(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167330
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】熱伝達流体及びその使用のための腐食抑制剤配合物
(51)【国際特許分類】
C09K 5/10 20060101AFI20241126BHJP
【FI】
C09K5/10 E
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024147360
(22)【出願日】2024-08-29
(62)【分割の表示】P 2021553016の分割
【原出願日】2020-03-06
(31)【優先権主張番号】62/815,747
(32)【優先日】2019-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500057423
【氏名又は名称】プレストーン プロダクツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ボー
(72)【発明者】
【氏名】ウォイシースジェス,ピーター・エム
(57)【要約】 (修正有)
【課題】熱伝達システムにおける腐食を抑制するための熱伝達流体及び熱伝達流体濃縮物を提供する。
【解決手段】熱伝達流体濃縮物は、凝固点降下剤;及び(i)銅及び銅合金のための腐食抑制剤、及び(ii)ポリアルキレングリコールを含む非イオン性界面活性剤;を含み、導電率は約100μS/cm以下である。すぐに使える熱伝達流体、及び熱伝達システムにおいて腐食を抑制する方法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝達流体濃縮物であって、
凝固点降下剤;及び
(i)銅及び銅合金のための腐食抑制剤、及び(ii)ポリアルキレングリコールを含む非イオン性界面活性剤;
を含み、
前記熱伝達流体濃縮物の導電率は約100μS/cm以下である、上記熱伝達流体濃縮物。
【請求項2】
前記熱伝達流体濃縮物の導電率が約25μS/cm以下である、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項3】
前記熱伝達流体濃縮物の導電率が約10μS/cm以下である、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項4】
前記凝固点降下剤がアルコールを含む、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項5】
前記凝固点降下剤が、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項6】
前記凝固点降下剤が、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約10重量%~約99.85重量%の量で存在する、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項7】
前記凝固点降下剤が、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約30重量%~約99.5重量%の量で存在する、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項8】
前記凝固点降下剤が、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約40重量%~約99重量%の量で存在する、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項9】
前記銅及び銅合金のための腐食抑制剤がアゾール化合物を含む、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項10】
前記アゾール化合物が、場合により置換されているベンゾトリアゾール、場合により置換されているトリルトリアゾール、場合により置換されているC2~C20アルキルベンゾトリアゾール、場合により置換されているメルカプトベンゾチアゾール、場合により置換されているチアゾール、場合により置換されているイミダゾール、場合により置換されているベンズイミダゾール、場合により置換されているインダゾール、場合により置換されているテトラゾール、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項9に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項11】
前記場合により置換されているC2~C20アルキルベンゾトリアゾールが、メチルベンゾトリアゾール、ブチルベンゾトリアゾール、又はそれらの組合せを含む、請求項10に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項12】
前記銅及び銅合金のための腐食抑制剤が、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.01重量%~約4重量%の量で存在する、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項13】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコー
ル、メトキシポリエチレングリコール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項14】
前記非イオン性界面活性剤が、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.001重量%~約2重量%の量で存在する、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項15】
前記非イオン性界面活性剤が、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.005重量%~約1重量%の量で存在する、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項16】
前記非イオン性界面活性剤が、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.01重量%~約0.5重量%の量で存在する、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項17】
更なる非イオン性界面活性剤を更に含む、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項18】
前記更なる非イオン性界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、アルコキシル化アルコール、ポリアルキレングリコールエステル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項17に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項19】
前記更なる非イオン性界面活性剤がソルビタン脂肪酸エステル及びアルコキシル化アルコールを含む、請求項17に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項20】
前記アルコキシル化アルコールが、式:
RO(CH2CH2O)j(CH2CH2CH2O)kH
(式中、RはC4~C25線状第1級アルコールであり、jは0~15の整数であり、kは0~15の整数であり、j+kは1以上の整数である)
を有する、請求項18に記載の熱伝達流体濃縮物,
【請求項21】
RがC6~C15線状第1級アルコールである、請求項20に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項22】
前記アルコキシル化アルコールが、エトキシル化アルコール、プロポキシル化アルコール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項18に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項23】
前記エトキシル化アルコールが、式:
RO(CH2CH2O)nH
(式中、RはC4~C25線状第1級アルコールであり、nは1~15の整数である)
を有する、請求項22に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項24】
RがC6~C15線状第1級アルコールである、請求項23に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項25】
前記プロポキシル化アルコールが、式:
RO(CH2CH2CH2O)mH
(式中、RはC4~C25線状第1級アルコールであり、mは1~15の整数である)
を有する、請求項22に記載の熱伝達流体濃縮物
【請求項26】
RがC6~C15線状第1級アルコールである、請求項25に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項27】
前記アルコキシル化アルコールが、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.001重量%~約1重量%の量で存在する、請求項18に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項28】
シロキサン化合物、コロイダルシリカ、シクロヘキセンカルボキシレートのアミン塩、アミン化合物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される低導電性腐食抑制剤を更に含む、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項29】
水を更に含む、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項30】
前記水が、脱イオン水、脱塩水、軟化水、又はそれらの組み合わせである、請求項29に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項31】
前記水が、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.1重量%~約90重量%の量で存在する、請求項29に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項32】
前記水が、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.5重量%~約70重量%の量で存在する、請求項29に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項33】
前記水が、前記熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約1重量%~約60重量%の量で存在する、請求項29に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項34】
C1~C20テトラアルキルオルトケイ酸エステル、着色剤、湿潤剤、殺生物剤、消泡剤、界面活性剤、更なる腐食抑制剤、非イオン性分散剤、及びそれらの組合せからなる群から選択される更なる成分を更に含む、請求項1に記載の熱伝達流体濃縮物。
【請求項35】
熱伝達流体であって、
水;
前記熱伝達流体の総重量を基準として約10重量%~約99.85重量%の量の凝固点降下剤;
前記熱伝達流体の総重量を基準として約0.001重量%~約2重量%の量の、(i)アゾール化合物及び(ii)ポリアルキレングリコールを含む非イオン界面活性剤;
を含み;
前記熱伝達流体濃縮物の導電率は約50μS/cm以下である、上記熱伝達流体。
【請求項36】
前記凝固点降下剤が、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項35に記載の熱伝達流体。
【請求項37】
前記ポリアルキレングリコールが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、又はそれらの組み合わせを含む、請求項35に記載の熱伝達流体。
【請求項38】
前記アゾール化合物が、場合により置換されているベンゾトリアゾール、場合により置換されているトリルトリアゾール、場合により置換されているC2~C20アルキルベンゾトリアゾール、場合により置換されているメルカプトベンゾチアゾール、場合により置換されているチアゾール、場合により置換されているイミダゾール、場合により置換されているベンズイミダゾール、場合により置換されているインダゾール、場合により置換されているテトラゾール、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項35に記載の熱伝達流体。
【請求項39】
ソルビタン脂肪酸エステル、アルコキシル化アルコール、ポリアルキレングリコールエ
ステル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとのコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される更なる非イオン性界面活性剤を更に含む、請求項35に記載の熱伝達流体。
【請求項40】
シロキサン化合物、コロイダルシリカ、シクロヘキセンカルボキシレートのアミン塩、アミン化合物、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される低導電性腐食抑制剤を更に含む、請求項35に記載の熱伝達流体。
【請求項41】
C1~C20テトラアルキルオルトケイ酸エステル、着色剤、湿潤剤、殺生物剤、消泡剤、界面活性剤、更なる腐食抑制剤、非イオン性分散剤、及びそれらの組合せからなる群から選択される更なる成分を更に含む、請求項35に記載の熱伝達流体。
【請求項42】
熱伝達システムにおける腐食を抑制する方法であって、
前記熱伝達システムの少なくとも一部を熱伝達流体と接触させること;
を含み;
前記熱伝達流体は、
凝固点降下剤;
水;及び
(i)銅及び銅合金のための腐食抑制剤、及び(ii)ポリアルキレングリコールを含む非イオン性界面活性剤;
を含み;
前記熱伝達流体の導電率は、約100μS/cm以下である、上記方法。
【請求項43】
