(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016745
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/57 20200101AFI20240131BHJP
D06F 33/47 20200101ALI20240131BHJP
D06F 33/74 20200101ALI20240131BHJP
【FI】
D06F33/57
D06F33/47
D06F33/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119081
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(74)【代理人】
【識別番号】100170922
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 誠
(72)【発明者】
【氏名】田島 登
(72)【発明者】
【氏名】八田 聡
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA05
3B167AE02
3B167AE04
3B167AE05
3B167BA28
3B167BA42
3B167HA22
3B167HA32
3B167HA34
3B167JA03
3B167KA02
3B167KA18
3B167KA23
3B167KB16
3B167LA23
3B167LC02
3B167LD12
3B167LE05
3B167LF11
3B167LF28
3B167LG05
3B167LG08
3B167LG11
(57)【要約】
【課題】パック型洗剤がドアパッキン内で溶け残ることを防止でき得るドラム式洗濯機を提供する。
【解決手段】ドラム式洗濯機1は、筐体10内に配置された外槽20と、筐体10の投入口11と外槽20開口部20aとの間に設けられた環状のドアパッキン24と、外槽20内に配置されたドラム23と、ドラム23を回転させる駆動モータ30と、外槽20内に給水を行う給水装置50と、制御部と、を備える。制御部は、洗い工程において、給水装置50により外槽20内へ給水を行い、当該給水の後に、駆動モータ30によりドラム23を第1回転数で回転させ、第1回転数でドラム23を回転させた後に、ドラム式洗濯機1に投入されたパック型洗剤が溶解不足であるか否かを判定し、パック型洗剤が溶解不足であると判定した場合に、駆動モータ30によりドラム23を第1回転数よりも高い第2回転数で回転させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性のパックに洗剤が封入された構成を有するパック型洗剤が使用可能なドラム式洗濯機において、
筐体と、
前記筐体の前面に設けられた投入口と、
前記投入口を覆うドアと、
前記筐体内に配置された外槽と、
前記外槽の前面に設けられた開口部と、
前記投入口と前記開口部との間に設けられた環状のドアパッキンと、
前記外槽内に配置され、洗濯物が収容されるドラムと、
前記ドラムを回転させる駆動モータと、
前記外槽内に給水を行う給水装置と、
洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転を実行する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記洗い工程において、
前記給水装置により前記外槽内へ給水を行い、
前記給水の後に、前記駆動モータにより前記ドラムを第1回転数で回転させ、
前記第1回転数で前記ドラムを回転させた後に、前記ドラム式洗濯機に投入された前記パック型洗剤が溶解不足であるか否かを判定し、
前記パック型洗剤が溶解不足であると判定した場合に、前記駆動モータにより前記ドラムを前記第1回転数よりも高い第2回転数で回転させる、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載のドラム洗濯機において、
前記給水装置は、前記ドアに向けて水を放出させる放水部を含み、
前記制御部は、前記パック型洗剤が溶解不足であると判定した場合に、前記ドラムを前記第2回転数で回転させるとともに、前記放水部から水を放出させる、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項3】
請求項1または2に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、
前記第2回転数で前記ドラムを回転させた後に、前記パック型洗剤が溶解不足であるか否かを判定し、
前記パック型洗剤が溶解不足であると判定したことに基づいて、前記パック型洗剤の溶解不足を知らせる報知を報知部に行わせる、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項4】
請求項3に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、
前記パック型洗剤の溶解不足を知らせる報知を前記報知部に行わせた後に、前記駆動モータにより前記ドラムを第3回転数で回転させ、
前記ドラムを前記第3回転数で回転させている間に、前記外槽内の水が前記洗剤を含んでいるか否かを判定し、
前記外槽内の水が前記洗剤を含んでいないと判定した場合に、前記パック型洗剤の投入忘れを知らせる報知を前記報知部に行わせる、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項5】
請求項1または2に記載のドラム式洗濯機において、
前記パック型洗剤を使用する設定を行うための操作を受け付ける操作部を、さらに備え、
前記制御部は、前記パック型洗剤を使用する設定が行われている場合に、前記パック型洗剤が溶解不足であるか否かの判定を実行する、
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式洗濯機に関する。かかるドラム式洗濯機は、洗濯から乾燥まで連続的に行うものであっても良いし、洗濯は行うが乾燥は行わないものであっても良い。
【背景技術】
【0002】
近年、水溶性のパックに洗剤が封入された構成を有するパック型洗剤であるジェルボール(登録商標)が、洗濯機で使用されるようになってきている。
【0003】
