(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167559
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】射出成形機の可塑化制御方法及び装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20241127BHJP
B29C 45/84 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B29C45/76
B29C45/84
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083725
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000227054
【氏名又は名称】日精樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 博文
(72)【発明者】
【氏名】荻原 春雄
(72)【発明者】
【氏名】春日 信一
(72)【発明者】
【氏名】青木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】菊地 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】池田 將雄
(72)【発明者】
【氏名】依田 芳野
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM04
4F206AM09
4F206AM23
4F206AR04
4F206AR09
4F206JA07
4F206JD01
4F206JF01
4F206JF47
4F206JL02
4F206JL07
4F206JL09
4F206JM01
4F206JN03
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP15
4F206JP22
4F206JP27
4F206JQ11
4F206JQ88
(57)【要約】
【課題】 無用な剪断熱の発生を抑制し、成形品の、変色,黄ばみ,焼け等の発生を防止して成形品質を飛躍的に高める。
【解決手段】 加熱筒2に挿入したスクリュ3を回転制御することにより加熱筒2に投入した成形材料を可塑化処理する可塑化工程(Sa)を備えるとともに、可塑化処理した溶融樹脂をスクリュ3の前進制御により所定の金型70に射出充填して成形を行う射出成形機Mの可塑化制御方法であって、予め、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクTに対するトルク目標値Ts及びスクリュ回転数Rの上限リミット値Ruを設定し、可塑化処理時に、トルク目標値Tsに対する優先制御を行いつつスクリュ3の回転制御を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒に挿入したスクリュを回転制御することにより前記加熱筒に投入した成形材料を可塑化処理する可塑化工程を備えるとともに、可塑化処理した溶融樹脂を前記スクリュの前進制御により所定の金型に射出充填して成形を行う射出成形機の可塑化制御方法において、予め、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクに対するトルク目標値及びスクリュ回転数の上限リミット値を設定し、前記可塑化処理時に、前記トルク目標値に対する優先制御を行いつつ前記スクリュの回転制御を行うことを特徴とする射出成形機の可塑化制御方法。
【請求項2】
前記成形材料には、パウダー状樹脂材料を含むことを特徴とする請求項1記載の射出成形機の可塑化制御方法。
【請求項3】
前記可塑化工程のスクリュ回転時に、前記スクリュの回転状態を監視し、前記スクリュの回転異常が生じたときはエラー処理を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の射出成形機の可塑化制御方法。
【請求項4】
前記回転異常には、スクリュ回転数に対して設定した下限リミット値を下回る状態を含むことを特徴とする請求項3記載の射出成形機の可塑化制御方法。
【請求項5】
加熱筒に挿入したスクリュを回転制御することにより前記加熱筒に投入した成形材料を可塑化処理するとともに、可塑化処理した溶融樹脂を前記スクリュの前進制御により所定の金型に射出充填して成形を行う成形機コントローラを備える射出成形機の可塑化制御装置において、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクに対するトルク目標値及びスクリュ回転数の上限リミット値を設定する成形条件設定機能部と、前記可塑化処理時に、前記トルク目標値に対する優先制御を行いつつ前記スクリュの回転制御を行う可塑化制御機能部とを有する前記成形機コントローラを備えてなることを特徴とする射出成形機の可塑化制御装置。
【請求項6】
前記成形機コントローラは、ディスプレイを備え、このディスプレイに、可塑化処理時における、少なくとも、スクリュ位置,スクリュ回転トルク,スクリュ回転数の一又は二以上の変化データをグラフィック表示部によりグラフィック表示する可塑化時表示機能部を備えることを特徴とする請求項5記載の射出成形機の可塑化制御装置。
【請求項7】
前記成形機コントローラは、前記可塑化時表示機能部と、成形時における、少なくとも、射出速度,射出圧力,金型のパーティング開量の一又は二以上の変化データを通常波形表示部によりグラフィック表示する通常表示機能部と、を切換可能又は合成可能なグラフィック表示変更機能部を備えることを特徴とする請求項6記載の射出成形機の可塑化制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱筒に挿入したスクリュを回転制御して前記加熱筒に投入した成形材料を可塑化処理する可塑化工程を備える射出成形機の可塑化制御方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱筒に挿入したスクリュを回転制御することにより当該加熱筒に投入した成形材料を可塑化処理する可塑化工程を備えるとともに、可塑化処理した溶融樹脂をスクリュの前進制御により所定の金型に射出充填して成形を行う射出成形機は広く普及しているとともに、特