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特開2024-167528画像形成システム、情報処理装置、および制御プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167528
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】画像形成システム、情報処理装置、および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20241127BHJP
   G03G 15/00 20060101ALI20241127BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20241127BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
G03G21/00 396
G03G21/00 510
G03G15/00 303
B41J29/38 204
B41J29/38 201
G06F3/12 340
G06F3/12 308
G06F3/12 329
G06F3/12 331
G06F3/12 385
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083664
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】満田 亮
【テーマコード(参考)】
2C061
2H270
【Fターム(参考)】
2C061AQ06
2C061AR01
2C061AR03
2C061HJ08
2C061HK05
2C061HK07
2C061HN08
2C061HN15
2C061HP00
2C061HQ03
2C061HR07
2H270KA59
2H270KA68
2H270LA24
2H270LA28
2H270LA29
2H270LA79
2H270LA80
2H270LA97
2H270LA99
2H270LB01
2H270LC02
2H270LC03
2H270LC04
2H270LC05
2H270LC06
2H270LD03
2H270LD09
2H270LD15
2H270MA34
2H270MA35
2H270MB04
2H270MB05
2H270MB06
2H270MB07
2H270MB25
2H270MB28
2H270MB32
2H270MB33
2H270MB39
2H270MB40
2H270MB41
2H270MB43
2H270MB55
2H270MC55
2H270NC02
2H270NC03
2H270NC07
2H270NC08
2H270NC20
2H270ND13
2H270ND28
2H270ND31
2H270PA11
2H270PA14
2H270RA27
2H270RC02
2H270RC03
2H270RC10
2H270RC11
2H270RC12
2H270RC18
2H270ZC03
2H270ZC04
2H270ZC08
(57)【要約】
【課題】分散印刷において、生産性を低下させることなく、複数の画像形成装置間で出力される印刷物の画質を揃える。
【解決手段】画像形成システム1000は、複数の画像形成装置10それぞれから取得した用紙の特性に対応する用紙特性情報に基づき、複数の画像形成装置それぞれの画像形成条件を決定する制御部を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像形成装置を有する画像形成システムであって、
前記複数の画像形成装置それぞれから取得した用紙の特性に対応する用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれの画像形成条件を決定する制御部を備える画像形成システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の画像形成装置が出力する印刷物の画質が揃うように、それぞれの画像形成装置における前記画像形成条件を決定する、請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能である、請求項1、または請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記複数の画像形成装置それぞれの画質変化特性情報を用いて、前記用紙特性情報における見込みの画質を判定し、
前記複数の画像形成装置が出力する印刷物の画質が揃うように、それぞれの画像形成装置における前記画像形成条件を決定する、請求項1、または請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記制御部は、さらに、前記複数の画像形成装置それぞれの装置種類、装置の使用履歴、および装置の使用環境に関する少なくともいずれかの装置情報に基づいて、前記複数の画像形成装置それぞれで用いる画質変化特性情報を決定する、請求項4に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記画質変化特性情報は、設定する前記画像形成条件と画質との関係を定義したものである、請求項4に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記制御部は、それぞれの画像形成装置の前記画質変化特性情報を用いて、設定可能な画像形成条件の範囲から画質変化予測幅を見積もり、および、前記複数の画像形成装置の画質変化予測幅の重なりを判定し、
重なりがある場合に、重なり範囲の画質になるように前記画像形成条件を決定する、請求項6に記載の画像形成システム。
【請求項8】
1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能であり、
前記制御部は、前記分散印刷を実行する際に、前記画質変化予測幅に重なりがない場合には、分散印刷が実行できない旨を判定し、および判定結果をユーザーに通知する、請求項7に記載の画像形成システム。
【請求項9】
前記複数の画像形成装置は、3台以上であり、
1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能であり、
前記制御部は、前記分散印刷を実行する際に、前記複数の画像形成装置のうちの一部の画像形成装置の間で前記画質変化予測幅に重なりがある場合には、重なりがある一部の前記画像形成装置で、重なり範囲の画質になるように前記画像形成条件を決定する、請求項7に記載の画像形成システム。
【請求項10】
1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能であり、
前記制御部は、分散印刷を実行する前記複数の画像形成装置が出力する印刷物の画質が揃うように、それぞれの画像形成装置における前記画像形成条件を決定し、および、
分散印刷を実行中に、分散印刷を担う画像形成装置を追加する場合には、前記追加する画像形成装置の画質を、既に分散印刷を実行中の画像形成装置の画質に合わせるように、前記追加する画像形成装置の画像形成条件を決定する、請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項11】
前記複数の画像形成装置に接続する情報処理装置を備え、
前記制御部は、前記情報処理装置に内蔵される、請求項1、または請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項12】
前記制御部は、前記複数の画像形成装置のうちの何れかに内蔵される、請求項1、または請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項13】
前記複数の画像形成装置それぞれは、用紙特性情報を取得するメディア検知部を備える、請求項1、または請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項14】
前記メディア検知部は、前記画像形成装置の内部の搬送路において、画像形成部よりも上流側に配置されている、請求項13に記載の画像形成システム。
【請求項15】
1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能であり、
前記制御部は、分散印刷を実行中において、取得した用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれにおける、前記用紙に画像形成する際の画像形成条件を再調整する、請求項13に記載の画像形成システム。
【請求項16】
前記画質は、色、濃度、光沢度、および、にじみ度合いの少なくともいずれかである、請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項17】
前記画像形成条件には、用紙を加熱および加圧することで用紙上のトナーを用紙に定着する定着器の定着条件および画像形成時における用紙の搬送速度の少なくともいずれかが含まれる、請求項1、または請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項18】
