(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167508
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】充放電制御装置、並びに充放電制御方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20241127BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241127BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20241127BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20241127BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20241127BHJP
B60L 58/16 20190101ALI20241127BHJP
G01R 31/392 20190101ALI20241127BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20241127BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20241127BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20241127BHJP
B60L 55/00 20190101ALN20241127BHJP
【FI】
H02J7/00 Y
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J7/00 X
H01M10/48 P
H01M10/48 301
B60L3/00 S
B60L50/60
B60L53/14
B60L58/16
G01R31/392
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
B60L55/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083620
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】米谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】岡田 隆
(72)【発明者】
【氏名】奥田 雄希
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
5H125
【Fターム(参考)】
2G216BA01
2G216BA21
2G216CB11
5G503AA00
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503CC02
5G503DA04
5G503DA07
5G503EA05
5G503EA08
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5G503GB03
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
5H125AA01
5H125AC12
5H125AC24
5H125BC05
5H125BC09
5H125BC21
5H125BC24
5H125CC07
5H125CD02
5H125EE22
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE29
5H125EE41
5H125EE51
(57)【要約】
【課題】充放電に伴う電池劣化因子の影響を把握し、電池劣化を抑制可能な充放電制御装置、並びに充放電制御方法を提供する。
【解決手段】負荷に接続された蓄電池の充放電を制御する充放電制御装置であって、蓄電池の充放電の基準運用パターンを設定し、基準運用パターンにおける蓄電池の劣化量である基準劣化量を算出する手段と、蓄電池の充放電が基準運用パターンと異なる実運用パターンで運用された場合、実運用パターンにおける蓄電池の劣化量である実運用劣化量を算出する手段と、基準劣化量と実運用劣化量の差分である劣化量差分を算出する手段と、劣化量差分に基づき、蓄電池の劣化の因子である複数の劣化因子のそれぞれの寄与度を算出する手段を備えることを特徴とする充放電制御装置。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に接続された蓄電池の充放電を制御する充放電制御装置であって、
前記蓄電池の充放電の基準運用パターンを設定し、前記基準運用パターンにおける前記蓄電池の劣化量である基準劣化量を算出する手段と、前記蓄電池の充放電が前記基準運用パターンと異なる実運用パターンで運用された場合、前記実運用パターンにおける前記蓄電池の劣化量である実運用劣化量を算出する手段と、前記基準劣化量と前記実運用劣化量の差分である劣化量差分を算出する手段と、前記劣化量差分に基づき、前記蓄電池の劣化の因子である複数の劣化因子のそれぞれの寄与度を算出する手段を備えることを特徴とする充放電制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の充放電制御装置であって、
