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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016744
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】発光装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/028 20060101AFI20240131BHJP
   H01S 5/026 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01S5/028
H01S5/026 610
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119077
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】316005926
【氏名又は名称】ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】小野 章吾
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173AC53
5F173AD04
5F173AD20
5F173AH47
5F173AL10
5F173AL13
5F173AL14
5F173AL21
5F173AP33
5F173AP42
5F173AP91
5F173AR99
(57)【要約】
【課題】個片化後の基板を好適に保護することが可能な発光装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の発光装置は、基板と、前記基板の第1面に設けられた発光素子と、前記基板の第2面に設けられたレンズと、前記基板の前記第1面と前記第2面との間の第3面に設けられた膜とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の第1面に設けられた発光素子と、
前記基板の第2面に設けられたレンズと、
前記基板の前記第1面と前記第2面との間の第3面に設けられた膜と、
を備える発光装置。
【請求項2】
前記膜は、前記基板の前記第2面および前記第3面に設けられている、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記膜は、前記レンズを覆っている、請求項2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記膜は、前記発光素子に接していない、請求項1に記載の発光装置。
【請求項5】
前記膜は、反射防止膜である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項6】
前記膜は、シリコンを含む、請求項1に記載の発光装置。
【請求項7】
前記膜は、前記基板の前記第3面に設けられた第1膜と、前記基板の前記第3面に前記第1膜を介して設けられた第2膜とを含む、請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
前記第1膜は、シリコンと窒素とを含み、前記第2膜は、シリコンと酸素とを含む、請求項7に記載の発光装置。
【請求項9】
前記基板は、化合物半導体基板である、請求項1に記載の発光装置。
【請求項10】
前記基板は、ガリウムとヒ素とを含む、請求項9に記載の発光装置。
【請求項11】
前記基板の前記第3面は、テーパー形状を有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項12】
基板の第1面に発光素子を形成し、
前記基板の第2面にレンズを形成し、
前記基板を個片化し、
前記基板の個片化後に、前記基板の前記第1面と前記第2面との間の第3面に膜を形成する、
ことを含む発光装置の製造方法。
【請求項13】
前記膜は、前記基板の個片化後に、前記基板の前記第2面および前記第3面に形成される、請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記膜は、前記レンズを覆うように形成される、請求項13に記載の発光装置の製造方法。
【請求項15】
前記膜は、前記発光素子に接しないように形成される、請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項16】
前記膜は、反射防止膜である、請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項17】
前記膜は、前記基板の前記第3面に形成された第1膜と、前記基板の前記第3面に前記第1膜を介して形成された第2膜とを含むように形成される、請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項18】
前記基板は、化合物半導体基板である、請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項19】
前記基板の前記第3面は、前記基板の個片化により形成される、請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【請求項20】
前記基板の個片化は、ドライエッチングにより行われる、請求項12に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザーの一種として、VCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser)等の面発光レーザーが知られている。一般に、面発光レーザーを利用した発光装置では、基板の表面または裏面に複数の発光素子が2次元アレイ状に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-526194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の基板を個片化すると、個片化後の基板の側面に堆積物が付着することや、個片化後の基板の側面に酸化物が生成されることが問題となる。堆積物は例えば、基板を個片化する際のドライエッチングに起因して生じる。一方、酸化物は例えば、基板の側面が酸化されることで生じる。これら堆積物や酸化物が基板の側面から脱落すると、ダストの原因となる。
【0005】
そこで、本開示は、個片化後の基板を好適に保護することが可能な発光装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の側面の発光装置は、基板と、前記基板の第1面に設けられた発光素子と、前記基板の第2面に設けられたレンズと、前記基板の前記第1面と前記第2面との間の第3面に設けられた膜とを備える。これにより例えば、基板の第3面に膜を形成することで、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0007】
また、この第1の側面において、前記膜は、前記基板の前記第2面および前記第3面に設けられていてもよい。これにより例えば、基板の第2面と第3面とにまたがる膜を形成することで、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0008】