前記用紙特性情報には、用紙の表面性、坪量、紙厚、水分率、剛度、および目方向の少なくともいずれかが含まれる、請求項1、または請求項2に記載の画像形成システム。
【請求項19】
前記画像形成装置は、内部の搬送路において画像形成後の用紙上の画像を読み取って読取画像データを得る読取部を備え、
用紙の用紙特性情報、画像形成条件、および読取画像データに基づいて、前記画質変化特性情報を生成または更新する画質変化特性情報設定部を備える、請求項4に記載の画像形成システム。
【請求項20】
前記制御部は、
前記複数の画像形成装置それぞれから用紙の特性に対応する用紙特性情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれに設定するための前記用紙に画像形成する際の画像形成条件を決定する画像形成条件設定部と、
を備える、請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項21】
複数の画像形成装置を制御することで、1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能な情報処理装置であって、
前記複数の画像形成装置それぞれから取得した用紙の特性に対応する用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれの画像形成条件を決定する制御部と、を備える情報処理装置。
【請求項22】
前記制御部は、
前記複数の画像形成装置それぞれから用紙の特性に対応する用紙特性情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれに設定するための前記用紙に画像形成する際の画像形成条件を決定する画像形成条件設定部と、
を備える、請求項21に記載の情報処理装置。
【請求項23】
複数の画像形成装置を制御することで、1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能な情報処理装置を制御するコンピューターで実行される制御プログラムであって、
前記複数の画像形成装置それぞれから取得した用紙の特性に対応する用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれの画像形成条件を決定するステップ、を含む処理を前記コンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成システム、情報処理装置、および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
大量の印刷ジョブの出力を行う際に、1つの印刷ジョブを複数に分けて、複数台の画像形成装置で実行する分散印刷という技術がある。特許文献1に開示された印刷システムは、分散印刷で複数の印刷装置から1つの印刷ジョブを出力するときに、複数の用紙種類から構成されてしまうという問題を避けるため、以下の技術が用いられている。各印刷装置は給紙トレイに設定されている紙種を判別するメディアセンサを備え、メディアセンサで読み取った紙種を収集し、分割ジョブを同じ紙種がセットされている印刷装置のみに送信する。
【0003】
しかしながら、同じ用紙種類を用いて印刷したとしても色味等の画質がばらつく場合がある。例えば、同じ用紙種類であったとしても紙の含水率の状態が異なるために異なる画質になったり、同じ用紙種類を用いたとしても機械の状態により異なる画質になったりする。このような問題に対応するため特許文献2では、複数の画像形成装置で画像を形成する際に、画像形成後の用紙上の画像の色味を色味検知部で検知する。そして、複数の印刷機のそれぞれの色味検知部で検知した色味データを比較することで、画像の色味を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-26203号公報
【特許文献2】特開2021-26243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2の技術では、画像形成後の画像を色味検知部で検知し、色味の差に応じて色味を補正するものであり、色味の補正が反映されるまでに調整時間がかかり、生産性が低下する虞がある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、複数の画像形成装置を用いた印刷において、生産性を低下させることなく、複数の画像形成装置間で出力される印刷物の画質を揃えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の上記目的は、下記の手段によって達成される。
【0008】
(1)複数の画像形成装置を有する画像形成システムであって、
前記複数の画像形成装置それぞれから取得した用紙の特性に対応する用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれの画像形成条件を決定する制御部を備える画像形成システム。
【0009】
(2)前記制御部は、前記複数の画像形成装置が出力する印刷物の画質が揃うように、それぞれの画像形成装置における前記画像形成条件を決定する、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0010】
(3)1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能である、上記(1)、または上記(2)に記載の画像形成システム。
【0011】
(4)前記制御部は、前記複数の画像形成装置それぞれの画質変化特性情報を用いて、前記用紙特性情報における見込みの画質を判定し、
前記複数の画像形成装置が出力する印刷物の画質が揃うように、それぞれの画像形成装置における前記画像形成条件を決定する、上記(1)、または上記(2)に記載の画像形成システム。
【0012】
(5)前記制御部は、さらに、前記複数の画像形成装置それぞれの装置種類、装置の使用履歴、および装置の使用環境に関する少なくともいずれかの装置情報に基づいて、前記複数の画像形成装置それぞれで用いる画質変化特性情報を決定する、上記(4)に記載の画像形成システム。
【0013】
(6)前記画質変化特性情報は、設定する前記画像形成条件と画質との関係を定義したものである、上記(4)に記載の画像形成システム。
【0014】
(7)前記制御部は、それぞれの画像形成装置の前記画質変化特性情報を用いて、設定可能な画像形成条件の範囲から画質変化予測幅を見積もり、および、前記複数の画像形成装置の画質変化予測幅の重なりを判定し、
重なりがある場合に、重なり範囲の画質になるように前記画像形成条件を決定する、上記(6)に記載の画像形成システム。
【0015】
(8)1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能であり、
前記制御部は、前記分散印刷を実行する際に、前記画質変化予測幅に重なりがない場合には、分散印刷が実行できない旨を判定し、および判定結果をユーザーに通知する、上記(7)に記載の画像形成システム。
【0016】
(9)前記複数の画像形成装置は、3台以上であり、
1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能であり、
前記制御部は、前記分散印刷を実行する際に、前記複数の画像形成装置のうちの一部の画像形成装置の間で前記画質変化予測幅に重なりがある場合には、重なりがある一部の前記画像形成装置で、重なり範囲の画質になるように前記画像形成条件を決定する、上記(7)に記載の画像形成システム。
【0017】
(10)1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能であり、
前記制御部は、分散印刷を実行する前記複数の画像形成装置が出力する印刷物の画質が揃うように、それぞれの画像形成装置における前記画像形成条件を決定し、および、
分散印刷を実行中に、分散印刷を担う画像形成装置を追加する場合には、前記追加する画像形成装置の画質を、既に分散印刷を実行中の画像形成装置の画質に合わせるように、前記追加する画像形成装置の画像形成条件を決定する、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0018】
(11)前記複数の画像形成装置に接続する情報処理装置を備え、
前記制御部は、前記情報処理装置に内蔵される、上記(1)、または上記(2)に記載の画像形成システム。
【0019】
(12)前記制御部は、前記複数の画像形成装置のうちの何れかに内蔵される、上記(1)、または上記(2)に記載の画像形成システム。
【0020】
(13)前記複数の画像形成装置それぞれは、用紙特性情報を取得するメディア検知部を備える、上記(1)、または上記(2)に記載の画像形成システム。
【0021】
(14)前記メディア検知部は、前記画像形成装置の内部の搬送路において、画像形成部よりも上流側に配置されている、上記(13)に記載の画像形成システム。
