(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167432
(43)【公開日】2024-12-03
(54)【発明の名称】コネクタ用導電性コンタクト要素
(51)【国際特許分類】
H01R 13/03 20060101AFI20241126BHJP
H01R 43/16 20060101ALI20241126BHJP
【FI】
H01R13/03 D
H01R43/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024157922
(22)【出願日】2024-09-12
(62)【分割の表示】P 2022185380の分割
【原出願日】2022-11-21
(31)【優先権主張番号】21306644.2
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】518105024
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクス フランス エスアーエス
(71)【出願人】
【識別番号】518345815
【氏名又は名称】ティーイー コネクティビティ ソリューソンズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110004347
【氏名又は名称】弁理士法人大場国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ ルイヤール
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ダエア
(72)【発明者】
【氏名】サンダレシャン エムディー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】嵌合力を低減することでコネクタの組み立ておよびメンテナンスを容易にしつつ、接触抵抗を低減するためにより摩耗に耐えることができる、改善されたコスト効果の高いコネクタ用コンタクト要素を提供する。
【解決手段】相手側電気コネクタの接続部の面と接触するように構成されているコンタクト面24を有する電気コネクタ用導電性コンタクト要素10は、本体12と、本体の第1の面14に設けられた導電性材料Mからなる導電性材料層22とを備え、コンタクト面24は、本体から離れる方を向く導電性材料層のコンタクト面により形成される。本体の第1の面は、導電性材料が充填されている貯留部20を形成する少なくとも1つの窪み16を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気コネクタ用の導電性コンタクト要素(10、30、50)であって、前記電気コネクタと嵌合するように適合されている相手側電気コネクタの接続部の面と接触するように構成されているコンタクト面(24)を有し、
前記導電性コンタクト要素(10、30、50)は、
- 本体(12、52)と、
- 前記本体(12、52)の第1の面(14)に設けられた導電性材料(M)からなる導電性材料層(22)と、
を備え、
前記コンタクト面(24)が、前記本体(12、52)から離れる方を向く前記導電性材料層(22)の面(24)により形成された、前記導電性コンタクト要素(10、30、50)において、
前記本体(12、52)の前記第1の面(14)が、前記導電性材料(M)が充填されている貯留部(20)を形成する少なくとも1つの窪み(16)を備える、
ことを特徴とする、
導電性コンタクト要素(10、30、50)。
【請求項2】
前記貯留部(20)に充填されている前記導電性材料(M)は、前記相手側電気コネクタの前記接続部の面と接触するように構成されている、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項3】
前記本体(12、52)は、金属から作製され、前記導電性材料(M)は、スズ、ニッケル、銀、金、スズ-ニッケル合金、スズの合金、またはニッケル-銀合金から作製されているめっき材料である、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項4】
前記本体(12、52)の前記第1の面(14)の平面における前記少なくとも1つの窪み(16、18)の最小寸法(L1)は、0.05mmよりも大きく、特に0.05mmから0.06mmの間に含まれる、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項5】