前記複数の劣化因子のうち、特定の劣化因子の蓄積を回避するよう次回以降の実運用パターンを変更する手段を備えることを特徴とする充放電制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の充放電制御装置であって、
前記基準運用パターンおよび前記基準劣化量は、電池劣化試験またはシミュレーション解析結果に基づき算出または記録されることを特徴とする充放電制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の充放電制御装置であって、
前記劣化因子は、電流値が正の期間である充電時間、電流値が負の期間である放電時間、電池平均温度、SOCの増減量を計算したサイクル深度、SOC上限値、およびSOC平均値の少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする充放電制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の充放電制御装置であって、
前記基準運用パターンおよび前記基準劣化量は、過去のユーザの運転履歴や充放電パターンに基づき、定期的に更新されることを特徴とする充放電制御装置。
【請求項6】
請求項1に記載の充放電制御装置であって、
前記劣化因子の蓄積状況や、推奨されるEV接続時間等の充放電計画関連情報を、車載画面やドライバの所有するスマートフォンなどを通じて、通知されることを特徴とする充放電制御装置。
【請求項7】
計算機を用いて負荷に接続された蓄電池の充放電を制御する充放電制御方法であって、
前記計算機は、前記蓄電池の充放電の基準運用パターンを設定し、前記基準運用パターンにおける前記蓄電池の劣化量である基準劣化量を算出し、前記蓄電池の充放電が前記基準運用パターンと異なる実運用パターンで運用された場合、前記実運用パターンにおける前記蓄電池の劣化量である実運用劣化量を算出し、前記基準劣化量と前記実運用劣化量の差分である劣化量差分を算出し、前記劣化量差分に基づき、前記蓄電池の劣化の因子である複数の劣化因子のそれぞれの寄与度を算出することを特徴とする充放電制御方法。
【請求項8】
請求項7に記載の充放電制御方法であって、
前記複数の劣化因子のうち、特定の劣化因子の蓄積を回避するよう次回以降の実運用パターンを変更することを特徴とする充放電制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、充放電制御装置、並びに充放電制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気自動車EV(Electric Vehicle)を住宅と接続するV2H(Vehicle to Home)、電力系統と接続するV2G(Vehicle to G)、電気負荷と接続するV2L(Vehicle to Load)、車両同士を接続するV2V(Vehicle to Vehicle)、またそれらを総称した、電力授受を行うあらゆるデバイスと接続するV2X(Vehicle to Everything)を行う場合、電動自動車EVに搭載された電池の充放電機会が増加するため、電池劣化が進行しやすい。
【0003】
電池の劣化は、運用方法にも大きく依存する。同じ温度環境にて、総充放電量が同じ運用を行った場合でも、電池の充電量SOC(State of Charge)の増減率を示すサイクル深度や、平均SOC、充電時間等の違いにより、劣化量に差異が出ることが知られている。V2X運用に供試される電池としての役目を果たしつつ、適正な充放電制御により電池健全度(SOH)(State of Health)の低下を最小限に抑える必要がある。
【0004】
従来、V2Xのように運用パターンが一律でなく遂次変動する場合における、電池運用パターンと健全度(SOH)の関係を推定する技術として、例えば特許文献1、2に記載されているようなものがある。
【0005】
特許文献1には、電池の使用量と電池の満充電容量との対応関係を示す劣化ラインを電池の使用方法別に記憶する記憶部を備え、電池の使用方法を判定し、使用方法が切替わったと判定される場合に、使用方法変更前の劣化ラインと使用方法変更後の劣化ラインの満充電容量が一致するように、現状の電池の劣化ラインをオフセットさせることで、電池の満充電容量を推定することが記載されている。
【0006】
特許文献2には、予め設定された複数の走行パターンのそれぞれを走行した時の電流割合分布を示す規定電流割合分布が記憶されており、実際の運転における実電流割合分
と規定電流割合分布に基づいて、実電流割合分布を複数の規定電流割合分布の合成で表したときのそれぞれの規定電流割合分布の割合を示す走行パターン割合を導出することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-159990号公報
【特許文献2】特開2022-144152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
V2Xのように運用パターンが一律でなく遂次変動する場合においても、電力網上の蓄電設備として供試される電池としての役目を果たしつつ、適正な充放電制御により電池健全度(SOH)(State of Health)の低下を最小限に抑える必要がある。
