IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人物質・材料研究機構の特許一覧

<>
  • 特開-光-熱変換器 図1
  • 特開-光-熱変換器 図2
  • 特開-光-熱変換器 図3
  • 特開-光-熱変換器 図4
  • 特開-光-熱変換器 図5
  • 特開-光-熱変換器 図6
  • 特開-光-熱変換器 図7
  • 特開-光-熱変換器 図8
  • 特開-光-熱変換器 図9
  • 特開-光-熱変換器 図10
  • 特開-光-熱変換器 図11
  • 特開-光-熱変換器 図12
  • 特開-光-熱変換器 図13
  • 特開-光-熱変換器 図14
  • 特開-光-熱変換器 図15
  • 特開-光-熱変換器 図16
  • 特開-光-熱変換器 図17
  • 特開-光-熱変換器 図18
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167607
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】光-熱変換器
(51)【国際特許分類】
   F24V 99/00 20180101AFI20241127BHJP
【FI】
F24V99/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083805
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】長尾 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】ゴ ドゥック テイエン
(57)【要約】
【課題】大面積かつ自由な2次元、3次元構造のものを容易に作成できる、構造が単純な光-熱変換器を提供する。
【解決手段】光キャビティにより形成される光定在波の振動数とフォノンなどの光と相互作用する振動子の振動数とが一致した振動数で強い共鳴が起こることを利用し、この共鳴の周波数で光の吸収または放射を行う光-熱変換器。図は光キャビティとして非対称ファブリペロー干渉計型の光キャビティを使用したタイプの変換器の例。(a)は大気及び金属層とのそれぞれの界面にはされたSiO層が光キャビティを形成するが、このSiO層のフォノンの振動数で上述の共鳴が起こる。(b)では光キャビティ内部の光透過材料として赤外域にはフォノンがないSiを使用し、その上に接しているSiO層との界面で上述の共鳴が起こる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面または内部に光定在波を形成する光キャビティを設け、
前記光定在波と相互作用することによって前記光定在波と共鳴する振動子が前記光キャビティ中または前記光キャビティに隣接する要素中に存在し、
前記共鳴の振動数の入射光を吸収し、または前記共鳴の振動数の光を放射する光-熱変換器。
【請求項2】
前記振動子はフォノン振動子、プラズモン、電子励起からなる群から選択される、請求項1に記載の光-熱変換器。
【請求項3】
前記光キャビティは粒子の形状を有する、請求項1または2に記載の光-熱変換器。
【請求項4】
前記粒子は直径または長手方向の長さが1~30μmの範囲のマイクロスフェアまたはマイクロロッドである、請求項3に記載の光-熱変換器。
【請求項5】
前記光キャビティの材料はSi、Ge、カルコゲナイド系赤外透過材料及び金属から選択される、請求項1から4の何れかに記載の光-熱変換器。
【請求項6】
前記振動子を有し、前記光キャビティに隣接する要素は、SiO、TiO、Al
、ポリイミドからなる群から選択される、請求項1から5の何れかに記載の光-熱変換器。
【請求項7】
前記光キャビティは一対の反射面に挟まれた層状の光透過媒材料を有し、前記一対の反射面の間に前記光定在波を形成し、
前記一対の反射面の少なくとも一方を構成する材料または前記光透過材料は前記振動子を有する、
請求項1または2に記載の光-熱変換器。
【請求項8】
前記振動子を有する材料の層との界面である前記反射面を介して前記光-熱変換器に光が入射して前記吸収が行われ、または前記振動子を有する材料の層との界面である前記反射面を介して前記光の放射が行われる、請求項7に記載の光-熱変換器。
【請求項9】
前記一対の反射面は反射面の方向に一様な形状を有する、請求項7または8に記載の光-熱変換器。
【請求項10】
前記一対の反射面の一方は金属層の表面であるか、または前記光キャビティの光透過材料とは異なる屈折率を有する誘電体層の表面である、請求項7から9の何れかに記載の光-熱変換器。
【請求項11】
前記一対の反射面の他方は前記光キャビティの光透過材料と光-熱変換器との外部との界面であり、
前記光透過材料は前記振動子を有する、
請求項7から9の何れかに記載の光-熱変換器。
【請求項12】
前記光透過材料は前記振動子を有する材料であり、
前記一対の反射面の前記一方は金属層の表面である、
請求項11に記載の光-熱変換器。
【請求項13】
前記一対の反射面の他方は誘電体層の表面であるとともに、前記振動子を有し、
前記光キャビティの光透過材料は赤外域において共鳴する振動子を有していない
請求項10に記載の光-熱変換器。
【請求項14】
前記光透過材料はSi、Ge及びカルコゲナイド系赤外透過材料から選択された材料であり、
前記一対の反射面の前記一方は金属層の表面である、
請求項12または13に記載の光-熱変換器。
【請求項15】
前記一対の反射面の他方を与える前記誘電体はSiO、TiO、ポリイミド及びAlから選択された材料である、請求項14に記載の光-熱変換器。
【請求項16】
平坦または立体的な形状を有する、請求項7から15の何れかに記載の光-熱変換器。
【請求項17】
円筒、球及び多面体からなる群から選択された形状を有する、請求項16に記載の光-熱変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光と熱との間で変換を行う赤外領域での光-熱変換器に関し、特にフォノン等を用いることによって高効率で熱と所望のスペクトルの赤外光との間での変換を行うフォノン媒介型等の光-熱変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
光-熱変換器は赤外デバイス技術においてキーとなる要素である。最近、リソグラフィーによって二次元的にパターン形成された金属ナノ構造に基づいて赤外線検出器および赤外線ヒーターでの使用のための波長範囲を特定した光-熱変換器が提案され、また実際に作成されている。これらの構造を作成するためには、ポリマーコーティング、光あるいは電子ビーム露光、現像プロセス、ドライエッチング等の多数のプロセスが必要とされる。
【0003】
他のタイプの一般的な分光的光-熱変換器としては分散型ブラッグ反射器に基づく赤外デバイス(distributed Bragg reflector (DBR)-based IR device)がある。このデバイスは金属の平坦表面上へ膜を複数回堆積させる必要があり、またデバイス全体の厚みは数マイクロメートルにも及ぶことがある。
【0004】
上述したような従来技術に係る金属ナノ構造の光-熱変換器の例については、例えば特許文献1、2を参照されたい。
【0005】
