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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016753
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ラグランスリーブ型衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/10 20060101AFI20240131BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A41D27/10 D
A41D27/10 A
A41D13/00 102
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119097
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】504079254
【氏名又は名称】株式会社オンライン
(74)【代理人】
【識別番号】110000718
【氏名又は名称】弁理士法人中川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡村 栄治
【テーマコード(参考)】
3B011
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AA02
3B011AB01
3B011AC17
3B035AA05
3B035AA09
3B035AC00
3B035AC03
3B035AC15
3B211AA01
3B211AA02
3B211AB01
3B211AC17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ラグランスリーブ型衣服において後身頃側に大きな型崩れを生じさせず、腕を前に伸ばした際に後身頃側の肩部に突っ張り感を生じさせることがない、肩部に大きな運動量を与える衣服を提供する。
【解決手段】前身頃型片と、後身頃型片2と、前身頃型片及び後身頃型片との間に配置される、衣服1の肩上部において袖1D部から襟部に延びるラグランスリーブ型片4とを縫合してなるラグランスリーブ型衣服であって、ラグランスリーブ型片は、袖部と肩上部とからなるスリーブ型片4Aと、スリーブ型片と襟部との間に配置されるマージン型片4Bとから構成され、背面側1Aにおいて、少なくともマージン型片とスリーブ型片には両者を縫合した際に立体的に膨らむマージン領域を設けることによって、肩部の背面側に、後身頃型片とスリーブ型片との横縫合線S1、S2と後身頃型片とマージン型片の縦縫合線S3との交点Xを中心とする隆起領域Rを形成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前身頃型片と、後身頃型片と、該前身頃型片及び該後身頃型片との間に配置される、前記衣服の肩上部において前記衣服の袖部から前記衣服の襟部に延びるララグランスリーブ型片とを縫合してなるラグランスリーブ型衣服であって、
前記グランスリーブ型片は、前記袖部と前記衣服の肩上部とからなるスリーブ型片と、該スリーブ型片と前記衣服の襟部との間に配置されるマージン型片とから構成され、
前記衣服の背面側において、少なくとも前記マージン型片とスリーブ型片には両者を縫合した際に立体的に膨らむマージン領域を設けることによって、前記衣服の肩部の背面側に、前記後身頃型片と前記スリーブ型片との横縫合線と前記後身頃型片と前記マージン型片の縦縫合線との交点を中心とする隆起領域を形成したことを特徴とするラグランスリーブ型衣服。
【請求項2】
請求項1記載のラグランスリーブ型衣服であって、前記マージン型片と後身頃型片にも、両者を縫合した際に立体的に膨らむマージン領域を設けたことを特徴とするラグランスリーブ型衣服。
【請求項3】
請求項1記載のラグランスリーブ型衣服であって、前記横縫合線は前記交点において前記後身頃型片側に優角を形成するように屈折することを特徴とするラグランスリーブ型衣服。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか記載のラグランスリーブ型衣服であって、前記スリーブ型片は、さらに前記スリーブ型片と前記マージン型片との縫合線と並行するように、第1スリーブ型片と第2スリーブ型片とに分割されて互いに縫合されることを特徴とするラグランスリーブ型衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服肩部の後身頃側において、腕の前出し運動に伴って突っ張り感を解消するラグランスリーブ型衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
