(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167511
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】実験支援システムおよび制御方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241127BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
C12M1/00 A
G01N35/04 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083631
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】盛 真唯子
(72)【発明者】
【氏名】栗原 怜也
(72)【発明者】
【氏名】杉田 澄雄
【テーマコード(参考)】
2G058
4B029
【Fターム(参考)】
2G058CA01
2G058CB16
4B029AA27
4B029BB01
4B029CC03
4B029DG10
4B029FA15
(57)【要約】
【課題】従来の実験で用いられる実験装置および実験プロトコルを極力維持しつつ実験を自動化できる実験支援システムおよび制御方法を提供する。
【解決手段】実験支援システム100は、観察対象物を保持可能な保持部と、前記保持部を移動可能な可動部とを有する搬送装置10と、前記搬送装置10が移動する軌道を形成し、前記観察対象物に実験動作を行う複数の実験装置の近傍に設けられたレール部20と、前記レール部20に沿って移動する前記搬送装置10の位置を検出可能な検知部と、前記搬送装置10および前記検知部を制御可能な制御部70と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象物を保持可能な保持部と、前記保持部を移動可能な可動部とを有する搬送装置と、
前記搬送装置が移動する軌道を形成し、前記観察対象物に実験動作を行う複数の実験装置の近傍に設けられたレール部と、
前記レール部に沿って移動する前記搬送装置の位置を検出可能な検知部と、
前記搬送装置および前記検知部を制御可能な制御部と、
を備える、
実験支援システム。
【請求項2】
前記レール部は、少なくとも2つ以上のレール部材で構成され、複数の前記レール部材を組み合わせて分岐又は延長が可能であり、
前記搬送装置は、分岐又は延長された前記レール部に沿って移動可能である、
請求項1に記載の実験支援システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記実験動作における実験結果を取得し、取得した前記実験結果を外部へ送信する、
請求項1に記載の実験支援システム。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記観察対象物の搬送を行わないとき、待機場所に待機する、
請求項1に記載の実験支援システム。
【請求項5】
前記実験装置である第一実験装置と、
前記第一実験装置と異なる前記実験装置である第二実験装置と、
をさらに備え、
前記レール部は、前記第一実験装置および前記第二実験装置の近傍に設けられ、
前記搬送装置は、前記レール部に沿って移動し、前記第一実験装置から前記第二実験装置へ前記観察対象物を搬送する、
請求項1に記載の実験支援システム。
【請求項6】
前記搬送装置は、前記レール部に沿って移動し、前記第二実験装置から前記第一実験装置へ前記観察対象物を搬送する、
請求項5に記載の実験支援システム。
【請求項7】
前記第一実験装置はインキュベータであり、
前記第二実験装置は顕微鏡である、
請求項5に記載の実験支援システム。
【請求項8】
前記第一実験装置又は前記第二実験装置は、前記観察対象物を移動可能な副搬送装置を有する、
請求項5に記載の実験支援システム。
【請求項9】
手作業でも実験動作を実施可能な実験装置および複数の前記実験装置間を移動可能な搬送装置の制御方法であって、
前記搬送装置が観察対象物を保持し、
前記観察対象物を保持した前記搬送装置が前記実験装置の近傍に移動し、
前記搬送装置が前記観察対象物を前記実験装置に設置し、
前記実験装置が前記観察対象物に対して実験動作を実施する、
制御方法。
【請求項10】
前記実験動作における実験結果を取得し、取得した前記実験結果を外部へ送信する、
