(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167518
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】生理用吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/53 20060101AFI20241127BHJP
A61F 13/532 20060101ALI20241127BHJP
A61F 13/472 20060101ALI20241127BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20241127BHJP
A61F 13/536 20060101ALI20241127BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20241127BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A61F13/53 200
A61F13/532 200
A61F13/472 300
A61F13/533 100
A61F13/536 100
A61F13/535 200
A61F13/534 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083640
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 将也
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕美
(72)【発明者】
【氏名】湯山 暁
(72)【発明者】
【氏名】糸井 奈美江
(72)【発明者】
【氏名】村井 淳
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200AA15
3B200BA14
3B200BB03
3B200DA08
3B200DB05
3B200DB11
3B200DB23
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、長時間にわたって良好な着用感を安定して維持することが可能な生理用吸収性物品に関する。
【解決手段】本発明において、吸収性コアは、相互に交絡した複数の繊維塊を含む繊維塊存在領域と、繊維塊存在領域よりも縦方向前方に位置するコア前方領域と、繊維塊存在領域よりも縦方向後方に位置するコア後方領域と、を有する。コア後方領域は、吸収性コアにおいて最も縦方向後方に位置するコア後端部を含み、かつ、縦方向前方からコア後端部に向かって横方向における寸法が漸減するコアテーパ部と、吸水性繊維の坪量が周囲よりも低く縦方向に線状に延びる複数の後方縦低坪量部と、を有する。コアテーパ部は、横方向内側に凸状に湾曲する外縁であるコア内凸部を有する。複数の後方縦低坪量部は、コア内凸部と重なるか、又はコア内凸部の近傍に位置する第1端部を含む第1後方縦低坪量部を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性繊維を含む吸収性コアを有する吸収体と、前記吸収体の肌側に配置された表面シートと、前記吸収体の非肌側に配置された裏面シートと、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向、該縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向、及び該縦方向及び該横方向に直交する厚み方向を有する生理用吸収性物品であって、
前記縦方向に関して、着用者の膣口と対向する領域を含む中間領域と、前記中間領域の前記縦方向前方に位置する前方領域と、前記中間領域の前記縦方向後方に位置する後方領域と、に区分され、
前記吸収性コアは、
相互に交絡した複数の繊維塊を含み、前記中間領域に位置する繊維塊存在領域と、
前記繊維塊存在領域よりも前記縦方向前方に位置するコア前方領域と、
前記繊維塊存在領域よりも前記縦方向後方に位置するコア後方領域と、を有し、
前記コア後方領域は、
前記吸収性コアにおいて最も前記縦方向後方に位置するコア後端部を含み、かつ、前記縦方向前方から前記コア後端部に向かって前記横方向における寸法が漸減するコアテーパ部と、
前記吸水性繊維の坪量が周囲よりも低く前記縦方向に線状に延びる複数の後方縦低坪量部と、を有し、
前記コアテーパ部は、前記横方向内側に凸状に湾曲する外縁であるコア内凸部を有し、
前記複数の後方縦低坪量部は、
前記コア内凸部と重なるか、又は前記コア内凸部の近傍に位置する第1端部を含む第1後方縦低坪量部を有する
生理用吸収性物品。
【請求項2】
前記複数の後方縦低坪量部は、
前記第1端部を含む前記第1後方縦低坪量部を2以上有する
請求項1に記載の生理用吸収性物品。
【請求項3】
前記コアテーパ部は、
前記コア内凸部の前記縦方向後方に位置し、前記縦方向後方に凸状に湾曲する外縁であるコア先端凸部を有し、
前記複数の後方縦低坪量部は、
前記コア先端凸部と重なるか、又は前記コア先端凸部の近傍に位置する第2端部を含む第2後方縦低坪量部を有する
請求項1又は2に記載の生理用吸収性物品。
【請求項4】
前記コア前方領域は、
前記吸水性繊維の坪量が周囲よりも低く前記縦方向に線状に延びる複数の前方縦低坪量部を有し、
前記繊維塊存在領域は、
前記吸水性繊維の坪量が周囲よりも低く線状に延びる低坪量部を有さない
請求項1から3のいずれか一項に記載の生理用吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体は、前記縦方向及び前記横方向に延び、前記後方領域に配置された一対の圧搾溝をさらに備え、
前記一対の圧搾溝は、前記生理用吸収性物品を前記横方向に2等分する縦中心線の前記横方向両側に、相互に離間して配置され、
前記一対の圧搾溝間の前記横方向における距離は、前記縦方向前方から後方に向かって漸減しており、
前記圧搾溝は、前記第1後方縦低坪量部と平面視において重なっている
請求項1から4のいずれか一項に記載の生理用吸収性物品。
【請求項6】
前記繊維塊存在領域を前記厚み方向に2等分して肌側領域と非肌側領域とに区分した場合に、
前記非肌側領域における、前記吸水性繊維と前記繊維塊の合計質量に対する前記繊維塊の質量の比率は、前記肌側領域における前記比率よりも高い
請求項1から5のいずれか一項に記載の生理用吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理用ナプキン等の生理用吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン等の生理用吸収性物品は、一般に、吸収性コアを有する吸収体と、吸収体の肌側に配置された表面シートと、吸収体の非肌側に配置された裏面シートと、を備える。経血の吸収の主体となる吸収性コアは、例えば、パルプ繊維等の吸水性繊維や高吸水性ポリマー等の吸収性材料を含む。
【0003】
生理用吸収性物品は、着用者の肌に密着して用いられるため、フィット性などの着用感が重要となる。そこで、特許文献1及び2には、吸収性コアの圧縮回復性を高めて着用感を向上させる観点から、合成繊維を含む繊維塊と、吸水性繊維とを含有する吸収性コアを備えた吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-163005号公報
【特許文献2】特開2020-188919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、長時間の着用時には、着用者の姿勢の変化や歩行などの動作により、生理用吸収性物品に繰り返し頻繁に外力が付加される。特に、生理用吸収性物品の後方領域には、起伏の大きい身体形状に沿った変形時に生じる応力に加えて、座位や仰臥位における肌との擦れなどによって、シワやヨレなどの好ましくない変形が生じ得る。そこで、長時間にわたって良好な着用感をより安定して維持できる生理用吸収性物品が求められている。
【0006】
本発明の課題は、長時間にわたって良好な着用感を安定して維持することが可能な生理用吸収性物品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一形態に係る生理用吸収性物品は、吸水性繊維を含む吸収性コアを有する吸収体と、前記吸収体の肌側に配置された表面シートと、前記吸収体の非肌側に配置された裏面シートと、を備え、着用者の前後方向に対応する縦方向、該縦方向に直交し着用者の左右方向に対応する横方向、及び該縦方向及び該横方向に直交する厚み方向を有する。
前記生理用吸収性物品は、
前記縦方向に関して、着用者の膣口と対向する領域を含む中間領域と、前記中間領域の前記縦方向前方に位置する前方領域と、前記中間領域の前記縦方向後方に位置する後方領域と、に区分される。
