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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167463
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】送風機及び送風機の始動制御方法
(51)【国際特許分類】
   F04D 27/00 20060101AFI20241127BHJP
   F04D 13/02 20060101ALI20241127BHJP
   F04D 29/38 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
F04D27/00 L
F04D13/02 G
F04D29/38 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083561
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 直史
(72)【発明者】
【氏名】橋本 英卓
(72)【発明者】
【氏名】平見 芳和
(72)【発明者】
【氏名】前原 悠希
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆太
【テーマコード(参考)】
3H021
3H130
【Fターム(参考)】
3H021AA01
3H021BA02
3H021DA01
3H021EA01
3H130AA13
3H130AB26
3H130AB52
3H130AC01
3H130AC19
3H130AC30
3H130BA78C
3H130BA78Z
3H130BA82C
3H130BA82G
3H130BA82Z
3H130DD01X
3H130DF01X
3H130DJ01X
3H130EA07C
3H130EA07G
3H130EC12C
3H130ED05C
3H130ED05G
(57)【要約】      (修正有)
【課題】既存のモータの構成を変更することなく、当該モータの始動性を向上させることができる送風機を提供する。
【解決手段】送風機100は、モータ11の駆動によって回転するファン12と、ファン12の周囲に設けられる外枠部材13と、ファン12に設けられる磁性体21と、外枠部材13に設けられ、モータ11が回転しないときに通電されることによって、磁性体21に対して吸引力を発揮し、ファン12を回転させる電磁石22とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動によって回転するファンと、
前記ファンの周囲に設けられる外枠部材と、
前記ファンに設けられる磁性体と、
前記外枠部材に設けられ、前記モータが回転しないときに通電されることによって、前記磁性体に対して吸引力を発揮し、前記ファンを回転させる電磁石とを備える
ことを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記磁性体は、前記ファンの羽根の先端に設けられる
ことを特徴とする請求項1記載の送風機。
【請求項3】
前記外枠部材は、当該外枠部材を貫通し、且つ、前記ファンを収納する収納部を有し、
前記電磁石は、前記収納部の縁に設けられる
ことを特徴とする請求項2記載の送風機。
【請求項4】
前記電磁石は、前記ファンの周方向において、前記磁性体が設置される間隔と同じ間隔で設けられる
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の送風機。
【請求項5】
前記電磁石は、前記ファンの周方向において、前記磁性体が設置される間隔よりも短い間隔で設けられる
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載の送風機。
【請求項6】
前記磁性体は、前記ファンの軸部に設けられ、
前記電磁石は、前記軸部の前方側に設けられる
ことを特徴とする請求項1記載の送風機。
【請求項7】
前記モータの回転状態を検出する回転検出部から検出結果を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された検出結果と、前記モータを制御するモータ制御部から出力された制御情報とに基づいて、前記モータに始動トルクが付与されているにも関わらず、前記モータが回転していないか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記モータに始動トルクが付与されているにも関わらず、前記モータが回転していないと判定した場合、前記電磁石に対する通電を行う通電制御部とを備える
ことを特徴とする請求項1記載の送風機。
【請求項8】
前記通電制御部は、
前記電磁石に対して通電を行った後、前記取得部から、前記モータが回転したことを示す検出結果を取得した場合、前記電磁石に対する通電を解除し、
ことを特徴とする請求項7記載の送風機。
【請求項9】
前記通電制御部は、
前記モータ制御部から、前記モータを停止させたことを示す制御情報を取得した場合、前記電磁石に対する通電を行う
ことを特徴とする請求項8記載の送風機。
【請求項10】
モータの駆動によって回転するファンと、
前記ファンの周囲に設けられる外枠部材と、
前記ファンに設けられる磁性体と、
