IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 松本油脂製薬株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167469
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】泡消火薬剤用消泡剤
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20241127BHJP
   A62D 1/02 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B01D19/04 B
B01D19/04 A
A62D1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083567
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川久保 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】武田 悠介
【テーマコード(参考)】
2E191
4D011
【Fターム(参考)】
2E191AA01
2E191AB13
2E191AB17
4D011CA01
4D011CB03
4D011CB11
4D011CB12
4D011CC01
4D011CC07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】長期保管後も高い消泡性を発揮できる、泡消火薬剤用消泡剤を提供する。
【解決手段】消泡成分(A)及び化合物(B)を含む泡消火薬剤用消泡剤であって、前記化合物(B)が、キレート剤(B1)及びpH緩衝剤(B2)から選ばれる少なくとも1種であり、前記消泡剤の不揮発分に占める消泡成分(A)の重量割合が1~98重量%である、泡消火薬剤用消泡剤。前記キレート剤(B1)が3級アミン系キレート剤を含み、前記pH緩衝剤(B2)が、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、有機カルボン酸塩、エチドロン酸塩、リン酸塩、第一リン酸塩、第二リン酸塩及び第三リン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消泡成分(A)及び化合物(B)を含む泡消火薬剤用消泡剤であって、
前記化合物(B)が、キレート剤(B1)及びpH緩衝剤(B2)から選ばれる少なくとも1種であり、
前記消泡剤の不揮発分に占める消泡成分(A)の重量割合が1~98重量%である、泡消火薬剤用消泡剤。
【請求項2】
前記キレート剤(B1)が3級アミン系キレート剤を含み、
前記pH緩衝剤(B2)が、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、有機カルボン酸塩、エチドロン酸塩、リン酸塩、第一リン酸塩、第二リン酸塩及び第三リン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の泡消火薬剤用消泡剤。
【請求項3】
前記3級アミン系キレート剤がエチレンジアミン四酢酸塩、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、ニトロ三酢酸塩及びジエチレントリアミン塩から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項2に記載の泡消火薬剤用消泡剤。
【請求項4】
前記キレート剤(B1)がアルカリ金属塩であり、
前記pH緩衝剤(B2)がアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載の泡消火薬剤用消泡剤。
【請求項5】
前記キレート剤(B1)がナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種であり、
前記pH緩衝剤(B2)がリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩及びトリエタノールアミン塩から選ばれる少なくとも1種である、請求項1~3のいずれかに記載の泡消火薬剤用消泡剤。
【請求項6】
前記消泡成分(A)が、無機成分(A1)、シリコーン成分(A2)及び金属石鹸(A3)から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれかに記載の泡消火薬剤用消泡剤。
【請求項7】
界面活性剤(C)をさらに含む、請求項1~3のいずれかに記載の泡消火薬剤用消泡剤。
【請求項8】
前記消泡剤の不揮発分に占める前記化合物(B)及び前記界面活性剤(C)の合計の重量割合が、2~99重量%である、請求項7に記載の泡消火薬剤用消泡剤。
【請求項9】
フッ素系泡消火薬剤用又はたん白系泡消火薬剤用である、請求項1~3のいずれかに記載の泡消火薬剤用消泡剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡消火薬剤用消泡剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
