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特開2024-167572砂型造形用型の製造方法および砂型製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167572
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】砂型造形用型の製造方法および砂型製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 7/00 20060101AFI20241127BHJP
   B22C 9/02 20060101ALI20241127BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241127BHJP
【FI】
B22C7/00 113
B22C7/00 112A
B22C7/00 112B
B22C7/00 112C
B22C9/02 101
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083743
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】390006736
【氏名又は名称】株式会社日邦バルブ
(74)【代理人】
【識別番号】100142619
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100153316
【弁理士】
【氏名又は名称】河口 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196140
【弁理士】
【氏名又は名称】岩垂 裕司
(72)【発明者】
【氏名】三澤 和雄
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 航也
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093FC01
4E093FC04
4E093FC08
4E093FC10
(57)【要約】
【課題】鋳造対象物の外観形状を備える模型プレートの設計の自由度が高く、寸法精度が高い砂型造形用型の製造方法を提案すること。
【解決手段】砂型造形用型5の製造方法は、マシニングセンターにより上側模型用基材20を加工し、上側台座部25、上側模型部26、および上側台座部貫通孔27を備える上側模型プレート12を制作する模型プレート制作工程ST11と、マシニングセンターを駆動制御して型枠プレート11を加工し、型枠プレート11の第1面11aの側に、上側台座部25が嵌合する上側嵌合凹部40と上側ネジ孔41とを形成する型枠プレート加工工程ST13と、上側台座部25を上側嵌合凹部40に嵌め込み、上側台座部貫通孔27を貫通して第1上側ネジ孔41(1)に捩じ込まれる上側固定ネジ51により上側模型プレート12を固定する模型プレート固定工程ST14と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マシニングセンターを駆動制御して上側模型用基材を加工し、一定厚みの上側台座部、鋳造対象物の上半部分の外観形状を備え前記上側台座部から当該上側台座部の厚み方向の一方側に突出する上側模型部、および前記上側台座部を前記厚み方向に貫通する上側台座部貫通孔を備える上側模型プレートを制作するとともに、マシニングセンターを駆動制御して下側模型用基材を加工し、前記上側台座部と同一形状の下側台座部、前記鋳造対象物の下半部分の外観形状を備え前記下側台座部から当該下側台座部の厚み方向の一方側に突出する下側模型部、および前記下側台座部を前記厚み方向に貫通する下側台座部貫通孔を備える下側模型プレートを制作する模型プレート制作工程と、
マシニングセンターを駆動制御して一定厚みの型枠プレートを加工し、前記型枠プレートの第1面の側に、前記上側台座部が嵌合する上側嵌合凹部、および前記上側台座部を前記上側嵌合凹部に嵌め込んだときに前記上側台座部貫通孔に連通する上側ネジ孔を形成し、前記型枠プレートの第2面の側に、前記下側台座部が嵌合する下側嵌合凹部、および前記下側台座部を前記下側嵌合凹部に嵌め込んだときに前記下側台座部貫通孔に連通する下側ネジ孔を形成する型枠プレート加工工程と、
前記上側台座部を前記上側嵌合凹部に嵌め込み、前記上側台座部貫通孔を貫通して前記上側ネジ孔に捩じ込まれる上側固定ネジにより前記上側模型プレートを前記型枠プレートに固定するとともに、前記下側台座部を前記下側嵌合凹部に嵌め込み、前記下側台座部貫通孔を貫通して前記下側ネジ孔に捩じ込まれる下側固定ネジにより前記下側模型プレートを前記型枠プレートに固定する模型プレート固定工程と、を有し、
前記型枠プレートの厚み方向から見た場合に、前記上側嵌合凹部と、前記下側嵌合凹部とは、一致することを特徴とする砂型造形用型の製造方法。
【請求項2】
前記模型プレート制作工程では、前記上側模型プレートとして、同一形状の第1上側模型プレートおよび第2上側模型プレートを製作し、前記下側模型プレートとして、同一形状の第1下側模型プレートおよび第2下側模型プレートを製作し、
前記型枠プレート加工工程では、前記上側嵌合凹部として、前記型枠プレートの前記第1面の側に、前記第1上側模型プレート用の第1上側嵌合凹部および前記第2上側模型プレート用の第2上側嵌合凹部を形成し、前記上側ネジ孔として、第1上側模型プレート用の上側ネジ孔および前記第2上側模型プレート用の第2上側ネジ孔を形成し、前記下側嵌合凹部として、前記型枠プレートの前記第2面の側に、前記第1下側模型プレート用の第1下側嵌合凹部および前記第2下側模型プレート用の第2下側嵌合凹部を形成し、前記下側ネジ孔として、第1下側模型プレート用の第1下側ネジ孔および前記第2下側模型プレート用の第2下側ネジ孔を形成し、
前記模型プレート固定工程では、前記第1上側模型プレートの前記上側台座部を前記第1上側嵌合凹部に嵌め込み、前記第1上側模型プレートの前記上側台座部貫通孔を貫通して前記上側ネジ孔に捩じ込まれる第1上側固定ネジにより前記第1上側模型プレートを前記型枠プレートに固定し、前記第2上側模型プレートの前記上側台座部を前記第2上側嵌合凹部に嵌め込み、前記第2上側模型プレートの前記上側台座部貫通孔を貫通して前記第2上側ネジ孔に捩じ込まれる第2上側固定ネジにより前記第2上側模型プレートを前記型枠プレートに固定するとともに、前記第1下側模型プレートの前記下側台座部を前記第1下側嵌合凹部に嵌め込み、前記第1下側模型プレートの前記下側台座部貫通孔を貫通して前記第1下側ネジ孔に捩じ込まれる第1下側固定ネジにより前記第1下側模型プレートを前記型枠プレートに固定し、前記第2下側模型プレートの前記下側台座部を前記第2下側嵌合凹部に嵌め込み、前記第2下側模型プレートの前記下側台座部貫通孔を貫通して前記第2下側ネジ孔に捩じ込まれる第2下側固定ネジにより前記第2下側模型プレートを前記型枠プレートに固定することを特徴とする請求項1に記載の砂型造形用型の製造方法。
【請求項3】
前記上側模型プレートの上側模型部は、前記上側台座部に沿って、前記鋳造対象物の上
半部分の外観形状を備える上側模型本体部分を、複数、備え、
前記下側模型プレートの下側模型部は、前記下側台座部に沿って前記鋳造対象物の下半部分の外観形状を備える下側模型本体部分を、前記上側模型本体部分と、同数、備え、
前記上側模型プレートおよび前記下側模型プレートが前記型枠プレートに取り付けられた状態を当該型枠プレートの厚み方向から見た場合に、前記上側模型プレートの複数の前記上側模型部本体のそれぞれは、前記下側模型プレートの複数の前記下側模型部本体のそれぞれと一致することを特徴とする請求項1に記載の砂型造形用型の製造方法。
【請求項4】
前記上側模型部は、前記鋳造対象物の上半部分の外観形状を有する上側模型本体部分および中子を一方側から保持するための上側中子保持部分を備え、
前記下側模型部は、前記鋳造対象物の下半部分の外観形状を有する下側模型本体部分および前記中子を他方側から保持するための下側中子保持部分を備えることを特徴とする請求項1に記載の砂型造形用型の製造方法。
【請求項5】
前記模型プレート固定工程の前に、3Dプリンターを駆動制御して、上側部材固定孔を備える上側堰・湯道形成部材および下側部材固定孔を備える下側堰・湯道形成部材を製造する部材製造工程を有し、
