(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016737
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】タイヤ検査システムおよびタイヤ検査プログラム
(51)【国際特許分類】
G01M 17/02 20060101AFI20240131BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G01M17/02
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119058
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】河島 陽一
(72)【発明者】
【氏名】石島 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】三宅 昭範
(72)【発明者】
【氏名】古川 正人
(72)【発明者】
【氏名】杉本 裕昭
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC55
3D131LA22
3D131LA24
(57)【要約】
【課題】タイヤの偏摩耗状態の検査を効率良く実施することができるタイヤ検査システムおよびタイヤ検査プログラムを提供する。
【解決手段】タイヤ検査システムは、データ取得部25b、操作受付部25cおよび表示処理部25dを備える。データ取得部25bは、タイヤの溝深さを測定する溝深さ測定器10によって測定された溝深さのデータを取得する。操作受付部25cはデータ取得部25bによって溝深さのデータが取得されたタイヤに対して、作業者による偏摩耗の有無についての操作入力を受け付ける。表示処理部25dは操作受付部25cにより受け付けた操作入力が偏摩耗の有ることを示す場合に、偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示する。操作受付部25cは模式図の中から作業者によって偏摩耗の種類を選択する操作入力を受け付ける。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤの溝深さを測定する溝深さ測定器によって測定された溝深さのデータを取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって溝深さのデータが取得されたタイヤに対して、作業者による偏摩耗の有無についての操作入力を受け付ける操作受付部と、
前記操作受付部により受け付けた操作入力が偏摩耗の有ることを示す場合に、偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示する表示処理部と、を備え、
前記操作受付部は、前記模式図の中から作業者によって偏摩耗の種類を選択する操作入力を受け付けることを特徴とするタイヤ検査システム。
【請求項2】
前記データ取得部は、前記操作受付部によって受け付けた操作入力で選択された偏摩耗の種類がヒール・アンド・トー摩耗である場合に、更にトレッド部分のブロックについての段差摩耗のデータを取得することを特徴とする請求項1に記載のタイヤ検査システム。
【請求項3】
前記データ取得部は、更にタイヤのトレッド部分を撮影した画像データを取得することを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ検査システム。
【請求項4】
タイヤの溝深さを測定する溝深さ測定器によって測定された溝深さのデータを取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップによって溝深さのデータが取得されたタイヤに対して、作業者による偏摩耗の有無についての操作入力を受け付ける操作受付ステップと、
前記操作受付ステップにより受け付けた操作入力が偏摩耗の有ることを示す場合に、偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示する表示処理ステップと、
をコンピュータに実行させ、
前記操作受付ステップは、更に、前記模式図の中から作業者によって偏摩耗の種類を選択する操作入力を受け付けることを特徴とするタイヤ検査プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に装着されるタイヤの溝深さおよび偏摩耗を検査するタイヤ検査システムおよびタイヤ検査プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤは走行状態や走行距離等に応じて摩耗し、タイヤが装着されている車軸位置によっても摩耗量が変わり、タイヤに設けられた溝の深さが所定量以下になると交換などのメンテナンスが必要になる。
【0003】
