(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167491
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】化粧シート
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20241127BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083589
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】河西 優衣
(72)【発明者】
【氏名】戸賀崎 浩昌
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA01
4F100AA01A
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4F100YY00E
(57)【要約】
【課題】非塩素系樹脂でメラミン板を利用しなくても十分な耐傷性及び耐衝撃性を発現できる化粧シートを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂製の基材シート11上に、絵柄模様層12、第一接着剤層13、ポリエステル系樹脂層14、第二接着剤層15、透明熱可塑性樹脂層16、表面保護層17がこの順に積層された化粧シート10であって、ポリエステル系樹脂層14の厚さと、透明熱可塑性樹脂層16の厚さとの合計値は、200μm以上300μm以下の範囲内であり、ポリエステル系樹脂層14は、マルテンス硬さが40N/mm
2以上190N/mm
2以下であり、表面保護層17は、電離放射線硬化型樹脂を含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂製の基材シート上に、絵柄模様層、第一接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第二接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層された化粧シートであって、
前記ポリエステル系樹脂層の厚さと、前記透明熱可塑性樹脂層の厚さとの合計値は、200μm以上300μm以下の範囲内であり、
前記ポリエステル系樹脂層は、マルテンス硬さが40N/mm2以上190N/mm2以下であり、
前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含む
ことを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記透明熱可塑性樹脂層は、前記ポリエステル系樹脂層側に設けられ、第一の樹脂を含んで形成される第一の樹脂層と、前記第一の樹脂層上に設けられ、前記第一の樹脂と異なる第二の樹脂を含んで形成される第二の樹脂層とを備え、
前記第一の樹脂は、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であり、
前記第二の樹脂は、透明ポリプロピレン樹脂である
ことを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記第一の樹脂層の厚さは、10μm以上であり、且つ、前記透明熱可塑性樹脂層の全体の厚さの20%以下である
ことを特徴とする請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記表面保護層は、造核剤及び無機フィラの少なくとも一方を含有している
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の化粧シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐傷性や耐衝撃性等が求められる部分に使用される化粧シートとしては、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムに絵柄印刷を施したものが主流であった。近年では、環境問題への対応を考慮して、燃焼時の塩化水素又はダイオキシン等の有害物質の発生のおそれが少ない非塩素系樹脂を使用した化粧シートが開発され、幅広く利用されるようになっている。このような非塩素系樹脂の化粧シートとしては、メラミン板を利用したものが提案されている(下記特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、メラミン板を利用した化粧シートは、メラミン板の大きさにある程度の規定があることから、メラミン板を切除する箇所が多くなってしまい、歩留まりが悪いものとなっている。また、メラミン板を利用した化粧シートは、施工の際に重量のある枚葉を1枚ずつ貼り合せていくことから、作業性が悪くなってしまっている。そのため、メラミン板の利用を避けた化粧シートが市場で求められている。
【0005】
このようなことから、本発明は、非塩素系樹脂でメラミン板を利用しなくても十分な耐傷性及び耐衝撃性を発現できる化粧シートを提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決するための、本発明に係る化粧シートは、熱可塑性樹脂製の基材シート上に、絵柄模様層、第一接着剤層、ポリエステル系樹脂層、第二接着剤層、透明熱可塑性樹脂層、及び表面保護層がこの順に積層された化粧シートであって、前記ポリエステル系樹脂層の厚さと、前記透明熱可塑性樹脂層の厚さとの合計値は、200μm以上300μm以下の範囲内であり、前記ポリエステル系樹脂層は、マルテンス硬さが40N/mm2以上190N/mm2以下であり、前記表面保護層は、電離放射線硬化型樹脂を含むことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記透明熱可塑性樹脂層が、前記ポリエステル系樹脂層側に設けられ、第一の樹脂を含んで形成される第一の樹脂層と、前記第一の樹脂層上に設けられ、前記第一の樹脂と異なる第二の樹脂を含んで形成される第二の樹脂層とを備え、前記第一の樹脂が、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であり、前記第二の樹脂が、透明ポリプロピレン樹脂であると、好ましい。
【0008】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記第一の樹脂層の厚さが、10μm以上であり、且つ、前記透明熱可塑性樹脂層の全体の厚さの20%以下であると、好ましい。
【0009】
また、本発明に係る化粧シートは、上述した化粧シートにおいて、前記表面保護層が、造核剤及び無機フィラの少なくとも一方を含有していると、好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る化粧シートによれば、非塩素系樹脂でメラミン板を利用しなくても十分な耐傷性及び耐衝撃性を発現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る化粧シートの第一の実施形態の概略構成断面図である。
