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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167556
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】耐候性試験装置及び耐候性試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083717
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100169063
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 洋平
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】宮本 慎一
(72)【発明者】
【氏名】栃木 華恵
(72)【発明者】
【氏名】柏女 恵
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050BA03
2G050BA05
2G050BA09
2G050BA10
2G050BA11
2G050CA03
2G050EA01
2G050EA04
(57)【要約】
【課題】装置の大型化を防止しつつ耐候性試験を行う際の照度ムラを低減した耐候性試験装置を提供する。
【解決手段】耐候性試験装置1は、加圧容器、試料保持部3、及び、光照射装置4を備える。試料保持部3は、加圧容器の内に配置される。光照射装置4は、加圧容器の外に配置され、試料保持部3に向かって光Lを照射する。光照射装置4から外に光Lが出射する光出射部である光学フィルタ4bから試料保持部3までの距離をdとし、光学フィルタ4bの外縁から試料保持部3に垂直に向かう仮想面T1によって試料保持部3上において画定される外縁Bと、試料に光Lを照射して耐候性試験を実施するための試料保持部3上における試験領域Tの外縁を画定する外縁Cとの幅をxとした場合に、外縁Bと外縁Cとの幅xが光学フィルタ4bから試料保持部3までの距離dの0.5以下である。
【選択図】図3

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過可能な光透過部を有する加圧容器と、
前記加圧容器の内に配置され、試料を保持可能な試料保持部と、
前記加圧容器の外に配置され、前記光透過部を介して前記試料保持部に向かって光が広がって照射されるように構成された光照射装置と、を備え、
前記光照射装置から外に前記光が出射する光出射部から前記試料保持部までの距離をdとし、前記光出射部の外縁から前記試料保持部に垂直に向かう仮想面によって前記試料保持部上において画定される第1外縁と、前記試料に前記光を照射して耐候性試験を実施するための前記試料保持部上における試験領域の外縁を画定する第2外縁との幅をxとした場合に、前記第1外縁と前記第2外縁との前記幅xが前記光出射部から前記試料保持部までの前記距離dの0.5以下である、耐候性試験装置。
【請求項2】
前記光出射部は、光学フィルタ、ガラス板、及びレンズのうちの少なくとも一つを含む、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項3】
前記幅xが前記距離dの0.28以下である、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項4】
前記距離dが70cm以下である、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項5】
前記幅xが35cm以下である、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項6】
前記試料に照射される光の光量が15mW/cm以上60mW/cm以下である、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項7】
前記光照射装置からの前記光は、少なくとも波長300nm~400nmの範囲の光を含む、
請求項1に記載の耐候性試験装置。
【請求項8】
請求項1~7の何れか一項に記載の耐候性試験装置を用いて前記試料の耐候性を評価する試験方法であって、
前記試料保持部における前記試験領域内に前記試料を保持させる工程と、
前記光照射装置からの前記光を前記試料に照射する工程と、
を備える耐候性試験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐候性試験装置及び耐候性試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機材料や無機材料が太陽などの光や熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどのくらいで劣化するかという耐候性試験を行う場合、実環境下で試験を行うことが最良である。しかし、実環境下での試験では、試験結果を得るまでに長期間を要してしまうことがある。そこで、太陽光よりも高光量の光源を有する耐候促進試験装置を用いて耐候性試験を行い、各種材料の耐候性の試験結果を早期に取得することが行われている。このような耐候性試験装置として、サンシャインウェザオメーター(SWOM)、メタルウェザーメーター(MW)、スーパーUV(SUV)、キセノンウェザーメーター(例えば特許文献1,2を参照)などが知られている。
【0003】
サンシャインウェザオメーターは、カーボンアークからなる光源を備え、紫外部から可視光部の波長を含む光をこの光源から試料に照射すると共に、水噴霧装置により一定時間試料に水を噴霧することにより、短期間で耐候性試験を実現する装置である。この装置では、ある程度の試験期間の短縮を行うことができる。また、メタルウェザーメーター及びスーパーUVは、SWOMよりも強力な光源であるメタルハライドランプを備え、紫外部から可視光部までの高光量の光をこの光源から試料に照射すると共に、水噴霧装置により一定時間試料に水を噴霧する装置である。これらの装置では、高光量の光源を用いているため、サンシャインウェザオメーターよりも短期間で耐候性試験を行うことができる。
【0004】