前記少なくとも1つの窪み(16)の最大深さ(L2)は、0.03mmよりも大きく、特に0.04mmよりも大きく、より詳細には0.05mmよりも大きい、
請求項4に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項6】
前記少なくとも1つの窪み(16)は、半球形状または溝形状、特に丸みを帯びた溝形状を有する、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項7】
前記本体(12、52)の前記第1の面(14)に設けられ、前記本体(12、52)の前記第1の面(14)と前記導電性材料(M)からなる前記導電性材料層(22)との間に挟まれている接着層(32)をさらに備える、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項8】
前記少なくとも1つの窪み(16)において、前記導電性材料(M)の厚さ(L3’)は、前記接着層(32)の厚さ(L4)よりも大きい、
請求項7に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項9】
前記接着層(32)は、ニッケル、銅またはスズから作製されている、
請求項7に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項10】
複数の窪み(16)を備え、前記窪み(16)の間の最小の離隔距離(d1)は、0.10mmから0.15mmの間に含まれる、
請求項1に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項11】
前記本体(12)の前記第1の面(14)は、少なくとも1つの方向に湾曲している少なくとも1つの湾曲領域(R1、R2)を備え、
前記少なくとも1つの窪み(16)は、前記少なくとも1つの湾曲領域(R1、R2)に配置されている、請求項1から10のいずれか一項に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項12】
前記本体(12)の前記第1の面(14)は、形状および/またはサイズの異なる複数の窪み(16)を備える、
請求項1または3に記載の導電性コンタクト要素。
【請求項13】
相手側電気コネクタと結合されるように構成されている電気コネクタであって、
導電性コンタクト要素(10、30、50)を備え、前記導電性コンタクト要素(10、30、50)は、
少なくとも第1の面(14)を有する本体(12、52)と、
前記本体(12、52)の前記第1の面(14)に設けられている導電性材料(M)からなる導電性材料層(22)と、を備え、
前記本体(12、52)の前記第1の面(14)は、前記導電性材料が充填されている貯留部(20)を形成する少なくとも1つの窪み(16)を備えており、前記導電性コンタクト要素(10、30、50)はさらに、
相手側電気コネクタの接続部の面と接触するように構成され、前記本体(12、52)から離れる方を向く前記導電性材料(M)からなる前導電性材料記層(22)の面(24)により形成されているコンタクト面(24)を備える、
電気コネクタ。
【請求項14】
導電性コンタクト要素のコンタクト面を製作する方法であって、
a)特に金属打ち抜きにより、前記導電性コンタクト要素の本体(12、52)の第1の面(14)に少なくとも1つの窪み(16)を形成するステップと、次いで、
b)前記少なくとも1つの窪み(16)を導電性材料(M)で充填することを含む、前記第1の面(14)に導電性材料(M)の層(22)を付与するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
ステップb)の前に、前記導電性コンタクト要素(30)の前記本体(52)の前記第1の面(14)に接着層(32)を付与するステップをさらに備える、
請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンタクト面を有するコネクタ用導電性コンタクト要素、およびそのような導電性コンタクト要素を備える電気コネクタに関する。
【0002】
本発明はさらに、電気コネクタ用導電性コンタクト要素のコンタクト面を製作する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電気コネクタは一般に、信号または電力の伝送、ならびに電気システムおよび電子システムの接続に用いられる。電気コネクタには、電気コネクタが相手側電気コネクタに差し込まれたときに相手側電気コネクタのコンタクト要素と接触する導電性コンタクト要素が設けられる。コネクタ要素のコンタクト要素は通常、コンタクトピンとして形成され、相手側コネクタのコンタクト要素は通常、コンタクトスプリングとして形成される。コネクタおよび相手側コネクタが結合されると、コンタクトスプリングがコンタクトピンに弾性ばね力を及ぼし、それによりコンタクト要素間の電気的接続を提供する。
