(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167565
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】圧着端子及び端子付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083734
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】グエン トゥアン アイン
(72)【発明者】
【氏名】田中 健三
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085BB03
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD14
5E085EE07
5E085FF01
5E085GG26
5E085HH17
5E085JJ06
5E085JJ13
5E085JJ19
(57)【要約】
【課題】圧着端子において露出する導体を、防食材が覆う構成を有する端子付き電線において、防食材と圧着端子との密着性に優れ、かつ、導体に対する防食性能を向上し得る端子付き電線を提供する。
【解決手段】絶縁性を有する絶縁被覆によって導電性を有する導体を被覆した電線と、絶縁被覆の端部から露出する導体を圧着する導体圧着部、絶縁被覆を加締める被覆加締部、及び導体圧着部と被覆加締部とを連結する中間部を含む圧着端子と、少なくとも、中間部において露出する導体を覆う防食材と、を備え、中間部は、導体側の面に形成され、電線の軸線方向に延びる溝部を少なくとも1つ有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性を有する絶縁被覆によって導電性を有する導体を被覆した電線の端部から露出する前記導体を圧着する導体圧着部と、
前記絶縁被覆を加締める被覆加締部と、
前記導体圧着部と前記被覆加締部とを連結する中間部とを備え、
前記中間部は、前記導体側の面に形成され、前記電線の軸線方向に延びる溝部を少なくとも1つ有する、圧着端子。
【請求項2】
前記中間部には、前記電線の軸線周りに沿う周方向の両端に立ち上がり端部が立設されており、前記溝部は前記立ち上がり端部に形成されている、請求項1に記載の圧着端子。
【請求項3】
前記溝部は、前記導体圧着部及び/又は前記被覆加締部まで延在している、請求項1又は2に記載の圧着端子。
【請求項4】
絶縁性を有する絶縁被覆によって導電性を有する導体を被覆した電線と、
前記絶縁被覆の端部から露出する前記導体を圧着する導体圧着部、前記絶縁被覆を加締める被覆加締部、及び前記導体圧着部と前記被覆加締部とを、前記導体が露出した状態で連結する中間部を含む圧着端子と、
少なくとも、前記中間部において露出する前記導体を覆う防食材と、を備え、
前記中間部は、前記導体側の面に形成され、前記電線の軸線方向に延びる溝部を少なくとも1つ有する、端子付き電線。
【請求項5】
前記中間部には、前記電線の軸線周りに沿う周方向の両端に立ち上がり端部が立設されており、前記溝部は前記立ち上がり端部に形成されている、請求項4に記載の端子付き電線。
【請求項6】
前記溝部は、前記導体圧着部及び/又は前記被覆加締部まで延在している、請求項4又は5に記載の端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子及び端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の端子付き電線に適用される技術として、被覆導線と端子とが接続される端子付き電線が開示されている。被覆導線は、被覆部と、被覆部の先端から露出する導線とを具備する。端子は、端子本体と圧着部とを有する。そして、圧着部は、導線が圧着される電線圧着部と、被覆部が圧着される被覆加締部と、電線圧着部と被覆加締部との間に位置する中間部と、を具備し、中間部から電線圧着部までの導線が露出する部位が防食材で覆われる。
【0003】