前記型枠プレート加工工程では、前記型枠プレートの前記第1面の側に、前記上側堰・湯道形成部材を所定の第1位置に配置したときに前記上側部材固定孔と連通する上側部材固定用ネジ孔を形成するとともに、前記型枠プレートの前記第2面の側に、下側堰・湯道形成部材を所定の第2位置に配置したときに前記下側部材固定孔と連通する下側材固定用ネジ孔を形成し、
前記模型プレート固定工程では、前記上側模型プレートを前記型枠プレートに取り付けた後に、前記上側部材固定孔を貫通して前記上側部材固定用ネジ孔に捩じ込まれる上側部材固定用ネジにより前記上側堰・湯道形成部材を前記型枠プレートの前記第1面に固定し、前記下側模型プレートを前記型枠プレートに取り付けた後に、前記下側部材固定孔を貫通して前記下側材固定用ネジ孔に捩じ込まれる下側部材固定用ネジにより前記堰・湯道形成部材を前記型枠プレートの前記第2面に固定することを特徴とする請求項2に記載の砂型造形用型の製造方法。
【請求項6】
前記上側模型用基材および下側模型用基材は、金属、樹脂、または木からなることを特徴とする請求項1に記載の砂型造形用型の製造方法。
【請求項7】
前記型枠プレートは、金属製、樹脂製、または木製であることを特徴とする請求項1に記載の砂型造形用型の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の製造方法により製造した砂型造形用型を、前記型枠プレートの第1面が上方を向く姿勢として、前記型枠プレートの前記第1面の側および前記第2面の側を鋳造砂で型込めする型込め工程と、
前記型枠プレートの前記第1面の側を型込めした上側砂型と前記砂型造形用型とを上下方向に相対移動させて前記上側砂型と前記砂型造形用型とを離間させるとともに、前記型枠プレートの前記第2面の側を型込めした下側砂型と前記砂型造形用型とを前記上下方向に相対移動させ前記下側砂型と前記砂型造形用型とを離間させ、上下方向で離間する前記上側砂型と前記下側砂型との間から前記砂型造形用型を退避させる離型工程と、
前記上側砂型と前記下側砂型とを上下方向に相対移動させて重ねる型合わせ工程と、
を有することを特徴とする砂型製造方法。
【請求項9】
請求項4に記載の製造方法により製造した砂型造形用型を、前記型枠プレートの第1面が上方を向く姿勢として、前記型枠プレートの前記第1面の側および前記第2面の側を鋳造砂で型込めする型込め工程と、
前記型枠プレートの前記第1面の側を型込めした上側砂型と前記砂型造形用型とを上下方向に相対移動させて前記上側砂型と前記砂型造形用型とを離間させるとともに、前記型枠プレートの前記第2面の側を型込めした下側砂型と前記砂型造形用型とを前記上下方向に相対移動させ前記下側砂型と前記砂型造形用型とを離間させ、上下方向で離間する前記上側砂型と前記下側砂型との間から前記砂型造形用型を退避させる離型工程と、
前記下側砂型において前記下側模型プレートの前記下側模型部の前記下側中子保持部分の形状が転写された下側中子保持部に前記中子を保持させる中子配置工程と、
前記上側砂型と前記下側砂型とを上下方向に相対移動させて重ねて、前記上側砂型において前記上側模型プレートの上側模型部の前記上側中子保持部分の形状が転写された上側中子保持部に前記中子を保持させる型合わせ工程と、を有することを特徴とする砂型製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造品を鋳造する砂型を造形するための砂型造形用型の製造方法、および砂型製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造品を鋳造する砂型を製造するための金型は、特許文献1に記載されている。同文献の金型は、鋳造対象物の外観形状を備える上型側パターンと、上型側パターンが配置されるパターン嵌合部を備えるパターンケースとを備える。パターン嵌合部は、所定形状の凹部であり、予めパターンケースの表面に設けられている。上型側パターンは、パターン嵌合部に嵌合するパターンベースに、鋳造対象物の外観形状を備えるパターン本体、湯道パターン、および堰パターンが取り付けられたものである。金型を製造する際には、パターン嵌合部に模型パターンのパターンベースを嵌め込み、クランプ機構によりパターンベースをパターンケースに固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-124688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の金型では、鋳造対象物の外観形状を備える上型側パターンが、パターンケースに設けられたパターン嵌合部に嵌合するパターンベースと、パターンベース上に固定される複数の部品からなる。従って、部品の積み上げ公差により、砂型形成用の金型の寸法精度が低下する場合がある。金型の寸法精度が低下すると、砂型の寸法精度が低下する。また、パターンベースのサイズがパターン嵌合部に嵌合するサイズに定められているので、上型側パターンの設計の自由度が制限される。
【0005】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、鋳造対象物の外観形状を備える模型プレートの設計の自由度が高く、寸法精度が高い砂型造形用型の製造方法を提案することにある。また、かかる製造方法により製造された砂型造形用型を用いた砂型製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の砂型造形用型の製造方法は、マシニングセンターを駆動制御して上側模型用基材を加工し、一定厚みの上側台座部、鋳造対象物の上半部分の外観形状を備え前記上側台座部から当該上側台座部の厚み方向の一方側に突出する上側模型部、および前記上側台座部を前記厚み方向に貫通する上側台座部貫通孔を備える上側模型プレートを制作するとともに、マシニングセンターを駆動制御して下側模型用基材を加工し、前記上側台座部と同一形状の下側台座部、前記鋳造対象物の下半部分の外観形状を備え前記下側台座部から当該下側台座部の厚み方向の一方側に突出する下側模型部、および前記下側台座部を前記厚み方向に貫通する下側台座部貫通孔を備える下側模型プレートを制作する模型プレート制作工程と、マシニングセンターを駆動制御して一定厚みの型枠プレートを加工し、前記型枠プレートの第1面の側に、前記上側台座部が嵌合する上側嵌合凹部、および前記上側台座部を前記上側嵌合凹部に嵌め込んだときに前記上側台座部貫通孔に連通する上側ネジ孔を形成し、前記型枠プレートの第2面の側に、前記下側台座部が嵌合する下側嵌合凹部、および前記下側台座部を前記下側嵌合凹部に嵌め込んだときに前記下側台座部貫通孔に連通する下側ネジ孔を形成する型枠プレート加工工程と、前
記上側台座部を前記上側嵌合凹部に嵌め込み、前記上側台座部貫通孔を貫通して前記上側ネジ孔に捩じ込まれる上側固定ネジにより前記上側模型プレートを前記型枠プレートに固定するとともに、前記下側台座部を前記下側嵌合凹部に嵌め込み、前記下側台座部貫通孔を貫通して前記下側ネジ孔に捩じ込まれる下側固定ネジにより前記下側模型プレートを前記型枠プレートに固定する模型プレート固定工程と、を有し、前記型枠プレートの厚み方向から見た場合に、前記上側嵌合凹部と、前記下側嵌合凹部とは、一致することを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、鋳造対象物の外観形状を備える上側模型プレートおよび下側模型プレートは、それぞれマシニングセンターにより模型用基材を加工(切削)して制作される一つの部材である。従って、複数の部品を結合させて上側模型プレートおよび下側模型プレートのそれぞれを製作する場合と比較して、上側模型プレートおよび下側模型プレートの寸法精度は高い。また、型枠プレートにおいて、上側模型プレートの上側台座部を嵌め込む上側嵌合凹部、および下側模型プレートの上側台座部を嵌め込む下側嵌合凹部は、それぞれマシニングセンターにより型枠プレートを加工(切削)して形成される。従って、型枠プレートにおける各嵌合凹部の寸法精度および型枠プレート上における各嵌め込む凹部の位置精度は、高い。よって、型枠プレートの第1面の上側嵌合凹部と第2面の下側嵌合凹部とを、同一形状とし、これらを完全に重なる位置に設けることができる。さらに、上側模型プレートの上側台座部貫通孔は、上側模型プレートの制作時にマシニングセンターにより形成され、型枠プレートの上側ネジ孔は、型枠プレートの加工時にマシニングセンターにより形成される。従って、上側台座部貫通孔および上側ネジ孔の位置精度は高い。よって、上側模型プレートは、上側模型プレートの上側台座部の上側台座部貫通孔を貫通して型枠プレートの上側ネジ孔に捩じ込まれる上側固定ネジにより、型枠プレートに精度よく固定される。同様に、下側模型プレートの下側台座部貫通孔は、下側模型プレートの制作時にマシニングセンターにより形成され、型枠プレートの下側ネジ孔は、型枠プレートの加工時にマシニングセンターにより形成される。従って、下側台座部貫通孔および下側ネジ孔の位置精度は高い。よって、下側模型プレートは、下側模型プレートの下側台座部の下側台座部貫通孔を貫通して型枠プレートの下側ネジ孔に捩じ込まれる下側固定ネジにより、型枠プレートに精度よく固定される。ここで、型枠プレートの厚み方向から見た場合に、上側嵌合凹部と、下側嵌合凹部とは、一致する。従って、型枠プレートの第1面の側および第2面の側を鋳造砂で型込めして上側砂型と下側砂型とを造形し、これらの砂型を型合わせしたときに、上側砂型と下側砂型との間に鋳造用のキャビティを精度よく形成できる。