泡消火設備は、定期的に放出点検が実施されている。この点検では、放出された泡の状態を確認する必要があるため、実際に泡を放出して点検することが義務付けられている。
泡消火設備で放出された消火用泡は、自然状態では消泡し難く、泡の回収処理に時間がかかり、非常に効率が悪いという問題があった。
【0003】
そこで、定期点検時に、泡消火設備で消火薬剤を放出した際に、オイル系やシリコーン系の液体、あるいは消泡性を有する粉末剤などを含む消泡剤を用いて消泡処理する技術(特許文献1及び2)などがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61-97009号公報
【特許文献2】特開平6-154513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の粉末消泡剤は、倍率20倍以下の低発泡の消火用泡では、泡径が小さく、泡膜を安定化している疎水基と親水基の分子構造が密集していることから、消泡剤が泡膜に侵入し難く、消泡効果が十分でなかった。また、特許文献2の消泡剤では、経時的に消泡効果が低下し、長期間保管後のものでは十分な消泡性が発揮されない場合があった。
本発明は、長期保管後も高い消泡性を発揮できる、泡消火薬剤用消泡剤である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の消泡成分を特定量と、キレート剤及びpH緩衝剤から選ばれる特定の化合物とを含む泡消火薬剤用消泡剤であれば、上記課題を解決することができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明の泡消火薬剤用消泡剤は、以下の<1>~<9>の態様を含むものである。
<1> 消泡成分(A)及び化合物(B)を含む泡消火薬剤用消泡剤であって、前記化合物(B)が、キレート剤(B1)及びpH緩衝剤(B2)から選ばれる少なくとも1種であり、前記消泡剤の不揮発分に占める消泡成分(A)の重量割合が1~98重量%である、泡消火薬剤用消泡剤。
<2> 前記キレート剤(B1)が3級アミン系キレート剤を含み、前記pH緩衝剤(B2)が、ホウ酸塩、四ホウ酸塩、有機カルボン酸塩、エチドロン酸塩、リン酸塩、第一リン酸塩、第二リン酸塩及び第三リン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>に記載の泡消火薬剤用消泡剤。
<3> 前記3級アミン系キレート剤がエチレンジアミン四酢酸塩、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、ニトロ三酢酸塩及びジエチレントリアミン塩から選ばれる少なくとも1種を含む、<2>に記載の泡消火薬剤用消泡剤。
<4> 前記キレート剤(B1)がアルカリ金属塩であり、前記pH緩衝剤(B2)がアルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種である、<1>~<3>のいずれかに記載の泡消火薬剤用消泡剤。
<5> 前記キレート剤(B1)がナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種であり、前記pH緩衝剤(B2)がリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩及びトリエタノールアミン塩から選ばれる少なくとも1種である、<1>~<4>のいずれかに記載の泡消火薬剤用消泡剤。
<6> 前記消泡成分(A)が、無機成分(A1)、シリコーン成分(A2)及び金属石鹸(A3)から選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<5>のいずれかに記載の泡消火薬剤用消泡剤。
<7> 界面活性剤(C)をさらに含む、<1>~<6>のいずれかに記載の泡消火薬剤用消泡剤。
<8> 前記消泡剤の不揮発分に占める前記化合物(B)及び前記界面活性剤(C)の合計の重量割合が、2~99重量%である、<7>に記載の泡消火薬剤用消泡剤。
<9> フッ素系泡消火薬剤用又はたん白系泡消火薬剤用である、<1>~<8>のいずれかに記載の泡消火薬剤用消泡剤。
【発明の効果】
【0008】
本発明の泡消火薬剤用消泡剤は、長期保管後も高い消泡性を発揮できる。
本発明の泡消火薬剤用消泡剤は、強固な泡消火薬剤に対しても噴霧や混合により迅速に消泡でき、泡の回収が容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、泡消火薬剤用消泡剤(以下、単に消泡剤ということがある)の各成分について説明する。
〔消泡成分(A)〕
消泡成分(A)は、泡消火薬剤用消泡剤に含有され、文字通り泡を消す役割を果たすものであれば特に限定はない。消泡成分(A)は、25℃において固状、液状を問わない。
消泡成分(A)は、消泡効果の観点から無機成分(A1)、シリコーン成分(A2)及び金属石鹸(A3)から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましく無機成分(A1)を含むとより好ましい。