上述したデバイスは精緻な設計最適化に加えて複数回の堆積プロセスが必要とされるが、これらは多大なコスト及び製造時間が必要とされる。したがって、より単純な設計原理及び製造プロセスで提供し得る、新たな概念に基づく分光的変換器が大いに必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記問題点を解決するため、本発明では単純な層構造をなしており、キャビティ中に形成される光定在波とフォノン等の他の振動系との間の相互作用を利用することで、スペクトルを柔軟に調整可能である赤外域光-熱変換器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、
表面または内部に光定在波を形成する光キャビティを設け、前記光定在波と相互作用することによって前記光定在波と共鳴する振動子が前記光キャビティ中または前記光キャビティに隣接する要素中に存在し、前記共鳴の振動数の入射光を吸収し、または前記共鳴の振動数の光を放射する光-熱変換器が与えられる。
ここで、前記振動子はフォノン振動子、プラズモン、電子励起からなる群から選択されてよい。
また、前記光キャビティは粒子の形状を有してよい。
また、前記粒子は直径または長手方向の長さが1~30μmの範囲のマイクロスフェアまたはマイクロロッドであってよい。
また、前記光キャビティの材料はSi、Ge、カルコゲナイド系赤外透過材料及び金属から選択されてよい。
また、前記振動子を有し、前記光キャビティに隣接する要素は、SiO、TiO、Al、ポリイミドからなる群から選択されてよい。
また、前記光キャビティは一対の反射面に挟まれた層状の光透過媒材料を有し、前記一対の反射面の間に前記光定在波を形成し、前記一対の反射面の少なくとも一方を構成する材料または前記光透過材料は前記前記振動子を有してよい。
また、前記振動子を有する材料の層との界面である前記反射面を介して前記光-熱変換器に光が入射して前記吸収が行われ、または前記振動子を有する材料の層との界面である前記反射面を介して前記光の放射が行われてよい。
また、前記一対の反射面は反射面の方向に一様な形状を有してよい。
また、前記一対の反射面の一方は金属層の表面であるか、または前記光キャビティの光透過材料とは異なる屈折率を有する誘電体層の表面であってよい。
また、前記一対の反射面の他方は前記光キャビティの光透過材料と光-熱変換器との外部との界面であり、前記光透過材料は前記振動子を有してよい。
また、前記光透過材料は前記振動子を有する材料であり、前記一対の反射面の前記一方は金属層の表面であってよい。
また、前記一対の反射面の他方は誘電体層の表面であるとともに、前記振動子を有し、前記光キャビティの光透過材料は赤外域において共鳴する振動子を有していないものであってよい。
また、前記光透過材料はSi、Ge及びカルコゲナイド系赤外透過材料から選択された材料であり、前記一対の反射面の前記一方は金属層の表面であってよい。
また、前記一対の反射面の他方を与える前記誘電体はSiO、TiO、ポリイミド及びAlから選択された材料であってよい。
また、平坦または立体的な形状を有してよい。
また、円筒、球及び多面体からなる群から選択された形状を有してよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の光-熱変換器は単純な層構造をなしており、大面積化が容易であるとともに、層に使用する材料やその厚さなどにより光吸収、放射スペクトルを柔軟に調整可能である。あるいは本発明の光-熱変換器はコア-シェル構造等の粒子とすることもでき、この場合についても層構造のものと同様な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る金属-SiO層構成のMD構造光-熱変換器の構造及び特性を示す図。(a)MD構造光-熱変換器の概念的構造を示す図(基板はSiを使用)。(b)誘電体層とし使用されるSiOの波長2μm~20μmの範囲の誘電関数の実部ε及び虚部εを示す図、並びに横軸を入射光の波長(2μm~20μm)、縦軸をSiO誘電体層の厚さ(0μm~20μm)としたときのMD構造光-熱変換器の吸収率(0~1)のSiO誘電体層の厚さへの依存性を濃淡で示す図。この光-熱変換器は定在波を形成する波長において共鳴により赤外光を吸収または放射する。この共鳴が誘電体層のフォノン周波数と一致したとき、当該吸収または放射の強度が非常に大きくなる。
図2図1に示すMD構造光-熱変換器において、共鳴を起こすSiO誘電体層の最小膜厚さが1.15μmであることを示すための図。(a)図1(b)に掲載したところの、MD構造光-熱変換器の吸収率(0~1)のSiO誘電体層の厚さへの依存性を濃淡で示す図と同じ図。(b)(a)の図中のSiO誘電体層膜厚1.15μm付近の拡大図。
図3】本発明に係る金属-SiO層構成のMD構造光-熱変換器の特性を示す図。(a)2μm~20μmの波長範囲における吸収率のシミュレーション結果(破線)及び実験結果(実線)を示す図。(b)横軸を入射光の波長(2μm~20μm)、縦軸をその入射角(0度~80度以上)としたときの吸収率(0~1)の入射角依存性を示すシミュレーション結果を示す図。
図4】本発明に係るMDD構造の光-熱変換器ではMD構造とは異なりキャビティの設計(厚さ)とフォノン媒体とを独立して選択できることを説明するために、MD構造に係る概念図とMDD構造に係る概念図とを並べて示す図。(a)金属-SiO層構成であるMD構造の光-熱変換器の概念的構造を示す図。(b)。金属-Si-SiO層構成であるMDD構造の光-熱変換器の概念的な構造を示す図。
図5】本発明に係るMDD構造の光-熱変換器の動作原理を説明する図。ここでは金属-Si-SiO層構成を例に挙げる。(a)DMM構造の光-熱変換器の概念的な構造を示す図(基板はSiを使用)。(b)横軸が入射光の波長(2μm~20μm)、縦軸が中間層であるSiフォノン媒体層の厚さ(0~4μm)であるときの、Si中間層の厚さの関数としての吸収率(0~1)を濃淡で示す図。金属―Si-SiO層構成であるMDD構造光-熱変換器の主要な動作機構は、Si中間層からなる光学キャビティ(定在波)とSiキャビティの上に置かれたSiOの光学フォノンとの混成(hybrid)である。光学キャビティ層とフォノン媒体層とを分離することにより光学キャビティ層の材料選択の自由度が大きくなることから、Siなどの光学キャビティ層に高屈折率材料を使用することで金属-SiO層構成(MD構造)の場合よりもキャビティの厚さを薄くすることができる。
図6】本発明に係る金属-Si-SiO層構成のMDD構造光-熱変換器の最上層であるSiO層の厚さの最適化を説明する図。(a)、(b)及び(c)はそれぞれSiO層の厚さdSiO2=0.1μm、0.4μm及び0.8μmの場合の、横軸を入射光の波長、縦軸をSi層の厚さ(0~4μm)としたときの吸収率(0~1)を示す図。SiO層の厚さが過少である場合には、SiOの増強フォノンの影響が弱くなって吸収率の強度のdを最大化を達成できなくなる。逆にSiO層の厚さが過大である場合は望まないピークが現れるとともに、スペクトルバックグラウンドの強度が大きくなる。したがって、SiO層の厚さdSiO2を適切に選択する必要がある(ここの例では(b)に示すdSiO2=0.4μm)。
