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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167512
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】インサート成形機
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/42 20060101AFI20241127BHJP
   B29C 45/17 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B29C45/42
B29C45/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083633
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】509249531
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】兒島 賢太郎
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CM14
4F202CM17
4F206JA07
4F206JB12
4F206JF05
4F206JF35
4F206JF36
4F206JL02
4F206JN41
4F206JQ06
4F206JQ90
4F206JW23
(57)【要約】
【課題】大型化を抑制しつつ、トラバースユニットの仕事のバリエーションの幅を広げることができる、インサート成形機を提供する。
【解決手段】インサート成形機10は、射出成形機12とトラバースユニット18とを備える。トラバースユニット18は、金型装置28の開閉方向に対して平面視で直交する方向(X軸方向)に延びて設けられた1本の主搬送レール60と、主搬送レール60に取り付けられた第1搬送部62および第2搬送部66と、第1X軸方向駆動部64と、第2X軸方向駆動部68とを備える。第1搬送部62は、インサート品14または成形品16を離脱可能に把持する第1把持部88と、第1昇降部90とを有し、第1X軸方向駆動部64でX軸方向へ往復駆動される。第2搬送部66は、インサート品14または成形品16を離脱可能に把持する第2把持部110と、第2昇降部112とを有し、第2X軸方向駆動部68でX軸方向へ往復駆動される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に開閉する第1金型および第2金型を有する金型装置を備える射出成形機と、
インサート品を前記射出成形機にセットするとともに、前記インサート品が埋め込まれた成形品を前記射出成形機から取り出すトラバースユニットとを備え、
前記第1金型および前記第2金型の開閉方向をY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とし、Y軸方向およびZ軸方向に対して直交する方向をX軸方向としたとき、前記トラバースユニットは、
前記射出成形機の上方にX軸方向へ延びて設けられた1本の主搬送レールと、
前記主搬送レールに走行可能に取り付けられた第1搬送部と、
前記主搬送レールに走行可能に取り付けられた第2搬送部と、
前記第1搬送部をX軸方向へ往復駆動させる第1X軸方向駆動部と、
前記第2搬送部をX軸方向へ往復駆動させる第2X軸方向駆動部とを備え、
前記第1搬送部は、前記インサート品または前記成形品を離脱可能に把持する第1把持部と、前記第1把持部をZ軸方向へ移動させる第1昇降部とを有し、
前記第2搬送部は、前記インサート品または前記成形品を離脱可能に把持する第2把持部と、前記第2把持部をZ軸方向へ移動させる第2昇降部とを有する、インサート成形機。
【請求項2】
前記第1搬送部、前記第2搬送部、前記第1X軸方向駆動部および前記第2X軸方向駆動部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記インサート品を前記射出成形機の内部へ搬送して前記第1金型または前記第2金型にセットするように前記第1搬送部および前記第1X軸方向駆動部の動作を制御するとともに、前記成形品を前記第1金型または前記第2金型から取り外して前記射出成形機の外部へ搬送するように前記第2搬送部および前記第2X軸方向駆動部の動作を制御する、請求項1に記載のインサート成形機。
【請求項3】
前記主搬送レールは、X軸方向における前記射出成形機の一方側に延びる第1レール部を有し、
前記制御部は、前記第1搬送部を前記第1レール部で往復駆動させるように前記第1X軸方向駆動部の動作を制御するとともに、前記第2搬送部を前記第1レール部で往復駆動させるように前記第2X軸方向駆動部の動作を制御する、請求項2に記載のインサート成形機。
【請求項4】
前記第1レール部において、前記第1搬送部は前記第2搬送部よりも前記射出成形機に近い側に設けられる、請求項3に記載のインサート成形機。
【請求項5】
前記主搬送レールは、X軸方向における前記射出成形機の他方側に延びる第2レール部を有し、
前記制御部は、前記第1レール部と前記第2レール部との間で前記第1搬送部を移動させるように前記第1X軸方向駆動部の動作を制御する、請求項4に記載のインサート成形機。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1レール部と前記第2レール部との間で前記第2搬送部を移動させるように前記第2X軸方向駆動部の動作を制御する、請求項5に記載のインサート成形機。
【請求項7】
前記1搬送部は、
前記主搬送レールで下方から支持された第1走行台と、
前記第1走行台からY軸方向に延びて設けられた第1Y軸方向搬送レールと、
前記第1走行台に取り付けられた第1Y軸方向駆動モータを有し、前記第1昇降部を前記第1Y軸方向搬送レールに沿ってY軸方向へ往復駆動させる第1Y軸方向駆動部とを備える、請求項2ないし6のいずれか1項に記載のインサート成形機。
【請求項8】
前記インサート品を前記射出成形機の外部で保持するスタック治具と、
前記インサート品を前記第1把持部に対して正確に位置決めする位置補正治具とを備え、
前記制御部は、前記スタック治具に載置された前記インサート品を前記第1把持部で把持して前記位置補正治具に移載するように前記第1搬送部の動作を制御し、続いて、前記位置補正治具に載置された前記インサート品を前記第1把持部で再び把持して前記第1金型または前記第2金型まで搬送するように前記第1搬送部および前記第1X軸方向駆動部の動作を制御する、請求項7に記載のインサート成形機。
【請求項9】
前記第2搬送部は、
前記主搬送レールで下方から支持された第2走行台と、
前記第2走行台からY軸方向に延びて設けられた第2Y軸方向搬送レールと、
