(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016747
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】火力発電方法
(51)【国際特許分類】
F23J 1/00 20060101AFI20240131BHJP
F22B 1/18 20060101ALI20240131BHJP
F23K 1/00 20060101ALI20240131BHJP
F23L 7/00 20060101ALI20240131BHJP
C25C 3/04 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F23J1/00 A
F22B1/18 D
F23K1/00 Z
F23L7/00 C
C25C3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119084
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】390029012
【氏名又は名称】株式会社エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 力
【テーマコード(参考)】
3K023
3K161
4K058
【Fターム(参考)】
3K023JA01
3K023JB01
3K161AA05
3K161AA08
3K161JA40
3K161LA12
3K161LA42
3K161LA49
3K161LA50
4K058AA17
4K058BA05
4K058BB05
4K058CA18
4K058CA20
4K058CB03
(57)【要約】
【課題】石炭火力発電で培った技術を利用し、二酸化炭素の排出を抑えた火力発電方法を提供する。
【解決手段】本発明の資源循環型の火力発電方法は、発電用ボイラの燃焼室内で燃料を燃焼させて発電する発電工程と、燃焼灰から燃料の原材料を生成する資源再生工程と、を備え、燃料が、マグネシウム、又は、少なくとも表面に水素化された層を有する水素化マグネシウムであり、燃焼灰が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は、その混合物であり、資源再生工程が、燃焼灰を材料に塩化マグネシウムを生成する塩素化工程と、塩化マグネシウムを材料にマグネシウムを生成する溶融塩電解工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
資源循環型の火力発電方法であって、
発電用ボイラの燃焼室内で燃料を燃焼させて発電する発電工程と、
前記燃焼で発生する燃焼灰から燃料の原材料を生成する資源再生工程と、を備え、
前記燃料が、マグネシウム、又は、少なくとも表面に水素化された層を有する水素化マグネシウムであり、
前記燃焼灰が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は、その混合物であり、
前記資源再生工程が、
前記燃焼灰を材料に塩化マグネシウムを生成する塩素化工程と、
前記塩素化工程で生成した塩化マグネシウムを材料に溶融塩電解を行い、マグネシウムを生成する溶融塩電解工程と、を備えることを特徴とする火力発電方法。
【請求項2】
前記燃料は、水素化率が30質量%以下の前記水素化マグネシウムであり、
前記資源再生工程が、
前記溶融塩電解工程で生成したマグネシウムを150μm以下に微粒化する微粒化工程と、
前記微粒化工程で微粒化したマグネシウムの表面を水素化し、水素化率が30質量%以下の水素化マグネシウムを生成する水素化工程と、を備え、
前記燃焼が、粉末燃焼バーナを用いて行われることを特徴とする請求項1に記載の火力発電方法。
【請求項3】
前記微粒化工程が、
前記溶融塩電解工程で生成したマグネシウムを粗粉砕する粗粉砕工程と、
前記粗粉砕工程で粉砕したマグネシウムを150μm以下に粉砕する微粉砕工程と、を備え、
前記微粉砕工程で粉砕したマグネシウムは、前記水素化工程が終了するまで酸素に触れないように取扱われることを特徴とする請求項2に記載の火力発電方法。
【請求項4】
前記微粉砕工程が、粉砕助剤として、無機化合物の粉末を添加して行われていることを特徴とする請求項3に記載の火力発電方法。
【請求項5】
前記無機化合物が、酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項4に記載の火力発電方法。
【請求項6】
水分が、燃焼促進剤として、前記燃焼室内に供給されることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項に記載の火力発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火力発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用ボイラを備える石炭火力発電システムは、一般に知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
