(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167384
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/13 20230101AFI20241126BHJP
H10K 50/12 20230101ALI20241126BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241126BHJP
H10K 85/30 20230101ALI20241126BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20241126BHJP
H10K 101/10 20230101ALN20241126BHJP
H10K 101/25 20230101ALN20241126BHJP
【FI】
H10K50/13
H10K50/12
H10K85/60
H10K85/30
H10K101:40
H10K101:10
H10K101:25
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024151982
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2022106411の分割
【原出願日】2015-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2014099560
(32)【優先日】2014-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014241575
(32)【優先日】2014-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】石曽根 崇浩
(72)【発明者】
【氏名】瀬尾 哲史
(72)【発明者】
【氏名】野中 裕介
(72)【発明者】
【氏名】大澤 信晴
(57)【要約】
【課題】発光素子の発光効率を向上させる。
【解決手段】第1の電極と、前記第1の電極上の第2の電極、およびこれらの間に設けら
れる第1の発光層と第2の発光層を有する発光素子を提供する。前記第1の発光層と第2
の発光層は互いに重なる領域を有する。前記第1の発光層は第1のホスト材料と第1の発
光材料を有し、前記第2の発光層は第2のホスト材料と第2の発光材料を有する。前記第
1の発光材料は蛍光材料であり、前記第2の発光材料は燐光材料である。前記第1の発光
材料の三重項励起状態の最も低い準位(T
1準位)は、前記第1のホスト材料のT
1準位
よりも高い。また、前記発光素子を含有する発光装置、電子機器、発光装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、第2の電極と、第1の発光層と、第2の発光層と、第3の発光層と、を有する発光素子を有し、
前記第1の発光層は、第1の蛍光材料と、第1のホスト材料と、を有し、
前記第1の蛍光材料のT1準位は、前記第1のホスト材料のT1準位よりも高く、
前記第1のホスト材料のS1準位は、前記第1の蛍光材料のS1準位よりも高く、
前記第2の発光層は、第1の燐光材料と、第2のホスト材料と、前記第2のホスト材料とエキサイプレックスを形成可能な第2の材料を含み、
前記第3の発光層は、第2の蛍光材料と、第3のホスト材料と、を有し、
前記第2の蛍光材料のT1準位は、前記第3のホスト材料のT1準位よりも高く、
前記第3のホスト材料のS1準位は、前記第2の蛍光材料のS1準位よりも高い、発光装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の蛍光材料の発光ピーク波長は、前記第1の燐光材料の発光ピーク波長よりも短く、
前記第2の蛍光材料の発光ピーク波長は、前記第1の燐光材料の発光ピーク波長よりも短い、発光装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1の蛍光材料の発光色は、青色であり、
前記第2の蛍光材料の発光色は、青色であり、
前記第1の燐光材料の発光色は、緑色、黄色、あるいは赤色である、発光装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一において、
前記第1の発光層と前記第2の発光層との間に、第1族金属、第2族金属、第1族金属の化合物および第2族金属の化合物の少なくとも一と、第1の電子輸送性材料と、第1の正孔輸送性材料と、第1のアクセプターとを有する、発光装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記第2の発光層と前記第3の発光層との間に、第1族金属、第2族金属、第1族金属の化合物および第2族金属の化合物の少なくとも一と、第2の電子輸送性材料と、第2の正孔輸送性材料と、第2のアクセプターとを有する、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、発光素子、発光素子を有する発光装置、表示装置、電子機器、およ
び照明装置に関する。また、本発明の一態様の技術分野として、発光素子を有する半導体
装置およびその製造方法が含まれる。
【背景技術】
【0002】
一対の電極間に有機化合物を含む層を設けた発光素子、およびそれを含む発光装置は、
それぞれ有機電界発光素子、有機電界発光装置と呼ばれる。有機電界発光装置は表示装置
や照明装置などへの応用が可能である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2012/0205632号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一態様の課題の一つは、発光素子の発光効率を向上させることである。または
、本発明の一態様の課題の一つは、発光装置やそれを含む半導体装置などを提供すること
である。なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本
発明の一態様は、必ずしも、これらの課題の全てを解決する必要はない。なお、これら以
外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明
細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、第1の電極と、前記第1の電極上の第2の電極、ならびに第1の発
光層と第2の発光層を有する発光素子である。前記第1の発光層と第2の発光層はともに
前記第1の電極と第2の電極の間に設けられ、かつ、互いに重なる領域を有する。前記第
1の発光層は第1のホスト材料と第1の発光材料を有し、前記第2の発光層は第2のホス
ト材料と第2の発光材料を有する。前記第1の発光材料は蛍光材料であり、前記第2の発
光材料は燐光材料である。前記第1の発光材料の三重項励起状態の最も低い準位(T1準
位)は、前記第1のホスト材料のT1準位よりも高い。
【0006】
本発明の他の一態様は、第1の電極と、前記第1の電極上の第2の電極、ならびに第1
の発光ユニットと第2の発光ユニットを有する発光素子である。前記第1の発光ユニット
と第2の発光ユニットはともに前記第1の電極と第2の電極間に設けられ、かつ、互いに
重なる領域を有する。前記第1の発光ユニットと第2の発光ユニットの間には中間層が設
