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特開2024-167416時間差デジタル変換回路、及び時間差デジタル変換回路の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167416
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】時間差デジタル変換回路、及び時間差デジタル変換回路の制御方法
(51)【国際特許分類】
   G04F 10/06 20060101AFI20241126BHJP
   H03K 5/26 20060101ALI20241126BHJP
   H03K 3/03 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
G04F10/06
H03K5/26 P
H03K5/26 C
H03K3/03
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024156556
(22)【出願日】2024-09-10
(62)【分割の表示】P 2020128236の分割
【原出願日】2020-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】山内 重徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 卓祐
(72)【発明者】
【氏名】根塚 智裕
(57)【要約】
【課題】PVTばらつきによる変動を抑制しながら測定対象パルスの幅時間を測定できるようにした時間差デジタル変換回路を提供する。
【解決手段】1個のTDC24は、RDLにより生成される遅延時間を用いて測定対象パルスPWの一対のエッジ間による時間差をデジタル変換する。TDC24は、測定対象パルスPWの一対のエッジ間による第1エッジ時間差と基準クロックSCLKの周期の第2エッジ時間差とを時分割で測定する。除算器28は、第1エッジ時間差を第2エッジ時間差により除算した除算結果を少なくとも小数点以下まで算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遅延時間を用いて測定対象パルスの一対のエッジ間による時間差をデジタル変換する回路であり、前記時間差として前記測定対象パルスの一対のエッジ間による第1エッジ時間差(PAW)と基準クロックの周期の第2エッジ時間差(PAB)とを時分割で測定する1個のTDC(24)(Time to Digital Converter)と、
前記第1エッジ時間差を前記第2エッジ時間差により除算した除算結果を算出する除算部(28)と、を備え、
前記TDCは、電流波形のサージ幅を前記測定対象パルスの一対のエッジ間の前記第1エッジ時間差として測定する時間差デジタル変換回路。
【請求項2】
前記TDCは、
前記測定対象パルスの一対のエッジ又は前記基準クロックの周期を入力したときに通常の動作状態において動作し、入力が途絶えると前記通常の動作状態よりも低消費電力となる低消費電力状態になる請求項1記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項3】
前記TDCは、
前記低消費電力状態において前記測定対象パルスのエッジを入力したときに前記通常の動作状態に復帰して前記測定対象パルスの一対のエッジ間の前記第1エッジ時間差と前記基準クロックの周期の前記第2エッジ時間差とを順次測定した後に、前記通常の動作状態から前記低消費電力状態に戻るように構成される請求項2記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項4】
前記測定対象パルスの一対のエッジに対応したパルスを前記TDCに出力する第1パルス出力部(55)と、
前記測定対象パルスの一対のエッジのうち後に生じるエッジに対応したラッチ信号を出力する第1ラッチ出力部(58a)と、
前記第1パルス出力部により出力されるパルスの幅を第1ディレイ時間だけ延長する第1ディレイ部(56)と、を具備するTDC制御回路(21)を備え、
前記TDC制御回路は、
前記第1ディレイ部により延長されたパルスを前記第1ラッチ出力部のラッチ信号によりラッチして前記第1ディレイ時間の経過後に前記第1パルス出力部によるパルスの出力を停止させる請求項1から3の何れか一項に記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項5】
前記基準クロックの周期に対応したパルスを前記TDCに出力する第2パルス出力部(75)と、
前記基準クロックの周期を規定するエッジのうち後に生じるエッジに対応したラッチ信号を出力する第2ラッチ出力部(78a)と、
前記第2パルス出力部により出力されるパルスの幅を第2ディレイ時間だけ延長する第2ディレイ部(76)と、を具備するTDC制御回路(21)を備え、
前記TDC制御回路は、
前記第2ディレイ部により延長されたパルスを前記第2ラッチ出力部のラッチ信号によりラッチして前記第2ディレイ時間の経過後に前記第2パルス出力部によるパルスの出力を停止させる請求項1から4の何れか一項に記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項6】
前記測定対象パルスの一対のエッジと前記基準クロックとを入力し、前記測定対象パルスの一対のエッジに対応したパルスを前記TDCに出力する第1パルス出力部(55)と、前記基準クロックの周期に対応したパルスを前記TDCに出力する第2パルス出力部(75)と、を具備するTDC制御回路(21)を備え、
前記TDC制御回路は、前記測定対象パルスの一対のエッジと前記基準クロックとを入力する前後関係に拘わらず、前記第1パルス出力部によるパルスと前記第2パルス出力部によるパルスを予め定められた順序で前記TDCに順次入力させることにより前記第1エッジ時間差及び前記第2エッジ時間差を前記TDCに前記時分割で測定させる請求項1から5の何れか一項に記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項7】