特許文献1には、ジェルボールが保管される保管箱を備え、ジェルボールを使用するための操作が行われた場合に、保管箱内のジェルボールがドラム内に自動投入されるドラム式洗濯機が記載されている。このドラム式洗濯機では、ドラム内の洗濯物の重量が測定された後に、重量に応じた個数のジェルボールがドラム内に投入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ドラム内にジェルボールが投入された際に、ジェルボールが洗濯物の上に載った状態になることがある。このような状態でドラムが回転したとき、ジェルボールが、動いた洗濯物によって前側へと押し出され、外槽の開口部とドアとの間に設けられた環状のドアパッキンの部分に載ってしまう、ということが起こり得る。このような場合、外槽内に溜められた水がジェルボールに接触しにくくなるので、ジェルボールが十分に溶けず、外槽内の水に洗剤が十分に供給されなくなることが懸念される。
【0006】
なお、洗濯物の重量、即ち負荷量が測定された後にジェルボールがドラム内に投入される場合は、外槽内への給水後にドラムが回転を開始した際、上記の問題が起こり得る。一方で、上記特許文献1と違って、ドラム式洗濯機に自動投入の機能がない場合は、ユーザが、ドラム内へ洗濯物を投入した後、負荷量の測定を待たずに、ジェルボールを投入することもある。この場合は、負荷量の測定のためにドラムが回転したときにも、上記の問題が起こり得る。
【0007】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、水溶性のパックに洗剤が封入された構成を有するパック型洗剤が使用された場合に、当該パック型洗剤がドアパッキン内で溶け残ることを防止でき得るドラム式洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の主たる態様は、水溶性のパックに洗剤が封入された構成を有するパック型洗剤が使用可能なドラム式洗濯機に関する。本態様に係るドラム式洗濯機は、筐体と、前記筐体の前面に設けられた投入口と、前記投入口を覆うドアと、前記筐体内に配置された外槽と、前記外槽の前面に設けられた開口部と、前記投入口と前記開口部との間に設けられた環状のドアパッキンと、前記外槽内に配置され、洗濯物が収容されるドラムと、前記ドラムを回転させる駆動モータと、前記外槽内に給水を行う給水装置と、洗い工程、すすぎ工程および脱水工程を含む洗濯運転を実行する制御部と、を備える。ここで、前記制御部は、前記洗い工程において、前記給水装置により前記外槽内へ給水を行い、前記給水の後に、前記駆動モータにより前記ドラムを第1回転数で回転させ、前記第1回転数で前記ドラムを回転させた後に、前記ドラム式洗濯機に投入された前記パック型洗剤が溶解不足であるか否かを判定し、前記パック型洗剤が溶解不足であると判定した場合に、前記駆動モータにより前記ドラムを前記第1回転数よりも高い第2回転数で回転させる。
【0009】
たとえば、制御部は、外槽内の水に含まれる洗剤の濃度に基づいて、パック型洗剤が溶解不足であるか否かを判定する。たとえば、制御部は、導電率センサや濁度センサにより外槽内の水の導電率や濁度を検出し、検出された導電率や濁度によって洗剤濃度を判定する。
【0010】
本態様に係るドラム式洗濯機によれば、パック型洗剤がドアパッキンの部分に載った状態となることにより、パック型洗剤の溶解不足が生じたときには、ドラムが第2回転数で回転し、外槽内の水から大きな水しぶきが立って、多くの水がドアパッキンのパック型洗剤に掛けられる。これにより、パック型洗剤の溶解を促進させることができるので、パック型洗剤がドアパッキン内で溶け残ることを防止できる。
【0011】
本態様に係るドラム洗濯機において、前記給水装置は、前記ドアに向けて水を放出させる放水部を含むような構成とされ得る。この場合、前記制御部は、前記パック型洗剤が溶解不足であると判定した場合に、前記ドラムを前記第2回転数で回転させるとともに、前記放水部から水を放出させるような構成とされ得る。
【0012】
上記の構成によれば、放水部から放水されてドアを伝って流れ落ちた水がドアパッキンを外槽内へと流れる際にパック型洗剤に接触する。これにより、パック型洗剤により多くの水が掛かるため、パック型洗剤が一層溶解しやすくなる。よって、パック型洗剤がドアパッキン内で溶け残ることを一層防止できる。
【0013】
本態様に係るドラム式洗濯機において、前記制御部は、前記第2回転数で前記ドラムを回転させた後に、前記パック型洗剤が溶解不足であるか否かを判定し、前記パック型洗剤が溶解不足であると判定したことに基づいて、前記パック型洗剤の溶解不足を知らせる報知を報知部に行わせるような構成とされ得る。
【0014】
上記の構成によれば、第2回転数でドラムを回転させる動作によってもパック型洗剤の溶解不足が解消しない場合に、パック型洗剤の溶解不足をユーザに知らせることができる。これにより、パック型洗剤をドアパッキンからドラム内へ移すなど、ユーザの手により、パック型洗剤の溶解不足を解消させることが可能となる。
【0015】
上記の構成とされた場合、さらに、前記制御部は、前記パック型洗剤の溶解不足を知らせる報知を前記報知部に行わせた後に、前記駆動モータにより前記ドラムを第3回転数で回転させ、前記ドラムを前記第3回転数で回転させている間に、前記外槽内の水が前記洗剤を含んでいるか否かを判定し、前記外槽内の水が前記洗剤を含んでいないと判定した場合に、前記パック型洗剤の投入忘れを知らせる報知を前記報知部に行わせるような構成とされ得る。
【0016】
このような構成とされれば、パック型洗剤の投入忘れをユーザに知らせることができる。これにより、ユーザは、パック型洗剤をドラム式洗濯機に投入して、洗濯運転を再開できる。
【0017】
本態様に係るドラム式洗濯機において、前記パック型洗剤を使用する設定を行うための操作を受け付ける操作部を、さらに備えるような構成が採られ得る。この場合、前記制御部は、前記パック型洗剤を使用する設定が行われている場合に、前記パック型洗剤が溶解不足であるか否かの判定を実行するような構成とされ得る。
【0018】
たとえば、パック型洗剤を使用する設定は、コース選択ボタンによるパック型洗剤を使用する運転コースの設定であってもよいし、運転コースに関わらずにパック型洗剤を使用する設定であってもよい。後者の設定の場合、コース選択ボタンによる運転コースの設定のための操作と別に、パック型洗剤を使用する設定のための操作が、当該操作のための操作ボタンを用いて行われる。
