(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167464
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】配筋検査装置、配筋検査方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20241127BHJP
G01B 11/08 20060101ALI20241127BHJP
G01B 11/16 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G01B11/00 H
G01B11/08 H
G01B11/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083562
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】591036457
【氏名又は名称】三菱電機エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久柴 拓也
(72)【発明者】
【氏名】平 謙二
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA22
2F065AA26
2F065AA53
2F065FF05
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065QQ31
(57)【要約】
【課題】 格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面の鉄筋を計測することができる配筋検査装置を提供する。
【解決手段】 配筋検査装置(1)は、配筋のステレオ画像を用いて湾曲面の三次元画像データを生成する三次元画像データ取得部(11)と、湾曲面に沿って複数の部分平面を設定する部分平面設定部(12)と、部分平面の画像を鉄筋(6)が互いに直交する正対画像に変換する画像変換部(13)と、正対画像を用いて鉄筋(6)の位置を検出する鉄筋検出部(14)と、複数の正対画像で検出された鉄筋(6)のうち同一のものを対応付ける対応付け部(15)と、同一のものとして対応付けられた鉄筋(6)の位置情報に基づいて湾曲面における鉄筋(6)を計測する計測処理部(16)を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面を有した配筋を検査する配筋検査装置であって、
前記配筋のステレオ画像を用いて前記湾曲面の三次元画像データを生成する三次元画像データ取得部と、
前記ステレオ画像における前記湾曲面に沿って複数の部分平面を設定する部分平面設定部と、
前記部分平面の画像を鉄筋が互いに直交する正対画像に変換する画像変換部と、
前記正対画像を用いて、前記部分平面に含まれる鉄筋の位置を検出する鉄筋検出部と、
複数の前記正対画像で検出された鉄筋のうち同一のものを対応付ける対応付け部と、
同一のものとして対応付けられた鉄筋の鉄筋位置情報に基づいて、前記湾曲面における鉄筋を計測する計測処理部と、を備えた
ことを特徴とする配筋検査装置。
【請求項2】
前記鉄筋検出部は、前記正対画像において縦横に交差する鉄筋に検出線をそれぞれ設定し、前記検出線が交差する点を中心とした所定の画素範囲の領域の中心画素位置を、縦横に鉄筋が交差する交差点とし、
前記計測処理部は、前記交差点を通る直線の位置を鉄筋の基準位置と決定し、決定した鉄筋の基準位置に基づいて、鉄筋径または鉄筋間隔の少なくとも一方を計測する
ことを特徴とする請求項1に記載の配筋検査装置。
【請求項3】
前記計測処理部は、鉄筋の基準位置に基づいて前記正対画像から鉄筋の部分画像を抽出し、抽出した鉄筋の部分画像を用いて鉄筋径を計測する
ことを特徴とする請求項2に記載の配筋検査装置。
【請求項4】
前記計測処理部は、鉄筋の部分画像が入力されると鉄筋径を出力する機械学習モデルを用いて、鉄筋径を推測する
ことを特徴とする請求項3に記載の配筋検査装置。
【請求項5】
格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面を有した配筋を検査する配筋検査装置による配筋検査方法であって、
三次元画像データ取得部が、前記配筋のステレオ画像を用いて前記湾曲面の三次元画像データを生成するステップと、
部分平面設定部が、前記ステレオ画像における前記湾曲面に沿って複数の部分平面を設定するステップと、
画像変換部が、前記部分平面の画像を鉄筋が互いに直交する正対画像に変換するステップと、
鉄筋検出部が、前記正対画像を用いて、前記部分平面に含まれる鉄筋の位置を検出するステップと、
対応付け部が、複数の前記正対画像で検出された鉄筋のうち同一のものを対応付けるステップと、
計測処理部が、同一のものとして対応付けられた鉄筋の鉄筋位置情報に基づいて、前記湾曲面における鉄筋を計測するステップと、を備えた
ことを特徴とする配筋検査方法。
【請求項6】
コンピュータを、
格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面を有した配筋を検査する配筋検査装置であって、
前記配筋のステレオ画像を用いて前記湾曲面の三次元画像データを生成する三次元画像データ取得部と、
前記ステレオ画像における前記湾曲面に沿って複数の部分平面を設定する部分平面設定部と、
前記部分平面の画像を鉄筋が互いに直交する正対画像に変換する画像変換部と、
前記正対画像を用いて、前記部分平面に含まれる鉄筋の位置を検出する鉄筋検出部と、
複数の前記正対画像で検出された鉄筋のうち同一のものを対応付ける対応付け部と、
同一のものとして対応付けられた鉄筋の鉄筋位置情報に基づいて、前記湾曲面における鉄筋を計測する計測処理部と、を備えた配筋検査装置、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配筋検査装置、配筋検査方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造物の施工においては、複数の鉄筋を組み上げて構成される配筋が設計通りに構成されているかどうかを検査する配筋検査が行われる。例えば、特許文献1には、格子状に組まれた鉄筋からなる複数層の平面を有した配筋を検査する配筋検査装置が記載されている。この配筋検査装置は、ステレオカメラにより撮影された配筋の三次元画像データを正対画像に変換し、正対画像から検査対象の平面における鉄筋の位置を検出し、鉄筋の位置に基づいて正対画像から鉄筋の画像を抽出し、鉄筋の画像を用いて鉄筋を検査するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載される従来の配筋検査装置は、配筋から格子状に組まれた鉄筋の平面を抽出し、平面における鉄筋を計測するものであるため、格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面の鉄筋を計測することができない、という課題があった。