特許文献1には従来のタイヤ偏摩耗管理方法が記載されている。このタイヤ偏摩耗管理方法は、スキャナーによりタイヤ形状を読み込み、同一タイヤの新品時形状と比較をする。比較の結果、差分形状に基づいて偏摩耗DBを検索し、偏摩耗の有無と種類を判断する。1つの車両の全タイヤについて偏摩耗を調査すると、位置交換データベース、対応策データベースを検索することにより抽出されたタイヤ位置交換方法及び、そのほかの対応策の指示が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のタイヤ偏摩耗管理方法では、スキャナーによってタイヤ形状を読み込み、偏摩耗データベースを検索して偏摩耗の有無と種類とを判断している。しかしながら、スキャナーによって3次元形状のタイヤ形状をタイヤ全周に亘って正確に取得するには、高価な装置が必要となり、さらに手間も時間もかかってしまうという問題点があった。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、タイヤの偏摩耗状態の検査を効率良く実施することができるタイヤ検査システムおよびタイヤ検査プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様のタイヤ検査システムは、タイヤの溝深さを測定する溝深さ測定器によって測定された溝深さのデータを取得するデータ取得部と、前記データ取得部によって溝深さのデータが取得されたタイヤに対して、作業者による偏摩耗の有無についての操作入力を受け付ける操作受付部と、前記操作受付部により受け付けた操作入力が偏摩耗の有ることを示す場合に、偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示する表示処理部と、を備え、前記操作受付部は、前記模式図の中から作業者によって偏摩耗の種類を選択する操作入力を受け付けることを特徴とする。
【0008】
本発明の別の態様はタイヤ検査プログラムである。タイヤ検査プログラムは、タイヤの溝深さを測定する溝深さ測定器によって測定された溝深さのデータを取得するデータ取得ステップと、前記データ取得ステップによって溝深さのデータが取得されたタイヤに対して、作業者による偏摩耗の有無についての操作入力を受け付ける操作受付ステップと、前記操作受付ステップにより受け付けた操作入力が偏摩耗の有ることを示す場合に、偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示する表示処理ステップと、をコンピュータに実行させ、前記操作受付ステップは、更に、前記模式図の中から作業者によって偏摩耗の種類を選択する操作入力を受け付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、タイヤの偏摩耗状態の検査を効率良く実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るタイヤ検査システムの全体構成を示す模式図である。
【
図2】タイヤ管理サーバ装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】タイヤ検査装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図4】タイヤ検査システムによる溝深さおよび偏摩耗の測定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図6】溝深さ測定後の表示部における画像表示の一例を示す模式図である。
【
図7】偏摩耗の有無についての操作入力を受け付ける画面の一例である。
【
図8】偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示する画面の一例である。
【
図9】ヒール・アンド・トー摩耗が選択された場合に表示する画面の一例である。
【
図10】段差摩耗データを取得するための画面表示の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに
図1から
図10を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0012】
(実施形態)
図1は、実施形態に係るタイヤ検査システム100の全体構成を示す模式図である。タイヤ検査システム100は、溝深さ測定器10、タイヤ検査装置20およびタイヤ管理サーバ装置60を備える。タイヤ検査システム100は、タイヤ管理サーバ装置60において管理されている複数の車両に装着された各タイヤ7について検査された溝深さのデータ、および偏摩耗状態に関する検査結果を取得する。
【0013】
タイヤ検査装置20は、車両に装着されたタイヤ7の情報を取得し、各タイヤについて溝深さ測定器10によって測定された溝深さのデータを取得するとともに、偏摩耗状態に関する作業者による検査結果を取得する。タイヤ検査装置20は、測定された各タイヤの溝深さのデータ、および偏摩耗状態に関する検査結果をタイヤ管理サーバ装置60へ送信する。タイヤ管理サーバ装置60は、タイヤ検査装置20から受信した各車両におけるタイヤ7の溝深さのデータ、および偏摩耗状態に関する検査結果を蓄積する。