前記吸収性コアは、
相互に交絡した複数の繊維塊を含み、前記中間領域に位置する繊維塊存在領域と、
前記繊維塊存在領域よりも前記縦方向前方に位置するコア前方領域と、
前記繊維塊存在領域よりも前記縦方向後方に位置するコア後方領域と、を有する。
前記コア後方領域は、
前記吸収性コアにおいて最も前記縦方向後方に位置するコア後端部を含み、かつ、前記縦方向前方から前記コア後端部に向かって前記横方向における寸法が漸減するコアテーパ部と、
前記吸水性繊維の坪量が周囲よりも低く前記縦方向に線状に延びる複数の後方縦低坪量部と、を有する。
前記コアテーパ部は、前記横方向内側に凸状に湾曲する外縁であるコア内凸部を有する。
前記複数の後方縦低坪量部は、
前記コア内凸部と重なるか、又は前記コア内凸部の近傍に位置する第1端部を含む第1後方縦低坪量部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の生理用吸収性物品によれば、長時間にわたって良好な着用感を安定して維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る生理用吸収性物品を示す平面図である。
【
図2】上記生理用吸収性物品を示す断面図であり、
図1のII-II線で切断した断面を示す図である。
【
図3】上記生理用吸収性物品を示す断面図であり、
図1のIII-III線で切断した断面を示す図である。
【
図4】上記生理用吸収性物品の吸収性コアを示す平面図である。
【
図5】上記吸収性コアの要部を拡大した平面図である。
【
図7】上記生理用吸収性物品の要部を拡大した平面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る生理用吸収性物品を示す平面図である。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る生理用吸収性物品を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0011】
<第1実施形態>
[ナプキン(生理用吸収性物品)の全体構成]
本発明の第1実施形態に係る生理用吸収性物品1は、生理用ナプキンとして構成され、以下、ナプキン1と称する。ナプキン1は、
図1に示すように、着用者の前後方向に対応する縦方向Xと、着用者の左右方向に対応し縦方向Xに直交する横方向Yとを有する。さらに、ナプキン1は、縦方向X及び横方向Yの双方に直交する厚み方向Zを有する。ナプキン1は、例えば、ナプキン1を横方向Yに2等分する縦中心線CLに関して線対称(左右対称)に構成され得る。
【0012】
本明細書において、「横方向Y内側」とは、縦中心線CLに近づく側を意味する。「横方向Y外側」とは、縦中心線CLから遠ざかる側を意味する。本明細書において、「縦方向X前方」とは、縦方向Xにおける前方、つまり着用者の腹側に向かう方向を意味する。「縦方向X後方」とは、縦方向Xにおける後方、つまり着用者の背側に向かう方向を意味する。本明細書において、厚み方向Zにおける肌側とは、ナプキン1の着用時に着用者側に配置される側を意味する。厚み方向Zにおける非肌側とは、ナプキン1の着用時に着衣側に配置される側を意味する。本明細書において、「平面視」とは、厚み方向Zから見た平面視を意味する。
【0013】
図1に示すように、ナプキン1は、縦方向Xに関して、着用者の膣口と対向する領域を含む中間領域Cと、中間領域Cよりも縦方向X前方に位置する前方領域Fと、中間領域Cよりも縦方向X後方に位置する後方領域Rと、に区分される。本実施形態において、中間領域Cの縦方向Xにおける範囲は、後述する中間膨出部91の縦方向Xにおける範囲と一致する。
【0014】
図2に示すように、ナプキン1は、吸収体4と、表面シート2と、裏面シート3と、を備える。
図2に示す例において、ナプキン1は、裏面シート3、吸収体4、及び表面シート2がこの順に厚み方向Zに積層された構成を有する。これらの各部材は、例えば、接着剤やヒートシール等によって適宜接合されている。
【0015】
吸収体4は、肌側から経血等の体液を吸収して保持する。本実施形態において、吸収体4は、吸収性コア7と、コアラップシート8と、を有する。吸収性コア7は、経血等の吸収の主体となる部分である。コアラップシート8は、吸収性コア7を被覆し、例えば吸収性コア7の形状を保持する機能等を有する。また、吸収性コア7は非肌側と肌側の少なくとも一方を2枚以上のコアラップシート8で被覆することが、吸収性コア7の形状保持の観点からより好ましい。特に、後述する繊維塊層44の非肌側に2枚のコアラップシートが配されていることが、着用時における繊維塊層44の形状安定性に寄与するので好ましい。コアラップシート8は、例えば薄く柔らかい吸収紙や液透過性の不織布等で構成され、香料、消臭剤、抗菌剤などの機能剤が添加されていてもよい。なお、吸収性コア7の構成については、後述する。
【0016】
表面シート2は、吸収体4の肌側に配置され、例えば不織布等の液透過性のシート材として構成される。液透過性のシート材は、生理用吸収性物品の表面シートとして使用可能なシート材であれば特に限定されない。例えば、表面シート2は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂等を含んでいてもよい。また、表面シート2は、コットン繊維等の天然繊維を含んでいてもよい。
【0017】
裏面シート3は、吸収体4の非肌側に配置される。裏面シート3は、経血の漏れを抑制する観点から、例えば、液難透過性及び/又は撥水性等の機能を有するシート材で構成されることが好ましい。このようなシート材としては、例えば熱可塑性樹脂のフィルムや、当該フィルムと不織布との積層シート等が挙げられる。さらに、裏面シート3は、装着快適性を高める観点から、通気性及び/又は透湿性を有することが好ましい。
【0018】
裏面シート3の非肌対向面3aには、例えば、ナプキン1を下着に固定するための本体固定部6aが設けられている。本体固定部6aは、平面視において吸収体4の少なくとも一部と重なる位置に配置される。ナプキン1では、横方向Yに延びる複数条の本体固定部6aが、縦方向Xに間欠的に配置されており、本体固定部6aの横方向Yの長さが、吸収体4の前端近傍及び後端近傍ではコア中間領域7Cよりも短くなっている。本体固定部6aは、例えば、粘着剤、感圧性接着剤、フック材などで構成され得る。なお、後述するように、ナプキン1はウイング部Wを有しており、ウイング部Wの非肌対向面3aにも固定部が設けられていてもよい。
【0019】
図2に示す例において、ナプキン1は、横方向Y側部の防漏性を高める等の観点から、一対のサイドシート5をさらに備えることが好ましい。一対のサイドシート5は、表面シート2の横方向Y外側に配置される。サイドシート5の材料としては、表面シート2よりも親水性が小さいシート材が好ましく、具体的には、表面シート2よりも親水性の低い不織布、フィルム、及び不織布とフィルムとの積層シート等が挙げられる。
【0020】
[吸収性コアの構成]
図2及び
図3に示すように、吸収性コア7は、吸水性繊維41を含む。吸水性繊維41としては、生理用吸収性物品に使用可能な吸水性繊維を用いることができ、例えば、木材パルプ等の天然繊維、親水性合成繊維等の親水性繊維等が挙げられる。吸収性コア7は、吸収性をより高める観点から、吸水性ポリマー42を含んでいてもよい。吸水性ポリマー42としては、生理用吸収性物品に使用可能な吸水性ポリマーを用いることができ、例えば、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体が挙げられる。
【0021】
吸収性コア7は、吸水性繊維41を含む積繊体を主体として構成されてもよく、吸水性繊維41で構成されたシート(吸収性シート)の積層体を主体として構成されてもよい。積繊体は、例えば、吸水性繊維41の集合体を主体とし、該集合体に必要に応じて吸水性ポリマー42を担持させた構成を有する。一方、吸収性シートは、典型的には、吸水性繊維41で構成されたシートの内部又は表面に吸水性ポリマー42が固定された構成を有する。吸収性コア7は、柔軟性を高めて後述する繊維塊43の作用を補助する観点から、積繊体を主体として構成されることが好ましい。
【0022】
図4に示すように、吸収性コア7は、コア前方領域7Fと、コア中間領域7Cと、コア後方領域7Rと、を有する。コア前方領域7F、コア中間領域7C、及びコア後方領域7Rは、縦方向Xに沿って並んでいる。コア中間領域7Cは、中間領域Cに位置し、縦方向Xにおいて中間領域Cの範囲に一致する。コア前方領域7Fは、コア中間領域7Cよりも縦方向X前方に位置する。コア後方領域7Rは、コア中間領域7Cよりも縦方向X後方に位置する。
【0023】
