(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016752
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】営巣監視システム、及び営巣監視方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20240101AFI20240131BHJP
【FI】
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119089
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横山 哲司
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】鳥による営巣の有無の監視を効率よく行う。
【解決手段】営巣監視システムは、鳥による営巣の有無の監視対象となる現場を撮影したデータである撮影データを記憶し、撮影データに写り込んでいる鳥の映像から鳥の活動状態の履歴を示す情報である飛来履歴情報を生成し、飛来履歴情報に基づき、鳥の活動状態を表わす特徴量である飛来履歴特徴量を生成し、飛来履歴特徴量と当該飛来履歴特徴量について設定されたラベルとを含むデータを学習データとして学習した機械学習モデルである活動状況判定モデルを記憶し、新たに取得した飛来履歴情報に基づき生成した飛来履歴特徴量を活動状況判定モデルに与えることにより、飛来履歴情報に対応する鳥の活動状況を示す情報である活動状況判定結果を取得し、活動状況判定結果に基づき現場における営巣の有無を判定し、判定した結果を出力する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置を用いて構成され、
鳥による営巣の有無の監視対象となる現場を撮影したデータである撮影データを記憶し、
前記撮影データに写り込んでいる鳥の映像から鳥の活動状態の履歴を示す情報である飛来履歴情報を生成し、
前記飛来履歴情報に基づき、前記鳥の活動状態を表す特徴量である情報である飛来履歴特徴量を生成し、
前記飛来履歴情報に基づく前記飛来履歴特徴量と当該飛来履歴特徴量について設定されたラベルとを含むデータを学習データとして学習した機械学習モデルである活動状況判定モデルを記憶し、
新たに取得した前記飛来履歴情報に基づき生成した前記飛来履歴特徴量を前記活動状況判定モデルに与えることにより、前記飛来履歴情報に対応する鳥の活動状況を示す情報である活動状況判定結果を取得し、
前記活動状況判定結果に基づき前記現場における鳥による営巣の有無を判定し、判定した結果を出力する、
営巣監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の営巣監視システムであって、
前記飛来履歴特徴量は、鳥が連続して飛来した回数である連続飛来回数、鳥が飛来する時間間隔である飛来時間間隔、及び鳥が停止している時間である停止時間を含む、
営巣監視システム。
【請求項3】
請求項2に記載の営巣監視システムであって、
前記連続飛来回数は、予め設定された閾値以下の時間間隔の飛来が連続して繰り返された回数である、
営巣監視システム。
【請求項4】
請求項3に記載の営巣監視システムであって、
前記閾値を設定するためのユーザインタフェースを有する、
営巣監視システム。
【請求項5】
請求項1に記載の営巣監視システムであって、
前記鳥の活動状態は、営巣中、休憩中、食事中、及び給餌中のうちの少なくともいずれかである、
営巣監視システム。
【請求項6】
請求項5に記載の営巣監視システムであって、
前記活動状況判定結果に示される、営巣中である確率又は給餌中である確率が、夫々について予め設定された閾値を超えている場合に前記現場において鳥による営巣が行われたと判定する、
営巣監視システム。
【請求項7】
請求項6に記載の営巣監視システムであって、
前記閾値を設定するためのユーザインタフェースを有する、
営巣監視システム。
【請求項8】
請求項1に記載の営巣監視システムであって、
前記撮影データは、現場に設置された全天球カメラにより取得されたデータである、
営巣監視システム。
【請求項9】
請求項1に記載の営巣監視システムであって、
前記飛来履歴情報は、前記撮影データについて物体検出処理を行うことにより生成される、
営巣監視システム。
【請求項10】
プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置が、
鳥による営巣の有無の監視対象となる現場を撮影したデータである撮影データを記憶するステップ、