上記のような構成の端子付き電線において、防食性能を確保するため、特許文献1には次のような提案がなされている。すなわち、電線圧着部と被覆加締部との間に位置する中間部に、導体側の面に設けられ、電線の軸線周りに沿う周方向の両端からそれぞれ周方向の中心側に向かって形成された溝部を有する構成である。この構成により、中間部において、溝部を介して防食材を周方向の中心側に浸透させ易くすることができるため、中間部において露出する導体を防食材によって確実に覆うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のように、圧着端子の中間部に溝部が設けられたとしても、防食材と中間部との界面から水(塩水等)が内部に浸入することで腐食が発生した場合、その腐食は溝部を通じて導体に到達する。しかも、溝部は、外部空間から導体まで直線状に延在するため、腐食が進行しやすい。また、溝部は、中間部において、電線の軸線周りに沿う周方向の両端から周方向の中心側に向かって形成されているため、溝部によるアンカー効果を期待できず密着性に優れるとは言い難い。
【0006】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、圧着端子において露出する導体を、防食材が覆う構成を有する端子付き電線において、防食材と圧着端子との密着性に優れ、かつ、導体に対する防食性能を向上し得る端子付き電線及び当該端子付き電線を構成し得る圧着端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様に係る圧着端子は、絶縁性を有する絶縁被覆によって導電性を有する導体を被覆した電線の端部から露出する導体を圧着する導体圧着部と、絶縁被覆を加締める被覆加締部と、導体圧着部と被覆加締部とを連結する中間部とを備え、中間部は、導体側の面に形成され、電線の軸線方向に延びる溝部を少なくとも1つ有する。
【0008】
本発明の他の態様に係る端子付き電線は、絶縁性を有する絶縁被覆によって導電性を有する導体を被覆した電線と、絶縁被覆の端部から露出する導体を圧着する導体圧着部、絶縁被覆を加締める被覆加締部、及び導体圧着部と被覆加締部とを、導体が露出した状態で連結する中間部を含む圧着端子と、少なくとも、中間部において露出する導体を覆う防食材と、を備え、中間部は、導体側の面に形成され、電線の軸線方向に延びる溝部を少なくとも1つ有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、圧着端子において露出する導体を、防食材が覆う構成を有する端子付き電線において、防食材と圧着端子との密着性に優れ、かつ、導体に対する防食性能を向上し得る端子付き電線及び当該端子付き電線を構成し得る圧着端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態の端子付き電線の概略構成を表す分解斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の端子付き電線の概略構成を表す模式的な部分平面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態の端子付き電線が備える圧着端子の溝部を含む部分斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の端子付き電線が備える圧着端子の圧着前の展開状態を部分的に示す模式平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本実施形態に係る圧着端子及び端子付き電線について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0012】
また、以下の説明では、互いに交差する第1方向、第2方向、及び、第3方向のうち、第1方向を「軸線方向X」といい、第2方向を「幅方向Y」といい、第3方向を「高さ方向Z」という。ここでは、軸線方向Xと幅方向Yと高さ方向Zとは、相互に略直交する。軸線方向Xは、典型的には、圧着端子が設けられる電線の軸線X1(
図1等参照)に沿う方向、当該電線が延在する延在方向、圧着端子と相手端子との挿抜方向等に相当する。幅方向Yと高さ方向Zとは、軸線方向Xと交差する交差方向に相当する。また、以下の説明では、圧着端子の圧着後の状態において、軸線X1周りに沿う方向を「周方向D1」という。また、
