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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024016761
(43)【公開日】2024-02-07
(54)【発明の名称】台車及び荷物輸送構造
(51)【国際特許分類】
   B61D 33/00 20060101AFI20240131BHJP
   B61D 37/00 20060101ALI20240131BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20240131BHJP
   B62B 5/00 20060101ALI20240131BHJP
   B62B 3/02 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B61D33/00 A
B61D37/00 F
B62B3/00 Z
B62B5/00 J
B62B3/02 Z
B62B5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119111
(22)【出願日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】海老名 俊也
【テーマコード(参考)】
3D050
【Fターム(参考)】
3D050AA01
3D050BB02
3D050EE08
3D050EE15
3D050JJ07
(57)【要約】
【課題】旅客列車を使って荷物輸送を行うにあたって輸送可能な荷物量の拡大を図ることができ、荷物の積み込みを短時間で行えるようにする。
【解決手段】荷物輸送構造10は、旅客列車の客室に設置された座席装置1と、専用に設けられた台車8と、を用いて荷物18を輸送する構造である。この荷物輸送構造10においては、座席装置1の背凭れ3とテーブルアームを前方に向けて水平状態に畳み、背凭れ3、テーブルアーム、テーブルの上に生じたスペースに台車8の台板80を位置付け、この台板80に載せられた荷物18を台車8ごと目的駅に輸送する。また、台車8は、当該台車8の移動を規制する回動体93及び昇降体97を備えている。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席装置が設置された旅客列車に積載される台車であって、
前記座席装置の背凭れが前方に向けて畳まれることで前記背凭れの上に生じるスペースに位置付けられる台板と、
前記台板から下垂した複数の脚と、
前記各脚の下端に取り付けられた車輪と、を備え、
当該台車を前記車輪が床に接触した状態で前記旅客列車の通路から前記座席装置側にスライド移動させる際に前記座席装置に干渉しない空間が前記脚間に形成可能に設けられている
ことを特徴とする台車。
【請求項2】
前記台板が長手方向と短手方向とを有する長方形であり、
前記短手方向と平行な回動中心軸を有する回動体を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の台車。
【請求項3】
前記回動体は、平板と、該平板の一面から突出した第1リブ及び第2リブを備え、
前記第1リブ及び前記第2リブは、互いに平行かつ前記短手方向に延びており、
前記回動体は、前記長手方向の一端側に設けられており、前記平板が鉛直方向である状態から前記長手方向の他端側に向かって回動する
ことを特徴とする請求項2に記載の台車。
【請求項4】
前記回動体が、前記長手方向の一端側に1つ、他端側に1つ設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の台車。
【請求項5】
前記台板が長手方向と短手方向とを有する長方形であり、
前記長手方向に延びた板状に形成され、前記台板近傍の上側位置と前記台板よりも低い下側位置とにわたって昇降可能な昇降体を備えている
ことを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の台車。
【請求項6】
前記昇降体を前記上側位置に維持する維持手段を備えている
ことを特徴とする請求項5に記載の台車。
【請求項7】
前記昇降体が、前記短手方向の一端側に1つ、他端側に1つ設けられている
ことを特徴とする請求項5に記載の台車。
【請求項8】
旅客列車に設置された座席装置と請求項1に記載の台車とを用いた荷物輸送構造であって、
前記座席装置は、座部と、前方に向けて畳むことが可能な背凭れと、を備え、