【0005】
本開示は上記課題を解決するものであり、格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面の鉄筋を計測することができる、配筋検査装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る配筋検査装置は、格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面を有した配筋を検査する配筋検査装置であって、配筋のステレオ画像を用いて湾曲面の三次元画像データを生成する三次元画像データ取得部と、ステレオ画像における湾曲面に沿って複数の部分平面を設定する部分平面設定部と、部分平面の画像を鉄筋が互いに直交する正対画像に変換する画像変換部と、正対画像を用いて、部分平面に含まれる鉄筋の位置を検出する鉄筋検出部と、複数の正対画像で検出された鉄筋のうち同一のものを対応付ける対応付け部と、同一のものとして対応付けられた鉄筋の鉄筋位置情報に基づいて、湾曲面における鉄筋を計測する計測処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面を有した配筋のステレオ画像の湾曲面に沿って複数の部分平面を設定し、部分平面の画像を鉄筋が互いに直交する正対画像に変換し、正対画像を用いて部分平面に含まれる鉄筋を検出する。そして、複数の正対画像で検出された鉄筋のうち同一のものを対応付け、同一のものとして対応付けた鉄筋の鉄筋位置情報に基づいて湾曲面における鉄筋を計測する。これにより、本開示に係る配筋検査装置は、格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面の鉄筋を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る配筋検査装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】ステレオカメラに対して凹の湾曲面の撮像画像および部分平面画像を示す画面図である。
【
図4】湾曲面に設定した部分平面の概要を示す概要図である。
【
図5】ステレオカメラに対して凸の配筋の湾曲面の撮像画像および部分平面画像を示す画面図である。
【
図6】鉄筋の基準位置を決定する処理の概要を示す概要図である。
【
図7】実施の形態1に係る配筋検査方法を示すフローチャートである。
【
図8】
図8Aおよび
図8Bは、実施の形態1に係る配筋検査装置の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る配筋検査装置1の構成例を示すブロック図である。
図1において、配筋検査装置1は、格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面を有した配筋における鉄筋の本数、隣り合う鉄筋の間隔、鉄筋の径または鉄筋の節の間隔のうち少なくとも一つを検査する装置である。また、配筋検査装置1は、タブレット端末、スマートフォンまたはノートタイプのパーソナルコンピュータ(PC)である。配筋検査装置1には、
図1に示すように、有線または無線によりステレオカメラ2が接続されている。ステレオカメラ2が外付けされた装置に限らず、配筋検査装置1は、ステレオカメラ2を内蔵していてもよい。配筋検査において、検査者は、ステレオカメラ2で配筋を撮影する。
【0010】
配筋検査装置1は、ステレオカメラ2を搭載する端末装置と通信可能なサーバが備える構成要素であってもよい。例えば、端末装置は、SaaS(Software as a Service)の形態で提供される配筋検査を行うことが可能である。SaaSの形態で配筋検査を行う場合、端末装置には、配筋検査用アプリケーションがインストールされていなくてよい。配筋検査用アプリケーションは上記サーバで実行されており、端末装置は、汎用のWebブラウザ上で計測結果情報が提供される。配筋検査用アプリケーションは、サーバが備える記憶部に記憶されている。
また、端末装置には、配筋検査用アプリケーションがインストールされていてもよい。配筋検査用アプリケーションがインストールされた端末装置では、当該アプリケーションが実行されることで、配筋検査が可能となる。
【0011】
ステレオカメラ2は、左撮影部および右撮影部を有した撮影装置である。左撮影部は、左側から見た左視点画像を撮影する。右撮影部は、右側から見た右視点画像を撮影する。ステレオカメラ2は、左視点画像および右視点画像から構成される撮影画像を出力する。
なお、ステレオカメラ2の撮影範囲における画素ごとのカメラ画角情報(H,V)は、ステレオ画像に含めて配筋検査装置1へ出力される。このカメラ画角情報(H,V)は、ステレオ画像を構成する各画素に対しその画素がカメラの画角のどの位置にあるかを示す画角情報であり、画素のxy座標に対応する水平方向(H)および垂直方向(V)の角度で表される情報である。
【0012】
配筋検査装置1は、記憶部3、操作部4および表示部5を備え、さらに、
図1において図示しない演算部を備える。記憶部3は、配筋検査装置1として機能するコンピュータが備える記憶装置であって、HDD(Hard Disk Drive)、または、SSD(Solid State Drive)等のストレージ、もしくは、後述する
図8Bのメモリ104等を含むものである。なお、記憶部3は、配筋検査装置1がアクセス可能なものであればよく、配筋検査装置1の外部に設けられてもよい。
【0013】
操作部4は、配筋検査装置1として機能するコンピュータが備える表示部5の画面表示に対する操作を受け付ける入力装置である。例えば、配筋検査装置1が、スマートフォンまたはタブレット端末である場合、操作部4は、表示部5の表示画面と一体に設けられたタッチパネルである。配筋検査装置1がPCである場合、操作部4は、例えばマウスまたはキーボードである。
【0014】
また、表示部5は、配筋検査装置1として機能するコンピュータが備える表示装置である。例えば、表示部5は、LCD(Liquid Crystal Display)または有機EL(Electroluminescence)表示装置である。
【0015】
さらに、上記演算部は、配筋検査装置1の全体動作を制御する。演算部は、三次元画像データ取得部11、部分平面設定部12、画像変換部13、鉄筋検出部14、対応付け部15、および計測処理部16を備える。演算部が配筋検査用アプリケーションを実行することにより、三次元画像データ取得部11、部分平面設定部12、画像変換部13、鉄筋検出部14、対応付け部15、および計測処理部16の各種の機能が実現される。