【0008】
また、型枠プレートには、マシニングセンターにより、上側模型プレートの上側台座部と嵌合するサイズの上側嵌合凹部と、下側模型プレートの下側台座部と嵌合するサイズの下側嵌合凹部とが形成される。ここで、上側嵌合凹部および下側嵌合凹部は、予め決められたサイズで型枠プレートに設けられているものではない。従って、上側模型プレートおよび下側模型プレートを設計する際に、上側模型プレートおよび下側模型プレートのサイズが、型枠プレートに予め設けられた嵌合凹部のサイズに縛られることがない。よって、上側模型プレートおよび下側模型プレートの設計の自由度が向上する。従って、多様なサイズを備える多種類の鋳造対象物の鋳造に対応することが容易である。
【0009】
本発明において、前記模型プレート制作工程では、前記上側模型プレートとして、同一形状の第1上側模型プレートおよび第2上側模型プレートを製作し、前記下側模型プレートとして、同一形状の第1下側模型プレートおよび第2下側模型プレートを製作し、
前記型枠プレート加工工程では、前記上側嵌合凹部として、前記型枠プレートの前記第1面の側に、前記第1上側模型プレート用の第1上側嵌合凹部および前記第2上側模型プレート用の第2上側嵌合凹部を形成し、前記上側ネジ孔として、第1上側模型プレート用の上側ネジ孔および前記第2上側模型プレート用の第2上側ネジ孔を形成し、前記下側嵌
合凹部として、前記型枠プレートの前記第2面の側に、前記第1下側模型プレート用の第1下側嵌合凹部および前記第2下側模型プレート用の第2下側嵌合凹部を形成し、前記下側ネジ孔として、第1下側模型プレート用の第1下側ネジ孔および前記第2下側模型プレート用の第2下側ネジ孔を形成し、前記模型プレート固定工程では、前記第1上側模型プレートの前記上側台座部を前記第1上側嵌合凹部に嵌め込み、前記第1上側模型プレートの前記上側台座部貫通孔を貫通して前記上側ネジ孔に捩じ込まれる第1上側固定ネジにより前記第1上側模型プレートを前記型枠プレートに固定し、前記第2上側模型プレートの前記上側台座部を前記第2上側嵌合凹部に嵌め込み、前記第2上側模型プレートの前記上側台座部貫通孔を貫通して前記第2上側ネジ孔に捩じ込まれる第2上側固定ネジにより前記第2上側模型プレートを前記型枠プレートに固定するとともに、前記第1下側模型プレートの前記下側台座部を前記第1下側嵌合凹部に嵌め込み、前記第1下側模型プレートの前記下側台座部貫通孔を貫通して前記第1下側ネジ孔に捩じ込まれる第1下側固定ネジにより前記第1下側模型プレートを前記型枠プレートに固定し、前記第2下側模型プレートの前記下側台座部を前記第2下側嵌合凹部に嵌め込み、前記第2下側模型プレートの前記下側台座部貫通孔を貫通して前記第2下側ネジ孔に捩じ込まれる第2下側固定ネジにより前記第2下側模型プレートを前記型枠プレートに固定することを特徴とするものとすることができる。
【0010】
本発明では、枠型プレートに設けられる上側嵌合凹部の大きさや数が予め規定されておらず、上側模型プレートの上側台座部サイズや数に合わせて形成できる。従って、例えば、鋳造対象物のサイズが枠型プレートに対して小さく、枠型プレート上に複数の上側模型プレートおよび下側模型プレートを取り付けることが可能な場合には、マシニングセンターにより枠型プレートに複数の上側嵌合凹部および下側嵌合凹部を形成することにより、複数の上側模型プレートおよび複数の下側模型プレートを枠型プレートに取り付けることができる。これにより、砂型造形用型により、鋳造対象物を一度に、複数、鋳造する砂型を造形できる。
【0011】
本発明において、前記上側模型プレートの上側模型部は、前記上側台座部に沿って、前記鋳造対象物の上半部分の外観形状を備える上側模型本体部分を、複数、備え、前記下側模型プレートの下側模型部は、前記下側台座部に沿って前記鋳造対象物の下半部分の外観形状を備える下側模型本体部分を、前記上側模型本体部分と、同数、備え、前記上側模型プレートおよび前記下側模型プレートが前記型枠プレートに取り付けられた状態を当該型枠プレートの厚み方向から見た場合に、前記上側模型プレートの複数の前記上側模型部本体のそれぞれは、前記下側模型プレートの複数の前記下側模型部本体のそれぞれと一致するものとすることができる。例えば、鋳造対象物のサイズが枠型プレートに対して小さい場合には、鋳造対象物を一つ鋳造するための上側模型プレートおよび下側模型プレートを枠型プレートに複数取り付けてもよいが、上側模型プレートの上側模型部に上側模型本体部分を複数備え、下側模型プレートの下側模型部に下側模型本体部分を上側模型本体部分と同数備えてもよい。ここで、本発明では、枠型プレートに形成する上側嵌合凹部の大きさが予め規定されておらず、上側模型プレートの上側台座部サイズに合わせて形成される。従って、上側模型プレートの上側台座部のサイズを任意に変更して、鋳造対象物の上半部分の外観形状を備える上側模型本体部分を、任意の数だけ、備えることができる。同様に、下側模型プレートの下側台座部のサイズを任意に変更して、鋳造対象物の下半部分の外観形状を備える下側模型本体部分を、上側模型本体部分と同数だけ備えることができる。従って、砂型造形用型により、鋳造対象物を一度に、複数、鋳造する砂型を造形できる。
【0012】
本発明において、前記上側模型部は、前記鋳造対象物の上半部分の外観形状を有する上側模型本体部分および中子を一方側から保持するための上側中子保持部分を備え、前記下側模型部は、前記鋳造対象物の下半部分の外観形状を有する下側模型本体部分および前記
中子を他方側から保持するための下側中子保持部分を備えるものとすることができる。このようにすれば、砂型造形用型を用いて造形した砂型に中子を保持させることができる。
【0013】
本発明において、前記模型プレート固定工程の前に、3Dプリンターを駆動制御して、上側部材固定孔を備える上側堰・湯道形成部材および下側部材固定孔を備える下側堰・湯道形成部材を製造する部材製造工程を有するとともに、前記模型プレート固定工程の後に、前記上側堰・湯道形成部材を前記枠型プレートの前記第1面に固定するとともに、前記下側堰・湯道形成部材を前記枠型プレートの前記第2面に固定する部材固定工程と、を有し、前記型枠プレート加工工程では、前記型枠プレートの前記第1面の側に、前記上側堰・湯道形成部材を所定の第1位置に配置したときに前記上側部材固定孔と連通する上側部材固定用ネジ孔を形成するとともに、前記型枠プレートの前記第2面の側に、下側堰・湯道形成部材を所定の第2位置に配置したときに前記下側部材固定孔と連通する下側材固定用ネジ孔を形成し、前記部材固定工程では、前記上側部材固定孔を貫通して前記上側部材固定用ネジ孔に捩じ込まれる上側部材固定用ネジにより前記上側堰・湯道形成部材を前記型枠プレートの前記第1面に固定し、前記下側部材固定孔を貫通して前記下側材固定用ネジ孔に捩じ込まれる下側部材固定用ネジにより前記堰・湯道形成部材を前記型枠プレートの前記第2面に固定するものとすることができる。3Dプリンターを用いれば、上側堰・湯道形成部材および下側堰・湯道形成部材の製造が容易である。従って、枠型プレートに設けられる上側嵌合凹部の大きさや数が予め規定されておらず、上側模型プレートの上側台座部サイズや数に合わせて形成された場合でも、枠型プレートに取り付ける上側堰・湯道形成部材および下側堰・湯道形成部材を製造することが容易である。また、上側堰・湯道形成部材および下側堰・湯道形成部材には、それぞれ上側部材固定孔および下側部材固定孔が設けられ、枠型プレートには、上側材固定用ネジ孔および下側部材固定ネジ孔が設けられるので、上側堰・湯道形成部材および下側堰・湯道形成部材を、正確に、型枠プレートに固定できる。
【0014】
本発明において、前記上側模型用基材および下側模型用基材は、金属、樹脂、または木からなることを特徴とする請求項1に記載の砂型造形用型の製造方法。
