(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167571
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】圧着端子及び端子付き電線
(51)【国際特許分類】
H01R 4/18 20060101AFI20241127BHJP
【FI】
H01R4/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083742
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】グエン トゥアン アイン
(72)【発明者】
【氏名】田中 健三
【テーマコード(参考)】
5E085
【Fターム(参考)】
5E085BB02
5E085BB12
5E085CC03
5E085DD13
5E085DD14
5E085FF01
5E085GG26
5E085HH17
5E085JJ13
5E085JJ19
(57)【要約】
【課題】ラウンドクリンプ形状で絶縁被覆を圧着した場合であっても、座屈による変形を抑制することが可能な圧着端子及び端子付き電線を提供する。
【解決手段】圧着端子20の被覆加締部23は、第1加締片32と第2加締片33とを含んでいる。また、第1加締片32の先端36には、内側の角が面取りされた第1面取部36aが設けられ、第2加締片33の先端37には、外側の角が面取りされた第2面取部37aが設けられている。そして、第1加締片32と第2加締片33とによって絶縁被覆12を加締めた場合に、被覆加締部23は、第1面取部36aと第2面取部37aとが対面して突き合わさった状態となるように構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と前記導体を被覆する絶縁被覆とを備える電線に接続する圧着端子であって、
前記圧着端子は、
前記導体を圧着する導体圧着部と、
前記絶縁被覆を加締める被覆加締部と、
前記導体圧着部と前記被覆加締部とを接続する継部と、
を備え、
前記被覆加締部は、第1加締片と第2加締片とを含み、
前記第1加締片の先端には、内側の角が面取りされた第1面取部が設けられ、
前記第2加締片の先端には、外側の角が面取りされた第2面取部が設けられ、
前記第1加締片と前記第2加締片とによって前記絶縁被覆を加締めた場合に、前記被覆加締部は、前記第1面取部と前記第2面取部とが対面して突き合わさった状態となるように構成されている、
圧着端子。
【請求項2】
前記圧着端子を平坦面に載置した場合に、前記平坦面から前記第1加締片の先端までの高さと、前記平坦面から前記第2加締片の先端までの高さとが、同じ高さである、
請求項1に記載の圧着端子。
【請求項3】
導体と前記導体を被覆する絶縁被覆とを備える電線と、
前記導体を圧着する導体圧着部と、前記絶縁被覆を加締める被覆加締部と、前記導体圧着部と前記被覆加締部とを接続する継部とを備える圧着端子と、
を備え、
前記被覆加締部は、第1加締片と第2加締片とを含み、
前記第1加締片の先端には、内側の角が面取りされた第1面取部が設けられ、
前記第2加締片の先端には、外側の角が面取りされた第2面取部が設けられ、
前記第1加締片と前記第2加締片とによって前記絶縁被覆が加締められ、前記第1面取部と前記第2面取部とが対面して突き合わさっている、
端子付き電線。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧着端子及び端子付き電線に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来の圧着端子としては、特許文献1に開示されたものが提案されている。この特許文献1には、一対のバレルを有し、被覆導線(電線の絶縁被覆)が圧着される圧着部を備える圧着端子が開示されており、一対のバレルの先端の外面側縁部には、面取部が形成されている。こうすることで、上下の金型を用いて圧着部を丸める際に、各バレルの先端がスムーズに金型の内部に誘導されるようにしている。
【0003】
また、特許文献1では、対向するバレルの端部同士を互いに重なりあうように丸めることで、被覆導線(電線の絶縁被覆)を圧着部に圧着させるようにしている。このように、特許文献1には、オーバーラップクリンプ形状で被覆導線(電線の絶縁被覆)を圧着部に圧着させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、被覆導線(電線の絶縁被覆)を圧着部に圧着させる場合、一対のバレルの先端同士を突き合わせた状態で丸めることがある。すなわち、ラウンドクリンプ形状で被覆導線(電線の絶縁被覆)を圧着する場合がある。
