IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

<>
  • -研削装置 図1
  • -研削装置 図2
  • -研削装置 図3
  • -研削装置 図4
  • -研削装置 図5
  • -研削装置 図6
  • -研削装置 図7
  • -研削装置 図8
  • -研削装置 図9
  • -研削装置 図10
  • -研削装置 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024167608
(43)【公開日】2024-12-04
(54)【発明の名称】研削装置
(51)【国際特許分類】
   B24B 7/04 20060101AFI20241127BHJP
   B24B 49/02 20060101ALI20241127BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20241127BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241127BHJP
【FI】
B24B7/04 A
B24B49/02 Z
B24B49/12
H01L21/304 622R
H01L21/304 631
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083806
(22)【出願日】2023-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑名 一孝
【テーマコード(参考)】
3C034
3C043
5F057
【Fターム(参考)】
3C034AA08
3C034BB73
3C034BB93
3C034CA02
3C034CA22
3C034CB13
3C034DD20
3C043BA04
3C043CC04
3C043CC11
3C043DD02
3C043DD04
3C043DD05
3C043DD06
5F057AA02
5F057AA12
5F057AA20
5F057BA15
5F057BB03
5F057CA14
5F057CA25
5F057DA08
5F057DA11
5F057DA38
5F057EB20
5F057FA13
5F057FA28
5F057FA32
5F057FA34
5F057FA37
5F057GA01
5F057GA13
5F057GA27
5F057GB02
5F057GB13
5F057GB20
(57)【要約】
【課題】チャックテーブルや研削ホイールの傾きの調整を簡単かつ短時間で行ってウェーハを所望の厚みと断面形状に高精度に研削することができる研削装置を提供すること。
【解決手段】チャックテーブル10と、研削ユニット20,30と、傾き調整ユニット40と、移動ユニット50と、厚み測定ユニット60と、タッチパネル70と、制御ユニット80と、を備える研削装置1において、制御ユニット80は、狙い厚み分布データを記憶する狙い厚み記憶部81と、研削が終了したウェーハWの厚み測定ユニット60にて測定された径方向の厚み分布データを記憶する測定厚み記憶部82と、狙い厚み記憶部81に記憶された厚み分布データと測定厚み記憶部82に記憶された厚み分布データに基づいてチャックテーブル10の傾き補正値を算出する傾き補正値算出部83と、傾き補正値をタッチパネル70に表示する指令を出力する補正値表示指令部84とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持面に直交する回転軸を中心として回転可能なチャックテーブルと、
該保持面に対向配置され、先端に研削ホイールが装着可能なスピンドルを有する研削ユニットと、
該チャックテーブルまたは該研削ユニットの傾きを調整する傾き調整ユニットと、
該研削ユニットを該チャックテーブルに対して該スピンドルの回転軸方向に相対移動させる移動ユニットと、
該チャックテーブルに保持されたウェーハの径方向複数箇所の厚みを測定可能な厚み測定ユニットと、
タッチパネルと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、
を備え、該チャックテーブルに保持された円板状のウェーハを該研削ユニットによって研削する研削装置であって、
該制御ユニットは、
ウェーハの予め設定された狙い厚み分布データを記憶する狙い厚み記憶部と、
研削が終了したウェーハの該厚み測定ユニットにて測定された径方向の厚み分布データを記憶する測定厚み記憶部と、
該狙い厚み記憶部に記憶された厚み分布データと該測定厚み記憶部に記憶された厚み分布データに基づいて該チャックテーブルまたは該研削ユニットの傾き補正値を算出する傾き補正値算出部と、
該傾き補正値を該タッチパネルに表示する指令を出力する補正値表示指令部と、
を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該制御ユニットは、
該狙い厚み記憶部に記憶された該狙い厚み分布データと該測定厚み記憶部に記憶された該厚み分布データをグラフ化して該タッチパネルに表示する指令を出力するグラフ表示指令部をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
該制御ユニットは、
該傾き補正値算出部にて算出された該傾き補正値に基づいて該傾き調整ユニットを駆動制御する制御部と、
