(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167532
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】可撓管
(51)【国際特許分類】
F16L 11/04 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
F16L11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083672
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000134534
【氏名又は名称】株式会社トヨックス
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】沼田 健一
【テーマコード(参考)】
3H111
【Fターム(参考)】
3H111BA15
3H111CB29
3H111DB21
3H111DB27
(57)【要約】
【課題】流体を輸送するローラーポンプ等に好適に使用され、長時間使用しても流量が低下せず破断による漏水のリスクが少ない可撓管を提供する。
【解決手段】平均重合度が1500~2500のポリ塩化ビニルからなる樹脂組成物を、管状に成形して形成された可撓管である。前記樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルが100重量部に対し、可塑剤を70~100重量部含有する。ヘプタンを溶媒として、前記樹脂組成物を25℃で1時間浸漬した浸出溶液の蒸発残留物が、1000μg/ml以下である。前記可塑剤は、重量平均分子量が3500~5500である。前記可撓管は、ローラーポンプのぜん動部に使用可能である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均重合度が1500~2500のポリ塩化ビニルからなる樹脂組成物を、管状に成形して形成された可撓管において、
前記樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルが100重量部に対し、可塑剤を70~100重量部含有するものであり、かつ、ヘプタンを溶媒として、前記樹脂組成物を25℃で1時間浸漬した浸出溶液の蒸発残留物が1000μg/ml以下であることを特徴とする可撓管。
【請求項2】
前記可塑剤は、重量平均分子量が3500~5500である請求項1記載の可撓管。
【請求項3】
ローラーポンプのぜん動部に使用可能な請求項1又は2記載の可撓管。
【請求項4】
前記可塑剤として、重量平均分子量が3500~5500のポリエステル系可塑剤を含有するものである請求項3記載の可撓管。
【請求項5】
樹脂組成物は、ISO48に準拠して測定されたIRHD硬度が45~75である請求項3記載の可撓管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を輸送するローラーポンプ等に好適に使用できる可撓管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、筐体の略円柱面状に形成された内壁面に沿って円弧状に配置された可撓管を、内壁面とローラーとの間で押し潰しながらローラーを内壁面に沿って回動させることで可撓管内の液体を輸送するローラーポンプが知られている。これらは、医療分野では、人工心肺装置や血液透析装置、食品分野では調味液・香料の添加装置、製薬分野では原薬製造工程での反応窯への原料添加装置などで、流体の送り込みや定量移送、流量調節等に使用されている。
【0003】
このようなローラーポンプに使用される可撓管には、柔軟性および機械的強度が要求され、さらにローラーポンプのぜん動部による繰り返しのしごき動作に対する耐久性が求められる。従来このようなローラーポンプ用の可撓管として、その材料にはシリコーンに代表されるゴム製のチューブ、あるいは軟質塩化ビニルに代表される合成樹脂製のチューブが用いられている。そして、ゴム製あるいは合成樹脂製の可撓管は押出成形により製造され、成形が容易であり、かつ、内部を流れる流体の抵抗が少ないため、断面形状を円形としている。
【0004】