請求項9に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実験支援システムおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、再生医療領域における研究開発では、人の手作業によって行う実験が一般的であり、実験を効率化および省力化するため、各実験装置の自動化や遠隔操作を可能にすることが求められる。手作業による実験が一般的な理由として、多種多様な実験プロトコルや材料(細胞)を扱うために画一的に自動化することが困難であることと、扱う対象が細胞等の生物であることが挙げられる。扱う対象が生物である細胞であり、培地交換等の操作に対する反応が一定でないため、実験操作の自動化が難しい。
【0003】
例えば、細胞等の生体試料を扱う自動実験装置として、特許文献1に記載のある生体試料を自動的に処理するための実験室システムや、自動細胞培地交換装置であるCellQualia Intelligent Cell Processing System(シンフォニアテクノロジー株式会社製)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のある実験室システムや前述の自動細胞培地交換装置は、大掛かりな装置を導入する必要があるため、実験プロトコルが比較的頻繁に変わる研究用途では導入が難しい虞があり、従来の手作業による実験で用いられる実験装置や実験プロトコルを極力維持して実験できる自動化システムが求められる。
【0006】
上記事情を踏まえ、本発明は従来の実験で用いられる実験装置および実験プロトコルを極力維持しつつ実験を自動化できる実験支援システムおよび制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明の実験支援システムは、観察対象物を保持可能な保持部と、前記保持部を移動可能な可動部とを有する搬送装置と、前記搬送装置が移動する軌道を形成し、前記観察対象物に実験動作を行う複数の実験装置の近傍に設けられたレール部と、前記レール部に沿って移動する前記搬送装置の位置を検出可能な検知部と、前記搬送装置および前記検知部を制御可能な制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実験支援システムおよび制御方法によれば、従来の実験で用いられる実験装置および実験プロトコルを極力維持しつつ実験を自動化できる実験支援システムおよび制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る実験支援システムを模式的に示す斜視図である。
【
図2】同実験支援システムにおける搬送装置およびレール部を模式的に示す斜視図である。
【
図3】同実験支援システムにおける第一実験装置の一例を示す斜視図である。
【
図4】同実験支援システムにおける実験動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】同実験動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】同実験動作の一例を示すフローチャートである。
【
図7】同実験動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る実験支援システム100を模式的に示す斜視図である。
【0011】
実験支援システム100は、搬送装置10と、レール部20と、第一保温器30と、第二保温器40と、顕微鏡50と、安全キャビネット60と、制御部70と、を備える。本実施形態において、観察対象物に対して実験動作を行う第一保温器30、第二保温器40、顕微鏡50および安全キャビネット60を単に実験装置とも称する。また、本実施形態において、複数の実験装置とは、これらの実験装置のうちの2つ以上の実験装置を示している。
【0012】
本実施形態では、
図1に示すように、実験支援システム100における鉛直方向を「上下方向V」、鉛直上向きを上下方向Vにおける「上方UP」、鉛直下向きを上下方向Vにおける「下方LO」と定義する。また、搬送装置10が主に移動する方向を「左右方向H」、待機状態の搬送装置10が設けられた向きを左右方向Hにおける「左方LT」、反対向きを左右方向Hにおける「右方RT」と定義する。また、上下方向Vおよび左右方向Hと垂直な方向を「前後方向D」、前後方向Dにおける一方を「前方FR」、他方を前後方向Dにおける「後方RR」と定義する。
【0013】
なお、上述の実験装置を用いて作業者が手作業で実験を行ってもよい。例えば、
図1に示す実験支援システム100は、手作業で実験を行う場合、各実験装置の前方FRに立つ作業者が実験を行いやすいように各実験装置が配置されている。
【0014】
図2は、実験支援システム100における搬送装置10およびレール部20を模式的に示す斜視図である。
図2には、搬送装置10と、搬送装置10の近傍におけるレール部20の一部が示されている。
【0015】
搬送装置10は、実験を行う対象である観察対象物を保持および搬送可能な小型のロボット装置である。搬送装置10は、例えば、6軸の多関節ロボットアームであり、観察対象物を保持するための様々な位置姿勢をとることが可能である。
