(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167316
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】抗TSLPナノ抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20241126BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241126BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241126BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241126BHJP
C12P 21/00 20060101ALI20241126BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241126BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20241126BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241126BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241126BHJP
A61K 51/10 20060101ALI20241126BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241126BHJP
A61P 11/06 20060101ALN20241126BHJP
A61P 11/00 20060101ALN20241126BHJP
【FI】
C07K16/00 ZNA
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/00 C
C07K19/00
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
A61K39/395 N
A61K39/395 L
A61K51/10 200
A61K47/68
C07K16/00
A61P11/06
A61P11/00
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024146304
(22)【出願日】2024-08-28
(62)【分割の表示】P 2023540115の分割
【原出願日】2022-05-16
(31)【優先権主張番号】202210111727.1
(32)【優先日】2022-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】522084968
【氏名又は名称】上海洛啓生物医薬技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI NOVAMAB BIOPHARMACEUTICALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 201,Building 10,Lane 500,Furonghua Road,Pudong New Area,Shanghai 201321,China
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】万 亜坤
(72)【発明者】
【氏名】李 光輝
(72)【発明者】
【氏名】朱 敏
(72)【発明者】
【氏名】盖 軍偉
(72)【発明者】
【氏名】沈 暁寧
(57)【要約】 (修正有)
【課題】良い遮断活性、良い臨床治療効果を有し、そして生産が簡便な抗TSLPナノ抗体、およびその使用を提供する。
【解決手段】本発明は、抗TSLPのナノ抗体を提供し、また、上記ナノ抗体をコードするコード配列、相応する発現ベクターおよび当該ナノ抗体を発現することができる宿主細胞、ならびに本発明のナノ抗体の生産方法を提供する。本発明のナノ抗体は良いTSLP/TSLPR遮断活性を有する。本発明のナノ抗体はピキア・パストリスで発現し、その発酵タンクの発現収量が17-23g/Lに達する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗TSLPナノ抗体であって、前記ナノ抗体におけるVHH鎖の相補性決定領域であるCDR領域が、配列番号14で示されるCDR1、配列番号15で示されるCDR2、および配列番号16で示されるCDR3からなることを特徴とする抗TSLPナノ抗体。
【請求項2】
前記抗TSLPナノ抗体のVHH鎖は、さらに、フレームワーク領域FRを含み、前記のフレームワーク領域FRは以下の群から選ばれる一つまたは複数であることを特徴とする請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体:
(1)配列番号17で示されるFR1:配列番号18で示されるFR2、配列番号19で示されるFR3、および配列番号20で示されるFR4;
(2)配列番号23で示されるFR1、配列番号18で示されるFR2、配列番号19で示されるFR3、および配列番号24で示されるFR4。
【請求項3】
前記抗TSLPナノ抗体のVHH鎖のアミノ酸配列は、配列番号21、配列番号25、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体。
【請求項4】
TSLPエピトープに対する抗体である請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体を有することを特徴とする抗TSLP抗体。
【請求項5】
一つまたは複数の請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体を含むことを特徴とする抗TSLP抗体。
【請求項6】
前記抗体は、単量体、二価抗体、および/または多価抗体を含むことを特徴とする請求項4または5に記載の抗体。
【請求項7】
請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体、請求項4に記載の抗TSLP抗体または請求項5に記載の抗TSLP抗体からなる群から選ばれるタンパク質をコードすることを特徴とするポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリヌクレオチドを含有することを特徴とする発現ベクター。
【請求項9】
請求項8に記載の発現ベクターを含有することを特徴とする宿主細胞。
【請求項10】
抗TSLPナノ抗体を生成する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(a) ナノ抗体の生成に適する条件において、請求項9に記載の宿主細胞を培養する
ことによって、前記抗TSLPナノ抗体を含む培養物を得る;
(b)前記培養物から前記の抗TSLPナノ抗体を単離または回収する;ならびに
(c)工程(b)で得られた抗TSLPナノ抗体を精製および/または修飾する。
【請求項11】
以下のものを含有することを特徴とする免疫複合体:
(a) 請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体、請求項4に記載の抗TSLP抗体または請求項5に記載の抗TSLP抗体;ならびに
(b)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、金ナノ粒子/ナノロッド、磁性ナノ粒子、ウイルスコートタンパク質またはVLP、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる複合部分。
【請求項12】
請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体、請求項4に記載の抗TSLP抗体または請求項5に記載の抗TSLP抗体を含むことを特徴とする多重特異性抗体。
【請求項13】
以下のものを有することを特徴とする組み換えタンパク質:
(i) 請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体、請求項4に記載の抗TSLP抗体または請求項5に記載の抗TSLP抗体;ならびに
(ii) 発現および/または精製を補助するタグ配列。
【請求項14】
以下のものを含有することを特徴とする薬物組成物:
(i)請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体、請求項4に記載の抗TSLP抗体または請求項5に記載の抗TSLP抗体;ならびに
(ii) 薬学的に許容される担体。
【請求項15】
請求項1に記載の抗TSLP抗体、請求項4に記載の抗TSLP抗体または請求項5に記載の抗TSLP抗体の使用であって、(a)TSLPに関連する疾患を予防および/または治療する薬物の製造、ならびに/あるいは(b)TSLPを検出する試薬、検出プレートまたはキットの製造のためであることを特徴とする使用。
【請求項16】
サンプルにおけるTSLPタンパク質を検出する方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法:
(1)サンプルを請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体、請求項4に記載の抗TSLP抗体または請求項5に記載の抗TSLP抗体と接触させる;
(2)抗原-抗体複合体が形成したか検出し、ここで、複合体が形成したというのはサンプルにTSLPタンパク質が存在することを意味する。
【請求項17】
TSLPタンパク質の検出試薬であって、以下のものを含むことを特徴とする検出試薬:
(i)請求項1に記載の抗TSLPナノ抗体、請求項4に記載の抗TSLP抗体または請求項5に記載の抗TSLP抗体;ならびに
(ii)検出に許容されるベクター。
【請求項18】
TSLPタンパク質を検出するキットであって、請求項7に記載の免疫複合体、ならびに説明書を含むことを特徴とするキット。
【請求項19】
請求項11に記載の免疫複合体の使用であって、体内においてTSLPタンパク質を検出する造影剤の製造のためであることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物医学または生物製薬の技術分野に関し、より具体的に、抗TSLPナノ抗体およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中等・重症喘息の治療経路はいずれもTh2細胞の応答を抑える試みに集中している。重症喘息を治療するための抗体薬物は、Th2経路におけるIgE(オマリズマブ)、IL5(メポリズマブ、レスリズマブ)、IL5R(ベンラリズマブ)、IL4R(デュピルマブ)などを標的とするものが多い。以上の薬物のいずれも、好酸球性喘息に対して良い制御効果を有し、いずれも皮下または静脈注射の手段によって治療する。約三分の一の重症喘息患者はTh2炎症経路活性化の特徴がなく、現在、このような非Th2型の疾患に対して既存の標準のケア・治療で抑えられない患者は生物治療の選択がないため、新たな治療経路の開発が望まれている。