しかし、円形の可撓管をローラーポンプに使用する場合、径方向に押しつぶしたときに折り目近辺に隙間が残り、漏れが生じやすく、可撓管内を真空状態にしにくいという問題があった。そして、そのような隙間を無くすためにはかなり大きな加圧力を必要とし、さらにそのような加圧力で円形の可撓管を押しつぶしたり戻したりすることを繰り返す場合、その可撓管の弾力性が充分で無いと、可撓管にへたりが生じ、元の断面円形に戻らないことがあった。
【0005】
例えば、特許文献1では、150MPa以下の曲げ弾性率を有するポリオレフィン材料を含む第1層と、プロピレンポリマーとスチレンブロックコポリマーとのブレンドを含む第2層を含み、プロセスストリーム中に溶出する可塑剤などの添加剤を含まない可撓管が開示されている。
【0006】
また、特許文献2では、所定の分子量のアジピン酸系ポリエステル可塑剤を使用することで可塑剤の溶出が極めて少ない、塩素含有樹脂からなる可撓管が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5475794号公報
【特許文献2】特許第5692686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の場合、可撓管に使用されるポリオレフィン材料は、特に油性流体を流通した際に可撓管内面から可塑剤以外の物質の溶出があり、物質の溶出により物性が変化し、特に繰返し潰されるローラーポンプに使用する際は、変形や伸びにより流量が低下するという問題がある。上記特許文献2の場合、可塑剤の溶出が少ないことから物性の変化による寿命の低下などのリスクはないが、塩素含有樹脂の重合度が低い場合可撓管が伸びやすくなり、特に繰り返ししごかれるローラーポンプに使用する際は、伸びた可撓管がローラーと内壁面に挟まれ破断することで漏水するといった使用上の問題が懸念される。
【0009】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、長時間使用しても流量が低下せず破断による漏水のリスクが少ない、流体を輸送するローラーポンプ等に好適に使用できる可撓管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的は、下記の(1)~(5)の本発明により達成される。
(1)平均重合度が1500~2500のポリ塩化ビニルからなる樹脂組成物を、管状に成形して形成された可撓管において、前記樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルが100重量部に対し、可塑剤を70~100重量部含有するものであり、かつ、ヘプタンを溶媒として、前記樹脂組成物を25℃で1時間浸漬した浸出溶液の蒸発残留物が1000μg/ml以下である可撓管。
(2)前記可塑剤は、重量平均分子量が3500~5500である(1)に記載の可撓管。
(3)ローラーポンプのぜん動部に使用可能な(1)又は(2)に記載の可撓管。
(4)前記可塑剤として、重量平均分子量が3500~5500のポリエステル系可塑剤を含有するものである(3)に記載の可撓管。
(5)前記樹脂組成物は、ISO48に準拠して測定されたIRHD硬度が45~75である(3)に記載の可撓管。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、溶出物が少ないことから可撓管の物性が変化せず、長時間使用しても流量が低下せず破断などによる漏水のリスクが少ない、流体を輸送するローラーポンプ等に好適に使用できる可撓管を得ることができる。さらに溶出物が少ないことから、本発明の可撓管は、医療、食品、製薬分野などで安全に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の可撓管の好適な実施形態を詳細に説明する。
ここで、ローラーポンプは、チューブポンプ、チュービングポンプ、ホースポンプ、ペリスタルティックポンプ、ぜん動型ポンプ等と称呼され、可撓管と複数の突起が付いたぜん動部で構成されている。ローラーポンプは、ぜん動部が回転して突起で可撓管を押し、可撓管内の流体を押し出すことによって流体を輸送するポンプである。
【0013】
<ポリ塩化ビニル>
本発明の可撓管を構成する樹脂組成物はポリ塩化ビニルから形成される。