図2に例示するように、コア中間領域7Cは、相互に交絡した複数の繊維塊43を含む繊維塊存在領域70を有する。本明細書において、繊維塊43は、複数の繊維が塊状に集積されて一体化された繊維集合体である。「繊維塊43が相互に交絡する」とは、隣り合う繊維塊43を構成する繊維が相互に融着しておらず、着用時相当の外力が加わった状態で、繊維塊43の構成繊維同士が絡み合って結合することをいう。なお、繊維塊43は、外力が付加されていない状態では、交絡していなくてもよいが、交絡していることが好ましい。繊維塊43は、後述するように、例えば吸収体4のフィット性の向上に寄与する。
【0024】
繊維塊43は、経血の吸収による特性の低下を抑制する観点から、非吸水性繊維を主体として含むことが好ましい。なお、本明細書において、「ある構成要素がある材料を主体として含む」とは、当該構成要素における当該材料の含有量が50質量%以上であることをいう。繊維塊43を構成する全繊維における非吸水性繊維の含有量は、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。繊維塊43を構成する非吸水性繊維としては、上述の吸水性繊維41に比べて親水度の低い繊維(疎水性繊維)が好ましく、具体例として、熱可塑性樹脂を主体とする合成繊維が挙げられる。
【0025】
繊維塊43を構成する繊維は2.0dtex以上であると、着用時にふんわりとした感覚を着用者に与えやすくなるので好ましく、3.0dtex以上がより好ましく、4.0stex以上であることが、繊維塊43中に空隙を作り易くなり、繊維塊を積繊した層構造である場合に嵩密度が高くなり、圧縮回復性に優れるので特に好ましい。
【0026】
繊維塊43の形状は特に制限されず、不定形状でもよいが、例えば、不織布シートを一定の寸法となるように切断して得られたシート片のような、定形のものを用いることもできる。このような定形の繊維塊としては、例えば、特開2019-063469号公報、特開2019-098157号公報、及び特開2020-188918号公報に記載の繊維塊が挙げられる。具体的に、繊維塊43は、例えば、2つの対向する基本面と、該2つの基本面を連結する骨格面とを備えていることが好ましい。
【0027】
繊維塊存在領域70は、少なくとも排泄部に対向する領域に配置されており、コア中間領域7Cの一部に配置されていてもよいし、コア中間領域7Cの全体に配置されていてもよい。繊維塊存在領域70は、平面視において、吸収性コア7全体に含まれる繊維塊43の大部分が存在する領域であり、例えば後述する繊維塊層44が配置される領域である。繊維塊存在領域70では、吸収性コア7全体に含まれる繊維塊43の質量に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上の繊維塊43が含まれる。繊維塊存在領域70は、コア中間領域7Cにおいて繊維塊43の坪量の分布を測定した場合に、繊維塊43の最大坪量値を有し、繊維塊存在領域70の外部における繊維塊43の坪量は、上記最大坪量値に対して5%以下であることが好ましい。繊維塊存在領域70の平面視における平面形状は、略矩形状でもよいし、その他の形状でもよい。
図1及び
図4に示す例では、繊維塊存在領域70の平面形状は、縦方向X前方及び後方の境界線がそれぞれ、縦方向X前方及び後方に凸の曲線で形成されている。また、繊維塊43の最大坪量値を有する箇所は、少なくとも、繊維塊存在領域70の縦方向Xの中央部、及び/又は横方向Yの中央部であることが好ましい。
【0028】
繊維塊存在領域70は、繊維塊43の他、吸水性繊維41を含んでいてもよい。この場合、繊維塊43は、他の繊維塊43と交絡する他、吸水性繊維41と交絡していてもよい。また、繊維塊存在領域70は、
図2に示すように、繊維塊43が非肌側に配置され、かつ、吸水性繊維41を主体とする吸水性材料が肌側に配置された層構造を有していてもよい。この層構造については、後述する。
【0029】
コア中間領域7Cの繊維塊存在領域70は、互いに交絡した複数の繊維塊43を含むことで、繊維密度の高い、互いに交絡した複数の繊維塊43と、その周囲の相対的に繊維密度の低い領域(例えば実質的に繊維を含まない空間部など)とが混在する構成となり得る。このため、繊維塊存在領域70は、厚み方向Zの押圧力によって、繊維塊43の周囲の低密度領域が容易に圧縮され、押圧力の緩和によって、元の形状に復帰することができる。さらに、繊維塊存在領域70は、互いに交絡した複数の繊維塊43によって高い保形性を有することで、膣口及びその周囲との密着した状態を維持できる。このように、繊維塊存在領域70は、高い圧縮回復性を有し、膣口及びその周囲に対するフィット性を高めることができる。
【0030】
コア後方領域7Rは、起伏の大きい着用者の臀部及びその周囲に対向して配置される。このため、コア後方領域7Rは、臀部からの外力や、座位や仰臥位における肌との擦れなどによって応力が生じやすく、シワやヨレなどの好ましくない変形が誘発されやすい。そこで、コア後方領域7Rは、このような応力や好ましくない変形の影響をコア中間領域7Cへ及ぼしにくくする観点から、
図4及び
図5に示すように、コア後端部7bを含むコアテーパ部73と、後方縦低坪量部71Rと、を有する。コアテーパ部73は、縦方向X前方からコア後端部7bに向かって横方向Yにおける寸法が漸減する。コア後端部7bは、吸収性コア7において最も縦方向X後方に位置する部分である。
【0031】
また、コアテーパ部73は、横方向Y内側に凸状に湾曲する外縁であるコア内凸部74を有する。コア内凸部74において「横方向Y内側に凸状に湾曲する」形状とは、コアテーパ部73の外縁の2点(例えばコアテーパ部73の縦方向X前方における端部と他の一点)と接する直線L3を引いた場合に、直線L3よりも横方向Y内側に凸状に湾曲する形状をいう。コア内凸部74において直線L3との距離が最大となる点を頂部74aと定義する。
【0032】
後方縦低坪量部71Rは、吸水性繊維41の坪量が周囲よりも低く、縦方向Xに線状に延びる。後方縦低坪量部71Rは、周囲よりも低い坪量の吸水性繊維41を含む領域でもよいし、実質的に吸水性繊維41を含まない領域でもよい。吸収性コア7の破損を防ぐ観点からは、後方縦低坪量部71Rは、周囲よりも低い坪量の吸水性繊維41を含み、
図3に示すように、肌対向面又は非肌対向面のいずれか一方から開口する溝状に構成されることが好ましい。後方縦低坪量部71Rは、周囲よりも剛性が低く、かつ、周囲からの応力が伝達されにくい領域であるため、コア後方領域7Rのシワやヨレなどを伴わない変形を促進することができる。
【0033】
本明細書において、「低坪量部が線状に延びる」という表現は、直線状に延びる態様及び曲線状に延びる態様のいずれも含み、直線状の部分と曲線状の部分が混在している態様も含む。「低坪量部が縦方向Xに延びる」とは、低坪量部が全体として縦方向Xに延びていればよく、少なくとも一部が湾曲又は蛇行している態様も含むものとする。本実施形態において、後方縦低坪量部71Rは、
図4及び
図5に示すように、縦方向Xに沿って直線状に延びることが好ましい。
【0034】
複数の後方縦低坪量部71Rは、
図5に示すように、コア内凸部74と重なるか、又はコア内凸部74の近傍に位置する第1端部76aを含む第1後方縦低坪量部71aを有する。例えば、後方縦低坪量部71Rは、縦中心線CLを挟んで横方向Y両側に位置する、少なくとも一対の第1後方縦低坪量部71aを有する。「第1端部76aがコア内凸部74と重なる」とは、第1端部76aがコア内凸部74上に位置していることをいう。「コア内凸部74の近傍」とは、コア内凸部74から縦方向Xに5mm以内の領域をいう。第1後方縦低坪量部71aの第1端部76aは、コア内凸部74における変形性をより高める観点から、コア内凸部74と重なるように配置されることが好ましい。
【0035】
[上記構成の主な作用効果]
本実施形態では、着用者の動作や姿勢の変化によって後方領域Rに生じた好ましくない変形(捻じれ、シワ、ヨレなど)や応力(例えば張力、圧縮力など)の影響が、コア中間領域7Cに及ぶことを抑制できる。このような作用効果は、例えば、上記構成のコア後方領域7Rによって実現され得る。
【0036】
コアテーパ部73による作用について説明する。コアテーパ部73は、臀部と大腿部との境目(臀溝)近傍から、後方(背側)に向かって徐々に浅くなる臀裂の形状にフィットし易くなされた形状となる。具体的に、コアテーパ部73は、肛門の左右の臀溝近傍から、臀裂の後部の尾骨又は仙骨の近傍まで延びる。コアテーパ部73の外縁であるコア内凸部74は、臀裂側(正中線側)に向いた臀部の膨らみに沿った湾曲形状となり得る。このように、コア後方領域7Rは、臀裂とその周囲の形状に違和感なくフィットすることができる。さらに、コア後方領域7Rは、上記構成により、臀部の背面側に大きく延出しにくくなる。例えば、歩行などの動作時には、臀部の背面側の筋肉が大きく伸縮する。また例えば、座位や仰臥位などにおいては、座面や床面などと臀部の表面が着衣を介して接触し、着用者の姿勢の変化などにより、臀部とこれらの面との間に擦れが発生することがある。上記構成のコア後方領域7Rは、臀部の背面側まで延出しにくいことで、臀部の形状変化や擦れなどによる外力の影響を受けにくくなる。これにより、コア後方領域7Rでは、着用者の動作による身体形状の変化への追従性を向上できるとともに、シワやヨレなどの好ましくない変形を抑制することができ、コア後方領域7Rにおける着用感をより向上させることができる。また、コア後方領域7Rが臀裂及びその周囲の肌に沿ってフィットすることで、臀裂及びその周囲からの経血の漏れを効果的に抑制することができる。