また、この第1の側面において、前記膜は、前記レンズを覆っていてもよい。これにより例えば、レンズ用の膜により、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0009】
また、この第1の側面において、前記膜は、前記発光素子に接していなくてもよい。これにより例えば、発光素子用には用いられない膜により、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0010】
また、この第1の側面において、前記膜は、反射防止膜でもよい。これにより例えば、個片化後の基板を、反射防止膜により好適に保護することが可能となる。
【0011】
また、この第1の側面において、前記膜は、シリコンを含んでいてもよい。これにより例えば、安価に形成可能なシリコン系の膜により、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0012】
また、この第1の側面において、前記膜は、前記基板の前記第3面に設けられた第1膜と、前記基板の前記第3面に前記第1膜を介して設けられた第2膜とを含んでいてもよい。これにより例えば、反射防止膜等として使用可能な膜により、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0013】
また、この第1の側面において、前記第1膜は、シリコンと窒素とを含み、前記第2膜は、シリコンと酸素とを含んでいてもよい。これにより例えば、反射防止膜等として使用可能な膜により、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0014】
また、この第1の側面において、前記基板は、化合物半導体基板でもよい。これにより例えば、もろいことや酸化されやすいことが問題となる化合物半導体基板を用いる場合でも、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0015】
また、この第1の側面において、前記基板は、ガリウムとヒ素とを含んでいてもよい。これにより例えば、GaAs(ガリウムヒ素)基板などの化合物半導体基板を用いる場合でも、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0016】
また、この第1の側面において、前記基板の前記第3面は、テーパー形状を有していてもよい。これにより例えば、基板の個片化をドライエッチング等により行う場合でも、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0017】
本開示の第2の側面の発光装置の製造方法は、基板の第1面に発光素子を形成し、前記基板の第2面にレンズを形成し、前記基板を個片化し、前記基板の個片化後に、前記基板の前記第1面と前記第2面との間の第3面に膜を形成することを含む。これにより例えば、基板の第3面に膜を形成することで、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0018】
また、この第2の側面において、前記膜は、前記基板の個片化後に、前記基板の前記第2面および前記第3面に形成されてもよい。これにより例えば、基板の第2面と第3面とにまたがる膜を形成することで、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0019】
また、この第2の側面において、前記膜は、前記レンズを覆うように形成されてもよい。これにより例えば、レンズ用の膜により、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0020】
また、この第2の側面において、前記膜は、前記発光素子に接しないように形成されてもよい。これにより例えば、発光素子用には用いられない膜により、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0021】
また、この第2の側面において、前記膜は、反射防止膜でもよい。これにより例えば、個片化後の基板を、反射防止膜により好適に保護することが可能となる。
【0022】
また、この第2の側面において、前記膜は、前記基板の前記第3面に形成された第1膜と、前記基板の前記第3面に前記第1膜を介して形成された第2膜とを含むように形成されてもよい。これにより例えば、反射防止膜等として使用可能な膜により、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0023】
また、この第2の側面において、前記基板は、化合物半導体基板でもよい。これにより例えば、もろいことや酸化されやすいことが問題となる化合物半導体基板を用いる場合でも、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0024】
また、この第2の側面において、前記基板の前記第3面は、前記基板の個片化により形成されてもよい。これにより例えば、個片化により生じた第3面を膜により保護することで、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【0025】
また、この第2の側面において、前記基板の個片化は、ドライエッチングにより行われてもよい。これにより例えば、ドライエッチングにより堆積物が生じる場合でも、個片化後の基板を好適に保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】第1実施形態の測距装置の構成例を示すブロック図である。
図2】第1実施形態のSTL(Structured Light)方式を説明するための図である。
図3】第1実施形態の発光装置の構造の例を示す断面図である。
図4図3のBに示す発光装置の構造を示す断面図である。
図5】第1実施形態の発光装置の構造を示す断面図と平面図である。
図6】第1実施形態の発光装置の基板の構造を示す平面図と断面図である。
図7】比較例の発光装置の製造方法を示す断面図(1/3)である。
図8】比較例の発光装置の製造方法を示す断面図(2/3)である。
図9】比較例の発光装置の製造方法を示す断面図(3/3)である。
図10】第1実施形態の発光装置の製造方法を示す断面図(1/3)である。
図11】第1実施形態の発光装置の製造方法を示す断面図(2/3)である。
図12】第1実施形態の発光装置の製造方法を示す断面図(3/3)である。
図13】第1実施形態と比較例とを比較するための断面図である。
図14】第1実施形態の発光装置の製造方法を示す断面図(1/2)である。
図15】第1実施形態の発光装置の製造方法を示す断面図(2/2)である。
図16】第1実施形態の発光装置の製造方法の詳細を示す断面図である。
図17】第1実施形態の発光装置の構造と、第1実施形態の変形例の発光装置の構造とを示す断面図である。
図18】第1実施形態の別の変形例の発光装置の構造を示す断面図である。
図19】第2実施形態の発光装置の基板の構造の例を示す断面図である。
図20】第3実施形態の発光装置の基板の構造の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。
【0028】
(第1実施形態)
(1)第1実施形態の測距装置1
(1.1)測距装置1の構成
図1は、第1実施形態の測距装置1の構成例を示すブロック図である。
【0029】
図示のように測距装置1は、発光部2、駆動部3、電源回路4、発光側光学系5、受光側光学系6、受光部7、信号処理部8、制御部9、および温度検出部10を備えている。
【0030】
