(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167493
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ガス噴出構造、表面処理方法及び表面処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
H01L21/31 B
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083593
(22)【出願日】2023-05-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-18
(71)【出願人】
【識別番号】520472664
【氏名又は名称】明電ナノプロセス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】篠 竜徳
(72)【発明者】
【氏名】西口 哲也
(72)【発明者】
【氏名】孫 旭孝
【テーマコード(参考)】
5F045
【Fターム(参考)】
5F045AA03
5F045BB02
5F045DP03
5F045EE12
5F045EE18
5F045EF05
(57)【要約】
【課題】オゾンガスと不飽和炭化水素ガスの流量比の制御で照射ラジカルの分布を精密に制御できる表面処理構造、表面処理装置及び表面処理方法を提供すること。
【解決手段】シャワーヘッド4は、基板2にオゾンガスを噴出する複数の第一ガス噴出孔411が形成された複数の第一ガス噴出配管41と、基板2に不飽和炭化水素ガスを噴出する複数の第二ガス噴出孔431が形成された複数の第二ガス噴出配管43を有する。第一ガス噴出配管41と第二ガス噴出配管43は、各々のガス流が対向するように交互に水平配置される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にオゾンガスを噴出する複数の第一ガス噴出孔が形成された複数の第一ガス噴出配管と、
前記基板に不飽和炭化水素ガスを噴出する複数の第二ガス噴出孔が形成された複数の第二ガス噴出配管と、
を有し、
前記第一ガス噴出配管と前記第二ガス噴出配管は、各々のガス流が対向するように交互に水平配置されたことを特徴とするガス噴出構造。
【請求項2】
前記オゾンガスを導入して個々の前記第一ガス噴出配管に供する第一ガスバッファ配管と、
前記不飽和炭化水素ガスを導入して個々の前記第二ガス噴出配管に供する第二ガスバッファ配管と、
を有し、
前記第一ガス噴出配管は、前記第一ガスバッファ配管の軸方向に対して垂直に配され、
前記第二ガス噴出配管は、前記第二ガスバッファ配管の軸方向に対して垂直に配されたことを特徴とする請求項1に記載のガス噴出構造。
【請求項3】
前記第一ガスバッファ配管は、前記オゾンガスに代えて前記不飽和炭化水素ガスを導入可能であり、
前記第二ガスバッファ配管は、前記不飽和炭化水素ガスに代えて前記オゾンガスを導入可能であることを特徴とする請求項2に記載のガス噴出構造。
【請求項4】
基板にオゾンガスを噴出するガス噴出配管と、
前記基板に不飽和炭化水素ガスを噴出する複数の第二ガス噴出孔が形成された複数の第二ガス噴出配管と、
前記不飽和炭化水素ガスを導入して個々の前記第二ガス噴出配管に供する第二ガスバッファ配管と、
を有し、
前記第二ガス噴出配管は、前記第二ガスバッファ配管の軸方向に対して垂直に配されたことを特徴とするガス噴出構造。
【請求項5】
前記第一ガス噴出配管と前記第二ガス噴出配管の軸心間隔は5~30mm、
前記第一ガス噴出孔及び前記第二ガス噴出孔の口径は0.5~2mm、
前記第一ガス噴出孔及び前記第二ガス噴出孔の中心間隔は5~30mm
であることを特徴とする請求項1に記載のガス噴出構造。
【請求項6】
請求項1に記載のガス噴出構造を用いた表面処理方法であって、
前記オゾンガスを前記第一ガス噴出配管に供給して当該オゾンガスの流量が所定流量に達した後に前記不飽和炭化水素ガスを前記第二ガス噴出配管に供給することを特徴とする表面処理方法。
【請求項7】