に、射出成形機における可塑化制御方法としては、特許文献1に記載される射出成形機の制御方法及び特許文献2に記載される射出成形機の計量制御方法が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の制御方法は、計量終了時に、スクリュの回転及び後退の双方を的確に停止させ、樹脂密度が均一化された高度の計量精度を確保することを目的としたものであり、具体的には、予め、スクリュ回転停止位置に所定距離を付加した停止目標位置及びスクリュを回転させる回転速度パターンを設定するとともに、計量時に、所定時間間隔毎にスクリュ位置を検出し、検出したスクリュ位置から停止目標位置でスクリュの回転を停止させる残りの回転速度パターンを演算により予測するとともに、予測した回転速度パターンによりスクリュを回転制御し、スクリュがスクリュ回転停止位置に達したならスクリュに対する回転停止制御を行い、かつスクリュの後退速度が予め設定した所定速度になったならスクリュに対する後退停止制御を行うようにしたものである。
【0004】
また、特許文献2に記載の計量制御方法は、射出容量の小さい射出成形機により超エンジニアリングプラスチックス等を成形する際に正常な計量動作を確保し、成形品質の向上及び生産性向上を図ることを目的としたものであり、予め、計量中における射出スクリュの後退速度(計量時間)に対する上限値及び/又は下限値を設定するとともに、計量時に、射出スクリュの後退速度(計量時間)を検出し、当該後退速度(計量時間)が上限値及び/又は下限値を外れた際に、射出スクリュの回転を設定時間、具体的には、成形材料の可塑化不足を解消する設定時間だけ停止させ、この後、射出スクリュを再回転させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-118406号公報
【特許文献2】特開平10-24468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の射出成形機における可塑化制御方法は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0007】
即ち、可塑化工程では、通常、ホッパーから加熱した加熱筒の内部にペレット等の成形材料を投入するとともに、加熱筒に挿入したスクリュを回転制御して可塑化処理を行う。この場合、スクリュ回転数に対して適切な回転数(回転速度)を設定するとともに、均一な可塑化処理を実現するため、スクリュの回転数が一定に維持されるよう制御している。なお、設定する回転数には多段階も含まれる。
【0008】
ところで、加熱筒内の成形材料は、加熱された加熱筒により可塑化され、また、スクリュの回転により剪断されるため、成形材料の種類によっては、成形材料の可塑化処理時の加熱状態が大きく変動する場合がある。
【0009】
例えば、パウダー状樹脂材料の場合、パウダー状のため、成形材料自体が吸湿しやすく、また、スクリュの回転に馴染みにくい性質を有するとともに、剪断圧力も大きく変動し、可塑化されにくい性質を有する。
図8は、可塑化処理時における従来の動作状態を示すが、同図から明らかなように、スクリュ回転数Rは、設定した回転数を維持するように一定に制御されるとともに、スクリュ回転トルクTは、大きく変動する状態を示している。しかも、その変動のバラツキ幅も大きくなり、加えて、スクリュ後退位置Xも大きくバラつく状態を示している。
【0010】
剪断圧力が大きくなった場合、剪断熱も大きくなるとともに、そのバラツキ幅も大きくなるため、加熱筒内における溶融樹脂の可塑化状態のバラツキも大きくなり、溶融樹脂の可塑化品質の低下を招く。この結果、成形品における質量のバラツキが大きくなるとともに、特に、パウダー状樹脂材料の場合、成形品の変色,黄ばみ,焼け等を発生しやすいなど、成形品質を低下させてしまう難点があった。
【0011】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した射出成形機の可塑化制御方法及び装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る射出成形機Mの可塑化制御方法は、上述した課題を解決するため、加熱筒2に挿入したスクリュ3を回転制御することにより加熱筒2に投入した成形材料を可塑化処理する可塑化工程(Sa)を備えるとともに、可塑化処理した溶融樹脂をスクリュ3の前進制御により所定の金型70に射出充填して成形を行う射出成形機Mの可塑化制御方法であって、予め、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクTに対するトルク目標値Ts及びスクリュ回転数Rの上限リミット値Ruを設定し、可塑化処理時に、トルク目標値Tsに対する優先制御を行いつつスクリュ3の回転制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0013】
一方、本発明に係る射出成形機Mの可塑化制御装置1は、上述した課題を解決するため、加熱筒2に挿入したスクリュ3を回転制御することにより加熱筒2に投入した成形材料を可塑化処理するとともに、可塑化処理した溶融樹脂をスクリュ3の前進制御により所定の金型70に射出充填して成形を行う成形機コントローラを備える可塑化制御装置であって、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクTに対するトルク目標値Ts及びスクリュ回転数Rの上限リミット値Ruを設定する成形条件設定機能部Fsと、可塑化処理時に、トルク目標値Tsに対する優先制御を行いつつスクリュ3の回転制御を行う可塑化制御機能部Fcとを有する成形機コントローラ10を備えてなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、発明の好適な態様により、可塑化制御方法の実施に際し、成形材料には、パウダー状樹脂材料を含ませることが望ましい。なお、可塑化工程(Sa)のスクリュ回転時には、スクリュ3の回転状態を監視し、スクリュ3の回転異常が生じたときはエラー処理を行うことができる。この場合、回転異常には、スクリュ回転数Rに対して設定した下限リミット値を下回る状態を含ませることができる。さらに、可塑化制御装置1を構成するに際しては、成形機コントローラ10に、ディスプレイ11を設け、このディスプレイ11に、可塑化処理時における、少なくとも、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの一又は二以上の変化データをグラフィック表示部11gによりグラフィック表示する可塑化時表示機能部Fdを設けることが望ましいとともに、特に、この可塑化時表示機能部Fdには、成形時における、少なくとも、射出速度V,射出圧力Pp,金型のパーティング開量Lmの一又は二以上の変化データを通常波形表示部11nによりグラフィック表示する通常表示機能部Fnとを、切換可能又は合成可能なグラフィック表示変更機能部Fmを設けることができる。
