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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016749
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】火力発電方法
(51)【国際特許分類】
   F23C 1/06 20060101AFI20240131BHJP
   F23C 1/12 20060101ALI20240131BHJP
   F23C 1/10 20060101ALI20240131BHJP
   F23C 9/06 20060101ALI20240131BHJP
   F23J 15/00 20060101ALI20240131BHJP
   F23J 1/00 20060101ALI20240131BHJP
   F23K 1/00 20060101ALI20240131BHJP
   F23C 6/04 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F23C1/06
F23C1/12
F23C1/10
F23C9/06
F23J15/00 Z
F23J1/00 A
F23K1/00 Z
F23C6/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119086
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】390029012
【氏名又は名称】株式会社エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 力
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲
(72)【発明者】
【氏名】浪江 正宗
(72)【発明者】
【氏名】大石 敏弘
【テーマコード(参考)】
3K070
3K091
3K161
【Fターム(参考)】
3K070DA07
3K070DA22
3K070DA23
3K070DA27
3K091AA20
3K091BB02
3K091CC02
3K091CC06
3K091CC13
3K091CC23
3K091DD01
3K091FB02
3K091FB12
3K091FB32
3K091FB35
3K091FB42
3K161AA03
3K161LA12
(57)【要約】
【課題】火力発電所の排ガス中の二酸化炭素を地中に圧入する処理を必要としない二酸化炭素の排出量を抑えた火力発電方法を提供する。
【解決手段】本発明は、有機物燃料の燃焼と、無機物燃料の燃焼と、を利用した火力発電方法であって、無機物燃料が、酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼可能な無機物、無機物の少なくとも一部が水素化された水素化無機物、又は、無機物と水素化無機物の混合物であり、有機物燃料の燃焼によって発生する排ガス中の酸化炭素ガスを助燃性ガスとして無機物燃料を燃焼させ、酸化炭素ガス中の炭素を固体化することを特徴とする火力発電方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物燃料の燃焼と、無機物燃料の燃焼と、を利用した火力発電方法であって、
前記無機物燃料が、酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼可能な無機物、前記無機物の少なくとも一部が水素化された水素化無機物、又は、前記無機物と前記水素化無機物の混合物であり、
前記有機物燃料の燃焼によって発生する排ガス中の酸化炭素ガスを助燃性ガスとして前記無機物燃料を燃焼させ、酸化炭素ガス中の炭素を固体化することを特徴とする火力発電方法。
【請求項2】
前記無機物がリチウム、マグネシウム、アルミニウム、又は、リチウム、マグネシウム、アルミニウムのうち2種以上を含む混合物であることを特徴とする請求項1に記載の火力発電方法。
【請求項3】
前記無機物がマグネシウムであることを特徴とする請求項2に記載の火力発電方法。
【請求項4】
前記有機物燃料が液化天然ガス以外の化石燃料であり、
前記助燃性ガスとして前記無機物燃料の燃焼に用いられる前記酸化炭素ガスが二酸化炭素ガスであり、
