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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016739
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】短靴
(51)【国際特許分類】
   A43B 11/00 20060101AFI20240131BHJP
   A43B 13/22 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A43B11/00
A43B13/22 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119063
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】500239627
【氏名又は名称】岸原工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】岸原 章浩
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050AA01
4F050BA04
4F050BA31
4F050HA53
4F050HA58
4F050LA01
4F050MA44
4F050MA46
4F050MA83
4F050MA84
(57)【要約】
【課題】後足部3cの破損を防止するとともに、屈むことなく脱げる短靴1を提供することを目的とする。
【解決手段】足の甲側を覆うアッパー2と、足の足裏側を覆う靴底3とで構成された一足の短靴1であって、靴底3が、後足部3cの一部にソール本体31に比べて摩擦係数の大きいラバー素材で形成された後方耐滑部33を備え、後方耐滑部33が、靴底3の底面となる耐滑底面33aと、後足部3cの内側面の一部となるとともに、他方の短靴1が側方から押し付けられる当接面33bとを備えたことを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
足の甲側を覆うアッパーと、足の足裏側を覆う靴底とで構成された一足の短靴であって、
前記靴底が、
後足部の一部に周囲に比べて摩擦係数の大きい素材で形成された後方耐滑部を備え、
該後方耐滑部が、
前記靴底の底面となる耐滑底面と、
前記後足部の内側面の一部となるとともに、他方の短靴が側方から押し付けられる当接面とを備えた
短靴。
【請求項2】
前記当接面が、
前記後足部の内側面から前記後足部の後面にかけて形成された
請求項1に記載の短靴。
【請求項3】
前記当接面が、
前記当接面の周囲の前記内側面に略面一となるように形成された
請求項1に記載の短靴。
【請求項4】
前記当接面に、細溝状の溝部が複数設けられた
請求項1に記載の短靴。
【請求項5】
前記後方耐滑部がラバー素材で形成され、
前記靴底における他の部分がエチレン酢酸ビニルで形成された
請求項1に記載の短靴。
【請求項6】
前記靴底が、
前足部の一部に周囲に比べて摩擦係数の大きい素材で形成されるとともに、前記靴底の底面をなす前方耐滑部を備えた
請求項1に記載の短靴。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば屈むことなく脱ぐことができるような短靴に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、短靴などの靴には、機能性を重視した靴やデザイン性を重視した靴だけでなく、機能性及びデザイン性の双方を重視した靴など様々なバリエーションが存在している。
【0003】
ところで、左右の靴を脱ぐ際、手で靴を支えながら脱ぐのが一般的だが、例えば妊婦や高齢者のように屈むことが困難な人の場合、一方の靴の後足部を他方の靴でおさえながら脱ぐことがある。
【0004】
そこで、このような脱ぎ方を容易にする様々な靴が提案されている。例えば特許文献1では、他方の靴を引っ掛ける突起部を、後足部の後面に設けた靴が提案されている。
そして、特許文献1では、一方の靴の突起部を踏むように他方の靴を引っ掛けることで、一方の靴を他方の靴でおさえられるため、屈むことなく脱ぐことができるとされている。
【0005】