【発明の効果】
【0015】
このような本発明に係る射出成形機M及びその成形方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0016】
(1) 予め、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクTに対するトルク目標値Ts及びスクリュ回転数Rの上限リミット値Ruを設定し、可塑化処理時に、トルク目標値Tsに対する優先制御を行いつつスクリュ3の回転制御を行うようにしたため、可塑化工程(Sa)において、剪断圧力が過度に大きくなる不具合を解消し、無用な剪断熱の発生を抑制できるとともに、そのバラツキを抑制することができる。これにより、溶融樹脂の品質を高め、特に、成形品の、変色,黄ばみ,焼け等の発生を防止して成形品質を飛躍的に高めることができる。
【0017】
(2) 好適な態様により、可塑化制御方法を実施するに際し、成形材料に、パウダー状樹脂材料を含ませれば、スクリュ3の回転に馴染みにくく、かつ吸湿性が大きいなどの性質を有し、材料品質が劣化しやすいとされるパウダー状樹脂材料の可塑化制御の制御性(成形性)を高めることができるため、パウダー状樹脂材料による成形品の、変色,黄ばみ(特に白色系の黄ばみ),焼け等の発生を防止して成形品質を大きく改善することができる。
【0018】
(3) 好適な態様により、可塑化工程(Sa)のスクリュ回転時に、スクリュ3の回転状態を監視し、スクリュ3の回転異常が生じたときはエラー処理を行うようにすれば、万が一、スクリュ回転トルクTを制限したことに伴う弊害が生じた場合であっても、当該弊害に対して適切なエラー処理を行うことができる。
【0019】
(4) 好適な態様により、スクリュ3の回転異常として、スクリュ回転数Rに対して設定した下限リミット値を下回る状態を含ませれば、特に、スクリュ回転トルクTが制限されることにより、スクリュ3が回転しなくなるなどの弊害に対して適切なエラー処理を行うことができる。
【0020】
(5) 好適な態様により、可塑化制御装置1を構成するに際し、成形機コントローラ10に、ディスプレイ11を設け、このディスプレイ11に、可塑化処理時における、少なくとも、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの一又は二以上の変化データをグラフィック表示部11gによりグラフィック表示する可塑化時表示機能部Fdを設ければ、加熱筒2の動作状態を見える化することができるため、オペレータは溶融樹脂の可塑化状態を容易かつ迅速に把握することができる。
【0021】
(6) 好適な態様により、可塑化時表示機能部Fdに、成形時における、少なくとも、射出速度V,射出圧力Pp,金型のパーティング開量Lmの一又は二以上の変化データを通常波形表示部11nによりグラフィック表示する通常表示機能部Fnとを、切換可能又は合成可能なグラフィック表示変更機能部Fmを設ければ、射出時の動作状態と可塑化時の動作状態を対比して又は同時に確認できるため、トラブルに対する予防的な事前処置,或いは成形工程全般の動作状態の的確な把握が可能になり、不良品の低減や量産性の向上に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の好適実施形態に係る可塑化制御方法を用いた生産時における可塑化工程の動作状態を説明するためのフローチャート、
【
図2】同可塑化制御方法を実施できる射出成形機の構成図、
【
図3】同可塑化制御方法を実行できる制御手段のブロック系統図、
【
図4】同可塑化制御方法の実施に用いる成形機コントローラのディスプレイに表示される画面図、
【
図5】同可塑化制御方法による変化データをグラフィック表示するグラフィック表示部の画面表示図、
【
図6】同可塑化制御方法による変化データをグラフィック表示するグラフィック表示部の他の画面表示図、
【
図7】同可塑化制御方法により成形した成形品の質量データの一覧表、
【
図8】従来の可塑化制御方法による変化データをグラフィック表示するグラフィック表示部の画面表示図、
【
図9】従来の可塑化制御方法により成形した成形品の質量データの一覧表、
【
図10】本発明の好適実施形態に係る可塑化制御方法を用いた生産時における充填前工程の処理手順を説明するためのフローチャート、
【
図11】同可塑化制御方法を用いた生産時における充填成形工程の処理手順を説明するためのフローチャート、
【
図12】同可塑化制御方法の実施に用いる成形機コントローラのディスプレイに表示される変更例に係る画面図、
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0024】
まず、本実施形態に係る射出成形機Mの全体的な主要構成について、
図2を参照して説明する。
【0025】
図2において、Mは射出成形機であり、射出装置Miと型締装置Mcを備える。射出装置Miは、前端に射出ノズル2nを、後部にホッパ2hをそれぞれ有する加熱筒2を備え、この加熱筒2の内部にはスクリュ3を挿入するとともに、加熱筒2の後端にはスクリュ駆動部23を配設する。スクリュ駆動部23は、片ロッドタイプの射出ラム24rを内蔵する射出シリンダ(油圧シリンダ)24を備え、射出シリンダ24の前方に突出するラムロッド24rsはスクリュ3の後端に結合する。また、射出ラム24rの後端には、射出シリンダ24に取付けた可塑化モータ(オイルモータ)25のシャフトがスプライン結合する。26は、射出装置Miを進退移動させて金型70に対するノズルタッチ又はその解除を行う射出装置移動シリンダを示す。これにより、射出装置Miは、射出ノズル2nを金型70にノズルタッチし、金型70のキャビティ内に可塑化した溶融樹脂を射出充填することができる。
【0026】