前記二酸化炭素ガスは、脱硝装置、集塵装置、脱硫装置を通した後の前記排ガスから二酸化炭素ガスの分離回収装置を通して回収した二酸化炭素ガスであることを特徴とする請求項3に記載の火力発電方法。
【請求項5】
前記有機物燃料が液化天然ガスであり、
前記助燃性ガスとして前記無機物燃料の燃焼に用いられる前記酸化炭素ガスが二酸化炭素ガスであり、
前記二酸化炭素ガスは、前記排ガスから二酸化炭素ガスの分離回収装置を通して回収した二酸化炭素ガスであることを特徴とする請求項3に記載の火力発電方法。
【請求項6】
前記無機物燃料の燃焼によって発生する前記無機物燃料の酸化物とともに固体化した前記炭素を燃焼灰として回収し、前記燃焼灰から固体化した前記炭素を分離して、固体化した前記炭素をカーボン素材の原料に利用することを特徴とする請求項3に記載の火力発電方法。
【請求項7】
前記酸化物を材料として、再度、前記無機物燃料を製造し、火力発電に用いることを特徴とする請求項6に記載の火力発電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火力発電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用ボイラを備える火力発電システムは、一般に知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
しかしながら、いわゆる化石燃料を用いた火力発電システムは、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素を排出するという問題がある。
【0003】
そこで、化石燃料を用いた火力発電システムにおいても、二酸化炭素の大気放出を抑えるための取り組みが行われている。
【0004】
例えば、非特許文献2には、CCSに関する北海道の苫小牧市での取り組みについての紹介が行われており、具体的には、火力発電所の排ガスから二酸化炭素を分離回収し、その回収した二酸化炭素を海岸から3~4km程度離れた海底下の地中深くに圧入し、貯留していることが説明されている。
【0005】
このように地中深くに圧入された二酸化炭素は長期間にわたって安定して貯留されるとともに、長い年月をかけて塩水に溶解、及び、岩石の隙間で鉱物になると考えられている。
【0006】
しかしながら、このような貯留を行うためには、二酸化炭素を貯留可能な隙間のある地層であること、その上が二酸化炭素を通さない地層でおおわれている必要があるなど制約が多い。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“地域環境保全の推進 石炭火力発電所のしくみとさまざまな環境保全対策”、[online]、沖縄電力株式会社、[令和4年6月30日検索]、インターネット<URL:https://www.okiden.co.jp/environment/report2017/sec6/sec63.html>
【非特許文献2】“CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編)”、[online]、2020年11月27日、経済産業省資源エネルギー庁、[令和4年6月16日検索]、インターネット<URL:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、火力発電所の排ガス中の二酸化炭素を地中に圧入する処理を必要としない二酸化炭素の排出量を抑えた火力発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の火力発電方法は、有機物燃料の燃焼と、無機物燃料の燃焼と、を利用した火力発電方法であって、前記無機物燃料が、酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼可能な無機物、前記無機物の少なくとも一部が水素化された水素化無機物、又は、前記無機物と前記水素化無機物の混合物であり、前記有機物燃料の燃焼によって発生する排ガス中の酸化炭素ガスを助燃性ガスとして前記無機物燃料を燃焼させ、酸化炭素ガス中の炭素を固体化する。
【0010】
(2)上記(1)の構成において、前記無機物がリチウム、マグネシウム、アルミニウム、又は、リチウム、マグネシウム、アルミニウムのうち2種以上を含む混合物である。