前記第2走行台に取り付けられた第2Y軸方向駆動モータを有し、前記第2昇降部を前記第2Y軸方向搬送レールに沿ってY軸方向へ往復駆動させる第2Y軸方向駆動部とを備える、請求項2ないし6のいずれか1項に記載のインサート成形機。
【請求項10】
前記成形品に付着したゲートを切り離す切断刃を有するゲート除去装置を備え、
前記制御部は、前記第2把持部が把持した前記成形品の前記ゲートを前記切断刃に対して位置決めするように前記第2搬送部の動作を制御し、続いて、前記切断刃で前記ゲートを切断するように前記ゲート除去装置の動作を制御する、請求項9に記載のインサート成形機。
【請求項11】
前記第1搬送部および前記第2搬送部の少なくとも一方には、前記成形品から分離されたスプルーランナを離脱可能に把持する第3把持部と、前記第3把持部をZ軸方向へ移動させる第3昇降部とを有するスプルーランナ取出し部が設けられ、
前記制御部は、前記スプルーランナ取出し部の動作を制御する、請求項2ないし6のいずれか1項に記載のインサート成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機にインサート品をセットするとともに、射出成形機から成形品を取り出すトラバースユニットを備える、インサート成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインサート成形機の一例が下記特許文献1に開示されている。このインサート成形機は、射出成形機と、トラバースロボットとを備えている。トラバースロボットは、射出成形機の上部に取り付けられたX軸レールと、X軸レールを移動するX軸移動台車と、X軸移動台車に取り付けられたY軸レールと、Y軸レールを移動するY軸移動台車とを有している。Y軸移動台車には、2つの昇降アームが取り付けられている。そして、一方の昇降アームの下端部には、成形品取出ハンドが取り付けられており、他方の昇降アームの下端部には、インサート金具ハンドが取り付けられている。
【0003】
特許文献1に開示されたインサート成形機では、トラバースロボットの1つのY軸移動台車に2つの昇降アームが取り付けられているので、Y軸レールが射出成形機の上方に位置するとき、2つの昇降アームは必ず射出成形機の上方に位置していた。したがって、成形品取出ハンドおよびインサート金具ハンドの一方が射出成形機の内部で仕事をしている間に、他方は射出成形機の外部で仕事をすることができず、仕事のバリエーションの幅が狭くなっていた。
【0004】
下記特許文献2に開示された製品取出機は、射出成形機の上部に取り付けられたY軸走行シャフトと、Y軸走行シャフトにY軸方向へ移動可能に取り付けられた2つのX軸走行フレームとを有している。2つのX軸走行フレームのそれぞれには、Z軸昇降部がX軸方向へ移動可能に取り付けられており、Z軸昇降部の下端部には、ワーク保持部が取り付けられている。
【0005】
特許文献2に開示された製品取出機を特許文献1に開示されたインサート成形機のトラバースロボットと置き換えたと仮定すると、一方のZ軸昇降部が射出成形機の上方に位置するとき、他方のZ軸昇降部は射出成形機の上方から外れて位置することができる。したがって、一方のワーク保持部(成形品取出ハンドまたはインサート金具ハンド)が射出成形機の内部で仕事をしている間に、他方のワーク保持部(インサート金具ハンドまたは成形品取出ハンド)は、射出成形機の外部で仕事をすることができる。しかしながら、この構成では、大型部品であるX軸走行フレームを2つ用いるため、インサート成形機が大型になるおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開平6-53119号公報
【特許文献2】特開平4-33822号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は上記問題に対処するためになされたものであり、大型化することを抑制しつつ、トラバースユニットの仕事のバリエーションの幅を広げることができる、インサート成形機を提供することを目的とする。
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るインサート成形機の特徴は、水平方向に開閉する第1金型および第2金型を有する金型装置を備える射出成形機と、インサート品を前記射出成形機にセットするとともに、前記インサート品が埋め込まれた成形品を前記射出成形機から取り出すトラバースユニットとを備え、前記第1金型および前記第2金型の開閉方向をY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とし、Y軸方向およびZ軸方向に対して直交する方向をX軸方向としたとき、前記トラバースユニットは、前記射出成形機の上方にX軸方向へ延びて設けられた1本の主搬送レールと、前記主搬送レールに走行可能に取り付けられた第1搬送部と、前記主搬送レールに走行可能に取り付けられた第2搬送部と、前記第1搬送部をX軸方向へ往復駆動させる第1X軸方向駆動部と、前記第2搬送部をX軸方向へ往復駆動させる第2X軸方向駆動部とを備え、前記第1搬送部は、前記インサート品または前記成形品を離脱可能に把持する第1把持部と、前記第1把持部をZ軸方向へ移動させる第1昇降部とを有し、前記第2搬送部は、前記インサート品または前記成形品を離脱可能に把持する第2把持部と、前記第2把持部をZ軸方向へ移動させる第2昇降部とを有することにある。
【0009】
この構成によれば、X軸方向へ延びる1本の主搬送レールに第1搬送部および第2搬送部が走行可能に取り付けられているので、インサート成形機の小型化が可能になる。また、第1搬送部および第2搬送部の一方が射出成形機の内部で仕事を行っている間に、第1搬送部および第2搬送部の他方が射出成形機の外部で仕事を行うことができる。
【0010】
例えば、第1搬送部がインサート品を第1金型または第2金型にセットしている間に、第2搬送部が射出成形機の外部に設けられたゲート除去装置に対して成形品のゲートを位置決めできる。また、第1搬送部がインサート品を第1金型または第2金型にセットしている間に、第2搬送部が第1搬送部に対してインサート品を準備できる。さらに、第2搬送部がゲート除去装置に対して成形品のゲートを位置決めしている間に、第1搬送部がインサート品を第1金型または第2金型にセットするとともに、成形品を第1金型または第2金型から取り出すことができる。
【0011】
本発明に係るインサート成形機の他の特徴は、前記第1搬送部、前記第2搬送部、前記第1X軸方向駆動部および前記第2X軸方向駆動部を制御する制御部を備え、前記制御部は、前記インサート品を前記射出成形機の内部へ搬送して前記第1金型または前記第2金型にセットするように前記第1搬送部および前記第1X軸方向駆動部の動作を制御するとともに、前記成形品を前記第1金型または前記第2金型から取り外して前記射出成形機の外部へ搬送するように前記第2搬送部および前記第2X軸方向駆動部の動作を制御することにある。
