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  • 特開-収納用枠体および製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167533
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】収納用枠体および製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/14 20060101AFI20241127BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20241127BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20241127BHJP
   A47B 88/00 20170101ALI20241127BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C33/42
B29C45/26
A47B88/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083673
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】391049448
【氏名又は名称】天馬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100207789
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 良平
(72)【発明者】
【氏名】石塚 渉
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直人
【テーマコード(参考)】
3B160
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
3B160AA08
3B160AB51
3B160AB52
3B160CA02
4F202AD05
4F202AD07
4F202AD24
4F202AD35
4F202AG07
4F202AG28
4F202AH51
4F202AH56
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CB12
4F202CB20
4F202CK12
4F202CQ01
4F206AD05
4F206AD07
4F206AD24
4F206AD35
4F206AG07
4F206AG28
4F206AH51
4F206AH56
4F206AR12
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB20
4F206JL02
4F206JQ81
(57)【要約】
【課題】寸法が大きい場合であっても、枠体製造における汎用性が高い収納体を提供する。
【解決手段】内部空間に引き出しが収容される収納用枠体30は、一続きの壁面を周囲に有して一方向に延びる中空の柱部41、42を備える。収納用枠体30は、柱部41、42の内面であって、柱部の両端から柱部の長さの1/4以上離れた位置に、一方向と交差する方向に延びる突条または段差を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に引き出しが収容される収納用枠体であって、
一続きの壁面を周囲に有して一方向に延びる中空の柱部を備え、
前記柱部の内面であって、前記柱部の両端から前記柱部の長さの1/4以上離れた位置に、前記一方向と交差する方向に延びる突条または段差を有する、
収納用枠体。
【請求項2】
前記柱部の長さが25センチメートル以上である、
請求項1に記載の収納用枠体。
【請求項3】
一続きの壁面を周囲に有して一方向に延びる中空の柱部を備えた収納用枠体の製造方法であって、
前記柱部の1/4以上の長さの第一中空形状形成部を有する第一型と、前記柱部の1/4以上の長さの第二中空形状形成部を有する第二型とを準備するステップAと、
前記第一中空形状形成部および前記第二中空形状形成部を対向させた状態で前記第一型と前記第二型とを配置するステップBと、
前記第一中空形状形成部および前記第二中空形状形成部の周囲に溶融した樹脂を射出するステップCと、
を備える、
収納用枠体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納体の構成部品として用いる収納用枠体に関する。この収納用枠体の製造方法についても言及する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂を成型して作製された各種収納体が広く知られている。
収納体が引き出しを備える場合、引き出しが進退可能に収納用枠体に収容された構造が一般的である。収納用枠体は、収納体の一部を構成することにより、収納体の外形維持および強度確保の機能を発揮する。
【0003】