けられる。前記第1の発光ユニットは、互いに重なり合う第1の発光層と第2の発光層を
有し、前記第2の発光ユニットは第3の発光層を有する。前記第1の発光層は第1のホス
ト材料と第1の発光材料を有し、前記第2の発光層は第2のホスト材料と第2の発光材料
を有し、前記第3の発光層は第3のホスト材料と第3の発光材料を有する。前記第1の発
光材料は蛍光材料であり、前記第2の発光材料は燐光材料であり、前記第3の発光材料は
蛍光材料あるいは燐光材料のうちの一つである。前記第1の発光材料のT1準位は、前記
第1のホスト材料のT1準位よりも高い。
【0007】
なお、本明細書および請求項において蛍光材料とは、一重項励起状態の最も低い準位(
S1準位)から基底状態へ緩和する際に可視光領域に発光を与える材料である。燐光材料
とは、T1準位から基底状態へ緩和する際に、室温において可視光領域に発光を与える材
料である。換言すると燐光材料とは、三重項励起エネルギーを可視光へ変換可能な材料で
ある。
【0008】
前記第1の発光層、第2の発光層、第3の発光層の各層では、前記第1のホスト材料、
第2のホスト材料、第3のホスト材料が重量比で最も多く存在する。
【0009】
前記第2のホスト材料は前記第1のホスト材料よりもT1準位が高いことが好ましい。
【0010】
前記第1の発光層と第2の発光層とは、互いに接する領域を有していても良い。
【0011】
前記第1の発光層と第2の発光層とは、互いに離れていても良い。その場合、正孔輸送
性材料と電子輸送性材料が混合された層、あるいはバイポーラー性材料を有する層が間に
設けられていても良い。前記正孔輸送性材料と電子輸送性材料のうちの一つは前記第2の
ホスト材料と同一でも良い。前記バイポーラー材料は前記第2のホスト材料と同一でも良
い。
【0012】
前記第2の発光層は第1の発光層上に設けても良く、前記第1の発光層を第2の発光層
上に設けても良い。
【0013】
前記第2の発光ユニットを第1の発光ユニット上に設けても良く、前記第1の発光ユニ
ットを第2の発光ユニット上に設けても良い。
【0014】
本発明の一態様は、上記各構成の発光素子を複数有し、トランジスタまたは基板を有す
る発光装置である。
【0015】
本発明の一態様は、上記各構成の発光装置を有する電子機器である。
【0016】
本発明の一態様は、上記各構成の発光装置と、筐体または支持体と、を有する照明装置
である。
【0017】
なお、本明細書および請求項において発光装置とは、画像表示デバイス、あるいは画像
表示デバイスに用いられる光源を指す。また、発光装置にコネクター、例えばFPC(F
lexible printed circuit)、TCP(Tape Carrie
r Package)などが取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が
設けられたモジュール、または発光装置にCOG(Chip On Glass)方式に
よりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも全て発光装置に含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様により、高効率な発光素子、発光装置、電子機器、または照明装置を提
供することができる。なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではな
い。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお
、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるもの
であり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能
である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図9】実施例1および2における、発光素子1および発光素子2の模式図。
【
図10】実施例1における、発光素子1の電圧-輝度曲線。
【
図11】実施例1における、発光素子1の輝度-電流効率曲線と輝度-外部量子効率曲線。
【
図12】実施例1における、発光素子1の輝度-パワー効率曲線。
【
図13】実施例1における、発光素子1の電界発光スペクトル。
【
図14】実施例2における、発光素子2の電圧-輝度曲線。
【
図15】実施例2における、発光素子2の輝度-電流効率曲線と輝度-外部量子効率曲線。
【
図16】実施例2における、発光素子2の輝度-パワー効率曲線。
【
図17】実施例2における、発光素子2の電界発光スペクトル。
【
図18】参考例1における、発光素子3乃至発光素子6の模式図。
【
図19】参考例1における、発光素子3乃至発光素子6の輝度-電流効率曲線。
【
図20】参考例1における、発光素子3乃至発光素子6の電圧-輝度曲線。
【
図21】参考例1における、発光素子3乃至発光素子6の輝度-外部量子効率曲線。
【
図22】参考例1における、発光素子3乃至発光素子6の電界発光スペクトル。
【
図23】参考例1における、発光素子3乃至発光素子6の信頼性試験結果。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下
の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および
詳細を様々に変更し得ることが可能である。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記
載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
(実施の形態1)
1. 発光素子の構成例
本発明の一態様である発光素子の構成例について、
図1(A)を用いて説明する。発光
素子は、第1の電極100、第2の電極102、およびこれらの間に設けられた第1の発
光層120と第2の発光層122を有する。第1の発光層120と第2の発光層122は
互いに重なる。以下、第1の電極100を陽極、第2の電極102を陰極として説明する
。
【0022】
1-1. 電極
第1の電極100と第2の電極102は、第1の発光層120と第2の発光層122へ
それぞれ正孔と電子を注入する機能を有する。これらの電極は金属、合金、導電性化合物
、およびこれらの混合物や積層体などを用いて形成することができる。金属としてはアル
ミニウム(Al)や銀(Ag)が典型例であり、その他、タングステン、クロム、モリブ
デン、銅、チタンなどの遷移金属、リチウム(Li)やセシウムなどのアルカリ金属、カ
ルシウム、マグネシウム(Mg)などの第2族金属を用いることができる。遷移金属とし
て希土類金属を用いても良い。合金としては、上記金属を含む合金を使用することができ
、例えばMgAg、AlLiなどが挙げられる。導電性化合物としては、酸化インジウム
-酸化スズ(Indium Tin Oxide)などの金属酸化物が挙げられる。導電
性化合物としてグラフェンなどの無機炭素系材料を用いても良い。上述したように、これ
らの材料の複数を積層することによって第1の電極100、あるいは第2の電極102、
あるいはその両者を形成しても良い。
【0023】
第1の発光層120と第2の発光層122から得られる発光は、第1の電極100、第