該制御部に対して制御指令を出力する制御指令部をさらに備えることを特徴とする請求項1または2記載の研削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持されたウェーハを研削する研削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スマホ(スマートフォン)やパソコン(パーソナルコンピュータ)などの各種電子機器に対して小型・薄型化が要求されていることから、これらの電子機器に用いられている半導体チップも小型・薄型化される傾向にある。すなわち、半導体チップの製造工程においては、円板状の薄い半導体ウェーハ(以下、単に「ウェーハ」と称する)の表面が格子状に配列されたストリートと称される分割予定ラインによって多数の矩形領域に区画され、各矩形領域にICやLSIなどのデバイスがそれぞれ形成される。このように多数のデバイスが形成されたウェーハを例えばダイシング装置で分割予定ラインに沿って切断することによって、複数の半導体チップが得られる。
【0003】
そして、個々の半導体チップの小型化と薄型化を図るため、通常、ウェーハを分割予定ラインに沿って切断する前に該ウェーハの裏面(デバイスが形成された面とは反対側の面)が所定の厚みに研削されている。このウェーハの裏面を研削する研削装置は、チャックテーブルの保持面に保持されて該チャックテーブルと共に回転するウェーハの裏面(上面)に、高速回転する研削ホイールの研削砥石を押し当てることによって該ウェーハの裏面を研削するが、ウェーハを均一な厚みに研削するためにチャックテーブルの保持面は、中心を頂点として径方向外方に向かって斜め下方に傾斜する円錐面として形成され、チャックテーブル(保持面)の傾きを調整するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このような研削装置においては、製品ウェーハを研削する前に、オペレータによって当該研削装置の精度調整が行われている。具体的には、調整用ウェーハを研削装置によって研削し、研削された調整用ウェーハの径方向の厚み分布をチャックテーブルとは別の厚み測定器によって測定し、測定された厚み分布と狙いの厚み分布(狙い形状)との差分に基づいて、チャックテーブルの傾きを調整するようにしている。なお、チャックテーブルの傾きに代えて研削ホイール(研削砥石の研削面)の傾きが調整される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-141176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の研削装置の精度調整においては、調整用ウェーハの径方向の厚み分布を測定するためには、該調整用ウェーハをチャックテーブルから取り外し、この取り外した調整用ウェーハの径方向の厚み分布を研削装置とは別の厚み測定器によって測定するようにしているため、オペレータにとっては多くの工数を要する他、作業ミスが発生する可能性がある。また、チャックテーブルの傾き調整量の算出もオペレータ自身が行っているため、調整用ウェーハの厚み分布が狙いの厚み分布となるようにチャックテーブルの傾きを調整する作業が面倒で多くの時間を要し、作業効率が悪いという問題がある。
【0007】
ところで、研削装置においては、ウェーハは、全面に亘って均一な厚みになるように研削されるのが一般的であるが、その後の工程によっては、断面形状が、中央部が凹んだ中凹形状もしくは中央部が凸状に膨らんだ中凸形状、或いは2つの山が連なるカモメ形状またはその逆の形状(逆カモメ形状)などになるように研削される場合がある。このような場合、調整用ウェーハの厚みの測定や厚み測定に基づくチャックテーブルの傾きの調整角度の算出に多くの時間と工数を要するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、チャックテーブルや研削ホイールの傾きの調整を簡単かつ短時間で行ってウェーハを所望の厚みと断面形状に高精度に研削することができる研削装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明は、保持面に直交する回転軸を中心として回転可能なチャックテーブルと、該保持面に対向配置され、先端に研削ホイールが装着可能なスピンドルを有する研削ユニットと、該チャックテーブルまたは該研削ユニットの傾きを調整する傾き調整ユニットと、該研削ユニットを該チャックテーブルに対して該スピンドルの回転軸方向に相対移動させる移動ユニットと、該チャックテーブルに保持されたウェーハの径方向複数箇所の厚みを測定可能な厚み測定ユニットと、タッチパネルと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該チャックテーブルに保持された円板状のウェーハを該研削ユニットによって研削する研削装置であって、該制御ユニットは、ウェーハの予め設定された狙い厚み分布データを記憶する狙い厚み記憶部と、研削が終了したウェーハの該厚み測定ユニットにて測定された径方向の厚み分布データを記憶する測定厚み記憶部と、該狙い厚み記憶部に記憶された厚み分布データと該測定厚み記憶部に記憶された厚み分布データに基づいて該チャックテーブルまたは該研削ユニットの傾き補正値を算出する傾き補正値算出部と、該傾き補正値を該タッチパネルに表示する指令を出力する補正値表示指令部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウェーハをチャックテーブルの保持面に保持した状態で、該ウェーハの径方向の厚み分布を厚み測定ユニットによって測定し、測定された厚み分布データを測定厚み記憶部に記憶し、狙い厚み記憶部に記憶された厚み分布データと測定厚み記憶部に記憶された厚み分布データに基づいてチャックテーブルまたは研削ユニットの傾き補正値を傾き補正値算出部によって算出し、傾き補正値をタッチパネルに表示するようにしたため、オペレータは、タッチパネルに表示された傾き補正値に基づいてその後の処理を判断することができる。具体的には、傾き補正値が微小で許容値内である場合には、その後の処理を省略し、傾き補正値が許容値を超える場合には、傾き調整ユニットを自動制御してチャックテーブルまたは研削ホイールの傾きを調整し、ウェーハをその径方向の厚み分布が狙いとする厚み分布となるように高精度に研削することができる。このため、チャックテーブルや研削ホイールの傾きの調整を簡単かつ短時間で行ってウェーハを所望の厚みと断面形状に高精度に研削することができ、オペレータの作業負担を軽減して工数を削減することができる。