図7】本発明に係る金属-Si-SiO層構成のDMM構造光-熱変換器の特性を示す図。(a)波長2μm~20μmの範囲での光吸収率のシミュレーション結果(破線)及び実験結果(実線)を示す図。ここで中間層であるSi層の厚さdSi=0.7μm、最上位層であるSiO誘電体層の厚さdSiO2=0.4μmである。(b)横軸を波長(2μm~20μm)、縦軸を入射光の入射角(0度~80度以上)とした場合の吸収率(0~1)の入射角依存性を濃淡で示すシミュレーション結果の図。
図8】本発明に係るMD構造及びMDD構造の光-熱変換器においてSiOのフォノンを使用する際に現れる制限を説明するための図。(a)誘電体層にSiOを使用したMD構造の光-熱変換器の概念的な構造を示す図。(b)最上層の誘電体層にSiOを使用したMDD構造の光-熱変換器の概念的な構造を示す図。(c)横軸を波長、縦軸を中間層であるSi層の厚さとした場合の、(b)に示すMDD構造光-熱変換器の吸収率の波長依存性を濃淡で示すシミュレーション結果の図。ここで、最上位層であるSiO誘電体層の厚さdSiO2=0.4μmである。(d)SiOの誘電関数の実部ε、虚部εを波長2μm~20μmの範囲で示す図。
図9】本発明に係るDMM構造の光-熱変換器で中間層に使用するフォノン媒体の材料を選択することによって光吸収、放射スペクトルを広範囲に調節できることを説明するための図。(a)、(b)及び(c)はそれぞれSiO、ポリイミド(polyimide)及びAlの誘電関数の実部ε、虚部εを波長2μm~20μm、2μm~14μm及び2μm~24μmの範囲で示す図。限られた個数であってしかも狭帯域のフォノン増強点(波長範囲)をもたらす誘電関数を有するSiO及びポリイミドに比べて、Alは広帯域の光-熱変換器に使用することができる。
図10】本発明に係るDMM構造の光-熱変換器で最上層の誘電体層としてポリイミドを使用した構成である金属-Si-ポリイミド層構成光-熱変換器の構造及び特性を示す図。(a)金属-Si-ポリイミド層構成光-熱変換器の概念的な構造を示す図、(b)、フォノン媒体として使用されているポリイミドの波長2μm~14μmの範囲での誘電関数の実部ε及び虚部εを示す図。(c)横軸を入射光の波長(2μm~14μm)、縦軸をSi層の厚さ(0.5μm~4μm)としたときの、吸収率(0~1)の厚さ依存性を濃淡で示す図。
図11図10(a)に概念的な構造を示す金属-Si-ポリイミド層構成のMDD構造光-熱変換器中の光キャビティのサイズ(Si中間層の厚さdSi)を調節することで、吸収率(放射率)がいくつかの波長から選択されたピーク波長における単一スペクトルに近いスペクトルを示すようにできることを示す図。厚さdSiを調節することによって、この光-熱変換器の共鳴波長を図10(b)に示すところのポリイミドの各種のピークのそれぞれに合わせることができる。(a)、(b)及び(c)はそれぞれSi中間層の厚さdSiを2.05μm、3.25μm及び1.5μmとした場合の吸収スペクトル(それぞれ波長範囲5.0μm~7.0μm、6.0μm~7.5μm及び5.5μm~9.5μm)であり、共鳴波長はそれぞれ5.8μm、6.6μm及び7.37μmであった。
図12】金属-Si-ポリイミド層構成のMDD構造光-熱変換器の構造及び特性を示す図。本光-熱変換器は波長7.37μmにピークを有するほぼ単一スペクトルの光吸収/放射特性を目指すものである。フォノン増強点(波長)は複数ではあるが限定された個数なので、その吸収/放射スペクトルはこれらのうちの特定の増強点にピークを有する単一スペクトルに近いものとすることができる。これにより、広帯域のフォノン増強媒体を使用して単一スペクトルに近い吸収/放射スペクトルを有する光-熱変換器を実現することができる。(a)金属-Si-ポリイミド層構成のMDD構造光-熱変換器の概念的な構造(基板は図示せず)を各層の厚さとともに示す図。(b)最上層に配置されたフォノン媒体層の材料であるポリイミドの波長2μm~14μmにおける吸収率のシミュレーション結果を示す図。ここで、中間Si層の厚さdSi=1.5μmである。共振波長は7.37μmとなった。(c)横軸を入射光の波長(2μmから14μm)、縦軸をその入射角(0度~80度以上)とした場合の吸収率(0~1)の入射角依存性のシミュレーション結果を濃淡で示す図。
図13】本発明に係るDM構造の光-熱変換器で誘電体層としてAl層を使用した構成である広帯域金属-Al層構成光-熱変換器の構造及び特性を示す図。(a)最上層に配置された誘電体層にAl層を使用した本発明に係るMD構造(基板はSiを使用)の光-熱変換器の概念的な構造を示す図。(b)波長2μm~24μmの範囲でのAlの誘電関数を示す図。(c)横軸を入射光の波長(2μm~24μm)、縦軸をAl誘電体層の厚さdAl2O3(3μm~9μm)とした場合の吸収率の厚さdAl2O3への依存性のシミュレーション結果を濃淡で示す図。dAl2O3を4.8μmとした場合に波長が10μm以上におけるバックグラウンドが最小になる。
図14】本発明に係るMD構造の光-熱変換器で誘電体層としてAl層を使用した構成である金属-Al層構成の広帯域光-熱変換器の構造及び特性を示す図。(a)最上層に配置された誘電体層にAl層を使用した本発明に係るMD構造(基板はSiを使用)の光-熱変換器の概念的な構造を示す図。(b)入射光の波長が2μm~24μmの範囲での吸収率のシミュレーション結果(破線)及び実験結果(実線)を示す図。両者がよく一致していることがわかる。(c)横軸を入射光の波長(2μm~24μm)、縦軸を入射光の入射角(0度~80度)とした場合の吸収率の入射角依存性のシミュレーション結果を濃淡で示す図。
図15】本発明に係るMD構造の光-熱変換器にSiの中間層を追加し、当該中間層の厚さを調節することによって得られるMDD構造の実施例である金属-Si-Al層構成の光-熱変換器において、光吸収波長を中赤外域で変化させることができることを示す図。(a)最上層にAl層を使用した本発明に係るMDD構造(基板はSiを使用)の光-熱変換器の概念的な構造を示す図。(b)横軸を入射光の波長(5μm~24μm)、縦軸を中間層であるSi層の厚さ(1.0μm~4.0μm)とし、これらを変化させた場合の吸収率のSi中間層厚さ依存性を濃淡で表す図。白抜きの破線は、Si層の厚さが3.05μmの場合の吸収率の波長による変化を示すためのものである。また、図中に示すmは図1(b)などに示す定在波共鳴の条件式で使用されている奇数モードmであり、m=1、3、5、7、・・・の値を取る。
図16】(a)最上層にAl層を使用した本発明に係るMDD構造の光-熱変換器の概念的な構造(基板は図示せず)を示す図。(b)(a)に示す光-熱変換器の波長5μm~24μmの範囲の吸収スペクトルのシミュレーション結果(破線)及び実験結果(実線)を示す図。ここでも良好な一致が見られる。(c)(a)に示す光-熱変換器の波長5μm~24μmの範囲における吸収率の入射角依存性のシミュレーション結果を濃淡で示す図。
図17】本発明に係る光-熱変換器における金属層がスペクトルバックグラウンドに与える影響を例示する図。(a)はMD構造の場合、また(b)はMDD構造の場合のシミュレーション結果である。