前記不飽和炭化水素ガスの流量を段階的に増加させることを特徴とする請求項6に記載の表面処理方法。
【請求項8】
請求項3に記載のガス噴出構造を用いた表面処理方法であって、
前記第一ガス噴出配管が前記オゾンガスを所定流量で前記第一ガス噴出孔から前記基板に噴出する一方で前記第二ガス噴出配管が前記不飽和炭化水素ガスを経時的に増加する流量で前記第二ガス噴出孔から当該基板に噴出する過程と、
前記第一ガス噴出配管が前記第一ガスバッファ配管から前記オゾンガスに代えて導入した前記不飽和炭化水素ガスを経時的に減少する流量で前記第一ガス噴出孔から前記基板に噴出する一方で前記第二ガス噴出配管が前記第二ガスバッファ配管から前記不飽和炭化水素ガスに代えて導入した前記オゾンガスを所定流量で前記第二ガス噴出孔から当該基板に噴出する過程と、
を有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項9】
請求項1または4に記載のガス噴出構造を有する表面処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の親水化、基材の接合、レジストアッシング、有機汚染除去などを目的としたオゾンガス及び不飽和炭化水素ガスを噴出するガス噴出構造、表面処理方法及び表面処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
低温で化学気相成長を行う技術として、高濃度のオゾンと不飽和炭化水素の反応から生成される活性種を利用する表面処理が提案されている(特許文献1)。この表面処理を実行する成膜装置の構成では、ガス導入口とシャワーヘッド構造の間にバッファ空間を設け、成膜が均一に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における成膜装置の構成では、オゾンガスと不飽和炭化水素ガスのバッファ空間が全体に行き渡っている。この構成で均一な分布を得ることは可能であるが、流量比の制御で照射ラジカルの分布を精密に制御することが困難である。
【0005】
本発明は、以上の事情に鑑み、オゾンガスと不飽和炭化水素ガスの流量比の制御で照射ラジカルの分布を精密に制御できるガス噴出構造、表面処理方法及び表面処理装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、基板にオゾンガスを噴出する複数の第一ガス噴出孔が形成された複数の第一ガス噴出配管と、前記基板に不飽和炭化水素ガスを噴出する複数の第二ガス噴出孔が形成された複数の第二ガス噴出配管と、を有し、前記第一ガス噴出配管と前記第二ガス噴出配管は、各々のガス流が対向するように交互に水平配置されたガス噴出構造である。
【0007】
本発明の一態様は、前記ガス噴出構造において、前記オゾンガスを導入して個々の前記第一ガス噴出配管に供する第一ガスバッファ配管と、前記不飽和炭化水素ガスを導入して個々の前記第二ガス噴出配管に供する第二ガスバッファ配管と、を有し、前記第一ガス噴出配管は、前記第一ガスバッファ配管の軸方向に対して垂直に配され、前記第二ガス噴出配管は、前記第二ガスバッファ配管の軸方向に対して垂直に配される。
【0008】
本発明の一態様は、前記ガス噴出構造において、前記第一ガスバッファ配管は、前記オゾンガスに代えて前記不飽和炭化水素ガスを導入可能であり、前記第二ガスバッファ配管は、前記不飽和炭化水素ガスに代えて前記オゾンガスを導入可能である。
【0009】
本発明の一態様は、前記ガス噴出構造において、基板にオゾンガスを噴出するガス噴出配管と、前記基板に不飽和炭化水素ガスを噴出する複数の第二ガス噴出孔が形成された複数の第二ガス噴出配管と、前記不飽和炭化水素ガスを導入して個々の前記第二ガス噴出配管に供する第二ガスバッファ配管と、を有し、前記第二ガス噴出配管は、前記第二ガスバッファ配管の軸方向に対して垂直に配される。
【0010】
本発明の一態様は、前記ガス噴出構造において、前記第一ガス噴出配管と前記第二ガス噴出配管の軸心間隔は5~30mm、前記第一ガス噴出孔及び前記第二ガス噴出孔の口径は0.5~2mm、前記第一ガス噴出孔及び前記第二ガス噴出孔の中心間隔は5~30mmである。
