(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167497
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】物品ピッキングシステム
(51)【国際特許分類】
B65G 1/137 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
B65G1/137 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083601
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000110011
【氏名又は名称】トーヨーカネツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 恭矢
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 拓哉
【テーマコード(参考)】
3F522
【Fターム(参考)】
3F522AA02
3F522BB06
3F522CC01
3F522HH02
3F522HH03
3F522HH13
3F522JJ02
3F522LL57
3F522LL58
(57)【要約】
【課題】物品のピッキングシステムであって、物品保管部からのピッキング、及びピッキングされた物品の集品を、ミスなく、かつ、効率よく行うためのピッキングシステムを提供すること、また、設置の自由度の高いピッキングシステムを提供すること。
物品ピッキングシステムであって、
【解決手段】物品ピッキングシステムであって、ピッキング作業を行うために設けたピッキングエリアと、前記ピッキングエリアの片側に設置されたピッキング対象の物品を保管する物品保管部と、前記ピッキングエリアに対して前記物品保管部と同じ側に設けられ、かつ、前記物品保管部の下方も含んで、ピッキングされた前記物品を投入できる集品容器を搬送する1つ以上の無人搬送車が走行可能である無人搬送車エリアと、前記部品保管部の所定の場所に、及び/または、前記集品容器に関連付けられる場所に、ピッキングまたは集品に関する情報を表示する情報表示部とを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-ピッキング作業を行うために設けたピッキングエリアと、
-前記ピッキングエリアの片側に設置されたピッキング対象の物品を保管する物品保管部と、
-前記ピッキングエリアに対して前記物品保管部と同じ側に設けられ、かつ、前記物品保管部の下方も含んで、ピッキングされた前記物品を投入できる集品容器を搬送する1つ以上の無人搬送車が走行可能である無人搬送車エリアと、
-前記部品保管部の所定の場所に、及び/または、前記集品容器に関連付けられる場所に、ピッキングまたは集品に関する情報を表示する情報表示部と
を有する物品ピッキングシステム。
【請求項2】
更に、前記無人搬送車エリアを走行する1つ以上の無人搬送車を含む請求項1に記載の物品ピッキングシステム。
【請求項3】
前記情報表示部が、前記物品保管部の所定の場所に、及び/または、前記集品容器に関連付けられる場所に、プロジェクタによる投影画像によって、ピッキングまたは集品に関する情報を、ポップアウト機能を有して表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の物品ピッキングシステム。
【請求項4】
ポップアウト機能として、前記無人搬送車が前記物品保管部の下方から現れることを含むことを特徴とする請求項2に記載の物品ピッキングシステム。
【請求項5】
前記物品保管部の支持手段の全てまたは一部が、上部からの吊り下げ機構であることを特徴とする請求項1に記載の物品ピッキングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配送する物品(商品)を物品保管部から取り出して、配送先ごとの集品容器に収容するための物品ピッキングシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
物流の分野において、作業員が商品を棚などの物品保管部から取り出し(ピッキング)、配送先ごとの集品容器に収容するピッキングシステムは、種々の手法のものが多数実用化されている。
【0003】
その中でも、作業員の正面にフローラックなどの物品保管部を設け、物品保管部と作業員との間に集品容器を搬送するコンベヤを設けたシステムが広く用いられており、特に、作業員がピッキングすべき商品が収容されている物品保管部の棚の間口などにデジタル式の表示部を設け、それによって作業員にピッキング作業を指示するDPS(デジタルピッキングシステム)が、近年、広範に用いられている。
【0004】
特許文献1には、中頻度品ピッキングエリアとして、ピッキングされる物品が収納されるフローラックとピッキングされた物品を集品容器に投入する集品ラインとから構成され、フローラックには間口表示器が設けられているデジタルピッキングの一例の技術思想が開示されている。
