IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社イノアックコーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-クッションパッド 図1
  • 特開-クッションパッド 図2
  • 特開-クッションパッド 図3
  • 特開-クッションパッド 図4
  • 特開-クッションパッド 図5
  • 特開-クッションパッド 図6
  • 特開-クッションパッド 図7
  • 特開-クッションパッド 図8
  • 特開-クッションパッド 図9
  • 特開-クッションパッド 図10
  • 特開-クッションパッド 図11
  • 特開-クッションパッド 図12
  • 特開-クッションパッド 図13
  • 特開-クッションパッド 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167390
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】クッションパッド
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/18 20060101AFI20241126BHJP
   A47C 27/15 20060101ALI20241126BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20241126BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
A47C7/18
A47C27/15 A
A47C27/15 B
B60N2/90
B29C39/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024152196
(22)【出願日】2024-09-04
(62)【分割の表示】P 2021020448の分割
【原出願日】2021-02-12
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】松本 真人
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ビーズ発泡成形体を分割構成としても、軟質ポリウレタン発泡成形体からの該ビーズ発泡成形体の剥離を抑制できるクッションパッドを提供する。
【解決手段】ブロック状ビーズ発泡成形体の芯パッドが分割構成された、第一芯パッド2と第二芯パッド3を有し、且つ該第一芯パッド2と該第二芯パッド3との対向側面231、331の一方に凹部4が他方に凸部5が形成され、該凹部4に該凸部5が嵌合してなる組付け芯パッドと、着座面を形成し、且つ前記組付け芯パッドの上面及び外周側面を覆って積層されている軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッドと、を具備する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック状ビーズ発泡成形体の芯パッドが分割構成された、第一芯パッドと第二芯パッドを有し、且つ該第一芯パッドと該第二芯パッドとの対向側面の一方に凹部が他方に凸部が形成され、該凹部に該凸部が嵌合してなる組付け芯パッドと、 着座面を形成し、且つ前記組付け芯パッドの上面及び外周側面を覆って積層されている軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッドと、を具備することを特徴とするクッションパッド。
【請求項2】
前記凹部が凹み穴であり、前記凸部が該凹み穴に嵌る突起部である請求項1記載のクッションパッド。
【請求項3】
前記凹部が前記第一芯パッド又は前記第二芯パッドの対向側面から凹んだ溝であり、前記凸部が該溝に嵌る凸状部である請求項1記載のクッションパッド。
【請求項4】
