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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016750
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】発電方法及び発電設備
(51)【国際特許分類】
   F23C 1/00 20060101AFI20240131BHJP
   C01B 6/04 20060101ALI20240131BHJP
   C01B 6/06 20060101ALI20240131BHJP
   C01B 6/10 20060101ALI20240131BHJP
   C10L 5/00 20060101ALI20240131BHJP
   F22B 35/00 20060101ALI20240131BHJP
   C10J 3/46 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F23C1/00 301
C01B6/04 ZAB
C01B6/06
C01B6/10
C10L5/00
F22B35/00 H
C10J3/46 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119087
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】390029012
【氏名又は名称】株式会社エスイー
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 哲
(72)【発明者】
【氏名】浪江 正宗
【テーマコード(参考)】
3K091
3L021
4H015
【Fターム(参考)】
3K091AA20
3K091BB02
3K091CC12
3L021AA08
3L021DA22
3L021FA12
4H015AA24
4H015AA25
4H015AA26
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA08
4H015BB03
4H015BB14
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】石炭火力発電で培った技術を利用し、二酸化炭素の排出を抑えた発電方法及び発電設備を提供する。
【解決手段】発電用ボイラ2の燃焼室21内で、無機固体燃料と、助燃性ガスとしての石炭ガス化ガスと、を燃焼させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電用ボイラの燃焼室内で、無機固体燃料と、助燃性ガスとしての石炭ガス化ガスと、を燃焼させる、
ことを特徴とする発電方法。
【請求項2】
前記無機固体燃料が、リチウム、マグネシウム、ボロン、及びアルミニウムのうちの少なくとも一つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電方法。
【請求項3】
前記無機固体燃料が、リチウム、マグネシウム、及びアルミニウムのうちの少なくとも一つであり、
前記無機固体燃料の燃焼生成物である酸化物を還元処理して、繰り返し、前記無機固体燃料として使用する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電方法。
【請求項4】
前記無機固体燃料が、少なくとも一部が水素化されたリチウム、マグネシウム、ボロン、及びアルミニウムのうちの少なくとも一つである、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電方法。
【請求項5】
前記無機固体燃料が、少なくとも一部が水素化されたリチウム、マグネシウム、及びアルミニウムのうちの少なくとも一つであり、
前記無機固体燃料の燃焼生成物である酸化物を還元処理するとともに水素化処理して、繰り返し、前記無機固体燃料として使用する、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電方法。
【請求項6】
前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスである、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電方法。
【請求項7】
前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスをガス精製設備で精製して得られる燃料ガスである、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電方法。
【請求項8】
前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスをガス精製設備で精製して燃料ガスとし、前記燃料ガスを燃焼器において燃焼させて排出される排ガスである、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電方法。
【請求項9】
前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスをガス精製設備で精製して燃料ガスとし、前記燃料ガスを燃焼器において燃焼させて排出される排ガスから水分が分離された後の乾燥ガスである、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電方法。
【請求項10】
前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスをガス精製設備で精製して燃料ガスとし、前記燃料ガスを水性ガスシフト反応させて得られるシフトガスである、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電方法。
【請求項11】
前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスをガス精製設備で精製して燃料ガスとし、前記燃料ガスを水性ガスシフト反応させて得られるシフトガスから水素が分離された後の二酸化炭素ガスである、