【0010】
無機成分(A1)としては、粒子状物質であれば、特に限定されるものではないが、二酸化ケイ素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、ヒュームドTiO、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム及びこれらの混合物等が挙げられ、1種又は2種以上使用されてもよい。これらの中でも消泡性の点でシリカ及び二酸化チタンが特に好ましい。
シリカのBET法による表面積の下限は、50m/g以上が好ましく、100m/g以上がより好ましく、200m/g以上がさらに好ましい。一方、該表面積の上限は1000m/g以下が好ましく、900m/g以下がより好ましく、800m/g以下がさらに好ましい。
シリカは公知の方法、例えば、ハロゲン化珪素の熱分解法、珪酸金属塩、例えば珪酸ナトリウムの分解沈殿法、及び、ゲル形成法等により製造することができる。
消泡成分(A)に使用するシリカとしては、消泡性の点でヒュ-ムドシリカ、沈殿シリカ及びゲル形成シリカが特に好ましい。
【0011】
無機成分(A1)の体積平均粒子径は、特に限定されないが、本願効果を奏する点で0.1~100μmが好ましい。該平均粒子径の上限は、50μmがより好ましく、30μmがさらに好ましい。一方、該平均粒子径の下限は、0.5μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。
【0012】
シリコーン成分(A2)は、オルガノポリシロキサン類の総称であって、シリコーンオイル、シリコーンゴム、及びシリコーン樹脂から選ばれる少なくとも1種を含むものを意味する。
オルガノポリシロキサン類としては、たとえば、ジメチルポリシロキサン、ジエチルポリシロキサン、メチルイソプロピルポリシロキサン、メチルドデシルポリシロキサン等のジアルキルポリシロキサン;メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体等のアルキルフェニルポリシロキサン;メチル(フェニルエチル)ポリシロキサン、メチル(フェニルプロピル)ポリシロキサン等のアルキルアラルキルポリシロキサン;3,3,3-トリフルオロプロピルメチルポリシロキサン等を挙げることができる。これらのオルガノポリシロキサン類は、1種または2種以上を併用してもよい。
【0013】
シリコーン成分としては、泡に容易に拡散する観点から、分子構造が直鎖状で、重合度が低く常温で流動性を有するシリコーンオイル等が好ましい。その粘度については特に限定はないが、消泡性と浸透性のバランスの点で、25℃における粘度が、100~500万mPa・sが好ましい。該粘度の上限は、50万mPa・sがより好ましく、10万mPa・sがさらに好ましく、1万mPa・sが特に好ましい。一方、該粘度の下限は、200mPa・sがより好ましく、300mPa・sがさらに好ましく、400mPa・sが特に好ましい。なお、本発明で粘度とは、コーンプレート型粘度計で測定したものを意味するものとする。
【0014】
金属石鹸(A3)としては、例えば炭素数8~24の有機酸の非アルカリ金属塩が挙げられ、1種又は2種以上を含んでも良い。
【0015】
金属石鹸を構成する有機酸については、特に限定はないが、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、5-ドデセン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、7-テトラデセン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、パクセン酸、オレイン酸、リシノール酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、パウリン酸から選ばれる1種であればよく、2種以上を含んでも良い。
【0016】
金属石鹸の非アルカリ金属塩については、特に限定はないが、消泡性の点で、Al、Ag、Ba、Ca、Ce、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Hg、Li、Mg、Mn、Ni、Pb、Sn、Th、Ti、Znから選ばれる少なくとも1種の塩が好ましく、これらのうち2種以上を含んでも良い。
【0017】
金属石鹸の二次粒子の体積平均粒子径については、特に限定はないが、消泡性の点で、0.1~200μmが好ましい。該平均粒子径の上限は、100μmがより好ましく、50μmがさらに好ましく、40μmが特に好ましく、30μmが最も好ましい。一方、該平均粒子径の下限は、0.5μmがより好ましく、1.0μmがさらに好ましく、1.5μmが特に好ましく、2.0μmが最も好ましい。
【0018】
〔化合物B〕
本発明の泡消火薬剤用消泡剤は、キレート剤(B1)及びpH緩衝剤(B2)から選ばれる少なくとも1種の化合物(B)を含む。
