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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167586
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】分解対象物の分解方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20220101AFI20241127BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20241127BHJP
   B09B 5/00 20060101ALN20241127BHJP
【FI】
B09B3/00 ZAB
B25J13/08 A
B09B5/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083764
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】内海 省吾
(72)【発明者】
【氏名】宮地 直也
(72)【発明者】
【氏名】石倉 智貴
【テーマコード(参考)】
3C707
4D004
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707KS03
3C707KT01
3C707KT06
4D004AA22
4D004BA00
4D004CA02
4D004DA01
4D004DA02
4D004DA16
(57)【要約】
【課題】例えば分解が進むにつれて筐体構造の剛性が低下することなどによる締結部品の位置ズレを抑制して分解の成功率を向上させることができる分解対象物の分解方法を提供する。
【解決手段】第1と第2の締結部品R,Qと第1と第2の締結部品で締結される複数の被締結部品12~15を有し、かつ、第2の締結部品Qを第1の締結部品Rよりも先に緩めると第1の締結部品が位置ズレするような拘束関係を有する分解対象物10をロボット6により分解する、分解対象物の分解方法であって、ロボットにより、拘束関係に基づき第1の締結部品Rを選択して、第1の締結部品による締結を解除し、次いで、ロボットにより、拘束関係に基づき第2の締結部品Qを選択して、第2の締結部品による締結を解除し、次いで、ロボットにより、第2の締結部品を締結解除することで拘束から解放された被締結部品15を取り外す。
【選択図】 図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1と第2の締結部品と前記第1と第2の締結部品で締結される複数の被締結部品を有し、かつ、前記第2の締結部品を前記第1の締結部品よりも先に緩めると前記第1の締結部品が位置ズレするような拘束関係を有する分解対象物をロボットにより分解する、分解対象物の分解方法であって、
前記ロボットにより、前記拘束関係に基づき前記第1の締結部品を選択して、前記第1の締結部品による締結を解除し、
次いで、前記ロボットにより、前記拘束関係に基づき前記第2の締結部品を選択して、前記第2の締結部品による締結を解除し、
次いで、前記ロボットにより、前記第2の締結部品を締結解除することで拘束から解放された前記被締結部品を取り外す、分解対象物の分解方法。
【請求項2】
前記第1の締結部品による締結を解除したのち、前記第2の締結部品による締結を解除する前に、前記ロボットにより、前記第1の締結部品を締結解除することで拘束から解放された前記被締結部品を取り外す、請求項1に記載の分解対象物の分解方法。
【請求項3】
前記拘束関係において、前記第2の締結部品は、前記第1と第2の締結部品のうちで、前記分解対象物を固定する固定装置に近い方の締結部品である、請求項1又は2に記載の分解対象物の分解方法。
【請求項4】
前記ロボットにより前記締結解除及び取り外しを行うとき、前記拘束関係と、前記分解対象物を分解する手順と、前記締結部品の構造と位置情報と、前記被締結部品の位置情報とを少なくとも備えている分解情報を基に前記ロボットにより前記締結解除及び取り外しを行う、
請求項1又は2に記載の分解対象物の分解方法。
【請求項5】
前記ロボットにより前記締結解除及び取り外しを行うとき、前記拘束関係と、前記分解対象物を分解する手順と、前記締結部品の構造と位置情報と、前記被締結部品の位置情報とを少なくとも備えている分解情報を基に前記ロボットにより前記締結解除及び取り外しを行う、