ことを特徴とする請求項1に記載の発電方法。
【請求項12】
発電用ボイラの燃焼室内で、無機固体燃料と、助燃性ガスとしての石炭ガス化ガスと、を燃焼させ、
前記燃焼室内の圧力を所定の圧力に維持するため、前記燃焼室へと供給される前記助燃性ガスの量が調整される、
ことを特徴とする発電設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電方法及び発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用ボイラを備える石炭火力発電システムが一般に知られている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、我が国では、世界有数の石炭火力発電技術を保有しているにも関わらず、石炭が燃焼時に二酸化炭素を排出するという問題のために、その技術の活用の場が失われつつある。
【0004】
このような問題の1つの解決策となる技術として、火力発電所の排ガスから二酸化炭素を分離回収し、その回収した二酸化炭素を貯留する、いわゆる、CCS(二酸化炭素回収・貯留)の取組みが行われている。
【0005】
例えば、非特許文献2には、CCSに関する北海道の苫小牧市での取り組みについての紹介が行われており、具体的には、火力発電所の排ガスから二酸化炭素を分離回収し、その回収した二酸化炭素を海岸から3~4km程度離れた海底下の地中深くに圧入し、貯留していることが説明されている。このように地中深くに圧入された二酸化炭素は長期間にわたって安定して貯留されるとともに、長い年月をかけて塩水に溶解、及び、岩石の隙間で鉱物になると考えられている。
【0006】
しかしながら、このような貯留を行うためには、二酸化炭素を貯留可能な隙間を有する地層であること、その上が二酸化炭素を通さない地層で覆われていることなど制約が多い、という問題がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】“地域環境保全の推進 石炭火力発電所のしくみとさまざまな環境保全対策”、[online]、沖縄電力株式会社、[令和4年6月30日検索]、インターネット<URL:https://www.okiden.co.jp/environment/report2017/sec6/sec63.html>
【非特許文献2】“CO2を回収して埋める「CCS」、実証試験を経て、いよいよ実現も間近に(前編)”、[online]、2020年11月27日、経済産業省資源エネルギー庁、[令和4年6月16日検索]、インターネット<URL:https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、石炭火力発電で培った技術を利用し、二酸化炭素の排出を抑えた発電方法及び発電設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の発電方法は、発電用ボイラの燃焼室内で、無機固体燃料と、助燃性ガスとしての石炭ガス化ガスと、を燃焼させる。
【0010】
(2)上記(1)の構成において、前記無機固体燃料が、リチウム、マグネシウム、ボロン、及びアルミニウムのうちの少なくとも一つである。
【0011】
(3)上記(1)の構成において、前記無機固体燃料が、リチウム、マグネシウム、及びアルミニウムのうちの少なくとも一つであり、前記無機固体燃料の燃焼生成物である酸化物を還元処理して、繰り返し、前記無機固体燃料として使用する。
【0012】
(4)上記(1)の構成において、前記無機固体燃料が、少なくとも一部が水素化されたリチウム、マグネシウム、ボロン、及びアルミニウムのうちの少なくとも一つである。
【0013】
(5)上記(1)の構成において、前記無機固体燃料が、少なくとも一部が水素化されたリチウム、マグネシウム、及びアルミニウムのうちの少なくとも一つであり、前記無機固体燃料の燃焼生成物である酸化物を還元処理するとともに水素化処理して、繰り返し、前記無機固体燃料として使用する。
【0014】
(6)上記(1)の構成において、前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスである。
【0015】
(7)上記(1)の構成において、前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスをガス精製設備で精製して得られる燃料ガスである。
【0016】
(8)上記(1)の構成において、前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスをガス精製設備で精製して燃料ガスとし、前記燃料ガスを燃焼器において燃焼させて排出される排ガスである。
【0017】
(9)上記(1)の構成において、前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスをガス精製設備で精製して燃料ガスとし、前記燃料ガスを燃焼器において燃焼させて排出される排ガスから水分が分離された後の乾燥ガスである。
【0018】
(10)上記(1)の構成において、前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスをガス精製設備で精製して燃料ガスとし、前記燃料ガスを水性ガスシフト反応させて得られるシフトガスである。
【0019】
(11)上記(1)の構成において、前記助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備で製造された石炭ガス化ガスをガス精製設備で精製して燃料ガスとし、前記燃料ガスを水性ガスシフト反応させて得られるシフトガスから水素が分離された後の二酸化炭素ガスである。
【0020】