【0011】
また、研削後のウェーハの厚みの厚み測定ユニットによる測定は、該ウェーハをチャックテーブルから取り外すことなく、ウェーハをチャックテーブルの保持面に保持したままの状態でなされるため、該ウェーハの径方向の厚み分布データを短時間に採取して制御ユニットの測定厚み記憶部に記憶させることができ、ウェーハの研削を効率よく短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る研削装置の斜視図である。
図2】本発明に係る研削装置要部の側断面図(粗研削ユニットによるウェーハの研削加工を示す側断面図)である。
図3図2のX部拡大詳細図である。
図4】粗研削ユニットの研削砥石とチャックテーブル及びウェーハの位置関係を模式的に示す平面図である。
図5】ウェーハの狙いとする断面形状を示す縦断面図である。
図6】仕上げ研削されたウェーハの厚み測定ユニットによる厚み測定を示す破断側面図である。
図7】仕上げ研削されたウェーハの厚み測定ユニットによる厚み測定を示す斜視図である。
図8】仕上げ研削されたウェーハの厚み測定ユニットによる厚み測定点を示す平面図である。
図9】タッチパネルの表示画面を示す図である。
図10】タッチパネルに表示されるウェーハの厚み分布を示すグラフである。
図11】本発明に係る研削装置によるウェーハの研削加工をその工程順に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
[研削装置の構成]
まず、本発明に係る研削装置の構成について説明する。なお、以下の説明においては、図1に示す矢印方向をそれぞれX軸方向(左右方向)、Y軸方向(前後方向)、Z軸方向(上下方向)とする。
【0015】
図1に示す研削装置1は、被加工物である薄い円板状のウェーハWを研削する装置であって、回転可能な円盤状のターンテーブル2上に配置された3つのチャックテーブル10と、チャックテーブル10上に保持されたウェーハWを研削する研削ユニットである粗研削ユニット20及び仕上げ研削ユニット30と、チャックテーブル10の傾きを調整する傾き調整ユニット40と、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30をチャックテーブル10に対して上下方向(Z軸方向)に相対移動(昇降)させる移動ユニット50と、粗研削ユニット20によって粗研削されたウェーハWの厚みを測定する厚み測定ユニット60と、タッチパネル70と、以上の各構成要素を制御する制御ユニット80を主な構成要素として備えている。
【0016】
ここで、ウェーハWは、薄い円板状の部材であって、単結晶のシリコン母材で構成されており、その表面(図1においては、下面)には、ICやLSIなどの複数の不図示のデバイスが形成されている。そして、これらのデバイスは、ウェーハWの表面に貼着された保護テープTによって保護されている。
【0017】
なお、研削装置1には、その他の構成要素として、粗研削中のウェーハWの厚みを測定する接触式の厚み測定器91と、研削加工されたウェーハWを洗浄する洗浄ユニット92と、研削加工前の複数のウェーハWを収納するカセット93と、研削加工後のウェーハWを収納するカセット94と、カセット93から取り出したウェーハWを位置合わせする位置合わせテーブル95と、カセット93,94に対してウェーハWを出し入れするとともに、カセット93から取り出したウェーハWを位置合わせテーブル95へと搬送する搬出入ロボット96と、位置合わせテーブル95において位置合わせされたウェーハWをウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと搬送する第1搬送手段97と、仕上げ研削領域R3において仕上げ研削されたウェーハWをチャックテーブル10から取り外して洗浄ユニット92へと搬送する第2搬送手段98などが備えられているが、これらについての詳細な説明は省略する。
【0018】
ここで、研削装置1の主要な構成要素であるチャックテーブル10、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30、傾き調整ユニット40、移動ユニット50、厚み測定ユニット60、タッチパネル70及び制御ユニット80の構成についてそれぞれ説明する。
【0019】
(チャックテーブル)
3つのチャックテーブル10は、円板状の部材であって、Z軸方向に垂直な軸心回りに間欠的に回転(公転)するターンテーブル2上に周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配置されている。そして、これらのチャックテーブル10は、ターンテーブル2の間欠的な回転によって該ターンテーブル2のZ軸方向に垂直な軸心回りに角度120°ずつ公転してウェーハ搬出入領域R1と粗研削領域R2及び仕上げ研削領域R3の間を順次移動するとともに、図2に示す回転機構11によってZ軸方向の垂直な軸心CL1(図2参照)回りに所定の速度で回転(自転)する。
