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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016746
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】火力発電方法
(51)【国際特許分類】
   F23C 1/06 20060101AFI20240131BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20240131BHJP
   F23B 10/00 20110101ALI20240131BHJP
   F23C 6/02 20060101ALI20240131BHJP
   F23C 9/06 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F23C1/06
F22B1/18 D
F23B10/00
F23C6/02
F23C9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119083
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】390029012
【氏名又は名称】株式会社エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 力
【テーマコード(参考)】
3K046
3K091
【Fターム(参考)】
3K046AA17
3K046AB01
3K046FA06
3K091AA03
3K091AA20
3K091BB02
3K091CC12
3K091CC23
3K091DD01
3K091FB02
3K091FB43
(57)【要約】
【課題】火力発電所から排出される二酸化炭素等の温暖化効果ガスの排出量を抑えた火力発電方法を提供する。
【解決手段】本発明は、バイオマス燃料F1の燃焼熱と、無機物燃料F2の燃焼熱と、を利用した火力発電方法であって、無機物燃料F2が、燃焼時に酸化炭素ガスを発生しない燃料である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス燃料の燃焼熱と、無機物燃料の燃焼熱と、を利用した火力発電方法であって、
前記無機物燃料が、燃焼時に酸化炭素ガスを発生しない燃料であることを特徴とする火力発電方法。
【請求項2】
前記バイオマス燃料と前記無機物燃料が混合された混合燃料を燃焼させることを特徴とする請求項1に記載の火力発電方法。
【請求項3】
前記無機物燃料が、酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼可能な燃料であり、
前記バイオマス燃料と前記無機物燃料が混合されず、別々に燃焼され、
前記無機物燃料が、前記バイオマス燃料の燃焼時に発生する酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼されることを特徴とする請求項1に記載の火力発電方法。
【請求項4】
前記無機物燃料が、マグネシウム、少なくとも一部が水素化された水素化マグネシウム、又は、その混合物であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の火力発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火力発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化の問題を受けて、火力発電所で排出される二酸化炭素等の温暖化効果ガスの排出量削減が急務になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-102636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、火力発電所から排出される二酸化炭素等の温暖化効果ガスの排出量を抑えた火力発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の火力発電方法は、バイオマス燃料の燃焼熱と、無機物燃料の燃焼熱と、を利用した火力発電方法であって、前記無機物燃料が、燃焼時に酸化炭素ガスを発生しない燃料である。
【0006】
(2)上記(1)の構成において、前記バイオマス燃料と前記無機物燃料が混合された混合燃料を燃焼させる。
【0007】
(3)上記(1)の構成において、前記無機物燃料が、酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼可能な燃料であり、前記バイオマス燃料と前記無機物燃料が混合されず、別々に燃焼され、前記無機物燃料が、前記バイオマス燃料の燃焼時に発生する酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼される。
【0008】