【0011】
本発明の一態様は、前記ガス噴出構造を用いた表面処理方法であって、前記オゾンガスを前記第一ガス噴出配管に供給して当該オゾンガスの流量が所定流量に達した後に前記不飽和炭化水素ガスを前記第二ガス噴出配管に供給する。
【0012】
本発明の一態様は、前記表面処理方法において、前記不飽和炭化水素ガスの流量を段階的に増加させる。
【0013】
本発明の一態様は、前記ガス噴出構造を用いた表面処理方法であって、前記第一ガス噴出配管が前記オゾンガスを所定流量で前記第一ガス噴出孔から前記基板に噴出する一方で前記第二ガス噴出配管が前記不飽和炭化水素ガスを経時的に増加する流量で前記第二ガス噴出孔から当該基板に噴出する過程と、前記第一ガス噴出配管が前記第一ガスバッファ配管から前記オゾンガスに代えて導入した前記不飽和炭化水素ガスを経時的に減少する流量で前記第一ガス噴出孔から前記基板に噴出する一方で前記第二ガス噴出配管が前記第二ガスバッファ配管から前記不飽和炭化水素ガスに代えて導入した前記オゾンガスを所定流量で前記第二ガス噴出孔から当該基板に噴出する過程と、を有する。
【0014】
本発明の一態様は、上記のガス噴出構造を有する表面処理装置である。
【発明の効果】
【0015】
以上の本発明によれば、オゾンガスと不飽和炭化水素ガスの流量比の制御で照射ラジカルの分布を精密に制御できるガス噴出構造、表面処理方法及び表面処理装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一態様である実施形態1,2の表面処理装置の概略構成図。
【
図2】
図1の表面処理装置におけるガス処理炉内の概略断面図。
【
図3】
図2のガス処理炉内のシャワーヘッドの下面側平面図。
【
図4】実施形態1におけるバルブ動作、ガス流量のタイムチャート。
【
図5】実施形態2におけるバルブ動作、ガス流量のタイムチャート。
【
図6】実施形態1におけるラジカル発生量の分布を示したグラフ。
【
図7】実施形態2におけるラジカル発生量の分布を示したグラフ。
【
図8】本発明の一態様である実施形態3の表面処理装置の概略構成図。
【
図9】実施形態3におけるバルブ動作、ガス流量のタイムチャート。
【
図10】本発明の一態様である実施形態4のガス処理炉内の概略断面図。
【
図11】
図10のガス処理炉内のシャワーヘッドの下面側平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0018】
[実施形態1]
図1に示した本発明の一態様である実施形態1の表面処理装置1は、
図2の基板2を格納する処理炉3と、基板2にオゾンガス及び不飽和炭化水素ガスを噴出するシャワーヘッド4を備える。
【0019】
シャワーヘッド4は、本発明のガス噴出構造の一態様であって、
図2に示したように複数の第一ガス噴出配管41を備えた第一ガスバッファ配管42と、複数の第二ガス噴出配管43を備えた第二ガスバッファ配管44を備える。
【0020】
第一ガスバッファ配管42は、オゾンガス供給装置5からガス導入配管45を介してオゾンガスを導入して個々の第一ガス噴出配管41に供する。第一ガス噴出配管41は第一ガスバッファ配管42の軸方向に対して垂直に第一ガスバッファ配管42に配される。第一ガス噴出配管41には、基板2に前記オゾンガスを噴出する複数の第一ガス噴出孔411が第一ガス噴出配管41の軸方向に沿って配されて形成される。ガス導入配管45には前記オゾンガスの流量を制御するバルブV1が具備される。バルブV1としては例えばガス流量の制御が可能な周知のマスフローコントローラが適用される。
【0021】
前記オゾンガスを供給するオゾンガス供給装置5としては例えば特許文献1に記載の高濃度オゾンガスを生成する装置が適用される。本装置はオゾンと他のガス(例えば、酸素)の蒸気圧の差に基づきオゾンのみを液化分離してオゾン濃度≒100vol%の高濃度オゾンガスを生成する。この高濃度オゾンガスを生成する市販の装置としては例えば明電舎製のピュアオゾンジェネレータ(MPOG-HM1A1)が挙げられる。