前記TDCは、アナログ信号波形をピークスライスした幅を前記測定対象パルスのエッジ間の前記第1エッジ時間差として測定する請求項1から6の何れか一項に記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項8】
前記第1エッジ時間差の測定回数に対する前記第2エッジ時間差の測定回数の比を示す測定頻度を1未満に低下させる測定頻度変更回路(29)と、
前記時分割で予め測定された前記第2エッジ時間差を保持する保持部(26)と、を備え、
前記測定頻度変更回路による前記測定頻度の低下に応じて、前記第1エッジ時間差を測定するものの前記時分割で前記第2エッジ時間差を測定しない場合には、
前記除算部は、前記測定された前記第1エッジ時間差を、前記保持部に予め保持された前記第2エッジ時間差により除算する請求項1から7の何れか一項に記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項9】
前記遅延時間は、遅延回路により生成される請求項1から8の何れか一項に記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項10】
前記遅延回路は、ゲートの信号伝搬遅延を用いて前記遅延時間を生成する請求項9記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項11】
前記電流波形は、モータ(7)を駆動して得られる電流波形である請求項1から10の何れか一項に記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項12】
前記除算部は、前記除算結果を少なくとも小数点以下まで算出する請求項1から11の何れか一項に記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項13】
前記除算部による前記除算結果に基づいて、前記測定対象パルスの一対のエッジ間による時間差を出力する請求項1から12の何れか一項に記載の時間差デジタル変換回路。
【請求項14】
遅延時間を用いて測定対象パルスの一対のエッジ間による時間差をデジタル変換する回路であり、前記時間差として前記測定対象パルスの一対のエッジ間による第1エッジ時間差(PAW)と基準クロックの周期の第2エッジ時間差(PAB)とを時分割で測定する1個のTDC(24)(Time to Digital Converter)と、
前記第1エッジ時間差を前記第2エッジ時間差により除算した除算結果を算出する除算部(28)と、
を備える時間差デジタル変換回路の制御方法であって、
前記TDCは、電流波形のサージ幅を前記測定対象パルスの一対のエッジ間の前記第1エッジ時間差として測定する時間差デジタル変換回路の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時間差デジタル変換回路、及び時間差デジタル変換回路の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、モータ制御回路がスイッチング素子駆動回路を通じてモータを駆動したときに生じるサージアナログ電流波形を高速検出する場合、コンパレータを用いてある所望の閾値と比較することでサージアナログ電流をパルスに変換できる。制御ロジックが、サージ検出時のパルスを、基準クロックを用いて分解能良くサンプリングするためには、サンプリング用の基準クロックを高速動作させることが必要となる。しかし、高耐圧プロセスを採用する場合には、高速動作する基準クロックを実装することが困難となる。
【0003】
制御ロジックが取得可能なパルスのサンプリング周期は、基準クロックの周期に依存する。このため、低速な基準クロックを用意しつつ、DLLを用いて位相を多相化することで高速動作する基準クロックを作成することが提案されている。
【0004】
その他、このような技術を実装する際に、時間差デジタル変換回路を用いることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の技術によれば、データをディレイラインを用いて遅延させ、基準クロックによりサンプリングすることで時間差デジタル変換している。この特許文献1記載の技術では、適時キャリブレーションを行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-114716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1記載のように、適時キャリブレーションを用いると設計が複雑化する。しかも、プロセスや電源電圧又は温度によるPVTばらつきに弱いことが判明している。
【0007】
本発明の目的は、PVTばらつきによる変動を抑制しながら、電流波形のサージ幅を測定対象パルスとしてそのエッジ間の幅時間を極力正確に測定できるようにした時間差デジタル変換回路、及び時間差デジタル変換回路の制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載によれば、1個のTDC(Time to Digital Converter)が、測定対象パルスの一対のエッジ間による第1エッジ時間差と基準クロックの周期の第2エッジ時間差とを時分割で測定し、除算部が、第1エッジ時間差を第2エッジ時間差により除算した除算結果を算出している。
【0009】
測定対象パルスの一対のエッジ間による第1エッジ時間差と基準クロックの周期の第2エッジ時間差は、電源電圧変化や温度変化などのPVTばらつきにより同様に変動しやすい傾向にある。請求項1記載の発明によれば、TDCは、電流波形のサージ幅を測定対象パルスの一対のエッジ間の第1エッジ時間差として測定する。基準クロックの周期変動の影響を補償でき、測定対象となる電流波形のサージ幅のパルスのエッジ間の幅時間を極力正確に測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一実施形態における時間差デジタル変換回路の電気的構成図
