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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167580
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
   D06F 58/38 20200101AFI20241127BHJP
   D06F 34/26 20200101ALI20241127BHJP
【FI】
D06F58/38
D06F34/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083758
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】塚本 和寛
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 聡凜
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 真理
(72)【発明者】
【氏名】高橋 幸太郎
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA02
3B167AA05
3B167AA12
3B167AB23
3B167AE04
3B167AE05
3B167AE07
3B167AE12
3B167AE13
3B167BA43
3B167BA45
3B167BA55
3B167JA41
3B167KA36
3B167KB16
3B167LA23
3B167LC20
3B167LD12
3B167LE07
3B167LF02
3B167LG08
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、洗濯槽内の相対湿度に基づいて洗濯槽内への送風量を制御することにより乾燥効率を向上することができる洗濯乾燥機を提供することにある。
【解決手段】
本発明の洗濯乾燥機Sは、外槽2と、外槽2の内側に配置された洗濯槽3と、乾燥用空気を生成する送風機22および熱源401を含む乾燥機構と、送風機22および熱源401を制御する制御装置402と、乾燥用空気の相対湿度を検知する湿度センサ500と、を備える。湿度センサ500は洗濯槽3の内側に配置される。制御装置402は、乾燥工程において、湿度センサ500で検知した洗濯槽3の内側の相対湿度をもとに送風機22の回転数を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外槽と、前記外槽の内側に配置された洗濯槽と、乾燥用空気を生成する送風機および熱源を含む乾燥機構と、前記送風機および前記熱源を制御する制御装置と、乾燥用空気の相対湿度を検知する湿度センサと、を備えた洗濯乾燥機において、
前記湿度センサは、前記洗濯槽の内側に配置され、
前記制御装置は、乾燥工程において、前記湿度センサで検知した前記洗濯槽の内側の相対湿度をもとに前記送風機の回転数を制御することを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
請求項1に記載の洗濯乾燥機において、
前記制御装置は、前記送風機の回転数を、前記洗濯槽の内側の相対湿度が100%に近づくように下げることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
請求項2に記載の洗濯乾燥機において、
前記制御装置は、乾燥工程の最初期において前記洗濯槽の内側の相対湿度が最大値に到達した後に、前記送風機の回転数を、前記洗濯槽の内側の相対湿度が100%に近づくように下げることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項4】
請求項2に記載の洗濯乾燥機において、
前記乾燥機構は、前記洗濯槽の内側に風を吹き出す吹出口を備え、
前記湿度センサは、前記洗濯槽の前後方向中心に対して前記吹出口と同じ側に設けられることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項5】
請求項4に記載の洗濯乾燥機において、
前記湿度センサは、前記吹出口と同一面に設けられることを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項6】
請求項4に記載の洗濯乾燥機において、