前記熱伝達システムが、炭素鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、イエローメタル、又はそれらの組み合わせを含む部品を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記熱伝達システムが、マグネシウム、マグネシウム合金、又はそれらの組み合わせを含む部品を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記熱伝達システムが燃料電池を含む、請求項42に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2019年3月8日出願の米国仮特許出願第62/815747号に対する35U.S.C.§119(e)に基づく優先権の利益を主張する。参照された出願において示されている開示事項は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002]本発明は、一般に熱伝達流体に関し、幾つかの実施形態においては、熱伝達システムにおける腐食を抑制するための熱伝達流体に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]動力源と熱連通する熱伝達システムは、動力源の運転中に発生する熱を調整するために使用される。例えば、自動車車両は、ガソリン動力内燃機関の副産物として発生する熱を伝達及び放散する熱伝達流体及び冷却システムを使用している。
【0004】
[0004]バッテリ、燃料電池、太陽光電池、及び水蒸気の凝縮、天然ガス、ディーゼル、水素などによって動力供給される内燃機関のような代替の動力源も、特に温度に関して最適な運転条件を維持するために熱伝達システム及び熱伝達流体を利用する場合がある。
【0005】
[0005]従来の内燃冷却システム及び熱伝達流体は、代替の動力源、特に電気又は電荷を使用するものと共に使用するのには好適及び/又は最適ではない場合がある。例えば、従来の熱伝達流体は、通常はしばしば3000μS/cm以上の範囲の極めて高い導電率を有することを特徴とする。代替の動力源、特に電気ベースの代替動力源と共に高導電性の熱伝達流体を使用すると、電撃、腐食の増加、及び/又は電流の短絡を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0006】
[0006]本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定され、この概要内の記述によっていかなる程度にも影響されない。
[0007]前置きとして、熱伝達流体において使用するための本発明による熱伝達流体濃縮物は、(a)凝固点降下剤;及び(b)(i)銅及び銅合金のための腐食抑制剤及び(ii)ポリアルキレングリコールを含む非イオン界面活性剤;を含む。熱伝達流体濃縮物の導電率は約100μS/cm以下である。
【0007】
[0008]本発明による熱伝達流体は、(a)水;(b)熱伝達流体の総重量を基準として約10重量%~約99.85重量%の量の凝固点降下剤;及び(c)熱伝達流体の総重量を基準として約0.001重量%~約2重量%の量の非イオン性界面活性剤;を含む。非イオン性界面活性剤は、(i)アゾール化合物、及び(ii)ポリアルキレングリコールを含む。熱伝達流体濃縮物の導電率は、約50μS/cm以下である。
【0008】
[0009]熱伝達システムにおける腐食を抑制するための本発明による方法は、熱伝達システムの少なくとも一部を上記のタイプの熱伝達流体と接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】[0010]
図1は、腐食抑制剤添加の効果を示す第1の実施例における、平均腐食速度vs時間のプロットを示す。
【
図2】[0011]
図2は、腐食抑制剤添加の効果を示す第1の実施例における、平均腐食速度vs時間のプロットを示す。
【
図3】[0012]
図3は、腐食抑制剤添加の効果を実証する第1の実施例における、平均腐食速度vs時間のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0013]本発明によれば、(a)低い導電率を有し、(b)効果的な熱伝達を与え、(c)冷却システムの金属(マグネシウム及びマグネシウム合金を含むが、これらに限定されない)の優れた腐食保護を与え、(d)凍結及びボイルオーバーから保護し、(e)低い発泡傾向を有し、及び/又は(f)適用されるASTM-D3306の要件(又は対応する電気自動車に関する自動車製造業者のクーラント仕様)に準拠する、熱伝達流体濃縮物、及び(例えば水で希釈することによって)熱伝達流体濃縮物から得られるすぐに使用できる熱伝達流体を見出し、本明細書に記載した。本発明によれば、低導電性又は非導電性の腐食抑制グリコール/水ベースの組成物を、車両冷却システムのためのクーラントとして使用することができる。幾つかの実施形態においては、クーラントの導電率は、約100μS/cm未満、幾つかの実施形態においては約25μS/cm未満、幾つかの実施形態においては約10μS/cm未満である。幾つかの実施形態においては、腐食抑制剤及び/又は着色剤の枯渇を抑止し、車両の運転中にクーラントの導電率を低レベルに維持するためには、熱伝達流体濃縮物及びそれから得られる熱伝達流体は、クーラントから望ましくないイオン種を除去するために、抑制剤及び/又は着色剤で前処理したイオン交換樹脂を使用することができる。
【0011】
[0014]概略的な前置きとして、燃料電池は、水素のような燃料と酸素のような酸化剤との間の電気化学反応から電気を生成する電気化学デバイスである。この電気化学反応の副産物として、一般に水が生成される。燃料電池は、従来の自動車の内燃機関に代わるものとして使用することができるクリーンで効率的な動力源である。燃料電池アセンブリは、通常は、アノード(燃料の酸化反応が起こる負に帯電した電極)、カソード(酸化剤、例えば酸素の還元が起こる正に帯電した電極)、及び2つの電極の間に介在する電解液を含む。車両エンジンにおいて使用するのに十分な動力を生成するために、燃料電池ベースのエンジンには、直列に接続されて燃料電池スタックを形成する多くの燃料電池を含ませることができる。それぞれの単一のセルは、0.6~1.0V-DCの電圧で動作することができる。車両において使用するための燃料電池スタックは、直列に接続された100を超える電池を有し得る。したがって、燃料電池スタックを通るDC電圧を非常に高くすることができる。通常の電池の電圧は、自動車用燃料電池スタックにおいては約125V~約450VのDCの範囲であり得る。
【0012】
[0015]電力を生成することに加えて、燃料電池アセンブリはまた、関与する電気化学反応及び電流の流れの発熱性のために、熱を生成する。而して、燃料電池スタックはまた、クーラントを循環させてスタックから熱を除去するためのクーラントチャネルを含み得る。クーラントチャンネルを通してクーラントを循環させると、燃料電池スタックの温度を、最適な作動条件のために望ましい範囲で制御することができる。
【0013】
[0016]燃料電池スタックを囲む冷却システムは、燃料電池スタック自体と同じ電圧に曝される。したがって、電撃を防止又は最小にするためには、クーラントは非常に低い導電率を有していなければならない。例えば、クーラントの導電率の上限は、約5μS/cm未満に設定され得る。また、燃料電池クーラントに関する低い導電率は、クーラントシステム内における分流電流を減少させ、システム効率の低下を最小にするために望ましい場合がある。
【0014】
[0017]燃料電池クーラントシステムは、多くの金属部品を有し得る。例として、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、黄銅及び黄銅合金、イエローメタル(yellow metal)、及び他の鉄又は非鉄合金を、燃料電池クーラントシステム内に含ませることができる。それらの金属は動作条件下で腐食を受けやすい
ので、腐食を最小にし、システムの耐用年数を延ばすために、燃料電池クーラント中において腐食抑制剤が必要となる場合がある。しかしながら、ほとんどの従来の腐食抑制剤は、イオン種(例えば、ケイ酸塩、亜硝酸塩、モリブデン酸塩、硝酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩など)である。したがって、エンジン冷却システムにおいて腐食保護を与えるために通常使用されるそれらのイオン性腐食抑制剤を十分に高い濃度で使用すると、燃料電池クーラントの導電限界を大きく超える可能性がある。而して、燃料電池クーラントシステムにおける金属、特に炭素鋼、アルミニウム合金、マグネシウム合金、及びイエローメタルのようなより腐食しやすい金属(ただし、これらに限定されない)に対する効果的な腐食保護を与えることは、重要な課題である。燃料電池駆動車両の冷却システムにおける金属の腐食に対して保護する能力は、冷却システムにおけるより低コストの材料の使用を容易にし、燃料電池駆動車両の製造コストの低減を助けることができる。
【0015】
[0018]冷却システム内の種々の金属部品に関して信頼性のある腐食保護を与えることに加えて、エンジンクーラントはまた、車両のための通年機能流体として使用するためのその要件を満たすためには、次の特性:高い熱伝導率;高い熱容量又は高い比熱;使用温度範囲内における良好な流動性;高い沸点;低い凝固点;低い粘度;低い毒性及び使用安全性;コスト有効性及び十分な供給性;使用の温度及び条件にわたって化学的に安定であること;低い発泡傾向;低いボイルオーバー傾向;及び良好な材料適合性(即ち、金属材料及び非金属材料の両方を含むシステム材料を腐食、浸食、又は劣化させない);も有していなければならない。本明細書に記載される熱伝達流体濃縮物及びそれから得られる熱伝達流体を使用して、上記の特性の1以上を与えることができる。
【0016】
[0019]一般的に入手可能なエンジニアリング合金の中で、マグネシウム合金は最も高い強度/重量比を有する。その結果、増加した燃料経済性、減少した汚染、及び減少した石油依存度に対する必要性のために、自動車においてマグネシウム合金を使用することが増加している。しかしながら、車両のパワートレインシステム(例えばエンジンブロック)に関してマグネシウム合金を使用することは、今日まで制限されていた。パワートレインシステムにおけるマグネシウム合金の用途が限定されている1つの理由は、特に、車両冷却システムにおいて一般的に使用される水/グリコール系クーラントと接触した際の材料の劣った耐腐食性である。
【0017】
[0020]従来の水/グリコールベースのクーラントにおいて通常使用される腐食抑制剤配合物は、冷却システム中の種々の金属に対する腐食保護を与えるために、ケイ酸塩、亜硝酸塩、カルボン酸塩(例えば、C4~C18モノ又はジカルボン酸塩、安息香酸塩)、モリブデン酸塩、硝酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、ホウ酸塩などのような高濃度のイオン種を含む。それらの抑制されたクーラントの多くは車両の冷却システムにおいて使用される幾つかの金属部品(例えば、アルミニウム、鋳鉄、鋼、銅、黄銅、はんだなど)に対して満足な腐食保護を与えることができるが、マグネシウム合金ベースの部品に対するそれらの腐食保護は劣っている。マグネシウム合金の腐食速度は、マグネシウム合金が他の金属とガルバニック接触している場合、及び/又はマグネシウム合金を含まない車両冷却システムにおいて使用するように設計された種々の市販のクーラントに曝された場合には高い動作温度において特に高い。
【0018】
[0021]したがって、マグネシウム及び/又はマグネシウム合金を含む車両冷却システムのための新しい腐食抑制クーラント及び腐食保護方法に対する必要性が存在する。
[0022]本明細書及び添付の特許請求の範囲全体において、以下の定義を理解すべきである。
【0019】
[0023]「ヘテロ原子」という用語は、炭素及び水素以外の任意の原子を指す。本発明によるヘテロ原子の代表例としては、窒素、酸素、イオウなどが挙げられるが、これらに限
定されない。
【0020】
[0024]「アルキル」という用語は、幾つかの実施形態においては1~24個の炭素原子を含む、置換又は非置換で、直鎖、分岐、又は環式の炭化水素鎖を指す。本発明による非置換アルキル基の代表例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、シクロブチル、ペンチル、シクロペンチル、ヘキシル、シクロヘキシルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
[0025]「アルケニル」という用語は、少なくとも1つの二重結合、及び幾つかの実施形態においては2~24個の炭素原子を含む、置換又は非置換で、直鎖、分岐、又は環式の不飽和炭化水素鎖を指す。本発明による代表的な非置換アルケニル基としては、エテニル又はビニル(-CH=CH2)、1-プロペニル、2-プロペニル又はアリル(-CH2-CH=CH2)、1,3-ブタジエニル(-CH=CHCH=CH2)、1-ブテニル(-CH=CHCH2CH3)、ヘキセニル、ペンテニル、1,3,5-ヘキサトリエニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、シクロアルケニル基は、5~8個の炭素原子及び少なくとも1つの二重結合を有する。本発明による代表的なシクロアルケニル基としては、シクロヘキサジエニル、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタジエニル、シクロオクタトリエニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
[0026]「アルコキシ」という用語は、置換又は非置換の-O-アルキル基を指す。本発明による代表的な非置換アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
[0027]「シロキシ」及び「シリルオキシ」という用語は、ケイ素置換酸素基を指す。シロキシ基のケイ素含有部分は、置換又は非置換であってよい。本発明による代表的なシロキシ基としては、トリメチルシリルオキシ(-OSi(CH3)3)、トリエチルシリルオキシ(-OSi(CH2CH3)3)、トリイソプロピルシロキシ(-OSi(i-Pr)3)、tert-ブチルジメチルシリルオキシ(-OSi(tert-Bu)(CH3)2)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0024】
[0028]「アルキニル」という用語は、少なくとも1つの三重結合、及び幾つかの実施形態においては2~20個の炭素原子を含む、置換又は非置換で、直鎖、分岐、又は環式の不飽和炭化水素鎖を指す。