【0011】
(3)上記(2)の構成において、前記無機物がマグネシウムである。
【0012】
(4)上記(3)の構成において、前記有機物燃料が液化天然ガス以外の化石燃料であり、前記助燃性ガスとして前記無機物燃料の燃焼に用いられる前記酸化炭素ガスが二酸化炭素ガスであり、前記二酸化炭素ガスは、脱硝装置、集塵装置、脱硫装置を通した後の前記排ガスから二酸化炭素ガスの分離回収装置を通して回収した二酸化炭素ガスである。
【0013】
(5)上記(3)の構成において、前記有機物燃料が液化天然ガスであり、前記助燃性ガスとして前記無機物燃料の燃焼に用いられる前記酸化炭素ガスが二酸化炭素ガスであり、前記二酸化炭素ガスは、前記排ガスから二酸化炭素ガスの分離回収装置を通して回収した二酸化炭素ガスである。
【0014】
(6)上記(3)の構成において、前記無機物燃料の燃焼によって発生する前記無機物燃料の酸化物とともに固体化した前記炭素を燃焼灰として回収し、前記燃焼灰から固体化した前記炭素を分離して、固体化した前記炭素をカーボン素材の原料に利用する。
【0015】
(7)上記(6)の構成において、前記酸化物を材料として、再度、前記無機物燃料を製造し、火力発電に用いる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、火力発電所の排ガス中の二酸化炭素を地中に圧入する処理を必要としない二酸化炭素の排出量を抑えた火力発電方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る第1実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所を説明するための図である。
図2】本発明に係る第2実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所を説明するための図である。
図3】本発明に係る第4実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ符号を付している。
【0019】
(第1実施形態)
本発明に係る第1実施形態の火力発電方法は、火力発電所で実施されるが、その構成要素の多くは、現在の火力発電所と類似しているため、同様の点については説明を省略する場合がある。
【0020】
図1は、本実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所を説明するための図である。
火力発電所は、発電機1と、発電機1を駆動させる発電用ボイラ2と、発電用ボイラ2に供給する有機物燃料を貯蔵する有機物燃料貯蔵庫3と、発電用ボイラ2に供給する無機物燃料を貯蔵する無機物燃料貯蔵庫4と、を備えている。
【0021】
発電用ボイラ2は、燃焼室21と、回転軸が発電機1に接続され、燃焼室21で作られた蒸気で駆動する蒸気タービン22と、その蒸気を蒸気タービン22に供給するとともに、復水器(図示せず)で液体状態に戻された水を、再び、燃焼室21に供給するための配管23と、を備えている。
【0022】
燃焼室21は、有機物燃料貯蔵庫3から有機物燃料が供給され、有機物燃料を燃焼する第1燃焼室Aと、無機物燃料貯蔵庫4から無機物燃料が供給され、無機物燃料を燃焼する第2燃焼室Bと、を備えている。
【0023】
本実施形態の発電用ボイラ2は、一般に知られているストーカ型ボイラであり、その燃焼室21が、点線で示すように壁で区切られ、第1燃焼室Aと第2燃焼室Bに分離している点が主に異なる。
【0024】
なお、第1燃焼室Aと、第2燃焼室Bと、に燃料を供給する燃料供給機構も、ストーカ型ボイラに設けられているものと同様でよく、図示は省略しているものの、本実施形態でも、そのような燃料供給機構を、それぞれ第1燃焼室Aと、第2燃焼室Bと、に設けるようにしている。
【0025】
つまり、有機物燃料貯蔵庫3から第1燃焼室Aに有機物燃料を供給する燃料供給機構と、無機物燃料貯蔵庫4から第2燃焼室Bに無機物燃料を供給する燃料供給機構と、を設けるようにしている。
【0026】
配管23は、第1燃焼室A、及び、第2燃焼室Bを通過するようになっており、第1燃焼室Aでの有機物燃料の燃焼熱、及び、第2燃焼室Bでの無機物燃料の燃焼熱を利用して蒸気タービン22を駆動する蒸気が発生するようになっている。