前方に向けて畳まれた前記背凭れの上に生じたスペースに前記台板が位置付けられ、該台板に載せられた荷物が前記台車ごと輸送される
ことを特徴とする荷物輸送構造。
【請求項9】
旅客列車に設置された座席装置と請求項2に記載の台車とを用いた荷物輸送構造であって、
前記座席装置は、座部と、前方に向けて畳むことが可能な背凭れと、を備え、
前方に向けて畳まれた前記背凭れの上に生じたスペースに、前記台板の長手方向と前記座席装置の前後方向とが一致する向きで前記台板が位置付けられ、この状態で前記回動体が回動されることで該回動体と前記背凭れとが係合し、前記台板に載せられた荷物が前記台車ごと輸送される
ことを特徴とする荷物輸送構造。
【請求項10】
旅客列車に設置された座席装置と請求項3に記載の台車とを用いた荷物輸送構造であって、
前記座席装置は、座部と、前方に向けて畳むことが可能な背凭れと、を備え、
前記背凭れは、左右一対のアーム部と、これら一対のアーム部間に架けられて一対のアーム部を連結した梁部と、を備え、
前方に向けて畳まれた前記背凭れの上に生じたスペースに、前記平板が鉛直方向である状態かつ前記台板の長手方向と前記座席装置の前後方向とが一致する向きで前記台板が位置付けられ、この状態で前記回動体が前記長手方向の他端側に回動されることで、前記第1リブと前記第2リブの間に前記梁部が係合するとともに前記一対のアーム部間に前記平板が係合し、前記台板に載せられた荷物が前記台車ごと輸送される
ことを特徴とする荷物輸送構造。
【請求項11】
旅客列車に設置された座席装置と請求項4に記載の台車とを用いた荷物輸送構造であって、
前記座席装置は、座部と、前方に向けて畳むことが可能な背凭れと、を備え、
前方に向けて畳まれた前記背凭れの上に生じたスペースに、前記台板の長手方向と前記座席装置の前後方向とが一致する向きで前記台板が位置付けられ、この状態で前記座席装置の後方に位置する一方の前記回動体が前方に回動されることで、該回動体と前記背凭れとが係合し、前記台板に載せられた荷物が前記台車ごと輸送される
ことを特徴とする荷物輸送構造。
【請求項12】
旅客列車に設置された座席装置と請求項5に記載の台車とを用いた荷物輸送構造であって、
前記座席装置は、座部と、前方に向けて畳むことが可能な背凭れと、肘掛けと、を備え、
前方に向けて畳まれた前記背凭れの上に生じたスペースに、前記昇降体が前記上側位置にある状態かつ前記台板の長手方向と前記座席装置の前後方向とが一致する向きで前記台板が位置付けられ、この状態で前記昇降体が前記下側位置に下降されることで該昇降体が前記肘掛けの内側面に沿わされ、前記台板に載せられた荷物が前記台車ごと輸送される
ことを特徴とする荷物輸送構造。
【請求項13】
旅客列車に設置された座席装置と請求項5に記載の台車とを用いた荷物輸送構造であって、
前記座席装置は、座部と、前方に向けて畳むことが可能な背凭れと、肘掛けと、前記背凭れの後方で使用されるテーブルと、該テーブルを支持し、前方に向けて畳むことが可能なテーブルアームと、を備え、
前方に向けて畳まれた前記背凭れ及び前記テーブルアーム並びに前記テーブルの上に生じたスペースに、前記昇降体が前記上側位置にある状態かつ前記台板の長手方向と前記座席装置の前後方向とが一致する向きで前記台板が位置付けられ、この状態で前記昇降体が前記下側位置に下降されることで該昇降体が前記テーブルと前記肘掛けの間に差し込まれ、前記台板に載せられた荷物が前記台車ごと輸送される
ことを特徴とする荷物輸送構造。
【請求項14】
旅客列車に設置された座席装置と請求項6に記載の台車とを用いた荷物輸送構造であって、
前記座席装置は、座部と、前方に向けて畳むことが可能な背凭れと、肘掛けと、を備え、
前方に向けて畳まれた前記背凭れの上に生じたスペースに、前記昇降体が前記上側位置に維持された状態かつ前記台板の長手方向と前記座席装置の前後方向とが一致する向きで前記台板が位置付けられ、この状態で前記昇降体が前記下側位置に下降されることで該昇降体が前記肘掛けの内側面に沿わされ、前記台板に載せられた荷物が前記台車ごと輸送される
ことを特徴とする荷物輸送構造。
【請求項15】
旅客列車に設置された座席装置と請求項7に記載の台車とを用いた荷物輸送構造であって、
前記座席装置は、座部と、前方に向けて畳むことが可能な背凭れと、前記通路側に位置する肘掛けと、を備え、
前方に向けて畳まれた前記背凭れの上に生じたスペースに、前記一対の昇降体が前記上側位置にある状態かつ前記台板の長手方向と前記座席装置の前後方向とが一致する向きで前記台板が位置付けられ、この状態で前記通路側に位置する前記昇降体が前記下側位置に下降されることで該昇降体が前記肘掛けの内側面に沿わされ、前記台板に載せられた荷物が前記台車ごと輸送される
