような組成物は、一般的に、抗体及び薬学的に許容される担体を含む。抗体断片を使用するとき、標的タンパク質の結合ドメインに特異的に結合する最も小さい阻害性断片が好ましい。例えば、抗体の可変領域配列に基づいて、標的タンパク質配列に結合する能力を維持したペプチド分子を設計することができる。このようなペプチドは、化学的に合成されるか、及び/又は組換えDNA技術によって産生される(例えば、Marascoら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:7889-7893(1993)を参照)。
【0116】
本明細書において使用されるとき、用語「薬学的に許容される担体」は、薬物投与に適合する任意及びすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを含むことを意図している。適切な薬学的に許容される担体について、本分野では標準的な参考書であるRemington’s Pharmaceutical Sciencesの最新版に述べられており、該書籍は、参照によって本明細書に組み込まれる。このような担体又は希釈剤の好ましい例は、水、生理食塩水、リンゲル液、グルコース溶液及び5%ヒト血清アルブミンを含むが、これらに限定されない。リポソーム、及び固定油などの非水性担体を使用することもできる。このような媒体及び試薬を薬学的活性物質において使用することは、本分野で周知である。任意の従来の媒体又は試薬が抗体と不適合でない限り、組成物におけるその用途が考えられる。
【0117】
上記実施形態の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように配合される。投与経路の例は、非経口投与、例えば静脈内投与、皮内投与、皮下投与、経口投与(例えば吸入)、経皮投与(例えば局所投与)、経粘膜投与及び直腸内投与を含む。非経口投与、皮内投与又は皮下投与に使用される溶液又は懸濁液は、水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール系、グリセリン、プロピレングリコール、又は他の合成溶媒などの注射用滅菌希釈剤と、ベンジルアルコール又はメチルパラベンなどの抗細菌剤と、アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウムなどの酸化防止剤と、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)などのキレート剤と、酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩などの緩衝剤と、塩化ナトリウム又はデキストロースなどの浸透圧調節用試薬とを含むことができる。pHは、塩酸又は水酸化ナトリウムなどの酸又は塩基で調整することができる。非経口製剤は、アンプル、使い捨て注射器、又はガラスやプラスチックで作られた多数回投与バイアルに封入することができる。
【0118】
注射用途に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(本明細書において水溶性である)又は分散液と、滅菌注射溶液又は分散液の即時調製用の滅菌粉末とを含む。静脈内投与について、適切な薬学的に許容される担体は、生理食塩水、静菌水、Cremophor ELTM(BASF社、Parsippany、N.J.)又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む。すべての場合に、組成物は滅菌でなければならず、かつ容易に注射可能である程度に流動性を有さなければならない。組成物は、製造及び保存条件下で安定でなければならず、かつ細菌及び真菌などの微生物の汚染作用を防止しなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール及び液体ポリエチレングリコールなど)を含有する溶媒又は分散媒、及びそれらの適切な混合物であってよい。例えば、レシチンなどのコーティングを使用することにより、分散液の場合に必要な粒径を維持することにより、また、界面活性剤を使用することにより、適正な流動性を保つことができる。微生物の作用に対する防止は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールによって実現することができる。多くの場合に、組成物中に等張剤、例えば糖類、多価アルコール(例えば、マンニトール、ソルビトール)、塩化ナトリウムを含むことが好ましい。上記組成物中に、吸収を遅延させる試薬、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含有することによって、注射用組成物の持続的吸収を実現することができる。
【0119】
必要に応じて、必要量の抗体を、上記に列挙した成分の1つ又は組み合わせ(必要に応じて)を有する適切な溶媒に添加した後、濾過滅菌を行うことにより、滅菌注射溶液を調製することができる。一般的に、塩基性分散媒と上記に列挙したものから選ばれた他の必要な成分とを含む滅菌担体に抗体を添加することにより、分散液を調製する。滅菌注射溶液の調製用の滅菌粉末の場合、調製方法は、有効成分及び任意の更なる所望の成分を含む粉末が得られる真空乾燥及び凍結乾燥であり、それらの成分は上記成分の滅菌濾過溶液由来である。