(4)上記(1)から(3)のいずれか1つの構成において、前記無機物燃料が、マグネシウム、少なくとも一部が水素化された水素化マグネシウム、又は、その混合物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、火力発電所から排出される二酸化炭素等の温暖化効果ガスの排出量を抑えた火力発電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る第1実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所を説明するための図である。
図2】本発明に係る第2実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。
【0012】
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態の火力発電方法は、火力発電所で実施されるが、その構成要素の多くは、現在の火力発電所と類似しているため、同様の点については説明を省略する場合がある。
【0013】
図1は、本実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所を説明するための図であり、いわゆる、ストーカ式ボイラを用いた汽力発電システムを示している。
【0014】
火力発電所は、発電機1と、発電機1を駆動させる発電用ボイラ2と、発電用ボイラ2に燃料Fを供給するホッパ3と、を備えている。
【0015】
発電用ボイラ2は、燃焼室21と、燃料Fの燃焼熱で蒸気を発生する過熱器22と、過熱器22で発生した蒸気で駆動し、回転軸が発電機1に接続された蒸気タービン23と、を備えている。
【0016】
なお、実線矢印で示すように、蒸気タービン23を駆動した蒸気は、復水器FUで液体状態の水に戻され、給水ポンプPによって、再び、過熱器22に供給され、蒸気となり、蒸気タービン23に供給されることになる。
【0017】
燃焼室21は、主燃焼室21Aと、主燃焼室21Aで発生した高温の排ガスの流路を形成する煙道21Bと、を備えている。
【0018】
なお、煙道21Bは、180度の折り返しが行われるように形成されており、効率よく、排ガス中に含まれる燃焼灰等が、太い黒矢印で示すように、シュート4を介して燃焼灰回収部(図示せず)に回収される。
【0019】
そして、排ガスの流れ(点線矢印参照)で見て、下流側の煙道21B内に過熱器22が配置される。
【0020】
なお、過熱器22を通過した後の排ガスは、排気管PUを通じて、排気され、必要な処理を施した後、煙突から大気に放出される。
【0021】
例えば、必要な処理としては、窒素酸化物(NOx)が発生する場合、脱硝装置で窒素酸化物(NOx)が無害化される。
【0022】
ただし、近年は、燃焼温度の制御、助燃性ガスとしての空気中の酸素濃度を高めるといった手段によって、排出環境基準を超える窒素酸化物(NOx)が発生しないようになっている場合もあるため、この場合には脱硝装置は不要である。
【0023】
また、脱硝装置を通過した後の排ガスは、減温処理が行われた後、集塵装置で排ガス中に含まれる微細な燃焼灰等が回収され、排風機を通じて、煙突に送られ、大気に放出される。
【0024】
本実施形態では、燃料Fとして、バイオマス燃料F1と、無機物燃料F2と、を混合した混合燃料が、ホッパ3によって主燃焼室21Aに供給される。
【0025】
例えば、バイオマス燃料F1としては、ウッドチップ、ウッドペレット、パーム椰子種殻等の固体燃料を好適に用いることができる。
【0026】
また、例えば、無機物燃料F2としては、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、及び、少なくとも一部が水素化された水素化マグネシウム、水素化アルミニウム、水素化リチウムから選ばれる1種以上の材料であればよい。
【0027】
ただし、燃焼性等の観点から、無機物燃料F2としては、マグネシウム、少なくとも一部が水素化された水素化マグネシウム、又は、その混合物(マグネシウムと水素化マグネシウムの混合物)であるのが良い。
【0028】
そして、ホッパ3によって、主燃焼室21Aに供給された混合燃料は、主燃焼室21Aに設けられた乾燥ストーカ5、燃焼ストーカ6、後燃焼ストーカ7の順に通過した後、燃焼後の燃焼灰がシュート4を介して燃焼灰回収部(図示せず)に回収される。
【0029】
乾燥ストーカ5、燃焼ストーカ6、後燃焼ストーカ7の下方からは、主燃焼室21A内に向かって、一次燃焼空気が供給されており、乾燥ストーカ5上でバイオマス燃料F1の乾燥が行われるとともに、着火点近傍まで加熱される。
そして、バイオマス燃料F1は、燃焼ストーカ6上で着火し、燃焼ストーカ6上、及び、後燃焼ストーカ7上で燃焼する。
【0030】
なお、着火したバイオマス燃料F1の一部は分解し、可燃性ガスが発生し、その可燃性ガスは主燃焼室21Aの上部へ移動するが、主燃焼室21Aの天井部分から主燃焼室21A内に向かって、二次燃焼空気が供給されているため、可燃性ガスは、その二次燃焼空気と混合され、完全燃焼する。
【0031】