【0003】
胸腺間質性リンパ球新生因子(thymic stromal lymphopoietin、TSLP)は、4ヘリックスバンドルのフォールディング構造を有する短鎖型サイトカインで、IL-2サイトカインファミリーに属する。TSLPは、炎症促進性刺激(たとえば、肺内におけるアレルゲン、ウイルスやほかの病原体)に対して生成する上皮サイトカインで、気道炎症の発生と持続において重要な役割を果たす。TSLPは下流のIL-4、IL-5およびIL-13を含むTh2サイトカインの放出を駆動し、炎症および喘息の症状につながる。また、TSLPは非Th2型炎症に関与する多くの種類の細
胞を活性化させることもできる。そのため、TSLPの炎症カスケード反応の早期の上流における活性化は既に幅広い喘息患者の群衆における一つの潜在的な標的とされている。TSLPを遮断すると、免疫細胞の炎症性サイトカインの放出が阻止されることで、喘息の悪化を予防し、喘息のコントロールを改善し、そして慢性閉塞性肺疾患などの関連疾患を対処することができる。
【0004】
ナノ抗体(nanobody、Nb)、すなわち、重鎖ナノ抗体VHH(variable domain of heavy chain of heavy-chain antibody)である、ラクダの体内に存在する天然の軽鎖欠失の重鎖抗体(heavy-chain antibody、HCAb)の可変領域をクローニングして得られる一つの重鎖可変領域からなるナノ抗体は、現在、獲得できる、完全な機能を備えて安定した、抗原に結合できる最小の単位である。ナノ抗体は、安定性が高い、水溶性が良い、ヒト化が簡単、標的性が高い、透過性が強いといった特徴があり、免疫実験、診断と治療
において、想像を絶する大きな役割を果たしている。ナノ抗体は段々新世代の抗体治療の新興勢力になりつつある。
そのため、本分野では、良い遮断活性、良い臨床治療効果を有し、そして生産が簡便な抗TSLPナノ抗体の開発が切望されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、良い遮断活性、良い臨床治療効果を有し、そして生産が簡便な抗TSLPナノ抗体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の側面では、抗TSLPナノ抗体であって、前記ナノ抗体におけるVHH鎖の相補性決定領域であるCDR領域が以下の群から選ばれる一つまたは複数であるものを提供する:
(1) 配列番号1で示されるCDR1、配列番号2で示されるCDR2、および配列番号 3で示されるCDR3;
(2) 配列番号14で示されるCDR1、配列番号15で示されるCDR2、および配列番号 16で示されるCDR3;ならびに
(3) 配列番号27で示されるCDR1、配列番号28で示されるCDR2、および配列番号 29で示されるCDR3。
もう一つの好適な例において、前記のCDR1、CDR2およびCDR3はVHH鎖のフレームワーク領域FR1、FR2、FR3およびFR4によって隔てられている。
【0007】
もう一つの好適な例において、前記VHH鎖は、さらに、フレームワーク領域FRを含み、前記のフレームワーク領域FRは以下の群から選ばれる一つまたは複数:
(1) 配列番号4で示されるFR1、配列番号5で示されるFR2、配列番号6で示されるFR3、および配列番号7で示されるFR4;
(2) 配列番号10で示されるFR1:配列番号5で示されるFR2、配列番号6で示されるFR3、および配列番号 11で示されるFR4;
(3) 配列番号17で示されるFR1:配列番号18で示されるFR2、配列番号19で示されるFR3、および配列番号 20で示されるFR4;
(4) 配列番号23で示されるFR1、配列番号18で示されるFR2、配列番号19で示されるFR3、および配列番号 24で示されるFR4;
(5) 配列番号30で示されるFR1、配列番号31で示されるFR2、配列番号32で示されるFR3、および配列番号 33で示されるFR4;ならびに
(6) 配列番号36で示されるFR1、配列番号31で示されるFR2、配列番号32で示されるFR3、および配列番号 37で示されるFR4。
【0008】
もう一つの好適な例において、前記のナノ抗体のVHH鎖のCDR領域は配列番号1-3、配列番号14-16、配列番号27-29のうちのいずれかと、少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%、さらに好ましくは少なくとも99%の配列相同性を有するアミノ酸配列を含む。
【0009】
もう一つの好適な例において、前記のナノ抗体のVHH鎖のCDR領域のアミノ酸配列は配列番号1-3、配列番号14-16、配列番号27-29のうちのいずれかと比べ、一つまたは複数のアミノ酸置換、好ましくは保存的アミノ酸置換を含む。
【0010】
もう一つの好適な例において、上記アミノ酸配列のうちの任意の一つのアミノ酸配列は、さらに、任意に少なくとも1個(たとえば1~3個、好ましくは1~2個、より好ましくは1個)のアミノ酸の付加、欠失、修飾および/または置換を経たもので、かつTSLPとの特異的結合能力を維持できる誘導配列を含む。
【0011】
もう一つの好適な例において、前記ナノ抗体は、TSLPに特異的に結合することができる。
【0012】
もう一つの好適な例において、前記ナノ抗体は、有効にTSLPとTSLPRの相互作用を遮断することができる。
【0013】
もう一つの好適な例において、前記TSLPは、ヒトまたは非ヒト哺乳動物のTSLPである。
【0014】
もう一つの好適な例において、前記TSLPは、ヒト、マウス、ラット、または非ヒト霊長類動物(たとえば、サル)のTSLPである。
【0015】
もう一つの好適な例において、前記のナノ抗体はヒト化抗体、ラクダ由来抗体、キメラ抗体を含む。
【0016】
もう一つの好適な例において、前記ナノ抗体のVHH鎖のアミノ酸配列は、配列番号8、配列番号12、配列番号21、配列番号25、配列番号34、配列番号38、またはこれらの組み合わせ6からなる群から選ばれる。
【0017】
もう一つの好適な例において、前記抗TSLPナノ抗体は、単量体、二量体(二価抗体)、四量体(四価抗体)、および/または多量体(多価抗体)を含む。
【0018】
もう一つの好適な例において、前記抗TSLPナノ抗体は、一つまたは複数の配列番号8、配列番号12、配列番号21、配列番号25、配列番号34または配列番号38で示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含む。
【0019】
もう一つの好適な例において、前記抗TSLPナノ抗体は、二つまたは複数の配列番号8、配列番号12、配列番号21、配列番号25、配列番号34、配列番号38で示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含む。
【0020】
もう一つの好適な例において、前記VHH鎖の間は連結ペプチドを介して連結している。
【0021】
もう一つの好適な例において、前記連結ペプチドは以下の配列から選ばれる:(GaSb)x(ただし、a、b、x=0または1または2または3または4または5または6または7または8または9または10である(好ましくは、a=4かつb=1、x=4である))。
【0022】
もう一つの好適な例において、前記連結ペプチドの配列は、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSである。
【0023】
本発明の第二の側面では、抗TSLP抗体であって、TSLPエピトープに対する抗体で、かつ本発明の第一の側面に記載の抗TSLPナノ抗体を有するものを提供する。
【0024】
もう一つの好適な例において、前記抗TSLP抗体は、一つまたは複数の抗TSLPナノ抗体を含む。
【0025】
もう一つの好適な例において、前記抗TSLP抗体は、単量体、二量体(二価抗体)、四量体(四価抗体)、および/または多量体(多価抗体)を含む。
【0026】
もう一つの好適な例において、前記抗TSLP抗体は、一つまたは複数の配列番号8、配列番号12、配列番号21、配列番号25、配列番号34または配列番号38で示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含む。
【0027】
もう一つの好適な例において、前記抗TSLP抗体は、二つの配列番号8、配列番号12、配列番号21、配列番号25、配列番号34または配列番号38で示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含む。
【0028】
もう一つの好適な例において、前記の抗体は、TSLPに特異的に結合することができる。
【0029】
もう一つの好適な例において、前記の抗体は、特異的に正確な空間構造を有するTSLPタンパク質に対するものである。
【0030】
もう一つの好適な例において、前記抗体は、有効にTSLPとTSLPRの相互作用を遮断することができる。
【0031】
もう一つの好適な例において、前記の抗体のTSLPに対する親和力(KD値)は3.77nM未満である。
【0032】
もう一つの好適な例において、前記的抗体は優れたTSLP/TSLPR遮断活性を有し、かつ遮断活性が顕著に対照抗体テゼペルマブ(Tezepelumab)よりも良く、ここで、対照抗体テゼペルマブはアストラゼネカ(AstraZeneca)またはアムジェン(Amgen)社から得られるものである。
【0033】
もう一つの好適な例において、前記の抗体は有効にBaF3/TSLPR-IL7R細胞の増殖を抑制することができ、その抑制活性が対照抗体テゼペルマブよりも良い。
【0034】
もう一つの好適な例において、前記抗体は、ナノ抗体である。
【0035】
本発明の第三の側面では、本発明の第一の側面に記載の抗TSLPナノ抗体または本発明の第二の側面に記載の抗TSLP抗体からなる群から選ばれるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを提供する。
【0036】
もう一つの好適な例において、前記ポリヌクレオチドは組み合わせの様態である。
【0037】
もう一つの好適な例において、前記ポリヌクレオチドは、配列番号9、13、22、26、35または39で示される配列のうちの一つまたは複数を含む。
【0038】
もう一つの好適な例において、前記ポリヌクレオチドはRNA、DNAまたはcDNAを含む。
【0039】
本発明の第四の側面では、本発明の第三の側面に記載のポリヌクレオチドを含有する発現ベクターを提供する。
【0040】