【0022】
(15)1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能であり、
前記制御部は、分散印刷を実行中において、取得した用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれにおける、前記用紙に画像形成する際の画像形成条件を再調整する、上記(13)に記載の画像形成システム。
【0023】
(16)前記画質は、色、濃度、光沢度、および、にじみ度合いの少なくともいずれかである、上記(2)に記載の画像形成システム。
【0024】
(17)前記画像形成条件には、用紙を加熱および加圧することで用紙上のトナーを用紙に定着する定着器の定着条件および画像形成時における用紙の搬送速度の少なくともいずれかが含まれる、上記(1)、または上記(2)に記載の画像形成システム。
【0025】
(18)前記用紙特性情報には、用紙の表面性、坪量、紙厚、水分率、剛度、および目方向の少なくともいずれかが含まれる、上記(1)、または上記(2)に記載の画像形成システム。
【0026】
(19)前記画像形成装置は、内部の搬送路において画像形成後の用紙上の画像を読み取って読取画像データを得る読取部を備え、
用紙の用紙特性情報、画像形成条件、および読取画像データに基づいて、前記画質変化特性情報を生成または更新する画質変化特性情報設定部を備える、上記(4)に記載の画像形成システム。
【0027】
(20)前記制御部は、
前記複数の画像形成装置それぞれから用紙の特性に対応する用紙特性情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれに設定するための前記用紙に画像形成する際の画像形成条件を決定する画像形成条件設定部と、
を備える、上記(1)に記載の画像形成システム。
【0028】
(21)複数の画像形成装置を制御することで、1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能な情報処理装置であって、
前記複数の画像形成装置それぞれから取得した用紙の特性に対応する用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれの画像形成条件を決定する制御部と、を備える情報処理装置。
【0029】
(22)前記制御部は、
前記複数の画像形成装置それぞれから用紙の特性に対応する用紙特性情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれに設定するための前記用紙に画像形成する際の画像形成条件を決定する画像形成条件設定部と、
を備える、上記(21)に記載の情報処理装置。
【0030】
(23)複数の画像形成装置を制御することで、1つの印刷ジョブを前記複数の画像形成装置で実行する分散印刷を実行可能な情報処理装置を制御するコンピューターで実行される制御プログラムであって、
前記複数の画像形成装置それぞれから取得した用紙の特性に対応する用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれの画像形成条件を決定するステップ、を含む処理を前記コンピューターに実行させるための制御プログラム。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る画像形成システムは、前記複数の画像形成装置それぞれから取得した用紙の特性に対応する用紙特性情報に基づき、前記複数の画像形成装置それぞれの画像形成条件を決定する制御部を備える。これにより、分散印刷において、生産性を低下させることなく、複数の画像形成装置間で出力される印刷物の画質を揃えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】第1の実施形態に係る画像形成システムの概略構成を示す図である。
図2】画像形成装置の全体構成を示す断面模式図である。
図3】画像形成装置のブロック図である。
図4】情報処理装置のブロック図である。
図5】各項目の例を示す図である。
図6A】各項目の組み合わせ毎における画質特性変化情報を示す図である。
図6B】各項目の組み合わせ毎における画質特性変化情報を示す図である。
図6C】各項目の組み合わせ毎における画質特性変化情報を示す図である。
図7】画質変化特性情報のデータの内容を示す図である。
図8】複数の画質変化特性情報のデータそれぞれの内容を示す図である。
図9】画質変化特性情報のデータの内容を示す図である。
図10A】分散印刷処理を示すフローチャートである。
図10B】ステップS03の画像形成条件調整処理を示すサブルーチンフローチャートである。
図10C】ステップS06の画像形成条件調整処理を示すサブルーチンフローチャートである。
図11】操作表示部等に表示される共通画質の設定画面の例である。
図12A】各装置間で光沢度を揃えるための画像形成条件の調整について説明するための模式図である。
図12B】各装置間で光沢度を揃えるための画像形成条件の調整について説明するための模式図である。
図13】変形例における図10Bに続いて行われる画像形成条件調整処理を示すサブルーチンフローチャートである。
図14】画質予測変化幅の重なりが一部の装置でない場合の状態を示す模式図である。
図15】操作表示部等に表示されるユーザーへの通知画面の例である。
図16A】第2の実施形態における分散印刷処理を示すフローチャートである。
図16B】ステップS54の画像形成条件調整処理を示すサブルーチンフローチャートである。
図17】追加の装置で、実行中の装置の光沢度に揃えるための画像形成条件の調整について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。しかしながら、本発明の範囲は、開示される実施形態に限定されない。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。本実施形態においては、記録媒体には、印刷用紙(以下、単に用紙という)、各種フィルムが含まれる。特に用紙としては、植物由来の機械パルプ、および/または化学パルプを用いて製造されたものが含まれる。また用紙の種類としては、コート紙のグロス紙およびマット紙、ならびに非コート紙の普通紙および上質紙等が含まれる。
【0034】
図1は、第1の実施形態に係る画像形成システム1000の概略構成を示す図である。画像形成システム1000は、複数の画像形成装置10(10-1~10-n)、および情報処理装置30によって構成される。また、画像形成システム1000は、端末装置50を含んでもよい。端末装置50は、PC、タブレット端末、スマートフォン等であり、複数の画像形成装置10を用いた分散印刷を実行させるユーザーにより使用される。これらの装置は、ネットワークを介して互いに通信接続する。情報処理装置30は、画像形成装置10が設置された建物内に配置されたオンプレミスサーバー、または、商用のクラウドサービスを利用したクラウドサーバーである。情報処理装置30は、分散印刷処理において、制御対象の複数の画像形成装置10の中から、分散印刷を担う1つまたは複数の画像形成装置10を決定する。また、情報処理装置30の制御部は、分散印刷を担う画像形成装置10の画像形成条件を決定する。なお、図1に示す例では、情報処理装置30は、画像形成装置10とは独立した構成である例を示しているが、複数の画像形成装置10のうちのいずれかの画像形成装置10が情報処理装置30として機能してもよい。この場合、画像形成装置10に、情報処理装置30の制御部31が内蔵されることになる。
【0035】
情報処理装置30は、各画像形成装置10-1~10-n(以下、これらを総称して単に画像形成装置10、または装置ともいう)から用紙特性情報、装置情報(以下、これらをまとめて用紙特性情報等ともいう)を取得する。そして、情報処理装置30は、画質変化特性情報を使用して、取得した用紙特性情報等に基づいてそれぞれの装置の画像形成条件を決定し、この画像形成条件をそれぞれの画像形成装置10に送信する。用紙特性情報を用いて画像形成条件を設定する処理についての詳細は後述する(図12A図12B等)。
【0036】
(画像形成装置10)
以下、図2図3を参照し画像形成装置10について説明する。図2は、画像形成装置10の全体構成を示す断面模式図である。図3は、画像形成装置10のブロック図である。図2に示すように画像形成装置10には、互いに機械的、および電気的に接続された給紙装置110、装置本体120、検査装置130、および後処理装置140が含まれる。
【0037】
図2図3に示すように画像形成装置10は、制御部11、記憶部12、操作表示部13、給紙部14、搬送部15、メディア検知部16、画像形成部17、検査部18、環境検知部20、および通信部21を備える。
【0038】
(1.制御部11)
制御部11は、CPU、ROM、RAM等により構成され、ROMや、記憶部12に格納されているプログラムを実行することで、各種処理を実行し、プログラムにしたがって装置各部の制御や各種の演算処理を行う。