【0015】
本発明において、前記型枠プレートは、金属製、樹脂製、または木製であることを特徴とする請求項1に記載の砂型造形用型の製造方法。
【0016】
次に、本発明の砂型製造方法は、上記の製造方法により製造した砂型造形用型を、前記型枠プレートの第1面が上方を向く姿勢として、前記型枠プレートの前記第1面の側および前記第2面の側を鋳造砂で型込めする型込め工程と、前記型枠プレートの前記第1面の側を型込めした上側砂型と前記砂型造形用型とを上下方向に相対移動させて前記上側砂型と前記砂型造形用型とを離間させるとともに、前記型枠プレートの前記第2面の側を型込めした下側砂型と前記砂型造形用型とを前記上下方向に相対移動させ前記下側砂型と前記砂型造形用型とを離間させ、上下方向で離間する前記上側砂型と前記下側砂型との間から前記砂型造形用型を退避させる離型工程と、前記上側砂型と前記下側砂型とを上下方向に相対移動させて重ねる型合わせ工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
本発明では、上側砂型および下側砂型から砂型造形用型を離間させる離型工程において、上側砂型と下側砂型とは上下方向に移動する。また、上側砂型と下側砂型とを重ねる型合わせ工程においても、上側砂型と下側砂型とは上下方向に移動する。ここで、砂型造形用型は、型枠プレートの厚み方向から見た場合に、上側嵌合凹部と、下側嵌合凹部とが、一致する。従って、上側砂型および下側砂型を上下方向に移動させて離型と型合わせとを行うことにより、上側砂型と下側砂型との間に鋳造用のキャビティが精度よく形成される。
【0018】
また、本発明の砂型製造方法は、上記の製造方法により製造した砂型造形用型を、前記型枠プレートの第1面が上方を向く姿勢として、前記型枠プレートの前記第1面の側および前記第2面の側を鋳造砂で型込めする型込め工程と、前記型枠プレートの前記第1面の側を型込めした上側砂型と前記砂型造形用型とを上下方向に相対移動させて前記上側砂型と前記砂型造形用型とを離間させるとともに、前記型枠プレートの前記第2面の側を型込めした下側砂型と前記砂型造形用型とを前記上下方向に相対移動させ前記下側砂型と前記砂型造形用型とを離間させ、上下方向で離間する前記上側砂型と前記下側砂型との間から前記砂型造形用型を退避させる離型工程と、前記下側砂型において前記模型部の前記下側中子保持部分の形状が転写された下側中子保持部に前記中子を保持させる中子配置工程と、前記上側砂型と前記下側砂型とを上下方向に相対移動させて重ねて、前記上側砂型において前記上側中子保持部分の形状が転写された上側中子保持部に前記中子を保持させる型合わせ工程と、を有することを特徴とする。
【0019】
本発明では、上側砂型および下側砂型から砂型造形用型を離間させる離型工程において、上側砂型と下側砂型とは上下方向に移動する。また、上側砂型と下側砂型とを重ねる型合わせ工程においても、上側砂型と下側砂型とは上下方向に移動する。ここで、砂型造形用型は、型枠プレートの厚み方向から見た場合に、上側嵌合凹部と、下側嵌合凹部とが、一致する。従って、上側砂型および下側砂型を上下方向に移動させて離型と型合わせとを行うことにより、上側砂型と下側砂型との間に鋳造用のキャビティが精度よく形成される。また、本発明では、上側砂型と下側砂型との間に、中子を保持させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、鋳造対象物の外観形状を備える上側模型プレートおよび下側模型プレートは、それぞれマシニングセンターにより模型用基材を加工(切削)して制作される一つの部材である。従って、複数の部品を結合させて上側模型プレートおよび下側模型プレートのそれぞれを製作する場合と比較して、上側模型プレートおよび下側模型プレートの寸法精度は高い。また、型枠プレートにおいて、上側模型プレートの上側台座部を嵌め込む上側嵌合凹部、および下側模型プレートの上側台座部を嵌め込む下側嵌合凹部は、それぞれマシニングセンターにより型枠プレートを加工(切削)して形成される。従って、型枠プレートにおける各嵌合凹部の寸法精度および型枠プレート上における各嵌め込む凹部の位置精度は、高い。よって、型枠プレートの第1面の上側嵌合凹部と第2面の下側嵌合凹部とを、同一形状とし、これらを完全に重なる位置に設けることができる。さらに、マシニングセンターにより、上側模型プレートの上側台座部貫通孔、型枠プレートの上側ネジ孔、下側模型プレートの下側台座部貫通孔、および型枠プレートの下側ネジ孔は、マシニングセンターにより形成される。従って、これらを利用して、上側模型プレートおよび下側模型プレートを位置精度よく、枠型プレートに固定できる。さらに、型枠プレートの厚み方向から見た場合に、上側嵌合凹部と、下側嵌合凹部とは、一致する。従って、型枠プレートの第1面の側および第2面の側を鋳造砂で型込めして上側砂型と下側砂型とを造形して、これらの砂型を型合わせしたときに、上側砂型と下側砂型との間に鋳造用のキャビティが精度よく形成できる。また、上側嵌め込み凹および下側嵌め込み凹は、予め決められたサイズで型枠プレートに設けられているものではない。従って、上側模型プレートおよび下側模型プレートを設計する際に、上側模型プレートおよび下側模型プレートのサイズが型枠プレートに予め設けられた凹部のサイズに縛られることがない。よって、上側模型プレートおよび下側模型プレートの設計の自由度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明を適用した砂型製造方法のフローチャートである。
図2】鋳造対象物の斜視図である。
図3】模型プレートの説明図である。
図4】堰・湯道形成部材、およびガス抜き形成部材の説明図である。
図5】型枠プレートの説明図である。
図6】砂型造形用型の斜視図である。
図7】型込め工程の説明図である。
図8】離型工程に説明図である。
図9】中子配置工程および型合わせ工程の説明図である。
図10】変形例の模型プレートの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態である鋳造用の砂型製造方法を説明する。また、砂型を造形するための砂型造形用型の製造方法を説明する。
【0023】
(砂型製造方法)
図1は、本発明を適用した砂型製造方法のフローチャートである。図2は、鋳造対象物の斜視図である。図3は、模型プレートの説明図である。図4は、堰・湯道形成部材、およびガス抜き形成部材の説明図である。図4(a)は、型枠プレートの第1面に固定される上側堰・湯道形成部材、および上側ガス抜き形成部材の斜視図であり、図5(b)は、型枠プレートの第2面に固定される下側堰・湯道形成部材、および下側ガス抜き形成部材の斜視図である。図5は、型枠プレートの説明図である。図5(a)は、型枠プレートを第1面の側から見た場合の斜視図であり、図5(b)は、型枠プレートを第2面の側から見た場合の斜視図である。図6は、砂型造形用型の斜視図である。図6(a)は、砂型造形用型を第1面の側から見た場合の斜視図であり、図5(b)は、砂型造形用型を第2面の側から見た場合の斜視図である。図7は、型込め工程の説明図である。図8は、離型工程に説明図である。図9は、中子配置工程および型合わせ工程の説明図である。図7図8では、砂型造形用型及び砂型を断面で示す。図9では、中子および砂型を断面で示す。
【0024】
図2に示すように、本例では、鋳造対象物1は、鋳造物本体2と、中空部3を備える配管部材である。図1に示すように、砂型製造方法は、砂型造形用型5を製造する砂型造形用型製造工程ST1と、砂型造形用型5を用いて鋳造砂を型込めする型込め工程ST2と、型込めした鋳造砂から砂型造形用型5を離間させる離型工程ST3と、離型により取得される上側砂型6と下側砂型7との間に中子8(図9参照)を配置する中子配置工程ST4と、上側砂型6と下側砂型7とを重ねて砂型9を完成させる型合わせ工程ST5と、を有する。
【0025】
砂型造形用型製造工程ST1では、型枠プレート11の第1面11aの側に上側模型プレート12、上側堰・湯道形成部材13、および上側ガス抜き形成部材14を固定するとともに、型枠プレート11の第2面11bの側に下側模型プレート16、下側堰・湯道形成部材17、および下側ガス抜き形成部材18を固定して、砂型造形用型5を製造する(図6参照)。すなわち、砂型造形用型5の製造方法は、模型プレート制作工程ST11と、部材製造工程ST12と、型枠プレート加工工程ST13と、模型プレート固定工程ST14と、をこの順に有する。
【0026】