前記外枠部材に設けられ、前記モータの停止時に通電されることによって、前記磁性体に対して吸引力を発揮し、前記ファンを回転させる電磁石とを備える送風機であって、
取得部が、前記モータの回転状態を検出する回転検出部から検出結果を取得するステップと、
判定部が、前記取得部によって取得された検出結果と、前記モータを制御するモータ制御部から出力された制御情報とに基づいて、前記モータに始動トルクが付与されているにも関わらず、前記モータが回転していないか否かを判定するステップと、
通電制御部が、前記判定部が、前記モータに始動トルクが付与されているにも関わらず、前記モータが回転していないと判定した場合、前記電磁石に対する通電を行うステップとを有する
ことを特徴とする送風機の始動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風機及び送風機の始動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業機械、設備機器、及び、電子機器等には、送風機を備えたものがある。送風機は、羽根を回転させて、気流を発生させることで、熱源となる対象を冷却、又は、空間を換気するものである。送風機の羽根は、モータによって回転されることが多い。ここで、送風機を始動させる際、モータにおけるロータの始動開始位置によっては、当該モータの始動トルク(起動トルク)が足りない場合がある。この場合、モータが回転しないおそれがある。
【0003】
そこで、従来、モータの始動を適切に行うため、ロータの回転不可能な始動開始位置を回避する送風機が、提供されている。このような、従来の送風機は、例えば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-209959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された送風機は、モータのステータ側に設けた電磁石と、モータのロータ側に設けた磁石とは別に、ロータ側に第1補助磁石を設ける一方、ステータ側に第2補助磁石を備えるものである。
【0006】
特許文献1に開示された送風機は、モータが回転していない状態において、第1補助磁石と第2補助磁石との間に磁気的作用を生じさせることで、ロータを、第1補助磁石のS極が、第2補助磁石のN極と対向する位置で、必ず停止させるようにしている。また、そのロータの停止時において、当該ロータにおける磁石の磁極と電磁石の鉄心とが対向しないように、第1補助磁石と第2補助磁石との相対位置関係が、設定されている。このため、特許文献1に開示された送風機は、モータを始動させる際に、ロータが、始動に対して好ましくない位置に停止することを、防止している。
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された送風機は、第1補助磁石及び第2補助磁石を、最初からモータの内部に設ける必要があり、後付けすることができない。このため、特許文献1に開示された送風機は、既存のモータに適用することが困難であり、汎用性に欠けるものとなっている。
【0008】
本開示は、上記のような課題を解決するためになされたもので、既存のモータの構成を変更することなく、当該モータの始動性を向上させることができる送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る送風機は、モータの駆動によって回転するファンと、ファンの周囲に設けられる外枠部材と、ファンに設けられる磁性体と、外枠部材に設けられ、モータが回転しないときに通電されることによって、磁性体に対して吸引力を発揮し、ファンを回転させる電磁石とを備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、既存のモータの構成を変更することなく、当該モータの始動性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る送風機の正面図である。図1Aは、モータが始動前の様子を示す図である。図1Bは、電磁石に対する通電後に、その電磁石に磁性体が近づく様子を示す図である。
図2図2Aから図2Dは、ステータの磁極を変化させることで、ロータが回転する様子を順に示す図である。
図3】ステータの磁極を変化させても、ロータが回転しない様子を示す図である。図3Aは、ステータとロータとが、径方向において互いに異なる磁極で対向する場合を示す図である。図3Bは、ステータとロータとが、径方向において互いに同じ磁極で対向する場合を示す図である。
図4】実施の形態1に係る送風機に適用される始動制御装置の構成を示すブロック図である。
図5】実施の形態1に係る送風機の始動制御方法を示すフローチャートである。
図6図6A及び図6Bは、実施の形態1に係る始動制御装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図7】実施の形態2に係る送風機の正面図である。
図8】実施の形態3に係る送風機の正面図である。
図9】実施の形態4に係る送風機の正面図である。図9Aは、実施の形態4に係る送風機の正面図である。図9Bは、図9AのIX-IX矢視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
実施の形態1.