【0022】
第二ガスバッファ配管44は、不飽和炭化水素ガス供給装置6からガス導入配管46を介して不飽和炭化水素ガスを導入して個々の第二ガス噴出配管43に供する。第二ガス噴出配管43は第二ガスバッファ配管44の軸方向に対して垂直に配される。第二ガス噴出配管43には、基板2に不飽和炭化水素ガスを噴出する複数の第二ガス噴出孔431が第二ガス噴出配管43の軸方向に沿って配されて形成される。ガス導入配管46には前記不飽和炭化水素ガスの流量を制御するバルブV2が具備される。不飽和炭化水素ガス供給装置6としては例えば特許文献1に記載のエチレンガス等の不飽和炭化水素ガスが充填されたガスボンベが適用される。バルブV2にもバルブV1と同仕様のバルブが適用される。
【0023】
そして、第一ガス噴出配管41と第二ガス噴出配管43は
図3に示したように処理炉3内において各々のガス流が対向するように交互に水平配置される。この場合、第一ガス噴出配管41と第二ガス噴出配管43の軸心間隔は例えば5~30mmに設定され、第一ガス噴出孔411及び第二ガス噴出孔431の口径は例えば0.5~2mm、第一ガス噴出孔411の中心間隔及び第二ガス噴出孔431の中心間隔は例えば5~30mmに設定される。
【0024】
以上のシャワーヘッド4において、オゾンガスはガス導入配管45から第一ガスバッファ配管42を経由し、第一ガス噴出配管41を流れる過程で第一ガス噴出孔411から基板表面に供される。不飽和炭化水素ガスはガス導入配管46を介して第二ガスバッファ配管44を経由し、第二ガス噴出配管43を流れる過程で第二ガス噴出孔431から基板表面に供される。処理炉3の排気管32は下部に設置されている。処理炉3は真空排気が行われ、処理中の圧力は1~1000Paの範囲となる。また、処理炉3内の基板2の配置は
図2に示されたシャワーヘッド4の第一ガス噴出孔411及び第二ガス噴出孔431の分布範囲内で調整される。
【0025】
図1~4を参照して実施形態1の動作例について説明する。
【0026】
図4に実施形態1のバルブ動作及びガス流量のタイムチャートを示す。
【0027】
先ず、
図1のガス導入配管45のバルブV1が開に設定されて
図2の第一ガスバッファ配管42を介して第一ガス噴出配管41にオゾンガスが導入される。オゾンガス流量安定化プロセス(S1)で第一ガス噴出配管41内のオゾンガスの流量が安定化されると、
図1のガス導入配管46のバルブV2が開に設定されて表面処理プロセス(S2)に移行する。
【0028】
表面処理プロセス(S2)では
図2の第二ガスバッファ配管44を介して第二ガス噴出配管43に不飽和炭化水素ガスが導入される。そして、
図2,3の第一ガス噴出孔411からのオゾンガスと第二ガス噴出孔431からの不飽和炭化ガスとより生じた活性種(例えば、OHラジカル)により基板2の表面処理が行われる。前記表面処理に供されたガスは
図1のドライポンプ7に吸引されて排気管32を介して除害筒8にて除害処理された後に系外に排出される。表面処理プロセス(S2)の終了後、バルブV1,V2が閉に設定されてシャワーヘッド4へのオゾンガス及び不飽和炭化水素ガスの導入が停止される。
【0029】
図6はオゾンガスの流量を200sccmと一定にし、不飽和炭化水素ガスとして例えばエチレンガスを20sccm、40sccm、80sccmの流量で60秒の処理時間でOER処理した場合のラジカル発生量の分布を示す。この分布は水晶振動子マイクロバランス法の周波数変化のもとで検出されたものである。同図のx軸はエチレンガスが流れる第二ガス噴出配管43における最上流の第二ガス噴出孔431を原点とし、第二ガス噴出配管43の長さ方向を正とする(
図7も同様)。
図6から明らかなように、エチレンガスの流量増加に伴い、ラジカル処理量が最大となる位置がシフトしていることがわかる。このように、ガスの流量比を制御することによって、ラジカル処理量のガス流路長手方向の分布を制御することが可能である。また、不飽和炭化水素ガスとオゾンガスの流量比により表面処理の分布が変化することから、処理対象物の分布に応じて最適な流量を選択することで局所的な表面処理と均一的な表面処理を任意に行える。