(12)本発明の発電設備は、発電用ボイラの燃焼室内で、無機固体燃料と、助燃性ガスとしての石炭ガス化ガスと、を燃焼させ、前記燃焼室内の圧力を所定の圧力に維持するため、前記燃焼室へと供給される前記助燃性ガスの量が調整される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、石炭火力発電で培った技術を利用し、二酸化炭素の排出を抑えた発電方法及び発電設備を提供するができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態における石炭ガス化複合発電設備の概略構成を説明するための系統図である。
図2】実施形態における石炭ガス化燃料電池複合発電設備の概略構成を説明するための系統図である。
図3】本発明に係る実施形態の発電工程を行うための発電所の概略構成を説明するための図である。
図4】本発明に係る実施形態の水素化工程を実施するための装置の概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
【0024】
本発明に係る発電設備は、一例として、石炭ガス化複合発電設備(IGCC)に併設されたり、石炭ガス化燃料電池複合発電設備(IGFC)に併設されたりすることが考えられる。そこで、まず、本発明に係る発電設備が併設され得る石炭ガス化複合発電設備及び石炭ガス化燃料電池複合発電設備について説明する。石炭ガス化複合発電設備や石炭ガス化燃料電池複合発電設備のことを「石炭ガス化発電設備」とも称する。
【0025】
(石炭ガス化複合発電設備(IGCC))
図1は、実施形態における石炭ガス化複合発電設備100の概略構成を説明するための系統図である。
【0026】
石炭ガス化複合発電設備100は、石炭ガス化設備101で製造された石炭ガス化ガスを燃焼器103で燃焼させてガスタービン104を駆動させて電力を得るとともに、ガスタービン104の排気熱を回収して発生させた蒸気によって蒸気タービン107を駆動させて電力を得る発電設備である。石炭ガス化複合発電設備100は周知の仕組みであるので詳細の説明は省略するが、概略の構成(特に、本発明に関係する構成)は下記のとおりである。
【0027】
石炭ガス化設備101は、石炭ガス化炉を含み、石炭及び酸化剤の供給を受け、酸化剤の反応によって石炭をガス化することで石炭ガス化ガスを製造する。石炭ガス化設備101の石炭ガス化炉へと供給される酸化剤は、酸素(O2)含有ガスであり、主な成分が、酸素でもよいし、酸素及び窒素(N2)でもよいし、空気でもよい。石炭ガス化ガスは、主成分として一酸化炭素(CO)及び水素(H2)を含む。
【0028】
石炭ガス化設備101は、除塵器及び熱交換器を含み、石炭ガス化炉において生成された石炭ガス化ガスに対して除塵処理を施したり、石炭ガス化ガスを所定の温度に調整したりする。石炭ガス化設備101によって製造された石炭ガス化ガスはガス精製設備102へと送られる。
【0029】
石炭ガス化ガスには、一酸化炭素(CO)や水素(H2)などの可燃成分に加えて不純物や硫黄分などが含まれている。ガス精製設備102は、石炭ガス化設備101から供給される石炭ガス化ガスに含まれている不純物や硫黄分などを除去して精製する。
【0030】
ガス精製設備102は、例えば、石炭ガス化ガス中の固形の不純物を除去するダストフィルターや、石炭ガス化ガスに含まれるハロゲン化物と化学反応するハロゲン化物吸収剤を備えるハロゲン化物除去装置や、石炭ガス化ガスに含まれる硫黄化合物と化学反応する金属酸化物系脱硫剤を備える脱硫装置を含む。ガス精製設備102によって精製された石炭ガス化ガス(「燃料ガス」と称する)は燃焼器103へと送られる。
【0031】
燃焼器103は、ガス精製設備102から供給される燃料ガス(CO、H2)を燃焼させて高温・高圧のガス(「燃焼ガス」と称する)をガスタービン104へと供給する。燃焼器103には、酸化剤として酸素(O2)が供給される。燃焼器103から排出される高温・高圧の燃焼ガスはガスタービン104へと送られる。燃焼ガスは、二酸化炭素(CO2)及び水分(H2O)を含む。
【0032】
ガスタービン104は、燃焼器103から供給される高温・高圧の燃焼ガスを膨張させることでタービンを回転させて発電機105を駆動させる。
【0033】
排熱回収ボイラ106は、ガスタービン104から排出される排ガスの熱回収を行って蒸気を発生させる。排熱回収ボイラ106で熱回収された排ガスは圧縮機110へと送られる。
【0034】
蒸気タービン107は、排熱回収ボイラ106で発生した蒸気を用いてタービンを回転させて発電機108を駆動させる。
【0035】
回収装置109は、排熱回収ボイラ106から排出される排ガス(CO2、H2O)のうちの少なくとも一部について、排ガスの成分のうちの水分(H2O)を分離して二酸化炭素(CO2)を回収する。回収装置109は、例えば、排ガスを乾燥させることにより、排ガスから水分を分離(言い換えると、除去)する。水分が分離/除去された後の排ガス(CO2)のことを「乾燥ガス」と称する。
【0036】
圧縮機110は、排熱回収ボイラ106から排出される排ガスの供給を受けてこの排ガスを圧縮して燃焼器103へと供給する。この際、排熱回収ボイラ106から排出される排ガスについて、余剰な二酸化炭素が回収装置109によって回収される。
【0037】
(石炭ガス化燃料電池複合発電設備(IGFC))
図2は、実施形態における石炭ガス化燃料電池複合発電設備120の概略構成を説明するための系統図である。
【0038】
石炭ガス化燃料電池複合発電設備120は、石炭ガス化設備101で製造された石炭ガス化ガスを燃料電池124のアノード極(燃料極;図示せず)に供給されるアノード(燃料)として使用し、酸化剤を燃料電池124のカソード極(空気極、酸素極;図示せず)に供給して電気化学反応により発電を行うと同時に、燃料電池124から排出される排ガスでガスタービン104を駆動させて電力を得るとともに、ガスタービン104の排気熱を回収して発生させた蒸気によって蒸気タービン107を駆動させて電力を得る発電設備である。石炭ガス化燃料電池複合発電設備120は周知の仕組みであるので詳細の説明は省略するが、概略の構成(特に、本発明に関係する構成)は下記のとおりである。また、石炭ガス化燃料電池複合発電設備120について、上述の石炭ガス化複合発電設備100と同等の構成については同一符号を付することでその説明を適宜省略する。
【0039】