【0027】
そして、第1燃焼室Aには、空気が供給され、その空気中の酸素と有機物燃料が燃焼する。
例えば、有機物燃料としては、石炭を好適に用いることができ、燃焼によって酸化炭素ガスとして二酸化炭素ガス(CO2)が発生する。
なお、空気中には窒素ガスも含まれているため、窒素酸化物(NOx)も発生し、有機物燃料が石炭である場合には、硫黄成分も含まれているため二酸化硫黄ガスも発生する。
【0028】
この二酸化炭素ガス、窒素酸化物(NOx)、及び、二酸化硫黄ガスなどを含む排ガスは、第1燃焼室Aから、実線矢印で示すように、排気管(図示せず)を通じて、脱硝装置5に送られ、そこで窒素酸化物(NOx)が無害化される。
なお、脱硝装置5は、一般に石炭火力発電などで用いられているものと同様のものであ良い。
【0029】
そして、脱硝装置5を通過した排ガスは、実線矢印で示すように、排気管(図示せず)を通じて、集塵装置6に送られ、ここで排ガス中に含まれる煤などが除去される。
なお、集塵装置6も、一般に石炭火力発電などで用いられているものと同様のものであ良い。
【0030】
さらに、集塵装置6を通過した排ガスは、実線矢印で示しように、排気管(図示せず)を通じて、脱硫装置7に送られ、排ガス中に含まれる二酸化硫黄ガスが除去される。
なお、脱硫装置7も、一般に石炭火力発電などで用いられているものと同様のものであ良い。
【0031】
そして、脱硫装置7を通過した排ガスは、実線矢印で示すように、排気管(図示せず)を通じて、二酸化炭素ガスを分離回収する分離回収装置8に送られ、排ガス中に含まれる二酸化炭素ガスが回収される。
【0032】
このように分離回収装置8で回収された二酸化炭素ガスは、点線矢印で示すように、ガス配管(図示せず)を通じて、二酸化炭素ガスを貯蔵する貯蔵タンク81に供給される。
なお、貯蔵タンク81の入口には、昇圧機(図示せず)が設けられ、昇圧された状態で貯蔵タンク81に二酸化炭素ガスが供給されるようになっており、貯蔵タンク81内では、二酸化炭素ガスが、一部、液化状態で貯蔵される。
【0033】
一方、分離回収装置8で二酸化炭素ガスが除去された排ガスは、実線矢印で示すように、排気管(図示せず)を通じて、排風機9に送られ、その後、大気に放出される。
なお、この排風機9も、一般に石炭火力発電で設けられている構成であり、それと同様でよい。
【0034】
そして、貯蔵タンク81は、一点鎖線矢印で示すように、ガス配管(図示せず)を通じて、第2燃焼室Bに接続されており、貯蔵タンク81内に貯蔵された二酸化炭素ガスが第2燃焼室Bに供給できるようになっている。
【0035】
具体的には、第2燃焼室Bに接続された圧力測定器(図示せず)の出力に応じて、第2燃焼室B内の圧力が、若干、陽圧になるように、貯蔵タンク81から二酸化炭素ガスが供給される。
なお、この圧力制御のために、貯蔵タンク81から第2燃焼室Bに至るまでのガス配管(図示せず)の途中に二酸化炭素ガスの流量を制御する流量制御弁が設けられている。
【0036】
そして、第2燃焼室Bには、酸化炭素ガス、具体的には、二酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼可能な無機物燃料が無機物燃料貯蔵庫4から供給されており、供給された二酸化炭素ガスを助燃性ガスとした燃焼が起こる。
【0037】
具体的には、無機物燃料が、二酸化炭素ガス(CO2)や一酸化炭素ガス(CO)といった酸化炭素ガスを助燃性ガスとして燃焼可能な無機物、無機物の少なくとも一部が水素化された水素化無機物、又は、無機物と水素化無機物の混合物であり、その無機物としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、又は、リチウム、マグネシウム、アルミニウムのうち2種以上を含む混合物である。
【0038】
なお、無機物燃料に水素化されていない無機物を使用する場合、微粉末状になると、引火しやすくなるため、取り扱い上、危険物として取り扱う必要がある。
【0039】
このため、無機物燃料に水素化されていない無機物を使用する場合、その無機物は、危険物に該当しない程度の粒子径にしておく方が望ましい。
【0040】
例えば、マグネシウムの場合であれば、400μm以上の粒径にしておけば、危険物に該当しないものにできる。
【0041】