【0019】
上記の構成によれば、パック型洗剤が溶解不足であるか否かの判定が、パック型洗剤が使用されないときに無駄に行われることを防止できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、水溶性のパックに洗剤が封入された構成を有するパック型洗剤が使用された場合に、当該パック型洗剤がドアパッキン内で溶け残ることを防止でき得るドラム式洗濯機を提供できる。
【0021】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施形態の説明によりさらに明らかとなろう。ただし、以下の実施形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施形態に記載されたものに何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る、ドラム式洗濯機の構成を示す側面断面図である。
【
図2】
図2は、実施の形態に係る、ドラム式洗濯機の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る、パック型洗剤コースの洗い工程で実行される制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【
図4】
図4(a)ないし(b)は、実施の形態に係る、パック型洗剤コースの洗い工程について説明するための図である。
【
図5】
図5は、変更例1に係る、パック型洗剤コースの洗い工程で実行される制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変更例2に係る、パック型洗剤コースの洗い工程で実行される制御部の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のドラム式洗濯機の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、ドラム式洗濯機1の構成を示す側面断面図である。
【0025】
ドラム式洗濯機1は、方形状の筐体10を備える。筐体10の前面には、洗濯物が投入される円形の投入口11が形成される。投入口11は、開閉自在なドア12により覆われる。
【0026】
筐体10内には、外槽20が配置される。外槽20は、複数のダンパー21とスプリング22とにより弾性的に支持される。外槽20内には、横軸型のドラム23が回転自在に配置される。ドラム23は、水平軸周りに回転する。ドラム23は、前面に円形の開口部23aを有する。
【0027】
外槽20は、ドラム23の開口部23aの前方に円形の開口部20aを有する。外槽20の開口部20aの周縁部と筐体10の投入口11の周縁部が、弾性材料からなる環状のドアパッキン24により連結される。閉じられたドア12の周面がドアパッキン24に接触し、投入口11とドア12との間が水封される。
【0028】
ドラム23の内周面には、多数の脱水孔23bが形成される。また、ドラム23の内周面には、周方向に等しい間隔で、ほぼ三角柱形状を有する3つのバッフル25が設けられる。
【0029】
外槽20の後方には、ドラム23を回転させるためのトルクを発生させる駆動モータ30が配置される。駆動モータ30は、たとえば、アウターロータ型のDCブラシレスモータである。駆動モータ30は、洗い工程およびすすぎ工程時には、ドラム23内の洗濯物に加わる遠心力が重力より小さく、洗濯物がタンブリングする回転数でドラム23を回転させる。一方、駆動モータ30は、脱水工程時には、ドラム23内の洗濯物に加わる遠心力が重力よりはるかに大きく、洗濯物がドラム23の内周面に張り付く回転数でドラム23を回転させる。
【0030】
外槽20の底部には、排水口部20bが形成される。排水口部20bには、外槽20内から排水を行う排水部40が接続される。排水部40は、排水バルブ41、排水ホース42および排水フィルタ43により構成される。排水口部20bに、排水フィルタ43が接続される。排水バルブ41は、排水フィルタ43の下流に設けられ、たとえば、バルブと、バルブを開閉させるトルクモータとを含む。排水バルブ41に、排水ホース42が接続される。排水バルブ41が開放されると、外槽20内に溜められた水が排水口部20b、排水フィルタ43および排水ホース42を通じて機外に排出される。リント等の異物が排水フィルタ43により捕獲される。
【0031】
筐体10内の上部には、給水装置50が配置される。給水装置50は、外槽20内に給水を行う。また、給水装置50は、外槽20内に液体洗剤および液体柔軟剤を自動投入する機能を有する。
【0032】
給水装置50は、給水バルブユニット51と、注水ユニット52と、ノズルユニット53と、を備える。
【0033】
給水バルブユニット51は、給水バルブ110と、第1給水ホース120と、第2給水ホース130とを含む。給水バルブ110は、第1バルブ111および第2バルブ112を有する。給水バルブ110の給水口113は、図示しない接続ホースを介して水道栓に接続される。
【0034】
第1給水ホース120の入口が第1バルブ111に接続され、第2給水ホース130の入口が第2バルブ112に接続される。第1バルブ111が開放されると、第1給水ホース120に水が流れ、第2バルブ112が開放されると、第2給水ホース130に水が流れる。
【0035】
注水ユニット52は、前面が開口する注水口部材140と、注水口部材140に引出可能に収容される液剤タンク150と、注水口部材140の上面に配置された水路形成部材160と、を含む。
【0036】
注水口部材140の底部には、注水口141が形成される。注水口141から延びる注水パイプ54が外槽20に接続される。
【0037】
液剤タンク150は、液体洗剤が貯められる洗剤室と液体柔軟剤が貯められる柔軟剤室とを有する。液剤タンク150は、筐体10の前面に設けられた収容口13を通じて注水口部材140に収容される。液剤タンク150の前面には、収容口13を塞ぐ蓋151が設けられる。
【0038】
水路形成部材160の内部には、第1給水ホース120の出口が接続される第1水路と第2給水ホース130の出口が接続される第2水路とが形成される。
【0039】