実施の形態1に係る送風機100について、図1から図6を用いて説明する。
【0014】
先ず、実施の形態1に係る送風機100の構成について、図1から図4を用いて説明する。図1は、実施の形態1に係る送風機100の正面図である。図2図2Aから図2Dは、ステータ11aの磁極を変化させることで、ロータ11bが回転する様子を順に示す図である。図3は、ステータ11aの磁極を変化させても、ロータ11bが回転しない様子を示す図である。図4は、実施の形態1に係る送風機100に適用される始動制御装置40の構成を示すブロック図である。
【0015】
図1に示す送風機100は、例えば、DCファンモータである。送風機100がDCファンモータである場合、当該送風機100は、直流電源で動作する。
【0016】
図1及び図4に示すように、送風機100は、モータ11、ファン12、外枠部材13、支持部材14、磁性体21、電磁石22、回転検出部31、及び、始動制御装置40を備えている。なお、図1に示す送風機100においては、正面側を前方側及び吸い込み側とし、その反対側となる背面側を後方側及び吐き出し側としている。
【0017】
図2に示すように、モータ11は、複数のステータ11a及び1つのロータ11bを有している。ステータ11aは、例えば、平板状に形成されている。このステータ11aは、モータケース(図示省略)の内周面において、周方向に等間隔で配置されている。これに対して、ロータ11bは、例えば、軸状に形成されている。このロータ11bは、ステータ11aの径方向内側に配置されている。
【0018】
図2は、モータ11が、4つのステータ11aと、1つのロータ11bとを備えた例である。各ステータ11aは、その磁極がS極とN極との間で、変更可能となっている。各ステータ11aの磁極は、周方向において交互に異なるように変化する。これに対して、ロータ11bは、4つの磁極を周方向において等間隔で有している。このロータ11bの各磁極は、周方向において交互に異なるものとなっている。このため、モータ11は、各ステータ11aの磁極を変化させることで、ロータ11bを回転させることができる。
【0019】
図1に示すように、ファン12は、例えば、軸流ファンである。このファン12は、軸部12a及び複数の羽根12bを有している。軸部12aは、ファン12の中心部に配置されている。軸部12aの内部には、モータ11が収納されており、ロータ11bに嵌入される出力軸(図示省略)が、後方側から接続されている。羽根12bは、軸部12aの外周面において、周方向に等間隔で配置されている。このため、ファン12は、モータ11が回転すると、複数の羽根12bが軸部12aを回転中心として回転する。この結果、ファン12は、前方側から吸い込んだ空気を、その軸方向に沿って後方側に向けて流して、吐き出す。
【0020】
外枠部材13は、ファン12の周囲をその径方向外側から覆うように設けられている。具体的には、外枠部材13は、収納部13aを有している。この収納部13aは、外枠部材13を前後方向に円形状に貫通する、貫通孔である。ファン12は、収納部13aの内側に、当該収納部13aの内面に接触することなく収納されている。収納部13aにおける前方側の開口端は、吸い込み口を形成している。一方、収納部13aにおける後方側の開口端は、吐き出し口を形成している。
【0021】
支持部材14は、モータ11を支持する部材である。この支持部材14は、モータ11のモータケースと、収納部13aの内面との間を、繋いでいる。即ち、モータ11及びファン12は、支持部材14を介して、外枠部材13に支持されている。
【0022】
磁性体21は、羽根12bの前面先端に設けられている。この磁性体21は、磁性材料で形成されている。図1は、磁性体21が、4つ全ての羽根12bに設けられる例を示している。なお、磁性体21の設置位置及び数量は、ファン12の回転バランスに影響を与えるものでなければ、適宜、調整可能である。
【0023】
電磁石22は、外枠部材13の前面において、収納部13aの縁に配置されている。この電磁石22は、通電されることによって、吸引力を発揮するものである。このため、電磁石22は、通電時において、羽根12bに設けられた磁性体21に対して吸引力を発揮し、その吸引力が作用した磁性体21を、羽根12bの回転を利用して、引き寄せることが可能となる。この結果、電磁石22は、ファン12を回転させることによって、モータ11を回転させることができる。
【0024】
図4に示すように、始動制御装置40は、モータ11、電磁石22、及び、回転検出部31と電気的に接続されている。
【0025】