図1、
図4は、圧着端子の圧着前の状態を表している。
図2、
図3、
図6、
図7は、圧着端子の圧着後の状態を表している。
図5は、圧着端子が電線に対して圧着される前の展開状態を表しており、圧着端子の電線圧着部が平板状に展開された状態を表している。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、各部が相互に組み付けられた状態での方向を表すものとする。
【0013】
図1~
図3に示す本実施形態の端子付き電線100は、車両に使用されるワイヤハーネス等に適用されるものである。ここで、ワイヤハーネスは、例えば、車両に搭載される各装置間の接続のために、電源供給や信号通信に用いられる複数の電線Wを束にして集合部品とし、コネクタ等で複数の電線Wを各装置に接続するようにしたものである。
【0014】
本実施形態の端子付き電線100は、電線Wと、電線Wの末端において圧着され、導通接続された圧着端子1と、各部を覆って防食する防食材10(
図2、
図3参照)とを備える。圧着端子1は、防食材10によって防食された防食端子を構成する。そして、本実施形態の端子付き電線100は、圧着端子1に溝部48が設けられることで、防食材10と圧着端子1(中間部45)との密着性及び電線W(導体W1)の防食性能の確保を図ったものである。以下、各図を参照して圧着端子1及び端子付き電線100の各構成について詳細に説明する。
【0015】
[圧着端子]
電線Wは、車両に配索され、各装置を電気的に接続するものである。電線Wは、導電性を有する線状の導体W1と、導体W1の外側を覆う絶縁性を有する絶縁被覆W2とを含む。すなわち、電線Wは、絶縁被覆W2によって導体W1を被覆した絶縁電線である。
【0016】
導体W1は、導電性を有する金属素線を複数束ねた芯線である。導体W1は、当該複数の金属素線を撚り合わせた撚り芯線であってもよい。絶縁被覆W2は、導体W1の外周側を被覆する電線被覆である。絶縁被覆W2は、例えば、絶縁性の樹脂材料(PPやPVC、架橋PE等、耐摩耗性や耐薬品性、耐熱性等に配慮して適宜選定される。)等を押出成形することによって形成される。
【0017】
電線Wは、軸線X1に沿って線状に延在し、延在方向(軸線方向X)に対してほぼ同じ径で延びるように形成される。電線Wは、導体W1の断面形状(軸線方向Xと交差する方向の断面形状)が略円形状、絶縁被覆W2の断面形状が略円環形状となっており、全体として略円形状の断面形状となっている。電線Wは、少なくとも一方の端部において、絶縁被覆W2が剥ぎ取られており、導体W1が絶縁被覆W2から露出している。電線Wは、絶縁被覆W2から露出している導体W1の端部に圧着端子1が設けられている。
【0018】
圧着端子1は、電線Wが電気的に接続され、導電性を有する相手端子が接続される端子金具である。圧着端子1は、電気接続部2と、連結部3と、導体圧着部44、中間部45、及び被覆加締部46から構成される電線圧着部4とを備える。電気接続部2と連結部3と電線圧着部4とは、全体が一体で導電性を有する金属部材によって構成される。例えば、圧着端子1は、一枚の板金を、電気接続部2、連結部3、電線圧着部4等の各部に対応した形状にあわせて、打ち抜き加工、プレス加工、折り曲げ加工等の各種加工によって成形することで各部が立体的に一体で形成される。圧着端子1は、軸線方向Xに沿って一方側から他方側に向かって、電気接続部2、連結部3、電線圧着部4の順に並んで相互に連結される。
【0019】
電気接続部2は、相手端子と電気的に接続される部分である。電気接続部2は、雄型の端子形状であってもよいし、雌型の端子形状であってもよい。本実施形態の電気接続部2は、雌型の端子形状として図示しており、雄型の端子形状の相手端子と電気的に接続される。なお、電気接続部2は、相手端子に限らず、アース部材等の種々の導電性の部材と電気的に接続される構成であってもよい。この場合、電気接続部2は、例えばアース部材等に締結されるいわゆる丸形端子(LA端子)形状であってもよい。
【0020】
