(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167502
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】防災システム
(51)【国際特許分類】
A62C 37/40 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
A62C37/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083613
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】梅原 寛
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189GA01
(57)【要約】
【課題】効率的に消火を行うことが可能となる防災システムを提供すること。
【解決手段】防護対象空間601を防護する防災システム101であって、複数の消火剤散布ヘッド4と、防護対象空間601内での火災時に当該火災の位置を検出する第1火災検出装置1と、火災時に、防護対象空間601内の散布対象領域に対して消火剤散布ヘッド4から消火剤を散布させる制御部と、を備え、制御部は、第1火災検出装置1によって検出された火災の位置に対応する散布対象領域を特定し、当該特定した散布対象領域に対して、対応する消火剤散布ヘッド4から消火剤を散布させる散布制御を行い、火災時に制御部で特定される散布対象領域は、火災の位置に関わらず、領域範囲の中心付近を当該火災の位置として、予め定められた所定の面積を略維持しつつ火災の位置に応じて異なる境界を有する領域である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防護対象空間を防護する防災システムであって、
前記防護対象空間内に設けられている複数の消火剤散布ヘッドと、
前記防護対象空間内での火災時に当該火災の位置を検出する第1火災検出装置と、
火災時に、前記防護対象空間内の散布対象領域に対して前記消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する前記散布対象領域を特定し、当該特定した前記散布対象領域に対して、対応する前記消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる散布制御を行い、
火災時に前記制御手段で特定される前記散布対象領域は、前記火災の位置に関わらず、領域範囲の中心付近を当該火災の位置として、予め定められた所定の面積を略維持しつつ前記火災の位置に応じて異なる境界を有する領域である、
防災システム。
【請求項2】
前記消火剤を複数の前記消火剤散布ヘッドへ供給するための供給配管と、
前記供給配管からの前記消火剤の複数の前記消火剤散布ヘッド各々への供給を個別に制御するための複数の制御弁と、を備え、
前記制御手段は、前記複数の制御弁の内の、前記消火剤を散布させる前記消火剤散布ヘッドへの前記消火剤の供給を制御するための1つ以上の制御弁である対象制御弁を開く制御を、前記散布制御として行う、
請求項1に記載の防災システム。
【請求項3】
前記防護対象空間内での火災を検出する複数の第2火災検出装置、を備え、
前記複数の第2火災検出装置各々は、前記複数の第2火災検出装置各々に対して予め定められている監視対象空間各々を監視し、当該監視対象空間内での火災を検出し、
前記複数の第2火災検出装置各々に予め定められている前記監視対象空間各々は、前記防護対象空間内における相互に異なる一部の空間各々に対応する空間であり、
前記第1火災検出装置は、前記監視対象空間に関わらず前記防護対象空間内での火災を検出し、
前記制御手段は、前記第1火災検出装置が火災を検出し、且つ、前記複数の第2火災検出装置の内の、前記第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する前記監視対象空間を監視している第2火災検出装置が火災を検出した場合に、前記散布制御を行う、
請求項1又は2に記載の防災システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防護対象空間に設けられている複数の消火剤散布ヘッドから、予め定められた防護区画単位で消火剤を一斉に散布して、消火する防災システムが知られていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、防護対象空間における火災の位置を基準にして消火剤を散布して効率的に消火する技術が要望されていた。
【0005】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、効率的に消火を行うことが可能となる防災システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の防災システムは、防護対象空間を防護する防災システムであって、前記防護対象空間内に設けられている複数の消火剤散布ヘッドと、前記防護対象空間内での火災時に当該火災の位置を検出する第1火災検出装置と、火災時に、前記防護対象空間内の散布対象領域に対して前記消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する前記散布対象領域を特定し、当該特定した前記散布対象領域に対して、対応する前記消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる散布制御を行い、火災時に前記制御手段で特定される前記散布対象領域は、前記火災の位置に関わらず、領域範囲の中心付近を当該火災の位置として、予め定められた所定の面積を略維持しつつ前記火災の位置に応じて異なる境界を有する領域である。
【0007】
また、請求項2に記載の防災システムは、請求項1に記載の防災システムにおいて、前記消火剤を複数の前記消火剤散布ヘッドへ供給するための供給配管と、前記供給配管からの前記消火剤の複数の前記消火剤散布ヘッド各々への供給を個別に制御するための複数の制御弁と、を備え、前記制御手段は、前記複数の制御弁の内の、前記消火剤を散布させる前記消火剤散布ヘッドへの前記消火剤の供給を制御するための1つ以上の制御弁である対象制御弁を開く制御を、前記散布制御として行う。
【0008】
また、請求項3に記載の防災システムは、請求項1又は2に記載の防災システムにおいて、前記防護対象空間内での火災を検出する複数の第2火災検出装置、を備え、前記複数の第2火災検出装置各々は、前記複数の第2火災検出装置各々に対して予め定められている監視対象空間各々を監視し、当該監視対象空間内での火災を検出し、前記複数の第2火災検出装置各々に予め定められている前記監視対象空間各々は、前記防護対象空間内における相互に異なる一部の空間各々に対応する空間であり、前記第1火災検出装置は、前記監視対象空間に関わらず前記防護対象空間内での火災を検出し、前記制御手段は、前記第1火災検出装置が火災を検出し、且つ、前記複数の第2火災検出装置の内の、前記第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する前記監視対象空間を監視している第2火災検出装置が火災を検出した場合に、前記散布制御を行う。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の防災システムによれば、第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する散布対象領域を特定し、当該特定した散布対象領域に対して、対応する消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる散布制御を行うことにより、例えば、防護対象空間における火災を効率的に消火することが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の防災システムによれば、供給配管からの消火剤の複数の消火剤散布ヘッド各々への供給を個別に制御するための複数の制御弁を備え、複数の制御弁の内の、消火剤を散布させる消火剤散布ヘッドへの消火剤の供給を制御するための1つ以上の制御弁である対象制御弁を開く制御を行うことにより、例えば、複数の消火剤散布ヘッド各々からの消火剤の散布を確実に制御することができるので、効率的且つ確実に消火することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の防災システムによれば、第1火災検出装置が火災を検出し、且つ、複数の第2火災検出装置の内の、第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する監視対象空間を監視している第2火災検出装置が火災を検出した場合に散布制御を行うことにより、例えば、2種類の火災検出装置を用いて火災を確実に検出することができるので、実際には火災が発生していないにも関わらず消火剤が散布されることを防止することができ、防災システムの信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態に係る防災システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る防災システムの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