【
図2】本発明に係る化粧シートの第二の実施形態の概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る化粧シートの実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、図面に基づいて説明する以下の実施形態のみに限定されるものではなく、各実施形態で説明した技術的事項をそれぞれ必要に応じて適宜組み合わせて適用することも可能なものである。
【0013】
[第一の実施形態]
本発明に係る化粧シートの第一の実施形態を
図1に基づいて説明する。
【0014】
〈化粧シートの構成〉
本実施形態に係る化粧シートは、木質系基材、無機質系基材、合成樹脂基材、金属系基材等々の基材へ貼り合わせるオレフィン系化粧シートまたはポリエステル系化粧シートであり、特に、耐傷性や耐衝撃性が求められる部分に使用されるものである。
【0015】
図1に示すように、化粧シート10は、熱可塑性樹脂製の基材シート11上に、絵柄模様層12、第一接着剤層13、ポリエステル系樹脂層14、第二接着剤層15、透明熱可塑性樹脂層16、及び表面保護層17がこの順に積層されたものである。また、少なくとも透明熱可塑性樹脂層16には、エンボス10aが形成されている。そして、上記層12~17を積層された基材シート11は、下地層19上に積層されている。
【0016】
〈基材シート11〉
熱可塑性樹脂製の基材シート11としては、塩化ビニル樹脂以外の種々材質が可能であるが、例えば、無公害性、価格、性能、着色の容易さ等の点から考慮すると、充填剤と着色顔料とを添加したポリオレフィン系材料が好適に使用できる。
【0017】
基材シート11に適用可能な樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリプテン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、エチレン-酢酸ビニル共重合体またはその鹸化物、エチレン-(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体等のポリオレフィン系共重合体樹脂や、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、共重合ポリエステル樹脂(代表的には1,4-シクロヘキサンジメタノール共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂である通称PET-G)等のポリエステル系樹脂や、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂や、6-ナイロン、6,6ナイロン、6,10ナイロン、12ナイロン等のポリアミド系樹脂や、ポリスチレン、AS樹脂、ABS樹脂等のスチレン系樹脂や、セルロースアセテート、ニトロセルロース等の繊維素系樹脂や、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の含塩素系樹脂や、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等のフッ素系樹脂、またはこれらから選ばれる2種または3種以上の共重合体や混合物を用いることができる。
【0018】
基材シート11は、上記の樹脂成分に、着色顔料、充填剤、安定剤等を添加して分散均一化し、シート状に成形したものとすることも可能である。
【0019】
〈絵柄模様層12〉
基材シート11の表面には、任意の絵柄が印刷された絵柄模様層12が設けられている。絵柄模様層12のなす絵柄の種類は特に限定されず、例えば、木目柄、石目柄、布目柄、砂目柄、抽象柄、幾何学図形、文字又は記号、或いはそれらの組み合わせ等である。絵柄模様層12の形成に使用する印刷インキの種類は特に限定されず、化粧シートの形成に使用されている公知の印刷インキを使用することができる。
【0020】
具体的には、例えば、ポリ塩化ビニル樹脂系、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂系、ブチラール系、アクリル系、ウレタン系、ポリエステル系、エポキシ系、アルキド系、ポリアミド系等のバインダー樹脂に、有機又は無機の染料又は顔料や、必要に応じて体質顔料、充填剤、粘着付与剤、分散剤、消泡剤、安定剤その他の添加剤を適宜添加し、適当な希釈溶剤で所望の粘度に調整した印刷インキを適用することが可能である。
【0021】
絵柄模様層12の印刷方法としては、例えば、グラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の印刷法が用いられる。印刷インキとしては、それぞれの印刷法に適した印刷インキを用いることができる。
【0022】
〈第一接着剤層13〉
絵柄模様層12上には、第一接着剤層13が設けられている。第一接着剤層13は、絵柄模様層12の上に、第一接着剤層13を形成するための組成物を塗布等して設けることも可能である。第一接着剤層13に含まれる接着剤は、透明熱可塑性樹脂層16に含まれる透明熱可塑性樹脂との組み合わせに応じて、例えば、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の中から任意に選択することができる。
【0023】
〈ポリエステル系樹脂層14〉
ポリエステル系樹脂層14は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等が用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートが好適に用いられる。また、密着性を向上させるため、コロナ処理等を適宜施すことも可能である。
【0024】
ポリエステル系樹脂層14は、二軸延伸処理がなされた層であると好ましい。また、ポリエステル系樹脂層14の厚さは、100μm以上200μm以下の範囲内であると好ましい。ポリエステル系樹脂層14の厚さが上記範囲内であると、丸鋸あるいはハンドルータを用いた切削に対して切削加工性を高めることができる。
【0025】
ポリエステル系樹脂層14は、マルテンス硬さ(HM)が40N/mm2以上190N/mm2以下となっている。ポリエステル系樹脂層14のマルテンス硬さ(MH)が、40N/mm2未満であると、傷が付き易くなってしまい、190N/mm2を超えると、割れが生じ易くなってしまい、十分な耐傷性及び耐衝撃性を得られなくなってしまうからである。なお、マルテンス硬さ(MH)は、国際規格「ISO 14577」に準拠して求められる。
【0026】
〈第二接着剤層15〉
ポリエステル系樹脂層14上には、第二接着剤層15が設けられている。第二接着剤層15は、ポリエステル系樹脂層14上に、第二接着剤層15を形成するための組成物を塗布等して設けることも可能である。第二接着剤層15に含まれる接着剤は、透明熱可塑性樹脂層16に含まれる透明熱可塑性樹脂の組み合わせに応じて、例えば、ウレタン系、アクリル系、ポリエステル系等の中から任意に選択することができる。