請求項3に記載の分解対象物の分解方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス等の締結部品により締結された被締結部品の例えば筐体構造の分解対象物の分解方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大量消費及び大量廃棄型の経済活動によって、地球温暖化又は資源の枯渇など、地球規模での環境問題が発生している。
【0003】
このような状況の中、資源循環型社会の構築に向けて、日本国内では、平成13年4月から家電リサイクル法が施行されている。家電リサイクル法により、使用済みの家電製品(エアコン、テレビ、冷蔵庫、冷凍庫、洗濯機、衣類乾燥機など)のリサイクルが義務付けられている。これにより、使用済の家電製品は、家電リサイクル工場で人手によって分解し、素材毎へ回収する。または、破砕機によって破砕されて小片となった後に、磁気、風力、又は振動等を利用して、材種ごとに選別回収され、リサイクル材料として再資源化されている。
【0004】
人手による分解においては、多くの家電製品は筐体又は回路基板等が複数の固定部材で固定されているため、分解時にはこれらの固定部材を順序良く取り外して分別する必要がある。分解する使用済み家電は、製品毎に大きさ、各部材の固定箇所、又は固定方法が異なるため、複雑な分解動作又は作業者の勘又は経験に依存する工程が多く、自動化が非常に困難である。このような状況の中、特許文献1のような分解工程の一部を自動化する技術が提案されている。
【0005】
図17は、特許文献1に記載された従来の分解装置の機能を示すブロック図である。
【0006】
この分解装置は、PRM(Probabilistic RoadMap)又はRRT(Rapidly exploring random tree)を用いて多関節ロボットの動作の始点から目標点までの移動経路の探索と移動経路の生成を行い、その経路に従い分解を行うことが可能であり、分解工程の自動化に効率的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-77276公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記従来の分解装置により生成される分解方法では、ロボット動作の最短経路を生成することは可能であるが、例えば、エアコンの室外機のように、隣接する各平面をビスにより締結して構成された筐体の分解を、ロボットに電動又はエアー駆動のドライバーを持たせ、ビスを緩めて分解を行う場合、従来例の分解装置により生成される分解方法では最短及び最速な経路形成は可能であるが、分解が進むにつれて筐体の剛性が低下し、各平面を締結しているビスの位置変化に対応することができず、ビスの中心とドライバー先端のビットの中心が合致せず、ビスの緩め作業を失敗して分解の成功率が低下する恐れがある。
【0009】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、例えば分解が進むにつれて筐体構造の剛性が低下することなどによる締結部品の位置ズレを抑制して分解の成功率を向上させることができる分解対象物の分解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の1つの態様にかかる分解方法は、
第1と第2の締結部品と前記第1と第2の締結部品で締結される複数の被締結部品を有し、かつ、前記第2の締結部品を前記第1の締結部品よりも先に緩めると前記第1の締結部品が位置ズレするような拘束関係を有する分解対象物をロボットにより分解する、分解対象物の分解方法であって、
前記ロボットにより、前記拘束関係に基づき前記第1の締結部品を選択して、前記第1の締結部品による締結を解除し、
次いで、前記ロボットにより、前記拘束関係に基づき前記第2の締結部品を選択して、前記第2の締結部品による締結を解除し、
次いで、前記ロボットにより、前記第2の締結部品を締結解除することで拘束から解放された前記被締結部品を取り外す。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明の前記態様にかかる分解対象物の分解方法によれば、位置ズレを引き起こす拘束関係を考慮しながら締結部品を選択し締結解除を行うことで、被締結部品を締結している締結部品を外す時の締結部品例えばビスの中心と締結部品を締結解除するための工具例えばビットの中心の位置ズレを抑制して分解成功率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態における分解対象物の分解方法を生成する分解装置のブロック図