【0006】
そして、特許文献1に開示の圧着端子を用いて、ラウンドクリンプ形状で被覆導線(電線の絶縁被覆)を圧着した場合、一対のバレル同士が干渉してしまい、圧着端子が座屈により変形してしまうおそれがある。
【0007】
このように、上記従来の技術では、ラウンドクリンプ形状で被覆導線(電線の絶縁被覆)を圧着する場合に、圧着端子が座屈により変形してしまうことを抑制することができなかった。
【0008】
本発明は、このような従来技術が有する課題に鑑みてなされたものである。そして本発明の目的は、ラウンドクリンプ形状で絶縁被覆を圧着した場合であっても、座屈による変形を抑制することが可能な圧着端子及び端子付き電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の態様に係る圧着端子は、導体と前記導体を被覆する絶縁被覆とを備える電線に接続するものであって、前記圧着端子は、前記導体を圧着する導体圧着部と、前記絶縁被覆を加締める被覆加締部と、前記導体圧着部と前記被覆加締部とを接続する継部と、を備え、前記被覆加締部は、第1加締片と第2加締片とを含み、前記第1加締片の先端には、内側の角が面取りされた第1面取部が設けられ、前記第2加締片の先端には、外側の角が面取りされた第2面取部が設けられ、前記第1加締片と前記第2加締片とによって前記絶縁被覆を加締めた場合に、前記被覆加締部は、前記第1面取部と前記第2面取部とが対面して突き合わさった状態となるように構成されている。
【0010】
本発明の態様に係る端子付き電線は、導体と前記導体を被覆する絶縁被覆とを備える電線と、前記導体を圧着する導体圧着部と、前記絶縁被覆を加締める被覆加締部と、前記導体圧着部と前記被覆加締部とを接続する継部とを備える圧着端子と、を備え、前記被覆加締部は、第1加締片と第2加締片とを含み、前記第1加締片の先端には、内側の角が面取りされた第1面取部が設けられ、前記第2加締片の先端には、外側の角が面取りされた第2面取部が設けられ、前記第1加締片と前記第2加締片とによって前記絶縁被覆が加締められ、前記第1面取部と前記第2面取部とが対面して突き合わさっている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ラウンドクリンプ形状で絶縁被覆を圧着した場合であっても、座屈による変形を抑制することが可能な圧着端子及び端子付き電線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る圧着端子の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線で切断した断面図である。
【
図3】電線を圧着端子に接続する前の状態の一例を示す斜視図である。
【
図4】電線を圧着端子に接続した後の状態の一例を示す斜視図である。
【
図5】電線を圧着端子に接続した後に、防食材を塗布して硬化している状態の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図4のVI-VI線で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本実施形態に係る圧着端子及び端子付き電線について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率と異なる場合がある。
【0014】
なお、本明細書で「同じ高さ」とは、実質的に同じ高さであることを意味する。例えば、Aの高さとBの高さが同じ高さであるとは、Aの高さがBの高さの95%以上105%以下であればよい。なお、Aの高さとBの高さが同じ高さであるとは、Aの高さがBの高さの99%以上であってもよい。また、Aの高さとBの高さが同じ高さであるとは、Aの高さがBの高さの101%以下であってもよい。Aの高さとBの高さが同じ高さであるとは、Aの高さがBの高さの100%の高さであってもよい。
【0015】
[圧着端子]
まず、本実施形態に係る圧着端子20について説明する。
図1は、本実施形態に係る圧着端子の一例を示す斜視図である。
図2は、
図1のII-II線で切断した断面図である。
図3は、電線を圧着端子に接続する前の状態の一例を示す斜視図である。
図4は、電線を圧着端子に接続した後の状態の一例を示す斜視図である。