【0016】
搬送装置10は、
図1に示すように、テーブルTの左方LTにおける端部の近傍に配置されている。また、搬送装置10は、レール部20の上方UPに配置されている。本実施形態において、
図1に示す搬送装置10の位置を搬送装置10の待機場所とし、待機場所に配置された搬送装置10を、待機状態の搬送装置10とする。
【0017】
搬送装置10は、可動部11と、第一回動部12と、複数の第二回動部13と、複数のアーム14と、保持部15と、を備える。
可動部11は、搬送装置10をレール部20に沿って移動可能に支持している。例えば、可動部11は車輪と、車輪を回転可能な電動モータとを有し、搬送装置10は、電動モータによって可動部11の車輪を回転させることでレール部20に沿って移動する。例えば、
図2に示す搬送装置10は、前後方向Dに延びるレール部20に沿って前後方向Dに移動可能である。
【0018】
複数の第二回動部13は、複数のアーム14を回動可能に連結している。また、第一回動部12は、複数の第二回動部13、複数のアーム14および保持部15を可動部11に対して回動可能に支持している。
【0019】
保持部15は、2つの支持部16を有し、2つの支持部16を接近又は離間させる構造を含んでいる。保持部15は、搬送装置10の先端に設けられ、2つの支持部16を接近又は離間させることで観察対象物を保持する挟持型ハンドである。
具体的には、搬送装置10は、可動部11が含む移動機構によって観察対象物の近傍へ移動し、第一回動部12又は第二回動部13を回動させ、2つの支持部16の間に観察対象物が配置される姿勢をとり、2つの支持部16を接近させて観察対象物を挟み込むことで観察対象物を保持する。観察対象物は、例えば、細胞培養を行うウェルプレートやシャーレである。
【0020】
搬送装置10は、観察対象物を保持および搬送可能であればよく、例えば、3軸の直交ロボットアームで構成されてもよいし、その他の構成により保持部15を所望の位置に移動させる機構でもよい。また、保持部15は、観察対象物を保持可能であればよく、吸着により観察対象物を保持する吸着型ハンドでもよい。
【0021】
レール部20は、搬送装置10が移動する軌道を形成するレール部材(ガイド)である。レール部20は、
図1に示すようにテーブルTの上方UPの面に設けられている。レール部20は、前後方向Dに延びる第一レール部材21と、左右方向Hに延びる第二レール部材22を有し、上方UPからの平面視において前後方向Dおよび左右方向Hに延びるL字形状をしている。
【0022】
レール部20は、例えば、搬送装置10が車輪の回転によって移動する場合、搬送装置10が所定の軌道から外れるのを抑制するガイドである。また、レール部20は、電動モータおよびボールねじ等を利用した直動機構によって搬送装置10を移動可能な構成を含んでいてもよい。
【0023】
レール部20は、拡張可能であり、分岐又は延長できる構造を含む。レール部20は、複数のレール部材で構成され、前後方向Dに延びる第一レール部材21と、左右方向Hに延びる第二レール部材22とを連結して構成されている。
【0024】
例えば、
図1に示す実験支援システム100において、前後方向Dに延びるレール部材(第三レール部材)を安全キャビネット60の右方RTに追加することでレール部20を延長し、略U字形状のレール部20を形成してもよい。また、前後方向Dに延びるレール部材を第二保温器40と顕微鏡50との間に追加することでレール部20を分岐させ、F字形状のレール部20を形成してもよい。
【0025】
分岐又は延長可能なレール部20を用いることで、使用する実験装置や実験プロトコルを変更する場合でも、実験装置の配置等に合わせてレール部20を設けることができる。また、複数の実験領域(実験室)で実験支援システム100を運用する場合、各実験領域で行う実験内容、使用する実験装置の機能や配置等に合わせてレール部20を設けることができる。また、従来は手作業で実験を行っていた実験領域に実験支援システム100を採用する場合、従来使用している実験装置を維持しつつ自動化することができる。
【0026】
また、レール部20には、搬送装置10の位置を検出可能な検知部(不図示)が設けられている。検知部は、例えば、フォトセンサである。例えば、搬送装置10が車輪の回転によってレール部20に設けられた溝に沿って移動する場合、検知部として、透過型や分離型のフォトセンサをレール部20の溝を挟んで配置する。搬送装置10がレール部20に沿って移動し、車輪がフォトセンサを通過したとき、フォトセンサは、車輪の通過を検出する。
【0027】
レール部20に複数の検知部を設けることで、搬送装置10が、レール部20上のどこに位置しているのかを検出できる。検知部によって検出された検出結果は、制御部70へ送信される。
【0028】