そして、我が国は、世界有数の石炭火力発電技術を保有しているにも関わらず、石炭が燃焼時に二酸化を排出するという問題のために、その技術の活用の場が失われつつある。
【0003】
このような問題の1つの解決策となる技術として、火力発電所の排ガスから二酸化炭素を分離回収し、その回収した二酸化炭素を貯留する、いわゆる、CCSの取組が行われている。
【0004】
例えば、非特許文献2には、CCSに関する北海道の苫小牧市での取り組みについての紹介が行われており、具体的には、火力発電所の排ガスから二酸化炭素を分離回収し、その回収した二酸化炭素を海岸から3~4km程度離れた海底下の地中深くに圧入し、貯留していることが説明されている。
このように地中深くに圧入された二酸化炭素は長期間にわたって安定して貯留されるとともに、長い年月をかけて塩水に溶解、及び、岩石の隙間で鉱物になると考えられている。
【0005】
しかしながら、このような貯留を行うためには、二酸化炭素を貯留可能な隙間のある地層であること、その上が二酸化炭素を通さない地層でおおわれていることなど制約が多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】“地域環境保全の推進 石炭火力発電所のしくみとさまざまな環境保全対策”、[online]、沖縄電力株式会社、[令和4年6月30日検索]、インターネット<URL:https://www.okiden.co.jp/environment/report2017/sec6/sec63.html>
【非特許文献2】“CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編)”、[online]、2020年11月27日、経済産業省資源エネルギー庁、[令和4年6月16日検索]、インターネット<URL:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、石炭火力発電で培った技術を利用し、二酸化炭素の排出を抑えた火力発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の資源循環型の火力発電方法は、発電用ボイラの燃焼室内で燃料を燃焼させて発電する発電工程と、前記燃焼で発生する燃焼灰から燃料の原材料を生成する資源再生工程と、を備え、前記燃料が、マグネシウム、又は、少なくとも表面に水素化された層を有する水素化マグネシウムであり、前記燃焼灰が、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、又は、その混合物であり、前記資源再生工程が、前記燃焼灰を材料に塩化マグネシウムを生成する塩素化工程と、前記塩素化工程で生成した塩化マグネシウムを材料に溶融塩電解を行い、マグネシウムを生成する溶融塩電解工程と、を備える。
【0009】
(2)上記(1)の構成において、前記燃料は、水素化率が30質量%以下の前記水素化マグネシウムであり、前記資源再生工程が、前記溶融塩電解工程で生成したマグネシウムを150μm以下に微粒化する微粒化工程と、前記微粒化工程で微粒化したマグネシウムの表面を水素化し、水素化率が30質量%以下の水素化マグネシウムを生成する水素化工程と、を備え、前記燃焼が、粉末燃焼バーナを用いて行われる。
【0010】
(3)上記(2)の構成において、前記微粒化工程が、前記溶融塩電解工程で生成したマグネシウムを粗粉砕する粗粉砕工程と、前記粗粉砕工程で粉砕したマグネシウムを150μm以下に粉砕する微粉砕工程と、を備え、前記微粉砕工程で粉砕したマグネシウムは、前記水素化工程が終了するまで酸素に触れないように取扱われる。
【0011】
(4)上記(3)の構成において、前記微粉砕工程が、粉砕助剤として、無機化合物の粉末を添加して行われている。
【0012】
(5)上記(4)の構成において、前記無機化合物が、酸化マグネシウムである。
【0013】
(6)上記(1)から(5)のいずれか1つの構成において、水分が、燃焼促進剤として、前記燃焼室内に供給される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、石炭火力発電で培った技術を利用し、二酸化炭素の排出を抑えた火力発電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る実施形態の発電工程を行うための発電所の構成を説明するための図である。
【
図2】本発明に係る実施形態の塩化水素ガス法を行う装置を説明するための図である。
【
図3】本発明に係る実施形態の水素化工程を実施するための装置構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。
【0017】
(実施形態)
本発明に係る実施形態の資源循環型の火力発電方法は、発電用ボイラ2の燃焼室B1内で燃料を燃焼させて発電する発電工程と、燃焼で発生する燃焼灰から燃料の原材料を生成する資源再生工程と、を備える。