図2】本発明の実施の形態における分解対象物の分解方法を生成する分解装置の概要図
図3】本発明の実施の形態における分解対象物の図
図4】本発明の実施の形態における分解方法のフローチャート図
図5】本発明の実施の形態における分解対象物の拘束関係図
図6】本発明の実施の形態における分解対象物の天板カバーと正面カバー固定ビスの図
図7】本発明の実施の形態における分解対象物の左側面カバー固定ビスと背面の図
図8】本発明の実施の形態における分解対象物の右側面カバー固定ビスの図
図9】本発明の実施の形態における分解対象物の右側面カバー固定ビスを外した状態の図
図10】本発明の実施の形態における分解対象物の天板カバーを外した状態の図
図11】本発明の実施の形態における分解対象物の正面カバーを外した状態の図
図12】本発明の実施の形態における分解対象物の左側面カバーを外した状態の図
図13】従来の分解方法により右側面カバー固定ビスの位置が変化した状態の図
図14】従来の分解方法により右側面カバーが傾いた状態の図
図15】本発明の分解方法により右側面カバーのビスを外す状態の図
図16】本発明の実施の形態における分解対象物の右側面カバーを外した状態の図
図17】特許文献1に記載された分解装置の機能を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態における分解対象物の分解方法を実施可能な分解装置1の構成を示すブロック図である。図1に示す通り、本実施形態における分解装置1は、全体検出部2と、分解情報記憶部3と、分解方法導出部4と、固定装置の一例である固定旋回部5と、ロボットの一例としてのロボットアーム6と、ビス外し用ハンド7と、カバー外し用ハンド8と、ハンド置台11とを備えて、分解対象物10を分解する。分解対象物10は、少なくとも、第1と第2の締結部品R、Qと第1と第2の締結部品R、Qで締結される複数の被締結部品12~15を有し、かつ、第2の締結部品Qを第1の締結部品Rよりも先に緩めると第1の締結部品Rが位置ズレするような拘束関係を有する。分解対象物10の一例としてはエアコン室外機19であり、締結部品の一例としてはビスA~Rであり、被締結部品の一例としてはカバー12~15である。締結部品の他の例としては、締結状態を解除して分離できるもので、例えば、挟むことが可能なクリップ、吸着可能なマグネット、差し込み可能なピンなどが挙げられる。
【0015】
固定旋回部5は、分解対象物10を磁力又は真空吸着などで固定し、正逆回転可能な例えば回転テーブルである。
【0016】
ロボットアーム6は、後述する制御部9の制御の下に分解対象物10の分解動作を行う。
【0017】
ビス外し用ハンド7は、ロボットアーム6の先端に着脱可能に装着されて、ビスを緩めて取り外し可能とする。
【0018】
カバー外し用ハンド8は、ロボットアーム6の先端に着脱可能に装着されて、被締結部品の一例であるカバーを保持して取り外し可能とする。
【0019】
ハンド置台11には、ビス外し用ハンド7とカバー外し用ハンド8とが載置されて、ロボットアーム6の先端に着脱可能に装着可能とする。
【0020】
全体検出部2は、例えばカメラであり、固定旋回部5に固定された分解対象物例えばエアコン室外機19を撮像してエアコン室外機撮像データを取得して、分解方法導出部4に出力する。
【0021】
分解情報記憶部3は、例えば、分解対象物10の設計情報、拘束関係及び分解対象物の分解方法などの分解情報を記憶する。
【0022】
分解方法導出部4は、全体検出部2で取得した撮像データを基に、分解対象物10の特徴となる部位を抽出し、部位の例として、締結部品例えばビスの位置と被締結部品例えばカバーの位置などを画像処理と演算により取得する。取得した位置情報から演算処理を分解方法導出部4で行い、分解方法導出部4からロボットアーム6、ビス外し用ハンド7、カバー外し用ハンド8に対して、分解動作の指令を出す。例えば、分解方法導出部4は、抽出した特徴(部位と位置情報など)と分解情報記憶部3に記憶されている分解情報とを基に、各ビスの位置と各カバーの位置とをロボット座標に変換する演算処理を行い、ロボットアーム6、ビス外し用ハンド7、カバー外し用ハンド8に対して、分解動作の指令を出す。
