(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167554
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】ゴルフボールの製造方法
(51)【国際特許分類】
A63B 45/00 20060101AFI20241127BHJP
A63B 37/00 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
A63B45/00 B
A63B37/00 618
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083711
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 英郎
(57)【要約】
【課題】ゴルフボール打撃時の低スピン特性がドライバー(W#1)だけでなく、アイアンでのフルショットにも十分に発揮する飛び性能を改善し得るゴルフボールを製造する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、コア、少なくとも1層の中間層及びカバーを有し、上記コアはゴム材料にて形成され、上記中間層は樹脂組成物にて形成され、上記カバーはウレタン樹脂材料にて形成されるゴルフボールの製造方法であって、
上記コアに少なくとも1層の中間層を被覆して中間層被覆球体を形成する工程(1)、
上記中間層被覆球体に、中間層の樹脂組成物のベース樹脂の融点以上160℃未満の加熱処理を施す工程(2)、及び
その後、上記中間層被覆球体に上記カバーを被覆してカバー被覆球体を形成する工程(3)
を具備することを特徴とするゴルフボールの製造方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア、少なくとも1層の中間層及びカバーを有し、上記コアはゴム材料にて形成され、上記中間層は樹脂組成物にて形成され、上記カバーはウレタン樹脂材料にて形成されるゴルフボールの製造方法であって、
上記コアに少なくとも1層の中間層を被覆して中間層被覆球体を形成する工程(1)、
上記中間層被覆球体に、中間層の樹脂組成物のベース樹脂の融点以上160℃未満の加熱処理を施す工程(2)、及び
その後、上記中間層被覆球体に上記カバーを被覆してカバー被覆球体を形成する工程(3)
を具備することを特徴とするゴルフボールの製造方法。
【請求項2】
上記工程(2)において、上記中間層被覆球体の加熱処理の温度が90~150℃である請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
上記工程(2)において、上記中間層被覆球体の加熱処理の時間が3~60分である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
上記工程(1)において、中間層の樹脂組成物をコアの周囲に射出成形することにより中間層被覆球体を形成する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
上記工程(3)において、カバーのウレタン樹脂材料を中間層被覆球体の周囲に射出成形することによりカバー被覆球体を形成する請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項6】
上記中間層の樹脂組成物のベース樹脂がアイオノマー樹脂である請求項1又は2記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム製コアと、少なくとも1層の樹脂製の中間層及びウレタン樹脂製カバーを具備したゴルフボールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドライバー(W#1)等のフルショット時にボールが低スピン化するようなボール構造に設計することにより、優れた飛びを得ることが知られている。また、近年は、ショートゲーム性を高めるために、アプローチした時のスピン量を高いレベルで得ることのボールの開発・研究が続けられている。その一例として、特許文献1及び特許文献2に記載されたゴルフボールが提案されている。これらのゴルフボールは、コアと最外層との間に中間層を介在させ、内側の中間層が外側のカバーよりも硬度が高く設定した所謂、内硬外軟の層構造を有する。即ち、ゴム質の弾性コアと軟らかいカバー材の間に、カバーより硬質な樹脂材料を持たせることにより、フルショット時の低スピン化とショートゲームでのアプローチコントロール性を高いレベルで維持するという課題を両立させたものである。
【0003】
ところが最近では、フルショット時のボールの低スピン化は、ドライバー(W#1)以外にも、ミドル以上のアイアンでのフルショット時にボールの低スピン化により所望の飛距離を得ることが求められる。従って、アイアンフルショット時の低スピン化のレベルを高めることが新たな課題として生じている。しかしながら、上述したように、内硬外軟の層構造を有するスリーピース以上の多層ゴルフボールにおいて、層数を更に増加することはゴルフボールの製造工程において工程数を増やし、高コストを招く。また、多層化するほど、コアを中心とするボールの内層構造に偏芯の可能性が生じ、高品質なボールを製造することが困難な場合がある。また、ゴム製コアの内から外の間の硬度傾斜(硬度分布)や中間層、カバーの材料種類、材料硬度、各層の厚さを適宜調整することには限界があり、既に多数の特許公報により提案済みである。
【0004】
そこで、従来から使用されているコア、中間層及びカバーの材料や厚さ・硬度の選定や調整というテーマではなく、製造プロセスにおける工夫により、ボール物性の改質を図ること、即ち、ドライバーショット時のボールの低スピン化、ショートゲームでのボールの高スピン量、更には、アイアンでのフルショット時のボールの低スピン化による飛距離増大を図ることも、改善の余地として挙げられる。