前記凹部が平面視で上下方向に貫通したアリ溝状の凹部であり、前記凸部が該アリ溝状の凹部に嵌合する凸状部である請求項3に記載のクッションパッド。
【請求項5】
前記凹部と前記凸部とが複数設けられ、それぞれの該凹部と該凸部とがかみ合うように嵌合して前記組付け芯パッドが形成される請求項1乃至4のいずれか1項に記載のクッションパッド。
【請求項6】
前記凹部と前記凸部とが前後方向に複数設けられる請求項1乃至5のいずれか1項に記載のクッションパッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は座席シートの座部を構成するクッションパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車等の車両用座席シートに係る座部を構成するクッションパッドは、快適なクッション性が得られるよう軟質ポリウレタン発泡成形体で造られてきたが、最近は、一部をビーズ発泡成形体に置き代える軽量化の動きが進んでいる。 ただ、ビーズ発泡成形体は発泡成形で成形収縮が発生し、寸法精度にバラツキが生じる。クッションパッドの製造では、車両設置状態とは上下逆になるクッションパッド用キャビティを有する発泡成形型を用いて行われる(図10参照)。ビーズ発泡成形体を上型にセットしようとしても、該ビーズ発泡成形体がつかえてセット困難になったり、またセットできてもすぐに脱落したりする不具合が生じ易かった。 そこで、不具合対策の発明がいくつか提案されている(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-138634号公報
【特許文献2】特開2020-188852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、特許文献1は、ビーズ発泡成形体の第一発泡成形体が、クッションパッドの車両設置下で、裏面側の一部に略垂直となる側壁面を有して盛上がった隆起部を具備する発明であり、車両設置面側に隆起部があっても支障をきたさないクッションパッドに制限された。 特許文献2は、段落0017に記載のように「第一発泡成形体3を車幅方向で分離し、複数に分けると、第一発泡成形体3に係る両端間長さの成形収縮による寸法誤差が小さくなる」というメリットがある。しかし、特許文献2は、図13に示す二つの左右第一発泡成形体m、nにすると、分けたことによって上型へ取付けるセット工数が二倍になる問題がある。また、左側第一発泡成形体mと右側第一発泡成形体nに分かれて小さくなった分、脱型で、クッションパッドを取り出そうとして曲げ応力が加わった時に、例えば右側第一発泡成形体nが、図14のごとく軟質ポリウレタン発泡成形体fの裏面fbから剥離する恐れがあった。軟質ポリウレタン発泡成形体fとビーズ発泡成形体の第一発泡成形体との接合はさほど強くない。軟質ポリウレタン発泡成形体fが、ビーズ発泡成形体の第一発泡成形体を覆って積層一体成形されても、右側第一発泡成形体nのように小さくなると、多少の曲げ応力で剥がれてしまうのである。図中、符号faは車両設置時におけるポリウレタン発泡成形体の上面を示す。 ビーズ発泡成形体を分割して小さくした図13のクッション体は、脱型時だけでなく、ハンドリングやクッション体の車体への組付けでもポリウレタン発泡成形体fからビーズ発泡成形体が剥離してしまう不具合を招く虞がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するもので、ビーズ発泡成形体を分割構成としても、軟質ポリウレタン発泡成形体からの該ビーズ発泡成形体の剥離を抑制できるクッションパッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく、本発明の要旨は、ブロック状ビーズ発泡成形体の芯パッドが分割構成された、第一芯パッドと第二芯パッドを有し、且つ該第一芯パッドと該第二芯パッドとの対向側面の一方に凹部が他方に凸部が形成され、該凹部に該凸部が嵌合してなる組付け芯パッドと、着座面を形成し、且つ前記組付け芯パッドの上面及び外周側面を覆って積層されている軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッドと、を具備することを特徴とするクッションパッドにある。
