(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167337
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】眼用組成物
(51)【国際特許分類】
A61L 27/16 20060101AFI20241126BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20241126BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20241126BHJP
A61L 27/58 20060101ALI20241126BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20241126BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20241126BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A61L27/16
A61L27/18
A61L27/54
A61L27/58
A61K47/32
A61K47/34
A61P27/02
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024147829
(22)【出願日】2024-08-29
(62)【分割の表示】P 2021536088の分割
【原出願日】2019-12-20
(31)【優先権主張番号】18215025.0
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521267834
【氏名又は名称】レ‐ヴァーナ セラピューティクス エルティーディー
【氏名又は名称原語表記】RE-VANA THERAPEUTICS LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】タクール, ラグー ラジ シン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ, デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ソリマン, カリム
(72)【発明者】
【氏名】ソナウェイン, ラウル
(72)【発明者】
【氏名】ワン, ユージン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】治療剤の制御放出のための眼用組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも20w/w%の治療剤と、ポリアルキレングリコールのモノアクリレート、ジアクリレート、メタクリレート、及びジメタクリレートのフラグメント又はモノマー、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーから選択される、5~75w/w%の光重合性組成物と、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)を含む)、ポリ(L-ラクチド)、ポリヒドロキシブチレートを含むポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリ(DL-ラクチド)、ポリ(D-ラクチド)、ラクチド/カプロラクトンコポリマー、ポリ-L-ラクチド-コ-カプロラクトン、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーから選択される、0.1~40w/w%の生分解性ポリマーと、光開始剤とを含む組成物とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼用組成物であって、
(a)少なくとも20w/w%の治療剤;と、
(b)ポリアルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレート、及びポリアルキレングリコールジメタクリレートのフラグメント又はモノマー、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、5~75w/w%の光重合性組成物;と、
(c)ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリヒドロキシブチレートを含むポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(DL-ラクチド)(PDL)、ポリ(D-ラクチド)、ラクチド/カプロラクトンコポリマー、ポリ-L-ラクチド-コ-カプロラクトン(PLC)、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、0.1~40w/w%の生分解性ポリマー;と、
(d)光開始剤と、
を含む、眼用組成物。
【請求項2】
前記治療剤が、20~70w/w%の量で存在する、請求項1に記載の眼用組成物。
【請求項3】
前記光重合性組成物が、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、及びポリプロピレングリコールジメタクリレート、又はこれらの混合物、コポリマー若しくはブロックコポリマーからなる群から選択される、請求項1~2のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【請求項4】
前記光重合性組成物が、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)である、請求項3に記載の眼用組成物。
【請求項5】
前記生分解性ポリマーが、5~10w/w%の量で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【請求項6】
前記生分解性ポリマーが、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリ(D,L-乳酸)(PDL)、及びラクチド/カプロラクトンコポリマー(PLC)である、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【請求項7】
前記光開始剤が、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(DPPO)、又はリボフラビンである、請求項1~6のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【請求項8】
放出調節剤を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【請求項9】
前記放出調節剤が、キトサンを含む多糖類及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含むセルロース系材料;ヒアルロン酸;ポロキサマー;ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリエーテル;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール、ラクトース、マルトース、グルコース、マンニトール、塩化ナトリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、アガロース、スクロース、並びにこれらの混合物から選択される、請求項8に記載の眼用組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の眼用組成物を作製する方法であって、
(a)前記治療剤を溶媒中へ溶解して溶液を得ることと、
(b)工程(a)で得られた前記溶液を、前記重合性組成物、前記生分解性ポリマー、前記光開始剤、及び任意に前記放出調節剤と混合することと、
を含む、方法。
【請求項11】
前記溶媒が、水系溶媒である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
眼用インプラントを作製する方法であって、
(a)請求項1~9のいずれか一項に記載の眼用組成物を提供することと、
(b)前記眼用インプラントを形成するために、1秒~60分の間に200~550nmの波長の光を前記眼用組成物に照射することと、
を含む、方法。
【請求項13】
工程(b)で形成された前記眼用インプラントが、対象の眼領域に投与される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載の方法によって得ることができる、眼用インプラント。
【請求項15】
眼用インプラントであって、少なくとも20w/w%の治療剤と、5~75w/w%の架橋ポリマーマトリックスと、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリヒドロキシブチレートを含むポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(DL-ラクチド)(PDL)、ポリ(D-ラクチド)、ラクチド/カプロラクトンコポリマー、ポリ-L-ラクチド-コ-カプロラクトン(PLC)、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、0.1~40w/w%の生分解性ポリマーと、を含み、
(a)前記架橋ポリマーマトリックスが、ポリアルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールメタクリレート、及びポリアルキレングリコールジメタクリレートのフラグメント又はモノマー、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される光重合性組成物を架橋することによって得られることと、
(b)前記治療剤及び前記生分解性ポリマーが、前記ポリマーマトリックスに埋め込まれることと、を特徴とする、眼用インプラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療剤の制御放出のための眼用組成物及び眼用インプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性網膜疾患は世界中で視覚障害及び失明の主な原因である。視力の喪失は人々の日常生活に大きな個人的影響を及ぼし、個人、家族、公衆衛生及び社会に甚大な経済的影響を及ぼす。世界保健機関の推定によれば、世界で約2億8500万人の人々が視覚障害を患っており、そのうち3900万人は盲目であり、2億4600万人は視力が低い。後眼部(posterior segment:PS)又は眼の後ろに由来する疾患は、未処置のまま放置すると永久的な視力喪失をもたらし、加齢黄斑変性(age-related macular degeneration:AMD)、糖尿病性網膜症(diabetic retinopathy:DR)、糖尿病性黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)性網膜炎、網膜色素変性症、ブドウ膜炎、及び緑内障などの、ほとんどの失明の原因となる。網膜、脈絡膜、及び硝子体を含む眼の後眼部は、眼窩内の凹んだ位置のためにアクセスが困難である。したがって、眼の後眼部への治療剤の送達は、製薬科学者及び網膜専門家にとって最も困難な課題の1つのままである。
【0003】
全身、局所、眼周囲(又は経強膜)及び硝子体内といった眼の後眼部に治療剤を送達するために、複数のアプローチが使われている。局所的(例えば、点眼剤)経路及び全身的(例えば、経口錠剤)経路は、複数の眼のバリアに起因し低薬剤レベル又は治療量以下の薬剤レベルをもたらして、治療剤関連毒性を引き起こし、低治療有効性の原因となる不必要に高い濃度の治療剤の投与を必要とする。
【0004】
国際公開第2017081154A1号は、治療剤の制御放出を達成するために様々な形態で眼に投与することができる、眼用組成物を開示している。これらの組成物は、患者の眼に注射した後にインサイチュで処方物を架橋することで眼用インプラントを形成するために使用することができるか、又は眼に注射する前に予め形成することもできる。
【0005】
治療剤の眼内送達のための代替システムが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2017081154A1号
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、本発明は、治療剤の制御放出を達成するために様々な形態で眼に投与することができる、眼用組成物に関する。このような眼用組成物は、
(a)少なくとも20w/w%の治療剤;と、
(b)ポリアルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールメタクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレートのフラグメント又はモノマー、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、5~75w/w%の光重合性組成物;と、