一方、無機物燃料に使用する無機物としては、第2燃焼室B内での良好な燃焼性の観点からマグネシウムが良く、無機物燃料がマグネシウムである場合、下記式(1)に示す燃焼反応が起こる。
2Mg + CO2 → 2MgO + C +熱・・・・・・・・(1)
【0042】
式(1)に示した燃焼反応では、固体であるマグネシウム(Mg)と二酸化炭素ガス(CO2)が燃焼反応を起こすと、無機物燃料であるマグネシウムの酸化物、つまり、酸化マグネシウム(MgO)と固体である炭素(C)が発生し、ガス成分がなくなるため、減圧反応となり、ガス濃度が薄くなる。
なお、第2燃焼室Bが湿気を含んでいると、無機物燃料であるマグネシウムの酸化物に加え、水酸化マグネシウムが多少形成される場合がある。
【0043】
このようにガス濃度が薄くなり、助燃性ガスが不足すると燃焼反応が持続できなくなるため、先に説明したように、第2燃焼室Bは、陽圧が保てるように、圧力を測定しながら、二酸化炭素ガスが供給されるようにしている。
【0044】
なお、上述のように、第2燃焼室Bでの燃焼反応は、減圧反応であり、反応に必要な二酸化炭素ガスよりも過剰に二酸化炭素ガスを供給することで陽圧環境を維持することから、第2燃焼室Bから排ガスを排気する排気管(図示せず)の内径は、比較的小さいものとするのが良い。
【0045】
例えば、内径を100~300mmφ程度に抑えておくことで、第2燃焼室B内の陽圧管理が行いやすくなる。
【0046】
ただし、具体的な排気管(図示せず)の内径は、第2燃焼室Bの内容積に合わせたものとする必要があるため、100~300mmφの内径が最適というわけではない。
【0047】
例えば、クリーンルーム等では、外気が室内に入るのを抑えるために5Pa以上陽圧に保つ管理がなされているが、同様に5Pa以上陽圧に管理するようにしておけば、排気管(図示せず)を通じた第2燃焼室B内への排気の逆流を抑制することができるため、5Pa以上は大気圧よりも陽圧になる管理を行うのが良いといえる。
【0048】
そして、第2燃焼室Bには、実線矢印で示すように、第1燃焼室Aから脱硝装置5に至る排気管(図示せず)に接続された排気管(図示せず)が設けられており、内圧が高くなりすぎないように排気がとられるようになっている。
【0049】
ただし、若干、負圧になっていても、助燃性ガスが不足する事態には至らないため、例えば、第1燃焼室Aを出た直後(第2燃焼室Bからの排気管(図示せず)が合流する前の第1燃焼室A近傍の排気管(図示せず))の排気圧を測定し、第2燃焼室B内の圧力を、その測定した圧力より若干高い圧力(例えば5Pa以上高い圧力)に保つようにしてもよい。
このようにしてもメイン排気より高い圧力に制御されることになるため、第2燃焼室B内への排気の逆流を抑制することができる。
【0050】
なお、このようにして第2燃焼室Bから排気された二酸化炭素ガスは、先に説明した流れで、分離回収装置8に至り、再び、貯蔵タンク81に貯蔵される。
【0051】
以上の説明からわかるように、本実施形態の火力発電方法は、有機物燃料の燃焼と、無機物燃料の燃焼と、を利用した火力発電方法であって、有機物燃料の燃焼によって、発生する排ガス中の二酸化炭素ガスなどの酸化炭素ガスを助燃性ガスとして無機物燃料を燃焼させ、その燃焼反応の結果、酸化炭素ガス中の炭素が固体化されるため、地球温暖化に影響がある、二酸化炭素ガスのような酸化炭素ガスの排出が抑制される。
【0052】
一方、ストーカ型ボイラに限らず、燃焼室内には、燃焼灰等が溜まるため、その燃焼灰を回収する回収機構が設けられており、図示は省略しているものの、本実施形態でも同様の構成の燃焼灰回収機構を第1燃焼室Aと、第2燃焼室Bと、にそれぞれ設けるようにしており、第1燃焼室Aから回収された燃焼灰は、第1燃焼灰貯蔵部で貯蔵され、第2燃焼室Bから回収された燃焼灰は、第2燃焼灰貯蔵部で貯蔵される。
【0053】
なお、集塵装置6で回収された煤などについては、第1燃焼室Aから回収された燃焼灰を貯めている第1燃焼灰貯蔵部に送られるようにしておけばよい。
【0054】
そして、第1燃焼灰貯蔵部で貯蔵されている燃焼灰は、一般的な石炭火力発電で出る燃焼灰とほぼ同様であるため、コンクリートの混和材などとして利用することができる。
【0055】