図18】本発明に係るささやき回廊モードキャビティを有する光-熱変換器の構造の例を示す図。(a)はマイクロスフェア形状、(b)はマイクロロッド構造の例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願では光キャビティ中での、あるいは光キャビティの光反射壁(光反射面)でのフォノンモードと光モードとの強い結合を利用することにより、構造が単純であり、また高度に効率的であってスペクトルを調節できる光-熱変換器を提供する。その動作原理から当然のこととして、この光-熱変換器は照射光中の特定波長成分を熱に変換する光吸収器として構成し、使用することもできるし、逆に加熱により特定波長の光を放射する光放射器として構成し、使用することもできる。どちら向きの変換を目指すかによりサイズや構造の細部などを調整することが必要となるかもしれないが、両者の本質的な構造や動作原理は同一である。ほぼ単一スペクトルとすることができる吸収または放射スペクトル特性は、所望の波長領域においてフォノンモードを有する誘電体材料及び当該フォノンモードに近接した共鳴波長を有する光キャビティ構造を選択することによって実現できる。このキャビティ構造はたとえば以下の[1]の形態と[2]の形態の何れかであってよい。
[1]平坦な金属表面の上に設けられた誘電体の単一層であって、当該単一層は吸収または放射光の目標とする波長のフォノンモードを有する(別の表現を取れば、吸収または放射光の目標とする周波数と同じ周波数のフォノン振動子(phonon oscillator)を有する)。
[2]平坦なシリコン(Si)層の上に置かれていて所望の波長のフォノンモードを有する(別の表現を取れば、吸収または放射光の目標とする周波数と同じ周波数のフォノン振動子を有する)誘電体の単一層を有し、当該シリコン層は平坦な金属表面に設置されている。
【0011】
共鳴の波長及びそのスペクトルの広がりは、適切な共振波長およびスペクトルの広がりを有する誘電体材料及びフォノン振動子を選択することによって調節することができる。
【0012】
ここにおいて、より一般的に説明すれば、上記[1]、[2]の何れの形態においても、誘電体層が光キャビティとして動作することにより、特定の波長(周波数)の光の定在波が光キャビティ内に形成される。[1]の形態の光-熱変換器ではこの光の定在波が光キャビティを構成する誘電体が有するフォノン振動子と共鳴することで光定在波と誘電体のフォノンとの間でエネルギーの移動が起こる。これにより、光-熱変換器への入射光の定在波の周波数の近傍の成分が当該変換器内で熱に変換され、また当該変換器の熱が当該成分の光に変換されて放射される。このような光と熱の間での変換は光定在波の周波数とフォノン振動子の周波数が近いほど高い効率で起こり、両者が一致した時に最大となる。ここで、光-熱変換器への光の入射、またそこからの光の放射は金属表面とは反対側の誘電体表面を介して行われる。なお、電磁波とフォノンとの間の相互作用については当業者に周知な事項であるため、詳細な説明は省略する。
【0013】
[1]の形態では光定在波とフォノン振動子の振動との間の共鳴が光キャビティ内部で起こる。すなわち光キャビティ内部の材料が共鳴の一方の共振系であるフォノン振動子を有しており、共鳴は光キャビティ内部で起こる。しかしながら、フォノン振動子が所在する場所は必ずしもキャビティ内部で光定在波が往復している材料中である必要はなく、光キャビティにおいて光を反射する壁面の少なくとも一部を構成する誘電体材料中であってもよい。[2]の形態は上で説明したところの、所望周波数(またはその近傍の周波数)のフォノン振動子が光キャビティの壁面の誘電体材料の層(フォノン媒体層)中に存在するようにした形態である。[2]の形態では光キャビティ中の定在波光が複数の壁面間で往復する際に起こる壁面での反射にあたって、上記誘電体材料中の当該定在波と壁面上のあるいは光が浸透する壁面近傍の領域の誘電体材料が有するフォノン振動子の振動との間で共鳴が起こる。なお、下で説明するように、フォノン媒体層の厚さは吸収、放射スペクトルに影響を与えるが、10nm以上の厚さであれば、最適な性能を与えるか否かはともかくとして、光-熱変換器としての動作が可能となる。
【0014】
[2]の形態では[1]の形態に比べて層構造がやや複雑になるが、所望の振動数の定在波を形成するための光キャビティを構成する媒体と所望の周波数で振動するプラズモン振動子を有する材料とを互いに独立して定期なものを選択することができるという利点がある。また、[2]の形態では光キャビティを構成する材料が特定の周波数のプラズモン振動子を有することは求められていないので、その材料としてはプラズモンが存在しない(より正確に言えば、例えばテラヘルツ帯などの吸収あるいは放射が求められる周波数からはるかに低い周波数のプラズモン振動子しか有していない)ものを選択できる。つまり、低損失で赤外光を透過すればよく、また光-熱変換器を薄くするためには光キャビティ層に高屈折率材料を使用することが好ましい。このような低損失の材料を選択することにより、光キャビティはQが大きな光共振系となるため、低損失で急峻なスペクトルを有する光定在波を与え、これにより高効率かつ急峻なスペクトルの光吸収、放射を実現することができる。[2]の形態での光キャビティ材料としては、これらに限定する意図はないが、例えばSi、Ge,カルコゲナイド(chalcogenide)系の赤外透過材料を好ましく使用することができる。あるいは、吸収、放射すべき光の波長域によっては、光キャビティに適切な材料が存在しない、その材料の入手や加工が困難である、光キャビティを作成できても使用環境に適合しない等、光透過材料を使用した光キャビティが実現困難である場合があり得る。このような場合、反射壁で囲まれた空隙という構造を有する光キャビティを採用することもできる。
【0015】
ここで、[1]及び[2]の形態についてより一般的に説明すれば、光キャビティで形成された光定在波が、[1]の形態では光キャビティを形成する材料が有するフォノン振動子などの振動子と共鳴し、また[2]の形態では光キャビティの表面に設けられた層等の要素の材料が有するフォノン振動子などの振動子と共鳴する。このようにして光と振動子との間でエネルギー移動が起こることで、光と熱との間の変換が行われる。振動子を含む層を上では誘電体層と呼んでいるが、本発明におけるその機能・異味の点から言えば振動子層とも呼ぶことができる。
【0016】
以下では振動子はフォノン振動子であるとして説明を進めていくが、光と相互作用する振動子であればどのような振動子でもよい。そのような振動子の非限定的な例としては、プラズモン(表面プラズモン)や電子励起がある。
【0017】
さらには、ここまでの説明では光キャビティの構造は一対の反射面の間で光の反射が繰り返される、非対称ファブリペロー干渉器構造の光キャビティであるとしていたが、その内部または周囲に光キャビティで形成される定在波と相互作用する振動子を有する材料から成る何らかの要素を配置できるような光キャビティであればその形式は問わない。他の使用可能な光キャビティの非限定的な例としては、ささやき回廊モード(whispering gallery mode、WGM)の共鳴を利用したWGMキャビティが挙げられる。本明細書では光-熱変換器基本的には非対称ファブリペロー干渉器構造の光キャビティを使用したものを例に挙げて説明するが、明細書末尾付近でWGMキャビティを使用した光-熱変換器について図面を参照して説明する。なお、ささやき回廊モードは当業者には周知の事項であるのでここで詳細な説明は与えないが、必要であれば例えば非特許文献2及びそこに引用されている文献を参照されたい。
【0018】