【0016】
ここで、格子状に組まれた鉄筋からなる平面から鉄筋を検出する処理について説明し、次に格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面から鉄筋を検出する処理について説明する。
図2Aは、鉄筋が格子状に組まれた平面21から鉄筋を検出する処理の概要を示す概要図であり、ステレオカメラ2とその撮像対象の配筋とを側方からみた様子を示している。
図2Aにおいて、ステレオカメラ2は、平面21に正対する位置に配置されており、この位置で平面21を撮影する。
【0017】
ステレオカメラ2により撮影視野2Aで撮影された平面21の撮影画像(ステレオ画像)を用いることで、検出範囲A内の平面21の鉄筋が検出される。検出範囲Aは、平面21を介したステレオカメラ2側(前側)とその反対側(後ろ側)とが間隔Bである三次元空間領域である。特許文献1に記載される従来の配筋検査装置では、平面21のステレオ画像を用いて検出範囲Aに存在する鉄筋の位置を検出し、位置を検出した鉄筋の鉄筋径等を計測する。
【0018】
例えば、従来の配筋検査装置は、平面21のステレオ画像を用いて、検出範囲Aの鉄筋を含む物体の三次元点からステレオカメラ2までの距離情報を含む複数の三次元点データからなる三次元点群データを生成する。従来の配筋検査装置は、検出範囲Aから取得した三次元点群データにRANSAC(RANdom SAmple Consensus)法を施すことにより、検出範囲Aに含まれる平面21を特定する。
【0019】
また、
図2Aに示すようにステレオカメラ2が平面21と正対している場合、ステレオカメラ2によって撮影された平面21のステレオ画像は、撮影位置の遠近に起因した鉄筋径の不揃いがなく、かつ縦と横の鉄筋が互いに直交して写っている正対画像である。
従来の配筋検査装置は、このステレオ画像における鉄筋を画素単位で計測することで、平面21における鉄筋の径および隣り合う鉄筋の間隔を計測することができる。
【0020】
図2Bは、鉄筋が格子状に組まれた湾曲面22Aから鉄筋を検出する処理の概要を示す概要図であり、ステレオカメラ2とその撮像対象である配筋とを側方からみた様子を示している。
図2Bにおいて、湾曲面22Aは、
図2Aに示した平面21と同じ位置にあり、ステレオカメラ2は、
図2Aと同じ位置に配置されており、この位置で湾曲面22Aを撮影するものと仮定する。従来の配筋検査装置は、ステレオカメラ2により撮影視野2Aで撮影された湾曲面22Aのステレオ画像を用いることにより、検出範囲Aに含まれる湾曲面22Aの鉄筋を検出する。
【0021】
しかしながら、湾曲面22Aでは、撮影視野2Aに含まれていても検出範囲Aから外れてしまう鉄筋Cがあり、従来の配筋検査装置は、鉄筋Cを正確に検出できない。例えば、
図2Bに示すように、ステレオカメラ2に対して凹な湾曲面22Aを撮影したステレオ画像は、検出範囲Aから外れた鉄筋Cが検出範囲A内の鉄筋よりも大きく写り、平面21のときのように正対画像にならない。さらに、大きく写った鉄筋Cは、隣接する鉄筋をステレオカメラ2側からかくしてしまうので、ステレオ画像から鉄筋を正確に検出できない。
【0022】
図2Cは、複数の部分平面が設定された湾曲面22Aから鉄筋を検出する処理の概要を示す概要図であり、ステレオカメラ2とその撮像対象である配筋とを側方からみた様子を示している。
図2Cにおいて、
図2Bと同様に、湾曲面22Aは、
図2Aに示した平面21と同じ位置にあり、ステレオカメラ2は、
図2Aと同じ位置で湾曲面22Aを撮影するものと仮定する。
【0023】
図2Bに示したように検出範囲Aでは湾曲面22Aの鉄筋を正確に検出できないので、配筋検査装置1は、湾曲面22Aに沿って複数の部分平面(
図2Cでは、3つの部分平面)を設定し、部分平面に対応する検出範囲D1、D2およびD3で鉄筋を検出する。検出範囲D1、D2およびD3は、各部分平面を介したステレオカメラ2側(前側)とその反対側(後ろ側)とが間隔Eである三次元空間領域である。
【0024】
例えば、配筋検査装置1は、部分平面ごとのステレオ画像を用いて、検出範囲D1の鉄筋を含む物体の三次元点からステレオカメラ2までの距離情報を含む複数の三次元点データからなる、検出範囲D1における三次元点群データを生成する。同様に、検出範囲D2における三次元点群データと、検出範囲D3における三次元点群データとが生成される。配筋検査装置1は、検出範囲D1における三次元点群データにRANSAC法を施すことにより、検出範囲D1に含まれる部分平面を特定する。同様に、検出範囲D2に含まれる部分平面を特定し、検出範囲D3に含まれる部分平面を特定する。
【0025】
配筋検査装置1は、検出範囲D1、D2およびD3に含まれる部分平面のステレオ画像を、撮影位置の遠近に起因した鉄筋径の不揃いがなくかつ縦と横の鉄筋が互いに直交して写っている正対画像に変換する。そして、配筋検査装置1は、これらの正対画像における鉄筋を画素単位で計測することで、各部分平面における鉄筋の径および隣り合う鉄筋の間隔を計測することができる。これにより、配筋検査装置1は、格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面の鉄筋を計測することが可能である。
【0026】
次に、配筋検査装置1の構成要素について説明する。
三次元画像データ取得部11は、配筋のステレオ画像を用いて湾曲面の三次元画像データを生成する。例えば、三次元画像データ取得部11は、ステレオカメラ2によって撮影された配筋のステレオ画像から、湾曲面を含む配筋の三次元画像データを生成する。
【0027】
また、配筋検査装置1を携帯した検査者が、検査対象の配筋の周辺を移動することで、ステレオカメラ2は、配筋を複数の撮影角度から予め定められたフレームレイト(例えば30fps)で連続して撮影する。三次元画像データ取得部11は、配筋の左視点画像と同配筋の右視点画像(フレーム画像)との時系列データである撮影画像を、ステレオカメラ2から順次入力する。そして、三次元画像データ取得部11は、左視点画像と右視点画像をステレオマッチングすることにより、検査領域の三次元画像である三次元情報を撮影画像ごとに(フレーム画像ごとに)取得する。
【0028】
三次元画像データ取得部11は、撮影画像ごとに取得された三次元情報を用いて、配筋の三次元情報を再構成する。例えば、撮影画像ごとに取得された三次元画像は、ステレオカメラ2の移動により異なる撮影角度から撮影されたものである。
三次元画像データ取得部11は、予め定められた検査周期ごとに取得された複数の撮影画像それぞれに対応する三次元画像データを入力する。
【0029】