シフト反応設備121は、石炭ガス化設備101で製造された石炭ガス化ガスがガス精製設備102によって精製された後の燃料ガスに含まれている一酸化炭素と水(具体的には例えば、水蒸気)とを反応させて水素と二酸化炭素とを生成する。シフト反応設備121は、具体的には、水性ガスシフト反応(下記の反応式1参照)を利用して、一酸化炭素(CO)と水(H2O)とを反応させて水素(H2)と二酸化炭素(CO2)とを生成する。
CO + H2O → H2 + CO2 (1)
【0040】
シフト反応設備121によって生成される水性ガスシフト反応後のガス(CO2、H2;「シフトガス」と称する)は分離設備122へと送られる。
【0041】
分離設備122は、シフト反応設備121から供給されるシフトガス(CO2、H2)の成分のうちの水素(H2)を分離して燃料電池124へと供給する。シフトガスから水素が分離された後のガスはすなわち二酸化炭素(CO2)ガスである。
【0042】
圧縮機123は、空気を圧縮して燃料電池124へと供給する。
【0043】
燃料電池124は、分離設備122から水素の供給を受けるとともに圧縮機123から圧縮空気の供給を受ける。燃料としての水素が燃料電池124のアノード極へと送られるとともに、酸化剤としての圧縮空気が燃料電池124のカソード極へと送られ、電気化学反応によって発電が行われる。
【0044】
燃料電池124における反応後のアノードガス及びカソードガスは、燃料電池後段燃焼器125で燃焼されて高温・高圧のガス(即ち、燃焼ガス)とされたうえでガスタービン104へと供給される。
【0045】
ガスタービン104は、燃料電池後段燃焼器125から供給される高温・高圧の燃焼ガスを膨張させることでタービンを回転させて発電機105を駆動させる。
【0046】
(資源循環型の発電設備)
本発明に係る実施形態の発電方法は、発電用ボイラ2の燃焼室21内で燃料を燃焼させて発電する発電工程と、燃焼で発生する燃焼灰から燃料の原材料を生成する(言い換えると、再生する)資源再生工程と、を有する。
【0047】
(発電工程)
発電工程は、発電所で実施される工程であるが、そこで使用されている技術は、これまで石炭火力発電で培った技術を利用したもの(具体的には、微粉炭の代わりに無機固体燃料の粉体を燃焼させるもの)であるため、従来の技術と同様の点については、説明を省略する場合がある。
【0048】
図3は、本発明に係る実施形態の発電工程を行うための発電所10の概略構成を説明するための図である。
【0049】
本発明に係る実施形態の発電方法は、発電用ボイラ2の燃焼室21内で、無機固体燃料と、助燃性ガスとしての石炭ガス化ガスと、を燃焼させるようにしており、特に、助燃性ガスが、石炭ガス化発電設備の石炭ガス化設備101で製造された石炭ガス化ガスであるようにしている。
【0050】
図3に示すように、発電所10は、発電機1と、発電機1を駆動させる発電用ボイラ2と、発電用ボイラ2に供給する燃料を貯蔵する燃料貯蔵庫3と、発電用ボイラ2に供給する補助燃料を貯蔵する補助燃料貯蔵庫4と、発電用ボイラ2から排出される排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)を無害化する(言い換えると、除去する)脱硝装置5と、脱硝装置5を通過した排ガス中に含まれる燃焼灰を回収する集塵装置6と、燃焼灰を貯蔵する燃焼灰貯蔵庫7と、を備える。
【0051】
発電用ボイラ2は、燃焼室21と、回転軸が発電機1に接続され、燃焼室21で作られた蒸気で駆動する蒸気タービン22と、その蒸気を蒸気タービン22へと供給するとともに、復水器9で液体状態に戻された水を燃焼室21へと再び供給するための配管23と、を備える。
【0052】
なお、給水ポンプ24が、復水器9と燃焼室21とを繋ぐ配管23の途中に設けられており、復水器9で液体状態に戻された水を燃焼室21側に送るようになっている。
【0053】
燃焼室21は、燃料貯蔵庫3から供給される粉体の燃料を燃焼させる粉末燃焼バーナ31と、補助燃料貯蔵庫4から供給される液体燃料(例えば、重油、軽油など)を燃焼させる補助燃焼バーナ41と、を備える。
【0054】
燃焼室21内における粉体の燃料の燃焼は、本発明では酸素が無い環境下(言い換えると、雰囲気)で行われることが好ましい。燃焼室21内の雰囲気に酸素が含まれる場合でも、酸素濃度が、燃焼生成物として炭素(C)の生成が可能である程度に低い濃度に調整されることが好ましい。すなわち、マグネシウムと本発明における助燃性ガス(例えば、一酸化炭素、二酸化炭素)との反応と比べてマグネシウムと酸素との反応が優位とならない(言い換えると、優先されない)程度に低い酸素濃度に調整されることが好ましい。
【0055】
粉末燃焼バーナ31は、例えば、石炭火力発電で用いられている微粉炭バーナと同様のものでよく、また、粉体の燃料や助燃性ガスを粉末燃焼バーナ31に供給する供給系も石炭火力発電で用いられているものと同様でよい。
【0056】
補助燃焼バーナ41は、燃焼室21内の温度が上昇して粉末燃焼バーナ31の燃焼が安定するまでの補助火力を得るためのバーナであり、これも石炭火力発電で用いられているものと同様でよい。
【0057】
なお、粉末燃焼バーナ31の燃焼が安定した後は、補助燃焼バーナ41による補助火力は必要ない。そして、火力発電所は基本的には停止させることなく稼働することになるため、稼働開始時のみ使用する補助火力で発生する二酸化炭素は無いに等しいレベルのものである。
【0058】
燃料貯蔵庫3には、本発明における無機固体燃料である、燃焼時に二酸化炭素を出さない粉体の燃料として、マグネシウム(Mg)が貯蔵されている。燃料貯蔵庫3に貯蔵されるマグネシウムは、少なくとも表面が水素化された層を有する水素化マグネシウム(MgH2)でもよく、マグネシウムと水素化マグネシウムとの混合物でもよい。
【0059】
無機固体燃料としてのマグネシウム(水素化マグネシウムを含む。以下同様)は、150μm以下の粒径に調整されることが好ましい。ただし、マグネシウムは完全な球形ではないので、ここでいう150μm以下の粒径とは、例えば、目開きが0.16mm程度のメッシュを篩に用いたときに通過する程度の粒径である。
【0060】