〔実施の形態の基本的概念〕
まずは、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態は、概略的に、防災システムに関するものである。
【0015】
ここで、「防災システム」とは、防護対象空間を防護するためのシステムであり、具体的には、防護対象空間内での異常(例えば、火災等)に関する防災を行うためのシステムであり、例えば、火災発生時に消火及び延焼防止する消火用のスプリンクラーに関するシステム等を含む概念である。
【0016】
「防災システム」は、例えば、複数の消火剤散布ヘッド、第1火災検出装置、及び制御手段を備える。また、「防災システム」は、例えば、供給配管、複数の制御弁、及び第2火災検出装置を更に備える。
【0017】
===防護対象空間===
「防護対象空間」とは、防災システムによって防災の対象となる空間であり、具体的には、異常(例えば、火災等)が発生し得る一定の広がりをもった三次元空間であり、例えば、建物の内外の空間を含む概念であり、一例としては、吹き抜け等の高天井部分(高天井通路等を含む)、アトリウム、部屋、廊下、又は階段室等を含む概念である。
【0018】
===複数の消火剤散布ヘッド===
「複数の消火剤散布ヘッド」とは、防護対象空間内に消火剤を散布する機器であり、具体的には、防護対象空間に設けられている複数の機器であり、例えば、複数のスプリンクラーヘッドヘッド等を含む概念である。
【0019】
===消火剤===
「消火剤」とは、消火の目的で使用される物質であり、例えば、消火用の水又は水溶液等を含む概念であり、例えば、液体上のもの又は泡状のもの等を含む概念である。
【0020】
===第1火災検出装置===
「第1火災検出装置」とは、少なくとも、防護対象空間内での火災時に当該火災の位置を検出するための装置であり、具体的には、防護対象空間内での火災を検出するための装置であり、また、第2火災検出装置の監視対象空間(後述)に関わらず防護対象空間内での火災を検出する装置等を含む概念である。
【0021】
「第1火災検出装置」としては、例えば、走査型火災検出器を用いることができるが、上記の定義に該当する限りにおいて、任意の他の装置(例えば、カメラ等の任意の撮像装置等)を用いることもできる。
【0022】
===第2火災検出装置===
「第2火災検出装置」とは、防護対象空間内での火災を検出するための装置であり、具体的には、防護対象空間に複数設けられている装置であり、例えば、第2火災検出装置に対して個別に設定されている監視対象空間を監視し、当該監視対象空間内の火災を検出する装置である。
【0023】
「第2火災検出装置」としては、例えば、炎感知器を用いることができるが、上記の定義に該当する限りにおいて、任意の他の装置(例えば、煙感知器、熱感知器、又はガス感知器等)を用いることもできる。
【0024】
===監視対象空間===
「監視対象空間」とは、各第2火災検出装置によって監視される対象となる空間であり、具体的には、防護対象空間内の少なくとも一部の空間に対応する三次元空間であり、例えば、建物の内外の空間を含む概念であり、一例としては、吹き抜け等の高天井部分(高天井通路等を含む)、アトリウム、部屋、廊下、又は階段室等を含む概念である。また、例えば、複数の第2火災検出装置各々に予め定められている「監視対象空間」各々は、防護対象空間内における相互に異なる一部の空間各々に対応する空間である。
【0025】
なお、各第2火災検出装置における監視対象空間の設定手法は任意であり、例えば、第2火災検出装置の機能を利用して設定してもよいし、仕切材(各監視対象空間を物理的に仕切るための部材)等を用いて設定してもよいし、あるいは、各第2火災検出装置の設置位置を調整することにより設定してもよい。
【0026】
===制御手段===
「制御手段」とは、火災時に、防護対象空間内の散布対象領域に対して消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる制御手段であり、具体的には、第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する散布対象領域を特定し、当該特定した散布対象領域に対して、対応する消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる散布制御を行う手段である。
【0027】
また、「制御手段」とは、例えば、複数の制御弁の内の、消火剤を散布させる消火剤散布ヘッドへの消火剤の供給を制御するための1つ以上の制御弁である対象制御弁を開く制御を、散布制御として行う手段である。また、「制御手段」とは、例えば、第1火災検出装置が火災を検出し、且つ、複数の第2火災検出装置の内の、第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する監視対象空間を監視している第2火災検出装置が火災を検出した場合に、散布制御を行う手段である。
【0028】
===散布対象領域===
「散布対象領域」とは、消火剤散布ヘッドから消火剤が散布される防護対象空間内の領域であり、具体的には、火災の位置に対応する領域であり、例えば、消火剤が到達する部分における領域を示す概念であり、一例としては、床面の領域又は地面の領域等を示す概念である。また、例えば、相互に段差が存在する複数の床面が存在する場合は、一番低い部分に一面として構成された床面の領域が「散布対象領域」に対応するものと解釈してもよい。
【0029】
また、火災時に制御手段で特定される「散布対象領域」は、火災の位置に関わらず予め定められた所定の面積を略維持しつつ火災の位置に応じて異なる境界を有する領域であるものと解釈してもよい。具体的には火災時に制御手段で特定される「散布対象領域」は、例えば、領域範囲の中心付近を火災の位置とした領域を示す概念に対応するものと解釈してもよく、あるいは、領域範囲の中心付近以外の任意の位置を火災の位置とした領域を示す概念に対応するものと解釈してもよい。なお、「領域範囲の中心付近を火災の位置とした領域」とは、例えば、散布対象領域の中心付近が火災の位置となるように特定された当該散布対象領域を示すものと解釈してもよい。なお、「所定の面積」の値は任意であるが、例えば、防災に関するルール等を考慮して設定してもよく、あるいは、他のルール又は基準を考慮して設定してもよく、一例としては、100平方メートル~120平方メートル等に設定してもよい。
【0030】
===供給配管及び複数の制御弁===
「供給配管」とは、消火剤を複数の消火剤散布ヘッドへ供給するための配管を示す概念である。「複数の制御弁」とは、供給配管からの消火剤の複数の消火剤散布ヘッド各々への供給を個別に制御するための複数の機器を示す概念である。
【0031】
そして、以下の実施形態では、「防護対象空間」が建物内の高天井通路に対応する空間である場合を例示して説明する。
【0032】
[実施の形態の具体的内容]
次に、実施の形態の具体的内容について説明する。
【0033】
(構成)
まず、本実施の形態に係る防災システムの構成について説明する。
図1は、本実施の形態に係る防災システムを示す図であり、
図2は、防災システムの一部を示す詳細図である。
【0034】
なお、
図1においては、防災システム101の各構成要素と、防護対象空間601の一部とが図示されている。
図1の防護対象空間601については、説明の便宜上、簡易的に図示されている(他の各図でも同様)。
【0035】
また、防災システム101に設けられる個別制御弁3及び消火剤散布ヘッド4の個数は任意であるが、本実施の形態では、
図2に示す7個ずつの各構成要素に着目して説明する。また、個別制御弁3各々及び各消火剤散布ヘッド4各々を相互に区別する必要がある場合は、個別制御弁31~37及び消火剤散布ヘッド41~47と称して説明し、また、相互に区別する必要がない場合は、個別制御弁3及び消火剤散布ヘッド4と総称して説明する。
【0036】
ここでは、防護対象空間601について説明した後に、防災システム101について説明する。
【0037】
(構成-防護対象空間)