第1給水ホース120から水路形成部材160に供給された水は、第1水路を流れて注水口部材140の底部に排出され、注水口141および注水パイプ54を介して外槽20内に供給される。外槽20内へ液体洗剤または液体柔軟剤を自動投入する際には、第1バルブ111が開放される前に、液体洗剤または液体柔軟剤が、図示しない洗剤ポンプまたは柔軟剤ポンプにより液剤タンク150から第1水路内に導入される。液体洗剤または液体柔軟剤は、第1水路を流れる水と混合されて外槽20内に供給される。
【0040】
第2給水ホース130から水路形成部材160に供給された水は、第2水路を流れてノズルユニット53へ送られる。
【0041】
ノズルユニット53は、ドアパッキン24の上部の内側に配置されたシャワーノズル170およびドア給水ノズル180を含む。ドア給水ノズル180は、本発明の放水部に相当する。
【0042】
シャワーノズル170の放水口は、後下方向、即ちドラム23の底部の方向に向いている。水路形成部材160の第2水路から延びる第1送水ホース171が、シャワーノズル170に接続される。第2水路から流出した水が第1送水ホース171を通ってシャワーノズル170へと至り、シャワーノズル170の放出口からドラム23内に向かってシャワー状に放出される。これにより、ドラム23内の洗濯物に水が掛かり、洗濯物の内部に水が浸透しやすくなる。
【0043】
ドア給水ノズル180の先端部には、ドア12の内側に向けて水を放出する放出口180aが左右両側に形成される。水路形成部材160の第2水路から延びる第2送水ホース181が、ドア給水ノズル180に接続される。第2水路から流出した水が第2送水ホース181を通ってドア給水ノズル180へと至り、左右の放出口181aからドア12に向けて放出される。これにより、ドア12が洗浄される。
【0044】
外槽20内の底部には、導電率センサ60が配置される。導電率センサ60は、外槽20内に溜められた水の導電率を検出する。外槽20内の水に含まれる洗剤の濃度が高いほど、検出される導電率は高くなる。導電率センサ60は、外槽20内の水に洗剤が含まれている場合、洗剤濃度に応じた導電率を検出し、外槽20内の水に洗剤が含まれていない場合、水自体の導電率を検出する。
【0045】
図2は、ドラム式洗濯機1の構成を示すブロック図である。
【0046】
ドラム式洗濯機1は、上述した構成に加え、制御部201と、記憶部202と、操作部203と、表示部204と、音出力部205と、水位検出部206と、モータ駆動部207と、給水駆動部208と、排水駆動部209と、を備える。
【0047】
操作部203は、電源の投入および遮断を行う電源ボタンと、洗濯運転に係る複数の運転コースの中から任意の運転コースを選択するためのコース選択ボタンと、洗濯運転を開始および一時停止させるためのスタートボタンと、を含む。操作部203は、ユーザに操作されたボタンに応じた入力信号を制御部201に出力する。
【0048】
表示部204は、LED等の発光素子や液晶パネル等のディスプレイを含み、制御部201からの制御信号に従って、選択された運転コースの表示、洗濯運転の進行状況の表示、異常の報知などを行う。音出力部205は、スピーカを含み、当該スピーカから音声、アラーム音等の音を出力する。表示部204は、本発明の報知部に相当する。
【0049】
操作部203と表示部204とが、タッチパネル等の操作表示部により構成されてもよい。
【0050】
水位検出部206は、外槽20内の水位を検出し、水位に応じた水位信号を制御部201に出力する。導電率センサ60は、外槽20内の水の導電率を検出し、導電率に応じた検出信号を制御部201に出力する。
【0051】
モータ駆動部207は、制御部201からの制御信号に従って、駆動モータ30を駆動する。モータ駆動部207は、駆動モータ30の回転数を検出する回転センサ、インバータ回路等を含み、制御部201により設定された回転数で駆動モータ30が回転するよう、駆動電力を調整する。さらに、モータ駆動部207は、駆動モータ30に流れる電流を検出する電流センサを含む。
【0052】
給水駆動部208は、制御部201からの制御信号に従って、給水バルブ110の第1バルブ111および第2バルブ112を駆動する。排水駆動部209は、制御部201からの制御信号に従って、排水バルブ41を駆動する。
【0053】
記憶部202は、EEPROM、RAM等を含む。記憶部202には、各種運転コースの洗濯運転を実行するためのプログラムが記憶される。また、記憶部202には、これらプログラムの実行に用いられる各種パラメータや各種制御フラグが記憶される。
【0054】
制御部201は、CPU等を含み、操作部203、水位検出部206、導電率センサ60等からの各信号に基づいて、記憶部202に記憶されたプログラムに従い、表示部204、音出力部205、モータ駆動部207、給水駆動部208、排水駆動部209等を制御する。
【0055】
さて、ドラム式洗濯機1では、ユーザによる操作部203の操作に基づき、制御部201による制御の下、各種運転コースの洗濯運転が行われる。洗濯運転では、洗い工程、中間脱水工程、すすぎ工程および最終脱水工程が順番に行われる。運転コースによっては、すすぎ工程と中間脱水工程とが2回以上行われる場合がある。
【0056】
洗い工程では、ドラム23内に収容された洗濯物の負荷量に応じた洗い水位まで、外槽20内に洗剤を含む水が溜められ、その水の中に浸された洗濯物が、ドラム23の正回転および逆回転が繰り返されることによりタンブリングする。洗濯物の内部まで洗剤を含む水が浸透し、洗剤の力とタンブリングによる機械力とにより洗濯物の表面や内部に付着した汚れが落とされる。
【0057】
すすぎ工程では、外槽20内にすすぎ水位まで水が溜められた状態でドラム23が正回転および逆回転を繰り返し、洗濯物がタンブリングする。これにより、洗濯物に含まれた洗剤が水とともに排出され、洗濯物がすすがれる。
【0058】
洗い工程およびすすぎ工程の給水時には、給水装置50により注水口部材140を通じた外槽20内への給水と、シャワーノズル170およびドア給水ノズル180を通じた外槽20内への給水とが行われる。また、洗い工程では、給水装置50により給水とともに液剤タンク150内の液体洗剤の自動投入が行われ、すすぎ工程では、給水装置50により給水とともに液剤タンク150内の液体柔軟剤の自動投入が行われる。すすぎ工程が2回以上行われる場合、最後のすすぎ工程で液体柔軟剤が投入される。