図3に示すように、模型プレート制作工程ST11は、マシニングセンターを駆動制御して上側模型用基材20を加工して、鋳造対象物1の上半部分1aの外径形状を備える上側模型プレート12を製作するとともに、下側模型用基材21を加工して、鋳造対象物1の下半部分1bの外径形状を備える下側模型プレート16を製作する。上側模型用基材20および下側模型用基材21は、金属塊である。本例では、上側模型用基材20および下側模型用基材21はアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。マシニングセンターの工具交換装置には、切削工具、穴あけ工具、タップ工具、などが装着されている。これらの工具は、必要に応じて、選択的に、主軸に装着される。マシニングセンターは、上側模型プレート12の上側3Dデータに基づいて駆動制御されて、上側模型用基材20から
上側模型プレート12を削り出す。また、マシニングセンターは、下側模型プレート16の下側3Dデータに基づいて駆動制御されて、下側模型用基材21から下側模型プレート16を削り出す。
【0027】
本例では、上側模型プレート12として、同一形状の第1上側模型プレート12(1)および第2上側模型プレート12(2)を製作する。また、下側模型プレート16として、同一形状の第1下側模型プレート16(1)および第2下側模型プレート16(2)を製作する。
【0028】
上側3Dデータに基づいて制作される上側模型プレート12は、一定厚みの上側台座部25、上側台座部25から当該上側台座部25の厚み方向の一方側に突出する上側模型部26、および上側台座部25を厚み方向に貫通する上側台座部貫通孔27を備える。上側模型部26は、鋳造対象物1の上半部分1aの外観形状を有する上側模型本体部分28および中子8を一方側から保持するための上側中子保持部分29を備える。上側中子保持部分29は上側台座部25から突出するとともに、上側模型本体部分28から上側台座部25に沿った方向に突出する。また、下側3Dデータに基づいて制作される下側模型プレート16は、一定厚みの下側台座部30、下側台座部30から当該下側台座部30の厚み方向の一方側に突出する下側模型部31、および下側台座部30を厚み方向に貫通する下側台座部貫通孔32を備える。下側台座部30は、上側台座部25と同一形状を備える。下側模型部31は、鋳造対象物1の下半部分1bの外観形状を有する下側模型本体部分33および中子8を一方側から保持するための下側中子保持部分34を備える。下側中子保持部分34は下側台座部30から突出するとともに、下側模型本体部分33から下側台座部30に沿った方向に突出する。
【0029】
部材製造工程ST12は、砂型9において堰および湯道となる部分を形成するための上側堰・湯道形成部材13と、下側堰・湯道形成部材17と、を製造する。また、砂型9においてガス抜きを形成するための上側ガス抜き形成部材14および下側ガス抜き形成部材18とを製造する。上側堰・湯道形成部材13、下側堰・湯道形成部材17、上側ガス抜き形成部材14および下側ガス抜き形成部材18は、樹脂製である。上側堰・湯道形成部材13、下側堰・湯道形成部材17、上側ガス抜き形成部材14および下側ガス抜き形成部材18は、予め作成した部材製造用の3Dデータに基づいて3Dプリンターを駆動制御して製造する。図4(a)に示すように、上側堰・湯道形成部材13は、上側部材固定孔36を備える。図4(b)に示すように、下側堰・湯道形成部材17は、下側部材固定孔37を備える。また、上側ガス抜き形成部材14は、上側ガス抜き形成部材固定孔38を備え、下側ガス抜き形成部材18は、下側ガス抜き形成部材固定孔39を備える。ここで、堰を形成する部材と、湯道を形成する部材は、異なる部材として、別々に形成される場合がある。
【0030】
型枠プレート加工工程ST13では、マシニングセンターを駆動制御して、一定厚みの型枠プレート11を、加工する。型枠プレート11は、金属製である。本例では、アルミニウム製またはアルミニウム合金製である。マシニングセンターは、枠型プレート加工用データに基づいて駆動制御される。
【0031】
図5(a)に示すように、型枠プレート加工工程ST13では、型枠プレート11の第1面11aの側に、上側台座部25が嵌合する上側嵌合凹部40、および上側台座部25を上側嵌合凹部40に嵌め込んだときに上側台座部貫通孔27に連通する上側ネジ孔41を形成する。また、型枠プレート11の第1面11aの側に、上側堰・湯道形成部材13を所定の第1位置に配置したときに上側堰・湯道形成部材13の上側部材固定孔36と連通する上側部材固定用ネジ孔42を形成する。さらに、型枠プレート11の第1面11aの側に、上側ガス抜き形成部材14を所定の第3位置に配置したときに上側ガス抜き形成
部材14の上側ガス抜き形成部材固定孔38と連通する上側ガス抜き形成部材固定用ネジ孔43を形成する。
【0032】
また、型枠プレート加工工程ST13では、図5(b)に示すように、型枠プレート11の第2面11bの側に、下側台座部30が嵌合する下側嵌合凹部45、および下側台座部30を下側嵌合凹部45に嵌め込んだときに下側台座部貫通孔32に連通する下側ネジ孔46を形成する。さらに、型枠プレート11の第2面11bの側に、下側堰・湯道形成部材17を所定の第2位置に配置したときに下側堰・湯道形成部材17の下側部材固定孔37と連通する下側材固定用ネジ孔47を形成する。また、型枠プレート11の第2面11bの側に、下側ガス抜き形成部材18を所定の第4位置に配置したときに下側ガス抜き形成部材18の下側ガス抜き形成部材固定孔39と連通する下側ガス抜き形成部材固定用ネジ孔48を形成する。さらに、型枠プレート11の第2面11bにおける型枠プレート11の四隅部分に、位置決め穴50を形成する。ここで、型枠プレート11の厚み方向Xから見た場合に、上側嵌合凹部40と、下側嵌合凹部45とは、一致する。すなわち、上側嵌合凹部40と、下側嵌合凹部45とは、型枠プレート11の厚み方向Xで完全に重なる。
【0033】
ここで、本例では、上側嵌合凹部40として、型枠プレート11の第1面11aの側に、第1上側模型プレート12(1)用の第1上側嵌合凹部40(1)および第2上側模型プレート12(2)用の第2上側嵌合凹部40(2)を形成する。上側ネジ孔41として、第1上側模型プレート12(1)用の第1上側ネジ孔41(1)および第2上側模型プレート12(2)用の第2上側ネジ孔41(2)を形成する。下側嵌合凹部45として、型枠プレート11の第2面11bの側に、第1下側模型プレート16(1)用の第1下側嵌合凹部45(1)および第2下側模型プレート16(2)用の第2下側嵌合凹部45(2)を形成する。下側ネジ孔46として、第1下側模型プレート16(1)用の第1下側ネジ孔46(1)および第2下側模型プレート16(2)用の第2下側ネジ孔46(2)を形成する。
【0034】
図6(a)に示すように、模型プレート固定工程ST14では、上側台座部25を上側嵌合凹部40に嵌め込み、上側台座部貫通孔27を貫通して第1上側ネジ孔41(1)に捩じ込まれる上側固定ネジ51により上側模型プレート12を型枠プレート11に固定する。また、上側模型プレート12を型枠プレート11に取り付けた後に、上側部材固定孔36を貫通して上側部材固定用ネジ孔42に捩じ込まれる上側部材固定用ネジ52により上側堰・湯道形成部材13を型枠プレート11の第1面11aに固定するとともに、上側ガス抜き形成部材固定孔38を貫通して上側ガス抜き形成部材固定用ネジ孔43に捩じ込まれる上側ガス抜き形成部材固定用ネジ53により上側ガス抜き形成部材14を型枠プレート11の第1面11aに固定する。
【0035】
また、模型プレート固定工程ST14では、図6(b)に示すように、下側台座部30を下側嵌合凹部45に嵌め込み、下側台座部貫通孔32を貫通して下側ネジ孔46に捩じ込まれる下側固定ネジ55により下側模型プレート16を型枠プレート11に固定する。また、下側模型プレート16を型枠プレート11に取り付けた後に、下側部材固定孔37を貫通して下側部材固定用ネジ孔に捩じ込まれる下側部材固定用ネジ56により下側堰・湯道形成部材17を型枠プレート11の第2面11bに固定するとともに、下側ガス抜き形成部材固定孔39を貫通して下側ガス抜き形成部材固定用ネジ孔48に捩じ込まれる下側ガス抜き形成部材固定用ネジ57により下側ガス抜き形成部材18を型枠プレート11の第2面11bに固定する。
【0036】
本例では、模型プレート固定工程ST14において、第1上側模型プレート12(1)の上側台座部25を第1上側嵌合凹部40(1)に嵌め込み、第1上側模型プレート12