【0004】
コンタクト要素のコンタクト面に生じる機械的および/または化学的な劣化により、電気的接続の品質が影響を受ける場合がある。導電性コンタクト要素のそれぞれのコンタクト面は、スズ、ニッケルまたはそれらの合金の層で被覆される場合がある。
【0005】
自動車におけるように、電気コネクタは、広範な温度変化、振動および腐食環境に曝される場合があり、それによりコンタクト面を被覆する層に損傷が生じ得る。機械的な動きおよび化学反応の組み合わせにより生じる劣化として、フレッティング腐食(fretting corrosion)が知られている。フレッティング摩耗(fretting wear)を生じさせる嵌合したコンタクト面どうしの相対運動が腐食(酸化など)と組み合わさることで、フレッティング腐食が生じる場合がある。フレッティング腐食は、コンタクト領域における絶縁性の酸化物層の形成をもたらし、電気的接触抵抗の増大を引き起こし得る。加えて、コンタクト要素のコンタクト面における摩滅のような摩耗損傷により、電気的集中抵抗(electrical constriction resistance)の増大が生じる場合もある。電気コネクタの性能は電気的接触の信頼性に関連するので、電気抵抗の増大に起因する動作不良を回避するために、コンタクト面における摩耗損傷を防止する必要がある。
【0006】
摩耗および腐食への耐性の向上に加えて、電気コネクタの装着およびメンテナンスを容易にするために、差し込み力および引き抜き力を小さくする必要がある。差し込み力、表面摩耗またはフレッティング腐食を低減するために、従来技術におけるコネクタのコンタクト面には、オイルまたはグリースが施される。しかしながら、グリースまたはオイルが施されたコンタクト面は、塗布されたグリースまたはオイルを動作中に消失してしまう。コンタクト面におけるグリースまたはオイルの使用に関連するこの問題点に対処するために、米国特許出願公開第2019/0173214(A1)号より、微細構造でコンタクト面の下方に配置される複数の空洞部を有し、複数の空洞部に充填され封入される潤滑剤を有するコンタクト面を備える電気コネクタ用導電性コンタクト要素を提供することが知られている。
米国特許出願公開第2019/0173214(A1)号に係る空洞部の空間的寸法は、0.1~50マイクロメートルの範囲である。コンタクト面の下方における米国特許出願公開第2019/0173214(A1)号に係る空洞部の配置は、コンタクト面から空洞部への開口部を設けることなく空洞部に充填される潤滑剤に接触することができないよう、空洞部の出口が十分に狭いものとなっている。米国特許出願公開第2019/0173214(A1)号の微細構造の製作には、レーザ、電子ビーム、またはマスキングおよびエッチングのような表面処理の使用が必要となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、特に潤滑剤の使用を必要とすることなく、嵌合力を低減することでコネクタの組み立ておよびメンテナンスを容易にしつつ、接触抵抗を低減するためにより摩耗に耐えることができる、改善されたコスト効果の高いコネクタ用コンタクト要素を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、請求項1に係る電気コネクタ用導電性コンタクト要素により実現される。導電性コンタクト要素は、電気コネクタと嵌合するように適合されている相手側電気コネクタの接続部の面と接触するように構成されているコンタクト面を有する。導電性コンタクト要素は、本体と、上記本体の第1の面に設けられている導電性材料からなる層とを備え、コンタクト面は、本体から離れる方を向く上記導電性材料層の面により形成される。本体の第1の面は、導電性材料が充填されている貯留部を形成する少なくとも1つの窪みを備える。
【0009】
少なくとも1つの窪みにおいて、導電性コンタクト要素には、層に含まれる導電性材料に加えて、貯留部に充填される導電性材料が設けられる。よって、コンタクト面の下方における少なくとも1つの窪みには、導電性コンタクト要素の他の部分よりも多くの導電性材料が存在し、本体の第1の面は、導電性材料の層により覆われる。結果として、コンタクト面の一様でない摩耗が生じ、それにより、少なくとも1つの窪みにおいて導電性材料の存在がより長く継続することができる。その結果、少なくとも1つの窪みは、導電性コンタクト要素の寿命の間に機械的摩耗および腐食からより長く保護されるコンタクト領域を提供する。したがって、既知のコンタクト要素に対して、腐食媒体のような屋外環境および少なくとも1つの窪みにおける電気的集中抵抗に対する耐性が、導電性コンタクト要素の寿命にわたって向上する。