また、耐候性試験を促進しつつ安全性を高めた耐候性試験装置として、特許文献3に記載の耐候性試験装置が知られている。この耐候性試験装置では、光源を有する光照射装置が加圧容器の外に配置されており、加圧容器の外から加圧容器内の試料に対して光を照射するようになっている。光照射装置が加圧容器の外にあるため、この耐候性試験装置では、光照射装置による加圧容器への影響が低減されており、耐候性試験を促進しつつ安全性を向上することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平1-21891号公報
【特許文献2】特公平1-28897号公報
【特許文献3】特開2022-176912号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の耐候性試験装置(例えばメタルウェザーメーター)では、試料に対向配置された光源から耐候性試験用の光を試料に照射することで、耐候性試験を行う。しかしながら、この装置では、評価できる試料面積が光源の大きさに依存する。このため、複数の試料または大面積の試料に対して耐候性試験を行う場合、光源を大きくしないと照射される光に照度ムラが生じる虞がある。他方、光源を大きくすると、装置自体が大型化する。そこで、装置の大型化を防止しつつ耐候性試験を行う際の照度ムラを低減した耐候性試験装置及び耐候性試験方法が望まれている。
【0007】
本発明は、装置の大型化を防止しつつ耐候性試験を行う際の照度ムラを低減した耐候性試験装置及び耐候性試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明は、その一側面として、加圧容器、試料保持部、及び、光照射装置を備える耐候性試験装置に関する。加圧容器は、光を透過可能な光透過部を有する。試料保持部は、加圧容器の内に配置され、試料を保持可能である。光照射装置は、加圧容器の外に配置され、光透過部を介して試料保持部に向かって光が広がって照射されるように構成されている。この耐候性試験装置では、光照射装置から外に光が出射する光出射部から試料保持部までの距離をdとし、光出射部の外縁から試料保持部に垂直に向かう仮想面によって試料保持部上において画定される第1外縁と、試料に光を照射して耐候性試験を実施するための試料保持部上における試験領域の外縁を画定する第2外縁との幅をxとした場合に、第1外縁と第2外縁との幅xが光出射部から試料保持部までの前記距離dの0.5以下である。
【0009】
この耐候性試験装置(1)では、光照射装置は、試料保持部に向かって光が広がって照射されるように構成されている。この場合、耐候性試験に用いる光を広げて試料に照射するため、光源を大きくする必要がなく、装置の大型化を防止することができる。これに加え、この耐候性試験装置では、第1外縁と第2外縁との幅xが光出射部から試料保持部までの距離dの0.5以下である。光照射装置から照射される光が試料保持部に向かって広がると、照射された光の外縁部分の照度が中央部分の照度より低下し、照度ムラが生じる虞がある。しかしながら、本発明者らの検討によれば、耐候性試験を実施するための試験領域の外縁(第2外縁)を上述した範囲とすることにより、このような照度ムラを低減できることが判った。よって、この耐候性試験装置によれば、装置の大型化を防止しつつ耐候性試験を行う際の照度ムラを低減することができる。
【0010】
(2)上記の耐候性試験装置(1)において、光出射部は、光学フィルタ、ガラス板、及びレンズのうちの少なくとも一つを含んでもよい。光出射部に光学フィルタを設けることにより、光照射装置から出射される光の波長を耐候性試験に好適なものに容易にすることができる。また、光出射部にガラス板を設けることにより、光照射装置から光を照射する領域(例えば開口部)を閉じた状態として、光照射装置内に粉塵等が浸入することを防止できる。光学フィルタがこの機能(粉塵等の浸入防止)を更に備えていてもよい。更に、光出射部にレンズを設けることにより、光の広がりを調整することも可能である。なお、上記の耐候性試験装置(1)において、光出射部が光学フィルタ、ガラス板、及びレンズのうちの2つ又は3つの機能を備えていてもよい。
【0011】
(3)上記の耐候性試験装置(1)又は(2)において、第1外縁と第2外縁との幅xが光出射部から試料保持部までの距離dの0.28以下であることが好ましい。この場合、耐候性試験を行う際の照度ムラを更に低減することができる。
【0012】
(4)上記の耐候性試験装置(1)~(3)の何れかにおいて、光出射部から試料保持部までの距離dが70cm以下であってもよい。この場合、耐候性試験を行う際の照度ムラを低減しつつ、耐候性試験装置を更に小型化することができる。
【0013】
(5)上記の耐候性試験装置(1)~(4)の何れかにおいて、第1外縁と第2外縁との幅xが35cm以下であってもよい。この場合、耐候性試験を行う際の照度ムラの低減をより確実に行うことができる。
【0014】
(6)上記の耐候性試験装置(1)~(5)の何れかにおいて、試料に照射される光の光量が15mW/cm以上60mW/cm以下であることが好ましい。この場合、高光量の光を試料に照射することができるため、耐候性試験を容易に促進することが可能となる。また、このような光量を照射するランプとして、例えばキセノン(Xe)ランプを使用した場合、キセノンランプから照射される光の波長の波形は太陽光の波形に近いため、実環境下での試験に近い試験結果を容易に得ることが可能となる。即ち、上述した光源を用いることにより、実環境下での耐候性試験を再現した試験結果を早期に得ることが可能となる。なお、ここで用いる「光量(mW/cm)」は、光源から照射される光の波長365nmでの光量(照度)を意味しており、例えば、紫外線積算光量計(ウシオ電機株式会社製UIT-250 受光器UVD-S365)といった方法で測定した値である。
【0015】
(7)上記の耐候性試験装置(1)~(6)の何れかにおいて、光照射装置の光源からの光は、少なくとも波長300nm~400nmの範囲の光を含むことが好ましい。この場合、太陽光に含まれていて材料等の劣化に影響を与えやすい紫外線を照射光に含むことになり、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。
【0016】