もう一つの好適な例において、前記の発現ベクターは、DNA、RNA、ウイルスベクター、プラスミド、トランスポゾン、ほかの遺伝子導入系、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0041】
もう一つの好適な例において、前記発現ベクターはウイルスベクター、たとえば、レンチウイルス、アデノウイルス、AAVウイルス、レトロウイルスを含む。
【0042】
本発明の第五の側面では、本発明の第四の側面に記載の発現ベクターを含むか、あるいはゲノムに本発明の第三の側面に記載のポリヌクレオチドが組み込まれた宿主細胞を提供する。
【0043】
もう一つの好適な例において、前記の宿主細胞は原核細胞または真核細胞を含む。
【0044】
もう一つの好適な例において、前記の宿主細胞は、大腸菌、酵母細胞、哺乳動物細胞、ファージ、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0045】
もう一つの好適な例において、前記原核細胞は、大腸菌、枯草菌、乳酸菌、ストレプトマイセス菌、プロテウス・ミラビリス、またはこれらの組み合せからなる群から選ばれる。
【0046】
もう一つの好適な例において、前記真核細胞は、ピキア・パストリス、出芽酵母、分裂酵母、トリコデルマ、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0047】
もう一つの好適な例において、前記の宿主細胞は、ピキア・パストリスである。
【0048】
本発明の第六の側面では、抗TSLPナノ抗体を生成する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a)ナノ抗体の生成に適する条件において、本発明の第五の側面に記載の宿主細胞を培養することによって、前記抗TSLPナノ抗体を含む培養物を得る;
(b)前記培養物から前記の抗TSLPナノ抗体を単離または回収する;ならびに
(c)任意に、工程(b)で得られた抗TSLPナノ抗体を精製および/または修飾する。
【0049】
本発明の第七の側面では、以下のものを含有する免疫複合体を提供する:
(a)本発明の第一の側面に記載の抗TSLPナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載の抗TSLP抗体;ならびに
(b)検出可能なマーカー、薬物、毒素、サイトカイン、放射性核種、酵素、金ナノ粒子/ナノロッド、磁性ナノ粒子、ウイルスコートタンパク質またはVLP、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる複合部分。
【0050】
もう一つの好適な例において、前記の放射性核種は、以下のものを含む:
(i)Tc-99m、Ga-68、F-18、I-123、I-125、I-131、In-111、Ga-67、Cu-64、Zr-89、C-11、Lu-177、Re-188、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる診断用同位体;ならびに/あるいは
(ii)Lu-177、Y-90、Ac-225、As-211、Bi-212、Bi-213、Cs-137、Cr-51、Co-60、Dy-165、Er-169、Fm-255、Au-198、Ho-166、I-125、I-131、Ir-192、Fe-59、Pb-212、Mo-99、Pd-103、P-32、K-42、Re-186、Re-188、Sm-153、Ra223、Ru-106、Na24、Sr89、Tb-149、Th-227、Xe-133、Yb-169、Yb-177、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる治療用同位体。
【0051】
もう一つの好適な例において、前記複合部分は薬物または毒素である。
【0052】
もう一つの好適な例において、前記の薬物は細胞毒性薬物である。
【0053】
もう一つの好適な例において、前記の細胞毒性薬物は、抗チューブリン薬、DNA副溝結合試薬、DNA複製阻害剤、アルキル化試薬、抗生物質、葉酸拮抗薬、抗代謝薬、化学療法増感剤、トポイソメラーゼ阻害剤、ビンカアルカロイド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0054】
もう一つの好適な例において、特に有用な細胞毒性薬物の例は、たとえば、DNA副溝結合試薬、DNAアルキル化試薬、およびチューブリン阻害剤を含み、典型的な細胞毒性薬物は、たとえばオーリスタチン(auristatin)、カンプトテシン(camptothecin)、デュオカルマイシン(duocarmycin)、エトポシド(etoposide)、メイタンシン(maytansine)およびメイタンシノイド(maytansinoid)(たとえばDM1やDM4)、タキサン(taxane)、ベンゾジアゼピン系(benzodiazepine)またはベンゾジアゼピン含有薬物
(benzodiazepine containing drug)(たとえばピロロ[1,4]ベンゾジアゼピン系(PBDs)、インドリノベンゾジアゼピン系(indolinobenzodiazepines)およびオキサゾリジノベンゾジアゼピン系(oxazolidinobenzodiazepines))およびビンカアルカロイド(vinca alkaloid)、またはこれらの組み合わせを含む。
【0055】
もう一つの好適な例において、前記の毒素は、オーリスタチン類(たとえば、オーリスタチンE、オーリスタチンF、MMAEおよびMMAF)、クロルテトラサイクリン、マイタンシノイド、リシン、リシンA-鎖、コンブレタスタチン、デュオカルマイシン、ドラスタチン、アドリアマイシン、ダウノルビシン、タキソール、シスプラチン、cc1065、臭化エチジウム、マイトマイシン、エトポシド、テニポシド(tenoposide)、ビンクリスチン、ビンブラスチン、コルヒチン、ジヒドロキシアントラセンジオン、アクチノマイシン、ジフテリア毒素、緑膿菌外毒素(PE)A、PE40、アブリン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α-八連球菌、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン(restrictocin)、フェノマイシン、エノマイシン、クリシン(curicin)、クロチン、カリケアミシン、サボンソウ(Sapaonaria officinalis)阻害剤、糖質コルチコイド、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0056】
もう一つの好適な例において、前記複合部分は検出可能なマーカーである。
【0057】
もう一つの好適な例において、前記複合部分は、蛍光または発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像)またはCT(コンピューターX線断層撮影技術)造影剤、または検出可能な生成物を生成させる酵素、放射性核種、生物毒素、サイトカイン(たとえばIL-2など)、抗体、抗体Fc断片、抗体scFv断片、金ナノ粒子/ナノロッド、ウイルス粒子、リポソーム、磁性ナノ粒子、プロドラッグ活性化酵素(たとえば、DT-ジアホラーゼ(DTD)またはビフェニルヒドロラーゼ様蛋白質(BPHL)、または
任意の様態のナノ粒子からなる群から選ばれる。
【0058】
本発明の第八の側面では、本発明の第一の側面に記載の抗TSLPナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載の抗TSLP抗体を含む多重特異性抗体を提供する。
【0059】
もう一つの好適な例において、前記多重特異性抗体は、さらに、抗体のFc断片を含む。
【0060】
本発明の第九の側面では、以下のものを有する組み換えタンパク質を提供する:
(i)本発明の第一の側面に記載の抗TSLPナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載の抗TSLP抗体;ならびに
(ii)任意の発現および/または精製を補助するタグ配列。
【0061】
もう一つの好適な例において、前記のタグ配列はFcタグ、HAタグおよび6Hisタグを含む。
【0062】
もう一つの好適な例において、前記の組み換えタンパク質は特異的にTSLPタンパク質に結合するものである。
【0063】
本発明の第十の側面では、以下のものを含有する薬物組成物を提供する:
(i)本発明の第一の側面に記載の抗TSLPナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載の抗TSLP抗体、または本発明の第七の側面に記載の免疫複合体、または本発明の第八の側面に記載の多重特異性抗体、または本発明の第九の側面に記載の組み換えタンパク質;ならびに
(ii) 薬学的に許容される担体。
【0064】
もう一つの好適な例において、前記の免疫複合体の複合部分は、薬物、毒素、および/または治療用同位体である。
【0065】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は、さらに、ほかの免疫系疾患または腫瘍疾患を治療する薬物を含む。
【0066】
もう一つの好適な例において、前記ほかの免疫系疾患または腫瘍疾患を治療する薬物は、ブデソニド、フルチカゾン、ベクロメタゾン、モメタゾンフランカルボン酸エステル、アルブテロール、テオフィリン、ホルモテロール、チオトロピウム臭化物、スルファサラジン、メトトレキセート、シクロホスファミド、フルオロウラシル、ブレオマイシン、アナストロゾール、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0067】
もう一つの好適な例において、前記の薬物組成物は、TSLPに関連する疾患または病症を予防および/または治療する薬物の製造に使用されるものである。
【0068】
もう一つの好適な例において、前記TSLPに関連する疾患または病症は、免疫系疾患または腫瘍疾患を含む。
【0069】
もう一つの好適な例において、前記免疫系疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、潰瘍性大腸炎、クローン病、鼻炎、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、アレルギー性肺炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、鼻ポリープ、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0070】
もう一つの好適な例において、前記腫瘍疾患は、乳癌、膵臓腺癌、子宮頸癌、多発性骨髄腫、結腸・直腸癌、肺癌、甲状腺癌、卵巣癌、肝臓癌、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0071】