(1)の上側台座部貫通孔27を貫通して第1上側ネジ孔41(1)に捩じ込まれる第1上側固定ネジ51(1)により第1上側模型プレート12(1)を型枠プレート11に固定する。また、第2上側模型プレート12(2)の上側台座部25を第2上側嵌合凹部40(2)に嵌め込み、第2上側模型プレート12(2)の上側台座部貫通孔27を貫通して第2上側ネジ孔41(2)に捩じ込まれる第2上側固定ネジ51(2)により第2上側模型プレート12(2)を型枠プレート11に固定する。さらに、第1下側模型プレート16(1)の下側台座部30を第1下側嵌合凹部45(1)に嵌め込み、第1下側模型プレート16(1)の下側台座部貫通孔32を貫通して第1下側ネジ孔46(1)に捩じ込まれる第1下側固定ネジ55(1)により第1下側模型プレート16(1)を型枠プレート11に固定する。また、第2下側模型プレート16(2)の下側台座部30を第2下側嵌合凹部45(2)に嵌め込み、第2下側模型プレート16(2)の下側台座部貫通孔32を貫通して第2下側ネジ孔46(2)に捩じ込まれる第2下側固定ネジ55(2)により第2下側模型プレート16(2)を型枠プレート11に固定する。
【0037】
以上より、型枠プレート11、並びに、型枠プレート11に固定された上側模型プレート12、下側模型プレート16、上側堰・湯道形成部材13、下側堰・湯道形成部材17、上側ガス抜き形成部材14、および下側ガス抜き形成部材18を備える砂型造形用型5が完成する。
【0038】
次に、型込め工程ST2では、図7に示すように、砂型造形用型5における型枠プレート11の第1面11aの側、および第2面11bの側が鋳造砂で型込めする。図7の上段の図では、砂型造形用型5を、第1上側模型プレート12(1)および第1下側模型プレート16(1)を通過する面で切断している。図7の下段の図では、型込めされた鋳造砂および砂型造形用型5を、第1上側模型プレート12(1)および第1下側模型プレート16(1)を通過する面で切断している。本例では、砂型造形用型5を砂型造形装置(不図示)に投入して、型込めを行う。砂型造形用型5を砂型造形装置に投入する際には、型枠プレート11は水平状態で、第1面11aが上方を向き、第2面11bが下方を向く姿勢とされる。また、型枠プレート11は、第2面11bの四隅部分に形成された位置決め穴50を利用して、砂型造形装置内の所定の位置に位置決めされる。
【0039】
ここで、砂型造形装置は、伸縮可能な湯口形成部61を備える。砂型造形装置が動作すると、上方から下方に向かって湯口形成部61が伸長して、砂型造形用型5の上側堰・湯道形成部材13に接触する。その後、砂型造形装置は、砂型造形用型5における型枠プレート11の第1面11aの側、および、第2面11bの側を、鋳造砂で型込めする。
【0040】
離型工程ST3では、図8に示すように、砂型造形用型5を鋳造砂から離間させて、鋳造対象物1の上半部分1aの形状が転写された上側砂型6と、鋳造対象物1の下半部分11bの形状が転写された下側砂型7と、を取得する。本例では、離型工程ST3は、砂型造形装置により行われる。離型に際して、砂型造形装置は、まず、湯口形成部61を短縮させて、型込めした鋳造砂から抜く。これにより、型枠プレート11の第1面11aの側を型込めした上側砂型6に湯口69が形成される。次に、砂型造形装置は、上側砂型6を、砂型造形用型5から上方に移動させることにより、上側砂型6と砂型造形用型5とを離間させるとともに、型枠プレート11の第2面11bの側を型込めした下側砂型7を砂型造形用型5から下方に移動させることにより下側砂型7と砂型造形用型5とを離間させる。また、砂型造形装置は、上下方向で離間する上側砂型6と下側砂型7との間から砂型造形用型5を退避させる。すなわち、上側砂型6および下側砂型7に対して砂型造形用型5を水平方向に移動させ、上下方向から見た場合に砂型造形用型5が上側砂型6および下側砂型7と重ならない位置に配置する。ここで、上下方向は、型枠プレート11の厚み方向Xである。
【0041】
中子配置工程ST4では、図9の上段の図に示すように、下側砂型7において下側模型プレート16の下側中子保持部分34の形状が転写された下側中子保持部65に中子8を保持させる。ここで、中子8は、別途、鋳造砂を固めて製造されている。
【0042】
型合わせ工程ST5では、図9の下段の図に示すように、上側砂型6と下側砂型7とを上下方向で相対移動させて重ねて、上側砂型6において上側模型プレート12の上側中子保持部分29の形状が転写された上側中子保持部66に中子8を保持させる。また、上側砂型6と下側砂型7とを重ねて、上側砂型6と下側砂型7との間に、鋳造用のキャビティ70を形成する。これにより、砂型9が完成する。
【0043】
その後、鋳造対象物1を鋳造する際には、砂型造形装置の湯口形成部61により上側砂型6に設けられた湯口69から、砂型9のキャビティ70に鋳湯を流し込む。
【0044】
(作用効果)
本例の砂型造形用型5の製造方法は、模型プレート制作工程ST11と、型枠プレート加工工程ST13と、模型プレート固定工程ST14と、をこの順に有する。模型プレート制作工程ST11では、マシニングセンターを駆動制御して上側模型用基材20を加工し、一定厚みの上側台座部25、鋳造対象物1の上半部分1aの外観形状を備え上側台座部25から当該上側台座部25の厚み方向の一方側に突出する上側模型部26、および上側台座部25を厚み方向に貫通する上側台座部貫通孔27を備える上側模型プレート12を制作するとともに、マシニングセンターを駆動制御して下側模型用基材21を加工し、上側台座部25と同一形状の下側台座部30、鋳造対象物1の下半部分11bの外観形状を備え下側台座部30から当該下側台座部30の厚み方向の一方側に突出する下側模型部31、および下側台座部30を厚み方向に貫通する下側台座部貫通孔32を備える下側模型プレート16を制作する。型枠プレート加工工程ST13では、マシニングセンターを駆動制御して一定厚みの型枠プレート11を加工し、型枠プレート11の第1面11aの側に、上側台座部25が嵌合する上側嵌合凹部40、および上側台座部25を上側嵌合凹部40に嵌め込んだときに上側台座部貫通孔27に連通する上側ネジ孔41を形成し、型枠プレート11の第2面11bの側に、下側台座部30が嵌合する下側嵌合凹部45、および下側台座部30を下側嵌合凹部45に嵌め込んだときに下側台座部貫通孔32に連通する下側ネジ孔46を形成する。模型プレート固定工程ST14では、上側台座部25を上側嵌合凹部40に嵌め込み、上側台座部貫通孔27を貫通して上側ネジ孔41に捩じ込まれる上側固定ネジ51により上側模型プレート12を型枠プレート11に固定するとともに、下側台座部30を下側嵌合凹部45に嵌め込み、下側台座部貫通孔32を貫通して下側ネジ孔46に捩じ込まれる下側固定ネジ55により下側模型プレート16を型枠プレート11に固定する。型枠プレート11の厚み方向Xから見た場合に、上側嵌合凹部40と、下側嵌合凹部45とは、一致する。
【0045】
本例によれば、鋳造対象物1の外観形状を備える上側模型プレート12および下側模型プレート16は、それぞれマシニングセンターにより模型用基材を加工(切削)して制作される一つの部材である。従って、複数の部品を結合させて上側模型プレート12および下側模型プレート16のそれぞれを製作する場合と比較して、上側模型プレート12および下側模型プレート16の寸法精度は高い。また、型枠プレート11において、上側模型プレート12の上側台座部25を嵌め込む上側嵌合凹部40、および下側模型プレート16の上側台座部25を嵌め込む下側嵌合凹部45は、それぞれマシニングセンターにより型枠プレート11を加工(切削)して形成される。従って、型枠プレート11における各嵌合凹部の寸法精度および型枠プレート11上における各嵌め込む凹部の位置精度は、高い。よって、型枠プレート11の第1面11aの上側嵌合凹部40と第2面11bの下側嵌合凹部45とを、同一形状とし、型枠プレート11の厚み方向Xから見た場合に、これらを完全に重なる位置に設けることができる。さらに、上側模型プレート12の上側台座