ここで、石炭火力発電で用いられている微粉炭バーナで使用される微粉炭は、概ね150μm以下であり、マグネシウムの粒径を150μm以下にすることで微粉炭バーナと同様の構造のバーナを粉末燃焼バーナ31として使用することができるという利点がある。
【0061】
粉末燃焼バーナ31では、助燃性ガスと混合されたマグネシウムが燃焼する。
【0062】
粉末燃焼バーナ31へと供給される助燃性ガスとして、上述の石炭ガス化複合発電設備100の系統において生じる一酸化炭素や二酸化炭素が供給されるようにしてもよく、また、上述の石炭ガス化燃料電池複合発電設備120の系統において生じる一酸化炭素や二酸化炭素が供給されるようにしてもよい。
【0063】
ア)マグネシウム(Mg)と、石炭ガス化複合発電設備100や石炭ガス化燃料電池複合発電設備120の石炭ガス化設備101から排出される石炭ガス化ガス(CO、H2)やガス精製設備102から排出される燃料ガス(CO、H2)のうちの一酸化炭素(CO)と、の燃焼反応(熱の発生を含む。以下同様)は、下記の反応式2に示すとおりである。また、水素化マグネシウム(MgH2)と一酸化炭素との燃焼反応は、下記の反応式3に示すとおりである。なお、燃焼反応によって生成される酸化マグネシウム(MgO)及び炭素(C)は固体(具体的には、紛体)である。
Mg + CO → MgO + C (2)
MgH2 + CO → MgO + H2 + C (3)
【0064】
イ)マグネシウム(Mg)と、石炭ガス化複合発電設備100の燃焼器103から排出される燃焼ガス(CO2、H2O)のうちの二酸化炭素(CO2)と、の燃焼反応は、下記の反応式4に示すとおりである。また、水素化マグネシウム(MgH2)と二酸化炭素との燃焼反応は、下記の反応式5に示すとおりである。加えて、マグネシウムと水分(H2O)との燃焼反応は下記の反応式6に示すとおりである。また、水素化マグネシウム(MgH2)と水分との燃焼反応は、下記の反応式7に示すとおりである。
2Mg + CO2 → 2MgO + C (4)
2MgH2 + CO2 → 2MgO + 2H2 + C (5)
Mg + H2O → MgO + H2 (6)
MgH2 + H2O → MgO + 2H2 (7)
【0065】
ウ)マグネシウム(Mg)と、石炭ガス化複合発電設備100の回収装置109から排出される二酸化炭素(CO2)ガス(即ち、乾燥ガス)と、の燃焼反応は、下記の反応式8に示すとおりである。また、水素化マグネシウム(MgH2)と二酸化炭素との燃焼反応は、下記の反応式9に示すとおりである。
2Mg + CO2 → 2MgO + C (8)
2MgH2 + CO2 → 2MgO + 2H2 + C (9)
【0066】
エ)マグネシウム(Mg)と、石炭ガス化燃料電池複合発電設備120のシフト反応設備121から排出されるシフトガス(CO2、H2)のうちの二酸化炭素(CO2)と、の燃焼反応は、下記の反応式10に示すとおりである。また、水素化マグネシウム(MgH2)と二酸化炭素との燃焼反応は、下記の反応式11に示すとおりである。
2Mg + CO2 → 2MgO + C (10)
2MgH2 + CO2 → 2MgO + 2H2 + C (11)
【0067】
オ)マグネシウム(Mg)と、石炭ガス化燃料電池複合発電設備120の分離設備122における分離処理においてシフトガス(CO2、H2)から水素(H2)が分離された後の二酸化炭素(CO2)と、の燃焼反応は、下記の反応式12に示すとおりである。また、水素化マグネシウム(MgH2)と二酸化炭素との燃焼反応は、下記の反応式13に示すとおりである。
2Mg + CO2 → 2MgO + C (12)
2MgH2 + CO2 → 2MgO + 2H2 + C (13)
【0068】
上記のように、粉末燃焼バーナ31における燃焼反応で発生するのは酸化マグネシウム(MgO)と炭素(C)であり、発電のための燃焼時に二酸化炭素(CO2)は発生しない。ただし、例えば粉末燃焼バーナ31へと供給される助燃性ガスに水分が含まれている場合、水と酸化マグネシウムの一部とが反応し、燃焼灰中に水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)が含まれる場合がある。
【0069】
ここで、マグネシウムと助燃性ガスとの燃焼反応は固体と気体との反応によって固体が生成される圧力減少反応であり、燃焼室21内で無機固体燃料と助燃性ガスとが完全燃焼すると燃焼室21内の圧力が低下する場合があるので、燃焼室21内の圧力を所定の圧力(例えば、1気圧程度、或いは、燃焼室21内の圧力として許容される圧力の範囲程度)に維持するため、燃焼室21へと供給される助燃性ガスの量が調整されるようにしてもよい。この場合、例えば、燃焼室21内での反応に寄与せずに燃焼室21外へと排出されるガスが集塵処理されたうえで燃焼室21内へと再投入される圧力調整系が、粉末燃焼バーナ31に纏わる供給系・燃焼系とは別に設けられるようにしてもよい。
【0070】
燃焼室21内での燃焼時に窒素酸化物(NOx)が発生する場合への対応として、燃焼室21から排出される排ガス中の窒素酸化物を無害化する(言い換えると、除去する)ために、燃焼室21から排出される排ガスを集塵装置6に送るための排気管8の途上に脱硝装置5が設けられる。
【0071】
脱硝装置5は、排ガスにアンモニア(NH3)を添加して触媒層を通過させることで窒素酸化物を無害な窒素と水とに分解する機能を備える、石炭火力発電で用いられている脱硝装置と同様のものでよい。
【0072】
脱硝装置5を通過した後の排ガスには、有害なガスは含まれていないものの、燃焼時に発生した燃焼灰(具体的には、紛体状の酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、及び炭素を含む)のうち粒径が極めて小さいものが含まれている。このため、排気管8は集塵装置6に接続されており、集塵装置6で燃焼灰を回収した後に、排ガスが大気へと放出される。
【0073】
集塵装置6は、石炭火力発電で用いられている集塵装置と同様のものでよく、具体的には例えば、電気集塵機でよい。
【0074】
なお、図3に示す例では、集塵装置6の下流に排風装置81が設けられ、これにより、燃焼室21の排ガスが脱硝装置5及び集塵装置6を経て大気へと放出される。
