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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167351
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】ロール体の製造方法およびロール体
(51)【国際特許分類】
   B65H 75/10 20060101AFI20241126BHJP
   B65H 75/28 20060101ALI20241126BHJP
   B65H 19/28 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
B65H75/10
B65H75/28
B65H19/28 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024149937
(22)【出願日】2024-08-30
(62)【分割の表示】P 2020118419の分割
【原出願日】2020-07-09
(31)【優先権主張番号】P 2019127551
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020007594
(32)【優先日】2020-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 雅允
(72)【発明者】
【氏名】大石 恵
(72)【発明者】
【氏名】秋山 亮
(72)【発明者】
【氏名】中澤 遼
(72)【発明者】
【氏名】大原 勇二
(72)【発明者】
【氏名】橋本 浩二
(72)【発明者】
【氏名】長町 隆介
(72)【発明者】
【氏名】鳥本 将宏
(72)【発明者】
【氏名】馬橋 博大
(72)【発明者】
【氏名】谷口 章
(57)【要約】      (修正有)
【課題】シートの巻き始め端部に起因する段差を有効に緩和できるロール体の製造方法およびこのようなロール体を提供する。
【解決手段】本発明の一の態様によれば、巻芯11と、巻芯11の外周面11Aに巻回された長尺状のシート12とを備えるロール体10の製造方法であって、巻芯11の幅方向に沿って巻芯11の外周面11Aに塗布材料18を塗布する工程と、シート12の長手方向の巻き始め端部12Aを外周面11Aに配置する工程と、巻芯11にシート12を巻回して、少なくとも第1隙間13に塗布材料18を充填する工程と、を備え、塗布材料18の塗布または巻き始め端部12Aの配置は、塗布材料18が巻き始め端部12Aの長手方向に位置する先端面12A1と接触または近接するように行われ、第1隙間13が、巻芯11と1周目のシート12の間に位置し、かつ先端面12A1に接する隙間である、製造方法が提供される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯と、前記巻芯の外周面に巻回された長尺状のシートとを備えるロール体の製造方法であって、
前記巻芯の幅方向に沿って前記巻芯の前記外周面に塗布材料を塗布する工程と、
前記シートの長手方向の巻き始め端部を前記外周面に配置する工程と、
前記巻芯に前記シートを巻回して、少なくとも第1隙間に前記塗布材料を充填して、第1充填部を形成する工程と、を備え、
前記塗布材料の塗布または前記巻き始め端部の配置は、前記塗布材料が前記巻き始め端部の前記長手方向に位置する先端面と接触または近接するように行われ、
前記第1隙間が、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記先端面に接する隙間であり、
前記第1充填部における前記巻芯から前記1周目の前記シートが離間する離間位置側の先端部のエッジ厚みT1が、50μm以下である、製造方法。
【請求項2】
前記エッジ厚みT1が、1.5μm以上30μm以下である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記塗布材料が、流動性を有する、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記塗布材料が、硬化性高分子組成物である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記塗布材料が、着色材料または発光材料を含んでいる、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記シートが、樹脂フィルムを有する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記シートが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、またはシクロオレフィンポリマー系樹脂を含む、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記シートの厚みが、15μm以上300μm以下である、請求項6または7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記シートが、基材と、前記基材に積層された1以上の機能層とを有する積層体である、請求項1ないし8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記シートが、光学フィルム、偏光板、または表示装置に用いられる、請求項1ないし9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
巻芯と、前記巻芯の外周面に巻回された長尺状のシートとを備えるロール体であって、
前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記1周目の前記シートの長手方向の巻き始め端部における前記長手方向に位置する先端面に接する第1隙間と、
前記第1隙間に充填され、かつ前記巻芯の幅方向に延びる第1充填部と、を備え、
前記第1充填部における前記巻芯から前記1周目の前記シートが離間する離間位置側の先端部のエッジ厚みT1が、50μm以下である、ロール体。
【請求項12】
前記エッジ厚みT1が、1.5μm以上30μm以下である請求項11に記載のロール体。
【請求項13】
前記第1充填部に連設され、かつ1周目の前記シートと2周目の前記シートの間に介在した第4介在部をさらに備える、請求項11または12に記載のロール体。
【請求項14】
前記第1充填部に連設され、かつ1周目の前記シートと2周目の前記シートの間に介在した第4介在部が存在しない場合には、前記第1充填部における前記先端面に接する位置での厚みT2に対する前記第1充填部における前記シートの前記長手方向に沿った長さL1の比が、90以上であり、前記第4介在部が存在する場合には、前記第1充填部における前記先端面に接する位置での厚みT2に対する前記第1充填部における前記シートの前記長手方向に沿った長さL1および前記第4介在部における前記シートの前記長手方向に沿った長さL2の合計の比が、90以上である、請求項11または12に記載のロール体。
【請求項15】
前記第4介在部が存在しない場合には、前記第1充填部の前記厚みT2に対する、前記シートの前記長手方向および前記巻芯の径方向を含む平面における前記巻芯の前記外周面と前記第1充填部の表面で挟まれる領域の面積S1の比が、3.0以上であり、前記第4介在部が存在する場合には、前記第1充填部の前記厚みT2に対する、前記シートの長手方向および前記巻芯の径方向を含む平面における前記巻芯の前記外周面と前記第1充填部の表面で挟まれる領域の面積S1および前記巻芯の前記外周面と前記第4介在部の表面で挟まれる領域の面積S2の合計の比が、3.0以上である、請求項14に記載のロール体。
【請求項16】
前記シートが、樹脂フィルムを有する、請求項11ないし15のいずれか一項に記載のロール体。
【請求項17】
前記シートが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、またはシクロオレフィンポリマー系樹脂を含む、請求項11ないし15のいずれか一項に記載のロール体。
【請求項18】
前記シートの厚みが、15μm以上300μm以下である、請求項16または17に記載のロール体。
【請求項19】
前記第1充填部が、着色材料または発光材料を含む、請求項11ないし18のいずれか一項に記載のロール体。
【請求項20】
前記第1充填部が、硬化性高分子組成物の硬化物を含む、請求項11ないし19のいずれか一項に記載のロール体。
【請求項21】
前記シートが、基材と、前記基材に積層された1以上の機能層とを有する積層体である、請求項11ないし20のいずれか一項に記載のロール体。
【請求項22】
前記シートが、光学フィルム、偏光板、または表示装置に用いられる、請求項11ないし21のいずれか一項に記載のロール体。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール体の製造方法およびロール体に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム等のシートは、製造効率の観点から、ある程度の量をまとめて製造し、巻芯に
巻回されて、ロール体として保存されることが多い。このようなロール体においては、シ
ートの巻き始め端部に起因して段差が生じてしまう。具体的には、1周目のシートが2周
目に移る際に段差が生じてしまい、2周目以降にもその段差が現れてしまう。なお、シー
トの種類によっては、この段差が生じると、シートが変形してしまい、元に戻らないもの
もある。
【0003】
現在、ウレタン樹脂のようなクッション性が高いクッションテープを巻芯の外周面に貼
り付け、または埋め込んで、クッションテープにシートを埋め込むことにより、上記段差
を緩和する技術(例えば、特許文献1参照)や、外周面にゴムを有する巻芯を用いて、ゴ
ムにシートを埋め込むことにより、段差を緩和する技術、またはシートの巻き始め端部の
先端に沿って巻芯の外周面に弾力を有する緩衝材を設ける技術が提案されている(例えば
、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-75521号公報
【特許文献2】特開2013-199355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記技術のいずれであっても、有効に段差を緩和できないのが、現状で
ある。
【0006】
また、シートを巻芯に巻回する際には、まず、巻芯の外周面に両面テープ等の固定部材
を貼り付けて、シートの一部(例えば、巻き始め端部)を固定するが、この固定部材に起
因して段差が生じてしまうこともある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、シートの巻き始
め端部に起因する段差を有効に緩和できるロール体の製造方法およびこのようなロール体
を提供することを目的とする。また、固定部材に起因する段差を有効に緩和できるロール
体の製造方法およびこのようなロール体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]巻芯と、前記巻芯の外周面に巻回された長尺状のシートとを備えるロール体の製造
方法であって、前記巻芯の幅方向に沿って前記巻芯の前記外周面に塗布材料を塗布する工
程と、前記シートの長手方向の巻き始め端部を前記外周面に配置する工程と、前記巻芯に
前記シートを巻回して、少なくとも第1隙間に前記塗布材料を充填する工程と、を備え、
前記塗布材料の塗布または前記巻き始め端部の配置は、前記塗布材料が前記巻き始め端部
の前記長手方向に位置する先端面と接触または近接するように行われ、前記第1隙間が、
前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記先端面に接する隙間である、製造
方法。
【0009】
[2]巻芯と、前記巻芯の外周面に巻回された長尺状のシートとを備えるロール体の製造
方法であって、前記シートの長手方向の巻き始め端部を前記外周面に配置する工程と、前
記巻芯に前記シートを少なくとも1周巻回して、第1隙間を有する中間ロール体を得る工
程と、前記中間ロール体の外周面を構成する前記シートの表面に、前記巻芯の幅方向に沿
って塗布材料を塗布する工程と、前記塗布材料を塗布した後に、前記巻芯に前記シートを
再度巻回して、前記シート間に前記塗布材料を介在させる工程と、を備え、前記第1隙間
が、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記巻き始め端部における前記長
手方向に位置する先端面に接する隙間であり、前記塗布材料が、前記中間ロール体の前記
外周面を構成する前記シートの前記表面における、前記第1隙間に対応する第1領域に塗
布される、製造方法。
【0010】
[3]巻芯と、前記巻芯の外周面に巻回された長尺状のシートとを備えるロール体の製造
方法であって、前記巻芯の幅方向に沿って前記巻芯の前記外周面に、前記シートの一部を
前記巻芯に固定するための、前記巻芯の前記幅方向に延びる第1端面および前記第1端面
とは反対側の第2端面を有する固定部材を配置する工程と、前記巻芯の前記幅方向に沿っ
て前記巻芯の前記外周面に塗布材料を塗布する工程と、前記固定部材を介して前記シート
の一部を前記巻芯に固定する工程と、前記塗布材料を塗布し、かつ前記巻芯に前記シート
の一部を固定した後に、前記巻芯に前記シートを巻回して、第2隙間および第3隙間の少
なくともいずれかに前記塗布材料を充填する工程と、を備え、前記塗布材料の塗布または
前記固定部材の配置は、前記塗布材料が前記第1端面側または前記第2端面側に位置し、
かつ前記塗布材料が前記第1端面または前記第2端面に接触または近接するように行われ
、あるいは前記塗布材料が前記第1端面側および前記第2端面側のそれぞれに位置し、か
つ前記塗布材料が前記第1端面および前記第2端面と接触または近接するように行われ、
前記第2隙間が、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記第1端面に接す
る隙間であり、前記第3隙間が、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記
第2端面に接する隙間である、製造方法。
【0011】
[4]巻芯と、前記巻芯の外周面に巻回された長尺状のシートとを備えるロール体の製造
方法であって、前記巻芯の幅方向に沿って前記巻芯の前記外周面に、前記シートの一部を
前記巻芯に固定するための、前記巻芯の前記幅方向に延びる第1端面および前記第1端面
とは反対側の第2端面を有する固定部材を配置する工程と、前記固定部材を介して前記シ
ートの一部を前記巻芯に固定する工程と、前記巻芯に前記シートを少なくとも1周巻回し
て、第2隙間および第3隙間を有する中間ロール体を得る工程と、前記中間ロール体の外
周面を構成する前記シートの表面に、前記巻芯の前記幅方向に沿って塗布材料を塗布する
工程と、前記塗布材料を塗布した後に、前記巻芯に前記シートを再度巻回する工程と、を
備え、前記第2隙間が、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記固定部材
の前記第1端面に接する隙間であり、前記第3隙間が、前記巻芯と1周目の前記シートの
間に位置し、かつ前記固定部材の前記第2端面に接する隙間であり、前記塗布材料は、前
記中間ロール体の前記外周面を構成する前記シートの前記表面における、前記第2隙間に
対応する第2領域および前記第3隙間に対応する第3領域の少なくともいずれかに塗布さ
れる、製造方法。
【0012】
[5]前記塗布材料が、流動性を有する、上記[1]ないし[4]のいずれか一項に記載
の製造方法。
【0013】
[6]前記塗布材料が、硬化性高分子組成物である、上記[1]ないし[5]のいずれか
一項に記載の製造方法。
【0014】
[7]前記塗布材料が、着色材料または発光材料を含んでいる、上記[1]ないし[6]
のいずれか一項に記載の製造方法。
【0015】
[8]前記シートが、樹脂フィルムを有する、上記[1]ないし[6]のいずれか一項に
記載の製造方法。
【0016】
[9]前記シートが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、またはシクロオレフィンポ
リマー系樹脂を含む、上記[1]ないし[7]のいずれか一項に記載の製造方法。
【0017】
[10]前記シートの厚みが、15μm以上300μm以下である、上記[8]または[9
]に記載の製造方法。
【0018】
[11]前記シートが、基材と、前記基材に積層された1以上の機能層とを有する積層体
である、上記[1]ないし[10]のいずれか一項に記載の製造方法。
【0019】
[12]前記シートが、光学フィルム、偏光板、または表示装置に用いられる、上記[1
]ないし[11]のいずれか一項に記載の製造方法。
【0020】
[13]巻芯と、前記巻芯の外周面に巻回された長尺状のシートとを備えるロール体であ
って、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記1周目の前記シートの長手
方向の巻き始め端部における前記長手方向に位置する先端面に接する第1隙間と、前記第
1隙間に充填され、かつ前記巻芯の幅方向に延びる第1充填部と、を備える、ロール体。
【0021】
[14]前記巻芯と1周目の前記シートの間に設けられ、前記巻芯の幅方向に延びる第1
端面および前記第1端面とは反対側の第2端面を有し、かつ前記巻芯に対し前記シートの
一部を固定する固定部材と、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記固定
部材の前記第1端面に接する第2隙間と、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、
かつ前記固定部材の前記第2端面に接する第3隙間と、前記第2隙間に充填され、かつ前
記巻芯の幅方向に延びる第2充填部、および前記第3隙間に充填され、かつ前記巻芯の幅
方向に延びる第3充填部の少なくともいずれかと、をさらに備える、上記[11]に記載の
ロール体。
【0022】
[15]巻芯と、前記巻芯の外周面に巻回された長尺状のシートとを備えるロール体であ
って、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記1周目の前記シートの長手
方向の巻き始め端部における前記長手方向に位置する先端面に接する第1隙間と、1周目
以降の前記シート間における少なくとも前記第1隙間に対応する第1領域に設けられ、か
つ前記巻芯の幅方向に延びる第1介在部と、を備える、ロール体。
【0023】
[16]巻芯と、前記巻芯の外周面に巻回された長尺状のシートとを備えるロール体であ
って、前記巻芯と1周目の前記シートの間に設けられ、前記巻芯の幅方向に延びる第1端
面および前記第1端面と反対側の第2端面を有し、かつ前記巻芯に対し前記シートの一部
を固定する固定部材と、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記固定部材
の前記第1端面に接する第2隙間と、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ
前記固定部材の前記第2端面に接する第3隙間と、前記第2隙間に充填され、かつ前記巻
芯の幅方向に延びる第2充填部、および前記第3隙間に充填され、かつ前記巻芯の幅方向
に延びる第3充填部の少なくともいずれかと、を備える、ロール体。
【0024】
[17]巻芯と、前記巻芯の外周面に巻回された長尺状のシートとを備えるロール体であ
って、前記巻芯と1周目の前記シートの間に設けられ、前記巻芯の幅方向に延びる第1端
面および前記第1端面と反対側の第2端面を有し、かつ前記巻芯に対し前記シートの一部
を固定する固定部材と、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ前記固定部材
の前記第1端面に接する第2隙間と、前記巻芯と1周目の前記シートの間に位置し、かつ
前記固定部材の前記第2端面に接する第3隙間と、1周目以降の前記シート間における、
前記第2隙間に対応する第2領域に設けられ、かつ前記巻芯の幅方向に延びる第2介在部
、および1周目以降の前記シート間における、前記第3隙間に対応する第3領域に設けら
れ、かつ前記巻芯の幅方向に延びる第3介在部の少なくともいずれかと、を備える、ロー
ル体。
【0025】
[18]前記第1充填部に連設され、かつ1周目の前記シートと2周目の前記シートの間
に介在した第4介在部をさらに備える、上記[13]または[14]に記載のロール体。
【0026】
[19]前記第1充填部に連設され、かつ1周目の前記シートと2周目の前記シートの間
に介在した第4介在部が存在しない場合には、前記第1充填部における前記先端面に接す
る位置での厚みT2に対する前記第1充填部における前記シートの前記長手方向に沿った
長さL1の比が、90以上であり、前記第4介在部が存在する場合には、前記第1充填部
における前記先端面に接する位置での厚みT2に対する前記第1充填部における前記シー
トの前記長手方向に沿った長さL1および前記第4介在部における前記シートの前記長手
方向に沿った長さL2の合計の比が、90以上である、上記[13]または[14]のい
ずれか一項に記載のロール体。
【0027】
[20]前記第4介在部が存在しない場合には、前記第1充填部の前記厚みT2に対する
、前記シートの前記長手方向および前記巻芯の径方向を含む平面における前記巻芯の前記
外周面と前記第1充填部の表面で挟まれる領域の面積S1の比が、3.0以上であり、前
記第4介在部が存在する場合には、前記第1充填部の前記厚みT2に対する、前記シート
の長手方向および前記巻芯の径方向を含む平面における前記巻芯の前記外周面と前記第1
充填部の表面で挟まれる領域の面積S1および前記巻芯の前記外周面と前記第4介在部の
表面で挟まれる領域の面積S2の合計の比が、3.0以上である、上記[19]に記載の
ロール体。
【0028】
[21]前記第2介在部の厚みを前記シートの長手方向に沿って測定したとき、前記第2
介在部の最大厚みT6に対する、前記長手方向において前記第2介在部における前記固定
部材側の第1先端とは反対側の第2先端から前記第2介在部の前記最大厚みT6となる位
置までの長さL4の比が、12以上である、上記[17]に記載のロール体。
【0029】
[22]前記第2介在部の最大厚みT6に対する前記シートの前記長手方向および前記巻
芯の径方向を含む平面における前記第2介在部の前記第2先端から前記最大厚みT6とな
る位置までの前記第2介在部の断面積S3の比が、2.5以上である、上記[21]に記
載のロール体。
【0030】
[23]前記シートが、前記シートの前記長手方向に沿って延びる両端部に、前記巻芯の
径方向に突出した凸部をそれぞれ有する、上記[15]または[17]に記載のロール体
【0031】
[24]前記シートが、樹脂フィルムを有する、上記[13]ないし[23]のいずれか
一項に記載のロール体。
【0032】
[25]前記シートが、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、またはシクロオレフィン
ポリマー系樹脂を含む、上記[13]ないし[23]のいずれか一項に記載のロール体。
【0033】
[26]前記シートの厚みが、15μm以上300μm以下である、上記[24]または[
25]に記載のロール体。
【0034】
[27]前記第1充填部が、着色材料または発光材料を含む、上記[13]に記載のロー
ル体。
【0035】
[28]前記第2充填部および前記第3充填部が、それぞれ着色材料または発光材料を含
む、上記[14]または[16]に記載のロール体。
【0036】
[29]前記第1介在部が、着色材料または発光材料を含む、上記[15]に記載のロー
ル体。
【0037】
[30]前記第2介在部および前記3介在部が、それぞれ着色材料または発光材料を含む
、上記[17]に記載のロール体。
【0038】
[31]前記第1充填部が、硬化性高分子組成物の硬化物を含む、上記[13]に記載の
ロール体。
【0039】
[32]前記第2充填部および前記第3充填部が、それぞれ硬化性高分子組成物の硬化物
を含む、上記[14]または[17]に記載のロール体。
【0040】
[33]前記第1介在部が、硬化性高分子組成物の硬化物を含む、上記[15]に記載の
ロール体。
【0041】
[34]前記第2介在部および前記第3介在部が、それぞれ硬化性高分子組成物の硬化物
を含む、上記[17]に記載のロール体。
【0042】
[35]前記シートが、基材と、前記基材に積層された1以上の機能層とを有する積層体
である、上記[13]ないし[34]のいずれか一項に記載の製造方法。
【0043】
[36]前記シートが、光学フィルム、偏光板、または表示装置に用いられる、上記[1
3]ないし[35]のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0044】
本発明の一の態様によれば、シートの巻き始め端部に起因する段差を有効に緩和できる
ロール体の製造方法およびこのようなロール体を提供できる。また、本発明の他の態様に
よれば、固定部材に起因する段差を有効に緩和できるロール体の製造方法およびこのよう
なロール体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1図1は、第1実施形態に係るロール体の斜視図である。
図2図2は、面内位相差を測定する位置を特定するためのサンプルの平面図である。
図3図3は、図1のロール体の一部を拡大した図である。
図4図4は、図1のロール体の各構成要素の寸法を説明するための図である。
図5図5は、図1のロール体の第1充填部の先端部付近を拡大した図である。
図6図6は、図1のロール体における領域R1と領域R2を示す図である。
図7図7は、第1実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図8図8は、第1実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図9図9は、レーザー変位計による測定位置を特定するためのロール体の平面図である。
図10図10は、レーザー変位計の測定に基づいて作成される位置に対する変位量のイメージグラフである。
図11図11は、面積S1、S2を求めるために、図10のイメージグラフの一部を拡大した図である。
図12図12は、第1実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図13図13は、第1実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図14図14は、第1実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図15図15は、第1実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図16図16は、第1実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図17図17(A)および図17(B)は、第1実施形態に係るロール体の製造工程を模式的に示した図である。
図18図18(A)および図18(B)は、第1実施形態に係るロール体の製造工程を模式的に示した図である。
図19図19(A)~図19(C)は、第1実施形態に係る他のロール体の製造工程を模式的に示した図である。
図20図20(A)および図20(B)は、第1実施形態に係るロール体の他の製造工程を模式的に示した図である。
図21図21(A)および図21(B)は、第1実施形態に係るロール体の他の製造工程を模式的に示した図である。
図22図22(A)~図22(D)は、第1実施形態に係るロール体の他の製造工程を模式的に示した図である。
図23図23(A)~図23(C)は、第1実施形態に係るロール体の他の製造工程を模式的に示した図である。
図24図24(A)および図24(B)は、第1実施形態に係るロール体の他の製造工程を模式的に示した図である。
図25図25は、第2実施形態に係るロール体の斜視図である。
図26図26は、図25のロール体の一部を拡大した図である。
図27図27は、図25のロール体の各構成要素の寸法を説明するための図である。
図28図28は、図25に示される第2介在部の最大厚みおよび長さを測定するときの図である。
図29図29は、断面積S3を示す図である。
図30図30は、第2実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図31図31は、第2実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図32図32は、第2実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図33図33は、第2実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図34図34は、第2実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図35図35は、第2実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図36図36は、第2実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図37図37は、第2実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。