前記撮影データに写り込んでいる鳥の映像から鳥の活動状態の履歴を示す情報である飛来履歴情報を生成するステップ、
前記飛来履歴情報に基づき、前記鳥の活動状態を表す特徴量である情報である飛来履歴特徴量を生成するステップ、
前記飛来履歴情報に基づく前記飛来履歴特徴量と当該飛来履歴特徴量について設定されたラベルとを含むデータを学習データとして学習した機械学習モデルである活動状況判定モデルを記憶するステップ、
新たに取得した前記飛来履歴情報に基づき生成した前記飛来履歴特徴量を前記活動状況判定モデルに与えることにより、前記飛来履歴情報に対応する鳥の活動状況を示す情報である活動状況判定結果を取得するステップ、及び、
前記活動状況判定結果に基づき前記現場における鳥による営巣の有無を判定し、判定した結果を出力するステップ、
を実行する、営巣監視方法。
【請求項11】
請求項10に記載の営巣監視方法であって、
前記飛来履歴特徴量は、鳥が連続して飛来した回数である連続飛来回数、鳥が飛来する時間間隔である飛来時間間隔、及び鳥が停止している時間である停止時間を含む、
営巣監視方法。
【請求項12】
請求項10に記載の営巣監視方法であって、
前記撮影データは、現場に設置された全天球カメラにより取得されたデータである、
営巣監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、営巣監視システム、及び営巣監視方法に関し、とくに変電所等の施設における鳥による営巣の監視を効率よく行うための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電力供給システムの運用に影響するような鳥害として、電力関連施設(変電施設、送配電施設等)への営巣によって発生する停電故障がある。例えば、カラスは、木の枝や針金ハンガーを材料として、変電所の鉄構や送電鉄塔、配電柱等に営巣し、巣材が電線の接続金具などに接触することで短絡が生じ、停電を発生させる。そのため、こうした鳥害に起因する停電を未然に防ぐための技術が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カラス等の巣の発見又は営巣の可能性の判断を正確にかつ低コストで行うこと等を目的として構成された営巣判定装置について記載されている。営巣判定装置は、電線を支持する支持体又は当該支持体に設けられた構造物に取り付けられたセンサの検出面に動物が接触したこと又は当該検出面を動物が押圧したことを検出し、検出結果に基づき動物が検出面に接触した接触回数又は動物が検出面を押圧した押圧回数を計数し、計数ステップにおいて計数された接触回数又は押圧回数に基づき、動物による営巣の有無又は営巣の可能性を判定する。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、鳥類の営巣の配電設備への被害を確実に防止することを目的として構成された営巣情報管理装置について記載されている。営巣情報管理装置は、鳥類の営巣情報を報告する情報提供者が用いる情報提供者端末にネットワークを介して接続可能とされ、情報提供者端末から配電設備の少なくとも近傍の営巣に関する営巣画像情報を含む営巣情報を取得し、営巣状況把握のために、営巣画像情報と、営巣画像情報に対応する営巣前の原配電設備画像情報とに基づき、少なくとも営巣に関連する配電設備を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-15867号公報
【特許文献2】特開2011-204012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、電力関連施設の一つである変電所には、鉄構や電力設備、電線等が複雑に組み合わさった構造物が多数存在するが、現状ではこうした構造物について巡視者が現場を回って逐一目視により営巣の有無を確認しており、多大な労力と時間を要している。また、営巣は短期間に行われるため、巡視は頻繁に実施する必要もある。また、鳥の巣は高所に作られることが多いため、巡視者は上を向いて現場を回る必要があり身体的な負担も大きい。
【0007】