ポリ塩化ビニルは平均重合度が1500~2500が好ましく、より好ましく1700~2300はある。平均重合度が1500より低いと引張強さが低下し伸びやすくなるため、特にローラーポンプに使用すると可撓管が伸びることで可撓管の弛みが発生する。ローラーと内壁面に挟まれた可撓管の弛み部がローラーの動きにより予期せぬせん断力を受け破断し漏水が発生するため、ローラーポンプに好適に使用できない。一方、平均重合度が2500より高いと分子鎖の絡み合いが多くなることから変形に対する抵抗力が増加し、特にローラーポンプに使用すると可撓管を繰り返し押しつぶして復元する動作が安定せず経時で流量が変化するため、定量移送や流量調節が要求されるローラーポンプに好適に使用できない。従って、ポリ塩化ビニルの平均重合度を前記範囲のものとすることにより、破断などによる漏水が発生せず流量が安定した、ローラーポンプに好適な可撓管を得ることができる。
【0014】
<可塑剤>
本発明の可撓管を構成する樹脂組成物は少なくとも1つの可塑剤が含有される。
可塑剤の含有量は、ポリ塩化ビニルが100重量部に対して70~100重量部含有することが好ましく、より好ましくは80~90重量部である。可塑剤の添加量が70重量部より少ないと樹脂組成物が硬くなり、特にローラーポンプに使用すると可撓管を繰り返し押しつぶして復元する動作が安定せず経時で流量が変化するため、定量移送や流量調節が要求されるローラーポンプに好適に使用できない。一方、可塑剤の添加量が100重量部より多いと樹脂組成物が軟らかくなり、特にローラーポンプに使用すると可撓管が伸びることで可撓管の弛みが発生する。ローラーと内壁面に挟まれた可撓管の弛み部がローラーの動きにより予期せぬせん断力を受け破断し漏水が発生するため、ローラーポンプに好適に使用できない。従って、可塑剤の添加量を前記範囲のものとすることにより、破断による漏水が発生せず流量が安定した、ローラーポンプに好適な可撓管を得ることができる。
【0015】
また、可塑剤は重量平均分子量が3500~5500であることが好ましく、より好ましくは4000~5000である。可塑剤の分子量が3500より小さいと、油性流体を流通した際に可撓管内面から可塑剤以外の物質の溶出があり、物性の溶出により物性が変化し、特に繰り返し潰されるローラーポンプに使用する際は、変形や伸びにより流量が低下するという問題がある。一方、可塑剤の分子量が5500より大きいと、ポリ塩化ビニルの分子鎖の自由体積に対して可塑剤の分子量が大きくなった結果分子鎖の中に保持されにくくなり、外力や温度変化で可塑剤が可撓管の表面に析出し流体を汚染してしまう。
【0016】
可塑剤としては、フタル酸系ポリエステル、アジピン酸系ポリエステル、トリメリット酸系ポリエステル、アセチルクエン酸系ポリエステルなどのポリエステル系可塑剤が挙げられ、好ましくは、重量平均分子量が3500~5500のポリエステル系可塑剤、さらに好ましくは、重量平均分子量が4000~5000のポリエステル系可塑剤などが挙げられる。ポリエステル系可塑剤として、アジピン酸系ポリエステルが特に好ましい。
【0017】
<添加剤>
必要に応じて、前記樹脂組成物には、上述した成分以外にも各種の添加剤(熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防曇剤、帯電防止剤など)を配合させてもよい。
【0018】
成形性を向上するため、前記樹脂組成物には滑材を含有してもよく、アクリル系滑材、例えばアクリル酸アルキルおよび/またはメタクリル酸アルキルを必須成分とする共重合体、つまりアクリル酸および/またはメタクリル酸系樹脂などが挙げられる。特に内部流体の視認性の観点から、透明又は半透明なアクリル酸および/またはメタクリル酸系樹脂を用いることが好ましい。
【0019】
成形性を向上するため、前記滑材として重量平均分子量が40万以下のアクリル酸系および/またはメタクリル酸系樹脂からなる滑材を用いることが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が1万~40万のアクリル酸系および/またはメタクリル酸系樹脂からなる滑材、更に好ましくは10万~30万のアクリル酸系および/またはメタクリル酸系樹脂からなる滑材である。
【0020】