(8)本発明は、別の側面として、耐候性試験方法に関する。この耐候性試験方法は、上述した(1)~(7)の何れかの構成を有する耐候性試験装置を用いて試料の耐候性を評価する試験方法である。この耐候性試験方法は、試料保持部における試験領域内に試料を保持させる工程と、光照射装置からの光を試料に照射する工程と、を備える。このような耐候性試験方法によれば、耐候性試験を行う際の照度ムラを低減して試料を一様に劣化させ、これにより、適切な試験結果を容易に得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置の大型化を防止しつつ耐候性試験を行う際の照度ムラを低減した耐候性試験装置及び耐候性試験方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る耐候性試験装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示す耐候性試験装置の光照射装置の内部構造を示す模式図である。
図3図3は、光照射装置から照射される光の広がり、及び、光照射装置と試料保持部との配置関係を示す図である。
図4図4は、図3に示す試料保持部における試験領域を示す平面図である。
図5図5は、耐候性試験装置の変形例を示す図である。
図6図6は、実施例の試験に用いる試料(化粧シート)の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係る耐候性試験装置及び耐候性試験方法について詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いる場合があり、重複する説明は省略する。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る耐候性試験装置の構成を模式的に示す断面図である。図2は、図1に示す耐候性試験装置の光照射装置の内部構造を示す模式図である。図1に示すように、耐候性試験装置1は、加圧容器2、試料保持部3、光照射装置4、ガス導入管5、加湿器6、ガス排気管7、圧力調整器8、水噴霧管9、水流量調整器10、排水管11、排水弁12、温度調整器13、検出部14、及び、制御部15を備えている。耐候性試験装置1では、加圧容器2内の試料保持部3上に試料Sを保持させ、ガス導入管5から酸素や窒素等のガスを導入しつつ圧力調整器8で加圧容器2内を所定の内圧となるように調整する。そして、その加圧状態で、太陽光等を模した光照射装置4からの光Lを試料Sに照射しつつ、水噴霧管9の先端から水を試料Sに噴霧し、更に、温度調整器13により試料Sを加熱する。温度調整器13は、必要に応じて試料Sを冷却してもよい。ガス導入管5から導入される酸素等のガスは加湿器6により加湿されていてもよい。このような環境に試料Sを所定期間置いておき、試料Sが太陽などの光や熱、雨などの水分、大気中の酸素等によってどのくらいで劣化するかという耐候性試験を行う。なお、耐候性試験装置1は、上述した各構成が収納される筐体を更に備え、光照射装置4から漏洩する紫外線や高光量の光が外に漏れないように構成されていてもよい。
【0021】
加圧容器2は、加圧可能な密閉容器であり、試料保持部3等を収納する収納部2aと、収納部2aの開口を塞ぐ蓋2bとを有している。加圧容器2は、例えば上部の蓋2bが取外し可能となっており、試料Sを設置する際に蓋2bを収納部2aから取り外して使用する。試料Sを設置した後、蓋2bは、内部が気密状態となるように収納部2aに取り付けられ、例えばそれぞれの円周部分をボルト等によって締めて固定される。加圧容器2の材料は、容器内の圧力に対する耐圧性を有するものであれば、各種の材料を用いることができるが、例えば、SUS、アルミニウム合金、鉄、チタン合金、タングステン合金などから構成することができる。
【0022】
収納部2aには、ガス導入管5、ガス排気管7、水噴霧管9、排水管11が接続されており、各管の先端が収納部2aの内部に位置するように構成されている。これにより、ガス導入管5から加圧容器2内に所定の試験ガス(酸素等)を導入できると共に、ガス排気管7から不要なガスを排出可能となる。また、水噴霧管9から試料Sに水を噴霧することができると共に、排水管11から不要な水を排出可能となる。図1に示す装置の例では、蓋2bを取り外す構成であるため、各種の管を収納部2aにまとめて接続しているが、これらの管の一部を蓋2bに接続してもよい。
【0023】
蓋2bの中央の試料保持部3(試料S)に対向する領域には、開口2cが設けられている。この開口2cには、石英ガラス板16(光透過部)が気密に嵌め込まれている。石英ガラス板16は、試料保持部3に対向するように位置し、光照射装置4から照射される光Lを減衰させることなく透過させて試料Sに光Lがそのまま照射されるように構成されている。石英ガラス板16は、光照射装置4から照射される光L(特に紫外線)を透過可能であれば他の材料からなる光透過部材であってもよい。なお、石英ガラス板16は、加圧容器2の一部を構成することから、加圧容器2内の雰囲気や圧力を保つ構造となっている。
【0024】
試料保持部3は、耐候性試験に用いられる試料Sを保持する部材である。試料保持部3は、例えば板状部材3aとそれを支持する支持部材3bとから構成され、試料Sは板状部材3aの上に配置されて、アルミテープなどで貼り付けられることにより保持される。試料保持部3の板状部材3aは、水平方向になるように支持部材3bに取り付けられてもよいが、水噴霧管9から噴霧される水が試料S上に滞留しないように、水平方向に対して傾斜していてもよい。また、試料保持部3には、温度調整器13が内蔵されていてもよい。温度調整器13は、ヒータ及び冷却用流路を内蔵して構成することができ、熱電対の値をフィードバックすることにより、試料Sを加熱したり又は冷却したりして、試料Sの温度を調整する。温度調整器13により、試料保持部3に保持される試料Sを所定の温度に加熱したり冷却したりして耐候性試験を行うことが可能となる。温度調整器13による試料Sの加熱において、加熱温度は室温以上で且つ試料Sの分解温度以下であることが好ましい。分解温度以下の加熱であることにより、熱による劣化だけを先に促進させずに、光や酸素、湿度等による劣化とのバランスを調整できる。なお、温度調整器13の代わりに又は併用して、ガス導入管5から導入されるガスを加熱したり冷却したりするガス温度調整機構を設けてもよいし、加圧容器2に温度調整器を設けて容器自体を温度調整してもよいし、これらを組み合わせて使用してもよい。
【0025】
光照射装置4は、図1及び図2に示すように、光Lを照射する光源4aと、光源4aからの光から一部の波長の光を取り除く光学フィルタ4b(光出射部)と、光源4aからの光のうち光学フィルタ4bとは逆方向(例えば図示上方)に放射される光を反射して光学フィルタ4bに向ける反射板4cと、光源4a、光学フィルタ4b及び反射板4cを収納する筐体4dとを有して構成される。反射板4cは、光源4aからの光を広げるようにも機能する。光照射装置4は、光学フィルタ4bに代えて、または光学フィルタ4bと共に、ガラス板を光照射装置4からの光出射部に設けてもよい。