2の電極102、あるいはこれらの両方を通して取り出される。従って、これらのうちの
少なくとも一つは可視光を透過する。光を取り出す方の電極に金属や合金などの光透過性
の低い材料を用いる場合には、可視光を透過できる程度の厚さで第1の電極100あるい
は第2の電極102、あるいはこれらの一部を形成すればよい。この場合、具体的には1
nm以上10nm以下の厚さで形成する。
【0024】
1-2. 第1の発光層
第1の発光層120は第1のホスト材料と第1の発光材料を有し、第1の発光材料は蛍
光材料である。第1の発光層120中では、第1のホスト材料が重量比で最も多く存在し
、第1の発光材料は第1のホスト材料中に分散される。第1の発光材料のT1準位は第1
のホスト材料のT1準位よりも高い。第1のホスト材料のS1準位は第1の発光材料のS
1準位よりも高いことが好ましい。第1の発光層120の発光機構は後述する。
【0025】
第1のホスト材料として、アントラセン誘導体、あるいはテトラセン誘導体が好ましい
。これらの誘導体はS1準位が高く、T1準位が低いからである。具体的には、9-フェ
ニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール
(PCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)-フェニル]-9-フェニル-9H-カル
バゾール(PCPN)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]
-9H-カルバゾール(CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フ
ェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(cgDBCzPA)、6-[3-(
9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-ベンゾ[b]ナフト[1,2-d
]フラン(2mBnfPPA)、9-フェニル-10-{4-(9-フェニル-9H-フ
ルオレン-9-イル)ビフェニル-4’-イル}アントラセン(FLPPA)などが挙げ
られる。あるいは、5,12-ジフェニルテトラセン、5,12-ビス(ビフェニル-2
-イル)テトラセンなどが挙げられる。
【0026】
第1の発光材料としては、ピレン誘導体、アントラセン誘導体、トリフェニレン誘導体
、フルオレン誘導体、カルバゾール誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン
誘導体、ジベンゾキノキサリン誘導体、キノキサリン誘導体、ピリジン誘導体、ピリミジ
ン誘導体、フェナントレン誘導体、ナフタレン誘導体などが挙げられる。特にピレン誘導
体は発光量子収率が高いので好ましい。ピレン誘導体の具体例としては、N,N’-ビス
(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス〔3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9
-イル)フェニル〕ピレン-1,6-ジアミン(1,6mMemFLPAPrn)、N,
N’-ビス〔4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル〕-N,N’
-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン(1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(ジ
ベンゾフラン-2-イル)-N,N’-ジフェニルピレン-1,6-ジアミン(1,6F
rAPrn)、N,N’-ビス(ジベンゾチオフェン-2-イル)-N,N’-ジフェニ
ルピレン-1,6-ジアミン(1,6ThAPrn)などが挙げられる。
【0027】
1-3. 第2の発光層
第2の発光層122は第2のホスト材料と第2の発光材料を有し、第2の発光材料は燐
光材料である。第2の発光層122中では、第2のホスト材料が重量比で最も多く存在し
、第2の発光材料は第2のホスト材料中に分散される。第2のホスト材料のT1準位は第
2の発光材料のT1準位よりも高いことが好ましい。
【0028】
第2の発光材料としては、イリジウム、ロジウム、あるいは白金系の有機金属錯体、あ
るいは金属錯体が挙げられ、中でも有機イリジウム錯体、例えばイリジウム系オルトメタ
ル錯体が好ましい。オルトメタル化する配位子としては4H-トリアゾール配位子、1H
-トリアゾール配位子、イミダゾール配位子、ピリジン配位子、ピリミジン配位子、ピラ
ジン配位子、あるいはイソキノリン配位子などが挙げられる。金属錯体としては、ポルフ
ィリン配位子を有する白金錯体などが挙げられる。
【0029】
第2のホスト材料としては、亜鉛やアルミニウム系金属錯体の他、オキサジアゾール誘
導体、トリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、キノキサリン誘導体、ジベンゾ
キノキサリン誘導体、ジベンゾチオフェン誘導体、ジベンゾフラン誘導体、ピリミジン誘
導体、トリアジン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘導体、フェナントロリン誘導体
などが挙げられる。他の例としては、芳香族アミンやカルバゾール誘導体などが挙げられ
る。
【0030】
第2の発光層122には、第2のホスト材料とエキサイプレックス(すなわち、ヘテロ
エキシマー)を形成可能な添加剤がさらに含まれていても良い。この場合、エキサイプレ
ックスの発光ピークが第2の発光材料の三重項MLCT(Metal to Ligan
d Charge Transfer)遷移の吸収帯、より具体的には、最も長波長側の
吸収帯と重なるように第2のホスト材料、添加剤、および第2の発光材料を選択すること
が好ましい。これにより、発光効率が飛躍的に向上した発光素子を与えることができる。
【0031】
第1の発光材料と第2の発光材料の発光色に限定は無く、同じでも異なっていても良い
。各々から得られる発光が混合されて素子外へ取り出されるので、例えば両者の発光色が
互いに補色の関係にある場合、発光素子は白色の光を与えることができる。発光素子の信
頼性を考慮すると、第1の発光材料の発光ピーク波長は第2の発光材料のそれよりも短い
ことが好ましい。例えば、第1の発光材料が青色に発光し、第2の発光材料が緑色、黄色
、あるいは赤色に発光することが好ましい。
【0032】
第2の発光層122は、複数の層が積層された構造を有していても良い。この場合、複
数の層において互いに異なる構造や材料を採用しても良い。
【0033】
なお、第1の発光層120、及び第2の発光層122は、蒸着法(真空蒸着法を含む)
、インクジェット法、塗布法、グラビア印刷等の方法で形成することができる。
【0034】
1-4. その他の層
図1(A)に示すように、本発明の一形態の発光素子は上述した第1の発光層120と
第2の発光層122以外の層を有していても良い。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電
子阻止層、正孔阻止層、電子輸送層、電子注入層などを有していても良い。また、これら
の各層は複数の層から形成されていても良い。これらの層はキャリア注入障壁を低減する