【0023】
分解情報記憶部3と分解方法導出部4は分解動作を制御する制御部9として構成し、制御部9により、全体検出部2、固定旋回部5、ロボットアーム6、ビス外し用ハンド7と、カバー外し用ハンド8を、統括的に制御する。
【0024】
本実施形態における分解装置1は、図2に示す通り、分解対象物10を固定旋回部5に固定して旋回可能とする。
【0025】
分解対象物10は、例えば、厚さ0.5mm程度の平板で構成される筐体構造であり、平板の材質は鉄系材料の表面にメッキ又は塗装などの表面処理が施されている。このため、固定旋回部5は、磁石を磁力吸着方式、又は、真空圧を用いた吸着パッドにより分解対象物10の底面を吸着固定する。固定が完了したタイミングで全体検出部2から得られた撮像データに基づいて、分解対象の特徴となる部位を抽出し、抽出した特徴と、分解情報記憶部3に記憶されている分解情報を基に分解方法導出部4で分解方法を導出する。
【0026】
分解情報は、拘束関係と、分解対象物10を構成部品毎に分離又は分解する手順と、分解対象物の筐体を構成する被締結部品同士を締結する締結部品の構造(例えば、ビス又はボルト、頭部の係合溝の形状など)と、締結部品の位置情報と、被締結部品の位置情報とを少なくとも備えている。さらに、分解情報は、分解対象物の構成部品の材質をも備えていてもよい。本実施の形態での分解方法は、以下に説明するように、分解情報から拘束関係を考慮した上で導出した分解手順に沿って、ロボットアーム6とビス外し用ハンド7とカバー外し用ハンド8とを使いながら分解対象物10を順次分解していく。
【0027】
分解対象物10の一例として、家電製品のエアコン室外機を挙げてさらに詳細を説明する。
【0028】
まず、図3にてエアコン室外機19の部品構成を説明する。エアコン室外機19は、天板カバー12と、正面カバー13と、左側面カバー14と、右側面カバー15と、熱交換器16と、底板18で構成される筐体構造をしており、隣接する部品同士はタッピングビスと呼ばれるビスにて拘束されている。筐体内部には、温度制御を行うための電源制御ユニット17、冷媒を循環させるためのコンプレッサー30、及び、熱交換器を冷却するためのファンユニット31等が内包されている。
【0029】
まず、図2に示すように分解対象物10の一例であるエアコン室外機19を固定旋回部5への固定が完了したタイミングを分解開始とし、以降、図4に示すような分解フローチャートに基づいて分解の流れを説明する。
【0030】
まず、ステップS1において、制御部9の制御の下に、固定旋回部5で適宜旋回停止しつつ固定旋回部5に固定されたエアコン室外機19の底面以外のすべての面を全体検出部2で撮像したのち、全体検出部2から、図3に示すようなエアコン室外機19におけるエアコン室外機撮像データを取得して分解方法導出部4に出力する。ここでは、一例として、すべての面を全体検出部2で撮像するとしたが、各面毎にステップS2~S5を実施する場合には、各面毎に全体検出部2で撮像するようにしてもよい。
【0031】
次に、ステップS2において、ステップS1で取得したエアコン室外機撮像データからエアコン室外機19の特徴となる部位を分解方法導出部4で抽出する。特徴となる部位の抽出にあたっては、あらかじめ複数の室外機の撮像データを機械学習によって学習させた学習モデルを分解方法導出部4で用いて、例えばテンプレートマッチングなどの手法を用いて分解方法導出部4で抽出する。分解対象物10の特徴となる部位として、具体的には、図3のエアコン室外機19から正面、背面、右側面、左側面にある、各面同士を締結しているビスA~Qと各面のカバー12,13,14,15とを抽出する。
【0032】
次に、ステップS3において、ステップS2で抽出した特徴すなわちビスA~Qと各面のカバー12,13,14,15と分解情報記憶部3に記憶されている分解情報とを基に、ビスA~Qの位置と各面のカバー12,13,14,15の位置とを分解方法導出部4で取得する。
【0033】
次に、ステップS4において、ステップS3で取得したビスA~Qと各面のカバー12,13,14,15とのそれぞれの位置を分解方法導出部4でロボット座標に変換する演算処理を行い、分解方法導出部4からロボットアーム6、ビス外し用ハンド7、カバー外し用ハンド8に対して、分解動作の指令を出す。
【0034】