ところが、特許文献1の靴は、一方の靴を脱ぐ際、突起部を踏むように他方の靴を突起部に引っ掛けるため、突起部の上面に下向きの荷重が加わり易い。このため、特許文献1は、突起部の上面に加わった下向きの荷重によって後足部が破損するおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-33001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、後足部の破損を防止するとともに、屈むことなく脱げる短靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、足の甲側を覆うアッパーと、足の足裏側を覆う靴底とで構成された一足の短靴であって、前記靴底が、後足部の一部に周囲に比べて摩擦係数の大きい素材で形成された後方耐滑部を備え、該後方耐滑部が、前記靴底の底面となる耐滑底面と、前記後足部の内側面の一部となるとともに、他方の短靴が側方から押し付けられる当接面とを備えたことを特徴とする。
【0009】
上記後足部は、足裏の土踏まずに対応する部分よりも踵側の部分のことをいう。
上記摩擦係数の大きい素材とは、例えば滑り止めとして用いられるラバー素材などのことをいう。
前記後足部の内側面とは、靴底の底面に交差し、かつ他方の短靴に対向する面のことをいう。
【0010】
この発明によれば、周囲に比べて摩擦係数の大きい素材で形成された後方耐滑部の当接面に、他方の短靴が押し付けられるため、当接面を他方の短靴に対する滑り止め部として機能させることができる。
これにより、短靴は、当接面の摩擦抵抗によって一方の短靴をおさえられるため、履き口からの足の引抜きを容易にすることができる。
【0011】
さらに、短靴は、一方の短靴を他方の短靴で踏むことなくおさえられるため、例えば後足部に設けた突起部に他方の短靴を引っ掛ける場合に比べて、後足部の破損を防止することができる。
よって、短靴は、後足部の破損を防止するとともに、屈むことなく脱ぐことができる。
【0012】
加えて、路面に対する滑り止め部として機能する耐滑底面と、他方の短靴に対する滑り止め部として機能する当接面とを後方耐滑部に備えているため、短靴は、耐滑底面を有する部分と当接面を有する部分とを別体で構成した場合に比べて成形性の低下を抑えることができる。
【0013】
この発明の態様として、前記当接面が、前記後足部の内側面から前記後足部の後面にかけて形成されてもよい。
この構成によれば、靴底の後足部において、他方の短靴を押し付け可能な範囲を大きく確保することができる。このため、短靴は、短靴の押し付け方の異なる様々な人に対応することができ、使い勝手の向上を図ることができる。
【0014】
またこの発明の態様として、前記当接面が、前記当接面の周囲の前記内側面に略面一となるように形成されてもよい。
この構成によれば、当接面の周囲の内側面に対して、後方耐滑部の当接面が突出することがない。
【0015】
これにより、後方耐滑部の当接面が、他方の短靴によって踏まれることを防止できるため、短靴は、下向きの荷重による後足部の破損を確実に防止することができる。
さらに、当接面の突出による見栄えの悪化を抑えられるため、デザイン性を重視する靴への適用を容易にすることができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記当接面に、細溝状の溝部が複数設けられてもよい。
この構成によれば、当接面に下向きの荷重が加わった際、後方耐滑部を適度に撓ませることができる。これにより、下向きの荷重を適度に吸収できるため、短靴は、過度な下向きの荷重による当接面の破損を防止することができる。
【0017】
またこの発明の態様として、前記後方耐滑部がラバー素材で形成され、前記靴底における他の部分がエチレン酢酸ビニルで形成されてもよい。
この構成によれば、靴底全体をラバー素材で構成した場合に比べて、靴底の軽量化を図ることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記靴底が、前足部の一部に周囲に比べて摩擦係数の大きい素材で形成されるとともに、前記靴底の底面をなす前方耐滑部を備えてもよい。
上記前足部は、足裏の土踏まずに対応する部分よりもつま先側の部分のことをいう。