【0025】
[0029]「アリール」という用語は、4~20炭素原子の、置換又は非置換の単環式、二環式、又は多環式の芳香環系を指す。本発明による代表的なアリール基としては、ベンゼン、置換ベンゼン(例えば、トルエン、キシレン類、スチレン)、ナフタレン、アントラセン、ビフェニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
[0030]「アミノ」という用語は、非置換又は置換アミノ(-NH2)基を指す。アミンは、第1級(-NH2)、第2級(-NHRa)、又は第3級(-NRaRb)(ここで、Ra及びRbは同じか又は異なる)であってよい。本発明による代表的な置換アミノ基としては、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、2-プロピルアミノ、1-プロピルアミノ、ジ(n-プロピル)アミノ、ジ(イソプロピル)アミノ、メチル-n-プロピルアミノ、tert-ブチルアミノなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
[0031]「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、ヨウ素、又は臭素を指す。
[0032]「複素環式」という用語は、3~24個の炭素原子(幾つかの態様においては4~22個の炭素原子;他の態様においては6~20個の炭素原子)、及び少なくとも1つのヘテロ原子(幾つかの態様においては1~3個のヘテロ原子)を含む、飽和、部分飽和、又は芳香族環系を指す。環は、場合によっては1以上の置換基で置換されていてもよい。更に、環は、単環式、二環式、又は多環式であってよい。本明細書において使用する「複素環式」という用語は、「ヘテロアリール」の用語を包含する。環中に含められる代表的なヘテロ原子としては、窒素、酸素、及びイオウが挙げられるが、これらに限定されない。本発明による代表的な複素環式基としては、アジリジン、アジリン、オキシラン、オキシレン、チイラン、チイレン、ジアジリン、オキサジリジン、ジオキシラン、アゼチジン、アゼト、オキセタン、オキセト、チエタン、チエト、ジアゼチジン、ジオキセタン、ジオキセト、ジチエタン、ジチエト、ピロリジン、テトラヒドロフラン、チオラン、イミダゾリジン、ピラゾリデン、オキサゾリジン、イソオキサゾリジン、チアゾリジン、イソチアゾリデン、ジオキソラン、ジチオラン、フラザン、オキサジアゾール、ジチアゾール、テトラゾール、ピペリジン、オキサン、ピラン、チアン、チオピラン、ピペラジン、ジアジン、モルホリン、オキサジン、チオモルホリン、チアジン、ジオキサン、ジオキシン、ジチアン、ジチイン、トリオキサン、トリチアン、テトラジン、アゼパン、アゼピン、オキセパン、オキセピン、チエパン、チエピン、ホモピペラジン、ジアゼピン、チアゼピン、アゾカン、アゾシン、アクリジン、ベンゾチアゾリン、ベンズイミダゾール、ベンゾフラン、ベンゾチアペン、ベンズチアゾール、ベンゾチオフェニル、カルバゾール、シンノリン、フラン、イミダゾール、1H-インダゾール、インドール、イソインドール、イソキノリン、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール類(例えば1,2,3-オキサジアゾール)、フェナジン、フェノチアジン、フェノキサジン、フタラジン、プテリジン、プリン、ピラジン、ピラゾール、ピリダジン、ピリジン、ピリミジン、ピロール、キナゾリン、キノリン、キノキサリン、チアゾール、チアジアゾール類(例えば1,3,4-チアジアゾール)、チオフェン、トリアジン(例えば1,3,5-トリアジン)、トリアゾール類(例えば1,2,3-トリアゾール)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
[0033]「置換」という用語は、骨格構造(例えば、アルキル骨格、アルケニル骨格、複素環式骨格等)上への1以上の置換基の随意的な結合を指す。本発明にしたがって使用するための代表的な置換基としては、ヒドロキシル、アミノ(-NH2、-NHRa、-NRaRb)、オキシ(-O-)、カルボニル(-CO-)、チオール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、ハロ、ニトリル、ニトロ、アリール、及びヘテロシクリル基が挙げられるが、これらに限定されない。それらの置換基は、場合によっては1~3個の置換基で更に置換されていてよい。置換された置換基の例としては、カルボキサミド、アルキルメルカプト、アルキルスルホニル、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、カルボキシレート、アルコキシカルボニル、アルキルアリール、アラルキル、アルキルヘテロシクリル、ヘテロシクリルアリール、ハロアルキルなどが挙げられるが、これらに限定されない。置換基は、本発明の反応を実質的に化学的に妨げてはならない(例えば反応物質との交差反応、反応の停止などを起こしてはならない)。
【0029】
[0034]「燃料電池」という句は、ポリマー電解質膜(PEM)燃料電池、直接メタノール燃料電池、アルカリ燃料電池、リン酸燃料電池、溶融炭酸塩燃料電池、固体酸化物燃料電池、及びそれらの任意の組み合わせなど(しかしながらこれらに限定されない)の任意のタイプの燃料電池を指す。更に、本明細書で使用される「燃料電池」という句は、1つ又は複数の個々の燃料電池、及び燃料電池の1つ又は複数の個々の「スタック」(即ち、電気的に結合された組み合わせ)を包含する。
【0030】
[0035]下記に記載する種々の代表的な態様の構成要素及び特徴は、異なるように組み合
わせて、同様に本発明の範囲内である新しい態様を生成させることができることを理解すべきである。
【0031】
[0036]概略的な前置きとして、本発明による熱伝達流体濃縮物は、次の成分:(a)凝固点降下剤;及び(b)(i)銅及び銅合金のための腐食抑制剤及び(ii)ポリアルキレングリコールを含む非イオン性界面活性剤;を含むか、又は幾つかの実施形態においてはこれらから本質的に構成されるか、又は更なる実施形態においてはこれらから本質的に構成される。熱伝達流体濃縮物の導電率は約100μS/cm以下である。
【0032】
[0037]本発明による熱伝達流体濃縮物及び熱伝達流体濃縮物から(例えば水で希釈することによって)得られるすぐに使用できる熱伝達流体の導電率は、幾つかの異なる値の1つであってよく、又は幾つかの異なる範囲の1つ内に含まれていてもよい。例えば、熱伝達流体濃縮物又はそれから得られるすぐに使用できる熱伝達流体が、次の値:約90μS/cm、89μS/cm、88μS/cm、87μS/cm、86μS/cm、85μS/cm、84μS/cm、83μS/cm、82μS/cm、81μS/cm、80μS/cm、79μS/cm、78μS/cm、77μS/cm、76μS/cm、75μS/cm、74μS/cm、73μS/cm、72μS/cm、71μS/cm、70μS/cm、69μS/cm、68μS/cm、67μS/cm、66μS/cm、65μS/cm、64μS/cm、63μS/cm、62μS/cm、61μS/cm、60μS/cm、59μS/cm、58μS/cm、57μS/cm、56μS/cm、55μS/cm、54μS/cm、53μS/cm、52μS/cm、51μS/cm、50μS/cm、49μS/cm、48μS/cm、47μS/cm、46μS/cm、45μS/cm、44μS/cm、43μS/cm、42μS/cm、41μS/cm、40μS/cm、39μS/cm、38μS/cm、37μS/cm、36μS/cm、35μS/cm、34μS/cm、33μS/cm、32μS/cm、31μS/cm、30μS/cm、29μS/cm、28μS/cm、27μS/cm、26μS/cm、25μS/cm、24μS/cm、23μS/cm、22μS/cm、21μS/cm、20μS/cm、19μS/cm、18μS/cm、17μS/cm、16μS/cm、15μS/cm、14μS/cm、13μS/cm、12μS/cm、11μS/cm、10μS/cm、9μS/cm、8μS/cm、7μS/cm、6μS/cm、又は5μS/cmの1つ以下の伝導率を有することは、本発明の範囲内である。
【0033】
[0038]また、熱伝達流体濃縮物又はそれから得られるすぐに使用できる熱伝達流体の導電率が多くの範囲の1つの範囲内に入ることも、本発明の範囲内である。範囲の第1の組においては、熱伝達流体濃縮物及び/又はそれから得られるすぐに使用できる熱伝達流体の導電率は、次の範囲:約1μS/cm~99μS/cm、2μS/cm~98μS/cm、3μS/cm~97μS/cm、4μS/cm~96μS/cm、5μS/cm~95μS/cm、6μS/cm~94μS/cm、7μS/cm~93μS/cm、8μS/cm~92μS/cm、9μS/cm~91μS/cm、10μS/cm~90μS/cm、11μS/cm~89μS/cm、12μS/cm~88μS/cm、13μS/cm~87μS/cm、14μS/cm~86μS/cm、15μS/cm~85μS/cm、16μS/cm~84μS/cm17μS/cm~83μS/cm、18μS/cm~82μS/cm、19μS/cm~81μS/cm、20μS/cm~80μS/cm、21μS/cm~79μS/cm、22μS/cm~78μS/cm、23μS/cm~77μS/cm、24μS/cm~76μS/cm、25μS/cm~75μS/cm、26μS/cm~74μS/cm、27μS/cm~73μS/cm、28μS/cm~72μS/cm、29μS/cm~71μS/cm、30μS/cm~70μS/cm、31μS/cm~69μS/cm、32μS/cm~68μS/cm、33μS/cm~67μS/cm、34μS/cm~66μS/cm、35μS/cm~65μS/cm、36μS/cm~64μS/cm、37μS~63μS/cm、38μS/cm~6
2μS/cm、39μS/cm~61μS/cm、40μS/cm~60μS/cm、41μS/cm~59μS/cm、42μS/cm~58μS/cm、43μS/cm~57μS/cm、44μS/cm~56μS/cm、45μS/cm~55μS/cm、46μS/cm~54μS/cm、47μS/cm~53μS/cm、48μS/cm~52μS/cm、又は49μS/cm~51μS/cmの1つの範囲内である。範囲の第2の組においては、熱伝達流体濃縮物及び/又はそれから得られるすぐに使用できる熱伝達流体の導電率は、次の範囲:約1μS/cm~100μS/cm、2μS/cm~100μS/cm、3μS/cm~100μS/cm、4μS/cm~100μS/cm、5μS/cm~100μS/cm、6μS/cm~100μS/cm、7μS/cm~100μS/cm、8μS/cm~100μS/cm、9μS/cm~100μS/cm、10μS/cm~100μS/cm、11μS/cm~100μS/cm、12μS/cm~100μS/cm、13μS/cm~100μS/cm、14μS/cm~100μS/cm、15μS/cm~100μS/cm、16μS/cm~100μS/cm、17μS/cm~100μS/cm、18μS/cm~100μS/cm、19μS/cm~100μS/cm、20μS/cm~100μS/cm、21μS/cm~100μS/cm、22μS/cm~100μS/cm、23μS/cm~100μS/cm、24μS/cm~100μS/cm、25μS/cm~100μS/cm、26μS/cm~100μS/cm、27μS/cm~100μS/cm、28μS/cm~100μS/cm、29μS/cm~100μS/cm、30μS/cm~100μS/cm、31μS/cm~100μS/cm、32μS/cm~100μS/cm、33μS/cm~100μS/cm、34μS/cm~100μS/cm、35μS/cm~100μS/cm、36μS/cm~100μS/cm、37μS/cm~100μS/cm、38μS/cm~100μS/cm、39μS/cm~100μS/cm、40μS/cm~100μS/cm、41μS/cm~100μS/cm、42μS/cm~100μS/cm、43μS/cm~100μS/cm、44μS/cm~100μS/cm、45μS/cm~100μS/cm、46μS/cm~100μS/cm、47μS/cm~100μS/cm、48μS/cm~100μS/cm、49μS/cm~100μS/cm、50μS/cm~100μS/cm、51μS/cm~100μS/cm、52μS/cm~100μS/cm、53μS/cm~100μS/cm、54μS/cm~100μS/cm、55μS/cm~100μS/cm、56μS/cm~100μS/cm、57μS/cm~100μS/cm、58μS/cm~100μS/cm、59μS/cm~100μS/cm,60μS/cm~100μS/cm、61μS/cm~100μS/cm、62μS/cm~100μS/cm、63μS/cm~100μS/cm、64μS/cm~100μS/cm、65μS/cm~100μS/cm、66μS/cm~100μS/cm、67μS/cm~100μS/cm、68μS/cm~100μS/cm、69μS/cm~100μS/cm、70μS/cm~100μS/cm、71μS/cm~100μS/cm、72μS/cm~100μS/cm、73μS/cm~100μS/cm、74μS/cm~100μS/cm、75μS/cm~100μS/cm、76μS/cm~100μS/cm、77μS/cm~100μS/cm、78μS/cm~100μS/cm、79μS/cm~100μS/cm、80μS/cm~100μS/cm、81μS/cm~100μS/cm、82μS/cm~100μS/cm、83μS/cm~100μS/cm、84μS/cm~100μS/cm、85μS/cm~100μS/cm、86μS/cm~100μS/cm、87μS/cm~100μS/cm、88μS/cm~100μS/cm、89μS/cm~100μS/cm、90μS/cm~100μS/cm、91μS/cm~100μS/cm、92μS/cm~100μS/cm、93μS/cm~100μS/cm、94μS/cm~100μS/cm、95μS/cm~100μS/cm、96μS/cm~100μS/cm、97μS/cm~100μS/cm、98μS/cm~100μS/cm、又は99μS/cm~100μS/cmの1つの範囲内である。範囲の第3の組においては、熱伝達流体濃縮物及び/又はそれから得られるすぐに使用できる熱伝達流体の導電率は、次の範囲:1μ