ことを特徴とする荷物輸送構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座席装置が設置された旅客列車に積載される台車、及び、前記座席装置と前記台車とを用いた荷物輸送構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、新型コロナウィルス感染症の影響で旅客需要が落ち込む中、荷物輸送の需要が高まっている。これを受けて鉄道各社では新幹線や特急列車の座席を使った荷物輸送を開始している。なお、新幹線や特急列車に設置される座席は、座部と、リクライニング可能な背凭れと、を備えたものが一般的である(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-225842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように新幹線や特急列車の座席を使って荷物輸送を行う際、現状では、座部上に荷物を載せて輸送していることから、輸送可能な荷物量が限られており、改善の余地があった。また、前記荷物を台車に載せてプラットホームや車両内まで運んだ場合、台車から座席に荷物を積み替える作業に時間を要しており、改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、旅客列車を使って荷物輸送を行うにあたって輸送可能な荷物量の拡大を図ることができ、荷物の積み込みを短時間で行えるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、座席装置が設置された旅客列車に積載される台車であって、前記座席装置の背凭れが前方に向けて畳まれることで前記背凭れの上に生じるスペースに位置付けられる台板と、前記台板から下垂した複数の脚と、前記各脚の下端に取り付けられた車輪と、を備え、当該台車を前記車輪が床に接触した状態で前記旅客列車の通路から前記座席装置側にスライド移動させる際に前記座席装置に干渉しない空間が前記脚間に形成可能に設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明は、旅客列車に設置された座席装置と上記台車とを用いた荷物輸送構造であって、前記座席装置は、座部と、前方に向けて畳むことが可能な背凭れと、を備え、前方に向けて畳まれた前記背凭れの上に生じたスペースに前記台板が位置付けられ、該台板に載せられた荷物が前記台車ごと輸送されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、座席装置の背凭れを前方に向けて畳み、この上のスペースを使って台車ごと荷物輸送を行うことにより、輸送可能な荷物量の拡大を図ることができ、また、荷物の積み込みを短時間で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の荷物輸送構造に用いられる座席装置の斜視図である。
図2図1の背凭れの本体部を上方にスライドさせた状態を示す図である。
図3図2の背凭れを前方に向けて水平に畳んだ状態を示す図である。
図4図3のテーブルアームのストッパを解除した状態を示す図である。
図5図4のテーブルアームを前方に向けて水平に畳んだ状態を示す図である。
図6図1の状態の背凭れの要部を示す図である。
図7図2の状態の背凭れの要部を示す図である。
図8図3の状態の背凭れの要部を示す図である。
図9図3の状態のテーブル及びテーブルアームを示す図である。
図10図4の状態のテーブル及びテーブルアームを示す図である。
図11図5の状態のテーブル及びテーブルアームを示す図である。
図12図5の左側座席の背凭れの上に生じたスペースに1台目の台車の台板が位置付けられた状態を示す図である。
図13図12の1台目の台車が左側座席に連結された状態を示す図である。
図14図13の右側座席の背凭れの上に生じたスペースに2台目の台車の台板が位置付けられた状態を示す図である。
図15図14の2台目の台車が右側座席に連結された状態を示す図である。
図16図14の状態の座席装置及び2台目の台車を通路側からみた図である。
図17図16の回動体と背凭れとが係合した状態を示す図である。
図18図17の昇降体がテーブルと肘掛けの間に差し込まれた状態を示す図である。
図19図18中のA-A線に沿った断面を示す図である。
【0010】