図2】モータ制御回路の電気的構成図
図3】ピークスライス幅の波形例と測定対象パルスの例
図4】測定頻度変更回路の電気的構成図
図5】TDCの電気的構成図
図6】RDLの電気的構成図
図7】状態変化図
図8】ラッチアンドエンコーダの電気的構成図
図9】パルスの幅時間取得回路の電気的構成図のその1
図10】パルスの幅時間取得回路の電気的構成図のその2
図11】基準クロックの周期取得回路の電気的構成図のその1
図12】基準クロックの周期取得回路の電気的構成図のその2
図13】除算器の電気的構成図
図14】除算回路の電気的構成図
図15】除算器の真理値表
図16】タイミングチャートのその1
図17】タイミングチャートのその2
図18】変形例の説明図のその1
図19】変形例の説明図のその2
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示す時間差デジタル変換回路1は、測定対象パルスPW及び基準クロックSCLKを主に入力して動作するもので、特に基準クロックSCLKの周期より短い測定対象パルスPWの幅をデジタル変換測定することを可能とする回路である。以下では、測定対象パルスPWを必要に応じてパルスPWと略す。時間差デジタル変換回路1は、例えば図2に示したモータ制御回路2の制御ロジック3の入力部分に適用すると良い。図2に示したモータ制御回路2は、制御ロジック3、アナログ駆動回路4、三相インバータ5、及びアナログ検出回路6を図示のように構成し、モータ7をフィードバック制御する。
【0012】
モータ制御回路2が、制御ロジック3、アナログ駆動回路4、及び三相インバータ5によりモータ7を駆動すると、図3に示すようにモータ駆動時には三相インバータ5に大電流が流れる。アナログ検出回路6は、三相インバータ5に流れるサージ電流をアナログ検出する。アナログ検出回路6は、アンプ8を用いて電流増幅した後、DAC9を通じて入力される所定の閾値Vtと増幅信号とを比較するコンパレータ10によりデジタル変換する。すなわちコンパレータ10は、モータ7を駆動して得られるサージ電流波形(アナログ信号波形相当)のサージ幅を所定の閾値Vtでピークスライスしてデジタルデータとして出力できる。
【0013】
制御ロジック3は、このコンパレータ10の出力を例えば入力段のDFF11にD入力することもできるが、コンパレータ10の出力デジタルデータの時間幅が、基準クロックSCLKの周期よりも短い又は同等の長さである場合には、制御ロジック3は、サージ検出時の高速パルスの幅を正確に検出できない。
【0014】
そこで、以下に説明する時間差デジタル変換回路1を、制御ロジック3の入力段に構成し、ピークスライス幅をパルスPWとして検出することが望ましい。ここで測定対象パルスPWと基準クロックSCLKの周期との長さの関係性は問わないが、本形態では、パルスPWが基準クロックSCLKの周期と概ね同等の長さに設定されている形態を説明する。パルスPWの幅時間が基準クロックSCLKの周期より十分に短い時間に設定されている場合には、効果がより顕著になる。
【0015】
図1に示す時間差デジタル変換回路1は、TDC制御回路21、ORゲート22、23、TDC24(Time to Digital Converter)、保持部としてのラッチ25、26、27、除算器28、及び測定頻度変更回路29を備える。TDC制御回路21には、測定対象パルスPWと、パルスPWの幅の測定に用いられる基準クロックSCLKと、外部から状態をクリア指示するクリア信号CLRが入力される。
【0016】
基準クロックSCLKの周波数は、例えば10MHz程度の低い周波数に設定されている。これにより、消費電力や寄生容量などの影響を抑えることができ、製造の容易性を向上できる。
【0017】
時間差計測部の一例であるTDC24は、図5に示すように遅延回路としてのRDL31(Ring Delay Line)、カウンタ32、ラッチアンドエンコーダ33、ラッチ34、35、及び減算器36を備えている。RDL31は、図6に示すように起動用の反転遅延素子であるNANDゲート37と、例えば30個の反転遅延素子であるNOTゲート38とをリング状に接続して構成されている。NANDゲート37の一方には信号PAが入力されている。以降、NANDゲート37、NOTゲート38を必要に応じて反転遅延素子として説明する。
【0018】
ここで、リング状に接続した反転遅延素子37、38の共通接続ノードを図6に示すようにそれぞれノードN1…N16と定義する。隣接するノードN16-N1間にはNANDゲート37が1つ接続されており、その他の隣接するノードN1-N2、N2-N3、…、N15-N16間にはNOTゲート38が2つずつ接続されている。NANDゲート37は、他の反転遅延素子であるNOTゲート38よりも遅延時間が若干長くなるため、隣接するノードN16-N1間にNANDゲート37を1つだけ構成している。
【0019】
図5には、2つのNOTゲート38をまとめたものを、それぞれ1つの正転遅延素子DUとして示している。またRDL31は、図6に示したように、正転遅延素子DUによる遅延信号をそれぞれノードN1…N16から取得して波形成形してデジタルレベルR1…R16として出力するゲート39を備える。
【0020】
信号PA=「1」がNANDゲート37に継続入力されると、図7に状態変化を示すように、信号「1」が正転遅延素子DUを渡って順に伝達される。そして、信号「1」がリング状に接続された正転遅延素子DUを巡回すると、1周回ってNANDゲート37の入力にも信号「1」が到達する。すると、NANDゲート37は「0」を出力し、この後、正転遅延素子DUは信号「0」を順に伝達する。
【0021】
さらに、信号「0」がリング状に接続された正転遅延素子DUを巡回すると、1周回ってNANDゲート37の入力にも信号「0」が到達する。これにより初期状態に戻る。この動作は、信号PA=「1」である限り繰り返され、RDL31は波形成形用のゲート39を通じてデジタルレベルR1…R16を出力することで32個の状態を変化させる。32個の状態が変化すると1周回することになる。
【0022】