図38図38(A)~図38(C)は、第2実施形態に係るロール体の製造工程を模式的に示した図である。
図39図39(A)および図39(B)は、第2実施形態に係るロール体の製造工程を模式的に示した図である。
図40図40(A)は、実施例7に係るロール体の第1充填部周辺の位置に対する変位量を表したグラフであり、図40(B)は、実施例8に係るロール体の第1充填部周辺の位置に対する変位量を表したグラフであり、図40(C)は、実施例9に係るロール体の第1充填部周辺の位置に対する変位量を表したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態に係るロール体について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係るロール体の斜視図であり、図2は、面内位相差を測定する位置
を特定するためのサンプルの平面図であり、図3は、図1のロール体の一部を拡大した図
であり、図4は、図1のロール体の各構成要素の寸法を説明するための図であり、図5
図1のロール体の第1充填部の先端部付近を拡大した図である。図6は、図1のロール
体における領域R1と領域R2を示す図であり、図9は、レーザー変位計による測定位置
を特定するためのロール体の平面図であり、図10は、レーザー変位計の測定に基づいて
作成される位置に対する変位量のイメージグラフであり、図11は、面積S1、S2を求
めるために、図10のイメージグラフの一部を拡大した図である。図7図8図12
図16は、本実施形態に係る他のロール体の一部を拡大した図である。図17図19
、本実施形態に係るロール体の製造工程を模式的に示した図である。図20図24は、
本実施形態に係るロール体の他の製造工程を模式的に示した図である。
【0047】
<<<ロール体>>>
図1に示されるロール体10は、巻芯11と、巻芯11の外周面11Aに巻回された長
尺状のシート12とを備えている。ロール体10は、図3に示されるように、巻芯11と
シート12の間に位置する第1隙間13に充填された第1充填部14と、巻芯11とシー
ト12の間に位置する第2隙間15に充填された第2充填部16と、シート12の一部を
巻芯11に固定するための固定部材17とをさらに備えている。また、ロール体10は、
第1充填部14に連設され、かつ1周目のシート12と2周目のシート12の間に介在し
た第4介在部18をさらに備えている。図3に示されるロール体10は、第4介在部18
を備えているが、図7に示されるロール体10のように第4介在部を備えていなくともよ
い。シート12は、巻芯11に複数周以上、例えば2周以上巻回されている。
【0048】
<<巻芯>>
巻芯11の形状は、特に限定されないが、シート12を容易に巻回できる観点から、円
柱状または円筒状であることが好ましい。図1に示される巻芯11は、円筒状となってい
る。巻芯が円筒状である場合には、巻芯11の幅方向DR1の孔11Bに巻取装置のチャ
ック部材が挿入されることにより、ロール体10を保持できる。巻芯が円柱状の場合には
、巻芯は巻芯を貫通する軸部材を備えており、軸部材を巻取装置に装着することにより、
巻取装置にロール体を保持できる。
【0049】
巻芯11の幅W1(図1参照)は、特に限定されないが、例えば、0.1m以上50m
以下であってもよい。巻芯11の幅W1の下限は、0.2m以上、0.3m以上、0.7
m以上、1.0m以上、1.5m以上、または2m以上であってもよく、上限は、30m
以下、20m以下、10m以下、7m以下、5m以下、3.5m以下、3m以下、または
2.5m以下であってもよい。巻芯の幅は、巻芯の幅を10箇所測定し、測定された10
箇所の幅中、最大値と最小値を除いた8箇所の幅の算術平均値を求めることによって求め
ることができる。
【0050】
巻芯11の外径は、特に限定されないが、例えば、30mm以上8000mm以下であ
ってもよい。巻芯11の外径の下限は、90mm以上または100mm以上であってもよ
く、また上限は、5000mm以下、3500mm以下、2000mm以下、1000m
m以下、700mm以下、500mm以下、350mm以下、または300mm以下であ
ってもよい。巻芯の外径は、巻芯の外径を10箇所測定し、測定された10箇所の外径中
、最大値と最小値を除いた8箇所の外径の算術平均値を求めることによって求めることが
できる。
【0051】
巻芯11が円筒状である場合には、巻芯11の内径は、特に限定されないが、20mm
以上7500mm以下であってもよい。巻芯11の内径の下限は、50mm以上、80m
m以上、120mm以上、150mm以上であってもよく、また上限は、4500mm以
下、3000mm以下、1500mm以下、900mm以下、600mm以下、400m
m以下、250mm以下、または200mm以下であってもよい。巻芯の内径は、巻芯の
内径を10箇所測定し、測定された10箇所の内径中、最大値と最小値を除いた8箇所の
内径の算術平均値を求めることによって求めることができる。
【0052】
シートの巻き始め端部に起因する段差を緩和するために、シートの巻き始め端部の位置
がシートの厚み分低くなるように巻芯の外周面におけるシートが接する部分に段差を形成
することもあるが、巻芯11の外周面11Aにおけるシート12が接する部分には、この
ような段差は形成されていない。外周面11Aの上記部分に段差を有しない巻芯11を用
いることにより、様々な厚みのシート12にも対応することができる。本明細書における
「巻芯の外周面におけるシートが接する部分に段差が形成されていない」とは、巻芯の中
央部、および中央部から巻芯の幅方向に100mm以上離れた部分の各周において、それ
ぞれ高さの差が3μm以上となる部分がないことを意味するものとする。なお、巻芯11
の外周面11Aにおけるシート12が接する部分に、上記高さの差が3μm未満となる段
差は形成されていてもよい。
【0053】
巻芯11を構成する材料は、特に限定されない。巻芯11を構成する材料としては、例
えば、紙、プラスチック、または金属等が挙げられる。紙には、樹脂を含浸させた紙も含
まれる。プラスチックとしては、繊維強化プラスチック(FRP/Fiber Rein
forced Plastics)、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等
のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリ
ル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS)、フェノール樹脂、ナイロン等が挙げられ
る。これらの中でも、例えば光学用のコーティング加工する場合は、重量、加工性および
強度の観点から、繊維強化プラスチック(FRP)が好ましい。繊維強化プラスチックと
しては例えば、エポキシ樹脂やフェノール樹脂からなる主体に、ガラス、エポキシ、ポリ
エステル、カーボン、アラミド等の繊維をハイブリッドさせたものが挙げられる。金属と
しては、例えば、鉄、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム等が挙げられる。
【0054】
<<シート>>
シート12は、長尺状のものである。具体的には、シート12は、幅に対して厚みが充
分薄く、また長さが充分長いものである。
【0055】
シート12の幅W2(図1参照)は、特に限定されないが、例えば、0.1m以上50
m以下であってもよい。本明細書における「シートの幅」とは、シートの短手方向(巻芯
の幅方向)の長さを意味する。シート12の幅W2の下限は、0.2m以上、0.3m以
上、0.5m以上、1.0m以上、または2.0m以上であってもよく、上限は、30m
以下、20m以下、10m以下、7m以下、5m以下、3.5m以下、または3m以下で
あってもよい。シートの幅は、シートの幅を10箇所測定し、測定された10箇所の幅中
、最大値と最小値を除いた8箇所の幅の算術平均値を求めることによって求めることがで
きる。
【0056】
シート12の幅W2は、巻芯11の幅W1よりも小さくなっていることが好ましい。こ
れにより、巻芯11によりシート12を確実に保持することができる。
【0057】
シート12の長さは、例えば、20m以上10000m以下であってもよい。本明細書
における「シートの長さ」とは、シートの長手方向の長さを意味する。シート12の長さ
の下限は、30m以上、40m以上、または50m以上であってもよく、上限は、900
0m以下または8000m以下であってもよい。
【0058】
シート12の厚みは、特に限定されないが、例えば、3μm以上600μm以下であっ
てもよい。シート12の厚みの下限は、10μm以上、15μm以上、20μm以上、ま
たは30μm以上であってもよく、上限は、500μm以下、400μm以下、300μ
m以下、200μm以下、110μm以下、または80μm以下であってもよい。用途に
より、薄膜が好まれる場合にはこの限りではなく、3μm以上50μm未満、更には40
μm以下が好ましい。シートの厚みは、シートの厚みを10箇所測定し、測定された10
箇所の厚み中、最大値と最小値を除いた8箇所の厚みの算術平均値を求めることによって
求めることができる。なお、上記段差はシートの厚みが厚い場合は生じにくいが、薄くな
るほど顕著になる。本発明は、シートの厚みが薄い(80μm以下、50μm未満、更に
は40μm以下)場合に特に有効である。
【0059】
シート12が、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂(特に、ポリエチレンテ
レフタレート)、またはシクロオレフィンポリマー系樹脂を含む場合には、シート12の
厚みは、15μm以上300μm以下であることが好ましい。シート12がこれらの樹脂
のいずれかを含む場合、上記段差はシートの厚みが薄くなるほど顕著になるが、シートの
厚みを極めて薄くすると、上記段差が逆に小さくなる傾向がある。例えば、後工程に50
℃以上の加熱工程がある場合には、薄いシートであると、上記段差による変形が解消でき
る場合もある。しかし、シートの厚さがある程度の厚さ(例えば、15μm以上)である
と、加熱工程を行っても上記変形が解消されないおそれがある。このため、シート12の
厚みが15μm以上である場合に、特に有効である。また、シート12がこれらの樹脂の
いずれかを含む場合、シートの厚みが厚すぎると、塗布材料が多量必要となる。このため
、コスト低減の観点から、シート12の厚みは300μm以下であることが好ましい。ま
た、これらの樹脂のいずれかを含む場合には、厚み300μmを超えると段差は生じにく
いこともある。シート12がこれらの樹脂のいずれかを含む場合、シート12の厚みの下
限は、20μm以上、35μm以上、または50μm以上であることがより好ましく、シ
ート12の厚みの上限は、250μm以下、200μm以下、150μm以下、または1
00μm以下であることがより好ましい。これらの樹脂のいずれかを含む場合には、薄す
ぎず、厚すぎない厚みにおいて特に有効である。
【0060】
また、固定部材17が設けられている場合、固定部材17上にシート12が配置される
ので、シート12と固定部材17の合計の厚みがシートの巻き始め端部に起因する段差に
影響を与える。したがって、例えば、固定部材17の厚みが3μm以上10μm以下であ
る場合を想定すると、シート12の厚みは薄い方が好ましいため、その上限は、130μ
m以下、さらには90μm以下であることが好ましい。また、固定部材が粘着テープの場
合は、固定部材の厚みがシートの厚みの15%を超えると、上記段差への影響がさらに生
じやすい。そのため、シート12の厚みは薄すぎない方が良く、シート12の厚みの下限
は、例えば20μm以上または35μm以上であることが好ましい。
【0061】
シートとしては、例えば、フィルム、金属箔、紙等が挙げられる。フィルムは、例えば
、樹脂フィルムであってもよい。光透過性が要求される用途(例えば、光学フィルム用途
)に樹脂フィルムを用いる場合には、樹脂フィルムは光透過性を有することが好ましい。
このような樹脂フィルムを構成する樹脂としては、光透過性を有すれば特に限定されない
が、例えば、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂(ポリエチレン系樹脂、ポリプロピ
レン系樹脂、シクロオレフィンポリマー系樹脂)、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリ
レート系樹脂、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタ
レート等)、芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルサルフォン系樹脂、アセチ
ルセルロース系樹脂(例えば、トリアセチルセルロース系樹脂)、ポリイミド系樹脂、ポ
リアミドイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂、またはこれらの樹脂を2種以上混合した混合
物等が挙げられる。これらの中でも、比較的柔軟性の高い樹脂フィルム、例えばアクリル
系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アセチルセルロース系樹脂、ポリ
イミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、またはポリアミド系樹脂を含む樹脂フィルムは
、シートの巻き始め端部に起因する段差や固定部材に起因する段差によって変形しやすい
ため、本発明の技術は有効である。さらに、近年、大型ディスプレイには、歪みが少なく
、かつ水分透過性が低い低透湿樹脂が好まれて用いられている。大型ディスプレイの場合
、シート幅全体が製品になる場合が多いため、一部でも段差による変形が残っていると、
全体を廃棄しなければならない。例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、シクロ
オレフィンポリマー系樹脂は大型ディスプレイに好ましく用いられるが、本発明の技術に
よれば、段差による変形を良好に防止でき、かつ量産性を向上させることができるため、
本発明の技術はこれらの樹脂からなるシートに対して特に有効である。また、最終製品に
おいて薄さが求められる場合、例えば、厚みが50μm未満のフィルムを用いる場合には
、いかなる素材のフィルムにおいても本発明の技術が好適である。
【0062】
シート12が、光学フィルム用途である場合であって、特にアクリル系樹脂やシクロオ
レフィンポリマー系樹脂を含む場合には、シート12の面内位相差(リタデーション:R
e)は、10nm以下であることが好ましい。シート12の面内位相差Reが10nm以
下であるということは、光学的歪みが小さいということであり、シート12の製造時の残
留応力がほぼないと言える。つまり、シート12の面内位相差Reが10nm以下である
ことは、シート12内のポリマーが均一であるため、シート12を長尺ロールにした場合
、何等かの段差に起因して、シート12内部のポリマー状態起因の新たな段差になりにく
くなるので、好ましい。シート12の面内位相差Reの上限は、ディスプレイ用途におい
て、偏光子と組み合わせて用いる際に課題となる色むらやブラックアウトが生じにくいと
いう観点から、8nm以下、または4nm以下であることがより好ましい。また、アクリ
ル系樹脂の場合、光学用途であれば、従来のアクリル系樹脂フィルムのように曲げたら白
くなるという現象が発生せず、またヘイズ値(全ヘイズ値)は1%以下または0.5%以
下と小さい方が好ましい。
【0063】
また、シート12が、光学フィルム用途であり、ポリエステル系樹脂を含む場合にも、
上記と同様にシート12内のポリマーが均一である方が内部のポリマー状態起因によって
新たな段差を生じにくく好ましい。シート12がポリエステル系樹脂を含む場合には、物
理的強度を得るために延伸が欠かせないため、ポリマー状態をなるべく均一にするために
は、縦横にほぼ同倍率で逐次または同時2軸延伸によって製造するとよい。その結果、従
来よりも面内位相差が小さいポリエステル系樹脂を含むシートが得られる。この面内位相
差が小さいとは、シートの厚みが10μm~90μmで、面内位相差が1500nm以下
であることを意味し、好ましくは1200nm以下、より好ましくは1000nm以下、
さらに好ましくは800nm以下である。なお、二軸延伸ポリエステルのプラスチックフ
ィルムとしての弾性率や引き裂き強度など物理特性を良好にするためには、面内位相差は
小さすぎない方が良く、200nm以上、さらには400nm以上が好ましい。
【0064】
また、さらに物理特性を良好にするためには、面内方向の複屈折とともに膜厚方向の複
屈折とのバランスも考慮した方がよい。その指標としてはNz係数がある。Nz係数はフ
ィルム内部の結晶性や配向性が影響するものなので、シート全体の特性に関わっている。
Nz係数は、例えばポリエチレンテレフタレートである場合は、通常2~4であるが、特
に長尺ロールにした場合、何等かの段差に起因して、シート内ポリマー状態起因で新たな
段差を生じにくいという点において、好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上、最も
好ましくは10以上である。Nz係数の上限は80程度であり、好ましくは70以下、最
も好ましくは50以下である。
【0065】
面内位相差(Re)は、シートの面内において屈折率が最も大きい方向である遅相軸方
向の屈折率nx、前記面内において前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈
折率ny、およびシートの厚みt(nm)により、下記数式(1)によって表わされるも
のである。下記数式(1)より、面内位相差が小さいことは、配向性の程度が低いため折
り曲げ耐性を良好にし得る傾向があることが分かる。面内位相差(Re)は、例えば、大
塚電子株式会社製の商品名「RETS-100」、王子計測機器社製の商品名「KOBR
A-WR」、「PAM-UHR100」により測定できる。
面内位相差(Re)=(nx-ny)×t …(1)
【0066】
Nz係数は、シートの厚み方向の屈折率nz、上記nxおよび上記nyにより、下記数
式(2)によって表されるものである。
Nz係数=(nx-nz)/(nx-ny) …(2)
【0067】
RETS-100を用いて上記Reを測定する場合には、以下の手順に従って測定する
ことができる。まず、RETS-100の光源を安定させるため、光源を点灯させてから
60分以上放置する。その後、回転検光子法を選択するとともに、θモード(角度方向位
相差測定モード)選択する。このθモードを選択することにより、ステージは傾斜回転ス
テージとなる。
【0068】
次いで、RETS-100に以下の測定条件を入力する。
(測定条件)
・リタデーション測定範囲:回転検光子法
・測定スポット径:φ5mm
・傾斜角度範囲:-40°~40°
・測定波長範囲:400nm~800nm
・サンプルの平均屈折率(例えば、PETの場合には、N=1.617とし、またアクリ
ル樹脂フィルムの場合には、1.5とする。)
・厚み:SEMや光学顕微鏡で別途測定した厚み
【0069】
次いで、この装置にサンプルを設置せずに、バックグラウンドデータを得る。装置は閉
鎖系とし、光源を点灯させる毎にこれを実施する。
【0070】
その後、この装置内のステージ上にサンプルを設置する。サンプルの形状は、どのよう
な形状であってもよく、例えば、長方形状であってもよい。サンプルの大きさは、50m
m×50mmであってもよい。サンプルが複数存在する場合には、全て同じ向きで設置す
る必要がある。例えば、サンプルを全て同じ向きで設置するために予め印を全サンプルに
付けておくことが好ましい。
【0071】
サンプルを設置した後、温度23±5℃および相対湿度50±20%の環境下で、XY
平面上でステージを360°回転させて、進相軸および遅相軸を測定する。測定終了後、
遅相軸を選択する。その後、遅相軸を中心にステージが設定した角度範囲に傾きながら測
定が行われ、10°刻みで、設定傾斜角度範囲および設定波長範囲のデータ(Re)が得
られる。面内位相差Reは、入射角0°および波長589nmの光で測定したときの値と
する。面内位相差Reは、位置が異なる5点で測定する。具体的には、まず、図2に示さ
れるようにサンプルSAの中心A1を通る2本の直交する仮想線IL1、IL2を引く。
この仮想線IL1、IL2を引くと、サンプルが4つの区画に分かれる。そして、各区画
において中心A1から等距離にある1点、合計4点A2~A4を設定し、中心A1および
点A2~A4の合計5点で測定する。そして、5点の測定値中、最大値と最小値を除いた
3点の算術平均値を面内位相差Reとする。
【0072】
シート12は、単層構造であってもよいが、2層以上積層された積層構造のものであっ
てもよい。具体的には、シート12は、基材単体や機能層単体であってもよいが、例えば
、基材上に1以上の機能層が形成された積層体(例えば、光学積層体)であってもよい。
本明細書における「機能層」とは、積層体において、何らかの機能を発揮することを意図
された層である。具体的には、機能層としては、例えば、下地層、ハードコート層、衝撃
吸収層、防眩層、帯電防止層、導電層、放熱層、紫外線吸収層、特殊波長吸収層、特殊波
長透過層、色再現性向上層、液晶層、位相差調整層、視野角調整層、反射層、着色層、反
射防止層(高屈折率層、低屈折率層)、防汚層、撥水層、撥油層など、またはこれらの組
み合わせ等が挙げられる。本明細書における「機能層」は、単層構造であってもよいが、
積層構造であってもよい。ただし、本明細書においては「機能層」は、シート12の使用
時にも存在する層であり、使用時には剥離される剥離ライナーは含まれないものとする。
シートに剥離ライナーが存在すると、欠点が生じやすくなるとともに、上記段差とは異な
る新たな段差が生じやすくなる。仮に剥離ライナーがシート12に設けられている場合に
は、剥離ライナーを剥いだ状態で巻芯11に巻回する。
【0073】
シート12の用途としては、特に限定されないが、例えば、光学用途(光学フィルム用
途、偏光板用途、表示装置用途)、建具用途、自動車内装加飾用途、電池部材用途、食品
包材用途等が挙げられる。これらの中でも、光学フィルムは、シートの巻き始め端部に起
因する段差や固定部材に起因する段差があると、外観のみならず、光透過性に影響を与え
てしまうおそれがあるので、本発明の技術は光学用途に特に有効である。
【0074】
シート12は、巻き始め端部12A(図3参照)と巻き終わり端部12B(図1参照)
を備えている。ロール体10においては、巻き始め端部12Aは、巻き終わり端部12B
より内側(巻芯11)側に位置している。ロール体10においては、図3に示されるよう
に、巻き始め端部12Aにおける長手方向DR2に位置する先端面12A1は、シート1
2の長手方向DR2および巻芯11の径方向DR3に沿った断面において、固定部材17
の後述する第2端面17Bとほぼ揃っている。本明細書における「ほぼ揃っている」とは
、巻き始め端部12Aの長手方向DR2における先端面12A1と第2端面17Bの距離
が、固定部材17の幅W3(図4参照)の±20%以内であることを意味する。なお、上
記「+」は先端面12A1が第2端面17Bよりも突き出ていることを意味し、上記「-
」は先端面12A1が第2端面17Bよりも引っ込んでいる(すなわち、第2端面17B
が先端面12A1よりも突き出ている)ことを意味する。
【0075】
<<固定部材>>
固定部材17は、巻芯11の外周面11Aに対してシート12の一部を固定するための
ものである。固定部材17は、巻芯11の幅方向DR1に延びている。これにより、シー
ト12の一部を巻芯11の幅方向DR1に沿って巻芯11の外周面11Aに固定すること
ができる。
【0076】
固定部材17は、第1端面17Aと反対側の第2端面17Bを有している。第1端面1
7Aおよび第2端面17Bは、いずれも巻芯11の幅方向DR1に延びている。
【0077】
図3においては、固定部材17は、巻芯11の外周面11Aおよびシート12の巻き始
め端部12Aに密着しており、巻芯11の外周面11Aに対してシート12の巻き始め端
部12Aを固定している。なお、シート12の1周目であれば、巻き始め端部12Aでは
ない部分でシート12を固定してもよい。図3において、固定部材17の表面は、全て巻
き始め端部12Aに密着しているが、図8に示されるように、巻き始め端部12Aが固定
部材17に対し巻取り時に問題とならない程度に固定、例えば巻取り時に巻き始め端部1
2Aが固定部材17から剥がれない程度に固定されていれば、巻き始め端部12Aと固定
部材17の間に第1充填部14が入り込んでいてもよい。
【0078】
固定部材17としては、特に限定されないが、接着部材や両面テープ等の粘着部材等が
挙げられる。固定部材17は、弾性(クッション性)を有していてもよい。粘着部材は、
両面に粘着性を有するものである。
【0079】
固定部材17の幅W3(図4参照)は、5mm以上100mm以下であることが好まし
い。固定部材17の幅W3が5mm以上であれば、確実に巻芯11の外周面11Aにシー
ト12の一部を固定することができ、また100mm以下であれば、シート12に皺を発
生させずにシート12を巻回することができる。本明細書における「固定部材の幅」とは
、第1端面から第2端面までの距離を意味するものとする。固定部材17の幅W3の下限
は、10mm以上、20mm以上、または30mm以上であることが好ましく、上限は、
50mm以下または40mm以下であることが好ましい。
【0080】
固定部材17の厚みは、3μm以上600μm以下であることが好ましい。固定部材1
7の厚みが3μm以上であれば、確実に巻芯11の外周面11Aの一部を固定することが
でき、また600μm以下であれば、シート12の変形をより抑制できる。固定部材17
の厚みの下限は、5μm以上、10μm以上、または20μm以上であることが好ましく
、上限は、200μm以下、100μm以下、または50μm以下であることが好ましい
。固定部材の厚みは、固定部材の厚みを10箇所測定し、その10箇所の厚みの算術平均
値を求めることによって求めることができる。
【0081】
<第1隙間>
第1隙間13は、巻き始め端部12Aにおける長手方向DR2(図3参照)に位置する
先端面12A1に接する隙間である。具体的には、図3に示される第1隙間13は、巻芯
11の外周面11Aと、1周目のシート12の裏面12Cと、巻き始め端部12Aの先端
面12A1と、固定部材17の第2端面17Bとによって囲まれる隙間である。固定部材
17が設けられていない場合には、第1隙間は、巻芯の外周面と、1周目のシートの裏面
と、巻き始め端部の先端面とによって囲まれる隙間である。
【0082】
第1隙間13は、先端面12A1に接する隙間であるとともに、巻芯11と1周目のシ
ート12の間に位置し、かつ第2端面17Bに接する隙間でもあるので、後述する第3隙
間でもある。
【0083】
<第2隙間>
第2隙間15は、固定部材17の第1端面17Aに接する隙間である。具体的には、図
3に示される第2隙間15は、巻芯11の外周面11Aと、1周目のシート12の裏面1
2Cと、固定部材17の第1端面17Aとによって囲まれる隙間である。
【0084】
<第1充填部>
第1充填部14は、第1隙間13に充填されている。すなわち、第1充填部14は、巻
芯11の外周面11Aと、1周目のシート12の裏面12Cと、巻き始め端部12Aの先
端面12A1と、固定部材17の第2端面17Bとに接している。なお、固定部材17が
設けられていない場合には、第1充填部は、巻芯の外周面と、1周目のシートの裏面と、
巻き始め端部の先端面とに接している。本明細書における「充填」とは、充填部を構成す
る材料で隙間が概ね埋められている状態を意味する。ただし、充填部の内部には空隙(例
えば、気泡)を有していてもよい。
【0085】
シート12は、製品として使用される有効領域と、シート12の短手方向における有効
領域の両側に位置し、製品としては使用されない非有効領域とを有しており、第1充填部
14は、少なくとも有効領域に存在している。有効領域は製品として使用される領域であ
るので、第1充填部14は、巻芯11の幅方向DR1において有効領域の幅全体に存在し
ていることが好ましい。第1充填部14は、有効領域に存在していれば、非有効領域に存
在していてもよいが、第1充填部14が非有効領域に存在していると、第1充填部14が
シート12からはみ出してしまうおそれもあり、また非有効領域はそもそも製品として使