【0037】
次に、後方縦低坪量部71Rの作用について説明する。後方縦低坪量部71Rは、吸水性繊維41の坪量が低いため、これと交差する方向の応力が生じた場合、変形の起点となり、かつ、当該応力の伝達を抑制することができる。例えば、コア後方領域7Rは、臀部及び臀裂の形状に沿って変形する際に、縦方向Xと交差する方向の応力が恒常的に生じ得る。また例えば、コア後方領域7Rには、脚や臀部の動きによって、圧縮力などの縦方向Xと交差する方向の応力が頻繁に生じ得る。後方縦低坪量部71Rは、このような応力に対して応力緩衝作用を発揮することができ、コア後方領域7Rにおけるシワやヨレなどの好ましくない変形を抑制することができる。
【0038】
さらに、第1後方縦低坪量部71aがコア内凸部74と重なるか又はコア内凸部74の近傍まで延びることで、臀溝から臀裂後部にかけての臀部の丸みに沿うように、より変形しやすくなる。これにより、コアテーパ部73が、シワやヨレを伴わずに臀裂の窪みや臀部の丸みに沿うように変形することができる。
【0039】
このように、上記構成のコア後方領域7Rは、好ましくない変形を誘発する応力に対しては緩衝作用を発揮しつつ、姿勢の変化や動作などに追従して柔軟に変形することができる。これらにより、後方領域Rにおいて良好な着用感を維持できることに加えて、コア後方領域7Rに生じた応力や変形がコア中間領域7Cへ伝達されることを抑制できる。
【0040】
繊維塊存在領域70への応力や好ましくない変形の伝達が抑制されることで、繊維塊存在領域70の形状を維持することができる。これにより、膣口及びその周囲と中間領域Cとの密着性を維持できるとともに、繊維塊43による圧縮回復性を継続的に発揮させることができる。したがって、上記構成では、長時間にわたる着用時において、頻繁に姿勢の変化や動作が行われた場合でも、繊維塊存在領域70による膣口及びその近傍への良好なフィット性を維持することができ、良好な着用感と高い防漏性を維持することができる。
【0041】
[コアテーパ部の構成例]
図5に示すように、コアテーパ部73は、コア内凸部74の縦方向X後方に位置し、縦方向X後方に凸状に湾曲する外縁であるコア先端凸部75をさらに有することが好ましい。コア先端凸部75の縦方向X前方の端部は、例えば、コア内凸部74との間の変曲点であり得る。また、コア先端凸部75の縦方向X後方の頂部は、コア後端部7bであり得る。
【0042】
着用者の臀裂の後方には、脊椎下部の尾骨及び仙骨などに起因する隆起が存在する。コアテーパ部73が曲線状のコア先端凸部75を有することで、コア後端部7bが尾骨又は仙骨の近傍に位置する場合に、コア先端凸部75が当該隆起を囲む形状となり得る。これにより、コアテーパ部73を、より臀部後方の形状にフィットさせることができる。
【0043】
また、コアテーパ部73の縦方向Xにおける長さ寸法D3に対する、コアテーパ部73の最も横方向Y外側の端部とコア先端凸部75のコア後端部7bとの間の横方向Yに平行な寸法D4の比率(D4/D3)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、特に好ましくは0.75以上、そして、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.2以下、特に好ましくは1.15以下である。当該範囲であると、臀部の膨らみへのフィット性が良好となって、着用者の動作が激しい場合であっても臀裂周りにコアテーパ部73がフィットして、経血の後方からの漏れが一層抑制し易い。なお、長さ寸法D3は、具体的には、コアテーパ部73の最も縦方向X前方に位置する前端部73aとコア後端部7bとの間の縦方向Xにおける寸法である。
【0044】
図6を参照し、ナプキン1において、上述のコアテーパ部73の外縁の2点と接する直線L3と、コアテーパ部73との接点を、それぞれ、コア内凸部74の前端部74f(ここではコアテーパ部73の前端部73a)及び後端部74rとする。また、コア内凸部74の前端部74fと頂部74aとを結ぶ仮想直線L5と、直線L3とがなす角度をθ4、コア内凸部74の後端部74rと頂部74aとを結ぶ仮想直線L6と、直線L3とがなす角度をθ5とする。ナプキン1において、角度θ4及びθ5は、コアテーパ部73が着用者の臀溝周囲の変形に追従し易くする観点から、好ましくは15°以下、より好ましくは12°以下、特に好ましくは10°以下、であり、そして、好ましくは1°以上、より好ましくは2°以上、特に好ましくは3°以上である。特に、角度θ4が当該範囲であると、臀部の湾曲した形状の、長時間着座時等による変形に対する追従性に優れるので好ましい。
【0045】
コア先端凸部75及びコア内凸部74の曲率半径は、臀部及び臀裂の形状にフィットするようにそれぞれ設定され得る。例えば、コア内凸部74の曲率半径に対するコア先端凸部75の曲率半径の比率は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上であり、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下である。
【0046】
[縦低坪量部の構成例]
上述の作用効果をより確実に発揮させる観点から、後方縦低坪量部71Rは、
図5に示すように、1つのコア内凸部74と重なるか、又はそのコア内凸部74の近傍に位置する第1端部76aを含む第1後方縦低坪量部71aを2以上有することが好ましい。例えば、後方縦低坪量部71Rは、縦中心線CLを挟んで横方向Y両側に位置する複数対の第1後方縦低坪量部71aを有することが好ましい。
図5に示す例において、後方縦低坪量部71Rは、左右それぞれに2本ずつ、合計4本(2対)の第1後方縦低坪量部71aを有する。これにより、コア内凸部74又はその近傍において横方向Yに沿って生じるコアテーパ部73内の応力を効果的に緩衝することができ、コアテーパ部73における臀部の形状への追従性を高めることができる。
【0047】
また、コアテーパ部73がコア先端凸部75を有する場合、複数の後方縦低坪量部71Rは、コア先端凸部75と重なるか、又はコア先端凸部75の近傍に位置する端部76bを含む第2後方縦低坪量部71bを有することが好ましい。ここで、「コア先端凸部75の近傍」とは、コア先端凸部75から縦方向Xに5mm以内の領域をいう。第2後方縦低坪量部71bの端部76bは、コア先端凸部75における変形性をより高める観点から、コア先端凸部75と重なるように配置されることが好ましく、
図5に例示するように、コア後端部7bと重なるように配置されることがより好ましい。同図の例では、後方縦低坪量部71Rが、コア後端部7bまで延びる1本の第2後方縦低坪量部71bを有している。
【0048】
上記構成では、コアテーパ部73が曲線状のコア先端凸部75を有し、かつ第2後方縦低坪量部71bがコア後端部7b又はその近傍まで延びることで、コア先端凸部75が尾骨及び仙骨などに起因する隆起を覆うように変形しやすくなる。したがって、コア先端凸部75が当該隆起にフィットし、コア後端部7b近傍からの経血漏れを抑制することができる。
【0049】
また、
図4に示すように、コア前方領域7Fは、複数の前方縦低坪量部71Fを有することが好ましい。前方縦低坪量部71Fは、吸水性繊維41の坪量が周囲よりも低く、縦方向Xに線状に延びる。前方縦低坪量部71Fは、周囲よりも低い坪量の吸水性繊維41を含む領域でもよいし、実質的に吸水性繊維41を含まない領域でもよい。吸収性コア7の破損を防ぐ観点からは、前方縦低坪量部71Fは、周囲よりも低い坪量の吸水性繊維41を含み、肌対向面又は非肌対向面のいずれか一方から開口する溝状に構成されることが好ましい。
【0050】
前方縦低坪量部71Fは、後方縦低坪量部71Rと同様に、これと交差する方向の応力が生じた場合、変形の起点となり、かつ、当該応力の伝達を抑制することができる。例えば、コア前方領域7Fには、鼠径部近傍の脚の動きによって、圧縮力などの縦方向Xと交差する方向の応力が頻繁に生じ得る。前方縦低坪量部71Fは、このような応力に対して応力緩衝作用を発揮することができ、コア前方領域7Fにおけるシワやヨレなどの好ましくない変形を抑制することができる。この結果、コア中間領域7Cへの応力や好ましくない変形の伝達が抑制され、コア中間領域7Cによる膣口及びその近傍への良好なフィット性を維持することができる。
【0051】