前記制御装置は、前記熱源への入力が定格値以下の場合は、前記送風機の回転数を下げたことによって低下した入力を、前記熱源に投入することを特徴とする洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水冷除湿風路部内で循環空気の除湿が行われている間は湿度センサによる検出湿度が約100%となること、および、乾燥が進んで水冷除湿風路部内で除湿することができなくなると検出湿度は100%を下回るようになること、が記載されている(段落0051参照)。そして特許文献1の洗濯乾燥機では、冷却手段の冷却出力を所定の値に抑えた状態で乾燥運転中に検出湿度が予め設定した値を下回った場合は、冷却手段の冷却出力を調整する(抑制を弱めて増加させる)ことにより、水冷除湿風路部内での冷却機能を高めて除湿作用を維持(時間を長く)して乾燥効率を高める(段落0051参照)。なお特許文献1の洗濯乾燥機では、水冷除湿風路部の上端から折り返して下向きに形成された下降風路部内の下部に、湿度センサを設けている(段落0017参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-209065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の洗濯乾燥機では、水冷除湿風路部内における除湿効率に着目しており、洗濯槽内の相対湿度に基づいて洗濯槽内への送風量を制御することにより乾燥効率を向上することへの配慮が十分ではなかった。
【0005】
本発明の目的は、洗濯槽内の相対湿度に基づいて洗濯槽内への送風量を制御することにより乾燥効率を向上することができる洗濯乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の洗濯乾燥機は、
外槽と、前記外槽の内側に配置された洗濯槽と、乾燥用空気を生成する送風機および熱源を含む乾燥機構と、前記送風機および前記熱源を制御する制御装置と、乾燥用空気の相対湿度を検知する湿度センサと、を備えた洗濯乾燥機において、
前記湿度センサは、前記洗濯槽の内側に配置され、
前記制御装置は、乾燥工程において、前記湿度センサで検知した前記洗濯槽の内側の相対湿度をもとに前記送風機の回転数を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、洗濯槽内の相対湿度に基づいて洗濯槽内への送風量を制御することにより乾燥効率を向上することができる洗濯乾燥機を提供することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施例に係る洗濯乾燥機の内部構造を示す断面図である。
図2】本発明の一実施例に係る洗濯乾燥機のシステム構成図である。
図3】本発明の一実施例に係る洗濯乾燥機の制御動作を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施例に係る洗濯乾燥機の相対湿度、送風機回転数、入力の時間変化を示す模式図である。
図5】本発明の一実施例に係る洗濯乾燥機における乾燥風の流れを示す概略図である。
図6】本発明の変更例に係る洗濯乾燥機の制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
洗濯から乾燥まで連続して行える洗濯乾燥機による衣類の乾燥は、送風機と熱源によって高温の乾燥風(乾燥用空気)を作り、これを洗濯槽内に吹き込んで衣類の温度を高くして、衣類からの水分を蒸発させることで行われる。
【0010】
送風機が駆動する乾燥風は、洗濯乾燥機の内部の風路を循環する。熱源を通過した高温の空気が洗濯槽内の濡れた衣類から水分を受け取り、その高温高湿な空気を風路内に設置された冷却流路部で冷やすことで水分を凝縮させる。この冷えた空気を加熱部に通過させて再度加熱することで乾いた乾燥風を作り、再度衣類へと導く。このプロセスを繰り返すことで、衣類に含まれた水分を除去し、乾燥工程を成立させている。
【0011】
乾燥工程における乾燥効率の向上のためには、効率よく衣類から水分を除去することが必要である。効率よく衣類の水分を除去するためには、乾燥風の風量及び温度の制御が必要である。例えば、温度をあげて風量を増やすことにより、理論上は、乾燥風が受け取ることのできる水分量は増加する。
【0012】