【0027】
〈透明熱可塑性樹脂層16〉
透明熱可塑性樹脂層16は、エンボス10aが形成された層であって、例えば、複数層からなるシート状の層である。透明熱可塑性樹脂層16を形成する各層は、絵柄模様層12の絵柄が透けて見えるように、例えば透明な熱可塑性樹脂で構成される。透明熱可塑性樹脂層16に含まれる熱可塑性樹脂は、例えば、塩化ビニル樹脂以外の種々の透明な樹脂を適用することが可能である。透明熱可塑性樹脂層16を形成する各層の樹脂は、目的とする特性により、様々な組み合せが可能である。
【0028】
透明熱可塑性樹脂層16に適用可能な熱可塑性樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、高密度ポリエチレン樹脂(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリオレフィン系エラストマ等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT)、ポリエチレンナフタレート樹脂(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリメチルメタアクリレート樹脂(PMMA)、エチレン-酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマ樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-66等のポリアミド系樹脂、ポリスチレン系樹脂(PS)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)、ポリカーボネート樹脂(PC)、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂を挙げることができる。
【0029】
なお、エンボス10aは、絵柄模様層12が木目の場合には、自然木の持つ導管を凹みで表現してもよく、木目以外の場合でも砂目や幾何学模様の凹凸で意匠性を高めることが可能である。このように、エンボス10aを形成することで、化粧シート10の表面に立体感を与え、意匠性を向上させることができる。また、エンボス10aは、透明熱可塑性樹脂層16のみに留まらず、他の層に形成することも可能である。
【0030】
エンボス10aを形成する方法としては、各層を貼り合せた後に全体を加熱してエンボスロールを押し当てる後エンボス方法や、透明熱可塑性樹脂層16をTダイから押し出してエンボスロールに押し当てる押し出し同時エンボス法等を適用することができる。このように、エンボス10aは、表面保護層17を設ける前又は設けた後に形成することが可能である。
【0031】
また、透明熱可塑性樹脂層16の厚さは、50μm以上150μm以下の範囲内であると好ましく、100μm以上120μm以下の範囲内であるとより好ましい。透明熱可塑性樹脂層16の厚さが上記範囲内であると、エンボス10aによる凹凸を形成することに支障がないと共に、十分な耐摩耗性を得ることができる。くわえて、意匠性の面でも、透明熱可塑性樹脂層16の存在が絵柄模様層12と相俟って、より深みや奥行きを感じさせる効果を発現し得る。
【0032】
すなわち、透明熱可塑性樹脂層16の厚さが50μm未満であると、耐摩耗性等を十分に得られないおそれがあり、透明熱可塑性樹脂層16の厚さが150μmを超えると、製造時の生産性が低下し易く、コスト的に不利になるおそれがある。
【0033】
また、ポリエステル系樹脂層14の厚さと、透明熱可塑性樹脂層16の厚さとの合計値は、200μm以上300μm以下の範囲内であると好ましい。ポリエステル系樹脂層14と透明熱可塑性樹脂層16との合計厚さが上記範囲内であると、十分な耐傷性及び耐衝撃性を得ることができる。さらに、化粧シート10としての可撓性と機械的強度との両方を損なうことがないと共に、インラインでのロールラミネート等の化粧板への加工性や、化粧板としての加工性等に支障を来すことがなく、使い勝手を向上させることができる。
【0034】
透明熱可塑性樹脂層16は、紫外線吸収剤や光安定剤等の各種添加剤を含有することも可能である。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系等を挙げることができる。
【0035】
ベンゾトリアゾール系としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール,2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール,2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等を適用することができる。
【0036】
トリアジン系としては、例えば、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-[(ヘキシル)オキシ]-フェノール、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-6-(2-ヒドロキシ-4-イソ-オクチルオキシフェニル)-s-トリアジン等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等を適用することができる。
【0037】
ベンゾフェノン系としては、例えば、オクタベンゾンや変性物、重合物、誘導体等を適用することができる。ここで、紫外線吸収剤は、イソシアネート添加に伴う架橋によって樹脂成分と結合させることが可能になることから、水酸基を有するものが特に有効である。添加部数は、所望の耐候性に応じて適宜設定可能であるが、樹脂固形分に対して0.1%以上50%以下の範囲内であると好ましく、1%以上30%以下の範囲内であるとより好ましい。
【0038】
光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)[[3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル]メチル]ブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ポペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-1(オクチルオキシ)-4-ピペリジニル)エステル等やこれらの混合物、変性物、重合物、誘導体等を適用することができる。添加部数は、所望の耐候性に応じて適宜設定可能であるが、樹脂固形分に対して0.1%以上50%以下の範囲内であると好ましく、1%以上30%以下の範囲内であるとより好ましい。
【0039】