【0020】
ここで、各チャックテーブル10は、図2に示すように、多孔質のセラミックなどで構成された円板状のポーラス部材10Aが中央部にそれぞれ組み込まれており、各ポーラス部材10Aの上面は、円板状のウェーハWを吸引保持する保持面10aを構成している。ここで、チャックテーブル10の保持面10aは、図2に示すように、中心を頂点として径方向外方に向かって斜め下方に傾斜する円錐面として構成されている。なお、図2においては、チャックテーブル10の保持面10aの円錐形状を誇張して示しているが、実際には、保持面10aの傾斜は、目視で確認できない程度の僅かなものである。
【0021】
そして、各チャックテーブル10のポーラス部材10Aは、真空ポンプなどの不図示の吸引源に選択的に接続される。なお、各チャックテーブル10は、図2及び図3に示す傾き調整ユニット40によって保持面10aの水平面に対する傾きが調整可能であるが、傾き調整ユニット40の構成の詳細については後述する。
【0022】
(粗研削ユニットと仕上げ研削ユニット)
粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30は、図1に示すように、Y軸方向(前後方向)に長い矩形ボックス状のベース100の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に並設される状態で垂直に配置されている。ここで、粗研削ユニット20は、粗研削領域R2に位置するチャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの上面(裏面)を粗研削するユニットであり、仕上げ研削ユニット30は、仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの上面(裏面)を仕上げ研削するユニットであって、両者の基本構成は同じである。
【0023】
すなわち、粗研削ユニット20は、図1に示すように、ホルダ21に固定されたスピンドルモータ22と、該スピンドルモータ22によって回転駆動される垂直なスピンドル23(図2参照)と、該スピンドル23の下端に取り付けられた円板状のマウント24と、該マウント24の下面に着脱可能に装着された研削ホイール25とを備えている。ここで、研削ホイール25は、図2に詳細に示すように、円板状の基台25aと、該基台25aの下面に円環状に取り付けられた複数の研削砥石25bによって構成されている。なお、スピンドルモータ22は、制御ユニット80に電気的に接続されている。
【0024】
また、仕上げ研削ユニット30も粗研削ユニット20と同様に、ホルダ31に固定されたスピンドルモータ32と、該スピンドルモータ32によって回転駆動される垂直なスピンドル33(図6及び図7参照)と、該スピンドル33の下端に取り付けられた円板状のマウント34と、該マウント34の下面に着脱可能に装着された研削ホイール35とを備えている。ここで、研削ホイール35は、円板状の基台35aと、該基台35aの下面に円環状に取り付けられた複数の研削砥石35bによって構成されているが、これらの研削砥石35bは、粗研削ユニット20の研削砥石25bよりも細かい砥粒によって構成されている。なお、スピンドルモータ32は、制御ユニット80に電気的に接続されている。
【0025】
(傾き調整ユニット)
傾き調整ユニット40は、各チャックテーブル10の傾き、つまりは、該チャックテーブル10の保持面10aの水平面に対する傾きを調整するものであって、図2及び図4に示すように、各チャックテーブル10を傾動可能に支持する2つのアクチュエータ41と1つのピボット42(図4参照)を備えている。ここで、2つのアクチュエータ41と1つのピボット42は、図4に示すように、周方向に等角度ピッチ(120°ピッチ)で配置されており、各アクチュエータ41のネジロッド43をサーボモータ44によって正逆転させることによって、チャックテーブル10がピボット42を中心として傾動する。
【0026】
ここで、各アクチュエータ41の構成の詳細を図3に示すが、各アクチュエータ41は、駆動源として正逆転可能なサーボモータ44を備えており、このサーボモータ44は、固定側のフレーム45に固定されたブラケット46によって垂直に支持されている。そして、サーボモータ44の垂直上方に延びる出力軸(モータ軸)44aには、ネジロッド43が連結されている。
【0027】
他方、チャックテーブル10の下面には、円柱状の支持ロッド47が鉛直下方に突設されており、この支持ロッド47の下端には、上下2枚のフランジ48を介してナット部材49が取り付けられている。ここで,ナット部材49は、下面が開口する円筒状の部材であって、その内周面に刻設された不図示の雌ネジにネジロッド43の上端部が螺合している。なお、サーボモータ44は、図2に示すように、制御ユニット80に電気的に接続されており、その駆動が制御ユニット80によって制御される。
【0028】
したがって、制御ユニット80によって各アクチュエータ41のサーボモータ44の駆動を制御して該サーボモータ44を正逆転させると、このサーボモータ44の出力軸44aによってネジロッド43が正逆転されるため、該ネジロッド43に螺合するナット部材49が上下動する。このため、チャックテーブル10がピボット42を中心として水平面に対して傾動し、該チャックテーブル10の傾きが調整され、その軸心CL1と研削ホイール25(スピンドル23)の垂直な軸心CL2(図2参照)とがなす角度が調整される。なお、本実施の形態では、チャックテーブル10の傾きを傾き調整ユニット40によって調整するようにしたが、研削ホイール25(スピンドル23)の傾きを調整するようにしてもよい。