したがって、以下では、発電工程、資源再生工程の順に説明を行う。
【0018】
(発電工程)
発電工程は、発電所で実施される工程であるが、そこで使用されている技術は、これまで石炭火力発電で培った技術を利用したものであるため、従来の技術と同様の点については、説明を省略する場合がある。
図1は、発電工程を行うための発電所の構成を説明するための図である。
【0019】
図1に示すように、発電所は、発電機1と、発電機1を駆動させる発電用ボイラ2と、発電用ボイラ2に供給する燃料を貯蔵する燃料貯蔵庫3と、発電用ボイラ2に供給する補助燃料を貯蔵する補助燃料貯蔵庫4と、発電用ボイラ2からの排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を無害化する脱硝装置5と、脱硝装置5を通過した排ガス中に含まれる燃焼灰を回収する集塵装置6と、燃焼灰を貯蔵する燃焼灰貯蔵庫7と、を備えている。
【0020】
発電用ボイラ2は、燃焼室B1と、回転軸が発電機1に接続され、燃焼室B1で作られた蒸気で駆動する蒸気タービンB2と、その蒸気を蒸気タービンB2に供給するとともに、復水器FUで液体状態に戻された水を、再び、燃焼室B1に供給するための配管B3と、を備えている。
【0021】
なお、給水ポンプPが、復水器FUと燃焼室B1とを繋ぐ配管B3の途中に設けられており、水を燃焼室B1側に送るようになっている。
【0022】
燃焼室B1は、燃料貯蔵庫3から供給される粉体の燃料を燃焼させる粉末燃焼バーナ31と、補助燃料貯蔵庫4から供給される液体燃料(例えば、重油、軽油など)を燃焼させる補助燃焼バーナ41と、を備えている。
【0023】
なお、粉末燃焼バーナ31は、石炭火力発電で用いられている微粉炭バーナと同様のものであり、粉体の燃料を粉末燃焼バーナ31に供給する供給系(図示せず)も石炭火力発電で用いられているものと同様でよい。
【0024】
また、補助燃焼バーナ41は、燃焼室B1内の温度が上昇し、粉末燃焼バーナ31の燃焼が安定するまでの補助火力を得るためのバーナであり、これも石炭火力発電で用いられているものと同様でよい。
【0025】
なお、粉末燃焼バーナ31の燃焼が安定したら、この補助火力は必要ない。
そして、火力発電所は、基本的には停止させることなく稼働することになるため、この稼働開始時だけしか使わない補助火力で発生する二酸化炭素は無いに等しいレベルのものである。
【0026】
そして、燃料貯蔵庫3には、燃焼時に二酸化炭素を出さない粉体の燃料として、150μm以下の粒子径で、少なくとも表面が水素化された層を有する水素化マグネシウムが貯蔵されている。
【0027】
ただし、水素化マグネシウムは、完全な球形ではないので、ここでいう150μm以下の粒子径とは、目開きが0.16mm程度のメッシュを篩に用いたときに通過する程度の大きさであると考えればよい。
【0028】
なお、石炭火力発電で用いられている微粉炭バーナで使用される微粉炭は、おおむね150μm以下であり、水素化マグネシウムの粒径を150μm以下にすることで微粉炭バーナと同様の構造のバーナを粉末燃焼バーナ31として使用することができるというメリットがある。
【0029】
そして、粉末燃焼バーナ31では、空気と混合された水素化マグネシウムが燃焼することになるが、水素化マグネシウムは、マグネシウムと水素から成る物質であるので、その燃焼で発生するのは、酸化マグネシウムと水であり、二酸化炭素の発生はない。
ただし、発生した水と酸化マグネシウムの一部が反応し、燃焼灰中に水酸化マグネシウムが含まれる場合がある。
【0030】
ところで、理由については、後ほど資源再生工程のところで説明するが、燃料に使用する150μm以下の粒径の水素化マグネシウムについては、純度100%のものではなく、少なくとも表面側が水素化された水素化率30質量%以下の低純度水素化マグネシウムが好ましい。
【0031】
つまり、中心まで水素化されておらず、マグネシウムの表面を水素化マグネシウムの層が覆っているようなものが好ましい。
【0032】
このような低純度水素化マグネシウムの場合、空気を助燃性ガスとした時の燃焼反応は、水素化マグネシウム部分の燃焼反応と、マグネシウム部分の燃焼反応と、の2つの反応を考える必要がある。
【0033】
しかしながら、水素化マグネシウム部分と酸素との燃焼反応は、下記式(1)に示す通りであり、マグネシウム部分と酸素との燃焼反応は、下記式(2)に示す通りであるから、低純度水素化マグネシウムであったとしても、燃焼時に二酸化炭素が発生することはない。
MgH2 + O2 → MgO +H2O・・・・・・・・・・・・(1)
2Mg + O2 → 2MgO・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0034】
一方、粉末燃焼バーナ31では、空気と混合された水素化マグネシウムが燃焼することになるため、より正確には、酸素とともに窒素が存在することを考慮する必要がある。