次に、ステップS5において、分解手順を含む分解情報に基づくステップS4での分解動作の指令を基に、ロボットアーム6によりビス外し用ハンド7とカバー外し用ハンド8とを使用して分解動作を行うことにより、本実施の形態の分解方法を実施する。
【0035】
分解方法の導出に際しては、図5に示すような、締結部品と被締結部品の分解手順などの分解情報を、分解対象物10である、エアコン室外機19の設計情報、例えばCADデータ等から分解方法導出部4で予め取得して、分解情報記憶部3に記憶しておく。設計情報の例としては、筐体構造の最上階層にある被締結部品の天板カバー12の締結部品のビスA~Eを取り外して分解すれば天板カバー12を取り外し可能となり、正面カバー13のビスF~Kを取り外して分解すれば正面カバー13を取り外し可能となり、左側面カバー14のビスL,Mを取り外して分解すれば左側面カバー14を取り外し可能となり、、右側面カバー15のビスN~Rを取り外して分解すれば右側面カバー15を取り外し可能となること、及び、天板カバー12、正面カバー13、左側面カバー14、右側面カバー15の順序で分解を行うことなどの情報を、分解情報記憶部3に記憶させている。
【0036】
拘束関係については、分解対象物10に対する過去のロボットアーム又は作業者による分解動作時に取得した情報を、分解情報記憶部3に記憶させている。
【0037】
図6は、エアコン室外機19の天板カバー12、正面カバー13、左側面カバー14、右側面カバー15を固定しているビスA~Qの図である。天板カバー12は、ビスA~ビスEの5本のビスで締結されている。正面カバー13は、ビスF~ビスKの6本のビスで締結されている。左側面カバー14は、ビスLとビスMの2本のビスで締結されている。右側面カバー15は、ビスN~ビスRの5本のビスで締結されている。右側面カバー15を締結しているビスRは、正面カバー13を分解することで露出する位置関係にあるため、図6には記載を省略している。エアコン室外機19の背面にビスは存在しない。
【0038】
以下、拘束関係図に従った分解手順を詳細に説明する。基本的には、ビス外し用ハンド7を用いてビスを緩めて取り外したのち、カバー外し用ハンド8を用いてカバーを外す。
【0039】
先ず、ステップS51において、正面カバー13が、ロボットアーム6と対向する位置になるように、固定旋回部5が旋回停止している状態で、ロボットアーム6の先端に取り付けられたビス外し用ハンド7を用いて、正面カバー13を締結しているビスA、ビスF、ビスGをそれぞれ緩めて取り外す。ビスA、ビスF、ビスGを緩めて取り外す順番は、例えば、分解を開始した時点で、ロボットアーム6から最も近い位置にあるビスを最初に緩めて取外し、そのビスから近い位置のビスを取り外すような分解手順を分解情報記憶部3に記憶させて、制御部9の制御の下に分解方法導出部4からロボットアーム6に指令を出力して実行させる。
【0040】
次に、ステップS52において、左側面カバー14がロボットアーム6と対向する位置になるように、固定旋回部5を90度旋回させた状態で、ロボットアーム6の先端に取り付けられたビス外し用ハンド7を用いて、図7に示す、天板カバー12を締結しているビスB、ビスCと、正面カバー13を締結しているビスH、ビスIと、左側面カバー14を締結している、ビスL、ビスMをそれぞれ緩めて取り外す。
【0041】
次に、ステップS53において、右側面カバー15がロボットアーム6と対向する位置になるように、固定旋回部5を180度旋回させた状態で、ロボットアーム6の先端に取り付けられたビス外し用ハンド7を用いて、図8に示す、天板カバー12を締結しているビスD、ビスEと、正面カバー13を締結しているビスJ、ビスKと、右側面カバー15を締結しているビスN、ビスO、ビスPをそれぞれ緩めて取り外す。図9に示すように、右側面カバー15を締結しているビスQについては、分解情報の拘束関係に関わるため、この時点では取り外さずに残した状態で、次の手順に移行する。
【0042】
次に、ステップS54において、ロボットアーム6の先端に装備したビス外し用ハンド7をハンド置台11に戻して、カバー外し用ハンド8をロボットアーム6の先端に装備する。カバー外し用ハンド8には、空圧シリンダー等で、爪8aを開閉させることで分解対象物10又は被締結部品を把持することが可能な構造となっている。天板カバー12のような平面形状で、把持する部分が無い場合は、被締結部品の平面を吸着できるように、爪の代わりに磁石による磁力吸着又は真空圧を利用した吸着パッドを装備させてもよい。図10に示すように、カバー外し用ハンド8にて、天板カバー12を把持し取り外すことで天板カバー12の分解が完了する。