【0075】
一方、石炭火力発電では、燃料に石炭を用いるため、石炭中に含まれる硫黄成分が排ガス中に含まれる。このため、石炭火力発電では、排ガスを大気放出する前段に、さらに、脱硫装置が設けられている。これに対し、本発明では、マグネシウムには硫黄成分が含まれていないため、脱硫装置が不要であるという利点がある。
【0076】
加えて、石炭火力発電では、排ガス中に二酸化炭素が含まれているため、排ガスを大気放出するにあたっては、高い煙突から大気放出する必要がある。これに対し、本発明では、そのような高い煙突も不要である。
【0077】
そして、燃焼室21の底部に堆積する燃焼灰、及び、集塵装置6によって集塵された燃焼灰は、燃焼灰貯蔵庫7に集められ、資源循環のために、次に説明する資源再生工程を経て、繰り返し、マグネシウムに再生される。再生されたマグネシウムは、粉末燃焼バーナ31へと供給される無機固体燃料として使用される。
【0078】
なお、石炭火力発電においても、石炭の燃え残りが燃焼室の底部に堆積するとともに、排ガス中にも含まれるために集塵装置が用いられており、マグネシウムの燃焼灰を回収するための機構も石炭火力発電で用いられている機構と同様のものでよい。
【0079】
以上の説明から分かるように、燃料に粒径が150μm以下のマグネシウムを用いるようにすれば、これまで培われてきた微粉炭バーナで微粉炭を燃焼させて発電を行う石炭火力発電の技術との相性が極めてよい、二酸化炭素の排出を抑えた発電工程が行われ得る。
【0080】
(資源再生工程)
次に、発電工程で発生した燃焼生成物としての燃焼灰に含まれているマグネシウムの酸化物(具体的には、酸化マグネシウム)を出発材として、再び、マグネシウムを生成する資源回収工程について説明する。
【0081】
なお、燃焼灰に含まれる水酸化マグネシウム(Mg(OH)2)については、加熱により、下記の反応式14に示すとおり脱水反応が起きて酸化マグネシウム(MgO)になるため、資源回収工程の出発材は酸化マグネシウムであると考えてよい。
Mg(OH)2 → MgO + H2O (14)
【0082】
出発材である酸化マグネシウムからマグネシウムを生成する手順は、燃焼灰である酸化マグネシウムを材料として塩化マグネシウムを生成する塩素化工程と、塩素化工程で生成された塩化マグネシウムを材料としてマグネシウムを生成する溶融塩電解工程とに分けられる。
【0083】
(塩素化工程)
塩素化工程は、燃焼灰である酸化マグネシウムを材料として、後に続く手順である溶融塩電解工程で用いる塩化マグネシウムを生成する工程である。
【0084】
塩素化工程では、まず、燃焼灰である紛体状の酸化マグネシウム(MgO)及び炭素(C)が塩化水素(HCl)水へと投入される。酸化マグネシウムは、塩化水素水中で下記の反応式15の反応を起こして塩化マグネシウム(MgCl2)となる。反応によって生成される塩化マグネシウムは、水に対する溶解度が大きい物質であるため、塩化水素水の水分が十分に多ければ、溶解する。
MgO + 2HCl → MgCl2 + H2O (15)
【0085】
一方で、炭素は、反応を起こさないので、また、溶解しないので、紛体状のまま塩化水素水中に残る。このため、塩化マグネシウムが溶解している塩化水素水をろ過することにより、燃焼灰のうちの炭素が回収される。
【0086】
上記によって回収される炭素は、高純度であり、産業用の材料として有用であり、特に純度の高い炭素素材が必要とされる分野において極めて有用である。
【0087】
炭素をろ過した後の塩化水素水から、無水の塩化マグネシウムが回収される。塩化水素水から無水の塩化マグネシウムを回収する仕法としては、例えば、塩化水素水中に塩化水素ガスを吹き流しながら加熱する方法が挙げられる。この方法は周知の手順であるので詳細な説明は省略する。
【0088】
塩化水素水から無水の塩化マグネシウムを回収する仕法として、或いは、塩化水素水(尚、塩化マグネシウムは6水和物の状態で溶解している)を窒素雰囲気において加熱し、水を脱離させて塩化マグネシウムの無水和物を得たり、塩化水素を脱離させて酸化マグネシウムを得て酸化マグネシウムを更に処理したりするようにしてもよい。
【0089】
上記の場合、酸化マグネシウムについては、酸化マグネシウムと塩化水素ガスとで300~600℃程度の温度下で下記の反応式16の反応を起こさせることで塩化マグネシウムとされるようにしてもよい。
MgO + 2HCl → MgCl2 + H2O (16)
【0090】
上記の場合、酸化マグネシウムについては、または、酸化マグネシウムと塩化アンモニウム(NH4Cl)とで300~600℃程度の温度下で下記の反応式17の反応を起こさせることで塩化マグネシウムとされるようにしてもよい。
MgO + 2NH4Cl → MgCl2 + H2O + 2NH3 (17)
【0091】
上記の場合、酸化マグネシウムについては、或いは、酸化マグネシウムと塩化アンモニウムとのモル比を1:3で400℃程度の温度下で下記の反応式18の反応を起こさせることでアンモニウムカーナリットの水和物を生成した後に、アンモニウムカーナリットの水和物をアンモニアガスの吹き流し状態下で塩化アンモニウムの昇華温度よりも少し低い温度(例えば、昇華温度よりも5~20℃程度低い温度)に加熱して下記の反応式19の脱水反応を起こさせることで水分を取り除き、さらに、乾燥窒素の吹き流し状態下で塩化アンモニウムの昇華温度よりも高い温度(例えば、400℃前後)に加熱して下記の反応式20の反応を起こさせることで塩化アンモニウム部分を取り除いて無水の塩化マグネシウムとされるようにしてもよい。
MgO+3NH4Cl→MgCl2・NH4Cl・H2O+2NH3 (18)
MgCl2・NH4Cl・H2O→MgCl2・NH4Cl+H2O (19)
MgCl2・NH4Cl→MgCl2+NH3+HCl (20)
【0092】
(溶融塩電解工程)
溶融塩電解工程は、塩素化工程で生成された無水の塩化マグネシウムを材料として、電気分解によってマグネシウムを生成する工程であり、マグネシウムの製造に用いられる一手法である。
【0093】
溶融塩電解工程の概要は、例えば、レンガ炉内で700℃前後の温度に塩化マグネシウムを加熱し、塩化マグネシウムを溶融する。