本発明の一実施形態にかかる「台車」及び「荷物輸送構造」を図1~19を参照して説明する。本発明の荷物輸送構造10は、旅客列車の客室に設置された座席装置1と専用に設けられた台車8とを用いるものである。
【0011】
図1~5に示すように、座席装置1は、旅客列車の客室内のフロアに固定された脚台11に脚台フレーム12を介して取り付けられた台枠13と、台枠13に固定された支持部14と、これらに支持された2つの座席と、を備えている。すなわち、本例の座席装置1は、二座席が左右方向に並んだ二人掛けタイプである。脚台11にはペダルが取り付けられており、ペダルを踏むことで座席の向きを180度変えることができる。支持部14は、本例では3つ用いられており、台枠13の左右両端部と中央部に固定されている。各支持部14には、肘掛け4が設けられている。各座席は、3つの支持部14間にそれぞれ位置付けられている。各座席は、座部2と、座部2に対してリクライニング可能な背凭れ3と、背凭れ3の後方に配置されたテーブル5と、テーブル5を支持するテーブルアーム6等を備えている。
【0012】
また、本明細書において、「左」「右」「前」「後」「上」「下」とは、座席装置1の着座者から見た方向である。よって、「左右方向」は、座部2及び背凭れ3の幅方向と一致する。
【0013】
座部2は、台枠13上に配置された座枠と、座枠上に配置されたクッション体21と、を備えている。クッション体21は、面ファスナー等を介して座枠に固定されている。
【0014】
背凭れ3は、図2,3に示すように、支持部14にリクライニング軸を介して回動可能に支持された基部7と、基部7から脱着可能な本体部32と、を備えている。前記リクライニング軸は、背凭れ3がリクライニングする際の回動中心となる。
【0015】
基部7は、図6に示すように、左右一対のアーム部71と、各アーム部71に連結軸73を介して回動可能に連結された連結部72と、一対のアーム部71間に架けられて一対のアーム部71を連結した梁部79と、を備えている。
【0016】
アーム部71の中央部には、上記リクライニング軸が取り付けられる孔74が形成されている。アーム部71の一端部には、連結軸73を介して連結部72が連結されている。アーム部71の他端部には、シートロックを連結するための孔76が形成されている。前記シートロック(ロック機構付きガススプリング)は、背凭れ3を所望の傾動角度に保持する部材である。
【0017】
連結部72は、棒状に形成されている。リクライニング軸と連結軸73は平行に配置されている。連結部72には、ボールプランジャ75が内蔵されている。このボールプランジャ75は、後述する筒部33を固定する部材である。
【0018】
本体部32は、背凭れ3のアップライト状態において上下に延びた左右一対の筒部33と、一対の筒部33の上端同士を連結した板部35と、一対の筒部33の中間部同士を連結した板部34と、板部34,35の前面に配置されたクッション体とこれらを覆った布製のカバーと、を備えている。
【0019】
筒部33は、図6に示すように、中空角筒状に形成されており、下方に開口している。筒部33は、連結部72、連結軸73、及びアーム部71の一部を収容した第1の位置(図6参照)と、連結軸73及びアーム部71を露出させた第2の位置(図7参照)と、にわたって連結部72にスライド可能に取り付けられている。筒部33が第1の位置にある際は、連結部72が回動不能となっており、筒部33が第2の位置にある際は、連結部72が回動可能となっている。乗客が着座する際は、筒部33が第1の位置に位置付けられている。
【0020】
筒部33には、前記第1の位置においてボールプランジャ75のボールが嵌まる第1の孔33aと、前記第2の位置においてボールプランジャ75のボールが嵌まる第2の孔33bと、が形成されている。ボールプランジャ75のボールが第1の孔33aに嵌まることにより、筒部33が第1の位置に維持される。ボールプランジャ75のボールが第2の孔33bに嵌まることにより、筒部33が第2の位置に維持される。なお、ボールプランジャ75の孔33a,33bへの嵌合状態を解除して筒部33を15センチ程度持ち上げることで、本体部32を基部7から分離させることができる。
【0021】
上記構成の背凭れ3は、前方に向けて水平状態に畳むことが可能に設けられている。畳む際は、以下のように扱う。まず、図1,6に示すように、背凭れ3をアップライト状態に位置付ける。この時、筒部33は第1の位置に位置付けられている。次に、ボールプランジャ75の第1の孔33aへの嵌合状態を解除して、図2,7に示すように、本体部32を持ち上げて筒部33を第2の位置に位置付け、ボールプランジャ75を第2の孔33bに嵌合させる。そして、連結軸73を回動中心として本体部32を前方に回動させ、図3,8に示すように、背凭れ3を水平状態に畳む。図3の状態において、本体部32は、肘掛け4よりも低い位置にあり、座部2と向い合わせになっている。