【0043】
次に、ステップS55において、図11に示すように、カバー外し用ハンド8にて、正面カバー13を把持し取り外すことで正面カバー13の分解が完了する。
【0044】
次に、ステップS56において、図12に示すように、カバー外し用ハンド8にて、左側面カバー14を把持し取り外すことで左側面カバー14の分解が完了する。
【0045】
次に、ステップS57において、右側面カバー15の分解を行う。ここで、右側面カバー15の従来の分解方法による課題についてまず説明する。先述したように、右側面カバー15を締結しているビスRは、正面カバー13を分解することで露出する位置関係にあるため、右側面カバー15を分解するためには、先にビスRを緩めて取り外す必要がある。ビスRは、エアコン室外機19の内部にある電源制御ユニット17の側面と右側面カバー15とを締結している。図13に示すように、電源制御ユニット17は樹脂製の筐体構造をしており、温度制御を行うための回路基板及び配線部材が内包されている。右側面カバー15は、ビスRにより電源制御ユニット17と締結されているが、右側面カバー15の重量を支えるだけの剛性が、電源制御ユニット17には無いため、図13に示すように、電源制御ユニット17が前傾し、右側面カバー15もその傾きに釣られて下方に移動してしまう。このような、右側面カバー15の位置が不安定で静止しないような状態で、全体検出部2にて撮像を行ってビスRの位置情報を取得し、ロボットアーム6に対してビス外し動作を指令し、ビス外し用ハンド7にてビス取り外しを行っても、ロボットアーム6が、ビス取り外し動作を開始するまでの演算処理時間が経過する間に、右側面カバー15の位置が変化し、ビスRの位置が撮像時の位置情報から変化する(すなわち、ビスRの軸方向と交差する方向に位置ズレする)ため、ビス外し用ハンド7に取り付けられたドライバーの中心と、ビスRの中心とを合致させることができず、ビスRの緩め動作が失敗する結果となる。
【0046】
また、図14に示すように、右側面カバー15の位置変化が微小で、ビス外し用ハンド7に取り付けられたドライバーの中心と、ビスRの中心とが合致した場合であっても、ビス外し用ハンド7のドライバー先端をビスRに押し付ける際に、電源制御ユニット17が、押し付け方向に動いてしまい(すなわち、ビスの軸方向に位置ズレしてしまい)、ビスRを緩めるために必要な回転力をビスRに十分に伝えることができず、ビスRが緩まない結果となる。
【0047】
このような課題を解消するため、本実施の形態の分解方法により、先に述べた拘束関係を考慮した右側面カバー15を分解する手順について図15を用いて説明する。図9の説明で前述したように、本実施の形態の分解方法では、右側面カバー15を締結しているビスを緩めて取り外す時に、全てのビスN、ビスO、ビスP、ビスQ、ビスRを取り外すことはせず、エアコン室外機19を吸着固定してある固定旋回部5の吸着面から最も近い位置にある、ビスQとビスRとを取り外さない状態で、一旦、右側面のビス外し作業を完了させる。そして、天板カバー12、正面カバー13、左側面カバー14を分解したのち、右側面カバー15の分解を開始する前に、再度、全体検出部2による撮像及び分解方法導出部4での演算にて右側面カバー15を締結しているビスQ、ビスRの位置情報を取得する。そして、この再度取得した位置情報から演算処理を分解方法導出部4で行い、分解方法導出部4から再度取得した位置情報に基づいてロボットアーム6に対してビス外し動作を指令する。この時、従来の解体手順のように、ビス外し動作の指令を発令する前のロボットアーム6の位置から、最短位置にあるビスを最初に外すのではなく、固定旋回部5とエアコン室外機19の底板18の吸着面から最も近い位置にあるビスQを最後に緩めて取り外すような分解方法を与える。本実施の形態の図15の例では、右側面カバー15を締結しているビスは、ビスQとビスRの2本だけなので、ビスを外す順番は、ビスRを外してからビスQを取り外す順番となる。固定旋回部5とエアコン室外機19の底板18の吸着面とから最も近い位置にあるビスが、複数本ある場合は、ビス外し動作の指令を発令する前のロボットアーム6の位置から、最短位置にあるビスを分解方法導出部4で選択して取り外し、それ以外のビスを残す。
【0048】