【0005】
例えば、コアやボールに熱処理を施す先行技術として、特許文献3~6が挙げられる。特許文献3及び特許文献4には、ゴム材料を加硫してなるコアを一定条件の下で加熱処理を行うことにより、コアに含まれる揮発性物質を低減させるものである。また、特許文献5には、コアの周囲に中間層を形成した中間被覆球体を40~80℃で加熱処理することにより、ディンプルの変形等の外観を損なうことなく反発性能に優れたゴルフボールを製造できることが提案されている。更に、特許文献6には、ゴルボールを予め選定された温度に加熱することにより、ボールの物性を変化させてカスタマイズする方法が記載されている。しかしながら、これらの特許文献3~6のうち、特許文献3及び特許文献4は、コアに含まれる揮発性物質を低減させるためのコアに対しての加熱処理であり、特許文献6は、既に完成したカバーを被覆したゴルフボールに対する加熱処理である。また、特許文献5は、加熱処理の対象物が中間層被覆球体であるものの、その加熱処理の温度が40~80℃の低いものである。これらの特許文献3~6に記載されたゴルフボールは、いずれも、ドライバーショット時のボールの低スピン化、ショートゲームでのボールの高スピン量、及びアイアンでのフルショット時のボールの低スピン化という課題とは異なる内容であり、これらの熱処理以外の方法を模索・検討する余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09-239068号公報
【特許文献2】特開2002-765号公報
【特許文献3】特開2017-225686号公報
【特許文献4】特開2017-225682号公報
【特許文献5】特開2004-159840号公報
【特許文献6】特開2011-167508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、ゴルフボール打撃時の低スピン特性がドライバー(W#1)だけでなく、アイアンでのフルショット時にも十分に発揮する飛び性能を改善し得るゴルフボールを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、コア、中間層及びカバーを有するゴルフボールについて、その製造工程において、コアに中間層を被覆して中間層被覆球体を形成した後、該中間層被覆球体に、中間層の樹脂組成物のベース樹脂の融点以上160℃未満の加熱処理を施すことにより、その後の中間層被覆球体の表面硬度を測定したところ、意外にも、その表面硬度が増加し、完成したゴルフボールをアイアンフルショットしたときに低スピン化が図られることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0009】
即ち、本発明は、上述した特許文献6のように完成したゴルフボールに対して所定の加熱処理を行うものではなく、ゴルフボールの製造工程の中で、コアの周囲に中間層を形成した中間被覆球体を得た後に、その中間層被覆球体に対して所定の加熱処理を行うことを特徴とする。この方法により、中間層被覆球体における中間層(樹脂層)の結晶相の結晶度をコントロールし、中間層被覆球体の表面硬度を高くすることにより、アイアンフルショット時のスピン量を低くするものである。特許文献6のように、ゴルフボールの完成後に該ボールに熱処理を施した場合は、中間層(樹脂層)における結晶相の結晶度のコントロールの度合いが、中間層被覆球体に直接的に熱処理を施した場合の本発明よりも小さくなり、フルショット時の低スピン効果が足りなくなるものと推察される。また、ゴルフボールの完成後に熱処理を行うと、ディンプルが熱処理により形状に変化をもたらし、狙った空力特性が得られなくなるおそれがある。それに対して、中間層被覆球体に直接的に熱処理を施した本発明の場合は熱処理によるディンプル損傷のおそれはない。
【0010】
従って、本発明は、下記のゴルフボールの製造方法を提供する。
1.コア、少なくとも1層の中間層及びカバーを有し、上記コアはゴム材料にて形成され、上記中間層は樹脂組成物にて形成され、上記カバーはウレタン樹脂材料にて形成されるゴルフボールの製造方法であって、
上記コアに少なくとも1層の中間層を被覆して中間層被覆球体を形成する工程(1)、
上記中間層被覆球体に、中間層の樹脂組成物のベース樹脂の融点以上160℃未満の加熱処理を施す工程(2)、及び
その後、上記中間層被覆球体に上記カバーを被覆してカバー被覆球体を形成する工程(3)
を具備することを特徴とするゴルフボールの製造方法。
2.上記工程(2)において、上記中間層被覆球体の加熱処理の温度が90~150℃である上記1記載の製造方法。
3.上記工程(2)において、上記中間層被覆球体の加熱処理の時間が3~60分である上記1又は2記載の製造方法。
4.上記工程(1)において、中間層の樹脂組成物をコアの周囲に射出成形することにより中間層被覆球体を形成する上記1又は2記載の製造方法。
5.上記工程(3)において、カバーのウレタン樹脂材料を中間層被覆球体の周囲に射出成形することによりカバー被覆球体を形成する上記1又は2記載の製造方法。
6.上記中間層の樹脂組成物のベース樹脂がアイオノマー樹脂である上記1又は2記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のゴルフボールによれば、ドライバーショット時のボールの低スピン化のみならず、アイアンでのフルショット時のボールの低スピン化による飛距離増大を図ることができ、そのうえ、ショートゲームでのボールのスピン量を高いレベルで維持してアプローチコントロール性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明につき、更に詳しく説明する。
本発明のゴルフボールの製造方法は、コア、少なくとも1層の中間層及びカバーを具備するゴルフボールの製造方法である。
【0013】