【0029】
(移動ユニット)
本実施形態に係る研削装置1においては、移動ユニット50は、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30に対応して一対設けられている。すなわち、一対の移動ユニット50は、図1に示すように、矩形ボックス状のベース100上の+Y軸方向端部(後端部)にX軸方向(左右方向)に沿って並設された垂直の一対のコラム101の各-Y軸方向端面(前面)にそれぞれ設けられている。なお、両移動ユニット50の構成は同じであるため、以下、対応する構成要素には同一符号を付して説明する。
【0030】
各移動ユニット50は、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30をそれぞれ独立にZ軸方向(上下方向)に沿って昇降動させるものであって、矩形プレート状の昇降板51と、該昇降板51の昇降動をガイドするためのガイドレール52をそれぞれ備えている。そして、各昇降板51には、粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30がそれぞれ取り付けられている。また、ガイドレール52は、コラム101の前面に垂直に配設されている。
【0031】
そして、各ガイドレール52の横には、回転可能なボールネジ53がZ軸方向(上下方向)に沿って垂直に立設されており、該ボールネジ53の上端は、駆動源である正逆転可能なサーボモータ54に連結されている。また、ボールネジ53の下端は、不図示の軸受8によってコラム101に回転可能に支持されており、このボールネジ53には、昇降板51の背面に後方(+Y軸方向)に向かって水平に突設された不図示のナット部材が螺合している。なお、各サーボモータ54は、制御ユニット80に電気的に接続されている。
【0032】
したがって、以上のように構成された各移動ユニット50のサーボモータ54を起動して各ボールネジ53を正逆転させると、各ボールネジ53に螺合する不図示のナット部材が突設された各昇降板51がガイドレール52に沿って昇降するため、該昇降板51に取り付けられた粗研削ユニット20と仕上げ研削ユニット30もそれぞれZ軸方向(上下方向)に沿って互いに独立して昇降動する。
【0033】
(厚み測定ユニット)
厚み測定ユニット60は、図1に示すように、ベース100上の仕上げ研削領域R3に位置するチャックテーブル10の近傍に配置されており、チャックテーブル10上に保持されたウェーハ(仕上げ研削ユニット30によって仕上げ研削されたウェーハ)Wの厚みを非接触で光学的に測定するものである。
【0034】
この厚み測定ユニット60は、図6及び図7に示すように、垂直に立設された円柱状の支軸61を備えており、この支軸61の上端部から水平に延びるアーム62の先端部には、光学センサ63が垂直に取り付けられている。ここで、光学センサ63は、図示しないが、測定光をウェーハWに向けて出射する発光部と、ウェーハWの下面で反射した反射光を受光する受光部を備えており、測定光が出射されてから反射光が受光されるまでの時間によってウェーハWの厚みを非接触で光学的に測定するものである。なお、図6には、ウェーハWの表面(下面)に貼着された保護テープT(図1参照)の図示を省略しているが、光学センサ63は、保護テープTの厚みを含まないウェーハWの正味の厚みを測定することができる。なお、図1に示すように、光学センサ63は、制御ユニット80に電気的に接続されている。
【0035】
そして、支軸61は、その下部に設けられた不図示の回転機構によって垂直な軸中心回りに回動可能であり、この支軸61が回動することによってアーム62が水平旋回するため、該アーム62の先端部に取り付けられた光学センサ63がウェーハWの上方を径方向に沿って移動することができる。なお、アーム62の長さは、その先端部に取り付けられた光学センサ63がウェーハWの中心を通ることができる値に設定されている。
【0036】
したがって、支軸61を回動させてアーム62を水平旋回させることによって、前述のように、該アーム62の先端部に取り付けられた光学センサ63をウェーハWの上方で径方向に沿って移動させることができ、該光学センサ63によってウェーハWの径方向の任意の箇所における厚みを非接触で測定することができる。本実施形態では、図8に示すように、ウェーハWの外周部のAで示す箇所と、中心部のCで示す箇所および径方向においてAとCとの中間点であるBで示す3箇所においてウェーハWの厚みを測定する。なお、ウェーハWの径方向に沿う測定箇所は、3点に限らず任意である。
【0037】
(タッチパネル)
矩形状のタッチパネル70は、図1に示すように、ベース100の上部を覆う矩形ボックス状の加工室カバー102の前面(-Y軸方向端面)の上部に設置されており、このタッチパネル70には、オペレータが種々のデータを入力することができるとともに、図9に示すように、3つに区画された矩形の表示画面71,72,73には、所定の情報が表示される。具体的には、表示画面71には、研削装置1のレイアウトが模式的に表示され、表示画面72には、厚み測定ユニット60によって測定されたウェーハWのA,B,Cの3箇所における測定値と狙いの厚みとが表形式で表示され、表示画面73には、グラフ形式で表示される(図10参照)。なお、表示画面72,73の表示内容詳細については後述する。