本発明の第十一の側面では、本発明の第一の側面に記載の抗TSLPナノ抗体、本発明の第二の側面に記載の抗TSLP抗体、本発明の第七の側面に記載の免疫複合体、または本発明の第八の側面に記載の多重特異性抗体、または本発明の第九の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第十の側面に記載の薬物組成物の使用であって、(a)TSLPに関連する疾患を予防および/または治療する薬物の製造、ならびに/あるいは(b)TSLPを検出する試薬、検出プレートまたはキットの製造のための使用を提供する。
【0072】
もう一つの好適な例において、前記TSLPに関連する疾患または病症は、免疫系疾患または腫瘍疾患を含む。
【0073】
もう一つの好適な例において、前記免疫系疾患は、喘息、アトピー性皮膚炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、潰瘍性大腸炎、クローン病、鼻炎、強直性脊椎炎、全身性エリテマトーデス、関節リウマチ、アレルギー性肺炎、アレルギー性肉芽腫性血管炎、鼻ポリープ、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0074】
もう一つの好適な例において、前記腫瘍疾患は、乳癌、膵臓腺癌、子宮頸癌、多発性骨髄腫、結腸・直腸癌、肺癌、甲状腺癌、卵巣癌、肝臓癌、またはこれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0075】
もう一つの好適な例において、前記TSLPはヒトTSLPである。
【0076】
もう一つの好適な例において、前記試薬は診断試薬である。
【0077】
もう一つの好適な例において、前記診断試薬は造影剤である。
【0078】
もう一つの好適な例において、前記試薬はサンプルにおけるTSLPタンパク質またはその断片を検出するためのものである。
【0079】
もう一つの好適な例において、前記の検出はフローサイトメトリーによる検出、細胞免疫蛍光による検出を含む。
【0080】
もう一つの好適な例において、前記使用は診断的および/または非診断的なもの、ならびに/あるいは治療的および/または非治療的なものである。
【0081】
本発明の第十二の側面では、サンプルにおけるTSLPタンパク質を検出する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(1)サンプルを、本発明の第一の側面に記載の抗TSLPナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載の抗TSLP抗体、または本発明の第七の側面に記載の免疫複合体、または本発明の第八の側面に記載の多重特異性抗体、または本発明の第九の側面に記載の組み換えタンパク質と接触させる;
(2)抗原-抗体複合体が形成したか検出し、ここで、複合体が形成したというのはサンプルにTSLPタンパク質が存在することを意味する。
【0082】
もう一つの好適な例において、前記方法は非診断的で非治療的なものである。
【0083】
本発明の第十三の側面では、TSLPタンパク質の検出試薬であって、以下のものを含む検出試薬を提供する:
(i)本発明の第一の側面に記載の抗TSLPナノ抗体、または本発明の第二の側面に記載の抗TSLP抗体、または本発明の第七の側面に記載の免疫複合体、または本発明の第八の側面に記載の多重特異性抗体、または本発明の第九の側面に記載の組み換えタンパク質;ならびに
(ii)測定学的に許容される担体。
【0084】
もう一つの好適な例において、前記の免疫複合体の複合部分は診断用同位体である。
【0085】
もう一つの好適な例において、前記の測定学的に許容される担体は無毒で、不活性の水系担体の媒体である。
【0086】
もう一つの好適な例において、前記の検出試薬は、同位体トレーサー、造影剤、フローサイトメトリー検出試薬、細胞免疫蛍光検出試薬、磁性ナノ粒子およびイメージング剤からなる群から選ばれる一つまたは複数の試薬である。
【0087】
もう一つの好適な例において、前記の検出試薬は体内における検出のためのものである。
【0088】
もう一つの好適な例において、前記の検出試薬の剤形は液状または粉状(たとえば、水溶液剤、注射剤、凍結乾燥粉末、錠剤、トローチ剤、エアロゾル吸入剤)である。
【0089】
本発明の第十四の側面では、TSLPタンパク質を検出するキットであって、本発明の第七の側面に記載の免疫複合体または本発明の第十三の側面に記載の検出試薬、ならびに説明書を含むキットを提供する。
【0090】
もう一つの好適な例において、前記の説明書に、前記のキットが非侵襲的に被験対象のTSLP発現を検出するためのものであると記載されている。
【0091】
本発明の第十五の側面では、本発明の第七の側面に記載の免疫複合体の使用であって、体内においてTSLPタンパク質を検出する造影剤の製造のための使用を提供する。
【0092】
もう一つの好適な例において、前記検出は、TSLPに関連する疾患または病症の診断または予後のためのものである。
【0093】
本発明の第十六の側面では、疾患を治療する方法であって、必要な対象に、本発明の第一の側面に記載の抗TSLPナノ抗体、本発明の第二の側面に記載の抗TSLP抗体、本発明の第七の側面に記載の免疫複合体、または本発明の第八の側面に記載の多重特異性抗体、または本発明の第九の側面に記載の組み換えタンパク質、または本発明の第十の側面に記載の薬物組成物を施用することを含む方法を提供する。
【0094】
もう一つの好適な例において、前記の対象はヒトまたは非ヒト哺乳動物を含む。
【0095】
もう一つの好適な例において、前記非ヒト哺乳動物は、齧歯動物(たとえば、ネズミ、ウサギ)、非ヒト霊長類動物(たとえば、サル)を含む。
もちろん、本発明の範囲内において、本発明の上記の各技術特徴および下記(たとえば実施例)の具体的に記述された各技術特徴は互いに組合せ、新しい、または好適な技術方案を構成できることが理解される。紙数に限りがあるため、ここで逐一説明しない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1A】
図1Aは、31株の候補抗体のフローサイトメトリーによる遮断活性検出の結果である。結果から、31株の候補抗体のうち、14株の抗体の遮断活性が顕著に対照抗体テゼペルマブよりも良かったことがわかる。
【
図1B】
図1Bは、31株の候補抗体のフローサイトメトリーによる遮断活性検出の結果である。結果から、31株の候補抗体のうち、14株の抗体の遮断活性が顕著に対照抗体テゼペルマブよりも良かったことがわかる。
【
図2】
図2は、14株の遮断型TSLPナノ抗体の結合動態学の検出結果である。
【
図3】
図3は、二価単一ドメイン抗体Bi-HuNb5-31、Bi-HuNb7-54、Bi-HuNb10-63のピキア・パストリスにおける振とう培養の発現上清のSDS-PAGE結果で、収量がそれぞれ475ug/mL、310ug/mL、510ug/mLであった。
【
図4】
図4は、ELISAによるヒト化二価抗体の遮断活性の検出結果である。結果から、3株のヒト化二価抗体の遮断活性が顕著に対照抗体テゼペルマブよりも良かったことがわかる。
【
図5】
図5は、ヒト化二価抗体のBaF3/TSLPR-IL7R細胞に対する増殖抑制作用の結果である。結果から、そのうちの2株のヒト化抗体のBaF3/TSLPR-IL7R細胞におけるpSTAT5シグナル経路に対する抑制作用が対照抗体テゼペルマブよりも良かったことがわかる。
【発明を実施するための形態】
【0097】
初めて、意外に、1種類の抗TSLPナノ抗体を見出したが、実験結果から、本発明のナノ抗体は有効にTSLPとTSLPRの相互作用を遮断することができ、かつ遮断活性が顕著に対照抗体テゼペルマブよりも良かったこと、有効にBaF3/TSLPR-IL7R細胞の増殖を抑制することができ、その抑制活性が対照抗体テゼペルマブよりも良かったこと、ピキア・パストリスにおける発酵タンク発現の収量が17~23g/Lに達し、顕著に業界のレベルよりも高かったことがわかる。これに基づき、本発明者が本発明を完成した。
【0098】
用語
本明細書で用いられるように、用語「本発明ナノ抗体」、「本発明のナノ抗体」、「本発明の抗TSLPナノ抗体」、「本発明TSLPナノ抗体」、「抗TSLPナノ抗体」、「TSLPナノ抗体」は同様の意味を持ち、入れ替えて使用することができ、いずれも特異的にTSLP(ヒトTSLPを含む)を認識してそれに結合するナノ抗体を指す。
【0099】
本明細書で用いられるように、用語「抗体」または「免疫グロブリン」は同様な構造特徴を持つ、約150000ダルトンのヘテロテトラマーの糖タンパク質で、2つの同じ軽鎖(L)と2つの同じ重鎖(H)からなるものである。各軽鎖は、重鎖に1つの共有ジスルフィド結合によって結合しているが、重鎖間のジスルフィド結合の数は、免疫グロブリンのアイソタイプによるものである。各重鎖および軽鎖も、それぞれ一定の間隔の鎖内ジスルフィド結合を有する。各重鎖は、1つの末端に可変領域(VH)を有し、その先に多数の定常領域を有する。各軽鎖は、一方の末端に可変領域(VL)を有し、他方の末端に定常領域を有する。軽鎖の定常領域は重鎖の一つ目の定常領域と、軽鎖の可変領域は重鎖の可変領域と対向している。特殊なアミノ酸残基が軽鎖と重鎖の可変領域の間に界面を形成している。
【0100】
本明細書で用いられるように、用語「単一ドメイン」、「VHH」、「ナノ抗体(nanobody)」、「重鎖抗体」(single domain antibody、sdAb、またはナノ抗体nanobody)は同様の意味を持ち、かつ入れ替えて使用することができ、クローン抗体の重鎖の可変領域を指し、1つの重鎖可変領域のみからなるナノ抗体(VHH)を構築し、完全な機能を有する最小の抗原結合断片である。通常、まず天然の軽鎖および重鎖の定常領域1(CH1)が欠けた抗体を得た後、さらに抗体の重鎖の可変領域をクローンし、1つの重鎖可変領域だけからなるナノ抗体(VHH)を構築する。
【0101】
本明細書で用いられるように、用語の「可変」とは、抗体において可変領域のある部分が配列で異なっており、これによって各特定の抗体のその特定の抗原に対する結合および特異性が構成されることを指す。しかし、可変性は、均一に抗体の可変領域全体に分布しているわけではない。軽鎖と重鎖の可変領域における相補性決定領域(CDR)または超可変領域と呼ばれる3つの断片に集中している。可変領域において、比較的に保存的な部分は、フレームワーク領域(FR)FRと呼ばれる。天然の重鎖および軽鎖の可変領域に、それぞれ、基本的にβシート構造となっており、連結ループを形成する3つのCDRで連結され、場合によって部分βシート構造となる4つのFR領域が含まれる。各鎖におけるCDRは、FR領域で密接し、かつ他方の鎖のCDRと一緒に抗体の抗原結合部位(Kabatら、NIH Publ. No.91-3242,巻I,647-669頁(1991)を参照する)を形成している。定常領域は、抗体と抗原との結合には直接関与しないが、たとえば抗体の抗体依存細胞毒性に参与するなどの異なるエフェクター機能を示す。