【0030】
以上のように、前記オゾンガスおよび不飽和炭化水素ガスを用いた表面処理装置1において、配管やプレートなどを加工したガス噴出孔を有する第一ガス噴出配管41と第二ガス噴出配管43とをそれぞれのガス流路が対向し合うように流路の短手方向へ交互に配置することで、個々のガスの流量比により第一ガス噴出配管41と第二ガス噴出配管43の長さ方向の処理量の分布が制御可能となる。また、第一ガス噴出配管41と第二ガス噴出配管43の上流側端部より上流側に個々のガスを第一ガス噴出配管41と第二ガス噴出配管43の径方向へ均等に分散するバッファ空間である第一ガスバッファ配管42及び第二ガスバッファ配管44を設けることにより、流路の短手方向の処理量を均一にすることが可能になる。
【0031】
[実施形態2]
また、
図4のタイムチャートにおいてオゾンガスの流量が安定化した段階での不飽和炭化水素ガスの導入過程においては、
図5に示した実施形態2のタイムチャートのように不飽和炭化水素ガスの流量を段階的に増加させてもよい。
【0032】
図1~3,5を参照して実施形態2の動作例について説明する。
【0033】
図5に不飽和炭化水素ガスの流量をシーケンシャルに変更する実施形態2のバルブ動作及びガス流量のタイムチャートを示す。
【0034】
先ず、実施形態1と同様に
図1のガス導入配管45のバルブV1が開に設定されて
図2の第一ガスバッファ配管42を介して第一ガス噴出配管41にオゾンガスが導入されて第一ガス噴出孔411から基板2に噴出される。オゾンガス流量安定化プロセス(S1)で第一ガス噴出配管41内のオゾンガスの流量が安定化した段階で表面処理プロセス(S2)に移行する。
【0035】
表面処理プロセス(S2)では
図1のガス導入配管46のバルブV2が開に設定されて
図2の第二ガスバッファ配管44を介して第二ガス噴出配管43に不飽和炭化水素ガスが導入されて第二ガス噴出孔431から基板2に噴出される。このとき、
図5に示されたS21,S22,S23の過程のようにバルブV2により不飽和炭化水素ガスの流量が段階的に増加するように調整される。OER処理プロセス(S2)の終了後、バルブV1,V2が閉に設定されてシャワーヘッド4へのオゾンガス及び不飽和炭化水素ガスの導入が停止される。
【0036】
図7は、実施形態2の実施例、特に不飽和炭化水素ガスとしてエチレンガスをS31の過程で20sccmの流量のもと31秒、S32の過程で40sccmの流量のもと17秒、S33の過程で80sccmの流量のもと12秒の計60秒の処理時間でOER処理した場合のラジカル発生量の分布を示す。また、同図は比較例してオゾンガス及びエチレンガスの流量を一定(オゾンガス200sccm及びエチレンガス40sccm)して60秒の処理時間でOER処理した場合のラジカル発生量の分布を示す。同図から明らかなように実施形態2のシーケンシャルプロセスによればオゾンガス及びエチレンガスの流量を一定にした比較例よりもラジカル発生量の分布が改善する。このことから、オゾンガスと不飽和炭化水素ガスの流量比をシーケンシャルに変更するプロセスにより精密な表面処理の分布の制御が可能であることがわかる。
【0037】
以上の実施形態2によればオゾンガス及び不飽和炭化水素ガスの流量比をシーケンシャルに変更、特に不飽和炭化水素ガスを段階的に変更させることで、実施形態1の効果に加えて第一ガス噴出配管41及び第二ガス噴出配管43の長手方向のラジカル処理量の分布をより精密に制御できる。
【0038】
[実施形態3]
図8に示された本発明の一態様である実施形態3の表面処理装置1は、ガス切り替え用のバルブを備えて、オゾンガスと不飽和炭化水素ガスの物理的な導入ポートを時間的に切り替える。
【0039】
図6に示したように不飽和炭化水素ガスの流量をオゾンガスの流量に対して適切な比に選ぶことで局所的にラジカルの発生量を極大化することができる。このラジカル量が極大になる場所は不飽和炭化水素ガスとオゾンガスのガス流の中央よりオゾンガスの第一ガス噴出配管41側となる。
【0040】
そこで、実施形態3は