、キャリア輸送性を向上する、あるいは電極による消光現象を抑制することができ、発光
効率の向上や駆動電圧の低減に寄与する。
図1(A)は、第1の発光層120と第2の発
光層122以外に正孔注入層124、正孔輸送層126、電子輸送層128、電子注入層
130を有する発光素子を示している。なお本明細書および請求項において、第1の電極
100と第2の電極102の間に設けられた複数の層全体をEL層と定義する。例えば図
1(A)では、正孔注入層124、正孔輸送層126、第1の発光層120、第2の発光
層122、電子輸送層128、ならびに電子注入層130を含む積層体がEL層である。
【0035】
1-4-1. 正孔注入層
正孔注入層124は、第1の電極100からのホール注入障壁を低減することでホール
注入を促進する機能を有し、例えば遷移金属酸化物、フタロシアニン誘導体、あるいは芳
香族アミンなどによって形成される。遷移金属酸化物としては、モリブデン酸化物やバナ
ジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物などが挙げられ
る。フタロシアニン誘導体としては、フタロシアニンや金属フタロシアニンなどが挙げら
れる。芳香族アミンとしてはベンジジン誘導体やフェニレンジアミン誘導体などが挙げら
れる。ポリチオフェンやポリアニリンなどの高分子化合物を用いることもでき、例えばド
ープされたポリチオフェンであるポリ(エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレン
スルホン酸)などがその代表例である。
【0036】
正孔注入層124として、正孔輸送性材料と、これに対して電子受容性を示す材料の混
合層を用いることもできる。あるいは、電子受容性を示す材料を含む層と正孔輸送性材料
を含む層の積層を用いても良い。これらの材料間では電界の存在下、あるいは非存在下に
おいて電荷の授受が可能である。電子受容性を示す材料としては、キノジメタン誘導体や
クロラニル誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体などの有機アクセプターを挙げるこ
とができる。具体的には、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフル
オロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11
-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT
-CN)等の電子吸引基(ハロゲン基やシアノ基)を有する材料である。また、遷移金属
酸化物、例えば第4族から第8族金属の酸化物を用いることができる。具体的には、酸化
バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステ
ン、酸化マンガン、酸化レニウムなどである。中でも酸化モリブデンは大気中でも安定で
あり、吸湿性が低く、扱いやすいため好ましい。
【0037】
正孔輸送性材料としては、電子よりも正孔の輸送性の高い材料を用いることができ、1
×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する材料であることが好ましい。具体的に
は、芳香族アミン、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、スチルベン誘導体などを用い
ることができる。また、前記正孔輸送性材料は高分子化合物であっても良い。
【0038】
1-4-2. 正孔輸送層
正孔輸送層126は正孔輸送性材料を含む層であり、正孔注入層124の材料として例
示した材料を使用することができる。正孔輸送層126は正孔注入層124に注入された
正孔を第1の発光層120へ輸送する機能を有するため、正孔注入層124の最高被占軌
道(HOMO:Highest Occupied Molecular Orbita
l)準位と同じ、あるいは近いHOMO準位を有することが好ましい。
【0039】
1-4-3. 電子注入層
電子注入層130は第2の電極102からの電子注入障壁を低減することで電子注入を
促進する機能を有し、例えば第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物、ハロゲ
ン化物、炭酸塩などを用いることができる。また、電子輸送性材料(後述)と、これに対
して電子供与性を示す材料の混合層を用いることもできる。電子供与性を示す材料として
は、第1族金属、第2族金属、あるいはこれらの酸化物などを挙げることができる。
【0040】
1-4-4. 電子輸送層
電子輸送層128は、電子注入層130を経て第2の電極102から注入された電子を
第2の発光層122へ輸送する機能を有する。電子輸送性材料としては、正孔よりも電子
の輸送性の高い材料を用いることができ、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を
有する材料であることが好ましい。具体的には、キノリン配位子、ベンゾキノリン配位子
、オキサゾール配位子、あるいはチアゾール配位子を有する金属錯体、オキサジアゾール
誘導体、トリアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、ピリジン誘導体、ビピリジン誘
導体などが挙げられる。
【0041】
なお、上述した正孔注入層124、正孔輸送層126、電子注入層130、及び電子輸
送層128は、それぞれ蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラ
ビア印刷法等の方法で形成することができる。
【0042】
また、正孔注入層124、正孔輸送層126、電子注入層130、及び電子輸送層12
8には、上述した材料の他、無機化合物または高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー
、ポリマー等)を用いてもよい。
【0043】
2. 発光素子の他の構成例
図1(A)に示した発光素子では、第2の発光層122が第1の発光層120の上に設
置されているが、本発明の一態様はこの構造に限られず、
図1(B)に示すように、第1
の発光層120が第2の発光層122の上に位置しても良い。
【0044】
3. 第1の発光層120の発光機構
第1のホスト材料と第1の発光材料のエネルギー準位の相関を
図2に示す。
図2におけ
る符号は以下のとおりである。
S
0(h):第1のホスト材料の基底状態の準位
S
0(g):第1の発光材料の基底状態の準位
S
1(h):第1のホスト材料の一重項励起状態の最も低い準位
S
1(g):第1の発光材料の一重項励起状態の最も低い準位
T
1(h):第1のホスト材料の三重項励起状態の最も低い準位
T
1(g): 第1の発光材料の三重項励起状態の最も低い準位
【0045】
上述したように、第1の発光層120は第1のホスト材料と、これよりもT1準位の高
い第1の発光材料を有する。従って、T1(g)はT1(h)よりも高い。また、第1の
発光層120中では、第1の発光材料と比較して第1のホスト材料は大量に存在する。図
2では、2分子の第1のホスト材料と1分子の第1の発光材料のエネルギー準位が示され
ている。
【0046】
キャリアの再結合により、第1の発光層120で励起状態が形成される。第1の発光材