特に、マグネシウムは、高温、酸欠雰囲気下では、窒素とも反応し、下記式(3)に示す通り、窒化マグネシウムが生成される。
3Mg + N2 → Mg3N2・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
【0035】
このため、燃料である水素化マグネシウムのうち、不完全燃焼のものがあると、それが窒化マグネシウムに変化し、燃焼灰中に混じる可能性がある。
なお、窒化マグネシウムの生成に高温、酸欠条件が必要であることを考えれば、窒化マグネシウムの生成自体は、燃焼火炎中、又は、火炎近傍で起こるものと考えられる。
【0036】
そして、窒化マグネシウムは、湿気があると、その水分との反応で速やかに分解し、下記式(4)に示す通り、水酸化マグネシウムとアンモニアに変化する。
Mg3N2 + 6H2O → 3Mg(OH)2 + 2NH3・・・ (4)
【0037】
そうすると、燃焼灰中に窒化マグネシウムが混じっていると、燃焼灰の回収後などに、その燃焼灰からアンモニアガスが発生する可能性がある。
【0038】
このことから、燃焼室B1内の湿度を高め、仮に窒化マグネシウムが生成されたとしても、速やかに、窒化マグネシウムが分解可能なようにしておくことが好ましい。
このようにしておけば、窒化マグネシウムが生成されても、すぐさま分解され、その分解で発生したアンモニアも燃焼ガスとして燃焼に寄与することができる。
つまり、水分が、窒化マグネシウムを生成するという不完全燃焼を抑制する燃焼促進剤として、燃焼室B1内に供給されるようにしてもよい。
【0039】
なお、燃焼室B1内の湿度を高める方法としては、湿度の高い空気(例えば、湿度が50%以上、望ましくは70%以上、より好ましくは、80%以上の空気)を燃焼室B1内に送り込む吸気口を設けるようにしてもよいし、あらかじめ、湿度を高めた空気を粉末燃焼バーナ31に送り、その湿度のある空気と水素化マグネシウムが混合されてバーナ火炎を形成するようにしてもよい。
【0040】
しかも、熱伝導率は、乾燥空気よりも湿り空気の方が高いことを考えると、燃焼室B1内を通る配管B3での熱交換効率を高くする作用も期待される。
【0041】
一方、上述のように、燃料を水素化マグネシウムにすれば発電のための燃焼時に二酸化炭素の発生がないものの、燃焼用の助燃性ガスが空気であるため、そこには窒素ガスが含まれている。
したがって、燃焼時に、窒素酸化物(NOx)が発生する可能性があり、その排ガス中の窒素酸化物(NOx)を無害化するために、燃焼室B1内からの排ガスを集塵装置6に送るための排気管8の途上に脱硝装置5が設けられている。
なお、窒素酸化物(NOx)の発生を抑えるために、酸素濃度を高めた空気を助燃性ガスに用いてもよく、酸素そのものを助燃性ガスとしてもよく、助燃性ガスの酸素濃度を高め、窒素酸化物(NOx)の発生量が環境基準を満たす程度まで抑制できる場合は、脱硝装置5を省略してもよい。
【0042】
具体的には、脱硝装置5は、排ガスにアンモニアを添加し、触媒層を通過させることで、窒素酸化物(NOx)を無害な窒素と水に分解する、一般に石炭火力発電で用いられている脱硝装置と同様のものでよい。
【0043】
そして、脱硝装置5を通過した後の排ガスには、有害なガスは含まれていないが、燃焼時に発生した燃焼灰のうち、極めて粒径の小さいものが含まれているため、さらに、排気管8は、集塵装置6に接続されており、集塵装置6で燃焼灰を回収した後に、排ガスが大気に放出される。
【0044】
この集塵装置6も石炭火力発電で用いられているものと同様のものでよく、具体的には、電気集塵機を用いればよい。
なお、
図1に示すように、集塵装置6の下流には、排風装置81が設けられており、これによって、燃焼室B1の排ガスが、脱硝装置5、集塵装置6を経て大気放出できるようになっている。
【0045】
一方、石炭火力発電では、燃料に石炭を用いるため、石炭中に含まれる硫黄成分が排ガス中に含まれることになる。
このため、石炭火力発電では、排ガスを大気放出する前に、さらに、脱硫装置が設けられているが、水素化マグネシウムには、硫黄成分が含まれていないため、脱硫装置が不要であるというメリットがある。
【0046】
また、石炭火力発電では、排ガス中に二酸化炭素が含まれているため、排ガスを大気放出するにあたっては、高い煙突から大気放出する必要があるが、そのような高い煙突も不要である。
【0047】
そして、燃焼室B1の底部に堆積する燃焼灰、及び、集塵装置6で集塵された燃焼灰は、燃焼灰貯蔵庫7に集められ、資源循環のために、次に説明する資源再生工程を経て、再び、水素化マグネシウムに再生される。
【0048】
なお、石炭火力発電においても、石炭の燃え残りが燃焼室の底部に堆積するとともに、排ガス中にも含まれるために集塵装置が用いられており、水素化マグネシウムの燃焼灰を回収するための機構もそれと同様の機構でよい。
【0049】
ただし、石炭を燃焼させた場合に比べ、発生する燃焼灰の量が多くなることから、回収機構の能力はUPさせる必要がある。
【0050】