一方、型締装置Mcは、型締シリンダ(油圧シリンダ)27の駆動ラム27rにより可動型70mを変位させる直圧方式の油圧式型締装置を示す。この型締装置Mcは、位置が固定され、かつ離間して配した固定盤28と型締シリンダ27間に架設した複数のタイバー29…にスライド自在に装填した可動盤30を有し、この可動盤30には型締シリンダ27から前方に突出したラムロッド27rsの先端を固定する。また、固定盤28には固定型70cを取付けるとともに、可動盤30には可動型70mを取付ける。この固定型70cと可動型70mは金型70を構成する。これにより、型締シリンダ27は金型70に対する型開閉及び型締を行うことができる。
【0027】
なお、13は測距センサであり、固定型70cと可動型70m間に生じるパーティング隙間Cgを検出する機能を備える。例示する測距センサ13は、非接触方式であり、
図3に示すように、固定型70cの外側面に設置する投射部13p及び可動型70mの外側面に設置する反射部13rを備える。これにより、投射部13pから超音波或いはレーザ光等(以下、測定光)を投射し、反射部13rから反射する測定光を受光することにより、投射部13pと反射部13r間の距離、即ち、パーティング隙間Cgを計測することができる。
【0028】
他方、
図2において、35は油圧回路であり、油圧駆動源となる可変吐出型油圧ポンプ36及びバルブ回路37を備える。油圧ポンプ36は、この油圧ポンプ36の回転駆動源となるサーボモータ39を備える。40はサーボモータ39の回転数を検出するロータリエンコーダを示す。
【0029】
そして、油圧ポンプ36の吐出口は、バルブ回路37の一次側に接続し、さらに、バルブ回路37の二次側は、射出成形機Mにおける射出シリンダ24,可塑化モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31(
図2)及び射出装置移動シリンダ26に接続する。したがって、バルブ回路37には、射出シリンダ24,可塑化モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26にそれぞれ接続する切換バルブ(電磁バルブ)を備えている。なお、各切換バルブは、それぞれ一又は二以上のバルブ部品をはじめ、必要な付属油圧部品等により構成され、少なくとも、射出シリンダ24,可塑化モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に対する作動油の供給,停止,排出に係わる切換機能を有している。
【0030】
これにより、サーボモータ39の回転数を可変制御すれば、可変吐出型油圧ポンプ36の吐出流量及び吐出圧力を可変でき、これに基づいて、上述した射出シリンダ24,可塑化モータ25,型締シリンダ27,エジェクタシリンダ31及び射出装置移動シリンダ26に対する駆動制御を行うことができるとともに、成形サイクルにおける各動作工程の制御を行うことができる。このように、斜板角の変更により固定吐出流量を設定可能な可変吐出型油圧ポンプ36を使用すれば、ポンプ容量を所定の大きさの固定吐出流量(最大容量)に設定できるとともに、固定吐出流量を基本として吐出流量及び吐出圧力を可変できるため、制御系による制御を容易かつ円滑に実施できる。
【0031】
次に、本実施形態に係る射出成形機Mの可塑化制御装置1の構成について、
図2-
図6を参照して説明する。
【0032】
可塑化制御装置1は、
図2に示す成形機コントローラ10を備え、この成形機コントローラ10には、
図3に示す、コントローラ本体15,ディスプレイ11,内部メモリ16,サーボアンプ17が含まれる。
【0033】
この場合、コントローラ本体15は、CPU等のハードウェアを内蔵するコンピュータ機能を備える。また、ディスプレイ11は、ディスプレイ本体11m及びこのディスプレイ本体11mに付設したタッチパネル11tを備え、このディスプレイ本体11m及びタッチパネル11tは表示インタフェース18を介してコントローラ本体15に接続する。したがって、このタッチパネル11tにより各種設定操作及び選択操作等を行うことができる。このディスプレイ11は、各種表示、特に、本実施形態に係る可塑化制御方法に関連して、
図4に示す工程監視画面61を表示する。この工程監視画面61は、工程監視画面切換キー61sの選択により切換えることができる。
【0034】
この工程監視画面61には、
図4に示すように、各種動作物理量の変化データをグラフィック表示するグラフィック表示部11gを備え、このグラフィック表示部11gに、可塑化処理時における、少なくとも、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの一又は二以上のデータがコントローラ本体15から送られ、各データがグラフィック表示される。この表示機能は可塑化時表示機能部Fdを構成する。
【0035】
このように、可塑化制御装置1を構成するに際し、成形機コントローラ10に、ディスプレイ11を設け、このディスプレイ11に、可塑化処理時における、少なくとも、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの一又は二以上の変化データをグラフィック表示部11gによりグラフィック表示する可塑化時表示機能部Fdを設ければ、加熱筒2の動作状態を見える化することができるため、オペレータは溶融樹脂の可塑化状態を容易かつ迅速に把握することができる。
【0036】
さらに、内部メモリ16には、各種演算処理及び各種制御処理(シーケンス制御)を実行するため制御プログラム(ソフトウェア)を含む各種プログラムを格納するプログラムエリア16pを有するとともに、各種データ(データベース)類を記憶可能なデータエリア16mが含まれ、特に、プログラムには、本実施形態に係る可塑化制御方法による可塑化処理を行うための制御プログラム(シーケンス制御プログラム)が含まれる。
【0037】
サーボアンプ17の出力部には、上述したサーボモータ39を接続するとともに、サーボアンプ17のエンコーダパルス入力部にはロータリエンコーダ40を接続する。また、
図2に示すように、成形機コントローラ10の制御信号出力ポートには上述したバルブ回路37を接続するとともに、バルブ回路37の一次側には、
図3に示す、油圧を検出する圧力センサ47及び油温を検出する温度センサ48を付設し、この圧力センサ47及び温度センサ48はコントロール本体15に接続する。さらに、測距センサ13に備える投射部13pは、コントローラ本体15におけるセンサポートに接続する。