料と比較して第1のホスト材料は大量に存在するので、励起状態はほぼ第1のホスト材料
の励起状態として存在する。ここで、キャリア再結合によって生じる一重項励起状態と三
重項励起状態の比(以下、励起子生成確率)は約1:3となる。すなわち、S1(h)を
有する一重項励起状態が約1、T1(h)を有する三重項励起状態が約3の割合で生成す
る。
【0047】
S1(g)がS1(h)よりも低い場合、第1のホスト材料の一重項励起状態から第1
の発光材料に速やかにエネルギーが移動(一重項エネルギー移動。過程(a))して第1
の発光材料の一重項励起状態が生じ、それが輻射過程によって基底状態に緩和(過程(b
))することにより発光を得ることができる。このとき、T1(h)がT1(g)よりも
高い場合、第1のホスト材料の三重項励起状態から第1の発光材料に速やかにエネルギー
移動(三重項エネルギー移動)が生じ、第1の発光材料の三重項励起状態が形成される。
しかしながら第1の発光材料は蛍光材料であるため、三重項励起状態は可視光領域に発光
を与えない。従って、第1のホスト材料の三重項励起状態を発光として利用することがで
きない。従ってT1(h)がT1(g)よりも高い場合には、過程(a)による発光しか
利用できないことになり、その結果、注入したキャリアのうち、最大でも約25%しか発
光に利用することができない。
【0048】
一方、
図2に示すように、本発明の一態様の発光素子ではT
1(g)はT
1(h)より
も高い。従って、第1のホスト材料から第1の発光材料への三重項エネルギー移動(過程
(c))は生じない、あるいは無視できる程度である。この場合、第1のホスト材料の三
重項状態は、無輻射過程によって基底状態へ緩和する過程(過程(d))と、三重項-三
重項消滅(TTA:Triplet-Triplet Annihilation)によ
って第1のホスト材料の一重項励起状態を生成する過程が競争する。TTAによって生成
した第1のホスト材料の一重項励起状態からは、それよりも準位の低いS
1(g)へエネ
ルギー移動(過程(e))が起こるので、第1の発光材料の一重項励起状態を与えること
ができる。
【0049】
すなわち第1の発光層120では、(1)キャリア再結合によって直接生成する第1の
ホスト材料の一重項励起状態からのエネルギー移動過程(a)、および(2)TTAを経
て生成される第1のホスト材料の一重項励起状態からのエネルギー移動過程(e)、とい
う2つの過程を経て第1の発光材料の一重項励起状態が形成される。上述したように、T
1(g)がT1(h)よりも低い場合には前者の過程しか利用することができないため、
発光素子の効率は励起子生成確率に支配される。これに対し、本発明の一形態の発光素子
のようにT1(g)がT1(h)よりも高い場合には、両者の過程を利用することができ
るため、励起子生成確率を超える発光効率を得ることができ、高効率の発光素子を与える
ことができる。
【0050】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いるこ
とができる。
【0051】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子について
図1(C)を用いて説明す
る。本実施の形態の発光素子は、第1の発光層120と第2の発光層122の間に分離層
135を有する点で実施の形態1の発光素子と異なっている。分離層135は第1の発光
層120と第2の発光層122に接している。他の層の構造は実施の形態1のそれと同様
であるので、説明は省略する。
【0052】
分離層135は、第2の発光層122中で生成する第2のホスト材料の励起状態や第2
の発光材料の励起状態から第1の発光層120中の第1のホスト材料や第1の発光材料へ
のデクスター機構によるエネルギー移動(特に三重項エネルギー移動)を防ぐために設け
られる。従って、分離層は数nm程度の厚さがあればよい。具体的には、0.1nm以上
20nm以下、あるいは1nm以上10nm以下、あるいは1nm以上5nm以下である
。
【0053】
分離層135は単一の材料で構成されていても良いが、正孔輸送性材料と電子輸送性材
料の両者が含まれていても良い。単一の材料で構成する場合、バイポーラー性材料を用い
ても良い。ここでバイポーラー性材料とは、電子と正孔の移動度の比が100以下である
材料を指す。分離層135に含まれる材料は、実施の形態1で例示した正孔輸送性材料ま
たは電子輸送性材料などを使用することができる。また、分離層135に含まれる材料、
もしくはそのうちの少なくとも一つは、前記第2のホスト材料と同一の材料で形成しても
良い。これにより、発光素子の作製が容易になり、また、駆動電圧が低減される。
【0054】
あるいは、分離層135に含まれる材料、もしくはそのうちの少なくとも一つは、第2
のホスト材料よりもT1準位が高くても良い。
【0055】
正孔輸送性材料と電子輸送性材料の分離層135中の混合比を調整することによって再
結合領域を調整することができ、これにより発光色の制御を行うことができる。例えば、
第1の電極100と第2の電極102がそれぞれ陽極と陰極である場合、分離層135の
正孔輸送性材料の割合を増やすことで再結合領域を第1の電極100側から第2の電極1
02側へシフトすることができる。これにより、第2の発光層122からの発光の寄与を
増大させることができる。逆に、分離層135の電子輸送性材料の割合を増やすことで再
結合領域を第2の電極102側から第1の電極100側へシフトすることができ、第1の
発光層120からの発光の寄与を増大させることができる。第1の発光層120と第2の
発光層122からの発光色が異なる場合には、再結合領域を調整することで発光素子全体
の発光色を変化させることができる。
【0056】
前記正孔輸送性材料と電子輸送性材料は分離層135内でエキサイプレックスを形成し
ても良く、これによって励起子の拡散を効果的に防ぐことができる。具体的には、第2の
ホスト材料の励起状態あるいは第2の発光材料の励起状態から、第1のホスト材料あるい
は第1の発光材料へのエネルギー移動を防ぐことができる。
【0057】
実施の形態1で示した発光素子と同様、
図1(D)に示すように、第1の発光層120
が第2の発光層122の上に位置しても良い。この場合、正孔輸送層126上に第2の発
光層122が設けられ、その上に分離層135を介して第1の発光層120が設けられる
。
【0058】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いるこ
とができる。
【0059】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子について
図3(A)を用いて説明す
る。
【0060】
1. 発光素子の構成例
本実施の形態に示す発光素子は、
図3(A)に示すように、第1の電極100、第2の
電極102、およびこれらの間に設けられた第1の発光ユニット140-1、第2の発光
ユニット140-2を有する。第1の発光ユニット140-1と第2の発光ユニット14
0-2は互いに重なっており、その間には中間層150が設けられる。以下、第1の電極
100を陽極、第2の電極102を陰極として説明する。第1の電極100や第2の電極
102など、実施の形態1および2と同じ符号、あるいは名称を付与した構成要素は実施
の形態1や2のそれと同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0061】