【0039】
(2.記憶部12)
記憶部12は、各種プログラムや各種データを格納するハードディスク等の補助記憶部からなる。記憶部12は、各給紙トレイ(後述の給紙トレイ141~144)に収納されている用紙の用紙特性情報を記憶する。用紙特性情報としては、メディア検知部16により検知された各用紙特性に関する検知データ、および、これらの検知データから判定した各種情報が含まれる。この各種情報は、例えば、用紙の銘柄、サイズ(用紙幅、用紙長)、坪量、用紙種類(グロスコート紙、マットコート紙、普通紙、上質紙、ラフ紙等)の情報である。また、記憶部12には、装置情報が記憶される。装置情報には機種情報、使用履歴情報、使用環境情報が含まれる(後述の図5の項目d1~d5等)。
【0040】
機種情報は、画像形成装置10(または装置本体120)の機種、ハードウェアバージョン、ソフトウェアバージョンが含まれる。機種は型番、製品名とも称されるものである。ハードウェアバージョンは、ロットと称されるものであり、例えば上市した時の初期ロットのバージョンと、マイナーチェンジした2番目以降のバージョンがある。ソフトウェアバージョンは、ファームウェア(FW)に書き込まれている制御ソフトのバージョンである。この制御ソフトは、サービススタッフにより、適宜更新される。
【0041】
使用履歴情報は、装置自体の使用履歴(使用期間、印刷枚数等)、装置の交換部品の使用履歴(使用時間、印刷枚数等)が含まれる。交換部品の使用履歴としては、例えば、定着器、感光体ドラム、現像器、帯電器、クリーニング部等の各交換部品の使用枚数、使用時間が含まれる。交換部品の使用履歴は、サービススタッフが所定のメンテサイクルで交換部品を新品に交換することでリセットされる。
【0042】
使用環境情報は、機外温度、画像形成装置10に接続される商用電源の電源電圧、朝一等が含まれる。機外温度は、環境検知部20により検出されたものである。朝一とは、画像形成装置10の電源オフ(または定着器がオフ)が所定時間経過(例えば4~8時間以上)した後に、画像形成装置10が立ち上がった状態(定着器のヒーターに電力が供給された状態)をいう。経過時間または時刻は、制御部11のタイマー機能により測定される。
【0043】
(3.操作表示部13)
操作表示部13はタッチパネル、テンキー、スタートボタン、ストップボタン等を備えており、画像形成装置10の状態を表示し、ユーザーからの分散印刷その他の印刷に関する設定、指示の入力に使用される。
【0044】
(4.給紙部14)
給紙部14は、給紙装置110に配置された大容量の給紙トレイ141~143、および装置本体120に配置された給紙トレイ144を備える。給紙トレイ141~144は、内部に積載され載置された複数枚の用紙90のうち最上位の用紙を送り出す送出しローラーを備え、給紙トレイ141~144内の用紙90を1枚ずつ下流側の搬送路に送り出す。
【0045】
(5.搬送部15)
搬送部15は、複数の搬送路151~155、およびこれらの搬送路151~155に沿って設けられた複数の搬送ローラー対、およびこれらの搬送ローラー対を駆動する駆動モーター(図示せず)を含む。図2に示すように搬送路151は給紙装置110に、搬送路152、155は装置本体120に、搬送路153は検査装置130に、搬送路154は後処理装置140に配置されている。また、最下流側の後処理装置140には、排紙トレイ158、159が設けられている。例えば給紙トレイ141から搬送された用紙90は、搬送路151~154を経由して排紙トレイ158に排出される。搬送路155は、用紙90の裏面にも画像を形成する両面印刷を行う場合に用いられる。搬送路152を搬送された用紙90は、片面(第1面)に画像形成された後、両面画像形成用の搬送路155に搬送される。この搬送路155に搬送された用紙90は、スイッチバック経路で表裏を反転された後、片面用の搬送路152に合流し、再び画像形成部17で用紙90のもう一方の面(第2面)に画像形成される。
【0046】
(6.メディア検知部16)
メディア検知部16は、複数種類の互いに異なるセンサーを含む複数の検知部で構成され、各センサーの電流、電圧、受光量等に対応する出力値、すなわち、用紙90(シート)の物性に対応する用紙物性情報を検知(判定)する。用紙90の検知は、例えば新しい用紙90が給紙トレイ141等に装填される度、またはユーザーにより指示により実行される。検知した用紙特性情報は、記憶部12に給紙トレイと紐付けて記憶される。
【0047】
メディア検知部16は、画像形成部17よりも上流側に配置されている。図2に示す例では、メディア検知部16は、給紙装置110の搬送路151上に配置され、搬送される用紙90の用紙特性条件を検知する。メディア検知部16は、以下に説明する表面性検知部、坪量検知部、紙厚検知部、水分率検知部、剛度検知部、目方向検知部、および体積抵抗検知部で構成される。このうち、坪量検知部、紙厚検知部、水分率検知部は、搬送される用紙90を停止させることなく、測定を行える。すなわち、坪量検知部、紙厚検知部、水分率検知部は、生産性に影響を与えずに、連続して用紙90を搬送させながら、測定を行える。なお、メディア検知部16は、必ずしもこれら全ての検知部を備えなくてもよく、いずれかを省略してもよい。メディア検知部16は、測定に応じた物性情報を出力する。物性情報は、直接的に、用紙物性に対応するものだけでなく、得られた1つ、または複数の測定値から用紙物性に変換するものもある。以下においては、検知部から直接得られた用紙物性、または測定値をまとめて、物性情報という。物性情報には、複数の項目(平滑度、坪量、厚さ、水分率(含水率)、剛度、目方向、体積抵抗(電気抵抗))が含まれる(後述の図5の項目c1~c7)。
【0048】
(6-1.表面性検知部)
表面性検知部は、用紙特性情報として用紙の表面性を検知する。表面性検知部は、筐体、発光部、コリメートレンズ、および複数の受光部(光学センサー)を備え、以下に説明するように用紙表面(照射面)からの正反射光、拡散反射光を光学的に検出する。これにより用紙90のコート層の特性が検出される。搬送路(搬送路151)の通紙領域の一方のガイド板には開口(測定領域)が設けられ、この開口が、受光部の照射領域になる。開口まで搬送された用紙90は、通紙領域の上方から沈下した押圧機構により押さえられる。これにより(ガイド板の)開口周辺の用紙90は、下方のガイド板と上からの押圧機構により抑えられる。この状態で発光部からはコリメートレンズにより略平行にされた照射光が、基準面に対して入射角75°で照射される。照射光の波長は、例えば465nmである。複数の受光部は、正反射光、および拡散反射光を受光する。複数の受光部は、例えば、反射角30度(拡散反射光用)、60度(拡散反射光用)、75度(正反射光用)の3箇所、または60度と75度の2箇所に配置される。各受光部の受ける光の強度の絶対値、および比率により、用紙90の表面性が検知される。表面性検知部により(白紙の)光沢度(例えば入射角75度の鏡面光沢度)が測定される。なお、表面性検知部が検知する光沢特性としては、光沢度に限られず、光沢を示す指標であれば他の特性であってもよい。
【0049】
(6-2.坪量検知部)
坪量検知部は、用紙特性情報として坪量を検知する。坪量検知部は、用紙90の坪量を検知するセンサーであり、発光部と受光部を備え、用紙90を透過する光の減衰量により、坪量を測定する。例えば、坪量センサーは用紙が搬送される搬送路151の一方側に発光部を配置し、他方側に受光部を配置し、用紙90を通過し、受光部で受ける光の強度に基づいて、用紙90の坪量を検知する。
【0050】
(6-3.紙厚検知部)
紙厚検知部は、用紙特性情報として用紙の厚みを検知する。紙厚検知部は、搬送ローラー間のニップを通過する用紙90の厚みに応じて、少なくとも一方が可動する搬送ローラー対、およびこの搬送ローラー対の軸間距離を測定する測定部を含む。この測定部は、例えばアクチュエーター、エンコーダ、発光・受光部で構成される。搬送ローラー対で挟み込んだ用紙90の厚みに応じて、可動する従動ローラーの軸位置が変位する。紙厚検知部は、この変位した軸の高さを測ることにより、用紙90の厚みを測定する。
【0051】
(6-4.水分率検知部)
水分率検知部は、用紙特性情報として用紙の水分率を検知する。水分率検知部は、光学センサーにより、搬送路を搬送された用紙90の水分率(水分量に関する物性値であり、含水率とも称される)を測定する。水分率検知部は、発光素子、受光素子、およびレンズ、アパーチャー、コリメートレンズ等の光学素子を含む。水分率検知部は、発光素子から近赤外線領域の所定の波長の光を用紙90に照射し、反射された光を受光素子で検出する。水分率検知部では、用紙90の水分率に応じて、近赤外線領域の所定の波長の光の吸収率が変化する性質を利用することで、用紙の水分率を検知する。
【0052】
(6-5.剛度検知部)