【0019】
この構成によれば、後方耐滑部と前方耐滑部との協働によって、路面に対する滑り止め性能を向上することができる。
これにより、一方の短靴を他方の短靴でおさえた状態で、履き口から足を引き抜く際、一方の短靴が滑ることをより防止できるため、短靴は、履き口からの足の引き抜きをより容易にすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、後足部の破損を防止するとともに、屈むことなく脱げる短靴を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】背面視における一足の短靴の外観を示す背面図。
図2】右靴を説明する説明図。
図3】左靴を説明する説明図。
図4】右靴を左靴の後足部でおさえている状態を示す底面図。
図5】右靴を左靴でおさえている状態を説明する説明図。
図6】実施例2における右靴を説明する説明図。
図7】右靴を左靴でおさえている状態を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例0023】
実施例1では、屈むことなく脱ぐことができる一足の短靴1について、図1から図5を用いて説明する。
なお、図1は一足の短靴1の背面図を示し、図2は右靴1Rを説明する説明図であり、図2(a)は内側から見た右靴1Rの側面図を示し、図2(b)は右靴1Rの底面図を示している。
【0024】
さらに、図3は左靴1Lを説明する説明図であり、図3(a)は内側から見た左靴1Lの側面図を示し、図3(b)は左靴1Lの底面図を示し、図4は右靴1Rを左靴1Lの後足部3cでおさえている状態の底面図を示している。
【0025】
加えて、図5は右靴1Rを左靴1Lでおさえている状態を説明する説明図であり、図5(a)は右靴1Rを左靴1Lの中足部3aでおさえている状態の底面図を示し、図5(b)は右靴1Rを左靴1Lの前足部3bでおさえている状態の底面図を示している。
【0026】
また、図1中の上側を上方とし、図1中の下側を下方として、図中の矢印Rは一足の短靴1における右方向を示し、図中の矢印Lは一足の短靴1における左方向を示している。
さらに、図中の矢印Frは短靴1の前方向を示し、図中の矢印Rrは短靴1の後方向を示し、図中の矢印INは短靴1の内側を示し、図中の矢印OUTは短靴1の外側を示している。
【0027】
実施例1における一足の短靴1は、図1から図3に示すように、例えば紐なしのスニーカータイプであって、右足用の短靴1(以降、右靴1Rと呼ぶ)と、左足用の短靴1(以降、左靴1Lと呼ぶ)とで構成されている。
なお、右靴1Rと左靴1Lは、左右対称形状のため、以降の説明において、左右の区別が必要な場合を除き短靴1と称するとともに、各構成要素も同じ符号を付して説明する。
【0028】
詳述すると、短靴1は、図1から図3に示すように、足の甲側を覆うアッパー2と、足の足裏側を覆う靴底3とで構成されている。
アッパー2は、例えばナイロン製、革製、あるいは布製のパーツを立体形状となるように縫製して形成されている。なお、アッパー2には、図2(a)及び図3(a)に示すように、足の踝が露出するように履き口2aが設けられ、履き口2aの前方にタン21が設けられている。
【0029】
一方、靴底3は、図2及び図3に示すように、上下方向に所定の厚みを有するとともに、アッパー2が固定されるソール本体31と、ソール本体31の底面に埋設された前方耐滑部32及び後方耐滑部33とで構成されている。
【0030】
この靴底3は、予め成形した前方耐滑部32及び後方耐滑部33に対して、例えば射出成形によってソール本体31を成形することで構成されている。
ここで、靴底3における足裏の土踏まずに対応する部分を中足部3aとして、中足部3aよりもつま先側の部分を前足部3bとし、中足部3aよりも踵側の部分を後足部3cとして、靴底3についてさらに説明する。
【0031】
具体的には、ソール本体31は、比較的軽量なエチレン酢酸ビニルで形成され、靴底3における前足部3b、中足部3a、及び後足部3cを構成している。このソール本体31の底面には、路面との間に水膜が形成されることを阻止する溝(図示省略)が設けられている。
【0032】
また、前方耐滑部32は、図2(b)及び図3(b)に示すように、前後方向に短い底面視略矩形であって、靴底3の前足部3bにおいて、ソール本体31に埋設されるとともに、ソール本体31とで靴底3の底面を構成している。