以上の説明からわかるように、燃料に150μm以下の水素化マグネシウムを用いるようにすれば、これまで培われてきた微粉炭バーナで微粉炭を燃焼させて発電を行う石炭火力発電の技術との相性が極めて良い、二酸化炭素の排出を抑えた発電工程が行える。
【0051】
また、水素化マグネシウムやマグネシウムが燃焼したときに発生する燃焼灰は、先に説明した通り、酸化マグネシウムである。
【0052】
そして、酸化マグネシウムは、融点が約2850℃と高いため、燃焼室B1内等、高温となる箇所でも溶融することがない。
【0053】
一方、石炭には、成分としてケイ素が含まれているため、その燃焼灰の一部は1000℃~1300℃で溶融し、燃焼室B1内や煙突といった各所に溶融付着物が発生する。
【0054】
したがって、溶融付着物の発生を抑えることができる本実施形態では、清掃等の手間を軽減することができるという利点がある。
【0055】
(資源再生工程)
次に、発電工程で発生した燃焼灰(酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム)を出発材として、再び、水素化マグネシウムを生成する資源回収工程について説明する。
【0056】
なお、燃焼灰に含まれる水酸化マグネシウムについては、加熱によって、下記式(5)に示す通り、脱水反応が起きて、酸化マグネシウムになるため、資源回収工程の出発材は、酸化マグネシウムであると考えてよい。
Mg(OH)2 → MgO + H2O・・・・・・・・・・・・・・・(5)
【0057】
簡単に手順について説明すると、まず、出発材である酸化マグネシウムからマグネシウムを生成する。
具体的には、燃焼灰である酸化マグネシウムを材料に塩化マグネシウムを生成する塩素化工程を行い、塩素化工程で生成された塩化マグネシウムを材料に溶融塩電解を行って溶融塩電解工程を実施することでマグネシウムを生成する。
【0058】
このようにして得られたマグネシウムは、さらに、微粒化工程で150μm以下に微粉化された後、少なくとも表面に水素化された層を有する水素化マグネシウムを生成する水素化工程が実施され、再び、発電工程で使用する燃料に再生される。
【0059】
(塩素化工程)
塩素化工程は、先に説明したように、燃焼灰である酸化マグネシウムを材料として、次の溶融塩電解工程で用いる塩化マグネシウムを生成する工程である。
これを行うには、酸化マグネシウムと塩化水素ガスを用いて塩化マグネシウムを生成する方法(以下、「塩化水素ガス法」ともいう)、酸化マグネシウムと塩化アンモニウムを用いて塩化マグネシウムを生成する方法(以下、「塩化アンモニウム法」ともいう)等、いくつもの方法があり、どのような方法を用いてもよい。
【0060】
(塩化水素ガス法)
塩化水素ガス法は、酸化マグネシウムと塩化水素ガスを300~600℃程度の温度下で下記式(6)の反応を起こさせることで塩化マグネシウムを生成する方法であり、塩化水素ガス法を行う装置を説明するための図である
図2を参照しながら説明する。
なお、
図2では主要な部分だけを示している。
MgO + 2HCl → MgCl
2 + H
2O・・・・・・・・(6)
【0061】
図2に示すように、塩化水素ガス法を行う装置は、酸化マグネシウムと塩化水素ガスを反応させる反応容器部9と、反応容器部9を加熱するヒータHと、を備えている。
【0062】
反応容器部9は、上下に開口する円筒状の胴部91と、胴部91の上側開口を塞ぐ上蓋92と、胴部91の下側開口を塞ぐ下蓋93と、を備えている。
【0063】
そして、胴部91の下側側面には、ガスの供給口INが設けられ、胴部91の上側側面には、ガスの排気口OUTが設けられている。
【0064】
反応容器部9に酸化マグネシウムを投入するときは、上蓋92を開けて行い、反応後の塩化マグネシウムを取り出すときは、下蓋93を開けて行う。
【0065】
具体的な処理は、まず、最初に、反応容器部9内に酸化マグネシウムを収容した状態で、反応容器部9内の温度が400℃前後になるようにヒータHで加熱を行いながら、ガスの供給口INから乾燥ガス(例えば、乾燥空気、乾燥窒素)等を供給し、酸化マグネシウム中を通過したガスをガスの排気口OUTから排出する処理を行う。
なお、ガスの供給と排気の両方を行いながら行う処理を吹き流し処理という場合がある。
【0066】
これによって、酸化マグネシウムに付着している水分を取り除く。
上記のように、酸化マグネシウムの乾燥処理を実施した後、ガスの供給口INから供給するガスを塩化水素ガスに代え、酸化マグネシウムと塩化水素ガスを反応させ、塩化マグネシウムを生成する塩素化処理を行う。
【0067】
先に示した式(6)を見るとわかるように、反応では、水分も発生するが、この塩素化処理も吹き流し処理で行うことで、塩化マグネシウムが水和物にならず、無水の塩化マグネシウムを生成することができる。
【0068】
なお、ガスの排気口OUTからは、反応に寄与しなかった塩化水素ガスも排気されるが、その塩化水素ガスは脱水処理を実施して、再度、ガスの供給口INから供給するようにしてもよい。
【0069】