図8に示したバルブ構成を採り、さらに実施形態2の流量制御を併用することで処理炉3内の基板2の位置に依らず所望のエリア(ゾーン)でラジカルによる処理の効果(=処理速度)を増大化させる。
【0041】
実施形態3において、第二ガスバッファ配管44には不飽和炭化水素ガス供給装置6からのガス導入配管46が接続されると共にオゾンガス供給装置5からのガス導入配管45が接続され、さらに、ガス導入配管46にはバルブV31が備えられ、ガス導入配管45にはバルブV32が備えられる。
【0042】
また、第一ガスバッファ配管42には不飽和炭化水素ガス供給装置6からのガス導入配管46が接続されると共にオゾンガス供給装置5からのガス導入配管45が接続され、さらに、ガス導入配管46にはバルブV33が備えられ、ガス導入配管45にはバルブV34が備えられる。バルブV31~V34も実施形態1のバルブV1と同仕様のバルブが適用される。
【0043】
図8,9を参照して実施形態3の動作例について説明する。
【0044】
第一の表面処理プロセス(S31)の開始時、バルブV31,V34が開に設定される一方でバルブV32,V33が閉に設定される。オゾンガス供給装置5からのオゾンガスは、バルブV34の開度が100%に調整された所定流量で第一ガスバッファ配管42を介して第一ガス噴出配管41に導入され、第一ガス噴出孔411から基板2に供される。不飽和炭化水素ガス供給装置6からの不飽和炭化水素ガスは、バルブV31の開度調整により経時的に増加する流量で第二ガスバッファ配管44を介して第二ガス噴出配管43に導入され、第二ガス噴出孔431から基板2に供される。
【0045】
所定時間経過後の第二の表面処理プロセス(S32)ではバルブV32,V33が開に設定される一方でバルブV31,V34が閉に設定される。前記オゾンガスは、バルブV32の開度が100%に調整された所定流量で第二ガスバッファ配管44を介して第二ガス噴出配管43に導入され、第二ガス噴出孔431から基板2に供される。前記不飽和炭化水素ガスは、バルブV33の開度調整により経時的に減少する流量で第一ガスバッファ配管42を介して第一ガス噴出配管41に導入され、第一ガス噴出孔411から基板2に供される。第二の表面処理プロセス(S32)の終了後、バルブV31~V34が閉に設定されてシャワーヘッド4へのオゾンガス及び不飽和炭化水素ガスの導入が停止される。
【0046】
以上のガス流量時間制御とバルブ操作により、基板2の表面を均一に(特定の箇所のみが強く表面処理されることなく)処理できる。これにより、例えば、本実施形態のプロセスでエッチングする場合やオーバーエッチによる下地へのダメージ、下地側に半導体デバイス(ドーピング層)がある場合にデバイスの特性に対する影響(特性変動)を最小限にしたエッチングプロセスが可能となる。
【0047】
[実施形態4]
図10,11に示された本発明の一態様である実施形態4のシャワーヘッド4は、第一ガス噴出配管41及び第一ガスバッファ配管42を有しないこと以外は実施形態1~3のシャワーヘッド4と同様の構造を成す。オゾンガス供給装置5からのオゾンガスは処理炉3内の基板2の上方(具体的には処理炉3の天井部31)にて基板2と同心に配されたガス噴出配管47から処理炉3内に導入される。本態様は実施形態1の効果に加えて表面処理装置1の装置構成が簡略化する。
【0048】
前記オゾンガスは所定のガス流量及びガス圧でガス噴出配管47から基板2に噴出される。
図1の不飽和炭化水素ガス供給装置6からの不飽和炭化水素ガスは
図10,11のガス導入配管46及び第二ガスバッファ配管44を介して第二ガス噴出配管43に導入されて第二ガス噴出孔431から基板2に噴出される。
【0049】
前記オゾンガスのガス圧は、200Pa以下、より好ましくは50Pa以下であるとよい。例えば、第二ガス噴出孔431の中心間隔:10mm、第二ガス噴出孔431と基板2との距離:10mm、処理圧力:100Paの第二ガス噴出配管43の場合、第二ガス噴出孔431からの不飽和炭化水素ガスのガス流速は10m/sec、ラジカルの寿命1ms程度となり、不飽和炭化水素ガスの走行できる距離は10mm程度となるので、基板2の表面にラジカルが失活せず届く条件となる。