部貫通孔27は、上側模型プレート12の制作時にマシニングセンターにより形成され、型枠プレート11の第1上側ネジ孔41(1)は、型枠プレート11の加工時にマシニングセンターにより形成される。従って、上側台座部貫通孔27および第1上側ネジ孔41(1)の位置精度は高い。よって、上側模型プレート12は、上側模型プレート12の上側台座部25の上側台座部貫通孔27を貫通して型枠プレートの第1上側ネジ孔41(1)に捩じ込まれる上側固定ネジ51により、型枠プレート11に精度よく固定される。同様に、下側模型プレート16の下側台座部貫通孔32は、下側模型プレート16の制作時にマシニングセンターにより形成され、型枠プレート11の下側ネジ孔46は、型枠プレート11の加工時にマシニングセンターにより形成される。従って、下側台座部貫通孔32および下側ネジ孔46の位置精度は高い。よって、下側模型プレート16は、下側模型プレート16の下側台座部30の下側台座部貫通孔32を貫通して型枠プレート11の下側ネジ孔46に捩じ込まれる下側固定ネジ55により、型枠プレート11に精度よく固定される。ここで、型枠プレート11の厚み方向Xから見た場合に、上側嵌合凹部40と、下側嵌合凹部45とは、一致する。従って、型枠プレート11の第1面11aの側および第2面11bの側を鋳造砂で型込めして上側砂型6と下側砂型7とを造形して、これらの砂型9を型合わせしたときに、上側砂型6と下側砂型7との間に鋳造用のキャビティ70を精度よく形成できる
【0046】
また、型枠プレート11には、マシニングセンターにより、上側模型プレート12の上側台座部25と嵌合するサイズの上側嵌合凹部40と、下側模型プレート16の下側台座部30と嵌合するサイズの下側嵌合凹部45とが形成される。ここで、上側嵌合凹部40および下側嵌合凹部45は、予め決められたサイズで型枠プレート11に設けられているものではない。従って、上側模型プレート12および下側模型プレート16を設計する際に、上側模型プレート12および下側模型プレート16のサイズが、型枠プレート11に予め設けられた嵌合凹部のサイズに縛られることがない。よって、上側模型プレート12および下側模型プレート16の設計の自由度が向上する。これにより、多様なサイズを備える多種類の鋳造対象物1の鋳造に対応することが容易である。
【0047】
本例において、模型プレート制作工程ST11では、上側模型プレート12として、同一形状の第1上側模型プレート12(1)および第2上側模型プレート12(2)を製作し、下側模型プレート16として、同一形状の第1下側模型プレート16(1)および第2下側模型プレート16(2)を製作する。型枠プレート加工工程ST13では、上側嵌合凹部40として、型枠プレート11の第1面11aの側に、第1上側模型プレート12(1)用の第1上側嵌合凹部40(1)および第2上側模型プレート12(2)用の第2上側嵌合凹部40(2)を形成し、第1上側ネジ孔41(1)として、第1上側模型プレート12(1)用の第1上側ネジ孔41(1)および第2上側模型プレート12(2)用の第2上側ネジ孔41(2)を形成する。また、下側嵌合凹部45として、型枠プレート11の第2面11bの側に、第1下側模型プレート16(1)用の第1下側嵌合凹部45(1)および第2下側模型プレート16(2)用の第2下側嵌合凹部45(2)を形成する。下側ネジ孔46として、第1下側模型プレート16(1)用の第1下側ネジ孔46(1)および第2下側模型プレート16(2)用の第2下側ネジ孔46(2)を形成する。模型プレート固定工程ST14では、第1上側模型プレート12(1)の上側台座部25を第1上側嵌合凹部40(1)に嵌め込み、第1上側模型プレート12(1)の上側台座部貫通孔27を貫通して第1上側ネジ孔41(1)に捩じ込まれる第1上側固定ネジ51(1)により第1上側模型プレート12(1)を型枠プレート11に固定し、第2上側模型プレート12(2)の上側台座部25を第2上側嵌合凹部40(2)に嵌め込み、第2上側模型プレート12(2)の上側台座部貫通孔27を貫通して第2上側ネジ孔41(2)に捩じ込まれる第2上側固定ネジ51(2)により第2上側模型プレート12(2)を型枠プレート11に固定する。また、第1下側模型プレート16(1)の下側台座部30を第1下側嵌合凹部45(1)に嵌め込み、第1下側模型プレート16(1)の下側台座
部貫通孔32を貫通して第1下側ネジ孔46(1)に捩じ込まれる第1下側固定ネジ55(1)により第1下側模型プレート16(1)を型枠プレート11に固定し、第2下側模型プレート16(2)の下側台座部30を第2下側嵌合凹部45(2)に嵌め込み、第2下側模型プレート16(2)の下側台座部貫通孔32を貫通して第2下側ネジ孔46(2)に捩じ込まれる第2下側固定ネジ55(2)により第2下側模型プレート16(2)を型枠プレート11に固定する。
【0048】
本例では、型枠プレート11に設けられる上側嵌合凹部40の大きさや数が予め規定されておらず、上側模型プレート12の上側台座部25サイズや数に合わせて形成できる。従って、鋳造対象物1のサイズが型枠プレート11に対して小さく、型枠プレート11上に複数の上側模型プレート12および下側模型プレート16を取り付けることが可能な場合には、マシニングセンターにより型枠プレート11に複数の上側嵌合凹部40および下側嵌合凹部45を形成することにより、複数の上側模型プレート12および複数の下側模型プレート16を型枠プレート11に取り付けることができる。従って、砂型造形用型5により、鋳造対象物1を一度に、複数、鋳造する砂型9を造形できる。
【0049】
本例において、上側模型部26は、鋳造対象物1の上半部分1aの外観形状を有する上側模型本体部分28および中子8を一方側から保持するための上側中子保持部分29を備え、下側模型部31は、鋳造対象物1の下半部分11bの外観形状を有する下側模型本体部分33および中子8を他方側から保持するための下側中子保持部分34を備えるものとすることができる。このようにすれば、砂型造形用型5を用いて造形した砂型9に中子8を保持させることができる。
【0050】
本例において、模型プレート固定工程ST14の前に、3Dプリンターを駆動制御して、上側部材固定孔36を備える上側堰・湯道形成部材13および下側部材固定孔37を備える下側堰・湯道形成部材17を製造する部材製造工程ST12を有し、模型プレート固定工程ST14の後に、上側堰・湯道形成部材13を型枠プレート11の第1面11aに固定するとともに、下側堰・湯道形成部材17を型枠プレート11の第2面11bに固定する部材固定工程と、を有し、型枠プレート加工工程ST13では、型枠プレート11の第1面11aの側に、上側堰・湯道形成部材13を所定の第1位置に配置したときに上側部材固定孔36と連通する上側部材固定用ネジ孔42を形成するとともに、型枠プレート11の第2面11bの側に、下側堰・湯道形成部材17を所定の第2位置に配置したときに下側部材固定孔37と連通する下側材固定用ネジ孔47を形成し、部材固定工程では、上側部材固定孔36を貫通して上側部材固定用ネジ孔42に捩じ込まれる上側部材固定用ネジ52により上側堰・湯道形成部材13を型枠プレート11の第1面11aに固定し、下側部材固定孔37を貫通して下側材固定用ネジ孔47に捩じ込まれる下側部材固定用ネジ56により堰・湯道形成部材を型枠プレート11の第2面11bに固定するものとすることができる。
【0051】
ここで、3Dプリンターを用いれば、上側堰・湯道形成部材13および下側堰・湯道形成部材17の製造が容易である。従って、型枠プレート11に設けられる上側嵌合凹部40の大きさや数が予め規定されておらず、上側模型プレート12の上側台座部25サイズや数に合わせて形成された場合でも、型枠プレート11に取り付ける上側堰・湯道形成部材13および下側堰・湯道形成部材17を製造することが容易である。また、上側堰・湯道形成部材13および下側堰・湯道形成部材17には、それぞれ上側部材固定孔36および下側部材固定孔37が設けられ、型枠プレート11には、上側材固定用ネジ孔および下側部材固定ネジ孔が設けられるので、上側堰・湯道形成部材13および下側堰・湯道形成部材17を、正確に、型枠プレート11に固定できる。
【0052】
また、本例の砂型製造方法は、型込め工程ST2と、離型工程ST3と、中子配置工程
ST4と、型合わせ工程ST5と、をこの順に有する。型込め工程ST2では、砂型造形用型5を、型枠プレート11の第1面11aが上方を向く姿勢として、型枠プレート11の第1面11aの側および第2面11bの側を鋳造砂で型込めする。離型工程ST3では、型枠プレート11の第1面11aの側を型込めした上側砂型6を、砂型造形用型5から上方に移動させることにより、上側砂型6と砂型造形用型5とを離間させるとともに、型枠プレート11の第2面11bの側を型込めした下側砂型7を砂型造形用型5から下方に移動させることにより下側砂型7と砂型造形用型5とを離間させる。また、上下方向で離間する上側砂型6と下側砂型7との間から砂型造形用型5を退避させる。中子配置工程ST4では、下側砂型7において下側模型部31の下側中子保持部分34の形状が転写された下側中子保持部65に中子8を保持させる。型合わせ工程ST5では、上側砂型6と下側砂型7とを上下方向に相対移動させて重ねて、上側砂型6において上側模型部26の上側中子保持部分29の形状が転写された上側中子保持部66に中子8を保持させる型合わせする。