また、本実施形態において、繊維塊存在領域70は、は、吸水性繊維41の坪量が周囲よりも低く線状に延びる低坪量部を有さないことが好ましい。これにより、繊維塊存在領域70では、局所的に剛性の低い部分を有さず、シワやヨレなどの好ましくない変形を効果的に抑制できる。したがって、繊維塊存在領域70は、安定した形状で膣口及びその周囲にフィットすることができ、圧縮回復性を継続的に発揮することができる。なお、縦低坪量部71F、71Rのコア中間領域7C側の端部は、繊維塊存在領域70の縦方向X前方及び後方の境界線に連接するよう配置されていてもよいし、この境界線から離間していてもよい。
図4に示す例では、縦低坪量部71F、71Rのコア中間領域7C側の端部が繊維塊存在領域70の上記境界線に連接するよう配置されており、より具体的には両境界線上に配置されている。
【0052】
図1及び
図4に示されたナプキン1では、繊維塊存在領域70の上記前方及び後方の境界線が、それぞれ、横方向Y中央が頂点となるような縦方向X前方の凸の曲線及び後方に凸の曲線で形成されている。このため、例えば、着用中に膣口とその周辺では装着圧を縦方向Xに沿って有効に逃がし易くなり、装着違和感を与えにくい。また、ナプキン1では、着座時に着用者の体圧が鼠径部から臀部に掛けて強く加わった際、後方領域Rの縦低坪量部71Rにより着用者臀部に沿った変形が生じたとき、特に臀裂に沿った変形を繊維塊存在領域70の後端部で緩衝し易くなるとともに、繊維塊存在領域70の上記前方及び後方の境界線を軸として両側部が着用者側に柔らかく且つ緩やかに折れ曲るように変形することが可能となる。
【0053】
また、コア中間領域7Cでは、圧縮及びその回復に伴って、繊維塊存在領域70内に含まれる体液由来の蒸気が外部に放出されやすくなる。上記構成のように、コア前方領域7Fが前方縦低坪量部71Fを有し、かつ繊維塊存在領域70が低坪量部を有さない場合、前方縦低坪量部71Fが蒸気の通路となり、蒸気を排泄部(膣口及びその周囲)の前方に放出させることができる。これにより、長時間の着用時においても、排泄部のムレなどの不快感を軽減することができる。特に、
図4に示すように、前方縦低坪量部71Fが繊維塊存在領域70との境界部まで延びている場合、この作用効果が得られやすくなる。
【0054】
また、コア前方領域7F及びコア後方領域7R各々は、吸水性繊維41の坪量が周囲よりも低く縦低坪量部71F,71Rと交差する方向に線状に延びる低坪量部を有さないことが好ましい。この場合、コア前方領域7F及びコア後方領域7Rは、隣り合う縦低坪量部71F,71Rの間に、低坪量部によって分断されずに縦方向Xに延びる帯状吸収部72F,72Rを有する。
【0055】
上記構成により、帯状吸収部72F,72R内においては応力が伝達されやすくなり、局所的に付加された外力によっても、帯状吸収部72F,72Rのより広い範囲が変形しやすくなる。例えば、着用者の座位や仰臥位などにおける姿勢の変化や、歩行などの動作時には、肌の形状変化する領域の一部がナプキン1に接触して外力(厚み方向Zの押圧力や縦方向X及び横方向Yに沿った外力など)を付加し得る。上記構成では、肌から外力を受ける部分が局所的であっても、当該部分から生じた応力が帯状吸収部72F,72Rに沿って伝達され得る。これにより、局所的な外力によっても帯状吸収部72F,72Rの広い範囲が変形しやすくなり、身体形状の変化に追従してコア前方領域7F及びコア後方領域7Rが変形しやすくなる。また、着用者の姿勢の変化や動作などによって頻繁に外力の方向が変化した場合でも、帯状吸収部72F,72Rの上記応力伝達作用により、身体形状の変化に対するコア前方領域7F及びコア後方領域7Rの追従性を高めることができる。
【0056】
上述の作用効果をより効果的に発揮する観点から、縦低坪量部71F,71Rは、以下のような構成を有することが好ましい。例えば、上述の第1後方縦低坪量部71a及び第2後方縦低坪量部71bを含む複数の後方縦低坪量部71Rの合計数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。また、前方縦低坪量部71Fの合計数は、好ましくは2以上、より好ましくは3以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは8以下である。なお、前方縦低坪量部71Fの合計数は、後方縦低坪量部71Rの合計数と同一であっても異なっていてもよいが、より違和感の少ない着用感を実現する観点から、これらの合計数が同一であることが好ましい。さらにこの場合、前方縦低坪量部71Fは、後方縦低坪量部71Rを縦方向X前方に延長した仮想的な延長線上に配置されることがより好ましい。
【0057】
例えば、各縦低坪量部71F,71Rの延在方向と直交する幅寸法は、十分な変形性を発揮する観点から、好ましくは0.5mm以上、より好ましくは1mm以上である。また当該幅寸法は、吸収性コア7の破損を抑制する観点から、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。各縦低坪量部71F,71Rの幅寸法は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
また例えば、横方向Yに隣り合う縦低坪量部71F,71R間の横方向Yにおける距離(間隔)は、好ましくは4mm以上、より好ましくは5mm以上であり、好ましくは20mm以下、より好ましくは15mm以下である。
【0059】
[圧搾溝の構成例]
図1及び
図5に示すように、吸収体4は、縦方向X及び横方向Yの双方に延び、後方領域Rに配置された一対の第1圧搾溝(圧搾溝)11をさらに備えることが好ましい。本明細書において、「圧搾溝」は、表面シート2から吸収体4に向かって圧搾加工された溝であり、表面シート2及び吸収体4が非肌側に一体的に陥凹した構成を有する。また、「圧搾溝が所定の方向に延びる」とは、圧搾溝が当該所定の方向に直線状に延びる態様に限定されず、少なくとも一部が屈曲及び/又は湾曲していてもよい。圧搾溝は、陥凹する圧搾部が連続的に形成されている構成でもよいし、複数の圧搾部がわずかに間隔をあけて並んでおり、全体として溝を構成していてもよい。圧搾溝が複数の圧搾部により形成される場合、隣り合う圧搾部間の距離は、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。
【0060】
第1圧搾溝11は、他の領域と比較して剛性が高く、変形しにくい部分となる。このため、第1圧搾溝11は、ナプキン1が比較的大きな外力を受けた場合に、周囲の低剛性領域の変形を促す変形起点として機能し得る。
【0061】
例えば、第1圧搾溝11は、縦中心線CLの横方向Y両側に、相互に離間して配置される。一対の第1圧搾溝11間の横方向Yにおける距離は、縦方向X前方から後方に向かって漸減していることが好ましい。この構成により、第1圧搾溝11は、臀裂の形状に沿った変形の起点となり得る。具体的に、臀裂は、肛門近傍の領域から、後方に向かうに従い、臀部の膨出により徐々に狭くなる形状を有する。第1圧搾溝11間の距離が後方に向かって漸減することで、この徐々に狭くなる臀裂と臀部の境界部に沿って第1圧搾溝11を配置させることができる。これにより、第1圧搾溝11を、臀裂の窪みから左右に急峻に隆起する臀部に沿った変形の起点とすることができる。なお、第1圧搾溝11の最も縦方向X後方に位置する後端部11aは、上記臀裂の形状にフィットさせる観点から、コアテーパ部73に配置されることが好ましい。
【0062】
本実施形態において、第1圧搾溝11は、第1後方縦低坪量部71aと平面視において重なっていることが好ましい。上述のように、第1圧搾溝11を挟んだ両側の領域は、臀部の起伏に沿って大きく変形し得るが、第1後方縦低坪量部71aが重なることで、第1圧搾溝11の周囲に生じる応力を緩和することができる。したがって、第1圧搾溝11を起点とする変形によるシワやヨレの発生を抑制することができ、これらのシワやヨレによってコア中間領域7Cにシワやヨレが誘発されることを抑制できる。さらに、第1圧搾溝11の周囲のシワやヨレをより効果的に抑制する観点から、第1圧搾溝11は、複数の第1後方縦低坪量部71aと平面視において重なっていることが好ましい。
【0063】
さらに、
図5を参照し、一対の第1圧搾溝11のなす角度θ3は、コア後端部7bと一対のコアテーパ部73の前端部73aとをそれぞれ結ぶ2本の仮想的な直線L4のなす角度θ2よりも小さいことが好ましい。これにより、第1圧搾溝11を、より臀裂側(正中線側)の急峻な身体形状に即した配置とすることができ、第1圧搾溝11による好ましい変形を促進することができる。したがって、着用時の違和感を抑制することができる。なお、一対の第1圧搾溝11のなす角度θ3は、一対の第1圧搾溝11をその延在方向に沿ってそれぞれ延長した仮想的な直線L5のなす角度とする。第1圧搾溝11が直線状でない場合において、直線L5は、第1圧搾溝11の縦方向X前方の端部と後端部11aとを結ぶ直線とする。