他の添加剤としては、例えば、熱安定剤、難燃剤、ブロッキング防止剤等を挙げることができる。熱安定剤としては、例えば、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3、5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)]-プロピオネート、2、4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)イソシアヌル酸等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイトに代表される燐系酸化防止剤等やこれらの混合物、つまり、1種、または2種以上を組み合わせたものを適用することができる。
【0040】
難燃剤としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の無機系化合物や燐酸エステル系の難燃剤等を適用することができる。ブロッキング防止剤としては、例えば、珪酸アルミニウム、酸化珪素、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム等の無機系、脂肪酸アミド等の有機系等を適用することができる。
【0041】
〈表面保護層17〉
表面保護層17は、化粧シート10の最表面にあって、化粧シート10に対する直接の外力、たとえば物がぶつかったり、移動の際に擦ったりといった外力に対して化粧シート10を保護する役割を果たす。つまり、表面保護層17は、化粧シート10の表面物性を向上させるものであり、化粧シート10の表面に耐傷性や耐衝撃性、耐汚染性、滑り性等を付与し、艶、触感等に影響を与えるものである。
【0042】
表面保護層17は、紫外線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂を含んでいる。具体的には、表面保護層17の材料としては、例えば、熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂(UV硬化型樹脂)との混合物(ブレンド樹脂)等が好ましい。このように、表面保護層17は、熱硬化型樹脂と紫外線硬化型樹脂、つまり、硬度が高い樹脂を含むため、表面に露出することによって、化粧シート10の耐傷性を向上させることができる。
【0043】
熱硬化型樹脂としては、例えば、化粧シート10の変形追従性、耐傷性等を考慮すると、二液硬化型ウレタン樹脂等のウレタン結合を有する熱硬化型樹脂等を適用すると好ましい。二液硬化型ウレタン樹脂としては、例えば、ポリオールを主体とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂等を適用することができる。なお、溶剤としては、酢酸エチル、酢酸nブチル等を挙げることができる。
【0044】
ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものであって、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等を適用することができる。
【0045】
イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネート等を適用することができる。多価イソシアネートとしては、例えば、2,4-トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート等を適用することができる。また、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体も適用することができる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(トリマ)等を挙げることができる。なお、上記イソシアネートにおいて脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートは、耐候性、耐熱黄変性に対しても良好であるため好ましく、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0046】
紫外線硬化型樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、アミド系樹脂、エポキシ系樹脂等を適用することができる。
【0047】
表面保護層17は、ナノサイズの添加剤としての分散剤等を添加して形成されている(以下「分散剤ナノ仕様」ともいう)と好ましい。表面保護層17は、耐候剤を添加したものを使用することも可能である。表面保護層17は、上述した樹脂材料と、当該樹脂材料の結晶化度を向上させる造核剤とを含有し、表面に凹凸形状を有していると好ましい。造核剤は、外膜で包含されてベシクル化された造核剤ベシクルの状態で樹脂材料に添加されると好ましい。
【0048】
表面保護層17は、ナノサイズの添加剤として造核剤を含有していると好ましい。ナノサイズの造核剤は、単層膜の外膜を具備するベシクルに内包された、造核剤ベシクルの形で上述した樹脂材料に添加されて使用されることが好ましい。また、表面保護層17を構成する樹脂材料中の造核剤は、当該造核剤の一部を露出させた状態で、ベシクルに内包されていることも可能である。表面保護層17は、造核剤を含むことにより、結晶化度を向上させて、化粧シート10の耐傷性等を向上させることができる。
【0049】
ナノサイズの造核剤は、平均粒径が可視光の波長領域の1/2以下であることが好ましく、具体的には、可視光の波長領域が400nm以上750nm以下であるので、平均粒径が375nm以下であることが好ましい。
【0050】
ナノサイズの造核剤は、粒径が極めて小さいため、単位体積当たりに存在する造核剤の数と表面積とが粒子直径の三乗に反比例して増加する。その結果、各造核剤粒子間の距離が近くなるため、樹脂に添加された一の造核剤粒子の表面から結晶成長が生じた際に、結晶が成長している端部が直ちに、一の造核剤粒子に隣接する他の造核剤粒子の表面から成長している結晶の端部と接触し、互いの結晶の端部が成長を阻害して各結晶の成長が止まる。
【0051】
そのため、結晶性樹脂の結晶部における、球晶の平均粒径を小さく、例えば、球晶サイズを小さくして1μm以下とすることができる。この結果、結晶化度の高い高硬度の樹脂フィルムとすることができると共に、曲げ加工時に生じる球晶間の応力集中が効率的に分散されるため、曲げ加工時の割れや白化を抑制した樹脂フィルムを実現することができる。
【0052】
造核剤を単純添加した場合、樹脂中の造核剤が二次凝集することで粒径が大きくなる。一方、造核剤ベシクルを添加する場合、樹脂中における分散性が向上するため、造核剤を単純添加した場合と比較して添加した造核剤量に対しする結晶核の数が大幅に増加する。このため、樹脂の結晶部における球晶の平均粒径が小さくなり、曲げ加工時の割れや白化の発生を抑制することができる。よって、造核剤ベシクルを添加することにより結晶化度をより高めることができ、弾性率向上と加工性をより両立可能となる。
【0053】