【0102】
当業者に知られるように、免疫複合体および融合発現産物は、薬物、毒素、サイトカイン(cytokine)、放射性核種、酵素およびほかの診断または治療分子と本発明の抗体またはその断片が結合してなる複合体を含む。さらに、本発明は、前記の抗TSLP抗体またはその断片と結合した細胞表面マーカーあるいは抗原を含む。
【0103】
本明細書で用いられるように、用語「重鎖可変領域」と「VH」は入れ替えて使用することができる。
【0104】
本明細書で用いられるように、用語「可変領域」と「相補性決定領域(complementarity determining region、CDR)」は入れ替えて使用することができる。
【0105】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記抗体の重鎖可変領域はCDR1、CDR2、およびCDR3という3つの相補性決定領域を含む。
【0106】
本発明の一つの好適な実施形態において、前記抗体の重鎖は上記重鎖可変領域および重鎖定常領域を含む。
【0107】
本発明において、用語「本発明の抗体」、「本発明のタンパク質」、または「本発明のポリペプチド」は入れ替えて使用することができ、いずれも特異的にTSLPタンパク質と結合するポリペプチド、たとえば重鎖可変領域を有するタンパク質またはポリペプチドを指す。これらは、開始のメチオニンを含有してもよく、含有しなくてもよい。
【0108】
また、本発明は、本発明の抗体のほかのタンパク質あるいは融合発現産物を提供する。具体的に、本発明は、可変領域が本発明の抗体の重鎖可変領域と同様であるか、あるいは少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%の相同性を持つものであれば、この可変領域を含有する重鎖を有する任意のタンパク質またはタンパク質複合体と融合発現産物(すなわち免疫複合体と融合発現産物)を含む。
【0109】
一般的に、抗体の抗原結合特性は、重鎖可変領域に位置する3つの特定の領域によって特徴付けられ、可変領域(CDR)と呼ばれ、4つのフレームワーク領域(FR)に分かれ、4つのFRのアミノ酸配列が比較的に保存され、直接結合反応に関与しない。これらのCDRは環状構造を形成し、その中のFRで形成されるβシートによって空間構造上で近づき、重鎖におけるCDRおよび相応の軽鎖におけるCDRが抗体の抗原結合部位を構成する。同類の抗体のアミノ酸配列の比較によってどのアミノ酸がFRあるいはCDR領域を構成するか確認することができる。
【0110】
本発明の抗体の重鎖の可変領域は、その少なくとも一部が抗原結合に関与するため、特に注目されている。そのため、CDR含有モノクローナル抗体の重鎖可変領域鎖を有する分子は、そのCDRはここで同定されるCDRと90%以上(好ましくは95%以上、最も好ましくは98%以上)の相同性を持つものであれば、本発明に含まれる。
【0111】
本発明は、完全の抗体だけではなく、免疫活性を有する抗体の断片または抗体とほかの配列からなる融合タンパク質も含む。そのため、本発明は、さらに、前記抗体の断片、誘導体および類似体を含む。
【0112】
本明細書で用いられるように、用語「断片」、「誘導体」および「類似体」とは、基本的に本発明の抗体と同じ生物学的機能または活性を維持するポリペプチドをいう。本発明のポリペプチドの断片、誘導体や類似体は、(i)1個または複数個の保存的または非保存的なアミノ酸残基(好ましくは保存的なアミノ酸残基)が置換されたポリペプチドでもよく、このような置換されたアミノ酸残基が遺伝コードでコードされてもされていなくてもよく、あるいは(ii)1個または複数個のアミノ酸残基に置換基があるポリペプチドでもよく、あるいは(iii)成熟のポリペプチドと別の化合物(たとえば、ポリエチレングリコールのようなポリペプチドの半減期を延ばす化合物)と融合したポリペプチドでもよく、あるいは(iv)付加のアミノ酸配列がこのポリペプチドに融合したポリペプチド(たとえばリーダー配列または分泌配列またはこのポリペプチドを精製するための配列または蛋白質前駆体配列、あるいは6Hisタグと形成した融合蛋白質)でもよい。本明細書の開示に基づき、これらの断片、誘導体および類似体は当業者に公知の範囲に入っている。
【0113】
本発明の抗体とは、TSLP結合活性を有する、上記CDR領域を含むポリペプチドのことである。当該用語は、さらに、本発明の抗体と同じ機能を有する、上記CDR領域を含むポリペプチドの変異の様態を含む。これらの突然変異の様態は、1個または複数個(通常は1~50個、好ましくは1~30個、より好ましくは1~20個、最も好ましくは1~10個)のアミノ酸の欠失、挿入および/または置換、ならびにC末端および/またはN末端への1個または複数個(通常は20個以内、好ましくは10個以内、より好ましくは5個以内)のアミノ酸の付加を含むが、これらに限定されない。たとえば、本分野において、機能が近い、または類似のアミノ酸で置換する場合、通常、蛋白質の機能を変えることがない。また、C末端および/またはN末端への一つまたは複数のアミノ酸の付加も、通常、蛋白質の機能を変えることはない。この用語は、さらに、本発明の抗体の活性断片と活性誘導体を含む。
【0114】
当該ポリペプチドの変異の様態は、相同配列、保存的変異体、対立遺伝子変異体、天然突然変異体、誘導突然変異体、高いまたは低い厳格さの条件において本発明の抗体のコードDNAと交雑が可能なDNAがコードするタンパク質、および抗本発明の抗体の抗血清で得られるポリペプチドまたはタンパク質を含む。
【0115】
本発明は、さらに、ほかのポリペプチド、たとえばナノ抗体またはその断片の融合タンパク質を含む。ほとんど全長のポリペプチドのほか、本発明は、さらに、本発明のナノ抗体の断片を含む。通常、当該断片は本発明の抗体の少なくとも約50個の連続のアミノ酸、好ましくは少なくとも約50個の連続のアミノ酸、より好ましくは少なくとも約80個の連続のアミノ酸、最も好ましくは少なくとも約100個の連続のアミノ酸を有する。
【0116】
本発明において、「本発明の抗体の保存的変異体」とは、本発明の抗体のアミノ酸配列と比較すると、10個以下、好ましくは8個以下、より好ましくは5個以下、最も好ましくは3個以下のアミノ酸が類似または近い性質を持つアミノ酸で置換されてなるポリペプチドをいう。これらの保存的突然変異のポリペプチドは、表Aのようにアミノ酸の置換を行って生成することが好ましい。
【0117】
【0118】
さらに、本発明は、上記抗体またはその断片またはその融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド分子を提供する。本発明のポリヌクレオチドは、DNA形態でもRNA形態でもよい。DNA形態は、cDNA、ゲノムDNAまたは人工合成のDNAを含む。DNAは、一本鎖でも二本鎖でもよい。DNAは、コード鎖でも非コード鎖でもよい。
【0119】
本発明の成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、成熟ポリペプチドだけをコードするコード配列、成熟ポリペプチドのコード配列および様々な付加コード配列、成熟ポリペプチドのコード配列(および任意の付加コード配列)および非コード配列を含む。
【0120】
用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、このポリペプチドをコードするポリヌクレオチドでもよく、さらに付加のコードおよび/または非コード配列を含むポリヌクレオチドでもよい。
【0121】
本発明は、さらに、上記の配列とハイブリダイズし、かつ2つの配列の間に少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%の相同性を有するポリヌクレオチドに関する。本発明は、特に、厳格な条件で本発明に係るポリヌクレオチドとハイブリダイズできるポリヌクレオチドに関する。本発明において、「厳格な条件」とは、(1)低いイオン強度および高い温度、たとえば0.2×SSC、0.1%SDS、60℃でのハイブリダイズおよび溶離、あるいは(2)ハイブリダイズ時変性剤、たとえば42℃で50%(v/v)ホルムアミド、0.1%ウシ胎児血清/0.1% Ficollなどを入れること、あるいは(3)2つの配列の間の相同性が少なくとも90%以上、好ましくは95%以上の時だけハイブリダイズすることである。そして、ハイブリダイズできるポリヌクレオチドがコードするポリペプチドは、成熟ポリペプチドと同じ生物学的機能および活性を有する。
【0122】
本発明の抗体のヌクレオチド全長配列あるいは断片は、通常、PCR増幅法、組換え法または人工合成の方法で得られる。適用できる方法として、特に断片の長さが短い場合、人工合成の方法で関連配列を合成する。通常、まず多数の小さい断片を合成し、そして連接させることにより、配列の長い断片を得ることができる。また、重鎖のコード配列を発現タグ(たとえば6His)一体に融合させ、融合タンパク質を形成してもよい。
【0123】
関連の配列を獲得すれば、組み換え法で大量に関連配列を獲得することができる。この場合、通常、その配列をベクターにクローンした後、細胞に導入し、さらに通常の方法で増殖させた宿主細胞から関連配列を単離して得る。本発明に係る生物分子(核酸、タンパク質など)は単離の形態で存在する生物分子を含む。
【0124】
現在、本発明のタンパク質(またはその断片、あるいはその誘導体)をコードするDNA配列は全部化学合成で獲得することがすでに可能である。さらに、このDNA配列を本分野で周知の各種の既知のDNA分子(あるいはベクターなど)や細胞に導入してもよい。また、化学合成で本発明のタンパク質配列に変異を導入することもできる。
【0125】
さらに、本発明は、上記の適当なDNA配列および適当なプロモーターあるいは制御配列を含むベクターに関する。これらのベクターは、タンパク質を発現するように、適当な宿主細胞の形質転換に用いることができる。
【0126】
宿主細胞は、原核細胞、たとえば細菌細胞、あるいは、低等真核細胞、たとえば酵母細胞、あるいは、高等真核細胞、たとえば哺乳動物細胞でもよい。代表例として、大腸菌、ストレプトマイセス属、ネズミチフス菌のような細菌細胞、酵母のような真菌細胞、ミバエS2若しくはSf9のような昆虫細胞、CHO、COS7、293細胞のような動物細胞などがある。
【0127】
DNA組み換えによる宿主細胞の形質転換は当業者に熟知の通常の技術で行ってもよい。宿主が原核細胞、たとえば大腸菌である場合、DNAを吸収できるコンピテントセルは指数成長期後収集でき、CaCl2法で処理し、用いられる工程は本分野では周知のものである。もう一つの方法は、MgCl2を使用する。必要により、形質転換はエレクトロポレーションの方法でもよい。宿主が真核生物の場合、リン酸カルシウム沈殿法、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションのような通常の機械方法、リポフェクションなどのDNAトランスフェクションの方法が用いられる。