【0038】
これにより、成形機コントローラ10は、本実施形態に係る可塑化制御方法を実現するための各種機能部、基本的には、
図3に示すように、成形条件設定機能部Fs,可塑化制御機能部Fc,可塑化時表示機能部Fd,通常表示機能部Fn,グラフィック表示変更機能部Fmとして機能する。
【0039】
この場合、成形条件設定機能部Fsは、
図5に示すように、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクTに対するトルク目標値Ts及びスクリュ回転数Rの上限リミット値Ruを設定する機能を備えるとともに、可塑化制御機能部Fcは、可塑化処理時に、トルク目標値Tsに対する優先制御を行いつつスクリュ3の回転制御を行う機能を備える。また、可塑化時表示機能部Fdは、
図4に示すように、ディスプレイ11に、可塑化処理時における、少なくとも、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの一又は二以上の変化データをグラフィック表示部11gによりグラフィック表示する機能を備えるとともに、通常表示機能部Fnは、
図12に示すように、成形時における、少なくとも、射出速度V,射出圧力Pp,金型のパーティング開量Lmの一又は二以上の変化データをグラフィック表示する機能を備える。さらに、グラフィック表示変更機能部Fmは、
図4に変更例として示すように、通常表示機能部Fnと可塑化時表示機能部Fdを、切換可能又は合成可能にする機能を備える。
【0040】
次に、本実施形態に係る可塑化制御方法を含む射出成形機Mの動作について、
図1~
図11を参照して具体的に説明する。
【0041】
最初に、本実施形態に係る可塑化制御方法の原理、即ち、同可塑化制御方法の有効性の検証結果について、
図5-
図9を参照して説明する
【0042】
検証には、成形材料として白色の硬質PVC(ポリ塩化ビニール)であって、パウダー状樹脂材料を用いた。パウダー状樹脂材料は、スクリュ3の回転に馴染みにくく、かつ吸湿性が大きいなどの性質を有し、材料品質が劣化しやすいとされるが、本実施形態に係る可塑化制御方法の場合には、パウダー状樹脂材料の可塑化制御の制御性(成形性)を高めることができるため、パウダー状樹脂材料による成形品の、変色,黄ばみ(特に白色系の黄ばみ),焼け等の発生を防止して成形品質を大きく改善することができる。また、サンプル成形品は、大型のキャップ部材である。
【0043】
図8及び
図9は、従来の制御方法、即ち、可塑化開始位置からスクリュ3に対して設定したスクリュ回転数R〔rpm〕(例示は、40〔rpm〕)になるように制御し、所定の可塑化終了位置Xeまで可塑化工程を行った場合のデータであり、
図8はその変化データをグラフィック表示した画面表示図、
図9は成形品の質量〔g〕に係わるデータの一覧表をそれぞれ示す。
図8に示すように、スクリュ回転数Rは、可塑化工程の処理中はほぼ一定の大きさを維持し、スクリュ位置Xは、ほぼ時間の経過に従って比例的に後退する状態を示している。一方、スクリュ回転トルクTは、可塑化開始から徐々に大きくなり、その後、徐々に小さくなる円弧状に変化するカーブを描く。
【0044】
検証を行ったサンプル数は、
図9に示すように「19サンプル」であり、ランダムにピックアップしたサンプルの一部を
図8に変化データとして示した。
図8及び
図9から明らかなように、従来の可塑化制御方法を用いた場合、スクリュ回転トルクTは、過度に大きくなる可能性があるとともに、そのバラツキも大きくなることを確認できる。例示の場合、
図9に示すように、標準質量3650〔g〕の製品に対して、平均値は「3647.53〔g〕」、最大値は「3652〔g〕」、最小値は「3645〔g〕」、バラツキ幅は「7〔g〕」、標準偏差は「2.11183〔g〕」、変動係数は「0.34739」となった。
【0045】
一方、本実施形態に係る可塑化制御方法では、予め、スクリュ回転トルクTに対するトルク目標値Ts(例示は、20〔MPa〕)及びスクリュ回転数Rの上限リミット値Ru(例示は、40〔rpm〕)を設定し、可塑化処理時に、トルク目標値Tsに対する優先制御を行いつつスクリュ3の回転制御を行った。
【0046】
図5及び
図7は、本実施形態に係る可塑化制御方法を用いて可塑化工程を行った場合のデータであり、
図5はその変化データをグラフィック表示した画面表示図、
図7は成形品の質量〔g〕に係わるデータの一覧表を示す。
図5に示すように、スクリュ回転数Rは、初期には、上限リミット値Ruにより回転を継続するとともに、スクリュ回転トルクTは、従来の場合と同様に、可塑化開始から徐々に大きくなる。そして、スクリュ回転トルクTが、トルク目標値Tsに達することにより、このトルク目標値Tsに制限される。また、スクリュ回転トルクTがトルク目標値Tsに制限される制御が行われることにより、この制限に対応してスクリュ回転数Rが低下する。この後、スクリュ回転数Rが徐々に上昇し、上限リミット値Ruに達すれば、上限リミット値Ruに維持されるとともに、これに伴い、スクリュ回転トルクTも徐々に低下するように変化する。
【0047】
検証を行ったサンプル数は、
図7に示すように「6サンプル」であり、ランダムにピックアップしたサンプルの一つを
図5に変化データとして示した。
図5及び
図7から明らかなように、本実施形態に係る可塑化制御方法を用いた場合、スクリュ回転トルクTは、トルク目標値Tsに抑制され、この大きさを越えて大きくなることはない。例示の場合、
図7に示すように、標準質量3650〔g〕の製品に対して、平均値は「3651.67〔g〕」、最大値は「3654〔g〕」、最小値は「3650〔g〕」、バラツキ幅は「4〔g〕」、標準偏差は「1.37437〔g〕」、変動係数は「0.22582」となり、バラツキの少ない安定的な成形が可能であることを確認できた。
【0048】
即ち、従来の制御方法に対する本実施形態に係る可塑化制御方法の優位性(有効性)を確認できた。特に、白色の成形品に対し、従来の制御方法では、全体に黄ばみが目立ったが、本実施形態に係る可塑化制御方法では、黄ばみによる変色は、ほとんど発生しなかった。なお、
図6は、
図5と同様のグラフィック表示図であるが、スクリュ回転トルクTが比較的大きくならない成形材料の例を示している。
【0049】
次に、本実施形態に係る可塑化制御方法を用いた生産時の具体的な処理手順について、各図を参照しつつ