【0053】
本例では、上側砂型6および下側砂型7から砂型造形用型5を離間させる離型工程ST3において、上側砂型6と下側砂型7とは上下方向に移動する。また、上側砂型6と下側砂型7とを重ねる型合わせ工程ST5においても、上側砂型6と下側砂型7とは上下方向に移動する。ここで、砂型造形用型5は、型枠プレート11の厚み方向Xから見た場合に、上側嵌合凹部40と、下側嵌合凹部45とが、一致する。従って、上側砂型6および下側砂型7を上下方向に移動させて離型と型合わせとを行うことにより、上側砂型6と下側砂型7との間に鋳造用のキャビティ70が精度よく形成される。また、上側砂型6と下側砂型7との間に、中子8を保持させることができる。
【0054】
(その他の実施の形態)
型枠プレート11に固定する上側模型プレート12と下側模型プレート16との組は、一組でもよく、3組以上でもよい。すなわち、型枠プレート11に固定する上側模型プレート12と下側模型プレート16との組の数は、鋳造対象物1のサイズに応じて、変更することができる。
【0055】
図10(a)は、変形例の上側模型プレート12の斜視図である。図10(b)は、変形例の下側模型プレート16の斜視図である。図10(b)では、下側模型プレートは、模型部を下側にした姿勢とされている。本例では、上側模型プレート12の上側模型部26は、上側台座部25に沿って、鋳造対象物1の上半部分1aの外観形状を備える上側模型本体部分28を、複数、備える。下側模型プレート16の下側模型部31は、下側台座部30に沿って鋳造対象物1の下半部分11bの外観形状を備える下側模型本体部分33を、上側模型本体部分28と、同数、備える。なお、上側模型プレート12および下側模型プレート16が型枠プレート11に取り付けられた状態を当該型枠プレート11の厚み方向Xから見た場合に、上側模型プレート12の複数の上側模型部26本体のそれぞれは、下側模型プレート16の複数の下側模型部31本体のそれぞれと一致する。
【0056】
ここで、鋳造対象物1のサイズが型枠プレート11に対して小さい場合には、上記のように、鋳造対象物1を一つ鋳造するための上側模型プレート12および下側模型プレート16を型枠プレート11に複数取り付けてもよいが、上側模型プレート12の上側模型部26に上側模型本体部分28を、複数、備え、下側模型プレート16の下側模型部31に下側模型本体部分33を、上側模型本体部分28と同数、備えてもよい。すなわち、本例の砂型造形方法では、型枠プレート11の第1面11aに形成する上側嵌合凹部40の大きさが予め規定されておらず、上側模型プレート12の上側台座部25サイズに合わせて形成される。また、型枠プレート11の第2面11bに形成する下側嵌合凹部45の大きさが予め規定されておらず、下側模型プレート16の下側台座部45サイズに合わせて形成される。
【0057】
従って、上側模型プレート12の上側台座部25のサイズを任意に変更して、鋳造対象物1の上半部分1aの外観形状を備える上側模型本体部分28を、任意の数だけ、備えることができる。同様に、下側模型プレート16の下側台座部30のサイズを任意に変更して、鋳造対象物1の下半部分11bの外観形状を備える下側模型本体部分33を、上側模型本体部分28と同数だけ備えることができる。従って、砂型造形用型5により、鋳造対象物1を一度に、複数、鋳造する砂型9を造形できる。
【0058】
なお、上側模型部26に上側模型本体部分28を複数備える上側模型プレート12と、下側模型部31に下側模型本体部分33を上側模型本体部分28と同数備える下側模型プレート16を用いる場合において、上側模型プレート12として、同一形状の第1上側模型プレート12(1)および第2上側模型プレート12(2)を製作し、下側模型プレート16として、同一形状の第1下側模型プレート16(1)および第2下側模型プレート16(2)を製作してもよい。この場合には、型枠プレート加工工程ST13では、上側嵌合凹部40として、型枠プレート11の第1面11aの側に、第1上側模型プレート12(1)用の第1上側嵌合凹部40(1)および第2上側模型プレート12(2)用の第2上側嵌合凹部40(2)を形成する。また、下側嵌合凹部45として、型枠プレート11の第2面11bの側に、第1下側模型プレート16(1)用の第1下側嵌合凹部45(1)および第2下側模型プレート16(2)用の第2下側嵌合凹部45(2)を形成する。このようにすれば、砂型造形用型5により、鋳造対象物1を一度に、複数、鋳造する砂型9を造形できる。
【0059】
ここで、鋳造対象物1が中空部を有さない場合には、上側模型プレート12の上側模型部26に上側中子保持部分29を備える必要はなく、下側模型プレート16の下側模型部31に下側中子保持部分34を備える必要もない。また、砂型製造方法において、中子配置工程ST4は、必要ない。
【0060】
また、離型工程ST3では、型枠プレート11の第1面11aの側を型込めした上側砂型6と砂型造形用型5とを上下方向に相対移動させて上側砂型6と砂型造形用型5とを離間させるとともに、型枠プレート11の第2面11bの側を型込めした下側砂型7と砂型造形用型5とを上下方向に相対移動させ下側砂型7と砂型造形用型5とを離間させ、上下方向で離間する上側砂型6と下側砂型7との間から砂型造形用型5を退避させればよい。例えば、下側砂型7に対して、砂型造形用型5および型枠プレート11の上側に型込めされた上側砂型6を上方に離間させた後に、上側砂型6に対して砂型造形用型5を下方に離間させて、上下方向で離間する上側砂型6と下側砂型7との間から砂型造形用型5を退避させてもよい。このようにしても、離型工程ST3において、上側砂型6と下側砂型7とが水平方向に相対移動することがない。従って、上側砂型6および下側砂型7を上下方向に移動させて離型と型合わせとを行うことにより、上側砂型6と下側砂型7との間に鋳造用のキャビティ70が精度よく形成される。
【0061】
本例において、上側模型用基材20および下側模型用基材21は、樹脂、または木からなるものでもよい。また、本例において、型枠プレート11は、樹脂製、または木製でもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…鋳造対象物、2…中空部分、5…砂型造形用型、6…上側砂型、7…下側砂型、8…中子、9…砂型、11…型枠プレート、11a…第1面、11b…第2面、12…上側模型プレート、12(1)…第1上側模型プレート、12(2)…第2上側模型プレート、13…上側堰・湯道形成部材、14…上側ガス抜き形成部材、16…下側模型プレート、16(1)…第1下側模型プレート、16(2)…第2下側模型プレート、17…下側堰
・湯道形成部材、18…下側ガス抜き形成部材、20…上側模型用基材、21…下側模型用基材、25…上側台座部、26…上側模型部、27…上側台座部貫通孔、28…上側模型本体部分、29…上側中子保持部分、30…下側台座部、31…下側模型部、32…下側台座部貫通孔、33…下側模型本体部分、34…下側中子保持部分、36…上側部材固定孔、37…下側部材固定孔、38…上側ガス抜き形成部材固定孔、39…下側ガス抜き形成部材固定孔、40…上側嵌合凹部、40(1)…第1上側嵌合凹部、40(2)…第2上側嵌合凹部、41…上側ネジ孔、41(1)…第1上側ネジ孔、41(2)…第2上側ネジ孔、42…上側部材固定用ネジ孔、43…上側ガス抜き形成部材固定用ネジ孔、45…下側嵌合凹部、45(1)…第1下側嵌合凹部、45(2)…第2下側嵌合凹部、46…下側ネジ孔、46(1)…第1下側ネジ孔、46(2)…第2下側ネジ孔、47…下側材固定用ネジ孔、48…下側ガス抜き形成部材固定用ネジ孔、50…位置決め穴、51…上側固定ネジ、51(1)…第1上側固定ネジ、51(2)…第2上側固定ネジ、52…上側部材固定用ネジ、53…上側ガス抜き形成部材固定用ネジ、55…下側固定ネジ、55(1)…第1下側固定ネジ、55(2)…第2下側固定ネジ、56…下側部材固定用ネジ、57…下側ガス抜き形成部材固定用ネジ、60…砂型造形装置、61…湯口形成部、65…下側中子保持部、66…上側中子保持部、ST1…砂型造形用型製造工程、ST2…型込め工程、ST3…離型工程、ST4…中子配置工程、ST5…型合わせ工程、ST11…模型プレート制作工程、ST12…部材製造工程、ST13…型枠プレート加工工程、ST14…模型プレート固定工程
図1
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図10