図5は、電線を圧着端子に接続した後に、防食材を塗布して硬化している状態の一例を示す斜視図である。
図6は、
図4のVI-VI線で切断した断面図である。
図3及び
図4に示すように、電線10に圧着端子20を接続することで端子付き電線100を得ることができる。このような端子付き電線100を組み合わせることによって、自動車などのような車両で使用されるワイヤーハーネスを製造することができる。電線10は、導体11と、導体11を被覆する絶縁被覆12とを含んでいる。
【0016】
図1に示すように、圧着端子20は、電気接続部21と、導体圧着部22と、被覆加締部23と、前側継部24と、後側継部25とを備えている。
【0017】
電気接続部21は、圧着端子20の長手方向の前部に設けられており、相手コネクタ側の端子に接続されるように構成されている。電気接続部21は、ボックス状の形状をしており、内部に相手方端子と係合するバネ片を内蔵している。
【0018】
導体圧着部22は、圧着端子20の長手方向において、電気接続部21よりも後部に設けられており、電線10の末端の露出した導体11を圧着するように構成されている。導体圧着部22は、電線10の末端部の絶縁被覆12を除去して露出させた導体11と直接接触するものである。導体圧着部22は、電線10を載置するための底板30と、導体11を径方向に包み込んで加締めるための一対の導体加締片31とを含んでいる。一対の導体加締片31は、底板30の左右両側の縁部から上方に延在している。導体圧着部22は、底板30と一対の導体加締片31とにより、断面視略U字状に形成されている。そして、電線10の導体11を包み込むように一対の導体加締片31を内側に曲げることで、導体11が底板30の上面に密着した状態となるように加締められる。
【0019】
被覆加締部23は、圧着端子20の長手方向において、導体圧着部22よりも後部に設けられており、電線10の絶縁被覆12を加締めるように構成されている。被覆加締部23は、電線10の末端部の絶縁被覆12と直接接触するものである。被覆加締部23は、電線10を載置するための底板30と、電線10を径方向に包み込んで加締めるための一対の被覆加締片32,33とを含んでいる。一対の被覆加締片32,33は、底板30の左右両側の縁部から上方に延在している。被覆加締部23は、底板30と一対の被覆加締片32,33とにより、断面視略U字状に形成されている。電線10の絶縁被覆12が付いた部分を包み込むように一対の被覆加締片32,33を内側に曲げることで、電線10の絶縁被覆12が底板30の上面に密着した状態となるように加締められる。
【0020】
図2に示すように、一対の被覆加締片32,33は、第1加締片32と第2加締片33とを含んでいる。そして、一対の被覆加締片32,33は、第1加締片32と第2加締片33とによって絶縁被覆12を加締めた場合に、第1加締片32の先端36と第2加締片33の先端37とが突き合わさった状態となるように構成されている(
図6参照)。すなわち、本実施形態では、第1加締片32と第2加締片33とが重なり合った状態で圧着されたオーバーラップクリンプ形状ではなく、第1加締片32の先端36と第2加締片33の先端37とが付き合わさったラウンドクリンプ形状で圧着される。
【0021】
前側継部24は、圧着端子20の長手方向において、電気接続部21と導体圧着部22との間を接続している。前側継部24は、底板30と、底板30の左右両側の縁部から上方に延在した一対の側板34とを含んでいる。前側継部24は、底板30と一対の側板34とで断面視略U字状に形成されている。
【0022】
後側継部25は、圧着端子20の長手方向において、導体圧着部22と被覆加締部23との間を接続している。後側継部25は、底板30と、底板30の左右両側の縁部から上方に延在した一対の側板35とを含んでいる。後側継部25は、底板30と一対の側板35とで断面視略U字状に形成されている。
【0023】
ここで、本実施形態においては、圧着端子20は、1枚の板状部材を折り曲げ加工することによって形成されている。そのため、前部の電気接続部21の図示しない底板30から被覆加締部23の底板30が、1枚の共通した底板30として連続して形成されている。また、前側継部24の低背の側板34の前後端は、電気接続部21の側板の後端及び導体圧着部22の一対の導体加締片31の前端の各下半部にそれぞれ連続している。同様に、後側継部25の低背の側板35の前後端は、導体圧着部22の一対の導体加締片31の後端及び被覆加締部23の一対の被覆加締片32,33の前端の各下半部にそれぞれ連続している。