【発明の効果】
【0007】
本発明のクッションパッドは、ビーズ発泡成形体の芯パッドを分割しても、第一芯パッドと第二芯パッドとの対向側面の一方に凹部が他方に凸部が形成され、該凹部に該凸部が嵌合して組付け芯パッドに合体される。したがって、第一芯パッドと第二芯パッドとが一体化してひと塊として動くので、脱型やハンドリングでの第一芯パッドや第二芯パッドの剥離が格段に抑制され、また扱い易くもなって、作業性向上,品質維持に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明のクッションパッドの一形態で、クッションパッドを下面側から見た斜視図である。
図2】クッションパッドを上面側から見た一部破断斜視図である。
図3】(イ)が第一芯パッドと第二芯パッドの斜視図、(ロ)が組付け芯パッドの斜視図である。
図4図1のIV-IV線断面図である。
図5図3に代わる他態様図で、(イ)が第一芯パッド及び第二芯パッドの部分斜視図、(ロ)が第一芯パッドと第二芯パッドとを嵌合組付けされた組付け芯パッドの部分平面図である。
図6図5に代わる別態様図で、(イ)が部分斜視図、(ロ)が部分平面図である。
図7図5に代わる別態様図で、(イ)が部分斜視図、(ロ)が部分断面図である。
図8図5に代わる別態様図で、(イ)が部分斜視図、(ロ)が部分断面図である。
図9】組付け芯パッドを上型にセットする説明断面図である。
図10図9の後、下型にポリウレタン原料を注入する説明断面図である。
図11】型閉じした説明断面図である。
図12】表層パッドの成形を終えた断面図である。
図13】従来技術の説明断面図である。
図14】従来技術の説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のクッションパッドについて詳述する。図1図12は本発明のクッションパッドの一形態で、図1はクッションパッドを下面側から見た斜視図で、図2は上面側から見た一部破断斜視図、図3は(イ)が第一芯パッドと第二芯パッドの斜視図、(ロ)が組付け芯パッドの斜視図、図4図1のIV-IV線断面図、図5図8図1図4に代わる他態様図で、(イ)が第一芯パッド及び第二芯パッドの部分斜視図、(ロ)が第一芯パッドと第二芯パッドとを嵌合組付けされた組付け芯パッドの部分平面図又は部分断面図、図9は組付け芯パッドを上型にセットする断面図、図10図9の後、ポリウレタン原料を注入する説明断面図、図11は型閉じした断面図、図12は表層パッドの成形を終えた断面図を示す。尚、各図は判り易くするため、簡略化して発明要部を強調図示する。
【0010】
ここでのクッションパッドPは、着座乗員の下半身を受け支える自動車等の座席用クッションパッドとする。本実施形態は後部座席の図1図4のようなクッションパッドPに適用される。クッションパッドPにクッションパッドカバーTを被せてシートクッションの形にすれば、公知のバックパッドにバックパッドカバーを被せたシートバックとで、車幅方向中央に補助席部6Cを付加した後部座席シートができる。 クッションパッドPは、組付け芯パッド1と表層パッド6とを具備する。
【0011】
組付け芯パッド1は、ブロック状ビーズ発泡成形体の芯パッドが分割構成された、第一芯パッド2と第二芯パッド3を有して、該第一芯パッド2と該第二芯パッド3を嵌合させて組み付け合体された発泡成形体である。 第一芯パッド2と第二芯パッド3を嵌合してなる組付け芯パッド1は、クッションパッドPの下面側に配され、第一芯パッド下面2b,第二芯パッド下面3bが露出して、クッションパッドPの下層になる。本発明で「下面」とは、車両に取付け姿態にある図2のクッションパッドPで、紙面に隠れている「下方側の面」をいい、「上面」は着座乗員が座る上方側の面をいう。本発明の「前後方向」とは図2の車両後方及び車両前方の矢印方向を指す。
【0012】