回転検出部31は、モータ11の回転状態を検出するものである。モータ11の回転状態とは、モータ11の回転有無、及び、モータ11の回転数等である。また、回転検出部31は、検出結果を始動制御装置40に出力する。なお、回転検出部31は、モータ11の回転状態を検出するようにしているが、ファン12の回転状態を検出するようにしても良い。
【0026】
即ち、始動制御装置40は、回転検出部31からの検出結果の取得、モータ11に対する駆動制御及び停止制御、及び、電磁石22に対する通電制御を実施するものである。このような、始動制御装置40は、例えば、取得部41、モータ制御部42、判定部43、及び、通電制御部44を有している。
【0027】
取得部41は、回転検出部31が検出した検出結果を、当該回転検出部31から取得する。また、取得部41は、回転検出部31から取得した検出結果を、判定部43及び通電制御部44に出力する。
【0028】
モータ制御部42は、モータ11を駆動制御(始動制御及び回転数制御を含む)及び停止制御するものである。また、モータ制御部42は、モータ11に対する制御情報を判定部43及び通電制御部44に出力する。具体的には、モータ制御部42は、モータ11を始動させる場合、そのモータ11を始動するために必要な始動トルクをモータ11に付与したことを示す制御情報を、判定部43に出力する。また、モータ制御部42は、モータ11を停止させる場合、そのモータ11を停止させたことを示す制御情報を、通電制御部44に出力する。
【0029】
判定部43は、取得部41が取得した回転検出部31の検出結果、及び、モータ制御部42から出力されたモータ11の制御情報を、取得する。また、判定部43は、取得部41から取得した回転検出部31の検出結果と、モータ制御部42から出力された制御情報とに基づいて、モータ11に始動トルクが付与されているにも関わらず、当該モータ11が回転していないか否かを判定する。更に、判定部43は、判定結果を通電制御部44に出力する。具体的には、判定部43は、モータ11に始動トルクが付与されているにも関わらず、当該モータ11が回転していないという、判定結果を、通電制御部44に出力する。
【0030】
通電制御部44は、判定部43の判定結果に基づいて、電磁石22に対する通電制御を行う。具体的には、通電制御部44は、判定部43が、モータ11に始動トルクが付与されているにも関わらず、当該モータ11が回転していないと判定した場合、電磁石22に対する通電を行う。
【0031】
また、通電制御部44は、取得部41が取得した回転検出部31の検出結果を取得する。そして、通電制御部44は、電磁石22に対して通電を行った後、取得部41から、モータ11が回転したことを示す検出結果を取得した場合、電磁石22に対する通電を解除する。
【0032】
更に、通電制御部44は、モータ制御部42から出力された制御情報を取得する。そして、通電制御部44は、モータ制御部42から、モータ11が回転したことを示す検出結果を取得した場合、電磁石22に対する通電を行う。
【0033】
従って、送風機100を始動させる場合、図2に示すように、モータ11は、各ステータ11aの磁極を、S極からN極、又は、N極からS極に変化させることで、ロータ11bを回転させる。このように、ロータ11bが回転すると、これに伴って、ファン12も回転する。このため、ファン12は、前方側から吸い込んだ空気を、その軸方向に沿って後方側に向けて流して、吐き出す。この結果、送風機100は、発生させた気流によって、熱源となる対象を冷却、又は、空間を換気することができる。なお、図2Aから図2Dに示す矢印は、ロータ11bの回転方向を示している。
【0034】
ここで、送風機100においては、モータ11を始動させようとして、各ステータ11aの磁極を変化させても、ロータ11bの始動開始位置によっては、当該ロータ11bが回転しない場合がある。
【0035】
具体的には、図3に示すように、各ステータ11aの磁極を変化させても、径方向において対向する、ステータ11aの磁極とロータ11bの磁極との間において、引っ張り合う力又は反発し合う力が釣り合ってしまうと、ロータ11bは回転しない。このため、ロータ11bの始動トルクが、回転に必要なトルクの大きさに達しないため、モータ11は、駆動しない。
【0036】
なお、図3Aは、ステータ11aとロータ11bとが、径方向において互いに異なる磁極で対向する場合を示す図である。この図は、各組の対向する磁極同士の引っ張り合う力が釣り合っている状態を示している。また、図3Bは、ステータ11aとロータ11bとが、径方向において互いに同じ磁極で対向する場合を示す図である。この図は、各組の対向する磁極同士の反発し合う力が釣り合っている状態を示している。