発光部2は、複数の光源により光を発する。本例の発光部2は、各光源としてVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting LASER:垂直共振器面発光レーザ)による発光素子2aを有しており、それら発光素子2aが例えばマトリクス状等の所定態様により配列されて構成されている。
【0031】
駆動部3は、発光部2を駆動するための電源回路を有して構成される。
【0032】
電源回路4は、例えば測距装置1に設けられた不図示のバッテリ等からの入力電圧に基づき、駆動部3の電源電圧を生成する。駆動部3は、該電源電圧に基づいて発光部2を駆動する。
【0033】
発光部2より発せられた光は、発光側光学系5を介して測距対象としての被写体Sに照射される。そして、このように照射された光の被写体Sからの反射光は、受光側光学系6を介して受光部7の受光面に入射する。
【0034】
受光部7は、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の受光素子とされ、上記のように受光側光学系6を介して入射する被写体Sからの反射光を受光し、電気信号に変換して出力する。
【0035】
受光部7は、受光した光を光電変換して得た電気信号について、例えばCDS(Correlated Double Sampling)処理、AGC(Automatic Gain Control)処理等を実行し、さらにA/D(Analog/Digital)変換処理を行う。そしてデジタルデータとしての信号を、後段の信号処理部8に出力する。
【0036】
また、本例の受光部7は、フレーム同期信号Fsを駆動部3に出力する。これにより駆動部3は、発光部2における発光素子2aを受光部7のフレーム周期に応じたタイミングで発光させることが可能とされる。
【0037】
信号処理部8は、例えばDSP(Digital Signal Processor)等により信号処理プロセッサとして構成される。信号処理部8は、受光部7から入力されるデジタル信号に対して、各種の信号処理を施す。
【0038】
制御部9は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を有するマイクロコンピュータ、またはDSP等の情報処理装置を備えて構成され、発光部2による発光動作を制御するための駆動部3の制御や、受光部7による受光動作に係る制御を行う。
【0039】
制御部9は、測距部9aとしての機能を有する。測距部9aは、信号処理部8を介して入力される信号(つまり被写体Sからの反射光を受光して得られる信号)に基づき、被写体Sまでの距離を測定する。本例の測距部9aは、被写体Sの三次元形状の特定を可能とするために、被写体Sの各部について距離の測定を行う。
【0040】
ここで、測距装置1における具体的な測距の手法については後に改めて説明する。
【0041】
温度検出部10は、発光部2の温度を検出する。温度検出部10としては、例えばダイオードを用いて温度検出を行う構成を採ることができる。
【0042】
本例では、温度検出部10により検出された温度の情報は駆動部3に供給され、これにより駆動部3は該温度の情報に基づいて発光部2の駆動を行うことが可能とされる。
【0043】
(1.2)測距手法について
測距装置1における測距手法としては、例えばSTL(Structured Light:構造化光)方式やToF(Time of Flight:光飛行時間)方式による測距手法を採用することができる。
【0044】
STL方式は、例えばドットパターンや格子パターン等の所定の明/暗パターンを有する光を照射された被写体Sの画像に基づいて距離を測定する方式である。
【0045】
図2は、第1実施形態のSTL方式を説明するための図である。
【0046】
STL方式では、例えば図2のAに示すようなドットパターンによるパターン光Lpを被写体Sに照射する。パターン光Lpは、複数のブロックBLに分割されており、各ブロックBLにはそれぞれ異なるドットパターンが割当てられている(ブロックB間でドットパターンが重複しないようにされている)。
【0047】
図2のBは、STL方式の測距原理についての説明図である。
【0048】
ここでは、壁Wとその前に配置された箱BXとが被写体Sとされ、該被写体Sに対してパターン光Lpが照射された例としている。図中の「G」は受光部7による画角を模式的に表している。
【0049】
また、図中の「BLn」はパターン光Lpにおける或るブロックBLの光を意味し、「dn」は受光部7による受光画像に映し出されるブロックBLnのドットパターンを意味している。
【0050】
ここで、壁Wの前の箱BXが存在しない場合、受光画像においてブロックBLnのドットパターンは図中の「dn’」の位置に映し出される。すなわち、箱BXが存在する場合と箱BXが存在しない場合とで、受光画像においてブロックBLnのパターンが映し出される位置が異なるものであり、具体的には、パターンの歪みが生じる。
【0051】
STL方式は、このように照射したパターンが被写体Sの物体形状によって歪むことを利用して被写体Sの形状や奥行きを求める方式となる。具体的には、パターンの歪み方から被写体Sの形状や奥行きを求める方式である。
【0052】
STL方式を採用する場合、受光部7としては、例えばグローバルシャッタ方式によるIR(Infrared:赤外線)受光部が用いられる。そして、STL方式の場合、測距部9aは、発光部2がパターン光を発光するように駆動部3を制御すると共に、信号処理部8を介して得られる画像信号についてパターンの歪みを検出し、パターンの歪み方に基づいて距離を計算する。
【0053】
続いて、ToF方式は、発光部2より発された光が対象物で反射されて受光部7に到達するまでの光の飛行時間(時間差)を検出することで、対象物までの距離を測定する方式である。
【0054】
ToF方式として、いわゆるダイレクトToF(dToF)方式を採用する場合、受光部7としてはSPAD(Single Photon Avalanche Diode)を用い、また発光部2はパルス駆動する。この場合、測距部9aは、信号処理部8を介して入力される信号に基づき、発光部2より発せられ受光部7により受光される光について発光から受光までの時間差を計算し、該時間差と光の速度とに基づいて被写体Sの各部の距離を計算する。
【0055】
なお、ToF方式として、いわゆるインダイレクトToF(iToF)方式(位相差法)を採用する場合、受光部7としては例えばIRを受光することのできる受光部が用いられる。
【0056】
(2)第1実施形態の発光装置1a
図3は、第1実施形態の発光装置1aの構造の例を示す断面図である。本実施形態の発光装置1aは、測距装置1の一部でもよいし、測距装置1そのものでもよい。
【0057】
図3のAは、本実施形態の発光装置1aの構造の第1の例を示している。この例の発光装置1aは、上述の発光部2を含むLD(Laser Diode)チップ11と、上述の駆動部3を含むLDD(Laser Diode Driver)基板12と、実装基板13と、放熱基板14と、補正レンズ保持部15と、1つ以上の補正レンズ16と、配線17とを備えている。LDチップ11は、VCSEL基板とも呼ばれる。
【0058】
図3のAは、互いに垂直なX軸、Y軸、およびZ軸を示している。X方向とY方向は横方向(水平方向)に相当し、Z方向は縦方向(垂直方向)に相当する。また、+Z方向は上方向に相当し、-Z方向は下方向に相当する。-Z方向は、厳密に重力方向に一致していてもよいし、厳密には重力方向に一致していなくてもよい。
