特開 2024-1674 座屈修正機

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2024001674

(43)【公開日】2024-01-10

(54)【発明の名称】座屈修正機

(51)【国際特許分類】

   B23B 41/00 20060101AFI20231227BHJP

   B23B 31/40 20060101ALI20231227BHJP

   B24B 7/16 20060101ALI20231227BHJP

【ＦＩ】

B23B41/00 C

B23B31/40

B24B7/16 Z

【審査請求】未請求

【請求項の数】4

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2022100492

(22)【出願日】2022-06-22

(71)【出願人】

【識別番号】595040489

【氏名又は名称】株式会社康和工業

(71)【出願人】

【識別番号】000006208

【氏名又は名称】三菱重工業株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100086184

【弁理士】

【氏名又は名称】安原 正義

(74)【代理人】

【識別番号】100096389

【弁理士】

【氏名又は名称】金本 哲男

(74)【代理人】

【識別番号】100167634

【弁理士】

【氏名又は名称】扇田 尚紀

(72)【発明者】

【氏名】橋本 太一

(72)【発明者】

【氏名】平山 寛之

(72)【発明者】

【氏名】赤木 亮仁

【テーマコード（参考）】

3C032

3C036

3C043

【Ｆターム（参考）】

3C032MM09

3C036AA00

3C036KK03

3C043CC04

3C043DD02

3C043DD06

(57)【要約】      （修正有）

【課題】座屈した座面を効率よく正確にかつ迅速、安全に修正する座屈修正機を提供する。
【解決手段】穴部に挿入されたボルトと前記ボルトに篏合するナットにより締結される締結部において座金部と接する面である前記穴部周囲の座面を修正する座屈修正機であって、座屈修正機本体１１と、前記座屈修正機本体１１に回転自在に取り付けるマンドレル１２と、前記マンドレル１２の先端に設け、前記穴部に挿入する穴部挿入部１３と、前記穴部挿入部１３の周囲に設け、前記穴部挿入部１３が挿入された前記穴部の内面に対して伸縮することで、前記穴部挿入部１３を前記穴部に固定または解除するエクステンションクランプ１４と、板状からなり、一方の面に刃を設けた刃面を備え、前記マンドレル１２に取り付け、前記マンドレル１２を回転軸として回転することで、前記座面を前記刃面により加工する刃物１７とを有することを特徴とする座屈修正機。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

穴部に挿入されたボルトと前記ボルトに篏合するナットにより締結される締結部において座金部と接する面である前記穴部周囲の座面を修正する座屈修正機であって、
座屈修正機本体と、
前記座屈修正機本体に回転自在に取り付けるマンドレルと、
前記マンドレル先端に設け、前記穴部に挿入する穴部挿入部と、
前記穴部挿入部の周囲に設け、前記穴部挿入部が挿入された前記穴部の内面に対して伸縮することで、前記穴部挿入部を前記穴部に固定または解除するエクステンションクランプと、
板状からなり、一方の面に刃を設けた刃面を備え、前記マンドレルに取り付け、前記マンドレルを回転軸として回転することで、前記座面を前記刃面により加工する刃物と、
を有することを特徴とする座屈修正機。

【請求項2】

前記穴部が、タービンを覆っている車室に設けるボルト穴であることを特徴とする請求項１記載の座屈修正機。

【請求項3】

前記マンドレルは、圧縮ガスにより回転駆動されることを特徴とする請求項１記載の座屈修正機。

【請求項4】

穴部に挿入されたボルトと前記ボルトに篏合するナットにより締結される締結部において座金部と接する面である前記穴部周囲の座面を修正する座屈修正方法であって、
座屈修正機本体にマンドレルを回転自在に取り付け、
前記マンドレル先端に設ける穴部挿入部を、前記穴部に挿入し、
前記穴部挿入部の周囲に設けるエクステンションクランプで、前記穴部挿入部が挿入された前記穴部の内面に対して伸縮することで、前記穴部挿入部を前記穴部に固定または解除し、
板状からなり、一方の面に刃を設けた刃面を備え、前記マンドレルに取り付ける刃物を、前記マンドレルを回転軸として回転することで、前記座面を前記刃面により加工する、
ことを特徴とする座屈修正方法。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