表面保護層17における造核剤の添加量は、例えば、樹脂材料100質量部に対して好ましくは0.05質量部以上0.5質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上0.3質量部以下の範囲内である。造核剤ベシクルを用いる場合、樹脂材料への造核剤の添加量は、造核剤ベシクル中の造核剤に換算した添加量である。
【0054】
造核剤の添加量が0.05質量部未満の場合、樹脂材料の結晶化度が十分に向上せず、表面保護層17の耐傷性等を十分に向上し得ないおそれがある。また、造核剤の添加量が0.5質量部を超える場合、結晶核が過多のため樹脂材料の球晶成長が逆に阻害され、結果的に樹脂材料の結晶化度が十分に向上せず、表面保護層17の耐傷性等を十分に向上し得ないおそれがある。
【0055】
造核剤をナノ化する手法としては、例えば、造核剤に対して主に機械的な粉砕を行ってナノサイズの粒子を得る固相法、造核剤や造核剤を溶解させた溶液中でナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う液相法、造核剤や造核剤からなるガス・蒸気からナノサイズの粒子の合成や結晶化を行う気相法等の方法を適宜用いることができる。
【0056】
固相法としては、例えば、ボールミル、ビーズミル、ロッドミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、ハンマーミル、ジェットミル等が挙げられる。液相法としては、例えば、晶析法、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法、水熱合成法等が挙げられる。気相法としては、例えば、電気炉法、化学炎法、レーザー法、熱プラズマ法等が挙げられる。
【0057】
造核剤をナノ化する手法としては、超臨界逆相蒸発法が好ましい。超臨界逆相蒸発法とは、超臨界状態又は臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素を用いて対象物質を内包したカプセル(ナノサイズのベシクル)を作製する方法である。超臨界状態の二酸化炭素とは、臨界温度(30.98℃)及び臨界圧力(7.3773±0.0030MPa)以上の超臨界状態にある二酸化炭素を意味する。臨界点以上の温度条件下又は圧力条件下の二酸化炭素とは、温度だけ又は圧力だけが臨界条件を越えた条件下の二酸化炭素を意味する。
【0058】
超臨界逆相蒸発法による具体的なナノ化処理としては、まず超臨界二酸化炭素と外膜形成物質としてのリン脂質と内包物質としての造核剤との混合流体中に水相を注入し、攪拌することによって、超臨界二酸化炭素と水相のエマルジョンを生成させる。次に、減圧することで、二酸化炭素が膨張・蒸発して転相が生じ、リン脂質が造核剤粒子の表面を単層膜で覆ったナノカプセル(ナノベシクル)を生成させる。この超臨界逆相蒸発法を用いることにより、造核剤粒子表面で外膜が多重膜となる従来のカプセル化方法とは異なり、容易に単層膜のカプセルを生成することができるので、より小径なカプセルを調製することができる。
【0059】
なお、造核剤ベシクルは、例えば、Bangham法、エクストルージョン法、水和法、界面活性剤透析法、逆相蒸発法、凍結融解法、超臨界逆相蒸発法等によって調製される。造核剤ベシクルは、その中でも特に超臨界逆相蒸発法を用いて調整されることが好ましい。
【0060】
造核剤ベシクルを構成する外膜は例えば単層膜から構成される。また、その外膜は、例えば、リン脂質等の生体脂質を含む物質から構成される。本明細書では、外膜がリン脂質のような生体脂質を含む物質から構成される造核剤ベシクルを、造核剤リポソームと称する。
【0061】
外膜を構成するリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、カルジオピン、黄卵レシチン、水添黄卵レシチン、大豆レシチン、水添大豆レシチン等のグリセロリン脂質、スフィンゴミエリン、セラミドホスホリルエタノールアミン、セラミドホスホリルグリセロール等のスフィンゴリン脂質等が挙げられる。
【0062】
ベシクルの外膜となるその他の物質としては、例えば、ノニオン系界面活性剤や、これとコレステロール類又はトリアシルグリセロールとの混合物等の分散剤が挙げられる。
【0063】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリグリセリンエーテル、ジアルキルグリセリン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンコポリマ、ポリブタジエン-ポリオキシエチレン共重合体、ポリブタジエン-ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリスチレン-ポリアクリル酸共重合体、ポリエチレンオキシド-ポリエチルエチレン共重合体、ポリオキシエチレン-ポリカプロラクタム共重合体等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0064】
コレステロール類としては、例えば、コレステロール、α-コレスタノール、β-コレスタノール、コレスタン、デスモステロール(5、24-コレスタジエン-3β-オール)、コール酸ナトリウム又はコレカルシフェロール等を使用することができる。
【0065】
また、リポソームの外膜は、リン脂質と分散剤との混合物から形成するようにすることも可能である。造核剤ベシクルは、リン脂質からなる外膜を具備したラジカル捕捉剤リポソームであると好ましく、外膜をリン脂質から構成することによって、表面保護層17の樹脂材料とベシクルとの相溶性を良好なものとすることができる。
【0066】
造核剤としては、樹脂が結晶化する際に結晶化の起点となる物質であれば特に限定するものではない。造核剤としては、例えば、リン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩、ベンジリデンソルビトール、キナクリドン、シアニンブルー及びタルク等が挙げられる。特に、ナノ化処理の効果を最大限に得るべく、非溶融型で良好な透明性が期待できるリン酸エステル金属塩、安息香酸金属塩、ピメリン酸金属塩、ロジン金属塩を用いることが好ましいが、ナノ化処理によって材料自体の透明化が可能な場合には、有色のキナクリドン、シアニンブルー、タルクなども用いることができる。また、非溶融型の造核剤に対して、溶融型のベンジリデンソルビトールを適宜混合して用いることも可能である。
【0067】
本実施形態においては、表面保護層17を形成する際に、樹脂材料に対してベシクルに内包された造核剤を添加して樹脂材料を結晶化させるようにしている。造核剤をベシクルに内包させた状態で樹脂組成物に添加することで、樹脂材料中、すなわち、表面保護層17中への造核剤の分散性を飛躍的に向上するという効果を奏する。
【0068】
ところで、ベシクルに内包された造核剤を、完成された化粧シート10の状態における物の構造や特性にて直接特定することは、状況により困難な場合も想定され、非実際的であるといえる。その理由は次の通りである。
【0069】