本発明はこのような背景に鑑みてなされたものであり、鳥による営巣の有無の監視を効率よく行うことが可能な、営巣監視システム、及び営巣監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明のうちの一つは、営巣監視システムであって、プロセッサ及び記憶装置を有する情報処理装置を用いて構成され、鳥による営巣の有無の監視対象となる現場を撮影したデータである撮影データを記憶し、前記撮影データに写り込んでいる鳥の映像から鳥の活動状態の履歴を示す情報である飛来履歴情報を生成し、前記飛来履歴情報に基づき、前記鳥の活動状態の特徴を表わす情報である飛来履歴特徴量を生成し、前記飛来履歴情報に基づく前記飛来履歴特徴量と当該飛来履歴特徴量について設定されたラベルとを含むデータを学習データとして学習した機械学習モデルである活動状況判定モデルを記憶し、新たに取得した前記飛来履歴情報に基づき生成した前記飛来履歴特徴量を前記活動状況判定モデルに与えることにより、前記飛来履歴情報に対応する鳥の活動状況を示す情報である活動状況判定結果を取得し、前記活動状況判定結果に基づき前記現場における鳥による営巣の有無を判定し、判定した結果を出力する。
【0009】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鳥による営巣の有無の監視を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】営巣監視システムの概略的な構成を示す図である。
【
図2】営巣監視装置が備える主な機能を示す図である。
【
図4A】鳥による営巣時における飛来履歴情報の一例である。
【
図4B】鳥の休憩時における飛来履歴情報の一例である。
【
図4C】鳥の食事時(自身の食事時)における飛来履歴情報の一例である。
【
図4D】鳥の給餌時(雛への給餌時)における飛来履歴情報の一例である。
【
図10】活動状況判定モデル学習処理を説明するフローチャートである。
【
図11】活動状態判定処理を説明するフローチャートである。
【
図12】営巣監視装置の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、一実施形態につき図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、符号の前に付している「S」の文字は処理ステップを意味する。
【0013】
図1に、本発明の一実施形態として説明する、鳥による営巣の有無を監視する情報処理システム(以下、「営巣監視システム1」と称する。)の概略的な構成を示している。同図に示すように、営巣監視システム1は、監視の対象となる施設(以下、「監視対象施設」と称する。)が存在する現場の周辺を撮影するカメラ20、カメラ20と通信ネットワーク5を介して接続する営巣監視装置100とを含む。尚、監視対象施設は、例えば、変電所等の電力関連施設であるが、監視対象施設の種類は必ずしも限定されない。また、鳥は、例えば、カラスであるが、鳥の種類は必ずしも限定されない。
【0014】
カメラ20は、全天球を同時に撮影(動画撮影、静止画撮影)することが可能なカメラ(「全天球カメラ」、「360゜カメラ」などと称される。)である。カメラ20は、撮影した動画データ又は時系列の静止画データを所定のデータ形式の電子データ(以下、「撮影データ」と称する。)として記録し、記録した撮影データを営巣監視装置100に通信ネットワーク5を介して送信する。
【0015】
通信ネットワーク5は、例えば、有線方式又は無線方式の通信基盤であり、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、無線LAN、インターネット、920Hz帯通信網、PLC(Power Line Communication)等である。
【0016】
営巣監視装置100は、情報処理装置(コンピュータ)を用いて構成される。営巣監視装置100は、カメラ20から送られてくる撮影データを分析することにより、監視対象施設における鳥による営巣の有無や営巣の可能性に関する情報をユーザに提供する。営巣監視装置100は、例えば、監視対象施設が電力関連施設である場合、電力関連施設の管理主体が運営する監視所や営業所等2に設けられる。営巣監視装置100のユーザ(運用主体)は、例えば、電力関連施設の管理者や巡視者等である。
【0017】
図2に、営巣監視装置100が備える主な機能を示している。同図に示すように、営巣監視装置100は、記憶部110、撮影データ取得管理部125、飛来履歴情報生成部130、飛来履歴特徴量算出部135、学習データ生成部140、モデル学習部145、活動状況判定部150、営巣有無判定部155、営巣位置特定部160、及び判定結果提示部165の各機能を備える。
【0018】
上記機能のうち、記憶部110は、撮影データ111、飛来履歴情報112、飛来履歴特徴量113、学習データ114、活動状況判定モデル115、活動状況判定結果116、営巣有無判定結果117、及び営巣位置特定結果118の各情報(データ)を記憶する。
【0019】
撮影データ取得管理部125は、カメラ20から送られてくる撮影データを受信し、受信した撮影データを撮影データ111として管理する。