【符号の説明】
【0050】
1…表面処理装置
2…基板
3…処理炉、31…天井部
4…シャワーヘッド、41…第一ガス噴出配管、411…第一ガス噴出孔、42…第一ガスバッファ配管、43…第二ガス噴出配管、431…第二ガス噴出孔、44…第二ガスバッファ配管、45,46…ガス導入配管、47…ガス噴出配管
5…オゾンガス供給装置
6…不飽和炭化水素ガス供給装置
V1,V2,V31~V34…バルブ
【手続補正書】
【提出日】2024-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板にオゾンガスを噴出する複数の第一ガス噴出孔が形成された複数の第一ガス噴出配管と、
前記基板に不飽和炭化水素ガスを噴出する複数の第二ガス噴出孔が形成された複数の第二ガス噴出配管と、
前記オゾンガスを導入して個々の前記第一ガス噴出配管に供する第一ガスバッファ配管と、
前記不飽和炭化水素ガスを導入して個々の前記第二ガス噴出配管に供する第二ガスバッファ配管と、
を有し、
前記第一ガス噴出配管と前記第二ガス噴出配管は、各々のガス流が対向するように交互に水平配置され、
前記第一ガス噴出配管は、前記第一ガスバッファ配管の軸方向に対して垂直に配され、
前記第二ガス噴出配管は、前記第二ガスバッファ配管の軸方向に対して垂直に配され、
前記第一ガスバッファ配管は、前記オゾンガスを導入して個々の前記第一ガス噴出配管に均等に分散するバッファ空間を有し、
前記第二ガスバッファ配管は、前記不飽和炭化水素ガスを導入して個々の前記第二ガス噴出配管に均等に分散するバッファ空間を有すること
を特徴とするガス噴出構造。
【請求項2】
前記第一ガスバッファ配管は、前記オゾンガスに代えて前記不飽和炭化水素ガスを導入可能であり、
前記第二ガスバッファ配管は、前記不飽和炭化水素ガスに代えて前記オゾンガスを導入可能であることを特徴とする請求項1に記載のガス噴出構造。
【請求項3】
基板にオゾンガスを噴出するガス噴出配管と、
前記基板に不飽和炭化水素ガスを噴出する複数の第二ガス噴出孔が形成された複数の第二ガス噴出配管と、
前記不飽和炭化水素ガスを導入して個々の前記第二ガス噴出配管に供する第二ガスバッファ配管と、
を有し、
前記第二ガス噴出配管は、前記第二ガスバッファ配管の軸方向に対して垂直に配され、
前記第二ガスバッファ配管は、前記不飽和炭化水素ガスを導入して個々の前記第二ガス噴出配管に均等に分散するバッファ空間を有すること
を特徴とするガス噴出構造。
【請求項4】
前記第一ガス噴出配管と前記第二ガス噴出配管の軸心間隔は5~30mm、
前記第一ガス噴出孔及び前記第二ガス噴出孔の口径は0.5~2mm、
前記第一ガス噴出孔及び前記第二ガス噴出孔の中心間隔は5~30mm
であることを特徴とする請求項1に記載のガス噴出構造。
【請求項5】
請求項1に記載のガス噴出構造を用いた表面処理方法であって、
前記オゾンガスを前記第一ガス噴出配管に供給して当該オゾンガスの流量が所定流量に達した後に前記不飽和炭化水素ガスを前記第二ガス噴出配管に供給することを特徴とする表面処理方法。
【請求項6】
前記不飽和炭化水素ガスの流量を段階的に増加させることを特徴とする請求項5に記載の表面処理方法。
【請求項7】
請求項2に記載のガス噴出構造を用いた表面処理方法であって、
前記第一ガス噴出配管が前記オゾンガスを所定流量で前記第一ガス噴出孔から前記基板に噴出する一方で前記第二ガス噴出配管が前記不飽和炭化水素ガスを経時的に増加する流量で前記第二ガス噴出孔から当該基板に噴出する過程と、
前記第一ガス噴出配管が前記第一ガスバッファ配管から前記オゾンガスに代えて導入した前記不飽和炭化水素ガスを経時的に減少する流量で前記第一ガス噴出孔から前記基板に噴出する一方で前記第二ガス噴出配管が前記第二ガスバッファ配管から前記不飽和炭化水素ガスに代えて導入した前記オゾンガスを所定流量で前記第二ガス噴出孔から当該基板に噴出する過程と、
を有することを特徴とする表面処理方法。
【請求項8】
請求項1または3に記載のガス噴出構造を有する表面処理装置。