それにより、電気的接触の品質に関連するコネクタの動作不良を防止する、または少なくとも遅延させることにより、そのような導電性コンタクト要素を備える電気コネクタの耐久性を増大させることが可能となる。加えて、導電性材料の存在により、導電性材料の機械的特性に起因して必要な嵌合力を低減することが可能となるため、関連する電気コネクタの組み立て、差し込みおよび取り扱いの容易さを向上させることができる。
【0010】
様々な有利な実施形態によれば、導電性コンタクト要素をさらに改善することができる。それらの実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0011】
一実施形態によれば、貯留部に充填されている導電性材料は、相手側電気コネクタの接続部の面と接触するように構成されてよい。
【0012】
よって、貯留部は、コンタクト面における直接の出力部を有する。それにより、導電性材料を相手側コンタクト面に直接露出させることが可能となる。
【0013】
一実施形態によれば、本体は、金属から作製されてよく、導電性材料は、スズ、ニッケル、銀、金、スズ-ニッケル合金、スズの合金、またはニッケル-銀合金から作製されているめっき材料であってよい。
【0014】
導電性材料は、電気コネクタ間の電気的接続を可能とするように選択される。
【0015】
めっき材料は、機械的摩耗および/または腐食に対するその耐性、ならびにそのコストおよび入手性に基づいて選択されてよい。
【0016】
一実施形態によれば、コンタクト面の平面における少なくとも1つの窪みの最小寸法は、0.05mmよりも大きくてよく、特に0.05mmから0.06mmの間に含まれてよい。
【0017】
よって、少なくとも1つの窪みの寸法を考慮すると、少なくとも1つの窪みは、本体の第1の面において微細構造を形成しない。よって、レーザ、電子ビームまたはマスキングおよびエッチングのような微細構造の形成に必要とされる製作手段よりも簡略かつコスト効果の高い、金属打ち抜きのようなプロセスを、巨視的規模の窪みを形成するために用いることが可能となる。
【0018】
「より大きい」という表現は、「厳密により大きい」ではなく「等しいまたはより大きい(つまり、「以上」の意味)」として解釈されるべきである。
【0019】
一実施形態によれば、少なくとも1つの窪みの最大深さは、0.03mmよりも大きくてよく、特に0.04mmよりも大きくてよく、より詳細には0.05mmよりも大きくてよい。
【0020】
上記で述べたように、少なくとも1つの窪みの寸法を考慮すると、少なくとも1つの窪みは、本体の第1の面において微細構造を形成しない。よって、レーザ、電子ビームまたはマスキングおよびエッチングのような微細構造の形成に必要とされる製作手段よりも簡略かつコスト効果の高い、金属打ち抜きのようなプロセスを、巨視的規模の窪みを形成するために用いることが可能となる。
【0021】
加えて、導電性材料の貯留部のサイズを増大させることにより、摩耗に対する耐性をさらにかつより長く向上させるように最大深さを適合させることができる。
【0022】
「より大きい」という表現は、「厳密により大きい」ではなく「等しいまたはより大きい(つまり、「以上」の意味)」として解釈されるべきである。
【0023】
一実施形態によれば、少なくとも1つの窪みは、半球形状または溝形状、特に丸みを帯びた溝形状を有してよい。
【0024】
半球形および円形の形状により、尖鋭な縁部の存在を回避し、貯留部に充填される導電性材料の量を最適化することが可能となる。
【0025】
溝形状により、相手側コンタクト面の前後の動き、例えば振動により生じる動きの方向に沿って有利に延び得る貯留部を提供することが可能となる。
【0026】
一実施形態によれば、導電性コンタクト要素は、本体の第1の面に設けられ、第1の面と導電性材料の層との間に挟まれている接着層をさらに備えてよい。
【0027】
接着層を用いることにより、時間経過に伴う電気的接触の品質をさらに向上させることができる。
【0028】
一実施形態によれば、少なくとも1つの窪みにおいて、導電性材料の厚さは、接着層の厚さよりも大きくてよい。
【0029】
よって、接着層の存在にかかわらず、摩耗および腐食に対する耐性を向上させ、電気的集中抵抗および必要な嵌合力を低減するという技術的効果を提供するのに十分な量の導電性材料が貯留部に充填される。