穴部に挿入されたボルトと、ボルトに篏合するナットで固定する締結部において、座金部が接する面であるボルト穴部周囲の座面が、締め付け圧力で座屈（凹み）することがある。この発明は、座屈した座面を修正するための機械に関する。
更に詳細には、発電プラントや化学プラントに導入されているタービンを覆っている上下のカバー様からなる車室は、ボルトとナットを用いて締結されているが、そのボルトを嵌めるためのボルト穴である穴部周囲の座面が、圧力で座屈（凹み）したのを修正するための機械に関する。

【背景技術】

【0002】

特許文献１には、タービンケーシングが、シェル状の下側車室にシェル状の上側車室を複数のボルトで組み付けて形成される旨記載される。
タービンのメンテナンス時などに、タービンを覆っている上下のカバー様からなる車室を取り外す場合がある。メンテナンス後、車室を取り付けるためにボルトとナットで締め込むことを繰り返していると、ボルト穴部の座面が、締め付け圧力で座屈（凹み）してしまうことがある。
座屈（凹み）した座面を修正するため、従来は、例えば、グラインダーを使用し、手作業で修正を行っていた。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２０１０―１２１４９８号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

従来のように、座屈（凹み）したボルト穴部の座面を修正するために、グラインダーを使用して、手作業で修正を行う場合、多くの作業時間を要すること、修正後の座面の平面度や表面粗さ等の精度、及び、作業時の安全性などの課題を有した。

【0005】

本発明は、座屈した座面を効率よく正確にかつ迅速、安全に修正することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明の座屈修正機は、
穴部に挿入されたボルトと前記ボルトに篏合するナットにより締結される締結部において座金部と接する面である前記穴部周囲の座面を修正する座屈修正機であって、
座屈修正機本体と、
前記座屈修正機本体に回転自在に取り付けるマンドレルと、
前記マンドレル先端に設け、前記穴部に挿入する穴部挿入部と、
前記穴部挿入部の周囲に設け、前記穴部挿入部が挿入された前記穴部の内面に対して伸縮することで、前記穴部挿入部を前記穴部に固定または解除するエクステンションクランプと、
板状からなり、一方の面に刃を設けた刃面を備え、前記マンドレルに取り付け、前記マンドレルを回転軸として回転することで、前記座面を前記刃面により加工する刃物と、
を有することを特徴とする座屈修正機、
を備える。

【0007】

本発明の座屈修正機は、更に、
前記穴部が、タービンを覆っている車室に設けるボルト穴であることを特徴とする座屈修正機、
を備える。

【0008】

本発明の座屈修正機は、更に、
マンドレルは、圧縮ガスにより回転駆動される。

【0009】

本発明の座屈修正方法は、
穴部に挿入されたボルトと前記ボルトに篏合するナットにより締結される締結部において座金部と接する面である前記穴部周囲の座面を修正する座屈修正方法であって、
座屈修正機本体にマンドレルを回転自在に取り付け、
前記マンドレル先端に設ける穴部挿入部を、前記穴部に挿入し、
前記穴部挿入部の周囲に設けるエクステンションクランプで、前記穴部挿入部が挿入された前記穴部の内面に対して伸縮することで、前記穴部挿入部を前記穴部に固定または解除し、
板状からなり、一方の面に刃を設けた刃面を備え、前記マンドレルに取り付ける刃物を、前記マンドレルを回転軸として回転することで、前記座面を前記刃面により加工する、
ことを特徴とする座屈修正方法、
を備える。

【発明の効果】

【0010】

本発明によれば、座金部が接する面である穴部周囲の座面が座屈（凹み）したのを効率よく正確にかつ迅速、安全に修正する。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】この発明の実施例に係る座屈修正機の斜視図である。