【0024】
この圧着端子20の材料としては、導電性が高い金属を使用することができる。圧着端子20の材料は、例えば銅、銅合金、ステンレス、金めっきされた銅、銀めっきされた銅、錫めっきされた銅、錫めっきされた銅合金、又は、錫めっきされたステンレスであってもよい。
【0025】
電線10の導体11は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成された集合撚り線であってもよい。また、導体11は、1本の撚り線のみで構成されていてもよく、複数本の集合撚り線を束ねて構成された複合撚り線であってもよい。導体11の材料としては、導電性が高い金属を使用することができる。導体11の材料は、例えば、銅、アルミニウム、又はこれらの合金等であってもよい。軽量化の観点からは、導体11は、アルミニウム又はアルミニウム合金により形成されていることが好ましい。
【0026】
また、電線10の絶縁被覆12の材料としては、電気絶縁性を確保できる熱可塑性樹脂を使用することができる。絶縁被覆12の材料は、例えば、オレフィン系樹脂及びポリ塩化ビニルの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。オレフィン系樹脂は、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン共重合体及びプロピレン共重合体からなる群より選択される少なくとも一種以上の樹脂を含んでいてもよい。
【0027】
次に、本実施形態の端子付き電線100の製造方法について説明する。本実施形態では、
図3及び
図4に示すように、上記構成の圧着端子20の底板30に電線10の末端部を挿入する。これにより、導体圧着部22の底板30の上面に電線10の導体11を載置すると共に、被覆加締部23の底板30の上面に電線10の絶縁被覆12の付いた部分が載置される。そして、導体圧着部22の一対の導体加締片31を、導体11を包み込むように内側に曲げ、導体加締片31の先端同士を擦り合わせながら電線の導体11に食い込ませて導体加締片31を加締める。
【0028】
さらに、被覆加締部23の一対の被覆加締片32,33を、絶縁被覆12の付いた部分を包み込むように内側に曲げることで、絶縁被覆12を底板30の上面に密着した状態となるように加締める。第1加締片32と第2加締片33とによって絶縁被覆12を加締めると、第1加締片32の先端36と第2加締片33の先端37とが突き合わさった状態となる。
【0029】
以上のように、圧着端子20と電線10を圧着することにより、圧着端子20を電線10に電気的及び機械的に接続することができ、端子付き電線100を製造することができる。
【0030】
次に、導体11と後側継部25との接合部などのように、導体11と圧着端子20とが接する部分に液状の防食材を塗布し、硬化する。特に、電線10の導体11と圧着端子20との材質が異なると、イオン化傾向の違いにより、導体11と圧着端子20との接合部で腐食が発生しやすくなる。そのため、当該接合部に防食材を設けることにより、腐食の発生を抑制することができる。ただし、導体11と圧着端子20の材質が、例えば、アルミニウム同士又は銅同士であっても、腐食が発生するおそれがあるため、導体11の材質と圧着端子20の材質は、同じであってもよく、それぞれ異なっていてもよい。防食材は、紫外線硬化型樹脂などであってもよい。このような防食材は、紫外線を照射することによって瞬時に硬化することができる。
【0031】
本実施形態では、紫外線硬化型樹脂が塗布された電線10及び圧着端子20に、紫外線照射装置50を用いて紫外線を照射することで、紫外線硬化型樹脂を瞬時に硬化させ、圧着端子20と電線10の表面に封止材40が形成されるようにしている(
図5参照)。
【0032】
このとき、導体11と圧着端子20との接合部を覆うように防食材を塗布するのが好ましい。具体的には、導体圧着部22と電線10の導体11の先端との境界を跨いで前側継部24の一部まで覆うと共に、被覆加締部23と絶縁被覆12との境界を跨いで絶縁被覆12の一部まで覆うように、防食材を塗布するのが好ましい。こうすれば、より高い防食性能を確保することができる。
【0033】
また、紫外線の照射量及び照射時間は、使用する紫外線硬化型樹脂及び塗布量により適宜設定することができる。
【0034】