【0038】
(制御ユニット)
制御ユニット80は、制御プログラムにしたがって演算処理を行うCPU(Central Processing Unit)やが、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリなどを備えている。具体的には、制御ユニット80は、ウェーハWの予め設定された狙い厚み分布データを記憶する狙い厚み記憶部81と、研削が終了したウェーハWの厚み測定ユニット60によって測定された径方向の厚み分布データを記憶する測定厚み記憶部82と、狙い厚み記憶部81に記憶された厚み分布データと測定厚み記憶部82に記憶された厚み分布データに基づいてチャックテーブル10の傾き補正値を算出する傾き補正値算出部83と、傾き補正値をタッチパネル70に表示する指令を出力する補正値表示指令部84を備えている。
【0039】
また、制御ユニット80は、狙い厚み記憶部81に記憶された狙い厚み分布データと測定厚み記憶部82に記憶された厚み分布データをグラフ化してタッチパネル70の表示画面73に表示する指令を出力するグラフ表示指令部85を備えている。さらに、制御ユニット80は、傾き補正値算出部83によって算出された傾き補正値に基づいて傾き調整ユニット40を駆動制御する制御部86と、該制御部86に対して制御指令を出力する制御指令部87を備えている。
【0040】
[研削装置の作用]
次に、以上のように構成された研削装置1の作用を図11に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。
【0041】
本実施の形態においては、図1に示すカセット93に収納されている1枚のウェーハWを調整用ウェーハとして粗研削及び仕上げ研削し、仕上げ研削されたウェーハ(調整用ウェーハ)Wの径方向3箇所(図8に示すA,B,Cの3箇所)の厚みを厚み測定ユニット60によって測定し、その測定結果を径方向の厚み分布データとして制御ユニット80の測定厚み記憶部82に記憶する。すると、傾き補正値算出部83は、狙い厚み記憶部81に記憶された厚み分布データと測定厚み記憶部82に記憶された厚み分布データに基づいてチャックテーブル10の傾き補正値を算出する。
【0042】
上述のように、傾き補正値算出部83によってチャックテーブル10の傾き補正値が算出されると、制御ユニット80の補正値表示指令部84の指令によって傾き補正値が図9に示すタッチパネル70の表示画面72に表示されるとともに、測定箇所A,B,CにおけるウェーハWの厚みの測定値と狙いとする厚みが表形式で表示される。また、グラフ表示指令部85の指令によって狙い厚み分布データと測定された厚み分布データとがグラフ化され、タッチパネル70の図9に示す表示画面73にウェーハWの狙い厚みと測定された厚みの径方向の分布のグラフ(図10参照)が表示される。すると、オペレータは、タッチパネル70の表示画面72に表示された表と表示画面73に表示された図10に示すグラフに基づいて、その後に実施される製品ウェーハ(製品として量産されるウェーハ)Wの研削(粗研削と仕上げ研削)に際してチャックテーブル10の傾きを調整する必要があるか否かを判断する。
【0043】
具体的には、オペレータがチャックテーブル10の傾きを調整する必要がないと判断した場合には、チャックテーブル10の傾きを調整することなく、そのまま製品としてのウェーハWを研削(粗研削と仕上げ研削)する。このため、その後に製品としてのウェーハWを連続して研削するまでの時間を短縮することができ、生産効率が高められる。また、この場合、調整用ウェーハWを廃棄することなく、製品として使用することができるために無駄がなく、経済的である。
【0044】
これに対して、オペレータがチャックテーブル10の傾きの調整が必要であると判断した場合には、制御ユニット80の制御指令部87からの指令によって制御部86は、傾き補正値算出部83によって算出された傾き補正値に基づいて図2に示す傾き調整ユニット40のアクチュエータ41の駆動を自動制御し、チャックテーブル10の傾きを調整する。このように、チャックテーブル10の傾きが調整されると、製品としてのウェーハWが所望の厚み及び断面形状となるように研削される。
【0045】
以下、以上の作用を図11に示すフローチャートを参照しながら具体的に説明する。
【0046】
調整用ウェーハWを研削加工する際には、図1に示す搬出入ロボット96によってカセット93から加工前の1枚のウェーハWが取り出され、取り出されたウェーハWが位置合わせテーブル95へと移送される。すると、位置合わせテーブル95においては、ウェーハWが位置合わせされ、位置合わせされたウェーハWは、第1搬送手段97によってウェーハ搬出入領域R1に位置するチャックテーブル10へと移送されて該チャックテーブル10上に保護テープT(図1参照)を下にして吸引保持される。すなわち、ウェーハWが載置されたチャックテーブル10のポーラス部材10A(図2参照)が不図示の吸引源に接続されて該ポーラス部材10Aに負圧が発生するため、この負圧に引かれてウェーハWがチャックテーブル10の保持面10a上に吸引保持される。
【0047】
すると、ターンテーブル2がその垂直な軸心を中心として図1の矢印方向(時計方向)に角度120°だけ回転してウェーハWと共に粗研削領域R2へと移動する。この粗研削領域R2においては、チャックテーブル10の保持面10aに保持されたウェーハWの裏面(上面)が粗研削ユニット20によって粗研削される。
【0048】