検知部は、搬送装置10に設けられてもよい。例えば、搬送装置10が車輪の回転によって移動する場合、車輪を駆動する電動モータの回転方向および回転数を検出するエンコーダを検知部として搬送装置10の位置を検出することができる。また、検知部は、搬送装置10やレール部20に含まれず、例えば、搬送装置10やレール部20を俯瞰する位置に設けられたカメラでもよい。その場合、実験支援システム100は、カメラによって取得した画像情報又は動画情報によって搬送装置10の位置を検出する。
【0029】
また、検知部は、各実験装置に設けられたレーザセンサでもよい。例えば、実験装置の近傍又は側面等にレーザセンサを設け、レーザセンサによって搬送装置10を検知することで、搬送装置10が実験装置の近傍に位置することを検出してもよい。
また、検知部が設けられているレール上に障害物が載置された際、検知部から制御部70に信号を送信した後に搬送装置10へ停止信号を送信、もしくは、検知部の信号を直接に搬送装置10へ送信することで、搬送装置10の稼働を停止させ、障害物の接触を防止することもできる。
【0030】
第一保温器30は、例えば、細胞を培養する際に用いるインキュベータである。
図1に示すように、第一保温器30はテーブルTの上方UPには配置されておらず、第一保温器30は、例えば、実験室の床面に設置されている床置き型インキュベータである。第一保温器30は、テーブルTの左方LTに配置されている。
【0031】
図3は、第一保温器30の一例を示す斜視図である。以下、第一保温器30を第一実験装置とも称する。
図3は開扉状態の第一保温器30であり、第一保温器30の内部にはプレートWが保管されている。例えば、プレートWは、実験の観察対象である細胞が内包されたウェルプレートであり、第一保温器30を使用して細胞培養が行われている観察対象物である。
【0032】
第一保温器30の右方RTには、副搬送装置31が設けられている。副搬送装置31は、上下可動部32と、左右可動部33と、前後可動部34と、を備える。
【0033】
上下可動部32は、第一保温器30の右方RTの側面に接続され、上下方向Vに延びる略棒状の部材である。上下可動部32の上方UPの端部は、第一保温器30の天井面(上方UPの面)よりも上方UPに位置している。
【0034】
左右可動部33は、上下可動部32に接続され、上下方向Vと垂直な方向に延びる略棒状の部材であり、上下方向Vに延びる回転軸を回転中心として上下可動部32に対して回転可能である。上下可動部32および左右可動部33は、左右可動部33が上下可動部32に対して上下方向Vおよび左右方向Hに移動可能な構造を含み、具体的には、レールを挟み込むようにして動く車輪や、ボールねじとリニアガイド、ワイヤでの巻き上げ等の手段がある。
【0035】
前後可動部34は、左右可動部33に接続され、左右可動部33が延びる方向と垂直な方向に延びる略棒状の部材である。左右可動部33および前後可動部34は、前後可動部34が左右可動部33に対し左右方向Hおよび前後方向Dに移動可能な構造を含む。
【0036】
また、前後可動部34には、プレートWを保持可能な構造(例えば、制御部70による指令によって稼働する挟持型ハンドや吸着型ハンド)が設けられている。そのため、副搬送装置31は、前後可動部34によってプレートWを保持し、プレートWを第一保温器30の外部へ取り出し、所望の位置に移動させることができる。反対に、第一保温器30の外部に配置されているプレートWを保持し、プレートWを第一保温器30の内部へ移動して収容することもできる。
【0037】
副搬送装置31は、
図3に示すような直動構造に限られず、例えば、
図3の上下可動部32、左右可動部33、前後可動部34に代わり、搬送装置10のようなアームと回動部とで構成されたハンドロボットであってもよい。また、
図3に示す第一保温器30の扉は、左方LTに開く。そのため、第一保温器30の右方RTに副搬送装置31を設けることで、第一保温器30の扉を開閉する際に、扉と、副搬送装置31又は副搬送装置31が保持しているプレートWとが接触するのを抑制でき、プレートWの取り出し又は収容を安全に行うことができる。第一保温器30の扉が右方RTに開く場合は、副搬送装置31を第一保温器30の左方LTに設けることで、同様にプレートWの取り出し又は収容を安全に行うことができる。
【0038】
第一保温器30は、第一保温器30の扉を自動で開扉可能な自動開扉機構(不図示)を有するのが望ましい。第一保温器30が自動開扉機構を有することで、内部にプレートWを収容し、閉扉した状態の第一保温器30において、自動開扉機構と副搬送装置31とを制御することで、開扉およびプレートWの取出しの一連の動作を自動で実施できる。このとき、自動開扉機構および副搬送装置31は、制御部70によって制御される。
【0039】