一方、第2燃焼灰貯蔵部で貯蔵されている燃焼灰、つまり、無機物燃料の酸化物とともに固体化した炭素を回収した燃焼灰は、本実施形態の場合、酸化マグネシウムと炭素からなり、その他の不純物をほとんど含まない。
【0056】
このため、燃焼灰から固体化した炭素を分離して得られた炭素は、高純度が求められるカーボン素材の原料に利用することができる。
【0057】
具体的には、酸化マグネシウムと炭素からなる燃焼灰を塩酸水溶液中に入れると、酸化マグネシウムは塩酸と反応し、塩化マグネシウムになり、水溶液中に溶ける、一方、炭素は塩酸と反応しないため、水溶液中に溶けず、固体のままである。
なお、水酸化マグネシウムは酸化マグネシウム同様、塩化マグネシウムになり、水溶液中に溶ける。
【0058】
したがって、この水溶液を濾過機に通して濾過すれば、炭素粉末を回収することができる。
なお、高い純度にするために回収した炭素粉末は、さらに、純水などで洗浄するようにするのが良い。
【0059】
一方、濾過液には、塩化マグネシウムが溶けているため、その塩化マグネシウムを回収し、溶融塩電解を行えば、マグネシウムを作ることができる。
【0060】
具体的には、回収した濾過液中の水分を蒸発させていくと、塩化マグネシウムの6水和物が結晶として析出するので、その結晶を回収する。
【0061】
そして、結晶から水分を取り除くため、塩化マグネシウムの6水和物を、塩化水素ガスを吹き流した状態で300℃~600℃程度の温度に加熱する。
なお、脱水反応の反応速度、及び、酸化マグネシウムの生成抑制の点で、温度は、400℃~550℃に設定するのが良い。
【0062】
塩化マグネシウムの水和物を単純に加熱して水分を取ろうとすると、酸化マグネシウムになってしまう。
【0063】
しかし、塩化水素ガスを吹き流した状態で加熱を行えば、酸化マグネシウムに至る反応が阻害され、脱水反応が進み、無水の塩化マグネシウムにすることができる。
【0064】
このようにして生成した無水の塩化マグネシウムを700℃前後に加熱し、溶融状態にして電気分解を行えば、マグネシウムを作ることができる。
【0065】
したがって、燃焼灰中の無機物燃料の酸化物である酸化マグネシウムを材料として、再度、無機物燃料となるマグネシウムを製造することが可能であり、その製造した無機物燃料を先に説明した火力発電に用いれば、資源循環型の火力発電方法となる。
【0066】
なお、このように資源循環を行う上では、燃焼灰中に含まれる無機物燃料の酸化物は、単一である方が分離する手間などを省けるため、望ましい。
【0067】
したがって、無機物燃料は、単一の無機物だけからなるようにするか、その無機物の水素化物を混合した混合物にしておく方が好ましい。
【0068】
例えば、無機物がマグネシウムであれば、混合される水素化無機物は水素化マグネシウムにしておく方が良い。
【0069】
一方、上記で説明した溶融塩電解法は、エネルギーとして、電気を使用するだけであるため、残置風車等に見られる系統接続ができない電力を利用して実施することができ、資源循環全体を含め、二酸化炭素ガスのような温暖化に影響のある酸化炭素ガスの発生を抑制したものとできる。
【0070】
なお、上記では、有機物燃料として、石炭を例に挙げたが、同様に、ストーカ型ボイラで燃焼が可能で、燃焼時に無機物燃料の助燃性ガスとなる酸化炭素ガス(一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス等)が発生するものであればよい。
【0071】
したがって、例えば、ウッドチップ等を有機物燃料に用いてもよく、ウッドチップは自然界で再生可能な木材を原料にしているため、カーボンニュートラルな持続可能燃料という位置づけになっている。
【0072】
このため、有機物燃料にウッドチップを用いた場合、その燃焼によって発生する酸化炭素ガス(二酸化炭素ガス等)が無機物燃料の燃焼によって分解され、酸化炭素ガスを排出しない火力発電方法となるため、その発電方法は、カーボンマイナスの発電方法となる。
【0073】
(第2実施形態)
図2は、本発明に係る第2実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所を説明するための図である。
本実施形態の火力発電所も、ほぼ第1実施形態の火力発電所と類似であるため、同じ部分については、説明を省略する場合がある。
【0074】
本実施形態の火力発電方法は、無機物燃料に少なくとも一部が水素化された水素化無機物を用いる点が異なる。