【0014】
タイヤ7は、例えば運送事業者などで運行管理されている輸送用のトラック等の複数の車両に装着されている。運送事業者は、各車両に装着された複数のタイヤ7について、タイヤ管理サーバ装置60に蓄積されたタイヤ溝深さデータおよび偏摩耗状態に関する検査結果を取得し、タイヤのメンテナンスに利用することができる。
【0015】
溝深さ測定器10は、例えばデプスゲージであり、測定したデータを通信により送信できるものとする。車両に装着されたタイヤ7のトレッド部分に設けられた各溝に対して、作業者が溝深さ測定器10を用いることによって、溝深さが測定される。タイヤ7の溝深さは、所定期間(例えば数か月)ごとに繰り返し検査され、タイヤ管理サーバ装置60に蓄積される。また、溝深さ測定器10は、スキャナーやステレオカメラ等によって、自動的にタイヤ7の各溝の深さを測定するものであってもよい。
【0016】
タイヤ7の溝深さは、例えばタイヤのトレッド部分にタイヤ周方向に延びる溝が4本あった場合に、幅方向の4か所で測定し、さらに同一溝の周方向、例えば120°間隔で、3か所測定する。これにより、タイヤの幅方向または周方向での偏摩耗データを取得することができる。
【0017】
図2は、タイヤ管理サーバ装置60の機能構成を示すブロック図である。タイヤ管理サーバ装置60は、通信部61、情報処理部62および記憶部63を有する。タイヤ管理サーバ装置60における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0018】
通信部61は、無線または有線通信によって通信ネットワーク8に通信接続し、タイヤ検査装置20との間で通信する。
【0019】
情報処理部62は、通信部61を介して、タイヤ検査装置20からの車両およびタイヤ7に関する情報の送信要求を受け付ける。タイヤ検査装置20からの車両およびタイヤ7に関する情報の送信要求では、例えば車両の識別情報が特定されている。情報処理部62は、送信要求で特定されている車両等について、記憶部63から車軸配列情報63bおよびタイヤ識別情報63cを読み出し、タイヤ検査装置20へ送信する。情報処理部62は、通信部61を介して、タイヤ検査装置20からタイヤ7の溝深さのデータを取得し、タイヤ溝深さデータ63dとして記憶部63に記憶させて蓄積する。また情報処理部62は、通信部61を介して、タイヤ検査装置20からタイヤ7の偏摩耗状態の検査結果を取得し、偏摩耗状態データ63eとして記憶部63に記憶させて蓄積する。
【0020】
記憶部63は、例えばSSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD-ROM、DVD等によって構成される記憶装置である。記憶部63は、車両管理情報63a、車軸配列情報63b、タイヤ識別情報63c、タイヤ溝深さデータ63dおよび偏摩耗状態データ63eを記憶している。
【0021】
車両管理情報63aは、例えば運送事業者などによって運行管理されている複数の車両に関する情報であり、車両の名称、車両ごとに付された車両の識別情報などを含む。車軸配列情報63bは、車両管理情報63aに含まれる各車両に対応する車軸および装着するタイヤ7の位置を示す情報である。
【0022】
タイヤ識別情報63cは、タイヤ7毎に付与された一連番号などによる情報であり、例えばタイヤ7に内蔵させたRFIDにタイヤ識別情報を読み取り可能に記憶させておくものとする。タイヤ識別情報は、タイヤ7が装着された車両、および当該車両において装着された車軸位置に対応付けて、記憶部63に記憶するようにしてもよい。
【0023】
タイヤ溝深さデータ63dは、タイヤ検査装置20から送信された各タイヤ7の溝深さのデータであり、測定した日時等とともに記憶部63に蓄積されていく。偏摩耗状態データ63eは、タイヤ検査装置20から送信された各タイヤ7の偏摩耗状態の検査結果としてのデータであり、測定した日時等とともに記憶部63に蓄積されていく。
【0024】
図3は、タイヤ検査装置20の機能構成を示すブロック図である。タイヤ検査装置20は、通信部21、操作部22、表示部23、記憶部24および制御部25を備え、タイヤ7の溝深さの測定、および偏摩耗状態の検査において使用される。タイヤ検査装置20は、溝深さ測定器10からタイヤ7の溝深さのデータを取得し、タイヤ管理サーバ装置60へ送信する。またタイヤ検査装置20は、タイヤ7における偏摩耗状態の検査結果のデータを取得し、タイヤ管理サーバ装置60へ送信する。
【0025】
タイヤ検査装置20における各部は、ハードウェア的には、コンピュータのCPUをはじめとする電子素子や機械部品などで実現でき、ソフトウェア的にはコンピュータプログラムなどによって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組合せによっていろいろな形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0026】