【0120】
吸入投与について、二酸化炭素などの気体などの適切な推進剤を含む加圧容器、ディスペンサー又は噴霧器からエアロゾルスプレーの形で化合物を投与する。
【0121】
経粘膜的又は経皮的手段によって全身投与を行うこともできる。経粘膜投与又は経皮投与については、製剤中に、浸透すべきバリアに適した浸透剤を使用する。このような浸透剤は、本分野において周知であり、例えば、経粘膜投与のための洗浄剤、胆汁酸塩及びフシジン酸誘導体を含む。経粘膜投与は、鼻スプレー又は坐剤を使用することによって行うことができる。経皮投与については、1つ以上の上記抗体を本分野で周知の膏薬、軟膏、ゲル又はクリームに配合することができる。
【0122】
さらに、直腸投与のために、化合物を坐剤(例えばココアバター又は他のグリセリドなど、従来の坐剤基剤を有するもの)又は停留性浣腸剤の形で調製することができる。
【0123】
1つの実施形態において、上記抗体は、インプラント及びマイクロカプセル化送達システムを含む持続/制御放出製剤などの、身体からの速やかな排出を防ぐ担体を用いて調製することができる。エチレン-酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル及びポリ乳酸などの生分解性、生体適合性ポリマーを使用することができる。このような製剤を調製する方法は、当業者にとって自明である。
【0124】
投与を容易にし、用量を均一にするために、非経口組成物を単位剤形として調製することが特に有利である。本明細書において使用されるとき、単位剤形は、治療される被験体に用いられ、単位用量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、必要な医薬担体とともに所望の治療効果を達成するように計算された所定量の1つ以上の上記抗体を含むものである。上記実施形態の単位剤形の仕様は、抗体の固有の特性及び達成されるべき具体的な治療効果と、個体を治療するためのこのような抗体を配合する技術分野に固有の制限とによって決定され、且つこれらに直接依存する。
【0125】
上記医薬組成物は、投与のための説明書とともに容器、パック又はディスペンサーに入れることができる。
【0126】
本明細書に記載の製剤は、治療される具体的な疾患に応じて複数の上記抗体、好ましくは相補的活性を有するが互いに悪影響を及ぼさないものを含んでもよい。代替的に又はそれに加えて、組成物は、細胞毒性剤、サイトカイン、化学治療薬又は増殖阻害剤などの、その機能を高める試薬を含むことができる。このような分子は、意図する目的に対して有効な量で適切に組み合わせて存在する。例えば、キット内で共存することも、使用中に共存することもできる。
【0127】
1つの実施形態において、1つ以上の上記抗体を併用療法において投与することができる。すなわち、治療薬(様々な形態の癌、自己免疫疾患及び炎症性疾患などの病理学的症状又は障害を治療するために使用される)などの他の試薬と併用して投与することができる。用語「併用」は、本明細書において、試薬をほぼ同じ時点で、同時に又は順次投与することを意味する。順次投与する場合、第2の化合物の投与を開始するとき、2つの化合物のうち第1の化合物が治療部位において依然として有効濃度で検出可能であることが好ましい。1つの場合において、「併用」はまた、本発明の抗体及び他の治療薬がキットに含まれることを意味する。
【0128】
例えば、併用療法は、本明細書に記載の1つ以上の抗体と、1つ以上の追加の治療薬(例えば、下記に詳細に述べるような、1つ以上のサイトカイン及び増殖因子阻害剤、免疫抑制剤、抗炎症剤、代謝阻害剤、酵素阻害剤、及び/又は細胞毒性剤若しくは細胞増殖抑制剤)との同時配合及び/又は同時投与を含むことができる。このような併用療法は、投与される治療薬を低用量で有利に使用することができ、それにより単独療法に関連する様々な潜在的な毒性又は合併症が回避される。
【0129】
明確かつ簡潔な説明の目的のために、本明細書では、同じ又は別個の実施形態の一部として特徴を説明しているが、本発明の範囲は、説明される特徴の全部又は一部を組み合わせたいくつかの実施形態を含み得ることが理解されるであろう。(実施例)
【実施例0130】
<抗クローディン18.2モノクローナル抗体の調製>
Balb/cマウスを免疫するとともにスクリーニングして、クローディン18.2にのみ特異的に結合し、クローディン18の異なるスプライセオソームであるクローディン18.1に結合しないモノクローナル抗体を取得するために複数のポリシーが同時に適用される。具体的には以下のとおりである。
【0131】
1)クローディン18.2安定形質転換細胞株の構築