S/cm~99μS/cm、1μS/cm~98μS/cm、1μS/cm~97μS/cm、1μS/cm~96μS/cm、1μS/cm~95μS/cm、1μS/cm~94μS/cm、1μS/cm~93μS/cm、1μS/cm~92μS/cm、1μS/cm~91μS/cm、1μS/cm~90μS/cm、1μS/cm~89μS/cm、1μS/cm~88μS/cm、1μS/cm~87μS/cm、1μS/cm~86μS/cm、1μS/cm~85μS/cm、1μS/cm~84μS/cm、1μS/cm~83μS/cm、1μS/cm~82μS/cm、1μS/cm~81μS/cm、1μS/cm~80μS/cm、1μS/cm~79μS/cm、1μS/cm~78μS/cm、1μS/cm~77μS/cm、1μS/cm~76μS/cm、1μS/cm~75μS/cm、1μS/cm~74μS/cm、1μS/cm~73μS/cm、1μS/cm~72μS/cm、1μS/cm~71μS/cm、1μS/cm~70μS/cm、1μS/cm~69μS/cm、1μS/cm~68μS/cm、1μS/cm~67μS/cm、1μS/cm~66μS/cm、1μS/cm~65μS/cm、1μS/cm~64μS/cm、1μS/cm~63μS/cm、1μS/cm~62μS/cm、1μS/cm~61μS/cm、1μS/cm~60μS/cm、1μS/cm~59μS/cm、1μS/cm~58μS/cm、1μS/cm~57μS/cm、1μS/cm~56μS/cm、1μS/cm~55μS/cm、1μS/cm~54μS/cm、1μS/cm~53μS/cm、1μS/cm~52μS/cm、1μS/cm~51μS/cm、1μS/cm~50μS/cm、1μS/cm~49μS/cm、1μS/cm~48μS/cm、1μS/cm~47μS/cm、1μS/cm~46μS/cm、1μS/cm~45μS/cm、1μS/cm~44μS/cm、1μS/cm~43μS/cm、1μS/cm~42μS/cm、1μS/cm~41μS/cm、1μS/cm~40μS/cm、1μS/cm~39μS/cm、1μS/cm~38μS/cm、1μS/cm~37μS/cm、1μS/cm~36μS/cm、1μS/cm~35μS/cm、1μS/cm~34μS/cm、1μS/cm~33μS/cm、1μS/cm~32μS/cm、1μS/cm~31μS/cm、1μS/cm~30μS/cm、1μS/cm~29μS/cm、1μS/cm~28μS/cm、1μS/cm~27μS/cm、1μS/cm~26μS/cm、1μS/cm~25μS/cm、1μS/cm~24μS/cm、1μS/cm~23μS/cm、1μS/cm~22μS/cm、1μS/cm~21μS/cm、1μS/cm~20μS/cm、1μS/cm~19μS/cm、1μS/cm~18μS/cm、1μS/cm~17μS/cm、1μS/cm~16μS/cm、1μS/cm~15μS/cm、1μS/cm~14μS/cm、1μS/cm~13μS/cm、1μS/cm~12μS/cm、1μS/cm~11μS/cm、1μS/cm~10μS/cm、1μS/cm~9μS/cm、1μS/cm~8μS/cm、1μS/cm~7μS/cm、1μS/cm~6μS/cm、又は1μS/cm~5μS/cmの1つの範囲内である。
【0034】
[0039]本発明による熱伝達流体濃縮物は、凝固点降下剤を含む。本発明による熱伝達流体濃縮物中において使用するのに好適な適した代表的な凝固点降下剤としては、アルコール及びアルコールの混合物(例えば、一価アルコール、多価アルコール、及びそれらの混合物)が挙げられるが、これらに限定されない。凝固点降下剤として使用するための代表的なアルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、フルフロール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エトキシル化フルフリルアルコール、エチレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール(1,2-プロパンジオール)、1,3-プロピレングリコール(1,3-プロパンジオール)、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセロール、グリセロール-1,2-ジメチルエーテル、グリセロール-1,3-ジメチルエーテル、グリセロールのモノエチルエーテル、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、トリメチルロールプロパン、C1~C4アルコキシアルカノール(例えばメトキシエタノール)など、及びそれらの組合せが挙げられる
が、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、凝固点降下剤は、幾つかの実施形態においてはエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、グリセロール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるアルコールを含む。幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物はグリコール凝固点降下剤を含む。
【0035】
[0040]凝固点降下剤の濃度は、用途に応じて変化させることができる。幾つかの実施形態においては、凝固点降下剤の濃度は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約10重量%~約99.85%重量%の範囲である。この範囲内で、凝固点降下剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約30重量%以上、幾つかの実施形態においては約40重量%以上の量で存在してよい。また、この範囲内で、凝固点降下剤は、約99.5重量%以下、幾つかの実施形態においては約99重量%以下の量で存在してよい。他の実施形態においては、凝固点降下剤の濃度は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約30重量%~約99.5%重量%の範囲である。他の実施形態においては、凝固点降下剤の濃度は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約40重量%~約99%重量%の範囲である。他の実施形態においては、凝固点降下剤の濃度は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約15重量%~約99%重量%の範囲である。他の実施形態においては、凝固点降下剤の濃度は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約20重量%~約98%重量%の範囲である。更なる実施形態においては、凝固点降下剤の濃度は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約20重量%~約96%重量%の範囲である。
【0036】
[0041]本発明による熱伝達流体濃縮物は、1種類又は複数の非イオン性界面活性剤を含む。代表的な実施形態においては、本発明にしたがって使用するための非イオン性界面活性剤は、(i)銅及び銅合金のための腐食抑制剤、並びに(ii)ポリアルキレングリコールを含む。
【0037】
[0042]本発明にしたがって使用するための代表的な銅及び銅合金腐食抑制剤としては、活性官能基として5又は6員の複素環を含み、複素環が少なくとも1個の窒素原子を含む化合物(例えばアゾール化合物)が挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、銅及び銅合金腐食抑制剤としては、ベンゾトリアゾール、ヒドロベンゾトリアゾール(例えばテトラヒドロベンゾトリアゾール)、トリルトリアゾール、ヒドロトリルトリアゾール(例えば、4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール、及び米国特許第8,236,205号B1に記載されている他のテトラヒドロベンゾトリアゾール)、メチルベンゾトリアゾール(例えば、4-メチルベンゾトリアゾール、5-メチルベンゾトリアゾール)、アルキルベンゾトリアゾール(例えば、ブチルベンゾトリアゾールなど(しかしながらこれらに限定されない)のC2~C20アルキル基を有するベンゾトリアゾール)、メルカプトベンゾチアゾール、チアゾール、イミダゾール、ベンズイミダゾール、インダゾール、テトラゾールなど、及びそれらの組合せからなる群から選択される、置換又は非置換の化合物及び/又はその塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩)が挙げられる。幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物中において使用される銅及び銅合金腐食抑制剤としては、アゾール化合物(代表的な実施形態においてはベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、又はそれらの組合せが挙げられる)が挙げられる。幾つかの実施形態においては、上述の銅及び銅合金腐食抑制剤の1以上は、場合により置換されていてもよい。
【0038】
[0043]本発明にしたがって使用するための代表的なポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、メトキシポリエチレングリコール、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、本発明によるポリエチレングリコールとしては、Dow Chemical CompanyからのCARBOWAX(登録商標)ポリエチレングリコール及びメトキシ
ポリエチレングリコール(例えば、CARBOWAX PEG200、300、400、600、900、1000、1450
、3350、4000、及び8000など)、BASF社からのPLURACOL(登録商標)ポリエチレングリコール(例えば、Pluracol(登録商標)E200、300、400、600、1000、3350、4000、6000、
及び8000など)、CLARIANT International LTDからのPOLYGYCOLポリエチレングリコール
(例えば、POLYGYCOL 200、300、600、600PU、800、1500FL、1500PU、1500PS、2000Fl、3000S、3400Fl、4000M50、4000P、5500Fl、6000PF、6000PF、6000PF、6000 S、8000 Fl、8000PF、8000PS、8000S、9000FL、10000Fl、12000P、12000S、20000P、20000SR、20000SR M50、20000SRU、35000S、CL 14000FL、CL 14000S、及びCL 20000Sなど)、及び/又はそ
れらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、本発明によるポリプロピレングリコールは、Dow Chemical Companyからのポリプロピレングリコール(又はPシリーズのポリグリコール)(例えば、P1000TB、P1200、P2000、P4000)、BASF Corp. からのLupranol(登録商標)線状ポリプロピレングリコール(例え
ば、LUPRANOL(登録商標)1000/1、1000/2、1005/1、1100/1、1200、2004/1など)、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
[0044]非イオン性界面活性剤(少なくとも、銅及び銅合金腐食抑制剤並びにポリアルキレングリコールを含む(並びに、幾つかの実施形態においては、1種類以上の更なる非イオン性界面活性剤も含み得る))の濃度は、用途に応じて変化させることができる。幾つかの実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.001重量%~約5重量%の量で組成物中に存在してよい。他の実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.001重量%~約2重量%の量で組成物中に存在してよい。他の実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.005重量%~約1重量%の量で組成物中に存在してよい。幾つかの実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.01重量%~約0.5重量%の量で組成物中に存在してよい。他の実施形態においては、非イオン性界面活性剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.01重量%~約5重量%の量で組成物中に存在してよい。幾つかの実施形態においては、非イオン性界面活性剤の量は、腐食抑制剤製剤の総重量を基準として約0.01重量%~約4重量%の範囲である。この範囲内で、非イオン性界面活性剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.05重量%以上の量で存在してよく、幾つかの実施形態においては約0.1重量%以上の量で存在してよい。また、この範囲内で、非イオン性界面活性剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約2重量%以下の量で存在してよく、幾つかの実施形態においては熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約1重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、0.7重量%以下、0.6重量%以下、又は0.5重量%以下の量で存在してもよい。
【0040】
[0045]幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物には、銅及び銅合金のための腐食抑制剤及びポリアルキレングリコールに加えて、場合により1種類又は複数の更なる非イオン性界面活性剤を含ませることができる。場合により使用するための代表的な更なる非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、アルコキシル化アルコール、ポリアルキレングリコールエステル、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン誘導体、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、場合により使用するための更なる非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル及びアルコキシル化アルコールが挙げられる。いかなる特定の理論によって束縛されることも、添付の特許請求の範囲又はそれらの均等物の範囲をいかなる尺度でも限定することも意図しないが、現在は、本発明にしたがって使用されるアルコキシル化アルコールは、消費又は分解されることなく動作条件下で熱伝達流体中の溶液中に残存することができ、したがって熱伝達流体のための強固な消泡特性をもたらすと考えられている。幾つかの実施形態においては、本発明にしたがって場合により使用す