【0128】
得られる形質転換体は通常の方法で培養し、本発明の遺伝子がコードするポリペプチドを発現することができる。用いられる宿主細胞によって、培養に用いられる培地は通常の培地を選んでもよい。宿主細胞の成長に適する条件で培養する。宿主細胞が適当の細胞密度に成長したら、適切な方法(たとえば温度転換もしくは化学誘導)で選んだプロモーターを誘導し、さらに細胞を培養する。
【0129】
上記の方法における組み換えポリペプチドは細胞内または細胞膜で発現し、あるいは細胞外に分泌することができる。必要であれば、その物理・化学的特性およびほかの特性を利用して各種の単離方法で組み換えタンパク質を単離・精製することができる。これらの方法は、本分野の技術者に熟知である。これらの方法の例として、通用の再生処理、タンパク質沈殿剤による処理(塩析法)、遠心、浸透圧ショック、超音波処理、超遠心、分子篩クロマトグラフィー(ゲルろ過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびほかの各種の液体クロマトグラフィー技術、ならびにこれらの方法の組合せを含むが、これらに限定されない。
【0130】
本発明の抗体は単独に使用してもよく、検出可能なマーカー(診断目的)、治療剤、PK(タンパク質キナーゼ)修飾部分またはこれらの任意の組み合わせと結合またはカップリングしてもよい。
【0131】
診断の目的に使用される検出可能なマーカーは、蛍光または発光マーカー、放射性マーカー、MRI(磁気共鳴画像)またはCT(コンピューターX線断層撮影技術)造影剤、または検出可能な生成物を生成させる酵素を含むが、これらに限定されない。
【0132】
本発明の抗体と結合または複合することができる治療剤は、1.放射性核種、2.生物毒素、3.サイトカイン、たとえばIL-2など、4.金ナノ粒子/ナノロッド、5.ウイルス粒子、6.リポソーム、7.磁性ナノ粒子、8.プロドラッグ活性化酵素(たとえば、DT-ジアホラーゼ(DTD)またはビフェニルヒドロラーゼ様蛋白質(BPHL))などを含むが、これらに限定されない。
【0133】
胸腺間質性リンパ球新生因子(thymic stromal lymphopoietin、TSLP)
胸腺間質性リンパ球新生因子は、4ヘリックスバンドルのフォールディング構造を有する短鎖型サイトカインで、IL-2サイトカインファミリーに属する。新たなサイトカインとして、TSLPは、通常、肺、皮膚および腸管障壁の表面の上皮細胞において発現される。動物実験では、TSLPはアレルゲンによって誘導されたモデルマウスの肺において高発現であるが、TSLP受容体欠失マウスでは、喘息の所見が明らかに軽減し、肺臓特異性TSLP遺伝子組み換えマウスでは、Th2型炎症およびIgEが向上する気管炎症が現れ、そして高反応性であることが示された。さらなる研究では、TSLPは骨髄由
来の樹状細胞を活性化させて共刺激分子を上方調節し、Th2型ケモカインCCL17が生成することが示唆された。そのため、TSLPは気管アレルギー性炎症を起こす要因で必須条件である。喘息を含む様々な疾患における多くの炎症経路の上流の調節因子で、気管炎症の発生および持続に非常に重要である。さらに、研究では、TSLPはアトピー性皮膚炎(AD)の発症機序に関わるサイトカインでもあることが示された。より重要なのは、多くの異なる腫瘍において、TSLPレベルが向上し、また腫瘍がもう一つのBCL-2と呼ばれるタンパク質を発現するように誘導することもでき、腫瘍は死亡しないようにそのタンパク質によって守られることを見出した研究者が既にいることである。そのため、TSLPは腫瘍の生存にも非常に重要である。
【0134】
胸腺間質性リンパ球新生因子受容体(thymic stromal lymphopoietin receptor、TSLPR)
TSLPR受容体はI型膜貫通タンパク質で、造血サイトカイン受容体ファミリーに属する。機能性TSLPR複合体は、TSLPRとIL-7Raからなる。TSLPRは、サイトカイン受容体様分子2またはI型サイトカイン受容体σ1とも呼ばれる。TSLPは、その高親和力のヘテロ二量体受容体複合体に結合することによって細胞内2型シグナルの伝達を開始させ、ヘテロ二量体受容体複合体はその特異性受容体TSLPRからなるもので、IL-2、IL-4、IL-9およびIL-15における共通の受容体γ鎖と24%の相同性を有し、そしてδ-共通鎖IL-2ファミリー、およびTSLPRとIL-7Rαを共発現する細胞におけるIL-7Rαサブユニット(CD127)を含まない。TSLPは、最初にTSLPRに結合し、さらにIL-7Rα鎖を招集する。
【0135】
薬物組成物
さらに、本発明は組成物を提供する。好ましくは、前記の組成物は薬物組成物で、上記の抗体またはその活性断片あるいはその融合タンパク質と、薬学的に許容される担体とを含有する。通常、これらの物質を無毒で不活性で薬学的に許容される水系担体で配合し、pH値は配合される物質の性質および治療しようとする疾患にもよるが、pH値は通常5~8程度、好ましくは6~8程度である。配合された薬物組成物は通常の経路で給与することができ、腹膜内、静脈内、あるいは局部給与が含まれるが、これらに限定されない。
【0136】
本発明の薬物組成物は直接TSLPタンパク質分子との結合に使用することができるため、TSLPに関連する疾患または病症(免疫系疾患や腫瘍疾患を含む)の治療に有用である。また、ほかの治療剤と併用してもよい。
【0137】
本発明の薬物組成物は、安全有効量(たとえば0.001~99wt%、好ましくは0.01~90wt%、より好ましくは0.1~80wt%)の本発明の上記のナノ抗体(またはその複合体)と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含有する。このような担体は、食塩水、緩衝液、ブドウ糖、水、グリセリン、エタノール、およびこれらの組み合せを含むが、これらに限定されない。薬物の製剤は投与形態に相応する。本発明の薬物組成物は、注射剤としてもよく、たとえば生理食塩水またはブドウ糖およびほかの助剤を含有する水溶液で通常の方法によって製造することができる。薬物組成物は、注射剤、溶液の場合、無菌条件で製造する。活性成分の投与量は治療有効量、たとえば毎日約10μg/kg体重~約50mg/kg体重である。また、本発明のポリペプチドはほかの治療剤と併用することが出来る。
【0138】
薬物組成物の使用時、安全有効量の免疫複合体を哺乳動物に施用するが、その安全有効量は、通常、少なくとも約10μg/kg体重で、かつ多くの場合、約50mg/kg体重未満で、好ましくは当該投与量が約10μg/kg体重~約10mg/kg体重である。勿論、具体的な投与量は、さらに投与の様態、患者の健康状況などの要素を考えるべきで、すべて熟練の医者の技能範囲以内である。
【0139】
抗TSLPナノ抗体
本発明において、前記抗TSLPナノ抗体のVHH鎖のアミノ酸配列は、配列番号8、配列番号12、配列番号21、配列番号25、配列番号34または配列番号38のうちの一つまたは複数から選ばれる。
【0140】
本発明の一つの好適な例において、前記抗TSLPナノ抗体は、単量体、二量体(二価抗体)、四量体(四価抗体)、および/または多量体(多価抗体)を含む。
【0141】
典型的に、前記抗TSLPナノ抗体は、二つの配列番号8、配列番号12、配列番号21、配列番号25、配列番号34または配列番号38で示されるアミノ酸配列を有するVHH鎖を含む。
【0142】
もう一つの好適な例において、前記VHH鎖の間は連結ペプチドを介して連結している。
【0143】
もう一つの好適な例において、前記連結ペプチドは以下の配列から選ばれる:(GaSb)x(ただし、a、b、x=0または1または2または3または4または5または6または7または8または9または10である(好ましくは、a=4かつb=1、x=4である))。
【0144】
もう一つの好適な例において、前記連結ペプチドの配列は、GGGGSGGGGSGGGGSGGGGSである。
【0145】
標識されたナノ抗体
本発明の一つの好適な例において、前記ナノ抗体は検出可能なマーカーを持つものである。より好ましくは、前記のマーカーは、同位元素、コロイド金マーカー、有色マーカーまたは蛍光マーカーからなる群から選ばれる。
コロイド金マーカーは当業者に既知の方法によって行ってもよい。本発明の一つの好適な形態において、TSLPのナノ抗体をコロイド金で標識し、金コロイドで標識されたナノ抗体を得る。
【0146】
検出方法
また、本発明は、TSLPタンパク質を検出する方法にも関する。当該方法は、基本的に、細胞および/または組織のサンプルを得る工程と、サンプルを媒体に溶解させる工程と、前記溶解されたサンプルにおけるTSLPタンパク質のレベルを検出する工程とを含む。
本発明の検出方法において、使用されるサンプルは特に限定されず、代表的な例は細胞保存液に存在する細胞を含有するサンプルである。
【0147】
キット
また、本発明は、本発明の抗体(またはその断片)あるいはカセットを含有するキットを提供するが、本発明の一つの好適な例において、前記のキットはさらに容器、使用説明書、緩衝液などを含む。
【0148】
また、本発明は、TSLPレベルを検出する検出キットであって、TSLPタンパク質を認識する抗体と、サンプルを溶解させる分解媒体と、検出に必要な汎用の試薬および緩衝液、たとえば様々な緩衝液、検出マーカー、検出基質などとを含む。当該検出キットは体外診断装置でもよい。
【0149】
応用
上記のように、本発明のナノ抗体は幅広い生物応用価値および臨床応用価値を有し、その応用はTSLPに関連する疾患または病症の診断と治療、基礎医療研究、生物学研究などの多くの分野にわたる。一つの好適な応用はTSLPに対する臨床診断および標的治療に使用されることである。
【0150】
本発明の主な利点は以下の通りである。
(a)本発明のナノ抗体は、有効にTSLPとTSLPRの相互作用を遮断することができる。
(b)本発明のナノ抗体は、対照抗体テゼペルマブよりも強い遮断活性を有する。
(c)本発明のナノ抗体は、ピキア・パストリスにおいて発現することができ、振とう培養の発現収量が高く、かつ発酵タンクの収量が17-23g/Lに達する。
(d)本発明のナノ抗体は、BaF3/TSLPR-IL7R細胞におけるpSTAT5シグナル経路に対する抑制作用が対照抗体テゼペルマブよりも顕著に良い。
【0151】
以下、具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いられるものだけで、本発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。下記実施例で具体的な条件が示されていない実験方法は、通常、たとえばSambrookら、「モレキュラー・クローニング:研究室マニュアル」(ニューヨーク、コールド・スプリング・ハーバー研究所出版社、1989)に記載の条件などの通常の条件に、あるいは、メーカーのお薦めの条件に従う。特に説明しない限り、百分率および部は重量百分率および重量部である。