【0005】
これによれば、フローラック及び集品ラインには、複数のゾーンが設定されている。各ゾーンは、フローラックに収納された物品をピッキングして集品容器に投入する作業を実行するように構成され、ピッキング作業を行う作業者(ピッキング作業者)が1人ずつ配置される。フローラック及び集品ラインは、作業者に対して(作業者から見て)同じ側に片寄らせて配置されている。すなわち、作業者がフローラックに収納された物品をピッキングする作業と、ピッキングした物品を集品容器に投入する作業とが作業者に対して同じ方向で行われる構成が記載されている。
【0006】
このような構成であると、作業者は、自身の正面で、フローラックからの物品のピッキング作業と、集品容器への物品の投入作業とを行うことができるため、作業者の動作が単純で、効率がよいという利点がある。
【0007】
しかしながら、特許文献1の集品ラインは集品容器をコンベヤによって搬送するように構成されており、複数の作業者が集品ラインを共通に使用する場合には、ピッキングスピードの遅い作業者がいると、他の作業者の集品容器への投入作業が待たされて効率が低下するという問題がある。
【0008】
更に、複数の集品容器が作業者の近傍に存在すると、誤って別の集品容器に投入してしまうというミスが発生するという問題点もある。
【0009】
なお、集品容器を搬送する搬送コンベヤは設備として床面に固定的に設置されるため、設置費用が高額となることに加え、物量の増減やピッキングする品目の増減などによるレイアウト変更が容易でないこと、搬送コンベアにより作業者やフォークリフト・台車などの移動が制限されることなどの問題もある。
【0010】
また、特許文献1においては、フローラックは、物品が収納される間口を複数列有する棚が上下に複数段配置されたものであって、各棚には物品が収納された複数の収納箱が載置されるように構成され、各棚の先端であって各間口の前面に、取り出す物品の数量を表示する数量表示器とランプ部を有する完了押釦スイッチとから構成される間口表示器が設けられており、作業者は、各間口表示器の表示に従って間口から物品をピッキングするようになっており、この間口表示器によってピッキング作業がミスなく行えるとされるが、更にピッキングミスの発生を減少できる技術も望まれている。
【0011】
なお、特許文献2においては、デジタル表示器の代わりに、プロジェクタを設けるプロジェクションマッピング方式のものも提案されており、設備費用が低廉であること、商品の入れ替えの対応が容易なこと、可動部分が少ないので故障発生の頻度が低下することなどの利点があるとされており、この方式の採用が望ましいと考えられるが、この方式においても更にピッキングミスの発生を減少できる技術が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2018-090347号公報
【特許文献2】特開2008-222386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、上記問題を解決するために、本発明は、物品保管部からのピッキング、及びピッキングされた物品の集品を、ミスなく、かつ、効率よく行うためのピッキングシステムを提供することを課題とした。
【0014】
また、設置の自由度の高いピッキングシステムを提供することも副次的な課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決すべく、本発明者は考察を深めた結果、集品容器の搬送をコンベヤではなく無人搬送車を用いることにより、上記課題を解決できることを発見した。
【0016】
それに加えて、ピッキングや集品の作業に、後述するポップアウト機能を取り入れることで、より確かに課題を解決できることも発見した。
【0017】
即ち、上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、物品ピッキングシステムであって、
-ピッキング作業を行うために設けたピッキングエリアと、
-前記ピッキングエリアの片側に設置されたピッキング対象の物品を保管する物品保管部と、
-前記ピッキングエリアに対して前記物品保管部と同じ側に設けられ、かつ、前記物品保管部の下方も含んで、ピッキングされた前記物品を投入できる集品容器を搬送する1つ以上の無人搬送車が走行可能である無人搬送車エリアと、
-前記部品保管部の所定の場所に、及び/または、前記集品容器に関連付けられる場所に、ピッキングまたは集品に関する情報を表示する情報表示部と
を有することを特徴とする。
【0018】
ここで、ピッキング対象の物品を保管する物品保管部は、それぞれが、同一のあるいは異なる物品を保管する、単一または複数の間口を有する固定棚、あるいは傾斜式流動棚(フローラック)などが好適であるが、そのような構造に限定されず、水平式流動棚や平置きなどであってもよい。
【0019】