【0026】
光源4aは、光Lを照射する光源であればよく、例えば、耐候性試験に用いられるカーボンアーク、高圧水銀、キセノンランプ、メタルハライドなどを単独で又は2つの異なった種類の光源を組み合わせて使用することができる。光源4aは、LED光源やレーザー光源であってもよい。但し、光源4aとしては、太陽光の波長に最も近いキセノンを使用することが好ましい。また、光源4aから照射される光は、波長300nm~400nmの範囲の光を含んでいることが好ましく、少なくとも波長300nm~400nmの範囲の一部の光を含んでいることが好ましい。光源4aから照射される光のスペクトル形状は、太陽光のスペクトル形状に近いことが好ましく、300nmよりも短い波長の光は、含んでいてもよいが、光学フィルタ4bによりカットした方が好ましい。また、光源から照射される光Lにおいて、波長400nmよりも長い波長の光は、試料Sを劣化させる直接の要因とはならないものの、特に赤外部の波長の光は試料Sを加熱するなどの作用があるため、残してもよい。一方、試料Sの温度調整は上述した温度調整器13等で行うことから、光Lによる加熱の影響を排除するため、波長400nmより大きい赤外光を光学フィルタ4bでカットしてもよい。
【0027】
光照射装置4は、光源4aからの光Lを光出射部である光学フィルタ4bから外に出射させる際に、反射板4cを調整して当該光Lが放射状に広がるように構成されている。反射板4cによる光Lの照射の広がりの調整は、例えば、反射板4cの形状や配置を変えることによって行うことができる。詳細は後述するが、耐候性試験装置1では、光照射装置4からの光Lの照度が試料S(試験領域T)において均一になるように(複数の試料Sを試験する場合は各試料Sでの照度が同じになるように)、光Lの広がり幅を調整している。また、光照射装置4から照射される光Lの光量は太陽光よりも高光量であればよく、例えば、光源4aから照射される光のうち波長365nmの光量において、試料Sの直上において15mW/cm以上60mW/cm以下であることが好ましい。試料Sに照射される光の光量をこのような範囲にするには、光源4aの出力を調整したり、光源4aから照射された光を石英ガラス等で減衰したり、または、両者を組み合わせたりして調整することができる。なお、ここでいう「光量」は、波長365nmでの光量を測定する装置(例えば、ウシオ電機株式会社製のUIT-250 受光器UVD-S365)で測定した値であり、波長365nmを絶対値校正波長とした波長分布であり、例えば感度波長域310nm~390nmの幅の光量を検出した値である。
【0028】
ガス導入管5は、加圧容器2の外からのガスを加圧容器2内に導入するための管であり、加圧容器2内の雰囲気を変えたり、圧力を高めたりするための部材である。ガス導入管5から加圧容器2内に導入されるガスは、少なくとも圧力調整器8で設定された圧力以上の圧力で加圧容器2内に導入される。ガス導入管5から導入されるガスは、例えば、酸素ガス又は窒素ガス若しくは酸素ガスと窒素ガスとが混合したガスであってもよい。ガス導入管5には、マスフローコントローラ(不図示)を設けて、導入するガスの流量を調整するようにしてもよいし、二種以上のガスを導入する場合には、ガス混合器(不図示)を設けて、導入するガスの切替えや混合等を行ってもよい。
【0029】
加湿器6は、例えばガス導入管5に接続されており、加湿器6内の水をバブリングし、ガス導入管5により導入されるガスを加湿する装置である。加湿器6により、加圧容器2内の湿度が所定の範囲に設定される。なお、加湿器6と加圧容器2との間又は加圧容器2内に湿度計(不図示)を設けて、湿度計からの湿度情報に基づいて加湿器6による加湿を制御部15等により制御してもよい。
【0030】
ガス排気管7は、加圧容器2内のガスを排出するための管である。ガス排気管7には、圧力調整器8が取り付けられており、圧力調整器8により加圧容器2内の圧力が設定した圧力に保持される。圧力調整器8は、加圧容器2内の圧力が設定した圧力以上になったことが検出部14等により検出されると、制御部15の制御により、圧力調整器8内のバルブを開き、設定した圧力になるように圧力を調整する。
【0031】
水噴霧管9は、加圧容器2内に設置された試料Sに水を噴霧するための部材である。水噴霧管9は、加圧容器2の外から供給された水を水流量調整器10により流量を調整した後、加圧容器2内において試料Sに噴霧する。水流量調整器10は、水噴霧管9から試料Sに噴霧される水の量を調整する装置であり、必要な量に応じて水量を設定する。加圧容器2内の水噴霧管9の先端には、スプレーノズルが取り付けられており、このスプレーノズルにより水を試料Sの全体に噴霧(スプレー状、ミスト状、シャワー状)できるようになっている。水流量調整器10による調整で、このスプレーノズルから噴霧する水の勢いを調整することも可能である。水噴霧管9及び水流量調整器10による噴霧装置は、実環境下での雨を模した装置であり、噴霧する水は、純水、水道水、酸性雨を模したペーハー(pH)を調整した水、金属イオンを含んだ水、またはこれらを混合した水、または過酸化水素水等であってもよい。
【0032】
排水管11は、加圧容器2内において水噴霧管9から噴霧された水を加圧容器2の外に排出するための部材である。排水管11には、排水弁12が取り付けられており、排水弁を動作させることにより、不要な水を排出する。排水弁12は、耐候性試験中は通常閉じた状態であり、加圧容器2内の圧力や雰囲気(酸素ガス濃度等)を保つように制御されている。排水弁12は、水位センサ(不図示)や時間等によって所定の条件が満たされた場合、制御部15の制御により開かれて、これにより、加圧容器2内の不要な水等が容器の外に排出される。排水弁12は、水位センサによる条件が解消したり、所定の時間が経過すると、制御部15による制御で再び閉じられる。
【0033】
検出部14は、加圧容器2内の各種の状態を検出するセンサであり、例えば、湿度、温度(内部温度または試料温度)、圧力、ガス濃度、ガス流量、上述した水位等の何れか1つを検出する。検出部14は、検出した情報(検出値)を制御部15に出力する。
【0034】