防護対象空間601は、前述の防護対象空間であり、例えば、建物内の高天井通路に対応する空間である。また、防護対象空間601は、実際には三次元的な広がりを有する空間であるが、説明の便宜上、側方(水平方向)が見た状態を図示して説明する。
【0038】
また、防護対象空間601における図面下側が垂直方向における下側に対応し、図面上側が垂直方向における上側に対応するものとして説明する。すなわち、例えば、
図1に示すように、防護対象空間601における図面上側の面が、防護対象空間601の天井面に対応し、防護対象空間601における図面下側の面が、防護対象空間601の床面に対応するものとして説明する。
【0039】
そして、この防護対象空間601の床面上の領域を防護対象領域A601と称して説明する。また、以下の説明では、「領域」という用語については、三次元空間における床面上の二次元の領域を示す場合に適宜用いることとする。
【0040】
なお、実際には、第1火災検出装置1及び消火剤散布ヘッド4は、防護対象空間601内における天井面自体又は天井面に近い壁面に設けられているが、各図は、説明の便宜上、防護対象空間601よりも上側に図示されている。なお、以下の説明では、天井面自体又は天井面に近い壁面を、「天井面側」とも称する。
【0041】
(構成-防災システム)
防災システム101は、防護対象空間601を防護するためのシステムであり、例えば、火災を消火する消火用のスプリンクラーに関するシステムである。防災システム101は、
図1に示すように例えば、第1火災検出装置1、供給配管21、貯留槽22、ポンプ23、起動弁24、起動弁用モータ25、一斉開放弁26、個別制御弁3、消火剤散布ヘッド4、及び防災受信盤5を備える。
【0042】
(構成-防災システム-第1火災検出装置)
図1の第1火災検出装置1は、防護対象空間601内で発生する火災を検出し、また、火災時に火災の位置を検出する装置であり、例えば、防護対象空間601内における天井面側に固定されて設けられている装置である。第1火災検出装置1は、例えば、通信線を介して防災受信盤5に接続されており、当該防災受信盤5と通信可能となっている。この第1火災検出装置1の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、公知の走査型火災検出器を用いる場合について説明する。
【0043】
(構成-防災システム-供給配管)
図1の供給配管21は、消火剤を消火剤散布ヘッド4へ供給するための配管であり、例えば、貯留槽22側から消火剤散布ヘッド4側に延在している配管である。
【0044】
(構成-防災システム-貯留槽)
図1の貯留槽22は、消火剤が貯留されている比較的大きな入れ物(タンク等)である。なお、本実施の形態では、消火剤としては、例えば、消火用の水又は水溶液を用いる場合について説明する。
【0045】
(構成-防災システム-ポンプ)
図1のポンプ23は、貯留槽22に貯められている消火剤をくみ上げて、供給配管21を介して、消火剤散布ヘッド4へ供給するためのポンプである。このポンプ23は、例えば、通信線を防災受信盤5に接続されており、当該防災受信盤5によって起動又は停止が制御可能となっている。
【0046】
(構成-防災システム-起動弁)
図1の起動弁24は、一斉開放弁26を開くために、当該一斉開放弁26を加圧するための弁である。
【0047】
(構成-防災システム-起動弁用モータ)
図1の起動弁用モータ25は、起動弁24を開閉するためのモータである。この起動弁用モータ25は、例えば、通信線を防災受信盤5に接続されており、当該防災受信盤5によって起動又は停止が制御可能となっている。
【0048】
(構成-防災システム-一斉開放弁)
図1の一斉開放弁26は、供給配管21における所定位置を開閉する弁であり、一次側(貯留槽22側)と二次側(個別制御弁3側)との間を閉じて一次側から二次側への消火剤の供給を不可能にしたり、一次側と二次側との間を開いて一次側から二次側への消火剤の供給を可能にしたりする機器である。
【0049】
この一斉開放弁26の具体的な種類や構成は任意であり、例えば、加圧型の機器又は減圧型の機器を用いることができるが、本実施の形態では、加圧側の機器を用いる場合について説明する。
【0050】
(構成-防災システム-個別制御弁)
図1及び
図2の個別制御弁3は、供給配管21からの消火剤の複数の消火剤散布ヘッド4各々への供給を個別に制御するための複数の制御弁であり、例えば、複数の消火剤散布ヘッド4各々に対して、消火剤の供給を行うか否かを個別に制御する機器である。この個別制御弁3は、例えば、通信線を防災受信盤5に接続されており、当該防災受信盤5によって制御可能となっている。
【0051】
図3は、個別制御弁の断面側面図である。なお、
図3の(a)は、閉じた状態が図示されており、また、
図3の(b)は、開いた状態が図示されている。また、
図3の(a)及び(b)においては、詳細構造の図示は省略されており、また、駆動部305及び制御部306は簡略化して図示されている。また、
図3の(b)には、消火剤の流れの一部が矢印で図示されている。
【0052】
図1及び
図2の個別制御弁3の具体的な種類や構成は任意であり、
図3に示すように例えば、筐体部301、第1開口部302(
図3の(b))、第2開口部303、開閉部材304、駆動部305、及び制御部306を備える。
【0053】
(構成-防災システム-個別制御弁-筐体部)
図3の筐体部301は、例えば、内部に消火剤の流路が形成されており、また、開閉部材304を収容している構成要素である。
【0054】
(構成-防災システム-個別制御弁-第1開口部)
図3の(b)の第1開口部302は、例えば、筐体部301の内部の中空部への消火剤の入口となる開口部であり、供給配管21と連通している。この第1開口部302は、開閉部材304によって開閉される。
【0055】
(構成-防災システム-個別制御弁-第2開口部)
図3の第2開口部303は、例えば、筐体部301の内部の中空部からの消火剤の出口となる開口部であり、ヘッド側配管21Aと連通している。なお、ヘッド側配管21Aとは、消火剤を各個別制御弁3から各消火剤散布ヘッド4に供給するための配管であり、各個別制御弁3と各消火剤散布ヘッド4との間に設けられている配管である。
【0056】
(構成-防災システム-個別制御弁-開閉部材)
図3の開閉部材304は、第1開口部302(
図3の(b))を開閉するための部材であり、駆動部305によって、閉塞位置(
図3の(a)に示すように第1開口部302を閉塞して閉じる位置)、又は、開放位置(
図3の(b)に示すよう第1開口部302を開放して開く位置)に移動されるように構成されている。
【0057】
そして、開閉部材304が閉塞位置(
図3の(a))に移動した場合、第1開口部302が閉じて、個別制御弁3の一次側(供給配管21側)から二次側(ヘッド側配管21A側)に消火剤を供給不可能な状態となる。また、開閉部材304が開放位置(
図3の(b))に移動した場合、第1開口部302が開いて、個別制御弁3の一次側(供給配管21側)から二次側(ヘッド側配管21A側)に消火剤を供給可能な状態となる
【0058】
(構成-防災システム-個別制御弁-駆動部)
図3の駆動部305は、開閉部材304を閉塞位置(
図3の(a))又は開放位置(
図3の(b))に移動させる駆動手段であり、例えば、モータ等を用いて構成することができる。
【0059】
(構成-防災システム-個別制御弁-制御部)
制御部306は、個別制御弁3を制御するための制御手段である。この制御部306の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、各種処理を行うCPU、及び、各種情報を格納するメモリ等を備えて構成された制御回路基板を用いることができる。
【0060】
この制御部306は、例えば、通信線を介して防災受信盤5に接続されており、当該防災受信盤5によって制御可能となっている。また、制御部306は、電源線が接続されており、この電源線から供給された電力を用いて、駆動部305を動作させることが可能となっている。
【0061】
なお、電源線については、
図1の防災受信盤5に接続することにより、防災受信盤5から電力が供給されるように構成してもよいし、あるいは、防災受信盤5の他の電源装置に接続することにより、他の電源装置から電力が供給されるように構成してもよい。
【0062】
(構成-防災システム-消火剤散布ヘッド)
図1及び
図2の消火剤散布ヘッド4は、防護対象空間601内に消火剤を散布する散布手段であり、前述した通り各図では不図示であるが、例えば、防護対象空間601内に設けられている機器である。また、消火剤散布ヘッド4は、供給配管21、個別制御弁3、及びヘッド側配管21A(
図3)を介して供給された消火剤を、防護対象空間601に散布する。