【0012】
この構成によれば、インサート品が射出成形機の内部へ搬送されて第1金型または第2金型にセットされる工程と、成形品が第1金型または第2金型から取り外されて射出成形機の外部へ搬送される工程とが並行して行われるので、成形品の成形効率を高めることが可能になる。
【0013】
本発明に係るインサート成形機の他の特徴は、前記主搬送レールは、X軸方向における前記射出成形機の一方側に延びる第1レール部を有し、前記制御部は、前記第1搬送部を前記第1レール部で往復駆動させるように前記第1X軸方向駆動部の動作を制御するとともに、前記第2搬送部を前記第1レール部で往復駆動させるように前記第2X軸方向駆動部の動作を制御することにある。
【0014】
この構成によれば、第1搬送部および第2搬送部が、X軸方向における射出成形機の一方側に位置する領域を仕事スペースとして共有できる。したがって、狭い仕事スペースを有効に利用することが可能になり、また、狭い設置スペースにインサート成形機を設置することが可能になる。
【0015】
本発明に係るインサート成形機の他の特徴は、前記第1レール部において、前記第1搬送部は前記第2搬送部よりも前記射出成形機に近い側に設けられることにある。
【0016】
この構成によれば、第1搬送部が射出成形機の内部で仕事をしている間に、第2搬送部が射出成形機の外部で仕事をすることができる。
【0017】
本発明に係るインサート成形機の他の特徴は、前記主搬送レールは、X軸方向における前記射出成形機の他方側に延びる第2レール部を有し、前記制御部は、前記第1レール部と前記第2レール部との間で前記第1搬送部を移動させるように前記第1X軸方向駆動部の動作を制御することにある。
【0018】
この構成によれば、第2搬送部が仕事をしている間に、第1搬送部は第2レール部で待機することができる。したがって、作業者は、第2搬送部の仕事を中断させることなく、第2レール部で待機中の第1搬送部を修理したり、点検したりすることができる。また、第2レール部は、X軸方向における射出成形機の他方側に延びているので、第2レール部の周囲に十分な広さの待機スペースを確保することが可能になる。したがって、第1搬送部は、第1把持部で成形品を把持した状態でも第2レール部で待機することができる。
【0019】
本発明に係るインサート成形機の他の特徴は、前記制御部は、前記第1レール部と前記第2レール部との間で前記第2搬送部を移動させるように前記第2X軸方向駆動部の動作を制御することにある。
【0020】
この構成によれば、第1搬送部および第2搬送部の両方が、第1レール部と第2レール部との間を行き来することができるので、第1搬送部および第2搬送部は、多様な仕事を行うことができる。例えば、第1搬送部は、インサート品をX軸方向における射出成形機の他方側から第1金型または第2金型に与えることができ、第2搬送部は、成形品をX軸方向における射出成形機の他方側に取り出すことができる。
【0021】
本発明に係るインサート成形機の他の特徴は、前記1搬送部は、前記主搬送レールで下方から支持された第1走行台と、前記第1走行台からY軸方向に延びて設けられた第1Y軸方向搬送レールと、前記第1走行台に取り付けられた第1Y軸方向駆動モータを有し、前記第1昇降部を前記第1Y軸方向搬送レールに沿ってY軸方向へ往復駆動させる第1Y軸方向駆動部とを備えることにある。
【0022】
この構成によれば、第1把持部は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能であり、仕事スペースを有効に活用して仕事をすることができる。また、第1Y軸方向駆動モータは、第1走行台に取り付けられているので、第1Y軸方向搬送レールは、第1Y軸方向駆動モータを支持する強度を持つ必要がなく、第1Y軸方向搬送レールの軽量化が可能になる。
【0023】
本発明に係るインサート成形機の他の特徴は、前記インサート品を前記射出成形機の外部で保持するスタック治具と、前記インサート品を前記第1把持部に対して正確に位置決めする位置補正治具とを備え、前記制御部は、前記スタック治具に載置された前記インサート品を前記第1把持部で把持して前記位置補正治具に移載するように前記第1搬送部の動作を制御し、続いて、前記位置補正治具に載置された前記インサート品を前記第1把持部で再び把持して前記第1金型または前記第2金型まで搬送するように前記第1搬送部および前記第1X軸方向駆動部の動作を制御することにある。
【0024】
この構成によれば、位置補正治具によってインサート品を第1把持部に対して正確に位置決めすることが可能になり、第1金型または第2金型に対してインサート品を高精度でセットすることが可能になる。
【0025】
本発明に係るインサート成形機の他の特徴は、前記第2搬送部は、前記主搬送レールで下方から支持された第2走行台と、前記第2走行台からY軸方向に延びて設けられた第2Y軸方向搬送レールと、前記第2走行台に取り付けられた第2Y軸方向駆動モータを有し、前記第2昇降部を前記第2Y軸方向搬送レールに沿ってY軸方向へ往復駆動させる第2Y軸方向駆動部とを備えることにある。
【0026】
この構成によれば、第2把持部は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能であり、仕事スペースを有効に活用して仕事をすることができる。また、第2Y軸方向駆動モータは、第2走行台に取り付けられているので、第2Y軸方向搬送レールは、第2Y軸方向駆動モータを支持する強度を持つ必要がなく、第2Y軸方向搬送レールの軽量化が可能になる。
【0027】
本発明に係るインサート成形機の他の特徴は、前記成形品に付着したゲートを切り離す切断刃を有するゲート除去装置を備え、前記制御部は、前記第2把持部が把持した前記成形品の前記ゲートを前記切断刃に対して位置決めするように前記第2搬送部の動作を制御し、続いて、前記切断刃で前記ゲートを切断するように前記ゲート除去装置の動作を制御することにある。
【0028】
この構成によれば、成形品に付着したゲートをゲート除去装置で除去することが可能になる。
【0029】
本発明に係るインサート成形機の他の特徴は、前記第1搬送部および前記第2搬送部の少なくとも一方には、前記成形品から分離されたスプルーランナを離脱可能に把持する第3把持部と、前記第3把持部をZ軸方向へ移動させる第3昇降部とを有するスプルーランナ取出し部が設けられ、前記制御部は、前記スプルーランナ取出し部の動作を制御することにある。
【0030】