【0059】
中間脱水工程および最終脱水工程では、駆動モータ30が一方向に高速回転し、ドラム23が、ドラム23内の洗濯物に作用する遠心力が重力よりはるかに大きくなる回転数で一方向に回転する。遠心力の作用により、洗濯物が、ドラム23の内周面に押し付けられ、脱水される。最終脱水工程では、中間脱水工程での回転数よりも高い回転数でドラム23が回転する。
【0060】
洗い工程の前には、洗濯物の負荷量を検出する負荷量検出工程が行われる。ドラム23が、ドラム23内の洗濯物がタンブリングする回転数、たとえば40~50rpmで回転し、回転時にドラム23に加わる負荷が、駆動モータ30に流れる電流値より検出される。洗濯物の負荷量が多いほど、ドラム23に加わる負荷が大きくなり、駆動モータ30に流れる電流値が大きくなる。制御部201は、電流値の大きさに基づいて負荷量を判定する。負荷量に基づいて洗い工程での給水量、即ち洗い水位が決され、決定された給水量が表示部204に表示される。給水装置50により自動投入される液体洗剤の量は、負荷量、即ち給水量に応じたものとなる。
【0061】
本実施の形態のドラム式洗濯機1で実行される運転コースには、液剤タンク150の液体洗剤が使用される標準コース等の運転コースに加えて、パック型洗剤が使用されるパック型洗剤コースが含まれる。パック型洗剤は、水溶性のパックに洗剤が封入された構成を有する。水への接触によってパック、即ちパック型洗剤が溶解すると、外部に洗剤が溶け出す。パック型洗剤は、たとえば、ジェルボールであり、パック型洗剤コースは、ジェルボールコースと称することもできる。
【0062】
パック型洗剤を使用する場合、ユーザは、操作部203において、コース選択ボタンによりパック型洗剤コースを選択する。これにより、パック型洗剤コースの設定、即ちパック型洗剤を使用する設定が行われる。その後、ユーザは、スタートボタンを押す。これにより、パック型洗剤コースの洗濯運転が実行される。
【0063】
パック型洗剤コースでは、パック型洗剤の特性に合わせて、すすぎ回数などの運転内容が設定されている。さらに、パック型洗剤コースでは、洗い工程での制御に、パック型洗剤の溶け残りを防止する制御が組み込まれている。なお、パック型洗剤コースでは、洗い工程において、液剤タンク150内の液体洗剤の自動投入は行われない。
【0064】
以下、パック型洗剤コースにおける洗い工程について説明する。
【0065】
図3は、パック型洗剤コースの洗い工程で実行される制御部201の制御動作を示すフローチャートである。
図4(a)ないし(b)は、パック型洗剤コースの洗い工程について説明するための図である。
【0066】
パック型洗剤コースの洗濯運転が開始されると、負荷量検出工程が行われた後に洗い工程が開始される。負荷量検出工程の後、ユーザにより手動でパック型洗剤がドラム23内に投入される。なお、パック型洗剤が負荷量検出工程の前に投入される場合もある。
【0067】
図3を参照して、制御部201は、給水バルブ110の第1バルブ111および第2バルブ112を開放する(S1)。これにより、給水装置50による、注水口部材140を通じた外槽20内への給水と、シャワーノズル170およびドア給水ノズル180を通じた外槽20内への給水とが行われる。このとき、液剤タンク150内の液体洗剤の自動投入は行われない。
【0068】
制御部201は、水位検出部206により外槽20内の水位を検出することにより、当該水位が中間水位に到達したか否かを監視する(S2)。中間水位は、洗い工程で最終的に水が溜められる洗い水位よりも低い水位であり、ドラム23の底部が水に浸かる高さの水位である。
【0069】
制御部201は、外槽20内の水位が中間水位に到達すると(S2:YES)、第1バルブ111および第2バルブ112を閉鎖する(S3)。これにより、外槽20内への給水が停止する。
【0070】
次に、制御部201は、駆動モータ30により、ドラム23を、第1回転数で正回転と逆回転とを繰り返すように動作させる(S4)。第1回転数は、ドラム23内の洗濯物に作用する遠心力が重力より小さく、洗濯物がタンブリングするような回転数、たとえば、50rpmに設定される。正回転の時間と逆回転の時間であるオン時間は、T1時間、たとえば、10秒に設定され、正回転と逆回転の間にドラム23が停止するオフ時間は、S1時間、たとえば、10秒に設定される。
【0071】
制御部201は、ドラム23の動作を開始してから第1時間、たとえば3分が経過すると(S5:YES)、ドラム23を停止させる(S6)。
【0072】
このように、外槽20内に中間水位まで水が溜められた後、ドラム23の回転によって外槽20内の水が攪拌されることにより、通常の場合、ドラム23内に投入されたパック型洗剤が、ドラム23の底部で水に接触して十分に溶解し、外部に溶け出した洗剤が外槽20内の水に混ざって泡立てられる。
【0073】
一方で、
図4(a)に示すように、ドラム23内にパック型洗剤が投入された際に、パック型洗剤が洗濯物の上に載った状態になることがある。そして、このような状態でステップS4においてドラム23が回転したときには、パック型洗剤が、動いた洗濯物によって前側へと押し出され、ドアパッキン24の部分に載ってしまう、ということが起こり得る。このような場合、外槽20内に溜められた水がパック型洗剤に接触しにくくなる。これにより、
図4(b)に示すように、ステップS6でドラム23が停止した段階で、ドアパッキン24内にパック型洗剤が溶け残り、外槽20内の水に洗剤が十分に供給されない状態になり得る。
【0074】
なお、パック型洗剤が負荷検出工程の前にドラム23内に投入された場合は、負荷量を検出するためにドラム23を回転させたときに、上記のような、パック型洗剤がドアパッキン24の部分に載ってしまうことが起き得る。
【0075】
制御部201は、ステップS6でドラム23を停止させると、外槽20内の水に含まれる洗剤の濃度に基づいて、ドラム式洗濯機1に投入されたパック型洗剤が溶解不足であるか否かを判定する(S7)。制御部201は、導電率センサ60により外槽20内の水の導電率を検出し、検出された導電率よって洗剤濃度を判定する。
【0076】
パック型洗剤が溶解不足でない場合は、溶け出した洗剤が十分に外槽20内の水に含まれているので、洗剤濃度が高くなり、導電率が高くなる。一方、パック型洗剤が溶解不足である場合は、洗剤の溶け出しが少なく、外槽20内の水に洗剤が十分に含まれないため、洗剤濃度が低くなり、導電率が低くなる。