本発明の泡消火薬剤用消泡剤は、泡表面に化合物(B)が吸着することにより泡の膜厚が薄くなり、消泡成分が入り込みやすくなることで破泡され、破泡後には下層の泡に同様な作用が働くことで迅速な消泡性が発揮されると考えている。さらに、長期保管後も高い消泡性を発揮できるのは、化合物(B)により泡消火薬剤用消泡剤の経時的劣化を防いでいるため、長期保管後も高い消泡性を発揮できると考えている。
【0019】
キレート剤(B1)としては、金属イオンに配位して金属イオンを安定化できる化合物であれが特に限定はないが、本願効果を奏する点で、3級アミン系キレート剤が好ましい。
該3級アミン系キレート剤としては、本願効果を奏する点で、エチレンジアミン四酢酸塩、2-ヒドロキシエチルエチレンジアミン塩、ニトロ三酢酸塩及びジエチレントリアミン塩から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
キレート剤(B1)は、金属イオンの塩であれば特に限定はないが、本願効果を奏する点で、アルカリ金属塩が好ましい。アルカリ金属塩としては、本願効果をより奏する点で、ナトリウム塩及びカリウム塩から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
キレート剤(B1)としては、本願効果を奏する点で、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン六酢酸五ナトリウムが特に好ましい。
キレート剤(B1)は1種または2種以上を併用しても良い。
【0020】
pH緩衝剤(B2)としては、前記キレート剤(B1)以外の成分で消泡剤に酸又は塩基を加えた際に起こる水素イオン濃度の変化を小さくする作用があるものであれば特に限定はないが、本願効果を奏する点でホウ酸塩、四ホウ酸塩、有機カルボン酸塩、エチドロン酸塩、リン酸塩、第一リン酸塩、第二リン酸塩及び第三リン酸塩から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
pH緩衝剤(B2)は本願効果を奏する点で、アルカリ金属塩、アンモニウム塩及びアミン塩から選ばれる少なくとも1種であると好ましく、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、ジエタノールアミン塩及びトリエタノールアミン塩から選ばれる少なくとも1種であるとさらに好ましい。
pH緩衝剤(B2)としては、本願効果を奏する点で四ホウ酸ナトリウムが特に好ましい。
pH緩衝剤(B2)は1種または2種以上を併用しても良い。
【0021】
〔界面活性剤(C)〕
本発明の泡消火薬剤用消泡剤は、さらに界面活性剤(C)を含んでも良い。界面活性剤(C)としては、アニオン界面活性剤(C1)、ノニオン界面活性剤(C2)及びカチオン界面活性剤(C3)が挙げられ、本願効果を奏する点で、アニオン界面活性剤(C1)及びノニオン界面活性剤(C2)から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましい。
〔アニオン界面活性剤(C1)〕
アニオン界面活性剤(C1)としては、特に限定はないが、泡消火薬剤への浸透及び消泡性が優れる点から、スルホン酸型アニオン界面活性剤(C1-1)、硫酸エステル型アニオン界面活性剤(C1-2)、及びリン酸エステル型アニオン界面活性剤(C1-3)から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましく、スルホン酸型アニオン界面活性剤(C1-1)、及びリン酸エステル型アニオン界面活性剤(C1-3)から選ばれる少なくとも1種を含むとより好ましく、スルホン酸型アニオン界面活性剤(C1-1)を含むとさらに好ましい。
【0022】
スルホン酸型アニオン界面活性剤(C1-1)としては、例えば、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、分岐ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;α-テトラデセンスルホン酸ナトリウム、α-ヘキサデセンスルホン酸ナトリウム、α-ヘキサデセンスルホン酸カリウム等のα-オレフィンスルホン酸塩;ドデシルスルホン酸ナトリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウム等のアルカンスルホン酸塩;α-スルホラウリン酸メチルナトリウム、メトキシヘキサエチレングリコール-α-スルホラウリン酸メチルナトリウム等のα-スルホ脂肪酸エステル塩;ココイルイセチオン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸アンモニウム等のアシルイセチオン酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等のN-アシル-N-メチルタウリン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホコハク酸塩;プロピルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルナフタレンスルホン酸塩等を挙げることができる。スルホン酸型アニオン界面活性剤(C1-1)としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩が好ましく、ジアルキルスルホコハク酸塩がさらに好ましい。これらのスルホン酸型アニオン界面活性剤(C1-1)は1種または2種以上を併用してもよい。