【0009】
特許文献1に記載された技術は、電池使用方法に対する劣化ラインを、想定される充放電パターンの数だけ事前に用意する必要があり、V2Xに供試されるEVのように、充放電パターンが走行から系統連系まで多岐にわたる充放電パターンへの対応が困難である。
【0010】
特許文献2に記載された技術は、予め設定された複数の走行パターンのそれぞれを走行した時の電流割合分布を示す規定電流割合分布の重ね合わせにより、現実の複雑な充放電パターンとのフィッティングを行うことで、有限の事前記憶パターンで広い走行パターンへの対応を可能としているが、得られる結果からは支配的な走行パターンが分かるのみであり、電池劣化を抑制するための指針を得ることが困難である。
【0011】
上記のように、既存の特許文献は運用パターンが遂次変動する場合における電池劣化因子の影響を把握することができず、長期的に電池劣化を抑制するための適切な運用が行えないという課題を有していた。
【0012】
本発明の目的は、上記課題を鑑みて、充放電に伴う電池劣化因子の影響を把握し、電池劣化を抑制可能な充放電制御装置、並びに充放電制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
以上のことから本発明においては「負荷に接続された蓄電池の充放電を制御する充放電制御装置であって、蓄電池の充放電の基準運用パターンを設定し、基準運用パターンにおける蓄電池の劣化量である基準劣化量を算出する手段と、蓄電池の充放電が基準運用パターンと異なる実運用パターンで運用された場合、実運用パターンにおける蓄電池の劣化量である実運用劣化量を算出する手段と、基準劣化量と実運用劣化量の差分である劣化量差分を算出する手段と、劣化量差分に基づき、蓄電池の劣化の因子である複数の劣化因子のそれぞれの寄与度を算出する手段を備えることを特徴とする充放電制御装置」としたものである。
【0014】
また本発明においては「計算機を用いて負荷に接続された蓄電池の充放電を制御する充放電制御方法であって、計算機は、蓄電池の充放電の基準運用パターンを設定し、基準運用パターンにおける蓄電池の劣化量である基準劣化量を算出し、蓄電池の充放電が基準運用パターンと異なる実運用パターンで運用された場合、実運用パターンにおける蓄電池の劣化量である実運用劣化量を算出し、基準劣化量と実運用劣化量の差分である劣化量差分を算出し、劣化量差分に基づき、蓄電池の劣化の因子である複数の劣化因子のそれぞれの寄与度を算出することを特徴とする充放電制御方法」としたものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、運用方法違いによる電池劣化因子の変化を精度よく、かつ定量的に把握可能でき、かつ電池に対してバランスよく負荷をかける運用を行うことで、電池劣化を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】車両をV2H接続した際の充電システムを含む全体構成例を示す図。
【
図2】据置型DC充電器を介して車両をV2H接続した際の充電システムを含む全体構成例を示す図。
【
図3】本発明の実施例1に係る充放電制御装置の構成例を示す図。
【
図4】基準運用パターンと評価対象運用パターンの比較例を示す図。
【
図6】電池劣化モデルの入出力応答の一例を示す図。
【
図7】ベース劣化量と劣化量差分、および寄与度分類例を示す図。
【
図8】本発明の実施例2に係る充放電制御装置の制御方法の一例を示すフローチャート。
【
図9】電池運用パターンを固定して運用した際の電流、電圧、およびSOCの波形を示した例を示す図。
【
図10A】電池運用パターンを固定して運用した際の電池劣化因子の蓄積可視化結果を示すグラフ。
【
図10B】サイクル深度に関する負荷が電池にかかっていることを示すグラフ。
【
図11】電池運用パターンを定期的に変更して運用した際の際の電流、電圧、およびSOCの波形を示した例を示す図。
【
図12A】電池運用パターンを定期的に変更して運用した際の際の電池劣化因子の蓄積可視化結果を示すグラフ。
【
図12B】サイクル深度、充電時間、SOC平均値3つの劣化因子が電池にかかっていることを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【実施例0018】
以下、本発明の実施例に係る充放電制御装置について説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0019】
図1は、車両をV2H接続した際の充電システムを含む全体構成のハードウェア図である。
図1では、家庭2は電力系統1から給電され、車載充放電器10を搭載する車両9は、各家庭2から給電される。
【0020】
このうち各家庭2には、HEMS4,分電盤4、外部機器7を備え、そのほか適宜太陽光発電設備5,家庭用蓄電池6を備えている。なおここでは、電気自動車又はプラグインハイブリッド車である車両9と戸建てを想定した住宅2とを接続した例を用いて説明を行うが、住宅2は必ずしも車両9の所有者が居住する戸建て住宅に限定されない。例えば集合住宅であってもよいし、住宅2に対応する施設が事業所や駐車場であってもよい。車両9が複数接続される構成であってもよい。なお車載などの充放電器から見た場合に、家庭2は外部電源ということができる。
【0021】