特許文献1に記載のプラスチック製収納ケースも、上述した一般的な構成を有しており、フレーム本体および天板が収納用枠体として機能する。
フレーム本体には、中空の支柱状部材が一体成型されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録実用新案第3020293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るフレーム枠体は、二つの主要な金型を合わせた状態で隙間に樹脂が射出されることにより成型される。通常、中空の支柱状部材を形成するための部位は、大部分が一方の金型のみに設けられている。
詳細については後述するが、発明者らは、このような金型構成に関し、枠体の寸法が大きくなった際に発生しやすい製造上の問題点を新たに見出し、これを解決することにより本発明を完成させた。
【0006】
本発明は、寸法が大きい場合であっても、製造における汎用性が高い収納用枠体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、内部空間に引き出しが収容される収納用枠体である。
この収納用枠体は、一続きの壁面を周囲に有して一方向に延びる中空の柱部を備え、柱部の内面であって、柱部の両端から柱部の長さの1/4以上離れた位置に、一方向と交差する方向に延びる突条または段差を有する。
【0008】
本発明の第二の態様は、一続きの壁面を周囲に有して一方向に延びる中空の柱部を備えた収納用枠体の製造方法である。
この製造方法は、柱部の1/4以上の長さの第一中空形状形成部を有する第一型と、柱部の1/4以上の長さの第二中空形状形成部を有する第二型とを準備するステップAと、第一中空形状形成部および第二中空形状形成部を対向させた状態で第一型と第二型とを配置するステップBと、第一中空形状形成部および第二中空形状形成部の周囲に溶融した樹脂を射出するステップCとを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る収納用枠体は、寸法が大きい場合であっても、製造における汎用性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態に係る収納体の斜視図である。
図2】同収納体の収納用枠体を示す斜視図である。
図3】同収納用枠体の正面図である。
図4】同収納用枠体の部分拡大平面図である。
図5】同収納用枠体の製造に用いる金型の例を示す図である。
図6】(a)から(c)は、いずれも柱部内面に生じる樹脂突出の例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、図1から図6を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る収納体を示す斜視図である。収納体1は、枠体部10と、枠体部10に進退可能に取り付けられた引き出し20とを備えている。
【0012】
枠体部10は、収納用枠体30と、収納用枠体30に取り付けられた天板15とを有する。
引き出し20および天板15については、その形状や収納用枠体30への取り付け態様に特に制限はない。したがって、公知の各種構成を、用途や材質、寸法等を考慮して適宜選択して採用できる。
【0013】
図2は、天板15を取り外した収納用枠体30を示す斜視図である。収納用枠体30は、天板15が取り付けられる上方と、引き出し20が進入する前方がほぼ完全に開放されており、左右と後方にそれぞれ壁面11、12、13を有する。左右の壁面11、12と後方の壁面13とは概ね直角をなしており、切れ目なく接続されている。
【0014】
図3は、収納用枠体30の正面図である。正面開口の左右には、それぞれ上下方向に延びる柱部41、42が設けられている。
図4は、収納用枠体30の部分拡大平面図であり、柱部41、42を上方から見た状態を示している。柱部41、42は、いずれも中空である。柱部41、42は、下端から一定範囲は四方を平坦な壁面で囲まれた断面四角形の角筒状であり、残りの範囲は後方を除く三方が平坦な壁面で囲まれた略U字状の断面を有する。
柱部41、42は、収納用枠体30に上下方向への圧縮耐性等を付与し、各種外力に対する形状維持機能を発揮する。その一方で中空であるため、収納体の軽量化および使用樹脂量の低減にも寄与する。
【0015】
収納用枠体30は、金型を用いた射出成型により製造される。
図5に収納用枠体30を形成するための金型を示す。本実施形態においては、第一型100と、第二型200と、第三型300との3つの金型を用いる。
図5では、各型の収納用枠体30形成に係る部分のみを示しているが、実際にはその周囲にも部材が存在する。
【0016】
第一型100および第二型200は、それぞれ壁面11、12、13に対応する壁面形成部101および201を有する。第二型200は第一型100より一回り小さく、壁面形成部101に囲まれた第一型100の内部空間に進入することができる。第二型200が第一型100の内部空間に進入した状態において、壁面形成部101と壁面形成部201との間には隙間があり、この隙間に射出された樹脂が進入して固化することにより、壁面11、12、13が形成される。