剛度検知部は、用紙特性情報として用紙の剛度を検知する。剛度検知部は、用紙90の先端(または後端)を自由端として、曲げ剛性を検知する。剛度検知部は保持部材と、用紙90の下側から上方に持ち上げる押し上げ部材、および押し上げ部材の押圧力を検出する圧力検知センサーから構成される。保持部材としては、搬送ローラーが兼用される。押し上げ部材の用紙90との当接面は、搬送ローラーの軸方向に平行である。剛度検知部は、用紙90の端部(縁)よりも少し内側を搬送ローラーで保持し、自由端の先端を、押し上げ部材で持ち上げ、その際の押圧力により用紙90の剛度を測定する。押し上げ部材の上下動は、駆動モーター、例えばステッピングモーターにより制御される。剛度検知部は、保持部材として搬送ローラーを用い、保持領域(ローラーニップ)と押し上げ部材の当接面は、共に用紙90の搬送方向、および用紙90の紙面(搬送面)に直交する方向であり、用紙搬送方向の剛度を測定する。
【0053】
(6-6.目方向検知部)
目方向検知部は、用紙特性情報として用紙の目方向を検知する。目方向検知部は、剛度検知部と同様の構成を備える。剛度検知部は、用紙搬送方向の剛度を測定する。これに対して、目方向検知部は、用紙搬送方向に交差する方向、例えば、(搬送面に垂直方向から視た)上面視において搬送方向に対して所定角度、例えば45度、または90度傾けた方向に、保持領域および押し上げ部材の当接面があるように配置する。この場合、保持部材としては、一対の幅が狭い板部材を用いる。目方向検知部が検知した所定角度(例えば45度)傾けた方向における剛度と、剛度検知部が検知した用紙搬送方向の剛度との比較により、制御部11は、用紙90の目方向(すき目方向ともいう)が縦目であるか、横目であるかを判定する。
【0054】
(6-7.体積抵抗検知部)
体積抵抗検知部は、用紙特性情報として用紙の体積抵抗を検知する。体積抵抗検知部は、搬送された用紙90の体積電気抵抗を検知する。体積抵抗検知部は、用紙90を挟み込む一対の搬送ローラー、およびHV(高電圧)ユニットを含む。紙抵抗を測定する際は、搬送路上の所定の検知位置で、搬送ローラーの駆動モーターを停止させ、用紙90を一時停止させる。この状態で、HVユニットにより、一対の搬送ローラーの上側ローラー(検知ローラーともいう)に高圧を印加させ、用紙90を経由して接地された下側ローラー(対向ローラー)に流れる電流値が測定される。
【0055】
(7.画像形成部17)
画像形成部17は、例えば電子写真方式により画像を形成する。画像形成部17は、装置本体120の搬送路152上に配置され、搬送される用紙90上に画像を形成する。画像形成部17は、基本色(Y,M,C,K)のそれぞれに対応した4つの書込部(図示せず)、4つの作像ユニット、4つの1次転写部を備える。また、画像形成部17は、各作像ユニットで形成されたトナー画像が転写され重ねられる中間転写ベルト、2次転写部、および定着器を備える。作像ユニットには、感光体ドラム、現像器、帯電器、クリーニング部(いずれも図示せず)等が含まれる。現像器内部のトナーの色が異なる以外は、各色の作像ユニットは同等の構成を備える。定着器は、定着ローラー、ヒーター、温度センサー等を備え、用紙90上のトナー画像を加熱、加圧し、用紙90にトナーを定着させる。定着ローラーは、ヒーターにより所定温度(定着制御温度という)に加熱される。
【0056】
(7-1.画像形成条件)
制御部11により設定される画像形成条件は、印刷ジョブの印刷設定、およびメディア検知部16により検知された使用する用紙90の物性の検知結果により、設定される。画像形成条件は、画像形成パラメータまたはプロセス条件とも称される。制御部11は、記憶部12に予め記憶されているLUT(ルックアップテーブル)を参照して、画像形成条件を設定する。また、本実施形態においては、分散印刷等の所定の印刷モードを実行する場合には、画像形成条件は、情報処理装置30により決定され、送信される(後述の図10A等)。この画像形成条件には、定着条件、搬送条件、帯電条件、露光条件、現像条件、転写条件の少なくともいずれかが含まれる(後述の図5の項目b1~b6)。定着条件には、定着器での定着制御温度、定着押圧力が含まれる。線速条件は、プロセス線速とも称され、中間転写ベルト、定着器等の線速度乃至搬送速度である。帯電条件は、帯電器での電源出力(グリッド電圧値、または、放電ワイヤー電圧値および周波数)である。露光条件は、書込部の露光量である。現像条件は、現像器の現像ローラーに印加する電源出力(バイアス電圧、ピーク電圧、周波数)である。転写条件は、上述のように中間転写ベルトを用いた場合においては、2次転写部における2次転写出力(転写電流、または転写電圧)および転写押圧力である。
【0057】
(8.検査部18)
検査部18は、検査装置130内の搬送路153上に配置され、搬送される用紙90
の画像を検出する。検査部18には、読取部、光沢度計が含まれる。
【0058】
(8-1.読取部)
読取部は、いわゆるスキャナーであり、用紙上の画像を読み取ることで読取画像データを生成する。読取部は、画像形成部17の下流側の搬送路153上に配置される。読取部は、搬送路153を搬送される用紙90の両面の画像を読み取れるように共通の構成を備える2つの読取部で構成されてもよい。読取部は、画像形成部17で画像形成された用紙90上の画像を読み取り、読取画像(読取画像データ)を生成する。読取部は、センサーアレイ、光学系、およびLED光源を備える。センサーアレイは、複数のCCDなどの光学素子を幅方向(主走査方向)に沿ってライン状に配置したものであり、用紙90の幅方向における全幅の範囲を読み取り可能なカラーラインセンサーである。光学系は、複数のミラーとレンズから構成される。LED光源からの光は、搬送路153上の読取位置を通過する用紙Sの表面を照射する。読取位置の像は、光学系により導かれ、センサーアレイ上に結像する。
【0059】
(8-2.光沢度計)
光沢度計は、画像の光沢度を測定する。光沢度の測定は、用紙90上にトナーのカラーパッチ(ベタ画像)を形成し、これを測定することにより行う。カラーパッチの形成は、評価モードで専用のチャート原稿データを出力することにより行う。光沢度計は、照射部と受光部を備え、用紙90上のカラーパッチに、所定の照射角度(例えば60度または75度)で光を照射し、この正反射の光量を受光部で検出することにより行う。
【0060】
(8-3.検査判定部)
検査部18の検査判定部は、印刷の元になる印刷データと、読取画像データを解析することで、印刷物の画質に関する各種の検査を行う。また、検査判定部は、印刷データの画素値と、読取画像データの画素値を比較、解析することで、入力と出力の対応データを生成する。例えば、検査判定部は、画像信号と濃度、または画像信号による特定の色と、出力された色との対応データを生成する。また、印刷データの画素値と、読取画像データの画素値を比較、解析することでにじみ度合いの評価を行う。
【0061】
(9.後処理部19)
後処理部19は、後処理装置140の搬送路154上に配置され、印刷設定に応じて、用紙90に対して各種の後処理を施す。後処理部19では、用紙90に対して、ステイプル処理、折処理、断裁処理等の後処理を行う。
【0062】
(10.環境検知部20)
環境検知部20は、温湿度センサーであり、画像形成装置10の機外または周囲の温度および湿度を検知する。検知した温湿度は、所定周期で更新され記憶部12に記憶される。また、画像形成装置10は、商用電源から供給された電力を装置内部に分配する電力供給部を備える(図示せず)。この電力供給部は、接続された商用電源の交流電圧値(例えば100V、200V)を検知し、これを制御部11に出力する。制御部11は、この商用電源の交流電圧値を使用環境情報(図5の項目d4:電源電圧)として用いる。
【0063】
(11.通信部21)
通信部21は、情報処理装置30、端末装置50その他の装置とネットワーク接続するインターフェースである。
【0064】
(情報処理装置30)
図4は、情報処理装置30のブロック図である。情報処理装置30は、制御部31、記憶部32、および通信部33を備える。
【0065】
(制御部31)
制御部31は、CPU、ROM、RAM等により構成され、ROMや、記憶部32に格納されているプログラムを実行することで、各種処理を実行し、プログラムにしたがって装置各部の制御や各種の演算処理を行う。制御部31は、複数の画像形成装置10それぞれから取得した用紙の特性に対応する用紙特性情報に基づき、複数の画像形成装置10それぞれの画像形成条件を決定する。
【0066】
制御部31は、通信部33と協働することで取得部311として機能してもよい。また、制御部31は、画像形成条件設定部312、および画質変化特性情報設定部313として機能してもよい。取得部311は、複数の画像形成装置10それぞれから用紙の特性に対応する用紙特性情報を取得する。画像形成条件設定部312は、取得部311が取得した用紙特性情報に基づき、複数の画像形成装置10それぞれに設定するための前記用紙に画像形成する際の画像形成条件を決定する。画像形成条件設定部312は、それぞれの画像形成装置10から取得部311が取得した用紙の用紙特性情報に基づき、当該用紙に画像形成する際の画像形成条件を決定する。また、画像形成条件設定部312は、それぞれの画像形成装置10に適用する画質変化特性情報(後述)から、印刷物の画質が揃うか否か、すなわち、画質変化予測幅に重なりがあるか否かを判定する。判定結果が是(YES)であれば、画像形成条件設定部312は、画質変化特性情報を用いて、重なりの中から設定した共通の画質になる画像形成条件を設定する。