【0023】
硫酸エステル型アニオン界面活性剤(C1-2)としては、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸カリウム、ドデシル硫酸トリエタノールアミン、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン(3)ドデシル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレン(3)セチル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレン(3)セチル硫酸エステルトリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーエル硫酸エステル塩;ロート油等の硫酸化油;硫酸化オレイン酸ブチル等の硫酸化脂肪酸エステル塩等を挙げることができる。上記で、ポリオキシエチレン(3)とは、オキシエチレン基の繰返し単位数が3であるポリオキシエチレン基を意味する。硫酸エステル型アニオン界面活性剤(C1-2)としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、硫酸化脂肪酸エステル塩等が好ましく、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーエル硫酸エステル塩等がさらに好ましい。これらの硫酸エステル型アニオン界面活性剤(C1-2)は1種または2種以上を併用してもよい。
【0024】
リン酸エステル型アニオン界面活性剤(C1-3)としては、例えば、ドデシルリン酸ナトリウム、ドデシルリン酸カリウム、ステアリルリン酸ナトリウム、ステアリルリン酸カリウム等のアルキルリン酸塩:ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルリン酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩:ポリオキシエチレン(3)ラウリルフェニルエーテルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルフェニルエーテルリン酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩を挙げることができる。リン酸エステル型アニオン界面活性剤(C1-3)としては、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等が好ましく、アルキルリン酸エステル塩がさらに好ましい。これらのリン酸エステル型アニオン界面活性剤(C1-3)は1種または2種以上を併用してもよい。
【0025】
〔ノニオン界面活性剤(C2)〕
ノニオン界面活性剤(C2)は、特に限定はないが、泡消火薬剤への浸透及び消泡が優れる点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C2-1)、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(C2-2)、及び、エステル系ノニオン界面活性剤(C2-3)から選ばれる少なくとも1種を含むと好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C2-1)を含むとさらに好ましい。
【0026】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C2-1)としては、例えば、ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(15)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(9)sec-アルキル(C12アルキル体~C15アルキル体)エーテル、ポリオキシエチレン(12)オレイルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ポリオキシプロピレン(8)セチルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテルが挙げられる。
これらのポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C2-1)は1種または2種以上を併用してもよい。
【0027】
ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(C2-2)としては、例えば、ポリオキシエチレン(10)ノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン(24)スチリルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが挙げられる。
これらのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル(C2-2)は1種または2種以上を併用してもよい。
【0028】
エステル系ノニオン界面活性剤(C2-3)としては、例えば、グリセリンモノラウレート、グリセリンセスキラウレート、グリセリンジラウレート、グリセリントリラウレート、グリセリンモノステアレート、グリセリンセスキステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンセスキオレエート、グリセリンジオレエート、グリセリントリオレエート等のグリセリンアルキレート:ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールステアレート、ポリエチレングリコールオレエート等のポリエチレングリコールアルキレート:モノラウリン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル:ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等が挙げられる。
これらのエステル系ノニオン界面活性剤(C2-3)は1種または2種以上を併用してもよい。
【0029】
〔カチオン界面活性剤(C3)〕
カチオン界面活性剤(C3)としては、特に限定はないが、泡消火薬剤への浸透及び消泡が優れる点から、第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(C3-1)を含むと好ましい。
第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(C3-1)としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられ、泡消火薬剤への浸透及び消泡がより優れる点から、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライドを含むと好ましい。
これらの第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤(C3-1)は1種または2種以上を併用してもよい。
【0030】
〔水〕
本発明の泡消火薬剤用消泡剤は低濃度でも十分消泡効果があり、作業性及び経済性の観点から水に希釈して使用してもよく、あらかじめ水に希釈しておいても良い。水としては、イオン交換水、蒸留水、超純水、工業用水、水道水、海水などが挙げられる。
【0031】
〔その他成分〕
本発明の泡消火薬剤用消泡剤は、その他の成分として、防腐剤、粘度調整剤等を含んでいても良い。
粘度調整剤としては、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類、電解質、水溶性高分子等が挙げられる。
【0032】
〔泡消火薬剤用消泡剤〕
本発明の泡消火薬剤用消泡剤の不揮発分に占める消泡成分(A)の重量割合は、1~98重量%であり、本願効果を奏する点で、該重量割合の上限は、80重量%が好ましく、70重量%がより好ましく、50重量%がさらに好ましく、30重量%が最も好ましい。一方、該重量割合の下限は、2重量%が好ましく、3重量%がより好ましく、4重量%がさらに好ましく、5重量%が最も好ましい。
なお、ここで不揮発分とは、泡消火薬剤用消泡剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分をいう。
【0033】
本発明の泡消火薬剤用消泡剤の不揮発分に占める化合物(B)の重量割合は、本願効果を奏する点で、1~99重量%が好ましい。該重量割合の上限は、80重量%がより好ましく、70重量%がさらに好ましく、60重量%が最も好ましい。一方、該重量割合の下限は、5重量%がより好ましく、10重量%がさらに好ましく、15重量%が最も好ましい。
【0034】
本発明の泡消火薬剤用消泡剤が界面活性剤(C)を含有する場合、不揮発分に占める界面活性剤(C)の重量割合は、本願効果を奏する点で、1~98重量%が好ましい。該重量割合の上限は、90重量%がより好ましく、85重量%がさらに好ましく、80重量%が最も好ましい。一方、該重量割合の下限は、10重量%がより好ましく、15重量%がさらに好ましく、20重量%が最も好ましい。
【0035】
本発明の泡消火薬剤用消泡剤が界面活性剤(C)を含有する場合、不揮発分に占める化合物(B)及び界面活性剤(C)の合計の重量割合は、本願効果を奏する点で、2~99重量%が好ましい。該重量割合の上限は、90重量%がより好ましく、85重量%がさらに好ましく、80重量%が最も好ましい。一方、該重量割合の下限は、10重量%がより好ましく、15重量%がさらに好ましく、20重量%が最も好ましい。
【0036】
本発明の泡消火薬剤用消泡剤が水を含有する場合、水の含有量については特に限定はないが、取扱性の点で、泡消火薬剤用消泡剤に占める水の重量割合は、20~99重量%が好ましい。該重量割合の上限は、97重量%がより好ましく、96重量%がさらに好ましく、95重量%が最も好ましい。一方、該重量割合の下限は、30重量%がより好ましく、40重量%がさらに好ましく、50重量%が最も好ましい。