一方、混合燃料中には、無機物燃料F2も含まれており、この無機物燃料F2は、バイオマス燃料F1とともに燃焼するが、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、リチウム(Li)、及び、少なくとも一部が水素化された水素化マグネシウム(MgH2)、水素化アルミニウム(AlH3)、水素化リチウム(LiH)などは、炭素成分を含んでいないため、下記式で示すように、燃焼時に二酸化炭素や一酸化炭素といった酸化炭素ガスの発生はない。
【0032】
2Mg + O2 → 2MgO + 熱
4Al + 3O2 → 2Al23 + 熱
4Li + O2 → 2Li2O + 熱
MgH2 + O2 → MgO + H2O + 熱
2AlH3 + 3O2 → Al23 + 3H2O + 熱
2LiH + O2 → Li2O + H2O + 熱
【0033】
しかしながら、無機物燃料F2は、燃焼時に高温の熱を放出するため、その放出される熱量分、バイオマス燃料F1の使用量が少なくとも、バイオマス燃料F1の使用量を減らす前と同じ発電量を維持することが可能である。
【0034】
そして、バイオマス燃料F1は、大気中の二酸化炭素等の温暖化効果ガスを吸収して成長した植物由来の燃料であるため、自然界での温暖化効果ガスの循環サイクルが達成されている。
【0035】
したがって、バイオマス燃料F1を燃料にした火力発電は、カーボンニュートラルを達成している発電方法であると位置づけられている。
【0036】
そして、本実施形態のように、燃焼時に二酸化炭素等の温暖化効果ガスの発生がない無機物燃料F2を加え、発電量を維持しつつ、バイオマス燃料F1の使用量を減らせる火力発電方法は、さらに、二酸化炭素等の温暖化効果ガスの発生が抑制されているため、カーボンマイナスの発電になっている。
【0037】
ところで、無機物燃料F2は、燃焼時に酸素欠乏状態になると、燃焼空気中の窒素と反応し、窒化物を形成するが、水分が存在すれば、速やかに加水分解を起こし、アンモニアを発生して水酸化物になる。
【0038】
そこで、後燃焼ストーカ7の下方から主燃焼室21A内に向かって供給する一次燃焼空気の湿度を高めておく方が好ましい。
【0039】
例えば、湿度50%、好ましくは70%、より好ましくは80%に湿度を高めておくと、無機物燃料F2が窒化物になるという不完全燃焼状態に至ったとしても、直ぐに、加水分解反応が起こり、可燃性ガスであるアンモニアが発生し、そのアンモニアが燃焼に寄与する。
【0040】
このように、燃焼促進剤として寄与する水分を供給した状態で無機物燃料F2の燃焼を行うのが好ましい。
【0041】
なお、図1に示すように、主燃焼室21Aに近い煙道21Bにも、三次燃焼空気を供給し、燃焼を促進する再燃焼部N(網掛け部分参照。)としてもよい。
【0042】
このようにすることで、燃焼しきれなかった一酸化炭素、水素化物の分解で発生した水素、窒化物の分解で発生するアンモニア等を確実に燃焼させ、無駄なく熱エネルギーの利用、並びに、有害なガス(一酸化炭素、アンモニア等)の放出抑制が確実なものになる。
【0043】
また、上記では、燃焼を行うための助燃性ガスとして、空気(酸素濃度を高めた空気)を提示しているが、一次燃焼空気、二次燃焼空気、三次燃焼空気は、酸素そのものとしても問題ないことは言うまでもない。
【0044】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の火力発電方法について、説明する。
図2は、本実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所を説明するための図であり、第1実施形態と同様にストーカ式ボイラを用いた汽力発電システムで説明する。
なお、第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する場合がある。
【0045】
第1実施形態では、発電用ボイラ2で燃焼させる燃料Fとして、バイオマス燃料F1と無機物燃料F2を混同した混合燃料としていたが、第2実施形態では、バイオマス燃料F1と無機物燃料F2が混合されず、別々に燃焼する構成になっている。
【0046】
したがって、図2に示すように、第1実施形態で説明した燃焼室21に加え、無機物燃料F2を燃焼させるための燃焼室24が加わったものになっている。
【0047】
なお、過熱器22の上側に、排気管PUの開口が見えていることからわかる通り、図1の右側に描かれていた蒸気タービン23や発電機1等の構成は、図2における紙面奥方向に位置している。
【0048】
したがって、図2では見えていないが、本実施形態の発電用ボイラ2にあっても、発電用ボイラ2は、過熱器22で発生した蒸気で駆動し、回転軸が発電機1に接続された蒸気タービン23を備えている。
【0049】
そして、無機物燃料F2を燃焼させるための燃焼室24は、図1を参照して説明した第1実施形態の燃焼室21と類似の構成になっており、燃焼室24は、主燃焼室24Aと、主燃焼室24Aで発生した高温の排ガスの流路を形成する煙道24Bと、を備えている。
【0050】