用されない領域であり、上記段差を緩和する必要もないので、第1充填部14は、非有効
領域に存在していなくてもよい。非有効領域は、シートの用途やシートの幅によっても異
なるが、通常、シートの短手方向の両端から内側にそれぞれ10mm~30mm以内とな
る領域である。第1充填部14が非有効領域に存在する場合には、第1充填部14はシー
トの短手方向の両端にそれぞれ存在してもよいが、はみ出しを抑制する観点からは、これ
らの両端からシートの中央部に向けてそれぞれ1mm以上、好ましくは5mm以上、より
好ましくは10mm以上離れた箇所に存在していることが好ましい。
【0086】
第1充填部14における巻芯11から1周目のシート12が離間する離間位置P1側の
先端部14Aのエッジ厚みT1(図4図5参照)は、この厚みが厚いとこの厚みに起因
して新たな段差が形成されるおそれがあるので、薄い方が好ましい。なお、後述するが、
目的によっては、エッジ厚みT1は、存在しないよりもある程度存在した方が良い場合も
ある。エッジ厚みT1は、例えば、50μm以下であることが好ましい。エッジ厚みT1
は、巻き始め端部12Aから巻き始め端部12Aの段差に起因する変形が視認されなくな
った地点までの距離である変形緩和長さを短くできる点から、30μm以下、20μm以
下、10μm以下、5μm以下、さらには2μm以下であることがより好ましい。巻き始
め端部に起因する段差が緩和されるほど、この段差に起因するシートの変形が緩和される
ので、変形緩和長さが短くなる。本明細書における「変形緩和長さ」には、巻き始め端部
に起因する段差によるシート変形が緩和されるまでの長さで用いられる意味の他に、固定
部材に起因する段差によるシート変形が視認されなくなるまでの長さの意味で用いられる
こともある。変形緩和長さを固定部材に起因する段差によるシート変形が視認されなくな
るまでの長さの意味で用いられる場合には、変形緩和長さは、巻き始め端部12Aから固
定部材17の段差に起因する変形が視認されなくなった地点までの距離である。変形緩和
長さは、短い方が好ましく、具体的には、100m以下、75m以下、60m以下、50
m以下、または35m以下、20m以下、15m以下であることが好ましい。なお、変形
緩和長さが75m以下であれば、シート変形が視認されない部分がより多くなるので、良
好である。変形緩和長さは上記したように段差によるシート変形が視認されなくなるまで
の長さであるが、段差が存在するか否かは、以下のようにして判断するものとする。まず
、800Lux以上2000Lux以下の室内環境下において、長尺状のシートに白色光
源管(白色LED灯、白色蛍光灯など)を映り込ませ、シートに映り込んだ白色光源管の
輪郭のラインが、シートの他の部分と比較して歪む部分がある場合を段差が存在すると判
断し、段差が存在した周辺において映り込ませた白色光源管の輪郭のラインがシートの他
の部分と同じと判断できる部分を段差が存在しないと判断する。白色光源管は、白色光源
管の長手方向がシートの長手方向に沿うように配置する。シートの幅と長さによって、白
色光源管の長さも変更可能である。具体的には、白色光源管の長さは、シートにおける段
差が存在する部分と段差が存在しない部分とに渡った長さとすることが好ましい。これに
より、段差が存在する部分が分かりやすくなる。また、観察環境が上記のような明るさで
あれば、白色光源管自身は点灯していても、点灯していなくても良い。観察の際には、白
色光源管がシートに映り込んでその輪郭のラインが見える状態であることが重要である。
このため、観察条件としては、白色光源管の輪郭のラインが明確に見える方を適宜選択す
る。例えば、シートの表面よりもシートの裏面の方が白色光源管の輪郭のラインが見えや
すい場合には、シートの裏面に白色光源管を映し込ませて、段差が存在するか確認しても
よい。具体的には、例えば基材の表面側に防眩層など、白色光源管が映り込みにくい機能
層が積層されている積層体の場合は、防眩層側から観察すると、段差が存在するか確認し
にくい場合がある。このため、この場合には、防眩層が積層されていない基材の裏面側に
白色光源管を映し込ませて、段差が存在するか確認するとよい。なお、この判断は、基材
の上に1以上の機能層が積層された積層体や、それを偏光子に貼り付けた積層体など、様
々な用途のロール体でも用いることができる。例えば、機能層として防眩層が基材上に積
層されている場合、段差が存在する部分は圧で防眩機能を発揮する凹凸形状が潰れて影な
ど着色して見えることで判断も可能である。また、様々な機能層が積層され、ロール体の
視認側面またはその反対面に白色光源管が映り込みにくい場合には、上記のように形状変
化で影などによって他の部分とは異なる着色が見えることで判断可能である。
【0087】
また、シート12が3μm以上50μm未満の厚みを有する薄膜フィルムの場合は、厚
みが厚い場合よりも巻き始め端部12Aに起因する段差の影響を受けやすいので、このよ
うな薄膜フィルムを用いる場合には、エッジ厚みT1は、10μm以下であることが好ま
しく、また上記変形緩和長さを最短にする点から、7μm以下、5μm以下、更には1μ
m以下がより好ましい。
【0088】
上記変形緩和長さを最短にする観点からは、エッジ厚みT1は上述した厚みが好ましい
が、巻芯の表面は、表面仕上げが施されており、凹凸が存在していることがある。第1充
填部の先端部においてはこの凹凸に沿って第1充填部を構成する材料が埋め込まれるので
、エッジ厚みT1が存在する部分と、存在しない部分が生じてしまい、むらになるおそれ
がある。しかしながら、エッジ厚みT1が薄ければ、このようなむらが発生したとしても
、実害がない。このため、凹凸が存在して、むらとなってしまう場合には、エッジ厚みT
1は薄い方が好ましく、具体的には、例えば、エッジ厚みT1は15μm以下、10μm
以下、5μm以下、更には1μm以下であることが好ましい。
【0089】
一方で、エッジ厚みT1が存在することによる効果も存在する。例えば、巻芯はロール
体の使用後に再利用されることが多い。このため、巻芯には、第1充填部など巻芯に接し
ている充填部を巻芯から剥がして、または洗浄や拭き取りによって除去することにより巻
芯を再利用するリワーク性が求められている。このため、例えば第1充填部14は、後述
するように巻芯11に対して接着されていないことが好ましい。また、第1充填部14が
巻芯11およびシート12にそれぞれ接している部分においては、シート12が第1充填
部14から綺麗に剥がせることが好ましい。仮に、シート12を第1充填部14から剥が
す際に、第1充填部14が凝集破壊してしまうと、巻芯11から第1充填部14を全て綺
麗に剥がすことが困難となる場合がある。これに対し、エッジ厚みT1が存在すると、シ
ート12を剥離するきっかけになるため、リワーク性の観点からは、エッジ厚みT1をあ
えて存在させることが好ましい。例えば.リワーク性の観点からは、エッジ厚みT1は5
μm以上とすることが好ましい。このエッジ厚みT1は巻芯やシートの材質によって好ま
しい厚さが変わり、エッジ厚みT1を1.5μm以上、更には5μm以上としてもよい。
エッジ厚みの上限は、厚みに起因して新たな段差が形成されるおそれがあるので、30μ
m以下が好ましい。
【0090】
エッジ厚みT1の測定は、走査型光干渉式表面形状測定機を用いて測定することが可能
である。このような表面形状測定機としては、例えば、Zygo社製の「New Vie
w」シリーズ等が挙げられる。
【0091】
具体的には、走査型光干渉式表面形状測定機(製品名「New View7300」、
Zygo社製)を用いて、以下のようにしてエッジ厚みT1を求めることができる。まず
、シートを全て繰り出すと、第1充填部14がシート12側に付着し、巻芯から剥がれる
ことがある。第1充填部14が繰り出されたシート12側に付着している場合には、シー
トから、第1充填部14の先端部14Aを含む大きさ0.5mm角以上の1以上のサンプ
ルを得る。なお、サンプルは0.5mm角以上の大きさであれば、正方形に限らず長方形
(例えば、2mm×5mm)であってもよい。サンプルは、第1充填部14の含み、かつ
汚れや指紋等が付着していない任意の箇所から切り出すものとする。そして、以下の測定
条件で、第1充填部14のエッジ厚みT1を測定する。エッジ厚みT1は、エッジ厚みを
10箇所測定し、測定された10箇所の厚み中、最大値と最小値を除いた8箇所の厚みの
算術平均値を求めることによって求めることができる。
(測定条件)
・対物レンズ:10倍
・Zoom:1倍
・測定領域:2.17mm×2.17mm
・scan Length:5μm
・min mod:0.015
【0092】
第1充填部14における先端面12A1に接する位置での厚みT2(図4参照)は、固
定部材17が存在する場合には、固定部材17とシート12の厚みの合計よりも厚く、ま
た固定部材17が存在しない場合には、シート12の厚みよりも厚いことが好ましい。厚
みT2をこのような厚みにすることにより、巻き始め端部12Aに起因する段差をより効
果的に緩和することができる。ただし、厚みT2が厚すぎると、巻き始め端部12Aに起
因する段差を緩和することができるが、シート12の巻取りに悪影響が出ることがある。
このため、例えば、シート12の厚みが50μm以上200μm以下の場合には、厚みT
2は52μm以上220μm以下、更には52μm以上150μm以下であることが好ま
しく、またシート12の厚みが3μm以上50μm未満である場合、厚みT2は50.5
μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0093】
第1充填部14における先端面12A1に接する位置での厚みT2は、以下のようにし
て測定することができる。厚みT2は、第4介在部18が存在する場合と、第4介在部1
8が存在しない場合で、測定方法が異なってもよい。第4介在部18が存在しない場合に
は、レーザー変位計や実体顕微鏡を用いて測定することができ、第4介在部18が存在す
る場合には、実体顕微鏡を用いて測定することができる。レーザー変位計や実体顕微鏡に
よる厚みT2の測定は、温度23±5℃および相対湿度50±20%の環境下で行うもの
とする。
【0094】
レーザー変位計による厚みT2の測定は、以下のようにして行うことができる。以下の
測定方法は、レーザー光の反射を利用するので、シート12が透明であり、かつ第1充填
部が透明ではない場合(例えば、着色されている場合)に特に有効である。まず、ロール
体10を回転させるための治具と、レーザー変位計(例えば、製品名「LK-G30」、
株式会社キーエンス製)とを用意し、それぞれ所定の位置に配置する。治具は、巻芯11
の幅方向DR1の孔11Bに挿入され、ロール体10を回転可能に保持するよう構成され
ている。なお、レーザー変位計として、LK-G30を挙げているが、LK-G30でな
くとも、後継機種などの同等のレーザー変位計を用いてもよい。
【0095】
レーザー変位計は、レーザー源と、受光素子とを備えており、レーザー源から照射し、
第1充填部14の表面で反射したレーザー光を受光素子で受け取り、受光素子での受光位
置によって変位を測定できる装置である。
【0096】
レーザー変位計は、ロール体10の上方に位置し、レーザー光がロール体10の表面に
向けて照射されるように3台配置されている。レーザー変位計の配置箇所は、以下の通り
とする。まず、図9に示されるようにシート12の幅を3等分する第1位置B1および第
2位置B2を定める。第1位置B1は、シート12の短手方向(巻芯11の幅方向DR1
)の第1端12G1側に位置し、第2位置B2は、第1端12G1とは反対側の第2端1
2G2側に位置する。そして、1台目のレーザー変位計は第1位置B1と第1端12G1
の中点C1にレーザー光が照射されるように配置され、2台目のレーザー変位計は第1位
置B1と第2位置B2の中点C2にレーザー光が照射されるように配置され、3台目のレ
ーザー変位計は第2位置B2と第2端12G2の中点C3にレーザー光が照射されるよう
に配置される。
【0097】
そして、ロール体10を治具に取り付け、ロール体10から第1充填部14が露出する
までシート12を繰り出す。その後、第1充填部14が露出した状態で、巻芯11を回転
速度30mm/sで回転させながらレーザー変位計によってサンプリング周期200μs
で連続的に変位量を測定して、横軸を位置(mm)とし、縦軸を変位量(mm)とするグ
ラフ(図10参照)を得る。この測定は、第1充填部14の先端部14Aから先端面12
A1に接する位置に向けて行い、この測定においては、基準高さ(変位量0mmライン)
を巻芯11の高さとし、基準高さと第1充填部14の変位量の差を第1充填部14の厚み
とする。また、このグラフは、横軸の1目盛りを5mmとし、縦軸の1目盛りを0.02
mmとする。
【0098】
このグラフにおいて、第1充填部14が存在する箇所においては、先端部14Aから変
位量が上昇するが、第1充填部14における先端面12A1に接する位置以降は、変位量
が急激に低下する。このため、グラフで変位量が急激に低下し始める位置変位曲線上の位
置E1を見付け出す。そして、変位量0mmラインと位置E1の変位量の差を求めること
によって、第1充填部14における先端面12A1に接する位置の厚みT2を求める。
【0099】
実体顕微鏡による厚みT2の測定は、以下のようにして行うことができる。まず、巻き
始め端部12A、第1充填部14、および2周目のシート12を含む部分が潰れないよう
にこの部分を採取し、固定する。そして、固定されたこの部分の断面を研磨し、第1充填
部14の厚みT2を実体顕微鏡(例えば、製品名「デジタルマイクロスコープVHX-7
000」、株式会社キーエンス製)で測定する。なお、実体顕微鏡として、デジタルマイ
クロスコープVHX-7000を挙げているが、VHX-7000でなくとも、後継機種
などの同等の実体顕微鏡を用いてもよい。
【0100】
シート12の長手方向DR2に延びる両端部12G(図1参照)は、製品としては使用
しない部分であるので、巻芯11の幅方向DR1における第1充填部14の長さは、ロー
ル体10における製品化するための有効領域以上であれば、シート12の幅W2よりも小
さくてもよい。
【0101】
第1充填部14は、着色材料や発光材料を含むことが好ましい。第1充填部14が着色
材料や発光材料を含むことにより、ロール体10から第1充填部14がはみ出したときに
目視により確認しやすい。また、第1充填部14の厚みや長さ等を確認しやすくなる。
【0102】
第1充填部14が着色されている場合、第1充填部14の色としては、特に限定されな
いが、第1充填部14の存在を確実に把握でき、また第1充填部14の成分が巻取装置に
付着しても目立ち難い観点から、白色や灰色等が好ましい。
【0103】
第1充填部14が着色されている場合、第1充填部14は着色材料を含む。第1充填部
14が塗布材料の硬化物である場合には、着色材料は、硬化を阻害しないものであること
が好ましい。着色材料は、顔料および染料のいずれであってもよく、また有機系着色材料
および無機系着色材料のいずれであってもよい。具体的な着色材料の例としては、酸化チ
タン、カーボンブラック、またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0104】
第1充填部14が着色されている場合、第1充填部14中の着色材料の含有量は、0.
1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。着色材料の含有量が、0.1質量%
以上であれば、目視で第1充填部14を確認することができ、また50質量%以下であれ
ば、着色材料が無機材料または有機材料であっても、リワーク性を良好に維持できる。
【0105】
第1充填部14が発光材料を含む場合、発光材料としては、特に限定されないが、蛍光
材料や蓄光材料が挙げられる。第1充填部14が蛍光材料や蓄光材料を含む場合には、第
1充填部14に紫外線や可視光等の光を照射することによって、第1充填部14中の蛍光
材料や蓄光材料を発光させることができる。
【0106】
第1充填部14の表面14Bの形状は、上に凸状であることが好ましい。表面14Bの
形状が上に凸状であれば、下に凹状よりもシート12を持ち上げることができるので、上
記段差を緩和することができる。表面14Bの形状が、上に凸状であるか否かは、厚みT
2と同様に位置変位曲線のグラフから判断することができる。具体的には、まず、上記グ
ラフにおいて、第1充填部14が存在する箇所では巻芯11の高さよりも位置が高くなる
ので、変位量が上昇する。変位量が上昇し始める箇所における変位量0mmラインと位置
変位曲線の交点である位置E2(図10参照)を把握する。そして、位置E1と位置E2
を通る仮想線IL3(図10参照)を引く。位置E1と位置E2の間に存在する位置変位
曲線のピーク数のうち仮想線IL3よりも上側に位置するピーク数の割合が50%以上で
あれば、第1充填部14の表面14Bの形状は上に凸状であると判断でき、また位置E1
と位置E2の間に存在する位置変位曲線のピーク数のうち50%以上のピーク数のうち仮
想線IL3よりも下側に位置するピーク数の割合が50%未満であれば、第1充填部14
の形状は下に凹状であると判断できる。なお、仮想線IL3と位置変位曲線が重なる場合
は、下に凹状であると判断する。第1充填部14の形状を判断するグラフは、横軸の1目
盛りを5mmとし、縦軸の1目盛りを0.02mmとする。
【0107】
第1充填部14の表面14Bの形状が上に凸状である場合、縦軸方向における仮想線I
L3から位置変位曲線までの平均距離D1は、0.003mm以上であることが好ましい
。平均距離D1が0.003mm以上であれば、シート12を有効に持ち上げることがで
きるので、より上記段差を緩和することができる。この平均距離D1の下限は、0.01
mm以上であることがより好ましい。平均距離D1の上限は、過剰に凸状であると新たな
段差の原因になる可能性があるから0.1mm以下、更には0.07mm以下であること
が好ましい。上記平均距離D1とは、仮想線IL3を基準線とし、この仮想線IL3より
も上に凸状となっているピークを7点読みとり、最大値と最小値を除いた5点の値を平均
したものである。なお、読み取るピークは山部で、大きな部分を選択する。
【0108】
位置変位曲線のグラフの横軸に対する仮想線IL3の傾きは、0.0020以上0.0
130以下であることが好ましく、0.0030以上0.0070以下であることがより
好ましく、0.0050以上0.0060以下であることがさらに好ましい。この傾きが
、0.0050以上であれば、凹むことなく充填材料を充填することができ、また、0.
0060以下であれば、大きく凸することがなく充填材料を充填することができる。この
傾きの下限は、0.0020以上、0.0030以上、または0.040以上であること
が好ましく、上限は、0.0130以下、0.0120以下、または0.0100以下で
あることが好ましい。
【0109】
第1充填部14の厚みは、上記離間位置P1付近から先端面12A1に向けて、徐々に
大きくなっていることが好ましい。第1充填部14の厚みが、このように変化することに
よって、シート12における巻芯11の径方向DR3(外周面11Aの外周面11Aの法
線方向)の急激な高さ変化を抑制できるので、巻き始め端部12Aに起因する段差を緩和
することができる。
【0110】
第1充填部の厚みが急激に変化すると、この厚みの変化部分に起因して変形が残存して
しまい、巻き始め端部に起因する段差が十分に緩和されないおそれがある。このため、シ
ートの厚みに対して十分な第1充填部の長さを確保することが好ましい。ただし、第1充
填部の長さを長くすることで、巻取りなどの他の影響が出る場合には、敢えて第1充填部
の長さを最適状態よりも短くすることで、最適な第1充填部の長さを有する状態よりも上
記変形緩和長さは長くなるが、第1充填部を設けないよりは上記変形緩和長さを短くする
ことができる。したがって、図4のように第4介在部18が存在する場合には、第1充填
部14における先端面12A1に接する位置での厚みT2に対する第1充填部14におけ
るシート12の長手方向DR2に沿った長さL1(図4参照)および第4介在部18にお
けるシート12の長手方向DR2に沿った長さL2(図4参照)の合計の比((長さL1
+長さL2)/厚みT2)が90以上であることが好ましい。また、図7のように第4介
在部18が存在しない場合には、第1充填部14における先端面12A1に接する位置で
の厚みT2に対する第1充填部14における先端面12A1に接する位置での厚みT2に
対する第1充填部14におけるシート12の長手方向DR2に沿った長さL1(図7参照
)の比(長さL1/厚みT2)が、90以上であることが好ましい。これらの比の下限は
、上記変形緩和長さを短くする点から、100以上、110以上、120以上、または1
40以上であることが好ましい。また、これらの比の上限は、特に限定されないが、例え
ば、1200以下、1000以下、800以下、500以下、または300以下であって
もよい。
【0111】
長さL1は、シート12の長手方向DR2に沿った第1充填部14における先端面12
A1に接する位置から離間位置P1側の端までの長さである。長さL2は、シート12の
長手方向DR2に沿った先端面12A1の直上の位置から1周目のシート12と2周目の
シート12が接触する位置側の端までの長さである。長さL1および長さL2は、厚みT
2と同様に位置変位曲線のグラフから求めることができる。具体的には、まず、後述する
方法によって第4介在部の存在確認を行う。第4介在部が存在する場合には、位置変位曲
線のグラフから上記位置E1および位置E2を見付け出す。次いで、上記位置E2を通り
、変位量0mmラインに垂直な仮想線IL4(図10参照)を引く。そして、仮想線IL
4と変位量0mmラインの交点を位置E3とすると、位置E2と位置E3との距離を求め
ることにより長さL1と長さL2の合計の長さを求めることができる。また、第4介在部
が存在しない場合には、上記の方法によって、位置E2と位置E3との距離を求めること
により長さL1を求めることができる。
【0112】
長さL1は、上記段差を緩和する観点からは、長いほど良く、例えば、シート12の厚
みが50μm以上200μm以下である場合、長さL1は、110μm以上であることが
好ましく、より上記変形緩和長さを短くするためには、1mm以上、更には10mm以上
であることが好ましい。ただし、長さL1が長すぎると、加工上、上に凸状の第1充填部
が形成されにくくなり、また第1充填部に波状の厚みむらが発生するおそれがあるので、
長さL1の上限は、上に凸状の第1充填部14を得やすく、また波状の厚みむらを抑制す
る観点から、100mm以下であることが好ましい。
【0113】
上記(長さL1+長さL2)/厚みT2や長さL1/厚みT2は、第1充填部14の形
状を大まかに表すことができるが、より適正に第1充填部14における上に凸状等の形状
を表すには、さらにシート12の長手方向DR2および巻芯11の径方向DR3を含む平
面での第1充填部14の面積を用いることが好ましい。具体的には、図4のように第4介
在部18が存在する場合には、第1充填部14における先端面12A1に接する位置での
厚みT2に対する、シート12の長手方向DR2および巻芯11の径方向DR3を含む平
面(図4で表される平面)における巻芯11の外周面11Aと第1充填部14の表面14
Bで挟まれる領域R1の面積S1(図6参照)および巻芯11の外周面11Aと第4介在
部18の表面18Aで挟まれる領域R2の面積S2(図6参照)の合計の比((面積S1
+面積S2)/厚みT2)が、3.0以上であることが好ましい。図6における領域R1
の面積S1は、第1充填部14の断面積を表している。また、図6における領域R2の面
積S2は、第4介在部18の断面積、および領域R2内のシート12の断面積、および領
域R2内の固定部材17の断面積の合計を表している。なお、図6においては、第1充填
部14上および第4介在部18上のシート12を剥がして、第1充填部14および第4介
在部18を露出させた状態を示している。第4介在部18が存在しない場合には、第1充
填部14の厚みT2に対する、シート12の長手方向DR2および巻芯11の径方向DR
3を含む平面(図7で表される平面)における巻芯11の外周面11Aと第1充填部14
の表面14Bで挟まれる領域R1の面積S1の比(面積S1/厚みT2)が、3.0以上
であることが好ましい。これらの比が3.0以上であれば、厚みT2に対して面積S1と
面積S2の合計または面積S1が大きいので、第1充填部14でシート12を有効に持ち
上げることができ、これにより上記段差をより緩和することができる。これらの比の下限
は、上記段差をさらに緩和する観点から、4.0以上、5.0以上、6.0以上、7.0
以上、または8.0以上であることが好ましい。また、これらの比の上限は、特に限定さ
れないが、例えば、50.0以下、更には17.0以下であってもよい。
【0114】
面積S1と面積S2の合計や面積S1は、位置E2から位置E3までの領域において、
図11に示されるように各測定点MPでの厚みtと測定点MP間毎の幅dとの積を求め、
それを合計することによって求めることができる。なお、測定点間の幅は、サンプリング
周期、巻芯の回転速度、および巻芯の外径から求めることができる。具体的には、測定点
間の幅は、以下の数式(3)によって求めることができる。数式(3)において、d(μ
m)は測定点間の幅であり、ΔT(s)はサンプリング周期であり、r(rpm)は巻芯
の回転速度であり、φ(mm)は巻芯の外径であり、πは円周率である。
d=ΔT×(r/60)×φ×π×1000 …(3)
【0115】
上記したように巻芯はロール体の使用後に再利用されることが多いため、リワーク性が
求められている。このため、第1充填部14は、巻芯11に対して接着されていないこと
が好ましい。リワーク性が良好であれば、巻芯はロール体の使用後に再利用できる状態と
なる。本明細書における「巻芯が再利用できる状態」とは、目視で巻芯の外周面を全て観
察し、段差の原因となる付着物がない状態を意味する。除去の方法は、第1充填部に用い
る充填材料によって異なる。表示装置用途のハードコート層のように架橋密度が高く、硬
い場合には、エッジ厚みT1の厚みは薄い方が除去しやすい場合がある。一方で、架橋密
度があまり高くなくゴム弾性を有する場合は、エッジ厚みT1は厚い方が除去しやすい場
合がある。いずれの場合も、段差の原因となる付着物が目視観察によって残存していなけ
ればよい。また、本明細書における「接着」とは、粘着を含む概念である。第1充填部1
4は、巻芯11に対して接着されていないことにより、容易に第1充填部14を剥がすこ
とができるので、良好なリワーク性を有する。第1充填部14は、巻芯11の洗浄や拭き
取りによって、または第1充填部14の端部に巻芯11を傷つけないように刃状のもので
きっかけを作り、指などでゆっくりと巻芯11から剥がせることがより好ましい。また、
第1充填部14は、接着成分を実質的に含んでいないことがより好ましい。
【0116】
第1充填部14の構成材料を巻芯11の外周面11Aに対し垂直に剥離する90°剥離
試験を行ったとき、2.0N未満の引張力で巻芯11の外周面11Aから剥がれることが
好ましい。2.0N未満の引張力で上記構成材料が剥がれた場合には、容易に第1充填部
14を剥がすことができるので、良好なリワーク性を有し、また0.3N以下の引張力で
上記構成材料が剥がれた場合には、より容易に第1充填部14を剥がすことができるので
、優れたリワーク性を有する。
【0117】
90°剥離試験は、サンプルおよびバネ式テンションゲージ(株式会社大場計器製作所
製)を用いて行うことができる。具体的には、まず、サンプルの大きさよりも大きな型を
用意し、この型を巻芯11の外周面11Aに配置する。そして、この型に第1充填部14
を形成するための塗布材料を流し込み、必要に応じて硬化させて、材料層を得る。その後
、材料層を型から外すとともに、裁断機等により20mm×100mmの大きさに材料層
を切り出して、巻芯11の外周面11Aに設けられた10個のサンプルを得る。そして、
サンプルの一端をバネ式テンションゲージにより保持して、温度25℃、相対湿度30%
以上70%以下の環境下で、引張力を測定しながら、巻芯11の外周面11Aに対し垂直
に前記一端を引き上げて、サンプルを剥離速度10mm/秒で剥離する。そして、90°
剥離試験を行った10個のサンプル中、引張力が最大となったサンプルと最小となったサ
ンプルを除いた8個のサンプルの引張力の算術平均値を上記構成材料の引張力とする。
【0118】
第1充填部14の構成材料の引張強さは、3.0MPa以上であることが好ましい。上
記構成材料の引張強さが、3.0MPa以上であれば、第1充填部14を剥がす際に第1
充填部14が千切れにくく、良好なリワーク性を得ることができる。上記構成材料の引張
強さの下限は、優れたリワーク性を得る観点から、3.2MPa以上または3.4MPa
以上であることがより好ましい。また、上記構成材料の引張強さが大きすぎると、第1充
填部のクッション性に劣るため、上記構成材料の引張強さの上限は、良好なクッション性
を得るために16.0MPa以下、8.0MPa以下、または5.5MPa以下であるこ