【0037】
そこで、モータ11に始動トルクが付与されているにも関わらず、当該モータ11が回転しない場合には、通電制御部44は、電磁石22に対する通電を行う。このため、図1に示すように、電磁石22は、羽根12bに設けられた磁性体21に対して吸引力を発揮し、その吸引力が作用した磁性体21を、羽根12bの回転を利用して引き寄せる。このとき、羽根12bが電磁石22に引き寄せられるときの回転方向は、ファン12の正転方向及び逆転方向のうち、どちらの方向であっても構わない。なお、図1に示す矢印は、電磁石22が磁性体21を引き寄せたときのファン12の回転方向を示している。
【0038】
この結果、ロータ11bは、図3に示すような、回転不可能な始動開始位置から、回転方向下流側に向けて、少しずれる。言い換えれば、ロータ11bは、回転不可能な始動開始位置から、回転に必要な始動トルクが得られる始動開始位置(例えば、図2Aから図2Dのうちのいずれか1つの図に示す、ロータ11bの回転位置)に移動する。そして、ロータ11bが、回転に必要な始動トルクが得られる始動開始位置に移動すると、連続した回転が開始される。よって、送風機100は、モータ11の始動時に、ロータ11bがどのような位置に停止されていても、当該ロータ11bが回転に必要な始動トルクを得ることができる。
【0039】
また、上述したように、モータ11の回転が開始された場合、通電制御部44は、電磁石22に対する通電を解除する。このため、送風機100は、電磁石22の磁性体21に対する吸引による、モータ11の回転への影響を抑えることができる。
【0040】
更に、モータ11を停止させる場合、通電制御部44は、モータ11が停止してから、電磁石22に対する通電を行っても良い。このため、送風機100は、モータ11の停止後に、ロータ11bを、回転に必要な始動トルクが得られる始動開始位置に移動させることができる。この結果、送風機100は、次回の始動時において、ロータ11bを回転に必要な始動トルクが得られる始動開始位置に移動させるための、電磁石22に対する通電制御を、省略することができる。
【0041】
次に、実施の形態1に係る送風機100の始動制御方法について、図5を用いて説明する。図5は、実施の形態1に係る送風機の始動制御方法を示すフローチャートである。
【0042】
ステップST11においては、モータ制御部42は、モータ11に対して始動トルクを付与する。
【0043】
ステップST12において、取得部41が、モータ11の回転状態を検出する回転検出部31から検出結果を取得する。
【0044】
ステップST13において、判定部43は、取得部41によって取得された検出結果と、モータ制御部42から出力された制御情報とに基づいて、モータ11に始動トルクが付与されているにも関わらず、当該モータ11が回転していないか否かを判定する。
【0045】
ここで、判定部43が、モータ11に始動トルクが付与されているにも関わらず、当該モータ11が回転していないと判定した場合(YESの場合)、送風機100の始動制御方法は、ステップST14に進む。一方、判定部43が、モータ11に始動トルクが付与され、且つ、モータ11が回転していると判定した場合(NOの場合)、送風機100の始動制御方法は、ステップST17に進む。
【0046】
ステップST14において、通電制御部44は、電磁石22に対する通電を行う。このため、電磁石22が磁性体21を引き寄せるため、ロータ11bが回転に必要な始動トルクが得られる始動開始位置に移動する。
【0047】
ステップST15において、通電制御部44は、取得部41から、モータ11が回転したことを示す検出結果を取得する。
【0048】
ステップST16において、通電制御部44は、電磁石22に対する通電を解除する。
【0049】
ステップST17において、モータ制御部42は、モータ11の駆動制御を続行する。具体的には、モータ制御部42は、モータ11に対して、始動トルクの大きさのままで、制御する。又は、モータ制御部42は、モータ11に対して、始動トルクの大きさとは異なる大きさの駆動トルクで、制御する。そして、送風機100の始動制御方法は、終了する。
【0050】
次に、実施の形態1に係る始動制御装置40のハードウェア構成例について、図6を用いて説明する。図6A及び図6Bは、実施の形態1に係る始動制御装置40のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0051】