るための更なる非イオン性界面活性剤の平均分子量は、約55~約300,000の間(between about 55 and about 300,000)、幾つかの実施形態においては約110~約10,000の間である。
【0041】
[0046]本発明による更なる非イオン性界面活性剤として場合により使用するための代表的なソルビタン脂肪酸エステルとしては、ソルビタンモノラウレート(例えば、Span(登録商標)20、Arlacel(登録商標)20、S-MAZ(登録商標)20M1の商品名で販売されている)、ソルビタンモノパルミテート(例えば、Span(登録商標)40又はArlacel(登録商標
)40)、ソルビタンモノステアレート(例えば、Span(登録商標)60、Arlacel(登録商
標)60、又はS-MAZ(登録商標)620M1)、ソルビタンモノオレエート(例えば、Span(登録商標)80又はArlacel(登録商標)80)、ソルビタンモノセスキオレエート(例えば、Span(登録商標)83又はArlacel(登録商標)83)、ソルビタントリオレエート(例えば、Span(登録商標)85又はArlacel(登録商標)85)、ソルビタントリステアレート(例え
ば、S-MAZ(登録商標)65K)、ソルビタンモノタレート(例えば、S-MAZ(登録商標)90
)、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
[0047]本発明による更なる非イオン性界面活性剤として場合により使用するための代表的なアルコキシル化アルコールとしては、エトキシル化アルコール、プロポキシル化アルコール、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0043】
[0048]幾つかの実施形態においては、本発明にしたがって場合により使用するためのアルコキシル化アルコールは、式(I):
RO(CH2CH2O)j(CH2CH2CH2O)kH (I)
(式中、ここで、Rは線状第1級アルコールであり、jはエチレンオキシドの総モル数を表し、kはプロピレンオキシドの総モル数を表す)
を有する。幾つかの実施形態においては、数式(I)において、RはC4~C25線状第1級アルコール(幾つかの実施形態においてはC6~C15線状第1級アルコール、他の実施形態においてはC7~C12線状第1級アルコール)であり、jは0~15(端点を含む)の整数であり、kは0~15(端点を含む)の整数であり、j+kは1以上の整数である。
【0044】
[0049]幾つかの実施形態においては、本発明にしたがって場合により使用するためのアルコキシル化アルコールは、式(II):
RO(CH2CH2O)nH (II)
(式中、Rは直鎖第1級アルコールであり、nはエチレンオキシドの総モル数を表す)
のエトキシル化アルコールを含む。幾つかの実施形態において、式(II)において、RはC4~C25線状第1級アルコール(幾つかの実施形態においてはC6~C15線状第1級アル、他の実施形態においてはC7~C12線状第1級アルコール)であり、nは1~15(端点を含む)の整数である。
【0045】
[0050]幾つかの実施形態においては、本発明にしたがって場合により使用するためのアルコキシル化アルコールは、式(III):
RO(CH2CH2CH2O)mH (III)
(式中、Rは線状第1級アルコールであり、mはプロピレンオキシドの総モル数を表す)幾つかの実施形態において、式(III)において、RはC4~C25線状第1アルコール(幾つかの実施形態においてはC6~C15線状第1アルコール、他の実施形態においてはC7~C12線状の第1級アルコール)であり、mは1~15(端点を含む)の整数である)
のプロポキシル化アルコールを含む。
【0046】
[0051]本発明にしたがって更なる非イオン性界面活性剤としての場合により使用するための商業的に入手できるアルコキシル化アルコールの代表例としては、(a)The Dow Chemical Co.(Midland, MI)から入手できるTRITON(登録商標)EF-19界面活性剤(>98%アルコール、C8~C10、エトキシル化プロポキシル化、CAS#88603-25-8)、(b)BASF Corporation (Mount Olive, NJ又はFlorham Park, NJ)から入手できるMACOL(登録商標)LF 110界面活性剤(アルコキシル化アルコール)、及びPLURAFAC(登録商標)SLF 18界面活性剤(100%アルコール、C6~C10、エトキシル化プロポキシ
ル化、CAS番号:68987-81-5)、又はPLURAFAC(登録商標)SLF-180アルコールアルコキシレート界面活性剤、(c)Tomah Products, Inc.(Milton, WI)から入手できるTOMADOL(登録商標)シリーズのエトキシル化アルコールが挙げられるが、これらに限
定されない。本発明にしたがって場合により使用するための代表的なTOMADOL(登録商標
)エトキシル化アルコールとしては、ポリ(2.5)又は(6)又は(8)オキシエチレンC9-11アルコール(例えば、TOMADOL(登録商標)91-2.5、TOMADOL(登録商標)91-6、TOMADOL(登録商標)91-8)、ポリ(3)又は(5)又は(7)又は(9)オキシエ
チレンC11アルコール(例えば、TOMADOL(登録商標)1-3、TOMADOL(登録商標)1-5、TOMADOL(登録商標)1-7、TOMADOL(登録商標)1-9)、ポリ(1)又は(3)又は(5)又は(6.5)オキシエチレンC12-13アルコール(例えば、TOMADOL(登録商標)23-1、TOMADOL(登録商標)23-5、TOMADOL(登録商標)23-6.5)、ポリ(3)又は(7)
又は(9)又は(12)オキシエチレンC12-15アルコール(例えば、TOMADOL(登
録商標)25-3、TOMADOL(登録商標)25-7、TOMADOL(登録商標)25-9、TOMADOL(登録商
標)25-12)、ポリ(2.5)又は(7)又は(13)オキシエチレンC14-15アル
コール(例えば、TOMADOL(登録商標)45-2.5、TOMADOL(登録商標)45-7、TOMADOL(登
録商標)45-13)、及び(d)TRITON(登録商標)DF-16界面活性剤(≧98.0%アルコ
ール、C8~C10、エトキシル化プロポキシル化、CAS#68603-25-8、及び≦2.0%ポリ(エチレンオキシド)、CAS#25322-68-3)、(e)TRITON(登録商標)DF-12界面活性剤(100%アルコール、C8~C10、ポリエチレン-
ポリプロピレングリコールモノベンジルエーテルを有するエーテル、CAS#68154-99-4、(f)DeIONIC LF-EP-15及び/又はDeIONIC LF-EPアルコキシル化アルコー
ル、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
[0052]銅及び銅合金のための腐食抑制剤及びポリアルキレングリコールに加えて1種類以上の更なる非イオン性界面活性剤が存在する熱伝達濃縮物の複数の実施形態においては、1種類以上の更なる非イオン性界面活性剤の濃度は、用途に応じて変化させることができる。幾つかの実施形態においては、1種類以上の更なる非イオン性界面活性剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.001重量%~約3重量%の量で組成物中に存在してよい。他の実施形態においては、1種類以上の更なる非イオン性界面活性剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.001重量%~約1重量%の量で組成物中に存在してよい。この範囲内で、1種類以上の更なる非イオン性界面活性剤は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.9重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.8重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.7重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.6重量%以下、幾つかの実施形態においては約0.5重量%以下の量で存在してよい。
【0048】
[0053]本発明による更なる非イオン性界面活性剤として場合より使用するための代表的なポリアルキレングリコールエステルとしては、BASFからのMAPEG(登録商標)ポリエチ
レングリコールエステル(例えば、MAPEG(登録商標)200ML又はPEG200モノラウレート、MAPEG(登録商標)400DO又はPEG400ジオレエート、MAPEG(登録商標)400MO又はPEG400モ
ノオレエート、及びMAPEG(登録商標)600DO又はPEG600ジオレエートなど)、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせのような種々の脂肪酸のモノエステル及びジエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
[0054]本発明による更なる非イオン性界面活性剤として場合により使用するためのエチレンオキシド(EO)とプロピレンオキシド(PO)との代表的なコポリマーとしては、BASFからの種々のPluronic及びPluronic Rブロックコポリマー界面活性剤、DOW ChemicalからのDOWFAX非イオン性界面活性剤、UCON(登録商標)流体、及びSYNALOX潤滑剤、及び
/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
[0055]本発明による更なる非イオン性界面活性剤として場合により使用するための代表的なソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシアルキレン誘導体としては、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノラウレート(例えば、TWEEN 20又はT-MAZ 20の商標名で販売されている製品)、ポリオキシエチレン4ソルビタンモノラウレート(例えばTWEEN 21)、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノパルミテート(例えばTWEEN 40)、ポリオキシエチレン20ソルビタンモノステアレート(例えば、TWEEN 60又はT-MAZ 60K)、ポリオキシ
エチレン20ソルビタンモノオレエート(例えば、TWEEN 80又はT-MAZ 80)、ポリオキシエチレン20トリステアレート(例えば、TWEEN 65又はT-MAZ 65K)、ポリオキシエチレ
ン5ソルビタンモノオレエート(例えば、TWEEN 81又はT-MAZ 81)、ポリオキシエチレン20ソルビタントリオレエート(例えば、TWEEN 85又はT-MAZ 85)、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
[0056]幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物は、希釈することなく、且つ水を加えることなく、熱伝達流体として直接使用することができる。
[0057]幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物には、場合により、凝固点降下剤に加えてか又はその代わりに水を含ませることができる。熱伝達流体濃縮物から(例えば希釈によって)得られるすぐに使用できる熱伝達流体は、通常は水を含む。幾つかの実施形態においては、凝固点降下剤を含む本発明による熱伝達流体濃縮物は、水で40体積%~60体積%の溶液に希釈することができる。
【0052】
[0058]本発明にしたがって使用される水のタイプは限定されない。しかしながら、幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物及び/又は熱伝達流体中において使用される水としては、脱イオン水、脱塩水、軟化水、又はそれらの組合せが挙げられる。幾つかの実施形態においては、CaCO3による水の硬度は約10ppm未満である。他の実施形態においては、水の導電率は約30μS/cm未満である。更なる実施形態においては、CaCO3による水の硬度は約10ppm未満であり、水の導電率は約30μS/cm未満である。
【0053】
[0059]水が存在する熱伝達濃縮物の複数の実施形態においては、水の濃度は用途に応じて変化させることができる。幾つかの実施形態においては、水は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.1重量%~約90重量%の量で存在する。この範囲内で、水は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.5重量%以上、幾つかの実施形態においては約1重量%以上の量で存在してよい。また、この範囲内で、水は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約70重量%未満、幾つかの実施形態においては約60重量%未満の量で存在してよい。他の実施形態においては、水は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.5重量%~約70重量%の量で存在する。更なる実施形態においては、水は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約1重量%~約60重量%の量で存在する。
【0054】
[0060]幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物には、場合により、1種類以上の更なる低導電性腐食抑制剤を含ませることができる。本発明にしたがって
場合により使用するための代表的な低導電性腐食抑制剤としては、シロキサン化合物、コロイダルシリカ、アミン化合物、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0055】