【0020】
飛来履歴情報生成部130は、撮影データ111から鳥の活動の様子(鳥の飛行の軌跡、鳥が構造物等に止まっている様子、鳥が歩いている様子等)を示す情報を取得し、取得した情報を飛来履歴情報112として管理する。
【0021】
図3に撮影データ111の一例を示す。飛来履歴情報生成部130は、例えば、公知の物体検出(Object detection)の仕組み(R-CNN(Regional CNN(Convolutional Neural Network))、YOLO(You only Look once)、SDD(Single Shot Detector)、DETR(DEtection TRansformer)等)により、撮影データ111に写り込んでいる鳥を検出し、例えば、撮影データの各コマに写り込んでいる鳥の位置を示す情報(即ち、鳥の位置を示す情報の時系列データ)に基づき飛来履歴情報112を生成する。
【0022】
図4A~
図4Dは、鳥の活動の状況ごとの飛来履歴情報112の例を模式的に示した図である。このうち、
図4Aは、鳥の営巣時における飛来履歴情報112の一例である。また、
図4Bは、鳥の休憩時における飛来履歴情報112の一例である。また、
図4Cは、鳥の食事時(自身の食事時)における飛来履歴情報112の一例である。また、
図4Dは、鳥の給餌時(雛への給餌時)における飛来履歴情報112の一例である。これらの各図に示すグラフの横軸は時間である。また、各図のグラフに示す帯の一つ一つは、鳥の一回の飛来(撮影データへの写り込み開始時から写り込み終了時まで)に対応する。また、帯の色は、鳥が飛行中(同図では白抜き)か停止中(同図では黒塗り)かを示している。
【0023】
図4Aに示すように、営巣時において、鳥は短い時間間隔で繰り返し何度も営巣中の巣がある位置に飛来する。また、鳥が巣に留まる時間(以下、「停止時間」と称する。)は短いことが多い。
【0024】
図4Bに示すように、休憩時において、鳥は営巣時よりも長い時間間隔を空けて飛来する。また、休憩時の停止時間は営巣時の停止時間よりも長い傾向がある。
【0025】
図4Cに示すように、食事時において、鳥は餌を食べきるまで短い時間間隔で連続して数回飛来する。但し、所定時間あたりの飛来回数は営巣時よりも少ない。また、停止時間は営巣時よりも長く休憩時よりは短い。
【0026】
図4Dに示すように、給餌時において、鳥は何度か繰り返し飛来するが、餌の獲得に時間を要するため、営巣時よりも飛来する時間間隔は長い。また、餌を雛に渡した後は直ぐに飛び立つため、鳥が巣に留まる時間(停止時間)は短いことが多い。
【0027】
このように、鳥の活動の状況(営巣、休憩、食事、給餌)は、連続して飛来した回数(以下、「連続飛来回数」と称する。)、飛来時間間隔、及び停止時間(以下、これら3つの特徴量を「飛来履歴特徴量」と称する。)によって特徴づけることができる。尚、鳥の活動の状況の種類は、
図4A~
図4Dに示したもの(営巣、休憩、食事、給餌)に必ずしも限定されない。
【0028】
図5に飛来履歴情報112の一例を示す。同図に示すように、例示する飛来履歴情報112は、飛行時間(停止前)511、停止時間512、飛行時間(停止後)513、前回飛来時からの経過時間514、停止時位置515、及び飛来日時516の各項目を有する複数のレコードで構成される。飛来履歴情報112の一つのレコードは鳥の一回の飛来に対応する。
【0029】
上記項目のうち、飛行時間(停止前)511には、鳥が飛来してから飛行停止(着陸)するまで(撮影データへの写り込み開始時から飛行停止時まで)の時間が格納される。停止時間512には、鳥が飛行を停止している時間が格納される。飛行時間(停止後)513には、飛行を停止していた鳥が再び飛行を開始してから撮影データへの写り込みが終了するまでの時間が格納される。前回飛来時からの経過時間514には、鳥の前回の飛来時(前回の撮影データへの写り込み終了時)から今回の飛来時(今回の撮影データへの写り込み開始時)までの時間が格納される。停止時位置515には、飛行停止時における鳥が存在する位置を示す情報が格納される。尚、上記の位置は、例えば、撮影データについて設定した座標系の位置座標(二次元座標又は三次元座標)で表される。飛来日時516には、鳥が飛来した日時(今回の撮影データへの写り込み開始日時)が格納される。
【0030】
図2に戻り、飛来履歴特徴量算出部135は、飛来履歴情報112に基づき飛来履歴特徴量(連続飛来回数、飛来時間間隔、停止時間)を求め、求めた飛来履歴特徴量を飛来履歴特徴量113として管理する。
【0031】