そして、生成された無水の塩化マグネシウムは、先に述べたように、下蓋93を開けて、反応容器部9から取り出され、次の工程である溶融塩電解工程で材料として用いられる。
なお、下蓋93を開ける前に、供給するガスを、例えば、乾燥窒素等に切り替えて、反応容器部9内の塩化水素ガスを置換している。
【0070】
(塩化アンモニウム法)
塩化アンモニウム法は、酸化マグネシウムと塩化アンモニウムを反応させる方法であるが、その手順としては、2つの手順が考えられる。
なお、どちらの手順を行う場合でも、装置構成としては、
図2で説明したのと同様の構成でよいため、以下の説明においても
図2を参照して説明を行う。
【0071】
1つ目の手順は、酸化マグネシウムと塩化アンモニウムを反応させるため300~600℃程度の温度で処理し、塩化マグネシウムを生成する方法であり、この時に起こる反応は、下記式(7)に示すような反応である。
MgO + 2NH4Cl → MgCl2 + H2O+2NH3・・・(7)
【0072】
例えば、酸化マグネシウムの量に対して、塩化アンモニウムをモル比で2倍以上にした酸化マグネシウムと塩化アンモニウムの混合材料を反応容器部9に投入する。
【0073】
なお、式(7)に示される通り、化学式で見れば、酸化マグネシウムと塩化アンモニウムのモル比が1:2になるようにすればよいことになるが、実際に処理する場合には、反応に寄与できない塩化アンモニウムがあることを考慮して、酸化マグネシウムと塩化アンモニウムのモル比が1:3から1:5ぐらいにするのがよい。
【0074】
そして、乾燥窒素の吹き流しを行いながら、反応容器部9内の温度が400℃前後になるようにヒータHで加熱を行う。
この加熱によって、常温で固体である塩化アンモニウムは、300℃前後の温度から昇華が始まり、アンモニアガスと塩化水素ガスに分解するので、その分解で発生した塩化水素ガスが酸化マグネシウムと反応し、塩化マグネシウムの生成が進み、所定の時間加熱処理を行ったら、ヒータHの加熱を止めて冷却後、生成した塩化マグネシウムを回収する。
【0075】
なお、乾燥窒素の吹き流しを行うのは、式(7)を見るとわかるように、塩化マグネシウムが生成するのと同時に、水分も発生するので、その発生する水分を反応容器部9外に速やかに排出し、塩化マグネシウムが水和物になるのを抑制し、無水の塩化マグネシウムを生成するためである。
また、反応容器部9に塩化アンモニウムを追加で供給する塩化アンモニウム供給口を設けて置き、途中で塩化アンモニウムを加えるようにしておいてもよい。
【0076】
2つ目の手順は、酸化マグネシウムと塩化アンモニウムのモル比を1:3で反応させ、アンモニウムカーナリッドの水和物を生成した後、水分、及び、塩化アンモニウム部分を取り除いて、無水の塩化マグネシウムを得る手順である。
【0077】
具体的に説明すると、酸化マグネシウムと塩化アンモニウムをモル比で1:3の割合にした混合材料を反応容器部9内に投入する。
【0078】
その後、しばらくの間、乾燥窒素の吹き流しを行い、反応容器部9内を乾燥窒素雰囲気に置換する。
【0079】
そして、反応容器部9内が乾燥窒素雰囲気になったら、ガスの供給口IN、及び、ガスの排気口OUTを閉じて、反応容器部9を密閉状態にし、反応容器部9内が400℃前後になるようにヒータHでの加熱を開始する。
【0080】
そうすると、下記式(8)に示す反応が起こり、アンモニウムカーナリッドの水和物ができる。
MgO+3NH4Cl→MgCl2・NH4Cl・H2O+2NH3・・・(8)
【0081】
なお、式(8)を見ればわかるように、この反応では、固体である酸化マグネシウムと塩化アンモニウムが反応した結果、ガスとしてのアンモニアが発生するので、内圧が上昇する。
【0082】
このため、反応容器部9は、その圧力上昇に耐えられる耐圧容器にしておくのがよい。
ただし、若干、大気圧を超えると、ガスの排気口OUTが開いて、圧力の上昇を抑えるものとしてもよく、必ず、耐圧容器にしなければならないわけではない。
【0083】
そして、所定の時間、加熱処理を行ったら、反応容器部9内の温度を塩化アンモニウムの昇華温度より少し低い温度(昇華温度より5から20℃程度低い温度)に保つようにヒータHの設定温度を変更する。
【0084】
反応容器部9内の温度が設定温度まで下がったところで、アンモニアガスをガスの供給口INから供給し、ガスの排気口OUTから排気を取るようにし、アンモニアガスが吹き流し状態になるようにして、所定の時間加熱を行う。
【0085】
このように、アンモニアガス雰囲気下でアンモニウムカーナリッドの水和物の加熱処理を行うと、水和物の水分でアンモニウムカーナリッドの加水分解反応が進むのが抑えられ、下記式(9)に示す脱水反応が進む。
MgCl2・NH4Cl・H2O→MgCl2・NH4Cl+H2O・・・(9)
【0086】
なお、アンモニアガスを吹き流ししているため、脱水によって、発生する水分が速やかに、反応容器部9外に排出され、再度の水和物の形成が抑制される。
【0087】