これに対し、車両9内には、車載充放電器10、総合コントローラ15、電池(HV電池20、LV電池21)、電力変換装置26,内部機器27を備えている。なお車載充放電器10は、その内部にAC充電ポート11と、電力変換制御部12と、電池センシング部13と、電力変換部14を備える。統合コントローラ15は、ネットワーク通信部16と、ECM17と、演算処理部18と、バッテリマネジメントシステム(BMS)19を備える。
【0022】
かかる機器の設置により、
図1の充放電システムは、外部電源(各家庭2)から供給される電力によって車両9に搭載される電池(HV電池20、LV電池21)を充電する。
【0023】
以下、充放電システムを構成する主要な機器について、詳細に説明する。まず電池のうちHV電池20は、車両9に搭載されており、複数の電池セルを直列、あるいは並列接続することで所望の出力特性を実現可能な電池モジュールで構成されている。HV電池20の一例として、リチウムイオン電池が挙げられる。LV電池21は車載の12V系機器への電力供給等に用いられ、一例として鉛蓄電池が挙げられる。HV電池20は電力変換装置26と接続され、内部機器27により電気エネルギを所望する様態で利用する。電力変換装置26は、HV電池20から放電される電力を電力変換して内部機器27に供給する。
【0024】
統合コントローラ15内のバッテリマネジメントシステムBMS19には、HV電池20の状態を検出可能とするために、電池セルの電圧を検出可能な電圧計測部と、電池セルを流れる電流を検出可能な電流計測部と、HV電池20の温度を検出する温度計測部とを備えている。電圧計測部は、電池セルの各端子電圧を個別計測可能なように電池セル間に電圧線を取り付ける形で構成される。電流計測部は例えばシャント抵抗Rshtの電圧を計測することにより電流を検出するような方式があるが、ホール素子などのセンサを用いることができる。温度計測部にはサーミスタや熱電対などを利用することが可能である。このようにBMS19はHV電池20の状態を電圧情報に変換して検出している。したがって汎用のアナログフロントエンドICやASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの半導体装置で構成することができる。A/D変換器を備えることで、HV電池20の状態量を電圧として検出したものをプログラム等の演算処理で利用可能なデジタル値に変換できる。
【0025】
電力変換装置26は、例えば双方向インバータであり、これにより車両9の走行に用いる走行用モータを駆動する。双方向インバータは、DC/DCコンバータ部とインバータ部から構成され、DC/DCコンバータ部は、HV電池20の直流電圧を走行用モータ駆動に必要な電圧に電圧変換し、インバータ部は、直流電力を交流電力へ変換することで、走行用モータの回転速度に応じた周波数制御を行って走行用モータを力行させることで、車両を加速するための回転力(駆動トルク)を得る。あるいは、車両の減速の際には回生駆動させ、車両の運動エネルギを電力として回生し、DC/DCコンバータ部を介してHV電池20へ電気を送り充電する。
【0026】
内部機器27は、例えば前述した走行用モータであり、電力を回転力として利用することで車両9を加速させ、また、車両9が走行中には双方向インバータと連携して走行用モータを発電機として駆動することで、車両9の慣性力を電力として回生する。
【0027】
このような動作を実現するために、電力変換装置26は図示しない制御器を備えており、DC/DCコンバータ部のスイッチング素子のデューティ比を制御することでDC/DCコンバータ部の出力電圧を調整し、また、インバータ部のスイッチング周波数や電流位相を調整することで走行用モータの駆動力を調整する。内部機器27には電力変換装置26が内部機器27を所望する様態に制御する為に種々のセンサが設けられている。
【0028】
電力変換装置26はまた、例えば前述した走行用モータを駆動するための双方向インバータとは異なるインバータであり、内部機器27はまた、コンプレッサ駆動用モータである。これらにより、車両9の車室を空調するためのエアコンを駆動する。
【0029】
すなわち、電力変換装置26および内部機器27は、HV電池20の電力を消費する手段であり、換言すればHV電池20の電力を放電する手段の一つであって、車両9には複数の電力変換装置26および内部機器27が設けられる。またHV電池20は、車載充放電器10およびDC充電ポートに接続される。
【0030】
図1では、充電機能を車載する車載充放電器10とする例を示したが、充放電機能は車載しない方式とすることも可能である。
図2は充電機能を車載しない場合の全体構成のハードウェア図である。
図1と
図2を比較して明らかなように、
図2では車載充放電器10の機能の一部が据置型DC充電器28として分離され、車両内にDC充電ポート29,DC-DCコンバータ25が新たに設置される。この相違は、
図1が交流充電、
図2が直流充電という充電方式の相違によるものということができる。
【0031】
このように本発明は、車両9の充放電システムの充電方式として、車載充放電器10のAC充電ポート11を介した交流充電と、