上記コアはゴム材料により形成される。本発明に用いられるコア用ゴム材料は、後述する中間層の樹脂材料の融点以上の温度を加えても、硬度や反発性等の基本的性能が低下しないことが好ましい。また、本発明に用いられるコア用ゴム材料はゴルフボールに必要な反発性を十分に確保できることが好ましい。更には、ゴム材料の配合内容の選定と加硫条件によって、内部に所定の硬度傾斜(硬度分布)を持つコアを得ることができる。このようなコアの配合としては、具体的には、少なくとも下記の(A)~(D)成分を含有するゴム組成物の加熱成形物により形成されることが好適である。
(A)基材ゴム
(B)有機過酸化物
(C)水
(D)硫黄
【0014】
上記(A)成分の基材ゴムについては、特に制限されるものではないが、特にポリブタジエンを用いることが好適である。ポリブタジエンの種類としては、市販品を用いることができ、例えば、商品名「BR 01」、「BR 51」、「BR 730」、「BR T700」(ENEOSマテリアル社製)などが挙げられる。また、基材ゴム中のポリブダジエンの割合は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。上記基材ゴムには、上記ポリブタジエン以外にも他のゴム成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合し得る。上記ポリブタジエン以外のゴム成分としては、上記ポリブタジエン以外のポリブタジエン、その他のジエンゴム、例えばスチレンブタジエンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム等を挙げることができる。
【0015】
(B)有機過酸化物は、架橋開始剤として使用されるものである。具体的には、熱分解温度が比較的高温な有機過酸化物を使用することが好適であり、具体的には、1分間半減期温度が約165~185℃の高温な有機過酸化物を使用するものであり、例えば、ジアルキルパーオキサイド類を挙げることができる。ジアルキルパーオキサイド類として、例えば、ジクミルパーオキサイド(日油社製「パークミルD」)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(日油社製「パーヘキサ25B」)、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(日油社製「パーブチルP」)等が挙げられ、ジクミルパーオキサイドを好適に用いることができる。これらは1種を単独で、或いは2種以上を併用してもよい。半減期は、有機過酸化物の分解速度の程度を表す指標の1つであり、もとの有機過酸化物が分解して、その活性酸素量が1/2になるまでに要する時間によって示される。コア用ゴム組成物における加硫温度は、通常、120~190℃の範囲内であり、その範囲内では、1分間半減期温度が約165~185℃と高温な有機過酸化物は比較的遅く熱分解する。本発明のゴム組成物によれば、加硫時間の経過とともに増加する遊離ラジカルの生成量を調整することにより特定の内部硬度形状を有するゴム架橋物であるコアを得るものである。
【0016】
(C)水については、特に制限はなく、蒸留水であっても水道水であってもよいが、特には、不純物を含まない蒸留水を使用することが好適に採用される。水の配合量は、基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上配合することが好ましく、より好ましくは0.3質量部以上であり、上限としては、好ましくは5質量部以下であり、より好ましくは4質量部以下である。
【0017】
コア材料に直接的に水(水を含む材料)を配合することにより、コア配合中の有機過酸化物の分解を促進することができる。また、コア用ゴム組成物中の有機過酸化物は、温度によって分解効率が変化することが知られており、ある温度よりも高温になるほど分解効率が上がる。温度が高すぎると、分解したラジカル量が多くなりすぎてしまい、ラジカル同士で再結合や不活性化してしまうことになる。その結果、架橋に有効に働くラジカルが減ることになる。ここで、コア加硫の際に有機過酸化物が分解することで分解熱が発生するとき、コア表面付近は加硫モールドの温度とほぼ同程度を維持しているが、コア中心付近は外側から分解していった有機過酸化物の分解熱が蓄積されるため、モールド温度よりもかなり高温になる。コアに直接的に水を配合した場合、水は有機過酸化物の分解を助長する働きがあるため、上述したようなラジカル反応をコア中心とコア表面において変化させることができる。即ち、コア中心付近では有機過酸化物の分解が更に助長され、ラジカルの不活性化がより促されることで有効ラジカル量が更に減少するため、コア中心とコア表面との架橋密度が大きく異なるコアを得ることができ、且つ、コア中心部の動的粘弾性特性の異なるコアを得ることができる。
【0018】
(D)硫黄を使用することにより、コアの内外硬度差を大きくすることができる。(D)硫黄として具体的には、商品名「サンミックスS-80N」(三新化学工業)、「サルファックス-5」(鶴見化学工業社製)等が例示される。硫黄の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対して、0超とすることができ、好ましくは0.005質量部以上、更に好ましくは0.01質量部以上とすることができる。また、この配合量の上限は、特に制限されないが、好ましくは0.1質量部以下、より好ましくは0.05質量部以下、更に好ましくは0.03質量部以下とすることができる。なお、硫黄の配合量が多すぎた場合、反発性が大きく低下したり、繰り返し打撃耐久性が低下することがある。
【0019】
上記の(C)成分と(D)成分との配合割合について、(D)/(C)の質量比が、好ましくは0.02以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.04以上であり、上限値は、好ましくは0.20以下、より好ましくは0.16以下、さらに好ましくは0.12以下である。上記の数値範囲を逸脱すると、狙いのコアの硬度分布を達成することが難しくなり、フルショットしたときの低スピン化による優位な飛距離と良好な繰り返し打撃耐久性との両立ができなくなることがある。なお、上記の(D)成分は、硫黄製品自体の質量ではなく、製品に含まれる硫黄成分の質量を意味する。