組付け芯パッド1を構成する第一芯パッド2と第二芯パッド3は、ビーズ法発泡ポリプロピレンやビーズ法発泡スチロール等の発泡成形体になっている。例えばビーズ法発泡ポリプロピレンの成形体(本実施形態)にすると、内部を任意倍率にした高発泡層となり、表面が硬化皮膜層になる。表面皮膜のある非通気性発泡成形体にして、発泡後の見掛け密度が表層パッド6のものよりも小さくなり、大きさの割に非常に軽い第一,第二芯パッド2,3ができる。
【0013】
第一芯パッド2と第二芯パッド3は、両者の対向側面231,331の一方に凹部4が、他方に凸部5が形成されており、凹部4に凸部5が嵌合すると、図3(ロ)ごとくの大きな芯パッドたる組付け芯パッド1にできる。第一芯パッド2、第二芯パッド3は、組付け芯パッド1が車幅方向で略二等分されている。第一芯パッド下面2b,第二芯パッド下面3bにはクリップCPの収容溝12が設けられる。クリップCPは、クッションパッドカバーTに取付けた被係止部材Kの係止部になる(図4)。
【0014】
前記凹部4は第一芯パッド2の対向側面231又は第二芯パッド3の対向側面331から凹んだ溝4Aであり、凸部5は該溝4Aに嵌る凸状部5Aとする。ここでは、第一芯パッド2に凸部5が設けられ、第二芯パッド3に凹部4が設けられている(図3)。 凸部5は、例えば図5の第一芯パッド2に係る対向側面231に、櫛歯状の歯になる四角柱形凸部として突出形成され、該凸部5に対向する第二芯パッド3の対向側面331に凹部4が形成される。組付け芯パッド1は、図5(イ)の第一芯パッド2又は第二芯パッド3を水平横移動等させて、図5(ロ)のように該凹部4に前記凸部5を嵌合させてできる。図5(ロ)でいえば、凹部4と凸部5とが嵌合することによって、第一芯パッド2と第二芯パッド3の紙面上下方向(車両前後方向)への動きが互いに規制し合って制止され、組付け芯パッド1の一体化が図られる。 本実施形態は、さらに一歩進めて、凹部4を平面視で上下方向に貫通したアリ溝状の溝4Aにし、凸部5が該アリ溝状の溝4Aに嵌合する凸状部5Aになっている(図1図4)。
【0015】
詳述すると、図3で、車幅方向の略中央で分断された右側の第一芯パッド2と左側の第二芯パッド3は、第二芯パッド3の対向側面331に設けたアリ溝状の溝4Aへ、第一芯パッド2の対向側面231に設けた鳩尾形の凸状部5Aが嵌合して、組付け芯パッド1に形成される。図1,図3(イ)のように、溝口幅W40を狭くして断面が逆ハの字状になったアリ溝4Aへ、相手になる蟻ほぞにした凸状部5Aを横(図3では上方)から矢印方向に滑り込ませることによって図3(ロ)の組付け芯パッド1となり、第二芯パッド3の対向側面331に対し、第一芯パッド2が垂直方向へ抜け出せないようになる。アリ溝4Aが下面3bから上面3aへ向けて貫通する溝4Aに形成されている。ここで、アリ溝とは溝4Aの断面が逆ハの字状の溝をいうが、本発明でいうアリ溝は、これに限らず、口元の溝口40が狭くて溝底41側の一部が広くなっており、組み合わせて嵌合すると、図3(ロ)における逆ハの字状の溝4Aと同じように、第二芯パッド3から第一芯パッド2が同図の右水平方向に抜け出せないものも含む。例えば図6のような溝口40と溝底41を有する平面視略円形の溝4Aと、該溝4Aに嵌合する略円柱形の凸状部5Aなどが該当する。図6の凸状部5Aは、溝口40側にあたる基端幅t50よりも凸状部5Aの最大幅t52の方が大きくなっている。
【0016】
ちなみに、本実施形態は凹部4を溝4Aにしたが、これに代え、凹部4が図7,図8のような凹み穴4Bであり、且つ凸部5が該凹み穴4Bに嵌る突起部5Bとすることもできる。第一芯パッド2と該第二芯パッド3との対向側面231,331の一方に凹み穴4Bが他方に柱状等の突起部5Bが形成され、凹み穴4Bに突起部5Bが嵌合して、第一芯パッド2と第二芯パッド3の組付け合体品になる組付け芯パッド1ができる。穴口45から差し込まれた突起部5Aの突起先端面55が穴底46に近接又は当接し、さらに穴壁47に突起側面56が近接又は当接する。
【0017】