制御部15は、耐候性試験装置1の動作全体を制御する装置であり、例えば、CPU等を備えたコンピュータから構成される。制御部15は、ガス導入管5のマスフローコントローラ、加湿器6、圧力調整器8、水流量調整器10、排水弁12、温度調整器13、及び、検出部14に配線等を介して電気的に接続されている。制御部15は、検出部14等から検出されるガスの導入流量、加圧容器2内の気圧や温度、湿度、水位等に基づいて、ガス導入管5のマスフローコントローラ、加湿器6、圧力調整器8、水流量調整器10、排水弁12及び温度調整器13の動作を制御する。制御部15による制御により、耐候性試験装置1内に配置される試料Sが所定の環境に配置される。また、制御部15は、加圧容器2の外に配置されている光照射装置4にも配線等を介して電気的に接続されており、照射する光Lの光量や照射時間や間隔等が制御されている。
【0035】
制御部15による制御では、具体的には、ガス導入管5のマスフローコントローラや圧力調整器8等を制御して、ガス導入管5から導入するガスの濃度や加圧容器2内の圧力を調整する。例えば、ガス導入管5から導入するガスを加圧して、当該ガスに含まれる酸素分圧を大気中の酸素分圧よりも大きくなるようにしてもよい。また、制御部15は、ガス導入管5によって導入される酸素ガスと窒素ガス(不活性ガス)を任意の濃度となるようにマスフローコントローラを制御してガスを混合してもよい。更に、制御部15は、ガス導入管5によって導入される酸素ガスと窒素ガス(不活性ガス)を任意の濃度に混合した後、圧縮ポンプなどで加圧容器2内に導入された混合ガスを加圧してもよい。なお、耐候性試験装置1による耐候性試験においては、導入される酸素ガスの濃度は大気中の酸素濃度よりも高濃度であることが好ましく、例えば、加圧容器2内の気体全体に対して、体積比で20%~100%であってもよい。
【0036】
また、制御部15による制御において、圧力調整器8による加圧容器2内の気圧はゲージ圧で1MPa以下となるように調整されることが好ましい。この時に加圧下に導入するガスの酸素濃度は、加圧前の酸素濃度として1%~100%のガスが好ましい。さらに好ましくはゲージ圧で0.5MPa以下が好ましい。この加圧下に導入するガスの酸素濃度は、加圧前の酸素濃度として4%~100%のガスが好ましい。このように気圧を抑えることにより、加圧容器2の容器厚さを低減することができ、その結果、加圧容器2や耐候性試験装置1の小型化や軽量化を図ることができる。
【0037】
また、制御部15は、加湿器6を制御して、実環境下における湿度による耐候性を再現するようにしてもよい。制御部15による湿度の調整は、検出部14によって検出される湿度の情報に基づいて加湿器6による導入ガスへの加湿を行うことにより行われる。耐候性試験装置1での加湿は、ある程度の加湿が行われればよいが、加圧容器2内の湿度が40%~100%であることが好ましく、湿度が50%~100%であることがより好ましい。制御部15は、このような湿度範囲となるように加湿器6を制御する。なお、促進耐候性試験を行う場合には、実環境下における太陽光に含まれる紫外線量により試料が劣化する際に必要な酸素量に対して、耐候性試験装置1の光照射装置4から照射される紫外線量の光量に応じて加圧容器2内の酸素濃度を選択することが好ましい。さらに、試料S内部への酸素の拡散を促進するために、加圧容器内の圧力を高めることにより、試料Sの劣化を促進することが可能となる。
【0038】
ここで、図3及び図4を参照して、耐候性試験装置1における光照射装置4からの光Lの広がり及び試料保持部3と光照射装置4との配置関係について説明する。図3は、光照射装置4から照射される光Lの広がり、及び、光照射装置4と試料保持部3との配置関係を示す図である。図4は、試料保持部3における試験領域Tを示す平面図である。図3に示すように、試料保持部3と光照射装置4とは、光照射装置4から外に光Lが出射する光学フィルタ4bから試料保持部3の表面までの距離がdとなるように対向して配置されている。ここでいう距離dは、例えば1m以下であり、70cm以下であってもよく、50cm以下であってもよい。光照射装置4からの光Lは、光源4aからの光が反射板4c(図2を参照)によって反射されて広がるように調整されている。光Lは、光学フィルタ4bから試料保持部3に向かって照射されると、光学フィルタ4bの外縁から試料保持部3に垂直に向かう仮想面T1によって試料保持部3上において画定される外縁B(第1外縁)と、試料Sに光を照射して耐候性試験を実施するための試料保持部3上における試験領域Tの外縁を画定する外縁C(第2外縁)との幅が広がり幅x(幅x)となるように、広がるようになっている。
【0039】
この耐候性試験装置1では、外縁Bと外縁Cとの幅xが光照射装置4(光学フィルタ4b)から試料保持部3までの距離dの0.5以下となるように調整されている。この調整は、光源4aからの光を反射板4cで反射させる方向や光量を調整したり、試料保持部3に対する光照射装置4(光学フィルタ4b)の位置を調整したり、もしくは、これらの両方の調整を行うことによって実現することができる。より好適には、外縁Bと外縁Cとの間の広がり幅xが光照射装置4(光学フィルタ4b)から試料保持部3までの距離dの0.28以下となるように調整されている。なお、ここでいう広がり幅xは、例えば、50cm以下であってもよく、35cm以下であってもよく、20cm以下であってもよい。外縁Cによって画定される領域が、耐候性試験のための試験領域Tとなり、本発明者らの検討によれば、この試験領域T内に試料Sを配置すると、光照射装置4から照射される光Lの照度ムラが低減されて、均一な光での耐候性試験を行うことができるようになっている。図4には、外縁Bによって画定される試験領域T3と、外縁Bと外縁Cとの間の枠状部分によって画定される試験領域T4とが示されているが、試験領域Tは、これら試験領域T3と試験領域T4との両方を含む領域である。また、図3及び図4では、試料保持部3の上面の全体が試験領域Tとされているが、試験領域Tは、試料保持部3の上面よりも小さい領域であってもよい。
【0040】
次に、上述した構成の耐候性試験装置1を用いた耐候性試験方法について説明する。耐候性試験方法では、まず耐候性試験に用いる試料Sを準備する。試料Sは1つでもよいし、複数であってもよい。また、試料Sは、後述する化粧シートに限らず、各種の無機材料や有機材料からなる部材であってもよく、特に限定されない。このような試料Sが準備されると、加圧容器2の蓋2bを取り外して、試料保持部3における試験領域T内に1つ又は複数の試料Sを貼り付ける等により保持させる。その後、蓋2bを収納部2aに気密に取り付けてボルト等により固定する。これにより試料Sが収納された加圧容器2が密閉状態となる。
【0041】