ラッチアンドエンコーダ33は、図8に一部を示すように、16個のDFF40、及びエンコーダ41を組み合わせて構成される。DFF40は、正転遅延素子DUの出力に係る各デジタルレベルR1…R16をD入力し、全て同一のラッチ信号PBによりラッチされる。
【0023】
エンコーダ41は、16個のDFF40のQ出力を入力してエンコードするもので、デジタルレベルR1…R16による32個の状態を5ビットにエンコードする。これにより、ラッチアンドエンコーダ33は、RDL31の1周回時間を32分割した位相情報を取得できる。
【0024】
なおRDL31によるエッジの1周回時間は、基準クロックSCLKの周期よりも十分短くなるように設定されている。本実施形態では、TDC24の時間分解能として200psを想定している。
【0025】
図1に示すカウンタ32は、RDL31における周回回数をカウントするもので例えば17ビットカウンタにより構成される。詳しくは特開平6-283984号公報に記載された通りであるが、概略は以下の通りである。ラッチ34は、カウンタ32のカウント値をラッチする。ラッチ35は、ラッチ34の17ビットデータとラッチアンドエンコーダ33の5ビットデータとを合わせた22ビットのデータDTpをラッチする。ラッチアンドエンコーダ33、ラッチ34及び35のラッチ信号は、何れもラッチ信号PBから成る。減算器36は、データDTpよりラッチ35のラッチデータを減算して22ビットのデータDTを出力する。この減算器36は、デジタルノイズを取り除くため、前回の計測値と今回の計測値とを比較するために設けられており、必要に応じて設ければ良い。
【0026】
なお、RDL31は、何らかのエッジを信号として入力しない限り、NANDゲート37、NOTゲート38がそれぞれの出力を変化させないため、各反転遅延素子37、38も電力を消費することなく安定した論理出力状態を保持する。このとき、RDL31は、通常の動作状態よりも低消費電力となる低消費電力状態を保持でき、TDC24のその他の回路、すなわちカウンタ32、ラッチアンドエンコーダ33、ラッチ34、35も同様に低消費電力状態を保持できる。
【0027】
TDC24は、何らかの信号エッジ、後述する例えば測定対象パルスPWに対応したパルスPAW、又は、基準クロックSCLKの周期に対応するパルスPABを入力したときに低消費電力状態から通常の動作状態に復帰して動作する。そして、TDC24は、入力が途絶えると、その内部回路の出力デジタルレベルが安定するため消費電力を抑制でき、通常の動作状態から低消費電力状態に戻る。
【0028】
TDC制御回路21は、図9及び図10に例示したパルスPWの幅時間取得回路50と、図11及び図12に例示した基準クロックSCLKの周期取得回路70と、を備える。パルスPWの幅時間取得回路50は、パルスPWの幅時間を主に取得する主回路51と、主回路51の出力を受けて従属的に動作する従属回路52と、を備える。
【0029】
主回路51は、図9に示したように、4段縦続接続されたDFF53a…53dと、ANDゲート54、55と、第1ディレイ回路56と、ORゲート57と、を備える。初段のDFF53aのD入力はプルアップされており、クロック端子にはパルスPWがポジティブ入力されている。2段目のDFF53bのクロック端子には、パルスPWがネガティブ入力されている。2段目のDFF53bのD入力は、各ANDゲート54、55にポジティブ入力されており、DFF53bのQ出力は各ANDゲート54、55にネガティブ入力されている。これによりANDゲート54は、パルスPWを立上り入力したタイミングから立下り入力したタイミングまでの幅のパルスPAW1を出力する。
【0030】
2段目のDFF53bとANDゲート55のネガティブ入力との間には第1ディレイ回路56が介在して構成される。ANDゲート55は、測定対象パルスPWの一対のエッジに対応したパルスPAWをTDC24に信号PAとして出力する第1パルス出力部に相当する構成である。ANDゲート55は、TDC制御回路21にパルスPWを立上り入力したタイミングから立下り入力したタイミング+第1ディレイ回路56の第1ディレイ時間Delay1の幅のパルスPAWを出力する。第1ディレイ回路56は、ANDゲート55により出力されるパルスPAWの幅を第1ディレイ時間Delay1だけ延長する第1ディレイ部に相当する構成である。第1ディレイ回路56は、パルスPAWの出力停止タイミングを、ラッチ信号PB1WによりTDC24の出力をラッチ完了した後にするために設けられたタイミング調整回路である。
【0031】
3段目のDFF53cのクロック端子には、基準クロックSCLKがネガティブ入力されており、4段目のDFF53dのクロック端子には、基準クロックSCLKがポジティブ入力されている。4段目のDFF53dのQ出力はORゲート57を通じて1段目のDFF53aのクリア端子に入力されている。ORゲート57にはクリア信号CLRが入力されると共に、2段目から4段目のDFF53b…53dのクリア端子にもクリア信号CLRが入力されている。これにより主回路51が、パルスPWの幅に対応したパルスPAW1を検出した後、1段目のDFF53aのQ出力をクリアできる。
【0032】
従属回路52は、図10に示したように、複数段縦続接続されたDFF58a…58h、ANDゲート59、60、ORゲート61及び62を備える。初段のDFF58aのD入力はプルアップされており、クロック端子にはパルスPAW1がネガティブ入力されている。初段のDFF58aは、測定対象パルスPWの一対のエッジのうち後に生じるエッジに対応したラッチ信号PB1Wを出力する第1ラッチ出力部に相当する構成であり、初段のDFF58aのQ出力は、ラッチ信号PB1Wとして出力される。
【0033】
2段目から7段目のDFF58b…58gのクロック端子には、基準クロックSCLKが入力されている。2、4、6段目のDFF58b、58d、58fは、基準クロックSCLKの立上りエッジをトリガとして受付けてD入力をQ出力する。3、5、7段目のDFF58c、58e、58gは、基準クロックSCLKの立下りエッジをトリガとして受付けてD入力をQ出力する。このため、基準クロックSCLKが各DFF58b…58gのクロック端子に入力されると、2、4、6段目のDFF58b、58d、58fに立上りエッジ、3、5、7段目のDFF58c、58e、58gに立下りエッジを入力する度に、1段目のDFF58aにクロック入力されたパルスPAW1を順にシフトできる。