連結部3は、電気接続部2と電線圧着部4との間に介在し、電気接続部2と電線圧着部4とを連結し導通する部分である。圧着端子1は、電気接続部2と電線圧着部4とが連結部3を介して電気的に接続され、電線圧着部4を介して電気接続部2と電線Wの導体W1とが電気的に接続され導通される。
【0021】
電線圧着部4は、電線Wが接続され、電線Wの末端と圧着端子1とを電気的に接続する部分である。電線圧着部4は、電線Wの末端に加締められ圧着されることで、電線Wの端部に設けられる。電線圧着部4は、基部41、及び、二組の一対の第1加締片42、第2加締片43を含んで構成される。電線圧着部4は、基部41と二組の一対の第1加締片42、第2加締片43とによって電線Wに対して加締められ圧着される。
【0022】
より詳細には、電線圧着部4は、基部41、及び、二組の一対の第1加締片42、第2加締片43によって、導体圧着部44、中間部45、及び、被覆加締部46が構成される。言い換えれば、電線圧着部4は、基部41、及び、二組の一対の第1加締片42、第2加締片43によって構成される導体圧着部44、中間部45、及び、被覆加締部46を含んで構成される。
【0023】
導体圧着部44は、基部41の一部、及び、一対の第1加締片42によって構成される。中間部45は、基部41の一部によって構成される。被覆加締部46は、基部41の一部、及び、一対の第2加締片43によって構成される。電線圧着部4は、軸線方向Xに沿って電気接続部2側から反対側に向かって、導体圧着部44、中間部45、被覆加締部46の順に並んで相互に連結される。そして、本実施形態の電線圧着部4は、中間部45を介して一対の第1加締片42と一対の第2加締片43とが分断されたいわゆる別体バレル型の圧着部を構成する。
【0024】
具体的には、基部41は、軸線方向Xに沿って延在し、圧着端子1の圧着前の状態において、略U字状に形成された電線圧着部4の底壁となる部分である。基部41は、板厚方向が高さ方向Zに沿う板状に形成される。基部41は、圧着加工の際に電線Wの端部が載置される。基部41は、軸線方向Xの一方側に連結部3を介して電気接続部2が連結される。基部41は、各部において幅方向Yの両端部が高さ方向Zに沿って立ち上がっている。
【0025】
より具体的には、基部41は、軸線方向Xに沿って、導体圧着部44、中間部45、及び、被覆加締部46に渡って連続する。つまり、基部41は、導体圧着部44を構成する第1基部41a、中間部45を構成する第2基部41b、被覆加締部46を構成する第3基部41cが軸線方向Xに沿って連なって構成される。基部41は、第1基部41aの軸線方向Xの一方の端部に電気接続部2が連結される。また、基部41は、圧着加工前の状態において、第3基部41cの軸線方向Xの他方の端部にキャリアが連結されており、例えば、圧着加工時にキャリアから切断される。
【0026】
一対の第1加締片42は、基部41の一部である第1基部41aと共に導体圧着部44を構成する部分である。導体圧着部44は、電線Wの導体W1に対して加締められ圧着されることで、導体W1と電気的に接続される部分である。すなわち、導体圧着部44は、電線Wの端部から露出する導体W1の外周に巻付け、加締めることで、圧着され、導体W1と電気的に接続される。導体圧着部44は、電線圧着部4において軸線方向Xの一端側、ここでは、電気接続部2側に設けられる。
【0027】
一対の第1加締片42は、導体圧着部44において第1基部41aから幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、第1基部41aとの間に電線Wの導体W1を包んで加締められ圧着される部分である。一対の第1加締片42は、圧着加工前の状態において、U字状に形成された電線圧着部4の側壁となる部分である。一方の第1加締片42は、第1基部41aから幅方向Yの一方側に延びる。他方の第1加締片42は、第1基部41aから幅方向Yの他方側に延びる。一対の第1加締片42は、電線Wの導体W1に対して加締められ圧着される前の状態では、第1基部41aに対して曲げ加工が施され第1基部41aとあわせて略U字状に成形されている。
【0028】