とが好ましい。
【0119】
上記構成材料の引張強さは、JIS K6251:2017に準拠して、サンプルおよ
びテンシロン万能試験機(製品名「RTC-1310A」、株式会社エー・アンド・デイ
製)を用いて測定することができる。具体的には、まず、サンプルの大きさよりも大きな
型を用意し、この型を巻芯11の外周面11Aに配置する。そして、この型に第1充填部
14を形成するための塗布材料を流し込み、必要に応じて硬化させて、材料層を得る。そ
の後、材料層を型から外すとともに、打抜刃(例えば、高分子計器株式会社製の引張2号
形ダンベル状打抜刃)によりJIS K6251:2017に記載のダンベル状2号形の
大きさに材料層を打ち抜き、10個のサンプルを得る。その後、サンプルを25℃の環境
下で24時間保持する。そして、上記テンシロン万能試験機の一対の把持具にサンプルの
長手方向の両端部を把持させて、温度25℃、相対湿度30%~70%の環境下で初期把
持具間距離20mmおよび引張速度100mm/分の条件で引張試験を行い、サンプルの
引張強さを測定する。10個のサンプル中、最大値および最小値を除く8個のサンプルの
引張強さの算術平均値を上記構成材料の引張強さとする。
【0120】
第1充填部14の構成材料の切断時伸びは、200%以上であることが好ましい。上記
構成材料の切断時伸びが200%以上であれば、第1充填部14が伸びやすいので、第1
充填部14を剥がす際に第1充填部14が千切れにくく、良好なリワーク性を得ることが
できる。上記構成材料の切断時伸びの下限は、優れたリワーク性を得る観点から、250
%以上、300%以上、または350%以上であることがより好ましい。また、上記構成
材料の切断時伸びの上限は、850%以下、600%以下、または500%以下であって
もよい。上記構成材料の切断時伸びは、JIS K6251:2017に準拠して、サン
プルおよびテンシロン万能試験機(製品名「RTC-1310A」、株式会社エー・アン
ド・デイ製)を用いて引張強さの測定方法と同様にして測定することができる。
【0121】
第1充填部14の構成材料の引裂強さは、1.0N/mm以上であることが好ましい。
上記構成材料の引裂強さが1.0N/mm以上であれば、第1充填部14を剥がす際に第
1充填部14が引き裂かれにくく、良好なリワーク性を得ることができる。上記構成材料
の引裂強さの下限は、優れたリワーク性を得る観点から、2.0N/mm以上、4.0N
/mm以上、6.0N/mm以上、8.0N/mm以上、または10N/mm以上である
ことがより好ましい。また、上記構成材料の引裂強さの上限は、35N/mm以下、30
N/mm以下、または25N/mm以下であってもよい。上記構成材料の引裂強さは、J
IS K6252:2007に準拠して、サンプルおよびテンシロン万能試験機(製品名
「RTC-1310A」、株式会社エー・アンド・デイ製)を用いて測定することができ
る。サンプルは、引張強さの欄に記載した方法で作製するものとする。
【0122】
デュロメータータイプAで測定した第1充填部14の構成材料の硬さは、95°以下で
あることが好ましい。第1充填部の先端部には、巻取り時の圧力が常に加わっており、さ
らに経時変化や環境変化(温度、湿度および/または圧力)によっても圧力が加わる場合
がある。第1充填部の先端部に起因する段差を抑制するためには、第1充填部の先端部が
薄いことも有効であるが、デュロメータータイプAで測定した上記構成材料の硬さが95
°以下のような柔らかい樹脂を用いることでシートの巻取り時の圧力で第1充填部が変形
し、第1充填部の先端部に起因する段差を抑制できる。上記硬さの上限は、95°以下、
80°以下、70°以下、または50°以下であることがより好ましい。一方で、シート
が硬く、かつ第1充填部が柔らかい場合等、シートと第1充填部の硬さの差が大きい場合
、第4介在部が存在しない場合には、シートの巻取り時の圧力によって第1充填部のみが
圧縮されて、巻き始め端部に起因する段差が十分に緩和されず、シートに変形が若干生じ
ておそれがある。このため、上記硬さの下限は、10°以上、15°以上、20°以上、
または25°以上であることが好ましい。
【0123】
デュロメータータイプAでの硬さ測定は、JIS K6253:1997に準拠して行
われる。具体的には、まず、サンプルの大きさよりも大きな型を用意し、この型を巻芯1
1の外周面11Aに配置する。そして、この型に第1充填部14を形成するための塗布材
料を流し込み、必要に応じて硬化させて、材料層を得る。その後、材料層を型から外すと
ともに、裁断機等により材料層を切り出して、大きさ100mm×100mm、厚み10
mmの10個のサンプルを得る。そして、デュロメータータイプA(製品名「GS-71
9N(TYPEA)」、株式会社テクロック製)を用いて、温度25℃、相対湿度30%
~70%の環境下で硬さを測定する。10個のサンプル中、最大値および最小値を除く8
個のサンプルの硬さの算術平均値を上記構成材料の硬さとする。
【0124】
シートの巻取り時に、巻き始め端部に起因する段差を緩和するように塗布材料が流動す
るが、塗布材料が硬化性高分子組成物である場合において、その後の硬化時に収縮してし
まうと、特に第4介在部が存在しない場合には、第1充填部で十分に段差を緩和されず、
シートが若干変形してしまうおそれがある。このため、第1充填部14の構成材料の線収
縮率は、1.5%以下であることが好ましい。上記構成材料の線収縮率が1.5%以下で
あれば、寸法安定性に優れた第1充填部を形成できるので、第1充填部で十分に段差を緩
和することができる。第1充填部14の線収縮率の上限は、段差をより十分に緩和する観
点から、1.3%以下、1.0%以下、0.7%以下であることがより好ましい。また、
上記熱収縮率の下限は、0%以上あってもよい。
【0125】
上記構成材料の線収縮率は、以下のようにして測定することができる。まず、厚み2m
m、130mm角以上の大きさの金型を用意し、この金型に第1充填部14を形成するた
めの塗布材料を流し込み、硬化させて、サンプル(成形物)を得る。完全に硬化した後、
サンプルの寸法を測定し、金型の内側の寸法と比較して、JIS K6249:2003
に基づいて線収縮率を求める。10個のサンプル中、最大値および最小値を除く8個のサ
ンプルの線収縮率の算術平均値を上記構成材料の線収縮率とする。
【0126】
第1充填部14は、充填材料を流動または変形させることによって形成することが可能
である。充填材料が流動性を示す場合には、シートの巻回前またはシートの巻回時におい
て流動性を示せば、必ずしも常時流動性を示さなくともよい。充填材料としては、塗布材
料または充填テープが挙げられる。
【0127】
塗布材料は塗布可能な材料であり、例えば、塗布時または巻回時に流動性を有する。流
動性を有する塗布材料としては、液体のみならず、液体から固体に変化する材料、加熱等
によって流動性を有する固体、または硬化性材料が挙げられる。塗布材料が硬化性材料の
場合には、第1充填部14は硬化性材料の硬化物から形成されている。
【0128】
塗布材料としては、例えば、硬化性高分子組成物、熱可塑性樹脂、油、でんぷん、粘着
剤、密着剤、またはゾル等が挙げられる。
【0129】
硬化性高分子組成物としては、硬化性樹脂組成物や硬化性ゴム組成物が挙げられる。塗
布材料として熱可塑性樹脂を用いる場合、塗布時および巻回時には、加熱によって流動性
を有する状態とすることが必要である。
【0130】
充填テープは、第1隙間13に充填されることによって第1充填部14となるテープで
あって、シート12の巻回時の圧力で毛細管現象によって広がる性質を有するもの、また
はゲルテープである。充填テープは、巻芯11の外周面11Aに貼り付けて、または密着
させて用いられる。
【0131】
上記したように第1充填部にはリワーク性が求められている。ここで、充填材料(例え
ば、塗布材料等)がシーラント材料であると、シーラント材料は巻芯に強固に付着してし
まうので、リワーク性に劣る。これに対し、型取り用材料は、型から外すことが前提とな
るものであるので、リワーク性に優れる。このため、リワーク性の観点から、充填材料(
例えば、塗布材料等)として、型取り用材料が好ましい。
【0132】
25℃、剪断速度が1/s時の充填材料(例えば、塗布材料等)の剪断粘度は、500
Pa・s以下であることが好ましい。例えば、巻芯に塗布された充填材料(例えば、塗布
材料等)をへら等を用いながら、充填材料を展延させて、シートの巻回前に充填材料の形
状を整えることも考えられるが、このような工程によって充填材料を展延した場合、多大
な手間を要する。これに対し、充填材料の剪断粘度が500Pa・s以下であれば、シー
トの巻取り時の圧力で充填材料を所望の形状に展延させることができるので、充填材料を
展延させる特段の工程を省略することができる。上記剪断粘度は、200Pa・s以下で
あることがより好ましい。上記剪断粘度は、充填材料を容易に展延させる観点からは、3
00Pa・s以下、100Pa・s以下、または50Pa・s以下であることが好ましい
【0133】
一方で、上記剪断粘度は、上記変形緩和長さを短くする観点からは、10Pa・s以上
75Pa・s以下が好ましく、20Pa・s以上50Pa・s以下であることがより好ま
しい。この剪断粘度が10Pa・s以上であれば、流動性が高くなり過ぎないため、シー
ト12の変形を緩和でき、また75Pa・s以下であれば、第1充填部の先端部による変
形を抑制できる。
【0134】
さらに、上記剪断粘度は、充填材料のはみ出しをより抑制する観点からは、15Pa・
s以上、更には20Pa・s以上であれば、塗布時に巻芯11とシート12の間からの充
填材料のはみ出しを抑制できるので、好ましい。更には、剪断粘度は、60Pa・s以上
であることが好ましい。この剪断粘度が60Pa・s以上であれば、充填材料の流動性が
低く、充填材料が巻芯とシートの間から塗布時に、および/または巻き取り時の圧力によ
ってもはみ出すことを抑制できる。
【0135】
充填材料の上記剪断粘度は、動的粘弾性測定装置(例えば、株式会社アントンパール・
ジャパン製)を用いて測定することができる。具体的には、直径25mmのパラレルプレ
ートを用いて、温度25℃、相対湿度30%~70%の環境下において剪断速度1[1/
s]時の充填材料の剪断粘度を10回測定し、測定された10の剪断粘度中、最大値と最
小値を除いた8つの剪断粘度の算術平均値を求めることによって剪断粘度を求める。
【0136】
充填材料(例えば、塗布材料)は、溶媒等の揮発成分を含まないことが好ましい。充填
材料が揮発成分を含まないことにより、第1充填部14におけるひび割れ等の形状変化が
小さく、またシート痕が生じにくい。
【0137】
(塗布材料)
塗布材料は、第1充填部の形成時には塗布可能であるが、ロール体10の状態では流動
性が低い材料であることが好ましい。本明細書における「ロール体の状態では流動性が低
い」とは、ロール体の輸送時や製造時にロール体から塗布材料のはみ出しが生じないこと
を意味する。第1隙間13に第1充填部14を形成する際には、塗布材料は塗布可能であ
ることが必要であるが、ロール体10の状態で、塗布材料の流動性が高いと、輸送時や製
造時等の際に第1充填部がはみ出し、汚れが生じるおそれがある。これに対し、塗布材料
が、第1充填部14の形成時に塗布可能であり、かつロール体10の状態では流動性が低
い材料であれば、第1隙間13に第1充填部14を形成できるとともに、第1充填部14
のはみ出しや汚れを抑制することができる。このような第1充填部の形成時には塗布可能
であるが、ロール体10の状態では流動性が低い材料としては、硬化性高分子組成物が挙
げられる。
【0138】
塗布材料が硬化性高分子組成物である場合、塗布材料として、例えば、電離放射線硬化
性高分子組成物(電離放射線硬化性樹脂組成物や電離放射線硬化性ゴム組成物)、熱硬化
性高分子組成物(熱硬化性樹脂組成物や熱硬化性ゴム組成物)、室温硬化性高分子組成物
(摂氏20°~30°程度の室温で硬化する高分子組成物)(室温硬化性樹脂組成物や室
温硬化性ゴム組成物)等を用いることができる。
【0139】
室温硬化性高分子組成物には、例えば、主剤および硬化剤からなる2液硬化性高分子組
成物や空気中の水分で硬化する1液硬化性高分子組成物がある。第1充填部におけるシー
ト中央に存在する部分はシートが巻回された状態で、ほぼ密封状態にあるので、この部分
には空気が接触しにくく、十分に硬化しないおそれがある。これに対し、2液硬化性高分
子組成物は、主剤と硬化剤を混合すれば、反応が開始するので、時間管理のみで硬化が可
能である。また、2液硬化性高分子組成物は、1液硬化性高分子組成物に比べて保存安定
性に優れる点で好ましい。
【0140】
電離放射線硬化性高分子組成物としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基
、アリル基等のエチレン性不飽和基を有する化合物を含む組成物が挙げられる。電離放射
線硬化性高分子組成物を硬化させる際に照射する電離放射線としては、可視光線、紫外線
、X線、電子線、α線、β線、およびγ線が挙げられる。
【0141】
電離放射線硬化性高分子組成物は、例えば、電離放射線を照射することによってアクリ
ル系ゲルを形成するアクリルゲル組成物が挙げられる。アクリルゲル組成物は、例えば、
エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ
)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、
2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-ア
ミル(メタ)アクリレート、i-アミル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリ
レート、i-オクチル(メタ)アクリレート、i-ミリスチル(メタ)アクリレート、ラ
ウリル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、i-ノニル(メタ)アクリ
レート、i-デシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリ
ル(メタ)アクリレート、i-ステアリル(メタ)アクリレート等を含む。本明細書にお
いて、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」および「メタクリレート」の両
方を含む意味である。
【0142】
熱硬化性高分子組成物および室温硬化性高分子組成物としては、例えば、ウレタン樹脂
組成物、エポキシ樹脂組成物、シリコーン組成物等が挙げられる。これらの中でも、シリ
コーン組成物を好ましく用いることができる。シリコーン組成物としては、シリコーンゲ
ル組成物やシリコーンゴム組成物が挙げられ、いずれも上記段差および変形を緩和しやす
く、好適である。
【0143】
本明細書におけるシリコーンゲル組成物を硬化して形成される「シリコーンゲル硬化物
(シリコーンゲル)」とは、オルガノポリシロキサンを主成分とする架橋密度の非常に低
い硬化物であって、JIS K2220:2013(1/4コーン)による針入度が10
~150のものを意味する。これは、JIS K6249:2003によるゴム硬度測定
では測定値(ゴム硬度値)が0となり、有効なゴム硬度値を示さない程低硬度(すなわち
、軟らか)であるものに相当し、この点において、いわゆるシリコーンゴム組成物および
シリコーンゴム硬化物(ゴム状弾性体)とは別異のものである。
【0144】
シリコーンゴム組成物には、1液硬化性のシリコーンゴム組成物と2液硬化性のシリコ
ーンゴム組成物がある。1液硬化性シリコーンゴム組成物には、室温で硬化する縮合反応
硬化性ゴム組成物と、加熱によって硬化する付加反応性ゴム組成物がある。また、2液硬
化性シリコーンゴム組成物には、室温で硬化する縮合反応硬化性ゴム組成物および付加反
応性ゴム組成物と、加熱によって硬化する付加反応性ゴム組成物がある。また、シリコー
ンゴム組成物に他の樹脂を変性させることで、電離放射線硬化性ゴム組成物とすることも
可能である。本発明においてはいずれの硬化方法のものでも可能であるが、これらの中で
も均一に硬化できるとともに保存安定性が優れる点から、2液硬化性シリコーンゴム組成
物が好ましい。
【0145】
シリコーンゴム組成物としては、例えば、RTV(Room Temperature
Vulcanizing)シリコーンゴム組成物が挙げられる。RTVシリコーンゴム
組成物は、電離放射線硬化性高分子組成物より収縮率が小さく、寸法安定性が良好であり
、また、硬化前には流動性に優れているため巻芯11とシート12やシート12間の隙間
に侵入しやすく、また硬化後には流動性が低い。さらに、このRTVシリコーンゴム組成
物は、深部硬化性を有するため、塗布時の厚みに関係なく一様に硬化反応が進行しやすい
。また、この組成物は、離型性にも優れているため、硬化物を剥離して、再びロール体と
して利用できる状態にしやすい。
【0146】
上記RTVシリコーンゴム組成物には、硬化反応機構により、縮合反応硬化性RTVシ
リコーンゴム組成物や付加反応硬化性RTVシリコーンゴム組成物等がある。本発明にお
いては、どちらでも好ましく用いることができる。縮合反応硬化性RTVシリコーンゴム
組成物であると、硬化阻害がない点好ましく、付加反応硬化性RTVシリコーンゴム組成
物であると硬化収縮率が更に小さい点が好ましい。本発明においては、硬化収縮が大きい
材料ほど上記段差の緩和に必要な塗布材料の厚みが大きくなる傾向があるため、特に薄い
シート(例えば、シート12の厚みが3μm~45μm)においては、付加反応硬化性R
TVシリコーンゴム組成物が好ましく用いられる。
【0147】
上記RTVシリコーンゴム組成物は、特別な加工装置を必要としないこと等から液状シ
リコーンゴムLSR(Liquid Silicone Rubber)が好ましい。
【0148】
なお、上記した各種組成物に、所望の機能を発揮させるために機能性成分を含ませても
よい。例えば、シリコーンゴム組成物は、一般的に電気絶縁体であるため、巻芯11、シ
ート12、またはその他の物質との接触により帯電してしまう場合がある。その場合、シ
リコーンゴム組成物に導電性充填剤を含ませてもよい。このようにすることで、塵などの
異物混入を防ぐことができるので、上記段差の原因となることを抑制できる。
【0149】
シリコーンゴム組成物に混入する導電性充填剤としては、カーボンブラック(アセチレ
ンブラックやケッチェンブラック)、銀粉末、金メッキされたシリカやグラファイト、導
電性亜鉛華等が挙げられる。また近年、イオン導電性シリコーンゴムも開発されており、
このイオン導電性シリコーンゴムも使用することができる。
【0150】
上記シリコーンゲル組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で任意成分を配合する
ことができる。この任意成分としては、例えば、反応抑制剤、無機質充填剤、ケイ素原子
結合水素原子及びケイ素原子結合アルケニル基を含有しないオルガノポリシロキサン、耐
熱性付与剤、難燃性付与剤、チクソ性付与剤、顔料、染料等が挙げられる。
【0151】
反応抑制剤は、上記組成物の反応を抑制するための成分であって、具体的には、例えば
、アセチレン系、アミン系、カルボン酸エステル系、亜リン酸エステル系等の反応抑制剤
が挙げられる。
【0152】
無機質充填剤としては、例えば、ヒュームドシリカ、結晶性シリカ、沈降性シリカ、中
空フィラー、シルセスキオキサン、ヒュームド二酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜
鉛、酸化鉄、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、層状
マイカ、カーボンブラック、ケイ藻土、ガラス繊維等の無機質充填剤;これらの充填剤を
オルガノアルコキシシラン化合物、オルガノクロロシラン化合物、オルガノシラザン化合
物、低分子量シロキサン化合物等の有機ケイ素化合物で表面疎水化処理した充填剤等が挙
げられる。また、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等を配合してもよ
い。
【0153】
塗布材料が粘着剤である場合、粘着剤としては、義歯安定剤が挙げられる。義歯安定剤
は、義歯粘着剤とホームリライナーに大別でき、粘着剤としては、義歯安定剤の中でも義
歯粘着剤を用いることができる。粘着剤を、義歯粘着剤のように、例えば、粉末タイプ、
クリームタイプ、またはテープタイプに分類した場合、塗布材料として用いられる粘着剤
は、粉末タイプやクリームタイプの粘着剤である。
【0154】
粘着剤は、粘着剤自体が粘着性を示す他、水分によって粘着性を示すものであってもよ
い。粉末タイプの粘着剤は、例えば、水分に触れると、吸水して、粘着性を示すものであ
る。クリームタイプの粘着剤は、例えば、粘着性粉末成分を軟膏基剤でクリーム化したも
のであり、粘着性を示すものである。
【0155】
粘着剤は、水溶性高分子を含むことが好ましい。水溶性高分子としては、特に限定され
ず、例えば、アルギン酸、アルギン酸塩類(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸
カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸エステル等)、天然高分子化合物(例え
ば、アラビアガム、トラガントガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グアーガ
ム、寒天、ゼラチン、カラヤガム、カラギーナン等)、セルロース系高分子(例えば、メ
チルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース
、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等)、ポリエチ
レングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、メチルビニルエーテル
、カルボキシビニルポリマー、アクリルアミドとアクリル酸との共重合体、ポリアクリル
酸ナトリウム、ポリエチレンオキサイド等を挙げることができる。これらの水溶性高分子
は1種単独で用いてもよいし、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0156】
上記セルロース系高分子の中でも、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましい
。カルボキシメチルセルロースナトリウムは、セルロースの多価カルボキシメチルエーテ
ルのナトリウム塩であり、別名カルメロースナトリウムともいう。カルボキシメチルセル
ロースナトリウムは、粉末であり、湿らされた際には、水和し、粘着または弾性を示すた
め、粘着剤にさらなる粘着性を付与する。
【0157】
塗布材料としての粘着剤は、塗布可能である限り、さらに油性基剤、水性基剤、粉体基
剤、ガム基剤、賦形剤、乳化剤、湿潤剤、pH調整剤、粘度調整剤、可塑剤、色素などを
配合することができる。これら基剤や添加剤としては、従来から義歯安定剤に広く使用さ
れている基剤や添加剤が挙げられる。
【0158】
例えば、油性基剤は、粘着剤をクリームタイプなどペースト状の形態に調製する場合に
、その基剤として使用される。油性基剤としては、非水系の粘着剤(例えば、クリームタ
イプ)に通常用いられている鉱油成分(例えば、流動パラフィン、ワセリン、ゲル化炭化
水素など)が挙げられる。
【0159】
クリームタイプの粘着剤として、例えば、新ポリグリップ(登録商標)S、新ポリグリ
ップ(登録商標)V、新ポリグリップ(登録商標)無添加、ポリデント(登録商標)NE
O入れ歯安定剤(いずれも、グラクソ・スミスクライン・コンシューマー・ヘルスケア・
ジャパン社製)、タフグリップ(登録商標)クリーム無添加(小林製薬株式会社製)、コ
レクト(登録商標)クリーム(塩野義製薬株式会社製)を用いることができる。
【0160】
塗布材料が密着剤である場合、密着剤としては、義歯安定剤のホームリライナー(クッ
ションタイプ)が挙げられる。密着剤は、辺縁閉鎖効果を改善することにより密着力を増
強させるものである。このような密着剤は、例えば、非水溶性高分子を含んでいても良い
。非水溶性高分子としては、特に限定されないが、例えば、酢酸ビニル系樹脂のようなポ
リビニル系樹脂が挙げられる。
【0161】
密着剤として、例えば、ポリデント(登録商標)クッション(グラクソ・スミスクライ
ン・コンシューマー・ヘルスケア・ジャパン社製)、タフグリップ(登録商標)クッショ
ン透明、タフグリップ(登録商標)クッションピンク、やわらかタフグリップ(登録商標
)(いずれも小林製薬株式会社製)、クッションコレクト(登録商標)EZ(塩野義製薬
株式会社製)、新ライオデント白色、新ライオデントピンク(いずれもライオン株式会社
)等を用いることができる。
【0162】
塗布材料がゾルである場合、ゾルとしては、シリカゾル、アルミナゾル、およびジルコ
ニアゾル、酸化チタンゾル、酸化セリウムゾル、酸化スズゾル、酸化ニオブゾル等の金属
酸化物ゾルが挙げられる。
【0163】
塗布材料が流動し過ぎない一方で、1周目のシート12が巻芯11の外周面11Aから
離れる位置(離間位置)P1付近まで塗布材料を流動させるためには、塗布材料の塗布時
の粘度を適宜調整することが望ましい。
【0164】
塗布材料は線状に塗布されるが、塗布材料の単位幅当たりの塗布量は、第1充填部14
における上記範囲の厚みT1~T3がそれぞれ得られるような量であることが好ましい。
具体的には、例えば、塗布材料の単位幅当たりの塗布量の下限は、0.2cm/m以上
であることが好ましい。塗布材料の上記塗布量が少なすぎると、例えば、シリンジで塗布
する場合に空気を噛んでしまい、シリンジから塗布材料を吐出しにくくなる場合やシート
を走行させて塗布する場合に塗布切れを生じる場合があるが、上記塗布量が0.2cm
/m以上であれば、このようなことを抑制できる。また、塗布材料の単位幅当たりの塗布
量の上限は、3.5cm/m以下であることが好ましい。塗布材料の上記塗布量が多す
ぎると、自重で塗布材料が垂れてしまう場合や新たな段差を生じる場合があるが、上記塗
布量が3.5cm/m以下であれば、このようなことを抑制できる。上記塗布量の下限
は、0.3cm/m以上であることがより好ましく、また上記塗布量の上限は、2.0
cm/m以下、または1.5cm/m以下であることがより好ましい。
【0165】
(充填テープ)
充填テープの構成材料としては、上記塗布材料の欄で説明した粘着剤、密着剤、または
ゲル等が挙げられる。ゲルとしては、例えば、上記シリコーンゲル組成物から形成したシ
リコーン系ゲル、上記アクリルゲル組成物から形成したアクリル系ゲル、ポリオレフィン
系ゲル、ポリウレタン系ゲル、ブタジエン系ゲル、イソプレン系ゲル、ブチル系ゲル、ス
チレンブタジエン系ゲル、エチレン酢酸ビニル共重合体系ゲル、エチレン-プロピレン-
ジエン三元共重合体系ゲル、またはフッ素系ゲル等が挙げられる。充填テープとして、例
えば、タッチコレクト(登録商標)II(塩野義製薬株式会社製)やαGEL(登録商標
)(株式会社タイカ製)を用いることができる。
【0166】
充填テープの長さは、巻芯11の幅方向DR1において有効領域の幅以上であることが
好ましい。充填テープの長さがこのような長さにすることにより、第1充填部を有効領域
の幅全体に形成することができ、これにより、有効領域の幅全体においてシート12の巻
き始め端部12Aに起因する段差を緩和することができる。充填テープは、シート12の
巻回時に充填テープのはみ出しを抑制する観点から、巻芯11の幅方向DR1においてシ
ート12の短手方向の両端から内側にそれぞれ1mm以上、10mm以上、または30m
m以上離れるように配置されることが好ましい。なお、充填テープの長さとは、充填テー
プにおける幅方向DR1の長さを意味する。
【0167】
充填テープの幅は、5mm以上であることが好ましい。充填テープの幅をこのような幅
にすることにより、シート12の巻き始め端部12Aに起因する段差をより有効に緩和す
ることができる。充填テープの幅の下限は、6mm以上、7mm以上、または8mm以上
であることがより好ましい。充填テープの幅の上限は、充填テープの重なりを抑制する観
点から、巻芯11の外周長未満であることが好ましい。なお、充填テープの幅とは、充填
テープにおけるシート12の長手方向DR2の長さを意味する。
【0168】
充填テープの厚みは、巻き始め端部12Aの上面12A2の高さ以上となることが好ま
しい。充填テープの厚みをこのような厚みにすることにより、シート12の巻回時に充填
テープを広範囲に広げることができるので、シート12の巻き始め端部12Aに起因する
段差をより有効に緩和することができる。具体的な充填テープの厚みは、例えば、シート
12の厚みが50μm以上200μm以下の場合には、52μm以上220μm以下であ
ることが好ましく、またシート12の厚みが3μm以上50μm未満である場合、50.