【0020】
上記ゴム組成物において、上述した(A)~(D)成分のほかに、(E)共架橋剤、(F)不活性充填剤を配合することができ、必要に応じて老化防止剤や有機硫黄化合物を配合することができる。これらの成分について以下に詳述する。
【0021】
(E)共架橋剤としては、例えば不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸の金属塩等が挙げられる。不飽和カルボン酸として具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等を挙げることができ、特にアクリル酸、メタクリル酸が好適に用いられる。不飽和カルボン酸の金属塩としては特に限定されるものではないが、例えば上記不飽和カルボン酸を所望の金属イオンで中和したものが挙げられる。具体的にはメタクリル酸、アクリル酸等の亜鉛塩やマグネシウム塩等が挙げられ、特にアクリル酸亜鉛が好適に用いられる。
【0022】
上記不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩は、上記基材ゴム100質量部に対し、通常5質量部以上、好ましくは9質量部以上、更に好ましくは13質量部以上、上限として通常60質量部以下、好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下配合する。配合量が多すぎると、硬くなりすぎて耐え難い打感になる場合があり、配合量が少なすぎると、反発性が低下してしまう場合がある。
【0023】
(F)不活性充填剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等を好適に用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。不活性充填剤の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上、上限として好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下とする。不活性充填剤は、コアの比重を調整するために配合量が調整され、配合量が少なすぎると適正な質量、及び好適な反発性を得ることができない場合がある。
【0024】
更に、必要に応じて老化防止剤を配合することができ、例えば、市販品としてはノクラックMB、同NS-6、同NS-30(大内新興化学工業(株)製)、ヨシノックス425(吉富製薬(株)製)等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
該老化防止剤の配合量は上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0質量部以上、更に好ましくは0.05質量部以上、特に好ましくは0.1質量部以上、上限として好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2質量部以下、特に好ましくは1質量部以下、最も好ましくは0.5質量部以下とする。配合量が多すぎたり、少なすぎたりすると好適な反発性、耐久性を得ることができない場合がある。
【0026】
また、上記コアには、良好な反発性付与させるために、有機硫黄化合物を配合することができる。有機硫黄化合物としては、ゴルフボールの反発性を向上させ得るものであれば特に制限されないが、例えばチオフェノール類、チオナフトール類、ハロゲン化チオフェノール類又はそれらの金属塩等が挙げられる。より具体的には、ペンタクロロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノール、ペンタブロモチオフェノール、パラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩、ペンタフルオロチオフェノールの亜鉛塩、ペンタブロモチオフェノールの亜鉛塩、パラクロロチオフェノールの亜鉛塩、硫黄数が2~4のジフェニルポリスルフィド、ジベンジルポリスルフィド、ジベンゾイルポリスルフィド、ジベンゾチアゾイルポリスルフィド、ジチオベンゾイルポリスルフィド等が挙げられ、特に、ペンタクロロチオフェノールの亜鉛塩が好適に用いられる。有機硫黄化合物の配合量は、上記基材ゴム100質量部に対し、好ましくは0質量部以上、より好ましくは0.05質量部以上、更に好ましくは0.1質量部以上、上限として、好ましくは5質量部以下、より好ましくは3質量部以下、更に好ましくは2.5質量部以下であることが推奨される。配合量が多すぎると、反発性(特に、W#1による打撃)の改良効果がそれ以上期待できなくなり、コアが軟らかくなりすぎ、または打感が悪くなる場合がある。一方、配合量が少なすぎると、反発性の改善効果が期待できなくなる。
【0027】
上記コアは、上記各成分を含有するゴム組成物を加硫硬化させることにより製造することができる。例えば、バンバリーミキサーやロール等の混練機を用いて混練し、コア用金型を用いて圧縮成形又は射出成型し、有機過酸化物や共架橋剤が作用するのに十分な温度として、100~200℃、好ましくは140~180℃、10~40分の条件にて成形体を適宜加熱することにより、該成形体を硬化させて製造することができる。
【0028】
本発明では、上記コアは単層に形成してもよいし複数層のゴム製コアに形成してもよい。但し、複数層の場合、繰り返し打撃した時に界面から剥離が生じ、耐久性が悪くなることがある。
【0029】
コアの直径は、特に制限されるものではないが、好ましくは35.5mm以上、より好ましくは37.5mm以上、さらに好ましくは38.3mm以上あり、上限としては、好ましくは39.5mm以下、より好ましくは39.2mm以下、さらに好ましくは38.8mm以下である。コアの直径が小さすぎると、フルショットしたときの実打初速が低くなり狙いの飛距離が得られず、または打感が硬くなりすぎることがある。一方、コアの直径が大きすぎると、繰り返し打撃耐久性が悪くなることがある。