そして、三次元画像データ取得部11は、検査周期の期間に取得された各三次元画像データから、配筋を構成する鉄筋の特徴点(エッジ等)の三次元点を抽出して、三次元画像データにおいて同じ三次元点がそれぞれの三次元画像データにおいてどこに位置するのかを特定する。このようにして、三次元画像データ取得部11は、検査期間ごとに、配筋の三次元点群が特定された三次元画像データを復元する。
【0030】
部分平面設定部012は、ステレオカメラ2により撮影されたステレオ画像における湾曲面に沿って複数の部分平面を設定する。例えば、記憶部3には、検査対象の配筋が有する湾曲面の曲率R、および、湾曲面を区画する部分平面の数が記憶されているものとする。部分平面設定部12は、三次元画像データに含まれる三次元点群データを用いて湾曲面を特定し、記憶部3から読み出した曲率Rの逆数を半径とする円を側方から見て当該湾曲面に沿って設定する。部分平面設定部12は、側方から見て上記円と湾曲面とが交わる2点を求め、2点を通る部分平面を設定し、この部分平面を規定する座標(例えば、4頂点の座標)を、ステレオ画像上の二次元座標に変換する。部分平面設定部12が、これら一連の処理を、記憶部3から読み出した部分平面の数だけ繰り返すことにより、ステレオ画像における湾曲面に沿って複数の部分平面を設定することができる。
【0031】
湾曲面を区画する部分平面の数は、上述したように予め設定された値を使用してもよいが、検査対象の配筋が有する湾曲面の曲率Rを用いて算出したものであってもよい。
例えば、部分平面設定部12は、ステレオ画像における湾曲面の上下の端辺を特定し、上下の端辺の間隔を算出し、この間隔をさらに等間隔に区画する部分平面の数を決定するか、算出した間隔に含まれる三次元点の密度に基づいて部分平面の数を決定してもよい。
【0032】
また、部分平面の設定は、操作部4を用いて、ユーザが適宜設定してもよい。
例えば、部分平面設定部12は、湾曲面を有した配筋のステレオ画像を表示部5に表示し、操作部4を用いて画面上の湾曲面に複数のバウンディングボックスを設定することにより、これらのバウンディングボックス内に部分平面を設定する。そして、部分平面設定部12は、画面上で設定した部分平面を規定する座標(例えば、4頂点の座標)と、これらの座標に対応する三次元点情報とを特定する。これにより、ステレオ画像上の部分平面の座標と、これに対応する三次元点データ(例えば、距離情報)とを決定することが可能である。
【0033】
画像変換部13は、部分平面の画像を鉄筋が互いに直交する正対画像に変換する。例えば、画像変換部13は、部分平面を規定する4頂点の座標に基づいて、配筋が撮影されたステレオ画像から部分平面の画像を抽出する。次に、画像変換部13は、鉄筋が組み合わさった部分平面の矩形の4隅の位置座標を用いて正対変換行列を推定し、正対変換行列に基づいて、部分平面の画像を正対画像に変換する。正対変換行列は、ステレオ画像に写る部分平面ごとに異なるので、画像変換部13は、部分平面ごとに正対変換行列を推定し、推定した正対変換行列を用いて部分平面の画像を正対画像に変換する。
なお、正対画像における全ての画素は、ステレオカメラ2との距離が一定になるようにスケーリングされている。これにより、正対画像では、ステレオカメラ2と各部分平面との距離に応じた鉄筋の大きさの違いが補正される。
【0034】
図3は、ステレオカメラ2に対して凹の湾曲面22Aの撮像画像および部分平面画像を示す画面図である。
図3の左側の図は、ステレオカメラ2に対して凹である湾曲面22Aのステレオ画像が表示された画面31Aである。画面31Aに示すように、湾曲面22Aでは、破線で囲った部分DAに示すように、
図2Bに示した検出範囲Aから外れた鉄筋6が大きく写ってしまう。このため、画面31Aに表示された画像全体を一つの平面の画像として正対画像に変換しても、上記部分DAにおける鉄筋6の一部(検出範囲Aから外れた鉄筋6)は、ステレオカメラ2との距離が一定になるようにスケーリングされない。
【0035】
これに対し、部分平面設定部12は、湾曲面22Aにおける部分DAに対して部分平面を設定する。画像変換部13は、画面31Aに表示されたステレオ画像全体を正対画像に変換するのではなく、部分DAに設定された部分平面の画像を正対画像に変換する。
図3の右側の図は、部分DAに設定された部分平面の画像を正対画像に変換したものが表示された画面31Bである。このように、配筋検査装置1は、湾曲面22Aにおいて湾曲の影響が強い部分DAに部分平面を設定し、各部分平面で最適な正対変換行列を求めることにより、ステレオカメラ2との距離が一定になるようにスケーリングされた部分平面の正対画像を算出できる。
【0036】
画面31Bでは、縦方向と横方向の鉄筋6が互いに直交しており、ステレオカメラ2との距離が一定になるようにスケーリングされている。このため、鉄筋検出部14が、画面31Bに表示された画像から、部分平面に含まれる鉄筋6を検出することができる。検出された横方向の鉄筋6は、例えば、画面31Bに示すようにマーカ311Aで識別され、検出された縦方向の鉄筋6は、マーカ311Bで識別される。この画面31Bを参照することにより、作業者は、部分平面に含まれる縦方向と横方向との鉄筋6を的確に認識することができる。
【0037】
ステレオカメラ2に対して凹の湾曲面を検査対象とした例を示したが、配筋検査装置1は、ステレオカメラ2に対して凸の湾曲面も検査対象とすることも可能である。
図4は、ステレオカメラ2に対して凸の湾曲面22Bに設定した部分平面D4の概要を示す概要図であり、ステレオカメラ2とその撮像対象である配筋とを側方からみた様子を示している。ステレオカメラ2が撮影した画像上には、仮想位置Pに鉄筋が写る。
図4に示すように、湾曲面22Bの部分平面D4では、端辺に向かうにつれて鉄筋6がステレオカメラ2から離れるように位置するので、ステレオカメラ2が撮影した画像上で鉄筋6が小さく写ってしまう。このため、湾曲面22Bのステレオ画像全体を一つの平面の画像として正対画像に変換しても、部分平面D4に組まれた鉄筋6の一部(
図2Bに示した検出範囲Aから外れた鉄筋6)は、ステレオカメラ2との間の距離が一定になるようにスケーリングされない。
【0038】
図5は、ステレオカメラ2に対して凸の配筋の湾曲面22Bの撮像画像および部分平面画像を示す画面図である。
図5の左側の図は、ステレオカメラ2に対して凸である湾曲面22Bのステレオ画像が表示された画面31Cである。画面31Cに示すように、湾曲面22Bでは、破線で囲った部分DBに示すように、
図2Bに示した検出範囲Aから外れた鉄筋6が小さく写ってしまう。このため、画面31Cに表示された画像全体を一つの平面の画像として正対画像に変換しても、上記部分DBにおける鉄筋6の一部(検出範囲Aから外れた鉄筋6)は、ステレオカメラ2との距離が一定になるようにスケーリングされない。
【0039】