【0059】
LDチップ11は、放熱基板14を介して実装基板13上に配置され、LDD基板12も、実装基板13上に配置されている。実装基板13は、例えばプリント基板である。実装基板13にはさらに、上述の受光部7や信号処理部8が配置されていてもよい。放熱基板14は、例えばAl(酸化アルミニウム)基板やAlN(窒化アルミニウム基板)などのセラミック基板である。
【0060】
補正レンズ保持部15は、LDチップ11を囲むように放熱基板14上に配置されており、LDチップ11の上方に1つ以上の補正レンズ16を保持している。これらの補正レンズ16は、上述の発光側光学系5に含まれている。LDチップ11内の発光部2から発光された光は、これらの補正レンズ16により補正された後、上述の被写体Sに照射される。図3のAは、一例として、補正レンズ保持部15に保持された2つの補正レンズ16を示している。
【0061】
配線17は、実装基板13の表面、裏面、内部などに設けられており、LDチップ11とLDD基板12とを電気的に接続している。配線17は例えば、実装基板13の表面や裏面に設けられたプリント配線や、実装基板13を貫通するビア配線である。本実施形態の配線17はさらに、放熱基板14の内部または付近を通過している。
【0062】
図3のBは、本実施形態の発光装置1aの構造の第2の例を示している。この例の発光装置1aは、第1の例の発光装置1aと同じ構成要素を備えているが、配線17の代わりにバンプ18を備えている。
【0063】
図3のBでは、放熱基板14上にLDD基板12が配置されており、LDD基板12上にLDチップ11が配置されている。このようにLDチップ11をLDD基板12上に配置することにより、第1の例の場合に比べて、実装基板13のサイズを小型化することが可能となる。図3のBでは、LDチップ11が、LDD基板12上にバンプ18を介して配置されており、バンプ18によりLDD基板12と電気的に接続されている。バンプ18は例えば、金(Au)などの金属で形成されている。
【0064】
以下、本実施形態の発光装置1aについて、図3のBに示す第2の例の構造を有しているものとして説明する。ただし、以下の説明は、第2の例に特有の構造についての説明を除き、第1の例の構造を有する発光装置1aにも適用可能である。
【0065】
図4は、図3のBに示す発光装置1aの構造を示す断面図である。
【0066】
図4は、発光装置1a内のLDチップ11とLDD基板12の断面を示している。図4に示すように、LDチップ11は、基板21と、積層膜22と、複数の発光素子23と、複数のアノード電極24と、カソード電極25とを備えており、LDD基板12は、基板31と、複数の接続パッド32とを備えている。図4に示す発光素子23は、上述の発光素子2aの具体例となっている。なお、図4では、後述するレンズ41および反射防止膜42の図示が省略されている(図5を参照)。
【0067】
基板21は例えば、GaAs(ガリウムヒ素)基板などの化合物半導体基板である。図4は、-Z方向を向いている基板21の表面S1と、+Z方向を向いている基板21の裏面S2とを示している。図4に示す表面S1および裏面S2は、Z方向に垂直である。図4では、表面S1が基板21の下面となっており、裏面S2が基板21の上面となっている。基板21の表面S1および裏面S2はそれぞれ、本開示の基板の第1面および第2面の例である。
【0068】
積層膜22は、基板21の表面S1に積層された複数の層を含んでいる。これらの層の例は、n型半導体層、活性層、p型半導体層、および光反射層や、光の射出窓を有する絶縁層などである。積層膜22は、-Z方向に突出した複数のポスト部Pを含んでいる。これらのポスト部Pの一部が、複数の発光素子23となっている。
【0069】
発光素子23は、積層膜22の一部として、基板21の表面S1に設けられている。本実施形態の発光素子23は、VCSEL構造を有し、光を+Z方向に出射する。発光素子23から出射された光は、図4に示すように、基板21の表面S1から裏面S2へと基板21内を透過し、基板21から上述の補正レンズ16に入射する。このように、本実施形態のLDチップ11は、裏面出射型のVCSELチップとなっている。発光素子23は、メサ部とも呼ばれる。
【0070】
各アノード電極24は、対応する発光素子23の下面に形成されている。カソード電極25は、発光素子23以外のポスト部Pの下面および側面と、ポスト部P間にある積層膜22の下面とに、連続的に形成されている。よって、本実施形態のLDチップ11は、複数のアノード電極24と、1つのカソード電極25とを備えている。各発光素子23は、対応するアノード電極24と当該カソード電極25との間に電流が流れることで光を出射する。
【0071】
上述のように、LDチップ11は、LDD基板12上にバンプ18を介して配置されており、バンプ18によりLDD基板12と電気的に接続されている。具体的には、LDD基板12に含まれる基板31上に接続パッド32が形成され、接続パッド32上にバンプ18を介してポスト部Pが配置されている。各ポスト部Pは、アノード電極24またはカソード電極25を介してバンプ18上に配置されている。基板31は例えば、Si(シリコン)基板などの半導体基板である。接続パッド32は例えば、銅(Cu)などの金属で形成されている。
【0072】
LDD基板12は、上述のように、LDチップ11内の発光部2を駆動する駆動部3を含んでいる。図4は、駆動部3内の複数のスイッチSWを模式的に示している。各スイッチSWは、バンプ18を介して、対応する発光素子23と電気的に接続されている。本実施形態の駆動部3は、これらのスイッチSWを個々のスイッチSWごとに制御(オン・オフ)することができる。よって、駆動部3は、複数の発光素子23を個々の発光素子23ごとに駆動させることができる。これにより、例えば測距に必要な発光素子23のみを発光させるなど、発光部2から出射される光を精密に制御することが可能となる。このような発光素子23の個別制御は、LDD基板12をLDチップ11の下方に配置することにより、各発光素子23を対応するスイッチSWと電気的に接続しやすくなったことで実現可能となっている。
【0073】
図5は、第1実施形態の発光装置1aの構造を示す断面図と平面図である。
【0074】
図5のAは、図4と同様に、発光装置1a内のLDチップ11とLDD基板12の断面を示している。図5のAに示すように、LDチップ11は、基板21と、積層膜22と、複数の発光素子23と、複数のアノード電極24と、カソード電極25とを備えており、LDD基板12は、基板31と、複数の接続パッド32とを備えている。ただし、図5のAでは、アノード電極24、カソード電極25、および接続パッド32の図示が省略されている。
【0075】
図5のAでは、基板21が、-Z方向を向いている表面S1と、+Z方向を向いている裏面S2と、表面S1と裏面S2との間の複数の側面S3とを有している。これらの側面S3は、図5のAではZ方向に平行となっているが、Z方向に対し傾いていてもよい。すなわち、これらの側面S3はテーパー形状を有していてもよい。本実施形態の基板21の形状は、直方体に近い六面体となっており、本実施形態の基板21は、4つの側面S3を有している。基板21の表面S1、裏面S2、および側面S3はそれぞれ、本開示の基板の第1面、第2面、および第3面の例である。
【0076】