【0022】
テーブル5は、後席の着座者が使用するものであり、使用しない際は、不図示のラッチによって背凭れ3の背面に固定されている。
【0023】
テーブルアーム6は、左右一対設けられている。これらテーブルアーム6は、上記リクライニング軸を介して支持部14に回動可能に支持されている。これらテーブルアーム6は、背凭れ3と同じく前方に向けて水平状態に畳むことが可能に設けられている。
【0024】
図9~11に示すように、テーブルアーム6は、テーブル5から離れた側の第1テーブルアーム61と、テーブル5に連結された第2テーブルアーム62とに2分割されている。第1テーブルアーム61には、上記リクライニング軸が取り付けられる孔64が形成されている。即ち、リクライニング軸は、アーム部71の孔74と第1テーブルアーム61の孔64とに装着される。第2テーブルアーム62はリンク部材63を介して第1テーブルアーム61に回動可能に連結されている。
【0025】
また、第2テーブルアーム62には、第2テーブルアーム62の回動を規制するストッパ65が取り付けられている。図9に示す状態では、第1テーブルアーム61及び第2テーブルアーム62が直線上に並んでおり、ストッパ65が第1テーブルアーム61に係止していることで第2テーブルアーム62の回動が規制されている。即ち、第2テーブルアーム62が第1テーブルアーム61に固定されている。図10に示すように、ストッパ65の第1テーブルアーム61への係止状態を解除することにより、第2テーブルアーム62が第1テーブルアーム61に対し回動可能となる。第2テーブルアーム62が回動可能となることで、図11に示すように、テーブルアーム6を前方に向けて水平状態に畳むことができる。
【0026】
上記構成のテーブルアーム6を畳む際は、図3に示すように先に背凭れ3を畳んでおき、次に図4,10に示すようにストッパ65の第1テーブルアーム61への係止状態を解除する。そして、リンク部材63を回動中心として第2テーブルアーム62を前方に回動させ、図5,11に示すように、テーブルアーム6を水平状態に畳む。図5の状態において、第1テーブルアーム61及び第2テーブルアーム62は、肘掛け4よりも低い位置にあり、テーブル5は、肘掛け4の近傍に位置して背凭れ3と平行になっている。
【0027】
図12に示すように、台車8は、旅客列車の客室内に積載されて荷物18と共に輸送されるものである。台車8は、前方に向けて背凭れ3及びテーブルアーム6が畳まれることで、背凭れ3、テーブルアーム6、テーブル5の上に生じたスペースに位置付けられる台板80と、台板80の四隅から下垂した4本の脚82と、各脚82の下端に取り付けられた車輪83と、当該台車8の移動を規制する回動体93及び昇降体97を備えている。
【0028】
台板80は、長手方向と短手方向とを有する長方形の板である。台板80は、その長手方向と座席装置1の前後方向とが一致する向きで上記スペースに位置付けられる。台板80の長手方向の一端及び他端には取っ手81が取り付けられている。荷物18は台板80に載せられた状態で上記スペースに位置付けられて、そのまま台車8ごと輸送される。
【0029】
脚82は、台板80の長手方向一端側の2本が座席装置1の後方に位置付けられ、台板80の長手方向他端側の2本が座席装置1の前方に位置付けられる。
【0030】
台板80の長手方向一端側の2本の脚82間には、台板80の短手方向に棒状に延びた3本の補強部84,85,86が架け渡されている。補強部84は2本の脚82の上部同士を連結しており、補強部85は2本の脚82の中間部同士を連結しており、補強部86は2本の脚82の下部同士を連結している。
【0031】
また、台板80の長手方向一端側の2本の脚82の一方にはピン87が取り付けられており、他方には回動可能な金具88が取り付けられている。これらピン87及び金具88は、図15に示すように、複数台の台車8同士を連結する際に打掛錠として機能する。
【0032】
台板80の長手方向他端側の2本の脚82間には、一端側と同様に、台板80の短手方向に棒状に延びた3本の補強部84,85,86が架け渡されている。また、これら脚82の一方にはピン87が取り付けられており、他方には金具88が取り付けられている。これらピン87及び金具88は、一端側と同様に、複数台の台車8同士を連結する際に打掛錠として機能する。