【0094】
レンガ炉内には少なくとも一対の電極が設けられており、これら電極間に電源が繋がれて2.5V以上の電圧がかけられると、陽極で塩素(Cl2)ガスが発生し、陰極でマグネシウムが生成される。
【0095】
塩化水素ガスは水素ガスと塩素ガスとを反応させることで製造されるので、溶融塩電解工程で発生する塩素ガスを材料として塩化水素ガスが生成されて塩素化工程で使用されるようにしてもよい。
【0096】
(微粒化工程)
微粒化工程は、溶融塩電解工程で生成されたマグネシウムを粉末状のマグネシウムにする工程であり、一般的な粉砕機が用いられて行われてもよく、或いは、ガスアトマイザーと呼ばれる微粉末製造装置が用いられて行われてもよい。
【0097】
粉砕装置が用いられて微粒化工程が実施される場合には、粉砕効率を考え、粉砕工程が2段階に分けられて実施されることが好ましい。
【0098】
具体的には、微粒化工程は、微粒化まではいかないものの粉砕速度が速い装置で180~800μm程度の粒径に粗粉砕される粗粉砕工程と、粗粉砕工程で粉砕されたマグネシウムが150μm以下の粒径に粉砕される微粉砕工程と、の2段階に分けられて実施されることが好ましい。
【0099】
微粒化工程における粒径は正確な球形を意味するのではなく、粗粉砕工程における粒径は、例えば、目開きが0.8mm程度のメッシュを篩に用いたときに通過する程度の粒径である。
【0100】
ここで、マグネシウムを粗く粉砕するときは、マグネシウムが柔らかい金属であることが悪さをすることはないが、微粉砕するときは、粉砕過程でマグネシウム同士がくっ付いて微粉末状になり難いという問題が発生し得る。このため、微粉砕工程では、粗粉砕したマグネシウムに粉砕助剤が添加されることが好ましい。
【0101】
粉砕助剤として、例えば、ステアリン酸などが用いられ得るが、無機化合物の粉末が用いられることが好ましい。具体的には例えば、無機化合物の粉末である酸化マグネシウムが粉砕助剤として用いられるようにすることにより、燃焼灰と同じ組成であるため、燃焼灰の一部を粉砕助剤として流用することが可能になる。
【0102】
(水素化工程)
本発明における無機固体燃料として、上述のとおり、少なくとも表面が水素化された層を有する水素化マグネシウムが使用されるようにしてもよい。そこで、微粒化工程で微粒化されたマグネシウムが水素化される(この処理のことを「水素化工程」と称する)ようにしてもよい。
【0103】
ここで、微粒化後、マグネシウムが酸素に触れると、表面に酸化膜が形成され、反応効率が著しく低下する。このため、微粉砕工程で粉砕されたマグネシウムは、水素化工程が終了するまで酸素に触れないように取扱われるようにする。
【0104】
水素化工程を実施するための装置構成を説明する図である図4を参照しながら、外気に触れさせないで水素化工程を行う方法について説明する。
【0105】
水素化工程を実施するための装置300は、図4に示すように、微粒化されたマグネシウムを収容して水素との反応を行う加熱容器310と、加熱容器310を加熱するヒータ320と、加熱容器310の入口311に着脱可能に接続された配管315と、を備える。
【0106】
加熱容器310は、入口311から加熱部312へと至る道管部313にバルブ314が設けられており、バルブ314が閉じられると密閉構造になるようになっている。
【0107】
配管315は、図示していないが、水素ガス供給系、アルゴンガス供給系、及び真空ポンプに繋がっている。
【0108】
加熱容器310は、微粉砕工程で粉砕されたマグネシウムを回収する回収容器を兼ねたものになっている。
【0109】
上記により、微粉砕工程がアルゴンガス雰囲気下で行われ、微粉砕工程を行う粉砕装置から加熱容器310が取り外される前にバルブ314が閉じられて取り外しが行われることで、加熱容器310内に回収されたマグネシウムがアルゴン封入状態で、図4に示す装置300に接続される。
【0110】
そして、バルブ314が開けられる前に真空引きが行われ、配管315及びバルブ314よりも前段側にある空気が排気された後にバルブ314が開けられ、加熱部312内のアルゴンガスが排気される。
【0111】
その後、加熱部312内の温度を水素化に適した温度(具体的には、180℃~220℃)に加熱するようにヒータ320を駆動させるとともに、加熱容器310に水素ガスを供給して、水素化処理(下記の反応式21参照)が行われる。
Mg + H2 → MgH2 (21)
【0112】
ここで、水素化率20質量%程度の水素化マグネシウムは石炭と重量当たりの発熱量がほぼ同じになるため、石炭を置き換える(言い換えると、石炭の代わりの)燃料としては、低純度の水素化マグネシウムでよい。また、マグネシウムは、微粉末になると燃焼し易くなり、一般的には、消防法上、危険物扱いになる。一方で、水素化マグネシウムは、水素化されたことで引火性が低くなっており、微粉末でも消防法上の危険物に該当していない。そこで、マグネシウムの水素化は、運搬・保管などの点で危険物に該当しない程度の水素化率が達成されていればよい。
【0113】
なお、マグネシウムの水素化は、処理時間に比例して進行するのではなく、純度が高くなるにつれて進行速度が大幅に遅くなっていく。このため、少なくとも表面側が水素化された水素化率30質量%以下(例えば、20質量%程度)の低純度の水素化マグネシウムとすれば、水素化工程に必要な時間を大幅に削減することができ、生産性を大幅に高めることが可能となる。
【0114】
水素化処理の後、ヒータ320が止められて、冷却後、加熱容器310内の水素ガスがアルゴンガスに置換されて、低純度の水素化マグネシウムが取り出される。このようにして生成された少なくとも表面側が水素化された水素化率30質量%以下(例えば、20質量%程度)の低純度の水素化マグネシウムは、再び、発電工程で燃料として使用される。
【0115】
なお、本発明における無機固体燃料として、水素化率の高い水素化マグネシウムが使用されるようにしてもよく、また、マグネシウムと水素化マグネシウムとの混合物が使用されるようにしてもよい。
【0116】
(作用効果)