ベシクルの状態で添加された造核剤は、高い分散性を有して分散された状態になっており、作製された化粧シート10の前駆体である積層体の状態においても表面保護層17に高分散されている。しかしながら、化粧シート10の作製工程において、通常、積層体は圧縮処理や硬化処理などの種々の処理が施され、このような処理によって造核剤を内包するベシクルの外膜が破砕したり、化学反応を生じたりする場合がある。
【0070】
このため、化粧シート10の処理工程によって、完成後の化粧シート10における造核剤の外膜が破砕したり、化学反応を生じたりしている状態にバラつきがあり、造核剤が外膜で包含(包皮)されていない可能性も高い。そして、造核剤が外膜で包含されていない場合、造核剤の物性自体を数値範囲で特定することが困難であり、また破砕された外膜の構成材料が、ベシクルの外膜なのか造核剤とは別に添加された材料なのか判定が困難な場合も想定される。
【0071】
このように、本発明では、従来に比して、化粧シート10に対し、造核剤が高分散で配合されている点で相違があるものの、造核剤を内包するベシクルの状態で添加されたためなのかどうかが、化粧シート10の状態において、その構造や特性を測定に基づき解析した数値範囲で特定することが非実際的である場合も想定される。
【0072】
〈下地層19〉
下地層19としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの混合物等を適用することができる。更に、下地層19をポリオールとイソシアネートとの二液タイプにすることで、基材シート11との密着性及び下地層19自体の凝集力を向上させることができる。
【0073】
ポリオールとしては、例えば、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール等を適用することができる。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族系、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート等の脂肪族系等を適用することができる。なかでも、反応性の早さ、耐熱性等を考慮すると、芳香族系が好ましい。
【0074】
下地層19は、厚さが1μm以上であると好ましく、10μm以下であると好ましい。下地層19は、厚さが1μm未満となると、接着剤の溶剤種によっては溶解して消失してしまい、密着性の向上に寄与しないおそれがある。
【0075】
〈本実施形態の効果〉
このような本実施形態に係る化粧シート10においては、ポリエステル系樹脂層14の厚さと、透明熱可塑性樹脂層16の厚さとの合計値が、200μm以上300μm以下の範囲内であり、ポリエステル系樹脂層14のマルテンス硬さが、40N/mm2以上190N/mm2以下であり、表面保護層17が電離放射線硬化型樹脂を含んでいるので、非塩素系樹脂でメラミン板を利用しなくても十分な耐傷性及び耐衝撃性を発現することができる。
【0076】
さらに、表面保護層17が、造核剤及び無機フィラの少なくとも一方を含有しているので、耐傷性をより向上させることができる。
【0077】
[第二の実施形態]
本発明に係る化粧シートの第二の実施形態を
図2に基づいて説明する。ただし、前述した実施形態と同様な部分については、前述した実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した実施形態での説明と重複した部分の説明を省略する。
【0078】
〈透明熱可塑性樹脂層〉
図2に示すように、本実施形態に係る化粧シート20は、透明熱可塑性樹脂層26が、ポリエステル系樹脂層14側から、予め定めた樹脂(以下「第一の樹脂」という)を含んで形成される第一の樹脂層26aと、第一の樹脂と異なる樹脂(以下「第二の樹脂」という)を含んで形成される第二の樹脂層26bとの2層をこの順に積層されて設けられたものとなっている。
【0079】
透明熱可塑性樹脂層26は、第一の樹脂層26aと第二の樹脂層26bとを有することにより、その必要な働きを分担させることができるので、利用可能な材料の種類を広げることができる。例えば、第一の樹脂層26aにポリエステル系樹脂層14側との接着性を担当させ、第二の樹脂層26bに他の各種機能を担当させる。
【0080】
具体的には、耐傷性、耐衝撃性、耐候性、耐汚染性、耐光性、透明性、折り曲げ性、熱成形性等の各種機能と共に、材料コスト等を併せて考慮すると、第一の樹脂は、透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂であると好ましく、第二の樹脂は、透明ポリプロピレン樹脂であると好ましい。
【0081】
これにより、第一の樹脂を含有する第一の樹脂層26aは、接着性等を向上させることができ、第二の樹脂を含有する第二の樹脂層26bは、耐脆化等を向上させることができる。なお、第二の樹脂層26bは、紫外線吸収剤及び光安定剤の少なくとも一方を含有することも可能である。
【0082】
また、第一の樹脂層26a中の第一の樹脂である透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の質量含有割合(質量%)は、第二の樹脂層26b中の第二の樹脂である透明ポリプロピレン樹脂の質量含有割合(質量%)よりも大きくすることが可能である。
【0083】
具体的には、第一の樹脂層26a中の第一の樹脂である透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂の質量含有割合を80質量%以上として、第二の樹脂層26b中の第二の樹脂である透明ポリプロピレン樹脂の質量含有割合よりも大きくすることができる。このような質量含有割合であっても、密着安定性を維持しつつ、化粧シート20の全体の表面強度を維持することが確実にできる。
【0084】
第一の樹脂層26aは、厚さが、10μm以上であると好ましく、透明熱可塑性樹脂層26の全体の厚さの20%以下であると好ましい。特に、第一の樹脂層26aは、厚さが、50μm以上であるとより好ましく、透明熱可塑性樹脂層26の全体の厚さの10%以下であるとより好ましい。
【0085】
第一の樹脂層26aは、厚さが、10μm未満になると、密着安定性の低下を引き起こしてしまうおそれがあり、透明熱可塑性樹脂層26の全体の厚さの20%を超えると、化粧シート20の全体の表面強度の低下を引き起こしてしまうおそれがある。つまり、第一の樹脂層26aは、厚さが、10μm以上であり、且つ、透明熱可塑性樹脂層26の全体の厚さの20%以下であると、密着安定性を維持しつつ、化粧シート20の全体の表面強度を維持することが確実にできる。
【0086】
第一の樹脂層26aと第二の樹脂層26bとの2層からなる透明熱可塑性樹脂層26は、二軸押出機を使用して第一の樹脂層26aと第二の樹脂層26bとの2層を同時に押し出しながら貼り合わせることにより製造すると好ましい。
【0087】
なお、透明熱可塑性樹脂層は、4層以上とすることも可能であるが、押出機が複雑な構造となってしまい、製造作業が煩雑になってしまうため、3層までが好ましい。実質的には、