上記に加え、水分の効率的な除去のためには、洗濯槽内で水分を奪った後の高湿な空気を、相対湿度が100%に近い状態にして、洗濯槽外へと排出することが重要である。即ち、どんなに高温でどんなに大風量の乾燥風を洗濯槽内へ送り込んだとしても、洗濯槽外へと排出される乾燥風の相対湿度が低いままであれば、衣類の含んでいた水分の排出を効率的に行っているとは言えず、乾燥効率の観点では効率が悪いと言える。乾燥風の相対湿度が低いまま風路内を循環すると、結果的に乾燥に使用するエネルギ量が増え、省エネ性の悪化にも繋がる。
【0013】
そのため乾燥効率においては、乾燥風が高温であることや大風量であることに加え、洗濯槽外へと排出される流れの湿度をより高くする、即ち、相対湿度が100%に近い状態の空気を排出することが重要である。そのためには、乾燥する衣類の種類に応じて、洗濯槽内の乾燥効率が高い状態にあるか、低い状態にあるか、を把握し、その状態に応じた乾燥風の風量や温度の制御が重要となる。
【0014】
また特許文献1の洗濯乾燥機のように、湿度センサを水冷除湿風路部の下流側に配置した場合、洗濯槽内の湿度状況を適切に把握できているとは言えない。
【0015】
本実施例は、前記した課題を解決するものであり、洗濯乾燥機の乾燥工程において洗濯槽内の除湿効率を向上しつつ、消費電力量の低減による省エネを実現する。
【0016】
本実施例によれば、乾燥風が飽和した状態で洗濯槽から排出されるため、乾燥運転に投入した入力エネルギに対しての除湿効率が向上する。また従来の乾燥運転では乾燥工程が進むに従って衣類の乾燥むらが生じるため、乾燥運転初期と同じ運転条件では除湿効率が低下し、乾燥風が完全に飽和しない状態(相対湿度が低い状態)で洗濯槽外へと排出される。そこで本実施例では、乾燥の進行に応じて送風機の回転数を落とすことで風量を低下させる。これにより、乾燥風の相対湿度を高い状態で洗濯槽外へと排出させることが可能となる。また送風機の回転数を下げたことによって送風機への入力が低減し、省エネに繋がる。一方で乾燥工程の運転時間を短くしたい場合は、前述の制御によって送風機の回転数を落としたことによる入力の低下分を熱源側に投入することで乾燥風の温度を更に上げ、乾燥の効率を更に上げることが可能となる。
【0017】
また、洗濯槽内に設置する湿度センサを吹出口側と同一の面に設置することで、吹出口から流出した乾燥風が衣類を一度通過した後の湿度を検出することが可能となる。これにより、適切に槽内の湿度を把握することが可能となり、高い精度で運転制御が可能となる。
【0018】
以下、本発明を実施するための一実施例について、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施例に係る洗濯乾燥機Sの内部構造を示す断面図である。なお、以下の説明では、前面側に洗濯物の出し入れ口が形成され、洗濯槽の回転軸が水平方向に設けられたドラム式洗濯乾燥機を例に挙げて、説明する。洗濯槽の回転軸は水平方向に対して傾斜していてもよい。
【0020】
洗濯乾燥機Sは、筐体である外枠1、洗濯水を貯留する外槽2、洗濯槽(回転槽)3、駆動モータ10、送風機22などを備える。外槽2は、外枠1内に内蔵されるとともに外枠1に防振支持されている。洗濯槽3は、洗濯、脱水および乾燥される衣類などの洗濯物を収容する洗濯兼脱水槽であり、外槽2の内部に設けられている。また、洗濯槽3は、外槽2内に回転自在に支持される。洗濯槽3は、ドア50によって外槽2との間で密閉される。
【0021】
洗濯槽3の図中右側面(背面部)3bには、洗濯物を撹拌して洗う攪拌翼4が回動自在に設けられている。この攪拌翼4は、洗濯運転時および乾燥運転時に、正転/逆転を繰り返す動作を行う。また、攪拌翼4は、脱水運転時に、洗濯槽3と一緒に高速回転し、洗濯槽3内の洗濯物に含まれる水分を脱水するようになっている。
【0022】
また、外枠1内には、上部に、給水ユニット7が設けられている。この給水ユニット7は、内部に複数の水路を有し、外部から吸った水道水や風呂水を外槽2に供給する。また給水ユニット7内には、洗剤および仕上剤の投入装置(図示せず)が設けられている。洗剤および仕上剤は、外槽2と洗濯槽3との間に注がれる。
【0023】
また、洗濯乾燥機Sは、乾燥機構9を備えている。この乾燥機構9は、洗濯槽3内の洗濯物を乾燥する乾燥用空気(乾燥風)の循環送風や除湿を行う。また、乾燥機構9は、大部分が乾燥用空気循環路で占められる。乾燥用空気循環路は、外槽2の内部に連通するように外槽2の背面部2bに接続され、上向きに延びる除湿用縦通路21を備える。
【0024】