【0063】
この消火剤散布ヘッド4の具体的な種類や構成は任意であり、例えば、公知の消火用のスプリンクラーヘッドと同様にして構成することができる。ここでは、本願の特徴に関連する事項のみを詳細に説明する。
【0064】
図4は、消火剤散布ヘッドの説明図である。なお、
図4の(a)及び(b)においては、防護対象領域A601の平面図(垂直方向において上側から下側に向かって見た場合の図)が図示されている。また、
図4においては、天井面自体又は天井面に近い壁面に設置されている状態の各消火剤散布ヘッド4が、説明の便宜上、三角形で図示されている。また、
図4の(a)では、個別散布可能領域(後述)が図示されておらず、一方で、
図4の(b)では、個別散布可能領域が図示されている。
【0065】
図2及び
図4の各消火剤散布ヘッド4は、防護対象空間601(
図1)全体(詳細には防護対象空間601の床面である防護対象領域A601全体)に消火剤を散布可能となるように構成及び配置されている。
【0066】
(構成-防災システム-消火剤散布ヘッド-個別散布可能領域)
図2及び
図4の各消火剤散布ヘッド4は、防護対象空間601に設置されて固定されているので、各消火剤散布ヘッド4が消火剤を散布可能な空間及び領域は、個別に予め設定されている
【0067】
この各消火剤散布ヘッド4に予め個別に設定されている消火剤を散布可能な空間を「個別散布可能空間」と称し、また、各消火剤散布ヘッド4に予め個別に設定されている消火剤を散布可能領域(つまり、個別散布可能空間内の床面に対応する領域)を「個別散布可能領域」と称して説明する。そして、この場合、例えば、「個別散布可能空間」は、防護対象空間601における一部の空間を示し、また、「個別散布可能領域」は、防護対象領域A601における一部の領域を示すものと言える。また、「個別散布可能領域」は、例えば、1個の消火剤散布ヘッド4の有効放水範囲に対応する概念であるものと解釈することもできる。
【0068】
本実施の形態では、例えば、
図4の(b)の消火剤散布ヘッド41に対して、個別散布可能領域A61が設定されていることとする。つまり、例えば、消火剤散布ヘッド41に対応する個別制御弁31(
図2)側から消火剤が供給された場合、消火剤散布ヘッド41は、個別散布可能領域A61に対して消火剤を散布することになる。また、例えば、
図4の(b)の消火剤散布ヘッド42~47に対して、個別散布可能領域A62~A67が設定されていることとする。つまり、例えば、消火剤散布ヘッド42~47に対応する個別制御弁32~37(
図2)側から消火剤が供給された場合、消火剤散布ヘッド42~47各々は、個別散布可能領域A62~A67各々に対して消火剤を散布することになる。
【0069】
また、本実施の形態では、最低防護面積が設定されており、当該最低防護面積が100平方メートルに定められている場合を例示して説明する。「最低防護面積」とは、所定の面積であり、例えば、火災が発生した場合に消火剤を散布する必要がある防護対象領域A601内の最低の面積を示す概念である。すなわち、本実施の形態では、火災が発生した場合、防護対象領域A601内の火災が発生した位置に対応する100平方メートル以上の面積に対応する領域に消火剤を散布することが、定められている場合について説明する。
【0070】
そして、各個別散布可能領域A61~A67A等の面積は任意であるが、例えば、相互に略同一の面積であり、奥行き3m(
図4の(b)の図面上下方向)×幅8.5m(
図4の(b)の図面左右方向)=25.5m
2に設定されていることとして説明する。すなわち、連続して隣り合う4個の個別散布可能領域に消火剤を散布することにより、最低防護面積よりも僅かいに広い面積である102m
2に消火剤を散布することが可能となる。
【0071】
また、
図4に示すように、相互に隣接している個別散布可能領域(例えば、個別散布可能領域A61及びA62等)における相互に隣合う境界は一致しているので、消火剤散布ヘッド4を用いて、あらゆる位置に対して、消火剤を確実に散布することが可能となる。
【0072】
(構成-防災システム-防災受信盤)
図5は、防災受信盤を示すブロック図である。
図1の防災受信盤5は、各構成要素と通信して防災に関する各種制御を行う装置である。防災受信盤5は、
図5に示すように例えば、通信部51、記録部52、及び制御部53を備える。
【0073】
(構成-防災システム-防災受信盤-通信部)
図5の通信部51は、外部装置(例えば、第1火災検出装置1、ポンプ23、起動弁用モータ25、及び個別制御弁3等)との間で通信を行う通信手段である。
【0074】
(構成-防災システム-防災受信盤-記録部)
図5の記録部52は、防災受信盤5の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体(フラッシュメモリ等)を用いることができる。
【0075】
(構成-防災システム-防災受信盤-制御部)
【0076】
制御部53は、防災受信盤5を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、実施の形態に係る制御プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して防災受信盤5にインストールされることで、制御部53の各部を実質的に構成する。
【0077】
この制御部53は、機能概念的に、火災時に、防護対象空間601内の散布対象領域に対して消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる制御手段として機能する。なお、制御手段の定義については、前述したので、ここでの説明は省略する。
【0078】
(処理)
次に、このように構成される防災システム101によって実行される防災処理について説明する。
図6は、防災処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。
図7は、防災処理の説明図である。なお、
図7の(a)及び(b
)においては、基本的には、
図4の(b)の構成要素と同様な構成要素が図示されている。
【0079】
防災システム101に関する「防災処理」とは、防護対象空間601で発生した火災の消火及び延焼の防止を行う処理であり、例えば、防災受信盤5によって実行される処理である。この防災処理を実行するタイミングは任意であり、例えば、防災システム101の各装置の電源をオンした場合に実行を開始することとし、当該処理の実行が開始されたところから説明する。
【0080】
ここでは、例えば、
図7の(a)に示す火源F1の位置で火災が発生した場合を例示して説明する。また、最初は、
図1の一斉開放弁26及び個別制御弁3は、閉じているものとして説明する。
【0081】
===SA1===
図6のSA1において、防災受信盤5の制御部53は、火災が発生したか否かを判定する。具体的には任意であるが、例えば、
図1の第1火災検出装置1が、垂直方向及び水平方向にて走査して火炎から放射される赤外線を検出する動作を行うことにより、火災に起因する炎及び当該炎の位置の検出を試みる処理を繰り返し行っていることとする。そして、第1火災検出装置1は、火災に起因する炎に対応するエネルギー量の赤外線を検出した場合、火災を検出し、また、当該赤外線を検出した垂直方向及び水平方向の角度を火災の位置として検出した上で、火災を検出した旨を示す火災検出情報と、当該検出した火災の位置に対応する垂直方向及び水平方向の角度を示す火災角度情報とを含む第1火災検出信号を、防災受信盤5に送信する。なお、第1火災検出装置1は、火災を検出していない場合、第1火災検出信号は送信しないこととする。
【0082】
一方、防災受信盤5の制御部53は、第1火災検出信号を第1火災検出装置1から受信していない場合、火災が発生していないものと判定し(SA1のNO)、火災が発生したものと判定するまで、SA1を繰り返し実行する。また、防災受信盤5の制御部53は、第1火災検出信号を第1火災検出装置1から受信した場合、火災が発生したものと判定し(SA1のYES)、SA2に移行する。
【0083】
ここでは、
図7の(a)に示すように例えば、防護対象空間601(つまり、防護対象領域A601)内の火源F1で火災が発生した場合、
図1の第1火災検出装置1は、火源F1で発生した火災の炎に関して、火災に起因する炎に対応するエネルギー量の赤外線を検出することになる。よって、第1火災検出装置1は、火災を検出し、また、自己が設置されて固定されている位置(防護対象空間601内における天井面側の所定位置)を基準とした
図7の(a)の火源F1の垂直方向及び水平方向の角度を火災の位置として検出した上で、火災を検出した旨を示す火災検出情報と、当該検出した火災の位置に対応する垂直方向及び水平方向の角度を示す火災角度情報とを含む第1火災検出信号を、防災受信盤5に送信する。