通信部21は、無線または有線通信によって通信ネットワーク8に通信接続し、タイヤ管理サーバ装置60との間で通信する。また、通信部21は、溝深さ測定器10との間で無線または有線通信によって通信接続し、タイヤ7の溝深さのデータを取得する。
【0027】
操作部22は、例えばタッチパネル、スイッチ、キーボードおよびマウスなどの操作可能な入力装置である。作業者は、操作部22を操作することによって、タイヤ7の溝深さを測定し、偏摩耗状態を検査する車両およびタイヤに関する情報をタイヤ管理サーバ装置60から取得する。
【0028】
表示部23は、例えば液晶ディスプレイ等の表示装置である。表示部23には、車軸配列に関する情報や、測定中のタイヤ7の溝深さデータ、偏摩耗状態の検査に関する情報などが表示される。
【0029】
記憶部24は、例えばSSD(Solid State Drive)、ハードディスク、CD-ROM、DVD等によって構成される記憶装置である。記憶部24には、制御部25で実行するコンピュータプログラム、タイヤ管理サーバ装置60から取得した車両の車軸配列情報およびタイヤ7の識別情報、タイヤ7の溝深さのデータ、偏摩耗状態の検査に関する情報などが記憶される。
【0030】
制御部25は、車両情報取得部25a、データ取得部25b、操作受付部25cおよび表示処理部25dを有する。車両情報取得部25aは、例えば作業者の操作部22による操作によって選択した車両およびタイヤの情報をタイヤ管理サーバ装置60へ送信要求し、タイヤ管理サーバ装置60から送信される車軸配列やタイヤの識別情報などを取得する。
【0031】
データ取得部25bは、1つの車両に装着された各タイヤ7について、順次測定される溝深さのデータを溝深さ測定器10から取得する。データ取得部25bは、1つのタイヤ7のトレッド部分におけるタイヤ周方向に延びる複数の溝に対して、一の溝において周方向の例えば120°間隔で3か所測定された溝深さのデータを取得する。
【0032】
データ取得部25bは、順次、タイヤ幅方向に併設された別の溝について同様に3か所で測定された溝深さのデータを取得する。データ取得部25bは、1つのタイヤ7の全ての溝について溝深さのデータを取得し終わった後、次々に、車両内の各タイヤについて同様の手順で溝深さのデータを取得していく。
【0033】
操作受付部25cは、データ取得部25bによって溝深さのデータが取得されたタイヤ7に対して、作業者による偏摩耗の有無についての操作入力を受け付ける。操作受付部25cは、例えば偏摩耗の有無についての操作入力を受け付けるための画面を表示部23に表示しておき、操作部22に対する作業者の操作入力を受け付ける。
【0034】
作業者は、偏摩耗の有無をタイヤのトレッド部分を目視によって確認し、取得した溝深さのデータを参照して判断する。作業者は、「偏摩耗が有る」または「偏摩耗が無い」との回答を操作部22によって操作入力する。操作受付部25cは、偏摩耗について「未確認」であるとの作業者の回答を受け付けるようにしてもよい。操作受付部25cは、作業者による操作入力の内容が「偏摩耗が有る」であった場合に、表示処理部25dに「偏摩耗が有る」ことを出力する。
【0035】
表示処理部25dは、操作受付部25cから入力された信号が「偏摩耗が有る」ことを示す場合に、偏摩耗に関する複数の種類に対応する模式図を表示部23に表示させる。偏摩耗の種類は、センター摩耗、フェザーエッジ摩耗、ヒール・アンド・トー摩耗、ショルダー摩耗(片減り)、ショルダー摩耗(両肩減り)、およびスポット摩耗などである。ヒール・アンド・トー摩耗は、タイヤ周方向において分割されたトレッド部分のブロックの着地側と蹴り出し側との間で摩耗量が異なり、ブロック間で段差が生じるような偏摩耗の形態である。
【0036】
作業者は、表示部23に表示された偏摩耗に関する複数の種類に対応する模式図を見ながら、検査中のタイヤがいずれの偏摩耗に対応しているかを判断し、操作部22によって模式図の中から偏摩耗の種類を選択する操作入力をする。
【0037】
操作受付部25cは、操作部22によって偏摩耗の種類を選択する作業者の操作入力を受け付ける。操作受付部25cは、受け付けた操作入力がヒール・アンド・トー摩耗を選択している場合に、表示処理部25dおよびデータ取得部25bに対して、ヒール・アンド・トー摩耗が選択されたことを出力する。
【0038】
表示処理部25dは、ヒール・アンド・トー摩耗が選択されたことを示す信号が操作受付部25cから入力された場合に、更にトレッド部分のブロックに対して段差摩耗を測定する画面を表示部23に表示させる。
【0039】
データ取得部25bは、溝深さ測定器10によって測定される段差摩耗に対応する溝深さのデータを取得する。段差摩耗に対応する溝深さのデータは、例えばトレッド部分のブロックにおける着地側および蹴り出し側の溝深さのデータである。データ取得部25bは、作業者によってタイヤ7のトレッド部分を撮影した画像データを取得するようにしてもよい。
【0040】