作業着や運動着の上衣において、腕の運動の自由度を確保することは重要であり、特に、従来から腕を前に伸ばした際の突っ張り感を低減するため、衣服の肩部の後身頃側に、伸縮用のマチ部を設けるノーフォークなどが採用されていた。
【0003】
しかし、ノーフォーク型の衣服はこの部分での突っ張り感を解消するための伸縮をマチ部での折り畳みに拠っているため、その折り畳みを行う際に、腕の前出し運動において装着者に負荷を感じさせるという問題点があった。
【0004】
一方、ラグランスリーブ型片と後身頃型片との脇下のマージンによって肩背面に余裕を与えるラグランスリーブ型衣服において、後見頃と肩の型紙パターンを工夫して、それぞれの型片の接続部に縫製した際に立体的膨らむようにマージンを与えることができる。例えば、肩部の周辺を立体的に膨らませて、腕の運動の自由度を与えることが、以下に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録3117564号公報
【特許文献2】特許公開公報2021-8516号公報
【0006】
特許文献1には、普通袖の裏地材をラグランスリーブ1A、1Bとし、肩部の運動量を確保する構造が開示されている。
【0007】
一方、ラグランスリーブ型衣服ではないが、特許文献2には、衣服の後身頃において、袖部付根において、背面(後身頃)部分11と後袖部分12に分割し、両者の縫合部にマージン部を設け、人体表面に沿って外側に膨出するように立体縫製される構造が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1においては、裏地として使われるラグランスリーブの型片は、前身頃側型片1Aと後身頃側型片1Bとに縦に分離され、両者の縫製部分にマージンを与えることで、肩部の周辺を立体的に膨らませるようにして、腕の動きに対して、肩部の裏地において大きな運動量を許容する空間を形成している。
【0009】
前身頃側型片1Aと後身頃側型片1Bとで構成されるラグランスリーブでは、肩部全体を膨らませることができるが、衣服としての肩部のアウトラインは崩れるため、肩パット2を表地との間に配置してその空間を確保するとともに、別途表地を被せて、その外観を強制している。また、この構成では、後ろ見頃側のみに肩部の運動量を大きく与える構造ではないため、装着者が腕を前方に伸ばした際には、後身頃側の自由度が十分ではなく、背中側が突っ張って腕の前伸ばし動作の自由度が確保されないという問題が残る。
【0010】
すなわち、かかる従来技術では表地材や肩パッド2が型崩れ隠すために問題とはならないが、表地としてラグランスリーブが現れる衣服においては、肩部の全体の型崩れが現れてしまうという問題があり、また、後身頃側に大きな空間マージンを与えることができない、という問題点もあった。
【0011】
また、特許文献2では、肩部分が衣服の背面において縦方向に膨出して、空間マージンを与える構造が示されるが、腕を前にした状態での腕の上げ下ろしの際に自由度を与える横方向の動作の自由度が十分ではない、という問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、袖から襟にかけて型片が延びるラグランスリーブ型衣服において後身頃側で大きな型崩れを生じさせず、また、腕を前に伸ばした状態で腕を上げ下ろしする際にも、腕の動きに、自由度を与える衣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決する代表的なラグランスリーブ型衣服は、少なくとも前身頃型片と、後身頃型片と、該前身頃型片及び該後身頃型片との間に配置される、前記衣服の肩上部において前記衣服の袖部から前記衣服の襟部に延びるララグランスリーブ型片とを縫合してなるラグランスリーブ型衣服であって、前記グランスリーブ型片は、前記袖部と前記衣服の肩上部とからなるスリーブ型片と、該スリーブ型片と前記衣服の襟部との間に配置されるマージン型片とから構成され、前記衣服の背面側において、少なくとも前記マージン型片とスリーブ型片には両者を縫合した際に立体的に膨らむマージン領域を設けることによって、前記衣服の肩部の背面側に、前記後身頃型片と前記スリーブ型片との横縫合線と前記後身頃型片と前記マージン型片の縦縫合線との交点を中心とする隆起領域を形成したことを特徴とする。
【0014】
また、前記マージン型片と後身頃型片にも、両者を縫合した際に立体的に膨らむマージン領域を設ける構造としても良い。
【0015】
また、前記横縫合線は前記交点において前記後身頃型片側に優角を形成するように屈折する構造としてもよい。
【0016】