学習データ生成部140は、飛来履歴特徴量113として管理されている飛来履歴特徴量(過去に取得された飛来履歴情報に基づく飛来履歴特徴量)の夫々についてのラベル(正解データ)の設定をユーザから受け付け、飛来履歴特徴量と受け付けたラベルとを対応づけたデータを、活動状況判定モデル115の学習に用いる学習データ114として生成する。活動状況判定モデル115は、飛来履歴特徴量に基づき鳥の活動の状況を判定する機械学習モデル(例えば、DNN(Deep Neural Network)、決定木、サポートベクターマシン等)である。活動状況判定モデル115は、例えば、調整可能なパラメータを含んだ行列式や数式、ベクトル等で表される。
【0032】
図6に学習データ114の一例を示す。同図に示すように、例示する学習データ114は、連続飛来回数611、飛来時間間隔612、停止時間613、及びラベル614の各項目を有する複数のレコードで構成される。学習データ114の一つのレコードは、学習データの一つに対応している。
【0033】
上記の項目のうち、連続飛来回数611、飛来時間間隔612、及び停止時間613は、活動状況判定モデル115に入力される説明変数を構成する。このうち連続飛来回数611には、連続飛来回数が格納される。飛来時間間隔612には、飛来時間間隔の平均値(秒)が格納される。また、停止時間613には、停止時間の平均値(秒)が格納される。ラベル614には、当該説明変数に対するラベル(正解データ、目的変数)が格納される。
【0034】
図2に戻り、モデル学習部145は、学習データ114に基づき活動状況判定モデル115の学習を行う。
【0035】
図7は、活動状況判定モデル115の一例を示す図(ニューラルネットワークの構造を示す図)である。同図に示すように、活動状況判定モデル115の入力層711には、前述した説明変数(飛来履歴特徴量)が入力される。中間層712は、学習によって調整されるパラメータを含む一つ以上のノードからなる一つ以上の隠れ層を含む。中間層712は、入力層711に与えられた飛来履歴特徴量に基づき、出力層713の一つ以上の予測値(確率)を求める。出力層713は、鳥の活動の種類(営巣、休憩、食事、給餌)ごとの確率(営巣である確率、休憩である確率、食事である確率、給餌である確率)が格納される。
【0036】
図2に戻り、活動状況判定部150は、例えば、現場で取得した撮影データ111の所定の時間区間ごとの飛来履歴情報112に基づき飛来履歴特徴量113を生成し、生成した飛来履歴特徴量113を説明変数として活動状況判定モデル115に入力することにより鳥の活動状況を取得する。
【0037】
図8は、上記の時間区間を説明する模式図である。活動状況判定部150は、例えば、予め設定された時間のずらし量Δtだけ開始時点をずらしていくことにより順次得られる、開始時点から予め設定された時間幅TMの各期間を、上記の時間区間とする。尚、例えば、営巣監視装置100が、時間のずらし量Δtや時間幅TMを設定するためのユーザインタフェースを提供するようにしてもよい。ユーザが、例えば、鳥の種類や現場の状況、季節等に応じて時間のずらし量Δtや時間幅TMを適切に設定することで、鳥の活動状況の判定精度の向上を図ることができる。
【0038】
図2に戻り、営巣有無判定部155は、活動状況判定部150が判定した鳥の活動状況に基づき、鳥が営巣を行ったか否かを判定し、判定した結果を示す情報を営巣有無判定結果117に格納する。例えば、営巣有無判定部155は、活動状況判定部150が鳥の活動状況を「営巣」又は「給餌」と判定したこと(「営巣」の確率又は「給餌」の確率が予め設定した閾値を超えたこと)をもって鳥が営巣を行ったと判定する。営巣監視装置100に上記の閾値を設定するためのユーザインタフェースを設けてもよい。ユーザが、例えば、鳥の種類や季節等の違いに応じて上記の閾値を適切に設定することで、鳥の活動の状況の判定精度の向上を図ることができる。
【0039】
営巣位置特定部160は、営巣有無判定部155が鳥が営巣を行ったと判定した場合に、判定に用いた飛来履歴情報112の停止時位置515の内容に基づき巣の位置を特定し、特定した位置を示す情報を営巣位置特定結果118に格納する。例えば、営巣位置特定部160は、飛来履歴情報112から特定される、複数の飛行軌跡の端点が集中している位置を巣の位置として特定する。
【0040】
判定結果提示部165は、活動状況判定結果116、営巣有無判定結果117、及び営巣位置特定結果118を、ユーザインタフェースを介してユーザに提示する。
【0041】
図9は、判定結果提示部165がユーザに提示する画面(以下、「判定結果提示画面900」と称する。)の一例である。同図に示すように、例示する判定結果提示画面900は、表示期間の指定欄911、表示ボタン912、飛行軌跡の表示欄913、営巣有無判定結果の表示欄914、及び活動状況判定結果の表示欄915を有する。