図6Aに示す如く、始動制御装置40は、コンピュータにより構成されており、当該コンピュータは、プロセッサ51及びメモリ52を有している。メモリ52には、そのコンピュータを、取得部41、モータ制御部42、判定部43、及び、通電制御部44として機能させるためのプログラムが記憶されている。メモリ52に記憶されているプログラムをプロセッサ51が読み出して実行することにより、取得部41、モータ制御部42、判定部43、及び、通電制御部44の機能が実現される。
【0052】
又は、図6Bに示す如く、始動制御装置40は、処理回路53を有するものであっても良い。この場合、処理回路53は、取得部41、モータ制御部42、判定部43、及び、通電制御部44により実現されるものであっても良い。
【0053】
又は、始動制御装置40は、プロセッサ51、メモリ52、及び、処理回路53を有するものであっても良い(不図示)。この場合、取得部41、モータ制御部42、判定部43、及び、通電制御部44の機能のうちの一部がプロセッサ51及びメモリ52により実現されて、残余の機能が処理回路53により実現されるものであっても良い。
【0054】
プロセッサ51は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ又はDSP(Digital Signal Processor)のうちの少なくとも一つを用いたものである。
【0055】
メモリ52は、例えば、半導体メモリ又は磁気ディスクのうちの少なくとも一方を用いたものである。より具体的には、メモリ52は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、SSD(Solid State Drive)又はHDD(Hard Disk Drive)のうちの少なくとも一つを用いたものである。
【0056】
処理回路53は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、SoC(System-on-a-Chip)又はシステムLSI(Large-Scale Integration)のうちの少なくとも一つを用いたものである。
【0057】
以上、実施の形態1に係る送風機100は、モータ11の駆動によって回転するファン12と、ファン12の周囲に設けられる外枠部材13と、ファン12に設けられる磁性体21と、外枠部材13に設けられ、モータ11が回転しないときに通電されることによって、磁性体21に対して吸引力を発揮し、ファン12を回転させる電磁石22とを備える。このため、送風機100は、既存のモータ11の構成を変更することなく、当該モータ11の始動性を向上させることができる。
【0058】
送風機100においては、磁性体21は、ファン12の羽根12bの先端に設けられる。このため、送風機100は、磁性体21をファン12に対して容易に設置することができる。
【0059】
送風機100においては、外枠部材13は、当該外枠部材13を貫通し、且つ、ファン12を収納する収納部13aを有し、電磁石22は、収納部13aの縁に設けられる。このため、送風機100は、電磁石22を磁性体21に対して可能な限り近づけて設置することができる。この結果、送風機100は、電磁石22が発揮する吸引力を、磁性体21に対して適切に作用させることができる。
【0060】
送風機100は、モータ11の回転状態を検出する回転検出部31から検出結果を取得する取得部41と、取得部41によって取得された検出結果と、モータ11を制御するモータ制御部42から出力された制御情報とに基づいて、モータ11に始動トルクが付与されているにも関わらず、モータ11が回転していないか否かを判定する判定部43と、判定部43が、モータ11に始動トルクが付与されているにも関わらず、モータ11が回転していないと判定した場合、電磁石22に対する通電を行う通電制御部44とを備える。このため、送風機100は、モータ11の始動時に、ロータ11bがどのような位置に停止されていても、当該ロータ11bが回転に必要な始動トルクを得ることができる。
【0061】
送風機100においては、通電制御部44は、電磁石22に対して通電を行った後、取得部41から、モータ11が回転したことを示す検出結果を取得した場合、電磁石22に対する通電を解除する。このため、送風機100は、電磁石22の磁性体21に対する吸引による、モータ11の回転への影響を抑えることができる。
【0062】
送風機100においては、通電制御部44は、モータ制御部42から、モータ11を停止させたことを示す制御情報を取得した場合、電磁石22に対する通電を行う。このため、送風機100は、次回の始動時において、ロータ11bを回転に必要な始動トルクが得られる始動開始位置に移動させるための、電磁石22に対する通電制御を、省略することができる。
【0063】
実施の形態2.