1-1. 第1の発光ユニット
第1の発光ユニット140-1は、第1の発光層120と第2の発光層122を有する
。これらの層の構成や材料は実施の形態1で示したものと同様である。従って、
図3(A
)に示した発光素子では第2の発光層122が第1の発光層120の上に設置されている
が、第1の発光層120を第2の発光層122の上に設けても構わない。また、
図3(A
)に示すように、正孔注入層124や正孔輸送層126-1、電子輸送層128-1を設
けても良い。これらの層としては、実施の形態1に示した正孔注入層124や正孔輸送層
126、電子輸送層128と同様のものを使用することができる。なお、図示しないが、
実施の形態2で示したように、第1の発光層120と第2の発光層122の間に分離層1
35を設けても良い。
【0062】
1-2. 中間層
中間層150は第1の電極100と第2の電極102に電圧を印加したときに、第1の
発光ユニット140-1に電子を注入し、第2の発光ユニット140-2に正孔を注入す
る機能を有する。また、可視光を透過することができ、40%以上の透過率を有すること
が好ましい。ここでは、中間層150は第1の層150-1と第2の層150-2で構成
される。第1の層150-1は第1の発光ユニット140-1側に設けられ、第2の層1
50-2は第2の発光ユニット140-2側に設けられる。
【0063】
第1の層150-1は、例えば第1族金属や第2族金属、あるいはこれらの化合物(酸
化物やハロゲン化物、炭酸塩など)を用いることができる。あるいは、実施の形態1で示
した電子輸送性材料と、これに対して電子供与性を示す材料の混合層を用いることもでき
る。
【0064】
第2の層150-2は、実施の形態1で示した遷移金属酸化物を有する層を用いること
ができる。あるいは、正孔輸送性材料とこれに対して電子受容性を示す材料の混合層、も
しくは電子受容性を示す材料を含む層と正孔輸送性材料を含む層の積層を用いることがで
きる。具体的には、実施の形態1で示した正孔注入層124として用いることが可能な混
合層や積層を用いることができる。
【0065】
なお、図示しないが、第1の層150-1と第2の層150-2の間にバッファー層を
設けても良い。これにより、第1の層150-1と第2の層150-2を構成する材料同
士が界面で反応することを防ぐことができる。バッファー層は電子輸送性材料を含む層で
あり、電子輸送性材料としては、例えばペリレン誘導体や含窒素縮合芳香族化合物などが
挙げられる。
【0066】
中間層150は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法、グラビア
印刷法等の方法で形成することができる。
【0067】
1-3. 第2の発光ユニット
第2の発光ユニット140-2は第3の発光層132を有する。第3の発光層132は
第3のホスト材料と第3の発光材料を有し、第3の発光材料は蛍光材料、もしくは燐光材
料である。第3の発光層132中では第3のホスト材料が重量比で最も多く存在し、第3
の発光材料は第3のホスト材料中に分散される。第3のホスト材料は、実施の形態1で示
した第1のホスト材料や第2のホスト材料と同様のものを用いることができる。また、第
3のホスト材料は第1のホスト材料や第2のホスト材料と同じでも良く、異なっていても
良い。第3の発光材料として蛍光材料を用いる場合には、第3のホスト材料のS1準位は
第3の発光材料のそれよりも高いことが好ましい。一方、第3の発光材料として燐光材料
を用いる場合には、第3のホスト材料のT1準位は第3の発光材料のそれよりも高いこと
が好ましい。第3の発光材料としては、実施の形態1で示した第1の発光材料や第2の発
光材料と同様の材料を使用することができる。
【0068】
第3の発光材料は、第1の発光材料や第2の発光材料と同じでも良く、異なっていても
良い。例えばこれら第1の発光材料と第2の発光材料、および第3の発光材料を用いて赤
、青、緑の三原色の発光を与えるようにすることで、発光素子から演色性の高い白色光を
取り出すことができる。
【0069】
図3(A)に示した発光素子では、第2の発光ユニット140-2は、さらに正孔輸送
層126-2、電子輸送層128-2、及び電子注入層130を有する。これらの層も実
施の形態1に示したものと同様のものを用いることができる。
【0070】
実施の形態1や2で示した発光素子と比較すると、本実施の形態で示した発光素子の駆
動電圧は上昇するものの、同程度の電流密度において2倍あるいはそれ以上の電流効率を
得ることが可能であり、高い効率の発光素子を実現することができる。
【0071】
2. 発光素子の他の構成例
図3(A)で示した発光素子では、第1の発光層120と第2の発光層122を有する
発光ユニット(第1の発光ユニット140-1)が第1の電極100側に形成されている
が、
図3(B)に示すように、第2の電極102側に形成されていても良い。またこの場
合、実施の形態2と同様に、第1の発光層120と第2の発光層122の間に分離層13
5を設けても良い。
【0072】
ここでは2つの発光ユニットを有する発光素子について、
図3(A)(B)を用いて説
明を行ったが、
図3(C)に示すように、n個(nは3以上の整数)の発光ユニット(1
40-1~140-n)を積層した発光素子も本発明の実施態様に含まれる。この場合、
隣接する発光ユニット間に中間層(150(1)~150(n-1))が設けられる。ま
た、n個の発光ユニットのうち少なくとも1つが前記第1の発光ユニットと同様の構成を
有し、少なくとも他の1つが前記第2の発光ユニットと同様の構成を有していれば良い。
【0073】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いるこ
とができる。
【0074】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を有する発光装置の一例として、アクテ
ィブマトリクス型発光装置について、
図4を用いて説明する。
図4(A)は発光装置の上
面図であり、
図4(B)は
図4(A)のA-A´断面図である。
【0075】
図4(A)(B)に示すように、発光装置は素子基板401上にソース側駆動回路40
3、画素部402、ゲート側駆動回路404a、404bを有する。406は封止基板、
405はシール材であり、シール材405で囲まれた内側は領域418になっている。素
子基板401や封止基板406として、ガラス基板や石英基板の他、FRP(Fiber
Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリ
エステルまたはアクリルなどからなる可撓性基板を用いることができる。配線407は引
き回し配線であり、FPC408から種々の信号を受け取り、ソース側駆動回路403及
びゲート側駆動回路404a、404bに伝送する。FPCにはプリント配線基板(PW
B)が取り付けられていても良い。
【0076】
図4(B)では簡素化のため、ソース側駆動回路403の一部と画素部402中の一つ
の画素が示されている。
図4(B)に示すように、ソース側駆動回路403にはnチャネ
ル型トランジスタ409とpチャネル型トランジスタ410とを組み合わせたCMOS回
路が形成されるが、これ以外の回路、例えばPMOS回路もしくはNMOS回路が形成さ