送風機22の吸込側は、除湿用縦通路21の上側に接続される。送風機22の排出側はヒーターケーシング400に接続され、ヒーターケーシング400の下流側(出口側)は戻り接続循環路25と連通するように接続されている。また、戻り接続循環路25は、外槽2の上部に連通するように接続され、吹出口26を介して洗濯槽3に連通する。
【0025】
下部蛇腹ホース27は、外槽2の底落込部31に接続される。この底落込部31は、下部蛇腹ホース27を介して排水ホース(図示せず)に連通する。洗濯水を排水する際には、外槽2に溜まっている洗い水やすすぎ水を、異物除去トラップ32を経て、洗濯乾燥機Sの外部(機外)に排出する。
【0026】
洗濯乾燥機Sでは、送風機22の遠心羽根車300が回転することによって、乾燥用空気が吹出口26より洗濯槽3内に供給される。乾燥用空気は洗濯槽3内を流通し、洗濯槽3内の洗濯物を乾燥させる。また、ヒーターケーシング400内に設けられた電気ヒータ401によって、除湿領域で水分が凝縮された乾燥用空気が再加熱されて洗濯槽3内を流れるので、洗濯物の水分をさらに蒸発させる。この水分除去が乾燥用空気の循環で繰り返されることにより、洗濯物が乾燥される。
【0027】
洗濯乾燥機Sでは、送風機22の遠心羽根車300が回転することによって乾燥用空気が洗濯槽3内を流通し、洗濯槽3内の洗濯物を乾燥させる。また、送風機22の下流に設けられたヒーターケーシング400内において、除湿領域で水分が凝縮された乾燥用空気は再加熱されて洗濯槽3を流れる。これにより、洗濯物の水分をさらに蒸発させる。この水分除去が乾燥用空気の循環で繰り返されることにより、洗濯物が乾燥される。
【0028】
図1では電気ヒータ401を有する洗濯乾燥機Sについて説明した。以下で説明する、本発明に係る構成は、電気ヒータを熱源とする洗濯乾燥機のみでなく、ヒートポンプを採用する洗濯乾燥機においても適用可能である。
【0029】
図2は、本発明の一実施例に係る洗濯乾燥機のシステム構成図である。
洗濯乾燥機Sは、洗濯乾燥機S内に設置された外槽2と、外槽2の内側に配置された洗濯槽3と、送風機22と、送風機22が駆動した乾燥風を加熱する熱源である電気ヒータ401と、送風機22および電気ヒータ401を制御する制御装置402と、洗濯槽3内の相対湿度を検知する湿度センサ500と、を備える。
【0030】
制御装置402は、乾燥工程において、湿度センサ500で検知した回転槽3内の相対湿度をもとに送風機22の回転数を制御する。制御装置402は、送風機回転数制御部404と加熱制御部403とによって構成される。
【0031】
送風機回転数制御部404は、洗濯槽3内の相対湿度が100%となるように、送風機22の回転数を制御する。すなわち本実施例の洗濯乾燥機Sは、外槽2と、外槽2の内側に配置された洗濯槽3と、乾燥用空気を生成する送風機22および熱源401を含む乾燥機構9(図1参照)と、送風機22および熱源401を制御する制御装置402と、乾燥用空気の相対湿度を検知する湿度センサ500と、を備える。湿度センサ500は洗濯槽3の内側に配置される。制御装置402は、乾燥工程において、湿度センサ500で検知した洗濯槽3の内側の相対湿度をもとに送風機22の回転数を制御する。洗濯乾燥機Sは、洗濯槽内の相対湿度に基づいて洗濯槽内への送風量を制御することにより、乾燥効率を向上することができる。
【0032】
このとき、制御装置402の送風機回転数制御部404は、相対湿度が100%より低い場合は、回転数を下げるように送風機22を制御する。すなわち制御装置402は、送風機22の回転数を、洗濯槽3の内側の相対湿度が100%に近づくように下げる。この制御により、洗濯槽3内の相対湿度が100%となるように、送風機22の回転数が制御される。
【0033】
図3は、本発明の一実施例に係る洗濯乾燥機の制御動作を示すフローチャートである。
制御装置402は、洗濯槽3内の相対湿度が100%となるように、図3のフローチャートに従って、送風機22の制御を行う。
【0034】
S301で乾燥運転(乾燥工程)が開始されると、制御装置402は湿度センサ500が検出する洗濯槽3内の相対湿度を監視する(S302)。制御装置402は、洗濯槽3内の相対湿度が100%を下回った場合、相対湿度が100%となるように、送風機22の回転数を下げる(S303)。この制御を送風機22の所定の回転数まで行う(S304)。
【0035】
送風機22の回転数をある一定値よりも下にすると、乾燥風の風量低下によって乾燥効率が極端に悪化する。このため、制御装置402は、乾燥効率が極端に悪化しない所定の値まで、送風機22の回転数を下げる制御を行う。即ち、衣類の重量や種類に応じて、適切な下限回転数が設定される。