【0084】
一方、防災受信盤5の制御部53は、第1火災検出信号を第1火災検出装置1から受信するので、火災が発生したものと判定し(SA1のYES)、SA2に移行する。
【0085】
===SA2===
図6のSA2において、防災受信盤5の制御部53は、防護対象空間601(つまり、防護対象領域A601)内にて火災の位置を特定する。具体的には任意であるが、例えば、記録部52に対して、防護対象空間特定用情報、及び火災位置特定用情報が格納されていることとし、これらの情報に基づいて特定する。
【0086】
=防護対象空間特定用情報=
「防護対象空間特定用情報」とは、防災受信盤5側において防護対象空間601(
図1)を特定又は把握するための情報である。防護対象空間特定用情報の具体的な内容は任意であるが、例えば、任意の三次元座標系(例えば、X軸、Y軸、及びX軸の三次元直交座標系)を基準とした座標を利用する情報を用いてもよいし、他のものを用いてもよい。なお、当該座標を利用する情報を用いる場合、一例としては、座標の値である「1」を実環境下での例えば「1mm」に対応するように構成することにより、座標から面積を演算可能となるように構成してもよい。
【0087】
=火災位置特定用情報=
「火災位置特定用情報」とは、防災受信盤5側において第1火災検出装置1が検出した火災の位置を特定するための情報である。火災位置特定用情報の具体的な内容は任意であるが、例えば、防護対象空間601の形状及びサイズは予め定められており、また、第1火災検出装置1が防護対象空間601内における天井面側の所定位置に固定されているので、この固定されている位置を基準とした垂直方向及び水平方向の角度に基づいて、防護対象空間601内の位置を特定可能である点を考慮して、以下の情報を用いてもよい。
【0088】
例えば、第1火災検出装置1が固定されている位置を基準とした垂直方向及び水平方向の角度を、当該垂直方向及び水平方向の角度に対応する防護対象領域A601上の位置を示す情報(例えば、防護対象空間特定用情報と同じ座標系の座標等)に変換するための情報(例えば、変換するためのテーブル情報、又は、変換するための演算式等)を火災位置特定用情報として用いる場合を例示して説明する。
【0089】
なお、第1火災検出装置1が複数台設けられている場合、各第1火災検出装置1に対応する火災位置特定用情報が格納されており、各第1火災検出装置1に対応する火災位置特定用情報を用いて処理することになる。
【0090】
=処理=
図6のSA2の処理について具体的には、防災受信盤5の制御部53は、SA1で受信した火災発生信号に含まれている火災角度情報(つまり、火災の位置に対応する垂直方向及び水平方向の角度を示す情報)を取得し、記録部52の火災位置特定情報を用いて、当該取得した火災角度情報が示す火災の位置に対応する垂直方向及び水平方向の角度を、防護対象空間601における防護対象領域A601上の位置を示す情報(例えば、防護対象空間特定用情報と同じ座標系の座標等)に変換することにより、当該変換された情報が示す位置を火災の位置として特定する。
【0091】
ここでは、例えば、SA1で受信した火災発生信号に含まれている火災角度情報は、
図7の(a)の火源F1の位置に対応する垂直方向及び水平方向の角度を示しているので、
図7の(a)の火源F1の位置を火災の位置として特定する。
【0092】
===SA3===
図6のSA3において、防災受信盤5の制御部53は、散布対象領域を特定する。「散布対象領域」の定義は前述の通りであり、すなわち、消火剤散布ヘッド4から消火剤が散布される防護対象空間601内の領域である。処理について具体的には任意であるが、例えば、延焼を防止しつつ確実に消火する観点から、以下の前提の基で処理を行う。
【0093】
=前提=
例えば、
図7の(a)の各消火剤散布ヘッド4に対して、各消火剤散布ヘッド4を一意に識別するためのヘッド識別情報(以下、「識別情報」を単にIDとも称する)が定められていることとする。具体的には、
図7の(a)に示す消火剤散布ヘッド41~47に対して、ヘッドIDとして、「ID41」~「ID47」が定められていることとする。
【0094】
そして、各消火剤散布ヘッド4を示す各ヘッドIDと、対応する各消火剤散布ヘッド4の個別散布可能領域とを特定する情報である「個別散布可能領域特定情報」が防災受信盤5の記録部52に記録されていることとし、当該個別散布可能領域特定情報を参照することにより、各消火剤散布ヘッド4に対応する個別散布可能領域の位置、広さ、及び範囲を防災受信盤5側で特定可能となっていることとする。すなわち、例えば、
図7の(a)の消火剤散布ヘッド41~47各々の個別散布可能領域が、
図7の(a)の個別散布可能領域A61~A67各々であること等が特定可能となっていることとする。
【0095】
=処理=
図6のSA3の処理について具体的には任意であるが、防災受信盤5の制御部53は、防護対象空間601(つまり、防護対象領域A601)において、SA2で特定した火災の位置に基づいて、前述の最低防護面積以上の面積となる散布対象領域を特定する。より具体的には、例えば、必要且つ十分な量の消火剤を散布して効率的に消火する観点から、最低防護面積よりも僅かいに広い面積となる連続配置されている4個分の個別散布可能領域を散布対象領域として特定するものとして説明する。
【0096】
処理について詳細には、記録部52の個別散布可能領域特定情報を参照して、SA2で特定した火災の位置を基準とした4個の連続して配置されている個別散布可能領域を選択し、選択した4個の個別散布可能領域からなる領域を、散布対象領域として特定する。
【0097】
「SA2で特定した火災の位置を基準とした4個の連続して配置されている個別散布可能領域」とは、例えば、少なくとも火災の位置を含む4個の連続して配置されている個別散布可能領域を示す概念である。
【0098】
ここでは、例えば、SA2において
図7の(a)の火源F1の位置を火災の位置として特定したので、まず、当該火災の位置を含む個別散布可能領域A63を1個目の個別散布可能領域として選択し、また、この個別散布可能領域A63の両側の個別散布可能領域A62及びA64を、2個目及び3個目の個別散布可能領域として選択する。次に、4個目の個別散布可能領域としては、個別散布可能領域A62に連続する個別散布可能領域A61又は個別散布可能領域A65の何れかを選択することになるが、火災の位置(火源F1の位置)が、個別散布可能領域A63の幅方向(
図7の(a)の図面左右方向)において当該の個別散布可能領域A63の中心よりも個別散布可能領域A64側となっているので、個別散布可能領域A64Aに連続する個別散布可能領域A65を、4個目の個別散布可能領域として選択する。そして、
図7の(b)にハッチングで示すように、この選択した個別散布可能領域A62~A65からなる領域を、散布対象領域A603として特定する。
【0099】
なお、この散布対象領域A603については、4個目の個別散布可能領域として、個別散布可能領域A61を選択した場合に比べて、火災の位置が散布対象領域A603の中心(ここでは個別散布可能領域A62~A65の並び方向に沿う方向における中心の意味である)寄りの位置(中心付近)になるので、消火及び延焼防止を、より効率的且つ確実に行うことが可能となる。
【0100】
===SA4===
図6のSA4において、防災受信盤5の制御部53は、SA3で特定した散布対象領域A603に対して、消火剤散布ヘッド4から消火剤を散布させる。具体的には任意であるが、例えば、以下の前提の基で処理を行う。
【0101】
=前提=
例えば、
図2の各消火剤散布ヘッド4に対応する各個別制御弁3における制御部306(
図3)のメモリに対して、各個別制御弁3に対応する各消火剤散布ヘッド4を識別するヘッドIDが格納されていることとする。すなわち、例えば、
図7の(b)及び
図2の消火剤散布ヘッド41~47に対応する個別制御弁31~37各々における制御部306(
図3)のメモリに対して、「ID41」~「ID47」が格納されていることとする。
【0102】
=処理=
SA4の処理について具体的には任意であるが、防災受信盤5の制御部53は、例えば、以下の第1ステップ~第2ステップを行う。
【0103】
<第1ステップ>
第1ステップにおいて防災受信盤5の制御部53は、消火剤を散布させる対象となる消火剤散布ヘッド4を特定する。具体的には、記録部52に記録されている個別散布可能領域特定情報(各消火剤散布ヘッド4を示す各ヘッドIDと、対応する各消火剤散布ヘッド4の個別散布可能領域とを特定する情報)を参照して、SA3で特定した散布対象領域A603に含まれる領域が個別散布可能領域となっている消火剤散布ヘッド4を特定する。
【0104】
ここでは、例えば、SA3で個別散布可能領域A62~A65(