このように、物品保管部の下の領域を無人搬送車エリアとしたことにより、無人搬送車が、要求されているピッキングエリアの前まで、最短距離で移動することができるため、作業効率が格段に向上し、施設全体のスペース効率も高くなる。
【0020】
なお、集品された物品の搬送に、コンベヤではなく無人搬送車を用いることは、後の工程をショートカット、あるいは順序の入れ替えが可能となるなどの利点もある。例えば、順立(道順組立)作業が、積み替えなどの手間を省いて容易に行えるなどである。
【0021】
次に、本発明の第2の態様は、第1の態様の物品ピッキングシステムであって、前記無人搬送車エリアを走行する1つ以上の無人搬送車を含むことを特徴としてもよい。
【0022】
この態様は、第1の態様に、無人搬送車を加えたものであり、実際の運用状態を想定したものである。
【0023】
ここで、無人搬送車とは、誘導体によりガイドされるAGV、非ガイド走行方式のAMRなどが含まれるが、それ以外のものであってもよく、無人走行車、無人移送車などと称する場合もある。
【0024】
このように、物品保管部と、集品容器を搭載した無人搬送車と、の両方を作業員の正面に配置したことから、視線の移動が少なく、ピッキングや集品容器への投入のミスを起こしにくく、かつ、作業員の肉体的、精神的疲労度も小さいという効果も得られる。
【0025】
特に、物品保管部の下方空間を集品容器を搭載した無人搬送車が走行できるようにし、更に、集品容器を、物品保管部の下方からやや突出した状態(物品保管部にやや潜り込んだ状態)で、作業員に提示するようにすれば、作業員は、視線の移動をほとんど行うことなく、ピッキングした物品をほぼ真下の集品容器に投入すればよく、作業負荷が大幅に低減できる。
【0026】
更に、集品容器の搬送に無人搬送車を使用することにより、ピッキングされた物品の投入を、面前に提示される無人搬送車上の集品容器に対して行えばよいので、誤投入の恐れがなく、かつ、コンベヤ方式の場合に起こり得る他の作業員の作業による待ち時間を少なくできることから、効率よく作業を行うことができる。
【0027】
次に、本発明の第3の態様は、第1または第2の態様の物品ピッキングシステムであって、前記情報表示部が、前記物品保管部の所定の場所に、及び/または、前記集品容器に関連付けられる場所に、プロジェクタによる投影画像によって、ピッキングまたは集品に関する情報を、ポップアウト機能を有して表示することを特徴としてもよい。
【0028】
ここで、ピッキングに関する情報を表示する部品保管部の所定の場所は、物品が保管されている間口またはその近傍であることが好適であるが、それに限定されず、ピッキングに関する情報が有効に提供される場所であればよい。
【0029】
また、ピッキングされた物品を集品容器に投入する作業に関連する情報を表示する場合の、集品容器に関連付けられる場所とは、集品容器自身、集品容器を搭載した無人搬送車など、集品すべき場所を示すことができれば、どのような場所であってもよい。
【0030】
また、「ポップアウト機能を有する」とあるところのポップアウトとは、認知心理学で知られる機能であり、複数の認知対象が存在する状況下で、その中の一つが他と異なる認知的特性を有する場合に、不可避的に、すなわち、人間の意志による制御が及ばない形で、対象が認知される現象である。
【0031】
具体的にはピッキング指示情報を、その周辺の物体、すなわち載置棚、ピッキング対象物などとは認知的特性が大きく異なるようなものとして表示することが好適である。
【0032】
本発明の、このような態様であると、プロジェクタによる投影画像によって、ピッキングに関する情報を、ポップアウト機能を有して表示することから、ピッキングミスの減少及びピッキング効率の向上(素早いピッキング作業)が可能となった。
【0033】
なお、集品容器へのピッキングした物品の投入の場合に同様の表示方法を行なった場合でも、同様の効果が得られる。
【0034】
ここで、ポップアウト機能の一具体例としては、プロジェクタにより、部品保管部の所定の場所、及び/または、集品容器に関連付けられる場所を点滅または点灯表示するようにしてもよい。
【0035】
このようにすると、ポップアウト機能が有効に発揮され、ピッキングまたは集品作業の効率向上やミスの低減が実現できる。
【0036】
更に、ポップアウト機能の別の具体例として、プロジェクタにより部品保管部の所定の場所を点滅または点灯表示し、次に、集品容器に関連付けられる場所を点滅または点灯表示するようにしてもよい。
【0037】
このようにすると、ポップアウト機能により、作業の順序を的確に指示することができ、作業順に関連するミスの発生を防止することができる。
【0038】
これまで述べたように、プロジェクタを用いた表示方法や、固定設備が不要な無人搬送車による集品方法を用いることで、設置の自由度の高いピッキングシステムを提供するという課題も解決することができる。
【0039】
次に、本発明の第4の態様は、第2の態様の物品ピッキングシステムであって、ポップアウト機能として、前記無人搬送車が前記物品保管部の下方から現れることを含むことを特徴としてもよい。