また、前記凹部4と前記凸部5については、それぞれが一個でもよいが、図1,図3のごとく、第二芯パッド3の対向側面331で車両の前後方向に凹部4を複数(ここでは二個)設け、各凹部4に対応させる凸部5を第一芯パッド2の対向側面231に複数(ここでは二個)設けることができる。凹部4と凸部5とが複数設けられ、それぞれの凹部4と凸部5とがかみ合うように嵌合
して組付け芯パッド1が形成される。凹部4と凸部5が複数設けられると、第一芯パッド2と第二芯パッド3の一体化がより強固になり、組付け芯パッド1の合体状態を安定化できる。 尚、凸部5が嵌合する凹部4を複数設ける場合は、第二芯パッド3の対向側面331で車両の前後方向に凹部4を複数設けるのに限らず、図8のように、第一芯パッド2の対向側面231で、車両の上下方向に凹部4を複数設けるものであってよい。また、両者を含めた車両の前後方向及び車両の上下方向に凹部4を複数設けてもよい。
【0018】
表層パッド6は、下層になる組付け芯パッド1を覆って積層される発泡成形体の表層で、軟質ポリウレタン発泡成形体で形成される。 組付け芯パッド1の下面、すなわち第一芯パッド下面2b及び第二芯パッド下面3bを露出させ、残りの組付け芯パッド1の上面及び外周側面が表層パッド6で覆われる。組付け芯パッド1をインサート品にして、この上面に着座面部分61を含む上層が積層し、また前記外周側面に側周層62が積層して、組付け芯パッド1に裏面6bが当接する表層パッド6が発泡成形されている。組付け芯パッド1を形成する第一芯パッド2と第二芯パッド3とが嵌合する凹部4と凸部5間や対向側面231,331間にある隙間は、表層パッド6の発泡成形で、着座面部分61,側周層62とともに、該隙間へもポリウレタン原料gが浸入して、該隙間が軟質ポリウレタン発泡成形体で埋められる。 寸法精度を上げるべく分割された第一,第二芯パッド2,3であっても、凹部4と凸部5を設けて嵌合した組付け芯パッド1をインサート品にして、表層パッド6が発泡成形されることによって、第一芯パッド2,第二芯パッド3の剥離が抑制された所望のクッションパッドPに仕上がっている。 符号6dは表層パッドの側面、符号6Aはメイン部、符号6Bはサイド部、符号6Eはバックレストとの合せ部、符号69は吊溝を示す。
【0019】
前記クッションパッドPは例えば次のような製法によって造られる。発泡成形型7を用い、乗員が当接する着座面611側の上面6aを含む軟質ポリウレタンの表層パッド6を発泡成形し、その発泡成形で組付け芯パッド1が埋設一体化されるクッションパッドPを製造する。製造に先立ち、前記第一芯パッド2と前記第二芯パッド3と発泡成形型7が用意される。
【0020】
発泡成形型7は、図10のような分割型で、下型9(一の分割型)と上型8(他の分割型)が開閉可能になっている。図11のごとく型閉じすると、全体が椀状にへこんで着座乗員の着座面611を形成する下型キャビティ面91と、全体がほぼ平坦な上型キャビティ面81とで、クッションパッド用キャビティCがつくられる。該キャビティCは、図1におけるIV-IV線断面形状を表す。尚、図9図12の発泡成形型7は、図2のクッションパッドPを上下が逆になった形で成形する。
【0021】
まず、図3(イ)のような第一芯パッド2と第二芯パッド3が二つに分かれている状態から、第二芯パッド3の溝4Aへ第一芯パッド2の凸状部5Aを嵌合させて、図3(ロ)の組付け芯パッド1にする。溝4Aをアリ溝にしているので、組付け芯パッド1は一体品として扱い易くなる。 次に、この組付け芯パッド1の下面側を発泡成形型7の上型キャビティ面81に当てて該組付け芯パッド1を上型8にセットする(図9)。組付け芯パッド1を発泡成形型7へセットした後、下型キャビティ面91上に、注入ノズルNL等を使用して表層パッド6用のポリウレタン原料gを所定量注入する。
【0022】
続いて、上型8を作動させ型閉じする(図11)。上型8と下型9との型閉じで、組付け芯パッド1がインサートセットされたクッションパッド用キャビティCができる。尚、本実施形態はポリウレタン原料gを注入後に型閉じしたが、型閉じした後、ポリウレタン原料gを注入することもできる。