5μm以上100μm以下であることが好ましい。
【0169】
<第2充填部>
第2充填部16は、第2隙間15に充填されている。すなわち、第2充填部16は、巻
芯11の外周面11Aと、シート12の裏面12Cと、固定部材17の第1端面17Aと
に接している。
【0170】
第2充填部16の構成材料における引張強さ等の物性は、第1充填部14の構成材料に
おける引張強さ等の物性と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0171】
第2充填部16は、充填材料を塗布または変形させることによって形成することが可能
である。充填材料としては、塗布材料、または充填テープが挙げられる。この充填材料、
塗布材料および充填テープは、第1充填部14で説明した充填材料、塗布材料および充填
テープと同様であるので、説明を省略するものとする。第2充填部の構成材料は、第1充
填部14の構成材料と同じものであってもよいが、異なるものであってもよい。
【0172】
第2充填部16の厚みは、第1端面17Aから1周目のシート12が巻芯11の外周面
11Aに到達する到達位置P2付近に向けて、徐々に小さくなっていることが好ましい。
第2充填部16の厚みが、このように変化することによって、シート12における急激な
高さ方向の変化を抑制できるので、固定部材17に起因する段差を緩和することができる
【0173】
シート12の長手方向DR2に延びる両端部12Gは、製品としては使用しない部分で
あるので、巻芯11の幅方向DR1における第2充填部16の長さは、ロール体10にお
ける製品化するための有効領域以上であれば、シート12の幅W2よりも小さくてもよい
【0174】
<第4介在部>
第1充填部はシートよりも柔らかい傾向があるので、第1充填部における巻き始め端部
の先端面に接触する位置での高さが巻き始め端部の上面と同じ高さであると、シートを巻
回したときに、巻き始め端部の先端面と上面の角で段差が生じるおそれがある。これに対
し、第4介在部18を形成した場合には、第4介在部18が第1充填部14とシート12
の硬さの差を吸収することができるので、巻き始め端部12Aの先端面12A1と上面1
2A2の角の段差を小さくすることができる。また、第4介在部18が存在することによ
り、巻き始め端部12Aに起因する段差の部分に応力が集中することを抑制でき、3周目
以降のシート12の変形が緩やかにすることができるので、この段差を緩和することがで
きる。
【0175】
第4介在部18は、第1充填部14と同様に、着色材料や発光材料を含んでいることが
好ましい。第4介在部18が着色材料や発光材料を含むことにより、ロール体10から第
4介在部18がはみ出したときに目視により認識しやすい。また、第4介在部18の存在
を確認しやすくなる。第4介在部18に含ませる着色材料や発光材料は、第1充填部14
の欄で説明した着色材料や発光材料と同様であるので、説明を省略するものとする。
【0176】
シート12が透明であり、かつ第4介在部18が着色されている場合には、第4介在部
18が存在するか否かは、目視によって容易に確認することができる。具体的には、まず
、表面が2周目のシート12となるまでロール体10からシート12を繰り出す。そして
、2周目のシート12が表面となったロール体10において、巻き始め端部12A付近を
目視観察し、巻き始め端部12A上に着色されている部分が存在するか観察する。巻き始
め端部12A上に着色されている部分が存在する場合には、第4介在部18が存在すると
判断でき、また着色されている部分が存在しない場合には、第4介在部18が存在しない
と判断できる。
【0177】
シート12が透明であり、かつ第4介在部18が発光材料を含む場合にも、第4介在部
18が存在するか否かは、上記と同様にして、目視によって容易に確認することができる
。発光材料が紫外線や可視光等の光の照射によって発光する材料である場合には、光を照
射して、第4介在部18が存在するか否か確認する。
【0178】
シート12の厚みが50μm以上200μm以下の場合、第4介在部18の厚みT3(
図4参照)は2μm以上110μm以下であることが好ましい。第4介在部18の厚みT
3がこの範囲であれば、シート12の巻取りへの悪影響を避けつつ上記変形緩和長さを短
くすることができる。なお、第4介在部18の厚みT3が110μmを超える場合も、上
記変形緩和長さを短くすることができるが、シート12の巻取りに悪影響が出ることがあ
る。
【0179】
シート12の厚みが3μm以上50μm未満、更には40μm以下の場合、シート12
の厚みが厚い場合よりも巻き始め端部12Aに起因する段差によってシート12が変形し
やすい。このため、第4介在部18の厚みT3は、0.5μm以上50μm以下であるこ
とが好ましい。第4介在部18の厚みT3がこの範囲であれば、シート12の巻取りの悪
影響を避けつつ上記変形緩和長さを短くすることができる。
【0180】
第4介在部18の厚みT3は、第4介在部18の最大厚みとする。第4介在部18の厚
みT3は、以下のようにして測定するものとする。まず、巻き始め端部12A、第4介在
部18、および2周目のシート12を含む部分が潰れないようにこの部分を採取し、固定
する。そして、固定されたこの部分の断面を研磨し、第4介在部18の厚みT3を実体顕
微鏡(例えば、製品名「デジタルマイクロスコープVHX-7000」、株式会社キーエ
ンス製)で測定する。
【0181】
第4介在部18は、充填材料を塗布または変形させることによって形成することが可能
である。充填材料としては、塗布材料、または充填テープが挙げられる。この充填材料、
塗布材料および充填テープは、第1充填部14で説明した充填材料、塗布材料および充填
テープと同様であるので、説明を省略するものとする。第4介在部18の構成材料は、第
1充填部14の構成材料と同じものであってもよいが、異なるものであってもよい。
【0182】
<<他のロール体>>
ロール体10は、シート12の巻き始め端部12Aの先端面12A1と固定部材17の
第2端面17Bがシート12の長手方向DR2および巻芯11の径方向DR3に沿った断
面においてほぼ揃っているが、図12に示されるロール体20のように、シート12の巻
き始め端部12Aの先端面12A1は、固定部材17の第2端面17Bよりも突き出てい
てもよい。この場合、第2隙間15に第2充填部16が充填されているとともに、巻芯1
1の外周面11Aと1周目のシート12の裏面12Cの間に位置し、第2端面17B側の
第3隙間21に第3充填部22が充填されていてもよい。
【0183】
<第3隙間>
第3隙間21は、固定部材17の第2端面17Bに接する隙間である。具体的には、図
12に示される第3隙間21は、巻芯11の外周面11Aと、1周目のシート12の裏面
12Cと、固定部材17の第2端面17Bとによって囲まれる隙間である。
【0184】
<第3充填部>
第3充填部22は、第3隙間21に充填されている以外は、第2充填部16と同様であ
るので、ここでは説明を省略するものとする。
【0185】
ロール体10は、第2隙間15に第2充填部16が充填されているが、シート12の巻
き始め端部12Aに起因する段差を緩和する観点からは、第1隙間13に第1充填部14
が充填されていればよいので、図13に示されるロール体30のように第2隙間15に第
2充填部16が充填されていなくともよい。ロール体30は、第2隙間15が空洞になっ
ている。
【0186】
ロール体10は、第1隙間13に第1充填部14が充填されているが、固定部材17に
起因する段差を緩和する観点からは、第2隙間15に第2充填部16が充填されていれば
よいので、図14に示されるロール体40のように第1隙間13に第1充填部14が充填
されていなくともよい。ロール体40は、第1隙間13が空洞になっている。
【0187】
ロール体10は、1つの固定部材17を備えているが、図15に示されるように2以上
の固定部材を備えていてもよい。図15に示されるロール体50においては、固定部材1
7の他、固定部材17の第1端面17A側に固定部材51を備えている。図15に示され
るロール体50においては、シート12の巻き始め端部12Aの先端面12A1が、固定
部材17の第2端面17Bよりも突き出ているので、固定部材17に起因する段差を抑制
するために、第2隙間15に第2充填部16が充填されており、また第3隙間21に第3
充填部22が充填されていることが好ましい。また、同様に、図15に示されるロール体
50においては、固定部材51に起因する段差を抑制するために、固定部材51の後述す
る第1端面51A側の第2隙間52には、第2充填部53が充填されており、また固定部
材51の後述する第2端面51B側の第3隙間54には、第3充填部55が充填されてい
ることが好ましい。
【0188】
<固定部材>
固定部材51は、第1端面51Aと反対側の第2端面51Bを有している。第1端面5
1Aおよび第2端面51Bは、いずれも巻芯11の幅方向DR1に延びている。固定部材
51は、固定部材17と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0189】
<第2隙間>
第2隙間52は、固定部材51の第1端面51Aに接する隙間である。具体的には、図
15に示される第2隙間52は、巻芯11の外周面11Aと、1周目のシート12の裏面
12Cと、固定部材51の第1端面51Aとによって囲まれる隙間である。
【0190】
<第3隙間>
第3隙間54は、固定部材51の第2端面51Bに接する隙間である。具体的には、図
15に示される第3隙間54は、巻芯11の外周面11Aと、1周目のシート12の裏面
12Cと、固定部材51の第2端面51Bとによって囲まれる隙間である。
【0191】
<第2充填部および第3充填部>
第2充填部53は、第2隙間52に充填されている以外は、第2充填部16と同様であ
るので、ここでは説明を省略するものとする。第3充填部55は、第3隙間54に充填さ
れている以外は、第2充填部16と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする
【0192】
ロール体10は、固定部材17を備えているが、図15に示されるロール体60のよう
に固定部材17を備えていなくともよい。
【0193】
図12図13図15図16においては、長さL1、長さL2、厚みT2、厚みT
3、面積S1、面積S2を示していないが、ロール体20、30、50、60においては
、長さL1、長さL2、厚みT2、厚みT3、(長さL1+L2)/厚みT2、(面積S
1+S2)/厚みT2は、ロール体10の場合と同様である。
【0194】
ロール体20、30、50、60は、全て第4介在部18を備えているが、第4介在部
を備えていなくともよい。この場合、長さL1/厚みT2や面積S1/厚みT2は、図7
に示されるロール体10の場合と同様である。
【0195】
図13においては、固定部材17の表面は、全て巻き始め端部12Aに密着しているが
図8に示されるロール体10と同様に、巻き始め端部12Aと固定部材17の間に第1
充填部14が入り込んでいてもよい。
【0196】
<<ロール体の製造方法>>
ロール体10は、例えば、以下の方法によって製造することができる。まず、図17
A)に示されるように巻芯11の幅方向DR1に沿って巻芯11の外周面11Aに固定部
材17を配置する。
【0197】
固定部材17を配置した後、ディスペンサーやシリンジ等の塗布装置を用いて、図17
(B)に示されるように巻芯11の幅方向DR1に沿って巻芯11の外周面11Aに塗布
材料201、202を塗布する。塗布材料201は、固定部材17の第2端面17Bに接
触するように塗布され、塗布材料202は、固定部材17の第1端面17Aに接触するよ
うに塗布される。この場合、例えば、2つの塗布装置を用いて、塗布材料201、202
を同時に塗布してもよい。
【0198】
上記においては、塗布材料201は第2端面17Bに接触するように塗布され、また塗
布材料202を第1端面17Aに接触するように塗布されているが、塗布材料の濡れ性が
高く、また塗布材料の粘度が低い場合には、第2端面や第1端面に接触するように塗布さ
れると、塗布材料が巻き始め端部と固定部材の間に含侵し、また巻き始め端部とシートの
裏面の間にまで濡れ広がる可能性がある。塗布材料の制御によって好ましい状態にもでき
るが、余分な含侵や濡れ広がりがあると、制御できない位置で硬化してしまい、その結果
、新たな段差を生じる場合もある。また、充填材料の粘度が高い場合(例えば、テープ状
のもの)や塗布材料の濡れ性が低い場合には、充填材料や塗布材料を配置すると、配置し
た近辺にしか濡れ広がらない状態で硬化する可能性が高いので、後工程の巻き回しによっ
て十分に濡れ広げられなかった場合には、巻き始め端部付近が厚い状態で硬化する材料が
多くなり、却って段差が大きくなってしまうおそれもある。このため、塗布材料201は
固定部材17の第2端面17Bに近接するように塗布されることが好ましく、また塗布材
料202は固定部材17の第1端面17Aに近接するように塗布されることが好ましい。
本明細書における「近接」とは、巻き始め端部や固定部材に対し明らかに離間した位置を
意味する。例えば、塗布材料が低粘度の材料であっても、巻き始め端部や固定部材からの
離間距離は0.3mm以上であることが良い。この離間距離は、0.5mm以上であるこ
とが好ましく、最も安定させる観点から1mm以上であることが好ましい。なお、この離
間距離が大きすぎると、段差を緩和する効果が得られにくくなるので、図3等の第1充填
部14が完成できる範囲で距離を調整することが好ましい。例えば、この離間距離の上限
は、10mm以下、7mm以下、更には5mm以下であることが好ましい。なお、この離
間距離が10mmを超えると、第1隙間が充填されない可能性以外に、巻芯の直径にもよ
るが、塗布材料がシートの巻回前に流れ落ちるおそれがある。なお、塗布材料の粘度が低
い場合には、塗布量を多くするとよい。離間距離は、10箇所測定し、測定された10箇
所の離間距離中、最大値と最小値を除いた8箇所の離間距離の算術平均値を求めることに
よって求める。
【0199】
塗布材料の粘度が高粘度の場合、塗布材料は広がりにくいので、上記離間距離は近い方
が好ましく、塗布材料の粘度が低粘度の場合、上記離間距離が小さすぎると、塗布材料が
固定部材上に多量に存在するおそれがあり、また上記離間距離が大きすぎると、別の方向
に広がるために目的の隙間に充分に充填できないおそれがあるため、上記離間距離は小さ
すぎず、かつ大きすぎないことが好ましい。
【0200】
上記においては、巻芯11の外周面11Aに固定部材17を配置した後に、同時に固定
部材17の両側に塗布材料201、202を塗布しているが、下記製造方法(1)~(3
)のような順序で塗布材料201、202の塗布および固定部材17の配置をしてもよい
。これらの中でも、下記製造方法(2)が好ましい。後述する塗布材料204、205も
同様である。
【0201】
製造方法(1)は、巻芯11の外周面11Aに固定部材17を配置した後、固定部材1
7の第2端面17B側に、上記離間距離となるように塗布材料201を塗布し、その後、
固定部材17の第1端面17A側に、上記離間距離となるように塗布材料202を塗布す
る方法である。
【0202】
製造方法(2)は、巻芯11の外周面11Aに塗布材料201を塗布した後に、塗布材
料201からの距離が上記離間距離となるように固定部材17を配置し、その後、固定部
材17からの距離が上記離間距離となるように固定部材17における塗布材料201とは
反対側に塗布材料202を塗布する方法である。このような順序で塗布材料201、20
2の塗布および固定部材17の配置を行うことにより、安定して離間距離を有して配置で
き、固定部材17上に余分な塗布材料201、202等が塗布されることを抑制できるの
で、固定部材17上に新たな段差が生じることを抑制することができる。
【0203】
製造方法(3)は、巻芯11の外周面11Aに、所定の間隔で、塗布材料201、20
2を塗布し、その後、塗布材料201、202間に固定部材17を配置する方法である。
【0204】
なお、第1充填部14を形成するが、第2充填部16を形成しない場合には、まず、塗
布材料201を塗布し、その後塗布材料201からの距離が上記離間距離となるように固
定部材17を配置し、また、第2充填部16を形成するが、第1充填部14を形成しない
場合には、まず、塗布材料202を塗布し、その後塗布材料202からの距離が上記離間
距離となるように固定部材17を配置することが好ましい。
【0205】
塗布材料201、202は、巻芯11の幅方向DR1において有効領域の幅以上に塗布
されることが好ましい。塗布材料201、202をこのように塗布することにより、第1
充填部および第2充填部を有効領域の幅全体に塗布材料201~205を存在させること
ができ、これにより、有効領域の幅全体においてシート12の巻き始め端部に起因する段
差および固定部材17に起因する段差を緩和することができる。塗布材料201、202
は、シート12の巻回時に塗布材料201、202のはみ出しを抑制する観点から、巻芯
11の幅方向DR1においてシート12の短手方向の両端から内側にそれぞれ1mm以上
、10mm以上、または30mm以上離れるように塗布されることが好ましい。
【0206】
塗布材料201は、塗布材料201の幅が5mm以上、10mm以上、または30mm
以上となるように塗布されることが好ましい。塗布材料201をこのように塗布すること
により、シート12の巻き始め端部12Aに起因する段差をより有効に緩和することがで
きる。塗布材料201の幅の上限は、塗布材料の重なりを抑制する観点から、巻芯11の
外周長未満であることが好ましい。
【0207】
塗布材料202は、塗布材料202の幅が0.5mm以上、1mm以上、または5mm
以上となるように塗布されることが好ましい。塗布材料202をこのように塗布すること
により、固定部材17に起因する段差をより有効に緩和することができる。塗布材料20
2の幅の上限は、塗布材料の重なりを抑制する観点から、巻芯11の外周長未満であるこ
とが好ましい。
【0208】
塗布材料201は、塗布材料201の厚みが巻き始め端部12Aの上面12A2の高さ
以上となるように塗布されることが好ましい。塗布材料201をこのように塗布すること
により、十分な量の塗布材料201が塗布されるので、シート12の巻き始め端部12A
に起因する段差をより有効に緩和することができる。具体的な塗布材料201の厚みは、
例えば、シート12の厚みが50μm以上200μm以下の場合には、52μm以上20
00μm以下であることが好ましく、またシート12の厚みが3μm以上50μm未満で
ある場合には、50.5μm以上2000μm以下であることが好ましい。なお、上記塗
布材料201の厚みは、シート12を巻回する前の厚みである。
【0209】
塗布材料202は、塗布材料202の厚みが固定部材17の表面の高さ以上となるよう
に塗布されることが好ましい。塗布材料202をこのように塗布することにより、十分な
量の塗布材料202が塗布されるので、固定部材17に起因する段差をより有効に緩和す
ることができる。具体的な塗布材料202の厚みの下限は、固定部材17の厚みが3μm
以上10μm以下である場合には、3μm以上12μm以下であることが好ましい。なお
、上記塗布材料202の厚みは、シート12を巻回する前の厚みである。
【0210】
塗布材料201、202を塗布した後、図18(A)に示されるように、シート12の
巻き始め端部12Aの先端面12A1が塗布材料201に接触し、かつシート12が塗布
材料202を覆うように巻き始め端部12Aを配置する。具体的には、固定部材17にシ
ート12の巻き始め端部12Aを貼り付けて、固定部材17を介して巻き始め端部12A
を巻芯11の外周面11Aに固定する。
【0211】
シート12の巻き始め端部12Aを巻芯11に固定した後、図18(B)に示されるよ
うに、巻芯11の外周面11Aに沿ってシート12を巻回する。シート12を巻回すると
、塗布材料201、202が流動して広がるので、第1隙間13に塗布材料201が充填
されるとともに第2隙間15に塗布材料202が充填され、第1隙間13に充填された第
1充填部14および第2隙間15に充填された第2充填部16が形成される。これにより
、ロール体10が得られる。なお、塗布材料201等を第1隙間13等に確実に広げて、
充填するため、シート12が1000mを超える場合には、シート12を1000m以上
巻き、またシート12が1000mに満たない場合には、シート12の全長を巻くことが
好ましい。
【0212】
また、塗布材料201、202が、硬化性高分子組成物である場合には、少なくとも2
周目のシート12の巻回後に、硬化性高分子組成物を硬化させる。硬化性高分子組成物が
、1液硬化性高分子組成物(水分硬化性高分子組成物)である場合には、この組成物は空
気中の湿度と反応して室温で放置することで硬化するので、加熱装置や電離放射線照射装
置等の特別な装置を用いずに硬化させることができる。また、硬化性高分子組成物が2液
硬化性高分子組成物である場合には、主剤と硬化剤を混合することによって硬化させるこ
とができる。
【0213】
ロール体20は、例えば、以下の方法によって製造することができる。まず、巻芯11
の幅方向DR1に沿って巻芯11の外周面11Aに固定部材17を配置する。
【0214】
固定部材17を配置した後、ディスペンサーやシリンジ等の塗布装置を用いて、図19
(A)に示されるように巻芯11の幅方向DR1に沿って巻芯11の外周面11Aに塗布
材料203~205を塗布する。塗布材料204は、固定部材17の第1端面17Aに接
触するように塗布され、塗布材料205は、固定部材17の第2端面17Bに接触するよ
うに塗布される。塗布材料203は、固定部材17の第2端面17Bおよび塗布材料20
5とは離れた箇所に塗布される。なお、塗布材料203は、シート12の巻き始め端部1
2Aの先端面12A1に近接するように塗布され、塗布材料204は、固定部材17の第
1端面17Aに近接するように塗布され、塗布材料205は、固定部材17の第2端面1
7Bに近接するように塗布されてもよい。また、巻芯11の外周面11Aに固定部材17
を配置した後に、塗布材料203~205を塗布しているが、塗布材料203~205を
塗布した後に、塗布材料204が固定部材17の第1端面17Aに接触または近接するよ
うに、また塗布材料205が固定部材17の第2端面17Bに接触または近接するように
固定部材17を配置してもよい。
【0215】
塗布材料203~205を塗布した後、図19(B)に示されるように、シート12の
巻き始め端部12Aの先端面12A1が塗布材料203に接触し、かつシート12が塗布
材料204、205をそれぞれ覆うように巻き始め端部12Aを配置する。具体的には、
固定部材17にシート12の巻き始め端部12Aを貼り付けて、固定部材17を介して巻
き始め端部12Aを巻芯11の外周面11Aに固定する。
【0216】
シート12の巻き始め端部12Aを巻芯11に固定した後、図19(C)に示されるよ
うに、巻芯11の外周面11Aに沿ってシート12を巻回する。シート12を巻回すると
、塗布材料203~205が流動して広がるので、第1隙間13に塗布材料203が充填
され、第2隙間15に塗布材料204が充填され、第3隙間21に塗布材料205が充填
されて、第1隙間13に充填された第1充填部14、第2隙間15に充填された第2充填
部16、および第3隙間21に充填された第3充填部22が形成される。これにより、ロ
ール体20が得られる。なお、塗布材料203等を第1隙間13等に確実に広げて、充填
するため、シート12が1000mを超える場合には、シート12を1000m以上巻き
、またシート12が1000mに満たない場合には、シート12の全長を巻くことが好ま
しい。
【0217】
上記製造方法においては、いずれも、塗布材料201~205をシート12の巻回によ
って流動させているが、シート12の巻回前に予め塗布材料201等を流動させてもよい
。ただし、シート12の巻回前に塗布材料201等を流動させると、工程が増えるので、
塗布材料201~205をシート12の巻回によって流動させる方が好ましい。
【0218】
上記製造方法においては、塗布材料201~205をディスペンサやシリンジ等の塗布
装置を用いて、塗布しているが、塗布装置とともにスリットを有する型を用いて、塗布材
料201~205を塗布してもよい。スリットを有する型を用いて塗布材料201~20
5の塗布を行うことにより、塗布材料201~205の厚みや幅などの部分的なばらつき
を低減させることができる。型の構成材料は、特に限定されないが、例えば、樹脂や金属
等が挙げられる。
【0219】
具体的には、まず、図20(A)に示されるようにスリット210Aを有する型210
を用意する。この型210は、塗布材料201を塗布するために用いられるものである。
スリット210Aの長さ、幅、深さは、塗布材料201の長さ、幅、厚みとそれぞれ同様
であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0220】
型210を用意した後、図20(B)に示されるように巻芯11の幅方向DR1に沿っ
て巻芯11の外周面11A上に型を配置する。型210は、型210を直上から見たとき
、スリットの幅方向の固定部材17側の内面が、固定部材17の第2端面17Bと重なる
ように、または近接するように配置される。
【0221】
型210を巻芯11の外周面11A上に配置した後、ディスペンサやシリンジ等の塗布
装置を用いて、図20(B)に示されるように塗布材料201をスリット210A内に供
給する。塗布装置は、ディスペンサやシリンジであってもよいが、スプレーやダイコータ
ーであってもよい。その後、必要に応じて、ドクターブレード等で型210の表面に存在
している余分な塗布材料201を掻き取る。そして、型210を取り除くことにより、巻
芯11の外周面11Aに塗布材料201を配置することができる。その後の工程は、ロー
ル体10、20の上記した工程と同様である。塗布材料202~205も同様の手順でス
リット210Aを有する型210を用いて配置することができる。