これに対して、部分平面設定部12は、湾曲面22Bにおける部分DBに対して部分平面を設定する。画像変換部13は、画面31Cに表示されたステレオ画像全体を正対画像に変換するのではなく、部分DBに設定された部分平面の画像を正対画像に変換する。
図5の右側の図は、部分DBに設定された部分平面の画像を正対画像に変換したものが表示された画面31Dである。このように、配筋検査装置1は、湾曲面22Bにおいて湾曲の影響が強い部分DBに部分平面を設定し、各部分平面で最適な正対変換行列を求めることにより、ステレオカメラ2との距離が一定になるようにスケーリングされた部分平面の正対画像を算出できる。
【0040】
画面31Dでは、縦方向と横方向の鉄筋6が互いに直交しており、ステレオカメラ2との距離が一定になるようにスケーリングされている。このため、鉄筋検出部14が、画面31Dに表示された画像から、部分平面に含まれる鉄筋6を検出することができる。検出された横方向の鉄筋6は、例えば、画面31Dに示すようにマーカ311Aで識別され、検出された縦方向の鉄筋6は、マーカ311Bで識別される。この画面31Dを参照することにより、作業者は、部分平面に含まれる縦方向と横方向との鉄筋6を的確に認識することができる。
【0041】
鉄筋検出部14は、部分平面の正対画像を用いて、当該部分平面に含まれる鉄筋の位置を検出する。例えば、鉄筋検出部14は、正対画像を閾値処理で二値化し、二値化された画像における鉄筋の画像部分以外がマスクされたマスク画像を生成して、鉄筋の画像部分の画素をカウントすることにより正対画像における鉄筋の位置を検出して、鉄筋の位置を示す鉄筋検出情報を生成する。
【0042】
例えば、鉄筋検出部14は、部分平面の撮影画像の左視点画像と右視点画像を用いて、同一位置にある鉄筋の画像上のずれ量を左右の視差として算出し、視差を用いて鉄筋の画像部分を特定し、特定した画像部分の画素値を「1」とし、それ以外の画像部分を「0」としてマスク画像を生成する。そして、鉄筋検出部14は、マスク画像において白画素のカウント数が閾値以上である位置を鉄筋の位置として検出する。鉄筋検出部14は、マスク画像を回転させて白画素の数をカウントすることで、鉄筋のX方向の位置およびY方向の位置を検出することができる。すなわち、正対画像において、縦方向に並ぶ鉄筋の位置と横方向に並ぶ鉄筋の位置が検出される。
【0043】
次に、鉄筋検出部14は、マスク画像において鉄筋に対応する線分を特定する。マスク画像において、白画素の領域(A)、領域(B)および領域(C)がある場合、どの領域が鉄筋の画像に対応するのか不明である。そこで、鉄筋検出部14は、白画素の領域(A)、領域(B)および領域(C)を通る座標軸における領域(A)の長さD(1)、領域(B)の長さD(2)および領域(C)の長さD(3)と、領域(A)と領域(B)との間隔D(4)と、領域(B)と領域(C)との間隔D(5)とを算出する。
【0044】
鉄筋検出部14は、間隔D(4)および間隔D(5)のうち、閾値以上の間隔が空いた領域間は鉄筋ではないと判定し、閾値未満の間隔が空いた領域同士は同じ鉄筋に対応する画像領域であると判定する。例えば、鉄筋検出部14は、閾値未満の間隔D(4)が空いた領域(A)と領域(B)を通り長さがD(6)である線分で示す画像領域を、同じ鉄筋に対応する画像領域であると判定する。またD(5)は閾値以上であるので、鉄筋検出部14は、マスク画像において領域(B)と領域(C)との間に鉄筋に対応する画像領域がないと判定する。
【0045】
鉄筋検出部14は、正対画像において鉄筋の画像領域を抽出すると、画像領域において縦横に交差する鉄筋に検出線をそれぞれ設定し、これら検出線が互いに交差する点を中心とした所定の画素範囲の領域の中心画素位置Gを、縦横に鉄筋が交差する交差点とする。
図6は、鉄筋6の基準位置を決定する処理の概要を示す概要図である。
図6の左側の図には、正対画像において縦横に交差する鉄筋6を示しており、
図6の右側の図は、
図6の左側の図において画素領域Fの部分拡大図である。
【0046】
例えば、鉄筋検出部14は、
図6の左側の図に示す格子状に組まれた鉄筋6の画像領域を抽出すると、抽出した画像領域で縦横に交差する鉄筋6に検出線L1と検出線L2とを設定する。検出線は、例えば、
図6の右側の図に示すように、鉄筋6の幅方向の中心位置(中心画素位置)を通り、かつ鉄筋6の長手方向に並んだ画素からなる画素列を通る直線である。
【0047】
続いて、鉄筋検出部14は、検出線L1と検出線L2が互いに直交する点を中心としたP1画素×P2画素の範囲の画素領域Fの中心画素位置Gを、縦横に鉄筋6が交差する交差点とする。例えば、
図6の右側の図に示すように、中心画素位置Gは、P1=5画素×P2=5画素の矩形領域のうち、検出線L1と検出線L2とが直交している点である。
これにより、画素単位で縦横の鉄筋6の交差点が決定されるので、配筋検査装置1は、正対画像から鉄筋6の位置を正確に検出することができる。鉄筋検出部14は、マスク画像において、鉄筋6の画像領域であると判定した部分の位置を示す鉄筋検出情報を正対画像に付与し、この正対画像を対応付け部15に出力する。
【0048】
対応付け部15は、様々な部分平面の正対画像で検出された鉄筋6のうち同一のものを対応付ける。例えば、対応付け部15は、鉄筋検出部14により生成された縦方向の鉄筋6の鉄筋位置情報を用いて、湾曲面に沿って設定された複数の部分平面の正対画像から検出された縦方向の鉄筋6のうち、正対画像における縦方向の座標が同じであるか、またはほぼ同じのもの(例えば、許容誤差を含む位置座標)を対応付ける。同一の鉄筋6の対応付ける方法としては、複数の部分平面の正対画像における鉄筋6の画像領域を抽出して、これらの画像領域を含む部分画像を同一の鉄筋6として対応付けることが考えられる。
対応付け部15は、複数の部分平面の正対画像からそれぞれ抽出された同一の鉄筋6を含む部分画像およびその鉄筋位置情報を、計測処理部16に出力する。
【0049】
計測処理部16は、同一のものとして対応付けられた鉄筋6の鉄筋位置情報に基づいて湾曲面における鉄筋6を計測する。例えば、計測処理部16は、
図6の右側の図に示した交差点を通る直線である検出線L1と検出線L2との位置を鉄筋6の基準位置と決定し、鉄筋6の基準位置に基づいて正対画像から鉄筋の部分画像を抽出し、抽出した鉄筋の部分画像を用いて鉄筋径または鉄筋間隔の少なくとも一方を計測する。これにより、配筋検査装置1は、鉄筋径または鉄筋間隔の少なくとも一方を正確に計測することが可能である。
【0050】
配筋検査装置1は、検査対象の配筋が有する湾曲面の鉄筋6の検査結果情報を、記憶部3(または、
図8Bに示すメモリ104)に記憶された検査結果データベースに逐次登録する。検査結果情報には、鉄筋径、鉄筋間隔および鉄筋本数等の検査結果に加え、これらの計測に利用された画像も含まれる。
【0051】