【0030】
コアに対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、特に制限はないが、好ましくは2.5mm以上、より好ましくは2.7mm以上、更に好ましくは2.9mm以上であり、上限値として、好ましくは3.5mm以下、より好ましくは3.4mm以下、さらに好ましくは3.3mm以下である。上記コアのたわみ量が小さすぎる、即ち、コアが硬すぎると、ボールのスピン量が増えすぎて飛ばなくなったり、打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記コアのたわみ量が大きすぎる、即ち、コアが軟らかすぎると、ボールの反発性が低くなりすぎて飛ばなくなったり、打感が軟らかくなりすぎ、あるいは繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0031】
次に、上記コアの硬度分布については説明する。なお、以下に説明するコアの硬度はショアC硬度を意味する。このショアC硬度は、ASTM D2240規格に準拠したショアC硬度計にて計測した硬度値である。
【0032】
上記コアの中心硬度(Cc)は、好ましくは58以上、より好ましくは60以上、さらに好ましくは62以上であり、その上限値は、好ましくは70以下、より好ましくは68以下、さらに好ましくは66以下である。この値が大きすぎると、打感が硬くなり、あるいはフルショットでスピン量が増えて狙いの飛距離が得られない場合がある。一方、上記の値が小さすぎると、反発性が低くなり飛ばなくなり、または繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0033】
上記コアの中間位置Mの断面硬度(Cm)は、特に制限されるものではないが、好ましくは61以上、より好ましくは64以上、更に好ましくは67以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは73以下、より好ましくは71以下、更に好ましくは69以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0034】
更に、上記コアの中心と中間位置Mとの中点における断面硬度(Cp)は、特に制限されるものではないが、好ましくは61以上、より好ましくは63以上、更に好ましくは65以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは72以下、より好ましくは70以下、更に好ましくは68以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの中心硬度(Cc)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0035】
上記コアの表面硬度(Cs)は、好ましくは82以上、より好ましくは84以上、さらに好ましくは86以上であり、その上限値は、好ましくは92以下、より好ましくは90以下、さらに好ましくは88以下である。この値が大きすぎると、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなり、あるいは打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記の値が小さすぎると、フルショット時のスピン量が多くなり狙いの飛距離が得られなくなることがある。
【0036】
更に、上記コアの表面と中間位置Mとの中点における断面硬度(Cq)は、特に制限されるものではないが、好ましくは75以上、より好ましくは77以上、更に好ましくは79以上とすることができる。また、その上限も特に制限されるものではないが、好ましくは85以下、より好ましくは83以下、更に好ましくは81以下とすることができる。これらの硬度を逸脱した場合、上記コアの表面硬度(Cs)で説明したのと同様の不利な結果を招くおそれがある。
【0037】
上記コアの表面硬度と中心硬度との差(Cs-Cc)は、特に制限されるものではないが、好ましくは18以上、より好ましくは19以上、更に好ましく20以上である。一方、その上限値は、特に制限はなく、好ましくは35以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下とすることができる。この値が小さすぎると、フルショットした時にボールが低スピン化にならないことがある。一方、この値が大きすぎると、フルショットした時の実打初速が低くなりすぎたり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0038】
また、上記コアの硬度分布については、(Cs-Cc)/(Cm-Cc)の値を適正化することが好ましい。(Cs-Cc)/(Cm-Cc)の値は、コアの中心から中間位置Mまでの硬度差に対する、コア表面から中心までの硬度差の指標値である。(Cs-Cc)/(Cm-Cc)の値は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上であり、上限値として、好ましくは20以下、より好ましくは15以下、さらに好ましくは11以下である。この値が小さすぎると、フルショットした時にボールが低スピン化にならないことがある。一方、この値が大きすぎると、フルショットした時の実打初速が低くなりすぎたり、繰り返し打撃した時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0039】
本発明では、上記コアに少なくとも1層の中間層を被覆して中間層被覆球体を形成する工程(1)を有する。
【0040】