図2に示したように、第一の樹脂層26a及び第二の樹脂層26bの2層からなる透明熱可塑性樹脂層26であると最も実用的である。
【0088】
また、透明ポリプロピレン樹脂としては、例えば、自由末端長鎖分岐を付与したポリプロピレン樹脂(a)と、自由末端長鎖分岐を付与していないポリプロピレン樹脂(b)との混合物で、その混合物の質量平均分子量/数平均分子量として定義される分子量分布Mw/Mnが1以上5以下の範囲内にあり、かつ、そのポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合樹脂の、沸騰ヘプタン可溶残分率として規定されるアイソタクチック指数が、1%以上90%以下の範囲内にあるものを適用することが可能である。これにより、鋼板等の基礎材に下地層19を介して化粧シート20を貼り合わせて、折り曲げ加工したときの、白化や割れの発生を抑制することができる。
【0089】
ここで、分子量分布は、分子量Miの分子がNi個存在する場合に、数平均分子量Mn=Σ(Mi×Ni)/ΣNi、質量平均分子量Mw=Σ(Ni×Mi2)/Σ(Ni×Mi)の比、Mw/Mnとして定義される値である。1に近いほど分子量の分布が狭く、均一性が高くなる。この分子量分布が5以下になるようにすれば、分子量を必要十分な大きさに揃えることができ、白化や割れの抑制に寄与するようになる。一般的には、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定することができる。
【0090】
また、沸騰ヘプタン可溶残分率として規定されるアイソタクチック指数は、ポリプロピレン樹脂中の結晶化度を調べる指標として有用である。具体的には、試料を沸騰n-ヘプタンで一定時間抽出を行い、抽出されない部分の質量(%)を求めてアイソタクチックインデックスを算出する。
【0091】
詳しくは、円筒濾紙を110±5℃で2時間乾燥し、恒温恒湿の室内で2時間以上放置してから、円筒濾紙中に試料(粉体またはフレーク状)8g以上10g以下を入れ、秤量カップ及びピンセットを用いて精秤する。これをヘプタン約80ccの入った抽出器の上部にセットし、抽出器と冷却器とを組み立てる。これをオイルバスまたは電気ヒータで加熱し、12時間抽出する。加熱は、冷却器からの滴下数が1分間130滴以上であるように調節する。
【0092】
続いて、抽出残分の入った円筒濾紙を取り出し、真空乾燥器に入れて80℃、100mmHg以下の減圧度で5時間乾燥する。乾燥後、恒温恒湿環境下で2時間放置した後、精秤し、(P/Po)×100によりアイソタクチック指数を算出する。ただし、Poは抽出前の試料質量(g)、Pは抽出後の試料質量(g)である。
【0093】
アイソタクチック指数を90%以下にすることで、ポリプロピレン結晶起因によるシート剛性を抑制することができる。アイソタクチック指数を下げる方法としては、例えば、非晶質ポリプロピレン成分(シンジオタクチックポリプロピレンやアダクチックポリプロピレン等)を一部に使う方法や、エチレンやα-オレフィン等のオレフィンモノマを1種類以上ランダム共重合させる方法、各種ゴム成分(例えばエチレン-プロピレンゴム(EPR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)等の成分)を添加する方法を用いることができる。
【0094】
また、ポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合樹脂の溶融張力は、100mN以上500mN以下の範囲内にあると好ましく、300mN以上400mN以下の範囲内にあるとより好ましい。500mNを超えると、溶融粘度が高くなり過ぎてしまい、安定した成膜が困難となってしまい、100mN未満であると、長鎖分岐成分が不足してしまい、所望の性能を得ることが難しくなってしまう。なお、上記溶融張力とは、2.0mm径のノズルキャピラリのレオメータを使用して、230℃の温度において、60mm/分で押し出し、2mm/分で引き取ったときの張力である。
【0095】
また、ポリプロピレン樹脂(a)とポリプロピレン樹脂(b)との混合物の、日本工業規格「JIS K6760」にて規定される230℃におけるメルトフローレートが、5g/10min以上50g/10min以下の範囲内であると、ある一定値以上の分子量においても、安定的な製膜状態を容易に保持することができるので好ましい。より好ましくは、10g/10min以上30g/10min以下の範囲内であり、さらに好ましくは10g/10min以上25g/10min以下の範囲内である。
【0096】
上記メルトフローレートが、50g/10minを超えると、Tダイによる溶融押し出しの際に、Tダイから溶融押し出しされた樹脂が、中央に集まろうとする効果(ネックイン)が大きくなり過ぎてしまい、Tダイから溶融押し出しされた樹脂の端部の厚さが大きくなり過ぎてしまう。このように樹脂の端部の厚さが大きくなり過ぎてしまうと、冷却効率の低下と幅方向の厚さの不安定化とを生じ易くなってしまうため、安定的な製膜状態の保持が難しくなってしまう。
【0097】
他方、上記メルトフローレートが、5g/10min未満であると、溶融樹脂のドローレゾナンスが低下し易くなり、Tダイから出た直後の溶融樹脂の速度(初速)と冷却ロールに触れた直後の樹脂の速度とのギャップが大きくなって溶融樹脂が追従し難くなってしまうため、安定的な製膜状態の保持が難しくなってしまう。
【0098】
〈本実施形態の効果〉
このような本実施形態に係る化粧シート20においては、透明熱可塑性樹脂層26が、ポリエステル系樹脂層14側に設けられて、第一の樹脂である透明マレイン酸変性ポリプロピレンを含有する第一の樹脂層26aと、第一の樹脂層26a上に設けられて、第二の樹脂である透明ポリプロピレン樹脂を含有する第二の樹脂層26bとを備えているので、前述した実施形態に係る化粧シート10と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、さらに、接着性を向上させることができると同時に、耐脆化を低減することができる。
【0099】
また、第一の樹脂層26aの厚さが、10μm以上であり、且つ、透明熱可塑性樹脂層26の全体の厚さの20%以下であるので、密着安定性を維持しつつ、化粧シート20の全体の表面強度を維持することが確実にできる。
【0100】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、造核剤及び無機フィラの少なくとも一方を含有している表面保護層17を有する化粧シート10,20の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、造核剤及び無機フィラを含有することのない表面保護層を有する化粧シートとすることも可能である。しかしながら、前述した実施形態のように、造核剤及び無機フィラの少なくとも一方を含有している表面保護層17を有する化粧シート10,20とすると、耐傷性等をより向上させることができるので、非常に好ましい。
【実施例0101】