この構成によれば、前記第1X軸方向駆動部または前記第2X軸方向駆動部によって、スプルーランナ取出し部をX軸方向へ移動させることができるので、スプルーランナを除去するための構成の簡素化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の第1実施形態に係るインサート成形機の構成を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るインサート成形機の構成を示す正面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るインサート成形機の構成を示す平面図である。
図4】スタック治具および位置補正治具の構成を示す斜視図である。
図5】ゲート除去装置の構成を示す側面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るインサート成形機の電気的構成を示すブロック図である。
図7】インサート成形機の成形開始時点の状態を示す平面図である。
図8】インサート成形機のインサート品を金型にセットする時点の状態を示す正面図である。
図9】インサート成形機の金型から成形品を取り出す時点の状態を示す正面図である。
図10図9に対応する平面図である。
図11】主搬送レールの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明に係るインサート成形機の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、金型装置28(第1金型34および第2金型36)の開閉方向をY軸方向とし、鉛直方向をZ軸方向とし、Y軸方向およびZ軸方向に対して直交する方向をX軸方向とする。これらの各方向は、図面中に矢印で示したX,Y,Zの各方向と一致する。
【0033】
(第1実施形態に係るインサート成形機10の構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係るインサート成形機10の構成を示す斜視図である。図2は、インサート成形機10の構成を示す正面図である。図3は、インサート成形機10の構成を示す平面図である。図4は、スタック治具20および位置補正治具22の構成を示す斜視図である。図5は、ゲート除去装置24の構成を示す斜視図である。図6は、インサート成形機10の電気的構成を示すブロック図である。
【0034】
図1に示すインサート成形機10は、射出成形機12と、射出成形機12にインサート品14(図2)をセットするとともに、射出成形機12から成形品16(図2)を取り出すトラバースユニット18と、スタック治具20と、位置補正治具22と、ゲート除去装置24と、制御部26(図6)とを備えている。
【0035】
図2に示す本実施形態の成形品16は、自動車の内装部品であり、インサート品14は、木目模様などが施された四角形のシート状または板状の部材である。図4に示すように、インサート品14の一辺には、直角に折り曲げられた折り曲げ部14aが形成されている。
【0036】
(射出成形機12の構成)
図2に示すように、射出成形機12は、一般的な横型成形機であり、金型装置28と、型締め装置30と、射出装置32とを有している。
【0037】
金型装置28は、互いに協働してキャビティS(図7)を構成する第1金型34および第2金型36を有している。第1金型34および第2金型36は、型締め装置30によって水平方向に開閉するように構成されている。成形品16の成形時には、型締め装置30で第1金型34および第2金型36が開かれることによって、インサート品14および成形品16の搬送路Rが確保される。そして、インサート品14が、搬送路Rを通して第1金型34にセットされ、成形品16が、第2金型36から搬送路Rを通して射出成形機12の外部に取り出される。
【0038】
型締め装置30は、固定プラテン38と、可動プラテン40と、固定プラテン38に対して可動プラテン40を案内する4本のタイバー42とを有しており、第2金型36が可動プラテン40に取り付けられている。また、型締め装置30は、ランナーストリッパープレート44と、4本のガイドロッド46とを有しており、ランナーストリッパープレート44および第1金型34が4本のガイドロッド46を介して固定プラテン38に取り付けられている。
【0039】
さらに、型締め装置30は、油圧シリンダ装置(図示省略)等で構成された動力部48を有しており、動力部48のピストンロッド50が可動プラテン40に接続されている。なお、動力部48の駆動方式としては、油圧シリンダ装置を用いる方式に代えて、トグル機構(図示省略)を用いる方式が採用されてもよい。型締め装置30は、図6に示す制御部26に対して電気的に接続されている。
【0040】
動力部48が可動プラテン40を押すと、金型装置28(第1金型34および第2金型36)が閉じられ、キャビティS(図7)が構成される。一方、動力部48が可動プラテン40を引くと、金型装置28(第1金型34および第2金型36)が開かれ、さらに、第1金型34とランナーストリッパープレート44とが引き離されるとともに、ランナーストリッパープレート44と固定プラテン38とが引き離される。これによって、第1金型34とランナーストリッパープレート44との間にスプルーランナ52を取り出すための隙間Qが確保される。
【0041】
射出装置32は、成形材料を加熱して溶融させる加熱シリンダ54と、成形材料を射出する射出スクリュ(図示省略)とを有しており、加熱シリンダ54の先端部に設けられたノズル56が固定プラテン38に設けられたスプールブッシュ58に押し当てられている。なお、射出装置32の射出方式としては、射出スクリュを用いる方式に代えて、プランジャ(図示省略)を用いる方式が採用されてもよい。射出装置32は、図6に示す制御部26に対して電気的に接続されている。
【0042】
(トラバースユニット18の構成)
図1に示すトラバースユニット18は、射出成形機12の上方にX軸方向へ延びて設けられた1本の主搬送レール60と、主搬送レール60に走行可能に取り付けられた第1搬送部62と、第1搬送部62をX軸方向へ往復駆動させる第1X軸方向駆動部64とを備えている。また、トラバースユニット18は、主搬送レール60に走行可能に取り付けられた第2搬送部66と、第2搬送部66をX軸方向へ往復駆動させる第2X軸方向駆動部68と、第2搬送部66に設けられたスプルーランナ取出し部70とを備えている。
【0043】
図1に示すように、主搬送レール60は、X軸方向における射出成形機12の一方側に延びる第1レール部72と、X軸方向における射出成形機12の他方側に延びる第2レール部74と、射出成形機12の直上において第1レール部72と第2レール部74とを繋ぐ第3レール部76とを有している。なお、本実施形態では、図3に示す射出成形機12の紙面下方を一方側とし、紙面上方を他方側としているが、これとは逆に、紙面上方を一方側とし、紙面下方を他方側としてもよい。
【0044】