【0034】
5段目のDFF58eのD入力は、ANDゲート59にポジティブ入力されており、DFF58eのQ出力はANDゲート59にネガティブ入力されている。これにより、ANDゲート59は、パルスPAW1を1基準クロックSCLK分だけ遅延させたパルスPB2Wとして取得できる。同様に、7段目のDFF58gのD入力は、ANDゲート60にポジティブ入力されており、DFF58gのQ出力はANDゲート60にネガティブ入力されている。これにより、ANDゲート60は、パルスPAW1をさらに1基準クロックSCLK分だけ遅延させたパルスPB3Wとして取得できる。
【0035】
また8段目のDFF58hのクロック端子にも、基準クロックSCLKがネガティブ入力されている。8段目のDFF58hのD入力は、ORゲート61にポジティブ入力されており、7段目のDFF58gのQ出力はORゲート61にポジティブ入力されている。このため、ORゲート61は、パルスPAW1が8段目のDFF58hにシフトしたことを信号PBSTWとして検出できる。
【0036】
3段目のDFF58cのQ出力はORゲート62を通じて1段目のDFF58aのクリア端子に入力されている。ORゲート62にはクリア信号CLRが入力されると共に、2段目から8段目のDFF58b…58hのクリア端子にもクリア信号CLRが入力されている。これにより従属回路52が、パルスPAW1を検出した後、1段目のDFF58aのQ出力をクリアできる。
【0037】
ORゲート61が、信号PBSTWを検出した後、基準クロックSCLKの周期取得回路70が動作開始する。基準クロックSCLKの周期取得回路70は、基準クロックSCLKの周期を主に取得する主回路71と、主回路71の出力を受けて従属的に動作する従属回路72と、を備える。
【0038】
主回路71は、図11に示したように、4段縦続接続されたDFF73a…73dと、ANDゲート74、75と、第2ディレイ回路76と、ORゲート77とを備える。初段のDFF73aのD入力は、図10に示すORゲート61が出力する信号PBSTWを入力しており、クロック端子には基準クロックSCLKがポジティブ入力されている。2段目のDFF73bのクロック端子には、基準クロックSCLKがポジティブ入力されている。2段目のDFF73bのD入力は、各ANDゲート74、75にポジティブ入力されており、DFF73bのQ出力は各ANDゲート74、75にネガティブ入力されている。これにより、ANDゲート74は、基準クロックSCLKを立上り入力したタイミングから立下り入力したタイミングまでの幅のパルスPAB1を出力する。
【0039】
2段目のDFF73bのQ出力とANDゲート75のネガティブ入力との間には第2ディレイ回路76が介在して構成されている。ANDゲート75は、基準クロックSCLKの周期に対応したパルスPABをTDC24に出力する第2パルス出力部に相当する構成であり、基準クロックSCLKを立上り入力したタイミングから立下り入力したタイミング+第2ディレイ回路76の第2ディレイ時間Delay2の幅のパルスPABを出力する。
【0040】
第2ディレイ回路76は、ANDゲート75により出力される基準クロックSCLKの周期の幅を第2ディレイ時間Delay2だけ延長する第2ディレイ部に相当する構成である。第2ディレイ回路76は、パルスPABの出力停止タイミングを、ラッチ信号PB1BによりTDC24の出力をラッチ完了した後にするために設けられたタイミング調整回路である。
【0041】
3段目のDFF73cのクロック端子には、基準クロックSCLKがネガティブ入力されており、4段目のDFF73dのクロック端子には、基準クロックSCLKがポジティブ入力されている。4段目のDFF73dのQ出力はORゲート77を通じて1段目のDFF73aのクリア端子に入力されている。これにより、主回路71が、基準クロックSCLKの幅に対応したパルスPAB1を検出した後、1段目のDFF73aのQ出力をクリアできる。
【0042】
従属回路72は、図12に示したように、複数段縦続接続されたDFF78a…78g、ANDゲート79、80、及びORゲート81を備える。初段のDFF78aのD入力はプルアップされており、クロック端子にはパルスPAB1がネガティブ入力される。初段のDFF78aは、基準クロックSCLKの周期を規定するエッジのうち後に生じるエッジに対応したラッチ信号PB1Bを出力する第2ラッチ出力部に相当する構成であり、初段のDFF78aのQ出力は、ラッチ信号PB1Bとして出力される。
【0043】
2段目から7段目のDFF78b…78gのクロック端子には、基準クロックSCLKが入力されている。2、4、6段目のDFF78b、78d、78fは、基準クロックSCLKの立上りエッジをトリガとして受付けてD入力をQ出力する。3、5、7段目のDFF78c、78e、78gは、基準クロックSCLKの立下りエッジをトリガとして受付けてD入力をQ出力する。このため、基準クロックSCLKが各DFF78b…78gのクロック端子に入力されると、2、4、6段目のDFF78b、78d、78fに立上りエッジ、3、5、7段目のDFF78c、78e、78gに立下りエッジを入力する度に、1段目のDFF78aに入力されたパルスPAB1を順にシフトできる。
【0044】
5段目のDFF78eのD入力は、ANDゲート79にポジティブ入力されており、DFF78eのQ出力はANDゲート79にネガティブ入力されている。これによりANDゲート79は、パルスPAB1を1基準クロックSCLK分だけ遅延させたパルスPB2Bとして取得できる。同様に、7段目のDFF78gのD入力は、ANDゲート80にポジティブ入力されており、DFF78gのQ出力はANDゲート80にネガティブ入力されている。これによりANDゲート80は、パルスPB2Bをさらに1基準クロックSCLK分だけ遅延させたパルスPB3Wを出力できる。