【0077】
パック型洗剤の溶解不足を判定するための導電率の閾値が、実験等に基づいて予め設定される。制御部201は、検出された導電率が閾値以上である場合、パック型洗剤が溶解不足でないと判定し、検出された導電率が閾値未満である場合、パック型洗剤が溶解不足であると判定する。
【0078】
制御部201は、パック型洗剤が溶解不足でないと判定した場合(S7:NO)、第1バルブ111および第2バルブ112を開放する(S8)。これにより、給水装置50による外槽20内への給水が再開される。
【0079】
さらに、制御部201は、駆動モータ30により、ドラム23を、第3回転数で正回転と逆回転とを繰り返すように動作させる(S9)。これにより、洗濯物の本洗いが開始される。
【0080】
第3回転数は、ドラム23内の洗濯物に作用する遠心力が重力より小さく、洗濯物がタンブリングするような回転数である。第3回転数は、たとえば、第1回転数と同じ回転数に設定される。第3回転数は、第1回転数と異なる回転数、たとえば、第1回転数よりも高い回転数であってもよい。
【0081】
正回転の時間と逆回転の時間であるオン時間は、T2時間に設定され、正回転と逆回転の間にドラム23が停止するオフ時間は、S2時間に設定される。T2時間は、たとえば、20秒に設定され、S2時間は、たとえば、0秒に設定される。この場合、正回転と逆回転との間では、前の回転の停止直後に次の回転が開始されることになる。
【0082】
制御部201は、外槽20内の水位が洗い水位に到達したか否かを監視する(S10)。洗い水位は、洗濯物の負荷量に応じて設定され、たとえば、ドアパッキン24の下縁より低い高さ位置からドアパッキン24の下縁と同程度の高さ位置の間で設定される。
【0083】
制御部201は、外槽20内の水位が洗い水位に到達すると(S10:YES)、第1バルブ111および第2バルブ112を閉鎖する(S11)。これにより、外槽20内への給水が停止する。ドラム23の正回転および逆回転は継続される。
【0084】
その後、制御部201は、ドラム23の動作を開始してから本洗い時間、たとえば10分が経過すると(S12:YES)、ドラム23を停止させる(S13)。これにより、洗濯物の本洗いが終了する。
【0085】
次に、制御部201は、排水バルブ41を開放する(S14)。これにより、外槽20内から排水が行われる。こうして、洗い工程が終了する。
【0086】
一方、ステップS7において、制御部201は、パック型洗剤が溶解不足であると判定した場合(S7:YES)、駆動モータ30により、ドラム23を、第1回転数および第3回転数よりも高い第2回転数で一方向に回転させる(S15)。
【0087】
第2回転数は、ドラム23内の洗濯物に作用する遠心力が重力より大きく、洗濯物がドラム23の内周面に張り付くような回転数、たとえば、100rpmに設定される。このとき、第2回転数は、外槽20の縦揺れが大きくなる共振回転数よりも小さい回転数とされることが望ましい。、
図4(c)に示すように、ドラム23が第2回転数で回転すると、外槽20内の水がドラム23で激しく攪拌されて大きな水しぶきが立ち、多くの水がドアパッキン24に載っているパック型洗剤に掛けられる。これにより、パック型洗剤が十分に溶解して、溶け出した洗剤が外槽20内の水に混ざる。
【0088】
制御部201は、ドラム23の動作を開始してから第2時間、たとえば1分が経過すると(S16:YES)、ドラム23を停止させる(S17)。そして、制御部201は、再度、パック型洗剤が溶解不足であるか否かを判定する(S18)。
【0089】
図4(d)に示すように、パック型洗剤の溶け残りが無くなり、外槽20内の水に洗剤が十分に含まれるようになると、導電率センサ60により検出された導電率が閾値以上となる。これにより、制御部201は、パック型洗剤が溶解不足でないと判定し(S18:NO)、第1バルブ111および第2バルブ112を開放するとともに(S8)、ドラム23を、第3回転数で正回転と逆回転とを繰り返すように動作させる(S9)。以降は、ステップS10ないしS14の処理が実行される。
【0090】
一方、ドラム23を第2回転数で回転させる溶解不足の解消動作によりパック型洗剤の溶解不足が解消していない場合、S18において、制御部201は、パック型洗剤が溶解不足であると判定する(S18:YES)。この場合、制御部201は、溶解不足の解消動作のトライ回数が規定回数に達していなければ(S19:NO)、再び、第2時間、ドラム23を第2回転数で回転させる(S15~S17)。規定回数は、複数回、たとえば5回に設定される。
【0091】
その後、パック型洗剤の溶解不足が解消しないまま、溶解不足の解消動作のトライ回数が規定回数に達すると(S19:YES)、制御部201は、パック型洗剤が溶解不足であることを知らせる報知を表示部204に行わせる(S20)。たとえば、表示部204において、ディスプレイに、「パック型洗剤が溶け残っています」などのメッセージが表示されたり、パック型洗剤の溶解不足を示す発光素子が点灯したりする。
【0092】
なお、表示部204による表示に替えて、あるいは加えて、パック型洗剤が溶解不足であることを知らせる報知が音出力部205により行われてもよい。この場合、たとえば、音出力部205のスピーカから「パック型洗剤が溶け残っています」などの音声が出力される。
【0093】
パック型洗剤が溶解不足であることを知らせる報知は、所定時間後に停止されてもよいし、ステップS13でドラム23が停止するまで継続してもよい。
【0094】
パック型洗剤の溶解不足を知らせる報知が行われた後も、洗濯運転は継続される。即ち、制御部201は、第1バルブ111および第2バルブ112を開放するとともに(S8)、ドラム23を、第3回転数で正回転と逆回転とを繰り返すように動作させる(S9)。以降は、ステップS10ないしS14の処理が実行される。
【0095】
報知に気づいたユーザは、操作部203のスタートボタンを押して洗濯運転を一時停止させる。そして、ユーザは、ドアパッキン24に溶け残りのパック型洗剤がある場合は、当該パック型洗剤をドラム23内に移す。ユーザは、パック型洗剤の投入を忘れていた場合、当該パック型洗剤をドラム23内に投入する。そして、ユーザは、再び、スタートボタンを押して洗濯運運転を再開させる。運転再開時にパック型洗剤の溶解不足を知らせる報知が継続していた場合、当該報知が停止する。