ヒトクローディン18.1(UniProtKB-P56856)の全長配列を含むプラスミド遺伝子クローディン18.1-puc57-Amp(蘇州鴻迅生物、SynbioTech)を合成した。該プラスミドをテンプレートとし、上流プライマー5’-ttggcaaagaattgctagatgtccaccaccacatgcc-3’及び下流プライマー5’-tgttcgggccctcctcgattacacatagtcgtgcttgg-3’を使用して、ヒトクローディン18.1の全長断片(Met1-Val261)をPCRで増幅した。増幅産物を、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(NEB、Cat:M0530L)により酵素に連結した後、真核発現プラスミドシステムにクローニングした。同様に、ヒトクローディン18.2(UniProtKB-P56856-2)の全長配列を含むプラスミド遺伝子クローディン18.2-puc57-Amp(蘇州鴻迅生物、SynbioTech)を合成した。該プラスミドをテンプレートとし、上流プライマー5’-ttggcaaagaattgctagatggccgtgactgcctgtc-3’及び下流プライマー5’-tgttcgggccctcctcgattacacatagtcgtgcttgg-3’を使用して、ヒトクローディン18.2の全長断片(Met1-Val261)をPCRで増幅した。増幅産物を、NEBuilder HiFi DNA Assembly Master Mix(NEB、Cat:M0530L)により酵素に連結した後、真核発現プラスミドシステムにクローニングした。このプラスミドをそれぞれNIH3T3細胞とHEK293細胞に電気的に形質転換し、1~10μg/mLのPuromycin(Gibco、Cat:A1113803)を使用して安定発現細胞株を段階的に加圧してスクリーニングした。
【0132】
得られたHEK293-クローディン18.1及びHEK293-クローディン18.2安定形質転換細胞株について、まずRT-PCR方法で検証した。Trizol RNA抽出キットを使用して陽性クローン細胞から全RNAを抽出し、逆転写キット(SuperScriptTM First-Strand Synthesis System、Cat:18080051)を使用して、Oligo(dT)プライマーを使用して逆転写を行い、cDNAライブラリを得た。クローディンの2つのスプライス断片であるクローディン18.1とクローディン18.2は、N末端から1番目の細胞外領域(Loop 1)までが異なるため、プライマーKNB14(5’-tgtgcgccaccatggccgtg-3’)、KNB15(5’-tggaaggataagattgtacc-3’)を設計することにより、クローディン18.1とクローディン18.2のLoop 1からC末端までの領域(504bp)を増幅することができる。プライマーKNB16(5’-tgggtgccattggcctcctg-3’)を設計することにより、クローディン18.2のN末端に特異的に相補的に結合し、クローディン18.1のN末端領域に結合せず、クローディン18.2のN末端からC末端までの全長断片(780bp)のみを増幅して、クローディン18.2を発現するKATO III細胞(ATCC HTB-103)を陽性対照とした。結果を
図1に示す。RT-PCRにより、HEK293安定形質転換細胞株がそれぞれクローディン18.1及びクローディン18.2を発現することが示されている。HEK293-クローディン18.2安定形質転換細胞株及び対照KATO III細胞は、いずれもクローディン18.2の特異的な780bpの特徴的なバンドを増幅することができ、HEK293-クローディン18.1は、504bpの共通断片のみを増幅することができる。
【0133】
構築された安定形質転換細胞株HEK293-クローディン18.2細胞及びNIH3T3-クローディン18.2細胞を消化して収集し、PBSで2回洗浄し、管あたり1:200で希釈された第1の抗体ウサギ抗クローディン18.2(Abcam、EPR19202、品番:ab222512)を100μL加え、4℃で60分間培養し、0.5% BSA/PBSで余分な第1の抗体溶液を洗浄し、さらに50μLの第2の抗体ヤギ抗ウサギIgGFc-AF647(Jackson ImmunoResearch、品番:111-606-046)を加え、4℃で45分間インキュベートし、その後に0.5% BSA/PBSで余分な第2の抗体を洗浄し、最後に100μLのPBS溶液で細胞を再懸濁させ、直ちにフローサイトメーターで検出した。結果を
図2、
図3に示す。
【0134】
図2は、FACS実験により、クローディン18.2の全長遺伝子をトランスフェクトしたHEK293-クローディン18.2安定形質転換細胞株を検出した結果を示している。図中、黒色点は、トランスフェクトされていないHEK293細胞であり、灰色点は、HEK293-クローディン18.2安定形質転換細胞株であり、HEK293細胞は、クローディン18.2を発現させず、HEK293-クローディン18.2安定形質転換細胞株は、細胞膜表面にクローディン18.2を高度に発現させている。
【0135】
図3は、FACS実験により、クローディン18.2がNIH3T3-クローディン18.2において高度に発現した安定形質転換細胞株を検出した結果を示している。図中、黒色の線は、陰性対照であり、灰色の陰影は、3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞株である。NO.32-Hは、クローディン18.2が高度に発現した3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞株であり、NO.18-Mは、クローディン18.2が中度に発現した3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞株であり、NO.6-Lは、クローディン18.2が低度に発現した3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞株である。