さらに、請求項1または3記載のラグランスリーブ型衣服であって、前記スリーブ型片は、さらに前記スリーブ型片と前記マージン型片との縫合線と並行するように、第1スリーブ型片と第2スリーブ型片とに分割されて互いに縫合される構造としてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、ラグランスリーブ型衣服においてラグランスリーブ型片を分割して、両者間の縦縫合部となる部分にマージン領域を設け、同縦縫合線とラグランスリーブ型片と後身頃型片との横縫合線との交点を中心とする隆起領域を形成することで、肩部において腕の上下方向の運動量を確保するとともに、後身頃側の型崩れを起こしづらい衣服を提供することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態のラグランスリーブ型上衣を説明したものであり、(a)は同上衣の後身頃側の正面図であり、(b)は同上衣の前身頃側の背面図である。
図2】(a)は装着者が腕を下げた状態での、同上衣の後身頃側の斜視図であり、(b)は装着者が腕を前に伸ばした状態での同上衣の後身頃側の斜視図である。
図3】(a)は同上衣の肩部を構成する型片の説明図であり、(b)は同上衣の型片を縫い合わせる際の、マージン領域を示す説明図である。
図4】本発明の第2実施形態のラグランスリーブ型上衣を説明したものであり、(a)は同上衣の後身頃側の正面図であり、(b)は同上衣の前身頃側の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1乃至図3を用いて、本発明の第一実施形態に関する上衣を具体的に説明する。
【0020】
図1(a)(b)に示すように、第1実施形態における上衣1は、袖から襟にかけて、ラグランスリーブ型片4が延びる、ラグランスリーブ型衣服である。ラグランスリーブ型片4は、上衣1の背面1Aの後身頃型片2と、正面1の表身頃型片3との間に縫合されて、上衣1の肩上面1Cを構成する。
【0021】
ラグランスリーブ型片4は、上衣1の袖1Dを構成するスリーブ型片4Aと、上衣1の襟側1Eのマージン型片4Bとに分割されている。これらスリーブ型片4Aとマージン型片4Bとの縫合線は袖1Dの付根から襟側1Eに至る肩上面1Cの中途部において前身頃と後身頃を跨ぎ、縦縫合線S3となる。
【0022】
また、上衣1の背面1Aにおいて、マージン型片4Bと後身頃型片2との縫合線S1と、スリーブ型片4Aと後身頃型片2との縫合線S2とにより横縫合線を形成するが、上述の、これら横縫合線S1,S2と縦縫合線S3との交点Xにおいて、縫合線S1と縫合線S2は屈折している。
【0023】
すなわち、上衣1の左右の肩背面1Fには、それぞれ横縫合線S1、S2と縦縫合線S3とが交差する交点Xが形成されることになり、後身頃型片2側には、横縫合線S1,S2により交点Xを頂点とした優角(180度以上360度以下)αが形成されている。
【0024】
上衣1の正面1Bにおいては、縦縫合線S3と、マージン型片4Bと表身頃型片3との前肩縫合線S4とは袖1Dの付根部分で交差しており、前肩縫合線S4は屈折しない直線となって、正面1B側には背面1A側の交点Xのような構造は形成されない。なお、衣服1の袖1Dは、スリーブ型片4Aを丸め、両端同士を縫合することにより形成されるが、そのスリーブ縫合線S5は袖1Dの内側に形成される。
【0025】
図2(a)(b)に示すように、上衣1の背面1Aは、ラグランスリーブ型片4を分離したスリーブ型片4Aとマージン型片4B、そして後身頃型片2により構成される(なお、これら図において、スリーブ型片4Aとマージン型片4Bの表身頃側部分は裏側に隠れて図示されていない)。
【0026】
スリーブ型片4Aとマージン型片4Bとの縦縫合線S3近傍は、縫合する前の状態において、両者が膨出して重なるマージン領域m1を有しており、縦縫合線S3に沿って両者を縫合すると、この部分が外側に膨らむ、いわゆる立体縫製となる。
【0027】
同様に、後身頃型片2とマージン型片4Bとの横縫合線S1近傍においても、同様に、それぞれの型片2,4Bがマージン領域m2を有しており、横縫合線S1を合わせて両者を縫合すると、この部分も同様に外側に膨らむことになる。
【0028】
また、後身頃型片2とスリーブ型片4Aとの横縫合線S2の近傍において、それぞれの型片2、4Aがマージン領域m3を有することは、通常のラグランスリーブ型の衣服と同じであり、このマージン領域m3により衣服1を厚み方向に膨らませるとともに、袖縫合線S5で縫合して、袖1Dを形成することができる。
【0029】
そして、横縫合線S1,S2と縦縫合線S3が交わる交点Xにおいて、これらマージンm1、m2、m3による上衣1の膨出が集中することになる。
【0030】