【0042】
表示期間の指定欄911には、ユーザが判定結果を確認しようとする期間を指定する。ユーザが表示ボタン912を操作すると、表示期間の指定欄911に指定された期間における鳥の飛行軌跡(活動状況)を示す画像(判定結果提示部165が飛来履歴情報112に基づき生成する画像)が、飛行軌跡の表示欄913に表示される。尚、同図における破線は、鳥の飛行軌跡を示す。また、鳥が営巣や給餌を行っている場合、複数の飛行軌跡の端点の位置が同じ位置となるため(同図に示す「○」の位置)、ユーザは、巣が存在する可能性が高い位置を特定する(確認する)ことができる。
【0043】
また、ユーザが表示ボタン912を操作すると、営巣有無判定結果の表示欄914には、上記期間における営巣有無判定結果117の内容が表示される。また、活動状況判定結果の表示欄915には、当該期間における活動状況判定結果116の内容(活動状況の種類ごとの確率)が表示される。
【0044】
図10は、営巣監視装置100が、学習データ114の生成並びに生成した学習データ114を用いた活動状況判定モデル115の学習に際して行う処理(以下、「活動状況判定モデル学習処理S1000」と称する。)を説明するフローチャートである。尚、活動状況判定モデル学習処理S1000を実行するタイミングは必ずしも限定されないが、例えば、営巣監視装置100は、新たに飛来履歴特徴量113が生成されたことや、ユーザインタフェースを介してユーザから実行指示を受け付けたこと等を契機として、活動状況判定モデル学習処理S1000を実行する。以下、同図とともに活動状況判定モデル学習処理S1000について説明する。
【0045】
まず学習データ生成部140が、飛来履歴特徴量(説明変数)をユーザに提示しつつ、ユーザから当該飛来履歴特徴量についてのラベル(目的変数)の設定を受け付け、当該飛来履歴特徴量とラベルとを対応づけたデータを学習データ114として生成する(S1011)。
【0046】
続いて、モデル学習部145が、学習データ114に基づき活動状況判定モデル115を学習する(S1012)。尚、モデル学習部145が、例えば、学習済の活動状況判定モデル115について予測精度の検証を行うようにしてもよい。その場合、例えば、学習データ114を学習用のデータと検証用のデータとに予め分類しておき、学習に際しては学習用のデータを用い、検証に際しては検証用のデータを用いるようにする。
【0047】
図11は、営巣監視装置100が、判定対象の説明変数(例えば、新たに取得した時間区間における飛来履歴特徴量を活動状況判定モデル115に入力することにより、目的変数(営巣の確率、休憩の確率、食事の確率、給餌の確率)を求め、求めた目的変数をユーザに提示する処理(以下、「活動状態判定処理S1100」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに活動状態判定処理S1100について説明する。
【0048】
まず飛来履歴情報生成部130が、撮影データ111に基づき新たな飛来履歴情報112を生成する(S1111)。
【0049】
続いて、飛来履歴特徴量算出部135が、新たな飛来履歴情報112に基づき飛来履歴特徴量113を生成する(S1112)。
【0050】
続いて、活動状況判定部150が、飛来履歴特徴量113(説明変数)を活動状況判定モデル115に入力することにより、目的変数(営巣の確率、休憩の確率、食事の確率、給餌の確率)を求めて活動状況判定結果116を生成する(S1113)。
【0051】
続いて、営巣有無判定部155が、活動状況判定結果116に基づき営巣有無を判定し、判定結果を格納した営巣有無判定結果117を生成する(S1114)。
【0052】
続いて、判定結果提示部165が、判定結果提示画面900を生成してユーザに提示し、ユーザから表示期間を受け付け、受け付けた内容に基づき、飛行軌跡の表示欄913、営巣有無判定結果の表示欄914、及び活動状況判定結果の表示欄915の内容を表示する(S1115)。
【0053】
以上詳細に説明したように、本実施形態の営巣監視システム1は、新たに取得した飛来履歴情報に基づき生成した飛来履歴特徴量を活動状況判定モデルに与えることにより飛来履歴情報に対応する鳥の活動状況を示す情報を取得して現場における鳥による営巣有無を自動的に判定する。このため、現場における営巣の有無の監視負担を軽減することができる。とくに変電所のような複雑な構造物が多数存在する場所においては、人が逐一上を見上げて構内を巡回する必要がなく、営巣の有無の監視を効率よく行うことができる。
【0054】