なお、紫外線硬化型樹脂は、硬化する際に酸素と接触すると反応阻害を起こすことが知られている。この反応阻害の原因としては、空気中の酸素が光重合開始剤より発生したラジカルと反応してラジカルを消失させ、紫外線硬化型樹脂の重合反応が低下してしまうため、当該樹脂の硬化が充分に促進しなくなることが挙げられる。そのため、酸素硬化阻害の影響を受け難い紫外線硬化型樹脂を使用することが好ましい。
【0035】
また、紫外線を照射して紫外線硬化型樹脂が硬化した後、必要に応じて封止材40を冷却する工程を施してもよい。封止材40の冷却方法としては、例えば空気を送風し、封止材40に接触させることにより冷却する方法が挙げられる。
【0036】
なお、本実施形態では、上述したように、第1加締片32の先端36と第2加締片33の先端37とが付き合わさったラウンドクリンプ形状で絶縁被覆12が圧着されるようにしている。
【0037】
このように、第1加締片32の先端36と第2加締片33の先端37とを突き合せた状態で絶縁被覆12を加締めるようにした場合、一対の被覆加締片32,33や後側継部25などに突っ張り力が生じることになる。
【0038】
特に、絶縁被覆12を被覆加締部23に固定する場合、電線10の圧着端子20への固着力(電線保持力)を確保するために、過圧縮気味に一対の被覆加締片32,33を丸めるようにするのが一般的である。そのため、第1加締片32の先端36と第2加締片33の先端37とを突き合せた状態で絶縁被覆12を加締めるようにすると、一対の被覆加締片32,33や後側継部25などにより大きな突っ張り力が生じることになる。そして、一対の被覆加締片32,33や後側継部25などにより大きな突っ張り力が生じることで、一対の被覆加締片32,33や後側継部25が座屈により変形してしまったり、破断してしまったりするおそれがある。
【0039】
そこで、本実施形態では、ラウンドクリンプ形状で絶縁被覆12を圧着した場合であっても、圧着端子20が座屈により変形してしまうことを抑制できるようにしている。
【0040】
具体的には、
図2に示すように、第1加締片32の先端36に、内側の角が面取りされた第1面取部36aを設け、第2加締片33の先端37に、外側の角が面取りされた第2面取部37aを設けるようにしている。そして、第1加締片32と第2加締片33とによって絶縁被覆12を加締めた場合に、第1面取部36aと第2面取部37aとが対面するように構成している。さらに、本実施形態では、第1加締片32の先端36の全体に亘って第1面取部36aが設けられるようにし、第2加締片33の先端37の全体に亘って第2面取部37aが設けられるようにしている。
【0041】
こうすることで、ラウンドクリンプ形状で絶縁被覆12を圧着した際に、一対の被覆加締片(第1加締片32及び第2加締片33)が、第1面取部36aと第2面取部37aとを突き合せた状態で丸められるようにしている。
【0042】
こうすれば、電線10の圧着端子20への固着力(電線保持力)を確保するために、過圧縮気味に一対の被覆加締片32,33を丸めるようにした場合に、先端36が第2加締片33の上側に乗り上げるように第1加締片32が移動することになる。一方、第2加締片33は、先端37が第1加締片32の下側に沈み込むように移動することになる(
図6参照)。
【0043】
このように、本実施形態では、互いに突き合わさる第1面取部36a及び第2面取部37aを、同じ方向に傾斜する傾斜面となるようにしている。そして、過圧縮気味に一対の被覆加締片32,33を丸めるようにした際に、互いに避け合うこと(互いに干渉しないようにすること)ができるようにしている。こうすることで、過圧縮気味に一対の被覆加締片32,33を丸めるようにした場合に、一対の被覆加締片(第1加締片32及び第2加締片33)の干渉を避けることができるようにし、大きな突っ張り力が生じてしまうことを抑制できるようにしている。そして、圧着端子20(一対の被覆加締片32,33や後側継部25など)が、座屈により変形してしまったり、破断してしまったりすることを抑制できるようにしている。
【0044】
そして、圧着端子20(一対の被覆加締片32,33や後側継部25など)の座屈による変形を抑制できるようにすれば、封止材40が破れて防食性能が低下してしまうことをより確実に抑制することができるようになる。さらに、圧着端子20(一対の被覆加締片32,33や後側継部25など)の座屈による変形を抑制できるようにすれば、紫外線硬化型樹脂を塗布しやすい形状を維持することが可能になるため、より容易に封止材40により封止することが可能になる。
【0045】