【0096】
なお、パック型洗剤コース以外の運転コースの洗濯運転が行われる場合には、パック型洗剤コースの設定、即ちパック型洗剤を使用する設定が行われない。よって、パック型洗剤コース以外の運転コースでは、洗い工程において、
図3に示すステップS1ないしS6の処理とステップS8ないしS14の処理とが実行され、ステップS7のパック型洗剤の溶解不足を判定する処理とステップS15~S20のパック型洗剤の溶解不足を解消する処理が実行されない。
【0097】
本実施の形態のドラム式洗濯機1は、洗濯物を乾燥させる乾燥装置を備えていてもよい。この場合、乾燥装置は、たとえば、外槽20に接続される循環路を備える。循環路内には、送風ファン、冷却器および加熱器が配置される。加熱器で加熱された空気が送風ファンの動作により外槽20と循環路との間で循環し、ドラム23内の洗濯物が乾燥する。外槽20内から循環路に戻ってきた空気は、加熱器で加熱される前に冷却器で冷却され除湿される。
【0098】
<実施の形態の効果>
本実施の形態によれば、ドラム式洗濯機1は、制御部201が、洗い工程において、給水装置50により外槽20内へ給水を行い、当該給水の後に、駆動モータ30によりドラム23を第1回転数で回転させ、第1回転数でドラム23を回転させた後に、ドラム式洗濯機1に投入されたパック型洗剤が溶解不足であるか否かを判定し、パック型洗剤が溶解不足であると判定した場合に、駆動モータ30によりドラム23を第1回転数よりも高い第2回転数で回転させる。
【0099】
この構成によれば、パック型洗剤がドアパッキン24の部分に載った状態となることにより、パック型洗剤の溶解不足が生じたときには、ドラム23が第2回転数で回転し、外槽20内の水から大きな水しぶきが立って、多くの水がドアパッキン24のパック型洗剤に掛けられる。これにより、パック型洗剤の溶解を促進させることができるので、パック型洗剤がドアパッキン24内で溶け残ることを防止でき、外槽20内の水に十分な洗剤が含まれなくなることを防止できる。
【0100】
さらに、本実施の形態によれば、ドラム式洗濯機1は、制御部201が、第2回転数でドラム23を回転させた後に、パック型洗剤が溶解不足であるか否かを判定し、パック型洗剤が溶解不足であると判定したことに基づいて、パック型洗剤の溶解不足を知らせる報知を表示部204に行わせるような構成とされている。
【0101】
この構成によれば、第2回転数でドラム23を回転させる動作によってもパック型洗剤の溶解不足が解消しない場合に、パック型洗剤の溶解不足をユーザに知らせることができる。これにより、パック型洗剤をドアパッキン24からドラム23内へ移すなど、ユーザの手により、パック型洗剤の溶解不足を解消させることが可能となる。
【0102】
さらに、本実施の形態によれば、ドラム式洗濯機1は、制御部201が、パック型洗剤を使用する設定が行われている場合に、パック型洗剤が溶解不足であるか否かの判定を実行するような構成とされている。
【0103】
この構成によれば、パック型洗剤が溶解不足であるか否かの判定が、パック型洗剤が使用されないときに無駄に行われることを防止できる。
【0104】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態等によって何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施の形態も、上記以外に種々の変更が可能である。
【0105】
<変更例1>
図5は、変更例1に係る、パック型洗剤コースの洗い工程で実行される制御部201の制御動作を示すフローチャートである。
【0106】
本変更例では、制御部201は、ステップS7において、パック型洗剤が溶解不足であると判定すると、ドラム23を第2回転数で回転させることに加えて、第2バルブ112を開放する(S21、S15)。
【0107】
第2バルブ112が開放されると、ドア給水ノズル180からドア12に向けて放水が行われる。ドアパッキン24にパック型洗剤が載っている場合、ドア12を伝って流れ落ちた水がドアパッキン24を外槽20内へと流れる際にパック型洗剤に接触する。これにより、パック型洗剤により多くの水が掛かるため、パック型洗剤が一層溶解しやすくなる。
【0108】
制御部201は、第2時間が経過すると(S16:YES)、第2バルブ112を閉鎖するとともにドラム23を停止させる(S22、S17)。
【0109】
なお、第2時間は、当該第2時間のドア給水ノズル180等からの給水が規定回数、即ち最大の回数だけ行われても外槽20内の水位が洗い水位を超えない時間に設定されるとよい。
【0110】
本変更例の構成によれば、ドアパッキン24のパック型洗剤が一層溶解しやすくなるので、パック型洗剤がドアパッキン24内で溶け残ることを一層防止できる。
【0111】
<変更例2>
図6は、変更例2に係る、パック型洗剤コースの洗い工程で実行される制御部201の制御動作を示すフローチャートである。なお、
図6では、便宜上、ステップS1ないしS7、および、ステップS15ないしS20の処理の記載が省略されている。
【0112】
ステップS15ないしS17で実行されるパック型洗剤の溶解不足を解消する動作が規定回数だけ行われてもパック型洗剤の溶解不足が解消されない場合、パック型洗剤がドアパッキン24に追いやられることによって溶解不足が生じたのではなく、そもそも、パック型洗剤がドラム式洗濯機1へ投入されていない可能性がある。
【0113】
そこで、本変更例では、パック型洗剤の溶解不足が解消されなかった場合に、パック型洗剤の投入忘れがあったか否かの判定が行われ、パック型洗剤の投入忘れがあったと見做される場合に、投入忘れを知らせる報知が行われる。
【0114】
図6を参照して、制御部201は、外槽20内の水位が洗い水位に到達したことに基づいて第1バルブ111および第2バルブ112を閉鎖すると(S10:YES→S11)、パック型洗剤の溶解不足が解消されなかったために、表示部204によりパック型洗剤の溶解不足を知らせる報知が行われていたか否かを判定する(S23)。
【0115】