【0030】
一実施形態によれば、接着層は、ニッケル、銅またはスズから作製されてよい。
【0031】
一実施形態によれば、導電性コンタクト要素は、複数の窪みを備えてよく、窪みの間の最小の離隔距離は、0.10mmから0.15mmの間に含まれてよい。
【0032】
複数の窪みは、改善されたコンタクト領域の冗長化を提供し、それにより、電気コネクタ間の電気的接触の信頼性および耐久性を向上させる。
【0033】
一実施形態によれば、本体の第1の面は、少なくとも1つの方向に湾曲している少なくとも1つの湾曲領域を備えてよく、少なくとも1つの窪みは、少なくとも1つの湾曲領域に配置されてよい。
【0034】
湾曲領域は、弾性ばね力の下で他の領域よりも変形しやすい領域を提供することができる。湾曲領域における機械的接触性能を増大させることにより、電気的接触性能も向上させることができる。よって、少なくとも1つの窪みを湾曲領域に配置することが特に有利である。
【0035】
一実施形態によれば、本体の第1の面は、形状および/またはサイズの異なる複数の窪みを備えてよい。
【0036】
よって、印加される力、相手側コネクタとのコンタクト領域のサイズ等に基づいて、窪みの設計をコンタクト領域に対して有利に適合させることができる。
【0037】
一実施形態によれば、導電性コンタクト要素は、相手側電気コネクタと結合されるように構成されている電気コネクタに含まれてよい。
【0038】
本発明の目的はさらに、導電性コンタクト要素を備える、相手側電気コネクタと結合されるように構成されている電気コネクタにより実現される。上記導電性コンタクト要素は、少なくとも第1の面を有する本体と、本体の上記第1の面に設けられている導電性材料からなる層(導電性材料層)と、を備え、本体の第1の面は、導電性材料が充填されている貯留部を形成する少なくとも1つの窪みを備え、上記導電性コンタクト要素さらには、相手側電気コネクタの接続部の面と接触するように構成され、本体から離れる方を向く上記の導電性材料層の面により形成されているコンタクト面を備える。
【0039】
本発明に係る電気コネクタにおいては、少なくとも1つの窪みにおいて、導電性コンタクト要素には、コンタクト面の下方に、層に含まれる導電性材料に加えて、貯留部に充填される導電性材料が設けられる。よって、少なくとも1つの窪みにおいて、導電性材料から作製されるコンタクト面は、導電性コンタクト要素の他の部分よりも厚い。結果として、コンタクト面の一様でない摩耗が生じ、それにより、少なくとも1つの窪みにおいて導電性材料の存在をより長く維持することができる。その結果、少なくとも1つの窪みは、電気コネクタの導電性コンタクト要素の寿命の間に機械的摩耗および腐食からより長く保護されるコンタクト領域を提供する。したがって、既知の電気コネクタに対して、腐食媒体のような屋外環境および少なくとも1つの窪みにおける電気的集中抵抗に対する耐性が、電気コネクタの導電性コンタクト要素の寿命にわたって向上する。
それにより、電気的接触の品質に関連するコネクタの動作不良を防止する、または少なくとも遅延させることにより、電気コネクタの耐久性を増大させることが可能となる。加えて、導電性材料の存在により、導電性材料の機械的特性に起因して必要な嵌合力を低減することが可能となるため、電気コネクタの組み立て、差し込みおよび取り扱いの容易さを向上させることができる。
【0040】
本発明の目的はまた、導電性コンタクト要素のコンタクト面を製作する方法であって、a)特に金属打ち抜きにより、導電性コンタクト要素の本体の第1の面に少なくとも1つの窪みを形成するステップと、次いで、b)少なくとも1つの窪みを導電性材料で充填することを含む、第1の面に導電性材料の層を付与するステップとを含む方法により実現される。
【0041】
よって、容易かつコスト効果の高い製作プロセスを用いてコンタクト面を形成することができる。
【0042】
この製作方法により、コンタクト面の下方における少なくとも1つの窪みに導電性コンタクト要素の他の部分よりも多くの導電性材料が存在し、本体の第1の面が導電性材料の層により覆われているコンタクト面を提供することが可能となる。結果として、コンタクト面の一様でない摩耗が生じ、それにより、少なくとも1つの窪みにおいて導電性材料の存在がより長く継続することができる。その結果、少なくとも1つの窪みは、導電性コンタクト要素の寿命の間に機械的摩耗および腐食からより長く保護されるコンタクト領域を提供する。したがって、既知のコンタクト要素に対して、腐食媒体のような屋外環境および少なくとも1つの窪みにおける電気的集中抵抗に対する耐性が、導電性コンタクト要素の寿命にわたって向上する。