(c)ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリヒドロキシブチレートを含むポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(DL-ラクチド)(PDL)、ポリ(D-ラクチド)、ラクチド/カプロラクトンコポリマー、ポリ-L-ラクチド-コ-カプロラクトン(PLC)、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、0.1~40w/w%の生分解性ポリマー;と、
(d)光開始剤と、
を含む。
【0008】
更なる態様では、本発明は、上記眼用組成物を作製する方法に関する。
【0009】
また更なる態様では、本発明は、眼用インプラントの調製に使用するための上記眼用組成物に関する。
【0010】
また更なる態様では、本発明は、このような眼用インプラントの作製方法に関する。
【0011】
また更なる態様では、本発明は、このような方法によって得ることができる眼用インプラントに関する。
【0012】
また更なる態様では、本発明は、少なくとも20w/w%の治療剤と、5~75w/w%の架橋ポリマーマトリックスと、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリヒドロキシブチレートを含むポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(DL-ラクチド)(PDL)、ポリ(D-ラクチド)、ラクチド/カプロラクトンコポリマー、ポリ-L-ラクチド-コ-カプロラクトン(PLC)、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、0.1~40w/w%の生分解性ポリマーと、を含む眼用インプラントに関し、
(a)架橋ポリマーマトリックスが、ポリアルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールメタクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレートのフラグメント又はモノマー、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、光重合性組成物を架橋することによって得られること;と、
(b)治療剤及び生分解性ポリマーが、架橋ポリマーマトリックスに埋め込まれていることと、を特徴とする。
【0013】
本発明は、治療剤の制御放出を達成するために様々な形態で眼に投与することができる、眼用組成物及びインプラントを提供する。本発明は、タンパク質、ペプチド及び遺伝子治療薬を含む広範な小型及び大型治療用分子を投与し、それらの活性を制御された期間維持する柔軟性を可能にする。
【0014】
本発明にかかる眼用組成物及びインプラントは、20w/w%以上の量の治療剤を含むことを可能にし、したがって、許容できないバースト放出に直面することなく高負荷治療送達インプラントの製造を可能にする。更に、本発明のインプラントの全体的なサイズは、長期間にわたる治療剤放出プロファイルの有効性を損なうことなく、実質的に縮小することができる。サイズの縮小を考慮すると、患者の認容性、耐容性、及び快適性は、全体的かつ一般的に改善される。
【0015】
本発明の眼用組成物及びインプラント中の高濃度な治療剤はまた、治療剤自体のバイオアベイラビリティを増加させることを可能にし、したがって、全期間にわたる治療の有効性を保証する。
【0016】
更に、縮小された寸法及び高い薬物負荷を有するインプラントは、小ゲージ針による投与を可能にし、眼組織外傷をあまり引き起こさない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、インプラントF18及びF19からのBEZのインビトロ放出を示し、累積放出パーセンテージとして表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図2】
図2は、インプラントF18からのBEZのインビトロ放出を示し、1日当
【
図3】
図3は、インプラントF19からのBEZのインビトロ放出を示し、1日当たりの放出としてμgで表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図4】
図4は、インプラントF7からのBEZのインビトロ放出を示し、累積放出パーセンテージとして表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図5】
図5は、インプラントF7からのBEZのインビトロ放出を示し、1日当たりの放出としてμgで表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図6】
図6は、インプラントB1及びB4からのBEZのインビトロ放出を示し、累積放出パーセンテージとして表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図7】
図7は、インプラントB1及びB4からのBEZのインビトロ放出を示し、1日当たりの放出としてμgで表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図8】
図8は、インプラントO1、O2、及びO4からのOVAのインビトロ放出を示し、累積放出パーセンテージとして表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図9】
図9は、インプラントB1、BL1、及びBS4からのBEZのインビトロ放出を示し、累積放出パーセンテージとして表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図10】
図10は、インプラントB1、BL1、及びBS4からのBEZのインビトロ放出を示し、1日当たりの放出としてμgで表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図11】
図11は、インプラントB1、BL1、及びFN4からのBEZのインビトロ放出を示し、累積放出パーセンテージとして表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図12】
図12は、インプラントB1、BL1、及びFN4からのBEZのインビトロ放出を示し、1日当たりの放出としてμgで表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図13】
図13は、インプラントFN2及びFN5からのBEZのインビトロ放出を示し、累積放出パーセンテージとして表す(平均±標準偏差、n=3)。
【
図14】
図14は、インプラントO3及びO7からのOVAのインビトロ放出を示し、累積放出パーセンテージとして表す(平均±標準偏差、n=3)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で使用される場合、用語「w/w%」とは、場合によっては、コポリマー、組成物、又はそのような構成要素を含むインプラントの総重量に対する、所与の構成要素の重量パーセンテージを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、「生分解性」とは、生物学的手段による化学分解である。いくつかの実施形態では、生分解は、組成物、モノマー、オリゴマー、フラグメント、ポリマー、光開始剤、溶媒、共溶媒、又は共開始剤の1つ以上の100%、98%、90%、85%、80%、60%、50%、又は45%の分解である。
【0020】
本明細書で使用される場合、「コポリマー」とは、2つ以上の異なるタイプのモノマー単位の混合物である。本明細書で使用される場合、「ブロックコポリマー」とは、2つ以上のホモポリマーサブユニットの混合物である。
【0021】
本発明の組成物の治療剤は、広範囲の小分子及び大分子から選択することができる。例示的な治療剤としては、ポリペプチド、核酸、例えばDNA、RNA及びsiRNA、増殖因子、ステロイド剤、抗体療法、抗菌剤、抗生物質、抗レトロウイルス治療剤、抗炎症化合物、抗腫瘍剤、抗血管新生剤(anti-angiogeneic agent)、抗VEGF(血管内皮増殖因子)剤、及び化学療法剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
一実施形態では、本発明の治療剤としては、ケトロラック、ナファゾリン、リドカイン、ベバシズマブ、アフリベルセプト、ペガプタニブ、酒石酸ブリモニジン、ドルゾラミド、ブロムフェナクナトリウム、アジスロマイシン、ラパマイシン、ベシル酸ベポタスチン、ジクロフェナク、ベシフロキサシン、システアミン塩酸塩、フルオシノロンアセトニド、ジフルプレドナート、タシメルテオン、オクリプラスミン、エノキサパリンナトリウム、ラニビズマブ、ラタノプロスト、マレイン酸チモロール、ビマトプロスト、オフロキサシン、セファゾリン、フェニレフリン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、レボフロキサシン、シクロホスファミド、メルファランシクロスポリン、メトトレキサート、アザチオプリン、トラボプロスト、ベルテポルフィン、タフルプロスト、フマル酸ケトチフェン、ホスカルネット、アムホテリシンB、フルコナゾール、ボリコナゾール、ガンシクロビル、アシクロビル、ガチフロキサシン、マイトマイシンC、プレドニゾロン、プレドニゾン、ビタミン(ビタミンA、ビタミンC、及びビタミンE)、亜鉛、銅、ルテイン、ゼアキサンチン、又はこれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
別の実施形態では、本発明の治療剤は、デキサメタゾン、マレイン酸チモロール、酒石酸ブリモニジン、トリアムシノロンアセトニド、ブロムフェナクナトリウム、ラタノプロスト、又はこれらの混合物である。
【0024】
一実施形態では、本発明の組成物又はインプラントは、生物活性剤、大分子量治療剤、例えばアフリベルセプト、ペガプタニブなど、又は抗体治療薬、例えばラニビズマブ、ベバシズマブ、トラスツズマブ、リツキシマブ、ゲンツズマブ、オザガマイシン、ブロルシズマブ、若しくはセツキシマブなどを送達することができる。
【0025】
いくつかの実施形態では、治療剤の分子量は、200Da、500Da、1000Da、10kDa、30kDa、50kDa、75kDa、100kDa、150kDa、200kDa、及び250kDaより大きい。
【0026】
本発明の他の実施形態によれば、治療剤は、眼用組成物の総重量の20~70w/w%の間、30~70w/w%の間、40~70w/w%の間、及び50~70w/w%の間の量で存在する。
【0027】
治療剤は、そのまま、又はある量の治療剤が適切な溶媒中に溶解された溶液の形態で、使用することができる。治療剤はまた、高濃度の治療剤のインプラントへの組込みを容易にするために、本発明の眼用組成物の調製で使用する前に凍結乾燥又は噴霧乾燥することもできる。溶解される治療剤の量は、眼用組成物又はインプラントが有するべき最終的な負荷に依存する。溶媒の選択は治療剤の極性に依存する。
【0028】
本発明の一実施形態によれば、溶媒は、水、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-ピロリジン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-ピロリドン、グリセロールホルマール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、安息香酸エチル、トリアセチン、クエン酸トリエチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、及びテトラヒドロフランから選択することができる。
【0029】
一実施形態では、共溶媒を使用してもよく、これは、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、酢酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリコフロール、又はブタノールから選択することができる。
【0030】
親水性治療剤の場合、溶媒は、水又はリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline:PBS)溶液などの水性溶媒であり得る。
【0031】
別の実施形態によれば、溶媒は、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びグリセロールホルマールから選択され得る。
【0032】
更に、上記の溶媒及び共溶媒は、本明細書に記載の他の光重合性組成物、生分解性ポリマー、光開始剤、細孔形成剤、及び共開始剤のいずれかと組み合わせて、本発明の組成物及びインプラントのいずれかの調製で使用することができる。
【0033】