例えば、具体例としては、少なくとも表面が水素化され、水素化マグネシウムの層を有する低純度水素化マグネシウム等である。
【0075】
この場合、第2燃焼室B内での燃焼反応は、第1実施形態で説明した助燃性ガスを酸化炭素ガス(二酸化炭素ガス)としたマグネシウムの燃焼反応(式(1)参照)に加え、水素化マグネシウムの部分の燃焼反応が加わる。
【0076】
そして、水素化マグネシウム(MgH2)の燃焼反応は、水素化マグネシウムが熱によって、マグネシウムと水素ガス(H2)に分解する下記式(2)に示す反応から始まり、それによって生成したマグネシウムが、先に、式(1)で示した燃焼反応を起こすことになる。
MgH2 -熱→ Mg+H2・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
【0077】
この場合、水素化マグネシウムの分解で発生した水素ガスは第2燃焼室B内で消費されず、第2燃焼室Bから排出される排ガスとともに第2燃焼室B外に排出される。
【0078】
そこで、本実施形態では、実線矢印で示すように、排気管(図示せず)を通じて、排ガスが、まず、水素ガスを回収する水素回収装置Hに供給され、そこで水素ガスが回収される。
【0079】
そして、回収された水素ガスは、二点鎖線矢印で示すように、ガス配管(図示せず)を通じて、燃料電池Fに供給され、発電が行われるようになっている。
【0080】
なお、回収された水素ガスを、一旦、水素ガスを貯蔵する水素ガスタンクに貯蔵し、水素ガスタンクから燃料電池Fに送るようにしてもよい。
【0081】
例えば、この燃料電池Fで発電した電力は、この火力発電方法を実施している火力発電所の運用で必要な電力として使用される。
したがって、発電機1によって発電された電力を全て送電に用いることが可能になる。
【0082】
なお、上記は、無機物燃料として、少なくとも一部が水素化されたマグネシウムの場合で説明したが、マグネシウムと少なくとも一部が水素化されたマグネシウムの混合物、つまり、無機物と水素化無機物の混合物を無機物燃料とした場合も同じである。
【0083】
(第3実施形態)
第1実施形態、第2実施形態では、ストーカ型ボイラの場合で説明してきたが、例えば、微粉炭燃焼ボイラのような形態の発電用ボイラを用いた火力発電方法であってもよい。
【0084】
この場合、第1燃焼室Aに微粉炭を燃焼させる、一般的な微粉炭バーナを設けるようにすればよい。
【0085】
また、第2燃焼室Bは、ストーカ型の構造を継承してもよいが、微粉炭バーナと同様の構造の粉末燃焼用バーナを設け、無機物燃料として、その粉末燃焼用バーナでの燃焼に適した粉末に粉砕したものを用いるようにすればよい。
【0086】
この場合、燃焼可能な無機物は、微粉末化が進むと引火しやすくなるため、少なくとも表面に水素化された層を有する水素化無機物としておくことが好ましい。
【0087】
このようにすることで、水素化膜が、無機物と大気中の酸素との反応を抑制するとともに、引火しにくいように保護してくれる。
【0088】
なお、この水素化膜は保護目的であるため、水素化無機物として見たときに、高純度の水素化無機物になっている必要はなく、30質量%以下の低純度水素化無機物であればよい。
【0089】
このように、水素化率の低い低純度水素化無機物に留めることで、無機物を水素雰囲気中で処理する水素化処理時間を大幅に削減でき、生産効率を高めることができる。
【0090】
一方、微粉炭バーナに代えて、第1燃焼室Aに設けるバーナを液体燃料燃焼用バーナにし、有機物燃料を石油系の液体燃料(例えば、重油、軽油等)としてもよい。
【0091】
このように、有機物燃料を石油系の液体燃料とした場合でも、硫黄成分等が含まれており、また、煤の発生もあるため、第1燃焼室Aから排出される排ガスの処理としては、第1実施形態と同様にすればよい。
【0092】
つまり、脱硝装置、集塵装置、脱硫装置を経た排ガスから二酸化炭素ガスを回収する分離回収装置で二酸化炭素ガスを回収する流れでよい。
【0093】
(第4実施形態)
有機物燃料としては、これまで説明してきたもの(即ち、液化天然ガス以外の化石燃料)に限らず、液化天然ガスであってもよい。
【0094】
この場合、第1燃焼室Aにガス燃焼用バーナを設けるようにしても良いが、ガスを燃焼させる火力発電の場合、発電効率等を考えるとガスタービンを用いた方が良い。