【0033】
台板80の長手方向一端側の脚82と他端側の脚82との間には、上述した補強部84,85,86の類いは設けられていない。すなわち、この台車8は、車輪83が床に接触した状態で旅客列車の通路から座席装置1側にスライド移動させることを想定したものであるため、スライド移動させる際に座席装置1に干渉しない空間が一端側の脚82と他端側の脚82間に形成可能に設けられている。「空間が形成可能に設けられている」とは、具体的には、回動体93及び昇降体97の位置によって空間が形成されたり非形成となったりすることを意味する。
【0034】
車輪83は、4つとも回転ストッパ付きの旋回キャスターを採用している。台車8は回動体93及び昇降体97を用いて座席に連結させることができるので、座席に連結させている時には車輪83の回転ストッパを使用する必要はないが、それ以外の時に車輪83の回転ストッパを使用して台車8を移動しないようにすることができる。
【0035】
回動体93は、図12,16に示すように、一対のトルクヒンジ89を介して補強部85に回動可能に取り付けられた平板90と、該平板90の一面から突出した第1リブ91及び第2リブ92を備えている。回動体93の回動中心軸は、台板80の短手方向と平行である。平板90は、台板80の短手方向と平行な辺を長辺とする長方形の板状に形成されている。第1リブ91及び第2リブ92は、互いに平行かつ台板80の短手方向に延びている。
【0036】
図16,17に示すように、座席装置1の後方に位置する回動体93は、平板90が鉛直方向である状態から前方に約90度回動する。このように回動することで、図19に示すように、第1リブ91と第2リブ92の間に背凭れ3の梁部79が係合するとともに一対のアーム部71間に平板90が係合する。このことにより、台車8の前後方向の移動及び左右方向の移動が規制される。
【0037】
本例では、上記回動体93が、台板80の長手方向一端側に1つ、他端側に1つ設けられている。図18に示すように、台車8を座席装置1に連結する際に使用される回動体93は座席装置1の後方に位置する回動体93であり、前方に位置する回動体93は使用されない。この前方に位置する回動体93は、座席装置1の向きが逆向きの場合に使用される。
【0038】
昇降体97は、台板80の長手方向に延びた板状に形成されている。昇降体97の長手方向両端部には、上下方向に延びた長孔98が形成されている。昇降体97の中央部には、昇降操作する際に手を入れる用の孔99が形成されている。また、台板80の長手方向一端側の脚82と他端側の脚82には、長孔98内に位置付けられるピン94が取り付けられている。
【0039】
昇降体97は、図14,16に示す上側位置と図15,18に示す下側位置とにわたって昇降可能となっている。上側位置は、台板80の直下位置であり、肘掛け4よりも高い位置である。即ち、上側位置は、台車8を通路から座席装置1側にスライド移動させる際に昇降体97が肘掛け4に干渉しない位置である。下側位置は、台車8を通路から座席装置1側にスライド移動させる際に昇降体97が肘掛け4に干渉する位置である。
【0040】
このような昇降体97は、図17,18に示すように、上側位置から下側位置に下降されることでテーブル5と肘掛け4の間に差し込まれる。このことにより、台車8の左右方向の移動が規制される。なお、上述したように回動体93だけで台車8の前後方向の移動及び左右方向の移動を規制することができるが、さらに昇降体97を用いることでより厳密に台車8の左右方向の移動を規制することができる。
【0041】
また、本例の台車8は、昇降体97を上側位置に維持する維持手段として、昇降体97の上端面に取り付けられた面ファスナー95と、台板80の下面に取り付けられた面ファスナー96と、を備えている。面ファスナー95,96同士がくっつくことで昇降体97が上側位置に維持される。これら面ファスナー95,96の代わりにマグネットキャッチを用いることもできる。
【0042】
本例では、上記昇降体97が、台板80の短手方向の一端側に1つ、他端側に1つ設けられている。台車8を座席装置1に連結する際には両方の昇降体97をテーブル5と通路側の肘掛け4の間、及び、テーブル5と窓側の肘掛け4の間にそれぞれ差し込んでもよいし、一方のみを使用してもよい。作業性の観点では、通路側の昇降体97を使用するのが好ましい。
【0043】