【0023】
型閉じ後、表層パッド6の発泡成形へと進む。上面側6aに着座乗員の着座面部分61を有する、軟質ポリウレタン発泡成形体からなる表層パッド6を発泡成形する。図11の型閉じ状態を所定時間維持し、ポリウレタン原料gが発泡硬化し、着座面部分61がある上層と共に側周層62を発泡成形する。ポリウレタン原料gの一部は凹部4と凸部5間及び対向側面231,331間にある隙間にも入り込んで、表層パッド6が発泡成形されていく。表層パッド6の裏面6bが組付け芯パッド1、すなわち第一芯パッド2及び第二芯パッド3の上面2a,3a及び側面23,33に接合する。 所定時間が経過すると、裏面6b側が組付け芯パッド1の上面及び外周側面に当接して、着座面部分61を含む上層と共に、組付け芯パッド1の外周側面に積層される側周層62を有する表層パッド6を発泡成形した図12ごとくの所望のクッションパッドPが得られる。 符号96は吊溝用突条部、符号99,89は型合せ面を示す。
【0024】
尚、本発明は上記実施形態に示すものに限られず、多くの変形が本発明の技術的思想内で可能である。図1図6における溝4Aは、第一芯パッド2の下面2bから上面2aに貫通形成させているが、例えば、下面2bから上面2aに至る途中で止めた溝4Aとし、該溝4Aに対応させた凸状部5Aとしてもよい。
【0025】
このように構成したクッションパッドPは、組付け芯パッド1が第一芯パッド2と第二芯パッド3との嵌合による機械的結合で形成されているので、ビーズ発泡成形体で造られても、成形収縮による寸法誤差を小さくできる。したがって、上型8に設けた図示しない係止部に、クリップCPを係止させて行う第一芯パッド2、第二芯パッド3の上型8へのセットが順調に進む。 そして、組付け芯パッド1は、第一芯パッド2と第二芯パッド3の対向側面231,331の一方に凹部4を形成し、他方に凸部5を形成して、凹部4に凸部5を嵌合させた組付け芯パッド1とし、この上面及び外周側面を表層パッド6が覆って積層しているので、該嵌合によって第一芯パッド2と第二芯パッド3が互いの動きを規制して表層パッド6からの剥離が抑制される。また、第一芯パッド1と第二芯パッド2とが一体化してひと塊として動くので、脱型やハンドリングにおいて、第一芯パッド1や第二芯パッド2が表層パッド6から剥離するのを大幅に抑制できる。
【0026】
凹部4が第二芯パッド3の対向側面331(又は第一芯パッド2の対向側面231)から凹んだ溝4Aであり、凸部5が溝4Aに嵌る凸状部5Aであると、図5(ロ)で説明すれば、第一芯パッド2と第二芯パッド3とが、嵌合によって、紙面の上方向又は下方向に動こうとしても溝壁42と凸状側面52がぶつかるので、制止される。また、脱型等で、曲げ応力を加えられた第一芯パッド2が、図14のようにその右端側を持ち上げ傾けて表層パッド裏面6bから剥がれようとしても、第二芯パッド3の溝底41に当接又は近接する第一芯パッド2の凸状頂部分51の面が該溝底41に当たってつかえるので、第一芯パッド2の剥離が抑えられる。
【0027】
また、第一芯パッド2と第二芯パッド3は組付け芯パッド1にした後、該組付け芯パッド1の外周縁沿いに設けた図示しない強度補強用凹所にループ状ワイヤを嵌め込んでから、図9の上型8へセットするケースが多いが、分割された二つの芯パッドがループ状ワイヤで連結されても、従来は二つの芯パッドが独自の動きをするので、却って、セット用治具を用いなければならず、且つ上型8のセットに時間がかかっていた。 これに対し、本発明では、ループ状ワイヤが加わることによって、組付け芯パッド1がひと塊の一体品により近づくようになり、上型8へのセット作業が円滑に進む。
【0028】