なお、これら図2(a)(b)ではマージン型片4Bの、上衣1の正面側1B側が図示しないが、正面側1Bにおいてはスリーブ型片4Aとの間でマージンは形成されず、背面側1Aのみにマージンm1は形成されるものである。
【0031】
図3(a)(b)を用いて、上衣1の機能を説明する。図3(a)に示すように、上衣1の装着者が腕を下げた状態では、上衣1の袖1Dは下がった状態になり、横縫合S1,S2及び縦縫合線S3の、上記マージン領域m1,m2,m3による膨らみは、それらの交点Xに集中することになる。
【0032】
すなわち、上衣1は背面側1Aにおいて、その両肩背面1Fに交点Xを中心とする隆起領域Rが形成されることになる。マージン領域m1及びマージン領域m2が交点Xで重なること、あるいは、ラグランスリーブ型衣服一般の特徴であるマージン領域m3による隆起が、交点Xを中心とする優角を有する後身頃型片2が劣角側のラグランスリーブ型片4を包み込むように押し上げることで、肩背面1Fの隆起領域Rは、常に、交点Xを中心に生じることとなる。
【0033】
図3(a)に示すように、このため隆起領域Rの発生により上衣1の肩背面1Fにおいて皺は生じるものの、隆起領域Rの膨らみは常に交点Xに集中するためランダムに生じることはなく、皺の発生が常にコントロールされて、上衣1の後身頃側1Aの見栄えを良くすることができる。
【0034】
なお、この際、上衣1の正面側1Bにおいては、各型片1,4A,4B間にマージン領域は形成されないために平坦形状が保たれている。
【0035】
図3(b)に示すように、上衣1の装着者が腕を前方に上げると、上衣1の袖1Dは正面側1B側に引っ張られることになり、腕を上げた側の肩背面1Fにおいて隆起領域Rは消滅してフラットとなる。
【0036】
この際、隆起領域Rにおいて確保された内側の空間が装着者の腕の動きに制約を与えることがないため、装着者は自由に腕を動かすことができる。特に、隆起領域Rは、縦縫合線S3とそれに交差する横縫合線S1との複数方向のマージン領域m1,m2により、立体的に膨出するため、この部分に縦方向及び横方向の腕の動きに追従する、大きな自由度を与えることができる。
【0037】
以上のように、本実施形態の上衣1によれば、上衣1の肩背面1Fで大きな型崩れを生じさせず、また、腕を前に伸ばした状態で腕を上げ下ろしする際にも大きな自由度を与える衣服を提供することができる。
【0038】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を、図4(a)(b)を用いて説明する。第1実施形態と同様の構造については、同じ符号を付して説明を省略する(背面側1A、正面側1B、肩上面1C、袖1D、襟側1E、肩背面1F等)。
【0039】
本実施形態の上衣11は、ラグランスリーブ型片4を構成するスリーブ型片4Aを、さらに袖1D側の第1スリーブ型片4A1と、肩上面1C側の第2スリーブ型片4A2と分割し、縫合したものである。
【0040】
これら、第1スリーブ型片4A1と第2スリーブ型片4A2との縫合線S6にはマージン領域は形成せず、隆起領域Rの形状形成には寄与しない。但し、図4(b)の上衣11の正面側1Aに示すように、この縫合部S6に開口部を設けて、内側にポケットPを取り付けている。
【0041】
このように、ラグランスリーブ型片4は、必ずしも、第1実施形態の上衣1のように2つの型片のみから構成されるだけではなく、この実施形態の上衣1のように、多様なパーツ構成を選択することができる。
【0042】
[他のバリエーション]
本発明のラグランスリーブ型衣服は、第1実施形態及び第2実施形態のような上衣1、11に限られることはなく、ズボンを一体化したツナギや野球等の運動着にも応用することができる。
【0043】
また、これら実施形態の上衣1、11では、縦縫合線S3のマージン領域m1以外に、横縫合線S1にもマージン領域m2を設けて隆起させたが、必ずしもマージン領域m2を設ける必要はなく、また、逆にこれらに加えてさらに袖1D側の横縫合線S2にもマージン領域を設けても良い。
【0044】
また、これら実施形態の上衣1,11では横縫合線S1,S2を屈折させたが、隆起する力が集中する、横縫合線S3との交点Xが形成されればよく、屈折することなく直線状となってもよい。
【符号の説明】
【0045】
1,11 …上衣(衣服)
1A …背面側
1B …正面側
1C …肩上面
1D …袖
1E …襟側
1F …肩背面
2 …後身頃型片
3 …表身頃型片
4 …ラグランスリーブ型片
4A …スリーブ型片
4A1 …第1スリーブ型片
4A2 …第2スリーブ型片
4B …マージン型片
S1,S2 …横縫合線
S3 …縦縫合線
X …(横縫合線と縦縫合線の)交点
R …隆起領域
α …(横縫合線の屈折による後身頃型片側の)優角
図1
図2
図3
図4