【0033】
この前方耐滑部32は、路面に対する滑り止め部として機能するように、ソール本体31よりも摩擦係数の高いラバー素材で形成されるとともに、底面にソール本体31とは異なるパターンの溝(符号省略)が設けられている。
【0034】
また、後方耐滑部33は、図2(b)及び図3(b)に示すように、靴底3の後足部3cにおいて、ソール本体31に埋設されるとともに、底面である耐滑底面33aがソール本体31とで靴底3の底面を構成している。
【0035】
この後方耐滑部33は、路面に対する滑り止め部として機能するように、ソール本体31よりも摩擦係数の高いラバー素材で形成されるとともに、耐滑底面33aにソール本体31とは異なるパターンの溝(符号省略)が設けられている。
なお、後方耐滑部33は、前方耐滑部32と同じラバー素材で形成されている。
【0036】
より詳しくは、後方耐滑部33は、図2(b)及び図3(b)に示すように、ソール本体31よりも薄い厚みを有するとともに、後方へ向けて突出した湾曲面を有する底面視略蒲鉾状に形成される。
【0037】
さらに、後方耐滑部33は、図1から図3に示すように、内側面から後面に至る範囲の面が、靴底3の内側面から後面の略中央に至る範囲に露出するように、靴底3の後足部3cにおける内側よりに埋設されている。
この後方耐滑部33における内側面から後面に至る範囲の面は、一方の短靴1を脱ぐ際に、他方の短靴1が側方から押し付けられる当接面33bとして形成されている。
【0038】
このため、後方耐滑部33の当接面33bは、図2(b)及び図3(b)に示すように、靴底3の内側面の一部及び後面の一部を構成するように、ソール本体31の内側面及び後面に略面一に形成されている。
なお、後方耐滑部33の当接面33bには、靴底3の内側面から後面にかけて延びる細溝状の溝部33cが、上下方向に所定間隔を隔てて複数設けられている。
【0039】
次に、上述した構成の短靴1において、例えば右靴1Rを脱ぐ際の右靴1Rと左靴1Lの状態について、図4及び図5を用いて説明する。
例えば右靴1Rの後足部3c(図2参照)を左靴1Lの後足部3c(図3参照)でおさえて脱ぐ場合、図4に示すように、右靴1Rの当接面33bに左靴1Lの当接面33bを押し付けて、右靴1Rをおさえている。
また、例えば右靴1Rの後足部3cを左靴1Lの中足部3a(図3参照)でおさえて脱ぐ場合、図5(a)に示すように、右靴1Rの当接面33bに左靴1Lの中足部3aを押し付けて、右靴1Rをおさえている。
【0040】
また、例えば右靴1Rの後足部3cを左靴1Lの前足部3b(図3参照)でおさえて脱ぐ場合、図5(b)に示すように、右靴1Rの当接面33bに左靴1Lの前足部3bを押し付けて、右靴1Rをおさえている。
【0041】
上述したいずれの状態であっても、一方の短靴1における後方耐滑部33の当接面33bが少なくとも他方の短靴1に対する滑り止めとして機能するため、一足の短靴1は、履き口2aからの足の引き抜きを容易にすることができる。
【0042】
以上のように、実施例1の一足の短靴1は、足の甲側を覆うアッパー2と、足の足裏側を覆う靴底3とで構成されている。
この短靴1は、靴底3が、後足部3cの一部にソール本体31に比べて摩擦係数の大きいラバー素材で形成された後方耐滑部33を備え、後方耐滑部33が、靴底3の底面となる耐滑底面33aと、後足部3cの内側面の一部となるとともに、他方の短靴1が側方から押し付けられる当接面33bとを備えている。
【0043】
この構成によれば、ソール本体31に比べて摩擦係数の大きいラバー素材で形成された後方耐滑部33の当接面33bに、他方の短靴1が押し付けられるため、当接面33bを他方の短靴1に対する滑り止め部として機能させることができる。
これにより、短靴1は、当接面33bの摩擦抵抗によって一方の短靴1をおさえられるため、履き口2aからの足の引抜きを容易にすることができる。
【0044】
さらに、短靴1は、一方の短靴1を他方の短靴1で踏むことなくおさえられるため、例えば後足部3cに設けた突起部に他方の短靴1を引っ掛ける場合に比べて、後足部3cの破損を防止することができる。
よって、短靴1は、後足部3cの破損を防止するとともに、屈むことなく脱ぐことができる。