続いて、制御部15の制御により、圧力調整器8による圧力を設定すると共に、ガス導入管5から所定流量のガス(酸素ガスや窒素ガス)を加圧容器2内に導入する。導入するガスの濃度や圧力(分圧)が所定の値となるように制御される。また、制御部15による水流量調整器10の制御により水量が調整された水が水噴霧管9のノズルから試料Sに連続的に又は所定の周期で供給される。更に、制御部15の制御により、温度調整器13が温度調整を行い、試料Sを所定の温度(例えば80℃)に保温する。この状態で、耐候性試験装置1では、光照射装置4から所定の光Lが石英ガラス板16を介して加圧容器2内に照射され、試料Sが照射される。
【0042】
続いて、このような光の照射、加圧、温度調整、及び水の供給を続けた状態を継続的に行って試料Sの劣化状態を試験する。このような試験は、例えば、3ヶ月~6ヶ月間連続して行ってもよいし、6ヶ月以上又は1年以上継続してもよい。また、所定の加圧及び温度調整を行った状態で、光の照射、水の噴霧等を所定の周期で繰り返してもよい。このような試験方法としては、実環境下での試験と同様となるように適宜、選択され得るものであり、例えば、光照射装置4によって試料Sに光を一定時間照射する工程と、液体を試料Sに一定時間噴霧する工程と、試料Sに光を照射せずに一定時間放置する工程とを繰り返すようにしてもよい。
【0043】
なお、実環境下での試料の劣化は光が要因となる劣化だけでなく、雨や大気中に含まれる水分(湿度)による試料の劣化もある。試料表面に雨や湿度等により付着した水は、試料表面から試料内部へと拡散していき加水分解等により試料が劣化する。そこで、耐候性試験装置1では、光源の光量と酸素の関係と同様に、水による劣化を促進させるために、水噴霧の量、加圧容器2内の湿度も選択することができるようになっている。さらに加圧容器2内を加圧することにより、試料内部への水の拡散を促進させている。また、光照射により劣化した試料と酸素との反応、水による加水分解反応をさらに促進させるために試料Sの温度を変更できるようにもなっている。この試料の温度は、光照射装置4からの光の光量に基づいて調整されるようであってもよい。耐候性試験装置1では、これら光量、酸素濃度、圧力、水、湿度、温度を適切に選択することにより、光による劣化と水による劣化とがバランスよく進行し、例えば光による影響のみを強く受けるといったような弊害を受けることなく、実環境下で長期間かけて行ったものと同様な耐候性試験結果を短期間で得ることが可能となる。
【0044】
以上、耐候性試験装置1では、光照射装置4は、試料保持部3に向かって光Lが広がって照射されるように構成されている。この場合、耐候性試験に用いる光Lを広げて試料Sに照射するため、光源4aを大きくする必要がなく、装置の大型化を防止することができる。これに加え、耐候性試験装置1では、外縁Bと外縁Cとの間の広がり幅xが光出射部である光学フィルタ4bから試料保持部3までの距離dの0.5以下である。光照射装置4から照射される光Lが試料保持部3に向かって広がると、照射された光Lの外縁部分の照度が中央部分Aの照度より低下し、照度ムラが生じる虞がある。しかしながら、本発明者らの検討によれば、耐候性試験を実施するための試験領域の外縁Cを上述した範囲とすることにより、このような照度ムラを低減できることが判った。よって、耐候性試験装置1によれば、装置の大型化を防止しつつ耐候性試験を行う際の照度ムラを低減することができる。更に、耐候性試験装置1では、試料Sに照射される光Lの照度ムラが低減されるため、耐候性試験の最中(例えば3ヶ月~6カ月の間)、照度ムラをならすための試料Sの配置換え等の作業を行わなくてよくなる。これにより、より正確な耐候性試験結果をより少ない作業量で得ることが可能となる。
【0045】
本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光照射装置4から外に光Lが出射する光出射部として、光学フィルタ4bまたはガラス板が設けられている。光出射部として光学フィルタ4bを設けることにより、光照射装置4から出射される光Lの波長を耐候性試験に好適なものに容易にすることができる。また、光出射部としてガラス板を設けることにより、光照射装置4から光Lを照射する領域(例えば開口部)を閉じた状態として、光照射装置4内に粉塵等が浸入することを防止できる。光学フィルタ4bがこの機能(粉塵等の浸入防止)を更に備えていてもよい。
【0046】
本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光出射部である光学フィルタ4bから試料保持部3までの距離dが70cm以下であってもよい。この場合、耐候性試験を行う際の照度ムラを低減しつつ、耐候性試験装置1を小型化することができる。
【0047】
本実施形態に係る耐候性試験装置1では、外縁Bと外縁Cとの間の広がり幅xが35cm以下であってもよい。この場合、耐候性試験を行う際の照度ムラの低減をより確実に行うことができる。
【0048】
本実施形態に係る耐候性試験装置1では、試料Sに照射される光の光量が15mW/cm以上60mW/cm以下であることが好ましい。この場合、高光量の光を試料Sに照射することができるため、耐候性試験を容易に促進することが可能となる。また、このような光量の照射を行うランプとしてキセノン(Xe)ランプを使用した場合、キセノンランプから照射される光の波長の波形は太陽光の波形に近いため、実環境下での試験に近い試験結果を容易に得ることが可能となる。即ち、上述した範囲の光量を照射する光源としてキセノンランプを用いることにより、実環境下での耐候性試験を再現した試験結果を早期に得ることが可能となる。
【0049】
本実施形態に係る耐候性試験装置1では、光照射装置4の光源4aからの光Lは、少なくとも波長300nm~400nmの範囲の光を含むことが好ましい。この場合、太陽光に含まれていて材料等の劣化に影響を与えやすい紫外線を照射光に含むことになり、実環境下での試験を再現した試験結果を容易に得ることが可能となる。
【0050】
本実施形態に係る耐候性試験装置1は、加圧容器2内に酸素ガスを含む気体を導入するガス導入管5と、加圧容器2内の気圧を調整する圧力調整器8と、気体を加湿する加湿器6と、加圧容器2内において試料Sに液体を噴霧する水噴霧管9と、試料Sの温度を調整する温度調整器13と、気体の導入量、気圧、気体の湿度、及び試料の温度の少なくとも1つを検出する検出部14と、検出部14による検出値に基づいて、ガス導入管5、圧力調整器8、加湿器6、水噴霧管9、及び、温度調整器13を制御する制御部15と、を更に備えている。この場合、熱、水(雨)、酸素による試料Sの劣化を評価する耐候性試験をより具体的に行うことができ、また加圧することによりその耐候性試験を促進することが可能となる。即ち、上記の構成によれば、酸素による試料Sの劣化が促進され、光照射による劣化と、酸素、水(雨)、温度等による劣化とをバランスよく進行させることができ、実環境下で長時間かけて行った耐候性試験と同様の試験結果をより短時間で再現することが可能となる。