制御部201は、パック型洗剤の溶解不足を知らせる報知が行われていた場合(S23:YES)、導電率センサ60により外槽20内の水の導電率を検出する(S24)。そして、その後、第3時間、たとえば、1分が経過すると(S25:YES)、制御部201は、再度、導電率センサ60により外槽20内の水の導電率を検出する(S26)。
【0116】
次に、制御部201は、2つの導電率から導電率の変化量を算出し、当該変化量が閾値以下であるか否かを判定する。これにより、制御部201は、外槽20内の水に洗剤が含まれているか否かを判定する(S27)。閾値は、0に近い値に設定され得る。
【0117】
ドラム式洗濯機1にパック型洗剤が投入されている場合は、ステップS8以降の本洗いが行われている間に、わずかでもパック型洗剤の溶解が進み、洗剤濃度が高まり得る。よって、導電率の変化が生じ得る。これに対し、ドラム式洗濯機1へのパック型洗剤の投入が忘れられていた場合、導電率の変化は生じない。
【0118】
制御部201は、導電率の変化量が閾値以下であり、外槽20内の水に洗剤が含まれていないと判定した場合(S27:YES)、ドラム23を停止させる(S28)。そして、制御部201は、パック型洗剤の投入忘れを知らせる報知を表示部204に行わせる(S29)。たとえば、表示部204において、ディスプレイに、「パック型洗剤の投入を忘れています」などのメッセージが表示されたり、パック型洗剤の投入忘れを示す発光素子が点灯したりする。
【0119】
なお、表示部204による表示に替えて、あるいは加えて、パック型洗剤の投入忘れを知らせる報知が音出力部205により行われてもよい。この場合、たとえば、音出力部205のスピーカから「パック型洗剤の投入を忘れています」などの音声が出力される。
【0120】
パック型洗剤の投入忘れを知らせる報知に気づいたユーザは、パック型洗剤をドラム23内に投入し、再開操作として操作部203のスタートボタンを押す。制御部201は、再開操作が行われると(S30:YES)、ドラム23の回転を再開させる(S31)。ドラム23の回転が再開すると、報知が停止する。以降、ステップS12~S14の処理が実行される。
【0121】
本変更例によれば、パック型洗剤の投入忘れをユーザに知らせることができる。これにより、ユーザは、パック型洗剤をドラム式洗濯機1に投入して、洗濯運転を再開できる。
【0122】
なお、本変更例の構成が、上記変更例1の構成に適用されてもよい。
【0123】
<その他の変更例>
上記実施の形態では、パック型洗剤の溶解不足が解消せず、溶解不足を知らせる報知が行われた場合、洗濯運転が継続され、外槽20内への給水が再開されるとともに(S8)、本洗いのためのドラム23の回転が開始される(S9)。しかしながら、溶解不足を知らせる報知が行われ場合、洗濯運転が中断され、ユーザによる再開操作を待つようにされてもよい。この場合、ユーザが、ドアパッキン24に溶け残ったパック型洗剤をドラム23内へ移した後、スタートボタンによる再開操作を行うと、外槽20内への給水が再開されるとともに(S8)、本洗いのためのドラム23の回転が開始される(S9)。
【0124】
さらに、上記実施の形態では、外槽20内の水に含まれた洗剤の濃度を検出するために導電率センサ60が外槽20内の底部に配置されている。しかしながら、導電率センサ60に替えて、外槽20内の水の濁度を光の透過度に基づいて検出する濁度センサが、外槽20内の底部に配置されてもよい。外槽20内の水に含まれる洗剤の濃度が高いほど、泡立ちが良くなるため、検出される濁度は高くなる。濁度センサは、外槽20内の水に洗剤が含まれている場合、洗剤濃度に応じた濁度を検出し、外槽20内の水に洗剤が含まれていない場合、水自体の濁度を検出する。
【0125】
さらに、上記実施の形態では、ドラム式洗濯機1に、洗濯運転の運転コースとして、パック型洗剤が使用されるパック型洗剤コースが用意されている。そして、操作部203のコース選択ボタンによりパック型洗剤コースが選択されると、パック型洗剤を使用する設定が行われ、
図3のパック型洗剤に対応する洗い工程が実行される。しかしながら、操作部203に、使用する洗剤としてパック型洗剤を選択するための操作ボタンが設けられ、運転コースに関係なく、当該操作ボタンの操作によりパック型洗剤が選択されると、パック型洗剤を使用する設定が行われ、
図3のパック型洗剤に対応する洗い工程が実行されるようにしてもよい。なお、パック型洗剤が選択されたときには、液剤タンク150内の液体洗剤が自動投入されない。
【0126】
さらに、ユーザによる操作等に基づいて、液剤タンク150内の液体洗剤を自動投入しない設定が行われるようにし、当該設定が行われることによりパック型洗剤が使用される可能性が生じたときに、
図3のパック型洗剤に対応する洗い工程が実行されるようにしてもよい。
【0127】
さらに、上記実施の形態では、給水装置50が液剤タンク150内の液体洗剤を自動投入する洗剤自動投入装置としての機能を備える。しかしながら、ドラム式洗濯機1は、洗剤自動投入装置を備えず、液体洗剤や粉末洗剤をユーザが手動で投入する洗剤容器が給水装置50に設けられるような構成とされてもよい。この場合に、パック型洗剤を使用する際にも当該使用ための設定が行われないようにされ、何れの運転コースにおいても
図3のパック型洗剤に対応する洗い工程が実行されるようにしてもよい。
【0128】
さらに、上記実施の形態では、パック型洗剤が溶解不足であるとの判定に基づいて、ドラム23を第2回転数で回転させる溶解不足の解消動作が、最大限、規定回数、即ち複数回行われる。しかしながら、溶解不足の解消動作が1回だけ行われるようにされてもよい。
【0129】
さらに、ドア12に向けて水を放出するドア給水ノズル180の構成は、上記実施の形態の構成に限られず、如何なる構成であってもよい。
【0130】
さらに、上記実施の形態において、ドラム式洗濯機1は、複数個のパック型洗剤を貯留する収容箱と、収容箱内からパック型洗剤を1つずつ排出させる排出機構とを含む自動投入装置を備え、パック型洗剤がドラム23内に自動投入されるような構成とされてもよい。
【0131】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0132】
1 ドラム式洗濯機
10 筐体
11 投入口
12 ドア
20 外槽
20a 開口部
23 ドラム
24 ドアパッキン
30 駆動モータ
50 給水装置
180 ドア給水ノズル(放水部)
201 制御部
203 操作部
204 表示部(報知部)