一実施形態では、生分解性ポリマーが、PLGA、PCL、PLC及び/又はPLAである場合、溶媒が使用される。一実施形態では、生分解性ポリマーが、PLGA、PCL、PLC及び/又はPLAである場合、溶媒はN-メチル-2-ピロリドン及びN-ビニル-2-ピロリジンである。別の実施形態では、光重合性組成物がPEGDAである場合、溶媒が使用される。
【0034】
本発明の光重合性フラグメント又はモノマーは、本発明の組成物及びインプラントのいずれかにおいて、本明細書に記載の又は共通の一般知識において公知の他の生分解性ポリマー、治療剤、光開始剤、溶媒、共溶媒、薬物調節剤、及び共開始剤のいずれかと組み合わせて、使用することができる。
【0035】
一実施形態では、本発明の光重合性組成物は、生分解性であり得る。いくつかの実施形態では、生分解は、1分、10分、20分、2時間、6時間、12時間、24時間、2日間、5日間、1週間、1ヶ月、2ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、8ヶ月、又は12ヶ月にわたって起こる。いくつかの実施形態では、生分解は、1ヶ月~12ヶ月の間、6ヶ月~12ヶ月の間、又は8ヶ月~12ヶ月の間で起こる。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語「光重合性組成物」とは、光、特にUV光に曝露されると架橋ポリマーネットワークを形成することができる組成物である。本明細書で使用される場合、光重合性組成物は、光重合性モノマー及びオリゴマー(例えば、二量体、三量体、及び四量体)を含む。用語「オリゴマー」及び「フラグメント」とは、2~20個のモノマー、任意には2~10個のモノマー、更に任意選択的には2~5個のモノマー、又は2~4個のモノマーを意味するために、互換的に使用することができる。「光重合性モノマー」とは、他のモノマーに化学的に結合してポリマーを形成することができる、光重合性ポリマーの単一単位である。
【0037】
本発明の光重合性組成物は、本発明の眼用インプラントの架橋ポリマーマトリックスを形成するために、UV照射で架橋することができる。
【0038】
一実施形態では、光重合性組成物は、ポリアルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールメタクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレートのフラグメント又はモノマー、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される。
【0039】
一実施形態では、光重合性組成物は、ポリエーテルフラグメント若しくはモノマー、ポリエステルフラグメント若しくはモノマー、ポリカーボネートフラグメント若しくはモノマー、又はこれらの混合物、コポリマー若しくはブロックコポリマーを含む群から選択されるジアクリレート末端単位を組み込む、ポリアルキレングリコールジアクリレートフラグメント又はモノマーである。
【0040】
一実施形態では、光重合性組成物は、4アーム又は8アームPEGアクリレートなどのジアクリレート末端単位を組み込むモノマーを含む。
【0041】
別の実施形態では、光重合性組成物は、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、及びポリプロピレングリコールジメタクリレート、又はこれらの混合物、コポリマー若しくはブロックコポリマーである。
【0042】
別の実施形態では、光重合性組成物は、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)、ポリエチレングリコールモノアクリレート(PEGMoA)、又はポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)である。
【0043】
更に別の実施形態では、光重合性組成物は、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)である。
【0044】
更に別の実施形態では、光重合性組成物は、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)、又はPEGMAと他のポリアルキレングリコールモノアクリレート、ジアクリレート、メタクリレート及び/若しくはジメタクリレートとの混合物である。一実施形態では、重合性組成物は、PEGDA、PEGMoA、及び/又はPEGMAの混合物である。
【0045】
PEGDAは様々な分子量で入手可能な合成ポリマーである。PEGDAは、機械的、構造的、及び化学的変化に極めて適しており、そのため、薬物送達及び他の生物医学的用途に関して様々な特性を有するヒドロゲルをもたらす。PEGDAはアクリレート基による各PEG分子の末端の官能化によって形成される。PEGDAはまた非毒性であり、最小限の免疫原性応答しか誘発しない。PEGDAは、適切な開始剤の存在下において光に曝露された場合に迅速な重合を示してヒドロゲルネットワークを生成する、二重結合含有アクリレート末端基を有する。
【0046】
本発明の光重合性組成物の平均分子量は、典型的には、100~300,000Da、200~100,000Da、200~50,000Da、200~20,000Da、200~10,000Da、200~8,000Da、200~5,000Da、又は200~1,000Daである。
【0047】
本発明の組成物及びインプラントについて、光重合性組成物の分子量の増加は、治療剤放出速度の増加をもたらすことが見出されている。理論に拘束されることを望むものではないが、より低い分子量を有する光重合性組成物は、より高い架橋密度を有し、したがってより遅い治療剤放出速度を有すると考えられる。
【0048】
本発明の光重合性組成物は、典型的には、0.1~7dL/g、0.2~5dL/g、又は0.5~2dL/gの粘度を有する。
【0049】
一実施形態では、光重合性組成物は、10~75w/w%、20~75w/w、30~75w/w%、40~75w/w%及び45~75w/w%の量で存在する。
【0050】
本発明の生分解性ポリマーは、本発明の組成物及びインプラントのいずれかにおいて、本明細書に記載の又は共通の一般知識において公知の他の光重合性組成物、治療剤、光開始剤、溶媒、共溶媒、治療剤放出調節剤、及び共開始剤のいずれかと組み合わせて、使用することができる。
【0051】
本発明の生分解性ポリマーは生分解性であるが、光重合性ではない。
【0052】
本発明の一実施形態では、生分解性ポリマーは、脂肪族ポリエステル系ポリウレタン、ポリラクチド、ポリカプロラクトン、ポリオルトエステル、又はこれらの混合物、コポリマー若しくはブロックコポリマーである。
【0053】
本発明の別の実施形態では、生分解性ポリマーは、キトサン、ポリ(プロピレンフマレート)、ラクチド/グリコリドコポリマー(PLGA)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ラクチド/カプロラクトンコポリマー(PLC)、ポリヒドロキシブチレート、天然生分解性ポリマー、例えばコラーゲン及びヒアルロン酸、又はこれらの混合物、コポリマー若しくはブロックコポリマーである。
【0054】
別の実施形態では、生分解性ポリマーは、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリヒドロキシブチレートを含むポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(DL-ラクチド)(PDL)、ポリ(D-ラクチド)、ラクチド/カプロラクトンコポリマー、ポリ-L-ラクチド-コ-カプロラクトン(PLC)、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される。
【0055】
一実施形態では、生分解性ポリマーは、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリ(DL-ラクチド)(PDL)、及びラクチド/カプロラクトンコポリマー(PLC)である。
【0056】
特定の実施形態では、生分解性ポリマーは、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である。
【0057】
PLGAは、典型的には、乳酸及びグリコール酸モノマーの重合によって調製される。PLGAコポリマーのガラス転移温度(transition temperature:Tg)は、37℃の生理的温度より高く、適度に剛性な鎖配置をもたらし、したがって周囲温度での機械的強度を付与する。異なるラクチド(LA)対グリコリド(GA)比及び分子量でのPLGAの使用は、異なる薬物放出プロファイルを可能にする。GA含量の増加はPLGAの水取込みを増大させ、したがってより急速な分解をもたらす。LA/GA 50/50を用いたPLGAの分解は、典型的には、1~3ヶ月である。一実施形態では、PLGAにおける乳酸対グリコール酸のモル比は、90%乳酸対10%グリコール酸、85%乳酸対15%グリコール酸、75%乳酸対25%グリコール酸、65%乳酸対35%グリコール酸、50%乳酸対50%グリコール酸、35%乳酸対65%グリコール酸、25%乳酸対75%グリコール酸、15%乳酸対85%グリコール酸、及び10%乳酸対90%グリコール酸である。
【0058】
別の実施形態では、生分解性ポリマーは、PCL、PLC、PLA、又はこれらの混合物、コポリマー若しくはブロックコポリマーである。
【0059】
一実施形態では、生分解性ポリマーは、1~40w/w%、1~30w/w%、1~20w/w%、2~10w/w%、5~10w/w%の量で存在する。
【0060】
本明細書に記載の光開始剤は、本明細書に記載の他の光重合性組成物、生分解性ポリマー、治療剤、光開始剤、溶媒、共溶媒、及び共開始剤のいずれかと組み合わせて、本発明の組成物及びインプラントのいずれかで、使用することができる。
【0061】
ある特定の実施形態では、光開始剤は、200~550nmの光を用いて作用するように設計される。いくつかの実施形態では、光開始剤は、200~500nmのUV光を用いて作用するように設計される。他の実施形態では、光開始剤は、200~425nmのUV光を用いて作用するように設計される。
【0062】
ある特定の実施形態では、光源は、光の波長及び/又は光の強度の変化を可能にすることができる。本発明において有用な光源としては、レーザダイオード及びランプが挙げられるが、これらに限定されない。光ファイバ装置を使用して光を伝送することができる。
【0063】
一実施形態では、光開始剤は、ケトンである(すなわち、RCOR’)。一実施形態では、化合物は、アゾ化合物である(すなわち、-N=N-基を有する化合物)。一実施形態では、光開始剤は、アシルホスフィンオキシドである。一実施形態では、光開始剤は、硫黄含有化合物である。一実施形態では、開始剤は、キノンである。ある特定の実施形態では、光開始剤の組合せが使用される。
【0064】
別の実施形態では、光開始剤は、ヒドロキシケトン光開始剤、アミノケトン光開始剤、ヒドロキシケトン/ベンゾフェノン光開始剤、ベンジルジメチルケタール光開始剤、フェニルグリオキシレート光開始剤、アシルホスフィンオキシド光開始剤、アシルホスフィンオキシド/アルファヒドロキシケトン光開始剤、ベンゾフェノン光開始剤、リビチルイソアロキサジン光開始剤、過酸化物光開始剤、過硫酸塩光開始剤、若しくはフェニルグリオキシレート光開始剤、又はこれらの任意の組合せから選択され得る。場合により、光開始剤は、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、ジフェニル(2,4,6トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(DPPO)、又はリボフラビンである。別の実施形態では、光開始剤は、過酸化ベンゾイル、2,2’’-アゾビスイソブチロニトリル、過酸化ジクミル、過酸化ラウロイル、及び/又はカンファキノンである。
【0065】
一実施形態では、本発明の組成物は、共開始剤を更に含む。一実施形態では、共開始剤は、エオシンY、トリエタノールアミン、カンファキノン、1-ビニル-2ピロリジノン(NVP)、エオシン、ジメチルアミノ安息香酸(DMAB)、Irgacure(登録商標)D-2959(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)、Irgacure(登録商標)907(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)、Irgacure(登録商標)651(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(DPPO/Darocur TPO)(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)、又はエチル-4-N,N-ジメチルアミノ安息香酸(4EDMAB)である。場合により、光開始剤はリボフラビンであり、共開始剤はL-アルギニンである。
【0066】