中間層は樹脂材料により形成され、その樹脂材料については、特に制限はないが、ゴルフボールに用いられている各種の熱可塑性樹脂材料を採用することができる。本発明においては、特に、アイオノマー樹脂を主材料(ベース樹脂)として採用することが好適である。
【0041】
アイオノマー樹脂材料としては、不飽和カルボン酸の含量(「酸含量」ともいう)16質量%以上の高酸含量アイオノマー樹脂を含むことが好適である。
【0042】
また、高酸含量アイオノマー樹脂の含有率は、樹脂材料100質量%に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、上限として、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。上記の高酸含量アイオノマー樹脂の配合量が少なすぎると、フルショット時のボールのスピン量が多くなり、飛距離が出なくなることがある。一方、上記の高酸含量アイオノマー樹脂の配合量が多すぎると、繰り返し打撃耐久性が悪くなることがある。
【0043】
また、アイオノマー樹脂をベース樹脂として採用する場合、亜鉛中和型アイオノマー樹脂とナトリウム中和型アイオノマー樹脂とを混合してベース樹脂として用いる態様が望ましい。その配合比率は、亜鉛中和型/ナトリウム中和型(質量比)で5/95~95/5、好ましくは10/90~90/10、更に好ましくは15/85~85/15である。この比率内にZn中和アイオノマーとNa中和アイオノマーを含めないと、硬度が大きくならず、また中間層被覆球体の反発性が高くならずに、その結果、ボールをフルショットした時に低スピンにならなかったり、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【0044】
なお、中間層材料には、任意の添加剤を用途に応じて適宜配合することができる。例えば、顔料,分散剤,老化防止剤,紫外線吸収剤,光安定剤などの各種添加剤を加えることができる。これら添加剤を配合する場合、その配合量としては、基材樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上、上限として、好ましくは10質量部以下、より好ましくは4質量部以下である。
【0045】
中間層の材料硬度は、ショアD硬度で好ましくは62以上であり、より好ましくは64以上、さらに好ましくは66以上とすることができる。また、その上限値は、特に制限されるものではないが、好ましくは72以下、より好ましくは70以下、さらに好ましくは68以下とすることができる。なお、この中間層の材料硬度は、樹脂材料自体を単独で、厚さ2mmのシート状に成形し、2週間放置して測定したショアDの硬度値であり、後述する工程(2)において加熱処理した後の中間層の硬度を意味しない。
【0046】
中間層の樹脂材料をコアに被覆する方法としては、例えば、コアの周囲に中間層材料を射出成形用金型で射出して被覆球体を得ることや、予め半殻球状に成形した2枚のハーフカップを中間層材として上記コアを包み加熱加圧成形することによりコアを包囲した中間層被覆球体を作製することもできる。本発明では、成形サイクルが短く、量産性に優れることから、射出成形用金型を用いて中間層をコアの周囲に射出成形する方法が好ましく採用される。
【0047】
次に、本発明では、上記中間層被覆球体に、中間層の樹脂組成物のベース樹脂の融点以上160℃未満の加熱処理を施す工程(2)を有する。上記の「融点」とは、ベース樹脂の固体が液体に変化する融解が起こるときの温度を意味する。上記の所定の温度範囲内での加熱処理を行い、室温で放置することにより、コアを被覆した中間層(樹脂層)の結晶相の結晶度をコントロールして中間層被覆球体の表面硬度を高くすることができる。
【0048】
上記中間層被覆球体の加熱処理の温度の下限値は、中間層の樹脂組成物のベース樹脂の融点以上、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上である。一方、加熱処理の温度の上限値は、通常は160℃未満であり、好ましくは150℃以下、より好ましくは140℃以下である。この温度が低すぎると、フルショットによるボールの低スピン効果が得られないことがある。また、この温度が高すぎると、かえってボールのスピン量が多くなってしまったり、ボールとしての反発が低くなってしまうことがある。なお、中間層の樹脂組成物に配合する樹脂が2種類以上の場合は、そのうち最も配合量の多い樹脂を上記のベース樹脂とする。
【0049】
上記の加熱処理の手段は、例えば、送風循環式の乾燥器(送風定温恒温器)等の公知の乾燥器を用いて、該機器内に中間層被覆球体を配置して行うことができるが、この手段に特に制限されるものではない。
【0050】
また、上記工程(2)において、中間層被覆球体の加熱処理の時間については、好ましくは3分以上であり、より好ましくは10分以上、さらに好ましくは20分以上である。加熱時間の上限値は、好ましくは60分以下、より好ましくは45分以下、さらに好ましくは30分以下である。この加熱時間が短すぎると、フルショットによるボールの低スピン効果が得られないことがある。また、この加熱時間が長すぎると、ボールとしての反発が低くなってしまうことがある。
【0051】
上記工程(2)を経た後の中間層被覆球体の表面硬度は、ショアD硬度で、好ましくは68以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは71以上であり、上限値として、好ましくは79以下、より好ましくは77以下、さらに好ましくは75以下である。この中間層被覆球体の表面硬度が軟らかすぎると、アイアンフルショット時のスピン量が増えすぎてしまい飛距離が出なくなり、あるいは、ボールとしての初速が低くなりアイアンフルショット時に飛距離が出なくなることがある。また、この中間層被覆球体が硬すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、打感が悪くなることがある。
【0052】