なお、特許文献1には、プラズモニック反射層と積層型の分布反射層との間に絶縁体からなる共振器層を挟んだふく射構造が記載され、プラズモニック反射層側をヒーター等で加熱することで、分布反射層側から光(赤外線)を放射する構造が示されている。そして、その段落[0021]にはプラズモニック反射層は金属性を示すものでよく、更に段落[0022]の後半ではSiOがその光学フォノンの吸収波長である8~9μm近傍においては金属性を示すことから当該波長近傍領域ではプラズモニック反射層材料として使用できることが記載されている。これは本発明と類似しているような印象を与えるかもしれないが、実際には特許文献1のこの記載は本発明と類似した技術思想を開示するものではない。特許文献1に開示されている発明は、金属表面での電子の振動によるジュール損失による吸収現象を利用した光の吸収・放射を行うことであり、その吸収エネルギー(振動数)は光キャビティ(特許文献1ではプラズモニック反射層と積層型の分布反射層との間に挟まれた絶縁体からなる構造)内のフォトニックモードの振動数であって、プラズモンやフォノンの周波数とは関係なく決まる。これに対して、本発明では光キャビティのフォトニックモードとフォノンの両者が合致した振動数において光の吸収・放射が起こるのであり、特許文献1とはその動作原理が全く異なる点に注意されたい。
【0019】
本明細書中の多くの説明では、光-熱変換器の構造は何れも光キャビティの一方の反射壁(図では下側の反射層)の材料は金属であるとされているが、光キャビティの原理から当然のこととして、本発明はこれに限定されるものではなく、所望の波長において過大な光損失を示さず、光キャビティ中の光透過材料とは異なる屈折率を有する等、光キャビティ内に光定在波を形成するために十分な反射率で光キャビティ内の光を反射する材料であればよい。
【0020】
あるいは金属などの他の固体材料で構成された下側の反射層を設ける代わりに、そのような反射層を省略して光キャビティの材料を直接外気や真空に露出させる構成とすることもできる。もちろん、多くの応用では機械的な強度の確保や特定の位置や形状が維持されるように光-熱変換器を基板などの上に支持することが求められるので、そのような必要性も考慮して反射層の省略の可否を検討すべきである。
【0021】
また、本願明細書の説明では本発明の光-熱変換器を構成する各層は平坦な形状を有するとして説明しているが、これは説明を簡単にするためにこれらの層の代表的な立体形状を上げて説明しているだけであり、上述した原理から考えても当然のことであるが、これらを平坦な層に限定するものではない。他の例を挙げれば、光-熱変換器の各層を平坦でない対象物の表面形状に光照射面形状を一致させることで両者の間隔を一定にすることで、平坦ではない対象物体の表面に一様に赤外線を照射して当該表面をほぼ一様に加熱することが可能となる。また、二次元的に無指向性の光吸収特性や光放射特性を有する光-熱変換器を提供するため、光-熱変換器の各層を例えば円筒状に構成して、当該円筒の外表面が入射光を受け取り、あるいはそこから光を照射するようにしてもよい。このような形状に構成した光-熱変換器を使用すれば、例えば円筒状の対象物の内表面を一様に加熱するなど、狭い孔やくぼみ内部の加熱やそこからの放射光の検出などを行うことも可能となる。その他、球面や多面体など、対象物の形状や入射光の方向などに応じて、光-熱変換器、つまり当該変換器を構成する各層の立体形状を高い自由度を以て定めることができる。ここで、これらの層の表面方向には特定の形状、構造は要求されておらず、単にその表面方向に一様に広がっていればよいので、平坦面以外の立体形状への形成や加工は容易に実現可能である。
【0022】
ここにおいて、これらの層の立体形状としては、吸収、放射すべき光の波長に比較して緩やかに変化する形状であれば、本発明に関する限りその挙動は平坦な層の場合と実質的には同等であると考えてよい。具体的には、各層の湾曲の曲率半径が吸収、放射すべき光の波長の10倍程度よりも大きければ、吸収、放射にあたっての挙動は平坦な層を使用した場合と同等である。また、本発明では各層の表面は凹凸や孔を設ける必要がないという意味で一様な形状の層表面でよいが、完全に一様な表面形状であることが必須であるというわけでもなく、キャビティの機能を失わせるなど、本発明の光-熱変換器としての動作を妨げないものであればよい。例えば、特許文献1の図1に示すように、周期構造を層の表面に沿って有する場合にはこのような構造が吸収、放射スペクトルに影響を与える恐れがあるが、そのような構造の周期が吸収、放射すべき光の波長の10倍程度よりも大きい場合にはその影響を無視することができる。
【0023】
ここで、先に言及したWGMキャビティについての一般的な補足説明をここで与える。この光キャビティは1~30μm程度の直径、あるいは長さを有するマイクロサイズの球体(マイクロスフェア)またはマイクロロッドの形状を有し、その表面に形成される一種の定在波である表面波を利用する光キャビティである。この種の光キャビティをコアとして使用するコア-シェル構造を形成し、シェルとして吸収・放射すべき光の振動数のフォノン振動子を有する誘電体を使用することで、非対称型ファブリペロー干渉計構造の光キャビティの場合と同じく本発明に係る光-熱変換器を提供することができる。なお、コアの材料としては非対称ファブリペロー干渉計構造における[2]の形態の光キャビティを構成する材料と同じものを使用でき、また金属も使用できる。このコア-シェル構造を取る光-熱変換器は光キャビティと振動子層とを分離した構造であるという点で上述の[2]の形態(後述するMDD構造)に対応するということができるが、WGMキャビティを使用した[1]の形態(後述するMD構造)の光-熱変換器も作成できる。具体的には、WGMキャビティ自体が振動子を有していてその内部で光と振動子との間の相互作用による共鳴が両者の間でのエネルギー移動を引き起こす光-熱変換器である。
【0024】
また、本明細書の説明では、光キャビティ中に形成される光定在波と相互作用するものはフォノンであるとしているが、フォノンに代えて光と相互作用して相互作用を引き起こす他の物理現象を使用してもよい。具体例を挙げれば、シリコンなどにドーパントを添加することにより赤外プラズモンが現れるが、このようなプラズモンと光定在波との間の共鳴により特定波長での光吸収、放射を行うことを利用した光-熱変換器も容易に構成できる。
【0025】
また、本明細書の説明では、光-熱変換器はSi基板上に形成されるとしているが、特にこれに限定されることはなく、光-変換器の動作に悪影響を与えるものでない限り、任意の材料を使用することができる。また、光-熱変換器の厚さや広がり、使用材料、使用形態によっては完全に自立した、あるいは全面ではなく部分的な支持だけで十分な変換器として構成される場合もある。したがって、基板の有無、光-熱変換器のどの部分を支持するか、等については光-熱変換器の構造や共に使用される機器などの状況に応じて適宜定められるべきである。
【0026】