【0045】
図1に参照図面を戻して全体構成を説明する。前述説明したように、TDC制御回路21は、パルスPW及び基準クロックSCLKを入力すると、前述の論理により信号PAW、PAB、PB1W…PB3W、PB1B…PB3Bを順次出力する。ORゲート22は、パルスPAW、PABの論理和をTDC24に入力させる信号PAとする。ORゲート23は、信号PB1W…PB3W、PB1B…PB3Bとクリア信号CLRとを入力しTDC24にラッチ信号PBとして出力する。
【0046】
なお、パルスPABの出力端子とORゲート22との間、及び、パルスPB1B…PB3Bの出力端子とORゲート23との間には、測定頻度変更回路29が構成されている。図4に例示した測定頻度変更回路29は、TFF29a及びANDゲート29b…29eを図示形態に組み合わせて構成されるもので、パルスPAWの幅時間の測定回数に対する基準クロックSCLKの周期の測定回数の比を示す測定頻度を1未満に低下させることが可能な回路である。
【0047】
TFF29aは、パルスPAWを入力する度に出力レベルを「0」「1」に繰り返し変化させるトグルフリップフロップである。各ANDゲート29b…29eは、TFF29aの出力レベル「0」「1」に基づいて、各パルスPAB、PB1B…PB3Bを、TDC24の各信号PA、PBとして入力させるか否かを切替える有効無効切替回路として設けられる。
【0048】
パルスPAWがTFF29aに一回入力される度に、TFF29aの出力レベルが「0」「1」に繰り返し変化する。このため、パルスPAWが発生する度に、ANDゲート29b…29eは、各パルスPAB、PB1B…PB3Bを通過したり遮断したりする。パルスPAB、PB1B…PB3Bは、基準クロックSCLKの周期取得回路70の出力である。このため、パルスPAWの発生2回のうち1回は、ANDゲート29b…29eは、パルスPAB、PB1B…PB3Bを遮断することになり、TDC24による基準クロックSCLKの周期測定を停止できる。これにより、パルスPAWの幅時間を2回測定する度に、基準クロックSCLKの周期を1回測定できる。
【0049】
この場合、TDC24による基準クロックSCLKの周期測定回数を減らすことができるため、TDC24の動作時間を短縮でき、消費電力を低下させることができる。なお、測定頻度変更回路29は必要に応じて設ければ良い。測定頻度変更回路29を設けることなく、パルスPAB、PB1B…PB3Bがそのまま各ORゲート22、23にスルーされれば、TDC24によりパルスPAWの幅時間を1回測定する度に、基準クロックSCLKの周期を1回測定できる。
【0050】
他方、図1に示すラッチ25は、パルスPB2Wのエッジをラッチ信号としてTDC24の出力をラッチする。このときラッチ25は、パルスPAWの幅時間を計測したTDC24による計測結果を保持する。
【0051】
ラッチ26は、測定頻度変更回路29のANDゲート29dを通過した後のパルスPB2Bのエッジをラッチ信号としてTDC24の出力をラッチする。ラッチ26は、基準クロックSCLKの周期を計測したTDC24による計測結果を保持するが、パルスPB2BがANDゲート29dを通過しない場合には、ラッチ26にラッチ信号が入力されない。この場合、ラッチ26には、前回以前に予め測定されたTDC24の出力、すなわち前回以前に予め測定された基準クロックSCLKの周期のデータが保持される。
【0052】
除算部としての除算器28は、被除数A(A3:A0)を除数B(B3:B0)で除した商Q(Q3:Q0)と剰余R(R3:R0)を算出するもので、図13に示すように除算回路82をマトリクス状に組み合わせて構成されている。
【0053】
各除算回路82は、図14に示すように、NANDゲート83…93、NORゲート94、NOTゲート95、96を図示形態に組み合わせた構成であり、真理値表は図15に示すようになる。除算回路82の構成は一般的なものであり動作の詳細説明は省略する。除算器28は、被除数Aを除数Bで除算し少なくとも小数点以下まで算出可能な回路であれば、どのような回路形態であっても良い。
【0054】
前述構成の作用、動作について、図16及び図17に示すタイミングチャートを参照して説明する。TDC制御回路21には基準クロックSCLKが常時パルス入力される。しかし、TDC制御回路21が、測定対象パルスPWを入力していない場合、図9に示すDFF58aにはクロック入力されない。このため、TDC制御回路21は、各信号PAW、PAB、PB1W…PB3W、PB1B…PB3Bを出力しない。このとき、TDC21に信号PA、PBが入力されないため、RDL31にも信号入力されることはない。
【0055】
TDC21は、スタートパルスとなる信号PAやラッチ信号PBを入力しないと、各反転遅延素子37、38の出力状態を変化させることはなく、通常の動作状態よりも低消費電力となる低消費電力状態を保持できる。このため、時間差デジタル変換回路1が、測定対象パルスPWを入力しないときには低消費電力状態を維持できる。
【0056】
その後、TDC制御回路21が、測定対象パルスPWの立上りエッジを入力すると、通常の動作状態に復帰する。パルスPWを入力すると、図9に示すパルスPWの幅時間取得回路50が、パルスPWの長さと同一長のパルスPAW1を出力すると共にパルスPAWを出力する。ORゲート22が、パルスPAWを通過してTDC24にスタートパルスとなる信号PAとして入力させると、TDC21は、パルスPAWの立上りエッジの発生タイミングから時間幅をデジタル変換開始する。TDC21は、17ビットのカウンタ32により整数桁に対応したデジタル値を取得すると共に、ラッチアンドエンコーダ33により5ビットの小数桁に対応したデジタル値を取得し、これらの値を合計22ビットにデジタル変換してラッチ35及び減算器36に出力する。
【0057】
TDC制御回路21は、図16のタイミングt1においてパルスPAWの立上りエッジを出力すると同時にパルスPAW1の立上りエッジを出力する。パルスPAW1の時間経過後、図10に示す従属回路52のDFF58aがパルスPAW1の立下りエッジをネガティブ入力として受付けると、タイミングt2においてラッチ信号PB1Wの立上りエッジを出力する。