押出し成形機内部の金型との接触摩擦力を減少させ成形性を向上するため、前記滑材として重量平均分子量が10万~30万のアクリル酸系および/またはメタクリル酸系樹脂からなる滑材を、0.5~1.2重量部含有させることが好ましい。さらに、重量平均分子量が約20万~23万のアクリル酸系および/またはメタクリル酸系樹脂からなる滑材を、約0.8重量部含有させることがより好ましい。
【0021】
<樹脂組成物>
本発明の可撓管を構成する樹脂組成物は、ヘプタンを溶媒として、前記樹脂組成物を25℃で1時間浸漬した浸出溶液の蒸発残留物が1000μg/ml以下であることが好ましく、より好ましくは200μg/ml以下である。蒸発残留物が1000μg/mlより多いと、物質の溶出により樹脂組成物の物性が変化し、特にローラーポンプに使用すると、繰返し潰されることによる変形や伸びにより流量が低下するため、定量移送や流量調節が要求されるローラーポンプに好適に使用できない。
【0022】
前記樹脂組成物は、可撓管に適切な柔軟性を付与するため、ISO48に準拠して測定されたIRHD硬度が45~75であることが好ましく、より好ましくは55~65である。
前記樹脂組成物は、可撓管に適切な柔軟性を付与するため、JIS K 6723に準拠して測定された伸びが380~460%であることが好ましく、より好ましくは410~430%である。
前記樹脂組成物は、可撓管に適切な柔軟性を付与するため、JIS K 6723に準拠して測定された引張強度が10~25MPaであることが好ましく、より好ましくは15~20MPaである。
【0023】
この実施形態の可撓管は、ポリ塩化ビニルの重合度、可塑剤の添加量が所定の範囲に設定され、繰り返しの弾性変形や塑性変形を生じさせる用途において、長時間使用しても流量が低下せず破断などによる漏水のリスクが少ない、流体を輸送するローラーポンプ等に好適に使用できるものである。また、本発明の実施形態の可撓管は、単層構造である。従って、多層構造のような層間の剥離が発生しない。従って、ローラーポンプやピンチバルブなどの繰返し潰しの力がかかる用途に長時間耐え、安定した流体の定量移送等を行うことができる。
【0024】
さらに、樹脂組成物からの物質の溶出が少ないため、医療、食品、製薬分野などで、食品用、化粧品用、香料用、医薬品用、医療用、純水用、インク用などのチューブとして好適に使用することができる。
【実施例0025】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲がこれに限定されるものではない。以下に実施例1~13、および比較例1~5について説明する。
【0026】
実施例1は、表1に示す通り重合度1500のポリ塩化ビニルが100重量部に、可塑剤として重量平均分子量が4000~5000のアジピン酸系ポリエステルを70重量部と、滑材として重量平均分子量20~23万のアクリル系滑材(三菱ケミカル社製
メタブレン(登録商標)L-1000)を0.8重量部と、を混合し押出し成形機で押し出し、内径4.8mm、肉厚1.6mmの可撓管を得た。
【0027】
実施例2~13、および比較例1~4は、表1に示す値を取るようポリ塩化ビニルの重合度、可塑剤の添加量、可塑剤の分子量を適宜操作し、実施例1と同様の手法で内径4.8mm、肉厚1.6mmの可撓管を得た。
【0028】
比較例5は、ポリオレフィン材料(Dow Chemicals社製 Engage(登録商標)8200)を押出し成形機で押し出し、内径4.8mm、肉厚1.6mmの可撓管を得た。
【0029】
また、測定項目である、蒸発残留物、流量安定性、耐久性は下記の方法によって測定した。
【0030】
<蒸発残留物>
蒸発残留物はヘプタンを浸出溶液として測定した。実施例1~13、および比較例1~5から、ヘプタンを封入したときの接液部の表面積が400cm2となるよう試験サンプルをそれぞれ5本ずつ切り出し、試験サンプルに25℃のヘプタンを封入した後、試験サンプルの両端をホースクリップで閉止することで密封し、25℃の恒温槽に1時間静置した。試験溶液の採取量中の蒸発残留物量から、蒸発残留物が、200μg/ml以下を◎、200μg/mlより多く600μg/ml以下を〇、600μg/mlより多く1000μg/ml以下を△、1000μg/mlより多い場合を×とした。
【0031】