それにより、電気的接触の品質に関連するコネクタの動作不良を防止する、または少なくとも遅延させることにより、そのような導電性コンタクト要素を備える電気コネクタの耐久性を増大させることが可能となる。加えて、導電性材料の存在により、導電性材料の機械的特性に起因して必要な嵌合力を低減することが可能となるため、関連する電気コネクタの組み立て、差し込みおよび取り扱いの容易さを向上させることができる。
【0043】
一実施形態によれば、製作方法は、ステップb)の前に、コンタクト面に接着層を付与するステップをさらに備えてよい。
【0044】
接着層を追加するステップにより、電気コネクタの全寿命にわたって電気的接触の品質をさらに向上させることが可能となる。
【0045】
添付の図面は、本発明のいくつかの実施形態を示すために、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を形成する。これらの図面は、本説明とともに、本発明の原理を説明する働きを果たす。図面は、単に本発明がどのように実施および使用され得るかの好適かつ代替的な例を示すことを目的としたものであり、示され説明されている実施形態のみに本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに、実施形態のいくつかの態様は、個別にまたは様々な組み合わせで、本発明に係る解決策を形成し得る。よって、以下で説明されている実施形態は、単独またはそれらの任意の組み合わせのいずれとみなされてもよい。さらなる特徴および利点が、添付の図面に示すような本発明の様々な実施形態についての以下のより詳細な説明から明らかとなるであろう。図面において、同様の参照符号は、同様の要素を指す。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】初期段階における本発明の第1の実施形態に係る導電性コンタクト要素の部分断面図である。
【
図2】
図1に示す導電性コンタクト要素の本体を示す図である。
【
図3】初期段階における本発明の第2の実施形態に係る導電性コンタクト要素の部分断面図である。
【
図4A】初期段階よりも後の段階における本発明の第2の実施形態に係る導電性コンタクト要素の上面図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に係る導電性コンタクト要素の本体の拡大図である。
【
図6A】本発明の第3の実施形態に係る導電性コンタクト要素のコンタクト面を製作する方法の連続的なステップを示す図である。
【
図6B】本発明の第3の実施形態に係る導電性コンタクト要素のコンタクト面を製作する方法の連続的なステップを示す図である。
【
図6C】本発明の第3の実施形態に係る導電性コンタクト要素のコンタクト面を製作する方法の連続的なステップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
全ての前述の実施形態は、限定として意図されたものではなく、本発明の特徴および利点を示す例としての働きを果たす。上述の特徴の一部または全てが、異なる方法で組み合わされてもよいことを理解されたい。
【0048】
図1および
図2は、本発明の第1の実施形態に係る導電性コンタクト要素10の本体の部分断面図を示す。
図1にはコンタクト面が示されているが、
図2においては、導電性コンタクト要素10の本体の構造をより強調して示すために、コンタクト面が省略されている。以下、
図1および
図2をまとめて説明する。
【0049】
電気コネクタ(不図示)用の導電性コンタクト要素10は、本体12、特に金属製本体12を備える。本体12は、複数の面により画定される。本発明によれば、本体12の少なくとも1つの面14であって、
図1および
図2の例では平面(XY)において延びる面14に、窪み16が設けられる。窪み16は、軸Zに平行な方向に沿って、面14における開口部18から、部分的に本体12内へと延びる。
【0050】
第1の実施形態において、窪み16は、実質的に半球形状を有する。対応する円形の開口部18の直径L1は、0.05mmよりも大きくてよく、特に0.05mmから0.06mmの間に含まれてよい。
【0051】
窪み16の最大深さL2は、0.01mmよりも大きい。すなわち、窪み16の最大深さL2は、0.03mmよりも大きくてよく、特に0.04mmよりも大きくてよく、より詳細には0.05mmよりも大きくてよい。
【0052】
「より大きい」という表現は、「厳密により大きい」ではなく「等しいまたはより大きい(つまり、「以上」の意味)」として解釈されるべきである。