図1,
図10及び
図11に示すフローチャートに従って説明する。
【0050】
図1は生産時における可塑化工程Sa、
図10は射出準備から射出開始までの充填前工程Sb、
図11は充填開始から成形品をエジェクトするまでの充填成形工程Scをそれぞれ示す。
【0051】
最初に、
図10において可塑化工程を行う(ステップSa)。この可塑化工程(ステップSa)は、本実施形態に係る可塑化制御方法に基づいて行われる。可塑化工程の具体的な処理手順を
図1のフローチャートに示す。
【0052】
可塑化工程に際しては、予め、可塑化工程に対応する成形条件の設定を行う(ステップS1)。この場合、成形条件の設定は、少なくとも、本実施形態に係る可塑化制御方法に関連して、スクリュ回転トルクTに対するトルク目標値Ts〔MPa〕の設定(S1a)、スクリュ回転数Rの上限リミット値Ru〔rpm〕の設定(S1b)、可塑化終了位置Xe〔mm〕の設定(S1c)を行うとともに、温度,背圧等の樹脂成形に必要な各種設定を行う。この設定は、成形条件設定機能部Fsにより行うことができる。
【0053】
一方、可塑化工程では、可塑化制御機能部Fcに基づいて可塑化処理が行われる。まず、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、射出装置Miにおける可塑化モータ25によりスクリュ3が回転を開始する(ステップS2)。初期段階の成形材料は、加熱された加熱筒2により加熱されるが、スクリュ3の回転によってはほとんど剪断が行われないため、スクリュ3は、スクリュ回転数Rの上限リミット値Ruにより回転する(ステップS3)。
【0054】
また、可塑化工程では、可塑化時表示機能部Fdにより、
図4に示すディスプレイ11に、可塑化処理時における、少なくとも、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの一又は二以上の変化データをグラフィック表示部11gにより表示される。このグラフィック表示部11gの抽出拡大図を
図5及び
図6に示す。スクリュ3の回転が進行することにより、次第に剪断処理が行われるため、スクリュ回転トルクTは、前述した
図5及び
図6に示すように、ゼロ付近から徐々に上昇する。また、この場合、スクリュ回転トルクTに対しては優先制御が行われる(ステップS4)。
【0055】
したがって、この後、スクリュ回転トルクTが設定したトルク目標値Tsに達したなら、トルク目標値Tsに維持する制御が行われるため、これに伴って、トルク目標値Tsを維持するようにスクリュ回転数Rは徐々に低下する(ステップS5,S6)。この際、スクリュ3の回転状態を監視し、スクリュ3の回転異常が生じたときはエラー処理を行う(ステップS7,S8)。このような監視を行えば、万が一、スクリュ回転トルクTを制限したことに伴う弊害が生じた場合であっても、当該弊害に対して適切なエラー処理を行うことができる。この場合、スクリュ3の回転異常として、スクリュ回転数Rに対して設定した下限リミット値を下回る状態を含ませれば、特に、スクリュ回転トルクTが制限されることにより、スクリュ3が回転しなくなるなどの弊害に対して適切なエラー処理を行うことができる。
【0056】
この後、可塑化処理が進行し、スクリュ3が予め設定した可塑化終了位置Xeに達すれば、スクリュ3の回転を停止する(ステップS9,S10)。これにより、可塑化工程Saが終了する。
【0057】
なお、今回の可塑化工程では、一般的な成形方法のように、樹脂を正確に計量する計量工程は行わない。即ち、射出工程では、キャビティ内に樹脂が満たされるまで射出動作を行うのみでよいため、計量工程における樹脂は多めに計量しておけば足りる。したがって、一般的な計量工程における計量動作は行うが、正確な計量値を得るための計量制御は不要となる。
【0058】
よって、このような本実施形態に係る可塑化制御方法(可塑化制御装置1)によれば、基本的な手法として、予め、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクTに対するトルク目標値Ts及びスクリュ回転数Rの上限リミット値Ruを設定し、可塑化処理時に、トルク目標値Tsに対する優先制御を行いつつスクリュ3の回転制御を行うようにしたため、可塑化工程において、剪断圧力が過度に大きくなる不具合を解消し、無用な剪断熱の発生を抑制できるとともに、そのバラツキも抑制することができる。これにより、溶融樹脂の品質を高め、特に、成形品の、変色,黄ばみ,焼け等の発生を防止して成形品質を飛躍的に高めることができる。
【0059】
一方、
図10において、可塑化工程Saの終了により射出準備に係わる充填前工程Sbが行われる。この場合、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、型締装置Mcの型締シリンダ27を駆動し、型締力が設定した成形型締力となるように、金型2に対する型締を行う(ステップS21,S22)。
【0060】
型締の終了により射出準備に係わる処理が行われる(ステップS23)。この処理にはノズルタッチ動作によるノズルタッチ及び金型温度に対する制御が含まれる。ノズルタッチ動作では、射出装置移動シリンダ26が駆動制御され、射出装置Miが前進移動して金型2に対してノズルタッチする制御が行われる。また、金型温度に対する制御処理は、型開きにより変動した金型温度が正規の設定温度になるように制御される。射出準備に係わるこれらの処理が終了すれば、射出装置Miは射出待機状態となる(ステップS24,S25)。
【0061】
この後、射出開始タイミングになったら射出装置Miの射出シリンダ24を駆動し、金型70に対する樹脂の射出処理を行う(ステップS26,S27)。この場合、スクリュ3は定格動作により前進させればよい。なお、成形機コントローラ10では、射出装置Miの射出待機状態の後、設定されたリセットタイミングに達したか否かを監視し、リセットタイミングになったら測距センサ13をゼロリセットするゼロリセット処理を行う(ステップS28)。
【0062】
以上により充填前工程Sbが終了し、次いで、充填成形工程Scに移行する。充填成形工程Scの具体的な処理手順を