図2に図示される据置型充電器28およびDC充電ポート29を介した直流充電とに対応することができるものである。交流充電と直流充電は車載充放電器10内で図示しないリレーや半導体スイッチにより排他的に使用される。車載充放電器10は、車両9に搭載され、住宅2などの外部電源から供給される電力とHV電池20から放電される電力とを双方向に電力変換する。据置型充電器101は、車両9および住宅2の外部に設置され、住宅2などの電源から供給される電力とHV電池20から放電される電力とを双方向に電力変換する。
【0032】
交流充電では、車載充放電器10はさらにAC充電ポート11を介して充電ケーブルと接続され、充電ケーブルは住宅2の分電盤4へ接続される。分電盤4への接続方法は、漏電遮断器を介した直接接続でもよく、また住宅2のACコンセントを介した接続でも良い。分電盤4は不図示のアンペアブレーカおよび電力計電力系統1に電気的に接続される。
【0033】
直流充電では、DC充電ポート26を介して据置型充電器28のAC-DC電力変換部と接続され、据置型充電器101は住宅2内の分電盤4に接続される。以降は交流充電と同様に電力系統1まで電気的に接続される。
【0034】
車載充放電器10は、直流電圧の変圧および直流電圧の交流電圧への変換可能なDC/DCコンバータ部と、分電盤4からの交流電力を直流に整流し、かつDC/DCコンバータ部から出力される直流電力を交流電力に変換可能なインバータ部を持つ電力変換部14を備える。また、これらを制御する電力変換制御部12、およびAC電力を接続するAC充電ポート11、およびこれらの電流から電池データを測定する電池センシング部を有して構成される。
【0035】
据置型充電器28も車載充放電器10と同様に、電力変換部14および電力変換制御部12とを備える。
【0036】
HV電池20を充電する際には、HV電池20内の電池セルに対応した定電流充電と定電圧充電とを組み合わせたいわゆるCC-CV(Constant Current, Constant Voltage)充電を行う。
【0037】
具体的には、HV電池20の充電率が低い状態では定電流充電を行いHV電池20内の電池セルに流れる電流が所定値以上とならないように充電速度を調整する。電池セルに過剰な電流が流れると、電池セル内の負極活物質層間へリチウムイオンが取り込まれずに、負極上にリチウム金属が析出することで内部短絡を生じ、電池セルの発火や破裂を伴う熱暴走に至る虞がある。これを防ぐために過剰な電流が流れることのないように充電速度、すなわち電流を制御する必要がある。
【0038】
HV電池20の充電が進行し電池セルの電圧が上昇すると、定電圧充電に移行する。電池セルの電圧が過剰に上昇すると正極活物質からリチウムイオンが引き抜かれ、電極構造が脆化するほか、正極の反応性が高まることで電解液の分解反応が進行し電池セル内でガスを発生するほか、電解液の分解反応が進行してやはり発熱を生じる。電池セル内で発生したガスや電解液は可燃性であるため、これらに引火することで電池セルの発火やガス圧上昇による破裂といった破壊に至る虞がある。電流と同様に電圧についても過剰な電圧とならないように制御する必要がある。
【0039】
車載充放電器10を例とすれば、電力変換部14はAC充電ポート11を通じて得られた交流電力を直流に整流し、電力変換部14内部のDC/DCコンバータ部のスイッチング素子のデューティ比を制御することで電池セル、ひいてはHV電池20へ流れる充電電流および充電電圧を制御する。据置型充電器28も同様に、電力変換部14は分電盤4を通じて得られた交流電力を直流に整流し、電力変換部14内部のDC/DCコンバータ部のスイッチング素子のデューティ比を制御することで電池セル、ひいてはHV電池20へ流れる充電電流および充電電圧を制御する。
【0040】
以上のように、車載充放電器10や据置型充電器28により、HV電池20の充電を行うことができる。
【0041】
HV電池20の電力を住宅2へ供給する場合には、車載充放電器10の電力変換部14のDC/DCコンバータ部は、住宅2で使用する交流電力に合わせて、電圧を調整する。電力変換部14のインバータ部は、住宅2で使用される交流電力の周波数と位相が同期するように交流を生成する。制電力変換制御部12は、電圧調整のためにDC/DCコンバータ部のスイッチ素子に指令するスイッチング信号のデューティ比を調整するほか、住宅2へ電力を送り込むために、住宅2内の交流電力の周波数と位相をフィードバックしこれと同期させるようにインバータ部のスイッチング指令を調整する。
【0042】
据置型充電器28を通じてHV電池20の電力を住宅2へ供給する場合も同様であり、電力変換部14のDC/DCコンバータ部、インバータ部、および電力変換制御部12を車載充放電器10の電力変換部14のDC/DCコンバータ部、インバータ部、電力変換制御部12のように動作させる。
【0043】
車載充放電器10や据置型充電器28を通じてHV電池20の電力を住宅2で使用できるようにすることで、例えば、災害時に電力系統1からの電力供給が無い場合にHV電池20の電力を利用することや、電力系統1からの買電量を減らして住宅2の電気代を削減するなどの使い方ができる。
【0044】
住宅2はさらに電力系統1に変わる電源として太陽光発電システム5や図示しない燃料電池システムを備えていても構わない。
【0045】
住宅2の分電盤4には前述の太陽光発電システム5の他、外部機器7が接続される。外部機器7は、住宅2の住宅設備やいわゆる電化製品であり、例えば、住宅2を空調するためのエアコンや、給湯システム、照明、調理器具、冷蔵庫、洗濯機などの白物家電の他、テレビやオーディオなどの黒物家電、パソコンや電話機などの情報家電などが挙げられる。