本実施形態のLDチップ11は、基板21の表面S1に複数の発光素子23を備えると共に、基板21の裏面S2に複数のレンズ41と反射防止膜(AR膜)42とを備えている。本実施形態の反射防止膜42は、基板21の側面S3にも形成されており、基板21の裏面S2および側面S3に連続的に設けられている。反射防止膜42は、本開示の膜の例である。
【0077】
レンズ41は、発光素子23と同様に、2次元アレイ状に配置されている。本実施形態のレンズ41は、発光素子23と1対1で対応しており、レンズ41の各々が、1つの発光素子23の+Z方向に配置されている。また、本実施形態のレンズ41は、図5のAに示すように、基板21の裏面S2に基板21の一部として設けられている。具体的には、本実施形態のレンズ41は凸レンズであり、基板21の裏面S2を凸形状にエッチング加工することで、基板21の一部として形成されている。本実施形態によれば、基板21のエッチング加工によりレンズ41を形成することで、レンズ41を簡単に形成することができる。なお、凸レンズ以外のレンズ41の例については、後述する。
【0078】
反射防止膜42は、レンズ41を覆うように基板21の裏面S2に形成されている。本実施形態の反射防止膜42は、基板21の側面S3には形成されているが、基板21の表面S1には形成されていない。そのため、本実施形態の反射防止膜42は、発光素子23に接していない。反射防止膜42は例えば、基板21の内部からレンズ41に入射した光が、基板21の内部へと反射されることを防止する機能を有している。反射防止膜42は例えば、Si(シリコン)元素を含む膜である。反射防止膜42は、1つの膜のみで形成されていてもよいし、2つ以上の膜で形成されていてもよい。本実施形態の反射防止膜42は、基板21の裏面S2および側面S3に順に積層されたSiN膜(窒化シリコン膜)およびSiO膜(酸化シリコン膜)を含む積層膜となっている。反射防止膜42は、本実施形態では均一な厚さを有しているが、不均一な厚さを有していてもよい。
【0079】
上記複数の発光素子23から出射された光は、基板21の表面S1から裏面S2へと基板21内を透過し、上記複数のレンズ41に入射する。本実施形態では、各発光素子23から出射された光が、対応する1つのレンズ41に入射する。これにより、上記複数の発光素子23から出射された光を、個々のレンズ41ごとに成形することが可能となる。上記複数のレンズ41を通過した光は、補正レンズ16(図3)を通過して、被写体S(図1)に照射される。なお、発光素子23とレンズ41が1対1に対応しない場合の例については、後述する。
【0080】
本実施形態の基板21の側面S3は、基板21の個片化により形成される。例えば、RIE(Reactive Ion Etching)などのドライエッチングにより基板21を個片化すると、テーパー形状の側面S3が形成されるのが一般的である。基板21を個片化すると、基板21の側面S3に堆積物が付着するおそれや、基板21の側面S3に酸化物が生成されるおそれがある。これら堆積物や酸化物が基板21の側面S3から脱落すると、ダストの原因となるおそれがある。そこで、本実施形態の反射防止膜42は、基板21の個片化後に基板21の裏面S2および側面S3を覆うように形成される。これにより、堆積物を反射防止膜42で覆うことで堆積物の脱落を抑制することや、側面S3を酸化前に反射防止膜42で覆うことで酸化物の生成を抑制することが可能となる。このような効果のさらなる詳細については、後述する。
【0081】
図5のBは、基板21の裏面S2におけるレンズ41のレイアウトを示している。図5のAは、図5のBに示すA-A’線に沿った断面を示している。図5のBでは、レンズ41が、基板21の裏面S2に2次元アレイ状に配置されており、具体的には、正方格子状に配置されている。なお、レンズ41は、正方格子状の配置以外の態様で配置されていてもよいし、2次元アレイ状の配置以外の態様で配置されていてもよい。
【0082】
図6は、第1実施形態の発光装置1aの基板21の構造を示す平面図と断面図である。図6のAは、ダイシング(個片化)される前の基板21の構造を示す平面図であり、図6のBは、図6のAに示すA-A’線に沿った断面図である。
【0083】
本実施形態の基板21は、図6のAおよびBに示すように、複数のチップ領域51と、スクライブ領域(ダイシング領域)52とを備えている。各チップ領域51は、基板21のダイシング後に1つのLDチップ11となる領域である。スクライブ領域52は、基板21のダイシング時にカットされる領域である。本実施形態の基板21は、スクライブ領域52においてカットされることで、複数のチップ領域51に分割される。その結果、各LDチップ11にて基板21の側面S3が形成される。
【0084】
各チップ領域51は、長方形(または正方形)の平面形状を有しており、レンズ領域51aと、周辺領域51bとを含んでいる。レンズ領域51aは、2次元アレイ状に配置された複数のレンズ41を含んでいる(図6のB)。周辺領域51bは、レンズ領域51aを環状に包囲している。
【0085】
スクライブ領域52は、上記複数のチップ領域51を個々のチップ領域51ごとに環状に包囲する平面形状を有しており、X方向に延びる複数のスクライブライン(ダイシングライン)52aと、Y方向に延びる複数のスクライブライン52bとを含んでいる。本実施形態の基板21は、これらのスクライブライン52a、52bをドライエッチング(またはダイサー)によりカットすることで、複数のチップ領域51に分割される。その後、基板21の裏面S2および側面S3に反射防止膜42(図5を参照)が形成される。符号Lは、スクライブライン52bを通過する平面を示している。
【0086】
(3)第1実施形態と比較例との比較
次に、図7図13を参照して、第1実施形態の発光装置1aと比較例の発光装置1aとを比較する。比較例の発光装置1aの説明では、本実施形態の発光装置1aの説明で使用した符号と同じ符号を使用する。
【0087】
図7図9は、比較例の発光装置1aの製造方法を示す断面図である。
【0088】
まず、LDチップ11用の基板21を用意し、基板21の表面S1に積層膜22、複数の発光素子23、複数のアノード電極24、およびカソード電極25(図示せず)を形成し、基板21の裏面S2に複数のレンズ41を形成する(図7のA)。この工程では、これらの発光素子23を含む複数のポスト部Pが、基板21の表面S1に形成される。次に、支持基板61上に接着層62を介して基板21を載置する(図7のA)。その結果、基板21が接着層62により支持基板61に接着される。図7のAでは、基板21の表面S1が支持基板61側を向き、基板21の裏面S2が支持基板61の反対側を向いている。
【0089】
次に、基板21の裏面S2に反射防止膜42を形成する(図7のB)。その結果、レンズ41が反射防止膜42により覆われる。図7のBでは、発光素子23が接着層62により覆われているため、反射防止膜42が発光素子23に接していない。
【0090】
次に、基板21の裏面S2に、反射防止膜42を介してレジスト膜63を形成する(図7のC)。レジスト膜63は、反射防止膜42にフォトレジスト材料を塗布することで形成される。
【0091】
次に、フォトマスク64を用いてレジスト膜63を露光する(図8のA)。その結果、レジスト膜63内に複数の非露光領域63aおよび露光領域63bが形成される。非露光領域63aはチップ領域51を形成するために形成され、露光領域63bはスクライブ領域52を形成するために形成される。
【0092】
次に、レジスト膜63を現像する(図8のB)。その結果、露光領域63bが除去され、非露光領域63aが残存する。すなわち、レジスト膜63が、非露光領域63aの形状にパターニングされる。