【0058】
図9に示すパルスPWの幅時間取得回路50には第1ディレイ回路56が設けられている。TDC制御回路21は、第1ディレイ回路56により延長されたパルスPAWをDFF58aのQ出力によるラッチ信号PB1Wによりラッチして第1ディレイ時間Delay1の経過後にANDゲート55によるパルスPAWの出力を停止させている。
【0059】
このためTDC24は、パルスPAWがタイミングt3にて立下がる前に、ラッチ信号PB1Wをラッチ信号PBとしてタイミングt2にて確実に入力できる。TDC24は、パルスPAW1の幅時間を確実にデジタル値として計測できる。TDC24は、ラッチ信号PB1WによりパルスPAWをラッチすると若干の時間経過を経てデータ変化が収まる。
【0060】
従属回路52は、ラッチ信号PB1Wを出力した後、パルスPB2W、PB3Wを順次出力する。パルスPB2Wは、図1に示すラッチ25に入力される。このため、ラッチ25は、パルスPB2Wを入力したタイミングt4にてTDC24の出力であるパルスPAW1の幅時間を被除数DBとして保持できる。このときパルスPWの幅時間取得回路50は、測定対象パルスPWのエッジ間の長さを第1エッジ時間差として取得できる。
【0061】
従属回路52は、パルスPB3Wを出力すると共に信号PBSTWも出力する。すると、図11及び図12に示す基準クロックSCLKの周期取得回路(周期測定回路)70が動作開始する。その後、TDC制御回路21は、基準クロックSCLKの立上りエッジを入力すると、図11に示す基準クロックSCLKの周期取得回路70が、基準クロックSCLKの周期と同一長のパルスPAB1のエッジを出力すると共にパルスPABのエッジを出力する。
【0062】
前述したように、測定頻度変更回路29は、TDC制御回路21によるパルスPAWの発生一回毎にパルスPAB、PB1B…PB3Bを通過したり遮断したりするが、測定頻度変更回路29がパルスPAB、PB1B…PB3Bを通過する場合には、ORゲート22がパルスPABを通過してTDC24にスタートパルスとなる信号PAとして入力させる。すると、TDC24は、パルスPABの立上りエッジからの時間幅をデジタル変換開始する。TDC24は、17ビットのカウンタ32により整数桁に対応したデジタル変換すると共に、ラッチアンドエンコーダ33により5ビットの小数桁に対応したデジタル変換し、これらの値を合計22ビットにデジタル変換してラッチ35及び減算器36に出力する。
【0063】
TDC制御回路21は、図16のタイミングt5においてパルスPABの立上りエッジを出力すると同時にパルスPAB1の立上りエッジを出力する。パルスPAB1の時間経過後、図12に示す従属回路72のDFF78aがパルスPAB1の立下りエッジをネガティブ入力として受付けると、DFF78aはタイミングt6において信号PB1Bの立上りエッジをラッチ信号として出力する。
【0064】
図11に示す基準クロックSCLKの周期取得回路70には第2ディレイ回路76が設けられている。TDC制御回路21は、第2ディレイ回路76により延長されたパルスPABを、DFF78aによるラッチ信号PB1Bによりラッチして第2ディレイ時間Delay2の経過後にANDゲート75によるパルスPABの出力を停止させている。
【0065】
このためTDC24は、パルスPABがタイミングt7にて立下がる前に、ラッチ信号PB1Bをラッチ信号PBとしてタイミングt6にて確実に入力できる。これによりTDC24は、パルスPAB1の幅時間を確実にデジタル変換できる。TDC24は、ラッチ信号PB1BによりパルスPABをラッチすると若干の時間経過を経てデータの変化が収まる。
【0066】
従属回路72は、ラッチ信号PB1Bを出力した後、パルスPB2B、PB3Bを順次出力する。パルスPB2Bは、図1に示すラッチ26に入力される。このためラッチ26は、パルスPB2Bを入力したタイミングt8にてTDC24の出力であるパルスPAB1の幅時間を除数DAとして保持できる。このとき基準クロックSCLKの周期取得回路70は、基準クロックSCLKの周期を第2エッジ時間差として測定できる。
【0067】
除算器28は、被除数DBを除数DAにより少なくとも小数点以下まで除算する。従属回路72がパルスPB3Bを出力すると、パルスPB3Bはラッチ27に入力される。ラッチ27は除算器28の除算結果を保持する。これにより、測定時点における基準クロックSCLKの周期に対するパルスPWの幅時間の割合を算出できる。
【0068】
測定対象パルスPWの幅時間と基準クロックSCLKの周期は、電源電圧変化や温度変化などのPVTばらつきにより同様な方向に変動しやすい傾向にある。このため、除算器28により基準クロックSCLKの周期に対するパルスPWの幅時間の割合を算出することで、基準クロックSCLKの周期変動の影響を補償した測定対象パルスPWの幅時間を算出できる。
【0069】
特にRDL31が、ゲート遅延方式を用いているため、TDC24が長時間運用されることで、PVTばらつきにより時間差デジタル変換結果が変化しやすい。本形態によれば、パルスPWの幅時間取得回路50がパルスPWの幅時間を取得しTDC24により測定した直後に、基準クロックSCLKの周期取得回路70が基準クロックSCLKの周期を時分割で取得してTDC24により測定している。このため、PVTばらつきの影響を考慮したとしても、その影響はわずかとなり、測定対象パルスPWの幅時間を極力正確に算出できる。
【0070】
また基準クロックSCLKの周期に対するパルスPWの幅時間の割合を算出することで基準クロックSCLKのPVTばらつきによる変動の影響も補償できる。またパルスPWの幅時間を基準クロックSCLKより先に測定しているため、基準クロックSCLKの周期の変化を常時測定し続ける必要がなくなる。TDC制御回路21及びTDC24は、測定対象パルスPWの幅時間と基準クロックSCLKの周期の測定を終了すると低消費電力状態に戻る。
【0071】