【0064】
具体的に、角度θ3は、臀裂と臀部の境界部に第1圧搾溝11をフィットさせる観点から、好ましくは20°以上、より好ましくは30°以上であり、好ましくは100°以下、より好ましくは80°以下である。また、角度θ2は、臀部の丸み形状に沿ってコア内凸部74を配置する観点から、好ましくは40°以上、より好ましくは50°以上であり、好ましくは120°以下、より好ましくは100°以下である。また、角度θ3と角度θ2の差分は、着用違和感を抑制する観点から、好ましくは10°以上、より好ましくは20°以上であり、好ましくは60°以下、より好ましくは45°以下である。
【0065】
一対の第1圧搾溝11間の最小距離は、臀裂と臀部の境界部へのフィット性を一層向上させる観点から、好ましくは7mm以上、より好ましくは8mm以上であり、好ましくは30mm以下、より好ましくは25mm以下である。
【0066】
また、
図1に示すように、吸収体4は、第1圧搾溝11以外の圧搾溝を有していてもよい。例えば、吸収体4は、縦方向Xに延び、第1圧搾溝11と離間して中間領域Cに配置された一対の第2圧搾溝12を有していてもよい。
図1に示す例において、第2圧搾溝12は、例えば、横方向Y外側に凸状に湾曲した形状を有している。第2圧搾溝12は、例えば、中間領域Cの横方向Y中央部を肌側に盛り上げるような変形の起点になるとともに、吸水性繊維41が高密度に配置されることで、毛管作用等により横方向Y外側への経血の漏れを抑制することができる。
【0067】
また、
図1に示す例において、吸収体4は、横方向Yに延び、繊維塊存在領域70よりも縦方向X後方に配置された第3圧搾溝13を有していてもよい。さらに、ナプキン1は、横方向Yに延び、繊維塊存在領域70よりも縦方向X前方に配置された第4圧搾溝14を有していてもよい。第3圧搾溝13及び/又は第4圧搾溝14は、例えば、毛管作用等により縦方向X前方及び/又は後方への経血の漏れを抑制することができる。
【0068】
これらの圧搾溝の幅寸法(延在方向と直交する方向の長さ)は特に制限されないが、圧搾溝による作用効果を効果的に発揮させる観点から、好ましくは1mm以上、より好ましくは2mm以上、そして、好ましくは5mm以下、より好ましくは4mm以下である。
【0069】
[繊維塊存在領域の構成例]
上述のように、繊維塊存在領域70では、吸水性繊維41による吸収性を高める観点から、繊維塊43が非肌側に偏在していることが好ましい。このような観点から、
図2を参照し、繊維塊存在領域70を厚み方向Zに2等分して肌側領域7Pと非肌側領域7Qとに区分した場合に、非肌側領域7Qにおける、吸水性繊維41と繊維塊43の合計質量に対する繊維塊43の質量の比率は、肌側領域7Pにおける当該比率よりも高いことが好ましい。これにより、吸水性繊維41を肌側領域7Pに偏在させることができ、経血の吸収性を高めることができる。また、繊維塊43を非肌側領域7Qに偏在させることができ、吸収性を阻害せずに上述の圧縮回復性を発揮することができる。
【0070】
上記比率の算出方法について説明する。まず、繊維塊存在領域70の肌側領域7Pの一部を切断して切断片を得る。この切断片に存在する繊維塊43及び吸水性繊維41それぞれの質量を測定する。繊維塊43の質量を、繊維塊43及び吸水性繊維41の合計質量で除することで、肌側領域7Pの上記比率を算出することができる。非肌側領域7Qの上記比率についても、同様に算出することができる。
【0071】
上記構成を実現する観点から、繊維塊存在領域70は、
図2に示すように、繊維塊43を主体として含む繊維塊層44と、繊維塊層44の肌側に配置され、吸水性繊維41を主体とする吸収層45と、を有することが好ましい。
【0072】
繊維塊層44は、繊維塊43のみを含んでいてもよいし、繊維塊43の他に吸水性繊維41を含んでいてもよい。繊維塊層44における繊維塊43の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは100質量%である。本実施形態において、繊維塊層44は、繊維塊存在領域70の横方向Y全長にわたって配置されることが好ましい。
【0073】
吸収層45は、吸水性繊維41を主体とする積繊体であってもよく、吸水性繊維41を主体とする吸収性シートの積層体であってもよい。吸収層45における吸水性繊維41の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。吸収層45は、吸収性を高める観点から、吸水性繊維41に加えて、吸水性ポリマー42を含んでいてもよい。
【0074】
吸収層45は、繊維塊層44に接していることが好ましい。この場合、吸収層45に含まれる吸水性繊維41は、繊維塊層44との境界部で繊維塊43の繊維と交絡していることが好ましい。これにより、吸収層45と繊維塊層44との間で応力が伝達しやすくなり、肌側からの外力によって繊維塊層44が圧縮変形しやすくなる。吸収層45と繊維塊層44との境界部は不明瞭であってもよい。
【0075】
また、吸収層45は、コア前方領域7F及びコア後方領域7Rと連続して形成されていてもよい。これにより、長時間にわたる着用時においても吸収性コア7の形状を保持することができる。この場合、繊維塊存在領域70は、コア前方領域7F及びコア後方領域7Rよりも繊維塊層44の分だけ厚みが厚くなり、着用者の排泄部によりフィットしやすくなる。
【0076】
上述の「圧縮回復性」は、圧縮仕事量(以下、「WC」とも言う。)及び回復仕事量(以下、「WC'」とも言う。)を指標として評価することができる。WCは、測定対象のクッション性の指標となるもので、WCの数値が大きいほど、測定対象はクッション性に優れ、したがって圧縮回復性に優れると評価される。WC'は、測定対象に外力を作用させてこれを圧縮した後、該外力を排除したときの測定対象の回復性(圧縮回復性)の指標となるもので、WC'の数値が大きいほど、測定対象は圧縮回復性に優れると評価される。
【0077】
圧縮仕事量(WC)及び回復仕事量(WC')の測定方法について説明する。測定対象のWC及びWC'は、カトーテック株式会社製のKES(カワバタ・エバリュエーション・システム)での測定値で表し得ることが一般的に知られている(参考文献:風合い評価の標準化と解析(第2版)、著者 川端季雄、昭和55年7月10日発行)。具体的には、カトーテック株式会社製の圧縮試験装置KES-G5を用いてWC、WC'を測定することができる。測定手順は以下のとおりである。まず、試料を圧縮試験装置の試験台に取り付ける。試料は、例えば、ナプキン1の如き生理用吸収性物品である。試料は乾燥状態とし、且つ縦5mm、横5mmの平面視四角形形状とする。次に、試料を面積2cm2の円形平面を持つ鋼板間で圧縮する。このとき圧縮する部分は、試料の非圧搾部、すなわち圧搾加工などが施されておらず試料本来の姿が残っている部分とする。圧縮速度は0.2cm/sec、圧縮最大荷重は2450mN/cm2、SENSは10、DEFは20とする。回復過程も同一速度で測定を行う。WCは下記式(1)、WC'は下記式(2)で表され、それぞれ単位は「mN・cm/cm2」である。下記式中、Tmは、最大荷重時(2450mN/cm2(4.9kPa))の厚みを示し、T0は、最小荷重時(4.902mN/cm2(49Pa))の厚みを示す。また、下記式(1)中のPa及び下記式(2)中のPbは、それぞれ、圧縮過程時の測定荷重(mN/cm2)、厚み回復過程時の測定荷重(mN/cm2)を示す。
【0078】
【0079】
【0080】
なお、WC'は、KES-G5の測定結果画面には表示されず、該測定結果画面に表示されるのは、WCと、WC'から算出される圧縮回復率又は圧縮レジリエンス(以下、「RC」ともいう。)である。このような場合には、測定装置に表示されるパラメータ(WC,RC)を用い、次式によりWC'を算出する。
【0081】
【0082】
前方領域F又は後方領域RのWCに対する中間領域CのWCの比率は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上である。中間領域CのWCは、好ましくは100mN・cm/cm2以上、より好ましくは120mN・cm/cm2以上である。中間領域CのWCの上限は特に制限されないが、生理用吸収性物品の個包装状態での厚みを低減する観点から、好ましくは300mN・cm/cm2以下、より好ましくは280mN・cm/cm2以下である。
【0083】
前方領域F又は後方領域RのWC'に対する中間領域CのWC'の比率は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.7以上である。中間領域CのWC'は、好ましくは100mN・cm/cm2以上、より好ましくは120mN・cm/cm2以上である。中間領域CのWC'の上限は特に制限されないが、生理用吸収性物品の個包装状態での厚みを低減する観点から、好ましくは300mN・cm/cm2以下、より好ましくは280mN・cm/cm2以下である。