【0222】
塗布材料201~205を塗布する代わりに充填テープを巻芯11の外周面11Aに配
置してもよい。具体的には、まず、図21(A)に示されるように基材221の表面にデ
ィスペンサやシリンジ等の塗布装置によって塗布材料201をテープ状に塗布して、基材
221と塗布材料201からなる充填テープ222とを備える積層体220を形成する。
なお、ここでは、塗布材料201から充填テープ222を形成しているが、充填テープは
シートの巻回時の圧力で広がる材料から形成されていれば、塗布材料201を用いなくと
もよい。
【0223】
基材221の構成材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタ
レート等のポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂、アクリ
ル系樹脂等が挙げられる。また、基材221として、公知の離型フィルムを用いてもよい
。基材221の表面に塗布材料201を塗布する際には、基材221に予め位置合わせ線
221Aを引いておき、その位置合わせ線221Aに沿って塗布材料201を塗布するこ
とが好ましい。基材221に予めこのような位置合わせ線221Aを引くことにより、塗
布材料201の位置ずれを抑制することができる。また、基材221の表面に塗布材料2
01を塗布する際には、塗布装置を固定した状態で、巻出装置を用いて、基材221を定
速で巻き出すことが好ましい。基材221の定速で巻き出すことにより、塗布むらを抑制
できる。
【0224】
積層体220を形成した後、図21(B)に示されるように、充填テープ222が巻芯
11の外周面11Aに接触するように積層体220を巻芯11の外周面11Aに貼り付け
、または密着させる。充填テープ222は、固定部材17の第2端面17Bに接触するよ
うに、または近接するように貼り付け、または密着させる。その後、基材221を剥離す
る。これにより、巻芯11の外周面11Aに充填テープ222を配置することができる。
その後の工程は、ロール体10、20の上記した工程と同様である。
【0225】
上記では1枚の基材および充填テープを有する積層体を形成しているが、2枚の基材、
充填テープ、および厚み調節部材を有する積層体を形成してもよい。具体的には、図22
(A)に示されるように第1基材231の表面にディスペンサやシリンジ等の塗布装置に
よって塗布材料201を塗布する。
【0226】
そして、図22(B)に示されるように、塗布材料201および塗布材料201を所望
の厚みにするために所望の厚みを有する厚み調節部材232を挟むように、塗布材料20
1の上から、第2基材233を重ねて、積層体230を形成する。厚み調節部材232と
しては、例えば、スペーサーや粒子等が挙げられる。塗布材料201に対する第2基材2
33の剥離強度は、塗布材料201に対する第1基材231の剥離強度よりも小さいこと
が好ましい。このような関係を満たすことにより、第2基材233を容易に剥がすことが
できる。第2基材233の剥離強度は、引張り試験機(製品名「シングルコラム型材料試
験機STA-1150」、株式会社A&D製)を用い、以下の測定方法により測定される
値である。剥離強度の測定の際には、まず、縦30cm×横2.5cmのガラス板に両面
テープ(株式会社寺岡製作所 No.751B)を貼り付ける。一方で、積層体230を縦
200mm×横25mmの大きさに切り出し、第1基材231側をガラス板上の両面テー
プで貼り付け、引張り試験機の一対の治具に保持させる。そして、ガラス板に貼り付けら
れた積層体230を引張り試験機の一対の治具に保持させる。治具に積層体230を保持
させる際には、人手で予め積層体230から第2基材233を若干剥離させて、きっかけ
を作り、片方の治具に第2基材233を保持させ、他方の治具にガラス板および積層体2
30を保持させる。そして、この状態で、剥離速度300mm/分、剥離距離50mm、
剥離角度180°の条件で、第2基材233を剥離し、そのときの塗布材料201と第2
基材233との剥離強度を測定する。なお、剥離強度は、3回測定した値の算術平均値と
する。第1基材231の剥離強度も第2基材233の剥離強度と同様にして測定するもの
とする。第1基材231および第2基材233としては、基材221と同様のものを用い
ることができる。
【0227】
積層体230を形成した後、積層体230に所定の圧力を加える。これにより、塗布材
料201の厚みが所望の厚みとなる。そして、テープ状に積層体230を切り出す。これ
により、塗布材料201からなる充填テープ234を有する積層体230が形成される。
【0228】
その後、図22(C)に示されるように第2基材233を剥離する。そして、この状態
で、図22(D)に示されるように充填テープ234が巻芯11の外周面11Aに接触す
るように積層体230を巻芯11の外周面11Aに貼り付け、または密着させる。充填テ
ープ234は、固定部材17の第2端面17Bに接触するように、または近接するように
貼り付け、または密着される。その後、第1基材231を剥離する。これにより、巻芯1
1の外周面11Aに充填テープ234を配置することができる。その後の工程は、ロール
体10、20の上記した工程と同様である。塗布材料202~205の代わりに充填テー
プを充填テープ234と同様の手順で巻芯11の外周面11Aに配置することができる。
【0229】
また、型を用いて、充填テープを形成するとともに転写してもよい。型を用いて、充填
テープを転写することによって、固定部材17と同時に充填テープを容易に設置できる。
具体的には、まず、図23(A)に示されるように型241を用意する。型241は、開
口241Aを有する。型241は、型241の長手方向の側面は、型241から容易に後
述する充填テープを外すことが可能なように、開放されていることが好ましい。型241
は、例えば、U字状になっている。型241は、特に限定されないが、例えば、樹脂や金
属等から形成することができる。型241の開口241Aの長さ、幅、深さは、充填テー
プの長さ、幅、厚みと同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0230】
型241を用意した後、図23(B)に示されるように、型241に塗布材料201を
流し込み、充填テープ242を形成する。そして、図23(C)に示されるように充填テ
ープ242が巻芯11の外周面11Aに接触するように型241を押し当てる。型241
を押し当てる際には、塗布材料201が水分によって粘着性を示す材料である場合には、
充填テープ242の表面を水で濡らし、粘化させておくことが好ましい。充填テープ24
2の表面を粘化させることにより、巻芯11の外周面11Aに貼り付け、または密着させ
ることができる。
【0231】
その後、充填テープ242から型241を外す。これにより、巻芯11の外周面11A
に充填テープ242を配置することができる。その後の工程は、ロール体10、20の上
記した工程と同様である。塗布材料202~205の代わりに充填テープを充填テープ2
42と同様の手順で巻芯11の外周面11Aに配置することができる。
【0232】
オフセット印刷を用いて充填テープを巻芯11の外周面11Aに転写してもよい。オフ
セット印刷を用いて、充填テープを形成するとともに転写することによって、時間管理が
容易となり、設定した時間に位置精度良く充填テープを設置できる。具体的には、まず、
図24(A)に示されるように、中間転写体251(例えば、中間転写ロール)の外周面
にディスペンサやシリンジ等の塗布装置によって塗布材料201を塗布して、充填テープ
252を形成する。そして、図24(B)に示されるように、中間転写体251の外周面
に形成された充填テープ252を巻芯11の外周面11Aにオフセット印刷法によって転
写する。これにより、巻芯11の外周面11Aに充填テープ252を配置することができ
る。その後の工程は、ロール体10、20の上記した工程と同様である。塗布材料202
~205の代わりに充填テープを充填テープ252と同様の手順で巻芯11の外周面11
Aに配置することができる。
【0233】
本実施形態によれば、第1隙間13に第1充填部14が充填されているので、第1充填
部14上の1周目のシート12の部分を離間位置P1から先端面12A1に向けてなだら
かに持ち上げることができる。これにより、シート12の巻き始め端部12Aに起因する
段差を緩和できる。
【0234】
本実施形態によれば、第2隙間15に第2充填部16が充填されているので、第2充填
部16上の1周目のシート12の部分を第1端面17Aから到達位置P2に向けて、なだ
らかに下げることができる。これにより、固定部材17に起因する段差を有効に緩和でき
る。
【0235】
ロール体20においては、第3隙間21に第3充填部22が充填されているので、第3
充填部22上の1周目のシート12の部分をなだらかに持ち上げることができる。これに
より、固定部材17に起因する段差をより有効に緩和できる。
【0236】
シートが変形等してしまうと、シートにおいて製品として使用できない部分が存在する
ので、有効長さを確保するために、シートの有効長さを補償している。すなわち、シート
が変形によって製品とならない部分が長くなると、シートロスが増大する。これに対し、
本実施形態によれば、シート12の巻き始め端部12Aに起因する段差や固定部材17、
51に起因する段差を緩和できるので、シート12の変形を抑制することができる。これ
により、シートロスを低減できる。
【0237】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態に係るロール体について、図面を参照しながら説明する。
図25は、本実施形態に係るロール体の斜視図であり、図26は、図25のロール体の一
部を拡大した図であり、図27は、図25のロール体の各構成要素の寸法を説明するため
の図であり、図28は、図25に示される第2介在部の最大厚みおよび長さを測定すると
きの図であり、図29は、断面積S3を示す図である。図30図37は、本実施形態に
係る他のロール体の一部を拡大した図であり、図38および図39は、本実施形態に係る
ロール体の製造工程を模式的に示した図である。
【0238】
<<<ロール体>>>
図25に示されるロール体70は、巻芯11と、巻芯11の外周面11Aに巻回された
長尺状のシート12とを備えている。ロール体70は、図25に示されるように、1周目
以降のシート12間に設けられた第1介在部71および第2介在部72と、シート12の
一部を巻芯11に固定するための固定部材17とをさらに備えている。シート12は、巻
芯11に複数周、例えば2周以上巻回されている。ロール体70は、第1隙間13および
第2隙間15が空洞になっているので、第1隙間13には第1充填部14が充填されてお
らず、また第2隙間15には第2充填部16が充填されていない。
【0239】
<<第1介在部>>
第1介在部71は、1周目以降のシート12間に設けられている。具体的には、第1介
在部71は、第1介在部71よりも下側(巻芯11側)に位置し、かつ第1介在部71に
接触している下側のシート12と、第1介在部71よりも上側に位置し、かつ第1介在部
71に接触している上側のシート12よって挟まれている。したがって、第1介在部71
上には、必ずシート12が存在する。また、第1介在部71は、1周目以降のシート12
間に設けられているが、具体的には、第1介在部71は、1周目以降のシート12間にお
ける、第1隙間13に対応する第1領域12Dに少なくとも設けられている。また第1介
在部71は、巻芯11の幅方向DR1に延びている。
【0240】
第1介在部71における下側のシート12から上側のシート12が離間する離間位置P
3(図26参照)側の端部71Aのエッジ厚みT4(図27参照)は、この厚みが厚いと
この厚みに起因して新たな段差が形成されるおそれがあるので、薄い方が好ましい。具体
的には、例えば、エッジ厚みT4は、50μm以下であることが好ましい。エッジ厚みT
4は、変形緩和長さを短くできる点から、10μm以下、更には2μm以下であることが
より好ましい。
【0241】
また、シート12が3μm以上50μm未満の厚みを有する薄膜フィルムの場合は、厚
みが厚い場合よりも巻き始め端部12Aに起因する段差の影響を受けやすいので、このよ
うな薄膜フィルムを用いる場合には、エッジ厚みT4は、10μm以下であることが好ま
しく、また上記変形緩和長さを最短にする点から、5μm以下、更には1μm以下がより
好ましい。
【0242】
エッジ厚みT4の測定は、走査型光干渉式表面形状測定機(製品名「New View
7300」、Zygo社製)を用いて、エッジ厚みT1と同様の方法によって測定するこ
とができる。また、以下のようにして、測定することもできる。まず、端部71Aと、端
部71Aに接する下側のシート12と上側のシート12とを含む部分を切り出し、刃物で
切断または研磨によりこの部分の断面を得て、実体顕微鏡(例えば、製品名「デジタルマ
イクロスコープVHX-7000」、株式会社キーエンス製)による観察で行うものとす
る。
【0243】
第1介在部71は、図26および図27に示されるように、第1隙間13に対応してい
る第1領域12Dに介在している第1部分71Bと、第1部分71Bより上側のシート1
2が下側のシート12に到達する到達位置P4(図26参照)側に位置する第2部分71
Cとを有している。第1介在部71が、第1部分71Bのみならず、第2部分71Cを有
していることにより、巻き始め端部12Aに起因する段差の部分に応力が集中することを
抑制でき、上側のシート12以降のシート12の変形が緩やかにすることができるので、
この段差を緩和することができる。
【0244】
第2部分71Cの厚みT5(図27参照)は2μm以上300μm以下であることが好
ましい。第2部分71Cの厚みT5がこの範囲であれば、シート12の巻取りへの悪影響
を避けつつ上記変形緩和長さを短くすることができる。なお、第2部分71Cの厚みT3
が300μmを超える場合も、上記変形緩和長さを短くすることができるが、シート12
の巻取りに悪影響が出ることがある。
【0245】
第2部分71Cの厚みT5は、第2部分71Cの最大厚みとする。第2部分71Cの厚
みT5は、走査型光干渉式表面形状測定機(製品名「New View7300」、Zy
go社製)を用いて、エッジ厚みT1と同様の方法によって測定することができる。また
は、以下のようにして、測定することができる。まず、下側のシート12、第2部分71
C、および上側のシート12を含む部分が潰れないようにこの部分を採取し、固定する。
そして、固定されたこの部分の断面を研磨し、第2部分71Cの厚みT5を実体顕微鏡(
例えば、製品名「デジタルマイクロスコープVHX-7000」、株式会社キーエンス製
)で測定する。
【0246】
第1介在部の厚みが急激に変化すると、この厚みの変化部分に起因して変形が残存して
しまい、巻き始め端部に起因する段差が十分に緩和されないおそれがある。このため、シ
ートの厚みに対して十分な第1介在部の長さを確保することが好ましい。ただし、第1介
在部の長さを長くすることで、巻取りなどの他の影響が出る場合には、敢えて第1介在部
の長さを最適状態よりも短くすることで、最適な第1介在部の長さを有する状態よりも上
記変形緩和長さは長くなるが、第1介在部を設けないよりは上記変形緩和長さを短くする
ことができる。したがって、巻芯11の外周面11Aから巻き始め端部12Aの上面12
A2までの距離D2(図27参照)に対する第1介在部71における先端面12A1に対
応する位置から離間位置P3側の端までの長さL3の比(長さL3/距離D2)が1以上
であることが好ましい。この比は、上記変形緩和長さを短くする点から、5以上、更には
50以上であることが好ましい。
【0247】
長さL3は、以下のようにして測定することができる。まず、下側のシート12および
上側のシート12を残して、それ以外のシート12を巻き出す。ここで、シート12が透
明または半透明であれば、第1介在部71が存在する領域を視認できる。このため、巻き
始め端部12Aの先端面12A1から第1介在部71における離間位置P3側の端までの
距離を定規や巻尺を用いて、シート12を透過観察して、シート12の幅方向に10点測
定し、その平均値を求めて、長さL3を求める。一方、シート12を透過観察できない場
合には、まず、下側のシート12、第1介在部71、および上側のシート12を含む部分
が潰れないようにこの部分を採取する。そして、この部分を固定した上で、研磨して断面
を出し、第1介在部における先端面12A1に対応する位置から離間位置側の端までの距
離を実体顕微鏡(例えば、製品名「デジタルマイクロスコープVHX-7000」、株式
会社キーエンス製)で測定する。
【0248】
長さL3は、長いほど良いが、例えば、シート12の厚みが50μm以上200μm以
下である場合、長さL3は、110μm以上であることが好ましく、より上記変形緩和長
さを短くするためには、1mm以上、更には10mm以上であることが好ましい。
【0249】
第1介在部71の構成材料における引張強さ等の物性は、第1充填部14の構成材料に
おける引張強さ等の物性と同様であり、また第1介在部71を構成する材料は、第1充填
部14の材料と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0250】
<<第2介在部>>
第2介在部72は、1周目以降のシート12間に設けられている。したがって、第2介
在部72上には、必ずシート12が存在する。また、第2介在部72は、1周目以降のシ
ート12間に設けられているが、具体的には、第2介在部72は、1周目以降のシート1
2間における、少なくとも第2隙間15に対応する第2領域12Eに設けられている。ま
た第2介在部72は、巻芯11の幅方向DR1に延びている。
【0251】
第2介在部72は、第1介在部71と同じシート12間(例えば、2周目のシート12
と3周目のシート12との間)に設けられているが、第2介在部72は、第1介在部71
とは異なるシート12間に設けられていてもよい。
【0252】
第2介在部72の最大厚みT6(図27図28参照)は、0.01mm以上であるこ
とが好ましい。第2介在部72の最大厚みT6が0.01mm以上であれば、固定部材1
7に起因する段差を有効に緩和することができる。最大厚みT6は、上記段差をより有効
に緩和する観点から、0.02mm以上、0.03mm以上、または0.04mm以上で
あることがより好ましい。一方で、最大厚みT6が厚すぎると、巻き始め端部12Aに起
因する段差を緩和することができるが、シート12の巻取りに悪影響が出ることがある。
このため、最大厚みT6の上限は、0.2mm以下または0.1mm以下であることが好
ましい。
【0253】
最大厚みT6は、レーザー変位計や実体顕微鏡を用いて、厚みT2と同様の方法によっ
て測定することができる。最大厚みT6をレーザー変位計で測定する場合には、まず、厚
みT2等の測定と同様に、ロール体70を治具に取り付けるとともに3台のレーザー変位
計を所定の位置に配置した後、ロール体70から第2介在部72が露出するまでシート1
2を繰り出す。その後、第2介在部72が露出した状態で、巻芯11を回転速度30mm
/sで回転させながらレーザー変位計によってサンプリング周期200μsで連続的に変
位量を測定して、横軸を位置(mm)とし、縦軸を変位量(mm)とするグラフを得る。
この測定は、第2介在部72の固定部材17側の第1先端72Aとは反対側の第2先端7
2Bから第1先端72Aに向けて行い、この測定においては、基準高さ(変位量0mmラ
イン)を巻芯11の高さとし、基準高さと第2介在部72の高さの差を第2介在部72の
厚みとする。そして、変位量0mmラインと変位量が最も高くなる位置での変位量の差を
求めることによって、第2介在部72の最大厚みT6を求める。得られたグラフは、実質
的にシートの長手方向および巻芯の径方向を含む平面を表すものである。また、このグラ
フは、横軸の1目盛りを5mmとし、縦軸の1目盛りを0.02mmとする。図27にお
いては、第1先端72Aは、固定部材17の直上に存在している。
【0254】
実体顕微鏡による最大厚みT6の測定は、以下のようにして行うことができる。まず、
下側のシート12、第2介在部72、および上側のシート12を含む部分が潰れないよう
にこの部分を採取し、固定する。そして、固定されたこの部分の断面を研磨し、第2介在
部72の最大厚みT6を実体顕微鏡(例えば、製品名「デジタルマイクロスコープVHX
-7000」、株式会社キーエンス製)で測定する。
【0255】
第2介在部72の厚みをシート12の長手方向DR2に沿って測定したとき、第2介在
部72の最大厚みT6(図27図28参照)に対する、長手方向DR2において第2介
在部72における第2先端72Bから第2介在部72の最大厚みT6となる位置までの長
さL4(図27参照)の比(長さL4/最大厚みT6)が、12以上であることが好まし
い。この比が12以上であれば、第2介在部72の第2先端72B近傍に変形が残存する
ことを抑制でき、また第2介在部の厚みが厚すぎると、巻取り時に真円から外れること等
によって巻取り性が劣ることもあるが、この比が12以上であれば、第2介在部72が厚
すぎることもないので、巻取り性が劣ることを抑制できる。また、第2介在部の厚みが厚
すぎると、第2介在部に起因した新たな変形が生じるおそれもあるが、この比が12以上
であれば、このような新たな変形が生じることを抑制できる。この比の下限は、上記変形
緩和長さを短くする点から、25以上、50以上、75以上、100以上、125以上、
150以上、175以上、または200以上であることが好ましい。上記固定部材に起因
する段差を有効に緩和する観点からは、第2介在部72の最大厚みT6は厚い方がよいの
で、この比の上限は、例えば、2000以下、1000以下、500以下、または375
以下であることが好ましい。
【0256】
長さL4は、上記段差を緩和する観点からは、長いほど良く、例えば、シート12の厚
みが50μm以上200μm以下である場合、長さL4は、5.0mm以上であることが
好ましく、より上記変形緩和長さを短くするためには、7.0mm以上、更には9.0m
m以上であることがより好ましい。ただし、長さL4が長すぎると、加工上、第2介在部
の第2先端72Bから最大厚みT6となる位置までの領域R3(図28参照)において、
表面が凸状の第2介在部が形成されにくくなり、また第2介在部に波状の厚みむらが発生
するおそれがあるので、長さL4の上限は、領域R3における第2介在部72の表面72
Cが凸状となりやすく、また波状の厚みむらを抑制する観点から、20mm以下であるこ
とが好ましい。
【0257】
長さL4は、最大厚みT6と同様に位置変位曲線のグラフから求めることができる。具
体的には、まず、第2介在部72の第2先端72Bが存在すると、変位量が上昇するので
、位置変位曲線のグラフから変位量が上昇し始める箇所における変位量0mmラインと位
置変位曲線の交点である第1位置を見付ける。次いで、上記変位量が最も高くなる位置を
通り、変位量0mmラインに垂直な仮想線を引く。そして、この仮想線と変位量0mmラ
インの交点を第2位置として、第1位置と第2位置との距離を求めることにより長さL4
を求めることができる。
【0258】
上記長さL4/最大厚みT6は、第2介在部72の形状を大まかに表すことができるが
、より適正に表面72Cが凸状の形状を表すには、さらに第2介在部72の断面積を用い
ることが好ましい。具体的には、第2介在部72の最大厚みT6に対するシート12の長
手方向DR2および巻芯11の径方向DR3を含む平面(図28で表される平面)におけ
る第2先端72Bから最大厚みT6となる位置まで第2介在部72の断面積S3(図28
参照)の比(断面積S3/最大厚みT6)が、2.5以上であることが好ましい。この比
が2.5以上であれば、最大厚みT6に対して第2介在部72の断面積S3が大きいので
、第2介在部72でシート12を有効に持ち上げることができ、これにより上記段差をよ
り緩和することができる。断面積S3/最大厚みT6の下限は、上記段差をさらに緩和す
る観点から、3.0以上、3.5以上、4.0以上、5.0以上、5.5以上、6.0以
上、6.5以上、または7.0以上であることが好ましい。また、断面積S3/最大厚み
T6の上限は、特に限定されないが、例えば、20.0以下、17.5以下、15.0以
下、または12.5以下、10.0以下であってもよい。断面積S3は、第2介在部72
の領域R3の断面積(図29においては、第2介在部72のうち実線で囲まれる領域の断
面積)であり、位置変位曲線のグラフの第1位置から第2位置までの領域における各測定
点での厚みと測定点間毎の幅との積を求め、それを合計することによって求めることがで
きる。
【0259】
第2介在部72の構成材料における引張強さ等の物性は、第2充填部16の構成材料に
おける引張強さ等の物性と同様であり、また第2介在部72を構成する材料は、第2充填
部16の材料と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0260】
後述するように第1介在部71や第2介在部72よりも径方向DR3の外側のシート1
2(上側のシート12)においては、シート12の巻き始め端部12Aに起因する段差や
固定部材17に起因する段差を抑制できるが、第1介在部71や第2介在部72よりも径
方向DR3の内側(巻芯11側)のシート12(下側のシート12)においては、シート
12の巻き始め端部12Aに起因する段差や固定部材17に起因する段差を抑制できない
。このため、第1介在部71や第2介在部72は可能な限り径方向DR3の内側(例えば
、1周目のシート12と2周目のシート12の間や2周目のシート12と3周目のシート
12の間)に設けられることが好ましい。
【0261】
<<他のロール体>>
ロール体70は、シート12の巻き始め端部12Aの先端面12A1と固定部材17の
第2端面17Bがシート12の長手方向DR2および巻芯11の径方向DR3に沿った断
面においてほぼ揃っているが、図30に示されるロール体80のように、シート12の巻