図11にフローチャートで示す。上述した射出開始タイミングにより射出が開始されれば、加熱筒2内の可塑化溶融した樹脂は金型70のキャビティ内に充填される(ステップS29)。また、樹脂の充填に伴い、射出圧力Ppが上昇する。そして、リミット圧力に近づき、リミット圧力に達すれば、リミット圧力に維持するための制御、即ち、オーバーシュートを防止する制御が行われ、射出圧力Ppはリミット圧力(成形射出圧力)に維持される(ステップS30,S31)。したがって、射出動作では実質的な一圧制御が行われる。
【0063】
さらに、金型70のキャビティ内に樹脂が満たされることにより、金型70は樹脂に加圧され、固定型70cと可動型70m間にパーティング隙間Cgが生じる(ステップS32)。このパーティング隙間Cgは、予め設定した成形型締力及び成形射出圧力に基づいて発生する
【0064】
金型70に対する樹脂の射出充填が終了すれば、時間の経過に伴って樹脂の固化が進行するとともに、この固化に伴って樹脂の自然圧縮が行われる(ステップS33)。即ち、樹脂の固化により体積が減少するため、この体積の減少に追従するように、金型70(特に可動型70m)の弾性復帰による加圧作用により自然圧縮が行われる。そして、設定した冷却時間が経過すれば、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、型締シリンダ27を駆動し、可動型70mを後退させることにより型開きを行うとともに、バルブ回路37の切換及びサーボモータ39の制御により、エジェクタシリンダ31を駆動し、可動型70mに付着した成形品の突き出しを行う(ステップS34,S35)。これにより、成形品が取り出され、充填成形工程Scが終了する。
【0065】
この後、次の成形が継続する場合には、
図10に示すように、可塑化工程Sa,充填前工程Sb,充填成形工程Scを同様に繰り返せばよい(ステップSr,Sa,Sb,Sc…)。
【0066】
他方、
図12には可塑化時表示機能部Fdの変更例を示す。この変更例は、
図12に示すように、可塑化時表示機能部Fdに、成形時における、少なくとも、射出速度V,射出圧力P,金型のパーティング開量Lmの一又は二以上の変化データを通常波形表示部11nによりグラフィック表示する通常表示機能部Fnとを、切換可能又は合成可能なグラフィック表示変更機能部Fmを設けたものである。これにより、オペレータは、必要に応じて表示切換を行うことにより、ディスプレイ11の通常波形表示部11nに、成形時における、少なくとも、射出速度V,射出圧力Pp,金型のパーティング開量Lmの一又は二以上の変化データ,又は可塑化処理時における、少なくとも、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの一又は二以上の変化データを切換表示,又は合成(重複)表示することができる。なお、この場合、射出・計量画面切換キー62sの選択により、射出・計量画面62を表示させれば、通常波形表示部11nを表示させることができる。表示の切換は、表示切換キー(不図示)により行うことができる。
【0067】
このように、グラフィック表示部11gと通常波形表示部11nを選択的に,又は同時に、表示できるようにすれば、射出時の動作状態と可塑化時の動作状態を対比して又は同時に確認できるため、トラブルに対する予防的な事前処置,或いは成形工程全般の動作状態の的確な把握が可能になり、不良品の低減や量産性の向上に寄与することができる。
【0068】
以上、変更例を含む好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0069】
例えば、成形材料には、パウダー状樹脂材料を含ませることが望ましいが、基本的には、ペレット状樹脂材料にも適用できるなど、成形材料の形状的な種類に限定されるものではない。また、スクリュ3の回転状態を監視し、スクリュ3の回転異常が生じたときはエラー処理を行うことがのぞましいが必須の構成要件となるものではないとともに、回転異常として、スクリュ回転数Rに対して設定した下限リミット値を下回る状態を含ませることが望ましいが、他の回転異常を含める場合を排除するものではない。さらに、ディスプレイ11に、可塑化処理時における、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの全部の変化データをグラフィック表示部11gに表示した例を示したが、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの一又は二以上の選択した変化データを表示してもよいし、他の各種物理量の変化データを表示する場合を排除するものではない。他方、射出成形機Mとして、油圧式の射出装置Miを用いた例を示したが、電動式の射出装置Miであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明に係る可塑化制御方法及び装置は、スクリュを回転制御して加熱筒に投入した成形材料を可塑化処理する可塑化工程を備える各種射出成形機に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1:可塑化制御装置,2:加熱筒,3:スクリュ,10:成形機コントローラ,11:ディスプレイ,11g:グラフィック表示部,11n:通常波形表示部,M:射出成形機,(Sa):可塑化工程,70:金型,T:スクリュ回転トルク,Ts:トルク目標値,R:スクリュ回転数,Ru:上限リミット値,Fs:成形条件設定機能部,Fc:可塑化制御機能部,Fd:可塑化時表示機能部,Fn:通常表示機能部,Fm:グラフィック表示変更機能部
【手続補正書】
【提出日】2024-09-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒に挿入したスクリュを回転制御することにより前記加熱筒に投入した成形材料を可塑化処理する可塑化工程を備えるとともに、可塑化処理した溶融樹脂を前記スクリュの前進制御により所定の金型に射出充填して成形を行う射出成形機の可塑化制御方法において、予め、成形材料として、パウダー状樹脂材料を使用するとともに、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクに対するトルク目標値及びスクリュ回転数の上限リミット値を設定し、前記可塑化処理時に、前記トルク目標値に対する前記スクリュの回転制御を行うことを特徴とする射出成形機の可塑化制御方法。
【請求項2】
前記可塑化工程のスクリュ回転時に、前記スクリュの回転状態を監視し、前記スクリュの回転異常が生じたときはエラー処理を行うことを特徴とする請求項1記載の射出成形機の可塑化制御方法。