一実施形態では、本発明の組成物は、放出調節剤を含む。適切な放出調節剤は、特定の治療剤及びインプラントの組成、並びに所望の溶出プロファイル又は放出速度を考慮して選択され得る。放出調節剤は、天然に存在する薬剤若しくはポリマー、又は合成薬剤若しくはポリマーであり得る。
【0067】
本明細書に記載の全ての放出調節剤は、本明細書に記載の他の光重合性組成物、生分解性ポリマー、治療剤、光開始剤、溶媒、共溶媒、及び共開始剤のいずれかと組み合わせて、本発明のインプラント及び組成物のいずれかで、使用することができる。
【0068】
放出調節剤は、0.1~40w/w%、1~30w/w%、1~20w/w%、1~10w/w%、5~10w/w%の量で存在し得る。
【0069】
場合により、放出調節剤は、インプラントマトリックスへの吸水を変化させ、したがって治療剤の放出速度及びインプラント分解を制御する。一実施形態では、適切な吸水調節剤は、例えば、キトサン及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含むセルロース系材料;ヒアルロン酸;ポロキサマー;ポリエーテル、例えばポリエチレングリコールなど;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール、及びこれらの混合物のような、1つ以上の多糖類である。一実施形態では、適切な吸水調節剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)及びポリエチレングリコール(PEG)である。
【0070】
一実施形態では、放出調節剤は、細孔形成剤及び/又は安定性向上剤である。場合により、これは、ラクトース、マルトース、グルコース、マンニトール、塩化ナトリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、アガロース、又はスクロースである。
【0071】
別の実施形態では、放出調節剤は、本発明の眼用組成物又はインプラントに2つ以上の機能性を提供するために、上記の2つ以上の調節剤の混合物である。任意に、放出調節剤は、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はこれらの混合物である。
【0072】
任意に、インプラントの多孔性は、分散した水溶性ポロシノゲンの存在下でインプラントを調製することによって調節することができ、これは、後に水で洗浄して除去して、相互接続された網目構造(すなわち、多孔質ヒドロゲル)を残すことができる。ポロシノゲン技術によって調製されたヒドロゲルの孔径はポロシノゲンのサイズに依存する。
【0073】
本発明の別の実施形態では、眼用組成物は、放出調節剤を含有しない。
【0074】
本発明の別の態様は、上記の眼用組成物の作製方法である。この方法は、治療剤を溶媒/共溶媒中に溶解して溶液を得る工程と、続いて任意の添加順序で、そのようにして得られた治療剤溶液を、重合性組成物、生分解性ポリマー、光開始剤、及び任意に放出調節剤と混合する工程とを含む。任意に、治療剤は最初に光重合性組成物と混合され、そのようにして得られた混合物は、任意の添加順序で、生分解性ポリマー、光開始剤、及び任意に放出調節剤と混合される。あるいは、治療剤は最初に光重合性組成物の一部と混合され、光重合性組成物の別の部分は、生分解性ポリマー、光開始剤、及び任意に放出調節剤と混合される。
【0075】
本発明に従って使用することができる溶媒の選択は、治療剤の極性に依存する。
【0076】
任意に、溶媒は、水、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、N-ビニル-ピロリジン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-ピロリドン、グリセロールホルマール、グリセロール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、安息香酸エチル、トリアセチン、クエン酸トリエチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ジクロロメタン及びテトラヒドロフランから選択することができる。
【0077】
一実施形態では、共溶媒を使用してもよく、これは、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、酢酸、メタノール、エタノール、イソプロパノール、グリコフロール、又はブタノールから選択することができる。
【0078】
親水性治療剤の場合、溶媒は、水又はリン酸緩衝食塩水(PBS)溶液などの水性溶媒であり得る。
【0079】
別の実施形態によれば、溶媒は、ジメチルスルホキシド、デシルメチルスルホキシド、アセトニトリル、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、及びグリセロールホルマールから選択され得る。
【0080】
あるいは、治療剤は、他の成分と混合する前に溶媒中へ溶解されない。したがって、治療剤、重合性組成物、生分解性ポリマー、光開始剤、及び場合により放出調節剤は、任意の添加順序で一緒に混合される。あるいは、治療剤は最初に光重合性組成物の一部と混合され、光重合性組成物の別の部分は、生分解性ポリマー、光開始剤、及び任意に放出制御剤と混合される。
【0081】
本発明の別の態様は、眼用インプラントの調製に使用するための上記の眼用組成物を提供することである。あるいは、本発明の眼用組成物は、眼用インプラント又は眼用インプラント支持体をコーティングするために使用される。
【0082】
本発明の更なる態様は、本発明の眼用インプラントを作製する方法であって、本発明の眼用組成物を提供する工程と、続いて眼用組成物に、200~550nm、200~500nm、200~490nm、又は200~425nmの波長の光を、1秒~60分、30秒~30分、2.5分~20分、5分~10分の間照射する工程と、を含む方法である。一実施形態では、架橋は、3秒間、6秒間、9秒間、15秒間、30秒間、1分間、2.5分間、5分間、10分間、20分間、又は30分間である。
【0083】
本発明の更なる態様は、上述の方法によって得ることができる眼用インプラントである。
【0084】
一実施形態では、ポリマー分子量、タイプ及びコポリマー比、薬物のタイプ及び負荷、インプラントサイズ、UV架橋の時間及び程度、光開始剤、放出調節剤、溶媒及び/又は共溶媒の量及びタイプを変更して、薬物放出の速度及び程度を制御することができる。これらの因子の変化により、様々な眼疾患の治療における特定の臨床的/患者のニーズに対処するために、所望の薬物放出期間をもたらすように容易に調整することができる、本発明の組成物が提供される。
【0085】
本発明の眼用組成物は、
(i)眼に注射した後、短時間のUV光を照射してインサイチュ光架橋を誘導し、インサイチュ光架橋インプラント(In Situ Photocrosslinked Implant:ISPcI)と呼ばれるインプラント形成をもたらすこと;と、
(ii)眼に適用する前に光架橋して所望の形状及びサイズのインプラント(例えば、フィルム、ロッド又はナノ/マイクロ粒子)を形成し、これを眼内投与して、事前形成光架橋インプラント(Preformed Photocrosslinked Implant:PPcI)と呼ばれる所望の薬物送達期間を提供することと、ができる。
【0086】
あるいは、本発明の組成物は、インサイチュ及び事前成形眼用装置の両方を含む眼用装置をコーティングするために、使用することができる。
【0087】
本発明のインプラントは、長方形、正方形、球形、円筒形、円形、楕円形、フィルム、ダンベル型、ロッド、及びビーズなどの任意の所望の形状であってもよいが、これらに限定されない。
【0088】
本発明のインプラントは任意の所望のサイズを有することができ、例えば、マクロ、マイクロ又はナノ粒子サイズ範囲であり得る。
【0089】
本発明の一実施形態では、眼用インプラントは、寸法の一方が、10mm未満、又は5mm未満、又は3mm未満のインプラントである。一実施形態では、インプラントは、寸法10×5×0.5mmの長方形インプラントである。一実施形態では、インプラント(ISPcI)は、10mm未満、又は5mm未満、又は3mm未満の直径の球形インプラントである。本発明の一実施形態では、眼用インプラントは、ナノ粒子又は微粒子である。
【0090】
一実施形態では、ナノ粒子の眼用インプラントは、1,000nm未満、900nm未満、750nm未満、500nm未満、又は100nm未満である。
【0091】
一実施形態では、微粒子の眼用インプラントは、1,000μm未満、900μm未満、750μm未満、500μm未満、又は25μm未満である。
【0092】
任意に、インプラントは、インサイチュ形成された眼用インプラントである。あるいは、インプラントは、予め形成された眼用インプラントである。
【0093】
本発明にかかるインサイチュ光架橋インプラント(ISPcI)は、体内に挿入されると、最終的な局所的構造を形成してふさぐものである。ISPcIが不規則な欠損を満たす能力は、これらの利点の1つである。本発明のISPcIはまた、比較的容易で低侵襲性の適用による部位特異的作用、特定の組織への局所送達、送達時間の延長、全身送達に関連する副作用の減少、並びにまた、優れた患者の快適性及びコンプライアンスを含む、追加の利点も有する。本発明のISPcIの更なる利点は、タンパク質、ペプチド又は遺伝子材料のような温度又はpHの不安定な薬物で作業する場合、問題を引き起こす可能性がある、処理中の極端なpH条件又は高温を必要としないことである。更に、生理的温度での迅速な架橋は、薬物分子を素早く捕捉することができ、長期制御された薬物放出を提供するISPcIをもたらすことができる。光架橋はまた、プロセスの開始が光源に曝露されたときにのみ引き起こされるので、自発的架橋(例えば、酵素的、自己組織化、マイケル付加)と比較して有益であり、したがって、早すぎるゲル化は、材料形成の優れた制御をもたらす問題ではない。更に、UV光は角膜架橋のために臨床的に使用されるので、UV光の短期適用は眼用途に安全であると考えられるため、安全性の問題は起こらない。重要なことに、この方法による投与は、比較的低粘度の材料の体内への注射を可能にし、次いで、これは転相によって凝固し、架橋時に薬物送達を制御する半固体デポーを形成して、短期又は長期の治療作用を提供する。
【0094】
一実施形態では、ISPcIは、本発明の眼用組成物をそれを必要とする対象に注射し、続いて、所望の期間にわたって薬物放出を制御する固体インプラントの形成を引き起こすUV光の外部源を用いて架橋することによって、形成される。
【0095】
本発明のISPcIの場合、光重合性組成物の分子量は、典型的には、100~6,000Da、200~3,000Da、又は200~1,000Daである。
【0096】
本発明の事前形成光架橋インプラント(PPcI)は、眼の前部又は眼の後部の疾患を治療するために、眼、例えば、円蓋、結膜下、前房内、基質内/角膜内、経強膜/眼周囲、強膜内、又は硝子体内、網膜下に挿入することができる。PPcIは、ロッド、フィルム、円筒形又は円形、及びマイクロ又はナノ粒子の形態を含むサイズを含むが、これらに限定されない、様々な形状で製造することができる。
【0097】
一実施形態では、PPcIナノ粒子及び微粒子は、治療剤、光重合性組成物、生分解性ポリマー、光開始剤、及び任意に放出調節剤の混合物を、水性媒体中で超音波処理することによって得られる。一実施形態では、水性媒体は、水とリン酸緩衝食塩水(PBS)との組合せである。照射は、超音波処理中、すなわちUV光下で混合物を超音波処理する間に適用することができるか、あるいは超音波処理工程後に行うことができる。
【0098】
本発明のPPcIは、薬物放出を制御し、及び/又はバースト放出を排除するように構成することができる、高い架橋密度及び/又はタイトなポリマーネットワーク構造の利点を有する。
【0099】
本発明のPPcIは、異なる放出プロファイル又は放出速度で2つ以上の薬物又は同じ薬物の負荷を可能にする単層及び/又は多層を有するように、製造することができる。
【0100】
更に、インプラントの分解速度は本発明のISPcIよりもPPcIの方が遅くすることができ、治療される特定の疾患又は障害の機能において制御することができる。
【0101】
本発明のPPcIの場合、光重合性ポリマーの平均分子量は、典型的には、100~300,000Da、200~100,000Da、200~50,000Da、200~20,000Da、又は200~10,000Daである。
【0102】
一実施形態では、本発明は、PLGA/PEGDA PPcIである。別の実施形態では、本発明は、PLGA/PEGDA ISPcIである。
【0103】
一実施形態では、生分解性ポリマーは、光重合性組成物のマトリックス内に本質的に含まれる。任意に、生分解性ポリマーは、混合時にゲルを形成する光重合性組成物のマトリックス内に本質的に含まれる。一実施形態では、光重合性ポリマーは、光開始剤及び生分解性ポリマー並びに治療剤(複数可)の存在下において架橋される。一実施形態では、生分解性ポリマーは事実上疎水性であり、光重合性ポリマーは事実上親水性である。一実施形態では、複合インプラントの架橋度が、治療剤の放出の速度及び程度を支配する。