実施形態に係る発電方法や発電所10によれば、発電用ボイラ2の燃焼室21内で、無機固体燃料(具体的には、マグネシウム、水素化マグネシウム)と、助燃性ガスとしての石炭ガス化ガスと、を燃焼させるようにしているので、発電時に二酸化炭素が発生せず、しかも、マグネシウム資源が循環する資源循環型の火力発電を実現することが可能となる。さらに、実施形態に係る発電方法や発電所10によれば、石炭ガス化発電設備(具体的には、石炭ガス化複合発電設備、石炭ガス化燃料電池複合発電設備)から排出される二酸化炭素を助燃性ガスとして使用して発電することにより、石炭火力発電の環境負荷を大幅に低減させることが可能となる。
【0117】
実施形態に係る発電方法や発電所10によれば、また、石炭火力発電で用いられている機構と同様の機構を利用することができるので、石炭火力発電で培った技術を利用し、二酸化炭素の排出を抑えることが可能となる。
【0118】
実施形態に係る発電方法や発電所10によれば、また、資源再生工程は電力で動く設備だけで構成されているので、いわゆる系統接続ができない余剰電力だけで燃料の再生生産を行うことが可能となる。したがって、資源再生工程が余剰電力を用いて実施されるものとすれば、再生可能エネルギー等の余剰電力の受皿として機能し、一方で、実施形態に係る発電方法や発電所10は、電力の需要と供給とに合わせて需給バランスをとることが可能な慣性力のある発電であるといえる。つまり、再生可能エネルギー等の慣性力のない電力を用いて資源再生工程が行われることで、その慣性力のない電力を慣性力のある電力に変換可能な発電方法であるともいえる。
【0119】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の具体的な構成態様は上記の実施形態に限定されるものではなく、上記の実施形態に、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変形や変更などが加えられた形態も本発明に含まれる。
【0120】
例えば、上記の実施形態では発電所10が石炭ガス化発電設備(具体的には、石炭ガス化複合発電設備100、石炭ガス化燃料電池複合発電設備120)に併設される場合を例に挙げて説明したが、本発明に係る発電設備は石炭ガス化発電設備に併設される態様には限定されない。本発明に係る発電設備は、例えば、石炭ガス化ガスの貯留設備に併設されるようにしてもよい。
【0121】
また、上記の実施形態では粉末燃焼バーナ31を用いる発電用ボイラを例に挙げて説明したが、石炭火力発電にはストーカボイラと呼ばれる、微粉炭バーナを用いずに発電用ボイラの燃焼室が単なる燃焼炉のような構成で常に燃焼が続くように石炭を送り込むだけの構成のものもあり、このような形態に、上記で説明した燃料が用いられるようにしてもよい。この場合には、バーナ火炎として燃焼を持続させるために必要であった微粒化は必要なく、火力を維持するように燃料を供給すればよいだけとなるため、比較的大きいサイズの燃料でよい。そして、マグネシウムであっても500μm程度の粒径であれば消防法上の危険物には該当しないので、マグネシウムの大きさを500μm以上に留めた適当な粗粉砕だけを行い、水素化工程を行わないマグネシウムを燃料とした発電方法としてもよい。つまり、ストーカボイラへと500μm程度の粒径のマグネシウムを供給して本発明に係る発電方法を実施する場合には、資源再生工程は、粗粉砕までを行い、微粉砕工程及び水素化工程は行わないようにしてもよい。
【0122】
また、上記の実施形態では粉末燃焼バーナ31へと供給される無機固体燃料としてマグネシウムが供給されるようにしているが、本発明において粉末燃焼バーナ31へと供給される無機固体燃料は、マグネシウムに限定されるものではなく、リチウム(Li)、ボロン(B)、アルミニウム(Al)であるようにしてもよい。また、複数の物質が無機固体燃料として粉末燃焼バーナ31へと供給されるようにしてもよい。なお、リチウムは、上記の実施形態におけるマグネシウムと同様に、塩素化工程によって塩化物にされてから、溶融塩電界工程によって電気分解されて還元処理される。アルミニウムは、塩素化工程によって塩化物にされることなく、溶融塩電界工程によって電気分解されて還元処理される。
【0123】
また、上記の実施形態では粉末燃焼バーナ31へと供給される助燃性ガスとして石炭ガス化発電設備(具体的には、石炭ガス化複合発電設備100、石炭ガス化燃料電池複合発電設備120)の系統において生じる石炭ガス化ガス(石炭ガス化設備101で製造された石炭ガス化ガスに所定の処理が施されたガスを含み、成分として一酸化炭素や二酸化炭素を含む)が供給されるようにしているが、本発明において粉末燃焼バーナ31へと供給される助燃性ガスは、石炭ガス化発電設備の系統において生じる石炭ガス化ガスに限定されるものではなく、その他の系統で生じたり独自に貯留・貯蔵されたりしている石炭ガス化ガスであるようにしてもよい。
【0124】
また、上記の実施形態では燃焼室21における燃焼による燃焼生成物であるマグネシウムの酸化物(具体的には、酸化マグネシウム)を電気分解で還元処理するようにしているが、本発明における還元処理の仕法は電気分解に限定されるものではなく、他の仕法によって還元処理が行われるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0125】
10 発電所
1 発電機
2 発電用ボイラ
21 燃焼室
22 蒸気タービン
23 配管
24 給水ポンプ
3 燃料貯蔵庫
31 粉末燃焼バーナ
4 補助燃料貯蔵庫
41 補助燃焼バーナ
5 脱硝装置
6 集塵装置
7 燃焼灰貯蔵庫
8 排気管
81 排風装置
9 復水器
100 石炭ガス化複合発電設備
101 石炭ガス化設備
102 ガス精製設備
103 燃焼器
104 ガスタービン
105 発電機
106 排熱回収ボイラ
107 蒸気タービン
108 発電機
109 回収装置
110 圧縮機
120 石炭ガス化燃料電池複合発電設備
121 シフト反応設備
122 分離設備
123 圧縮機
124 燃料電池
125 燃料電池後段燃焼器
300 水素化工程を実施するための装置
310 加熱容器
311 入口
312 加熱部
313 道管部
314 バルブ
315 配管
320 ヒータ
図1
図2
図3
図4