また、本明細書では光-熱変換器として本質的な要素のみを有する構成を例に挙げて説明したが、実際の使用にあたっては付加的な構成要素や例示した概念的な構造からの部分的な変更が必要となる場合がある。例えば、使用環境によっては保護膜等で光-熱変換器を被覆することにより、腐食等による光-熱変換器の故障や特性の変化を防止したり、高温や大きな温度変化による変形や層間の密着性の劣化を防止する手段を採用したりする等が挙げられる。また、本発明の光-熱変換器をセンサーとして使用する場合には、例えば特定波長の光の光が熱に変換されたことによる温度変化を電気信号に変換するための付加的な要素を設けたり、ヒーターとして使用する場合には光-熱変換器に熱を与えるための電気ヒーターや温度制御機構を設けたりすることなどが必要となる。これらの、またそれ以外の各種の変更や追加も当然ながら本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例0027】
以下では実験結果及びシミュレーション結果を適宜参照しながら本発明を更に具体的に説明する。当然ながら、本発明を実験あるいはシミュレーションを行った特定の構成に限定する意図はないことに注意されたい。さらに、以下で行っている光-熱変換器等の構成、動作その他の各種の特徴についての説明は、そこで参照している特定の具体的な構造・材料等を前提としたものではなく、特に明示しあるいは文脈上明らかな場合を除いて、具体的な材料や構造等の限定なしで成立する一般的な説明であることにも注意しなければならない。また、以下では光の吸収と放射のうちで主に吸収の場合についてそのスペクトルの実験やシミュレーションの結果を参照して説明を行っている。しかしながら当業者には周知のように光と吸収と放射のスペクトルは原理的に同じであるので、光の吸収に基づいて行っている議論は光の放射についても全く同じく適用されることに注意されたい。
【0028】
以下では本願発明に係る光-熱変換器の構造及び動作をさらに具体的に説明する。動作の説明にあたっては実際に作成した光-変換器の特性の測定結果に加えて、電磁界のコンピュータシミュレーションの結果を参照する。当該シミュレーションとしては厳格結合波解析(rigorous coupled-wave analysis (RCWA))を使用し、これによって吸収、反射及び伝達スペクトルの設計及びシミュレーションを行った。
【0029】
図4(a)にその概念的な構造を示すところの上記[1]の形態のキャビティ構造を有する第1の形態の光-熱変換装置は反射層(反射面)として機能する金属層の上に誘電体層を設けた、金属-誘電体二層構造(以下、MD、あるいはMD構造とも称する)を有する。誘電体層の材料(誘電体材料)としては、上述したように、目標とする(すなわち、吸収したい、あるいは放射したい赤外光の)波長の赤外光を透過するとともに、その波長のフォノンモードを有するものを選択する。ここで、金属層及び誘電体層には、その面方向には例えば何らかの周期的なナノ構造を持たせるなどの構造、形状は何も求められず、単に一様な厚さで面方向に広がっているだけの一様な層でよい。もちろん、実際の光-熱変換器は面方向に無限に広がることはできないので、球形等の縁同士を接合したと考えられる循環的な形状としない限りは縁が存在するが、縁が特定の幾何学的な形状を有することも要求されない。また他の何らかの都合(たとえば、光-熱変換器を他の機器に取り付けたり、電気回路や他の付加的な要素を設置したりするなど)により一様でない形状、構造を有することもあるが、光の吸収、放射に関する限り、本質的には一様な構造、形状からの逸脱は必要ではない(もちろん、光-熱変換の妨害にならない限り、一様でない構造、形状とすることを妨げるものではない)。この構造上の特徴により、本発明の光-熱変換器の製造にあたっては単に必要な厚さで面方向には一様な2つの層(後述する第2の形態の光-熱変換器では3つの層)を順次積層するだけでよいので、面方向に特定の構造を形成することや多数の層を積層することなどが要求される従来技術に係る光-熱変換器に比べて製造プロセスが非常に単純になる。さらには、本発明の光-熱変換器では、その吸収、放射光の波長の制御はもっぱら層のサイズ(層の厚さ、層の面方向に沿って形成されるナノ構造のサイズ等)により行われるのではなく、かなりの部分をフォノン媒体の選択に依拠している、すなわち吸収、放射光の波長はおおむねフォノン振動子の周波数により決まる(微調整やいくつかある周波数のどれを選択するかは層の厚さ、つまりキャビティの共鳴周波数で制御する)ので、層のサイズ精度への要求の厳格さは比較的軽くなる。これにともない、面方向のサイズが大きく、任意の形状を有する光-熱変換器をさらに容易に作成することができるようになる。これは本発明の光-熱変換器をかなりの程度の大きさ、多様な形状、またそれぞれが固有の赤外線吸収スペクトルを有する多様な対象物の加熱に適合する特定波長の赤外光を一様に放射することが求められる加熱用面光源に応用するにあたって大いに有効な特性である。なお、この特徴は図4(b)に概念的な構造を示すところの上記[2]の形態のキャビティ構造を有する第2の形態の光-熱変換器(詳細は後述)にもそのままあてはまるものである。
【0030】
第1の形態の光-熱変換器において、その共鳴フォトニックモードはSiO層の厚さを調節することによって自由に設計することができる。このSiO層は、SiOフォノン振動子が組み込まれたフォトニックキャビティとして動作する。この構造により、SiO誘電体キャビティの共鳴フォトニックモードとSiO光学フォノンモードとを9.4μm付近で結合することによって、完全吸収/放射を実現することができる。
【0031】
ただし、ここにおいて金属-SiO層構成中で定在波共鳴を引き起こすためのSiO層キャビティ層の厚さはかなり厚くなる。これが不都合である場合、SiO層の厚さを効果的に低減するため、第1の形態に代わって、図4(b)にその概念的な構造を示す第2の形態、すなわち金属層とSiO層との間にSi中間層を挿入して形成される金属-Si-SiOという三層構造(より一般的には金属-誘電体-誘電体三層構造(以下、MDD、あるいはMDD構造とも称する))を使用することができる。その理由は、MD構造では光学キャビティがフォノン振動子を有するフォノン共振器としても同時に機能する必要があるからである。つまり、所望の波長の光を吸収または放射させるためにはこの波長に対応する周波数のフォノン振動子を有する材料を光学キャビティに使用する必要があるため、当該要請によって光学キャビティの材料がほぼ決まってしまい、それにより、光キャビティ層を薄くするために屈折率の大きな材料を選択するという自由度が実質的にはなくなってしまうからである。これに対してMDD構造では光学キャビティ層とフォノン振動子層(フォノン媒体層)とを分離しているため、光キャビティ材料に高屈折率の材料(例えばSi)を選択することで、光学キャビティ層中に所望の波長の定在波を形成する際にこの層を薄くする高屈折材料を選択できるという自由度がある。
【0032】
以下では、MD構造及びMDD構造の光-熱変換器について各種の例を挙げてさらに説明する。
【0033】
図1に例示する第1の形態の光-熱変換器では誘電体層の材料としてSiOを使用する。また、反射器としての金属層としては厚さ200nmのNiAlを使用する。これにより、金属層における赤外光の透過は無視できる。したがって、金属層の吸収率Aは、反射率をRとするとき、A=1-Rとして計算される。シミュレーション結果との比較のため、反射の測定をFTIR Nexus 670を使用して行った。
【0034】
これらの薄膜(SiO層及びNiAl層)は、スパッタ堆積装置(Shibaura Mechatronicsの!Miller)を使用して作製した。これらの薄膜の特性はX線回折、走査電子顕微鏡及びエリプソメトリー測定により求めた。