れても良い。また、ソース側駆動回路403やゲート側駆動回路404a、404bの全
て、あるいは一部を基板上ではなく、基板の外部に形成することもできる。前記トランジ
スタはスタガ型でも良く、逆スタガ型でも良い。トランジスタを構成する半導体層の材料
としては、シリコン及びゲルマニウムなどの第14族元素、ガリウムヒ素やインジウムリ
ンなどの化合物、あるいは酸化亜鉛や酸化スズなどの酸化物など、半導体特性を示す物質
であればどのような材料を用いてもよい。半導体特性を示す酸化物(酸化物半導体)とし
ては、インジウム、ガリウム、アルミニウム、亜鉛及びスズから選ばれる元素の複合酸化
物などを用いることができる。半導体層は結晶、非晶質のどちらであってもよい。結晶性
半導体の具体例としては、単結晶半導体、多結晶半導体、若しくは微結晶半導体が挙げら
れる。
【0077】
画素部402はスイッチング用トランジスタ411と、電流制御用トランジスタ412
、および電流制御用トランジスタ412に電気的に接続された第1の電極413を含む複
数の画素により形成される。第1の電極413の端部を覆って絶縁物414が形成されて
いる。
【0078】
絶縁物414の開口部に実施の形態1、2、あるいは3で示した発光素子の構成を適用
した発光素子417が設けられる。すなわち発光素子417は、第1の電極413、EL
層415、および第2の電極416を有しており、EL層415には少なくとも第1の発
光層と第2の発光層が含まれており、第3の発光層がさらに含まれていても良い。なお、
画素部402には複数の発光素子が形成されるが、その一部に本実施の形態1から3で説
明した発光素子とは異なる構成を有する発光素子が含まれていても良い。
【0079】
シール材405によって封止基板406と素子基板401が貼り合わされており、領域
418に発光素子417が配置される。領域418は不活性ガス、あるいは樹脂や乾燥剤
、又はその両方で充填される。シール材405にはエポキシ系樹脂やガラスフリットを用
いるのが好ましい。
【0080】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いるこ
とができる。
【0081】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様の発光素子を有する発光装置の一例として、パッシ
ブマトリクス型発光装置について、
図5を用いて説明する。
図5(A)は発光装置を示す
斜視図、
図5(B)は
図5(A)のX-Y断面図である。
【0082】
発光装置は基板551、第1の電極552、第2の電極556、およびEL層555を
有し、EL層555は実施の形態1、2、あるいは3で示した第1の発光層120と第2
の発光層122を有する。第1の電極552の一部は絶縁層553で覆われており、絶縁
層553上には隔壁層554が設けられている。隔壁層554は、基板551から離れる
につれてその幅が大きくなる。つまり、隔壁層554の短辺方向の断面は台形であり、絶
縁層553に接する底辺が上辺よりも短い。これにより、クロストークに起因した発光素
子の不良を防ぐことが出来る。
【0083】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いるこ
とができる。
【0084】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子を有する発光装置を含む電子機器の
一例について、
図6、
図7を用いて説明する。
【0085】
電子機器として、例えば、テレビジョン装置、コンピュータ、カメラ(デジタルカメラ
やデジタルビデオカメラ)、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯情報端末、ゲー
ム機、音響再生装置などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を
図6に示す。
【0086】
図6(A)はテレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置6100は筐体
6101に表示部6103が組み込まれている。表示部6103には、実施の形態1、2
、あるいは3に示した発光素子を含む発光装置が設けられている。
【0087】
図6(B)はコンピュータの一例を示している。コンピュータは本体6201、筐体6
202、表示部6203、キーボード6204、外部接続ポート6205、ポインティン
グデバイス6206などを含む。表示部6203には、実施の形態1、2、あるいは3に
示した発光素子を含む発光装置が設けられている。
【0088】
図6(C)はスマートウオッチの一例を示している。スマートウオッチは筐体6302
、表示パネル6304、操作ボタン6311、6312、接続端子6313、バンド63
21、留め金6322などを有する。表示パネル6304には実施の形態1、2、あるい
は3に示した発光素子を含む発光装置が設けられている。また、表示パネル6304は非
矩形状の表示領域を有しており、時刻を表すアイコン6305、その他のアイコン630
6などを表示することができる。
【0089】
図6(D)は携帯電話機の一例を示している。携帯電話機6400は、筐体6401に
組み込まれた表示部6402の他、操作ボタン6403、外部接続ポート6404、スピ
ーカ6405、マイク6406などを備えている。表示部6402には、実施の形態1、
2、あるいは3に示した発光素子を含む発光装置が設けられている。また、図示しないが
、表示部6402にはタッチパネルが設けられており、表示部6402を指などで触れる
ことで、携帯電話機6400を操作、または携帯電話機6400へ情報を入力することが
できる。また、表示部6402にイメージセンサを搭載して撮像機能を付与しても良い。
【0090】
図7は2つ折り可能なタブレット型端末の一例を示している。
図7(A)には開いた状
態が示されている。タブレット型端末は、筐体730、表示部731a、表示部731b
、表示モード切り替えスイッチ734、電源スイッチ735、省電力モード切り替えスイ
ッチ736、留め具733、操作スイッチ738などを有する。表示部731aと表示部
731bの一方、あるいは両方には、実施の形態1、2、あるいは3に示した発光素子を
含む発光装置が設けられている。タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐
体730を閉じることによって表示部731a、表示部731bを保護することができる
。
【0091】
表示部731aと表示部731bの一部あるいは全部をタッチパネル領域732a、7
32bとすることができ、表示された操作キー737や操作スイッチ739に触れること
でデータ入力などの各種操作を行うようにしても良い。
【0092】
表示モード切り替えスイッチ734によって、縦表示または横表示などの表示方向の切
り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどが選択できる。省電力モード切り替えスイ
ッチ736により、タブレット型端末に内蔵される光センサで検出される外光量に応じて
表示の輝度を最適化することができる。
【0093】
図7(A)は表示部731aと表示部731bの表示面積が同じ例を示しているが、面
積が互いに異なっていてもよく、表示の仕様が異なっていてもよい。例えば一方が他方よ