<流量安定性>
流量安定性は、実施例1~13、および比較例1~5をローラーポンプに使用し、運転開始から24時間後における流量を初期流量として、運転開始時から初期流量の90%に流量が低下するまでの時間を測定した。ローラーポンプは、ワトソンマーロ社製ローラーポンプヘッド313Xをイソワテック株式会社製313/WI型ポンプに使用し、ポンプヘッドのローラー回転数150rpmにて23℃±3℃のn-ヘプタンを試験流体として流通させた。流量安定性は、運転開始時から初期流量の90%に流量が低下するまでの時間を計測し、1000時間以上を◎、600時間以上1000時間未満を〇、200時間以上600時間未満を△、200時間未満を×とした。
【0032】
<耐久性>
耐久性は、実施例、および比較例を前記流量安定性の確認試験と同じローラーポンプに使用した際の、漏水が発生するまでの時間を測定した。漏水が発生するまでの時間が、1000時間で漏水が発生しなかった場合を◎、600時間以上1000時間未満を〇、200時間以上600時間未満を△、200時間未満を×とした。
【0033】
【0034】
実施例1~13は、ポリ塩化ビニルの重合度が1500~2500の範囲内で、且つ、可塑剤の添加量が70~100重量部で、蒸発残留物の量が1000μg/ml以下であることから、<流量安定性>が△(200時間以上600時間未満)以上で長時間にわたり流量が安定しており、且つ、<耐久性>が△(200時間以上600時間未満)以上で長時間にわたり破断などによる漏水がなく耐久性に優れている。その中でも、実施例4~10は、<流量安定性>、<耐久性>共に〇(600時間以上1000時間未満)以上で流量安定性、耐久性がより優れており、特に、実施例5~9は<流量安定性>、<耐久性>共に◎(1000時間以上)と流量安定性、耐久性がさらに優れている。
【0035】
比較例1~5は<流量安定性>、<耐久性>のいずれかが×(200時間未満)で、不良な評価結果となった。
【0036】
比較例1は、ポリ塩化ビニルの重合度が1500より低いことから可撓管が伸びてローラーヘッド内で弛み、ローラーと内壁面に挟まれた可撓管の弛み部がローラーの動きによりせん断され、運転開始から200時間未満で漏水が発生した。
【0037】
比較例2は、ポリ塩化ビニルの重合度が2500より高いことから可撓管が硬く、漏水は発生せず<耐久性>が◎(1000時間以上)と耐久性に優れるものの、可撓管をローラーで繰り返し押しつぶした際の復元量が少なく、200時間未満で流量が90%以下となった。
【0038】
比較例3は、可塑剤の添加量が70重量部より少ないことから可撓管が硬く、漏水は発生せず<耐久性>が◎(1000時間以上)と耐久性に優れるものの、可撓管をローラーで繰り返し押しつぶした際の復元量が少なく、200時間未満で流量が90%以下となった。
【0039】
比較例4は、可塑剤の添加量が100重量部より多いことから可撓管が伸びてローラーヘッド内で弛み、ローラーと内壁面に挟まれた可撓管の弛み部がローラーの動きによりせん断され、運転開始から200時間未満で漏水が発生した。
【0040】
比較例5は、ポリオレフィン材料からゴム成分に由来する蒸発残留物の量が×(1000μg/mlより多い)であり、ソフトセグメントが失われて復元力が低下したことで、200時間未満で流量が90%以下となった。
【0041】
従って、比較例1~5は、定量移送や流量調節に必要な流量安定性と長時間の運転が可能な耐久性が要求されるローラーポンプに好適に使用できない。
【0042】
この結果より、平均重合度が1500~2500のポリ塩化ビニルからなる樹脂組成物を、管状に成形して形成された可撓管において、前記樹脂組成物は、ポリ塩化ビニルが100重量部に対し、可塑剤を70~100重量部含有するものであり、かつ、ヘプタンを溶媒として、前記樹脂組成物を25℃で1時間浸漬した浸出溶液の蒸発残留物が1000μg/ml以下であることを特徴とする可撓管は、長時間使用しても流量が低下せず破断などによる漏水のリスクが少ない、流体を輸送するローラーポンプ等に好適に使用できるものである。さらに、樹脂組成物からの物質の溶出が少ないため、医療、食品、製薬分野などで、食品用、化粧品用、香料用、医薬品用、医療用、純水用、インク用などのチューブとして好適に使用することができる。