【0040】
無人搬送車は、通常走行においては物品保管部の下方に隠れて目立たない状態であるが、集品作業が必要になると、作業者の前に登場してくることが、先に述べたポップアウト機能、すなわち、認知心理学で知られる機能であり、複数の認知対象が存在する状況下で、その中の一つが他と異なる認知的特性を有する場合に、不可避的に、換言すれば、人間の意志による制御が及ばない形で、対象が認知されるという機能となり、ピッキングした物品を速やかに無人搬送車上の集品容器に投入しようとする動作が促進される。
【0041】
次に、本発明の第5の態様は、第1の態様の物品ピッキングシステムであって、前記物品保管部の支持手段の全てまたは一部が、上部からの吊り下げ機構であることを特徴としてもよい。
【0042】
すなわち、物品保管部を、床面からの支持ではなく、天井や梁などの上方からの支持とするものであり、全ての支持を上方から行うようにしてもよいし、一部(例えばピッキングエリア側のみ)を上方からの支持としてもよい。
【0043】
このようにすると、床面からの支持の場合と比べ、物品保管部の下方の空間が広く取れるため、より無人搬送車の走行の自由度が増す。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、物品保管部からのピッキング、及びピッキングされた物品の集品を、ミスなく、かつ、効率よく行うためのピッキングシステムを実現することができ、また、設置の自由度の高いピッキングシステムも実現することができた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの平面図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係るシステムの情報表示部の説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るシステムの運用のフローチャートである。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る物品ピッキングシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照し、本発明の第1の実施形態に係る物品のピッキングシステムについて説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0047】
<構成>
図1は本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの斜視図であり、
図2は同システムの平面図である。
【0048】
物品ピッキングシステム1は、作業員P(ピッカーと称することもある)のピッキング作業を行う略長方形状に延伸するピッキングフロア10(図中点線斜線部)と、ピッキングフロア10の外側に設けられた物品保管部であるフローラック20と、ピッキングフロア10に対して、フローラック20とは同一側に設けられ、無人搬送車32が走行しうる無人搬送車フロア30と、この物品ピッキングシステム1を制御するシステム制御部50とを有する。
【0049】
なお、無人搬送車フロア30は、フローラック20の下部床面を含んでいることが望ましく、更に、ピッキングフロア10まで延伸していてもよいし、フローラック20近傍だけでなく、より広い範囲に展開されていてもよい。
【0050】
フローラック20は、図中では1人の作業員Pの担当分として3段の棚に4種ずつの物品が保管できる間口を有し、そのおのおのの間口に物品保管容器21が載置されており、その3人分(フローラック20a、20b、20c)を示しているが、棚の段数、各段の物品種類数には限定はなく、また、作業員の人数にも限定はなく1人分以上であれば何人分であってもよい。
【0051】
なお、フローラック20の物品保管容器21に収容された物品は、ピッキングされて数量が不足した場合には、システム制御部50の指示などにより、フローラック20の後方から補充することが可能である。なお、この供給にも無人搬送車32を用いるようにしてもよい。
【0052】
物品保管容器21は、所定のオリコンなどの容器であってもよいし、物品の梱包・輸送に用いられた段ボールなどをそのまま用いてもよい。
【0053】
フローラック20の上部には、支持具22に保持されたプロジェクタ(投影機)23が設けられている。プロジェクタ23としては、短焦点あるいは超短焦点のものが、このシステムの構成上は好適である。
【0054】
支持具22は、プロジェクタ23の投影方向などを調整できるように、可動(手動または駆動機構付き)の接続部を有していてもよい。
【0055】
フローラック20の各段の物品保管容器21の上部には、各々の物品保管容器21に対応した情報表示部24が設けられている。この情報表示部24は、プロジェクタ23から投影される画像情報を表示できるスクリーンであり、構造としては、樹脂製で金属やガラスの反射部材を含んでいるものが好適であるが、それに限定されずどのような素材であってもよい。また、形状については間口ごとに設けるようにしたが、各段ごとに連続したものであってもよく、また、物品保管容器21の上部でなく、下部または側部に設けてもよい。