射出成形機12においては、型締め装置30で金型装置28(第1金型34および第2金型36)が開かれることによって、搬送路Rが確保されるため、インサート品14および成形品16を搬送路RでZ軸方向に搬送するためには、後述する第1昇降部90および第2昇降部112は、搬送路Rの直上に位置決めされる必要がある。そのため、主搬送レール60の第3レール部76は、搬送路Rの直上の位置からY軸方向にずれた位置に配置されている。
【0045】
本実施形態の主搬送レール60は、工場の床に設けられた支柱(図示省略)を用いて射出成形機12の上方で支持されており、第1レール部72の下方に仕事スペースF1が確保されており、第2レール部74の周囲に待機スペースF2が確保されている。なお、主搬送レール60を支持する手段は、支柱に限定されるものではなく、例えば、射出成形機12を構成するフレーム(図示省略)で主搬送レール60の一部が支持されてもよい。
【0046】
図1に示すように、第1搬送部62は、主搬送レール60で下方から支持された第1走行台78と、第1走行台78からY軸方向に延びて設けられた第1Y軸方向搬送レール80と、第1Y軸方向搬送レール80に取り付けられた第1走行部82とを有している。第1走行台78は、主搬送レール60をX軸方向へ走行可能に構成されており、第1走行部82は、第1Y軸方向搬送レール80をY軸方向へ走行可能に構成されている。また、第1搬送部62は、第1走行部82に取り付けられた第1昇降ユニット84と、第1走行部82および第1昇降ユニット84を第1Y軸方向搬送レール80に沿ってY軸方向へ往復駆動させる第1Y軸方向駆動部86を有している。
【0047】
図2に示すように、第1昇降ユニット84は、インサート品14または成形品16を離脱可能に把持する第1把持部88と、第1把持部88をZ軸方向へ移動させる第1昇降部90とを有している。本実施形態の第1昇降部90は、エアシリンダであり、第1把持部88は、第1昇降部90を構成するピストンロッド90aの下端部に、回転可能かつ角度変更可能な状態で取り付けられている。
【0048】
図1に示すように、第1Y軸方向駆動部86は、第1Y軸方向搬送レール80の長さ方向両端部に設けられに一対のプーリー(図示省略)と、一対のプーリーに架け渡された環状の駆動ベルト92と、駆動ベルト92を回動させる第1Y軸方向駆動モータ94とを有しており、第1Y軸方向駆動モータ94は、第1走行台78に取り付けられている。第1昇降ユニット84は、第1走行部82を介して駆動ベルト92に接続されており、第1Y軸方向駆動モータ94で駆動ベルト92が回動されると、第1昇降ユニット84(第1把持部88および第1昇降部90を含む。)がY軸方向へ移動される。
【0049】
図7に示すように、インサート成形機10の成形開始時点の第1搬送部62は、主搬送レール60の第1レール部72において、第2搬送部66よりも射出成形機12に近い側に設けられている。図1に示す第1Y軸方向駆動部86、第1把持部88および第1昇降部90は、図6に示す制御部26に対して電気的に接続されている。なお、第1把持部88の把持方式は、特に限定されるものではなく、真空吸着方式や他の方式が適宜選択して採用されてもよい。第1昇降部90は、エアシリンダに限定されるものではなく、例えば、ラックアンドピニオン方式やボールねじ方式が採用されてもよい。また、一対のプーリーに架け渡された環状の駆動ベルトと駆動モータとを用いる方式が採用されてもよい。
【0050】
図1に示すように、第1X軸方向駆動部64は、主搬送レール60に長さ方向に延びて設けられたラック96と、ラック96に噛み合わされたピニオン(図示省略)と、ピニオンを回転駆動する第1X軸方向駆動モータ98とを有しており、第1X軸方向駆動モータ98は、第1搬送部62の第1走行台78に取り付けられている。第1X軸方向駆動モータ98でピニオンが回転されると、第1搬送部62がX軸方向へ移動される。
【0051】
なお、第1X軸方向駆動部64は、ラックアンドピニオン方式に限定されるものではなく、例えば、ボールねじ方式が採用されてもよいし、一対のプーリーに架け渡された環状の駆動ベルトと駆動モータとを用いる方式が採用されてもよい。第1X軸方向駆動部64は、図6に示す制御部26に対して電気的に接続されている。
【0052】
図3に示すように、第1Y軸方向駆動モータ94および第1X軸方向駆動モータ98は、これらの重心が主搬送レール60の幅方向の中心よりも第1Y軸方向搬送レール80が延びる側とは反対側に位置するように、第1走行台78に取り付けられている。したがって、主搬送レール60の幅方向の中心を挟んだ両側において、第1搬送部62および第1X軸方向駆動部64の重量バランスがよくなる。
【0053】
図1に示すように、第2搬送部66は、主搬送レール60で下方から支持された第2走行台100と、第2走行台100からY軸方向に延びて設けられた第2Y軸方向搬送レール102と、第2Y軸方向搬送レール102に取り付けられた第2走行部104とを有している。第2走行台100は、主搬送レール60をX軸方向へ走行可能に構成されており、第2走行部104は、第2Y軸方向搬送レール102をY軸方向へ走行可能に構成されている。また、第2搬送部66は、第2走行部104に取り付けられた第2昇降ユニット106と、第2走行部104および第2昇降ユニット106を第2Y軸方向搬送レール102に沿ってY軸方向へ往復駆動させる第2Y軸方向駆動部108とを有している。
【0054】
第2昇降ユニット106は、インサート品14または成形品16を離脱可能に把持する第2把持部110と、第2把持部110をZ軸方向へ移動させる第2昇降部112とを有している。本実施形態の第2昇降部112は、エアシリンダであり、第2把持部110は、第2昇降部112を構成するピストンロッド112aの下端部に、回転可能かつ角度変更可能な状態で取り付けられている。
【0055】
図1に示すように、第2Y軸方向駆動部108は、第2Y軸方向搬送レール102の長さ方向両端部に設けられに一対のプーリー(図示省略)と、一対のプーリーに架け渡された環状の駆動ベルト114と、駆動ベルト114を回動させる第2Y軸方向駆動モータ116とを有しており、第2Y軸方向駆動モータ116は、第2走行台100に取り付けられている。第2昇降ユニット106は、第2走行部104を介して駆動ベルト114に接続されており、第2Y軸方向駆動モータ116で駆動ベルト114が回動されると、第2昇降ユニット106(第2把持部110および第2昇降部112を含む。)がY軸方向へ移動される。
【0056】
図7に示すように、インサート成形機10の成形開始時点の第2搬送部66は、主搬送レール60の第1レール部72において、第1搬送部62よりも射出成形機12から遠い側に設けられている。図1に示す第2Y軸方向駆動部108、第2把持部110および第2昇降部112は、図6に示す制御部26に対して電気的に接続されている。なお、第2把持部110の把持方式は、特に限定されるものではなく、真空吸着方式や他の方式が適宜選択して採用されてもよい。第2昇降部112は、エアシリンダに限定されるものではなく、例えば、ラックアンドピニオン方式やボールねじ方式が採用されてもよい。また、一対のプーリーに架け渡された環状の駆動ベルトと駆動モータとを用いる方式が採用されてもよい。