実施の形態2に係る送風機200について、図7を用いて説明する。図7は、実施の形態2に係る送風機200の正面図である。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0064】
実施の形態1に係る送風機100は、複数の磁性体21に対して、1つの電磁石22を備えている。これに対して、実施の形態2に係る送風機200は、複数の磁性体21に対して、複数の電磁石22を備えている。図7は、送風機200が、4つの磁性体21に対して、2つの電磁石22を備える例である。
【0065】
図7に示すように、2つの電磁石22は、外枠部材13の前面において、収納部13aの縁に沿って配置されている。2つの電磁石22は、ファン12の周方向において、羽根12bが設置される間隔と同じ間隔で設けられている。言い換えれば、2つの電磁石22は、ファン12の周方向において、磁性体21が設置される間隔と同じ間隔で設けられている。このため、各電磁石22が、対応する磁性体21をそれぞれ引き寄せる。この結果、ロータ11bは、回転に必要な始動トルクが得られる始動開始位置に、即座に移動することができる。なお、図7に示す矢印は、電磁石22が磁性体21を引き寄せたときのファン12の回転方向である。
【0066】
以上、実施の形態2に係る送風機200においては、電磁石22は、ファン12の周方向において、磁性体21が設置される間隔と同じ間隔で設けられる。このため、送風機200は、ロータ11bを、回転に必要な始動トルクが得られる始動開始位置に、即座に移動させることができる。
【0067】
実施の形態3.
実施の形態3に係る送風機300について、図8を用いて説明する。図8は、実施の形態3に係る送風機300の正面図である。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0068】
実施の形態1に係る送風機100は、複数の磁性体21に対して、1つの電磁石22を備えている。これに対して、実施の形態3に係る送風機300は、複数の磁性体21に対して、複数の電磁石22を備えている。図8は、送風機200が、4つの磁性体21に対して、2つの電磁石22を備える例である。
【0069】
図8に示すように、2つの電磁石22は、外枠部材13の前面において、収納部13aの縁に沿って配置されている。2つの電磁石22は、ファン12の周方向において、羽根12bが設置される間隔よりも短い間隔で設けられている。言い換えれば、2つの電磁石22は、ファン12の周方向において、磁性体21が設置される間隔よりも短い間隔で設けられている。このため、1つの磁性体21に対して、2つの電磁石22のうち、いずれか一方の電磁石22が吸引力を発揮する。この結果、ロータ11bは、回転に必要な始動トルクが得られる始動開始位置に、即座に移動することができる。なお、図8に示す矢印は、電磁石22が磁性体21を引き寄せたときのファン12の回転方向である。
【0070】
以上、実施の形態3に係る送風機300においては、電磁石22は、ファン12の周方向において、磁性体21が設置される間隔よりも短い間隔で設けられる。このため、送風機300は、ロータ11bを、回転に必要な始動トルクが得られる始動開始位置に、即座に移動させることができる。
【0071】
実施の形態4.
実施の形態4に係る送風機400について、図9を用いて説明する。図9は、実施の形態4に係る送風機400の正面図である。なお、上述した実施の形態1で説明した構成と同様の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0072】
実施の形態1に係る送風機100は、複数の磁性体21に対して、1つの電磁石22を備えている。これに対して、実施の形態4に係る送風機400は、複数の磁性体21に対して、1つの電磁石22を備えているものの、それらの設置位置が、送風機100のそれと異なっている。図9は、送風機400が、4つの磁性体21に対して、1つの電磁石22を備える例である。なお、送風機400は、1つの磁性体21を備えても良い。また、送風機400は、複数の電磁石22を備えても良い。
【0073】
図9に示すように、磁性体21は、軸部12aの前面に設けられている。磁性体21は、ファン12(軸部12a)の周方向において、等間隔で配置されている。これに対して、電磁石22は、軸部12aの前方側に設けられている。
【0074】
例えば、電磁石22は、取付板(図示省略)を介して、外枠部材13に取り付けられている。また、電磁石22は、カバー部材(図示省略)の前面又は後面に設けられている。このカバー部材は、網目状又はメッシュ状に形成されている。そして、カバー部材は、外枠部材13の収納部13aを前方側から覆うように、当該外枠部材13に取り付けられている。送風機400は、カバー部材を設けることによって、人体又は異物がファン12と接触することを防止している。