【0051】
本実施形態に係る耐候性試験装置1では、制御部15は、ガス導入管5から導入される酸素ガスの気体全体に対する濃度が20%以上100%以下となるように、ガス導入管5のマスフローコントローラを制御してもよい。この場合、より実環境下に近い耐候性試験の結果を得ることができる。
【0052】
本実施形態に係る耐候性試験装置1では、制御部15は、ガス導入管5から導入される酸素ガスの酸素分圧が0.2MPa以上0.9MPa以下となるように、ガス導入管5のマスフローコントローラ及び圧力調整器8を制御してもよい。この場合、酸素による劣化を更に促進させて、実環境下に近い耐候性試験を更に促進することが可能となる。なお、ここで用いる「酸素分圧」は、大気圧を0MPaとした場合の装置内の酸素分圧の値である。
【0053】
また、本実施形態に係る耐候性試験方法は、試料保持部3における試験領域T内に試料Sを保持させる工程と、光照射装置4からの光Lを試料Sに照射する工程と、を備える。このような耐候性試験方法によれば、耐候性試験を行う際の照度ムラを低減して試料を一様に劣化させ、これにより、適切な試験結果を容易に得ることが可能となる。
【0054】
以上、本実施形態に係る耐候性試験装置及び耐候性試験方法について説明してきたが、本発明に係る耐候性試験装置及び耐候性試験方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形を適用することができる。例えば、上記実施形態では、光照射装置4の反射板4cにより試料Sに照射される光Lが広がるように構成されているが、図5に示す構成の光学系を有する耐候性試験装置1Aを用いることが可能である。耐候性試験装置1Aは、光照射装置4Aと加圧容器2等を備えており、光照射装置4Aが上述した光照射装置と相違している。他の構成は、上述した耐候性試験装置1と同様であるため、説明を省略する。この変形例に係る光照射装置4Aは、光源40、反射板41、ハーフミラー42、コリメートレンズ43、反射ミラー44、及び、レンズ45(光出射部)を備えている。
【0055】
光照射装置4Aでは、光源40(例えばキセノンランプ)から照射された光L1が反射板41で一部反射しつつハーフミラー42へと進む。ハーフミラー42では、光L1のうち一部の波長の光(例えば紫外光)は反射させつつ不要な波長の光を透過させて反射させず、紫外線を中心とした光を光L2としてコリメートレンズ43に向かって伝搬する。コリメートレンズ43では、入射した光L2を平行光(コリメート光)L3に変換して反射ミラー44で反射させ、レンズ45から光を照射する。このレンズ45は、光L3をある程度広げるように機能するレンズであり、この広がった光L4を試料Sに対して照射する。このような光照射装置4Aを含む耐候性試験装置1Aにおいても、外縁Bと光の広がり部分を示す外縁Cとの間の広がり幅xがレンズ45から試料保持部3までの距離dの0.5以下となるように(好ましくは距離dの0.28以下となるように)されていることにより、耐候性試験として用いられる光Lの照射において照度ムラが低減される又は略生じないようにすることができる。
【実施例0056】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
[照度ムラの有無の評価]
(実施例1)
図1に示す構成の耐候性試験装置1を準備した。光源4aとしてはキセノン光源を用い、光源4aからの光Lの光量は試料Sの直上において30mW/cmとなるように設定した。また、光照射装置4の光出射部である光学フィルタ4bと試料保持部3との距離dを50cmに設定した。更に、光照射装置4の反射板4cを調整し、光照射装置4からの光Lの広がり、即ち、図3における広がり幅xが0(ゼロ)となるように設定した。この状態で、目視により、照射エリア(試験領域T)の外縁Cと中央部分Aの照度の違い(照度ムラ)を判定した。なお、光照射装置4から試料保持部3に照射される光Lの光量(照度)測定をより精度よく行うには、例えばウシオ電機社製UNIMETER(本体UIT-250)及びセンサ(UVD-S365)を使用することができる。具体的には、試料保持部3の上であって図4の白丸部分(中央部分Aと外縁C)のそれぞれに各センサ(UVD-S365)を設置し、当該部分での光量を測定し、以下の式(1)から照度ムラ(%)を算出することができる。
照度ムラ(%)=((MAX-MIN)/(MAX+MIN))×1/100・・・(1)
ここでいう、「MAX」は、最も高い照度部分(一例として、中央部分Aでの照度)であり、「MIN」は、最も低い照度部分(一例として、外縁Cでの照度)である。
【0058】
(実施例2)
実施例2として、広がり幅xの距離dに対する比率が0.15となるように調整した以外は実施例1と同じ条件で、照度ムラを判定した。
【0059】
(実施例3)
実施例3として、広がり幅xの距離dに対する比率が0.25となるように調整した以外は実施例1と同じ条件で、照度ムラを判定した。
【0060】
(実施例4)
実施例4として、広がり幅xの距離dに対する比率が0.30となるように調整した以外は実施例1と同じ条件で、照度ムラを判定した。
【0061】
(実施例5)
実施例5として、広がり幅xの距離dに対する比率が0.40となるように調整した以外は実施例1と同じ条件で、照度ムラを判定した。
【0062】
(実施例6)
実施例6として、広がり幅xの距離dに対する比率が0.50となるように調整した以外は実施例1と同じ条件で、照度ムラを判定した。
【0063】
(比較例1)
比較例1として、広がり幅xの距離dに対する比率が0.60となるように調整した以外は実施例1と同じ条件で、照度ムラを判定した。
【0064】
(比較例2)
比較例2として、広がり幅xの距離dに対する比率が0.80となるように調整した以外は実施例1と同じ条件で、照度ムラを判定した。
【0065】
(比較例3)
比較例3として、広がり幅xの距離dに対する比率が1.00となるように調整した以外は実施例1と同じ条件で、照度ムラを判定した。
【0066】