計測処理部16は、配筋が新たに撮影された場合に、既に登録された検査結果情報との相関演算を行い、既に登録された検査結果情報との相関が高いと評価された撮影画像から得られた検査結果情報を、新たに検査結果データベースに登録する。例えば、評価位置が配筋までの距離が1.5mであるものとする。評価位置は、既に登録した結果と新たに検査した結果との相関を評価する位置であり、検査対象の鉄筋までの距離が所定値(例えば1.5m)である。計測処理部16は、部分平面の正対画像に写る鉄筋6を検査すると、この画像を、評価位置で撮影したときの画像サイズに縮小または拡大した画像を生成し、生成した画像を検査結果データベースに登録する。
【0052】
計測処理部16は、基準位置を含む鉄筋6の長さのうち、
図6の右側の図に示した中心画素位置Gから10%の長さ範囲にある部分の画素に0値を設定して検査対象から除き、残りの80%の長さ範囲にある部分を、検査対象の鉄筋6のセグメントとする。
なお、検査対象の鉄筋6のセグメントにおける画素数が規定の画素数(例えば、512画素)に満たない場合、計測処理部16は、鉄筋6が明確に撮影されていないものとし、当該セグメント部分の画素に0値を設定して検査対象から除く。
【0053】
一方、計測処理部16は、正対画像における鉄筋6の長手方向に沿った複数の画素の輝度値からなる走査線を、鉄筋6の長手方向に直交する方向の画素ごとに取得する。
続いて、計測処理部16は、画素ごとの走査線の輝度値を周波数変換(例えば、FFT;Fast Fourier Transform)した複数の周波数変換スペクトルを算出する。
【0054】
例えば、計測処理部16は、複数の周波数変換スペクトルのうち、鉄筋6と背景との境目位置に対応する走査線iを特定し、走査線i同士の間隔を算出する。次に、計測処理部16は、走査線i同士の間隔を実空間の長さに変換することにより、鉄筋径を算出する。例えば、ステレオカメラ2が部分平面まで1.5mの撮影距離で正対する場合、撮影画像が水平方向200opxであると、実空間では、0.75mm/pxである。
【0055】
計測処理部16は、鉄筋径を算出した鉄筋6の正対画像に対応付けられている他の正対画像についても同様の処理を施して鉄筋径を算出する。例えば、計測処理部16は、これらの鉄筋径のうち最大値または最小値を最終的な鉄筋径としてもよいし、これらの鉄筋径の平均値を最終的な鉄筋径としてもよい。
【0056】
また、計測処理部16は、鉄筋6の鉄筋位置情報に基づいて、隣り合う鉄筋6の間隔を算出してもよい。この場合も、計測処理部16は、鉄筋間隔を算出した鉄筋6の正対画像に対応付けられている他の正対画像についても同様の処理を施して鉄筋間隔を算出する。例えば、計測処理部16は、これらの鉄筋間隔のうち最大値または最小値を最終的な鉄筋間隔としてもよいし、これらの鉄筋間隔の平均値を最終的な鉄筋間隔としてもよい。
【0057】
鉄筋6の画像領域の走査を開始する始点と走査を終了する終点は、例えば、JIS規格における最大鉄筋径に一定の余裕値を加算した走査範囲を設け、走査範囲内に鉄筋画像を設定する。これにより、走査範囲の一方側が始点となり他方側が終点となる。
また、走査を開始する始点と走査を終了する終点は、操作部4を用いて、ユーザが設定してもよい。
【0058】
また、鉄筋6の長手方向に沿った走査線i=0、1、2および3は、鉄筋6の長手方向に直交する方向(鉄筋の幅方向)に設定される。鉄筋6の画像領域における輝度値変化量が一様でない場合に、走査線i=0、1、2および3は、例えば、走査線i=3に沿った画素列の全体的な輝度値は高いが、走査線に沿った輝度値の変化量は小さいといった状況となる。この場合、走査線i=0に沿った画素列は、日差しの陰側にあるため、全体的な輝度値は低いが、走査線に沿った輝度値の変化量は大きい。
【0059】
そこで、計測処理部16は、走査線i=0、1、2および3のそれぞれに沿った画素列の輝度値に周波数変換を行い、各走査線の周波数変換スペクトルを算出する。例えば、走査線i=0、1、2および3の周波数変換スペクトルをSP0、SP1、SP2およびSP3とする。走査線i=0に沿った輝度値の変化量が大きい場合、周波数変換スペクトルSP0は、振幅の大きなスペクトルとなる。また、走査線i=3に沿った輝度値の変化量が小さい場合には、周波数変換スペクトルSP3は、振幅の小さなスペクトルとなる。
【0060】
計測処理部16は、周波数変換スペクトルSP0、SP1、SP2およびSP3の周波数ごとの輝度値の変化量の中央値を、鉄筋6の特徴量として算出する。すなわち、周波数変換スペクトルSP0、SP1、SP2およびSP3を、周波数ごとの輝度値の変化量の中央値からなる周波数変換スペクトルに合成する。
さらに、計測処理部16は、各セグメントにおける合成後の周波数変換スペクトルを、周波数ごとの輝度値の変化量の中央値からなる周波数変換スペクトルに合成してもよい。
【0061】
計測処理部16は、部分平面の撮影画像の正対画像から求めた周波数変換スペクトル(上記合成後の周波数変換スペクトル)における、ピークの周波数での輝度値の変化量の中央値と、予め登録された鉄筋6の画像から求めた周波数変換スペクトルにおけるピークの周波数での輝度値の変化量の中央値との相関係数を算出する。
そして、計測処理部16は、相関係数の値に応じて重み付けたピークの周波数での輝度値の変化量の中央値を加算したものを、相関評価値として算出して、相関評価値が閾値を超えた鉄筋6の周波数変換スペクトルを新たに登録する。
【0062】
例えば、計測処理部16は、周波数変換スペクトル同士の相関を全周波数域で評価する相関演算(1)と、周波数変換スペクトルに最初に現れる第1のピーク同士(PeakAとPeakB)の相関を評価する相関演算(2)と、周波数変換スペクトルに次に現れる第2のピーク同士の相関を評価する相関演算(3)とを行う。
相関演算(1)において、計測処理部16は、(min(PeakA,PeakB)-4)~256で表される相関評価範囲で、両スペクトルの相関を示す相関スコア(1)を算出する。PeakAは、予め登録された周波数変換スペクトルに最初に現れた第1のピークの強度であり、PeakBは、今回の検査で得られた周波数変換スペクトルに最初に現れた第1のピークの強度である。
相関演算(2)において、計測処理部16は、(PeakA)±10で表される相関評価範囲で、両スペクトルの相関を示す相関スコア(2)を算出する。
相関演算(3)において、計測処理部16は、(PeakA×2)±10で表す相関評価範囲で、両スペクトルの相関を示す相関スコア(3)を算出する。
【0063】