【0136】
増殖された陽性の安定形質転換細胞株を収集して凍結保存し、NIH3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞株が動物の免疫に用いられる。
【0137】
2)ハイブリドーマからの抗クローディン18.2モノクローナル抗体の調製
6~8週間の雌性Balb/cマウスに対して、3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞又はクローディン18.2をコードするプラスミドでそれぞれ免疫を行い、又は交互に免疫を行った。細胞で免疫を行う場合、毎回1×106 3T3-クローディン18.2安定形質転換細胞を完全フロイントアジュバント又は不完全フロイントアジュバントと混合した後、大腿部と足蹠に注射し、2週間後に異なる部位で再び免疫した。DNAで免疫を行う場合、20μgのプラスミドを1μgのCpGと混合した後、遺伝子銃(Biorad)を用いて40psiでマウスの腹部に直接投与し、毎週1回免疫した。融合準備の3日前に、高発現のHEK293-クローディン18.2安定形質転換細胞株を1×106細胞/50μL/匹とし、ショック免疫のために尾静脈注射した。3日後、マウスを殺し、膝窩リンパ節、鼠径リンパ節及び腸骨リンパ節を収集し、DMEMで研磨してB細胞に富む懸濁液を得、マウスの脾臓を取り出し、DMEMで研磨した後に遠心分離し、脾臓細胞懸濁液を得た。適量のリンパ節及び脾細胞の懸濁液とSP2/0を混合して、エレクトロフュージョン装置を用いて細胞融合を行った。
【0138】
3)抗クローディン18.2ファージ抗体ライブラリの構築
収集された一部のマウス脾臓と末梢リンパ節の細胞懸濁液に対して、Trizol RNA抽出キットで全RNAを抽出し、逆転写キット(SuperScript First-Strand Synthesis System、品番18080051)を用いて、軽鎖、重鎖の特異的プライマーを使用して逆転写を行い、それぞれ抗体の軽鎖、重鎖cDNAライブラリを得た。当該cDNAをテンプレートとし、軽鎖、重鎖可変領域プライマーPCRで抗体の軽鎖、重鎖可変領域断片を増幅し、ヒト抗体軽鎖定常領域Ckappa又はヒトIgG1重鎖定常領域CH1を含むファージプラスミド担体に制限酵素クローニングし、それぞれキメラ軽鎖ライブラリと重鎖ライブラリを形成した。軽鎖ライブラリにおける抗体断片をBspQIとSfiIで二重酵素切断した後、重鎖ライブラリに連結し、糸状ファージM13に基づくマウスキメラFabファージ表示ライブラリを形成し、ライブラリサイズは1.2×1010個であった。0.8mLのファージ(力価が約1x1013/mLである)と200μLの5%BSA/PBSを混合した後、1x107個のHEK293-クローディン18.1細胞を加え、1時間氷浴し、1000rpmで10分間遠心分離し、上清を収集し、上清と1x106個のHEK293-クローディン18.2細胞を混合し、1時間氷浴し、1000rpmで3分間遠心分離し、上清を捨て、1%BSA/PBSを1mL加え、5~10回繰り返して洗浄し、100mMのTEA(トリエチルアミン)溶解細胞を1mL加え、室温で10分間静置し、1MのTris-HCl(pH7.5)を0.5mL加えて中和した後、対数増殖期にあるTG1 E.coli.細胞を10mL感染し、37℃で30分間静置した。分子生物学の従来のプロセスに従って、ファージを回収し、力価を検出し、次のスクリーニングを行った。
ファージライブラリからスクリーニングした陽性クローンに対して、プラスミドを抽出して配列を決定し、全長IgG発現のために重鎖及び軽鎖定常領域担体に可変領域配列をクローニングした。ハイブリドーマから得られた陽性細胞において、TRNzolを1mL加えて分裂分解し、グアニジンイソチオシアネート法で全RNAを抽出した。これをテンプレートとし、第一鎖cDNAを合成した後、第一鎖cDNAを後続のテンプレートとしてハイブリドーマ細胞に対応する可変領域DNA配列を増幅した。増幅産物の配列決定した後、候補ハイブリドーマの重鎖及び軽鎖可変領域配列を得た(以下のとおりである)。
上記重鎖及び軽鎖可変領域配列断片をPCRで増幅し、ヒト重鎖定常領域を含む担体に重鎖可変領域をクローニングすることにより、哺乳動物細胞に完全なIgG1重鎖を発現させた。同様に、ヒト軽鎖定常領域を含む担体に軽鎖可変領域をクローニングすることにより、哺乳動物細胞に完全なkappa軽鎖を発現させた。配列を正しく決定した後にHEK293-6E哺乳動物細胞にトランスフェクトし、IgG1を発現させ、培地中に分泌させ、合わせて上清を収集し、濾過して精製した。Protein Aクロマトグラフィーを用いてIgGを精製し、培養上清を適切な大きさのProtein Aカラムにローディングし、50mMのTris-HCl(pH8.0)と250mMのNaClで洗浄し、結合したIgGを0.1MのGlycine-HCl(pH3.0)で溶出した。濃縮管(Millipore)を用いてタンパク質を限外濾過により濃縮し、OD280を検出し、分光光度法によりIgGの濃度を測定した。SDS-PAGEを用いてIgGの純度を分析した。