また、過圧縮気味に一対の被覆加締片32,33を丸めるようにした場合、一対の被覆加締片(第1加締片32及び第2加締片33)が干渉して外側に膨らむように変形して、被覆加締部23と絶縁被覆12との間に隙間が形成されてしまうおそれがある。これに対して、本実施形態では、一対の被覆加締片(第1加締片32及び第2加締片33)の干渉を避けることができるようにすることで、少なくとも一方の被覆加締片が絶縁被覆12を圧縮する方向に移動(変形)するようにしている。したがって、被覆加締部23と絶縁被覆12との間に形成される隙間の絶対量を極力少なくすることができ、封止材40による封止性をより向上させることができるようになっている。
【0046】
また、本実施形態では、
図2に示すように、圧着端子20を平坦面Fに載置した場合に、平坦面Fから第1加締片32の先端36までの高さH1と、平坦面Fから第2加締片33の先端37までの高さH2とが、同じ高さとなるようにしている。
【0047】
こうすることで、一対の被覆加締片32,33や後側継部25などに生じる力が一方側に偏ってしまうことを抑制できるようにし、紫外線硬化型樹脂を塗布しやすい形状をより確実に維持することができるようにしている。
【0048】
なお、本実施形態では、圧着端子20を平坦面Fに載置した場合に、一対の側板34も、平坦面Fから側板34の先端までの高さが、それぞれ同じ高さとなるように構成されている。
【0049】
このとき、平坦面Fから側板34の先端までの高さが、平坦面Fから導体加締片31の先端までの高さよりも低くなるようにしている。こうすることで、加締め加工時の変形で圧着端子20の縁部が切断するのを抑制できるようにしている。なお、本実施形態においては、前側継部24の側板34の先端には、角部が面取りされた面取部が設けられていないが、面取部が設けられていてもよい。
【0050】
また、前側継部24と同様に、圧着端子20を平坦面Fに載置した場合に、一対の側板35は、平坦面Fから側板35の先端38までの高さが、それぞれ同じ高さとなるように構成されている。
【0051】
このとき、平坦面Fから側板35の先端までの高さが、平坦面Fから一対の被覆加締片の先端までの高さH1,H2よりも低くなるようにしている。こうすることで、加締め加工時の変形で圧着端子20の縁部が切断するのを抑制できるようにしている。なお、本実施形態においては、後側継部25の側板35の先端にも、角部が面取りされた面取部が設けられていないが、面取部が設けられていてもよい。また、本実施形態では、平坦面Fから側板35の先端までの高さは、平坦面Fから導体加締片31の先端までの高さよりも低くなっている。
【0052】
[端子付き電線]
次に、本実施形態に係る端子付き電線100について説明する。上述したように、電線10に圧着端子20を接続することで端子付き電線100を得ることができる。
【0053】
本実施形態に係る端子付き電線100は、電線10と圧着端子20とを備えている。電線10は、導体11と導体11を被覆する絶縁被覆12とを備えている。圧着端子20は、電気接続部21と、導体圧着部22と、被覆加締部23と、前側継部24と、後側継部25とを備えている。導体圧着部22は、導体11を圧着している。被覆加締部23は、絶縁被覆12を加締めている。後側継部25は、導体圧着部22と被覆加締部23とを接続している。
【0054】
被覆加締部23は、第1加締片32と第2加締片33とを含んでいる。また、第1加締片32の先端36には、内側の角が面取りされた第1面取部36aが設けられており、第2加締片33の先端37には、外側の角が面取りされた第2面取部37aが設けられている。そして、第1加締片32と第2加締片33とによって絶縁被覆12が加締められ、第1加締片32の先端36の第1面取部36aと、第2加締片33の先端37の第2面取部37aとが、互いに接触した状態で突き合わさっている。
【0055】
ここで、圧着端子20を平坦面Fに載置した場合に、平坦面Fから第1加締片32の先端36までの高さH1と、平坦面Fから第2加締片33の先端37までの高さH2とが、同じ高さとなっていた。また、平坦面Fから側板35の先端までの高さが、平坦面Fから導体加締片31の先端までの高さよりも低かった。そして、平坦面Fから側板35の先端までの高さが、平坦面Fから一対の被覆加締片の先端までの高さH1,H2よりも低かった。そのため、圧着端子20を圧着した後の端子付き電線100において、後側継部25では、導体11が露出した状態で配置されている。
【0056】
こうすることで、圧着端子20の座屈による変形が抑制されて、紫外線硬化型樹脂を塗布しやすい形状が維持された端子付き電線100とすることができるようにしている。