[0061]本発明による低導電性腐食抑制剤として場合により使用するための代表的なシロキサン化合物としては、Momentive Performance Materials Inc. (Waterford, NY)及び/又はGE Silicones-OSi Specialtiesから入手できるSILWET(登録商標)、SILQUEST(登録商標)、及びFORMASIL(登録商標)材料、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。本発明にしたがって使用することができる商業的に入手できるシロキサン化合物の代表例としては、SILWET L-77、SILWET L-7657、SILWET L-7650、SILWET L-7608、SILWET L-7210、SILWET L-7220、Dow Corning Corp.(Midland, MI)から入手できるシロキサン-ポリエーテルコポリマー、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。幾つかの実施形態においては、アルコキシシランなど(しかしながらこれに限定されない)の、1以上のケイ素-炭素結合を含む非導電性又はほぼ非導電性の有機シラン系化合物(例えば、水の存在下で加水分解して1以上のSi-OH基を有するシラノール化合物を形成することができる化合物)を使用することができる。本発明にしたがって使用するためのアルコキシシランの代表例としては、FORMASIL 891、FORMASIL 593、FORMASIL 433、SILQUEST(登録商標)Y-5560シラン(ポリアルキレンオキシドアルコキシシラン)、SILQUEST(登録商標)A-186[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン]、SILQUEST(登録商標)A-187(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシランなど、及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。シロキサン化合物が存在する熱伝達濃縮物の複数の実施形態においては、シロキサン化合物の濃度は、用途に応じて変化させることができる。幾つかの実施形態においては、シロキサン化合物又は複数のシロキサン化合物の混合物は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.01重量%~約10重量%の量で存在する。他の実施形態においては、シロキサン化合物又は複数のシロキサン化合物の混合物は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.02重量%~約2重量%の量で存在する。
【0056】
[0062]本発明による低導電性腐食抑制剤として場合により使用するための代表的なコロイダルシリカとしては、約1nm~約200nmの公称粒径を有するコロイダルシリカが挙げられるが、これに限定されない。幾つかの実施形態においては、コロイダルシリカの粒径は約1nm~約100nmである。他の実施形態においては、コロイダルシリカの粒径は約1nm~約40nmである。この範囲内で、コロイダルシリカの粒径は、約1nm以上、幾つかの実施形態においては約2nm以上であってよい。また、この範囲内で、コロイダルシリカの粒径は、約100nm以下、幾つかの実施形態においては約40nm以下であってよい。本発明にしたがって場合により使用するのに好適なコロイダルシリカとしては、DuPont又はGrace DavidsonからのLudoxコロイダルシリカ、Akzo Nobel-Eka ChemicalsからのNyacol及び/又はBindzilコロイダルシリカ、Nissan ChemicalからのSnowtexコロイダルシリカ、Nalco及び他の供給業者からのコロイダルシリカ、及び/又は同等の
もの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いかなる特定の理論によって束縛されることも、添付の特許請求の範囲又はそれらの均等物の範囲をいかなる尺度でも限定することも意図しないが、現在は、熱伝達流体中においてコロイダルシリカを使用することによって、ナノ粒子が熱伝達流体の熱伝達効率及び/又は熱容量を増加させることができると考えられている。コロイダルシリカが存在する熱伝達濃縮物の複数の実施形態については、コロイダルシリカの濃度は用途に応じて変化させることがで
きる。幾つかの実施形態においては、コロイダルシリカは、熱伝達流体濃縮物の約0ppm~約20,000ppm(即ち約20,000ppm以下)、幾つかの実施形態においては約0ppm~約2,000ppm(即ち約2,000ppm以下)の量で存在する。
【0057】
[0063]本発明による低導電性腐食抑制剤として場合により使用するための代表的なアミン化合物としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ベンジルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ヘキシルアミン、AMP(2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール又はイソブタノールアミン)、DEAE(ジエチルエタノールアミン)、DEHA(ジエチルヒドロキシルアミン)、DMAE(2-ジメチルアミノエタノール)、DMAP(ジメチルアミノ-2-プロパノール)、MOPA(3-メトキシプロピルアミン)、及び/又は同等のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
[0064]幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物には、場合により1つ又は複数の更なる成分を更に含ませることができる。随意的な更なる成分の合計の総濃度は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.0重量%~約15重量%(即ち約15重量%以下)であってよい。幾つかの実施形態においては、随意的な更なる成分の合計の総濃度は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.0001重量%~約10重量%である。他の実施形態においては、随意的な更なる成分の合計の総濃度は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.001重量%~約5重量%である。更なる実施形態においては、随意的な更なる成分の合計の総濃度は、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0.01重量%~約3重量%である。
【0059】
[0065]本発明による腐食抑制剤配合物中において場合により存在させることができる代表的な更なる成分としては、C1~C20テトラアルキルオルトシリケートエステル、非導電性着色剤、消泡剤又は脱泡剤、殺生物剤、pH調整剤、湿潤剤、他の非イオン性界面活性剤、他の非導電性又は低導電性腐食抑制剤、非イオン性分散剤、スケール抑制剤、苦味剤、他のクーラント/凍結防止添加剤、及び/又は同様のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。存在する場合、随意的な1つ以上の更なる成分は、非導電性であるか、又は低い導電性を有していなければならない。幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物は、それらの随意的な更なる成分の1以上を特に除外することができる(例えば、上述の更なる成分の1以上を実質的に「含まない」)。幾つかの実施形態においては、50%の濃度の本発明による熱伝達流体濃縮物のpHは約6.8~約10.0の間であり、幾つかの実施形態においては約6.8~約9.0の間である。
【0060】
[0066]本発明による更なる成分として場合により使用するための代表的なC1~C20テトラアルキルオルトシリケートエステルとしては、テトラメチルオルトシリケート、テトラエチルオルトシリケート、及び/又は同様のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。C1~C20テトラアルキルオルトシリケートエステルが存在する熱伝達流体濃縮物の複数の実施形態においては、C1~C20テトラアルキルオルトシリケートエステルの濃度は、用途に応じて変化させることができる。幾つかの実施形態においては、C1~C20テトラアルキルオルトシリケートエステルは、熱伝達流体濃縮物の総重量を基準として約0重量%~約5重量%の量で存在する。
【0061】
[0067]本発明にしたがって場合により使用するための代表的な非導電性着色剤又は染料としては、米国特許出願公開番号第2006/0051639A1及び2006/0063050A1に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。本発明にしたがって場合により使用するための更なる代表的な非導電性着色剤又は染料としては、Spartanburg, S.C.のMilliken & Companyからの種々のポリマー着色剤、及びリキティント
レッドST、リキティントブルーRE、リキティントレッドXC、リキティントパテントブルー、リキティントブライトイエロー、リキティントブルーオレンジ、リキティントロイヤルブルー、リキティントブルーN-6、リキティントブライトブルー、リキティントスープラブルー、リキティントブルーHP、リキティントブルーDB、リキティントブルーII、リキティントExpイエロー8614-6、リキティントイエローBL、リキティントイエローII, リキテ
ィントサンビームイエロー、リキティントスープライエロー、リキティントグリーンHMC
、リキティントバイオレット、リキティントレッドBL、リキティントレッドRL、リキティントチェリーレッド、リキティントレッドII, リキティントティール、リキティントイエローLP、リキティントバイオレットLS、リキティントクリムゾン、リキティントアクアマリン、リキティントグリーンHMC、リキティントブルーEA、及びリキティントレッドHN、
及び/又は同様のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
[0068]本明細書中で使用する「非導電性」という用語は、標準溶液の総重量を基準として約0.2重量%以下の最大濃度で脱イオン水の標準溶液中に導入した場合に約10μS/cm未満の導電率の増加を生じる着色剤を指す。幾つかの実施形態においては、好適な非導電性着色剤は、燃料電池の動作条件(例えば、通常は約40℃~約100℃の温度)下において、アルコールと水の混合物中で良好な安定性を有する。
【0063】
[0069]幾つかの実施形態においては、随意的な非導電性着色剤は、アルコール又はグリコール水溶液中での加水分解によってイオン種を形成する官能基を実質的に含まない。非導電性着色剤の文脈において本明細書で使用する「実質的に含まない」という句は、着色された熱伝達流体の導電率が10μS/cmより高くなる量を超えない量を指す。幾つかの実施形態においては、随意的な非導電性着色剤は、カルボキシレート基、スルホネート基、ホスホネート基、第4級アンモニウムカチオン基、正電荷を有する基、負電荷を有する基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される官能基を実質的に含まない。正電荷を有する基の代表例としては、Na+、Cu2+、N+R3(ここで、Rは、独立して、H、C1~C20アルキル、又は芳香環含有基である)、Fe3+、及び/又は同様のもの、並びにそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。負電荷を有する基の代表例としては、Cl-、Br-、I-、及び/又は同様のもの、並びにそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
[0070]幾つかの実施形態においては、随意的な非導電性着色剤としては、次の発色団:アントラキノン、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、ジアリールメタン、アゾ含有化合物、ジアゾ含有化合物、トリスアゾ含有化合物、ジアゾ含有化合物、キサンテン、アクリジン、インデン、チアゾール、2以上の共役芳香族基、2以上の共役複素環基(例えば、スチルベン及び/又はピラゾリン及び/又はクマリンタイプのラジカル又はそれらの混合物)、3つ以上の共役炭素-炭素二重結合(例えばカロテン)、及び/又は同様のもの、並びにそれらの組み合わせ:の少なくとも1つを挙げることができる。幾つかの実施形態においては、発色団として、次:トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、ジアリールメタン、及びアゾ含有ラジカルの1以上を挙げることができる。
【0065】
[0071]幾つかの実施形態においては、随意的な非導電性着色剤は、アルキレンオキシ又はアルコキシ基、及び少なくとも1つの上記に記載のもののような発色団を含み得る。幾つかの実施形態においては、着色剤に含まれる発色団は、アントラキノン、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、ジアリールメタン、アゾ含有化合物、ジアゾ含有化合物、トリスアゾ含有化合物、ジアゾ含有化合物、2以上の共役芳香族基、2以上の共役複素環基、及び/又は同様のもの、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0066】
[0072]別の実施形態においては、好適な随意的な非導電性着色剤は、式(IV):
R{Ak[(B)nR1]m}x (IV)
(式中、Rは、アントラキノン、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、トリアリールメタン、ジアリールメタン、アゾ含有化合物、ジアゾ含有化合物、トリスアゾ含有化合物、ジアゾ含有化合物、キサンテン、アクリジン、インデン、チアゾール、2以上の共役芳香族基、2以上の共役複素環基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される有機発色団であり;Aは、発色団中の連結基であり、O、N、及びSからなる群から選択され;kは0又は1であり;Bは、1~8個の炭素原子を含む1以上のアルキレンオキシ又はアルコキシ基からなる群から選択され;nは1~100の整数であり;mは1又は2の整数であり;xは1~5の整数であり;R1は、H、C1~C6アルキル基、又は1~8個の炭素原子を含むアルコキシ基、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される)