上記中間層の厚さについては、好ましくは0.90mm以上、より好ましくは1.10mm以上、さらに好ましくは1.15mm以上であり、一方、上限値は、好ましくは1.50mm以下、より好ましくは1.35mm以下、さらに好ましくは1.25mm以下である。この中間層が薄すぎると、繰り返し打撃による割れ耐久性が悪くなったり、アイアンフルショット時にスピン量が増大しすぎてしまうことがある。一方、中間層が厚すぎると、ボール初速が低くなったり、打感が悪くなることがある。
【0053】
次に本発明では、上記中間層被覆球体にカバー(最外層)を被覆してカバー被覆球体を形成する工程(3)を有する。
【0054】
本発明におけるカバー被覆球体を得る方法は、特に制限はないが、例えば、中間層被覆球体の周囲にカバー材料を射出成形用金型で射出してカバー被覆球体を得ることや、半殻球状に成形した2枚のハーフカップを予め用意し、これで中間層被覆球体を包み加熱加圧成形することによりカバー被覆球体を作製することもできる。本発明では、成形サイクルが短く、量産性に優れることから、射出成形用金型を用いてカバー材料を中間層被覆球体の周囲に射出成形する方法が好ましく採用される。
【0055】
カバーの材料としては、ウレタン樹脂を主材とした樹脂組成物を採用することができる。一般的には、ゴルフボールのカバー材料としてアイオノマー樹脂材料も広く使用されているが、耐擦過傷性に劣るとともに、ウレタン樹脂と同等硬度においてアプローチした時のスピン量が劣ることがある。また、ウレタン樹脂材料の中でも、熱可塑性ウレタン樹脂材料が量産性において優れるので好ましく用いられる。一般的なイソシネートを添加した熱可塑性ウレタン樹脂材料の軟化温度は約140~175℃である。もし、ボールの成形後に140℃以上の熱処理を施すとディンプルの形状に変化が起きてしまい、狙った空力特性が得られなくなることがある。
【0056】
カバーの材料硬度は、特に制限はないが、ショアD硬度では、好ましくは35以上、より好ましくは40以上、さらに好ましくは45以上であり、上限値として、好ましくは60以下、より好ましくは55以下、さらに好ましくは50以下である。この材料硬度が軟らかすぎると、フルショット時にスピン量が多くなりすぎることがある。一方、この材料硬度が硬すぎると、アプローチでスピンがかからなくなったり、耐擦過傷性が悪くなることがある。
【0057】
カバーの厚さは、好ましくは0.3mm以上であり、より好ましくは0.45mm以上、さらに好ましくは0.6mm以上である。一方、カバーの厚さの上限値としては、好ましくは1.2mm以下、より好ましくは1.15mm以下、さらに好ましくは1.0mm以下である。上記カバーが厚すぎると、フルショット時にボールの反発性が足りなくなったり、あるいはスピン量が多くなりすぎることがある。一方、上記カバーが薄すぎると、耐擦過傷性が悪くなり、あるいはアプローチでのスピンがかからなくなりコントロール性が不足することがある。
【0058】
なお、上記カバーの最外層の表面には、通常、多数のディンプルが形成されるものであり、更にカバー上には下地処理、スタンプ、塗装等種々の処理を行うことができる。
【0059】
製造した後のゴルフボール(完成品)に対して、初期荷重98N(10kgf)から終荷重1,275N(130kgf)を負荷したときのたわみ量(mm)は、2.1mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.2mm以上、さらに好ましくは2.4mm以上である。一方、上記たわみ量の上限値としては、好ましくは2.8mm以下、より好ましくは2.7mm以下、更に好ましくは2.6mm以下である。ゴルフボールのたわみ量が小さすぎる、即ち、硬すぎると、アイアンフルショット時にスピン量が増えすぎたり、打感が硬くなりすぎることがある。一方、上記のたわみ量が大きすぎる、即ち、上記球体が軟らかすぎると、繰り返し打撃時の割れ耐久性が悪くなることがある。
【実施例0060】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0061】
〔実施例1~4,比較例1,2〕
各例については、全て共通する下記表1に示すポリブタジエンを主成分とするゴム配合によりコア組成物を調整した後、150℃で19分間加硫を行い、直径38.7mmのコアを作製した。
【0062】
【0063】
上記の配合についての詳細は下記のとおりである。
・ポリブタジエンゴム:商品名「BR T700」ENEOSマテリアル社製
・アクリル酸亜鉛:商品名「ZN-DA85S」(日本触媒社製)
・有機過酸化物:ジクミルパーオキサイド、商品名「パークミルD」(日油社製)
・硫黄:商品名「サンミックスS-80N」(三新化学工業)、ゴム用粉末硫黄を80質量%含有する硫黄マスターバッチ
・水:純水(正起薬品工業社製)
・ステアリン酸亜鉛:商品名「ジンクステアレートGP」(日油社製)
・老化防止剤:2,2-メチレンビス(4-メチル-6-ブチルフェノール)、商品名「ノクラックNS-6」(大内新興化学工業社製)
・酸化亜鉛:商品名「酸化亜鉛3種」(堺化学工業社製)
・ペンタクロロチオフェノール亜鉛塩:富士フイルム和光純薬社製
【0064】
中間層及びカバー(最外層)の形成
次に、各例について、上記で得たコアの周囲に、表2に示した配合の中間層材料No.1を用いて射出成形法により中間層を形成し、中間層被覆球体を作製した。次いで、下記表3に示す温度及び時間の条件により中間層被覆球体に対して加熱処理を行い、加熱処理後の中間層被覆球体の表面硬度を同表に併記した。上記の加熱処理の手段は、ヤマト科学(株)製の乾燥送風定温恒温器機の商品名「DNF610」を使用し、上記中間層被覆球体20個を乾燥機内に並べて置き、加熱処理を行った。
次に、上記で得た中間層被覆球体の周囲に、表2に示した配合のカバー材料No.2を用いて、射出成形法によりカバー(最外層)を形成し、ゴルフボールを作製した。この際、カバー表面には、各例に共通する所定のディンプルを形成した。