【0104】
本発明の別の態様は、少なくとも20w/w%の治療剤と、5~75w/w%の架橋ポリマーマトリックスと、を含む眼用インプラントに関し、0.1~40w/w%の生分解性ポリマーは、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリヒドロキシブチレートを含むポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(DL-ラクチド)(PDL)、ポリ(D-ラクチド)、ラクチド/カプロラクトンコポリマー、ポリ-L-ラクチド-コ-カプロラクトン(PLC)、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択され、
(a)架橋ポリマーマトリックスが、ポリアルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールメタクリレート、及びポリアルキレングリコールジメタクリレートのフラグメント又はモノマー、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、光重合性組成物を架橋することによって得られること;と、
(b)治療剤及び生分解性ポリマーが、ポリマーマトリックスに埋め込まれていることと、を特徴とする。
【0105】
本明細書で使用される場合、「埋め込まれた(embedded)」とは、治療剤が架橋ポリマーマトリックス内に本質的に捕捉され、架橋ポリマーマトリックス及び/又は生分解性ポリマー中に均一に分散又は溶解されることを意味する。
【0106】
本発明の組成物及びインプラントでは、UV架橋時間を変えることにより、薬物放出の速度及び持続時間を制御することができる。いくつかの実施形態では、UV架橋時間の増加は、薬物放出の減少を引き起こす。更に、光開始剤の濃度を変えることにより、薬物放出の速度及び持続時間を制御することができる。更に、UV架橋時間及び光開始剤の濃度の両方を変えることにより、薬物放出の速度及び持続時間を制御することができる。一実施形態では、生分解性ポリマー(PLGAなど)の濃度を低下させると、薬物放出速度が増加する。一実施形態では、細孔形成剤(例えば、MgCO3)を添加すると、薬物放出速度が増加する。一実施形態では、より長いUV架橋時間及びより高い濃度の光開始剤により、より長期間にわたって薬物放出を持続することができる。一実施形態では、薬物放出は、1日、2日、1週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、又は9ヶ月を超える期間持続し得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、本発明のISPcI及びPPcIの遅い分解速度により、ペプチド及びタンパク質などの感受性分子は保護される。
【0108】
いくつかの実施形態では、バースト放出は、UV架橋時間を変え、処方物組成、インプラント体積を変えることによって、排除又は制御することができる。
【0109】
一実施形態では、本発明は、バースト放出のない又は低いPPcIである。一実施形態では、本発明は、薬物拡散を有意に遅らせる高い架橋密度を有するPPcIである。
【0110】
一実施形態では、本発明の眼用インプラントは、200μg~2000μg/μm3、1000μg~2000μg/μm3、1200μg~1800μg/μm3、1200μg~1500μg/μm3の濃度で治療剤を含む。
【0111】
本明細書に記載のインプラント及び組成物のいずれかは、本明細書に記載の本発明の方法のいずれかにおける使用に適している。
【0112】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象の眼の疾患又は障害を治療する方法であって、本発明の組成物又はインプラントを対象の眼領域に投与することを含む、方法である。
【0113】
一実施形態では、本発明は、それを必要とする対象の眼の疾患又は障害の治療に使用するための本発明の組成物又はインプラントである。
【0114】
本明細書で使用される場合、「眼領域」とは、対象の眼の内側、外側、又は隣接する領域である。一実施形態では、眼領域は、強膜(強膜内)、強膜外(経強膜)、硝子体、脈絡膜、角膜、角膜実質、前房内、房水、水晶体、円蓋、又は視神経である。
【0115】
一実施形態では、組成物及びインプラントは、硝子体内、結膜下、眼球周囲、テノン嚢下、又は球後注射を含む注射によって、角膜上に投与することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、インプラントは、外科手技により投与される。いくつかの実施形態では、インプラントは、外科的移植後に、接着又は縫合により定位置に固定される。
【0117】
用語「対象」とは、動物(例えば、ニワトリ、ウズラ若しくはシチメンチョウなどの鳥、又は哺乳動物)、具体的には非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ラット、ネコ、イヌ及びマウス)及び霊長類(例えば、サル、チンパンジー及びヒト)を含む「哺乳動物」、より具体的にはヒトを指す。一実施形態では、対象は、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタ又はヒツジ)又はペット(例えば、イヌ、ネコ、モルモット又はウサギ)などの非ヒト動物である。別の実施形態では、対象は、「ヒト」である。
【0118】
本明細書で使用される場合、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」及び「治療すること(treating)」とは、本発明の組成物又はインプラントの投与から生じる、疾患、障害若しくは状態の進行、重症度及び/若しくは持続時間の減少若しくは回復、又は疾患、障害若しくは状態の1つ以上の症状(具体的には、1つ又は複数の識別可能な症状)の回復を含む、治療的処置を指す。特定の実施形態では、治療的処置は、疾患、障害又は状態の少なくとも1つの測定可能な身体的パラメータの回復を含む。他の実施形態では、治療的処置は、例えば識別可能な症状の安定化による物理的状態、例えば身体的パラメータの安定化による生理学的状態のいずれか、又はこれら両方による状態の進行の阻害を含む。他の実施形態では、治療的処置は、疾患、障害又は状態の軽減又は安定化を含む。
【0119】
一実施形態では、疾患又は障害は、疼痛、炎症、感染症、白内障、アレルギー、加齢黄斑変性(AMD)、糖尿病性網膜症(DR)、黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫(DME)、サイトメガロウイルス(CMV)、網膜炎、網膜色素変性症、ブドウ膜炎、ドライアイ症候群、角膜炎、緑内障、眼瞼炎、眼瞼結膜炎(blephariconjunctivtis)、高眼圧症、結膜炎、シスチン症、硝子体黄斑癒着、角膜血管新生、角膜潰瘍及び術後の眼炎症/創傷治癒である。
【0120】
以下の番号付けされた項目のリストは、本発明に含まれる実施形態である。
【0121】
1.眼用組成物であって、
(a)少なくとも20w/w%の治療剤;と、
(b)ポリアルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールメタクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレートのフラグメント又はモノマー、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、5~75w/w%の光重合性組成物;と、
(c)0.1~40w/w%の生分解性ポリマーが、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリヒドロキシブチレートを含むポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(DL-ラクチド)(PDL)、ポリ(D-ラクチド)、ラクチド/カプロラクトンコポリマー、ポリ-L-ラクチド-コ-カプロラクトン(PLC)、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択されること;と、
(d)光開始剤と、
を含む、眼用組成物。
【0122】
2.該治療剤が、20~70w/w%の量で存在する、実施形態1に記載の眼用組成物。
【0123】
3.該治療剤が、40~70w/w%の量で存在する、実施形態2に記載の眼用組成物。
【0124】
4.該治療剤が、50~70w/w%の量で存在する、実施形態3に記載の眼用組成物。
【0125】
5.光重合性組成物が、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレートのフラグメント又はモノマー、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、実施形態1~4のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【0126】
6.該光重合性組成物が、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレート、及びポリプロピレングリコールジメタクリレート、又はこれらの混合物、コポリマー若しくはブロックコポリマーからなる群から選択される、実施形態1~5のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【0127】
7.該光重合性組成物が、ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA)である、実施形態6に記載の眼用組成物。
【0128】
8.該生分解性ポリマーが、5~10w/w%の量で存在する、実施形態1~7のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【0129】
9.該生分解性ポリマーが、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリ(DL-ラクチド)(PDL)、及びラクチド/カプロラクトンコポリマー(PLC)である、実施形態1~8のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【0130】
10.該生分解性ポリマーが、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)である、実施形態9に記載の眼用組成物。
【0131】
11.該光開始剤が、ヒドロキシケトン光開始剤、アミノケトン光開始剤、ヒドロキシケトン/ベンゾフェノン光開始剤、ベンジルジメチルケタール光開始剤、フェニルグリオキシレート光開始剤、アシルホスフィンオキシド光開始剤、アシルホスフィンオキシド/アルファヒドロキシケトン光開始剤、ベンゾフェノン光開始剤、リビチルイソアロキサジン光開始剤、若しくはフェニルグリオキシレート光開始剤、又はこれらの任意の組合せである、実施形態1~10のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【0132】
12.該光開始剤が、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン(DMPA)、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド(DPPO)、又はリボフラビンである、実施形態11に記載の眼用組成物。
【0133】
13.放出調節剤を更に含む、実施形態1~12のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【0134】
14.該放出調節剤が、キトサンを含む多糖類及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含むセルロース系材料;ヒアルロン酸;ポロキサマー;ポリエチレングリコール(PEG)を含むポリエーテル;ゼラチン;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール、ラクトース、マルトース、グルコース、マンニトール、塩化ナトリウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、アガロース、スクロース、並びにこれらの混合物から選択される、実施形態13に記載の眼用組成物。
【0135】
15.該放出調節剤が、ポリエチレングリコール(PEG)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、又はこれらの混合物である、実施形態14に記載の眼用組成物。
【0136】
16.該組成物が、いかなる放出調節剤も含有しない、実施形態1~12のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【0137】
17.眼用インプラントの調製に使用するための、実施形態1~16のいずれか一項に記載の眼用組成物。
【0138】
18.