タイヤ検査装置の制御部25は、車両に装着された全てのタイヤ7の溝ごとにおける溝深さのデータ、および偏摩耗状態の検査結果をタイヤ管理サーバ装置60へ送信する。偏摩耗状態の検査結果は、上述のように、偏摩耗の有無、偏摩耗の種類、ヒール・アンド・トー摩耗における段差摩耗のデータである。タイヤ管理サーバ装置60の情報処理部62は、溝深さのデータをタイヤ溝深さデータ63dとして記憶部63に蓄積し、偏摩耗状態の検査結果を偏摩耗状態データ63eとして記憶部63に蓄積する。
【0041】
次にタイヤ検査システム100の動作について説明する。
図4は、タイヤ検査システム100による溝深さおよび偏摩耗の測定処理の手順を示すフローチャートである。タイヤ検査装置20の車両情報取得部25aは、タイヤ7の溝深さを測定する車両について、タイヤ管理サーバ装置60から車軸配列およびタイヤの識別情報等を予め取得しているものとする。タイヤ検査装置20のデータ取得部25bは、作業者の操作部22における操作に基づいて、測定対象のタイヤ装着位置を選択する(S1)。
【0042】
データ取得部25bは、ステップS1で選択されたタイヤ7における一の溝を選択し、タイヤ周方向の3か所の位置で測定された溝深さのデータを取得する(S2)。溝深さのデータは、溝深さ測定器10を用いて作業者によって測定され、溝深さ測定器10からタイヤ検査装置20へ送信される。
【0043】
データ取得部25bは、タイヤ7の全ての溝について溝深さ測定が終了したか否かを判定し(S3)、溝深さ測定が終了していない場合(S3:NO)、次の溝を選択し、ステップS2へ戻って処理を繰り返す。ステップS3において全ての溝について終了したと判定した場合(S3:YES)、操作受付部25cは、偏摩耗の有無についての操作入力を受け付けるための画面を表示部23に表示させる(S4)。
【0044】
操作受付部25cは、作業者による操作入力が、偏摩耗が有るかまたは無いかのいずれであるかを判定する(S5)。ステップS5において、偏摩耗が無いとの操作入力であった場合(S5:NO)、処理を終了する。ステップS5において、偏摩耗が有るとの操作入力であった場合(S5:YES)、表示処理部25dは、偏摩耗に関する複数の種類に対応する模式図を表示部23に表示させる(S6)。
【0045】
操作受付部25cは、偏摩耗の種類を選択する作業者の操作入力を受け付ける(S7)。操作受付部25cは、作業者が選択した偏摩耗がヒール・アンド・トー摩耗であるか否かを判定(S8)。ステップS8において、ヒール・アンド・トー摩耗ではないと判定された場合(S8:NO)、処理を終了する。
【0046】
ステップS8において、ヒール・アンド・トー摩耗であると判定された場合(S8:YES)、段差摩耗データを取得するための画面を表示部23に表示し、データ取得部25bは、段差摩耗データおよびトレッド部分の画像データを取得し(S9)、処理を終了する。
【0047】
図5は、車軸配列情報63bの一例を示す模式図である。
図5に示す車軸配列情報63bでは、車両の前後方向における3つの車軸A1、A2およびA3、並びに各車軸におけるタイヤ装着位置B11、B12等を表しており、合計10本のタイヤが車軸に配置されている。データ取得部25bは、作業者の操作部22における操作に基づいて、測定対象のタイヤ装着位置を選択して、
図4に示したフローチャートに基づき、溝深さのデータを取得する。1つのタイヤについて全ての溝深さのデータおよび偏摩耗状態の検査結果の取得を完了すると、次のタイヤ装着位置を選択し溝深さのデータおよび偏摩耗状態の検査結果を取得する。これを繰り返すことで、車両に装着された全てのタイヤについて溝深さのデータおよび偏摩耗状態の検査結果を取得する。
【0048】
図6は溝深さ測定後の表示部23における画像表示の一例を示す模式図である。
図6に示す例では、或るタイヤ7について溝1から溝5まで有り、各溝のタイヤ幅方向の位置をSh(ショルダー)、Me(ミディアム)、Ce(センター)で表している。
図6に示す例では、溝1から溝5について溝深さ測定結果、および算出した各溝における溝深さの平均値を表示している。
【0049】
図7は、偏摩耗の有無についての操作入力を受け付ける画面の一例である。操作受付部25cは、
図7に示す画面を表示部23に表示させ、「偏摩耗あり」、「偏摩耗なし」または「未確認」のいずれであるかについて、作業者の操作入力を受け付けている。
【0050】
図8は、偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示する画面の一例である。作業者による操作入力が「偏摩耗あり」を選択するものであった場合、表示処理部は、
図8に示すような偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示する。タイヤ検査システム100は、タイヤ検査装置20において偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示し、作業者が実際に検査中のタイヤ7のトレッド部分の外観が、いずれの模式図に一致するか確認しながら偏摩耗の種類を分かり易く選択することができ、タイヤ7の偏摩耗状態の検査を効率良く実施することができる。