【0036】
湿度センサ500が検出する洗濯槽3内の相対湿度が指定の値以下になるまで乾燥工程は継続される(S305)。相対湿度が指定の値以下になると、乾燥運転は終了となる(S306)。
【0037】
図4は、本発明の一実施例に係る洗濯乾燥機の相対湿度、送風機回転数、入力の時間変化を示す模式図である。
実線は本発明に係る運転制御の一例を示しており、点線は本発明との比較例における運転制御の例を示している。
【0038】
比較例の運転制御では、図4(b)に示すように、送風機22の回転数は一定で乾燥運転が行われる。乾燥運転の最初期においては、図4(a)に示すように、洗濯槽3内の相対湿度が一気に上昇する。相対湿度が100%(最大値)に到達した後、上に凸の極値をとる様に、乾燥運転の時間進行に従って緩やかに洗濯槽3内の相対湿度は低下していく。
【0039】
その後、衣類200の乾燥が進んで乾燥プロセスが定率乾燥から減率乾燥に変わったタイミングで、相対湿度の時間変化の勾配が再度変化し、勾配はより急峻になる。そして洗濯槽3内の相対湿度が概ね40~50%程度に達したタイミングで、乾燥運転は終了する。
【0040】
この乾燥工程において、洗濯乾燥機Sに投入される電力のうち、乾燥に使われる入力(乾燥入力)は、送風機22が吸気する空気の温度変化によって変化する。乾燥運転が進んで送風機22の吸気温度が上昇するに従い、乾燥入力の値は図4(c)に示すように緩やかに低下する。
【0041】
比較例に対し本発明では、送風機22の回転数を変化させ、洗濯槽3内の相対湿度を高い値に維持する。乾燥運転の最初期に洗濯槽3内の相対湿度が100%(最大値)に達した後、洗濯槽3内の送風機回転数を図4(b)に示すように低下させることで、風量を落とす。すなわち制御装置402(図2参照)は、乾燥工程の最初期において洗濯槽3の内側の相対湿度が最大値に到達した後に、送風機22の回転数を、洗濯槽3の内側の相対湿度が100%に近づくように下げる。
【0042】
これにより洗濯槽3内の相対湿度は、図4(a)に示すように、高い値を維持することができる。言い換えれば、洗濯槽3内の相対湿度が高い値を維持するように、送風機回転数を低下させることで風量を低下させる。このとき、送風機22の回転数低下に応じて送風機22の入力が減るため、図4(c)に示すように、乾燥入力の値も低下する。洗濯槽3内の相対湿度が高い状態を維持することは、乾燥入力に対しての衣類200からの除湿効率が向上したことを意味する。そのため乾燥の運転時間は、送風機22の回転数が一定である比較例とほぼ同じとなるが、送風機22の回転数を落としたことによって送風機22への入力が減っているため、消費電力量が低減し、省エネを実現できる。
【0043】
また図4(a)に示すように、本実施例においては、洗濯槽3内の相対湿度の低下に応じて送風機22の回転数を徐々に低下させるが、その回転数には下限値VRが存在する。これは、送風機22が駆動する乾燥風の風量には、乾燥の進行度合いのみでなく、衣類の種類や重量に応じた適正値が存在し、除湿効率と省エネとを両立するのに都合の良い送風機22の回転数で運転を維持することが重要となるためである。
【0044】
図5は、本発明の一実施例に係る洗濯乾燥機Sにおける乾燥風の流れを示す概略図である。
洗濯槽3は、洗濯乾燥機Sの前面側に位置する前面部3aと、洗濯乾燥機Sの背面側に位置する背面部3bと、前面部3aと背面部3bとを接続し周方向に沿って設けられる周面部3cと、を有する。前面部3aには衣類200を出し入れする開口3a1が設けられている。
【0045】
湿度センサ500は洗濯槽3の内側に設置される。本実施例では、吹出口26および湿度センサ500は洗濯槽3の前面部3a1側に設けられ、湿度センサ500は吹出口26の近傍に設けられる。具体的には、乾燥機構9(図1参照)は洗濯槽3の内側に風を吹き出す吹出口26を備え、湿度センサ500は洗濯槽3の前後方向中心3Acに対して吹出口26と同じ側に設けられる。すなわち湿度センサ500は、洗濯槽3の背面部3bよりも前面部3aの近くに設けられ、吹出口26と共に、洗濯槽3の回転中心軸線2Axよりも上方に位置する。より好ましくは、図5に示す通り、湿度センサ500は吹出口26と同じ面(同一面)に設けられることが好ましい。これにより、洗濯槽3内に入っている衣類200の乾燥速度を適切に把握することが可能となる。
【0046】
ここで洗濯槽3の内側は、吹出口26よりも下流側、且つ乾燥用空気循環路の除湿用縦通路21よりも上流側にあって、衣類200が入れられる洗濯槽3の内部空間と一体の空間をなす部分である。