【0093】
次に、レジスト膜63を用いて、RIEなどのドライエッチングにより、反射防止膜42、基板21、および積層膜22を加工する(図8のC)。その結果、溝Tが、反射防止膜42、基板21、および積層膜22を貫通するように形成され、基板21から複数のLDチップ11が形成される。さらには、各LDチップ11にて基板21の側面S3が形成される。図8のCでは、基板21のドライエッチングに起因して、側面S3がテーパー形状となっている。よって、表面S1付近の溝Tの幅は、裏面S2付近の溝Tの幅よりも狭くなっている。
【0094】
図8のCに示すドライエッチングにより、基板21が複数のLDチップ11に個片化される。ただし、これらのLDチップ11はまだ、支持基板61を介して互いに連結されている。基板21からこれらのLDチップ11への個片化は、図9のA~図9のCに示す工程を経て完了する。
【0095】
次に、レジスト膜63を除去する(図9のA)その結果、反射防止膜42が大気中に露出する。
【0096】
次に、接着層66が設けられたダイシングテープ65を用意し、ダイシングテープ65を接着層66と反射防止膜42とを介して基板21に貼りつける(図9のB)。その結果、基板21が接着層66によりダイシングテープ65に接着される。この工程をテープマウントと呼ぶ。図9のBでは、基板21の裏面S2がダイシングテープ65側を向き、基板21の表面S1がダイシングテープ65の反対側を向いている。
【0097】
次に、基板21およびダイシングテープ65を支持基板61から剥がし、基板21およびダイシングテープ65の向きを上下方向に反転させ、ダイシングテープ65を引っ張って延ばす(図9のC)。その結果、基板21から複数のLDチップ11への個片化が完了する。この工程をデボンドと呼ぶ。
【0098】
その後、これらのLDチップ11がダイシングテープ65から剥がされ、各LDチップ11がLDD基板12上に搭載される。このようにして、比較例の発光装置1aが製造される。
【0099】
図10図12は、第1実施形態の発光装置1aの製造方法を示す断面図である。
【0100】
まず、LDチップ11用の基板21を用意し、基板21の表面S1に積層膜22、複数の発光素子23、複数のアノード電極24、およびカソード電極25(図示せず)を形成し、基板21の裏面S2に複数のレンズ41を形成する(図10のA)。この工程では、これらの発光素子23を含む複数のポスト部Pが、基板21の表面S1に形成される。レンズ41は例えば、平面視で5μmの直径を有する凸レンズである。次に、支持基板61上に接着層62を介して基板21を載置する(図10のA)。その結果、基板21が接着層62により支持基板61に接着される。図10のAでは、基板21の表面S1が支持基板61側を向き、基板21の裏面S2が支持基板61の反対側を向いている。
【0101】
次に、基板21の裏面S2に、レジスト膜63を形成する(図10のB)。レジスト膜63は例えば、基板21の裏面S2に、スピンコートによりフォトレジスト材料を塗布することで形成される。
【0102】
次に、フォトマスク64を用いてレジスト膜63を露光する(図10のC)。その結果、レジスト膜63内に複数の非露光領域63aおよび露光領域63bが形成される。非露光領域63aはチップ領域51を形成するために形成され、露光領域63bはスクライブ領域52を形成するために形成される。露光領域63bの幅は、例えば40μmである。
【0103】
次に、レジスト膜63を現像する(図11のA)。その結果、露光領域63bが除去され、非露光領域63aが残存する。すなわち、レジスト膜63が、非露光領域63aの形状にパターニングされる。
【0104】
次に、レジスト膜63を用いて、RIEなどのドライエッチングにより、基板21および積層膜22を加工する(図11のB)。その結果、溝Tが、基板21および積層膜22を貫通するように形成され、基板21から複数のLDチップ11が形成される。さらには、各LDチップ11にて基板21の側面S3が形成される。図11のBでは、基板21のドライエッチングに起因して、側面S3がテーパー形状となっている。よって、表面S1付近の溝Tの幅は、裏面S2付近の溝Tの幅よりも狭くなっている。本実施形態では、基板21および積層膜22をプラズマエッチングにより加工することで、所定の深さの溝Tを形成する。本実施形態の基板21は、厚さ100μmのGaAs基板である。
【0105】
図11のBに示すドライエッチングにより、基板21が複数のLDチップ11に個片化される。ただし、これらのLDチップ11はまだ、支持基板61を介して互いに連結されている。基板21からこれらのLDチップ11への個片化は、図11のC~図12のCに示す工程を経て完了する。
【0106】
次に、レジスト膜63を除去する(図11のC)その結果、基板21の裏面S2が大気中に露出する。レジスト膜63は例えば、薬液洗浄により除去される。
【0107】
次に、基板21の裏面S2に反射防止膜42を形成する(図12のA)。その結果、レンズ41が反射防止膜42により覆われる。図12のAでは、発光素子23が接着層62により覆われているため、反射防止膜42が発光素子23に接していない。一方、各LDチップ11の基板21の側面S3は露出しているため、本実施形態の反射防止膜42は、各LDチップ11の基板21の側面S3にも形成され、さらには、各LDチップ11の積層膜22の側面や、溝T内の接着層62の上面にも形成される。本実施形態の反射防止膜42は、SiN膜およびSiO膜を順に含む積層膜であり、スパッタリングにより各LDチップ11の基板21の裏面S2および側面S3に連続的に形成される。
【0108】
次に、接着層66が設けられたダイシングテープ65を用意し、ダイシングテープ65を接着層66と反射防止膜42とを介して基板21に貼りつける(図12のB)。その結果、基板21が接着層66によりダイシングテープ65に接着される。この工程をテープマウントと呼ぶ。図12のBでは、基板21の裏面S2がダイシングテープ65側を向き、基板21の表面S1がダイシングテープ65の反対側を向いている。
【0109】
次に、基板21およびダイシングテープ65を支持基板61から剥がし、基板21およびダイシングテープ65の向きを上下方向に反転させ、ダイシングテープ65を引っ張って延ばす(図12のC)。その結果、基板21から複数のLDチップ11への個片化が完了する。この工程をデボンドと呼ぶ。各LDチップ11に付着した接着剤(接着層62、66)は例えば、薬液洗浄により除去される。
【0110】
その後、これらのLDチップ11がダイシングテープ65から剥がされ、各LDチップ11がLDD基板12上に搭載される。このようにして、本実施形態の発光装置1aが製造される。
【0111】
図13は、第1実施形態と比較例とを比較するための断面図である。
【0112】
図13のAは、比較例の発光装置1aの製造方法を示しており、具体的には、図9のAに示す工程を示している。基板21を個片化すると、基板21の側面S3に堆積物67が付着するおそれや、基板21の側面S3に酸化物68が生成されるおそれがある。堆積物67は例えば、基板21を個片化する際のドライエッチングに起因して生じる。一方、酸化物68は例えば、基板21の側面が酸化されることで生じる。基板21がGaAs基板の場合、酸化物68は例えば、GaAs基板中のAs原子が酸化して生成されるAs酸化物である。堆積物67や酸化物68が基板21の側面S3から脱落すると、ダストの原因となるおそれがある。なお、図13のAに示す基板21の側面S3は、非テーパー形状となっているが、テーパー形状となっていてもよい。