き始め端部12Aの先端面12A1は、固定部材17の第2端面17Bよりも突き出てい
てもよい。この場合、シート12間における第2領域12Eに第2介在部72が介在して
いることのみならず、シート12間における第2端面17B側の第3隙間21に対応する
第3領域12Fにも第3介在部81が介在してもよい。
【0262】
<第3介在部>
第3介在部81は、第3隙間21に対応する第3領域12Fに介在している以外は、第
2介在部72と同様であるので、ここでは説明を省略するものとする。
【0263】
ロール体70は、シート12間における第2領域12Eに第2介在部72が設けられて
いるが、シート12の巻き始め端部12Aに起因する段差を緩和する観点からは、シート
12間における第1領域12Dに第1介在部71が設けられていればよいので、図31
示されるロール体90のようにシート12間における第2領域12Eに第2介在部72が
設けられていなくともよい。図31に示されるロール体90は、第2領域12Eにおいて
はシート12同士が密着している。
【0264】
ロール体70は、シート12間における第1領域12Dに第1介在部71が設けられて
いるが、固定部材17に起因する段差を緩和する観点からは、シート12間における第2
領域12Eに第2介在部72が設けられていればよいので、図32に示されるロール体1
00のようにシート12間における第1領域12Dに第1介在部71が設けられていなく
ともよい。図32に示されるロール体100は、第1領域12Dにおいてはシート12同
士が密着している。
【0265】
ロール体70は、第1介在部71を備えているが、図33に示されるロール体110の
ように第1介在部71の代わりに第1充填部14を設けてもよい。すなわち、第1隙間1
3には第1充填部14が充填され、かつシート12間における第2領域12Eには第2介
在部72が設けられていてもよい。
【0266】
ロール体110の第2介在部72は、2周目のシート12と3周目のシート12の間に
設けられているが、図34に示されるロール体120のように1周目のシート12と2周
目のシート12の間に第2介在部72が設けられていてもよい。
【0267】
ロール体70は、第2介在部72を備えているが、図35に示されるロール体130の
ように第2介在部72の代わりに第2充填部16を設けてもよい。すなわち、シート12
間における第1領域12Dには第1介在部71が設けられ、かつ第2隙間15には第2充
填部16が充填されていてもよい。
【0268】
ロール体70は、シート12を巻芯11の外周面11Aに固定する固定部材17を備え
ているが、図36に示されるロール体140のように固定部材17を備えていなくともよ
い。
【0269】
ロール体70は、シート12の厚みは均一となっているが、図37に示されるロール体
150のようにシート12の長手方向に沿って延びる両端部12Gに、巻芯11の径方向
DR3の外側に突出した凸部12Hをそれぞれ形成していてもよい。充填材料(例えば、
塗布材料)、第1介在部71、第2介在部72、または第3介在部81の粘度が低い場合
やシートの厚みが均一である場合には、充填材料(例えば、塗布材料等)がシート間から
はみ出し、意図しない箇所に充填材料等が存在してしまうおそれがある。これに対し、シ
ート12の上記両端部12Gにそれぞれ凸部12Hを形成することにより、充填材料の配
置後、例えば、塗布材料の塗布後に両端部12Gにおける充填材料(例えば、塗布材料等
)のはみ出しを抑制できる。なお、シート12の両端部12Gは、切り落とされ、製品と
しては使用しない部分であるので、シートの両端部12Gにこのような凸部12Hを有し
ても製品には何ら問題がない。凸部12Hは、ナール加工やコーティングによって形成し
てもよく、またテープ(例えば、サイドテープ)を貼り付けて形成してもよい。コーティ
ングの場合、第1充填部14の材料と同様の材料を用いることができる。
【0270】
図37に示されるロール体150においては、シート12の両端部12Gの全ての部分
に凸部12Hが設けられているが、凸部12Hは部分的に設けられていてもよい。例えば
、凸部12Hは、シート12の長手方向に沿って延びる両端部12Gにおける第1介在部
71を挟む位置、シート12の長手方向に沿って延びる両端部12Gにおける第2介在部
72を挟む位置、および/またはシート12の長手方向に沿って延びる両端部12Gにお
ける第3介在部81を挟む位置に部分的に設けられていてもよい。凸部12Hが第1介在
部71を挟む位置に存在している場合には、充填材料(例えば、塗布材料)や第1介在部
71のはみ出しを抑制することができ、凸部12Hが第2介在部72を挟む位置に存在し
ている場合には、充填材料(例えば、塗布材料)や第2介在部72のはみ出しを抑制する
ことができ、凸部12Hが第3介在部81を挟む位置に存在している場合には、充填材料
(例えば、塗布材料)や第3介在部81のはみ出しを抑制することができる。
【0271】
図31図36においては、距離D2、長さL3、長さL4、最大厚みT6、断面積S
3を示していないが、第1介在部71が存在する場合には、距離D2、長さL3、長さL
3/距離D2は、ロール体70の場合と同様であり、また第2介在部72が存在する場合
には、長さL4、長さL4/最大厚みT6、断面積S3/最大厚みT6は、ロール体70
の場合と同様である。
【0272】
また、図33図34においては、固定部材17の表面は、全て巻き始め端部12Aに
密着しているが、図8に示されるロール体10と同様に、巻き始め端部12Aと固定部材
17の間に第1充填部14が入り込んでいてもよい。
【0273】
<<ロール体の製造方法>>
ロール体70は、例えば、以下の方法によって製造することができる。まず、図38
A)に示されるように巻芯11の幅方向DR1に沿って巻芯11の外周面11Aに固定部
材17を配置する。
【0274】
固定部材17を配置した後、図38(B)に示されるように、シート12の巻き始め端
部12Aにおける先端面12A1が固定部材17の第2端面17Bとほぼ揃うように、固
定部材17を介してシート12の巻き始め端部12Aを巻芯11の外周面11Aに固定す
る。
【0275】
シート12の巻き始め端部12Aを巻芯11の外周面11Aに固定した後、図38(C
)に示されるように、巻芯11の外周面11Aに沿ってシート12を少なくとも1周巻回
する。これにより、第1隙間13および第2隙間15を有する中間ロール体73が得られ
る。
【0276】
中間ロール体73を得た後、図39(A)に示されるように巻芯11の幅方向DR1に
沿って中間ロール体73の外周面73Aを構成するシート12の表面12Iに塗布材料2
06、207を塗布する。塗布材料206は少なくとも第1隙間13に対応する第1領域
12Dに塗布され、塗布材料207は少なくとも第2隙間15に対応する第2領域12E
に塗布される。塗布材料74、75は、塗布材料201、202と同様であるので、ここ
では説明を省略するものとする。
【0277】
塗布材料206、207を塗布した後、図39(B)に示されるように巻芯11にシー
ト12を再度巻回する。これにより、塗布材料206、207が流動して広がるので、シ
ート12間における第1領域12Dに塗布材料206が設けられるとともにシート12間
における第2領域12Eに塗布材料207が設けられて、第1介在部71および第2介在
部72が形成される。これにより、ロール体70が得られる。なお、塗布材料206、2
07の少なくともいずれかが、硬化性材料である場合には、シート12の再度巻回した後
に、硬化性材料を硬化させる。
【0278】
ロール体70の製造方法においては、スリット210Aを有する型210を用いて塗布
材料206、207の塗布を行っていないが、第1実施形態と同様にスリット210Aを
有する型210を用いて塗布材料206、207の塗布を行ってもよい。また、第1実施
形態と同様の方法によって塗布材料206、207の代わりに充填シートによって第1介
在部71および第2介在部72を形成してもよい。
【0279】
本実施形態によれば、シート12間における第1領域12Dに第1介在部71が設けら
れているので、第1介在部71上のシート12の部分を先端面12A1側に向けてなだら
かに持ち上げることができる。これにより、シート12の巻き始め端部12Aに起因する
段差を有効に緩和できる。
【0280】
本実施形態によれば、シート12間における第2領域12Eに第2介在部72が設けら
れているので、第2介在部72上のシート12の部分をなだらかに持ち上げることができ
る。これにより、固定部材17に起因する段差を有効に緩和できる。
【0281】
また、シート12の巻き始め端部12Aに起因する段差や固定部材17に起因する段差
を緩和できるので、シート12の変形を抑制することができる。
【0282】
第1隙間に第1充填部を充填し、また第2隙間に第2充填部を充填すると、第1充填部
や第2充填部は、圧力が加わっていない部分に流動する場合がある。これに対し、本実施
形態においては、シート12間に第1介在部71や第2介在部72を設けているので、第
1介在部71や第2介在部72を構成する材料が流動しにくく、はみ出しにくい。
【実施例0283】
本発明を詳細に説明するために、以下に実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの
記載に限定されない。図40(A)は、実施例7に係るロール体の第1充填部周辺の位置
に対する変位量を表したグラフであり、図40(B)は、実施例8に係るロール体の第1
充填部周辺の位置に対する変位量を表したグラフであり、図40(C)は、実施例9に係
るロール体の第1充填部周辺の位置に対する変位量を表したグラフである。
【0284】
<ハードコート層用組成物の調製>
まず、下記に示す組成となるように各成分を配合して、ハードコート層用組成物1を得
た。
【0285】
(ハードコート層用組成物1)
・ペンタエリスリトールトリアクリレート(製品名「KAYARAD-PET-30」、
日本化薬株式会社製):60質量部
・光重合開始剤(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、製品名「Omnira
d184」、IGM Resins B.V.社製):5質量部
・シリコーン系レベリング剤(製品名「セイカビーム10-28」、大日精化工業株式会
社製、固形分10%):0.1質量部
・シリカ粒子(製品名「SIRMIBK-H84」、CIKナノテック株式会社製、平均
粒子径30nm、固形分30%):3質量部
・メチルイソブチルケトン(MIBK):80質量部
・シクロヘキサノン:20質量部
【0286】
<実施例1>
まず、内径153mm、外径167mmおよび幅1600mmの繊維強化プラスチック
製の円筒状の巻芯の外周面に、固定部材としての長さ1380mm、幅20mmおよび厚
み10μmの長方形状の両面テープを巻芯の幅方向に沿って貼り付けた。
【0287】
両面テープを貼り付けた後、巻芯を巻取装置のチャッキング部材で保持して、巻取装置
に固定した。その後、両面テープにおける巻芯の幅方向に沿って延びる第1端面および第
2端面にそれぞれ接触するように、塗布材料として、1液硬化性シリコーン樹脂組成物(
製品名「ハピオシールプロHG」、株式会社カンペハピオ製)を25℃の環境下で2本塗
布した。このシリコーン樹脂組成物の色は灰色であった。また、このシリコーン樹脂組成
物の塗布時の剪断粘度は、それぞれ180Pa・sであり、シリコーン樹脂組成物は、巻
芯の幅方向に沿い、かつ単位幅当たりの塗布量が1cm/mとなるようにそれぞれ直線
状に塗布された。
【0288】
そして、シートとしての長さ3000m、幅1340mmおよび厚み80μmのアクリ
ル樹脂フィルム(面内位相差Re:5nm)の長手方向の巻き始め端部を巻芯の幅方向に
沿って両面テープに貼り付けて、アクリル樹脂フィルムを巻芯の外周面に固定した。なお
、アクリル樹脂フィルムは、アクリル樹脂フィルムの巻き始め端部の長手方向の先端面が
シリコーン樹脂組成物と接し、かつ巻芯の径方向において両面テープの第2端面とほぼ揃
うように配置された。
【0289】
その後、アクリル樹脂フィルム全てを巻取装置によって巻芯に巻回して、巻芯と1周目
のアクリル樹脂フィルムの間に位置し、かつアクリル樹脂フィルムの巻き始め端部の先端
面に接する第1隙間にシリコーン樹脂組成物を充填するとともに、巻芯と1周目のアクリ
ル樹脂フィルムの間に位置し、かつ両面テープの第1端面に接する第2隙間にシリコーン
樹脂組成物を充填した。これにより、ロール体を得た。ロール体においては、シリコーン
樹脂組成物は硬化して、第1隙間に充填された長さ20mm、幅1340mmおよび最大
厚み300μmの第1充填部と、第2隙間に充填された長さ20mm、幅1340mmお
よび最大厚み300μmの第2充填部が形成されていた。
【0290】
シリコーン樹脂組成物の剪断粘度は、株式会社アントンパール・ジャパン製の動的粘弾
性測定装置を用いて測定された。具体的には、シリコーン樹脂組成物の剪断粘度は、直径
25mmのパラレルプレートを用いて、25℃において剪断速度1[1/s]の時の剪断粘
度を測定することによって求められた。シリコーン樹脂組成物の粘度は、シリコーン樹脂
組成物の粘度を10回測定し、測定された10の粘度中、最大値と最小値を除いた8つの
剪断粘度の算術平均値を求めることによって求めた。以下の他の実施例で用いた塗布材料
の剪断粘度も実施例1と同様にして測定された。
【0291】
アクリル樹脂フィルムの面内位相差Reは、位相差フィルム・光学材料検査装置(製品
名「RETS-100」、大塚電子株式会社製)を用いて測定された。具体的には、まず
、RETS-100の光源を安定させるため、光源を点灯させてから60分以上放置した
。その後、回転検光子法を選択するとともに、θモード(角度方向位相差測定モード)選
択する。このθモードを選択することにより、ステージは傾斜回転ステージとなった。
【0292】
次いで、RETS-100に以下の測定条件を入力した。
(測定条件)
・リタデーション測定範囲:回転検光子法
・測定スポット径:φ5mm
・傾斜角度範囲:-40°~40°
・測定波長範囲:400nm~800nm
・サンプルの平均屈折率:1.5
・厚み:80μm
【0293】
次いで、この装置にサンプルを設置せずに、バックグラウンドデータを得た。装置は閉
鎖系とし、光源を点灯させる毎にこれを実施した。
【0294】
その後、この装置内のステージ上にサンプルを設置した。サンプルの大きさは50mm
×50mmとした。
【0295】
サンプルを設置した後、温度23℃および相対湿度50%の環境下で、XY平面上でス
テージを360°回転させて、進相軸および遅相軸を測定した。測定終了後、遅相軸を選
択した。その後、遅相軸を中心にステージが設定した角度範囲に傾きながら測定が行われ
、10°刻みで、設定傾斜角度範囲および設定波長範囲のデータ(Re)が得られた。面
内位相差Reは、位置が異なる5点で測定した。具体的には、図2に示されるようにサン
プルの中心A1および点A2~A4の合計5点で測定した。そして、5点の測定値中、最
大値と最小値を除いた3点の算術平均値を面内位相差Reとした。
【0296】
<実施例2>
実施例2においては、第1充填部および第2充填部を形成するためのシリコーン樹脂組
成物の代わりに、2液硬化性シリコーンゴム組成物(製品名「KE-24」、信越化学株
式会社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてロール体を得た。このシリコーン
ゴム組成物は混合時では白色であり、またシリコーンゴム組成物の塗布時の剪断粘度は、
75Pa・sであった。
【0297】
<実施例3>
実施例3においては、第1充填部および第2充填部を形成するためのシリコーン樹脂組
成物の代わりに、2液硬化性シリコーンゴム組成物(製品名「ELASTOSIL(登録
商標) M 4503」、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、縮合硬化性)を用いたこ
と以外は、実施例1と同様にしてロール体を得た。このシリコーンゴム組成物は混合時で
は白色であり、またこのシリコーンゴム組成物の塗布時の剪断粘度は、40Pa・sであ
った。さらに、このシリコーンゴム組成物は、揮発成分や接着成分を含まないものであっ
た。
【0298】
実施例3に係るロール体における第1充填部の構成材料を巻芯の外周面に対し垂直に剥
離速度10mm/分で剥離する90°剥離試験を行ったとき、0.2Nの引張力で、構成
材料が剥がれた。
【0299】
上記90°剥離試験は、サンプルおよびバネ式テンションゲージ(株式会社大場計器製
作所製)を用いて行われた。具体的には、まず、サンプルの大きさよりも大きな型を用意
し、この型を巻芯の外周面に配置した。そして、この型に2液硬化性シリコーンゴム組成
物(製品名「ELASTOSIL(登録商標) M 4503」、旭化成ワッカーシリコー
ン株式会社製、縮合硬化性)を流し込み、硬化させて、材料層を得た。その後、材料層を
型から外すとともに、裁断機により20mm×100mmの大きさに材料層を切り出して
、巻芯の外周面に設けられたサンプルを得た。そして、サンプルの一端をバネ式テンショ
ンゲージにより保持して、温度25℃、相対湿度50%の環境下で、引張力を測定しなが
ら、巻芯の外周面に対し垂直に前記一端を引き上げて、サンプルを剥離速度10mm/秒
で剥離した。そして、90°剥離試験を行った10個のサンプル中、引張力が最大となっ
たサンプルと最小となったサンプルを除いた8個のサンプルの引張力の算術平均値を上記
構成材料の引張力とした。
【0300】
実施例3に係るロール体における第1充填部の構成材料の引張強さは3.5MPaであ
り、切断時伸びは450%であり、引裂強さは12.0N/mmであった。また、デュロ
メータータイプAで測定した第1充填部の構成材料の硬さは、28°であり、第1充填部
の構成材料の線収縮率は、0.10%であった。
【0301】
第1充填部の構成材料の引張強さは、JIS K6251:2017に準拠して、サン
プルおよびテンシロン万能試験機(製品名「RTC-1310A」、株式会社エー・アン
ド・デイ製)を用いて測定した。具体的には、まず、サンプルの大きさよりも大きな型を
用意し、この型を巻芯の外周面に配置した。そして、この型に第1充填部を形成するため
の2液硬化性シリコーンゴム組成物(製品名「ELASTOSIL(登録商標) M 45
03」、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、縮合硬化性)を流し込み、硬化させて、
材料層を得た。その後、材料層を型から外すとともに、高分子計器株式会社製の引張2号
形ダンベル状打抜刃によりJIS K6251:2017に記載のダンベル状2号形の大
きさに材料層を打ち抜き、サンプルを得た。その後、サンプルを25℃の環境下で24時
間保持した。そして、上記テンシロン万能試験機の一対の把持具にサンプルの長手方向の
両端部を把持させて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で初期把持具間距離20mm
および引張速度100mm/分の条件で引張試験を行い、サンプルの引張強さを測定した
。そして、10個のサンプル中、最大値および最小値を除く8個のサンプルの引張強さの
算術平均値を上記構成材料の引張強さとした。
【0302】
第1充填部の構成材料の切断時伸びは、JIS K6251:2017に準拠して、サ
ンプルおよびテンシロン万能試験機(製品名「RTC-1310A」、株式会社エー・ア
ンド・デイ製)を用いて引張強さの測定方法と同様にして測定した。そして、10個のサ
ンプル中、最大値および最小値を除く8個のサンプルの切断時伸びの算術平均値を上記構
成材料の切断時伸びとした。
【0303】
第1充填部の構成材料の引裂強さは、JIS K6252:2007に準拠して、サン
プルおよびテンシロン万能試験機(製品名「RTC-1310A」、株式会社エー・アン
ド・デイ株式会社製)を用いて引張強さの測定方法と同様にして測定した。そして、10
個のサンプル中、最大値および最小値を除く8個のサンプルの引裂強さの算術平均値を上
記構成材料の引裂強さとした。
【0304】
第1の充填部の構成材料におけるデュロメータータイプAでの硬さ測定は、JIS K
6253:1997に準拠して測定された。具体的には、まず、サンプルの大きさよりも
大きな型を用意し、この型を巻芯の外周面に配置した。そして、この型に第1充填部を形
成するための2液硬化性シリコーンゴム組成物(製品名「ELASTOSIL(登録商標
) M 4503」、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、縮合硬化性)を流し込み、必
要に応じて硬化させて、材料層を得る。その後、材料層を型から外すとともに、裁断機等
により材料層を切り出して、大きさ100mm×100mm、厚み10mmのサンプルを
得た。そして、デュロメータータイプA(製品名「GS-719N(TYPEA)」、株
式会社テクロック製)を用いて、温度25℃、相対湿度50%の環境下で硬さを測定した
。そして、10個のサンプル中、最大値および最小値を除く8個のサンプルの硬さの算術
平均値を上記構成材料の硬さとした。
【0305】
第1充填部の線収縮率は、以下のようにして測定することができる。まず、厚み2mm
、130mm角の大きさの金型を用意し、この金型に第1充填部を形成するための2液硬
化性シリコーンゴム組成物(製品名「ELASTOSIL(登録商標) M 4503」、
旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、縮合硬化性)を流し込み、硬化させて、サンプル
(成形物)を得た。完全に硬化した後、サンプルの寸法を測定し、金型の内側の寸法と比
較して、JIS K6249:2003に基づいて線収縮率を求めた。10個のサンプル
中、最大値および最小値を除く8個のサンプルの線収縮率の算術平均値を上記構成材料の
線収縮率とした。
【0306】
<実施例4>
実施例4においては、第1充填部および第2充填部を形成するためのシリコーン樹脂組
成物の代わりに、2液硬化性シリコーンゴム組成物(製品名「ELASTOSIL(登録
商標) M 4601」、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、付加反応性)を用いたこ
と以外は、実施例1と同様にしてロール体を得た。このシリコーンゴム脂組成物は混合時
では白色であり、またこのシリコーンゴム組成物の塗布時の剪断粘度は、20Pa・sで
あった。
【0307】
<実施例5>
実施例5においては、第1充填部および第2充填部を形成するためのシリコーン樹脂組
成物の代わりに、2液硬化性ウレタン樹脂組成物(製品名「人肌のゲル」、株式会社エク
シールコーポレーション製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてロール体を得た
。このウレタン樹脂組成物は混合時では白色であり、ウレタン樹脂組成物の塗布時の剪断
粘度は、6.5Pa・sであった。
【0308】
<実施例6>
まず、内径153mm、外径167mmおよび幅1600mmの繊維強化プラスチック
製の円筒状の巻芯の外周面に、固定部材としての長さ1380mm、幅20mmおよび厚
み10μmの長方形状の両面テープを巻芯の幅方向に沿って貼り付けた。
【0309】
両面テープを貼り付けた後、巻芯を巻取装置のチャッキング部材で保持して、巻取装置
に固定した。そして、シートとしての長さ3000m、幅1490mmおよび厚み80μ
mのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、面内位相差Re:1000
nm、Nz係数:20)の長手方向の巻き始め端部を巻芯の幅方向に沿って両面テープに
貼り付けて、PETフィルムを巻芯の外周面に固定した。
【0310】
その後、PETフィルムを巻取装置によって1周巻き取り、中間ロール体を得た。中間
ロール体においては、巻芯と1周目のPETフィルムの間に位置し、かつPETフィルム
の巻き始め端部の先端面に接する第1隙間と、巻芯と1周目のPETフィルムの間に位置
し、両面テープの第1端面に接する第2隙間とが形成されていた。
【0311】
中間ロール体を得た後、巻芯の幅方向に沿って中間ロール体の外周面を構成するPET
フィルムの表面に、塗布材料として、1液硬化性シリコーン樹脂組成物(製品名「ハピオ
シールプロHG」、株式会社カンペハピオ製)を25℃の環境下で塗布した。シリコーン
樹脂組成物の塗布時の粘度は、それぞれ180Pa・sであり、シリコーン樹脂組成物は
、巻芯の幅方向に沿い、かつ単位幅当たりの塗布量が1cm/mとなるように直線状に
塗布された。具体的には、シリコーン樹脂組成物は、第1隙間に対応する第1領域および
第2隙間に対応する第2領域にそれぞれ塗布された。
【0312】
シリコーン樹脂組成物を塗布した後、PETフィルム全てを巻取装置によって巻芯に再
度巻回して、PETフィルム間の第1領域および第2領域のそれぞれにシリコーン樹脂組
成物を介在させた。これにより、ロール体を得た。ロール体においては、シリコーン樹脂
組成物は硬化して、PETフィルム間の第1領域に設けられた長さ20mm、幅1340
mmおよび最大厚み300μmの第1介在部と、PETフィルム間の第2領域に設けられ
た長さ20mm、幅1340mmおよび最大厚み300μmの第2介在部が形成されてい
た。
【0313】
実施例6で用いたPETフィルムの面内位相差Reは、実施例1で用いたアクリル樹脂
フィルムの面内位相差Reと同様にして測定された。ただし、この場合には、サンプルの
平均屈折率Nを1.617とした。
【0314】
<実施例7>
実施例7においては、シートとしての長さ3000m、幅1340mmおよび厚み85
μmのアクリル樹脂フィルム、具体的には、アクリル樹脂フィルムおよびハードコート層
からなる積層体を用い、また第1充填部および第2充填部を形成するためのシリコーンゴ
ム組成物を、巻芯の幅方向に沿い、かつ単位幅当たりの塗布量が0.3cm/mとなる