【0047】
吹出口26から流出した乾燥風は、衣類200の存在する空間を通過した後、撹拌翼4に当たって流れが転向する。即ち、衣類200を通過した後の高湿な空気は、撹拌翼4に当たって流れの方向を変え、吹出口26側に戻ってくる。そのため、洗濯槽3内を1周して衣類200から水分を奪った後の空気の湿度を湿度センサ500によって検知することができ、正確な湿度計測に基づいて乾燥速度を把握することが可能となる。
【0048】
この湿度センサ500で検知した空気の相対湿度が100%であれば、乾燥風が衣類200から奪い取ることのできる水分量が最大であることがわかり、その状態の乾燥効率が最も高いと言える。乾燥風の風量が多いと、衣類200を通過する乾燥風は、衣類から水分を十分に受け取ることができない。そのため、湿度センサ500で検知する相対湿度は、結果的に低下することになる。これは、余分な空気を送風機22が駆動していることを意味する。送風機22の回転数を下げても乾燥速度は変わらないため、乾燥時間は結果的に殆ど変化せず、回転数を下げた分だけ乾燥運転の省エネに繋がる。
【0049】
図6は、本発明の変更例に係る洗濯乾燥機Sの制御動作を示すフローチャートである。
本例においては、洗濯槽3内の相対湿度が100%になるように送風機22の回転数を下げて風量を減らした際、回転数を下げた結果低減した送風機22の入力(入力低減分)を熱源である電気ヒータ401へと投入する。すなわち制御装置402(図2参照)は、熱源(電気ヒータ)401(図2参照)への入力が定格値以下の場合は、送風機22の回転数を下げたことによって低下した入力を、熱源401に投入する。この場合の送風機22における入力の低減分を「送風機入力低減分」と呼び、電気ヒータ401における入力の増加分を「電気ヒータ入力増加分」と呼んで説明する。
【0050】
送風機入力低減分を電気ヒータ入力増加分に割り振るために、本例のフローチャートでは、図3のフローチャートに対して、S401の工程が追加されている。本例のフローチャートにおけるその他の工程S301~S306は、図3のフローチャートの工程S301~S306と同じである。
【0051】
本例ではS401の工程が追加されることにより、より温度の高い乾燥風を洗濯槽3内へと導くことが可能となる。乾燥風の温度が高いと、特に乾燥工程後半の減率乾燥期間において衣類200からの除湿速度を向上させることが可能となる。送風機回転数制御部404と加熱制御部403とを同時に制御することにより、乾燥運転時間の短縮が可能となる。
【0052】
電気ヒータ入力増加分は送風機入力低減分以下とすることにより、送風機22の回転数を下げなかった場合と比べて、コストを増加させることなく、乾燥効率を向上することができる。この場合、電気ヒータ入力増加分を送風機入力低減分と等しくすることにより、コストを増加させることなく、最大の乾燥効率が得られる。電気ヒータ入力増加分は送風機入力低減分よりも大きくしてもよい。この場合、送風機22の回転数を下げなかった場合と比べてコストは増加することになるが、送風機入力低減分によりコスト増加を圧縮し、乾燥効率を優先した乾燥運転を行うことができる。
【0053】
以上のように、湿度センサ500で検知した相対湿度が100%になる様に送風機22の回転数を制御することで、乾燥の進行に従って送風機22の回転数を下げることが可能となる。そして結果的に消費電力量が低減し、省エネが可能となる。
【0054】
また、送風機22の回転数を下げたことによって低減した入力を電気ヒータ401へと投入することにより、乾燥風の温度を更に上昇させる。これにより主に乾燥後半での除湿速度が向上し、乾燥時間が短くなる。
【0055】
本発明の適用事例について、ドラム式の洗濯乾燥機を例に説明したが、本発明は、縦型の洗濯乾燥機にも適用可能な技術である。また本実施例では、吹出口26をドラム式洗濯乾燥機の前側に設ける場合において説明したが、別の場所に設置した場合であっても当然適用可能である。
【0056】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
S…洗濯乾燥機、2…外槽、3…洗濯槽、3Ac…洗濯槽3の前後方向中心、9…乾燥機構、22…送風機、26…吹出口、401…熱源(電気ヒータ)、402…制御装置、500…湿度センサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6