【0046】
車載充放電器10や据置型充電器28を介してHV電池20の電力を住宅2へ供給することは、HV電池20の電力を消費することであり、換言すればHV電池20の電力を放電するもう一つの手段の一つである。
【0047】
住宅2は、家庭内電力マネジメントシステムHEMS(Home Energy Management System)3を備えており、太陽光発電システム5や外部機器111としての給湯システムの運転状態や発電量、電力計から取得した住宅2の電力需要に合わせて外部機器111としての給湯システムの湯沸かしタイミングの調整や、外部機器111としてのエアコンの運転状態、太陽光発電システム5の余剰電力の電力系統1への売電などを実施することができる。HEMS3は、住宅2の電力需要を、図示しない通信モジュールを介して外部から照会可能なように構成され、車両9の統合コントローラ27は、車両9のネットワーク通信部16を通じてHEMS3が保持する住宅2の電力需要などの情報を取得可能に構成されても良い。
【0048】
統合コントローラ15は、機能ブロックとして、ネットワーク通信部16、エンジンコントロールモジュール(ECM)17、演算処理部18、およびバッテリマネジメントシステム(BMS)で構成される。統合コントローラ15の各機能ブロックの動作の詳細については後述する。
【0049】
統合コントローラ15の演算処理部18は、CPU等で構成される演算部と、RAM,ROM等のメモリや記録媒体などで構成される記憶部とを備え、記憶部に格納されているプログラムを実行することで統合コントローラ15の各機能ブロックを実現する。
【0050】
統合コントローラ15は、必要に応じて電力変換装置26および内部機器27の動作状態やHV電池20の状態を取得可能な他、DC充電ポート29を通じて据置型充電器28と通信可能に構成される。また、統合コントローラ15は、AC充電ポート11および充電ケーブルを介した通信も可能となっている。車両9と住宅2の通信には、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった通信方式や、Ethernet接続などを利用可能であり、車両9内ではCANやLINを使用し、住宅2内の通信にはEthernetによる通信を使用するなどの使い分けがなされていても問題ない。また、PLC(Power Line Communication)などによる通信を使用してもよい。有線の通信のみならず、無線による通信が行われていてもよい。
【0051】
以上、
図1と
図2を用いて、本発明が適用可能な充放電システムの構成事例を説明した。次に、車両9が停止して外部電源からの充電を行う場合について検討する。
【0052】
先にも述べたように既存の充電手法では、運用パターンが遂次変動する場合における電池劣化因子の影響を把握することができず、長期的に電池劣化を抑制するための適切な運用が行えないという課題を有していた。このことからここでは、本発明の充放電制御装置における、充放電に伴う電池劣化因子の影響の把握方法および劣化抑制方法について説明する。
【0053】
HV電池20のセル内での電池劣化は,充放電サイクル実施により,正極負極の構造変化を主体に劣化が進行する。例えば,グラファイト材料で形成される負極は,使用環境や充放電に伴う膨張,収縮の繰り返しで劣化する。また,三元系金属材料等で形成される正極も,金属腐食やバインダ成分の溶出等による劣化が発生する。この際,V2G運用パターンで,同じ充放電サイクルを繰り返し実施すると,特定劣化形態の増長や,セル内の局所劣化を招く恐れがあると考えられる。電池内の特定部位が完全に破壊されてしまうと,他の部位が健全であっても当該電池の健全度(SOH)は低下し,利用できなくなってしまう。電池内部の局所劣化は避ける必要があるが,電池内部の劣化部位を個別に制御することは困難であるため,そこで,運用上の劣化因子を評価指標として,電池への負担の均一化を行う。
【0054】
図3は、本発明の実施例1に係る充放電制御装置の構成例を示す図である。本発明の実施例1に係る充放電制御装置は、例えば
図1、
図2の総合コントローラ15内の演算処理部18により実現され、あるいはクラウド上に構成されてその処理結果がネットワーク通信部16を介して総合コントローラ15内に記憶され、利用される。なお以下の説明では、演算処理部18により実現されることを例として説明する。
【0055】
充放電制御装置の処理は、一般的には計算機を用いて実現されるが、その演算部における処理内容を処理機能として表すならば、
図3に例示するように、電池健全度(SOH)計算部F301、電池劣化因子計算部F305、および充放電計画制御部F316の各処理機能を備えるものである。
【0056】
電池健全度(SOH)計算部F301は、据置型充電器28などの車外の劣化診断装置等からの自車電池の劣化状況を取得する外部通信部F302または、車載充放電器10などの自車の劣化診断装置からの電池劣化状況を取得する劣化診断部F303、およびそれらの情報に基づいて電池健全度(SOH)を推定する電池健全度(SOH)診断部F304で構成される。
【0057】