図7の(b))を統合した領域である散布対象領域A603を特定したので、ヘッドIDである「ID42」~「ID45」が示す消火剤散布ヘッド42~45を、消火剤を散布させる対象となる消火剤散布ヘッド4として特定する。
【0105】
<第2ステップ>
第2ステップにおいて防災受信盤5の制御部53は、第1ステップで特定した消火剤散布ヘッド4から消火剤を散布せる。具体的には、ポンプ起動命令信号、一斉開放弁開放命令信号、及び個別制御弁開放命令信号を送信することにより、第1ステップで特定した消火剤散布ヘッド4から消火剤を散布せる。
【0106】
=ポンプ起動命令信号=
「ポンプ起動命令信号」とは、
図1のポンプ23を起動するための信号であり、例えば、ポンプ23に対して送信される信号である。ポンプ23は、ポンプ起動命令信号を受信した場合に起動する。
【0107】
=一斉開放弁開放命令信号=
「一斉開放弁開放命令信号」とは、
図1の一斉開放弁26を開放するための信号であり、例えば、起動弁用モータ25に対して送信される信号である。起動弁用モータ25は、一斉開放弁開放命令信号を受信した場合に、起動して起動弁24を開くことにより、一斉開放弁26を加圧して開放する。
【0108】
=個別制御弁開放命令信号=
「個別制御弁開放命令信号」とは、第1ステップで特定した消火剤散布ヘッド4から消火剤を散布させるために、当該第1ステップで特定した消火剤散布ヘッド4への消火剤の供給を制御する個別制御弁3(対象制御弁)を開放するために、当該個別制御弁3に対して送信される信号である。この個別制御弁開放命令信号の具体的な構成は任意であるが、例えば、第1ステップで特定した消火剤散布ヘッド4を示すヘッドIDを含む信号を用いる場合について説明する。
【0109】
そして、各個別制御弁3の制御部306のCPUは、個別制御弁開放命令信号を受信した場合に、個別制御弁開放命令信号に含まれるヘッドIDと、自己のメモリに記録されているヘッドIDとを比較し、これらのヘッドIDが相互に一致している場合に、自己に対する個別制御弁開放命令信号を受信したものと判定した上で、
図3の駆動部305を動作させることにより、開閉部材304を開放位置(
図3の(b))に移動させて、開放する。一方で、個別制御弁開放命令信号に含まれるヘッドIDと、自己のメモリに記録されているヘッドIDとが相互に一致していない場合、自己に対する個別制御弁開放命令信号を受信したわけではないものと判定した上で、
図3の駆動部305を動作させずに、開閉部材304を閉塞位置(
図3の(a))に維持して、閉じた状態を維持する。
【0110】
=処理例=
ここでは、例えば、第1ステップで消火剤散布ヘッド42~45を特定したので、ポンプ起動命令信号、一斉開放弁開放命令信号、及び、「ID42」~「ID45」を含む個別制御弁開放命令信号を送信する。
【0111】
そして、
図1のポンプ23は、ポンプ起動命令信号を受信して起動し、また、起動弁用モータ25は、一斉開放弁開放命令信号を受信して一斉開放弁26を開放する。
【0112】
この場合、貯留槽22に貯められている消火剤は、ポンプ23によって供給配管21に供給され、開放されて開いている一斉開放弁26を介して、各個別制御弁3側に供給される。
【0113】
また、
図2の個別制御弁31~37の内の個別制御弁32~35は、自己に対する個別制御弁開放命令信号を受信したものと判定した上で、
図3の駆動部305を動作させることにより、開閉部材304を開放位置(
図3の(b))に移動させて、開放する。一方、個別制御弁31、36~37等は、自己に対する個別制御弁開放命令信号を受信したわけではないものと判定した上で、
図3の駆動部305を動作させずに、開閉部材304を閉塞位置(
図3の(a))に維持して、閉じた状態を維持する。
【0114】
この場合、一斉開放弁26を介して各個別制御弁3側に供給された消火剤は、個別制御弁32~35において、
図3の(b)の矢印で示すように、供給配管21からヘッド側配管21Aに供給された後、
図7の(b)の消火剤散布ヘッド42~45から個別散布可能領域A62~A65(つまり、散布対象領域A603全体)に散布される。そして、火源F1で発生した火災は、この散布された消火剤によって確実に延焼が防止され、また、確実に消火されることになる。
【0115】
なお、この場合、個別制御弁31、36~37は、
図3の(a)に示すように閉じているので、一斉開放弁26を介して各個別制御弁3側に供給された消火剤は、消火剤散布ヘッド41、46~47等からは散布されないことになる(つまり、消火剤は、
図7の(b)の個別散布可能領域A61、A66~A67等には散布されないことになる)。これにて、防災処理を終了する。
【0116】
(散布対象領域の面積)
なお、上述の防災処理に関して、
図7の(b)の火源F1の位置以外の他の位置で火災が発生した場合においても、火災の位置が中心付近となる4個の連続して配置されている個別散布可能領域からなる領域を、散布対象領域として特定することになるので、散布対象領域は所定の面積以上に維持(つまり、所定の面積に略維持)され、また、火災の位置に応じて異なる境界を有することになる。
【0117】
(従来の技術との比較)
図8は、従来の技術の説明図である。
図8においては、
図7の(b)と同様に、防護対象領域A801、消火剤散布ヘッド80~87等、個別散布可能領域A80~A87等が図示されている。
【0118】
従来の防災システムにおいては、
図8に示すように、予め防護区画A~C等が固定して設定されており、防護区画単位で防護するように構成されている。これらの防護区画A~Cは、例えば、延焼防止の観点から、端の一部同士が相互に重複して設定されている。そして、例えば、
図8の火源F11で火災が発生した場合、防護区画Bを防護するために、消火剤散布ヘッド80~85の6個の消火剤散布ヘッドから消火剤を散布する必要があり、比較的大量の消火剤が必要となっていた。
【0119】
一方で、本願発明においては、
図7の(b)等で説明したように、火災の位置が中心付近となるように散布対象領域を定めることができるので、例えば、4個の消火剤散布ヘッド4からの消火剤の散布により、火災を確実に防護することが可能となる。すなわち、本願発明においては、従来の防災システムで用いる消火剤の量よりも少ない量の消火剤を用いて、火災を確実に防護することが可能となる場合がある点において優位であるとも言える。
【0120】
(実施の形態の効果)
このように本実施の形態によれば、第1火災検出装置1によって検出された火災の位置に対応する散布対象領域を特定し、当該特定した散布対象領域に対して、対応する消火剤散布ヘッド4から消火剤を散布させる散布制御を行うことにより、例えば、防護対象空間601における火災を従来に比べ少量の散水で効率的に抑制、消火することが可能となり、延焼防止も可能となる。なお、実際の適用対象やシステム設計等によって幅が有るものの、従来に比べ10~50%程度散水量を低減できることがわかっている。
【0121】
また、供給配管21からの消火剤の複数の消火剤散布ヘッド4各々への供給を個別に制御するための複数の個別制御弁3を備え、複数の個別制御弁3の内の、消火剤を散布させる消火剤散布ヘッド4への消火剤の供給を制御するための1つ以上の個別制御弁3である対象制御弁を開く制御を行うことにより、例えば、複数の消火剤散布ヘッド4各々からの消火剤の散布を確実に制御することができるので、効率的且つ確実に消火することが可能となる。
【0122】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0123】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の詳細に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏したりすることがある。
【0124】
(分散や統合について)
また、上述した構成は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、任意の単位で機能的または物理的に分散又は統合して構成できる。また、本出願における「装置」とは、単一の装置によって構成されたものに限定されず、複数の装置によって構成されたものを含む。
【0125】
(第2火災検出装置について)
上記実施の形態の防災システム101(
図1)に対して、第2火災検出装置を設けて、第2火災検出装置の検出結果も考慮して、火災が発生したか否かを判定するように構成してもよい。
図9は、防災システムを示す図である。
【0126】
なお、実際には、第1火災検出装置1、消火剤散布ヘッド4、及び第2火災検出装置7は、防護対象空間601内における天井面側に設けられているが、各図は、説明の便宜上、防護対象空間601よりも上側に図示されている。