【図2】この発明の実施例に係る座屈修正機の組み立て斜視図である。

【図3】この発明の実施例に係る座屈修正機の穴部への取り付け状態の正面断面図である。

【図4】この発明の実施例に係る座屈修正機の穴部への取り付け状態の側面断面図である。

【図5】この発明の実施例に係る座屈修正機の穴部挿入部側から見た一部拡大斜視図である。

【図6】この発明の実施例に係る座屈修正機の取り付け状態説明の斜視図である。

【図7】この発明の実施例に係る座屈修正機の取り付け状態の斜視図である。

【図8】この発明の実施例に係る座屈修正機の組み立て図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

図６、図７に図示するＡは車室の一部である。車室Ａは、例えば、発電プラントや化学プラントに導入されている蒸気タービン等のタービンロータを覆っている上下のカバー様からなる。
Ｂは穴部であってボルト穴である。穴部Ｂは、例えば、上下の車室Ａの辺縁部であるフランジ部に設けられている。上下の車室Ａは、ボルトとナットによって締結されている。
例えば、雌ねじが切られた下の車室Ａの穴部Ｂに、ボルトを螺合させてボルトを固定する。ボルトは、下の車室Ａに固定された、いわゆるスタッドボルトとなる。その後、ボルトの上部を、雌ねじが切られていない上の車室Ａの穴部Ｂと座金に挿通させ、その上からナットを螺合する。なお、下の車室Ａの穴部Ｂに雌ねじを切らず、ボルトを挿通させて下側から座金を介してナットを螺合してもよい。また、座金を用いず、一面を座金部としたナットを用いてもよい。以下、座金もしくはナットの一面に設けられた座金部をあわせて、座金部と言う。

【0013】

穴部Ｂは、図６、図７に図示するように、上下の車室Ａに、それぞれの軸線が一致するように複数列状に並べて設けられている。穴部Ｂに対応したボルトとナットを螺合させることにより、上下の車室を締め込んで固定する。
タービンのメンテナンス等のため車室を開放・復旧する際に、ボルトとナットの締結を繰り返していると、穴部Ｂの周囲の座金部が接する面である座面Ｃが、締め込みの圧力によって座屈（凹み）してしまうことがあり、それを修正する必要が生ずる。

【0014】

１１は、座屈修正機における座屈修正機本体である。
１２は、マンドレルである。マンドレル１２は、軸状からなり、座屈修正機本体１１に回転自在に取り付ける。

【0015】

１３は、穴部挿入部である。穴部挿入部１３は、マンドレル１２先端に設ける。穴部挿入部１３は、ボルトを嵌めるボルト穴である穴部Ｂに挿入する。
具体的には、穴部挿入部１３は、タービンを覆っている上下の車室に設けられた穴部Ｂに挿入し、固定する。

【0016】

１４は、エクステンションクランプである。エクステンションクランプ１４は、穴部挿入部１３の周囲に複数、例えば３か所にマンドレル１２の長手方向に平行に等間隔に設ける。
１５は、クランプシャフトである。クランプシャフト１５は、座屈修正機本体１１上部にマンドレル１２と同軸方向に設ける。クランプシャフト１５を、トルクレンチＤで、回動することで、エクステンションクランプ１４が、穴部Ｂの径方向に移動する。
１６は、バネである。バネ１６は、エクステンションクランプ１４を常に外側に押圧する。
エクステンションクランプ１４は、穴部挿入部１３が挿入された穴部Ｂ内面に向けて径方向に伸縮することで、穴部挿入部１３を穴部Ｂに、すなわち座屈修正機本体１１を穴部Ｂに固定あるいは解除する。

【0017】

３５は刃物取り付け部、３２はスピンドルである。スピンドル３２は、クランプシャフト１５の周囲に回転可能に取り付ける。刃物取り付け部３５は、スピンドル３２下部周囲にクランプシャフト１５に取り付ける。刃物取り付け部３５は、自動調芯機構になっており、機械芯出しの熟練度を要しない。