電池劣化因子計算部F305は、ある評価対象運用パターンにて電池が充放電運用された際の、電池劣化量および劣化因子の寄与度を定量化する。2つの充放電パターンによる劣化量の違いを評価する際,劣化量の大半は運用違いに依らず共通して発生する基準劣化量が占めるため,運用違いによる日々の劣化量差分は非常に小さく,評価対象運用パターンの劣化量を直接評価すると後述する寄与度算出が精度良く行うことができないという課題があった。
【0058】
そこで本発明では,基準運用パターンおよび基準劣化量を定義して、評価対象運用パターンにおける劣化量との差分を取ることで,運用違いによる電池劣化因子の変化の抽出精度を向上させる。
【0059】
このうち基準運用パターンに関してF306,F307,F308の処理を行う。具体的には
図3の基準運用パターン充放電データ取得部F306にて、基準運用パターンにおける電流、電圧、および温度履歴を取得する。次に、基準劣化因子計算部F307において、充放電データから電池劣化に関する特徴量を抽出し、それらを入力として、電池劣化モデルを用いて、基準健全度(SOH)低下量算出部F308にて当該基準運用時の電池健全度(SOH)低下量を算出する。電池劣化に関する特徴量および健全度(SOH)低下量算出の詳細は後述する。
【0060】
同様に評価対象運用パターンに関してF310,F311,F312の処理を行う。具体的には
図3の評価対象運用パターン充放電データ取得部F310にて、評価対象運用パターンにおける電流、電圧、および温度履歴を取得する。次に運用時劣化因子計算部F311において、充放電データから電池劣化に関する特徴量を抽出し、それらを入力として運用時健全度(SOH)低下量算出部F312にて評価対象運用時の電池健全度(SOH)低下量を算出する。
【0061】
そして、追加劣化量計算部F313では、基準運用パターンと評価対象運用パターンにおける電池健全度(SOH)低下量の差分を取ることで、運用違いによりもたらされた追加劣化量を計算する。
【0062】
次に、劣化因子感度計算部F309では、健全度(SOH)低下量算出に用いられる電池劣化モデルの勾配情報を用いて劣化因子の感度を計算する。詳細は後述する。劣化因子の寄与度計算部F314では、前述の追加劣化量および劣化因子感度を用いて、劣化因子の寄与度を定量化する。累積劣化因子記憶部F315では、算出された前記劣化因子寄与度を蓄積記憶する。
【0063】
充放電計画制御部F316では、累積劣化因子蓄積状況評価部F317にて、蓄積記憶された劣化因子において、特定の因子に偏った劣化蓄積が無いかどうか確認を行う。充放電計画補正部F318では、劣化因子の偏った蓄積を回避するように充放電計画を補正する。
【0064】
基準運用パターンと評価対象運用パターンの比較例について
図4を用いて説明する。
図4は、横軸に1日の24時間、縦軸に上から順次電流、電圧、温度、SOCの大きさを示したものであり、基準運用パターンでの電流、電圧、温度、SOCの大きさの時系列的変化を点線で、評価対象運用パターンでの電流、電圧、温度、SOCの大きさの時系列的変化を実線で示している。ただし電流は、プラス方向が電池への充電、マイナス方向が家庭側への放電を示している。なお簡略化のために電流プロファイルにおけるCCCV充電のCV充電カーブは記載していない。
【0065】
図4の事例によれば実線の評価対象運用パターンでは、深夜0:00の点Aから夜間電力の買電が行われ、車両9への充電がなされる。そして、点BにおいてSOCが充電上限に到達し、充電が停止する。その後、朝6:00までは住宅2への給電は行わず電流値はゼロとなる。朝6:00の点cからは、住宅2における暖房や調理器具の消費電力が増加するため、車両9から住宅2への給電が行われる。点Dからは車両9のドライバが職場などに向けて出発し、HV電池20は走行により電気が消費される。車両9が走行を終え、職場または住宅2に到着し、再び電力線への接続が行われる。点Eからは太陽光発電5にて発電された電力の充電が開始される。太陽光発電による発電量は、季節や天候、地域によっても差異が見られるものの、おおむね正午頃の点Fにおいて発電量は最大となる。その後、夕方に近づくにつれて太陽高度が低下し、職場または住宅2の太陽光発電5のパネルへの日照量が低下し、点Gにおいて充電電流はゼロとなる。その後、点Hでドライバが職場から車両を走行させて帰宅し、点Iからは住宅2における夕方夜間の電力使用量ピークに対応するように放電を行う。放電は、電池SOCがあらかじめ定められたSOC下限値に到達するまで行われ、点Jにおいて充電電流はゼロとなる。
【0066】
また
図4の事例によれば点線の基準運用パターンは、V2Gにおける代表的な運用パターンとして定められ、上述のようなイベントを前提として電流プロファイルを設定する。基準運用パターンは必ずしも評価対象運用パターンと類似している必要は無い。また、基準運用パターンは実測値である必要は無く、シミュレーションで解析した結果を用いても良い。
【0067】
次に、電池劣化に関する特徴量の抽出について説明する。
図5は劣化因子の抽出例を示す図である。
図5においても
図4と同様に、横軸に1日の24時間、縦軸に上から順次電流、電圧、温度、SOCの大きさを示している。ここでは、HV電池20の充放電データとして、電流、電圧、および温度の時系列データを取り上げ、その際の電池容量を既知とすることでSOCが算出できる。これらのデータより、電池劣化モデルの入力パラメータとして、劣化因子パラメータを抽出する。