【0057】
図1に示すように、第2X軸方向駆動部68は、主搬送レール60に長さ方向に延びて設けられたラック118と、ラック118に噛み合わされたピニオン(図示省略)と、ピニオンを回転駆動する第2X軸方向駆動モータ120とを有しており、第2X軸方向駆動モータ120は、第2搬送部66の第2走行台100に取り付けられている。第2X軸方向駆動モータ120でピニオンが回転されると、第2搬送部66がX軸方向へ移動される。
【0058】
なお、第2X軸方向駆動部68は、ラックアンドピニオン方式に限定されるものではなく、例えば、ボールねじ方式が採用されてもよいし、一対のプーリーに架け渡された環状の駆動ベルトと駆動モータとを用いる方式が採用されてもよい。第2X軸方向駆動部68は、図6に示す制御部26に対して電気的に接続されている。
【0059】
図3に示すように、第2Y軸方向駆動モータ116および第2X軸方向駆動モータ120は、これらの重心が主搬送レール60の幅方向の中心よりも第2Y軸方向搬送レール102が延びる側とは反対側に位置するように、第2走行台100に取り付けられている。したがって、主搬送レール60の幅方向の中心を挟んだ両側において、第2搬送部66および第2X軸方向駆動部68の重量バランスがよくなる。
【0060】
図9に示すように、スプルーランナ取出し部70は、第1金型34とランナーストリッパープレート44との間の隙間Qからスプルーランナ52を取り出す機構であり、成形品16から分離されたスプルーランナ52を離脱可能に把持する第3把持部122と、第3把持部122をZ軸方向へ移動させる第3昇降部124とを有している。本実施形態の第3昇降部124は、エアシリンダであり、第3把持部122は、第3昇降部124を構成するピストンロッド124aの下端部に取り付けられている。
【0061】
第3把持部122および第3昇降部124は、図6に示す制御部26に対して電気的に接続されている。なお、第3把持部122の把持方式は、特に限定されるものではなく、スプルーランナ52を挟持する方式や他の方式が適宜選択して採用されてもよい。第3昇降部124は、エアシリンダに限定されるものではなく、例えば、ラックアンドピニオン方式やボールねじ方式が採用されてもよい。また、一対のプーリーに架け渡された環状の駆動ベルトと駆動モータとを用いる方式が採用されてもよい。
【0062】
図4に示すように、スタック治具20は、インサート品14を射出成形機12の外部で保持する治具である。本実施形態のスタック治具20は、複数のインサート品14が重ねた状態で載置される板状の基台126と、基台126の上面から突出するように設けられた複数(本実施形態では4本)の棒状の位置決め部128とを有している。
【0063】
複数の位置決め部128の上端部は、上端に向かうにつれて直径が徐々に細くなるようにテーパ状に形成されており、複数の位置決め部128のそれぞれは、インサート品14の外周縁に対して水平方向から対向するように配置されている。複数の位置決め部128のそれぞれとインサート品14の外周縁との隙間の幅は、ほぼゼロとなるように定められている。作業者がインサート品14を複数の位置決め部128で囲まれた領域に収容する際には、位置決め部128のテーパ面でインサート品14が案内されるため、収容作業を容易に行うことができる。
【0064】
図4に示すように、本実施形態のインサート品14は、四角形のシート状または板状の部材であり、直角に折り曲げられた折り曲げ部14aを有している。そのため、複数のインサート品14を重ね合わせた状態では、各インサート品14の位置が折り曲げ部14aの厚さ分だけずれることになる。したがって、第1搬送部62がスタック治具20からインサート品14を取り出して、第1金型34または第2金型36に直接供給する場合には、供給位置が徐々にずれることになる。そこで、本実施形態では、インサート品14の供給位置のずれを無くすために、位置補正治具22が設けられている。
【0065】
図4に示すように、位置補正治具22は、第1搬送部62の第1把持部88によるインサート品14の把持位置を補正する治具である。本実施形態の位置補正治具22は、1枚のインサート品14が一定位置に載置される板状の基台130と、基台130の上面から突出するように設けられた複数(本実施形態では6本)の棒状の位置決め部132とを有している。
【0066】
複数の位置決め部132の上端部は、上端に向かうにつれて直径が徐々に細くなるようにテーパ状に形成されており、複数の位置決め部132は、インサート品14の4つの辺に対して水平方向から対向するように配置されている。複数の位置決め部132のそれぞれとインサート品14の各辺との隙間の幅は、ほぼゼロとなるように定められている。第1搬送部62がインサート品14を複数の位置決め部132で囲まれた領域に落とし込む際には、位置決め部132のテーパ面でインサート品14が案内されるため、インサート品14の姿勢の乱れは生じない。したがって、位置補正治具22は、複数の位置決め部132で囲まれた領域においてインサート品14を正確に位置決めできる。つまり、位置補正治具22は、インサート品14を第1把持部88に対して正確に位置決めできる。
【0067】
図5に示すように、ゲート除去装置24は、成形品16に付着したゲート134を切り離す装置であり、円筒状の基体136と、基体136の上部に回転可能に取り付けられた円筒状の回転部138と、回転部138に取り付けられた切断部140と、基体136の内部に収容され、回転部138を回転させるモータ142とを有している。切断部140は、固定刃としての第1切断刃140aと、可動刃としての第2切断刃140bと、第2切断刃140bを動作させるエアシリンダ140cとを有している。ゲート除去装置24は、図6に示す制御部26に対して電気的に接続されている。
【0068】
主搬送レール60を構成する第1レール部72の下方に確保された仕事スペースF1には、第1搬送部62および第2搬送部66が仕事を行うための仕事台144が設けられており、スタック治具20、位置補正治具22およびゲート除去装置24は、仕事台144の上面に載置されている。つまり、第1搬送部62および第2搬送部66は、仕事台144の上面において、仕事スペースF1を共有している。
【0069】
図6に示す制御部26は、上記の各機器との間で情報をやり取りすることによって、インサート成形機10の作動を総合的に制御する装置であり、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されている。
【0070】
(第1実施形態に係るインサート成形機10の作動)