【0018】

１７は、刃物である。刃物１７は、それぞれ半円形板状からなり、マンドレル１２を中心に両側からそれぞれ挟んでスピンドル３２に取付け、合わせて円板状となる。刃物１７の一方面には、刃１７１を設ける。
刃物１７は、座屈修正機本体１１と穴部挿入部１３の間のマンドレル１２を中心にそれぞれ刃物取り付け部３５に取り付けることでスピンドル３２に取り付ける。刃物１７は、マンドレル１２を回転中心として回転する。
刃物１７は、図示するようにマンドレル１２の先端側に刃１７１を向けて、マンドレル１２のエクステンションクランプ１４より上部に取り付ける。刃物１７は、マンドレル１２の先端側の面に設ける刃１７１で、座面Ｃを切削あるいは研削して加工する。

【0019】

２１は、圧縮ガスで駆動するモーターであり、例えば、エアーモーターである。エアーモーター２１は、エアーを供給することでエアーモーター２１先端を回転させることができる。２２は、エアーバルブである。２３は、エアーホースである。エアーホース２３、エアーバルブ２２を介してエアーがエアーモーター２１に供給され、エアーモーター２１先端は、エアーにより回転する。なお、エアーモーター２１を駆動するガスは、空気に限定されない。

【0020】

３１は、ウォームギヤである。ウォームギヤ３１は、エアーモーター２１先端に取り付ける。スピンドル３２は、マンドレル１２が貫通してマンドレル１２に取り付けるととともに、ウォームギヤ３１と噛合わせる。
エアーモーター２１は、ウォームギヤ３１を回転すると、ウォームギヤ３１は、スピンドル３２を回転させ、更に、マンドレル１２を回転させる。そのため、マンドレル１２に取り付ける刃物１７を回転する。
従って、マンドレル１２は、エアーにより回転する。

【0021】

３３は、セットカラーである。セットカラー３３は、図１，図８等に図示するように座屈修正機本体１１上部に取り付ける。セットカラー３３は、エアーモーター２１による送り量を設定して、スピンドル３２の送り量を設定して管理する。そのため設定値に達すると自動で送りを止めることができ、熟練度を必要としない。
スピンドル３２は、内部に圧縮バネ３４を設ける。圧縮バネ３４により、刃物１７の送りを半自動的に行えることになり、加工の熟練度を要しない。

【0022】

次に、座面Ｃを修正する手順を説明する。
座屈修正機の穴部挿入部１３を、刃物１７の刃先が座面Ｃに接するまで対象穴部Ｂに挿入する。
図６に図示するように、クランプシャフト１５を、トルクレンチＤで回転させて締め付ける。
クランプシャフト１５を回転すると、エクステンションクランプ１４が、穴部Ｂの内壁側に移動し、穴部Ｂの内壁と接する。更に、締め付けることで、エクステンションクランプ１４は穴部Ｂの内壁に押圧して、穴部挿入部１３を穴部Ｂに固定する。

【0023】

穴部挿入部１３を穴部Ｂに固定することで、座屈修正機を穴部Ｂに固定してから、徐々にエアーバルブ２２を開いて、座屈修正機を運転する。

【0024】

エアーバルブ２２を開くと、エアーにより、ウォームギヤ３１を回転させる。ウォームギヤ３１の回転は、スピンドル３２に伝わり、スピンドル３２を回転させる。スピンドル３２が回転すると、スピンドル３２に取り付けた刃物１７が回転する。
刃物１７は回転することで、マンドレル１２先端側の面に設ける刃１７１が、穴部Ｂ付近の座面Ｃに接して、座面Ｃの表面を切削あるいは研削加工する。

【0025】

加工作業が終わると、バルブ２２を閉め、座屈修正機の作動を停止する。エクステンションクランプ１４を緩め、座屈修正機の穴部挿入部１３を穴部Ｂから引き抜き作業を終了する。

【符号の説明】

【0026】

１１ 座屈修正機本体
１２ マンドレル
１３ 穴部挿入部
１４ エクステンションクランプ
１７ 刃物
Ａ 車室
Ｂ 穴部
Ｃ 座面

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】