本実施形態の一対の第1加締片42は、導体W1に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合わない(オーバーラップしない)ように第1基部41a側の根元から先端までの長さが設定されている。導体圧着部44は、第1基部41a、及び、一対の第1加締片42によって、一対の第1加締片42の間に配置された電線Wの導体W1の外側を包んで導体W1に対して加締められ圧着される。
【0029】
本実施形態において、一対の第1加締片42は、いわゆるBクリンプと称する加締め圧着がなされる。導体圧着部44は、Bクリンプでは、第1基部41aと一対の第1加締片42とによって導体W1を包んで圧着された状態で、一対の第1加締片42のそれぞれが第1基部41a側に向けて折り曲げられた状態とされる。そして、導体圧着部44は、この状態で一対の第1加締片42の先端がそれぞれ導体W1に接触して押しつけられるように加締められ圧着される。
【0030】
一対の第2加締片43は、基部41の一部である第3基部41cと共に被覆加締部46を構成する部分である。被覆加締部46は絶縁被覆を加締める。より詳細には、被覆加締部46は電線Wの絶縁被覆W2に対して加締められ圧着されることで、絶縁被覆W2に固定される部分である。被覆加締部46は、電線圧着部4において軸線方向Xの他端側、ここでは、電気接続部2側とは反対側に設けられる。
【0031】
一対の第2加締片43は、被覆加締部46において第3基部41cから幅方向Yの両側にそれぞれ帯状に延びて形成され、第3基部41cとの間に電線Wの絶縁被覆W2を包んで加締められ圧着される部分である。一対の第2加締片43は、圧着加工前の状態において、U字状に形成された電線圧着部4の側壁となる部分である。一方の第2加締片43は、第3基部41cから幅方向Yの一方側に延びる。他方の第2加締片43は、第3基部41cから幅方向Yの他方側に延びる。一対の第2加締片43は、電線Wの絶縁被覆W2に対して加締められ圧着される前の状態では、第3基部41cに対して曲げ加工が施され第3基部41cとあわせて略U字状に成形されている。
【0032】
本実施形態の一対の第2加締片43は、絶縁被覆W2に対して巻き付けられて加締められ、圧着された状態で、互いに重なり合わない(オーバーラップする)ように第3基部41c側の根元から先端までの長さが設定されている。被覆加締部46は、第3基部41c、及び、一対の第2加締片43によって、一対の第2加締片43の間に配置された電線Wの絶縁被覆W2の外側を包んで絶縁被覆W2に対して加締められ圧着される。
【0033】
本実施形態の一対の第2加締片43は、いわゆるラウンドクリンプと称する加締め圧着がなされる。被覆加締部46は、第3基部41cと一対の第2加締片43とによって絶縁被覆W2を包んで圧着された状態で、一対の第2加締片43の先端が互いに対向するような位置関係で加締められ圧着される。
【0034】
ここでは、電線圧着部4は、軸線方向Xに対して被覆加締部46と導体圧着部44との間に中間部45が介在する。中間部45は、導体圧着部44と被覆加締部46との間に介在し、導体圧着部44と被覆加締部46とを導体W1が露出した状態で連結する部分である。中間部45は、第2基部41bによって構成され、第2基部41bの軸線方向Xの一方側の端部に導体圧着部44の第1基部41aが連結され、他方側の端部に被覆加締部46の第3基部41cが連結される。そして、中間部45は、導体W1の中間露出部W1aが露出する部分を構成する。上述したように、一対の第1加締片42と一対の第2加締片43とは、それぞれ、互いの間に中間部45が介在することで相互に間隔をあけて分断して形成される。
【0035】
上記のように構成される圧着端子1は、導体圧着部44が導体W1に圧着され、被覆加締部46が絶縁被覆W2に圧着されることで、電線Wの端部に圧着される。この状態で、圧着端子1は、導体圧着部44と導体W1との間に接点部位が形成され、当該接点部位を介して電線Wの導体W1と導通接続される。そして、圧着端子1は、例えば、コネクタハウジング等に保持され、当該コネクタハウジングが相手コネクタのコネクタハウジングと相互に嵌合しコネクタ接合されることで、相手端子と電気的に接続され相互間に電気的な接点部位が形成される。この結果、圧着端子1は、当該接続部位を介して相手端子と導通接続される。