なお、図2に示すように、煙道24Bは、過熱器22が設けられている煙道21Bのところで合流するように形成されている。
【0051】
そして、ホッパ31によって、無機物燃料F2が主燃焼室24Aに供給され、主燃焼室24Aに設けられた昇温ストーカ51、燃焼ストーカ61、後燃焼ストーカ71の順に通過した後、燃焼後の燃焼灰がシュート41を介して、太い白抜き矢印で示すように、無機物燃料F2の燃焼灰回収部(図示せず)に回収される。
【0052】
なお、バイオマス燃料F1に関しては、燃焼後の燃焼灰がシュート4を介して、バイオマス燃料F1の燃焼灰回収部(図示せず)に回収される。
【0053】
ここで、先に説明した無機物燃料F2、つまり、マグネシウム、アルミニウム、リチウム、及び、少なくとも一部が水素化された水素化マグネシウム、水素化アルミニウム、水素化リチウムは、いずれも二酸化炭素、一酸化炭素といった酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼可能な燃料である。
【0054】
そこで、排気管PUから出た排ガス中に含まれる酸化炭素ガス(主に、二酸化炭素)を回収し、その酸化炭素ガスを昇温ストーカ51、燃焼ストーカ61、後燃焼ストーカ71の下方から主燃焼室24A内に向かって供給するようにしている。
【0055】
具体的には、第1実施形態で説明した集塵装置のさらに下流側に二酸化炭素を分離回収する分離回収装置を設け、その分離回収装置で回収された二酸化炭素を昇温ストーカ51、燃焼ストーカ61、後燃焼ストーカ71の下方から主燃焼室24A内に向かって供給するようにしている。
【0056】
なお、無機物燃料F2は、ウッドチップなどのようなバイオマス燃料と異なり、乾燥を行う必要はないため、ホッパ31に近いストーカは、無機物燃料F2を着火点近傍の温度まで加熱する昇温ストーカ51としての役割を担っている。
【0057】
そして、無機物燃料F2は昇温ストーカ51上で着火点近傍まで加熱され、燃焼ストーカ61上で着火し、燃焼ストーカ61上、及び、後燃焼ストーカ71上で酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼する。
【0058】
ところで、例えば、マグネシウム、アルミニウム、及び、リチウムといった無機物燃料F2の場合、二酸化炭素を助燃性ガスとした燃焼は、下記式に示すように、燃焼後、固体成分しか発生しないため、減圧反応となる。
なお、燃焼時に二酸化炭素は分解(還元)され、固体の炭素(C)になるため、二酸化炭素の放出がない。
【0059】
2Mg + CO2 → 2MgO + C + 熱
4Al + 3CO2 → 2Al23 + 3C + 熱
4Li + CO2 → 2Li2O + C + 熱
【0060】
そこで、分離回収装置で回収された二酸化炭素を、一旦、ガスタンクに集めておき、排ガスが主燃焼室24A内に逆流しない程度の内圧が保てるように、反応に必要な二酸化炭素量より過剰にガスタンクから供給するようにするのが良い
【0061】
一方、無機物燃料F2が、マグネシウム、アルミニウム、及び、リチウムの水素化物である場合の二酸化炭素を助燃性ガスとした燃焼は、下記式に示すように、燃焼後、水素が発生する。
なお、燃焼時に二酸化炭素は分解(還元)され、固体の炭素(C)になるため、二酸化炭素の放出がない。
【0062】
2MgH2 + CO2 → 2MgO + H2 + C + 熱
4AlH3 + 3CO2 → 2Al23 + 6H2 + 3C + 熱
4LiH + CO2 → 2Li2O + 2H2 + C + 熱
【0063】
そして、その発生した水素は、主燃焼室24Aの上部へ移動するので、この場合、第1実施形態で説明したのと同様に、主燃焼室24Aの天井部分から主燃焼室24A内に向かって、燃焼用空気を供給し、水素ガスが、その燃焼用空気と混合され、完全燃焼するようにすればよい。
【0064】
このように、主燃焼室24Aの天井部分から主燃焼室24A内に向かって、燃焼用空気を供給する場合、その空気が燃焼中の無機物燃料F2に届くと、酸素との反応による燃焼も発生し、二酸化炭素の分解量が減ることになる。
【0065】
したがって、水素化物の燃焼反応において、減圧反応とならない場合であっても、主燃焼室24Aの天井部分から主燃焼室24A内に向かって供給される燃焼用空気が、直接、届かない、届いたとしても十分に濃度が薄くなるように、昇温ストーカ51、燃焼ストーカ61、後燃焼ストーカ71の下方から主燃焼室24A内に向かって二酸化炭素を供給するようにするのが良い。
【0066】
また、燃焼用空気を送る場合は、窒化物が形成される恐れもあるため、第1実施形態でも説明したように、後燃焼ストーカ71の下方から主燃焼室24A内に向かって供給する二酸化炭素は湿気を含むものとしておくのが良い。
【0067】
このように、本実施形態の場合、バイオマス燃料F1が燃焼する際に発生する酸化炭素ガスを助燃性ガスとして、無機物燃料F2の燃焼を行い、その燃焼の結果、酸化炭素ガスが分解(還元)され、固体状の炭素になるので、さらに、カーボンマイナスな発電になっている。
【0068】