【0037】
本発明の泡消火薬剤用消泡剤がその他の成分を含有する場合、本願効果を奏する点で、泡消火薬剤用消泡剤の不揮発分に占めるその他の成分の重量割合は、1~50重量%が好ましい。該重量割合の上限は、40重量%がより好ましく、30重量%がさらに好ましく、25重量%が最も好ましい。一方、該重量割合の下限は、2重量%がより好ましく、3重量%がさらに好ましく、5重量%が最も好ましい。
【0038】
本発明の泡消火薬剤用消泡剤は、フッ素系泡消火薬剤又はたん白系泡消火薬剤に好適である。
【0039】
泡消火薬剤用消泡剤に界面活性剤(C)として、アニオン界面活性剤(C1)及びノニオン界面活性剤(C2)から選ばれる少なくとも1種を含む場合、本願効果を奏する点で泡消火薬剤用消泡剤のpHは6~12が好ましい。該pHの下限は、7がより好ましく、8がさらに好ましく、9が特に好ましい。一方、該pHは11.5がより好ましく、11がさらに好ましい。
泡消火薬剤用消泡剤にカチオン界面活性剤(C3)を含む場合、本願効果を奏する点で泡消火薬剤用消泡剤のpHは2~7が好ましい。該pHの下限は、3がより好ましい。一方、該pHは6がより好ましく、5がさらに好ましい。
pHは、不揮発分の濃度を水により1重量%に調整した後測定したものである。
【0040】
〔泡消火薬剤用消泡剤の製造方法〕
泡消火薬剤用消泡剤の製造方法としては、従来公知の方法が挙げられる。例えば、消泡成分(A)に化合物(B)、界面活性剤(C)及びその他成分を混合し、これに水を加え均一にすることで調製できる。
【0041】
〔泡消火薬剤の消泡方法〕
上記泡消火薬剤用消泡剤を泡消火薬剤に散布する場合、取り扱い性の点で、水により希釈して不揮発分の重量割合が1~15重量%となる濃度に希釈して使用すると好ましい。該濃度は2~10重量%がより好ましく、3~6重量%がさらに好ましい。
上記泡消火薬剤用消泡剤を泡消火薬剤に散布する方法としては、公知の方法を採用できる。
【0042】
以下に実施例、比較例を示す。本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0043】
表1~4に記載の各成分を配合し、ガラス棒で良く撹拌し、水を加えて不揮発分が6重量%となるように泡消火薬剤用消泡剤を調製した。
また、実施例13~18、比較例9~16においては、調製した消泡剤のpHを表3及び4に記載の値に調整した。pHが4以下の場合は乳酸、9以上の場合は炭酸ナトリウムを用いて実施した。
実施例1~18、比較例1~16の泡消火薬剤用消泡剤の消泡性能については、フッ素系泡消火薬剤(メガフォーム(登録商標)AGF-3T、DIC株式会社製)をミキサーで20倍発泡させ500mLビーカーに500mLの泡を入れた後、消泡剤6%水溶液15mLを30秒かけスプレーで噴霧した後の泡高さの変化を計測した。
なお、消泡性能については泡消火薬剤用消泡剤を作製した直後と作製後2ヶ月経過後のものについて評価を行い、以下の基準で判定を行った。
40分後に液面が見え、泡がほとんど消失したものを合格とした。
40分後に泡が残存しているものを不合格とした。
【0044】
また、表1~4の記載のうち、A1~D2に係る成分は以下のものを使用した。
A1:二酸化ケイ素(粒子径:10μm、BET比表面積:250m/g)
A2:ジメチルシリコーン(粘度:1万mPa・s(25℃))
A3:ステアリン酸マグネシウム(体積平均粒子径:10μm)
B1-1:エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム
B1-2:ジエチレントリアミン六酢酸五ナトリウム
B2:四ホウ酸ナトリウム
C1:ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム
C2:ポリオキシエチレン(7)ラウリルエーテル
C3:ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド
D1:エチレングリコール
D2:プロピレングリコール
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
【表6】
【0051】
【表7】
【0052】
【表8】
【0053】
表1~8の実施例1~18及び比較例1~16から分かるとおり、実施例に係る消泡剤は、消泡成分(A)及び化合物(B)を含む泡消火薬剤用消泡剤であって、前記化合物(B)が、キレート剤(B1)及びpH緩衝剤(B2)から選ばれる少なくとも1種であり、前記消泡剤の不揮発分に占める消泡成分(A)の重量割合が1~98重量%であるため、作製2ヶ月後も優れた消泡性能を有している。
一方、消泡成分(A)がない場合(比較例4~8、13~16)、化合物(B)がない場合(比較例2、3、6、10~12、15)、消泡成分(A)及び化合物(B)を含むが消泡成分(A)の重量割合が1~98重量%でない場合(比較例1、9)では、本願の課題を解決できていない。