【0053】
変形例において、窪み16は、溝形状、特に丸みを帯びた溝形状を有してよい。別の変形例において、窪み16の開口部18は、方形、矩形、楕円形、三角形等の形状を有してよい。
【0054】
窪み16は、貯留部20を形成する。
図2は、窪み16の構造をより強調して示すために、空の貯留部20を示す。上記で述べたように、また
図2において強調されているように、窪み16は、1つの開口端部18を有する。
【0055】
図1に示すように、厚さL3の導電性材料Mの層22が、本体12の面14に設けられる。導電性材料Mは、スズ、ニッケル、銀、金、スズ-ニッケル合金、スズの合金、またはニッケル-銀合金から作製され得るめっき材料である。
【0056】
第1の実施形態において、導電性材料Mの層(導電性材料層)22は、面14に直接設けられる。
【0057】
導電性材料層22の面24は、導電性コンタクト要素10の本体12から離れる方を向いており、コンタクト面24を形成する。コンタクト面24は、実質的に平面(XY)において延びる。コンタクト面24は、相手側電気コネクタ(不図示)の接続部の面と接触するように構成される。
【0058】
図1に表す初期段階において示すように、第1の実施形態において、厚さT1の導電性材料Mが貯留部20の最深点Aの上方に設けられ、ここでT1=L2+L3である。
【0059】
初期段階は、導電性コンタクト要素10が相手側コネクタの導電性コンタクト要素とまだ接触していない段階にあたる。よって、初期段階においては、嵌合面から生じ得る機械的摩耗、腐食、摩滅または何らかの損傷がまだ生じていない。そのため、初期段階においては、
図1に示すように、コンタクト面24が平面(XY)において実質的に平坦である。
【0060】
以下において、
図1および
図2に関して既に説明し示したものと同じ参照符号を有する要素については、必ずしも再び詳細に説明はせず、同じ参照符号の前の説明を参照されたい。
【0061】
図3は、本発明の第2の実施形態に係る導電性コンタクト要素30の本体の部分断面図を示す。
【0062】
第1の実施形態と比較して、第2の実施形態においては、接着層32が本体12の面14に直接設けられ、本体12の面14と導電性材料Mの層22との間に挟まれる。
【0063】
図3に示すように、接着層32は、窪み16における面14を含め、面14において実質的に均一な厚さL4で設けられる。
【0064】
第2の実施形態において、層22は、厚さL3’を有し、ここでL3’≦L3である。
【0065】
図3に表す初期段階において示すように、第2の実施形態において、厚さT2の導電性材料Mが貯留部20の最深点Aの上方に設けられ、ここでT2=L3’+(L2-L4)である。
【0066】
変形例(不図示)において、さらなる層が本体12の面14と導電性材料Mの層22との間に挟まれてよい。
【0067】
図4Aは、機械的摩耗および/または化学的摩耗が生じている、初期段階よりも後の段階における本発明の第2の実施形態に係る導電性コンタクト要素30の上面図を示す。
図4Bは、
図4Aに示す導電性コンタクト要素30の断面図を示す。以下、
図4Aおよび
図4Bをまとめて説明する。
【0068】
以下において、
図1~
図3に関して既に説明し示したものと同じ参照符号を有する要素については、必ずしも再び詳細に説明はせず、同じ参照符号の前の説明を参照されたい。
【0069】
図4A、
図4Bに示す摩耗段階においては、機械的摩耗および/化学的摩耗によりコンタクト面24に分断部40が生じており、それにより接着層32が露出している。より後の段階(不図示)において、接着層32がさらに取り除かれることにより、本体12の面14が露出する可能性がある。
図4Aの例において、分断部40は、軸Xに沿って延びる溝42の形状を有する。そのような直線状の溝形状は、例えば相手側コンタクト面の前後の動きにより生じる場合がある。例えばコネクタおよび相手側コネクタの相対運動によっては、他の形状(不図示)の分断部40がコンタクト面24に生じる場合がある。
【0070】
本発明によれば、本体12における窪み16の存在により、
図4Aおよび
図4Bの摩耗段階において、分断部40があっても導電性材料Mのコンタクト領域44がコンタクト面24に依然として残るように、導電性材料Mの貯留部20を設けることが可能となる。
【0071】
図4Bに示すように、
図4Aおよび
図4Bに表す摩耗段階において、窪み16の最深点Aの上方における厚さT3(T3<T2)の導電性材料Mが、貯留部20に依然として残っている。よって、コンタクト面24における一様でない摩耗が実現され、それにより、電気的接触抵抗の低い少なくとも1つのコンタクト領域44を提供することが可能となる。