なお、第1実施形態で説明したのと同様の図1に示すように、三次燃焼空気を供給し、燃焼を促進する再燃焼部N(図1参照)を、第2実施形態の主燃焼室21Aに近い煙道21B、及び、主燃焼室24Aに近い煙道24Bに設けるようにしてもよい。
【0069】
ところで、無機物燃料F2の燃焼灰回収部(図示せず)に回収された燃焼灰は、純度の高い炭素粉と、マグネシウム、アルミニウム、リチウムの酸化物(一部、水酸化物が含まれる場合がある)である。
【0070】
したがって、炭素粉を回収すれば、カーボン素材の原料に最適であり、また、酸化物をスタート材料にマグネシウム、アルミニウム、リチウムを再生することができる。
【0071】
つまり、マグネシウム、アルミニウム、リチウムといった資源が循環する資源循環型の火力発電方法を実現することができる。
【0072】
以下、簡単に、その方法について説明する。
まず、最初に、回収した燃焼灰を塩酸水中に入れる。
そうすると、マグネシウム、アルミニウム、リチウムの酸化物は、いずれも塩酸と反応して、塩化物になり、溶液中に溶ける。
【0073】
なお、マグネシウム、アルミニウム、リチウムの水酸化物も塩化物になり、溶液中に溶けるため、先に触れたように、一部、水酸化物が含まれていても問題ない。
【0074】
ただし、アルミニウムの酸化物は溶けるのに時間がかかるため、溶液を攪拌するとか、溶液の温度を上げるなどといったことを行うのが良い。
【0075】
一方、炭素粉は、塩酸と反応しないので溶液中に溶けないため、その溶液を濾過すると、炭素粉だけを回収することができる。
【0076】
次に、マグネシウム、アルミニウム、リチウムの順に、再生方法について説明する。
無機物燃料F2が、マグネシウム、少なくとも一部が水素化された水素化マグネシウム、又は、それらの混合物であった場合、上述の塩酸処理で溶液中に溶液に溶けているのは、塩化マグネシウムとなる。
【0077】
この場合、加水分解反応によって、塩化マグネシウムが酸化マグネシウムにならない低温で溶液中の水分を飛ばすと、塩化マグネシウムの水和物が結晶として析出する。
【0078】
その塩化マグネシウムの水和物の結晶中に含まれている結晶水で加水分解反応が起きないように、脱水処理を行う。
方法としては、他にもあるが、例えば、塩化水素ガスを流しながら、400℃~550℃程度に加熱すると、加水分解反応が抑制され、脱水反応だけが進み、無水の塩化マグネシウムが得られる。
【0079】
そして、その無水の塩化マグネシウムを原料に、溶融塩電解を行えば、マグネシウムを生成することができる。
【0080】
無機物燃料F2が、アルミニウム、少なくとも一部が水素化された水素化アルミニウム、又は、それらの混合物であった場合、上述の塩酸処理で溶液中に溶液に溶けているのは、塩化アルミニウムとなる。
【0081】
そして、塩化アルミニウムが加水分解し、酸化アルミニウムになる温度で、その溶液を加熱して水分を無くすようにすると酸化アルミニウムの粉体を得ることができる。
アルミニウムは、一般に、酸化アルミニウムを原料に融点を下げる材料を混ぜて、溶融塩電解を行うことで製造されるため、その得た酸化アルミニウムの粉体を原料としてアルミニウムを再生することができる。
【0082】
無機物燃料F2が、リチウム、少なくとも一部が水素化された水素化リチウム、又は、それらの混合物であった場合、上述の塩酸処理で溶液中に溶けているのは、塩化リチウムとなる。
【0083】
この場合、リチウムを再生するまでの手順は、先ほど、マグネシウムで説明したのと同じでよい。
【0084】
そして、上記で説明した資源再生方法は、使用するエネルギーが電力だけのため、この資源再生においても、二酸化炭素等の温暖化効果ガスの発生がないものとできる。
【0085】
以上、具体的な実施形態を通じて、本発明の火力発電方法について説明を行ってきたが、本発明は具体的な実施形態に限定されるものではない。
【0086】
例えば、実施形態では、バイオマス燃料として、ウッドチップ等の固体燃料のものを例示したが、バイオマス燃料は、バイオエタノール、バイオディーゼル等の液体燃料や、バイオガスのような気体燃料であってもよい。
【0087】
この場合、燃焼室に液体燃料や気体燃料を燃焼させるための燃焼用バーナを設け、バイオマス燃料を燃焼させるようにすればよい。
【0088】
ただし、第1実施形態のように、燃料Fとして、バイオマス燃料F1と無機物燃料F2を混合した混合材料を用いる場合は、バイオマス燃料F1が固体である方が混合しやすく、好適である。
【0089】
このように、具体的な実施形態を、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0090】
1 発電機
2 発電用ボイラ
21、24 燃焼室
21A、24A 主燃焼室
21B、24B 煙道
22 過熱器
23 蒸気タービン
3、31 ホッパ
4、41 シュート
5 乾燥ストーカ
51 昇温ストーカ
6、61 燃焼ストーカ
7、71 後燃焼ストーカ
F 燃料
F1 バイオマス燃料
F2 無機物燃料
FU 復水器
N 再燃焼部
P 給水ポンプ
PU 排気管
図1
図2