(a)該治療剤を溶媒中に溶解して溶液を得る工程と、
(b)工程(a)で得られた該溶液を、該重合性組成物、該生分解性ポリマー、該光開始剤、及び場合により該放出調節剤と混合する工程と、を含む、実施形態1~17のいずれか一項に記載の眼用組成物を作製する方法。
【0139】
19.該溶媒が、水系溶媒である、実施形態18に記載の方法。
【0140】
20.眼用インプラントを作製する方法であって、
(a)請求項1~17のいずれか一項に記載の眼用組成物を提供すること;と、
(b)該眼用インプラントを形成するために、1秒~60分の間に200~550nmの波長の光を該眼用組成物に照射すること;と、を含む、方法。
【0141】
21.工程(a)で提供される該眼用組成物が、工程(b)に従ってそれに照射をする前に、対象の眼領域へ投与される、実施形態20に記載の方法。
【0142】
22.工程(b)で形成された該眼用インプラントが、対象の眼領域に投与される、実施形態20に記載の方法。
【0143】
23.実施形態20~22のいずれか一項に記載の方法によって得ることができる、眼用インプラント。
【0144】
24.眼用インプラントであって、少なくとも20w/w%の治療剤と、5~75w/w%の架橋ポリマーマトリックスと、ラクチド/グリコリドコポリマー(ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PLGA)を含む)、ポリ(L-ラクチド)(PLA)、ポリヒドロキシブチレートを含むポリヒドロキシアルカノエート、ポリグリコール酸(PGA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(DL-ラクチド)(PDL)、ポリ(D-ラクチド)、ラクチド/カプロラクトンコポリマー、ポリ-L-ラクチド-コ-カプロラクトン(PLC)、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、0.1~40w/w%の生分解性ポリマーと、を含み、
(a)架橋ポリマーマトリックスが、ポリアルキレングリコールモノアクリレート、ポリアルキレングリコールジアクリレート、ポリアルキレングリコールメタクリレート、ポリアルキレングリコールジメタクリレートのフラグメント又はモノマー、並びにこれらの混合物、コポリマー及びブロックコポリマーからなる群から選択される、光重合性組成物を架橋することによって得られること;と、
(b)治療剤及び生分解性ポリマーが、ポリマーマトリックスに埋め込まれていることと、を特徴とする、眼用インプラント。
【0145】
25.マクロ、マイクロ又はナノ粒子である、実施形態23又は24に記載の眼用インプラント。
【0146】
26.該治療剤が、眼用インプラント1μm3当たり200μg~2000μgの濃度で存在する、実施形態23~25のいずれか一項に記載の眼用インプラント。
【実施例0147】
実施例1:ベバシズマブ(BEZ)、分子量150kDa
1.1 材料
ポリ(エチレングリコール)ジアクリレート(Mn=750、PEGDA 700)、Irgacure 2959(1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパノン)、リン酸緩衝食塩水(phosphate-buffered saline:PBS)溶液錠剤、及びヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC、10,000Da)は、Sigma(Dorset、英国)から購入した。ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)(PURASORB(登録商標)PDLG 7502A、75:25、PLGA 75/25)を、Corbion Purac Biomaterials(Gorinchem、オランダ)から得た。
【0148】
ベバシズマブ(BEZ)(Avastin(登録商標))は、地元薬局から購入した(スイスのRoche製;各バイアルは4mL中100mgのBEZ、すなわち25mg/mLからなる)。
【0149】
1.2 BEZ負荷インプラントの調製
1.2.1 PPcIインプラントF18(30w/w%のBEZ及び30w/w%のHPMC)の調製
50mgのPLGA 7502(75/25)を650mgのPEGDA 700中に溶解して、溶液Aを調製した。6mgのIrgacure 2559を1mLのPBS(0.01M、pH7.4)中に溶解して、溶液Bを調製した。50mgのHPMC 10,000Daを1mLの溶液B中に溶解して、溶液Cを調製した。52.5mgの溶液Cを2mLエッペンドルフチューブに入れた。続いて、15mgのBEZをエッペンドルフチューブに加え、撹拌子を用いて250rpmで30秒間撹拌した。このようにして得られた混合物を、4~7℃で30分間放置して溶解させ、続いて2000rpmで1分間遠心分離して、気泡を除去した。このようにして得られた混合物に、32.5mgの溶液A、10μLの溶液Bを添加し、続いて250rpmで30分間撹拌した。次いで、これを2000rpmで1分間遠心分離して気泡を除去し、続いて250rpmで更に10分間撹拌した。最終的に得られた混合物をシリコンチューブ(内径:0.635mm)中に取り出し、ライトハンマー(LightHammer(登録商標)6、Heraeus Noblelight Fusion UV Inc.、Gaithersburg、MD、米国)を用いて架橋した。UV光の強度(365nm)を50%に設定し、シリコーンチューブを15秒間UV光に曝露した(5回)。棒状のインプラントをシリコンチューブから取り出し、25℃で4時間真空乾燥させた。乾燥したインプラントを5mmの長さに切断した。
【0150】
得られたインプラントの平均直径は0.5mm、長さは5mmであった。
【0151】
1.2.2 PPcIインプラントF19(50w/w%のBEZ)の調製
50mgのPLGA 7502(75/25)を450mgのPEGDA 700中に溶解して、溶液Aを調製した。6mgのIrgacure 2559を1mLのPBS(0.01M、pH7.4)中に溶解して、溶液Bを調製した。62.5μLの溶液Bを2mLエッペンドルフチューブに入れた。続いて、25mgのBEZをエッペンドルフチューブに加え、撹拌子を用いて250rpmで30秒間撹拌した。このようにして得られた混合物を、4~7℃で30分間放置して溶解させ、続いて2000rpmで1分間遠心分離して、気泡を除去した。このようにして得られた混合物に、25mgの溶液Aを添加し、続いて250rpmで30分間撹拌した。次いで、これを2000rpmで1分間遠心分離して気泡を除去し、続いて250rpmで更に10分間撹拌した。最終的に得られた混合物をシリコンチューブ(内径:0.635mm)中に取り出し、ライトハンマー(LightHammer(登録商標)6、Heraeus Noblelight Fusion UV Inc.、Gaithersburg、MD、米国)を用いて架橋した。UV光の強度(365nm)を50%に設定し、シリコーンチューブを15秒間UV光に曝露した(5回)。棒状のインプラントをシリコンチューブから取り出し、25℃で4時間真空乾燥させた。乾燥したインプラントを5mmの長さに切断した。得られたインプラントの直径は0.4997+/-0.002mm、長さは5mmであった。
【0152】
1.2.3 PPcIインプラントF7(6w/w%のBEZ及び4w/w%のHPMC)の調製
20mgのPLGA 7502(75/25)を160mgのPEGDA 700中に溶解して、溶液Aを調製した。
6mgのIrgacure 2559を1mLのPBS(0.1M、pH7.4)中に溶解して、溶液Bを調製した。
80mgのHPMC 10,000Daを1mLの溶液B中に溶解して、溶液Cを調製した。
【0153】
27.5mgの溶液Cを2mLエッペンドルフチューブに入れた。続いて、3mgのBEZをエッペンドルフチューブに加え、撹拌子を用いて250rpmで30秒間撹拌した。このようにして得られた混合物を、4~7℃で30分間放置して溶解させ、続いて2000rpmで1分間遠心分離して、気泡を除去した。このようにして得られた混合物に、45.0mgの溶液Aを添加し、続いて250rpmで30分間撹拌した。次いで、これを2000rpmで1分間遠心分離して気泡を除去し、続いて250rpmで更に10分間撹拌した。最終的に得られた混合物をシリコンチューブ(内径:0.635mm)中に取り出し、ライトハンマー(LightHammer(登録商標)6、Heraeus Noblelight Fusion UV Inc.、Gaithersburg、MD、米国)を用いて架橋した。UV光の強度(365nm)を50%に設定し、シリコーンチューブを15秒間UV光に曝露した(5回)。棒状のインプラントをシリコンチューブから取り出し、25℃で4時間真空乾燥させた。乾燥したインプラントを10mmの長さに切断した。
【0154】
得られたインプラントの平均直径は0.5mm、長さは10mmであった。
【0155】
1.3 インビトロ薬物放出試験(PPcIインプラントF7、F18、F19)
薬物放出研究のために、各PPcIインプラントF7、F18及びF19を、2mLのPBS(pH7.4、0.05%NaN3)を含有するガラスバイアルに入れた。ガラスバイアルを37℃の静置インキュベータに入れた。サンプリングとこれに続くPBS放出媒体の完全な置換を、1日目及びその後毎週、すなわち7日目、14日目、21日目、及び28日目などに行った。全ての実験を3連で行った。PBS試料中の放出された薬物分子の濃度を、以下に記載されるように分析した。
【0156】
1.4 BEZのSEC-HPLC法
ベバシズマブ(BEZ)試料の分析は、Phenomenex(登録商標)BioZen(商標)SEC-2カラム(長さ150mm、内径4.6mm、及び粒径1.8μm)及びPhenomenex(登録商標)BioZen(商標)SEC-2 0.46mm SecurityGuard Ultra Cartridge(Phenomenex、Torrance、米国)を用いた蛍光検出によるSEC-HPLC(Agilent 1260 Infinity Quaternary System)を使用して行った。BEZ試料を、35mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.8、300mM NaCl)の移動相を用いて、10μLの注入量及び0.5mL/分の流速で、アイソクラティックモード(isocratic mode)にて分析した。カラム温度を25℃に維持した。蛍光検出器は、励起波長280nm、発光波長340nmに設定した。
【0157】
1.5 BEZのELISA法
サンドイッチELISA技術を使用して、放出されたBEZの生物活性を判定した。洗浄緩衝液は、0.05w/w%のTween20を含む0.01M PBSであった。ブロッキング緩衝液は、0.01M PBS、0.05w/w%Tween 20、及び1w/w%BSAから構成された。
【0158】