【0036】
[端子付き電線]
本実施形態の端子付き電線は、以上説明した本実施形態の圧着端子と、電線と、防食材とを備える。
圧着端子1が圧着される電線Wの導体W1は、例えば、アルミニウム(Al)又はアルミニウム合金等によって構成される場合がある。つまりこの場合、導体W1は、アルミニウム又はアルミニウム合金によって構成された金属素線を複数束ねた芯線である。一方、圧着端子1は、導体W1とは異なる異種金属、例えば、銅(Cu)又は銅合金によって構成された母材の表面に、すず(Sn)等によるメッキが施されることで構成される場合がある。この場合、端子付き電線100は、導体W1の材料がアルミニウム又はアルミニウム合金、圧着端子1の材料が銅又は銅合金であり、両者は異種金属である。そして、両者の間に水(塩水)等が浸入すると両者のイオン化傾向の違いによって、導体W1と圧着端子1との間においてガルバニック腐食が発生するおそれがある。なおここで、上記アルミニウム合金は、アルミニウムを主成分とする合金である。また、上記銅合金は、銅を主成分とする合金であり、例えば、いわゆる黄銅等を含む。
【0037】
これに対して、圧着端子1は、電線圧着部4に腐食を防止する防食材10が施されることで、上記のようなガルバニック腐食が発生することを抑制している。本実施形態の圧着端子1は、防食材10によって、少なくとも中間部45において露出する導体W1の中間露出部W1aを覆うことで防食されている。防食材10は、例えば、紫外線を照射することで硬化するUV(Ultraviolet、紫外線)硬化型樹脂によって構成される。UV硬化型樹脂としては、例えば、ウレタンアクリレート系の樹脂を用いることができるがこれに限らない。防食材10は、ペースト状のUV硬化型樹脂が所定の部位に塗布された後、紫外線が照射されることで硬化し形状を保持する。ここでは、防食材10は、導体圧着部44、中間部45、被覆加締部46、及び、圧着端子1から露出している導体W1に渡って設けられる。つまりここでは、防食材10は、軸線方向Xに沿って圧着端子1から露出している導体W1の先端W1b、導体圧着部44、中間部45から露出する中間露出部W1a、及び、被覆加締部46に渡って設けられる。また、防食材10は、電線圧着部4の内部や導体W1の素線間にも浸透するように設けられる。防食材10は、上記各部に塗布、浸透された後、紫外線が照射されることで硬化して形状を保持し当該各部を覆う。この構成により、圧着端子1は、防食材10によって止水し、水(塩水等)が内部に浸入することを規制することができ、ガルバニック腐食等が発生することを抑制することができる。
【0038】
そして、本実施形態の端子付き電線100は、
図1、
図4、
図5に示すように、中間部45は、導体W1側の面に形成され、電線Wの軸線X1方向に延びる溝部48を有する。より詳細には、中間部45には、電線Wの軸線X1周りに沿う周方向の両端に立ち上がり端部41baが立設されており、溝部48は立ち上がり端部41baに形成されている。溝部48を有することで防食材に対してアンカー効果が発現して密着性が向上する。また、中間部45に溝部48が存在すると、溝部48がない場合と比較して、外部空間と導体W1との沿面距離が長くなる。そのため、中間部45の立ち上がり端部41baと防食材10との界面から、腐食(上記のようなガルバニック腐食等)が生じたとしても進行が遅くなる。従って、溝部48の存在により防食性能に優れる。
【0039】
具体的には、溝部48は、中間部45の導体W1側の面(すなわち、内面)に設けられる。溝部48は、中間部45において、電線Wの軸線X1方向に延びるように形成される。すなわち、溝部48は、電線Wの軸線X1と平行に形成される。なお、溝部48の延びる方向は、溝部48の効果を損なわない限り、電線Wの軸線X1方向から若干傾斜していてもよい。
【0040】
ここで、防食材10は、
図6及び
図7に示す通り、中間部45において、圧着端子1から露出している導体W1を覆うように設けられる。そして、
図6は、中間部45に溝部48が形成されていない形態を示し、
図7は、中間部45に溝部48が形成された本実施形態を示す。
図6及び