このように、右側面カバー15の下方にあるビスQを残した状態であれば右側面カバー15が底板18などで支持されていることになり、右側面カバー15の自重により、電源制御ユニット17が前傾することも無く、ビスRの位置変化が起きない(すなわち位置ズレしない)ため、ビス外し動作前の撮像情報と、演算処理を終えロボットアーム6がビス外し動作を開始する時のビス位置情報に変化が生じない(すなわち位置ズレしない)。このため、ビス外し用ハンド7のドライバーの中心とビスRの中心が合致しビス外しが成功する。加えて、図14で説明したように、ビス外し用ハンド7のドライバー先端をビスRに押し付けた時も、ビスQが、右側面カバー15の傾斜を抑制する(すなわちビスの軸方向にも位置ズレしない)ため、電源制御ユニット17が押し込まれる挙動が低減され、ビスRを緩めるために必要な回転力の伝達が可能となる。
【0049】
ビスRを外した後、ビスQを緩めて取外し、右側面カバー15のビス外しが完了する。図16は、カバー外し用ハンド8にて右側面カバー15を把持して分解している状態を示す。
【0050】
これが本実施の形態の分解方法における拘束関係であり、第2の締結部品Qを第1の締結部品Rよりも先に緩めると第1の締結部品Rが位置ズレするような拘束の関係を意味する。好ましくは、この拘束関係において、第2の締結部品Qは、第1と第2の締結部品R,Qのうちで、分解対象物10を固定する固定旋回部5に近い方の締結部品である。
【0051】
このような拘束関係があるときは、前記したように、第1の締結部品Rを第2の締結部品Qよりも先に緩めるようにして、前記課題を解決できるようにしている。
【0052】
すなわち、本実施の形態にかかる分解方法では、ロボットアーム6により、拘束関係に基づき第1の締結部品Rを選択して、第1の締結部品Rによる締結を解除し、
次いで、ロボットアーム6により、拘束関係に基づき第2の締結部品Qを選択して、第2の締結部品Qによる締結を解除し、
次いで、ロボットアーム6により、第2の締結部品Qを締結解除することで拘束から解放された被締結部品15を取り外すようにしている。
【0053】
以上のように、本実施の形態にかかる分解方法によれば、拘束関係以外の締結部品A~Pと被締結部品12~14とをそれぞれ取り外して分解した後、拘束関係の締結部品Q,Rと被締結部品15とを取り外して分解することにより、拘束関係の締結部品Q,Rを取り外すときの締結部品例えばビスの中心とビットの中心ズレを抑制し分解成功率を向上させることができる。
【0054】
よって、例えば、使用済み家電の分解工程において、分解が進むにつれて筐体構造の剛性が低下することによるビスの位置ズレを抑制し、位置ズレにより分解の成功率が低下するという課題を解決することができる。すなわち、分解対象物の構成部品の拘束関係を把握し、例えば、筐体の剛性低下により各面を締結しているビスの位置が変化する可能性があるビスが存在する場合は、その面を固定しているビスの内、固定旋回部5に最も近いビスを最後に外すように分解する。また、固定旋回部5に近いビスが複数本ある場合は少なくとも1本を残して他のビスを外すことで、筐体の剛性低下による締結部品の位置変化が起きない順番で分解順序を決定する。これにより、ビスの中心とビットの中心ズレを抑制し分解成功率を向上させることができる。
【0055】
なお、前記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。また、実施形態同士の組み合わせ又は実施例同士の組み合わせ又は実施形態と実施例との組み合わせが可能であると共に、異なる実施形態又は実施例の中の特徴同士の組み合わせも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の前記態様にかかる分解対象物の分解方法を用いることにより、分解対象物となる筐体構造製品の剛性低下による締結部品の位置変動を抑制することで、自動化における分解成功率の向上が可能となる。
【符号の説明】
【0057】
1 分解装置
2 全体検出部
3 分解情報記憶部
4 分解方法導出部
5 固定旋回部
6 ロボットアーム
7 ビス外し用ハンド
8 カバー外し用ハンド
8a 爪
9 制御部
10 分解対象物
11 ハンド置台
12 天板カバー
13 正面カバー
14 左側面カバー
15 右側面カバー
16 熱交換器
17 電源制御ユニット
18 底板
19 エアコン室外機
30 コンプレッサー
31 ファンユニット
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