一次コーティング抗体である組換えヒト血管内皮増殖因子(VEGF165)を、0.1M重炭酸塩緩衝液(pH9.6)中に1:5000で希釈した。この組換えヒトVEGF165のアリコート(100μL)を96ウェルプレートの各ウェルに分注した。プレートをParafilm(登録商標)で覆い、4℃で16時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄緩衝液(200μL/ウェル)で3回洗浄して、未結合の抗体を除去した。次いで、200μLのブロッキング緩衝液を各ウェルに加え、プレートを25℃で2時間インキュベートした。この後、プレートを洗浄緩衝液(200μL/ウェル)で3回洗浄し、100μL量のBEZ試料を各ウェルに分注し、各試料を三連で分析し、新たに調製した標準濃度曲線をプレーティングし(5~400ng/mL)、25℃で1.5時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄緩衝液(200μL/ウェル)で3回洗浄した。これに続いて、100μLの二次抗体(ブロッキング緩衝液中で1:10,000に希釈したビオチン化BEGF165抗体)を各ウェルに添加し、25℃で1時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄緩衝液(200μL/ウェル)で3回洗浄した。PBS中で1:5000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(Strep-HRP)コンジュゲートである100μLのストレプトアビジンを、各ウェルに分注し、プレートを25℃で暗所で30分間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液(200μL/ウェル)で3回洗浄した。抗体結合を検出するために、100μLの基質TMB(3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン)を各ウェルに添加し、25℃で暗所において45分間インキュベートし、100μLの4.0M塩酸を各ウェルに添加することによって反応を停止させた。光学密度は、FLUOstar(登録商標)Omegaマルチモードマイクロプレートリーダ(BMG LABTECH、Offenburg、ドイツ)を用いて450nmで測定した。
【0159】
以下の表は、インプラントF7、F18及びF19のパラメータをまとめたものである。
【0160】
*括弧内の値は、1日目のBEZの放出パーセンテージを表す。
【0161】
BEZの治療関連濃度は50ng/mLであると報告されている(Yu Y、Lau LCM、Lo AC、Chau Y、Injectable Chemically Crosslinked Hydrogel for the Controlled Release of Bevacizumab in Vitreous:A 6 Month In Vivo Study.、Transl Vis Sci Technol.(2015年)、第4巻第2号第5頁、Doi:10.1167/tvst.4.2.5)。ヒト硝子体液の体積として4mLを考慮すると、ヒトの眼のBEZの治療レベルは0.2μgである。BEZの上限は、片眼に対して1.25mg、すなわち1250μgである(Edith Poku、John Rathbone、Emma Everson-Hock、Munira Essat、Ruth Wong、Abdullah Pandor、Allan Wailoo、Bevacizumab In Eye Conditions:Issues Related To Quality,Use,Efficacy and Safety、School of Health and Related Research、University of Sheffield、2012年8月)。
【0162】
図1~
図3は、本発明にかかるインプラントF18及びF19が、長期間(84日間)にわたって治療的に許容される用量の治療剤を送達することができることを示す。インプラントF18及びF19は、比較用インプラントF7(5mm対10mm)よりも50%短い長さであり、したがって、これらにより患者の認容性、耐容性及び快適性を高めることが可能になる。更に、F18インプラントから放出されたBEZは、ELISAによって推定されるように、84日間にわたって85%を超えるその生物活性を維持した。
【0163】
実施例2:異なる負荷のベバシズマブインプラント
【0164】
【0165】
2.1 B1及びB4インプラントの調製
25mg(B1)又は50mg(B4)のPLGA 7502(75/25)を、425mg(B1)又は450mg(B4)のPEGDA 700(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)中に溶解して、溶液Aを調製した。6mgのIrgacure 2959(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)を1mLのPBS(0.01M、pH7.4)中に溶解して、溶液Bを調製した。
【0166】
25μLの溶液Bを2mLエッペンドルフチューブに入れた。続いて、5mg(B1)又は25mg(B4)のBEZをエッペンドルフチューブに加え、撹拌子を用いて250rpmで30秒間撹拌した。このようにして得られた混合物を、4~7℃で30分間放置して溶解させ、続いて2000rpmで1分間遠心分離して、気泡を除去した。得られた混合物に、45mg(B1)又は25mg(B4)の溶液Aを添加し、続いて250rpmで30分間撹拌した。次いで、これを2000rpmで1分間遠心分離して気泡を除去し、続いて250rpmで更に10分間撹拌した。最終的に得られた混合物をシリコンチューブ(内径:0.635mm、Polymer System Technology、英国)中に取り出し、ライトハンマー(LightHammer(登録商標)6、Heraeus Noblelight Fusion UV Inc.、Gaithersburg、MD、米国)を用いて架橋した。UV光の強度(365nm)を50%に設定し、シリコーンチューブを15秒間UV光に曝露した(5回)。棒状のインプラントをシリコンチューブから取り出し、25℃で4時間真空乾燥させた。乾燥したインプラントを6.5mmの長さに切断した。
【0167】
2.2 インビトロ薬物放出設定
インビトロ放出は、放出培地として0.05%NaN2(pH7.4±0.2)を有する1mLのPBS(リン酸緩衝食塩水)を含有するエッペンドルフチューブ内に、B1のインプラント1つ(1)を入れることによって行った。同じインビトロ放出をインプラントB4についても行った。全ての実験を3連で行った。インプラントを含有するエッペンドルフチューブをインキュベータに入れ、37℃及び0rpmでインキュベートした(MINI/100/Fオーブン、Genlab Ltd.、英国)。サンプリングとこれに続くPBS培地の完全な置換を、1日目、3日目及びその後毎週、すなわち7日目、14日目、21日目、及び28日目などに行った。PBS試料中の放出された薬物分子の濃度を、以下の項目で記載されるように分析した。
【0168】
2.3 試料分析
ベバシズマブのアッセイは、クォータナリポンプ、オートサンプラ、可変波長検出器(variable wavelength detector:VWD)、及び蛍光検出器(Agilent、英国)からなるAgilent HPLC infinity IIシステムで行った。分離はPhenomenex(登録商標)bioZen(商標)SEC-2カラム(1.8μm、4.6×150mm)(Phenomenex、英国)によって達成した。クロマトグラフィ条件は、35mMリン酸ナトリウム緩衝液及び300mM塩化ナトリウム(pH6.8)で構成される水性移動相を含み、0.5mL/分の流速で実行し、蛍光検出器はそれぞれ280及び340nmの励起波長及び発光波長に設定した。
【0169】
図6及び
図7は、それぞれ累積パーセンテージ及びμgでの1日当たりの放出として表したB1及びB4のインビトロ放出を示す。これらの図から分かるように、本発明にかかるインプラントB4は、放出を開始した直後に許容できないバースト効果を引き起こすことなく、少なくとも56日間にわたって治療的に許容される用量の持続的放出を可能にする。
【0170】
実施例3 Ovalbumin、分子量42.7kDa
【0171】
【0172】
3.1 O1、O2、O3及びO4インプラントの調製
5mgのPLGA 7502、すなわち75/25(Corbion Purac Biomaterials、Gorinchem、オランダ)を、85mg(O1)又は75mg(O2)又は65mg(O3)又は45mg(O4)のPEGDA 700Da(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)中に溶解して、溶液Aを調製した。5mgのIrgacure 2559(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)を1mLのPBS中に溶解して、溶液Bを調製した。ニワトリ卵白由来の10mg(O1)又は20mg(O2)又は30mg(O3)又は40mg(O4)のアルブミン、すなわちOvalbumin(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)をエッペンドルフチューブ中60μLの溶液Bに入れて、溶液Cを調製した。90mg(O1)又は80mg(O2)又は70mg(O3)又は50mg(O4)の溶液Aをエッペンドルフチューブに加えた。60μLの溶液Cを、900rpmで15分間連続的に撹拌しながらエッペンドルフチューブ壁を介して混合物へゆっくり添加した。最終的に得られた混合物を、内径0.635mmのシリコンチューブ(ポリマーシステムテクノロジー、英国)に取り出し、UV光(LightHammer(登録商標)6、Heraeus Noblelight Fusion UV Inc.、Gaithersburg、MD、米国)を用いて架橋した。UV光の強度を50%に設定し、シリコーンチューブをUV光に15秒間曝露した(すなわち、合計5回の実行)。インプラントを次いでシリコンチューブから取り出し、25℃で4時間真空乾燥させた。棒状のインプラントを各7.5mmの長さで切断した。
【0173】
3.2 インビトロ薬物放出設定
インビトロ放出は、放出培地として0.05%NaN2(pH7.4±0.2)を有する2mLのPBS(リン酸緩衝食塩水)を含有するガラスバイアル内に、O1のインプラント2つ(2)を入れることによって行った。同じインビトロ放出をインプラントO2、O3及びO4についても行った。全ての実験を3連で行った。インプラントを含有するガラスバイアルをインキュベータに入れ、37℃及び0rpmでインキュベートした(MINI/100/Fオーブン、Genlab Ltd.、英国)。サンプリングとこれに続くPBS培地の完全な置換を、1日目、3日目及びその後毎週、すなわち7日目、14日目、21日目、及び28日目などに行った。PBS試料中の放出された薬物分子の濃度を、以下の項目で記載されるように分析した。
【0174】
3.3 試料分析
Ovalbumin(OVA)インビトロ薬物放出試料の分析は、Phenomenex(登録商標)Biosep-SEC-S300カラム(長さ300mm、内径7.8mm、粒径5μm)及びPhenomenex(登録商標)SecurityGuard Cartridges GFC 3000の内径4×3.0mm(Phenomenex、Torrance、米国)を用いたUV検出によるSEC-HPLC(Agilent 1260 Infinity Quaternary System)を使用して行った。20μLの試料を、27mMリン酸緩衝液及び150mM NaCl pH6.35で、1.0mL/分の流速にて14分間溶出した。検出は214nmでUV検出器によって行った。
【0175】
図8は、累積放出パーセンテージ率として表されたO1、O2、及びO4のインビトロ放出を示す。
【0176】
これらの図から分かるように、本発明にかかるインプラントO2及びO4は、薬物の放出を開始した直後に許容できないバースト効果を引き起こすことなく、少なくとも196日間にわたって治療的に許容される用量の持続的放出を可能にする。