【0067】

画質変化特性情報設定部313は、実測データに基づいて、画質変化特性情報を生成、または更新する。実測データは、印刷物を検査部18の読取部、光沢度計により測定した読み値から解析した印刷物の画質と、その印刷物の画像形成条件、用紙特性情報である。なお、画像形成装置10の制御部11も画質変化特性情報設定部313と同様の機能を担うようにしてもよい。
【0068】
(記憶部32)
記憶部32は、各種プログラムや各種データを格納するハードディスク等の補助記憶部からなる。記憶部32は、画像形成システム1000に含まれる複数の画像形成装置10それぞれの装置情報が記憶される。装置情報は、定期的に画像形成装置10から送信されるものである。また、記憶部32には、複数の画質変化特性情報(CV01~CVn)予め記憶される。画質変化特性情報は、色、濃度、光沢、にじみ等の複数の画質項目(後述の図5の項目a1~a4)それぞれに対して、(1)用紙特性情報または(2)用紙特性情報および装置情報、に応じて、その画質のレベルと画像形成条件との関係を定義したものである。
【0069】
(通信部33)
通信部33は、他の装置とネットワーク接続するインターフェースである。
【0070】
(画質変化特性情報)
次に図5から図9を参照し、画質変化特性情報について説明する。
【0071】
図5は画質変化特性情報に関する各項目の例を示す図である。記憶部32には、複数の画質変化特性情報が予め設定され、記憶されている。画質変化特性情報は、入力を画像形成条件、出力を画質とする、変換テーブル、変換関数等の変換器である。制御部31は、複数の画質変化特性情報の中から、画質情報、用紙特性情報、および装置情報の選択条件により1つの画像変化特性情報を選択する。または、制御部31は、画質情報、用紙特性情報、および装置情報により最も近い2つの画像変化特性情報を取得し、これらとの近さ(例えばユークリッド距離)に応じてデータを補間することで、用いる画質変化特性情報を設定してもよい。例えば、水分率4.5%の画質変化特性情報がなく、水分率5.0%と4.0%での画質変化特性情報が記憶されている場合、その間の水分率4.5%の画質変化特性情報は、水分率5.0%と4.0%での画質変化特性情報の中間の値が用いられる。その他の4.1から4.9%の場合は、水分率5.0%と4.0%それぞれとの距離(差分)に応じた比率で補間される。また、坪量等についても同様の補間処理が行える。
【0072】
(出力)
図5の「画像情報」の項目a1~a4にあるように、画質変化特性情報の出力の画質は、色、濃度、光沢、にじみを対象として設定されている。
【0073】
(入力)
また、入力の画像形成条件は図5の項目b1~b6にあるように、定着条件、線速条件、帯電条件、露光条件、現像条件、転写条件である。
【0074】
(選択条件(検索条件))
画質変化特性情報の選択に用いる第1の選択情報は用紙特性情報であり、これには、項目c1~c7の表面性、坪量、紙厚、水分率、剛度、目方向、抵抗値(体積抵抗値)がある。これらの項目c1~c7により画質が変化する。例えば、同じ定着条件であっても用紙の坪量、紙厚、水分率が異なる場合には、印刷物の光沢度等の画質が異なる。例えば、坪量が大きい程、紙厚が大きい程、水分率が大きい程、光沢度は高くなる。
【0075】
また、さらに、画質変化特性情報の選択に用いる第2の選択情報として装置情報を用いてもよい。装置情報には、項目d1からd5の機種情報、使用履歴情報、使用環境情報に関する複数の種情報が含まれる。このうち項目d1は機種情報である。項目d2は定着器の使用情報であり、交換(寿命)する使用量を100%として、その使用量に対する現在の使用量の割合を示している。項目d3は機外温度である。これは環境検知部20により検知された現在の測定値である。項目d4は電源電圧であり、電力供給部により検知されたものである。項目d5は、上述した朝一の状態であるか否かを示す情報である。
【0076】
図6A図6B図6Cは、このような選択条件、入力、出力に応じた画質変化特性情報の例である。図6Aに示す例では、検索条件は項目c2、c4、項目d1~d5であり、入力の画像形成条件は項目b1(定着条件)、出力は項目a3(光沢)である。 図6Aに示す例では、項目c2、c4の坪量100g、水分率3.0%、項目d1~d5で、装置種類がタイプ1、定着使用情報が10%、機外温度20℃、電源電圧200V、朝一であれば、画質変化特性情報CV01が選択される。
【0077】
図6Bに示す例では、検索条件は項目c1~c4であり、入力の画像形成条件は項目b3~b6、出力は項目a1(濃度)または項目a2(色)である。図6Bに示す例では、項目c1が光沢L1(あるレベルを示す)、項目c2が坪量x1g(ある値を示す。以下同じ)、紙厚y1μm、水分率v1%の場合であれば、画質変化特性情報CV11が選択される。画質変化特性情報CV11では、入力の画像形成条件b3(帯電条件)では帯電器のグリッド電圧値(絶対値)が高くなれば、出力項目a1(濃度)は高くなり、出力項目a2(色)は高くなる(基本色の色側にシフトする)。例えば、耐電器として基本色Yの作像部の帯電器のグリッド電圧値のみを高くすることで、出力項目a2(色)は、Y色が濃い側に色がシフトする(以下の他の入力の画像形成条件b4~b6も同様)。入力の画像形成条件b4(露光条件)では書込部の露光量が大きくなれば、出力項目a1(濃度)は高くなり、出力項目a2(色)は高くなる(基本色の色側にシフトする)。入力の画像形成条件b5(現像条件)では現像ローラーに印加するバイアス電圧(絶対値)を高くすれば、出力項目a1(濃度)は高くなり、出力項目a2(色)は高くなる(基本色の色側にシフトする)。入力の画像形成条件b6(転写条件)では2次転写出力を大きくすれば、出力項目a1(濃度)は高くなり、出力項目a2(色)は高くなる(基本色の色側にシフトする)。
【0078】
図6Cに示す例では、検索条件は項目c2~c4であり、入力の画像形成条件は項目b1、b2、出力は項目a4(にじみ)である。図6Cに示す例では、項目c2が坪量x1g、紙厚y1μm、水分率v1%の場合であれば、画質変化特性情報CV21が選択される。画質変化特性情報CV21では、入力の画像形成条件b1(定着条件)として定着温度が高くなれば、出力項目a4(にじみ)のレベル高くなる(良/改善)。また、入力の画像形成条件b2(線速条件)としてプロセス速度が上がれば、にじみレベルは低くなり(悪化)、プロセス速度が下がれば、にじみレベルは高くなる。
【0079】
図7は、用紙特性情報のデータの内容を示す図である。図7に示す用紙特性情報は、図6AのCV0nに対応する(例えばCV01に対応する)。図7は、画像出力した用紙1枚当たりの光沢度を示すグラフであり、横軸は用紙長(用紙位置)、縦軸は光沢度を示している。画像形成条件を変更した場合には、ある範囲内で光沢度を調整できるが、上下限がある。上限を超える光沢度には、設定可能な画像形成条件の範囲内で画像形成条件を変更しても調整されず、下限を下回る光沢度には、画像形成条件を変更しても調整されない。すなわち、光沢度は画質変化予測幅の範囲内でのみ調整される。色、濃度、にじみに関する画質(項目a1、a2、a4)に関する画質変化特性情報も同様であり、画質変化予測幅の範囲内でしか、調整されない。画質変化予測幅は、用紙特性情報、および装置情報により異なる幅および異なる値(絶対値)を示す。図8は、図6Aに示す画質変化特性情報CV01~CV03それぞれでの画質変化予測幅を示す図である。図8に示す各グラフでは、縦軸、横軸に数値を記載していないが、同じスケール、同じ値である。画質変化特性情報CV03では、光沢度が他よりも高く、幅が狭いことが示されている。この画質変化特性情報CV01~CV03は、事前に複数の異なる画像形成条件下で画像形成した画像を検査装置130で検知することで、装置毎に作成するようにしてもよい。図9は、ある条件下(項目c1~c7、項目d1~d5)で、画像形成条件として定着温度を振ったときの光沢度との対応関係を示すグラフである。
【0080】
情報処理装置30の画質変化特性情報設定部313は、画像形成装置10から取得した、実測データ(計測値p1~p5)に基づいて、図9に示すように画質変化特性情報を生成、または更新する。画像形成装置10から送信される実測データには、印刷物を生成した際の用紙の用紙特性情報、画像形成条件(定着制御温度)、検査部18による印刷物に関する光沢度の測定値が含まれる。なお、画質変化特性情報CV01~CV03等それぞれは、図8、および図9に示す、2種類の形式で記述されている。すなわち画質変化特性情報CV01~CV03等それぞれは、図8に示すような画質予測変化幅と、図9に示すような入力と出力の関係(関数)の2種類の形式である。
【0081】
(分散印刷処理)
次に図10A図12Bを参照し、情報処理装置により各画像形成装置の画像形成条件設定処理をともなう、分散印刷処理について説明する。図10A図10Cは、分散印刷処理を示すフローチャートである。図11は、操作表示部13または端末装置50の表示部(以下、操作表示部等という)に表示される共通画質の設定画面の例である。