TDC24は、低消費電力状態において測定対象パルスPWのエッジを入力したときに通常の動作状態に復帰して測定対象パルスPWの一対のエッジの第1エッジ時間差と基準クロックSCLKの周期の第2エッジ時間差とを順次測定した後に、通常の動作状態から低消費電力状態に戻っている。これにより、測定対象パルスPWの幅時間と基準クロックSCLKの周期を最小限の消費電力で測定できる。
【0072】
また測定頻度変更回路29が、パルスPAB、PB1B…PB3Bを遮断した場合には、ラッチ25がタイミングt4においてパルスPWの幅時間を被除数として保持したとしても、タイミングt5~t9にはパルスPAB、PB1B…PB2Bが、TDC24、ラッチ26に入力されないため、ラッチ26には前回測定された基準クロックSCLKの周期の時間データが保持される。
【0073】
除算器28は、前回測定され予めラッチ26に保持された基準クロックSCLKの周期によりパルスPWの幅時間を除算できる。この場合、基準クロックSCLKの測定回数を少なくでき、TDC24の消費電力を低減できる。
【0074】
本形態では、測定頻度変更回路29はTFF29aを用いて構成されているため、パルスPWの測定回数に対する基準クロックSCLKの周期の測定回数の比を示す測定頻度を2分の1に設定しているが、測定頻度は2分の1に限定されるものではない。
【0075】
例えば、測定頻度を10分の1、すなわちTDC24によりパルスPAWの幅時間を10回測定する度に、基準クロックSCLKの周期を1回測定するようにしても良い。又は、基準クロックSCLKの周期の計時変化が顕著に現れる程度に予め設定された所定時間を経過する度に、TDC24により基準クロックSCLKの周期を測定しても良い。
【0076】
本実施形態によれば、基準クロックSCLKの周期の測定頻度の低下に応じて、パルスPAWを測定するものの時分割で基準クロックSCLKの周期を測定しない場合には、除算器28は、今回測定されたパルスPAWの幅時間のデータを、ラッチ26に予め保持された基準クロックSCLKの周期のデータにより除算するようにしている。このため、TDC24による基準クロックSCLKの測定回数を少なくでき、TDC24の消費電力を低減できる。
【0077】
またTDC制御回路21は、測定対象パルスPWの一対のエッジと基準クロックSCLKとを入力する前後関係に拘わらず、パルスPAWとパルスPABを予め定められた順序でTDC24に順次入力させることにより第1エッジ時間差及び第2エッジ時間差をTDC24に時分割で測定させている。
【0078】
TDC制御回路21には基準クロックSCLKが常時入力されているが、パルスPWの一対のエッジと基準クロックSCLKのエッジとを入力した前後関係でデジタル回路上の2つの安定状態を生じてメタスタビリティを生じる虞があっても、TDC制御回路21は、予め定められた順序でパルスPAW、PABをTDC24に順次入力させているため、除算器28の除算結果に影響することはない。
【0079】
(他の実施形態)
本発明は、前述実施形態に限定されるものではなく、例えば以下に示す変形、又は、拡張が可能である。遅延回路としてのRDL31を用いたTDC24が、時間差を測定する形態を示したが、これに限定されるものではない。また前述実施形態では、ゲートの信号伝搬遅延、例えば反転遅延素子としてのNANDゲート37、NOTゲート38を用いた方式により遅延時間を生成する形態を説明したが、これに限定されるものではなく、時間差を測定できればどのような遅延回路を用いて構成しても良い。
【0080】
「測定対象パルスPWの一対のエッジ間の時間差」として、立上りエッジから立下りエッジまでのパルスの時間差を測定する形態を説明したが、これに限定されるものではなく、立下りエッジから立上りエッジまでのパルスの時間差を測定する形態に適用しても良い。
【0081】
さらに図18に示すように、2本の信号線を通じてそれぞれ伝送されるパルス信号PWX1、PWY1のそれぞれの立上りエッジの間の時間差を「測定対象パルスPW」とし、図18のタイミングt1~t2に示す「測定対象パルスPWの一対のエッジ間の時間差」を測定対象としても良い。同様に、図19に示すように、パルス信号PWX2、PWY2のそれぞれの立下りエッジの間の時間差を「測定対象パルスPW」とし、図19のタイミングt1~t2に示す「測定対象パルスPWの一対のエッジ間の時間差」を測定対象としても良い。
【0082】
またパルス信号PWX1の立上りエッジからパルス信号PWY2の立下りエッジまでの間の時間差を「測定対象パルスPW」と考慮しても良いし、パルス信号PWX2の立下りエッジからパルス信号PWY1の立上りエッジまでの間の時間差を「測定対象パルスPW」と考慮しても良い。
【0083】
特許請求の範囲に記載した括弧内の符号は、本発明の一つの態様として前述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。前述実施形態の一部を、課題を解決できる限りにおいて省略した態様も実施形態と見做すことが可能である。また、特許請求の範囲に記載した文言によって特定される発明の本質を逸脱しない限度において、考え得るあらゆる態様も実施形態と見做すことが可能である。
【0084】
また本発明は、前述した実施形態に準拠して記述したが、本発明は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本発明は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範畴や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0085】
図面中、24はTDC、26はラッチ(保持部)、28は除算器(除算部)、31はRDL(遅延回路)、55はANDゲート(第1パルス出力部)、56は第1ディレイ回路(第1ディレイ部)、58aはDFF(第1ラッチ出力部)、75はANDゲート(第2パルス出力部)、76は第2ディレイ回路(第2ディレイ部)、78aはDFF(第2ラッチ出力部)、を示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19