そして、脱水処理が終わったら、反応容器部9内の温度を塩化アンモニウムの昇華温度より高い温度(例えば、400℃前後)に保つように、ヒータHの設定温度を変更する。
【0088】
また、脱水処理が終われば、反応容器部9内をアンモニアガス雰囲気にする必要はないので、ヒータHの設定温度を変更するタイミングで乾燥窒素の吹き流し状態に変更する。
【0089】
そうすると、下記式(10)に示すように、アンモニウムカーナリッドが、塩化マグネシウムと、アンモニアガスと、塩化水素ガスと、に分解し、アンモニウムカーナリッドから塩化アンモニウム部分が取り除かれ(以下、「脱塩化アンモニウム処理」ともいう)、無水の塩化マグネシウムが生成される。
MgCl2・NH4Cl→MgCl2+NH3+HCl・・・・・・・(10)
【0090】
なお、アンモニアガスと塩化水素ガスは、吹き流ししている乾燥窒素とともに、反応容器部9外に排気される。
【0091】
そして、脱塩化アンモニウム処理が終われば、ヒータHの加熱を止めて冷却後、生成した無水の塩化マグネシウムを回収する。
【0092】
(溶融塩電解工程)
溶融塩電解工程は、塩素化工程で生成された無水の塩化マグネシウムを材料に、電気分解でマグネシウムを生成する工程であり、一般的にマグネシウムを製造するのに用いられている一手法である。
【0093】
したがって、簡単に説明すると、例えば、レンガ炉内で700℃前後の温度に塩化マグネシウムを加熱し、塩化マグネシウムを溶融する。
【0094】
そして、そのレンガ炉内には、少なくとも一対の電極が設けられており、その電極間に電源を繋げ、2.5(V)以上の電圧をかけると、陽極で塩素ガスが発生し、陰極でマグネシウムが生成する。
【0095】
なお、塩化水素ガスは、水素ガスと塩素ガスを反応させることで製造されるため、溶融塩電解工程で発生する塩素ガスを材料に塩化水素ガスを生成し、塩素化工程で用いるようにしてもよい。
【0096】
(微粒化工程)
微粒化工程は、溶融塩電解工程で生成したマグネシウムを粉末状のマグネシウムにする工程であり、一般的な粉砕機を用いて行ってもよく、ガスアトマイザーといわれる微粉末製造装置を用いて行ってもよい。
【0097】
微粒化工程を粉砕装置で実施する場合には、粉砕効率を考え、粉砕工程を2段に分けて実施するのがよい。
具体的には、微粒化工程は、微粒化まではいかないものの粉砕速度が速い装置で、180~800μm程度の粒子径に粗粉砕する粗粉砕工程と、粗粉砕工程で粉砕したマグネシウムを150μm以下に粉砕する微粉砕工程と、を備えるものとするのがよい。
【0098】
なお、ここでいう粒子径も正確な球形を意味するのではなく、粗粉砕工程は、目開きが0.8mm程度のメッシュを篩に使用したときに通過する程度を意味すると考えればよい。
【0099】
ところで、マグネシウムを粗く粉砕する時には、マグネシウムが柔らかい金属であることが悪さをすることはないが、微粉砕を行う段階になると、粉砕過程でマグネシウム同士がくっ付いて微粉末状になり難い。
このため、微粉砕工程では、粗粉砕したマグネシウムに粉砕助剤を添加して行うのがよい。
【0100】
例えば、粉砕助剤としては、ステアリン酸等を用いてもよいが、無機化合物の粉末を用いるのがよい。
具体的には、粉砕助剤に無機化合物の粉末である酸化マグネシウムを用いれば、燃焼灰と同じ組成であるため、燃焼灰の一部を粉砕助剤として流用することが可能になる。
【0101】
(水素化工程)
微粒化工程で微粒化されたマグネシウムは、水素化工程で水素化されるが、微粒化後、マグネシウムが酸素に触れると、表面に酸化膜が形成され、反応効率が著しく低下する。
したがって、微粉砕工程で粉砕したマグネシウムは、この水素化工程が終了するまで酸素に触れないように取扱われるようにする。
【0102】
具体的に、水素化工程を実施するための装置構成を説明する図である
図3を参照しながら、外気に触れさせないで水素化工程を行う方法について説明する。
【0103】
図3に示すように、水素化工程を実施するための装置は、微粒化されたマグネシウムを収容し、水素との反応を行う加熱容器HBと、その加熱容器HBを加熱するヒータH1と、加熱容器HBの入口HB1に着脱可能に接続された配管10と、を備えている。
【0104】
加熱容器HBは、入口HB1から加熱部HB2に至る道管部HB3のところに、バルブHB4が設けられており、そのバルブHB4を閉じると密閉構造になるようになっている。
一方、配管10は、図示していないが、水素ガス供給系、アルゴンガス供給系、及び、真空ポンプに繋がっている。
【0105】
そして、加熱容器HBは、微粉砕工程の粉砕したマグネシウムを回収する回収容器を兼ねたものになっている。
したがって、微粉砕工程がアルゴンガス雰囲気下で行われ、微粉砕工程を行う粉砕装置から加熱容器HBを取り外す前に、バルブHB4を閉じて、取り外しを行うことで、加熱容器HB内に回収されたマグネシウムがアルゴン封入状態で、
図3に示す装置に接続される。
【0106】
そして、バルブHB4を開ける前に、真空引きを行い配管10、及び、バルブHB4より上側にある空気を排気した後に、バルブHB4を開けて、加熱部HB2内のアルゴンガスを排気する。