【0082】
(ステップS01、S02)
ここでは、情報処理装置30は、操作表示部13のユーザーによる操作、または端末装置50により、分散印刷ジョブの入力を受け付ける。分散印刷ジョブは、印刷データ、およびジョブ設定で構成される。ジョブ設定には、分散印刷の実行が選択されており、また、共通画質の対象、およびその優先条件が記述されている。図11に示す設定画面では、ユーザーにより、色、濃度、光沢度、にじみ度合い(画質項目a1~a4)のうち、光沢度が共通画質として設定され、また優先条件は生産性優先、画質優先のうち、画質優先に設定されていることが示されている。また、ジョブ設定に記述されている、分散装置(画像形成装置10-1~10-n)の選択(候補装置)により分散装置を設定する。なお、ユーザーにより画質として色が選択された場合には、さらに、印刷データに含まれる色のうち、特定の色とその目標値が設定される。ユーザーにより画質として濃度が選択された場合には、さらに、代表色(例えばY、M、C、Kのうちの1つまたは複数)の目標濃度が設定される。また、ユーザーにより画質としてにじみ度合いが選択された場合には、さらに、目標のにじみ度合いのレベルが設定される。
【0083】
(ステップS03)
ここでは、情報処理装置30の制御部31は、各装置の画像形成条件調整を行う。図10Bは、このステップS03の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【0084】
(ステップS201)
複数の画像形成装置10のうち、分散印刷を実行する装置として設定された各画像形成装置10は、各装置が備えるメディア検知部16により、用紙90を検知し、用紙特性情報を生成する。ここでは、分散印刷に使用する可能性がある用紙90が収納されている給紙トレイ141等に収納されている用紙90を検知する。
【0085】
(ステップS202)
情報処理装置30の取得部311は、分散印刷を担う各画像形成装置10から用紙特性情報を取得する。
【0086】
(ステップS203)
画像形成条件設定部312は、画像形成装置ごとに、ステップS01で設定された共通画質項目、ステップS201で取得した用紙特性情報から、各装置の画質変化特性情報を設定する。画像形成条件設定部312は、記憶部32に記憶されている複数の画質変化特性情報CV01~CVnから一致する画質変化特性情報を選択する。あるいは画像形成条件設定部312は、補間処理等により最も近い1つまたは2つの画質変化特性情報から適用する画質変化特性情報を決定する。
【0087】
(ステップS204、S205)
画像形成条件設定部312は、各装置の制御可能な画質変化予測幅を見積もる。図12A図12Bは、各装置間で光沢度を揃えるための画像形成条件の調整について説明するための模式図である。以下においては、分散印刷を担う画像形成装置10として、3台の画像形成装置10(装置1~装置3とも表する)が設定されたものとして説明する。また、装置1~3にはそれぞれ画質変化特性情報CV01~03が適用されるものとして説明する。画像形成条件設定部312は、画質変化特性情報CV01~CV03により、分散印刷を担う全ての装置それぞれで、画質変化予測幅を見積もる。また、画像形成条件設定部312は、全装置間で画質予測変化幅に重なりがあるか否かを判定する。画像形成条件設定部312は、重なりがあれば(S205:YES)処理をステップS206に進め、重なりがなければ(S205:NO)処理をステップS209に進める。
【0088】
(ステップS206)
画像形成条件設定部312は、画質変化予測幅の共通範囲を抽出する。図12Aに示す例では、装置1~装置3の画質変化幅w1~w3で重なりがあり全装置共通の画質変化予測幅w0が存在していることが示されている。なお、図12A図12Bでは、分散印刷ではなく単体で印刷する場合に決定された画像形成条件で、出力される画質を参考として記載している(「各装置で決定される光沢度」)。
【0089】
(ステップS207)
画像形成条件設定部312は、共通範囲内から共通画質q0を設定する。この設定は、優先設定(画質優先または生産性優先)に応じて設定してもよく、共通範囲内の中央値に設定してもよい。そして、画像形成条件設定部312は、共通画質q0になる各装置の画像形成条件を決定する。画像形成条件を決定する際には、ステップS203で決定されたそれぞれの装置の画質変化特性情報(図9の入力-出力形式)が用いられる。
【0090】
(ステップS208)
情報処理装置30の制御部31は、ステップS207で決定した画像形成条件に、各装置を設定する。図12Bに示すように共通画質q0になるように各装置の画像形成条件が決定される。以上で、図10Bの処理を終了し、図10Aに戻る(リターン)。
【0091】
(ステップS209)
一方で、予測幅の重なりがなければ、分散印刷ができない旨をユーザーに通知する。この通知は、例えば、操作表示部13に警告を表示する、または端末装置50に警告を通知する。
【0092】
(ステップS04)
各装置では、印刷ジョブの分担データを受け取ったのち、画像形成条件設定部312で設定された画像形成条件下で、分散印刷を実行開始する。
【0093】
(ステップS05)
情報処理装置30は、いずれかの装置で、分担分の印刷ジョブが終了していないのであれば、処理をステップS06に進める。一方で、全ての装置で分担分の印刷ジョブが終了すれば、分散印刷の処理を終了する(エンド)。
【0094】
(ステップS06)
ここでは、リアルタイムに各装置の画像形成条件の調整を行う。ここでは、印刷ジョブを実行中もメディア検知部16により用紙90の用紙特性情報を取得し続ける。そして、用紙特性情報が変化したならば、その変化したリアルタイムの用紙特性情報により、ステップS11で設定された共通画質が維持できるように画像形成条件を微調整するものである。例えば、水分率が、給紙トレイ141に載置した用紙束の上と中央で用紙90の水分率が異なる場合がある。この場合は、連続して用紙90に画像を形成している途中で、用紙特性情報が変化する。図10Cは、このステップS06の処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【0095】
(ステップS301)
分散印刷のため、連続して給紙、搬送される用紙90を、各装置のメディア検知部16で検知し用紙特性情報を生成する。例えば、メディア検知部16の各センサーのうち水分率検知部では、用紙90を搬送させながら測定を行い、水分率に関する用紙特性情報を生成する。
【0096】
(ステップS302)
情報処理装置30の取得部311は、分散印刷を実行中の各画像形成装置10から用紙特性情報を取得する。
【0097】
(ステップS303)
ステップS203の検索条件のうち、用紙特性情報のみ情報をステップS302で得られた用紙特性情報に更新して、用いる画質変化特性情報を更新(選択)する。
【0098】
(ステップS304)
画像形成条件設定部312は、ステップS207で設定した共通画質q0となるように、維持されるように、更新した画質変化特性情報を模試いて画像形成条件を再調整する。
【0099】
(ステップS305)
情報処理装置30の制御部31は、ステップS304で決定した画像形成条件に、各装置を設定する。なお、ステップS208、または前回のステップS304で設定された画像形成条件から変更がなければ、ステップS305の処理はスキップしてもよい。以上で、図10Cの処理を終了し、図10Aの処理に戻り、ステップS05以下の処理を繰り返す。
【0100】
(変形例)
第1の実施形態においては、図10BのステップS209では、分散処理の候補の画像形成装置10の全てで、画質変化予測幅に重なりがなければ、分散印刷を中止していた。以下に説明する変形例では、分散印刷の候補機が3台以上ありその一部の画像形成装置10で重なりがあれば、その一部の画像形成装置10で分散印刷を実行するものである。
【0101】
図13は、変形例における図10BのステップS209に替えて、ステップ205に続いて行われる画像形成条件調整処理を示すサブルーチンフローチャートである。図14は画質予測変化幅の重なりが一部の装置でない場合の状態を示す模式図である。以下においては、例えば、3台のうちの2台で画質を揃えられる場合に、この2台で分散印刷を行う場合について説明する。図14では、分散印刷の対象として設定された3台の装置1~装置3のうち、装置3では、他の装置1、2と画質予測変化幅の重なりがない状態が示されている。このような状態では、図10BのステップS205でNOと判定され、図13の処理に繋がる。
【0102】
(ステップS401)
情報処理装置30は、全装置を用いた分散印刷ができない旨を通知する。図15は、操作表示部等に表示されるユーザーへの通知画面の例である。図15では、分散印刷の対象として設定された装置1~装置3のうち、装置3では、分散印刷ができないことが示されている。
【0103】
(ステップS402)