【0017】
第一型100および第二型200は、それぞれ柱部41、42を形成するための部位も有している。
第一型100は、下端部から上方に延びる角柱状の中空形状形成部(第一中空形状形成部)111および112を有している。第二型200も、上端部から下方に延びる角柱状の中空形状形成部(第二中空形状形成部)211および212を有しているが、中空形状形成部211、212の後側は、第二型200の前側において壁面形成部201間に設けられた前壁部202と一体となっている。これにより、中空形状形成部211、212は、上端部から一定の範囲において前壁部202から前方に突出する突条のような外観を有している。
【0018】
第二型200が第一型100の内部空間に進入した状態においては、中空形状形成部111と中空形状形成部211とが突き合わされ、中空形状形成部112と中空形状形成部212とが突き合わされる。これにより、前壁部202の左右に一続きとなった角柱状の部位が生じる。
この状態の第一型100および第二型200に第三型300を取り付けると、一続きとなった角柱状の部位の周囲が隙間を空けつつ第三型300により囲まれる。この隙間に射出された樹脂が進入して固化すると、中空の柱部41、42が形成される。
【0019】
樹脂成型において、柱部41、42のような中空の構造を形成する場合、合わせられる2つの金型の一方のみに、中空形状を形成するための角柱状部位を設けられることが多い。本実施形態のような態様の場合、コア側である第二型200に角柱状部位の全部もしくはほとんどが設けられ、キャビティ側である第一型100には角柱状部位が全く設けられないか、ごく一部のみ設けられることが一般的である。
しかし、発明者らは、このような一般的態様において、成型の汎用性が低下する場合があることを見出した。
【0020】
上述した一般的態様では、成型完了後に、角柱状部位を有するコア側の金型がもう一方のキャビティ側の金型から離間して退避する。射出成型された樹脂は冷却に伴って収縮するため、成型品はコア側金型に貼りついた状態でコア側金型とともに退避する。
退避後、成型品をコア側金型から取り外すため、コア側金型からエジェクターピンが突き出るが、柱部を形成する角柱状部位は細長いため抜き勾配を大きくしにくく、離型に必要なエジェクターピンも長くなる。
コア側金型にはエジェクターピンが突出しない状態で収容するためのスペースが必要になるため、エジェクターピンが長くなるとコア側金型の退避方向における寸法(以下、「厚さ」)が大きくなり成型機に設置できなくなる場合がある。また、成型機に設置できたとしても、成型機においてエジェクターピンを押し出す機構の進退量(ストローク)には上限があるため、ストロークの上限によってはエジェクターピンを完全に突き出させることができない場合が生じ得る。これらのいずれにおいても、その成型機での製造は不可能となり、製造のためにより大きな成型機が必要となる。
【0021】
成型品の寸法があまり大きくない場合、エジェクターピンの長さ増大に関する上述した現象が製造上の問題となることはあまりないが、成型品の寸法が大きくなるにつれ、製造するためにより大きな成型機が必要になる可能性が高くなる。この可能性は、柱部の長手方向寸法が25cm以上となると増加しやすくなり、30cmを超えると顕著になることが発明者らの検討により明らかになった。
より大きな成型機が必要になることにより、製造可能な成型機が数の少ないものや高価なものに限られることになると、製造しようとする収納用枠体の製造汎用性が著しく低下することになる。これは、製造効率の低下や製造コストの上昇につながり、収納用枠体の有用性を損なうことにつながる。
【0022】
発明者らは、この問題を解決するために鋭意検討した。その結果、角柱状部位の一部をキャビティ側である第一型100に設けることにより、製造により大きな成型機が必要になる事態を著しく低減することに成功した。
例えば、角柱状部位を両方の金型に設けることにより、より長い方の角柱状部位の長手方向寸法を25cmとすれば、成型条件としては、柱部の長手方向寸法が25cm、すなわち高さが約25cmの収納用枠体を一般的態様で製造する際と概ね同様となる。その結果、使用する成型機を変更せずに柱部の長手方向寸法が25cm以上の収納用成型体を製造できる可能性を著しく高めることができる。これにより、従来の方法では大きな成型機でしか製造できなかった、寸法の大きい収納用枠体を、より効率的かつ安価に製造しやすくすることができる。
【0023】
本実施形態においては、第一型100に設けられる中空形状形成部111および112の長手方向寸法が大きくなるほど上述した効果が高くなる。より具体的には、製造される収納用枠体の柱部41、42の長手方向の寸法の1/4以上とすることで実用的な効果が得られ始め、長手方向寸法が大きくなるほど顕著な効果が得られる。中空形状形成部111および112の長手方向寸法が8cm以上となると、柱部41、42の長手方向寸法が30cmを超える収納用成型体が製造可能となり、さらに長くすることで、高さ40cm以上の収納体を構成できる収納用枠体も汎用性高く製造することができる。