【0056】
図3は本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの情報表示部の説明図である。この実施形態では、ピッキングすべき物品保管容器21の直上部のスクリーンが、ピッキングすべき物品の個数、外観、品名を表示できる物品情報表示部241として設けられる。また、作業の終了などを入力するための操作部242が物品情報表示部241の近傍(図中では右側)に設けられる。
【0057】
なお、操作部242には、物品の存在する位置を示す下向き矢印などが表示されていてもよい。
【0058】
これらの情報表示部24や操作部242の表示については、先に説明したポップアウト機能、具体的にはピッキング指示情報などを、その周辺の物体、すなわち載置棚、ピッキング対象物などとは認知的特性が大きく異なるようなものとして表示することが好適である。
【0059】
この操作部242は、タッチパネルになっており、ピッキング作業の終了時にはこの部分をタッチすることで、システム制御部50に作業の終了を通知することができ、作業の終了が通知されると、情報表示部24の表示は終了する。
【0060】
なお、操作部242については、接触を要するタッチパネルに限定せず、作業員Pが手を近付けると感知できる静電容量式などの近接センサ、超音波センサ、画像センサなどを用いてもよい。いずれのセンサも、機械可動部分を有さないため、故障が少なく、長寿命であるという利点がある。
【0061】
さらに、この操作部242を画像センサで構成するようにしてもよい。これによれば、パネル状にする必要もなく、作業員の手などを検知することで作業の終了を判断するようにすることもできる。このようにすれば、部品点数を削減でき、設置場所の自由度が増し、工事が容易になるなどの利点がある。
【0062】
無人搬送車フロア30は、上部に容器搬送コンベヤ31、更に容器搬送コンベヤ31の上部に集品容器40を載置しうる無人搬送車32の走行可能な床面のエリアである。
【0063】
特に、ピッキング作業を快適に実行するためには、フローラック20と集品容器40との距離が近いことが望ましく、そのため、フローラック20の下部を集品容器40を載置した無人搬送車32が走行できる無人搬送車フロア30とし、作業員Pの面前に集品容器40を提示できるようにする。
【0064】
図2の左側では、集品容器40の先端がフローラック20の下に少しだけ潜り込んだ位置(フローラック20からほとんど突出している状態)、中央ではほとんど潜り込んでいない位置(フローラック20からほぼ突出している状態)、右側では集品容器40の半分程度が潜り込んだ位置(フローラック20から半分程度突出している状態)を示しているが、作業員Pの作業のし易さやピッキングされる物品の寸法、重量などにより適宜位置を決定すればよい。
【0065】
このように、無人搬送車32はピッキング時以外はフローラック下方空間を走行することになり、普段は視線に入らないので、フローラック20の下方の空間から、ピッキングされた物品を集品すべき集品容器40を載置した無人搬送車32が突然出現することによって、ピッキング作業者には先に説明したのと同様のポップアウト機能が働き、ピッキングすべき対象物としての集品容器がより明確となり、ピッキングした物品を迅速に集品容器40に投入させることが可能となる。
【0066】
なお、無人搬送車32や集品容器40にポップアウト機能を持たせるには、突然の出現のほかにも、ランプなどの点灯や点滅、音声による指示などを付加することも有効である。
【0067】
また、フローラック20の下部床面を無人搬送車フロア30として利用するためには、フローラック20の最下段の棚の高さを、下部空間が集品容器40を載置した無人搬送車32が走行できる高さとすることや、フローラック20を保持する構造体(柱や梁など)を、無人搬送車32の走行を、極力、妨げないように構成することが必要である。
【0068】
空の集品容器40は、無人搬送車フロア30の所定の場所に設けられた集品容器供給部(図示せず)において、容器搬送コンベヤ31を用いて無人搬送車32に載置される。
【0069】
無人搬送車32は、非ガイド走行方式のAMRであることが、構成の自由度の点から好ましいが、コスト及び制御の容易さなどの点から誘導体によりガイドされるAGVであってもよい。
【0070】
いずれの場合も、空の集品容器40を搭載した無人搬送車32は、システム制御部50の指示により、あるいは自律走行により、無人搬送車フロア30内で所望の物品のピッキングがなされるフローラック20と、ピッキングフロア10の作業員Pとの間まで走行することができる。
【0071】
また、1か所での集品が終了後、更に、同一の集品容器40への集品が必要な場合は無人搬送車32が次の集品場所へと走行し、集品を続ける。
【0072】