【0072】
導電性材料Mのコンタクト領域44を提供するという同じ効果が、第1の実施形態に係る導電性コンタクト要素10においても生じることになることに留意されたい。第2の実施形態とは対照的に、第1の実施形態に係るコンタクト要素10におけるコンタクト面24の分断部40は、接着層が存在しないことに起因して、本体12の面14を直接露出させることになる。
【0073】
図5は、本発明の第3の実施形態に係る導電性コンタクト要素50の拡大図を示す。導電性コンタクト要素50に形成される窪み16を示すために、
図5においては導電性材料Mおよび任意選択的な接着層32を図示していない。
【0074】
第3の実施形態に係る導電性コンタクト要素50は、平面(XY)において延び、孔56を画定するフレーム54を備える金属製本体52を有する。4つのコンタクトピン58が、フレーム54内において孔56にわたって延びる。コンタクトピン58の数は限定されない。各コンタクトピン58は、2つのわずかに湾曲した領域R1およびR2が設けられるように平面(XY)に対して屈曲される。湾曲領域の数は限定されない。
【0075】
湾曲領域R1、R2は、コンタクトピン58の他の部分と比較してより大きい弾性ばね力が及ぼされる導電性コンタクト要素50の領域からなる。コネクタの嵌合状態において湾曲領域R1、R2に圧力を印加する相手側コネクタの接続部により、弾性ばね力が湾曲領域R1、R2に及ぼされるように意図される。
【0076】
湾曲領域R1、R2には、
図1および
図2に関して前述したように、金属製本体52の面14に形成される複数の窪み16が設けられる。
【0077】
複数の窪み16は、最小距離d1だけ互いに離隔し、ここでd1は、0.10mmから0.15mmの間に含まれる。特に、d1=0.125mmである。
【0078】
複数の窪み16を湾曲領域R1、R2に配置することにより、機械的応力、およびしたがって摩耗に最もさらされる領域における摩耗耐性を向上させることが可能となる。
【0079】
複数の窪み16は、改善されたコンタクト領域の冗長化を提供し、それにより、電気コネクタ間の電気的接触の信頼性および耐久性を向上させる。
【0080】
図6A、
図6Bおよび
図6Cは、本発明の第3の実施形態に係る導電性コンタクト要素50のコンタクト面を製作する方法の連続的なステップを示す。
【0081】
図6Aに表すステップにおいて、コンタクトピン58における金属製本体12の面14は、実質的に均一である。
【0082】
図6Bに表すステップにおいて、複数の窪み16が、コンタクトピン58において金属製本体52の面14に金属打ち抜きにより形成されている。
図6Aの例において、各窪み16は、実質的に半球形状を有する。変形例(不図示)において、窪み16は、実質的に半球形状とは異なる形状を有してよい。別の変形例(不図示)において、複数の窪み16は、形状および/またはサイズの異なる窪み16の組み合わせを含んでよい。
【0083】
図6Cに表す製作方法の最後のステップにおいて、厚さL5の導電性材料Mのめっき層22が金属製本体52の面14に設けられており、それにより面14を被覆し、各窪み16を導電性材料Mで充填している。
【0084】
本体52から離れる方を向くめっき層22の面24は、導電性コンタクト要素50のコンタクト面24を形成する。
【0085】
全ての前述の実施形態は、限定として意図されたものではなく、本発明の特徴および利点を示す例としての働きを果たす。上述の特徴の一部または全てが異なる方法で組み合わされてもよいことを理解されたい。1つの実施形態に関して説明されている特徴は、別の実施形態と組み合わされてもよいことに留意されたい。
【符号の説明】
【0086】
10 第1の実施形態に係る導電性コンタクト要素
12 本体
14 本体の(第1の)面
16 窪み
18 窪みの開口部
20 貯留部
22 層
24 コンタクト面
30 第2の実施形態に係る導電性コンタクト要素
32 接着層
40 摩耗段階における分断部
42 摩耗段階における溝
44 摩耗段階におけるコンタクト領域
50 第3の実施形態に係る導電性コンタクト要素
52 金属製本体
54 フレーム
56 孔
58 コンタクトピン
A 窪み16の最深領域
d1 窪み16の間の離隔距離
L1 窪み16の直径
L2 窪み16の最大深さ
L3、L3’ 導電性材料Mの層22の厚さ
L4 接着層32の厚さ
L5 導電性材料Mの層22の厚さ
M 導電性材料
T1、T2、T3 導電性材料Mの最大厚さ
R1、R2 コンタクトピン58の湾曲領域