特別に説明しない限り、本発明の実施例で使用された材料または試薬はいずれも市販品である。
【0152】
実施例1 TSLP特異性ナノ抗体のスクリーニング
フーリン切断部位が突然変異したヒトTSLPアミノ酸配列をヒトコドンに準じて最適化した後、その塩基配列をpFUSEベクターにクローニングし、HEK293F細胞に形質導入して精製してヒトTSLPタンパク質を得た。高純度のタンパク質を免疫アジュバントと混合した後、それぞれ4頭の新疆フタコブラクダを、毎週1回で、計7回免疫させた後、ラクダの末梢血を採取し、RNAを単離してVHH遺伝子断片を増幅させた後、それをpMECSベクターにクローニングし、TG1感受性細胞に電気的形質転換し、高品質のファージディスプレイナノ抗体ライブラリーを構築した。検出したところ、4つのライブラリーでは、いずれも、キャパシティが1×109CFU以上に、断片挿入率が80%以上に達した。
【0153】
ファージディスプレイ技術により、TSLP特異性ナノ抗体をスクリーニングした。3回の「吸着-洗浄-集合」の過程を経た後、各ライブラリーはいずれも特異性ナノ抗体のファージの集合が現れた。その中から1200のクローンを選んでELISA検出およびシークエンシングを行い、最終的に312株の異なる配列の抗体を得た。
【0154】
実施例2 フローサイトメトリーによるTSLPナノ抗体のスクリーニング 以上の配列が異なるナノ抗体をクローニングしてTB培地に接種し、培養してIPTGで一晩誘導し、細胞を分解させて上清を収集して遮断活性の検出に用いた。培養されたCHOZEN/TSLPR安定形質移入細胞を分けて96ウェルプレートに入れ、各ウェルに3E5細胞ずつで、3000rpmで3min遠心して上清液を捨て、各抗体の分解液およびTSLP-ビオチンタンパク質を入れて20minインキュベートした。遠心して上清を捨て、希釈されたSA-PE抗体を入れ、4℃で20 minインキュベートした。さらに遠心して上清を捨て、各ウェルに200μLのPBS再懸濁細胞を入れ、フローサイトメーターによってサンプルのPE信号を検出した。結果から、計64株の候補抗体がTSLPとTSLPRの相互作用を遮断する機能を有することが示された。シークエンシングを合わせ、31株の異なるファミリーの抗体を選んで発現・精製を行った。精製方法は特許CN110144011Aにおける実施例4を参照する。
【0155】
以上の31株の精製された抗体をさらにフローサイトメトリーによる遮断活性検出を行った。培養されたHEK293F/TSLPR一過性形質移入細胞を分けて96ウェルプレートに入れ、各ウェルに3E5細胞ずつで、3000rpmで3min遠心して上清液を捨て、勾配希釈された各抗体(20μg/mLから2倍の勾配で希釈されたもの)およびTSLP-ビオチンタンパク質を入れて20minインキュベートした。本実験では、テゼペルマブを対照抗体とした。その後、遠心して上清を捨て、希釈されたSA-PE抗体を入れ、4℃で20minインキュベートした。さらに遠心して上清を捨て、各ウェルに200μLのPBS再懸濁細胞を入れ、フローサイトメーターによってサンプルのPE信号を検出した。結果は
図1Aおよび1Bで示すように、そのうち、14株の抗体の遮断活性が顕著に対照抗体テゼペルマブよりも良く、14株の抗体の番号はそれぞれNb1-41、Nb1-51、Nb1-59、Nb3-18、Nb3-43、Nb5-31、Nb6-29、Nb7-54、Nb10-55、Nb10-63、Nb10-87、Nb11-6、Nb11-72、Nb11-75である。
【0156】
実施例3 抗体の親和力の測定
バイオレイヤー干渉技術(Bio-layer interferometry、BLI)によって14株の遮断型TSLPナノ抗体の結合動態学を検出した。動態学の測定は、候補抗体をPBST緩衝液で5μg/mLに希釈し、TSLP-Fc抗原をPBST緩衝液で2倍の勾配で6つの濃度の勾配に希釈し(20nMから2倍の勾配で希釈し)、装置の稼働条件を温度30℃、Shake speed 1000rpmとした。プロテインAでコーティングされたプローブで抗体を捕獲し、捕獲時間が60sで、勾配希釈された抗原と結合し、結合時間が240sで、解離時間が300sで、10mMのグリシン(pH1.7)で2回再生させ、毎回5sであった。Fortebio Analysisバージョン9.0によって分析し、Globalモードでフィッティングし、結合速度(Kon)、解離速度(Kdis)および解離定数KDを計算した。結果を
図2に示す。
【0157】
実施例4 ピキア・パストリスによるヒト化二価抗体の発現
候補抗体に対してヒト化改変を行い、可変領域をそのままにし、4つのフレームワーク領域の配列に対してヒト化の設計を行い、改変方法は特許CN2018101517526における実施例4の方法を参照する。ヒト化された抗体のアミノ酸配列を表1に示す。
【0158】
【0159】
以上のヒト化された抗体を二価の様態に構築し、リンカー(G
4S)4で連結し、連結した配列は配列番号40、配列番号41および配列番号42で示され、その後、ピキア・パストリスで発現させた。概略的に、発現方法は以下の通りである。(1)以上のTSLPナノ抗体の二量体配列をpPICZaAベクターに構築した。(2)Sac I制限酵素で線形化した後、電気的にX-33感受性細胞に形質移入した。(3)電気的に形質移入されたサンプルをそれぞれ異なる濃度のブレオマイシン耐性のYPDプレート培地に塗り、30℃のインキュベーターにおいて3-4日培養した。(4)プレート培地に単一クローンができた後、異なる濃度のプレートにおける単一クローンを選んでBMGY培地に入れ、BMGY培地のOD値が20程度に達した時点で、菌体を収集してBMMY培地に変え、28℃、250rpmで培養した。(5)その後、24hごとにサンプリングし、そして最終体積が1%になるようにメタノールを追加してサンプリングした。サンプルを12000rpmで5min遠心し、上清を取り、-20℃で保存した。連続5日で誘導し、培養を終えた。(6)得られた上清サンプルに対してSDS-PAGE検出を行った。二価単一ドメイン抗体の振とう培養の発現量は
図3に示す。
【0160】
実施例5 ELISAによるヒト化二価抗体の遮断活性の検出
以上の精製された二価ヒト化抗体に対してELISAによって遮断活性を検出した。ヒトTSLP抗原タンパク質を分けて96ウェルプレートに入れ、4℃で一晩インキュベートした。PBSTで5回洗浄した後、300μLの1%BSAブロッキング液を入れ、37℃で2時間インキュベートした。PBSTで5回洗浄した後、50μLの勾配希釈された抗体サンプルを入れ、さらに各ウェルに50μLの0.02μg/mLビオチン化されたTSLPRタンパク質を入れ、37℃で1時間インキュベートした。PBSTで5回洗浄した後、SA-HRP(1:100000で希釈されたもの)を100μL入れ、37℃で1時間インキュベートした。PBSTで5回洗浄した後、TMB呈色液を100μL入れ、37℃で10min呈色し、2M H
2SO
4を50μL/ウェルで入れて反応を停止させ、マイクロプレートリーダーによって波長450nmにおいて吸収値を測定した。結果は
図4に示すように、3株のヒト化二価抗体の遮断活性が顕著に対照抗体テゼペルマブよりも良かった。
【0161】
実施例6 ヒト化二価抗体のBaF3/TSLPR-IL7R細胞におけるpSTAT5シグナル経路に対する抑制作用
良好に生長したBaF3/TSLPR-IL7R細胞を1000rpmで5min遠心し、PBSで細胞を再懸濁させ、1x10
5細胞/ウェルで分けて96ウェルプレートに入れた。25μLの希釈されたヒトTSLP因子を勾配希釈された二価ヒト化抗体またはテゼペルマブと混合し、37度で30分インキュベートした後、混合物を細胞に入れ、37℃、5%CO
2で20分置いた。PBSで細胞を洗浄した後、ホルムアルデヒドを入れて固定し、さらに冷却しておいたホルムアルデヒドを入れて10分インキュベートした。最後に抗リン酸化STAT5-PE標識抗体を入れて30分インキュベートし、細胞を洗浄した後、フローサイトメーターにセットしてPE信号値を検出した。結果は
図5に示すように、そのうちの2株のヒト化抗体のBaF3/TSLPR-IL7R細胞におけるpSTAT5シグナル経路に対する抑制作用が顕著に対照抗体テゼペルマブよりも良かった。
【0162】
実施例7 ヒト化二価抗体の7L発酵タンクにおける収量の評価
以上の3つの抗体の発現菌株のグリセロールストックをそれぞれ1:100で増幅培養して一次シードを得た後、新鮮な培地に移して二次シードの培養を行い、二次ジードの培養が合格すると7L発酵タンクに接種して発酵培養を行い、アンモニア水を自動流加し、発酵培養のpHが6.0になるように調整した。培養過程において、定時的に発酵液のpH、菌体の湿重量、菌液のOD値などを検出し、そして溶存酸素の変化に応じて撹拌の回転数、タンクの圧力および酸素の導入量を調整した。発酵菌体の湿重量および溶存酸素の変化に応じ、発酵培養の異なる段階でそれぞれグリセロール追加培地およびメタノール追加培地を流加した。メタノールで誘導して160h~200h培養し、発酵を停止させた。上記3つのヒト化二価抗体の収量を検出したところ、それぞれ17g/L、19g/Lおよび23g/Lであった。当該抗体の収量は既に報告されたすべての種類の抗体の発酵発現収量を遥かに超え、業界のトップレベルに達した。
【0163】
配列情報:
配列番号1:
GFTLDDSDMG
配列番号2:
ISSLGGT
配列番号3:
APGTDRYSDCPNEYSV
配列番号4:
QVQLQESGGGSVQAGGSLRLSCTAS
配列番号5:
WYRQAPGDECELVST
配列番号6:
YYADSVKGRFTISHDNAKNTVYLQMNSLKPHDTAVYYC
配列番号7:
WGQGTQVTVSS
配列番号8:
QVQLQESGGGSVQAGGSLRLSCTASGFTLDDSDMGWYRQAPGDECELVSTISSLGGTYYADSVKGRFTISHDNAKNTVYLQMNSLKPHDTAVYYCAPGTDRYSDCPNEYSVWGQGTQVTVSS
配列番号9:
CAGGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGAGGAGGCTCGGTGCAGGCTGGAGGGTCTCTGAGACTCTCCTGTACAGCCTCTGGATTCACTTTGGATGATTCTGACATGGGCTGGTACCGCCAGGCTCCAGGGGATGAGTGCGAGTTGGTCTCAACTATTAGTAGTTTGGGTGGCACATACTATGCAGACTCCGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCCATGACAACGCCAAGAACACGGTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAAACCTCACGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGCCGGGGACAGACCGTTATAGCGACTGCCCTAATGAGTATAGCGTCTGGGGCCAGGGGACCCAGGTCACCGTCTCCTCA