情報処理装置30は、ユーザーによる、中止の指示があれば(NO)処理を終了し(エンド)、一部の装置で分散印刷を実施するのであれば(YES)処理をステップS403に進める。例えば、図15で中止ボタンb1が操作された場合には処理を終了し、実行ボタンb2が操作された場合には処理をステップS403に進める。
【0104】
(ステップS403~S405)
この処理は、ステップS206~S208と同様である。画像形成条件設定部312は一部の装置間で共通画質q0を設定し、この共通画質変化特性情報q0になるように、ステップS203で決定された画質変化特性情報を用いて、各装置(装置1、2)の画像形成条件を設定する。以上で、図13の処理を終了し、図10Aに戻り(リターン)ステップS04以下の処理を実行する。
【0105】
このように第1の実施形態に係る画像形成システムは、複数の画像形成装置それぞれから用紙の特性に対応する用紙特性情報を取得する取得部と、取得部が取得した用紙特性情報に基づき、複数の画像形成装置それぞれにおいて、当該用紙に画像形成する際の画像形成条件を決定する画像形成条件設定部と、を備える。これにより、分散印刷において複数の画像形成装置間で出力される印刷物の画質を揃えられる。特に、第1の実施形態においては、その都度、画質変化特性情報を検知するのではなく、予め定められた画質変化特性情報を用いることで、生産性を低下させることなく、印刷物の画質を揃えられる。
【0106】
(第2の実施形態)
次に、図16Aから図17を参照し、第2の実施形態の画像形成装置10における分散印刷処理について説明する。第2の実施形態は、分散印刷を実行中に、後から装置を追加または、入れ替えるものである。この場合、最初は、1台のみの画像形成装置による印刷(分散印刷でない通常の印刷)を実行中に、後から装置を追加し、途中から分散印刷に切り替えるものも含まれる。以下においては、後から追加する装置を追加装置ともいう。
【0107】
図16Aは、第2の実施形態における分散印刷処理を示すフローチャートである。
【0108】
(ステップS51)
印刷ジョブに基づいて1台の画像形成装置は(1)通常印刷を実行開始する、または、(2)複数台での分散印刷を実行開始する。(1)通常印刷では、画像形成装置10の画像形成条件は、ジョブ設定および用紙特性情報等に基づいて自装置で画像形成条件を設定する(従来技術)。以下においてはこの通常印刷で、自装置で設定された画像形成条件下で得られる共通画質項目に関する画質も共通画質q0という。情報処理装置30側では、実行中の画像形成装置10から、画像形成条件、用紙特性情報および装置情報を取得する。そして用紙特性情報および装置情報から決定した画質変化特性情報と、画像形成条件から共通画質q0を算出できる。また、(2)分散印刷であれば、上述のステップS01~S04の処理により共通画質q0での分散印刷が実行開始する(図10A図10B)。
【0109】
(ステップS52)
情報処理装置30は、印刷ジョブが終了していないのであれば、処理をステップS53に進める。一方で、実行中の印刷ジョブが終了すれば、処理を終了する(エンド)。
【0110】
(ステップS53)
ここで、情報処理装置30は、通常印刷から装置追加または、分散印刷の実行中にさらに装置追加の設定指示がユーザーにより入力された場合には(YES)処理をステップS54に進める。一報で装置追加の設定がなければ(NO)処理をステップS52に戻す。
【0111】
(ステップS54)
ここでは、追加装置の画像形成条件を調整する。追加装置は、複数台であってもよい。以下においては、現在ジョブを実行中の装置は1台(装置1)であり、後からの追加装置の候補は2台(装置2、3)であるものとして説明する。図16Bは、ステップS54の画像形成条件調整処理を示すサブルーチンフローチャートである。
【0112】
(ステップS601)
追加の画像形成装置10は、追加装置自身が備えるメディア検知部16により、用紙90を検知し、用紙特性情報を生成する。ここでは、分散印刷に使用する可能性がある用紙90が収納されている給紙トレイ141等に収納されている用紙90を検知する。
【0113】
(ステップS602)
情報処理装置30の取得部311は、追加装置から用紙特性情報を取得する。
【0114】
(ステップS603)
画像形成条件設定部312は、画像形成装置ごとに、ステップS53で設定された共通画質項目、ステップS601で取得した用紙特性情報から、各装置の画質変化特性情報を設定する。画像形成条件設定部312は、記憶部32に記憶されている複数の画質変化特性情報CV01~CVnから一致する画質変化特性情報を選択する。あるいは補間処理等により最も近い1つまたは2つの画質変化特性情報から適用する画質変化特性情報を決定する。
【0115】
(ステップS604、S605)
画像形成条件設定部312は、各装置の制御可能な画質変化予測幅を見積もる。図17、各装置間で光沢度を揃えるための画像形成条件の調整について説明するための模式図である。装置1~3にはそれぞれ画質変化特性情報CV01~03が適用されるものとして説明する。装置1は、印刷実行中の装置であり、装置2、3は追加装置である。
【0116】
画像形成条件設定部312は、画質変化特性情報CV01により、実行中の装置1の出力している共通画質q0を見積もる。また、画像形成条件設定部312は、画質変化特性情報CV02、03によりこれから分散印刷を担う追加装置2、3それぞれでの画質変化予測幅を見積もる。また、画像形成条件設定部312は、出力中の画質q0が、追加装置の画質予測変化幅に収まっているか否かを判定する。画像形成条件設定部312は、収まっていれば(S605:YES)処理をステップS606に進める。図17に示す例では、出力中の画質q0が、追加装置2の画質予測変化幅に収まっている。一方で、画像形成条件設定部312は、出力中の画質q0が、追加装置の画質予測変化幅に収まっていなければ(S605:NO)処理をステップS608に進める。図17に示す例では、追加装置3は、出力中の画質q0が、追加装置3の画質予測変化幅に収まっていない。
【0117】
(ステップS606)
画像形成条件設定部312は、共通画質q0になる追加装置の画像形成条件を決定する。図17の例では、追加の装置2の画像形成条件を決定する。この決定の際には、ステップS603で決定された画質変化特性情報(図9の入力-出力形式)が用いられる。
【0118】
(ステップS607)
情報処理装置30の制御部31は、ステップS606で決定した画像形成条件に、追加装置を設定する。以上で、図16Bの処理を終了し、図16Aに戻る(リターン)。
【0119】
このように第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。また、第2の実施形態では、分散印刷を実行する複数の画像形成装置が出力する印刷物の画質が揃うように、それぞれの画像形成装置における画像形成条件を決定し、および、分散印刷を実行中に、分散印刷を担う画像形成装置を追加する場合には、追加する画像形成装置の画質を、既に分散印刷を実行中の画像形成装置の画質に合わせるように、追加する画像形成装置の画像形成条件を決定する。これにより、分散印刷を担う装置を後から追加でき、また、その場合であっても、分散印刷において複数の画像形成装置間で出力される印刷物の画質を揃えられる。
【0120】
以上に説明した画像形成システム、情報処理装置または画像形成装置の構成は、上記の実施形態の特徴を説明するにあたって主要構成を説明したのであって、上記の構成に限られず、特許請求の範囲内において、種々改変することができる。また、一般的な画像形成システム、情報処理装置または画像形成装置が備える構成を排除するものではない。
【0121】
また、各実施形態は、相互に組み合わせて適用されてもよい。例えば、第1、2の実施形態と変形例とが相互に組み合わせて適用されてもよい。
【0122】
また、上述した実施形態に係る画像形成システムまたは情報処理装置における各種処理を行う手段および方法は、専用のハードウェア回路、またはプログラムされたコンピューターのいずれによっても実現することが可能である。上記プログラムは、例えば、USBメモリーやDVD(Digital Versatile Disc)-ROM等のコンピューター読み取り可能な記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記録されたプログラムは、通常、ハードディスク等の記憶部に転送され記憶される。また、上記プログラムは、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、装置の一機能としてその装置のソフトウエアに組み込まれてもよい。
【符号の説明】
【0123】
1000、1000b 情報管理システム
10 画像形成装置
11 制御部
12 記憶部
13 操作表示部
14 給紙部
15 搬送部
16 メディア検知部
17 画像形成部
18 検査部
19 後処理部
20 環境検知部
21 通信部
30 情報処理装置
31 制御部
311 取得部
312 画像形成条件設定部
313 画質変化特性情報設定部
50 端末装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17