さらに、前記凹部4がアリ溝の溝4Aになり、凸部5が溝4Aに嵌合する凸状部5Aであると、図14のように第一芯パッド2がその右端側を持ち上げ傾けて表層パッド6から剥がれようとしても、溝底41に当接又は近接する凸状頂部分51の面が溝底41の面に当たってつかえるだけでなく、溝口40から溝底41に向かう溝壁42にも凸状側面52が当たってつかえるので、第一芯パッド2の剥離が確実に防止される。 すなわち、アリ溝の溝4Aに係る溝壁42と凸状部5Aの凸状側面52は、図3のごとく車両上下方向に長さがある面になっているので、第一芯パッド2がその右端側を図14のように持ち上げ傾けようとしても、溝壁42と凸状側面52がぶつかって、傾くこと自体が阻止される。その結果、本クッションパッドPは、第一芯パッド2と第二芯パッド3とが一緒になって図4の紙面上方向に剥れないと、剥離できなくなる。 そして、第一芯パッド2と第二芯パッド3とが一緒になれば、軟質ポリウレタン発泡成形体とビーズ発泡成形体との接合はさほど強くないといっても、表層パッド6との接合面が倍になるので、よほどの外力でないと剥離できなくなる。よって、組付け芯パッド1にして寸法誤差を小さくしながら、軟質ポリウレタン発泡成形体の表層パッド6から、ビーズ発泡成形体の第一芯パッド2や第二芯パッド3が剥離することをより確実に抑制でき、品質維持,作業性向上,歩留り向上等に貢献する優れたクッションパッドPになる。
【0029】
また、凹部4が凹み穴4Bであり、凸部5が該凹み穴4Bに嵌る突起部5Bである場合も、第二芯パッド3の穴底46に当接又は近接する第一芯パッド2の突起先端面55が穴底46の面に当たってつかえるだけでなく、穴壁47に突起側面56が当たってつかえるので、第一芯パッド2、第二芯パッド3の表層パッド6からの剥がれ防止に効を奏する。
【0030】
加えて、凹部4と凸部5とが複数設けられ、それぞれの凹部4と凸部5とがかみ合うように嵌合して組付け芯パッド1に形成されると、凹部4と凸部5の嵌合箇所が複数になる分、第一芯パッド2および第二芯パッド3を互いに規制する箇所が増加するので、第一芯パッド2や第二芯パッド3が表層パッド裏面6bから剥がれ難くなり、且つ組付け芯パッド1が扱い易くなり、クッションパッドPの製造時の作業性向上、品質維持等に優れた効果を発揮する。
【0031】
さらにいえば、本クッションパッドPは、ポリウレタン原料gの一部が凹部4と凸部5間や対向側面231間にある隙間にも入り込んで、表層パッド6が発泡成形されるので、乗員の着座時等に、第一芯パッド2や第二芯パッド3が軋むことがあっても、該隙間を埋める表層パッド6の軟質ポリウレタン発泡成形体が、両芯パッド2,3が擦れ合う異音を発生させず、品質良好なクッションパッドPとなっている。
【0032】
尚、本発明は前記実施形態に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。組付け芯パッド1,第一芯パッド2,第二芯パッド3,凹部4,凸部5,表層パッド6,発泡成形型7等の形状,大きさ,個数,材質等は用途に合わせて適宜選択できる。例えば、実施形態では、芯パッドが分割構成された第一芯パッド2と第二芯パッド3を有して、凹部4に凸部5が嵌合した組付け芯パッド1としたが、第一芯パッド2と第二芯パッド3の他に第三芯パッドに分割構成され、第一芯パッド2と第二芯パッド3との対向側面231の一方に凹部4が他方に凸部5が形成されて凹部4に凸部5が嵌合し、第三芯パッドも同様に第二芯パッド3に嵌合した組付け芯パッド1でもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 組付け芯パッド 2 第一芯パッド(芯パッド) 231 対向側面 3 第二芯パッド(芯パッド) 4 凹部 4A 溝(アリ溝) 5 凸部 5A 凸状部 6 表層パッド 611 着座面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-09-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッションパッドにおいて着座面を形成する表層パッドの裏面側に積層される芯パッドであって、
ブロック状ビーズ発泡成形体が分割構成された、第一芯パッドと第二芯パッドを有し、且つ該第一芯パッドと該第二芯パッドとの対向側面の一方に凹部が他方に凸部が形成され、該凹部に該凸部が嵌合してなる芯パッド