【0035】
図1(a)に本発明の光-熱変換器の第1の形態(MD構造)を示す。また、図1(b)にはSiOの誘電関数の実部ε及び虚部εを示す。同には更に図1(a)に示す光-熱変換器のSiOからなる誘電体層の厚さ及び与えられる赤外光の波長を変化させた場合の吸収率の変化のシミュレーション結果を示す。
【0036】
本発明の光-熱変換器の動作原理は膜(層)の垂直方向(厚み方向)の光の干渉現象である。すなわち、誘電体層に光が垂直方向に入射した場合、層の厚さとそこに現れる定在波の波長との関係は以下の式で記述される。
【0037】
【数1】
【0038】
ここにおいて、dは絶縁体層(ここではSiOの層)の厚さ、mは奇数モード(m=1,3,5,7,・・・)、λは定在波の波長、またn(λ)は波長λにおける絶縁体層の屈折率を表す。この光-熱変換器は定在波が形成された波長で赤外光を共鳴的に放射/吸収する。この共鳴がフォノン周波数に一致した場合、その吸収/放射の強度は非常に大きくなる。SiOのフォノン周波数は光の波長に換算した場合に9.4μmである。この波長が絶縁体層の垂直キャビティモードの定在波波長と一致した場合、その吸収は非常に大きくなる。図2(b)において白抜きの破線で示すように、厚さ1.25μmのSiO層を使用した場合には共鳴吸収は波長9.4μmで起こり、またその吸収率は1.0という非常に高い値になる(完全吸収)。この吸収率の詳細は、厚さ1.15μmのSiO層を使用した場合の第1の形態の光-熱変換器の波長による吸収率の変化を示す図3(a)を参照されたい。図3(a)からわかるように、吸収率のシミュレーションによる値(破線)と実験値(実線)とは広い波長範囲にわたってよく一致している。また、吸収率の入射角に対する依存性は、波長及び入射角の両方に対する吸収率の変化を示す図3(b)からわかるように小さい。このような入射角への低依存性は赤外線ヒーターに好適な特性である。
【0039】
この第1の形態の光-熱変換器の吸収スペクトルはブロードであり、また変換器の厚さもかなり大きい。これよりも狭帯域の吸収スペクトル及びまたは薄い光-熱変換器が必要な場合には、先に述べた第2の形態を採用することができる。第2の形態の光-熱変換器として、金属層にNiAlを使用し、また当該金属層とSiOからなる絶縁体層との間に中間層(Si層)を設けた三層構造(MDD構造)の概念図を図4(b)に例示する。このSi層は例えばスパッタ成膜により作製することができる。なお、対比のため、図4(a)には第1の形態の対応する光-熱変換器の概念図を示す。ここに示した第2の形態の光-熱変換器の構造において、金属層を変換器の底部に反射器として設置する。Siからなる中間層を第1の形態である金属-SiO層構成などのMD構造に追加することで、第1の形態における単一の絶縁体層を、光の定在波を形成する層と、この光定在波と結合させるフォノンを与える層とに分離する。これにより、それぞれの層の要件に適合した材料、サイズ等の自由度が高くなる。これにより、例えば共鳴波長の調節可能性を増大させることができる。また、中間層、つまり光キャビティの材料としてここで使用されているSiは赤外域の吸収が少ないという意味で低損失の材料であるため、Qがより高い光キャビティが実現され、これにより共鳴波長での単峰性(single-band feature)も上述のMD構造に比較して多少良好になる。
【0040】
図6に、光キャビティとして機能する上記Si層の厚さ及び上記光キャビティのモードと結合されるフォノンを有する誘電体材料(フォノン媒体。ここではSiOを使用)の層の厚さの光吸収率への影響のシミュレーション結果を示す。たとえば、上述したフォノン媒体層に使用する材料及びSi層の厚さを選択することにより、共鳴波長を調節することができる。図6では(a)→(b)→(c)の順にフォノン媒体層(SiO層)を厚くして行った場合の吸収率が示されているが、そこからわかるように、フォノン媒体層の厚さを増大させるにつれて吸収率が高くなる。より詳細には、SiO層が薄すぎる場合(図6(a))にはSiO層の増強されたフォノンの影響は弱くなって、吸収率を最大化できない。一方、SiO層が厚すぎる場合(図6(c))には、不要なピークが現れるとともに、スペクトルバックグラウンドの強度が大きくなる。したがって、SiO層の最適厚を適正に選択することが望ましい(ここではdSiO2=0.4μm)。
【0041】
図5図6及び図8からわかるように、SiOのフォノンの増強が現れる波長点(実際にはある程度の広がりを持った波長域)のサイズが局限されているため、共鳴波長の調整範囲はわずかなものである。共鳴波長の調整範囲が狭いという問題への対処のため、フォノン媒体をSiOから複数の点でフォノン増強が発現する別のフォノン媒体に置き換えることができる。図9には、フォノン媒体層に使用できる3種類の誘電体材料の誘電関数を示す。もちろん、フォノン媒体層に使用できる材料は一例をあげればTiO等、他にも多数存在し、必要に応じて適宜選択することができる。
【0042】
図9(a)には、これら3種類の誘電体材料中のSiOの誘電関数を示す。この材料は中赤外域において単一の周波数のフォノン振動子を含む。ここで現れる単一バンド特性はキャビティのフォトニックモードと結合して、上述しまた図示した例からわかるように、強いキャビティ増強光吸収(及び放射)をもたらす。
【0043】
図9(b)にその誘電関数を示す2番目の誘電体材料はポリイミド(polyimide)である。この材料は中赤外域において分子振動モードに関連する多数の急峻な強いフォノン振動子を含む材料の非限定的な例として挙げた。分子振動による多数の急峻な吸収バンドが存在するので、これらのフォノンモード(吸収バンド)から適宜選択してキャビティフォトニックモード(定在波光)と結合させることで、単一バンドで強いキャビティ増強赤外吸収をもたらすことができる。
【0044】
この態様の例として図10に金属-Si-ポリイミド層構成によるフォノン媒介吸収・放射を示す。図10(a)はその構造の概念図、図10(b)はフォノン媒体層に使用したポリイミドの誘電関数(詳細は非特許文献1)、図10(c)は図10(a)に示された概念的な構造に基づいた素子の吸収率(放射率と等価)のシミュレーション結果をSi層の厚さの関数として表したものである。図11は、図10(a)に概念的な構造を示す素子中の光キャビティのサイズを調節することで、吸収率(放射率)がいくつかの波長から選択されたピーク波長における単一スペクトルに近いスペクトルを示すようにできることを示している。図11に示すように、この変換器のパラメータ(ここでは中間層であるSi層の厚さdSi)を調節することによって、この変換器の吸収(熱放射)の波長が制御される。また、図12に示すように、赤外吸収/放射の入射角への依存性は比較的少ない。この特徴は熱放射器に好都合なものである。
【0045】
図9(c)にその誘電関数を示す3番目の誘電体材料であるAlをフォノン媒体層材料として使用したMD構造の光-熱変換器について、図13を使用して説明する。その誘電関数を図9(c)、また図13(b)に示すように、Alは10μm~24μmにかけての非常に広帯域な特性のフォノン振動子を有することがわかる。図13(a)に概念的な構造を示すところの、当該材料を上層のフォノン媒体に使用したMD構造のキャビティデバイスは、図13(c)に示すように、10μmから上で非常に広帯域でステップ関数状の吸収特性を与える。この吸収特性はキャビティモードと広帯域Aフォノンとの間での混成(hybridization)によりもたらされ、波長約10.2μmにおいて吸収率(放射率)が1となる。このMD構造Alデバイスの広帯域のスペクトル及び比較的小さな入射角依存性を夫々図14(b)及び図14(c)に示す。