自動開扉機構は、例えば、電動モータによって駆動される回動又は直動機構であり、電動モータが駆動されると、扉を開き方向へ押し、強制的に開扉する。開扉した状態の第一保温器30において、例えば、搬送装置10の支持部16によって、又は副搬送装置31によって扉を閉じる方向へ押すことで、閉扉することができる。
【0040】
自動開扉機構が、開いた状態の扉を感知して閉扉可能な機構を有していてもよい。また、第一保温器30が自動開扉機構を有していなくても、搬送装置10又は副搬送装置31によって開扉してもよい。
【0041】
第二保温器40は、例えば、細胞を培養する際に用いるインキュベータである。
図1に示すように、第二保温器40はテーブルTの上方UPの面に配置されている。第二保温器40は、例えば、小型の卓上型インキュベータである。
【0042】
第二保温器40は、待機状態の搬送装置10の右方RTに配置されている。すなわち、レール部20における第一レール部材21の右方RTに配置されている。また、第二保温器40は、レール部20における第二レール部材22の近傍および後方RRに配置されている。
【0043】
第二保温器40は、前方FRに扉が設けられており、前方FRからプレートWを内部に収容できる。また、プレートWが収容されている第二保温器40において、プレートWを前方FRに取り出すことができる。
【0044】
第二保温器40は、第一保温器30と同様に、開扉(又は閉扉)および収容されたプレートWの取出しを自動で実施できる自動開扉機構や副搬送装置を備えていてもよい。
【0045】
顕微鏡50は、例えば、ステージ50sに設置されたプレートWを所望の倍率に拡大して観察および撮影可能な電子顕微鏡である。以下、顕微鏡50を第二実験装置とも称する。顕微鏡50は、
図1に示すように、テーブルTの上方UPの面に配置されている。
【0046】
顕微鏡50は、第二保温器40の右方RTに配置されている。また、顕微鏡50は、レール部20における第二レール部材22の近傍および後方RRに配置されている。顕微鏡50は、ディスプレイ等の表示装置に接続され、顕微鏡50が撮影した画像や観察中の映像を表示装置に表示してもよい。また、顕微鏡50によって撮影した画像や観察中の映像は、制御部70に送信されてもよい。
【0047】
安全キャビネット60は、安全キャビネット60の内部に設置されたプレートWが汚染されるのを抑制するクリーンベンチ等である。安全キャビネット60は、
図1に示すように、テーブルTの上方UPの面に配置されている。
【0048】
安全キャビネット60は、テーブルTの右方RTの端部の近傍に配置されている。また、安全キャビネット60は、レール部20における第二レール部材22の近傍および後方RRに配置されている。安全キャビネット60は、プレートWに対して培地交換のための実験動作を自動で行う自動培地交換装置等の実験装置を内部に備えていてもよい。
【0049】
制御部70は、
図1に示すように、テーブルTの上方UPの面に配置されている。制御部70は、左右方向Hにおいて、顕微鏡50と安全キャビネット60とに挟まれて配置されている。
【0050】
制御部70は、例えば、プロセッサとメモリと記憶部等を備えたプログラム実行可能な装置(コンピュータ)である。制御部70の各機能は、例えば、CPU(Central Processing Unit;中央処理装置)又はGPU(Graphics Processing Unit;グラフィックスプロセッサ)のような1つ以上のプロセッサがプログラムメモリに記憶されたプログラムを実行することにより実現される。ただし、これら機能の全部又は一部は、LSI(Large Scale Integration;大規模集積回路)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PLD(Programmable Logic Device)等のハードウェア(例えば回路部;circuity)により実現されてもよい。また、上記機能の全部又は一部は、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせで実現されてもよい。記憶部は、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、ROM(Read-Only Memory;読み出し専用メモリ)、又はRAM(Random Access Memory;読み書き可能なメモリ)等により実現される。
【0051】
制御部70は、搬送装置10および検知部と無線又は有線で接続され、搬送装置10および検知部を制御可能である。また、制御部70は、各実験装置と無線又は有線で接続され、各実験装置における稼働状況や実験結果を取得してもよいし、各実験装置の動作を制御してもよい。
【0052】
また、制御部70は、外部と無線接続された通信部(不図示)を備え、外部への信号の送信又は外部からの信号の受信ができるのが望ましい。