を有する。
【0067】
[0073]幾つかの実施形態においては、好適な随意的な非導電性着色剤は、AがN又はOであり;Bが2~4個の炭素原子を含む1以上のアルキレンオキシ部分からなる群から選択され;nが1~30であり、mが1又は2であり、Xが1又は2であり、R1がH又は
C1~C4アルキル基又は1~6個の炭素原子を含むアルコキシ基である上記の式(IV)の着色剤である。
【0068】
[0074]幾つかの実施形態においては、随意的な非導電性着色剤は、米国特許第4,284,729号、米国特許第6,528,564号B1、又はSpartanburg, SCのMilliken & Companyに対して発行された他の特許に記載されているものなど(しかしながらこれら
に限定されない)の種々の公知の方法によって調製することができる。例えば、好適な随意的な着色剤は、第1級アミノ基を含む染料中間体を対応するポリマー化合物に転化させ、得られた化合物を使用して分子中に発色団基を有する化合物を生成させることによって調製することができる。アゾ染料の場合には、これは、公知の手順にしたがって第1級芳香族アミンを好適な量のアルキレンオキシド又は複数のアルキレンオキシドの混合物(例えばエチレンオキシドなど)と反応させ、次に得られた化合物を芳香族アミンのジアゾニウム塩とカップリングさせることによって達成することができる。トリアリールメタン種の液体着色剤を調製するためには、上記のようにアルキレンオキシドと反応させた芳香族アミンを芳香族アルデヒドと縮合させ、得られた縮合生成物を酸化してトリアリールメタン液体着色剤を形成することができる。他の好適な随意的な着色剤もまた、これら及び他の公知の手順によって調製することができる。
【0069】
[0075]一実施形態において、精製方法を使用する場合には、イオン種を含む随意的な着色剤を使用することができる。代表的な精製及び化学分離技術としては、イオン交換樹脂による処理、逆浸透、抽出、吸収、蒸留、濾過など、及び電気的に非伝導性であり、本発明において使用するのに好適な精製着色剤を得るためにイオン種を除去するために使用される同様のプロセスが挙げられる。
【0070】
[0076]本発明にしたがって場合により使用するための代表的な消泡剤又は脱泡剤としては、有機変性ポリジメチルシロキサン含有ポリアルキレングリコール、シロキサンポリアルキレンオキシドコポリマー、ポリアルキレンオキシド、Prestone Products Corp.から
入手できる「PM-5150」、BASF Corp.から入手できる「Pluronic L-61」及び「Plurafac(登録商標」LF 224、Hydrite Chemical Co.及び他の供給業者から入手できる「Patcote 492」、「Patcote 415」、及び他のPatcoteブランドの消泡剤、並びにMunzing Chemie GmbH又は関連会社から入手できる「Foam Ban 136B」及び他のFoam Ban消泡剤が挙げられるが
、これらに限定されない。随意的な消泡剤としてはまた、Boscawen, NHのPerformance Chemicals, LLCからのPC-5450NF;及びWoonsocket, RI のCNC InternationalからのCNC消泡
剤XD-55 NF及びXD-56など(しかしながらこれらに限定されない)のポリジメチルシロキ
サンエマルジョン系消泡剤を挙げることもできる。幾つかの実施形態においては、随意的な消泡剤として、シリコーン又は有機変性ポリジメチルシロキサン、例えば、OSI Specialties Inc.、Waterford, NYのMomentive Performance Materials Inc.、Dow Corning、及び他の供給業者からのSAGブランドのシリコーン系消泡剤(例えば、SAG-10、Silbreak(
登録商標)320);エチレンオキシド-プロピレンオキシド(EO-PO)ブロックコポ
リマー及びプロピレンオキシド-エチレンオキシド-プロピレンオキシド(PO-EO-PO)ブロックコポリマー(例えば、Pluronic L61、Pluronic L81及び他のPluronic及びPluronic C製品);ポリ(エチレンオキシド)又はポリ(プロピレンオキシド)、例えばPPG2000(2000ダルトンの平均分子量を有するポリプロピレンオキシド);ポリジオ
ルガノシロキサン系製品(例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含む製品など);脂肪酸又は脂肪酸エステル(例えばステアリン酸など);脂肪アルコール、アルコキシル化アルコール、及びポリグリコール;ポリエーテルポリオールアセテート、ポリエーテルエトキシル化ソルビタールヘキサオレエート、及びポリ(エチレンオキシド-プロピレンオキシド)モノアリルエーテルアセテート;ワックス、ナフサ、灯油、及び芳香油;及び/又は同様のもの、並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0071】
[0077]本発明にしたがって場合により使用するための代表的な殺生物剤としては、グルタルアルデヒド、イソチアゾリン、5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2,2-ジブロモ-3-ニトリロプロピオンアミド、2-ブロモ-2-ニトロプロパン-1,3-ジオール、メチレンビス(チオシアネート)、ter-ブチルアジン、テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウムスルフェート、及び/又は同様のもの、並びそれらの組み合わせのような種々の非酸化性殺生物剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
[0078]幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物は、予め希釈することなく直接使用することができる。他の実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物を、(例えば、水及び/又は凝固点降下剤で)希釈して熱伝達流体を形成することができる。例えば、幾つかの実施形態においては、熱伝達流体濃縮物を約10体積%~約75体積%希釈して熱伝達流体を形成することができる。幾つかの実施形態においては、希釈のために使用される水は、ASTM-D3306-10のセクション4.5に記載されるような脱イオン水である。
【0073】
[0079]幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物は、商業的に入手できる製品として用意することができる。幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物は、いかなる種類の希釈も必要とせずに(例えば水を加えずに)、熱伝達流体として直接使用することを意図する商業的に入手できる製品として用意することができる。他の実施形態においては、熱伝達流体濃縮物が水で約50体積%に予め希釈されているすぐに使用できる熱伝達流体を、商業的に入手できる製品として用意することができる。希釈によってすぐに使用できる熱伝達流体を調製する際には、使用条件において熱伝達濃縮物に加えられる水の最適レベルは、所望の凍結、ボイルオーバー、及び腐食保護の要件によって定めることができる。
【0074】
[0080]水を加えることによって希釈していない熱伝達流体濃縮物は、その比較的低い熱伝達係数(又は比熱)、高い粘度、及び高い凝固点のために、通常は熱伝達流体としてエンジン冷却システムにおいて使用されない。而して、熱伝達流体濃縮物は、熱伝達流体としてエンジン冷却システムにおいて使用する前に水を加えることによって(例えば30体積%~60体積%の溶液に)希釈することができる。車両製造業者は、通常は、車両冷却システムにおける工場充填流体として水で希釈した50体積%の熱伝達濃縮物を使用する
。約30体積%~約60体積%の熱伝達流体濃縮物を含むように水で予め希釈した熱伝達流体製品は、車両冷却システムに加える際に更なる水を必要としないので、すぐに使用できるクーラントである。
【0075】
[0081]すぐに使用できる熱伝達流体においては、凝固点降下剤を、すぐに使用できる熱伝達流体の総重量を基準として約1重量%乃至約90重量%未満の量で存在させることができる。この範囲内で、凝固点降下剤の量は、すぐに使用可能な熱伝達流体の総重量を基準として約10重量%以上、約20重量%以上、約30重量%以上、約40重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、約60重量%以上、約65重量%以上、約70重量%以上、約75重量%以上、約80重量%以上、約85重量%以上、約86重量%以上、約87重量%以上、約88重量%以上、又は約89重量%以上であるが、約90重量%未満であってよい。また、この範囲内で、凝固点降下剤の量は、約30重量%以下、約40重量%以下、約50重量%以下、約55重量%以下、約60重量%以下、約65重量%以下、約70重量%以下、約75重量%以下、約80重量%以下、約85重量%以下、約86重量%以下、約87重量%以下、又は約88重量%以下、又は約89重量%以下であるが、約1重量%以上であってよい。
【0076】
[0082]すぐに使用できる熱伝達流体において、非イオン性界面活性剤(少なくとも、銅及び銅合金腐食抑制剤及びポリアルキレングリコールを含む(しかしながら、幾つかの実施形態においては1種類以上の更なる非イオン性界面活性剤を含んでいてもよい))は、すぐに使用できる熱伝達流体の総重量を基準として約0.001重量%~約5重量%の量で存在させることができる。この範囲内で、非イオン性界面活性剤は、すぐに使用できる熱伝達流体の総重量を基準として約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、又は約0.10重量%以上の量で存在させることができる。また、この範囲内で、非イオン性界面活性剤は、すぐに使用できる熱伝達流体の総重量を基準として約4重量%以下、約3重量%以下、約2重量%以下、約1.5重量%以下、又は約1重量%以下の量で存在させることができる。
【0077】
[0083]熱伝達流体が1種類以上の更なる低導電性腐食抑制剤を含む実施形態については、1種類以上の更なる低導電性腐食抑制剤の総量は、熱伝達流体の総重量を基準として約0.001重量%より多くてよい。この範囲内で、1種類以上の更なる低導電性腐食抑制剤の量は、熱伝達流体の総重量を基準として約10重量%未満、約9重量%未満、約8重量%未満、約7重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、又は約2重量%未満であってよい。
【0078】
[0084]熱伝達流体が1種類以上の更なる随意的な成分を含む実施形態においては、1種類以上の更なる随意的な成分の総量は、熱伝達流体の総重量を基準として約0.001重量%より多くてよい。この範囲内で、1種類以上の更なる随意的な成分の量は、熱伝達流体の総重量を基準として約20重量%未満、約19重量%未満、約18重量%未満、約17重量%未満、約16重量%未満、約15重量%未満、約14重量%未満、約13重量%未満、又は約12重量%未満、約11重量%未満、約10重量%未満、約9重量%未満、約8重量%未満、約7重量%未満、約6重量%未満、約5重量%未満、約4重量%未満、約3重量%未満、又は約2重量%未満であってよい。
【0079】
[0085]熱伝達流体のpHは、室温において約6.8~約10.0の間であってよい。この範囲内で、pHは、約7.5以上、又は幾つかの実施形態においては約7.8以上であってよい。また、この範囲内で、pHは、約9.0以下、又は幾つかの実施形態においては約8.8以下であってよい。
【0080】
[0086]本発明による熱伝達システムにおいて腐食を抑制する方法は、熱伝達システムの
少なくとも一部を本明細書に記載のタイプの熱伝達流体と接触させることを含む。熱伝達システムは、炭素鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、イエローメタル、又はそれらの組み合わせを含む1つ又は複数の部品を含み得る。幾つかの実施形態においては、熱伝達システムはマグネシウム及び/又はマグネシウム合金を含み得る。幾つかの実施態様において、熱伝達システムは燃料電池を含む。
【0081】
[0087]幾つかの実施形態においては、本発明による熱伝達流体濃縮物又はそれから得られる熱伝達流体で予め処理されたイオン交換樹脂を使用して、腐食保護を与えることができる。例えば、イオン交換樹脂(例えば、混合床樹脂又はアニオン交換樹脂)を、活性官能基として5又は6員複素環(複素環は少なくとも1つの窒素原子を含む(例えばアゾール化合物))を含む熱伝達流体濃縮物又はそれから得られる熱伝達流体で予め処理することができる。次に、イオン交換樹脂を、冷却システムの側流中に設置されたフィルター中に充填することができる。クーラント中に存在するか、又は冷却システムの動作中に生成するイオン種の幾つかが、イオン交換樹脂上の交換可能な部位に付着した腐食抑制剤と交換する。この交換により、樹脂から腐食抑制剤が放出され、クーラントからイオン種が除去される。腐食抑制剤として使用される5又は6員のN-複素環式化合物は弱イオン性化合物であるので、クーラント中で通常使用される濃度範囲(例えば1リットル当たり数千ミリグラム未満)でのそれらの放出は、導電率の許容できない増加をもたらさない可能性がある。更に、樹脂から放出される抑制剤の量は、クーラントの腐食保護の必要性によって定まる。クーラントにおける腐食性の増加はより多くのイオン種を生成する可能性があり、これにより、イオン交換メカニズムのために樹脂から放出される腐食抑制剤の量の増加を引き起こす可能性がある。クーラント中における増加した腐食抑制剤の濃度は、それ自体で腐食速度の低下を引き起こす可能性がある。したがって、混合床イオン交換樹脂を使用して、システム内のクーラントにおける低い導電率を維持することができる。幾つかの実施形態においては、フィルター及び/又はストレーナーを使用して、イオン交換樹脂ビーズがシステム中に漏れるのを防止することができる。
【0082】