全ての集品が完了すると、集品容器40を搭載した無人搬送車32は、集品容器回収部(図示せず)に向かい、容器搬送コンベヤ31を用いて集品容器40を集品容器回収部へと移送する。
【0073】
なお、先に述べた集品容器供給部と集品容器回収部とは共用できるように構成してもよい。空の集品容器の供給と、集品済みの集品容器40の回収とは、同一搬送機構の正逆転によって実現することが可能であり、構成が簡略化できる。
【0074】
また、無人搬送車32の上に容器搬送コンベヤ31を設けてその上に集品容器40を載置するとしたが、簡便には、容器搬送コンベヤ31を設けずに、直接、集品容器40を無人搬送車32の上に載置する、あるいは無人搬送車32自体を集品容器40の機能を有する形状とするなどの変形も可能である。
【0075】
システム制御部50は、このシステムを制御するもので、汎用のサーバまたはPCが好適であり、CPU、記憶部、入出力部、表示部、通信インターフェースなどを備えており、このシステムの各部(プロジェクタ23及び情報表示部24を含むフローラック20、無人搬送車32)と通信が可能で、動作の指示が可能になっている。
【0076】
なお、システム制御部50は、物流施設全体の制御をおこなうWMSなどに含まれていてもよく、あるいは、クラウドコンピューティングとして外部の資源を用いるようにしてもよい。
【0077】
さらに、システム制御部50は、先に述べた操作部242を画像センサとした場合には、画像センサとAI機能とを組み合わせることで、ピッキング作業員の動作の間違いを発見したり、作業員の動きから疲労度を判定したり、その疲労度の結果を踏まえてその作業員の作業を別の作業員に振り替えるなどができるようにしてもよい。こうすることで、高付加価値のシステムとして機能させることができることから、より一層のピッキングミス低減や作業員の健康管理に役立つ、人にやさしいピッキングシステムが実現できる。
【0078】
なお、これまでの実施形態の説明では、プロジェクタを用いた情報表示部は、物品保管部を対象として設けるとしたが、これに加えて、あるいはこれに代えて、集品容器への投入作業のために、集品容器側に設けてもよい。(図示は省略する。)
【0079】
すなわち、集品容器への物品の投入作業に関する情報を表示するようにする。この場合に、情報を表示するのは、集品容器に関連付けられる場所、すなわち、集品容器自身、集品容器40を載置した無人搬送車32など、集品すべき場所を示すことができる場所であれば、どのような場所であってもよい。
【0080】
<運用>
次に、このような構成の本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの運用について説明する。
【0081】
図4は本発明の第1の実施形態に係る物品ピッキングシステムの運用を説明するフローチャートである。
【0082】
ピッキング作業の開始に際し、システム制御部50が、無人搬送車31に、ピッキングされる物品を集品する集品容器40の搬送を指示する。(ステップS01)
【0083】
最初の物品を集品する場合には、無人搬送車32が空の集品容器40を集品容器供給部から受け取り、ピッキングが行われるフローラック20の下方で、作業員の直前に、集品容器40を提示する。
【0084】
なお、既に物品の集品がなされた集品容器40に更に別の物品を追加で集品する場合は、集品の終了した場所から次の場所へと無人搬送車32が集品容器40を搬送する。
【0085】
次に、作業員Pがピッキングフロア10内でフローラック20に正対している状態で、システム制御部50が、フローラック20の情報表示部24にポップアウト機能(後に詳述)を有するピッキング指示を発する。(ステップS02)これによって、作業員Pはピッキングすべき物品の位置、種類、個数などを、容易に、かつ、間違いなく認識して作業を行うことができる。
【0086】
ピッキング作業が終了すると、作業員Pは、操作部242からピッキング終了情報を入力し、システム制御部50が、ピッキング終了信号を受け取り、情報表示部24のピッキング指示表示を終了する。(ステップS03)
【0087】
ほぼ同時に、システム制御部50が、ピッキングされた物品の、所定の集品容器40への投入を指示する。(ステップS04)ここで、集品容器40の指定は、特段の表示などを行わずに作業者の面前に提示された集品容器40であるとしてもよく、あるいは、集品容器40自体、または集品容器を搭載した無人搬送車に表示機能を設けるなど、どのような方法で指定してもよい。
【0088】
作業員Pは、ピッキングフロア10において、指示された集品容器40にピッキングした物品を投入する。
【0089】
なお、集品作業についても、ピッキング作業と同様の、ポップアウト機能を有するプロジェクタによる情報表示を行ってもよい。ピッキング作業の際と同様の効果が得られる。
【0090】
集品容器40への物品の投入の完了については、特に完了を通知せず所定時間経過後投入されたものと判断することでもよいし、終了を通知する操作部を設ける、作業員Pの手の動きを検知するなどの方法で投入完了を通知してもよい。更に、正しく投入できたかどうかを光学センサなどでチェックするようにしてもよい。