【0084】
[吸収性コアのその他の寸法例]
図5を参照し、吸収性コア7の横方向Yにおける最大幅寸法(例えば
図5に示す寸法D4の2倍)は、好ましくは40mm以上、より好ましくは50mm以上であり、好ましくは100mm以下、より好ましくは90mm以下である。
【0085】
また、第1圧搾溝11の後端部11a近傍では、コア内凸部74が臀部の輪郭形状に沿い易くなるように、吸収性コア7の幅寸法が最大幅寸法よりも十分小さくなることが好ましい。このような観点から、第1圧搾溝11の後端部11aと縦方向Xにおいて同位置の吸収性コア7の幅寸法を幅寸法D6とすると、最大幅寸法(例えば寸法D4の2倍)に対する幅寸法D6の割合は、好ましくは85%以下、より好ましくは80%以下、更に好ましくは76%以下である。また、最大幅寸法に対する幅寸法D6の割合は、臀部まで被覆して第1圧搾溝11近傍における吸収性を確保する観点から、好ましくは20%以上、より好ましくは30%以上である。より具体的に、幅寸法D6は、好ましくは20mm以上、より好ましくは25mm以上であり、好ましくは80mm以下、より好ましくは70mm以下である。
【0086】
[フラップ部の構成例]
本実施形態において、ナプキン1は、フラップ部9をさらに備えることが好ましい。フラップ部9は、平面視において吸収体4の周囲に延出する部分である。フラップ部9は、裏面シート3、表面シート2及びサイドシート5のうちの1種又は2種以上で構成されており、例えば、裏面シート3及び表面シート2の積層体、又は裏面シート3及びサイドシート5の積層体で構成される。フラップ部9を構成する複数のシート材は、接着剤、熱又は音波による融着等によって相互に接合されている。
【0087】
フラップ部9の外縁9eは、着用時における捻じれ、ヨレやシワといった好ましくない変形を抑制する観点から、一対の中間膨出部91と、一対の前方膨出部92と、一対の後方膨出部93と、一対の前方境界部94と、一対の後方境界部95と、を有することが好ましい。
【0088】
中間膨出部91は、中間領域Cに位置し、横方向Y外側に膨出する。本実施形態では、縦方向Xにおける中間膨出部91の形成範囲が、中間領域Cとなり得る。中間膨出部91の縦方向X前方の端部は、前方境界部94と連接されており、後方の端部は、後方境界部95と連接されている。「中間膨出部91が横方向Y外側に膨出する」とは、起点となる前方境界部94と後方境界部95とを結ぶ仮想的な直線を引いた場合に、当該直線よりも横方向Y外側に膨出することをいう。中間膨出部91は、本実施形態において、後述するウイング部Wの外縁となり得る。
図1に示すナプキン1においては、中間領域Cにおける中間膨出部91は、縦方向X中央に位置し横方向Y外側に凸の曲線で形成された中間外凸部91Cと、その前後それぞれに位置し横方向Yの内側に凸の曲線で形成された第1及び第2中間内凸部91A、91Bと、を有する。なお、中間膨出部91は、中間外凸部91Cを備えていればよく、第1中間内凸部91A及び第2中間内凸部91Bの一方又は双方の代わりに直線で形成される中間直線部を有していても良い。この場合、中間直線部と前方膨出部92、後方膨出部93との連接部が前方境界部94、後方境界部95となる。
【0089】
前方膨出部92は、中間膨出部91の縦方向X前方に位置し、吸収体4から離れる方向に膨出する。なお、本明細書で「吸収体4から離れる方向」とは、吸収体4の横方向Y外側に位置する外縁9eであれば横方向Yに平行に引いた同一仮想線上の位置において、また、吸収体4よりも縦方向X端部側の外縁9eであれば縦方向Xに平行に引いた同一仮想線上の位置において、フラップ部9の外縁9eが吸収体4の外縁の延びる方向(接線方向)に対して外側へ凸に膨出する形状を有していればよく、フラップ部9の外縁9eと吸収体4の外縁との距離が、ナプキン1の中間領域C側から縦方向X端部側に向かって大きくなることが好ましい。例えば、前方膨出部92の縦方向X前方の外縁9eは縦方向X外方へ凸の曲線で構成され、その端部はフラップ前端部9aであり、前方膨出部92の後方の端部は、前方境界部94と連接されている。
【0090】
後方膨出部93は、中間膨出部91の縦方向X後方に位置し、吸収体4から離れる方向に膨出する。例えば、ナプキン1において、後方膨出部93の縦方向X前方の外縁9eは縦方向X内方へ凸の曲線で構成された後方連接部93Aであり、その端部は、後方境界部95と連接されている。後方連接部93Aの後端部は、横方向Y外側に凸の曲線で形成された後方外凸部93Bと連接されている。図示の例において、後方膨出部93の縦方向X後方の端部は、例えば後述するフラップ内凸部97の前端部と連接されている。
【0091】
前方境界部94は、中間膨出部91と前方膨出部92との境界部に位置し、吸収体4と近接する。つまり、ナプキン1において、前方境界部94は、中間膨出部91と前方膨出部92との境界部において、吸収体4との横方向Yの距離が最も狭くなる部位である。具体的に、前方境界部94は、中間膨出部91の第1中間内凸部91Aと前方膨出部92を構成する曲線との間の屈曲部、又はこれらの曲線間を接続する曲線部若しくは短い直線部の一部であり得る。
図1に示す例において、前方境界部94は、横方向Y内側及び縦方向X後方に向かって緩やかな凸状に湾曲する曲線部分のうち、吸収体4との横方向Yの距離が最も狭くなる部位である。
【0092】
後方境界部95は、中間膨出部91と後方膨出部93との境界部に位置し、吸収体4と近接する。つまり、ナプキン1において、後方境界部95は、中間膨出部91と後方膨出部93との境界部において、吸収体4との横方向Yの距離が最も狭くなる部位である。具体的に、後方境界部95は、中間膨出部91の第2中間内凸部91Bと後方膨出部93の後方連接部93Aとの間の屈曲部、又はこれらの曲線間を接続する曲線部若しくは短い直線部の一部であり得る。
図1に示す例において、後方境界部95は、横方向Y内側に向かって凸状に湾曲する曲線部分のうち、吸収体4との横方向Yの距離が最も狭くなる部位である。
【0093】
上記構成のフラップ部9は、前方境界部94及び後方境界部95において局所的に吸収体4に近接することから、例えば、前方領域F及び/又は後方領域Rに捻じれるような外力や圧縮力などが加わった場合、前方境界部94及び/又は後方境界部95が変形の起点となり得る。このため、変形の影響が前方領域F及び後方領域Rに限局化され、中間領域C側へ当該影響が及ぶことを抑制できる。したがって、コア中間領域7Cの形状がより安定して維持され、コア中間領域7Cによる高いフィット性及び防漏性を継続的に発揮することができる。
【0094】
また、フラップ部9は、
図1及び
図2に示すように、中間膨出部91によって外縁を構成された、横方向Y外側に延出する一対のウイング部Wをさらに有することが好ましい。
図2に示す例において、ウイング部Wは、裏面シート3とサイドシート5との積層体で構成される。ウイング部Wは、着用時に、下着のクロッチ部の非肌対向面側に人為的に折り返されて、当該非肌対向面に固定されて用いられる。
【0095】
このため、ウイング部Wは、
図2に示すように、非肌対向面(例えば裏面シート3の非肌対向面3a)に配置された、下着に固定するためのウイング固定部6bを有する。ウイング固定部6bは、本体固定部6aと同様に、例えば、粘着剤、感圧性接着剤、フック材などで構成され得る。一対のウイング部Wがウイング固定部6bによって下着に固定されることで、ウイング部Wと中間領域Cとが下着を挟んで一体化し得る。これにより、中間領域Cにおける剛性が高められ、前方領域F及び後方領域Rにおいて生じた変形の影響をより受けにくくなる。
【0096】
さらに、
図1に示すように、繊維塊存在領域70の最も縦方向X前方に位置する前端部70aは、前方境界部94よりも縦方向X後方に位置し、繊維塊存在領域70の最も縦方向X後方に位置する後端部70bは、後方境界部95よりも縦方向X前方に位置することが好ましい。なお、
図1において、繊維塊存在領域70は、破線で囲まれたドットパターンで示されている。
【0097】
上記構成では、繊維塊存在領域70の全体が中間領域Cの内部に配置されることで、繊維塊存在領域70が、前方領域F及び後方領域Rにおいて生じた変形の影響をより受けにくくなる。したがって、繊維塊存在領域70の形状がより安定して維持され、繊維塊存在領域70による高いフィット性及び防漏性を継続的に発揮することができる。
【0098】
また、後方膨出部93は、
図5に示すように、横方向Y外側に凸状に湾曲する後方外凸部93Bを有することが好ましい。この場合、フラップ部9の外縁9eは、後方外凸部93Bの最も横方向Y外側に位置する頂部93aからフラップ後端部9bまで延びる一対のフラップテーパ部96をさらに有することが好ましい。一対のフラップテーパ部96は、頂部93aからフラップ後端部9bに向かって、横方向Yにおける間隔が漸減する領域である。ナプキン1においてフラップテーパ部96は、フラップ内凸部97とフラップ後端部9bとを含む。