[0088]本発明による腐食抑制剤を装填したイオン交換樹脂は、イオン交換樹脂を、腐食抑制剤を含む水溶液と、腐食抑制剤が樹脂中の交換可能基全体の15%以上を交換するのに十分な時間接触させることによって調製することができる。言い換えれば、幾つかの実施形態においては、腐食抑制剤の装填量は、樹脂の交換容量の15%以上に到達させることができる。他の実施形態においては、腐食抑制剤の装填量は、樹脂の交換容量の50%より多くすることができる。更なる実施形態においては、腐食抑制剤の装填量は、樹脂の交換容量の75%より多くすることができる。次に、腐食抑制剤を装填したイオン交換樹脂をフィルター中に収容し、冷却システム内に配置して所望の腐食保護を与えることができる。冷却システム内に設置する前に、腐食抑制剤を装填したイオン交換樹脂を脱イオン水及び/又は洗浄したクーラントで洗浄して、システム中への不純物の偶発的な導入の可能性を最小にすることができる。
【0083】
[0089]本発明においてイオン交換樹脂を処理するために使用することができる腐食抑制剤は、25℃の水溶液中で酸性である場合には約5以上のpKaを有し得る。処理抑制剤が塩基である場合には、好適な処理抑制剤のpKbは、25℃の水溶液中で約5以上であり得る。イオン交換樹脂処理抑制剤の代表例としては、活性官能基として5又は6員の複素環(複素環は少なくとも1個の窒素原子を含む)を含む化合物(例えばアゾール化合物)が挙げられるが、これに限定されない。幾つかの実施形態においては、本明細書に記載の腐食抑制剤の1つなど(しかしながらこれらに限定されない)の他の化合物を使用してイオン交換樹脂を処理することができる。
【0084】
[0090]本発明にしたがって使用するイオン交換樹脂は、使用する腐食抑制剤の性質によって定まる。例えば、N-複素環化合物を腐食抑制剤として使用する場合には、イオン交
換樹脂は再生可能な混合床樹脂又はアニオン交換樹脂であってもよい。腐食抑制剤が溶液中で正荷電の種になり得る場合には、再生可能な混合床樹脂又はカチオン交換樹脂を使用することができる。使用する混合床樹脂は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂の混合物である。本発明にしたがって使用するカチオン交換樹脂はH+形態であってよく、アニオン交換樹脂はOH-形態であってよい。イオン交換樹脂は、ポリマーマトリクス、及びイオンと相互作用する官能基を含む。イオン交換体マトリクスは、ポリスチレン、ポリスチレン及びスチレンコポリマー、ポリアクリル、フェノール-ホルムアルデヒド、ポリアルキルアミン、及び/又は同様のもの、並びにそれらの組み合わせであってよい。カチオンイオン交換樹脂の官能基は、スルホン酸基(-SO3H)、ホスホン酸基(-PO3H)、ホスフィン酸基(-PO2H)、又はカルボン酸基(-COOH又はC(CH3)-COOH)であってよい。アニオンイオン交換樹脂の官能基は、第4級アンモニウム基(例えば、ベンジルトリメチルアンモニウム基又はベンジルジメチルエタノールアンモニウム基)又は第3級アミン官能基であってよい。幾つかの実施形態においては、Rohm and Haas(例えば、Amberlite、Amberjet、Duolite、及びImac樹脂)、Bayer(Lewatit)、Dow(Dowex)、Mitsubishi(Diaion)、Purolite、Sybron(Ionac)、Resintechから入手できるイオン交換樹脂、及び同様のものを、本発明にしたがって使用することができる。
【0085】
[0091]本発明による熱伝達流体濃縮物及びそれから得られる熱伝達流体を、以下の非限定的な実施例によって更に示す。以下の実施例は本発明による特徴を例示するものであり、単に例示として与える。それらは、添付の特許請求の範囲又はそれらの均等物の範囲を限定することは意図しない。
【実施例0086】
[0092]以下の実施例で使用した材料を表1に要約する。
【0087】
【0088】
実施例1-低導電性凍結防止剤/クーラント配合物
[0093]13種類の熱伝達流体組成物を、下表2及び3に要約するように調製した。全ての量は、熱伝達流体の総重量に対する重量%で示す。流体No.1~4の導電率も与える。
【0089】
【0090】
【0091】
[0094]組成物を、修正ASTM-D1384にしたがって試験した。アルミニウム及びマグネシウムを含む金属及び金属合金を含む車両冷却システムにおいて存在する種々の金属及び金属合金について得られた試験結果を、下表4及び5に要約する。金属又は金属合金試験片を、実施例1~13によって表される熱伝達流体組成物のそれぞれに曝露した。試験片をそれぞれの組成物に336時間曝露し、それぞれの試験片の重量損失を得た。表4及び5において、それぞれの試験片の重量損失を(mg試験片)/336時間で与える。また、それぞれの組成物についてのマグネシウムイオン(Mg2+)濃度の上昇を、修正ASTM-D1384試験を行う前及び行った後の両方で測定した。腐食試験の前後のMg2+濃度を、それぞれの配合物についてmg/Lで与える。
【0092】
【0093】
【0094】
[0095]表4及び5に示すように、アゾール化合物をソルビタン脂肪酸エステル及びポリアルキレングリコールと組み合わせて含む熱伝達流体(流体No.4~13)は、アルミニウム及びマグネシウムを含むものを含む種々の金属及び金属合金に対して優れた腐食抑制特性を示す。特に、それらの組成物は、マグネシウム耐腐食性において有意な改善を示した。驚くべきことに且つ予期しなかったことに、マグネシウム合金試験片は、ASTM-D3306にしたがってアルミニウム合金試験片について規定された値よりも小さい重量損失を示した。実施例12の組成物は、アルコキシル化アルコールであるポリグリセロールを含む。実施例12の組成物は更に、マグネシウム及びアルミニウムベースの金属及び金属合金の両方に対して優れた腐食抑制を示す。更に、実施例4は低い導電率値を示し、これにより内燃機関冷却システム及び代替動力冷却システム(例えば燃料電池冷却システム)の両方で使用するのに優れた組成物となる。
【0095】
実施例2-抑制剤添加の効果
[0096]
図1は、MRI-202S合金及びC1008鋼の腐食速度に対する抑制剤添加の効果のプロ
ットを示す。時刻「A」において、0.6gのTRITON EF-19を加えた。時刻「B」において、0.04gのベンゾトリアゾールを添加した。時刻「C」及び「D」において、0.12gのSPAN 20を加えた。時刻「E」及び「F」において、0.12gのCARBOWAX PEG 400を加えた。時刻「G」において、0.24gのCARBOWAX PEG 400を加えた。時刻「H
」において、0.24gのSPAN 20を加えた。時刻「I」において、1gのDOWEX monosphere MR-450UPW混合樹脂及び0.1237gのベンゾトリアゾールを加えた。
【0096】
[0097]
図2は、MRI-202S合金の最大局所腐食速度に与える抑制剤添加の効果のプロットを示す。開始前に、0.6グラムのTRITON EF-19を加えた。
図2に示す時間において、以下の成分:(a)0.04グラムのベンゾトリアゾール、(b)0.12グラムのCARBOWAX
400、(c)0.12グラムのCARBOWAX 400、(d)0.12グラムのSPAN 20、(e)
0.12グラムのSPAN 20、(f)0.24グラムのSPAN 20、(g)0.24グラムのCARBOWAX 400、及び(h)1グラムのDOWEX monosphere MR-450UPW混合樹脂及び0.1237グラムのベンゾトリアゾールの逐次添加を行った。
【0097】
[0098]
図3は、MRI-202S合金及びC1008鋼の平均腐食速度に与える抑制剤添加の効果の
プロットを示す。開始前に、0.6グラムのTRITON EF-19を加えた。
図3に示す時間において、以下の成分:(a)0.04gのベンゾトリアゾール、(b)0.12gのCARBOWAX 400、(c)0.12gのCARBOWAX 400、(d)0.12gのSPAN 20、(e)0.12gのSPAN 20、(f)0.24gのSPAN 20、(g)0.24gのCARBOWAX 400、及び(h)1gのDOWEX monosphere MR-450UPW混合イオン交換樹脂の逐次添加を行った。
【0098】
実施例3-更なる熱伝達流体組成物
[0099]下表6に要約されるように、4種類の更なる熱伝達流体組成物A~Dを調製した。全ての量は、熱伝達流体の総重量に対する重量%で示す。流体A~Dの導電率も与える。
【0099】
【0100】
[00100]アルミニウムを含む金属及び金属合金を含む車両冷却システムにおいて存在す
る種々の金属及び金属合金について得られた試験結果を下表7に要約する。金属又は金属合金試験片を、実施例A~Dによって表される熱伝達流体組成物のそれぞれに曝露した。しかしながら、実施例B~Dの組成物は、混合床イオン交換脱イオン装置を更に含む冷却システムにおいて評価した。実施例B及びCで使用される脱イオン装置は、4gのアゾールで処理された湿式混合樹脂2272-157を含む。実施例Dで使用される脱イオン装置は、4gの乾燥Dowel MR-450UPWを含む。試験片をそれぞれの組成物に336時間曝露し、それ
ぞれの試験片の重量損失を得た。表7は、それぞれの試験片の重量損失を(mg-試験片)/336時間で示す。また、それぞれの組成物についてのマグネシウムイオン(Mg2+)濃度の上昇を、修正ASTM-D1384試験を行う前及び行った後の両方で測定した。腐食試験の前後のMg2+濃度を、それぞれの配合物についてmg/Lで与える。
【0101】
【0102】
[00101]表7は、本発明による熱伝達流体組成物と共に混合床イオン交換脱イオン装置
を使用する有利性を示す。表6に示すように、アゾール化合物をソルビタン脂肪酸エステル及びポリアルキレングリコールと組み合わせて含む熱伝達流体(実施例4~13)は、混合床イオン交換脱イオン装置と組み合わせて使用した場合に種々のアルミニウム及びアルミニウム合金に対して優れた腐食抑制特性を示す。更に、これらの組成物は、マグネシウム耐腐食性において有意な改善を示した。実施例C及びDの組成物は、アルコキシル化アルコールを更に含む。実施例B~Dにおける組成物のそれぞれは低い導電率値を示し、これにより、それぞれの組成物は内燃機関冷却システム及び燃料電池冷却システムのような代替動力冷却システムの両方において使用するのに好適になる。
【0103】
実施例4-更なる熱伝達流体組成物
[00102]2種類の更なる熱伝達流体組成物No.14及び15を、下表8に要約するよ
うに調製した。全ての量は、熱伝達流体の総重量に対する重量%で示す。流体No.14及び15の導電率も与える。
【0104】
【0105】
[00103]組成物を、修正ASTM-D1384にしたがって試験した。アルミニウム及
びマグネシウムを含む金属及び金属合金を含む車両冷却システムにおいて存在する種々の金属及び金属合金について得られた試験結果を下表9に要約する。金属又は金属合金試験片を、実施例14及び15によって表される熱伝達流体組成物のそれぞれに曝露した。試験片をそれぞれの組成物に336時間曝露し、それぞれの試験片の重量損失を得た。表9においては、それぞれの試験片の重量損失を(mg-試験片)/336時間で示す。また、それぞれの組成物についてのマグネシウムイオン(Mg2+)濃度の上昇を、修正ASTM-D1384試験を行う前及び行った後の両方で測定した。腐食試験の前後のMg2+濃度を、それぞれの配合物についてmg/Lで与える。
【0106】
【0107】
[00104]表9は、ソルビタン脂肪酸エステルを更に含む熱伝達流体(実施例14)は、
特に混合床イオン交換脱イオン装置と組み合わせて使用した場合に、アルミニウム及びマグネシウムベースの金属及び金属合金の両方に対して優れた腐食抑制特性を示すことを示す。実施例14の組成物は更に低い導電率値を示し、これにより、それぞれの組成物は、内燃機関冷却システム及び燃料電池冷却システムのような代替動力冷却システムの両方において使用するのに好適になる。
【0108】
実施例5-発泡分析
[00105]表10は、本発明による熱伝達システム組成物が、更に発泡試験にかけた場合
に優れた結果を示すことを示す。実施例C及びDを、それぞれ、ASTM-D1384腐食試験にかける前及びかけた後の両方において、Nummi及びASTM-D1881発泡試験にかけた。表10に示すように、本発明による組成物は、腐食試験を実施する前及び実施した後の両方において、ASTM-D3306仕様、並びに内燃及び代替動力源用途の両方について車両製造業者によって規定される要件に準拠する発泡試験結果をもたらす。
【0109】
【0110】
実施例6-更なる凍結防止剤/クーラント配合物
[00106]6種類の更なる熱伝達流体組成物16~21を、下表11に要約するように調
製した。全ての量は、熱伝達流体の総重量に対する重量%で示す。
【0111】
【0112】
[00107]組成物を、修正ASTM-D1384にしたがって試験した。アルミニウム及
びマグネシウムを含む金属及び金属合金を含む車両冷却システムにおいて存在する種々の金属及び金属合金について得られた試験結果を下表12に要約する。金属又は金属合金試験片を、実施例16~21によって表される熱伝達流体組成物のそれぞれに曝露した。試験片をそれぞれの組成物に168時間曝露し、それぞれの試験片の重量損失を得た。表12においては、それぞれの試験片の重量損失を(mg-試験片)/168時間で示す。また、それぞれの組成物についてのマグネシウムイオン(Mg2+)濃度の上昇を、修正ASTM-D1384試験を行う前及び行った後の両方で測定した。腐食試験の前後のMg2+濃度を、それぞれの配合物についてmg/Lで与える。
【0113】
【0114】
[00108]ここで引用した全ての特許及び非特許文献の全ての内容は、本明細書と不一致
の開示事項又は規定の場合(この場合には、本明細書における開示事項又は規定が優先するとみなされる)を除いて、参照として本明細書中に包含する。
【0115】
[00109]構成要素(例えば、「非イオン性界面活性剤」、「ポリアルキレングリコール
」など)に関する不定冠詞の「a」及び「an」の使用は、幾つかの実施形態においては複数のかかる構成要素の存在を排除しないことを理解すべきである。
【0116】
[00110]上記の詳細な記載は例示及び例証の目的で与えたものであり、添付の特許請求
の範囲を限定することは意図しない。本明細書に示されている現在好ましい態様における多くのバリエーションは当業者に明らかであり、添付の特許請求の範囲及びそれらの均等範囲内に含まれる。
【0117】
[00111]添付の特許請求の範囲において示す構成要素及び特徴を異なるように組み合わ
せて、これも本発明の範囲内に含まれる新しい請求項を形成することができることを理解すべきである。而して、下記に添付した従属請求項は単一の独立又は従属請求項のみに従属しているが、これらの従属請求項は、或いは別形態においては任意の先行する請求項(独立か従属かにかかわらず)に従属させることができ、かかる新しい組合せは本明細書の一部を形成すると理解すべきであることを理解すべきである。