【0068】
ここでは劣化因子パラメータの一例として、電流値が正の期間である充電時間、電流値が負の期間である放電時間、電池平均温度、SOCの増減量を計算したサイクル深度、SOC上限値、およびSOC平均値を定義した。
【0069】
次に、電池劣化モデルによる健全度(SOH)低下量および劣化因子感度を算出することについて説明する。
図6は、電池劣化モデルの入出力応答の一例を示す図である。この電池劣化モデルを用いた処理は、
図3の基準SOH低下量算出部F308,運用時SOH低下計算部F312で実行される。処理ステップS601にて、HV電池20の充放電データより抽出された電池劣化因子を入力パラメータとして用意する。そして処理ステップS602にて、その運用にてもたらされた電池健全度(SOH)低下量を、電池劣化予測モデルを用いて算出する。そして処理ステップS603にて、電池健全度(SOH)変化量(dSOH)を得る。
【0070】
ここで電池劣化モデルは、実際の電池を用いた充放電試験の結果を用いたデータベースであっても良く、またシミュレーションモデルであっても良い。本実施例における電池劣化モデルは6つの入力パラメータを持つ多変数関数であるが、これらのパラメータは電池のサイクル劣化に影響のある因子であり、それら入力因子によりもたらされる劣化は、非線形な挙動が比較的少なく、2つのパラメータを用いて健全度(SOH)との関係を示すと、
図6に示されるような滑らかな電池劣化予測値の応答曲面30を描く。なお
図6は、入力パラメータが放電時間とサイクル深度の2つの場合における電池劣化モデルの例を示しており、放電時間とサイクル深度と電池健全度(SOH)変化量dSOHの関係を3次元的に電池劣化モデルとして定義している。電池劣化モデルは、基準運用パターン時と評価対象運用パターン時の差分を表現している。
【0071】
ここで、電池劣化予測値の応答曲面30を各劣化因子に対して偏微分を行うと、それぞれの因子に対する偏微分係数が得られる。偏微分係数は応答曲面の勾配に相当し、その勾配が大きいほど,その劣化因子による劣化度の影響度が高いことを表す。そこで,各劣化因子の勾配の比率に基づいて,当該運転による劣化量差分を分配することで,劣化因子ごとの寄与度を定量化する。
【0072】
図7は、ベース劣化量と劣化量差分、および寄与度分類例を示す図である。
図7左側の基準運用パターンでのベース劣化量dSOH
baseを基準として、その右側に評価対象運用パターンでの劣化量dSOHを表記している。本発明では、劣化量dSOHとベース劣化量dSOH
baseとの差分を取った劣化量差分に着目している。
【0073】
そのうえで、劣化量差分発生の要因である劣化因子(充電時間、放電時間、電池平均温度、サイクル深度、SOC上限値、およびSOC平均値)ごとに、その影響度の大きさを数値化する。影響度の大きさを数値化することは、
図6の応答曲面30の勾配比率に基づいて分配することで,運用違いによる劣化量を高精度に抽出でき、かつ劣化因子ごとに定量化することが可能となる。
【0074】
なお、充電電流が1C(1CはHV電池20の容量を1時間で満充電可能な電流値)を超えるような急速充電を行うと、電池内でリチウム析出等の非線形な劣化が発生し、電池劣化モデルの応答曲面30に極大値や極小値を生じる可能性がある。急速充電の影響を加味するためには、充電時のピーク電流値や、その時間積分値等を入力値として、急速充電用の劣化モデルを別途用意し、電池劣化モデルの応答曲面30を補正することが望ましい。
処理ステップS802にて劣化診断を行う時刻かどうかを判定する。劣化診断は深夜0:00等に行われる。劣化診断を行う場合、その日の運用データを用いた劣化計算を開始する。具体的には、処理ステップS803にて据置型充電器28などの車外の劣化診断装置等からの自車電池の劣化状況を取得する、または車載充放電器10などの自車の劣化診断装置からの電池劣化状況を取得する。
次に、処理ステップS804にて、運用時充放電データ(電流、電圧、温度、SOC)より劣化因子を算出する。処理ステップS805にて電池劣化モデルに基づき運用時劣化量および劣化因子感度を算出する。処理ステップS806では劣化モデルの出力情報を用いて、運用時と基準運用時の劣化量差分を算出する。そして処理ステップS807にて、劣化量差分を劣化因子の感度比率で配分し、劣化因子を定量化して累積記憶する。
最後に、処理ステップS808にて特定の劣化因子蓄積を回避するよう、次回以降の充放電計画を補正する。処理ステップS809では基準運用パターンを更新するかどうか、処理ステップS810では劣化累積計算を継続するかどうかを判断する。
本実施例ではリチウムイオン電池を例として説明したが、全個体電池などの多種電池にも適用可能である。鉛蓄電池などのLV電池にも同様の劣化因子可視化および充放電制御の適用が可能である。
なお、本発明は上述した実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限りその他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。
例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために装置の構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。