計測処理部16は、相関スコア(1)、相関スコア(2)、および相関スコア(3)のそれぞれの値に応じた重み係数を決定する。そして、計測処理部16は、例えば、下記式に従って総合相関スコアを算出する。計測処理部16は、総合相関スコアが閾値以上である場合に、今回の検査で得られた周波数変換スペクトルを用いた検査結果情報が、予め登録された検査結果情報に類似すると判定して、当該検査結果情報を検査結果データベースに登録する。これにより、配筋検査装置1は、既に登録済みの検査結果との相関が高く、信頼性の高い検査結果を新たに登録することができる。
総合相関スコア=(相関スコア(1)×0.5)+(相関スコア(2)×0.2)+(相関スコア(3)×0.3)
【0064】
また、計測処理部16は、正対画像から抽出した鉄筋6の画像を複数の部分画像に分割し、複数の部分画像が入力されると鉄筋6の径を出力する学習モデルを用いて、鉄筋径を推論してもよい。例えば、計測処理部16は、一本の鉄筋6の画像を複数に分割した部分画像を入力とし、鉄筋の検査情報として鉄筋径を推論する学習モデルを用いて、鉄筋径を推論する。この学習モデルは、部分平面の正対画像ごとに生成される。これにより、配筋検査装置1は、鉄筋径を正確に計測することが可能である。
【0065】
学習モデルを生成する学習装置(
図1において不図示)は、学習用データから鉄筋径を推論する学習を行うことにより、学習モデルを生成する。学習用データは、学習モデルの入力データである、鉄筋6の複数の部分画像データと正解ラベルとを含むデータセットである。正解ラベルは、複数の部分画像データのそれぞれに対応する鉄筋径を示す情報である。学習モデルは、記憶部3に記憶される。学習アルゴリズムとして、例えば、深層学習(Deep Learning)、ニューラルネットワーク、遺伝的プログラミング、機能論理プログラミングまたはサポートベクターマシンが用いられる。
【0066】
計測処理部16は、部分平面の正対画像から、長手方向に沿った鉄筋6の画像を抽出する。さらに、計測処理部16は、部分平面の正対画像から順次同一の大きさの部分画像を抽出する。これらの部分画像は、例えば縦横が同じ画素数の正方形の画像であり、鉄筋径がR1である。計測処理部16は、複数の部分画像を学習モデルに入力して推論を行い、部分画像ごとに鉄筋径R1の鉄筋6が写っている確率と鉄筋6以外が写っている確率とを算出する。
【0067】
鉄筋6の種類には、例えば、JIS規格に基づく16種類がある。16種類の鉄筋6には、D4、D5、D6、D8、D10、D13、D16、D19、D22、D25、D29、D32、D35、D38、D41およびD51という「呼び名」が付与されている。呼び名は、鉄筋の公称直径を丸めた径の大きさを示している。
【0068】
呼び名がD10である鉄筋の公称直径は、9.53(mm)であり、呼び名がD13である鉄筋の公称直径は、12.7(mm)であり、呼び名がD16である鉄筋の公称直径は、15.9(mm)である。なお、建築物の骨格として一般的に使用される鉄筋は、D10以降の鉄筋である。
【0069】
続いて、学習モデルは、同じ鉄筋の画像から抽出された全ての部分画像データについての推論結果データを平均する。例えば、推論結果データには、各種類の鉄筋が写っている確率を平均した値と、鉄筋以外のもの(NON)が写っている確率を平均した値が含まれる。計測処理部16は、推論結果データに基づいて鉄筋径R1を判定する。これにより、計測処理部16は、学習モデルを用いることにより、鉄筋径R1を正確に検出でき、鉄筋径R1に基づいて鉄筋の種類を判定することができる。
また、学習モデルは、鉄筋6の複数の部分画像が入力されると、隣り合う鉄筋6同士の間隔を出力するものでもよいし、一本の鉄筋6における節同士の間隔を推論するものであってもよい。
【0070】
図7は、実施の形態1に係る配筋検査方法を示すフローチャートである。
三次元画像データ取得部11が、配筋のステレオ画像を用いて、配筋における湾曲面の三次元画像データを生成する(ステップST1)。
部分平面設定部12が、三次元画像データを用いて、ステレオ画像に写る配筋の湾曲面に沿って複数の部分平面を設定する(ステップST2)。
画像変換部13が、部分平面の画像を鉄筋が互いに直交する正対画像に変換する(ステップST3)。
鉄筋検出部14が、正対画像を用いて部分平面に含まれる鉄筋の位置を検出する(ステップST4)。
対応付け部15が、複数の正対画像で検出された鉄筋のうち同一のものを対応付ける(ステップST5)。
計測処理部16が、同一のものとして対応付けられた鉄筋の位置情報に基づいて、湾曲面における鉄筋を計測する(ステップST6)。
この方法を実行することで、配筋検査装置1は、格子状に組まれた鉄筋からなる湾曲面の鉄筋を計測することができる。
【0071】
次に、配筋検査装置1の機能を実現するハードウェア構成について説明する。
配筋検査装置1が備える、三次元画像データ取得部11、部分平面設定部12、画像変換部13、鉄筋検出部14、対応付け部15および計測処理部16の機能は、処理回路によって実現される。すなわち、配筋検査装置1は、
図7に示したステップST1からステップST6までの各処理を実行するための処理回路を備える。処理回路は、専用のハードウェアであってもよいが、メモリに記憶されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)であってもよい。
【0072】
図8Aは、配筋検査装置1の機能を実現するハードウェア構成を示すブロック図である。また、
図8Bは、配筋検査装置1の機能を実現するソフトウェアを実行するハードウェア構成を示すブロック図である。
図8Aおよび
図8Bにおいて、入力インタフェース100は、ステレオカメラ2から配筋検査装置1へ出力される画像情報、記憶部3から配筋検査装置1へ出力される情報および操作部4から配筋検査装置1へ出力される操作情報を中継するインタフェースである。出力インタフェース101は、配筋検査装置1から表示部5へ出力される配筋検査結果を中継するインタフェースである。
【0073】
処理回路が、
図8Aに示す専用のハードウェアの処理回路102である場合、処理回路102は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)または、これらを組み合わせたものが該当する。
配筋検査装置1が備える三次元画像データ取得部11、部分平面設定部12、画像変換部13、鉄筋検出部14、対応付け部15、および計測処理部16の機能を、別々の処理回路が実現してもよく、これらの機能をまとめて一つの処理回路が実現してもよい。
【0074】
処理回路が、
図8Bに示すプロセッサ103である場合、配筋検査装置1が備える三次元画像データ取得部11、部分平面設定部12、画像変換部13、鉄筋検出部14、対応付け部15および計測処理部16の機能は、ソフトウェア、ファームウェアまたはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。なお、ソフトウェアまたはファームウェアは、プログラムとして記述されてメモリ104に記憶される。メモリ104は、例えば、