【0113】
図13のBは、本実施形態の発光装置1aの製造方法を示しており、具体的には、図12のAに示す工程を示している。本実施形態の反射防止膜42は、基板21の個片化後に基板21の裏面S2および側面S3を覆うように形成される。そのため、基板21の側面S3に堆積物67が付着しても、付着した堆積物67が反射防止膜42で覆われる。これにより、付着した堆積物67が脱落することを抑制することが可能となる。さらに、基板21の側面S3は、酸化前に反射防止膜42で覆われる。これにより、基板21の側面S3に酸化物68が生成されることを抑制することが可能となり、その結果、酸化物68の脱落を抑制することが可能となる。なお、基板21の側面S3に酸化物68が生成された場合には、酸化物68が反射防止膜42で覆われることで、酸化物68の脱落を抑制することが可能となる。このように、本実施形態によれば、個片化後の基板21を好適に保護することが可能となる。
【0114】
図14および図15は、第1実施形態の発光装置1aの製造方法を示す断面図である。
【0115】
図14のAは、図12のCに示す工程と同じ工程を示している。まず、各LDチップ11をダイシングテープ65からピックアップする(図14のB)。その結果、各LDチップ11がダイシングテープ65から剥がされる。次に、ピックアップされたLDチップ11の向きを上下方向に反転させ、LDチップ11をLDD基板12へと搬送する(図14のC)。図14のCに示すLDD基板12は、基板31と、基板31の上面に設けられた複数の接続パッド32と、基板31の上面に設けられた複数のボンディングパッド71とを含んでいる。図14のCはさらに、これら接続パッド32上に設けられた複数のバンプ18を示している。
【0116】
次に、LDチップ11をLDD基板12上に搭載し、LDチップ11の各アノード電極24を、LDD基板12の対応する接続パッド32に、バンプ18により電気的に接続する(図15のA)。同様に、LDチップ11のカソード電極25(図示せず)が、LDD基板12の対応する接続パッド32に、バンプ18により電気的に接続される。
【0117】
次に、LDチップ11とLDD基板12との間の隙間に、アンダーフィル材72を埋め込む(図15のB)。その結果、バンプ18、アノード電極24、カソード電極25、接続パッド32などが、アンダーフィル材72により保護される。図15のBに示すアンダーフィル材72は、反射防止膜42を介して基板21の側面S3や積層膜22の側面にも形成されており、反射防止膜42に接している。アンダーフィル材72は例えば、樹脂膜などの絶縁膜である。
【0118】
次に、各ボンディングパッド71に、半田73によりボンディングワイヤ74を電気的に接続する(図15のC)。ボンディングワイヤ74は例えば、本実施形態の発光装置1aを他の装置と電気的に接続するために使用される。このようにして、本実施形態の発光装置1aが製造される。
【0119】
図16は、第1実施形態の発光装置1aの製造方法の詳細を示す断面図である。
【0120】
図16のAは、図15のCに示す工程と同じ工程を示している。図16のAは、LDD基板12上に生じた異物75を示している。異物75は例えば、基板21を加工する際に生じた基板21の破片である。このような異物75が、ある導体(または半導体)と別の導体(または半導体)とに接すると、これらの導体をショートさせてしまう。例えば、異物75が基板21と半田73とに接すると、基板21と半田73とをショートさせてしまう。しかしながら、本実施形態の基板21の裏面S2および側面S3は、反射防止膜42で覆われている。よって、基板21と半田73などの導体(または半導体)とのショートを、反射防止膜42により抑制することが可能となる(図16のAを参照)。
【0121】
図16のBは、図14のAに示す工程と同じ工程を示している。図16のBは、反射防止膜42の一部である「ばり76」を示している。ばり76は例えば、図12のAに示す工程で接着層62の上面に形成された反射防止膜42に起因して生じる。ばり76は、図14のCに示す工程でばり76を純水で洗浄することで、各LDチップ11から除去することが可能である。この場合、図12のCに示す工程では、接着剤を除去するための薬液洗浄と、ばり76を除去するための純水洗浄とが行われる。
【0122】
(4)第1実施形態の変形例
図17は、第1実施形態の発光装置1aの構造(図17のA)と、第1実施形態の変形例の発光装置1aの構造(図17のB)とを示す断面図である。
【0123】
本実施形態の反射防止膜42は、図17のAに示すように、基板21の裏面S2および側面S3に形成された膜42aと、基板21の裏面S2および側面S3に膜42aを介して形成された膜42bとを含んでいる。膜42aは例えば、SiN膜である。膜42bは例えば、SiO膜である。一方、基板21は例えば、GaAs基板である。本実施形態では、基板21は非Si系の基板であるが、反射防止膜42はSi系の膜である。膜42aおよび膜42bはそれぞれ、本開示の第1膜および第2膜の例である。
【0124】
反射防止膜42は例えば、基板21の内部からレンズ41に入射した光が、基板21の内部へと反射されることを防止する機能を有している。反射防止膜42は、本実施形態ではSiNおよびSiOにより形成されているが、その他の材料により形成されていてもよい。
【0125】
図17のBは、第1実施形態の変形例の発光装置1aの構造を示している。本変形例の発光装置1aは、基板21の裏面S2を覆う反射防止膜42と、基板21の側面S3を覆う別の膜77とを備えている。本変形例の反射防止膜42は例えば、SiN膜およびSiO膜を含む積層膜である。一方、膜77は、反射防止膜として機能してもよいし、反射防止膜としては機能しなくてもよい。また、膜77の膜厚T2は、反射防止膜42の膜厚T1と同じでもよいし、反射防止膜42の膜厚T1と異なっていてもよい。膜77は例えば、SiO膜などの絶縁膜、またはSi膜などの半導体膜である。本変化例の反射防止膜42および膜77は、本開示の膜の例である。
【0126】
膜77は、基板21の個片化後に形成される。一方、本変形例の反射防止膜42は、基板21の個片化前に形成されてもよいし、基板21の個片化後に形成されてもよい。さらに、本変形例の反射防止膜42は、膜77の形成前に形成されてもよいし、膜77の形成後に形成されてもよい。
【0127】
本変形例によれば、基板21の側面S3を膜77で覆うことで、堆積物の脱落や酸化物の生成を抑制することが可能となる。このように、基板21の側面S3は、反射防止膜42により保護してもよいし、別の膜77により保護してもよい。ただし、基板21の側面S3を反射防止膜42により保護することには、膜77を形成する工程を省略できるという利点がある。一方、基板21の側面S3を膜77により保護することには、膜77の材料を自由に選択できるという利点がある。
【0128】
図18は、第1実施形態の別の変形例の発光装置1aの構造を示す断面図である。
【0129】
本変形例の発光装置1aは、本実施形態の発光装置1aの構成要素に加えて、半導体層81を備えている。半導体層81は、基板21の裏面S2に形成されている。本変形例の発光素子23およびレンズ41はそれぞれ、基板21の表面S1および裏面S2に形成されているが、本変形例のレンズ41は、基板21の一部ではなく、半導体層81の一部として形成されている。また、本変形例の反射防止膜42は、半導体層81の上面、半導体層81の側面、基板21の側面S3、および積層膜22の側面に形成されており、レンズ41を覆っている。半導体層81は例えば、Si層である。