【0075】
以上、実施の形態4に係る送風機400においては、磁性体21は、ファン12の軸部12aに設けられ、電磁石22は、カバー部材の前面又は後面に設けられる。このため、送風機400は、磁性体21を羽根12bに設置できない場合においても、本開示の構成を適用することができる。
【0076】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、或いは、各実施の形態における任意の構成要素の変形、若しくは、各実施の形態における任意の構成要素の省略が可能である。
【0077】
以下、開示の諸形態を付記としてまとめて記載する。
【0078】
(付記1)
モータの駆動によって回転するファンと、
前記ファンの周囲に設けられる外枠部材と、
前記ファンに設けられる磁性体と、
前記外枠部材に設けられ、前記モータが回転しないときに通電されることによって、前記磁性体に対して吸引力を発揮し、前記ファンを回転させる電磁石とを備える
ことを特徴とする送風機。
【0079】
(付記2)
前記磁性体は、前記ファンの羽根の先端に設けられる
ことを特徴とする付記1記載の送風機。
【0080】
(付記3)
前記外枠部材は、当該外枠部材を貫通し、且つ、前記ファンを収納する収納部を有し、
前記電磁石は、前記収納部の縁に設けられる
ことを特徴とする付記2記載の送風機。
【0081】
(付記4)
前記電磁石は、前記ファンの周方向において、前記磁性体が設置される間隔と同じ間隔で設けられる
ことを特徴とする付記2又は付記3記載の送風機。
【0082】
(付記5)
前記電磁石は、前記ファンの周方向において、前記磁性体が設置される間隔よりも短い間隔で設けられる
ことを特徴とする付記2又は付記3記載の送風機。
【0083】
(付記6)
前記磁性体は、前記ファンの軸部に設けられ、
前記電磁石は、前記軸部の前方側に設けられる
ことを特徴とする付記1記載の送風機。
【0084】
(付記7)
前記モータの回転状態を検出する回転検出部から検出結果を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された検出結果と、前記モータを制御するモータ制御部から出力された制御情報とに基づいて、前記モータに始動トルクが付与されているにも関わらず、前記モータが回転していないか否かを判定する判定部と、
前記判定部が、前記モータに始動トルクが付与されているにも関わらず、前記モータが回転していないと判定した場合、前記電磁石に対する通電を行う通電制御部とを備える
ことを特徴とする付記1から付記6のうちのいずれか一項記載の送風機。
【0085】
(付記8)
前記通電制御部は、
前記電磁石に対して通電を行った後、前記取得部から、前記モータが回転したことを示す検出結果を取得した場合、前記電磁石に対する通電を解除し、
ことを特徴とする付記7記載の送風機。
【0086】
(付記9)
前記通電制御部は、
前記モータ制御から、前記モータを停止させたことを示す制御情報を取得した場合、前記電磁石に対する通電を行う
ことを特徴とする付記8記載の送風機。
【0087】
(付記10)
モータの駆動によって回転するファンと、
前記ファンの周囲に設けられる外枠部材と、
前記ファンに設けられる磁性体と、
前記外枠部材に設けられ、前記モータの停止時に通電されることによって、前記磁性体に対して吸引力を発揮し、前記ファンを回転させる電磁石とを備える送風機であって、
取得部が、前記モータの回転状態を検出する回転検出部から検出結果を取得するステップと、
判定部が、前記取得部によって取得された検出結果と、前記モータを制御するモータ制御部から出力された制御情報とに基づいて、前記モータに始動トルクが付与されているにも関わらず、前記モータが回転していないか否かを判定するステップと、
通電制御部が、前記判定部が、前記モータに始動トルクが付与されているにも関わらず、前記モータが回転していないと判定した場合、前記電磁石に対する通電を行うステップとを有する
ことを特徴とする送風機の始動制御方法。
【符号の説明】
【0088】
11 モータ、11a ステータ、11b ロータ、12 ファン、12a 軸部、12b 羽根、13 外枠部材、13a 収納部、14 支持部材、21 磁性体、22 電磁石、31 回転検出部、40 始動制御装置、41 取得部、42 モータ制御部、43 判定部、44 通電制御部、51 プロセッサ、52 メモリ、53 処理回路、100,200,300,400 送風機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9