図1に示した記憶部3である。
【0075】
プロセッサ103は、メモリ104に記憶される配筋検査用アプリケーションのプログラムを読み出して実行することにより、配筋検査装置1が備える、三次元画像データ取得部11、部分平面設定部12、画像変換部13、鉄筋検出部14、対応付け部15および計測処理部16の機能を実現する。
例えば、配筋検査装置1は、プロセッサ103により実行されるときに、
図7に示したステップST1からステップST6の処理が結果的に実行される上記プログラムを記憶するためのメモリ104を備える。このプログラムは、三次元画像データ取得部11、部分平面設定部12、画像変換部13、鉄筋検出部14、対応付け部15、および計測処理部16が行う処理の手順または方法を、コンピュータに実行させる。メモリ104は、コンピュータを、三次元画像データ取得部11、部分平面設定部12、画像変換部13、鉄筋検出部14、対応付け部15および計測処理部16として機能させるためのプログラムが記憶されたコンピュータ可読記憶媒体であってもよい。
【0076】
メモリ104は、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)、EEPROM(Electrically-EPROM)などの不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク、フレキシブルディスク、光ディスク、コンパクトディスク、ミニディスク、DVDなどが該当する。
【0077】
配筋検査装置1が備える、三次元画像データ取得部11、部分平面設定部12、画像変換部13、鉄筋検出部14、対応付け部15、および計測処理部16の機能の一部が専用のハードウェアで実現され、残りの一部がソフトウェアまたはファームウェアで実現されてもよい。例えば、三次元画像データ取得部11は、専用のハードウェアである処理回路102によってその機能が実現され、部分平面設定部12、画像変換部13、鉄筋検出部14、対応付け部15および計測処理部16は、プロセッサ103がメモリ104に記憶されたプログラムを読み出して実行することによりその機能が実現される。
このように、処理回路はハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせによって上記機能を実現することができる。
【0078】
以上のように、実施の形態1に係る配筋検査装置1は、配筋のステレオ画像を用いて、湾曲面の三次元画像データを生成する三次元画像データ取得部11と、ステレオ画像における湾曲面に沿って複数の部分平面を設定する部分平面設定部12と、部分平面の画像を鉄筋6が互いに直交する正対画像に変換する画像変換部13と、正対画像を用いて、部分平面に含まれる鉄筋6の位置を検出する鉄筋検出部14と、複数の正対画像で検出された鉄筋6のうち同一のものを対応付ける対応付け部15と、同一のものとして対応付けられた鉄筋6の鉄筋位置情報に基づいて、湾曲面における鉄筋6を計測する計測処理部16とを備える。これにより、配筋検査装置1は、格子状に組まれた鉄筋6からなる湾曲面の鉄筋6を計測することができる。
【0079】
実施の形態1に係る配筋検査装置1において、鉄筋検出部14は、正対画像において縦横に交差する鉄筋6に検出線L1およびL2をそれぞれ設定し、検出線L1およびL2が交差する点を中心とした所定の画素範囲の領域の中心画素位置Gを縦横に鉄筋6が交差する交差点とする。計測処理部16は、交差点を通る直線の位置を鉄筋6の基準位置と決定し、決定した鉄筋6の基準位置に基づいて鉄筋径または鉄筋間隔の少なくとも一方を計測する。これにより、配筋検査装置1は、正対画像から鉄筋6の位置を正確に検出でき、鉄筋6を正確に計測することができる。
【0080】
実施の形態1に係る配筋検査装置1において、計測処理部16は、鉄筋6の基準位置に基づいて正対画像から鉄筋6の部分画像を抽出し、抽出した鉄筋6の部分画像を用いて鉄筋径を計測する。これにより、配筋検査装置1は、鉄筋径を正確に計測することが可能である。
【0081】
実施の形態1に係る配筋検査装置1において、計測処理部16は、鉄筋6の部分画像が入力されると鉄筋径を出力する機械学習モデルを用いて鉄筋径を推測する。これにより、配筋検査装置1は、鉄筋径を正確に計測することが可能である。
【0082】
実施の形態1に係る配筋検査方法は、三次元画像データ取得部11が、配筋のステレオ画像を用いて湾曲面の三次元画像データを生成するステップST1と、部分平面設定部12が、湾曲面に沿って複数の部分平面を設定するステップST2と、画像変換部13が、部分平面の画像を鉄筋6が互いに直交する正対画像に変換するステップST3と、鉄筋検出部14が、正対画像を用いて、部分平面に含まれる鉄筋6の位置を検出するステップST4と、対応付け部15が、複数の正対画像で検出された鉄筋6のうち同一のものを対応付けるステップST5と、計測処理部16が、同一のものとして対応付けられた鉄筋6の鉄筋位置情報に基づいて、湾曲面における鉄筋6を計測するステップST6とを備える。この方法を実行する配筋検査装置は、格子状に組まれた鉄筋6からなる湾曲面の鉄筋6を計測することが可能である。
【0083】
実施の形態1に係るプログラムを実行したコンピュータは、配筋のステレオ画像を用いて湾曲面の三次元画像データを生成する三次元画像データ取得部11と、ステレオ画像における湾曲面に沿って複数の部分平面を設定する部分平面設定部12と、部分平面の画像を鉄筋6が互いに直交する正対画像に変換する画像変換部13と、正対画像を用いて、部分平面に含まれる鉄筋6の位置を検出する鉄筋検出部14と、複数の正対画像で検出された鉄筋6のうち同一のものを対応付ける対応付け部15と、同一のものとして対応付けられた鉄筋6の鉄筋位置情報に基づいて、湾曲面における鉄筋6を計測する計測処理部16とを備える配筋検査装置1として機能する。これにより、格子状に組まれた鉄筋6からなる湾曲面の鉄筋6を計測する配筋検査装置1を提供することができる。
【0084】
なお、各実施の形態の組み合わせまたは実施の形態のそれぞれの任意の構成要素の変形もしくは実施の形態のそれぞれにおいて任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 配筋検査装置、2 ステレオカメラ、2A 撮影視野、3 記憶部、4 操作部、5 表示部、6 鉄筋、11 三次元画像データ取得部、12 部分平面設定部、13 画像変換部、14 鉄筋検出部、15 対応付け部、16 計測処理部、21 平面、22A,22B 湾曲面、31A,31B,31C,31D 画面、100 入力インタフェース、101 出力インタフェース、102 処理回路、103 プロセッサ、104 メモリ、311A,311B マーカ。