【請求項3】
前記回転異常には、スクリュ回転数に対して設定した下限リミット値を下回る状態を含むことを特徴とする請求項2記載の射出成形機の可塑化制御方法。
【請求項4】
加熱筒に挿入したスクリュを回転制御することにより前記加熱筒に投入した成形材料を可塑化処理するとともに、可塑化処理した溶融樹脂を前記スクリュの前進制御により所定の金型に射出充填して成形を行う成形機コントローラを備える射出成形機の可塑化制御装置において、成形材料として、パウダー状樹脂材料を使用するとともに、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクに対するトルク目標値及びスクリュ回転数の上限リミット値を設定する成形条件設定機能部と、前記可塑化処理時に、前記トルク目標値に対する前記スクリュの回転制御を行う可塑化制御機能部とを有する前記成形機コントローラを備えてなることを特徴とする射出成形機の可塑化制御装置。
【請求項5】
前記成形機コントローラは、ディスプレイを備え、このディスプレイに、可塑化処理時における、少なくとも、スクリュ位置,スクリュ回転トルク,スクリュ回転数の一又は二以上の変化データをグラフィック表示部によりグラフィック表示する可塑化時表示機能部を備えることを特徴とする請求項4記載の射出成形機の可塑化制御装置。
【請求項6】
前記成形機コントローラは、前記可塑化時表示機能部と、成形時における、少なくとも、射出速度,射出圧力,金型のパーティング開量の一又は二以上の変化データを通常波形表示部によりグラフィック表示する通常表示機能部と、を切換可能又は合成可能なグラフィック表示変更機能部を備えることを特徴とする請求項5記載の射出成形機の可塑化制御装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
本発明に係る射出成形機Mの可塑化制御方法は、上述した課題を解決するため、加熱筒2に挿入したスクリュ3を回転制御することにより加熱筒2に投入した成形材料を可塑化処理する可塑化工程(Sa)を備えるとともに、可塑化処理した溶融樹脂をスクリュ3の前進制御により所定の金型70に射出充填して成形を行う射出成形機Mの可塑化制御方法であって、予め、成形材料として、パウダー状樹脂材料を使用するとともに、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクTに対するトルク目標値Ts及びスクリュ回転数Rの上限リミット値Ruを設定し、可塑化処理時に、トルク目標値Tsに対するスクリュ3の回転制御を行うようにしたことを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
一方、本発明に係る射出成形機Mの可塑化制御装置1は、上述した課題を解決するため、加熱筒2に挿入したスクリュ3を回転制御することにより加熱筒2に投入した成形材料を可塑化処理するとともに、可塑化処理した溶融樹脂をスクリュ3の前進制御により所定の金型70に射出充填して成形を行う成形機コントローラを備える可塑化制御装置であって、成形材料として、パウダー状樹脂材料を使用するとともに、成形条件として、少なくとも、スクリュ回転トルクTに対するトルク目標値Ts及びスクリュ回転数Rの上限リミット値Ruを設定する成形条件設定機能部Fsと、可塑化処理時に、トルク目標値Tsに対するスクリュ3の回転制御を行う可塑化制御機能部Fcとを有する成形機コントローラ10を備えてなることを特徴とする。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
また、本発明は、発明の好適な態様により、可塑化工程(Sa)のスクリュ回転時には、スクリュ3の回転状態を監視し、スクリュ3の回転異常が生じたときはエラー処理を行うことができる。この場合、回転異常には、スクリュ回転数Rに対して設定した下限リミット値を下回る状態を含ませることができる。さらに、可塑化制御装置1を構成するに際しては、成形機コントローラ10に、ディスプレイ11を設け、このディスプレイ11に、可塑化処理時における、少なくとも、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの一又は二以上の変化データをグラフィック表示部11gによりグラフィック表示する可塑化時表示機能部Fdを設けることが望ましいとともに、特に、この可塑化時表示機能部Fdには、成形時における、少なくとも、射出速度V,射出圧力Pp,金型のパーティング開量Lmの一又は二以上の変化データを通常波形表示部11nによりグラフィック表示する通常表示機能部Fnとを、切換可能又は合成可能なグラフィック表示変更機能部Fmを設けることができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
(2) 成形材料に、パウダー状樹脂材料を含ませたため、スクリュ3の回転に馴染みにくく、かつ吸湿性が大きいなどの性質を有し、材料品質が劣化しやすいとされるパウダー状樹脂材料の可塑化制御の制御性(成形性)を高めることができる。これにより、パウダー状樹脂材料による成形品の、変色,黄ばみ(特に白色系の黄ばみ),焼け等の発生を防止して成形品質を大きく改善することができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0069
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0069】
例えば、スクリュ3の回転状態を監視し、スクリュ3の回転異常が生じたときはエラー処理を行うことがのぞましいが必須の構成要件となるものではないとともに、回転異常として、スクリュ回転数Rに対して設定した下限リミット値を下回る状態を含ませることが望ましいが、他の回転異常を含める場合を排除するものではない。さらに、ディスプレイ11に、可塑化処理時における、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの全部の変化データをグラフィック表示部11gに表示した例を示したが、スクリュ位置X,スクリュ回転トルクT,スクリュ回転数Rの一又は二以上の選択した変化データを表示してもよいし、他の各種物理量の変化データを表示する場合を排除するものではない。他方、射出成形機Mとして、油圧式の射出装置Miを用いた例を示したが、電動式の射出装置Miであってもよい。