【0065】
【0066】
表中に記載した主な材料の商品名は以下の通りである。
「ハイミラン1706」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー
「AM7318」三井・ダウポリケミカル社製のアイオノマー
「トリメチロールプロパン」(TMP)東京化成工業社製
「酸化チタン」堺化学工業社製
「TPU」ディーアイシーコベストロポリマー社製の商品名「パンデックス」、エーテルタイプ熱可塑性ポリウレタン、材料硬度(ショアD)「47」
【0067】
得られた各ゴルフボールにつき、コアの各位置における内部硬度、コアや各被覆球体の外径、各層の厚さ及び材料硬度などの諸物性を下記の方法で評価し、表3に示す。
【0068】
コア及び中間層被覆球体の各球体の外径
測定する球体を23.9±1℃に調整された恒温槽により3時間以上で調温後、23.9±2℃の室内にて測定する。任意の表面5箇所を測定し、その平均値を1個の各球体の測定値とし、測定個数10個での平均値を求める。
【0069】
ボールの直径
測定するボールを23.9±1℃に調整された恒温槽により3時間以上で調温後、23.9±2℃の室内にて測定する。任意のディンプルのない部分を15箇所測定し、その平均値を1個のボールの測定値とし、測定個数10個のボールの平均値を求める。
【0070】
コア硬度分布
コアの表面は球面であるが、その球面に硬度計の針をほぼ垂直になるようにセットし、ASTM D2240に従ってショアC硬度で表面硬度を計測する。コアの中心及び所定位置については、コアを半球状にカットして断面を平面にして、中心部分及び表3に示した所定位置に硬度計の針を垂直に押し当てて測定し、中心及び各位置の硬度をショアC硬度の値で示す。硬度の測定には、ショアC型硬度計を備えた高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。硬度の値は最大値を読み取る。測定は、全て、23±2℃の環境下でなされる。なお、表3の数値はショアC硬度の値である。
【0071】
コア、中間層被覆球体及びボールの圧縮変形量(たわみ量)
各対象球体について、23±1℃の温度で、10mm/sの速度で圧縮し、初期荷重98N(10kgf)を負荷した状態から終荷重1275N(130kgf)に負荷した時までの対象球体の圧縮変形量(mm)を計測し、測定個数10個の平均値を求める。
【0072】
中間層及びカバーの材料硬度
各層の樹脂材料を厚さ2mmのシート状に成形し、2週間放置する。その後、ショアD硬度及びショアC硬度はASTM D2240規格に準拠して計測する。硬度の測定には、高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。ショアD硬度およびショアC硬度のアタッチメントを取り付けてそれぞれの硬度を計測する。硬度の値は最大値を読み取る。測定は、全て、23±2℃の環境下でなされる。
【0073】
中間層被覆球体の表面硬度
中間層被覆球体の表面に対して針を垂直になるように押し当てて計測する。ショアD硬度はASTM D2240規格に準拠して計測する。硬度の測定には、高分子計器株式会社製の自動ゴム硬度計「P2」が用いられる。ショアD硬度のアタッチメントを取り付けてそれぞれの硬度を計測する。硬度の値は最大値を読み取る。測定は、全て、23±2℃の環境下でなされる。
【0074】
【0075】
各ゴルフボールの飛び(I#6,HS40m/s)、(I#6,HS35m/s)及びアプローチ時のコントロール性について下記の方法で評価する。その結果を表4に示す。
【0076】
飛び評価(I#6,HS40m/s)
ゴルフ打撃ロボットに6番アイアン(I#6)をつけて、ヘッドスピード(HS)40m/sで打撃した時のスピン量を測定し、下記基準により判定する。スピン量は打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourStage X-BLADE CB(2008年モデル)」を使用した。
〔判定基準〕
○ ・・・ 比較例1対比のスピン量が-25rpm未満
△ ・・・ 比較例1対比のスピン量が-25~+25rpm
× ・・・ 比較例1対比のスピン量が+25rpmより大きい
【0077】
飛び評価(I#6,HS35m/s)
ゴルフ打撃ロボットに6番アイアン(I#6)をつけて、ヘッドスピード(HS)35m/sで打撃した時のスピン量を上記と同様に測定し、下記基準により判定した。クラブは、ブリヂストンスポーツ社製の「TourStage X-BLADE CB(2008年モデル)」を使用した。
〔判定基準〕
○ ・・・ 比較例1対比のスピン量が-25rpm未満
△ ・・・ 比較例1対比のスピン量が-25~+25rpm
× ・・・ 比較例1対比のスピン量が+25rpmより大きい
【0078】
アプローチ時のスピン量の評価
ゴルフ打撃ロボットにサンドウエッジ(SW)をつけてヘッドスピード(HS)14m/sにて打撃した時のスピンの量で判断した。スピン量は打撃した直後のボールを初期条件計測装置により測定した。サンドウエッジ(SW)は、ブリヂストンスポーツ社製の「TourStage TW-03(ロフト角57°)2002年モデル」を使用した。
〔判定基準〕
○ ・・・ 比較例1対比のスピン量が-25rpm以上
× ・・・ 比較例1対比のスピン量が-25rpm未満
【0079】
【0080】
表4に示すように、実施例1~4のゴルフボールは、中間層被覆球体に所定範囲の温度で熱処理を施したものであり、6番アイアンでのフルショット時のスピン量が低減し、飛び性能が改善されることが分かる。
一方、比較例1は、中間層被覆球体に熱処理を施さずに、カバーを射出成形して被覆したボールであり、6番アイアンでのフルショット時のスピン量が各実施例より多くなった。
比較例2は、中間層被覆球体に160℃×10分の熱処理を施し、その後、カバーを射出成形して被覆したボールであり、6番アイアンでのフルショット時のスピン量が各実施例より多くなった。