【0130】
以上のように、本実施形態の発光装置1aは、基板21の側面S3に設けられた反射防止膜42を備えている。よって、本実施形態によれば、個片化後の基板21を反射防止膜42により好適に保護することが可能となる。例えば、基板21の側面S3を反射防止膜42で覆うことで、基板21の側面S3からの堆積物の脱落や、基板21の側面S3での酸化物の生成を抑制することが可能となる。
【0131】
(第2実施形態)
図19は、第2実施形態の発光装置1aの基板21の構造の例を示す断面図である。図19のA~図19のDの各々は、図5のAと同様に、発光装置1aの基板21等の断面を示しているが、反射防止膜42等の図示は省略されている。
【0132】
図19のAの基板21は、図5のAの基板21と同様に、発光素子23と1対1で対応する凸レンズである複数のレンズ41を備えている。同様に、図19のB~図19のDの各々の基板21は、発光素子23と1対1で対応する複数のレンズ41を備えている。ただし、図19のBの基板21は、凹レンズを備えており、図19のCの基板21は、互いに形状(曲率)の異なる凸レンズを備えており、図19のDの基板21は、凸レンズと凹レンズの両方を備えている。このように、本実施形態の各レンズ41は、凸レンズでも凹レンズでもよい。また、本実施形態の各レンズ41は、後述する第3実施形態のように、凸レンズ以外の態様で凸型の形状を有するレンズでもよいし、凹レンズ以外の態様で凹型の形状を有するレンズでもよい。
【0133】
(第3実施形態)
図20は、第3実施形態の発光装置1aの基板21の構造の例を示す断面図である。図20のA~図20のDの各々は、図5のAと同様に、発光装置1aの基板21等の断面を示しているが、反射防止膜42等の図示は省略されている。
【0134】
図20のAの基板21では、発光素子23とレンズ41がN:1で対応している(Nは2以上の整数)。よって、図20のAでは、N個の発光素子23から出射された光が、1個のレンズ41に入射する。一方、図20のBの基板21では、発光素子23とレンズ41が1:Nで対応している。よって、図20のBでは、1個の発光素子23から出射された光が、N個のレンズ41に入射する。このように、本実施形態の各レンズ41は、発光素子23と1:1で対応していなくてもよい。
【0135】
図20のCの基板21では、発光素子23とレンズ41が1:1で対応している。ただし、図20のCの基板21は、凸型の形状のフレネルレンズを備えている。また、図20のDの基板21では、発光素子23とレンズ41が1:1で対応している。ただし、図20のDの基板21は、凸型の形状のバイナリレンズと、フラットレンズとを備えている。このように、本実施形態の各レンズ41は、凸レンズや凹レンズ以外のレンズでもよい。
【0136】
なお、第1~第3実施形態の発光装置1aは、測距装置1の光源として使用されているが、その他の態様にて使用されてもよい。例えば、これらの実施形態の発光装置1aは、プリンタなどの光学機器の光源として使用されてもよいし、照明装置として使用されてもよい。
【0137】
以上、本開示の実施形態について説明したが、これらの実施形態は、本開示の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の変更を加えて実施してもよい。例えば、2つ以上の実施形態を組み合わせて実施してもよい。
【0138】
なお、本開示は、以下のような構成を取ることもできる。
【0139】
(1)
基板と、
前記基板の第1面に設けられた発光素子と、
前記基板の第2面に設けられたレンズと、
前記基板の前記第1面と前記第2面との間の第3面に設けられた膜と、
を備える発光装置。
【0140】
(2)
前記膜は、前記基板の前記第2面および前記第3面に設けられている、(1)に記載の発光装置。
【0141】
(3)
前記膜は、前記レンズを覆っている、(2)に記載の発光装置。
【0142】
(4)
前記膜は、前記発光素子に接していない、(1)に記載の発光装置。
【0143】
(5)
前記膜は、反射防止膜である、(1)に記載の発光装置。
【0144】
(6)
前記膜は、シリコンを含む、(1)に記載の発光装置。
【0145】
(7)
前記膜は、前記基板の前記第3面に設けられた第1膜と、前記基板の前記第3面に前記第1膜を介して設けられた第2膜とを含む、(1)に記載の発光装置。
【0146】
(8)
前記第1膜は、シリコンと窒素とを含み、前記第2膜は、シリコンと酸素とを含む、(7)に記載の発光装置。
【0147】
(9)
前記基板は、化合物半導体基板である、(1)に記載の発光装置。
【0148】
(10)
前記基板は、ガリウムとヒ素とを含む、(9)に記載の発光装置。
【0149】
(11)
前記基板の前記第3面は、テーパー形状を有する、(1)に記載の発光装置。
【0150】
(12)
基板の第1面に発光素子を形成し、
前記基板の第2面にレンズを形成し、
前記基板を個片化し、
前記基板の個片化後に、前記基板の前記第1面と前記第2面との間の第3面に膜を形成する、
ことを含む発光装置の製造方法。
【0151】
(13)
前記膜は、前記基板の個片化後に、前記基板の前記第2面および前記第3面に形成される、(12)に記載の発光装置の製造方法。
【0152】
(14)
前記膜は、前記レンズを覆うように形成される、(13)に記載の発光装置の製造方法。
【0153】
(15)
前記膜は、前記発光素子に接しないように形成される、(12)に記載の発光装置の製造方法。
【0154】
(16)
前記膜は、反射防止膜である、(12)に記載の発光装置の製造方法。
【0155】
(17)
前記膜は、前記基板の前記第3面に形成された第1膜と、前記基板の前記第3面に前記第1膜を介して形成された第2膜とを含むように形成される、(12)に記載の発光装置の製造方法。
【0156】
(18)
前記基板は、化合物半導体基板である、(12)に記載の発光装置の製造方法。
【0157】
(19)
前記基板の前記第3面は、前記基板の個片化により形成される、(12)に記載の発光装置の製造方法。
【0158】
(20)
前記基板の個片化は、ドライエッチングにより行われる、(12)に記載の発光装置の製造方法。
【符号の説明】
【0159】
1:測距装置、1a:発光装置、2:発光部、2a:発光素子、3:駆動部、
4:電源回路、5:発光側光学系、6:受光側光学系、7:受光部、
8:信号処理部、9:制御部、9a:測距部、10:温度検出部、
11:LDチップ、12:LDD基板、13:実装基板、14:放熱基板、
15:補正レンズ保持部、16:補正レンズ、17:配線、18:バンプ、
21:基板、22:積層膜、23:発光素子、
24:アノード電極、25:カソード電極、
31:基板、32:接続パッド、
41:レンズ、42:反射防止膜、42a:膜、42b:膜、
51:チップ領域、51a:レンズ領域、51b:周辺領域、
52:スクライブ領域、52a:スクライブライン、52b:スクライブライン、
61:支持基板、62:接着層、63:レジスト膜、
63a:非露光領域、63b:露光領域、64:フォトマスク、
65:ダイシングテープ、66:接着層、67:堆積物、68:酸化物、
71:ボンディングパッド、72:アンダーフィル材、73:半田、
74:ボンディングワイヤ、75:異物、76:ばり、77:膜、
81:半導体層
図1
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