本発明に係る化粧シートの実施例を具体的に説明するが、本発明は、具体的に説明する以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0102】
[試験体及び比較体の作製]
〈試験体1〉
リケンテクノス株式会社製ポリオレフィン系無機充填シート「OW(品番)」(厚さ55μm)を基材シート11に使用し、その表面側に木目模様をグラビア印刷法で印刷して絵柄模様層12を形成した。
【0103】
次に、予めコロナ処理を施した東レ株式会社製二軸延伸ポリエチレンテレフタレート「ルミラー(登録商標)T60(品番)」(厚さ200μm、マルテンス硬さ190N/mm2)を絵柄模様層12上に第一接着剤層13を介してドライラミネートしてポリエステル系樹脂層14を設けた。なお、マルテンス硬さ(HM)は、国際規格「ISO 14577」に準拠して求めた。
【0104】
続いて、ポリエステル系樹脂層14上にウレタン樹脂系接着剤を塗布し温風乾燥して第二接着剤層15を設けた後、多軸エクストルーダを用いて、Tダイから溶融した2層の透明熱可塑性樹脂を押し出して第二接着剤層15上に透明熱可塑性樹脂層26(厚さ100μm)を設けた。また、これと同時に、導管エンボス版とゴムロールとで全層をニップしてエンボス10aを形成した後、透明熱可塑性樹脂層26に表面処理を施した。
【0105】
なお、透明熱可塑性樹脂層26は、第一の樹脂として、理研ビタミン株式会社製透明マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂「リケエイド(登録商標)」を使用して第一の樹脂層26a(厚さ15μm)を形成した。また、第二の樹脂として、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、BASFジャパン株式会社製フェノール系酸化防止剤「イルガノックス(登録商標)1010(品番)」0.2質量部、BASFジャパン株式会社製ヒンダードアミン系光安定剤「チヌビン(登録商標)622(品番)」)0.3質量部、BASFジャパン株式会社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)326(品番)」0.5質量部を添加混合して第二の樹脂層26b(厚さ85μm)を形成した。
【0106】
次に、東洋インキ株式会社製ウレタン系樹脂「URV238ワニス(品番)」100質量部に対して、東洋インキ株式会社製硬化剤「UR150Bワニス(品番)」10質量部、BASFジャパン株式会社製ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤「チヌビン(登録商標)326(品番)」0.5質量部、BASFジャパン株式会社製ヒンダードアミン系光安定剤「チヌビン(登録商標)622(品番)」)1質量部を添加して、乾燥後の塗布量が5g/m2となるように透明熱可塑性樹脂層26にグラビアコート法で塗布した。そして、紫外線を直ちに照射して硬化させることにより、表面保護層17を設けた。
【0107】
続いて、基材シート11の裏面に表面処理を施した後、東洋インキ株式会社製ポリオール「ラミスター(登録商標)EM(品番)」100質量部に対して、シリカ10質量部、東洋インキ株式会社製イソシアネート「LPNYB硬化剤」3質量部を添加して塗工液とし、乾燥後の塗布量が3g/m2となるように基材シート11の裏面にグラビアコート法で塗布して乾燥させることにより、下地層19を設けた。
【0108】
そして、下地層19に対して、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョン型接着剤を介して厚さ6mmの中密度木質繊維板(MDF)の基礎材を貼り合わせることにより、化粧板の試験体1を作製した。
【0109】
〈試験体2〉
厚さ100μm、マルテンス硬さ40N/mm2のポリエステル系樹脂層14とした以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧板の試験体2を作製した。
【0110】
〈試験体3〉
透明熱可塑性樹脂層26の第一の樹脂層26aを、厚さ20μmとし、第二の樹脂層26bを、厚さ80μmとした以外は、試験体2と同一にすることにより化粧板の試験体5を作製した。
【0111】
〈試験体4〉
透明熱可塑性樹脂層26の第一の樹脂層26aを、厚さ10μmとし、第二の樹脂層26bを、厚さ90μmとした以外は、試験体2と同一にすることにより化粧板の試験体6を作製した。
【0112】
〈試験体5〉
造核剤ベシクルを樹脂材料100質量部に対して0.5質量部添加した表面保護層17とした以外は、試験体3と同一にすることにより化粧板の試験体7を作製した。
【0113】
〈試験体6〉
造核剤ベシクルを樹脂材料100質量部に対して0.05質量部添加した表面保護層17とした以外は、試験体3と同一にすることにより化粧板の試験体8を作製した。
【0114】
〈比較体1〉
厚さ250μm、マルテンス硬さ200N/mm2のポリエステル系樹脂層14とした以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧板の比較体1を作製した。
【0115】
〈比較体2〉
厚さ50μm、マルテンス硬さ35N/mm2のポリエステル系樹脂層14とした以外は、試験体1と同一にすることにより、化粧板の比較体2を作製した。
【0116】
[試験内容]
〈耐傷性試験〉
日本工業規格「JIS K5600」で規定されている鉛筆硬度試験に準拠して、試験体1~6及び比較体1,2に対して、硬さ「H」の鉛筆による耐傷性試験を行い、傷の付き具合を目視確認した。その結果を下記の表1に示す。なお、表1おいて、「○」は、傷付きなし、「△」は、わずかな傷付きあり、「×」は、へこみ傷あり、を示しており、「○」,「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
【0117】
〈耐衝撃性試験〉
日本工業規格「JIS K5400」で規定されているデュポン衝撃試験に準拠して、試験体1~6及び比較体1,2に対して、500gの錘を500mmの高さから落下させて衝撃を与えたときのへこみ具合を目視確認した。その結果を下記の表1に示す。なお、表1おいて、「○」は、へこみなし、「△」は、わずかなへこみ(1.0mm未満)あり、「×」は、へこみ(1.0mm以上)あり又は基礎材に割れ発生、を示しており、「○」,「△」を合格とし、「×」を不合格とした。
【0118】
[試験結果]
上記試験の結果を下記の表1に示す。
【0119】
【0120】
表1からわかるように、比較体1においては、十分な耐衝撃性を得ることができなかった。また、比較体2においては、十分な耐傷性を得ることができなかった。これに対し、試験体1~6においては、十分な耐傷性及び耐衝撃性を得ることが確認でき、特に、試験体1,5,6においては、耐傷性及び耐衝撃性の両者共に優秀であることが確認できた。
本発明に係る化粧シートは、非塩素系樹脂でメラミン板を利用しなくても十分な耐傷性及び耐衝撃性を発現することができるので、産業上、極めて有益に利用することができる。