【0095】
したがって、第4実施形態として、有機物燃料が液化天然ガスで、ガスタービンを用いる場合について、説明する。
【0096】
なお、液化天然ガスは、油田、ガス田から得られる天然ガスを精製する過程を経ており、硫黄成分を含まないものとなっていることから、二酸化硫黄ガスの発生はなく、かつ、無機物燃料の燃焼でも二酸化硫黄ガスの発生はない。
【0097】
したがって、先に触れた第1燃焼室Aに液化天然ガスの燃焼を行うためのガス燃焼用バーナを設ける形態とするときには、これまでの説明にあった脱硫装置を除いたものとすればよい。
【0098】
図3は、本実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所を説明するための図である。
なお、本実施形態の火力発電方法を実施する火力発電所は、図1を参照して、説明した火力発電所と多くの点で類似するため、同様の点については説明を省略する場合がある。
【0099】
図3に示すように、本実施形態では、発電機1を駆動させるための、液化天然ガスの燃焼で動くガスタービンGが追加されている。
【0100】
本実施形態の有機物燃料である液化天然ガスは、ガスタービンGで燃焼するため、有機物燃料貯蔵庫3から発電用ボイラ2の燃焼室21に送られるのではなく、ガスタービンGに送られる。
【0101】
なお、有機物燃料貯蔵庫3は、液化天然ガスを貯蔵することになるため、液化ガスを貯蔵するタンクになっている。
【0102】
そして、ガスタービンG内で液化天然ガスが燃焼した後の二酸化炭素ガスを含む排ガスは、実線矢印で示すように、排気管(図示せず)を通じて、脱硝装置5に送られ、さらに、集塵装置6に送られ、二酸化炭素ガスを分離回収する分離回収装置8で二酸化炭素ガスが回収された後、排風機9を経由して大気に放出される。
【0103】
一方、分離回収装置8で回収された二酸化炭素ガスは、貯蔵タンク81を経由して、発電用ボイラ2の燃焼室21に供給される。
【0104】
本実施形態では、有機物燃料である液化天然ガスはガスタービンG内で燃焼し、発電用ボイラ2の燃焼室21内で燃焼させる必要はない。
【0105】
したがって、第1実施形態のように、燃焼室21を第1燃焼室と第2燃焼室に区画することなく、燃焼室21は、無機物燃料を燃焼するためだけに用いるようにしている。
【0106】
そして、燃焼室21からの排ガスは、実線矢印で示すように、排気管(図示せず)を通じて、ガスタービンGから脱硝装置5に至るまでの間の排気管(図示せず)に合流するようになっている。
【0107】
なお、本実施形態では、集塵装置6で集塵する必要がある微粉末を含む排ガスは、燃焼室21から排出される排ガスであるため、集塵装置6がガスタービンGから脱硝装置5に至るまでの間の排気管(図示せず)に合流するまでの間の排気管(図示せず)に設けられ、ガスタービンGから排出される排ガスは、集塵装置6を経由することなく、脱硝装置5を通った後、二酸化炭素ガスを分離回収する分離回収装置8に送られるようになっていてもよい。
【0108】
また、液化天然ガスを燃料とするガスタービンでは、燃焼温度を高く保てる場合、環境基準以下に、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制できるものもあり、酸素濃度を高めた助燃性ガスを使用して、窒素酸化物(NOx)の発生を抑制するものもあるため、この場合、脱硝装置5を省略してもよい。
【0109】
さらに、無機物燃料に水素化無機物が含まれる場合には、図2を参照して説明したのと同様に、水素回収装置Hと燃料電池Fを設けるようにすればよく、回収される水素量が多い場合には、燃料電池Fを発電用の水素ガスタービンに置き換えるようにしてもよい。
【0110】
以上、具体的な実施形態を通じて、本発明の火力発電方法について説明を行ってきたが、本発明は具体的な実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0111】
1 発電機
2 発電用ボイラ
21 燃焼室
22 蒸気タービン
23 配管
3 有機物燃料貯蔵庫
4 無機物燃料貯蔵庫
5 脱硝装置
6 集塵装置
7 脱硫装置
8 分離回収装置
81 貯蔵タンク
9 排風機
F 燃料電池
H 水素回収装置
図1
図2
図3