りも高精細であっても良い。
【0094】
図7(B)はタブレット型端末が閉じた状態を示しており、太陽電池750、充放電制
御回路752、バッテリー754、DCDCコンバータ756などが図示されている。太
陽電池750によって電力をタブレット型端末に供給することができる。なお、太陽電池
750は筐体730の片面または両面のいずれに設けても良い。
【0095】
以上のように、本発明の一態様である発光装置を適用して電子機器を得ることができる
。発光装置の適用範囲は極めて広く、あらゆる分野の電子機器に適用することが可能であ
る。
【0096】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いるこ
とができる。
【0097】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様である発光素子を有する発光装置を含む照明装置の
一例について、
図8を用いて説明する。
【0098】
図8は、天井に設置された照明装置801、壁面に設置された照明装置803、曲面上
に設置された照明装置802、テーブルなどの家具に設置された照明装置804を示して
いる。照明装置801は、筐体821と、筐体821内に設置された発光装置811と、
を有する。また、照明装置802は、支持体822と、支持体822上の発光装置812
と、を有する。また、照明装置803は、壁面に発光装置813が設置される。また、照
明装置804は、支持体824と、支持体824上の発光装置814と、を有する。これ
らの照明装置が有する発光装置に実施の形態1、2、あるいは3に示した発光素子を適用
することができる。
【0099】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態に示した構成と適宜組み合わせて用いるこ
とができる。
【実施例0100】
本実施例では、本発明の一態様である発光素子の作製例を示す。本実施例で作製する発
光素子(発光素子1)の模式図を
図9(A)に、素子構造の詳細を表1に、使用した化合
物の構造と略称を以下に示す。
【化1】
【化2】
【表1】
【0101】
1. 発光素子1の作製
ガラス基板上に形成された酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO(Indiu
m Tin SiO2 Doped Oxide)、膜厚110nm、面積4mm2(2
mm×2mm))を第1の電極100とし、この上に1,3,5-トリ(ジベンゾチオフ
ェン-4-イル)ベンゼン(DBT3P-II)と酸化モリブデンを重量比(DBT3P
-II:MoO3)が2:1、膜厚が30nmになるように共蒸着して正孔注入層124
を形成した。
【0102】
正孔注入層124上に3-[4-(9-フェナントリル)-フェニル]-9-フェニル
-9H-カルバゾール(PCPPn)を膜厚が20nmになるように蒸着して正孔輸送層
126を形成した。
【0103】
正孔輸送層126上に7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7
H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(cgDBCzPA)、9-フェニル-3-[4-
(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(PCzPA)、
およびN,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス〔3-(9-フェニル-
9H-フルオレン-9-イル)フェニル〕ピレン-1,6-ジアミン(1,6mMemF
LPAPrn)を重量比(cgDBCzPA:PCzPA:1,6mMemFLPAPr
n)が0.3:0.7:0.05、膜厚が20nmになるように共蒸着して第1の発光層
120を形成した。
【0104】
第1の発光層120上に2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-
3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(2mDBTBPDBq-II)、N-(1
,1’-ビフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-N-[4-(9-フェニル-9H
-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9H-フルオレン-2-アミン(PCBBiF
)、およびビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリ
ジウム(III)(Ir(tppr)2(dpm))を重量比(2mDBTBPDBq-
II:PCBBiF:Ir(tppr)2(dpm))が0.5:0.5:0.05、膜
厚が10nmになるように共蒸着して第2の発光層122の一層目122(1)を形成し
た。
【0105】
この上に2mDBTBPDBq-II、PCBBiF、およびビス[2-(6-ter
t-ブチル-4-ピリミジニル-κN3)フェニル-κC](2,4-ペンタンジオナト
-κ2O,O’)イリジウム(III)(Ir(tBuppm)2(acac))を重量
比(2mDBTBPDBq-II:PCBBiF:Ir(tBuppm)2(acac)
)が0.7:0.3:0.05、膜厚が20nmになるように共蒸着して第2の発光層1
22の二層目122(2)を形成した。
【0106】
この上に2mDBTBPDBq-II、バソフェナントロリン(Bphen)をそれぞ
れ膜厚が10nm、15nmになるように順次蒸着し、電子輸送層(128(1)、12
8(2))を形成した。電子輸送層(128(1)、128(2))上にフッ化リチウム
(LiF)を1nmの膜厚になるように蒸着して電子注入層130を形成し、さらにアル
ミニウム(Al)を200nmの膜厚になるように蒸着して第2の電極102を形成した
。窒素雰囲気下、シール材を用いて対向ガラス基板をガラス基板上に固定することで封止
を行い、発光素子1を得た。
【0107】
2. 発光素子1の特性
発光素子1の初期特性を
図10から
図13に示す。
図10に示すように、発光素子1は
2.4V付近から発光が始まり、5.0Vの電圧で8000cd/m
2を超える輝度を示
すことから、低電圧で駆動できることが分かる。また、1000cd/m
2において電流
効率、外部量子効率はそれぞれ20.4cd/A、10.7%(
図11参照)、パワー効
率は16.9lm/W(
図12参照)であり、このことから高い効率を有することが確認
できる。この発光素子1は、青色発光蛍光材料(1,6mMemFLPAPrn)を第1
の発光層120に、赤色発光燐光材料(Ir(tppr)
2(dpm))を第2の発光層
122のうちの一層目122(1)に、緑色発光燐光材料(Ir(tBuppm)
2(a
cac))を第2の発光層122のうちの二層目122(2)に有している。
図13に発
光素子の500cd/m
2における電界発光スペクトルを示す。赤、青、緑の波長領域に
ピークがそれぞれ観測されることから、これらの3つの発光材料から同時に発光が得られ
ていることが分かる。実際、1000cd/m
2における発光の色度は(x、y)=(0
.38、0.36)であり、白色発光が得られていることが分かる。