【0099】
上記構成により、後方領域Rにおけるフラップ部9は、臀部と大腿部との境目(臀溝)近傍から、後方(背側)に向かって徐々に浅くなる臀裂の形状にフィットした形状となる。例えば、後方外凸部93Bは、例えば肛門の左右の臀溝近傍に位置し、フラップテーパ部96は、臀溝近傍から臀裂に沿って、臀裂の後部の尾骨又は仙骨の近傍まで延びる。このように、後方領域Rは、コア後方領域7Rとともに、臀裂とその周囲の形状に違和感なくフィットすることができる。さらに、後方領域Rにおけるフラップ部9は、コア後方領域7Rと同様に、臀部の背面側まで延出しにくいことで、臀部の形状変化や擦れなどによる外力の影響を受けにくくなる。したがって、上記構成のフラップ部9により、後方領域Rにおける高い着用感を実現しつつ、シワやヨレなどの好ましくない変形を抑制することができる。
【0100】
さらに、フラップテーパ部96は、横方向Y内側に凸状に湾曲するフラップ内凸部97を有する。フラップ内凸部97において「横方向Y内側に凸状に湾曲する」形状とは、フラップテーパ部96の外縁の2点と接する直線L1を引いた場合に、直線L1よりも横方向Y内側に凸状に湾曲する形状をいう。フラップ内凸部97において、直線L1との距離が最大となる点を頂部97aと定義する。
【0101】
フラップテーパ部96の一部であるフラップ内凸部97は、臀裂側(正中線側)に向いた左右の臀部の膨らみに沿った湾曲形状となる。これにより、フラップテーパ部96を、臀裂とその周囲の形状により違和感なくフィットさせることができる。したがって、後方領域Rにおける着用感をより一層向上させることができる。
【0102】
フラップテーパ部96は、着用感をより確実に向上させる観点から、以下のような形状を有することが好ましい。例えば、フラップ後端部9bと、一対の後方外凸部93Bの頂部93aとを結ぶ2本の仮想的な直線L2のなす角度θ1は、好ましくは40°以上、より好ましくは45°以上、更に好ましくは50°以上、そして、好ましくは100°以下、より好ましくは95°以下、更に好ましくは90°以下である。
【0103】
また、後方外凸部93Bの頂部93aとフラップ後端部9bとの間の縦方向Xにおける寸法D1に対する、後方外凸部93Bの頂部93aとフラップ後端部9bとの横方向Yにおける距離D2の比率(D2/D1)は、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上、そして、好ましくは1.4以下、より好ましくは1.3以下である。
【0104】
また、一対のフラップテーパ部96の間には、十分な長さのコア後方領域7Rが配置されていることが好ましい。具体的に、
図7を参照し、後方外凸部93Bの頂部93aとフラップ後端部9bとの間の縦方向Xにおける寸法D1を100%とした場合の、コア後端部7bとフラップ後端部9bとの縦方向Xにおける距離D5の割合は、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下である。これにより、剛性の高いコア後方領域7Rによってフラップテーパ部96間の領域の変形を規制し、シワやヨレなどの好ましくない変形を抑制することができる。また、後方領域Rにおける防漏性も高めることができる。
【0105】
さらに、一対のフラップテーパ部96は、
図5に示すように、フラップ後端部9bで相互に連結されてフラップ先端凸部98を形成することが好ましい。フラップ先端凸部98は、フラップ内凸部97の縦方向X後方に位置し、縦方向X後方に凸状に湾曲する。フラップ先端凸部98の曲率半径は、狭い臀裂の形状にフィットさせる観点から、フラップ内凸部97の曲率半径よりも小さいことが好ましい。具体的に、フラップ内凸部97の曲率半径に対するフラップ先端凸部98の曲率半径の比率は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上であり、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.85以下である。フラップ先端凸部98の曲率半径は、好ましくは5mm以上、より好ましくは7mm以上であり、好ましくは90mm以下、より好ましくは80mm以下である。フラップ内凸部97の曲率半径は、好ましくは10mm以上、より好ましくは15mm以上であり、好ましくは120mm以下、より好ましくは100mm以下である。
【0106】
[ナプキン(生理用吸水性物品)の寸法例]
上述したフラップ部9による作用効果をより効果的に発揮させる観点から、ナプキン1の各部の寸法は以下のように設定することが好ましい。前方境界部94は、ナプキン1のフラップ前端部9aから縦方向Xの後方に、好ましくは40mm以上、より好ましくは50mm以上、そして、好ましくは150mm以内、より好ましくは140mm以内の位置に配置されていることが好ましい。後方境界部95は、ナプキン1のフラップ後端部9bから縦方向Xの前方に、好ましくは100mm以上、より好ましくは120mm以上、そして、好ましくは350mm以内、より好ましくは330mm以内の位置に配置されていることが好ましい。前方境界部94と後方境界部95との縦方向Xの間隔は、好ましくは40mm以上、より好ましくは60mm以上、そして、好ましくは250mm以下、より好ましくは230mm以下である。ナプキン1の横方向Yの最大幅寸法は、好ましくは60mm以上、より好ましくは80mm以上、そして、好ましくは200mm以下、より好ましくは180mm以下である。ナプキン1の最大幅寸法を有する部分は、典型的には、中間領域Cに存在し、図示の形態では、中間膨出部91の頂部が存在する部分である。ナプキン1の縦方向Xの全長は、好ましくは100mm以上、より好ましくは140mm以上、そして、好ましくは450mm以下、より好ましくは420mm以下である。フラップ内凸部97の頂部97aと吸収体4との最小距離は、吸収体4の剛性の過剰な寄与を和らげての特徴的な後方領域Rの外形形状による作用効果を一層発揮させ易くしつつ、十分な吸収容量を確保する観点から、好ましくは4mm以上、より好ましくは5mm以上、そして、好ましくは30mm以下、より好ましくは20mm以下である。
【0107】
<第2実施形態>
前方境界部94の構成は、上述の第1実施形態の例に限定されない。なお、以下の実施形態において、上述の第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0108】
図8に示すように、本発明の第2実施形態に係るナプキン(生理用吸収性物品)1Aにおいて、前方境界部94は、横方向Y内側に凸状の曲線部分のうち、吸収体4と近接する部分であってもよい。これによっても、前方境界部94が捻じれの起点として機能し得るため、上述の作用効果を得ることができる。
【0109】
<第3実施形態>
上述の第1実施形態において、フラップ部9がウイング部Wを有すると説明したが、これに限定されない。例えば、フラップ部9がウイング部Wを有さなくてもよい。
【0110】
図9に示すように、本発明の第3実施形態に係るナプキン(生理用吸収性物品)1Bにおいて、フラップ部9は、横方向Y外側に膨出し、中間膨出部91によって外縁を構成された中間膨出部99を有する。中間膨出部99は、非肌対向面に固定部を有さない。このため、中間膨出部99は、人為的に下着のクロッチ部の非肌側に折り返されずに使用される。中間膨出部99は、着用前にナプキン1Bをクロッチ部の肌側に配置した場合、クロッチ部の側縁から横方向Y外側に延出し得る。この状態から着用者がショーツを股間部まで引き上げることで、前方境界部94及び後方境界部95が変形の前後の起点となり、中間膨出部99がクロッチ部の側縁で折れ曲がるように変形し得る。これにより、中間膨出部99は、横方向Y外側への経血の漏れを抑制しつつも、ショーツに固定する手間を省略することができる。
【0111】
<他の実施形態>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0112】
例えば、コアテーパ部73はコア内凸部74を有すると説明したが、これに限定されない。例えば、コアテーパ部73も、コア内凸部74を有さずに、直線状又は横方向Y外側に凸状に湾曲する曲線状の外縁を有していてもよい。また、フラップテーパ部96も直線状に構成されてもよいし、横方向Y外側に凸状に湾曲していてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…生理用吸収性物品(ナプキン)
2…表面シート
3…裏面シート
4…吸収体
7…吸収性コア
7F…コア前方領域
7C…コア中間領域
7R…コア後方領域
70…繊維塊存在領域
71R…後方縦低坪量部
71a…第1後方縦低坪量部
73…コアテーパ部
74…コア内凸部
F…前方領域
C…中間領域
R…後方領域