【0051】
例えば車両の全てのタイヤ7についての溝深さの測定と、スキャナーによって3次元のタイヤ形状を読み込んで偏摩耗データベースを検索して判断する検査とを別々に実施する場合、作業者の移動や測定器等の準備に手間と時間がかかってしまう。タイヤ検査システム100は、1つのタイヤ7に対して、溝深さ測定と偏摩耗の検査を順次実施していくように作業を進めることができ、タイヤ7の溝深さ測定を含めて、偏摩耗状態の検査を効率良く実施することができる。
【0052】
図9は、ヒール・アンド・トー摩耗が選択された場合に表示する画面の一例である。
図9に示す画面では、トレッド部分の外観を撮影した画像データの貼り付け箇所を示す図形や、タイヤ交換が必要であるか不要であるかを選択させる図形、段差摩耗を計測するか否かを選択させる図形などを配置している。
【0053】
タイヤ検査システム100は、データ取得部25bによりタイヤ7のトレッド部分の外観を撮影した画像データを取得することで、実際のタイヤ7において、ヒール・アンド・トー摩耗がどのような状態であるかを視覚的に分かり易いデータとして記憶し、蓄積することができる。尚、後述する
図10に示す画面表示において、画像データの貼り付け箇所を示す図形を配置し、タイヤ7のトレッド部分の外観を撮影した画像データを取得するようにしてもよい。
【0054】
図10は、段差摩耗データを取得するための画面表示の一例である。
図10に示す画面表示では、
図6と同様に、或るタイヤ7について溝1から溝5の段差摩耗データを順次取得して表示している。データ取得部25bは、段差摩耗データとして、トレッド部分のブロックにおける着地側および蹴り出し側の溝深さのデータを取得している。
【0055】
タイヤ検査システム100は、データ取得部25bによりタイヤ7のトレッド部分のブロックにおける段差摩耗データを取得し、蓄積することによって、ヒール・アンド・トー摩耗の進行状態を作業者に分かり易く知得させ、タイヤメンテナンスの判断に必要なデータを提供することができる。
【0056】
次に実施形態に係るタイヤ検査システム100およびタイヤ検査プログラムの特徴について説明する。
タイヤ検査システム100は、データ取得部25b、操作受付部25cおよび表示処理部25dを備える。データ取得部25bは、タイヤ7の溝深さを測定する溝深さ測定器10によって測定された溝深さのデータを取得する。操作受付部25cは、データ取得部25bによって溝深さのデータが取得されたタイヤ7に対して、作業者による偏摩耗の有無についての操作入力を受け付ける。表示処理部25dは、操作受付部25cにより受け付けた操作入力が偏摩耗の有ることを示す場合に、偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示する。操作受付部25cは、模式図の中から作業者によって偏摩耗の種類を選択する操作入力を受け付ける。これにより、タイヤ検査システム100は、タイヤ7の偏摩耗状態の検査を効率良く実施することができる。
【0057】
またデータ取得部25bは、操作受付部25cによって受け付けた操作入力で選択された偏摩耗の種類がヒール・アンド・トー摩耗である場合に、更にトレッド部分のブロックについての段差摩耗のデータを取得する。これにより、タイヤ検査システム100は、ヒール・アンド・トー摩耗の進行状態を作業者に分かり易く知得させ、タイヤメンテナンスの判断に必要なデータを提供することができる。
【0058】
またデータ取得部25bは、更にタイヤ7のトレッド部分を撮影した画像データを取得する。これにより、タイヤ検査システム100は、ヒール・アンド・トー摩耗がどのような状態であるかを視覚的に分かり易いデータとして蓄積することができる。
【0059】
タイヤ検査プログラムは、データ取得ステップ、操作受付ステップおよび表示処理ステップをコンピュータに実行させる。データ取得ステップは、タイヤ7の溝深さを測定する溝深さ測定器10によって測定された溝深さのデータを取得する。操作受付ステップは、データ取得ステップによって溝深さのデータが取得されたタイヤ7に対して、作業者による偏摩耗の有無についての操作入力を受け付ける。表示処理ステップは、操作受付ステップにより受け付けた操作入力が偏摩耗の有ることを示す場合に、偏摩耗の複数の種類に対応する模式図を表示する。操作受付ステップは、更に、模式図の中から作業者によって偏摩耗の種類を選択する操作入力を受け付ける。このタイヤ検査プログラムによれば、タイヤ7の偏摩耗状態の検査を効率良く実施することができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【符号の説明】
【0061】
7 タイヤ、 10 溝深さ測定器、 25b データ取得部、
25c 操作受付部、 25d 表示処理部、 100 タイヤ検査システム。