以下の表1に、実施例1~6における照度ムラの有無の結果と比較例1~3における照度ムラの有無の結果について示す。表1から明らかなように、外縁Bと外縁Cとの間の広がり幅xが光出射部である光学フィルタ4bから試料保持部3までの距離dの0.5以下である場合、照度ムラが低減できることが判った。また、外縁Bと外縁Cとの間の広がり幅xが光出射部である光学フィルタ4bから試料保持部3までの距離dの0.28以下である場合(実施例1~3の場合)、照度ムラが更に低減できる、即ち、照度ムラが無い状態にすることができることが判った。
【0067】
【表1】
【0068】
[耐候性試験における評価]
次に、図6に示す構成の化粧シートを試料Sとして用いて実際の耐候性試験を行った。試験装置は、上記の試験と同様に、耐候性試験装置1を用いた。この試験では、試料Sの中央部分(中央部分Aに対応)と外縁(外縁Cに対応)での外観変化の違いの有無と、試料Sの中央部分での外観変化(退色)が生じるまでの時間とを評価した。
【0069】
<透明樹脂シートの作製>
高結晶化ホモポリプロピレン樹脂に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(イルガノックス1010:チバスペシャリティケミカルズ社製)を500PPMと、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(チヌビン328:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、ヒンダードアミン系光安定剤(キマソーブ944:チバスペシャリティケミカルズ社製)を2000PPMと、リン酸エステル金属塩系造核剤(アデカスタブNA-21:ADEKA社製)を1000PPMとを添加した樹脂を溶融押出機を用いて押し出し、透明樹脂シート101(樹脂層)として使用する厚さ100μmの高結晶性ポリプロピレン製の透明樹脂シートを製膜した。続いて、製膜された透明樹脂シート101の両面にコロナ処理を施して表面の濡れを40dyn/cm以上とした。なお、押し出し製膜時の押出温度やロールなどの冷却条件を変えることにより、種々の透明樹脂シートを作製した。
【0070】
<化粧シートの作製>
得られた透明樹脂シートによる透明樹脂シート101の片面に、2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)にて絵柄印刷を行い、絵柄層102を施した後、絵柄層102に重ねて隠蔽性のある2液硬化型ウレタンインキ(V180:東洋インキ製造(株)製)を塗布量6g/mにて塗布して隠蔽層103を施した。また、隠蔽層103に重ねて、プライマーコートとして2液硬化型ウレタンインキ(PET-E、レジウサー:大日精化(株)製)を塗布量1g/mにて塗布してプライマー層105を形成した。
【0071】
次に、このシートの透明樹脂シートによる透明樹脂シート101の面に、エンボス用の金型ロールを用いてプレスしてエンボス模様101aを施した後、エンボス模様101a面上に2液硬化型ウレタントップコート(W184:大日本インキ(株)製)を塗布量3g/mにて塗布して、コート層104を含み総厚110μmの化粧シート100を得た。この化粧シート100を、ウレタン系の接着剤を用いて金属基材に貼り合わせた後、前述した耐候性試験機にて耐候性を評価した。広がり幅xの距離dに対する比率は、前述した照度ムラの有無の評価と同じものとした。即ち、実施例11における広がり幅xの距離dに対する比率は0であり、実施例12における広がり幅xの距離dに対する比率は0.15であり、実施例13における広がり幅xの距離dに対する比率は0.25であり、実施例14における広がり幅xの距離dに対する比率は0.30であり、実施例15における広がり幅xの距離dに対する比率は0.40であり、実施例16における広がり幅xの距離dに対する比率は0.50である。同様に、比較例11における広がり幅xの距離dに対する比率は0.60であり、比較例12における広がり幅xの距離dに対する比率は0.80であり、比較例13における広がり幅xの距離dに対する比率は1.00であった。なお、耐候性試験の結果の評価では、メタルウェザー(商品名:ダイプラ・メタルウェザ、ダイプラ・ウィンテス株式会社製)を用いた評価である比較例14も準備した。
【0072】
耐候性試験は、光照射試験と同様に、光源4aを加圧容器2の外部に配置した耐候性試験装置1でおこなった。光量は、光量計(UIT-250)、センサ(UVD-S365)を用いて、30mW/cmとなるように、光量を調整した。化粧シート100は、加圧容器2内に設置された試料保持部3の試験領域T内に配置し、加圧容器2内の圧力を0.5MPaとし、加圧容器2内の酸素濃度は100%とした。加圧容器2内の湿度は60%とし、試料温度は、光照射時は60℃で、未照射時は30℃となるように、試料保持部3の温度と導入ガスの温度とを制御した。光照射時間は20時間、未照射時間は4時間とし、未照射時間の開始時に試料Sである化粧シート100に水噴霧を1分間行った。光照射と未照射とを1サイクル(1サイクル24時間)とし、化粧シート100の外観に変化が生じたときに中心部と外縁部との外観変化の違いの有無(退色の有無)を比較した。評価結果は、以下の表2に示す通りであった。なお、比較例14では、メタルウェザーを用いた点と照射される光の光量が65mW/cmとした以外は、実施例11等と同じ条件であった。
【0073】
【表2】
【0074】
表2に示すように、光照射装置4からの光Lの広がり幅xが、光照射装置4から試料保持部3までの距離dの0.5以下の場合(実施例11~16)、光Lが照射されているエリア(試験領域T)において、均一に外観変化が生じ、従来の耐候性試験よりも短時間で外観変化を生じさせることができた。また、光照射装置4からの光Lの広がり幅xが、光照射装置4から試料保持部3までの距離dの0.28倍以下の場合(実施例11~13)、光Lが照射されているエリア(試験領域T)において、更に均一に外観変化が生じ、従来の耐候性試験よりも短時間で外観変化を生じさせることができた。
【符号の説明】
【0075】
1,1A…耐候性試験装置、2…加圧容器、3…試料保持部、4,4A…光照射装置、4a,40…光源、4b…光学フィルタ(光出射部)、45…レンズ(光出射部)、B…外縁(第1外縁)、C…外縁(第2外縁)、d…距離、x…広がり幅(幅)、S…試料、T…試験領域、T1…仮想面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6