ように直線状に塗布したこと以外は、実施例3と同様にしてロール体を得た。
【0315】
上記積層体は、以下のようにして形成された。まず、連続塗工機を用いて、巻き出しロ
ールから実施例1で用いられた長さ3000m、幅1340mmおよび厚み80μmのア
クリル樹脂フィルムを第1ユニットの塗工部に送り出し、上記ハードコート層用組成物1
を塗布して、塗膜を形成した。その後、塗膜を乾燥部で温度70℃、60秒間乾燥し、塗
膜中の溶剤を蒸発させ、硬化部で紫外線を積算光量が150mJ/cmとなるように照
射して塗膜を硬化させることにより、膜厚5.0μmおよび塗工幅1300mmのハード
コート層を形成し、連続成膜した長さ3000mおよび厚み85μmの積層体を得た。
【0316】
<実施例8>
実施例8においては、第1充填部および第2充填部を形成するためのシリコーンゴム組
成物を、巻芯の幅方向に沿い、かつ単位幅当たりの塗布量が0.5cm/mとなるよう
に直線状に塗布したこと以外は、実施例7と同様にしてロール体を得た。
【0317】
<実施例9>
実施例9においては、第1充填部および第2充填部を形成するためのシリコーンゴム組
成物を、巻芯の幅方向に沿い、かつ単位幅当たりの塗布量が0.8cm/mとなるよう
に直線状に塗布したこと以外は、実施例7と同様にしてロール体を得た。
【0318】
<実施例10>
実施例10においては、第1充填部および第2充填部を形成するためのシリコーンゴム
組成物を単位幅当たりの塗布量が1cm/mとなるように直線状に塗布したこと以外は
、実施例9と同様にしてロール体を得た。
【0319】
<実施例11>
実施例11においては、第1充填部および第2介在部を形成するための2液硬化性シリ
コーンゴム組成物の塗布時の剪断粘度を2Pa・sとし、また単位幅当たりの塗布量を1
.5cm/mとしたこと以外は、実施例9と同様にしてロール体を得た。
【0320】
<実施例12>
実施例12においては、第1充填部および第2介在部を形成するためのシリコーンゴム
組成物の塗布時の剪断粘度を6.5Pa・sとし、また単位幅当たりの塗布量を1.2c
/mとしたこと以外は、実施例9と同様にしてロール体を得た。
【0321】
<実施例13>
まず、内径153mm、外径167mmおよび幅1600mmの繊維強化プラスチック
製の円筒状の巻芯を巻取装置のチャッキング部材で保持して、巻取装置に固定した。その
後、巻芯の幅方向に沿って、塗布材料として、2液硬化性シリコーンゴム組成物(製品名
「ELASTOSIL(登録商標) M 4503」、旭化成ワッカーシリコーン株式会社
製、縮合硬化性)を25℃の環境下で1本塗布した。シリコーンゴム組成物の塗布時の粘
度は、180Pa・sであり、シリコーンゴム組成物は、巻芯の幅方向に沿い、かつ単位
幅当たりの塗布量が1cm/mとなるように直線状に塗布された。
【0322】
その後、両面テープと2液硬化性シリコーンゴム組成物の間の離間距離が3mmとなる
ように、固定部材としての長さ1380mm、幅20mmおよび厚み10μmの長方形状
の両面テープを巻芯の幅方向に沿って貼り付けた。離間距離は、10箇所測定し、測定さ
れた10箇所の離間距離中、最大値と最小値を除いた8箇所の離間距離の算術平均値を求
めることによって求めた。以下の実施例においても、離間距離は、このようにして求めた
【0323】
そして、シートとしての実施例7と同様の長さ3000m、幅1340mmおよび厚み
85μmの積層体の長手方向の巻き始め端部を巻芯の幅方向に沿って両面テープに貼り付
けて、積層体を巻芯の外周面に固定した。なお、積層体は、積層体の巻き始め端部の長手
方向の先端面がシリコーンゴム組成物と接し、かつ巻芯の径方向において両面テープの第
2端面とほぼ揃うように配置された。
【0324】
その後、積層体を巻取装置によって巻芯に巻回して、巻芯と1周目の積層体の間に位置
し、かつ積層体の巻き始め端部の先端面に接する第1隙間にシリコーンゴム組成物を充填
した。
【0325】
その後、積層体を巻取装置によって1周巻き取り、中間ロール体を得た。中間ロール体
においては、巻芯と1周目の積層体の間に位置し、両面テープの第1端面に接する第2隙
間が形成されていた。
【0326】
中間ロール体を得た後、巻芯の幅方向に沿って中間ロール体の外周面を構成する積層体
の表面に、塗布材料として、2液硬化性シリコーンゴム組成物(製品名「ELASTOS
IL(登録商標) M 4503」、旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、縮合硬化性)
を25℃の環境下で塗布した。シリコーンゴム組成物の塗布時の粘度は、180Pa・s
であり、シリコーンゴム組成物は、巻芯の幅方向に沿い、かつ単位幅当たりの塗布量が1
cm/mとなるように直線状に塗布された。具体的には、シリコーンゴム組成物は、第
2隙間に対応する第2領域に塗布された。
【0327】
シリコーンゴム組成物を塗布した後、積層体全てを巻取装置によって巻芯に再度巻回し
て、積層体間の第2領域にシリコーンゴム組成物を介在させた。これにより、ロール体を
得た。ロール体においては、シリコーンゴム組成物はそれぞれ硬化して、第1隙間に幅1
340mmの第1充填部が形成され、また積層体間の第2領域に幅1340mmの第2介
在部が形成されていた。
【0328】
<実施例14>
実施例12においては、第1充填部および第2介在部を形成するための2液硬化性シリ
コーンゴム組成物(製品名「ELASTOSIL(登録商標) M 4503」、旭化成ワ
ッカーシリコーン株式会社製、縮合硬化性)の代わりに、2液硬化性シリコーンゴム組成
物(製品名「ELASTOSIL(登録商標) M 4601」、旭化成ワッカーシリコー
ン株式会社製、付加反応性)を用いたこと以外は、実施例11と同様にしてロール体を得
た。シリコーンゴム組成物の塗布時の剪断粘度は、10Pa・sであった。
【0329】
<実施例15>
実施例15においては、第1充填部および第2介在部を形成するための2液硬化性シリ
コーンゴム組成物の塗布時の剪断粘度を10Pa・sとし、また単位幅当たりの塗布量を
0.8cm/mとしたこと、および両面テープと2液硬化性シリコーンゴム組成物の間
の離間距離を3mmとしたこと以外は、実施例13と同様にしてロール体を得た。
【0330】
<実施例16>
実施例16においては、第1充填部および第2介在部を形成するための2液硬化性シリ
コーンゴム組成物の塗布時の剪断粘度を10Pa・sとし、また単位幅当たりの塗布量を
1.2cm/mとしたこと、および両面テープと2液硬化性シリコーンゴム組成物の間
の離間距離を3mmとしたこと以外は、実施例13と同様にしてロール体を得た。
【0331】
<比較例1>
比較例1においては、塗布材料を塗布しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、
ロール体を得た。
【0332】
<比較例2>
比較例2においては、アクリル樹脂フィルムの代わりに、実施例7で用いた積層体を用
いたこと以外は、比較例1と同様にして、ロール体を得た。
【0333】
実施例1~16に係るロール体において、第1充填部のエッジ厚みT1を測定した。エ
ッジ厚みT1は、走査型光干渉式表面形状測定機(製品名「New View7300」
、Zygo社製)を用いて測定した。具体的には、まず、アクリル樹脂フィルムやPET
フィルム等のフィルムや積層体を全て繰り出すと、第1充填部が積層体側に付着し、巻芯
から剥がれたものがあった。そして、積層体から第1充填部を含む大きさ2mm×5mm
の1以上のサンプルを切り出した。サンプルは、第1充填部の先端部を含み、かつ汚れや
指紋等が付着していない任意の箇所から切り出した。そして、以下の測定条件で、第1充
填部のエッジ厚みT1を測定した。エッジ厚みT1は、エッジ厚みを10箇所測定し、測
定された10箇所の厚み中、最大値と最小値を除いた8箇所の厚みの算術平均値を求める
ことによって求めた。
(測定条件)
・対物レンズ:10倍
・Zoom:1倍
・測定領域:2.17mm×2.17mm
・scan Length:5μm
・min mod:0.015
・温度:23℃
・相対湿度:50%
【0334】
<変形緩和長さ測定>
実施例および比較例に係るロール体において、アクリル樹脂フィルムやPETフィルム
等のフィルムや積層体の巻き始め端部に起因する段差および両面テープに起因する段差が
緩和される長さをそれぞれ測定した。具体的には、巻き始め端部から巻き終わり端部に向
けて段差が小さくなっていくため、まず段差が視認される地点までフィルムや積層体の繰
り出し長さ(m)を測りながら繰り出した。そして、段差が視認される地点でフィルムや
積層体を切り取った。フィルムや積層体の切り取った部分にポリビニルアルコールフィル
ムを貼り合せた状態で、800Lux以上2000Lux以下の室内環境下において、フ
ィルムや積層体に白色LED灯を映り込ませた状態で反射光により目視観察を行った。そ
して、段差が視認されなくなった地点から巻き始め端部までの距離を測定し、これを変形
緩和長さとした。ここで、フィルムや積層体に映り込んだ白色LED灯の輪郭のラインが
、フィルムや積層体の他の部分と比較して歪む部分がある場合を段差が存在すると判断し
、段差が存在した周辺において映り込ませた白色LED灯の輪郭のラインがフィルムや積
層体の他の部分と同じと判断できる部分を段差が存在しないと判断した。白色LED灯は
、白色LED灯の長手方向がフィルムや積層体の長手方向に沿うように配置した。白色L
ED灯の長さは、フィルムや積層体における段差が存在する部分と段差が存在しない部分
とに渡った長さとした。観察の際には、白色LED灯のラインが明確に見える方を適宜選
択して、白色LED灯がフィルムや積層体に映り込んでその輪郭のラインが見える状態と
した。また、目視観察は、フィルムや積層体の表面の法線方向を基準(0°)として、あ
らゆる角度(-180°~180°)から行われた。
【0335】
<第4介在部の存在確認>
実施例3、7~16において、巻き始め端部上に第4介在部が存在するか否か確認した
。具体的には、まず、表面が2周目の積層体となるまでロール体から積層体を繰り出した
。そして、2周目の積層体が表面となったロール体において、巻き始め端部付近を目視観
察し、巻き始め端部上に着色されている部分が存在するか観察した。そして、巻き始め端
部上に着色されている部分が存在する場合には、第4介在部が存在し、着色されている部
分が存在しない場合には、第4介在部が存在しないとした。観察者は、15人とし、全て
の観察者が巻き始め端部上に着色されている部分が存在するとした場合に第4介在部が存
在すると判断した。
【0336】
<L1、L1+L2、T2、S1、S1+S2、IL3傾き測定>
実施例3、7~16に係るロール体において、第4介在部の存在が確認されなかった場
合には、長さL1、厚みT2、面積S1を測定するとともに、長さL1/厚みT2、面積
S1/厚みT2を求めた。また、第4介在部の存在が確認された場合には、長さL1+長
さL2、厚みT1、T2、面積S1+面積S2を測定するとともに、(長さL1+長さL
2)/厚みT2、(面積S1+面積S2)/厚みT2を求めた。なお、長さL1、L2、
厚みT2、面積S1、S2は、図4図8に示される部分を意味する。
【0337】
具体的には、まず、ロール体を回転させるための治具と、レーザー変位計(製品名「L
K-G30」、株式会社キーエンス製)とを用意し、それぞれ所定の位置に配置した。治
具は、巻芯の幅方向の孔に挿入され、ロール体を回転可能に保持した。
【0338】
レーザー変位計は、ロール体の上方に位置し、レーザー光がロール体の表面に向けて照
射されるように3台配置された。レーザー変位計の配置箇所は、以下の通りとした。まず
、積層体の幅を3等分する第1位置および第2位置を定めた。第1位置は、積層体の短手
方向の第1端側に位置し、第2位置は、第1位置とは反対側の第2端側に位置するもので
あった。そして、1台目のレーザー変位計は第1位置と第1端の中点にレーザー光が照射
されるように配置され、2台目のレーザー変位計は第1位置と第2位置の中点にレーザー
光が照射されるように配置され、3台目のレーザー変位計は第2位置と第2端の中点にレ
ーザー光が照射されるように配置された。
【0339】
そして、ロール体を治具に取り付け、ロール体から第1充填部が露出するまでアクリル
樹脂フィルムを繰り出した。その後、第1充填部が露出した状態で、温度23℃および相
対湿度50%の環境下で、巻芯を回転速度30mm/sで回転させながらレーザー変位計
によってサンプリング周期200μsで連続的に変位量を測定して、横軸を位置(mm)
とし、縦軸を変位量(mm)とするグラフ(図40(A)~図40(C)参照)を得た。
この測定は、第1充填部の先端部から先端面に接する位置に向けて行い、この測定におい
ては、基準高さ(変位量0mmライン)を巻芯の高さとし、巻芯と第1充填部の高さの差
を第1充填部の厚みとした。得られたグラフは、実質的にシートの長手方向および巻芯の
径方向を含む平面を表すものである。また、このグラフは、横軸の1目盛りを5mmとし
、縦軸の1目盛りを0.02mmとした。
【0340】
このグラフにおいて、変位量が急激に低下し始める位置変位曲線上の位置を位置E1と
した。そして、第4介在部の存在が確認されなかった場合には、変位量0mmラインと位
置E1の変位量の差を求めることによって、第1充填部における先端面に接する位置の厚
みT2を求めた。
【0341】
第4介在部の存在が確認された場合には、厚みT2は、以下の方法によって測定された
。まず、巻き始め端部12A、第1充填部14、および2周目のシート12を含む部分が
潰れないようにこの部分を含む大きさ2cm×2cmのサンプルを採取し、固定した。そ
して、固定されたサンプルの断面を研磨し、温度23℃および相対湿度50%の環境下で
、第1充填部の厚みT2を実体顕微鏡(製品名「デジタルマイクロスコープVHX-70
00」、株式会社キーエンス製)で測定した。実体顕微鏡による厚みT2の測定は、デジ
タルマイクロスコープの照明として同軸落射照明を選択し、倍率500倍で、暗視野およ
び反射光で行われた。
【0342】
また、第4介在部の存在が確認されなかった場合には、長さL1は、厚みT2と同様に
位置変位曲線のグラフから求めた。具体的には、まず、グラフから上記位置E1および変
位量が上昇し始める箇所における変位量0mmラインと位置変位曲線の交点を位置E2と
した。次いで、上記位置E1を通り、変位量0mmラインに垂直な仮想線IL4を引いた
。そして、仮想線IL4と変位量0mmラインの交点を位置E3として、位置E2と位置
E3との距離を求めることにより長さL1を求めた。面積S1は、上記位置E2から位置
E3までの領域において各測定点での厚みと測定点間毎の幅との積を求め、それを合計す
ることによって算出された。なお、測定点間の幅を上記数式(3)に基づいて、サンプリ
ング周期、巻芯の回転速度、および巻芯の外径から求めたところ、6.24μmであった
。第4介在部の存在が確認された場合には、第4介在部の存在が確認されなかった場合の
長さL1と同様にして、長さL1+長さL2を求めた。
【0343】
そして、第4介在部の存在が確認されなかった場合には、求めた長さL1、厚みT2、
面積S1を用いて、長さL1/厚みT2、面積S1/厚みT2を求めた。また、第4介在
部の存在が確認された場合には、求めた長さL1と長さL2の合計、厚みT2、面積S1
と面積S2の合計を用いて、(長さL1+長さL2)/厚みT2、(面積S1+面積S2
)/厚みT2を求めた。
【0344】
また、上記グラフにおいて、位置E1と位置E2を通る仮想線IL3(図40(A)~
図40(C)参照)を引き、この仮想線IL3の傾きを求めた。
【0345】
<L4、T6、S3測定>
実施例13~16に係るロール体において、長さL4、最大厚みT6、断面積S3を測
定するとともに、長さL4/最大厚みT6、断面積S3/最大厚みT6を求めた。なお、
長さL4、最大厚みT6は、図27に示される部分を意味し、断面積S3は、図29に示
される部分を意味する。長さL4、最大厚みT6、断面積S3は、ロール体を回転させる
ための治具と、レーザー変位計(製品名「LK-G30」、株式会社キーエンス製)とを
用いて、測定された。具体的には、まず、長さL1等の測定と同様に、ロール体を治具に
取り付けるとともに3台のレーザー変位計を所定の位置に配置した後、ロール体から第2
介在部が露出するまで積層体を繰り出した。その後、第2介在部が露出した状態で、温度
23℃および相対湿度50%の環境下で、巻芯を回転速度30mm/sで回転させながら
レーザー変位計によってサンプリング周期200μsで連続的に変位量を測定して、横軸
を位置(mm)とし、縦軸を変位量(mm)とするグラフを得た。この測定は、第2介在
部の両面テープ側の第1先端とは反対側の第2先端から第1先端に向けて行い、この測定
においては、基準高さ(変位量0mmライン)を巻芯の高さとし、巻芯と第2介在部の高
さの差を第2介在部の厚みとした。得られたグラフは、実質的にシートの長手方向および
巻芯の径方向を含む平面を表すものである。また、このグラフは、横軸の1目盛りを5m
mとし、縦軸の1目盛りを0.02mmとした。
【0346】
このグラフにおいて、変位量が最も高くなる位置を見付け、変位量0mmラインとこの
位置の変位量の差を求めることによって、第2介在部における最大厚みT6を求めた。
【0347】
また、このグラフから変位量が上昇し始める箇所における変位量0mmラインと位置変
位曲線の交点である第1位置を見付けた。次いで、上記変位量が最も高くなる位置を通り
、変位量0mmラインに垂直な仮想線を引いた。そして、この仮想線と変位量0mmライ
ンの交点を第2位置として、第1位置と第2位置との距離を求めることにより長さL4を
求めた。断面積S3は、上記第1位置から第2位置までの領域において各測定点での厚み
と測定点間毎の幅との積を求め、それを合計することによって算出された。なお、測定点
間の幅を上記数式(3)に基づいて、サンプリング周期、巻芯の回転速度、および巻芯の
外径から求めたところ、6.24μmであった。
【0348】
また、求めた長さL4、最大厚みT6、断面積S3を用いて、長さL4/最大厚みT6
、断面積S3/最大厚みT6を求めた。
【0349】
以下、結果を表1~表3に示す。
【表1】
【0350】
【表2】
【0351】
【表3】
【0352】
比較例1に係るロール体は、巻き始め端部における変形緩和長さおよび両面テープにお
ける変形緩和長さがとともに長かった。これは、第1隙間が空洞であったので、アクリル
樹脂フィルムの巻き始め端部に起因する段差が大きく、また第2隙間が空洞であったので
、両面テープに起因する段差が大きかったためであると考えられる。これに対し、実施例
1~12に係るロール体は、巻き始め端部における変形緩和長さおよび両面テープにおけ
る変形緩和長さとともに比較例1に係るロール体よりも短かった。これは、実施例1~5
、7~15に係るロール体においては、第1隙間に第1充填部が充填されていたので、ア
クリル樹脂フィルムの巻き始め端部に起因する段差が小さく、また第2隙間に第2充填部
が充填され、または第2隙間に対応する領域に第2介在部が介在されていたので、両面テ
ープに起因する段差が小さかったためであると考えられる。また実施例6においては、第
1隙間に対応する第1領域に第1介在部が介在していたので、PETフィルムの巻き始め
端部に起因する段差が小さく、また第2隙間に対応する第2領域に第2介在部が介在して
いたので、両面テープに起因する段差が小さかったためであると考えられる。
【0353】
実施例3、8~16に係るロール体の第1充填部は、長さL1/厚みT2または(長さ
L1+長さL2)/厚みT2が90以上であり、および/または面積S1/厚みT2また
は(面積S1+面積S2)/厚みT2が3.0以上であったので、長さL1/厚みT2が
90未満の実施例7に係るロール体よりも、巻き始め端部における変形緩和長さが短かっ
た。
【0354】
実施例13~16に係るロール体の第2介在部は、長さL4/最大厚みT6が12以上
であり、および/または断面積S3/最大厚みT6が2.5以上であったので、両面テー
プにおける変形緩和長さが短かった。
【0355】
実施例1、2、6、13に係るロール体においては、塗布時のシリコーン樹脂組成物や
シリコーンゴム組成物の剪断粘度が60Pa・s以上であったので、巻芯とアクリル樹脂
フィルムやPETフィルムの間からの上記組成物のはみ出しが塗布時および巻き取り時の
圧力が加わった場合のいずれでも確認されなかった。実施例3、4、7~10に係るロー
ル体においては、塗布時の組成物の剪断粘度が60Pa・s未満であったが、15Pa・
s以上であったので、塗布時のはみ出しは無かったものの、巻き取り時の圧力が加わった
場合には組成物のはみ出しが確認された。実施例5、11、12、14~16は、塗布時
の組成物の剪断粘度が、15Pa・s未満であったので、巻芯とアクリル樹脂フィルムの
間からの組成物のはみ出しが確認された。
【0356】
また、実施例3に係るロール体において、リワーク性試験を行った。具体的には、まず
、アクリル樹脂フィルムを巻き出して、第1充填部を露出させた。そして、第1充填部の
端部に巻芯を傷つけないように刃状のものできっかけを作り、指でゆっくりと巻芯から第
1充填部を剥がすことを試みた。リワーク性の評価基準は、第1充填部が綺麗に剥がれた
場合を良好とし、第1充填部が破断等によって一部が巻芯に残存した場合は不良とした。
このような評価において、実施例3に係るロール体の第1充填部は、綺麗に剥がれたので
、良好であった。なお、実施例3以外の実施例に係るロール体においても、リワーク性試
験を行ったところ、リワーク性は実施例3に係る第1充填部と同様に良好であった。実施
例3以外の実施例に係るロール体における第1充填部の構成材料の引張強さは3.0MP
a以上5.5MPa以下であり、切断時伸びは250%以上600%以下であり、引裂強
さは6N/mm以上25N/mm以下であり、デュロメータータイプAで測定した第1充
填部の構成材料の硬さは、10°以上50°以下であり、第1充填部の構成材料の線収縮
率は、0%以上1.0%以下の範囲内のものであった。また、表1に示されるように、実
施例1~16に係るロール体の第1充填部のエッジ厚みT1は、1.5μm以上20μm
以下の範囲内であった。第1充填部を剥がす際、または洗浄や拭き取る際には、エッジ厚
みT1が厚めの方が、僅かだが第1充填部を剥がしやすく、または除去しやすかった。
【0357】
実施例1~12においては、シリコーン樹脂組成物やシリコーンゴム組成物を両面テー
プの第1端面および第2端面に接触するように塗布しているが、実施例1~12において
、シリコーン樹脂組成物やシリコーンゴム組成物と両面テープの間の離間距離が1mmと
なるようにシリコーン樹脂組成物やシリコーンゴム組成物の塗布や両面テープの配置を行
ったところ、安定してロール体を製造でき、また得られたロール体もそれぞれ実施例1~
12に係るロール体の上記評価結果や測定結果とほぼ同様であった。また、同様に、実施
例1~12において、シリコーン樹脂組成物やシリコーンゴム組成物と両面テープの間の
離間距離が3mmとなるようにシリコーン樹脂組成物やシリコーンゴム組成物の塗布や両
面テープの配置を行ったところ、安定してロール体を製造でき、また得られたロール体も
それぞれ実施例1~12に係るロール体の上記評価結果や測定結果とほぼ同様であった。
これらの場合、まず、シリコーン樹脂組成物等を巻芯の幅方向に沿って線状に塗布し、そ
の後両面テープの第2端面とシリコーン樹脂組成物等との離間距離が1mmや3mmとな
るように両面テープを配置し、さらに両面テープの第1端面とシリコーン樹脂組成等の間
の離間距離が1mmまたは3mmとなるようにシリコーン樹脂組成物等を巻芯の幅方向に
沿って線状に塗布するという順番で行った。
【0358】
さらに実施例2において、シリコーンゴムと両面テープの間の離間距離が5mmとなる
ようにシリコーンゴム組成物の塗布や両面テープの配置を行ったところ、安定してロール
体を製造でき、また得られたロール体もそれぞれ実施例2に係るロール体の上記評価結果
や測定結果とほぼ同様であった。また、エッジ厚みT1は、2μmであった。この場合、
まず、シリコーンゴム組成物を巻芯の幅方向に沿って線状に塗布し、その後両面テープの
第2端面とシリコーンゴム組成物との離間距離が5mmとなるように両面テープを配置し
、さらに両面テープの第1端面とシリコーンゴム組成物の間の離間距離が5mmとなるよ
うにシリコーンゴム組成物を巻芯の幅方向に沿って線状に塗布するという順番で行った。
【0359】
実施例3においては、塗布時の剪断粘度が40Pa・sのシリコーンゴム組成物を用い
ていたが、例えば、塗布時の剪断粘度を7Pa・sとし、また両面テープとシリコーンゴ
ム組成物の間の離間距離を11mmとしたところ、両面テープの第1端面側に位置するシ
リコーンゴム組成物が両面テープ側とは反対側に流れてしまった。また、同様に、剪断粘
度を250Pa・sとし、また両面テープの第1端面および第2端面に接触するようにシ
リコーンゴム組成物を配置したところ、アクリル樹脂フィルムを巻回したとしても、充分
に流動させにくかったため、硬化後、僅かであるが、巻き始め端部に別の段差が生じてし
まった。
【符号の説明】
【0360】
10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、1
30、140、150…ロール体
11…巻芯
11A…外周面
12…シート
12A…巻き始め端部
12A1…先端面
12D…第1領域
12E…第2領域
12F…第3領域
12G…端部
12H…凸部
13…第1隙間
14…第1充填部
15、52…第2隙間
16、53…第2充填部
17、51…固定部材
17A、51A…第1端面
17B、51B…第2端面
21、54…第3隙間
22、55…第3充填部
71…第1介在部
72…第2介在部
73…中間ロール体
81…第3介在部
201~207…塗布材料

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39
図40