【0177】
実施例4:異なるインプラント長からのベバシズマブの放出。
【0178】
【0179】
4.1 BL1及びBS4インプラントの調製
調製方法は、インプラントBL1を10mmの長さに切断し、インプラントBS4を3mmの長さに切断したことを除いて、B1及びB4インプラント(実施例2.1)と同様である。
【0180】
4.2 インビトロ薬物放出設定
インビトロ放出は、放出培地として0.05%NaN2(pH7.4±0.2)を有する1mLのPBS(リン酸緩衝食塩水)を含有するエッペンドルフチューブ内に、BL1のインプラント1つ(1)を入れることによって行った。BS4についてのインビトロ放出は、放出培地として0.05%NaN2(pH7.4±0.2)を有する1mLのPBS(リン酸緩衝食塩水)を含有するエッペンドルフチューブ内に、インプラント2つ(2)を入れることによって行った。全ての実験を3連で行った。BL1インプラントを含有するエッペンドルフチューブ及び2つ(2)のBS4インプラントを含有するエッペンドルフチューブをインキュベータに入れ、37℃及び0rpmでインキュベートした(MINI/100/Fオーブン、Genlab Ltd.、英国)。サンプリングとこれに続くPBS培地の完全な置換を、1日目、3日目及びその後毎週、すなわち7日目、14日目、21日目、及び28日目などに行った。PBS試料中の放出された薬物分子の濃度を、実施例2.3に記載されるように分析した。
【0181】
4.3 試料分析
試料を実施例2.3の下で分析した。
【0182】
図9及び
図10は、それぞれ累積パーセンテージ及びμgでの1日当たりの放出として表したB1、BL1及びBS4のインビトロ放出を示す。これらの図から分かるように、本発明にかかるインプラントBS4は、薬物の放出を開始した直後に許容できないバースト効果を引き起こすことなく、少なくとも56日間にわたって治療的に許容される用量の持続的放出を可能にする。BS4は、B1及びBL1よりも更にいっそう短く、したがって、より良好な患者コンプライアンスへ実質的に寄与する。
【0183】
実施例5:インプラント幅及びベバシズマブの放出、分子量150kDa。
【0184】
【0185】
5.1 FN4インプラントの調製
50mgのPLGA 7502(75/25)(Corbion Purac Biomaterials、Gorinchem、オランダ)を450mgのPEGDA 700(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)中に溶解し、溶液Aを調製した。6mgのIrgacure 2959(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)を1mLのPBS(0.01M、pH7.4)中に溶解して、溶液Bを調製した。62.5μLの溶液Bを2mLのエッペンドルフチューブに入れ、続いて25mgのBEZを加えた。
【0186】
混合物を撹拌子を用いて250rpmで30秒間撹拌した。このようにして得られた混合物を、4~7℃で30分間放置して溶解させ、続いて2000rpmで1分間遠心分離して、気泡を除去した。得られた混合物に、25mgの溶液Aを添加し、続いて250rpmで30分間撹拌した。次いで、これを2000rpmで1分間遠心分離して気泡を除去し、続いて250rpmで更に10分間撹拌した。最終的に得られた混合物をシリコンチューブ(内径:0.305mm)中に取り出し、ライトハンマー(LightHammer(登録商標)6、Heraeus Noblelight Fusion UV Inc.、Gaithersburg、MD、米国)を用いて架橋した。UV光の強度(365nm)を50%に設定し、シリコーンチューブを15秒間UV光に曝露した(5回)。棒状のインプラントをシリコンチューブから取り出し、25℃で4時間真空乾燥させた。乾燥したインプラントを6.5mmの長さに切断した。
【0187】
5.2 インビトロ薬物放出設定
インビトロ放出は、放出培地として0.05%NaN2(pH7.4±0.2)を有する1mLのPBS(リン酸緩衝食塩水)を含有するエッペンドルフチューブ内に、FN4のインプラント4つ(4)を入れることによって行った。全ての実験を3連で行った。インプラントを含有するエッペンドルフチューブをインキュベータに入れ、37℃及び0rpmでインキュベートした(MINI/100/Fオーブン、Genlab Ltd.、英国)。サンプリングとこれに続くPBS培地の完全な置換を、1日目、3日目及びその後毎週、すなわち7日目、14日目、21日目、及び28日目などに行った。PBS試料中の放出された薬物分子の濃度を、以下の項目で記載されるように分析した。
【0188】
5.3試料分析
試料を実施例2.3の下で分析した。
【0189】
図11及び
図12は、それぞれ累積パーセンテージ及びμgでの1日当たりの放出として表したB1、BL1及びFN4のインビトロ放出を示す。これらの図から分かるように、本発明にかかるインプラントFN4は、薬物の放出を開始した直後に許容できないバースト効果を引き起こすことなく、少なくとも56日間にわたって治療的に許容される用量の持続的放出を可能にする。FN4は、B1及びBL1よりも更にいっそう薄く、したがって、より良好な患者コンプライアンスへ実質的に寄与する。
【0190】
実施例6:ベバシズマブの放出に対する細孔形成/放出調節剤の効果、分子量150kDa
【0191】
【0192】
6.1 FN5の調製
50mgのPLGA 7502(75/25)(Corbion Purac Biomaterials、Gorinchem、オランダ)を600mgのPEGDA 700(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)中に溶解し、溶液Aを調製した。6mgのIrgacure 2959(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)を1mLのPBS(0.01M、pH7.4)中に溶解して、溶液Bを調製した。50mgのHPMC(10,000Da)(Sigma Aldrich、Dorset、英国)を1mLの溶液B中に溶解して、溶液Cを調製した。52.5μLの溶液Cを2mLエッペンドルフチューブに入れた。続いて、15mgのBEZをエッペンドルフチューブに加え、撹拌子を用いて250rpmで30秒間撹拌した。このようにして得られた混合物を、4~7℃で30分間放置して溶解させ、続いて2000rpmで1分間遠心分離して、気泡を除去した。このようにして得られた混合物に、30mgの溶液A及び10μLの溶液Bを添加し、続いて250rpmで30分間撹拌した。次いで、これを2000rpmで1分間遠心分離して気泡を除去し、続いて250rpmで更に10分間撹拌した。最終的に得られた混合物をシリコンチューブ(内径:0.305mm)中に取り出し、ライトハンマー(LightHammer(登録商標)6、Heraeus Noblelight Fusion UV Inc.、Gaithersburg、MD、米国)を用いて架橋した。UV光の強度(365nm)を50%に設定し、シリコーンチューブを15秒間UV光に曝露した(5回)。棒状のインプラントをシリコンチューブから取り出し、25℃で4時間真空乾燥させた。乾燥したインプラントを6.5mmの長さに切断した。
【0193】
6.2 インビトロ薬物放出設定
インビトロ放出は、放出培地として0.05%NaN2(pH7.4±0.2)を有する1mLのPBS(リン酸緩衝食塩水)を含有するエッペンドルフチューブ内に、FN5のインプラント4つ(4)を入れることによって行った。全ての実験を3連で行った。インプラントを含有するエッペンドルフチューブをインキュベータに入れ、37℃及び0rpmでインキュベートした(MINI/100/Fオーブン、Genlab Ltd.、英国)。サンプリングとこれに続くPBS培地の完全な置換を、1日目、3日目及びその後毎週、すなわち7日目、14日目、21日目、及び28日目などに行った。PBS試料中の放出された薬物分子の濃度を、以下の項目で記載されるように分析した。
【0194】
6.3 試料分析
ベバシズマブのアッセイを実施例2.3に記載したように行った。
【0195】
図13は、累積パーセンテージとして表されるFN2及びFN5のインビトロ放出を示す。この図から分かるように、細孔形成剤の使用は、許容できないバースト放出を発生させることなく、経時的にBEZ活性化合物の放出プロファイルを更に改善する。
【0196】
実施例7:Ovalbuminの放出に対する細孔形成/放出調節剤の効果、分子量42.7kDa
【0197】
【0198】
7.1 O7インプラントの調製
16.7mgのPLGA 7502(75/25)(Corbion Purac Biomaterials、Gorinchem、オランダ)を183.3mgのPEGDA 700Da(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)中に溶解し、溶液Aを調製した。5mgのIrgacure 2559(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)を1mLのPBS中に溶解して、溶液Bを調製した。ニワトリ卵白凍結乾燥粉末由来の30mgのアルブミン、すなわちOvalbumin(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)をエッペンドルフチューブ中60μLの溶液Bに入れて、溶液Cを調製した。60mgの溶液A及び10mgのPEG400(Sigma Aldrich、Basingstoke、英国)をエッペンドルフチューブに添加した。60μLの溶液Cを、900rpmで15分間連続的に撹拌しながらエッペンドルフチューブ壁を介して混合物へゆっくり添加した。最終的に得られた混合物を、内径0.635mmのシリコンチューブ(ポリマーシステムテクノロジー、英国)に取り出し、UV光(LightHammer(登録商標)6、Heraeus Noblelight Fusion UV Inc.、Gaithersburg、MD、米国)を用いて架橋した。UV光の強度を50%に設定し、シリコーンチューブをUV光に15秒間曝露した(すなわち、合計5回の実行)。インプラントを次いでシリコンチューブから取り出し、25℃で4時間真空乾燥させた。棒状のインプラントを各7.5mmの長さで切断した。
【0199】
7.2 インビトロ薬物放出設定
インビトロ放出は、放出培地として0.05%NaN2(pH7.4±0.2)を有する2mLのPBS(リン酸緩衝食塩水)を含有するガラスバイアル内に、O7のインプラント2つ(2)を入れることによって行った。全ての実験を3連で行った。インプラントを含有するガラスバイアルを、40rpmの速度及び37℃である振盪オービタルインキュベータに入れた(GFL Orbital Shaking Incubator、Gesellschaft fur Labortechnik mbH、ドイツ)。サンプリングとこれに続くPBS培地の完全な置換を、1日目、3日目及びその後毎週、すなわち7日目、14日目、21日目、及び28日目などに行った。PBS試料中の放出された薬物分子の濃度を、以下の項目で記載されるように分析した。
【0200】
7.3 試料分析
Ovalbumin(OVA)インビトロ薬物放出試料の分析を実施例3.3で行った。
【0201】
図14は、累積放出パーセンテージ率として表されたO3及びO7のインビトロ放出を示す。この図から分かるように、細孔形成剤の使用は、許容できないバースト放出を発生させることなく、経時的にOvalbuminの放出プロファイルを更に改善する。