すなわち、図2に示す回転機構11によってチャックテーブル10が所定の回転速度(例えば、300rpm)で回転駆動されるとともに、粗研削ユニット20のスピンドルモータ22が起動されて研削ホイール25が所定の速度(例えば、1000rpm)で回転駆動される(図11のステップS1)。
【0049】
上述のように、チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハW及び研削ホイール25(研削砥石25b)がそれぞれ回転している状態で、移動ユニット50を駆動して研削ホイール25(研削砥石25b)を-Z軸方向に下降させる(図11のステップS2)。すなわち、サーボモータ54が駆動されてボールネジ53が回転すると、このボールネジ53に螺合する不図示のナット部材が設けられた昇降板51が粗研削ユニット20と共に-Z軸方向に下降する。すると、研削砥石25bの下面(研削面)がウェーハWの上面(裏面)に接触し、研削水の供給を受けながら、ウェーハWの上面(裏面)が研削砥石25bによって粗研削され(図5のステップS3)、その厚みが図1に示す厚み測定器91によって測定される(図11のステップS4)。ここで、本実施の形態では、ウェーハWは、図5に示すように、中心部が薄く、中心から外周に向かって厚みが漸増する中凹形状に研削されるものであり、したがって、チャックテーブル10は、図2に示すように、傾き調整ユニット40によってその軸心CL1が垂直に対して図示の角度αだけ傾くように傾きが調整される。すなわち、チャックテーブル10の保持面10aとこれに保持されたウェーハWの外周部が研削ホイール25の研削砥石25bの下面(研削面)から遠ざかるように、チャックテーブル10の傾きが調整される。
【0050】
以上のウェーハWの粗研削においては、該ウェーハWの厚みが所定厚みに達したか否かが判定され(ステップS5)、ウェーハWの厚みが所定厚みに達すると(ステップS5:Yes)、ターンテーブル2が所定角度(120°)だけ回転し、粗研削が終了したウェーハWを保持するチャックテーブル10が粗研削領域R2から仕上げ研削領域R3へと移動し、このチャックテーブル10に保持されたウェーハWに対して仕上げ研削が粗研削と同様になされる。なお、粗研削によってウェーハWが所定の厚みに達していない場合(ステップS5:No)には、ウェーハWの粗研削が継続される(ステップS2~S5)。
【0051】
ウェーハWの仕上げ研削においては、図2に示す回転機構11によってチャックテーブル10が所定の回転速度(例えば、300rpm)で回転駆動されるとともに、仕上げ研削ユニット30のスピンドルモータ32が起動されて研削ホイール35が所定の速度(例えば、1000rpm)で回転駆動される(図11のステップS6)。
【0052】
上述のように、チャックテーブル10とこれに保持されたウェーハW及び研削ホイール35(研削砥石35b)がそれぞれ回転している状態で、移動ユニット50を駆動して研削ホイール35を-Z軸方向に下降させる(図11のステップS7)。
【0053】
すると、研削水の供給を受けながら、ウェーハWの上面(裏面)が研削砥石35bによって仕上げ研削され(図11のステップS8)、その厚みが厚み測定ユニット60によって測定される(図11のステップS9)。そして、厚み測定ユニット60によって測定されるウェーハWの厚みが所定の厚みに達したか否か(ウェーハWの仕上げ研削量が所定の値に達したか否か)が判定される(ステップS10)。
【0054】
仕上げ研削によってウェーハWが所定の厚みに達していない場合(ステップS10:No)には、ウェーハWの仕上げ研削が継続され(ステップS7~S10)、ウェーハWが所定厚みまで仕上げ研削された場合(ステップS10:Yes)には、移動ユニット50によって研削ホイール35が上昇し(ステップS11)、仕上げ研削されたウェーハWの図8のA,B,Cの3箇所における厚みが厚み測定ユニット60によって測定され(ステップS12)、ウェーハWの径方向の厚み分布データが制御ユニット80の測定厚み記憶部82に記憶される(ステップS13)。
【0055】
すると、制御ユニット80の傾き補正値算出部83によってチャックテーブル10の傾き補正値が算出される(ステップS14)。具体的には、傾き補正値算出部83は、狙い厚み記憶部81に記憶されているウェーハWの径方向の狙い厚み分布データと測定厚み記憶部82に記憶された厚み分布データに基づいてチャックテーブル10の傾き補正値を算出する。このように、チャックテーブル10の傾き補正値が算出されると、補正値表示指令部84の指令によって傾き補正値がタッチパネル70に表示されるとともに(ステップS15)、狙い厚み分布データと厚み測定ユニット60によって測定された厚み分布データが表形式で図9に示すタッチパネル70の表示画面72に表示され(ステップS16)、グラフ形式で表示画面73に表示される(ステップS17)。
【0056】
図9に示すタッチパネル70の表示画面72に表示される表の「現在」の欄には、測定箇所A,B,CにおけるウェーハWの測定値XX,WW,ZZが表示され、「狙い」の欄には、測定箇所A,B,Cにおける狙いの厚みAA,BB,CCが表示される。また、タッチパネル70の表示画面73には、図10に示すグラフが表示される。このグラフにおける、横軸の測定点に表示されたD,Eは、図8に示すウェーハWの径方向における中間点と外周部における測定点であって、これらのD,Eでの測定は必ずしも必要ではない。なお、図10に示すグラフにおいては、研削された調整用ウェーハWの実際(現在)の形状が実線にて示され、狙いとする形状が破線にて示されている。
【0057】