台車8は、一対の回動体93の平板90が鉛直方向である状態かつ、一対の昇降体97が上側位置にある状態において、台板80の長手方向一端側の脚82と他端側の脚82との間に、当該台車8をスライド移動させる際に座席装置1に干渉しない空間が形成されている。また、台車8の横幅は座席装置1の各座席の横幅よりも小さく形成されている。よって、回動体93及び昇降体97によって座席装置1の座席に連結された状態の台車8は、隣の座席や通路側にはみ出さないようになっている。
【0044】
上述した荷物輸送構造10の作業順序の一例を説明する。まず、予め、図5に示すように、荷物輸送に使用する座席装置1の背凭れ3及びテーブルアーム6を畳んでおく。また、台車8の準備として、一対の回動体93を平板90が鉛直方向である状態に位置付け、一対の昇降体97を上側位置に位置付けておく。
【0045】
次に、台板80に荷物18を載せてこの台車8を旅客列車の客室内に積載する。客室内では、台板80の長手方向と列車の進行方向とが一致する向きで通路に沿って台車8を進ませ、目的の座席装置1の横で止める。そして、図12に示すように、台車8を通路から座席装置1側にスライド移動させる。なお、図12~19に示す例では、2台の台車8を横並びで座席装置1に連結させるので、1台目の台車8を、図12中の左側座席(通路からみて奥側の座席)を跨いだ位置に位置付ける。そして、台車8の位置を微調整する。
【0046】
次に、図13に示すように、左側座席の後方に位置する回動体93を前方に回動させて回動体93と左側座席の背凭れ3とを係合させる。そして、通路と反対側の昇降体97を上側位置から下側位置に下降させて該昇降体97をテーブル5と肘掛け4の間に差し込む。
【0047】
次に、図14に示すように、2台目の台車8を1台目と同様に通路から座席装置1側にスライド移動させ、図14中の右側座席(通路側の座席)を跨いだ位置に位置付ける。そして、台車8の位置を微調整する。
【0048】
次に、図15に示すように、右側座席の後方に位置する回動体93を前方に回動させて回動体93と右側座席の背凭れ3とを係合させる。そして、通路側の昇降体97を上側位置から下側位置に下降させて該昇降体97をテーブル5と肘掛け4の間に差し込む。そして、1台目の台車8の金具88を2台目の台車8のピン87に掛けて台車8同士を連結する。
【0049】
この状態で目的駅まで荷物18を台車8ごと輸送する。目的駅に到着すると、荷物18を台車8ごと旅客列車から降ろす。
【0050】
以上説明したように、本発明の荷物輸送構造10によれば、座席装置1の背凭れ3とテーブルアーム6を前方に向けて水平状態に畳み、背凭れ3、テーブルアーム6、テーブル5の上に生じたスペースに台板80を位置付け、該台板80に載せられた荷物18を台車8ごと輸送することにより、座部2上に荷物を載せて輸送する場合と比較して、輸送可能な荷物量の拡大を図ることができる。また、台車8から座席に荷物18を積み替える作業がないため、旅客列車への荷物18の積み込みを短時間で行うことができる。
【0051】
上述した実施形態では、背凭れ3がリクライニングする構成であったが、本発明は、背凭れ3がリクライニングしない座席装置にも適用可能である。また、本発明は、テーブル5及びテーブルアーム6を備えていない座席装置にも適用可能である。その場合、昇降体97は、下側位置にて肘掛け4の内側面に沿わされる構成としてもよいし、下側位置にて背凭れ3と肘掛け4の間に差し込まれる構成としてもよい。
【0052】
上述した実施形態では、回動体93が、台板80の長手方向の一端側に1つ、他端側に1つ設けられていたが、本発明では回動体93が台板80の長手方向の一端側又は他端側に1つのみ設けられていてもよい。
【0053】
上述した実施形態では、昇降体97が、台板80の短手方向の一端側に1つ、他端側に1つ設けられていたが、本発明では昇降体97が台板80の短手方向の一端側又は他端側に1つのみ設けられていてもよい。
【0054】
上述した実施形態では、回動体93及び昇降体97を使用して台車8の移動を規制していたが、本発明では回動体93及び昇降体97以外の手段で台車8の移動を規制してもよい。
【0055】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 座席装置
2 座部
3 背凭れ
4 肘掛け
5 テーブル
6 テーブルアーム
8 台車
10 荷物輸送構造
80 台板
82 脚
83 車輪
93 回動体
97 昇降体
図1
図2
図3
図4
図5
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図19