【0107】
その後、加熱部HB2内の温度を水素化に適した温度(具体的には、180℃から220℃)に加熱するように、ヒータH1を駆動させるとともに、加熱容器HBに水素ガスを供給し、水素化処理を行う。
【0108】
マグネシウムは微粉末になると燃焼しやすくなり、一般的には、消防法上、危険物扱いになる。
一方で、水素化マグネシウムは、微粉末でも消防法上の危険物に該当しておらず、水素化されたことで引火性が低くなっている。
【0109】
そして、水素化率20質量%程度の水素化マグネシウムは、石炭と発熱量がほぼ同じになるため、石炭に置き換える燃料としては、低純度の水素化マグネシウムでよいので、ここで行う水素化は、運搬・保管などの点で危険物に該当しない程度の水素化率が達成されていればよい。
【0110】
ここで、マグネシウムの水素化は、時間に比例するのではなく、純度が高くなるのにつれて水素加速度が大幅に遅くなっていくので、先に述べたように、少なくとも表面側が水素化された水素化率30質量%以下の低純度水素化マグネシウムとすれば、水素化工程に必要な時間を大幅に削減することができ、生産性を大幅に高めることができる。
【0111】
このように、短時間の水素化処理を行ったら、ヒータH1を止めて、冷却後、加熱容器HB内の水素ガスをアルゴンガスに置換して、低純度の水素化マグネシウムを取り出す。
このようにして、生成された少なくとも表面側が水素化された水素化率30質量%以下の低純度水素化マグネシウムは、再び、発電工程で燃料として使用される。
【0112】
以上のように、本実施形態の火力発電方法であれば、発電時に二酸化炭素が発生せず、しかも、マグネシウム資源が循環する資源循環型の火力発電になっている。
また、上述した資源再生工程は、電力で動く設備だけで構成されているため、いわゆる系統接続ができない余剰電力だけで燃料の再生生産を行うことができる。
【0113】
したがって、資源再生工程が余剰電力を用いて実施されることものとすれば、再生可能エネルギー等の余剰電力の受皿として機能し、一方で、上述の火力発電方法は電力の需要と供給に合わせて需給バランスをとることが可能な慣性力のある発電である。
【0114】
つまり、資源再生工程が再生可能エネルギー等の慣性力のない電力を用いて行うことで、その慣性力のない電力を慣性力のある電力に変換可能な火力発電方法としてもよい。
【0115】
上記では、粉末燃焼バーナ31を用いる発電用ボイラで説明を行った。
しかし、石炭火力発電には、ストーカボイラと呼ばれる微粉炭バーナを用いずに発電用ボイラの燃焼室が単なる燃焼炉のような構成で、常に燃焼が続くように石炭を送り込むだけの構成のものもあり、このような形態に、先に説明した燃料を用いるようにしてもよい。
【0116】
しかも、この場合には、バーナ火炎として燃焼を持続させるために必要であった150μm以下に粉砕する微粉砕工程は必要なく、火力を維持するように、燃料を供給すればよいだけとなるため、比較的大きいサイズの燃料でよい。
【0117】
そして、マグネシウムであっても500μm程度の粒子径であれば、消防法上の危険物に該当しないものとなるので、マグネシウムの大きさを500μm以上に留めた適当な粗粉砕だけを行い、水素化工程を省略して、燃料をマグネシウムにした火力発電方法としてもよい。
【0118】
このように、燃料をマグネシウムにした火力発電方法であっても、当然、二酸化炭素は発生せず、燃焼灰は酸化マグネシウムとなるので、資源再生工程を行うことが可能である。
つまり、資源再生工程は、粗粉砕までとし、その後、説明した微粉砕工程、及び、水素化工程を省略したものとすればよい。
【0119】
なお、このように燃料を水素化せず、マグネシウム自体とする場合であっても、酸素欠乏状態で燃焼が起こると、窒化マグネシウムが生成されるため、先に説明したのと同様に、燃焼室内の湿度を高め、仮に窒化マグネシウムが生成されたとしても、速やかに、窒化マグネシウムが分解可能なようにしておくことが好ましい。
【0120】
また、マグネシウムと水素化マグネシウムの混合したもの(つまり、マグネシウムと水素化マグネシウムとの混合物)を燃料にしてもよく、生産効率は大幅に下がるものの、水素化率の高い水素化マグネシウムを使用するようにしても火力発電方法としては差し支えない。
【0121】
このように、本発明は具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0122】
1 発電機
2 発電用ボイラ
B1 燃焼室
B2 蒸気タービン
B3 配管
3 燃料貯蔵庫
31 粉末燃焼バーナ
4 補助燃料貯蔵庫
41 補助燃焼バーナ
5 脱硝装置
6 集塵装置
7 燃焼灰貯蔵庫
8 排気管
81 排風装置
FU 復水器
P 給水ポンプ
9 反応容器部
91 胴部
92 上蓋
93 下蓋
IN 供給口
OUT 排気口
H ヒータ
10 配管
HB 加熱容器
HB1 入口
HB2 加熱部
HB3 道管部
HB4 バルブ
H1 ヒータ