【0045】
加えて、路面に対する滑り止め部として機能する耐滑底面33aと、他方の短靴1に対する滑り止め部として機能する当接面33bとを後方耐滑部33に備えているため、短靴1は、耐滑底面33aを有する部分と当接面33bを有する部分とを別体で構成した場合に比べて成形性の低下を抑えることができる。
【0046】
また、当接面33bが後足部3cの内側面から後足部3cの後面にかけて形成されているため、短靴1は、靴底3の後足部3cにおいて、他方の短靴1を押し付け可能な範囲を大きく確保することができる。このため、短靴1は、短靴1の押し付け方の異なる様々な人に対応することができ、使い勝手の向上を図ることができる。
【0047】
また、当接面33bがソール本体31の内側面に略面一となるように形成されているため、ソール本体31の内側面に対して、後方耐滑部33の当接面33bが突出することがない。
これにより、後方耐滑部33の当接面33bが、他方の短靴1によって踏まれることを防止できるため、短靴1は、下向きの荷重による後足部3cの破損を確実に防止することができる。
さらに、当接面33bの突出による見栄えの悪化を抑えられるため、デザイン性を重視する靴への適用を容易にすることができる。
【0048】
また、当接面33bに細溝状の溝部33cが複数設けられているため、短靴1は、当接面33bに下向きの荷重が加わった際、後方耐滑部33を適度に撓ませることができる。これにより、下向きの荷重を適度に吸収できるため、短靴1は、過度な下向きの荷重による当接面33bの破損を防止することができる。
【0049】
また、後方耐滑部33がラバー素材で形成され、ソール本体31がエチレン酢酸ビニルで形成されているため、短靴1は、靴底3全体をラバー素材で構成した場合に比べて、靴底3の軽量化を図ることができる。
【0050】
また、靴底3が前足部3bの一部にソール本体31に比べて摩擦係数の大きいラバー素材で形成されるとともに、靴底3の底面をなす前方耐滑部32を備えているため、短靴1は、後方耐滑部33と前方耐滑部32との協働によって、路面に対する滑り止め性能を向上することができる。
【0051】
これにより、一方の短靴1を他方の短靴1でおさえた状態で、履き口2aから足を引き抜く際、一方の短靴1が滑ることをより防止できるため、短靴1は、履き口2aからの足の引き抜きをより容易にすることができる。
【実施例0052】
実施例2は、上述した実施例1に対して、後方防滑部の形状が異なる短靴1について図6及び図7を用いて説明する。
なお、実施例2では、右靴1Rを用いて説明し、右靴1Rに対して左右対称形状である左靴1Lの説明を省略する。
また、図6は実施例2における右靴1Rを説明する説明図であり、図6(a)は内側から見た右靴1Rの側面図を示し、図6(b)は右靴1Rの底面図を示している。
【0053】
さらに、図7は右靴1Rを左靴1Lでおさえている状態を説明する説明図であり、図7(a)は右靴1Rを左靴1Lの後足部3cでおさえている状態の底面図を示し、図7(b)は右靴1Rを左靴1Lの前足部3bでおさえている状態の底面図を示している。
また、上述した実施例1と同じ構成は、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0054】
実施例2の短靴1は、図6に示すように、上述した実施例1と同様に、足の甲側を覆うアッパー2と、足の足裏側を覆う靴底3とで構成されている。
さらに、実施例2における靴底3は、アッパー2が固定されるソール本体31と、ソール本体31の底面に埋設された前方耐滑部32及び後方耐滑部34とで構成されている。
【0055】
この後方耐滑部34は、図6(b)に示すように、靴底3の後足部3cにおいて、ソール本体31に埋設されるとともに、底面である耐滑底面34aがソール本体31とで靴底3の底面を構成している。
【0056】
なお、後方耐滑部34は、実施例1と同様に、路面に対する滑り止め部として機能するように、ソール本体31よりも摩擦係数の高いラバー素材で形成されるとともに、耐滑底面33aにソール本体31とは異なるパターンの溝(符号省略)が設けられている。
【0057】
具体的には、後方耐滑部34は、図6に示すように、靴底3の後足部3cにおける底面視略中央に埋設された本体部分341と、本体部分341から内側面へ延びる延設部分342とで構成されている。