例えば、制御部70は、顕微鏡50と接続され、顕微鏡50が撮影した動画像等を取得し、取得した動画像を外部の端末装置へ送信する。端末装置は、ユーザ(作業者)が使用するパーソナルコンピュータ、スマートフォンまたはタブレット等である。
【0053】
ユーザは、実験装置から離れた場所にいる場合でも、ユーザの端末装置が制御部70から受信した実験結果(例えば、顕微鏡50が撮影した動画像)を確認することができる。また、ユーザは、端末装置から制御部70へ指令を送信し、受信した指令に基づいて制御部70が搬送装置10又は各実験装置を制御することで、実験支援システム100を遠隔操作できる。
【0054】
例えば、ユーザは、実験支援システム100が設けられた実験室から離れた自室にいる状態でも、実験支援システム100から実験結果を受信し、受信した実験結果に応じた実験動作を実験支援システム100に指示することができる。ユーザは、受信した実験結果を確認した後、実験室に行き、受信した実験結果に基づいた実験動作等を手作業で行ってもよい。
【0055】
本実施形態において、搬送装置10、レール部20、第二保温器40、顕微鏡50、安全キャビネット60および制御部70は、テーブルTの上方UPの面に設けられているが、これらの全部又は一部は床面に設けられてもよい。
【0056】
次に、実験支援システム100における実験動作および制御方法の一例を説明する。
図4は、実験支援システム100における実験動作の一例を示すフローチャートである。
【0057】
実験支援システム100が起動されると、実験支援システム100は、ステップS100(待機工程)を実施する。ステップS100において、制御部70は、搬送装置10を所望の位置で待機させ、待機状態にする。
【0058】
次に、実験支援システム100は、ステップS200(設定時間判定工程)を実施する。ステップS200において、予め設定された設定時間になったか否かを判定する。ここで、設定時間とは、実験支援システム100が実験動作を開始する時刻(実験開始時刻)でもよいし、起動された実験支援システム100が実験動作を開始するまで待機する時間(待機時間)でもよい。
【0059】
例えば、設定時間が実験開始時刻である場合、制御部70は、現在の時刻と、設定時間とを比較し、現在の時刻と設定時間とが一致する場合、設定時間になったと判定する。また、設定時間が待機時間である場合、制御部70は、設定された時間が経過したか否かを判定し、経過した場合、設定時間になったと判定する。
【0060】
制御部70は、設定時間になっていないと判定したとき、ステップS100に戻り、待機状態を継続させる。制御部70が設定時間になったと判定したとき、実験支援システム100は、ステップS300(第一実験工程)を実施する。
【0061】
図5は、第一実験工程S300の一例を示すフローチャートである。ステップS300において、制御部70は、搬送装置10を制御し、搬送装置10を第一実験装置(ここでは第一保温器30)の近傍へ移動する(ステップS301)。
【0062】
次に、制御部70は、搬送装置10が指定の位置に到着したか否かを判定する(ステップS302)。例えば、制御部70は、レール部20における指定の位置に配置した検知部によって搬送装置10が検出されたか否かを判定する。検知部によって搬送装置10が検出されていない場合、制御部70は、ステップS301へ戻り、搬送装置10を第一実験装置の近傍へ移動させる。検知部が搬送装置10を俯瞰で撮影するカメラである場合は、検知部が撮影した動画像に基づいて搬送装置10の位置を取得し、搬送装置10が指定の位置に到着したか否かを判定する。
【0063】
制御部70は、搬送装置10が指定の位置に到着したと判定したとき、ステップS303を実施する。ステップS303において、制御部70は、第一実験装置における実験動作を開始する。ここでは、まず、第一保温器30を開扉する。
【0064】
制御部70は、前述の自動開扉機構を制御し、第一保温器30を開扉する。制御部70は、搬送装置10又は副搬送装置31を制御して第一保温器30を開扉してもよい。
【0065】
次に、制御部70は、副搬送装置31を制御し、第一保温器30の内部からプレートWを取り出す(ステップS304)。具体的には、副搬送装置31は、第一保温器30の内部に収容されたプレートWを保持した状態で第一保温器30の外部へ持ち出し、その後、第一保温器30の天井の上方UPの面に載置する。
【0066】
制御部70は、第一保温器30の内部からプレートWを取り出した後、自動開扉機構、副搬送装置31又は搬送装置10を制御し、第一保温器30を閉扉する。次に、制御部70は、搬送装置10を制御し、搬送装置10が第一保温器30の天井に載置されたプレートWを保持する。搬送装置10がプレートWを保持した後に第一保温器30を閉扉してもよい。