図7において、外部空間と導体W1との沿面を太線で示す。
図6及び
図7より、
図7(本実施形態)に示す方が、外部空間と導体W1との沿面距離が長いことが明らかである。従って、上記の通り、中間部45の立ち上がり端部41baと防食材10との界面から、腐食(上記のようなガルバニック腐食等)が生じたとしても進行を遅延させることができる。
【0041】
本実施形態において、溝部48は、中間部45の周方向D1の一方側に2つ、中間部45の周方向D1の他方側に2つ、合計4つ設けられている。複数の溝部48は、中間部45の立ち上がり端部41baにおいて、末端から第2基部41bに向けて間隔をあけて設けられている。なお、
図1等においては、溝部48は中間部45の一方の側に2つ形成されているが、1つ以上形成されていればよく、2~3個形成されていることが好ましい。
【0042】
より具体的には、各溝部48は、中間部45を構成する第2基部41bにおいて、高さ方向Zに沿って立ち上がっている立ち上がり端部41baに形成されている。各溝部48は、中間部45の周方向D1の立ち上がり端部41baの第1基部41a側近傍から第3基部41c近傍に向けて電線Wの軸線X1方向に延在している。
【0043】
各溝部48は、例えば、延在方向と交差する断面形状が略台形状に形成される。各溝部48は、これに限らず、延在方向と交差する断面形状が略矩形状、略半円形状等に形成されてもよい。
【0044】
各溝部48の長さとしては、アンカー効果を十分に発現できればよく、軸線X1方向における中間部45の長さ(幅)と同じとすることもできるし、それ以上の長さ又はそれ以下の長さとすることもできる。密着性をより高めるには、各溝部48の長さが中間部45のX軸方向の長さよりも長いことが好ましい。言い換えると、各溝部48は、導体圧着部44及び/又は被覆加締部46まで延在していることが好ましい。
【0045】
また、各溝部48の深さは、例えば0.03~0.07mmとすることができる。ただし、アンカー効果を十分に発現するため、及び外部空間と電線Wの導体W1との沿面距離を長くするため深いほどよい。
【0046】
以上説明した端子付き電線100は、導体W1に導体圧着部44が圧着され、絶縁被覆W2に被覆加締部46が圧着されることで、電線Wに圧着端子1が圧着される。このような構成において、圧着端子1は、導体圧着部44と被覆加締部46とを連結する中間部45に溝部48を有する。溝部48は、中間部45の導体W1側の面に設けられ、中間部45の周方向D1の立ち上がり端部41baにおいて電線Wの軸線X1方向に延びるように形成される。
【0047】
これにより、端子付き電線100は、中間部45において露出する導体W1を防食材10によって覆うことができ、かつ、溝部48によるアンカー効果により密着性が向上する。また、溝部48の存在により外部空間と導体W1との沿面距離が長くなる。そのため、中間部45の立ち上がり端部41baと防食材10との界面から、腐食(上記のようなガルバニック腐食等)が生じたとしても進行が遅くなる。従って、溝部48の存在により防食性能に優れる。例えば、端子付き電線100は、導体W1の材料がアルミニウム、圧着端子1の材料が銅である場合、両者の間に水が浸入するとイオン化傾向の違いによって導体W1が腐食(ガルバニック腐食)してしまうおそれがある。これに対して、端子付き電線100は、上記のように沿面距離が長いため、当該腐食の導体W1への到達を遅らせることができる。この結果、端子付き電線100は、防食信頼性が向上し、適正な防食性能を確保することができる。
【0048】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 圧着端子
2 電気接続部
3 連結部
4 電線圧着部
10 防食材
41 基部
41a 第1基部
41b 第2基部
41ba 立ち上がり端部
41c 第3基部
42 第1加締片
43 第2加締片
42a 先端
44 導体圧着部
45 中間部
46 被覆加締部
48 溝部
100 端子付き電線
C 中心
D1 周方向
L1、L2 間隔
W 電線
W1 導体
W1a 中間露出部
W1b 先端
W2 絶縁被覆
W2a 末端
X 軸線方向
X1 軸線
Y 幅方向
Z 高さ方向