【0127】
また、防災システム102に設けられる第2火災検出装置7の個数は任意であるが、ここでは、例えば、
図9に図示されている3個の第2火災検出装置71~73に着目して説明する。
【0128】
図9の防災システム102は、
図1の防災システム101に対して、第2火災検出装置7を追加し、防災受信盤5を防災受信盤8に置き換えたものである。以下では、防災システム101と異なる内容についてのみ説明し、説明した事項以外は、防災システム101の対応する構成要素(同一符号又は同一名称の構成要素)と同様であることとする。
【0129】
図9の防災システム102は、例えば、第2火災検出装置7、及び防災受信盤8を備える。
【0130】
===第2火災検出装置===
第2火災検出装置7は、防護対象空間601内で発生する火災を検出する装置であり、例えば、防護対象空間601内における天井面側に固定されて設けられている複数の装置である。第2火災検出装置7は、例えば、通信線を介して防災受信盤8に接続されており、当該防災受信盤8と通信可能となっている。この第2火災検出装置7の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、公知の炎感知器(火災の炎の検出により火災を検出する装置であり、一例としては、第1火災検出装置1とは異なる種類の装置)を用いる場合について説明する。
【0131】
第2火災検出装置71~73各々には、防護対象空間601内の各一部の空間が各監視対象空間として定められており、第2火災検出装置71~73各々は、自己に定められている監視空間内のみでの火災を検出するように構成されていることとする。
【0132】
ここでは、例えば、第2火災検出装置72に設定されている監視対象空間が、
図9に示す監視対象空間91であり、第2火災検出装置71、73には、監視対象空間91の両隣の空間(符号は不図示)各々が監視対象空間として設定されていることとする。
【0133】
また、第2火災検出装置71~73には、第2火災検出装置71~73各々を識別するための火災検出装置IDとして、
図9に示すように、「ID71」~「ID73」が設定されて記録部に格納されていることとする。
【0134】
===防災受信盤===
防災受信盤8は、各構成要素と通信して防災に関する各種制御を行う装置である。この防災受信盤8の構成は、特記する事項以外は
図1の防災受信盤5の構成と同様であることとする。
【0135】
===防災処理===
次に、このように構成される防災システム102によって実行される防災処理について説明する。
図10は、防災処理の説明図である。
【0136】
防災システム102に関する「防災処理」とは、基本的には、実施の形態で説明した防災処理と同様であり、
図6のSB1~SB4の処理を含む処理である。なお、SB1~SB4の大部分は、SA1~SA4と同様であり、異なる処理内容のみについて特記し、特記しない内容は、SA1~SA4の処理と同様であることとする。
【0137】
===SB1===
図6のSB1において、防災受信盤8の制御部(制御手段)は、火災が発生したか否かを判定する。具体的には、以下の前提の基で、処理を行う。
【0138】
=前提=
例えば、防災受信盤8の記録部に、実施の形態で説明した各情報に加えて、各第2火災検出装置7を示す火災検出装置IDと、対応する第2火災検出装置7に設定されている監視対象空間を特定する情報である「監視対象空間特定情報」が記録されていることとし、この監視対象空間特定情報を参照することにより、各第2火災検出装置7に設定されている監視対象空間を防災受信盤8側で特定可能となっていることとする。すなわち、例えば、
図9の第2火災検出装置72の監視対象空間が、監視対象空間91であること等が特定可能となっていることとする。
【0139】
また、
図9の第2火災検出装置7が、自己に設定されている監視対象空間内で火災を検出した場合に、火災を検出した旨を示す火災検出情報と、自己に設定されている火災検出装置IDとを含む第2火災検出信号を、防災受信盤8に送信し、一方、火災を検出していない場合に、第2火災検出信号を送信しないこととする。
【0140】
また、
図9の第1火災検出装置1は、実施の形態のSA1と同様にして、第2火災検出装置7の監視対象空間には関わらず、防護対象空間601内で火災を検出した場合に、火災を検出した旨を示す火災検出情報と、当該検出した火災の位置に対応する垂直方向及び水平方向の角度を示す火災角度情報とを含む第1火災検出信号を、防災受信盤8に送信し、火災を検出していない場合、第1火災検出信号は送信しないこととする。
【0141】
=処理=
<第1火災検出信号を受信していない場合>
図6のSB1の処理について具体的には、防災受信盤8の制御部は、第1火災検出信号を第1火災検出装置1から受信していない場合、火災が発生していないものと判定し(SB1のNO)、火災が発生したものと判定するまで、SB1を実行する。
【0142】
<第1火災検出信号を受信した場合>
また、防災受信盤8の制御部は、第1火災検出信号を第1火災検出装置1から受信した場合、第1ステップ~第2ステップを行う。
【0143】
第1ステップにおいて、防災受信盤8の制御部は、受信した第1火災検出信号に含まれている火災角度情報(つまり、第1火災検出装置1が検出した火災の位置に対応する垂直方向及び水平方向の角度を示す情報)に基づいて、第1火災検出装置1が検出した火災の位置を特定する。具体的には、実施の形態のSA2で説明した処理と同様な処理を行って、第1火災検出装置1が検出した火災の位置を特定する。
【0144】
なお、この段階でポンプ起動命令信号を送信してポンプ23を起動した後、一斉開放弁26を開放することにより、各消火剤散布ヘッドの1次側配管まで予め充水、加圧してもよい。このように構成した場合、第2火災検出装置7が火災を検出して火災が発生したものと判定した場合(つまり、消火剤を散布することが確定したとき)に、時間的遅延なく散布することもできる。なお、ここで説明した制御は一例であり、実施の形態で説明した制御と同様に、火災が発生したものと判定した後に、ポンプ23の起動等を行うように構成してもよい。
【0145】
第2ステップにおいて、防災受信盤8の制御部は、第1ステップで特定した火災の位置を含む監視対象空間を監視している第2火災検出装置7が、火災を検出したか否かを判定する。具体的には、防災受信盤8の記録部に記録されている監視対象空間特定情報を参照して、第1ステップで特定した火災の位置が所属する監視対象空間を特定し、特定した監視対象空間を監視している第2火災検出装置7を示す火災検出装置IDを含む第2火災検出信号を、所定時間以内(例えば、第1火災検出信号を受信した時間の前後1分~5分以内等)に受信したか否かに基づいて以下の処理を行う。
【0146】
具体的には、当該第2火災検出信号を所定時間以内に受信していない場合、第1火災検出装置1のみが火災を検出し、第2火災検出装置7が対応する火災を検出していないので、第1火災検出装置1が誤検出したものと判断して、火災が発生していないものと判定し(SB1のNO)、火災が発生したものと判定するまで、SB1を実行する。
【0147】
また、当該第2火災検出信号を所定時間以内に受信した場合、第1火災検出装置1及び第2火災検出装置7の両方で火災を検出したので、火災が発生したものと判定し(SB1のYES)、SB2に移行する。
【0148】
=処理例=
ここでは、
図10に示すように例えば、監視対象空間91内の火源F2で火災が発生した場合、
図10の第1火災検出装置1は、火源F2で発生した火災の炎に関して、火災に起因する炎に対応するエネルギー量の赤外線を検出することになる。よって、第1火災検出装置1は、火災を検出し、また、自己が設置されて固定されている位置(防護対象空間601内における天井面側の所定位置)を基準とした
図10の火源F2の垂直方向及び水平方向の角度を火災の位置として検出した上で、火災を検出した旨を示す火災検出情報と、当該検出した火災の位置に対応する垂直方向及び水平方向の角度を示す火災角度情報とを含む第1火災検出信号を、防災受信盤8に送信する。
【0149】
また、
図10の第2火災検出装置72は、自己に設定されている監視対象空間91内で火災を検出することになるので、火災を検出した旨を示す火災検出情報と、自己に設定されている火災検出装置IDである「ID72」とを含む第2火災検出信号を、防災受信盤8に送信する。
【0150】
一方、防災受信盤8の制御部は、第1火災検出信号を第1火災検出装置1から受信するので、第1ステップにおいて、
図10に示す火源F2の位置を火災の位置として特定し、第2ステップにおいて、監視対象空間特定情報を参照して、第1ステップで特定した火災の位置が所属する監視対象空間として監視対象空間91を特定し、特定した監視対象空間91を監視している第2火災検出装置72を示す「ID72」を含む第2火災検出信号を、所定時間以内に受信し、火災が発生したものと判定し(SB1のYES)、SB2に移行する。