【0067】
ステップS303およびステップS304を実施し、実験支援システム100は、第一実験装置における実験動作を完了する。
【0068】
次に、実験支援システム100は、ステップS400(第二実験工程)を実施する。
図6は、第二実験工程S400の一例を示すフローチャートである。まず、制御部70は、搬送装置10を制御し、搬送装置10を第二実験装置(ここでは顕微鏡50)の近傍へ移動する(ステップS401)。このとき、搬送装置10は、プレートWを保持した状態である。
【0069】
次に、制御部70は、搬送装置10が指定の位置に到着したか否かを判定する(ステップS402)。搬送装置10が指定の位置に到着したか否かを判定は、ステップS302と同様の方法で判定してもよいし、異なる方法で判定してもよい。本実施形態においては、制御部70は、ステップS302と同様に、レール部20における指定の位置に配置した検知部によって搬送装置10が検出されたか否かを判定する。
【0070】
検知部によって搬送装置10が検出されていない場合、制御部70は、ステップS401へ戻り、搬送装置10を第二実験装置の近傍へ移動させる。制御部70は、搬送装置10が指定の位置に到着したと判定したとき、ステップS403を実施する。
【0071】
ステップS403において、制御部70は、第二実験装置における実験動作を開始する。ここでは、まず、制御部70は、搬送装置10を制御し、プレートWを顕微鏡50におけるステージ50sに設置する。
【0072】
また、制御部70は、プレートWがステージ50sに設置されているか否か(設置状態)を判定する(ステップS404)。ステップS404において、例えば、顕微鏡50がプレートWを検出可能なセンサを備え、センサによってプレートWが検出されたか否かを判定することによってプレートWのステージ50sにおける設置状態を判定してもよい。
【0073】
また、プレートWのステージ50sにおける設置状態は、搬送装置10がプレートWの設置動作を完了したか否かによって判定されてもよいし、顕微鏡50の近傍に設けられたカメラ等によって検出した結果に基づいて判定されてもよい。
【0074】
制御部70は、プレートWがステージ50sに設置されていないと判定したとき、ステップS403へ戻り、搬送装置10にプレートWの設置動作を実施させる。制御部70は、プレートWがステージ50sに設置されたと判定したとき、ステップS405を実施する。
【0075】
ステップS405において、制御部70は、顕微鏡50を制御し、顕微鏡50によってプレートWを観察又は撮影する。このとき、顕微鏡50における観察モードや倍率等の設定は、制御部70からの指令に基づいて設定されてもよいし、予め顕微鏡50に設定されていてもよい。
【0076】
制御部70は、顕微鏡50による実験動作(観察又は撮影)が完了したか否かを判定する(ステップS406)。制御部70は、顕微鏡50による実験動作が完了していないと判定したとき、ステップS405へ戻り実験動作を続ける。制御部70は、顕微鏡50による実験動作が完了したと判定したとき、ステップS407へ移行する。
【0077】
ここで、制御部70は、第二実験装置における実験結果を取得し、取得した実験結果を外部(例えば、ユーザが使用する端末装置)へ送信してもよい。また、ユーザは、実験結果に基づいて、次の実験動作に関する指令を制御部70へ送信してもよい。例えば、ユーザは、顕微鏡50における観察モードや倍率を変更し、プレートWを再度撮影するように制御部70へ指令を送信してもよい。
【0078】
ステップS403およびステップS405を実施し、実験支援システム100は、第二実験装置における実験動作を完了する。
【0079】
次に、制御部70は、搬送装置10を制御し、ステージ50sに設置されたプレートWを搬送装置10が保持する(ステップS407)。
【0080】
次に、実験支援システム100は、ステップS500(第三実験工程)を実施する。
図7は、第三実験工程S500の一例を示すフローチャートである。まず、制御部70は、搬送装置10を制御し、搬送装置10を第一実験装置(ここでは第一保温器30)の近傍へ移動する(ステップS501)。このとき、搬送装置10は、プレートWを保持した状態である。
【0081】
次に、制御部70は、搬送装置10が指定の位置に到着したか否かを判定する(ステップS502)。搬送装置10が指定の位置に到着したか否かを判定は、ステップS302と同様の方法で判定してもよいし、異なる方法で判定してもよい。本実施形態においては、制御部70は、ステップS302と同様に、レール部20における指定の位置に配置した検知部によって搬送装置10が検出されたか否かを判定する。
【0082】
検知部によって搬送装置10が検出されていない場合、制御部70は、ステップS501へ戻り、搬送装置10を第一実験装置の近傍へ移動させる。制御部70は、搬送装置10が指定の位置に到着したと判定したとき、ステップS503を実施する。