すると、オペレータは、タッチパネル70の表示された傾き補正値や、表形式とグラフ形式で表示された狙い厚み分布データと厚み測定ユニットに基づいてチャックテーブル10の傾き調整が必要であるか否かを判定する(ステップS18)。そして、オペレータがチャックテーブル10の傾き調整の必要があると判断した場合(ステップS18:Yes)には、制御ユニット80の制御指令部87が制御部86に対して制御指令を出力し、制御部86によって図2に示す傾き調整ユニット40のアクチュエータ41が駆動制御されてチャックテーブル10の傾きが傾き補正値に基づいて自動調整される(ステップS19)。
【0058】
上述のように、チャックテーブル10の傾きが調整されると、図1に示すカセット93に収納されているウェーハWが研削(粗研削及び仕上げ研削)され(ステップS20)、所望の厚みと断面形状に研削されたウェーハWが製品として得られる。そして、このような研削がカセット93に収容されているウェーハWの全数に対して終了したか否かが判定され(ステップS21)、カセット93内に収容されているウェーハWの全数に対して研削が終了していない場合(ステップS21:No)には、ウェーハWに対する研削が継続され(ステップS20)、ウェーハWの全数について研削が終了した場合(ステップS21:Yes)には、ウェーハWに対する一連の研削加工が終了する(ステップS22)。
【0059】
他方、オペレータがチャックテーブル10の傾き調整が不要であると判断した場合(ステップS18:No)、チャックテーブル10の傾きを調整することなく、製品用ウェーハWの研削を開始する(ステップS20)。
【0060】
以上のように、本実施の形態では、ウェーハWをチャックテーブル10の保持面10aに保持した状態で、該ウェーハWの径方向の厚み分布を厚み測定ユニット60によって測定し、測定された厚み分布データを測定厚み記憶部82に記憶し、狙い厚み記憶部81に記憶された厚み分布データと測定厚み記憶部82に記憶された厚み分布データに基づいてチャックテーブル10の傾き補正値を傾き補正値算出部83によって算出し、傾き補正値をタッチパネル70に表示するようにしたため、オペレータは、タッチパネル70に表示された傾き補正値に基づいてその後の処理を判断することができる。具体的には、傾き補正値が微小で許容値内である場合には、チャックテーブル10の傾き調整を省略し、傾き補正値が許容値を超える場合には、傾き調整ユニット40を自動制御してチャックテーブル10の傾きを調整し、ウェーハWをその径方向の厚み分布が狙いとする厚み分布となるように高精度に研削することができる。このため、チャックテーブル10の傾きの調整を簡単かつ短時間で行ってウェーハWを所望の厚みと断面形状に高精度に研削することができ、オペレータの作業負担を軽減して工数を削減することができる。
【0061】
また、研削後のウェーハWの厚みの厚み測定ユニット60による測定は、該ウェーハWをチャックテーブル10から取り外すことなく、ウェーハWをチャックテーブル10の保持面10aに保持したままの状態でなされるため、該ウェーハWの径方向の厚み分布データを短時間に採取して制御ユニット80の測定厚み記憶部82に記憶させることができ、ウェーハWの研削を効率よく短時間で行うことができる。
【0062】
なお、以上の実施の形態では、ウェーハWを図5に示すような中凹形状に研削する場合を例として説明したが、ウェーハWを研削する形状は任意であって、中凸形状、山が並んだカモメ形状或いは逆カモメ形状などの任意の形状に研削する場合、或いは、ウェーハWを全面に亘って均一な厚みに研削する場合についても、本発明を適用することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、ウェーハの径方向の3箇所の厚みを測定する場合を例として説明したが、測定点の数は、複数であれば任意である。
【0064】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0065】
1:研削装置、2:ターンテーブル、10:チャックテーブル、
10A:ポーラス部材、10a:保持面、11:回転機構、
20:粗研削ユニット(研削ユニット)、21:ホルダ、22:スピンドルモータ、
23:スピンドル、24:マウント、25:研削ホイール、25a:基台、
25b:研削砥石、30:仕上げ研削ユニット(研削ユニット)、31:ホルダ、
32:スピンドルモータ、33:スピンドル、34:マウント、35:研削ホイール、
35a:基台、35b:研削砥石、40:傾き調整ユニット、41:アクチュエータ、
42:ピボット、43:ネジロッド、44:サーボモータ、44a:出力軸、
45:フレーム、46:ブラケット、47:支持ロッド、48:フランジ、
49:ナット部材、50:移動ユニット、51:昇降板、52:ガイドレール、
53:ボールネジ、54:サーボモータ、60:厚み測定ユニット、61:支軸、
62:アーム、63:光学センサ、70:タッチパネル、71~73:表示パネル、
80:制御ユニット、81:狙い厚み記憶部、82:測定厚み記憶部、
83:傾き補正値算出部、84:補正値表示指令部、85:グラフ表示指令部、
86:制御部、87:制御指令部、91:厚み測定器、92:洗浄ユニット、
93,94:カセット、95:位置合わせテーブル、96:搬出入ロボット、
97:第1搬送手段、98:第2搬送手段、CL1:チャックテーブルの軸心、
CL2:研削ホイールの軸心、R1:ウェーハ搬出入領域、R2:粗研削領域、
R3:仕上げ研削領域、T:保護テープ、W:ウェーハ、α:チャックテーブルの傾斜角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11