配列番号10:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCTAS
配列番号11:
WGQGTLVTVSS
配列番号12:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCTASGFTLDDSDMGWYRQAPGDECELVSTISSLGGTYYADSVKGRFTISHDNAKNTVYLQMNSLKPHDTAVYYCAPGTDRYSDCPNEYSVWGQGTLVTVSS
配列番号13:
GAGGTTCAATTGTTGGAATCTGGTGGTGGTTTGGTTCAACCAGGTGGTTCTTTGAGATTGTCTTGTACTGCTTCTGGTTTCACCTTGGACGATTCTGATATGGGATGGTACAGACAAGCTCCAGGAGATGAGTGTGAGTTGGTTTCTACTATCTCTTCCTTGGGTGGAACCTACTACGCTGATTCTGTCAAGGGTCGTTTCACTATTTCTCACGATAATGCTAAGAACACCGTTTACTTGCAAATGAACTCTTTAAAGCCACATGATACTGCCGTTTACTACTGTGCTCCTGGTACTGATAGATACTCTGACTGTCCAAACGAATACTCCGTTTGGGGTCAGGGTACTTTGGTTACTGTCTCTTCC
配列番号14:
GFTFDDSDMG
配列番号15:
ISSDGMT
配列番号16:
AATKYSSDYDVAEDWRRGVCGDMDY
配列番号17:
QVQLQESGGGSVQAGETLRLSCTAS
配列番号18:
WYRQAPGNECELVSI
配列番号19:
YYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYC
配列番号20:
WGKGTQVTVSS
配列番号21:
QVQLQESGGGSVQAGETLRLSCTASGFTFDDSDMGWYRQAPGNECELVSIISSDGMTYYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAATKYSSDYDVAEDWRRGVCGDMDYWGKGTQVTVSS
配列番号22:
CAGGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGAGGAGGCTCGGTGCAGGCTGGAGAGACTCTGAGACTCTCCTGTACAGCCTCTGGATTCACTTTTGATGATTCTGACATGGGCTGGTACCGCCAGGCTCCAGGGAATGAGTGCGAGTTGGTCTCAATTATTAGTAGTGATGGTATGACATACTATGCAGACTCCGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCCAAGACAACGCCAAGAACACGGTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAAACCTGAGGACACAGCCGTGTATTACTGTGCGGCGACGAAGTACTCCAGCGACTATGACGTAGCTGAGGATTGGAGACGCGGGGTCTGTGGAGACATGGACTACTGGGGCAAAGGAACCCAGGTCACCGTCTCCTCA
配列番号23:
EVQLLESGGGLVQPGETLRLSCTAS
配列番号24:
WGKGTLVTVSS
配列番号25:
EVQLLESGGGLVQPGETLRLSCTASGFTFDDSDMGWYRQAPGNECELVSIISSDGMTYYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAATKYSSDYDVAEDWRRGVCGDMDYWGKGTLVTVSS
配列番号26:
GAAGTCCAATTGCTTGAATCCGGTGGTGGATTAGTTCAACCAGGTGAGACCTTGAGACTGTCCTGTACCGCTTCCGGTTTCACTTTCGACGACTCCGACATGGGTTGGTACAGACAGGCTCCAGGTAATGAGTGTGAGTTGGTTTCTATTATTTCCTCTGATGGTATGACTTACTACGCTGATTCTGTTAAGGGTAGATTCACTATCTCTCAAGACAATGCTAAGAACACTGTTTACTTGCAAATGAACTCTTTGAAGCCTGAAGATACCGCCGTCTACTACTGTGCTGCCACCAAGTACTCCTCCGATTATGATGTCGCTGAAGATTGGAGAAGAGGAGTTTGTGGAGATATGGATTACTGGGGTAAAGGTACTTTGGTTACCGTTTCTTCT
配列番号27:
GFTSGGSDMG
配列番号28:
ISSDGST
配列番号29:
AATDYGLGPPPSSTGQCYGMDY
配列番号30:
QVQLQESGGGSVQAGGSLRLSCTAS
配列番号31:
WYRQAPGNECDLVSY
配列番号32:
YYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYC
配列番号33:
WGKGTQVTVSS
配列番号34:
QVQLQESGGGSVQAGGSLRLSCTASGFTSGGSDMGWYRQAPGNECDLVSYISSDGSTYYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAATDYGLGPPPSSTGQCYGMDYWGKGTQVTVSS
配列番号35:
CAGGTGCAGCTGCAGGAGTCTGGGGGAGGCTCGGTGCAGGCTGGAGGGTCTCTGAGACTCTCCTGTACAGCCTCTGGATTCACTTCTGGCGGTTCTGACATGGGCTGGTACCGCCAGGCTCCAGGGAATGAGTGCGACTTGGTCTCATATATTAGTAGTGATGGTAGCACATACTATGCAGACTCCGTGAAGGGCCGATTCACCATCTCCCAAGACAACGCCAAGAACACGGTGTATCTGCAAATGAACAGCCTGAAACCTGAGGACACGGCCGTGTATTACTGTGCGGCCACCGACTATGGGTTGGGGCCGCCCCCTTCTTCGACGGGCCAATGTTACGGCATGGACTACTGGGGCAAAGGAACCCAGGTCACCGTCTCCTCA
配列番号36:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCTAS
配列番号37:
WGKGTLVTVSS
配列番号38:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCTASGFTSGGSDMGWYRQAPGNECDLVSYISSDGSTYYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAATDYGLGPPPSSTGQCYGMDYWGKGTLVTVSS
配列番号39:
GAAGTTCAGTTGTTGGAATCAGGTGGTGGTTTGGTTCAACCAGGAGGTTCTCTGAGATTGTCTTGTACTGCTTCCGGTTTCACTTCCGGAGGTTCTGACATGGGATGGTACCGTCAAGCTCCTGGTAACGAGTGCGACTTGGTTTCTTACATCTCTTCCGACGGTTCCACTTACTACGCTGATTCTGTTAAGGGTAGATTCACTATTTCTCAAGACAACGCTAAGAATACTGTTTACTTGCAGATGAACTCTTTGAAGCCAGAGGATACCGCTGTTTACTATTGTGCCGCCACTGATTACGGTTTGGGTCCTCCACCATCTTCTACTGGACAATGTTACGGTATGGATTACTGGGGTAAAGGTACCCTGGTCACCGTTTCCTCT
配列番号40:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCTASGFTLDDSDMGWYRQAPGDECELVSTISSLGGTYYADSVKGRFTISHDNAKNTVYLQMNSLKPHDTAVYYCAPGTDRYSDCPNEYSVWGQGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCTASGFTLDDSDMGWYRQAPGDECELVSTISSLGGTYYADSVKGRFTISHDNAKNTVYLQMNSLKPHDTAVYYCAPGTDRYSDCPNEYSVWGQGTLVTVSS
配列番号41:
EVQLLESGGGLVQPGETLRLSCTASGFTFDDSDMGWYRQAPGNECELVSIISSDGMTYYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAATKYSSDYDVAEDWRRGVCGDMDYWGKGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLESGGGLVQPGETLRLSCTASGFTFDDSDMGWYRQAPGNECELVSIISSDGMTYYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAATKYSSDYDVAEDWRRGVCGDMDYWGKGTLVTVSS
配列番号42:
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCTASGFTSGGSDMGWYRQAPGNECDLVSYISSDGSTYYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAATDYGLGPPPSSTGQCYGMDYWGKGTLVTVSSGGGGSGGGGSGGGGSGGGGSEVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCTASGFTSGGSDMGWYRQAPGNECDLVSYISSDGSTYYADSVKGRFTISQDNAKNTVYLQMNSLKPEDTAVYYCAATDYGLGPPPSSTGQCYGMDYWGKGTLVTVSS
【0164】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、当業者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の形態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるはずである。
【配列表】