【0046】
さらに、Alをフォノン媒体層材料として使用したMDD構造の光-熱変換器について、図15を使用して説明する。図15(a)にその概念的構造を例示したMDD構造の光-熱変換器は強い吸収特性およびやや広い帯域を有するとともに、この帯域の中心の共鳴波長は15μm~20μmの範囲で調節可能である。この調節可能性が発揮される理由は、図15(b)から見て取ることができる。同図において、m=1の直線基本キャビティモード(straight fundamental cavity mode)は、それが10μm以上においてフォノンモードと混成された場合、やや広帯域になる。Al層の厚さd=3.05μmの場合のスペクトルの例を図16(b)に示す。また、図16(a)及び図16(c)はそれぞれこの場合の各層の厚さ及び吸収率の入射角依存性を示す。ここでもその入射角依存性は小さいが、これは熱放射器に好適な特性であることを示す。
【0047】
さらに、MD構造及びMDD構造における反射層として機能する金属層の材料について図17を参照して説明する。図17(a)及び図17(b)はそれぞれMD構造及びMDD構造において金属層材料がCu、Al及びNiAlの3通りの場合の吸収スペクトルのシミュレーションを行った結果を示す。ここで、MD構造の場合の誘電体層材料はAlを、またMDD構造の場合の光キャビティ層(中間層)及びフォノン媒体層(最上層)の材料はそれぞれSi及びAlを使用した。これらの結果からわかるように、本発明の光-熱変換器ではMD構造、MDD構造の何れにおいても金属層材料の光学的損失が小さいほどスペクトルバックグラウンドが良好、すなわち当該領域における吸収率がゼロに近づくことがわかる。
【0048】
既に説明したように、本発明に係る光-熱変換器は上に例示した積層構造(非対称ファブリペロー干渉計型構造)のキャビティ以外の他のキャビティに基づいて構成することもできる。ここではそのような他のキャビティを用いた例としてささやき回廊モード(whispering gallery mode、WGM)のキャビティを使用した光-熱変換器の例を図面を参照して詳細に説明する。
【0049】
図18はそのような光-熱変換器の例であり、(a)はマイクロスフェア形状、また(b)はマイクロロッド型形状の例である。これらはは何れもコア-シェル構造の粒子であり、そのコア部分がWGMキャビティになっている。(a)はマイクロスフェア形状の光-熱変換器の中心断面図、(b)の左下側はマイクロロッド形状の光-熱変換器の長手方向軸に平行な平面(X-Z平面)による断面図、右上側は長手方向軸に垂直な平面(Y-Z平面)による断面図である。
【0050】
この形式のキャビティはWGM動作によりその表面に一種の定在波である光の表面波が形成される。キャビティのサイズはその材料や吸収、放射すべき光の波長により異なるが、図18(a)のマイクロスフェア形状ではその直径が、また図18(b)のマイクロロッド形状ではその長手方向の長さが1~30μm前後である。図18(a)、(b)に例示する形式の光-熱変換器においては、光透過材料(金属でもよい)からなる粒子であるキャビティの表面に吸収、放射したい光の振動数のフォノン振動子(他の振動子であっても良い)を有する材料の層を設けることにより、コア-シェル構造の粒子の構造を形成し、これを光-熱変換器として使用する。これにより、このような粒子構造のうちのコア表面における表面波とやはりコア表面に存在するシェル中のフォノン振動子とが結合することにより、フォノン振動子の振動数の光の吸収、放射が起こる。なお、このようなコア-シェル構造の粒子は、例えば熱プラズマ法により作製することができる。
【0051】
ここで、コアに使用できる光透過材料としては、吸収、放射したい光の振動数に近いフォノン振動数を有していない光透過材料を使用することが望ましく、特に高屈折率材料が望ましい。このような材料としては例えばSi、Ge、カルコゲナイド系赤外透過材料が挙げられる。また、コアに使用できる金属としては、例えばAu、Alが挙げられる。また、シェルの材料は吸収、放射したい光の波長により各種の材料から選択することになるが、例えばSiO、TiO、Al、その他先に述べた材料を使用できる。
【0052】
ここではコアがWGMキャビティとして機能し、コアを覆うシェルが振動子層として機能する光-熱変換器を図示して説明したが、このようなコア-シェル構造ではなく、WGMキャビティ自体が振動子を有することで、WGMキャビティが同時に光定在波(表面波)と振動子との相互作用によるエネルギー交換を行う、上述の[1]の形態(MD構造)に対応する構成も実現可能である。
【0053】
なお、WGMキャビティを使用した個々の光-熱変換器はもちろん単独で使用してもよいが、マイクロメートルのオーダーという小さなサイズなので、粒子状のこれらの光-熱変換器を大きな基板上に多数個分散配置することで大サイズの光-熱変換装置を構成することもできる。このようなWGMキャビティを使用する多数の光-熱変換装置を配置した光-熱変換装置は、前述の非対称ファブリペロー干渉計型のキャビティを使用する光-熱変換器に比べて大サイズ化が容易であり、また曲面状の光吸収、放射面を形成することも容易になる。さらには、粒子状の多数の光-熱変換器を液体中に分散させることも可能なので、このような分散液体を上述の光-熱変換装置の製造過程に使用したり、あるいは最終的な光-熱変換装置中にこのような分散液を含ませたりすることで、非対称ファブリペロー干渉計型のキャビティを使用する光-熱変換器とは異なる用途、応用が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上詳細に説明したように、本発明によれば簡単な構造であるにもかかわらず、各部のサイズ及び材料を適宜選択することによって吸収、放射する光の波長を多様に設定することができる光-熱変換器を提供することができる。当該変換器は例えば選択された波長の赤外線を広い範囲にわたって一様に照射することによって対象物を加熱する面状加熱器、その他の面状赤外線光源、また選択された波長の赤外線を熱に変換することによって測定するセンサーなどに使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】国際公開2019/225726
【特許文献2】国際公開2021/024909
【非特許文献】
【0056】
【非特許文献1】Z. M. Zhang, G. Lefever-Button, and F. R. Powell, “Infrared refractive index and extinction coefficient of polyimide films”, Int. J. Thermophys. 19, 905-916 (1998).
【非特許文献2】https://en.wikipedia.org/wiki/Whispering-gallery_wave
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18