【0058】
この後方耐滑部34の本体部分341は、図6(b)に示すように、後方へ向けて突出した湾曲面を有する底面視略蒲鉾状に形成されている。
【0059】
一方、後方耐滑部34の延設部分342は、図6(b)に示すように、本体部分341の前方側から内側面へ向けて延びる底面視略矩形に形成されている。
さらに、延設部分342の先端面は、外部に露出して他方の短靴1が側方から押し付けられる当接面34bを形成している。
【0060】
このため、後方耐滑部34の当接面34bは、図6(b)に示すように、靴底3の内側面の一部を構成するように、ソール本体31の内側面に略面一に形成されている。
なお、当接面34bには、靴底3の前方側から後方側へ延びる細溝状の溝部34cが、上下方向に所定間隔を隔てて複数設けられている。
【0061】
次に、上述した構成の短靴1において、例えば右靴1Rを脱ぐ際の右靴1Rと左靴1Lの状態について、図7を用いて簡単に説明する。
例えば右靴1Rの後足部3cを左靴1Lの後足部3cでおさえて脱ぐ場合、図7(a)に示すように、右靴1Rの当接面34bに左靴1Lの当接面34bを押し付けて、右靴1Rをおさえている。
【0062】
さらに、例えば右靴1Rの後足部3cを左靴1Lの前足部3bでおさえて脱ぐ場合、図7(b)に示すように、右靴1Rの当接面34bに左靴1Lの前足部3bを押し付けて、右靴1Rをおさえている。
【0063】
さらにまた、詳細な図示を省略するが、例えば右靴1Rの後足部3cを左靴1Lの中足部3aでおさえて脱ぐ場合、右靴1Rの当接面34bに左靴1Lの中足部3aを押し付けて、右靴1Rをおさえる。
【0064】
このため、一方の短靴1における後方耐滑部34の当接面34bが少なくとも他方の短靴1に対する滑り止めとして機能するため、一足の短靴1は、実施例1と同様に、履き口2aからの足の引き抜きを容易にすることができる。
【0065】
以上のように、実施例2の短靴1は、靴底3が、後足部3cの一部にソール本体31に比べて摩擦係数の大きいラバー素材で形成された後方耐滑部34を備え、後方耐滑部34が、靴底3の底面となる耐滑底面34aと、後足部3cの内側面の一部となるとともに、他方の短靴1が側方から押し付けられる当接面34bとを備えている。
この構成によれば、実施例2の短靴1は、上述した実施例1と同様の効果を奏することができる。
【0066】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の摩擦係数の大きい素材は、実施形態のラバー素材に対応し、
以下同様に、
当接面の周囲の内側面は、ソール本体31の内側面に対応し、
靴底における他の部分は、ソール本体31に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【0067】
具体的には、上述した実施形態においてスニーカータイプの短靴1を用いて説明したが、これに限定せず、短靴であれば、ビジネスシューズ、スポーツシューズ、あるいは安全靴などであってもよい。
また、アッパー2は、上述した実施形態に限定せず、適宜の素材を用いた適宜の形状であってもよい。
【0068】
また、前方耐滑部32と後方耐滑部33,34とを同じラバー素材で形成したが、これに限定せず、前方耐滑部32と後方耐滑部33,34とを異なるラバー素材で形成してもよい。
また、前方耐滑部32と後方耐滑部33,34をラバー素材で形成したが、これに限定せず、ソール本体31よりも摩擦係数の大きい素材であれば、適宜の素材で形成してもよい。
【0069】
また、ソール本体31をエチレン酢酸ビニルで形成したが、これに限定せず、ソール本体31は適宜の素材で形成してもよい。この際、ソール本体31は、前方耐滑部32及び後方耐滑部33,34よりも軽量な素材が望ましい。
また、前方耐滑部32を備えた短靴1としたが、これに限定せず、前方耐滑部32を設けていない短靴であってもよい。
【符号の説明】
【0070】
1…短靴
2…アッパー
3…靴底
3c…後足部
31…ソール本体
32…前方耐滑部
33,34…後方耐滑部
33a,34a…耐滑底面
33b,34b…当接面
33c,34c…溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7