【0083】
ステップS503において、制御部70は、第一実験装置における実験動作を開始する。ここでは、まず、制御部70は、第一保温器30における自動開扉機構、副搬送装置31又は搬送装置10を制御し、ステップS303と同様に第一保温器30を開扉する。第一保温器30を開扉した後、制御部70は、搬送装置10を制御し、搬送装置10がプレートWを第一保温器30の内部に設置する(ステップS503)。次に、ステップS504へ移行する。
【0084】
ここで、第一保温器30の内部にプレートWが設置されたか否か(設置状態)を判定する工程を設けてもよい。例えば、第一保温器30の内部に設けられたセンサによってプレートWが設置されたか否かを検出し、制御部70は、センサの検出結果に基づいて設置状態を判定する。制御部70は、プレートWが設置されていないと判定したときは、ステップS503へ戻り、プレートWが設置されたと判定したときは、ステップS504へ移行する。
【0085】
ステップS504において、制御部70は、第一保温器30における自動開扉機構、副搬送装置31又は搬送装置10を制御し、第一保温器30を閉扉する。実験支援システム100は、実験動作を完了する。
【0086】
図4-7に示した実験動作によって、実験支援システム100は、第一保温器30に収容されて細胞培養が行われたプレートWを取り出し、顕微鏡50によってプレートWを観察(撮影)し、再びプレートWを第一保温器30に収容する。
【0087】
実験支援システム100を用いることで、従来、人が手作業で行っていたこれらの一連の実験動作を自動で行うことができる。すなわち、従来の実験プロトコルを極力維持しつつ実験を自動化できる。また、複数のレール部材を所望の配置に設けて形成したレール部20と、レール部20に沿って移動し、観察対象物(例えばプレートW)を保持および搬送可能な搬送装置10を用いることで、従来の実験で用いられる実験装置を極力維持しつつ実験を自動化できる。
また、検知部は、観察対象物の位置を特定でき、また、搬送に要した時間を算出することができる。これらのデータは、観察対象物に変化が生じた際、参考にすることができる。
【0088】
また、制御部70は、各動作(例えば、プレートWの搬送動作)に掛かった時間を取得および記憶してもよく、制御部70が取得および記憶した実験条件を使用して再び実験することで、精度の高い再現実験を行うことができる。
【0089】
本実施形態の実験支援システム100および制御方法によれば、観察対象物を保持して移動可能な搬送装置10と、複数の実験装置の近傍に搬送装置10が移動するための軌道を形成するレール部20と、搬送装置10の位置を検出可能な検知部と、搬送装置10および検知部を制御可能な制御部70を備える。
【0090】
その結果、上述した一連の実験動作のような従来の実験で用いられる実験プロトコルと、従来の実験で用いられる実験装置とを極力維持しつつ実験を自動化できる実験支援システムおよび制御方法を提供することができる。
【0091】
以上、本発明の一実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。また、上述の一実施形態および以下で示す変形例において示した構成要素は適宜に組み合わせて構成することが可能である。
【0092】
(変形例1)
上記実施形態において、第一保温器30を第一実験装置とし、顕微鏡50を第二実験装置としたが、第一実験装置および第二実験装置の態様はこれに限定されない。第一実験装置および第二実験装置として、実施する実験プロトコルに合わせて任意の実験装置を採用してもよい。
【0093】
例えば、第二保温器40を第一実験装置とし、安全キャビネット60を第二実験装置として実験を実施してもよい。また、上記実施形態で述べた実験装置以外の実験装置を使用して実験を実施してもよい。
【0094】
(変形例2)
上記実施形態において、実験支援システム100は、第一実験装置および第二実験装置を用いて実験動作を行ったが、実験支援システムの態様はこれに限定されない。実験支援システムは、第三実験装置、第四実験装置など、3つ以上の実験装置を用いて実験動作を行ってもよい。
【0095】
例えば、上記実施形態における第二実験装置(顕微鏡50)での実験動作の後、搬送装置10がプレートWを安全キャビネット60へ搬送し、安全キャビネット60を用いた実験動作を行ってもよい。
【符号の説明】
【0096】
100 実験支援システム
10 搬送装置
11 可動部
15 保持部
20 レール部
21 第一レール部材(レール部材)
22 第二レール部材(レール部材)
30 第一保温器(第一実験装置)
31 副搬送装置
40 第二保温器
50 顕微鏡(第二実験装置)
60 安全キャビネット
70 制御部