図7は、インサート成形機10の成形開始時点の状態を示す平面図である。図8は、インサート成形機10のインサート品14を第1金型34にセットする時点の状態を示す正面図である。図9は、インサート成形機10の第2金型36から成形品16を取り出す時点の状態を示す正面図である。図10は、図9に対応する平面図である。
【0071】
図1に示すインサート成形機10が成形品16を成形するとき、図6に示す制御部26は、トラバースユニット18の第1搬送部62、第1X軸方向駆動部64、第2搬送部66、第2X軸方向駆動部68、スプルーランナ取出し部70およびゲート除去装置24の動作を制御する。また、制御部26は、射出成形機12の型締め装置30および射出装置32の動作を制御する。
【0072】
図1に示すインサート成形機10が成形品16の成形動作を開始すると、制御部26は、インサート品14を射出成形機12の内部へ搬送して第1金型34にセットするように第1搬送部62および第1X軸方向駆動部64の動作を制御する。
【0073】
すなわち、制御部26は、まず、図4に示すスタック治具20に載置されたインサート品14を第1把持部88で把持して位置補正治具22に移載するように第1搬送部62の動作を制御する。続いて、制御部26は、位置補正治具22に載置されたインサート品14を第1把持部88で再び把持して、図8に示す第1金型34まで搬送するように第1搬送部62および第1X軸方向駆動部64(図1)の動作を制御する。なお、図2および図3は、インサート品14を第1金型34まで搬送する途中の状態を示している。
【0074】
図9に示すように、第1搬送部62がインサート品14を第1金型34にセットした後、制御部26は、成形品16を第2金型36から取り外すように、第2搬送部66および第2X軸方向駆動部68(図1)の動作を制御する。図10に示すように、このとき、制御部26は、第1搬送部62を第2レール部74で待機させるように第1X軸方向駆動部64(図1)の動作を制御する。これによって、第2搬送部66の第3レール部76への移動が可能になる。このように、制御部26は、第1搬送部62を待機させるために、第1レール部72と第2レール部74との間で第1搬送部62を移動させるように第1X軸方向駆動部64の動作を制御する。
【0075】
図9に示すように、第1搬送部62が第2レール部74で待機しているとき、制御部26は、成形品16を第2金型36から取り外して射出成形機12の外部へ搬送するように第2搬送部66および第2X軸方向駆動部68(図1)の動作を制御する。なお、この動作は、前回の成形で得られた成形品16を取り外す動作であり、1回目の成形を開始する際には省略できる。
【0076】
図9に示すように、第2搬送部66が成形品16を第2金型36から取り外す際には、第1金型34および第2金型36が開かれるとともに、第1金型34とランナーストリッパープレート44との間に隙間Qが確保される。そこで、制御部26は、隙間Qからスプルーランナ52を取り出すように、スプルーランナ取出し部70の動作を制御する。
【0077】
図5に示すように、第2搬送部66が成形品16を射出成形機12の外部に取り出した後、制御部26は、第2把持部110が把持した成形品16のゲート134を、ゲート除去装置24の切断刃140a,140bに対して位置決めするように第2搬送部66および第2X軸方向駆動部68(図1)の動作を制御する。続いて、制御部26は、切断刃140a,140bでゲート134を切断するようにゲート除去装置24の動作を制御する。
【0078】
第2搬送部66がゲート134を除去する仕事を行っているとき、制御部26は、次のインサート品14を射出成形機12の内部へ搬送して第1金型34にセットするように第1搬送部62および第1X軸方向駆動部64の動作を制御する。このように、制御部26は、第1搬送部62を第1レール部72で往復駆動させるように第1X軸方向駆動部64の動作を制御するとともに、第2搬送部66を第1レール部72で往復駆動させるように第2X軸方向駆動部68の動作を制御する。これによって、第1搬送部62および第2搬送部66は、1つの仕事スペースF1の異なる位置で異なる仕事をすることができる。
【0079】
(第1実施形態に係るインサート成形機10の効果)
本実施形態によれば、上記構成により以下の各効果を奏することができる。すなわち、X軸方向へ延びる1本の主搬送レール60に第1搬送部62および第2搬送部66が走行可能に取り付けられているので、インサート成形機10の小型化が可能になる。
【0080】
主搬送レール60の第1レール部72において、第1搬送部62は第2搬送部66よりも射出成形機12に近い側に設けられるので、第1搬送部62が射出成形機12の内部で仕事をしている間に、第2搬送部66が射出成形機12の外部で仕事をすることができる。
【0081】
インサート品14が射出成形機12の内部へ搬送されて第1金型34にセットされる工程と、成形品16が第2金型36から取り外されて射出成形機12の外部へ搬送される工程とが並行して行われるので、成形品16の成形効率を高めることが可能になる。
【0082】
第1搬送部62および第2搬送部66が、X軸方向における射出成形機12の一方側に位置する仕事スペースF1を共有できるので、狭い仕事スペースF1を有効に利用することが可能になり、また、狭い設置スペースにインサート成形機10を設置することが可能になる。
【0083】
第2搬送部66が仕事をしている間に、第1搬送部62は第2レール部74で待機することができるので、作業者は、第2搬送部66の仕事を中断させることなく、第2レール部74で待機中の第1搬送部62を修理したり、点検したりすることができる。また、第2レール部74は、X軸方向における射出成形機12の他方側に延びているので、第2レール部74の周囲に十分な広さの待機スペースF2を確保することが可能になる。したがって、第1搬送部62は、第1把持部88で成形品16を把持した状態でも第2レール部74で待機することができる。
【0084】
第1把持部88および第2把持部110は、X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能であり、仕事スペースF1を有効に活用して仕事をすることができる。第1Y軸方向駆動モータ94は、第1走行台78に取り付けられているので、第1Y軸方向搬送レール80は、第1Y軸方向駆動モータ94を支持する強度を持つ必要がなく、第1Y軸方向搬送レール80の軽量化が可能になる。第2Y軸方向駆動モータ116は、第2走行台100に取り付けられているので、第2Y軸方向搬送レール102は、第2Y軸方向駆動モータ116を支持する強度を持つ必要がなく、第2Y軸方向搬送レール102の軽量化が可能になる。
【0085】
図4に示す位置補正治具22は、インサート品14を第1把持部88に対して正確に位置決めすることができるので、第1把持部88は、第1金型34に対してインサート品14を高精度でセットすることができる。