【0091】
次に、システム制御部50が、投入完了後の集品容器40の搬送を、無人搬送車32に指示する。(ステップS05)
【0092】
この後も、ピッキングすべき物品がある場合は、最初のステップに戻り、作業が継続する。すべてのピッキング作業が終了し、集品が完了したら、集品容器40を載置五した無人搬送車32は、集品容器回収部へと向かい、集品容器が回収される。
【0093】
これらのステップの中で、ピッキングに関する情報表示(ピッキングの指示)を、速やかに、かつ、正確に作業員Pに伝達できることが、このシステムの運用上、極めて重要である。
【0094】
ここで、これらの情報表示については、視覚的ポップアウト機能を備えている。すなわち、これらの情報表示を、その周辺の物体、すなわち、フローラック20の棚部、ピッキング対象物、あるいは物品保管容器21などとは認知的特性が大きく異なるようなものとすることで人間の認知特性をさらに不可避的に刺激するようにする。
【0095】
本発明の第1の実施形態では、視覚的ポップアウトの例として、ピッキングすべき物品の載置された間口の情報表示部24のみを点滅させ、他の間口の情報表示部24については消灯状態のままとする。
【0096】
このようにすると、作業員Pがその前の物品の集品容器40への投入を終えて、フローラック20が視界に入った瞬間にポップアウトが生じ、不可避的にピッキングすべき物品に関する情報表示を認知し、そこに表示されている情報を受け取ることができる。これにより、次のピッキング対象物品を、間違いなく、かつ素早くピッキングし、集品容器40へと投入することができる。
【0097】
ポップアウト原理からして、ピッカーの無意識の領域まで刺激する、すなわち、ピッカーは自分が意識しようとしまいと、ある情報(たとえばピッキングに係る対象物品及びその数量に係る情報。両者を併せて「ピッキング情報」とも以下、称する。)を不可避的に受領することとなる。これは、人間の認知上、間違いの入る余地を極小化する。なんとなれば、認識外の領域にまで刺激・情報受領領域が広がる結果、誤りの源泉である認識間違いの入る余地のない領域でたとえばピッキング情報をやり取りすることができるからである。
【0098】
この点を補足する。ピッカーは元来、間違えたくて間違えるのではない。ピッカー自体の勤務成績にも直結するからなるべくピッキング誤りのないように作業すると考えられるからである。しかし、人間であるがゆえの限界として、たとえば体調不良であれば、どんな正確な作業可能者であっても間違いは発生し得る。また、健康者であっても、たとえば長時間同一/同様作業を連続して行っていると倦怠感から間違いが発生する可能性が高まる。疲労度が蓄積されてきた状態にある者も同様のことがいえる。これらはすべて、人間であるがゆえの認識の誤りに起因している。すなわち、「A物品を3個」ピックした作業に続けて「B物品を4個」ピックし、ここでたとえば疲労状態になったうえで、「A物品を2個ピックアップせよ」というピッキング情報を受け取った者が、視認した情報が「A物品」「2個」であるにも拘わらず、少し前にピッキング情報として視認してすぐにピックアップ・アクションを引き起こす動作情報に転換した情報である「A物品」「3個」という情報と混同を(ピッカー脳内で)発生させるためであると考えられる。疲労度が高くない場合等であればこのような誤動作は表に出るまでに自身の内部で修正されるものの、疲労度が高い/不健康状態であるなどの状況にある場合にはかかる内部修正がなされずに、上記誤認識が誤ピックアップ行動として顕在化してしまうことになる。
【0099】
本発明では、これに対して、ポップアウトという不可避的認識をトリガーする事態を生じさせることで、人間の自覚的認識外の領域まで刺激することで、上記誤認識を生じさせないようにしようとするものである。ここで、ポップアウトとは、妨害刺激群から一つだけ異なる目標刺激を探し出す際に、すべての刺激を探索することなく目標刺激を瞬間的に知覚することができる現象、と定義する。
【0100】
ポップアウトを起こすためには、単に表示するのではなく、たとえば次の要素を入れて表示する。
・際立たせたい情報以外の情報(「周辺情報」という。)を消灯しターゲット情報のみを点滅(または点灯)表示する。(図示の状態)あるいは、周辺情報を点灯表示しターゲット情報を点滅表示する。
・周辺情報を黒字で表示しターゲット情報を赤字で表示する。
・周辺情報を通常ポイントで表示しターゲット情報を通常ポイントのたとえば1.5倍のポイントで表示する。
・商品とピックアップする数量を表示する場合、商品番号と数量を数字で表示するのではなく、ピックアップする数量が3個の場合商品の写真を3個表示する。
【0101】
このように、ポップアウト機能を有する物品保管部(フローラック)と無人搬送車を用いた集品容器の搬送とを作業員のピッキングフロアの同一側に設けたことにより、物品のピッキング作業をポップアウト機能によって確実に行なわせるようにした上で、作業員が姿勢を変えることなく、また、大きな視線の移動をすることなく、面前に提示された集品容器40にピッキングした物品を投入すればよいため、作業ミスの発生を極限まで減少させ、また、作業員が快適に作業できるようになる。