ただし、中空形状形成部111および112の長手方向寸法が柱部41、42の長手方向の寸法の1/2を超えると、収縮した成型品が第二型200でなく第一型100に貼りつく、いわゆる「キャビとられ」という製造不良が発生する可能性が若干高くなるため、柱部41、42の長手方向の寸法の1/2以下であることが好ましい。
【0024】
上述したように、本実施形態に係る製造方法は、以下の手順を有する。
ステップA:製造される収納用枠体の柱部の1/4以上の長さの中空形状形成部を有する第一型と、柱部の1/4以上の長さの中空形状形成部を有する第二型を準備する。
ステップB:第一型の中空形状形成部と第二型の中空形状形成部とが対向するように第一型と第二型とを合わせる。
ステップC:第一型の中空形状形成部および第二型の中空形状形成部の周囲に溶融した樹脂を射出する。
【0025】
本実施形態に係る製造方法においては、ステップBで第一型の中空形状形成部と第二型の中空形状形成部とが対向している。このため、第一型の中空形状形成部と第二型の中空形状形成部とが突き合わされて接触する場合でも、両者の間に生じる微小な隙間を完全になくすことは技術的にほぼ不可能である。その結果、ステップCで射出された樹脂の一部がこの隙間に進入して固まることにより、完成した収納用枠体の柱部の内面において、柱部の長手方向におけるいずれの端部からも柱部の長手方向寸法の1/4以上離れた位置に、樹脂の突出が生じる。
【0026】
この突出の形状は、典型的には図6の(a)に示すように、柱部の長手方向と直角をなす方向に延びる突条(「バリ」と称されることもある。)51となるが、第一型の中空形状形成部および第二型の中空形状形成部の態様によりさまざまに変化する。
例えば、樹脂の突出が柱部の長手方向と直角をなす方向に断続的に生じる場合もあるし、第一型の中空形状形成部と第二型の中空形状形成部の合わせ目が柱部の長手方向と直角でない場合、樹脂の突出は、その合わせ目に応じた方向に延びる突条となる。さらに、第一型の中空形状形成部および第二型の中空形状形成部とで突き合わされる部位の断面の大きさや形状が異なっている場合は、段差の形で生じる第一型側と第二型側で、柱部の周壁の厚さが異なってくるため、樹脂の突出は、図6の(b)に示すような段差52として生じることになる。
このように、樹脂の突出態様はさまざまであるものの、従来のように中空形状形成部が一方の金型のみに設けられている場合、柱部の内面は概ねすべて平滑となり、上述したような樹脂の突出が生じることはまずない。したがって、収納用枠体において中空の柱部の内面の一部に樹脂の突出が認められる場合、それは本発明に係る製造方法により製造されたことの有力な痕跡であると言える。
【0027】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の技術範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において各構成要素に種々の変更を加えたり、削除したりすることが可能である。
【0028】
例えば、柱部を設ける箇所は実施形態で示した前側2箇所には限られず、前後に4か所設けられてもよい。
また、柱部の周囲を囲む壁面も平坦なものには限られず、一部または全部が曲面であってもよい。柱部の壁面は、長手方向に交差する断面において、湾曲部位または折れ曲がった角部を少なくとも一つ有した一続きであればよく、U字状、C字状、V字状等のように切れ目があってもよい。これにより、柱部は、圧縮耐性の付与等の機能を十分に発揮できる。
【0029】
また、柱部の内面に生じる樹脂突出の態様も、上述したものには限られない。例えば、ステップBにおいて第一型の中空形状形成部と第二型の中空形状形成部とが離間しつつ非接触状態で対向している場合、ステップCで供給された樹脂が、図6の(c)に示すように、第一型の中空形状形成部と第二型の中空形状形成部とを仕切るように固化して壁53となり、柱部が完全な中空形状ではなくなる。しかし、この場合においても柱部は概ね中空であると言える。さらに、壁53は少なくとも一部が柱部の内面と接続されているため、これも樹脂の突出であることに変わりなく、突条の一態様と捉えることができる。壁53が厚くなりすぎると、収納用枠体の製造に必要な樹脂の量が増加する、成型後のヒケにより外面が不整となる等の場合があるが、壁53の厚さはこれらを考慮しつつ適宜設定できる。
【0030】
さらに、本発明に係る製造方法においては、第三型を用いることは必須ではない。すなわち、第三型に相当する部分が第一型または第二型に一体に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 収納体
20 引き出し
30 収納用枠体
41、42 柱部
51 突条
52 段差
100 第一型
111、112 中空形状形成部(第一中空形状形成部)
200 第二型
211、212 中空形状形成部(第二中空形状形成部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6