【0086】
図5に示すように、インサート成形機10は、成形品16に付着したゲート134をゲート除去装置24で除去することができる。また、インサート成形機10は、第2X軸方向駆動部68によって、スプルーランナ取出し部70をX軸方向へ移動させることができるので、スプルーランナ52を除去するための構成を簡素化できる。
【0087】
(変形例)
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。すなわち、上記実施形態では、インサート品14を搬送する第1搬送部62が、成形品16を搬送する第2搬送部66よりも射出成形機12に近い側に設けられているが、これらの位置は、逆にされてもよい。
【0088】
上記実施形態では、インサート成形機10が、スタック治具20および位置補正治具22を備えているが、スタック治具20でインサート品14の位置がずれない場合には、位置補正治具22は省略されてもよい。また、ゲート134を除去する工程を別の装置で行う場合には、ゲート除去装置24は省略されてもよい。
【0089】
上記実施形態では、第1搬送部62が第1Y軸方向搬送レール80および第1Y軸方向駆動部86を有し、第2搬送部66が第2Y軸方向搬送レール102および第2Y軸方向駆動部108を有するが、これらは省略されてもよい。
【0090】
上記実施形態では、制御部26は、インサート品14を搬送するように第1搬送部62および第1X軸方向駆動部64を制御しているが、制御部26は、成形品16を搬送するように第1搬送部62および第1X軸方向駆動部64を制御してもよい。また、上記実施形態では、制御部26は、成形品16を搬送するように第2搬送部66および第2X軸方向駆動部68を制御しているが、制御部26は、インサート品14を搬送するように第2搬送部66および第2X軸方向駆動部68を制御してもよい。
【0091】
上記実施形態では、制御部26は、固定型である第1金型34に対してインサート品14をセットするように第1搬送部62および第1X軸方向駆動部64を制御しているが、制御部26は、可動型である第2金型36に対してインサート品14をセットするように第1搬送部62および第1X軸方向駆動部64を制御してもよい。
【0092】
上記実施形態では、制御部26は、可動型である第2金型36から成形品16を取り出すように第2搬送部66および第2X軸方向駆動部68を制御しているが、制御部26は、固定型である第1金型34から成形品16を取り出すように第2搬送部66および第2X軸方向駆動部68を制御してもよい。
【0093】
また、制御部26は、第1搬送部62がインサート品14を第1金型34にセットしている間に、第2搬送部66が第1搬送部62に対してインサート品14を準備するように、第1搬送部62および第2搬送部66等を制御してもよい。さらに、制御部26は、第2搬送部66がゲート除去装置24に対して成形品16のゲート134を位置決めしている間に、第1搬送部62がインサート品14を第1金型34にセットするとともに、成形品16を第2金型36から取り出すように、第1搬送部62および第2搬送部66等を制御してもよい。
【0094】
上記実施形態では、第2搬送部66にスプルーランナ取出し部70が設けられているが、スプルーランナ取出し部70は、第1搬送部62に設けられてもよいし、第1搬送部62および第2搬送部66の両方に設けられてもよい。つまり、スプルーランナ取出し部70は、第1搬送部62および第2搬送部66の少なくとも一方に設けられてもよい。
【0095】
図11は、主搬送レール60の変形例を示す平面図である。上記実施形態では、第2レール部74の長さが第1レール部72の長さよりも短く定められているが、図11に示すように、第2レール部74の長さは、第1レール部72の長さと同じに定められてもよいし、それよりも長く定められてもよい。この構成によれば、第2レール部74における第1搬送部62の移動範囲が広がるので、第2レール部74における第1搬送部62の仕事の幅が広がる。
【0096】
上記実施形態では、制御部26は、第1レール部72と第2レール部74との間で第1搬送部62を移動させるように第1X軸方向駆動部64の動作を制御しているが、図11に示すように、制御部26は、第1レール部72と第2レール部74との間で第1搬送部62および第2搬送部66の両方を移動させるように第1X軸方向駆動部64および第2X軸方向駆動部68の動作を制御してもよい。この構成によれば、第1搬送部62および第2搬送部66は、多様な仕事を行うことができる。例えば、第1搬送部62は、インサート品14をX軸方向における射出成形機12の他方側から第1金型34に与えることができ、第2搬送部66は、成形品16をX軸方向における射出成形機12の他方側に取り出すことができる。
【符号の説明】
【0097】
F1…仕事スペース、F2…待機スペース、Q…隙間、R…搬送路、S…キャビティ、10…インサート成形機、12…射出成形機、14…インサート品、14a…折り曲げ部、16…成形品、18…トラバースユニット、20…スタック治具、22…位置補正治具、24…ゲート除去装置、26…制御部、28…金型装置、30…型締め装置、32…射出装置、34…第1金型、36…第2金型、38…固定プラテン、40…可動プラテン、42…タイバー、44…ランナーストリッパープレート、46…ガイドロッド、48…動力部、50…ピストンロッド、52…スプルーランナ、54…加熱シリンダ、56…ノズル、58…スプールブッシュ、60…主搬送レール、62…第1搬送部、64…第1X軸方向駆動部、66…第2搬送部、68…第2X軸方向駆動部、70…スプルーランナ取出し部、72…第1レール部、74…第2レール部、76…第3レール部、78…第1走行台、80…第1Y軸方向搬送レール、82…第1走行部、84…第1昇降ユニット、86…第1Y軸方向駆動部、88…第1把持部、90…第1昇降部、90a…ピストンロッド、92…駆動ベルト、94…第1Y軸方向駆動モータ、96…ラック、98…第1X軸方向駆動モータ、100…第2走行台、102…第2Y軸方向搬送レール、104…第2走行部、106…第2昇降ユニット、108…第2Y軸方向駆動部、110…第2把持部、112…第2昇降部、112a…ピストンロッド、114…駆動ベルト、116…第2Y軸方向駆動モータ、118…ラック、120…第2X軸方向駆動モータ、122…第3把持部、124…第3昇降部、124a…ピストンロッド、126…基台、128…位置決め部、130…基台、132…位置決め部、134…ゲート、136…基体、138…回転部、140…切断部、140a…第1切断刃、140b…第2切断刃、140c…エアシリンダ、142…モータ、144…仕事台。
図1
図2
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図11