【0102】
また、ポップアウト機能としては、ピッキング作業だけでなく、無人搬送車32が物品保管部の下方から現れて、集品容器40への投入を促す際にも生じる。
【0103】
すなわち、無人搬送車は、通常走行においては物品保管部の下方に隠れて目立たない状態であるが、集品作業が必要になると、作業者の前に登場してくることが、先に述べたポップアウト機能、すなわち、認知心理学で知られる機能であり、複数の認知対象が存在する状況下で、その中の一つが他と異なる認知的特性を有する場合に、不可避的に、換言すれば、人間の意志による制御が及ばない形で、対象が認知されるという機能となり、ピッキングした物品を速やかに無人搬送車上の集品容器に投入しようとする動作が促進される。
【0104】
なお、これまでの説明では、本願のシステムは、複数種類の物品の中から必要な物品を必要な個数だけオーダ単位に集品するピッキングシステムとしたが、逆に必要な物品を必要な個数だけオーダ別に仕分ける種まき(アロケーション)システムに用いてもよい。
【0105】
すなわち、作業員Pのピッキング作業を行うピッキングフロアの一方の側に設けられた、無人搬送車から物品を供給する物品供給部と、ピッキングフロアに対して物品供給部と同一側に設けた、ポップアウト機能を有する物品種まき部(アロケーション部)とを有している構成である。
【0106】
無人搬送車による物品の供給は、無人搬送車に載置された容器に物品を収容した状態で、物品種まき部の下方から、作業員の面前に提示するようにすればよい。
【0107】
ポップアウト機能を有する物品種まき部は、格子状の棚に載置された容器と、容器の近傍に設けられたプロジェクタ(投影機)とを有し、投入すべき間口に関する情報が、プロジェクタから、ポップアウト機能を有した状態で、格子状の棚の各間口に対応して表示できるものである。
【0108】
このように、下方に設けた物品の供給部と同一側で、直上部に設けた物品種まき部に、ポップアウト機能を有した情報表示部を設けたことから、供給された物品を保持して物品種まき部側へと視線を移した瞬間に、投入すべき間口を正しく認識することができ、迅速で間違いのない物品種まきシステムが実現できる。
【0109】
すなわち、無人搬送車を用いた物品供給部と、ポップアウト機能を有する物品種まき部とを作業員のピッキングフロアの同一側に設けたことにより、無人搬送車による自由な走行を確保し、その上で物品の種まき作業をポップアウト機能によって確実に行なわせるようにしたから、システム構成の自由度や運用の効率が極めて高くなる。
【0110】
また、これまでの説明では、ポップアウト機能は、視覚によるものとしてきたが、それに加えて、あるいはそれに代えて、聴覚(音声)、振動など、五感に対し、適切に働きかけて、ポップアウトを生じさせる機能であればよい。
【0111】
次に、図面を参照し、本発明の第2の実施形態に係る物品のピッキングシステムについて説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。また、本発明に係る第1の実施形態と共通するところは説明を省略する。
【0112】
<構成>
図5は本発明の第2の実施形態に係る物品ピッキングシステムの斜視図である。ここで、物品保管部20は、支持のための床面からの脚部を有しない。
【0113】
それに代えて、天井から吊るすための1組2本で、4組の支持部25a、25b、25c、25d(総称して支持部25)を有する。
【0114】
支持部25の各々の上端は図示しない天井部分に固定され、各々の下端は、物品保管部20の上部に固定される。
【0115】
このようにして、物品保管部20の下方は、妨げるもののないスペースとなり、無人搬送車32が自由に走行でき、待機場所から集品場所まで最短距離、最小時間で移動することが可能となる。
【0116】
なお、物品保管部20の支持方法としては、図示の方法に限定せず、上方端は、天井ではなく梁の部分に固定してもよく、また、支持部25の本数や形状などはどのようなものであってもよい。
【0117】
更に、物品保管部20の支持のための床面からの脚部を一部残してもよい。無人搬送車32の走行には制約が生ずるが、設置が容易になるなどの利点もあり得る。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の物品ピッキングシステムは、広く物流業界で用いることができ、利便性、正確性などの点で優れており、産業上、大いに利用可能な発明である。
【符号の説明】
【0119】
1 物品ピッキングシステム
10 ピッキングフロア
20(a、b、c)フローラック
21 物品保管容器
22 支持具
23 プロジェクタ
24 情報表示部
25 支持部
30 無人搬送車フロア
31 容器搬送コンベヤ
32 無人搬送車
40 集品容器
50 システム制御部
P 作業員(ピッカー)