【0057】
[作用・効果]
以下では、上記実施形態で示した圧着端子及び端子付き電線の特徴的構成及びそれにより得られる効果を説明する。
【0058】
上記実施形態で示した圧着端子20は、導体11と導体11を被覆する絶縁被覆12とを備える電線10に接続するものである。この圧着端子20は、導体11を圧着する導体圧着部22と、絶縁被覆12を加締める被覆加締部23と、導体圧着部22と被覆加締部23とを接続する後側継部(継部)25と、を備えている。また、被覆加締部23は、第1加締片32と第2加締片33とを含んでいる。ここで、第1加締片32の先端36には、内側の角が面取りされた第1面取部36aが設けられており、第2加締片33の先端37には、外側の角が面取りされた第2面取部37aが設けられている。そして、第1加締片32と第2加締片33とによって絶縁被覆12を加締めた場合に、被覆加締部23は、第1面取部36aと第2面取部37aとが対面して突き合わさった状態となるように構成されている。
【0059】
このように、上記実施形態で示した圧着端子20は、ラウンドクリンプ形状で絶縁被覆12を圧着した際に、一対の被覆加締片(第1加締片32及び第2加締片33)が、第1面取部36aと第2面取部37aとを突き合せた状態で丸められるようになっている。
【0060】
こうすれば、電線10の圧着端子20への固着力(電線保持力)を確保するために、過圧縮気味に一対の被覆加締片32,33を丸めるようにした場合に、先端36が第2加締片33の上側に乗り上げるように第1加締片32を移動させることができるようになる。また、第2加締片33を、先端37が第1加締片32の下側に沈み込むように移動させることができるようになる。
【0061】
その結果、一対の被覆加締片に大きな突っ張り力が生じてしまうことを抑制できるようになって、圧着端子20が、座屈により変形してしまったり、破断してしまったりすることを抑制できるようになる。
【0062】
このように、上記実施形態で示した圧着端子20とすれば、圧着端子20の座屈による変形を抑制することができるようになるため、封止材40の破断等が抑制されて防食性能が低下してしまうことをより確実に抑制することができるようになる。
【0063】
また、圧着端子20を平坦面Fに載置した場合に、平坦面Fから第1加締片32の先端36までの高さH1と、平坦面Fから第2加締片33の先端37までの高さH2とが、同じ高さとなるようにしてもよい。
【0064】
こうすれば、一対の被覆加締片32,33や後側継部25などに生じる力が一方側に偏ってしまうことをより確実に抑制することができるようになる。その結果、紫外線硬化型樹脂を塗布しやすい形状をより確実に維持することができるようになる。
【0065】
また、上記実施形態で示した端子付き電線100は、導体11と導体11を被覆する絶縁被覆12とを備える電線10を備えている。また、端子付き電線100は、導体11を圧着する導体圧着部22と、絶縁被覆12を加締める被覆加締部23と、導体圧着部22と被覆加締部23とを接続する継部25とを備える圧着端子20を備えている。また、被覆加締部23は、第1加締片32と第2加締片33とを含んでいる。ここで、第1加締片32の先端36には、内側の角が面取りされた第1面取部36aが設けられており、第2加締片33の先端37には、外側の角が面取りされた第2面取部37aが設けられている。そして、第1加締片32と第2加締片33とによって絶縁被覆12が加締められ、第1面取部36aと第2面取部37aとが対面して突き合わさっている。
【0066】
こうすれば、圧着端子20の座屈による変形が抑制されて、紫外線硬化型樹脂を塗布しやすい形状が維持された端子付き電線100とすることができるようになる。
【0067】
[その他]
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【0068】
例えば、電気接続部や電線、その他細部のスペック(形状、大きさ、レイアウト等)を適宜に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 電線
11 導体
12 絶縁被覆
20 圧着端子
22 導体圧着部
23 被覆加締部
25 後側継部(継部)
32 第1加締片
33 第2加締片
36 第1加締片の先端
36a 第1面取部
37 第2加締片の先端
37a 第2面取部
100 端子付き電線
F 平坦面
H1 平坦面から第1加締片の先端までの高さ
H2 平坦面から第2加締片の先端までの高さ