また、営巣監視システムは、連続飛来回数、飛来時間間隔、停止時間という、鳥の活動状況を判定するのに好適なパラメータを説明変数として目的変数を出力する活動状況判定モデルを用いて鳥による営巣有無を判定するので、鳥による営巣の有無の判定を精度よく行うことができる。
【0055】
また、撮影データは、現場に設置された全天球カメラにより取得された、現場の様子を広範囲に撮影したデータであるので、現場の広い範囲における鳥の活動状況を少ない機材で監視することができ、効率よく営巣の有無の監視を行うことができる。
【0056】
<情報処理装置の例>
図12に、営巣監視装置100の実現に用いる情報処理装置のハードウェア構成の一例を示す。例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、及び通信装置16を備える。情報処理装置10の具体例として、例えば、パーソナルコンピュータ、オフィスコンピュータ、各種サーバ装置、汎用機等がある。情報処理装置10は、その全部又は一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。営巣監視装置100は、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現してもよい。
【0057】
同図において、プロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0058】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0059】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0060】
入力装置14は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0061】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0062】
入力装置14及び出力装置15は、ユーザとの間で情報の受け付けや情報の提示を行うユーザインタフェースを構成する。
【0063】
通信装置16は、通信ネットワーク5等の通信基盤を介した他の装置との間での通信(有線通信又は無線通信)を実現する装置であり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等を用いて構成される。
【0064】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。
【0065】
営巣監視装置100が備える機能は、情報処理装置10のプロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、営巣監視装置100を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体の機能によって実現される。営巣監視装置100は、前述した各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。
【0066】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、以上の説明は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上記の実施の形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【0067】
例えば、撮影データから生成される飛来履歴情報から取得される他の種類の特徴量を説明変数として用いることにより活動状況の判定精度の向上を図ってもよい。また、ユーザが要求する活動状況の判定精度が確保されるのであれば、例えば、前述した特徴量(連続飛来回数、飛来時間間隔、停止時間)のうちのいずれか1つ又はいずれか2つを選択して説明変数として用いるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 営巣監視システム、2 監視所/営業所等、5 通信ネットワーク、100 営巣監視装置、110 記憶部、111 撮影データ、112 飛来履歴情報、113 飛来履歴特徴量、114 学習データ、115 活動状況判定モデル、116 活動状況判定結果、117 営巣有無判定結果、118 営巣位置特定結果、125 撮影データ取得管理部、130 飛来履歴情報生成部、135 飛来履歴特徴量算出部、140 学習データ生成部、145 モデル学習部、150 活動状況判定部、155 営巣有無判定部、160 営巣位置特定部、165 判定結果提示部