【0151】
===SB2~SB4===
図6のSB2~SB4において、防災受信盤8の制御部(制御手段)は、実施の形態のSA2~SA4と同様な処理を行うことにより、消火を行う。なお、SB1の処理において、既に火災の位置を特定しているので、SB2においては、新たな処理を行わずに、このSB1の処理で特定した位置をそのまま特定してもよい。これにて、防災処理を終了する。
【0152】
そして、このように構成することにより、第1火災検出装置1が火災を検出し、且つ、複数の第2火災検出装置7の内の、第1火災検出装置1によって検出された火災の位置に対応する監視対象空間を監視している第2火災検出装置7が火災を検出した場合に散布制御を行うことにより、例えば、2種類の火災検出装置を用いて火災を確実に検出することができるので、実際には火災が発生していないにも関わらず消火剤が散布されることを防止することができ、防災システム102の信頼性を向上させることが可能となる。
【0153】
(散布処理という用語)
また、
図6におけるSA3~SA4の処理、及びSB3~SB4の処理が「散布制御」に対応するものと解釈してもよい。
【0154】
(最低防護面積について)
また、上記実施の形態では、最低防護面積が設定されている場合について説明したが、これに限らない。例えば、火災発生時に所定の面積(一例としては、「100平方メートル)以上」に散布する必要が無い場合、すなわち、最低防護面積が規定されない場合も想定される。この場合、
図7の(a)の火災の位置を含む個別散布可能領域A63のみ(つまり、1個のみの個別散布可能領域)を、散布対象領域として特定して、当該散布対象領域に対して消火剤を散布するように構成してもよい。あるいは、例えば、
図7の(a)の火災の位置を含む個別散布可能領域A63と、当該個別散布可能領域A63に隣接する個別散布可能領域A62又はA64と(つまり、合計2個又は3個の個別散布可能領域)を、散布対象領域として特定して、当該散布対象領域に対して消火剤を散布するように構成してもよい。
【0155】
また、例えば、
図4(a)の図示左側の上下線で示した境界線に対称に防護対象領域A601と同様の防護対象領域を設定し、これに対する各消火剤散布ヘッドが設けられる(防護対象領域A601の消火剤散布ヘッド4と散布の向きが対向する配置になる)ケース等にも本願発明を適用できる。この場合、従来は
図8において火源F11で火災が発生した場合、図示左側の上下線で示した境界線の左側の領域に対しても消火剤を散布する必要があったが、本願発明ではその消火剤散布範囲を少なくとも縮小することができ、全体の散布量を低減できる。
【0156】
(特徴について)
また、実施の形態の特徴及び変形例の特徴を任意に組み合わせてもよい。
【0157】
(付記)
付記1の防災システムは、防護対象空間を防護する防災システムであって、前記防護対象空間内に設けられている複数の消火剤散布ヘッドと、前記防護対象空間内での火災時に当該火災の位置を検出する第1火災検出装置と、火災時に、前記防護対象空間内の散布対象領域に対して前記消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する前記散布対象領域を特定し、当該特定した前記散布対象領域に対して、対応する前記消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる散布制御を行い、火災時に前記制御手段で特定される前記散布対象領域は、前記火災の位置に関わらず、領域範囲の中心付近を当該火災の位置として、予め定められた所定の面積を略維持しつつ前記火災の位置に応じて異なる境界を有する領域である。
【0158】
付記2の防災システムは、付記1に記載の防災システムにおいて、前記消火剤を複数の前記消火剤散布ヘッドへ供給するための供給配管と、前記供給配管からの前記消火剤の複数の前記消火剤散布ヘッド各々への供給を個別に制御するための複数の制御弁と、を備え、前記制御手段は、前記複数の制御弁の内の、前記消火剤を散布させる前記消火剤散布ヘッドへの前記消火剤の供給を制御するための1つ以上の制御弁である対象制御弁を開く制御を、前記散布制御として行う。
【0159】
付記3の防災システムは、付記1又は2に記載の防災システムにおいて、前記防護対象空間内での火災を検出する複数の第2火災検出装置、を備え、前記複数の第2火災検出装置各々は、前記複数の第2火災検出装置各々に対して予め定められている監視対象空間各々を監視し、当該監視対象空間内での火災を検出し、前記複数の第2火災検出装置各々に予め定められている前記監視対象空間各々は、前記防護対象空間内における相互に異なる一部の空間各々に対応する空間であり、前記第1火災検出装置は、前記監視対象空間に関わらず前記防護対象空間内での火災を検出し、前記制御手段は、前記第1火災検出装置が火災を検出し、且つ、前記複数の第2火災検出装置の内の、前記第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する前記監視対象空間を監視している第2火災検出装置が火災を検出した場合に、前記散布制御を行う。
【0160】
(付記の効果)
付記1に記載の防災システムによれば、第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する散布対象領域を特定し、当該特定した散布対象領域に対して、対応する消火剤散布ヘッドから消火剤を散布させる散布制御を行うことにより、例えば、防護対象空間における火災を効率的に消火することが可能となる。
【0161】
付記2に記載の防災システムによれば、供給配管からの消火剤の複数の消火剤散布ヘッド各々への供給を個別に制御するための複数の制御弁を備え、複数の制御弁の内の、消火剤を散布させる消火剤散布ヘッドへの消火剤の供給を制御するための1つ以上の制御弁である対象制御弁を開く制御を行うことにより、例えば、複数の消火剤散布ヘッド各々からの消火剤の散布を確実に制御することができるので、効率的且つ確実に消火することが可能となる。
【0162】
付記3に記載の防災システムによれば、第1火災検出装置が火災を検出し、且つ、複数の第2火災検出装置の内の、第1火災検出装置によって検出された火災の位置に対応する監視対象空間を監視している第2火災検出装置が火災を検出した場合に散布制御を行うことにより、例えば、2種類の火災検出装置を用いて火災を確実に検出することができるので、実際には火災が発生していないにも関わらず消火剤が散布されることを防止することができ、防災システムの信頼性を向上させることが可能となる。
【符号の説明】
【0163】
以下、括弧内には、実施形態中で使用した用語に対応する、請求項の発明特定事項が記載されているが、両者の対応関係はこれに限られるものではない。
1 第1火災検出装置
3 個別制御弁(制御弁)
4 消火剤散布ヘッド
5 防災受信盤
7 第2火災検出装置
8 防災受信盤
21 供給配管
21A ヘッド側配管
22 貯留槽
23 ポンプ
24 起動弁
25 起動弁用モータ
26 一斉開放弁
31 個別制御弁(制御弁)
32 個別制御弁(制御弁)
33 個別制御弁(制御弁)
34 個別制御弁(制御弁)
35 個別制御弁(制御弁)
36 個別制御弁(制御弁)
37 個別制御弁(制御弁)
41 消火剤散布ヘッド
42 消火剤散布ヘッド
43 消火剤散布ヘッド
44 消火剤散布ヘッド
45 消火剤散布ヘッド
46 消火剤散布ヘッド
47 消火剤散布ヘッド
51 通信部
52 記録部
53 制御部(制御手段)
71 第2火災検出装置
72 第2火災検出装置
73 第2火災検出装置
80 消火剤散布ヘッド
81 消火剤散布ヘッド
82 消火剤散布ヘッド
83 消火剤散布ヘッド
84 消火剤散布ヘッド
85 消火剤散布ヘッド
86 消火剤散布ヘッド
87 消火剤散布ヘッド
91 監視対象空間
101 防災システム
102 防災システム
301 筐体部
302 第1開口部
303 第2開口部
304 開閉部材
305 駆動部
306 制御部
601 防護対象空間
A 防護区画
A601 防護対象領域
A61 個別散布可能領域
A62 個別散布可能領域
A63 個別散布可能領域
A64 個別散布可能領域
A65 個別散布可能領域
A66 個別散布可能領域
A67 個別散布可能領域
A80 個別散布可能領域
A81 個別散布可能領域
A82 個別散布可能領域
A83 個別散布可能領域
A84 個別散布可能領域
A85 個別散布可能領域
A86 個別散布可能領域
A87 個別散布可能領域
A603 散布対象領域
A801 防護対象領域
B 防護区画
C 防護区画
F1 火源
F11 火源
F2 火源